説明

光電変換半導体層とその製造方法、光電変換素子、及び太陽電池

【課題】厚み方向のポテンシャルを変化させることが可能であり、真空成膜よりも低コストに製造することができ、高光電変換効率を得ることが可能な光電変換半導体層を提供する。
【解決手段】光電変換半導体層30Xは、光吸収により電流を発生するものであり、複数の粒子31が面方向及び厚み方向に配列した粒子層により構成されている。光電変換半導体層30Xは、複数の粒子31としてバンドギャップの異なる複数種類の粒子を含み、厚み方向のポテンシャルが分布を有していることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換半導体層とその製造方法、及びこれを用いた光電変換素子と太陽電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下部電極(裏面電極)と光吸収により電流を発生する光電変換半導体層と上部電極(透光性電極)との積層構造を有する光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。
従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Si又は多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCIS(Cu−In−Se)系あるいはCIGS(Cu−In−Ga−Se)系等の薄膜系とが知られている。CIS系あるいはCIGS系は、光吸収率が高く、高エネルギー変換効率が報告されている。
【0003】
CIGS層の製造方法としては、三段階法あるいはセレン化法等が知られている。しかしながら、いずれも真空成膜であるため、高コストで、大きな設備投資が必要である。非真空系プロセスで低コストなCIGS層の製造方法としては、CIGSの構成元素を含む球状粒子を塗布した後、焼結する方法が提案されている(特許文献1〜3,非特許文献1〜3)。
【0004】
非特許文献1,2には、球状のCIGS粒子を基板上に塗布した後、500℃程度の高温でCIGS粒子を焼結して、結晶化する方法が提案されている。これらの文献では、ラピッドサーマルプロセス(RTP)による加熱時間の短縮が検討されている。
【0005】
特許文献1及び非特許文献2,3には、Cu,In,及びGaを含む1種又は複数種類の球状の酸化物粒子あるいは合金粒子を基板上に塗布した後、Seガス存在下で500℃程度の高温熱処理を実施して、セレン化及び結晶化する方法が提案されている。
【0006】
特許文献2,3には、原料粒子として、コア部とシェル部の組成の異なるコアシェル構造の粒子を用い、これを基板上に塗布した後、500℃程度の高温で焼結して、結晶化する方法が提案されている。特許文献2では、コア部をIb族とIIIa族とVIa族とを含む組成とし、シェル部をIb族と、IIa族/又はVIa族とを含む組成とする粒子を用いている。特許文献3では、コア部をIn及びSeを含む組成とし、シェル部をCu及びSe含む組成とする粒子を用いている。
【0007】
ところで、CIGS層等の光電変換層においては、厚み方向にGa等の濃度変化を付けて、厚み方向のポテンシャル(バンドギャップ)を変化させることで、光電変換効率が向上することが知られている。ポテンシャルの傾斜構造としては、シングルグレーティング構造及びダブルグレーティング構造等が知られ、ダブルグレーティング構造がより好ましいとされている。
【0008】
しかしながら、粒子の焼結プロセスを含む上記の方法では、粒子は溶融及び/又は融着によって結晶成長し、組成が全体的に均一化するため、厚み方向の組成傾斜を付けることができない。例えば、特許文献2,3には、コアシェル構造の粒子を用いているにもかかわらず、焼結により均一な組成のCIGS層が形成されることが記載されている。厚み方向の組成を変えるには、粒子の溶融及び/又は融着が起こらない温度内で光電変換層を形成する必要がある。
【0009】
非特許文献4〜6には、球状のCIGS粒子を基板上に塗布し、その後、高温熱処理を実施しない方法が提案されている。非特許文献4〜6に記載の方法では焼結プロセスがないため、層形成後も用いた粒子の形状と組成がそのまま維持される。非特許文献4〜6には、複数の球状粒子が面方向にのみ配列した単層構造の粒子層のみが記載されている。
【0010】
非特許文献7には板状のCIGS粒子の合成が報告されている。この文献には、単に粒子の合成が報告されているだけで、光電変換層の原料としての利用、光電変換層の具体的な形成等については一切記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0183768A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0062902A1号明細書
【特許文献3】国際公開第WO2008/013383号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Colloids Surface A 313-314 (2008) 171-174
【非特許文献2】Solar Ener. Mater. & Solar Cells 91 (2007) 1836
【非特許文献3】Thin Solid Films 431-432 (2003) 58-62
【非特許文献4】Thin Solid Films 431-432 (2003) 466-469
【非特許文献5】Sol. Energy Mater. Sol. Cells 87 (2005) 25-32
【非特許文献6】Thin Solid Films 515 (2007) 5580-5583
【非特許文献7】Chem. Mater. 20 (2008) 6906-6910
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1〜3,非特許文献1〜3に記載の方法では、焼結を行うため、仮に組成の異なる粒子を積層したとしても全体の組成は均一となり、組成傾斜を付けることができない。
また、特許文献1〜3,非特許文献1〜3に記載の方法において、低コスト化のために1回の塗布で必要な厚みを得ようとすると、多くの場合、光電変換層は島状になってしまう。島状にならずに外見上は均一層が形成できた場合でも、焼結工程において分散剤等の有機成分の焼失により層内に多くの空隙が生じて、結晶欠陥は増える一方で光吸収量は低下するので、高効率の光電変換層を形成することができない。そのため、これらの文献では、粒子の塗布と焼結とを複数回繰り返して結晶層内の空隙を少なくし、均一度の高い結晶層を形成している。しかしながら、かかる方法では工程数が多くなり、非真空プロセスによる低コスト製造の実現が難しい。
【0014】
非特許文献4〜6に記載の複数の球状粒子が面方向にのみ配列した単層構造の粒子層からなるCIGS層では、厚み方向の組成傾斜を付けることはできない。
【0015】
上記のように、過去には粒子を用いた光電変換層において、厚み方向の組成に傾斜を持たせて、厚み方向のポテンシャルに傾斜を持たせた報告はなく、真空成膜レベルの光電変換効率は実現されていない。例えば非特許文献7には、電極などの非受光面積を除いた時の変換効率として9.5%が報告されている。これは通常の変換効率に換算すると、5.7%である。この数値は真空成膜で得たCIGS層における光電変換効率の半分以下であり、実用的なレベルではない。非特許文献4〜6では、粒子と電極との接触面積を大きくして変換効率を上げるために、球状粒子の一部をエッチングによって平滑にする工程なども含んでいる。
【0016】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、厚み方向のポテンシャルを変化させることが可能であり、真空成膜よりも低コストに製造することができ、従来の非真空成膜よりも高光電変換効率を得ることが可能な光電変換半導体層とその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光電変換半導体層は、光吸収により電流を発生する光電変換半導体層において、
複数の粒子が面方向及び厚み方向に配列した粒子層からなることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の第1の光電変換半導体層の製造方法は、上記の本発明の光電変換半導体層の製造方法であって、
基板上に、前記複数の粒子、若しくは前記複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する工程を有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の第2の光電変換半導体層の製造方法は、上記の本発明の光電変換半導体層の製造方法であって、
基板上に、前記複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する工程と、
前記分散媒を除去する工程とを有することを特徴とするものである。
前記分散媒を除去する工程は250℃以下の工程であることが好ましい。
【0020】
本発明の光電変換素子は、上記の本発明の光電変換半導体層と該光電変換半導体層で発生した電流を取り出す電極とを備えたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の光電変換素子の好適な態様としては、可橈性基板を用いた素子であり、該可橈性基板上に前記光電変換半導体層と前記電極とを備えたものが挙げられる。
【0022】
前記可橈性基板としては、
Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
若しくは、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板が好ましい。
本明細書において、「Al材、Al膜、及び陽極酸化膜の主成分」は、含量98質量%以上の成分であると定義する。
本明細書において、「Fe材の主成分」は、含量60質量%以上の成分であると定義する。
【0023】
本発明の太陽電池は、上記の本発明の光電変換素子を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、厚み方向のポテンシャルを変化させることが可能であり、真空成膜よりも低コストに製造することができ、従来の非真空成膜よりも高光電変換効率を得ることが可能な光電変換半導体層とその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1A】本発明の光電変換半導体層の好適な態様を示す断面図
【図1B】本発明の光電変換半導体層の他の好適な態様を示す断面図
【図2】シングルグレーティング構造とダブルグレーティング構造の説明図
【図3】I−III−VI化合物半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図
【図4A】本発明に係る一実施形態の光電変換素子の短手方向の模式断面図
【図4B】本発明に係る一実施形態の光電変換素子の長手方向の模式断面図
【図5】陽極酸化基板の構成を示す模式断面図
【図6】陽極酸化基板の製造方法を示す斜視図
【図7】板状粒子のTEM表面写真
【発明を実施するための形態】
【0026】
「光電変換半導体層」
本発明の光電変換半導体層は、光吸収により電流を発生する光電変換半導体層において、
複数の粒子が面方向及び厚み方向に配列した粒子層からなることを特徴とするものである。
【0027】
複数の粒子の形状は特に制限されず、球状粒子及び/又は板状粒子が好ましい。
板状粒子の表面形状は特に制限されず、略六角形状、略三角形状、略円状、及び略矩形状のうち少なくとも1種であることが好ましい。本発明者は後記「実施例」の項において、略六角形状、略三角形状、略円状、及び略矩形状の板状粒子の合成に成功している。
【0028】
本明細書において、「板状粒子」とは、互いに対向する一対の主面を有する粒子である。「主面」は粒子の外表面のうち最も面積の大きい面のことを指す。
本明細書において、「板状粒子の表面形状」は、上記主面の形状を指す。
略六角形状(あるいは略三角形状、あるいは略矩形状)とは、六角形状(あるいは三角形状、あるいは矩形状)及びその角部が丸みを帯びた形状を意味する。略円状とは、円状又はそれに近い丸みのある形状を意味する。
【0029】
図面を参照して、本発明の光電変換半導体層の好適な態様を示す。図1A及び図1Bは光電変換半導体層の厚み方向の模式断面図である。図中、各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0030】
図1Aに示す光電変換半導体層30Xは、複数の球状粒子31が面方向及び厚み方向に配列した積層構造の粒子層からなる光電変換半導体層である。図1Bに示す光電変換半導体層30Yは、複数の板状粒子32が面方向及び厚み方向に配列した積層構造の粒子層からなる光電変換半導体層である。図1A及び図1Bでは例として4層積層構造について図示してある。光電変換半導体層30X,30Yにおいて、互いに隣接する粒子間には多少の空隙33があってもよいし、なくてもよい。
【0031】
本発明の光電変換半導体層は、上記複数の粒子、あるいは上記複数の粒子を含む塗布剤を塗布する工程を有する製造方法により製造されたものである。本発明の光電変換半導体層は、250℃を超える熱処理を経ずに製造されたものであり、層形成に用いた粒子が焼結されずにそのまま残っている。
【0032】
本発明の光電変換半導体層は、同一組成の1種類の粒子により構成されてもよいし、組成の異なる複数種類の粒子により構成されてもよい。本発明の光電変換半導体層は、250℃を超える焼結を経ずに製造されたものであるので、組成の異なる複数種類の粒子を用いた場合も、これらの組成が均質化されることなく、それぞれの組成は層形成後もそのまま維持される。
【0033】
本発明の光電変換半導体層は、複数の粒子としてバンドギャップの異なる複数種類の粒子を含み、厚み方向のポテンシャルが分布を有していることが好ましい。かかる構成では、光電変換効率をより高く設計することができる。
【0034】
厚み方向のポテンシャル(バンドギャップ)の傾斜構造としては特に制限なく、厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが1つの傾きを有するシングルグレーティング構造、厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが2つの傾きを有するダブルグレーティング構造、及び厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが3つ以上の傾きを有するグレーティング構造等が挙げられる。
【0035】
本発明の光電変換半導体層は、厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが複数の傾きを有していることが好ましい。本発明の光電変換半導体層は、厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが2つの傾きを有するダブルグレーティング構造であることが特に好ましい。
【0036】
いずれのグレーティング構造においても、バンド構造の傾斜によって内部に発生する電界のため、光に誘起されたキャリアが加速されて電極に到達しやすくなり、再結合中心との結合確率を下げるため、光電変化効率が向上すると言われている(WO2004/090995号パンフレット等)。シングルグレーティング構造及びダブルグレーティング構造については、T.Dullweber et.al, Solar Energy Materials & Solar Cells, Vol.67, p.145-150(2001)等を参照されたい。
【0037】
図2に、シングルグレーティング構造及びダブルグレーティング構造における厚み方向のC.B.(conduction band,伝導帯)と厚み方向のV.B.(valence band,価電子帯)の例を模式的に示す。シングルグレーティング構造において、C.B.は、下部電極側から上部電極側に向けて徐々に減少する。ダブルグレーティング構造において、C.B.は、下部電極側から上部電極側に向けて徐々に減少し、ある位置から徐々に増加する。シングルグレーティング構造においては、厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが1つの傾きを有するのに対して、ダブルグレーティング構造においては、厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが2つの傾きを有し、これらの傾きの正負が異なる。
【0038】
本発明の光電変換半導体層を構成する粒子の大きさ及び粒子の積層数は特に制限されない。粒子の平均厚み(球状粒子の平均厚み(=平均径)、板状粒子の平均厚み)は小さく、粒子の積層数が多い方が、厚み方向のポテンシャルを変えやすい。ただし、粒子の平均厚みが小さくなりすぎ、粒子の積層数が多くなりすぎると、電極間に存在する粒界が多くなり、光電変換効率が低下する。
【0039】
厚み方向のポテンシャル傾斜の付けやすさ、光電変換効率、及び粒子の製造容易性を考慮すれば、粒子の平均厚み(球状粒子の平均厚み(=平均径)、板状粒子の平均厚み)は、0.05〜1.0μmであることが好ましい。
【0040】
本発明の光電変換半導体層において、層全体の体積に対して複数の粒子が占める体積充填率は特に制限されない。光吸収率を高くし、キャリア移動のロスになる欠陥の生成を防ぐためには、光電変換半導体層の粒子充填率は高い方が好ましい。具体的には、光電変換半導体層の粒子充填率は50%以上が好ましい。以降、本明細書において、「充填率」は特に明記しない限り、「層全体の体積に対して複数の粒子が占める体積充填率」を意味するものとする。
【0041】
アスペクト比(光電変換層の厚み方向断面のアスペクト比)が3.0以下の球状粒子の場合、粒子充填率を高くするためには、粒子形状は表面凹凸が多い形よりも真球又はそれに近い方が好ましい。粒子表面の摩擦が小さいことからも、粒子形状は真球又はそれに近い方が好ましい。
【0042】
アスペクト比が3.0以下の球状粒子の場合、粒子径分布がある程度あった方が、相対的に径の大きい粒子間に相対的に径の小さい粒子が入り込んで隙間を埋めるので、充填がより密になり、充填率が高くなる傾向にある。ただし、粒子径分布が広くなりすぎ、粒子間の反発が相対的に大きくなる限界粒子径以下の小粒子の量が多くなると、充填率は低下する傾向にある。
【0043】
アスペクト比が3.0以下の球状粒子の場合、粒子径の変動係数(分散度)は20〜60%が好ましい。かかる分散度の粒子を用いることで、安定的に粒子充填率を50%以上とすることができ、光吸収率が高く、キャリア移動のロスになる欠陥の少ない高効率の光電変換層を安定的に形成することができる。
【0044】
本発明の光電変換半導体層を構成する複数の板状粒子のアスペクト比(光電変換層の厚み方向断面のアスペクト比)は特に制限されない。立方体に近い異方性の少ない形状では、粒子の主面が基板面に対して平行になるように複数の板状粒子を配列させることが難しい。アスペクト比の高い方が板状粒子の主面が基板面に対して平行になるよう複数の板状粒子を配列させやすいので、好ましい。粒子の配向性、即ち光電変換半導体層の製造容易性を考慮すれば、複数の板状粒子のアスペクト比は3〜50であることが好ましい。
【0045】
本発明の光電変換半導体層を構成する複数の板状粒子の平均等価円相当直径は特に制限されず、大きい方が受光面積が大きくなるので好ましい。粒子の配向性及び光電変換半導体層の製造容易性を考慮すれば、複数の板状粒子の平均等価円相当直径は例えば0.1〜100μmであることが好ましい。
【0046】
本発明の光電変換半導体層を構成する複数の板状粒子の等価円相当直径の変動係数(分散度)は特に制限されず、品質の安定した光電変換半導体層を製造するには、単分散又はそれに近いことが好ましい。具体的には、等価円相当直径の変動係数は40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。
【0047】
化学工学便覧等に記載されているように、球状粒子の充填パターンは6種類のパターンに決まっており、TEM観察により充填パターンを特定することができる。粒子径が単一で分布がない場合、粒子径が変わっても空隙率が変わらない。粒子径分布を求め、ある粒子径の割合とその空隙率を求め、これを全粒子径分布で積分することで、トータルの空隙率を求めることができる。充填率(体積充填率)=100−空隙率(%)で求められる。
【0048】
本明細書において、粒子形状に関係なく、「粒子の平均等価円相当直径」は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価するものとする。評価には、例えば、日立走査透過電子顕微鏡 HD−2700などを用いることができる。「平均等価円相当径」は、300程度の粒子について、粒子に外接する円の直径を求め、その結果を平均することで得るものとする。「等価円相当直径の変動係数(分散度)」は、このTEMによる粒径評価から統計的に求めるものとする。
【0049】
粒子形状に関係なく、「粒子の厚み」は、多数の粒子をメッシュ上に分散させ、この上からカーボン等を一定の角度から蒸着することでシャドーイングを行い、それを走査型電子顕微鏡(SEM)等で撮影することで、その画像から得られるシャドーの長さと蒸着を行った角度から粒子の厚みを算出するものとする。厚みの平均値は前述の円相当径と同様に約300の板状粒子の平均値から求めるものとする。
粒子形状に関係なく、「粒子のアスペクト比」は、上記方法により求められた等価円相当径と厚みとから算出するものとする。
【0050】
本発明の光電変換半導体層は、主成分が、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることが好ましい。
本発明の光電変換半導体層は、主成分が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
【0051】
光吸収率が高く、高い光電変換効率が得られることから、
本発明の光電変換半導体層は、
主成分が、
Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体(S)であることが好ましい。
【0052】
本明細書における元素の族の記載は、短周期型周期表に基づくものである。本明細書において、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる化合物半導体は、「I−III−VI族半導体」と略記している箇所がある。I−III−VI族半導体の構成元素であるIb族元素、IIIb族元素、及びVIb族元素はそれぞれ1種でも2種以上でもよい。
【0053】
上記化合物半導体(S)としては、
CuAlS,CuGaS,CuInS
CuAlSe,CuGaSe,CuInSe(CIS),
AgAlS,AgGaS,AgInS
AgAlSe,AgGaSe,AgInSe
AgAlTe,AgGaTe,AgInTe
Cu(In1−xGa)Se(CIGS),Cu(In1−xAl)Se,Cu(In1−xGa)(S,Se)
Ag(In1−xGa)Se,及びAg(In1−xGa)(S,Se)等が挙げられる。
【0054】
本発明の光電変換半導体層は、CuInS、CuInSe(CIS)、あるいはこれらにGaを固溶させたCu(In,Ga)S、Cu(In,Ga)Se(CIGS)、あるいはこれらの硫化セレン化物を含むことが特に好ましい。本発明の光電変換半導体層は、これらを1種又は2種以上含むことができる。CIS及びCIGS等は、光吸収率が高く、高エネルギー変換効率が報告されている。また、光照射等による効率の劣化が少なく、耐久性に優れている。
【0055】
本発明の光電変換半導体層がCIGS層である場合、層中のGa濃度及びCu濃度は特に制限されない。層中の全III族元素含有量に対するGa含有量のモル比は0.05〜0.6が好ましく、0.2〜0.5がより好ましい。層中の全III族元素含有量に対するCu含有量のモル比は0.70〜1.0が好ましく、0.8〜0.98がより好ましい。
【0056】
本発明の光電変換半導体層には、所望の半導体導電型を得るための不純物が含まれる。不純物は隣接する層からの拡散、及び/又は積極的なドープによって、光電変換半導体層中に含有させることができる。
【0057】
本発明の光電変換半導体層は、I−III−VI族半導体以外の1種又は2種以上の半導体を含んでいてもよい。I−III−VI族半導体以外の半導体としては、Si等のIVb族元素からなる半導体(IV族半導体)、GaAs等のIIIb族元素及びVb族元素からなる半導体(III−V族半導体)、及びCdTe等のIIb族元素及びVIb族元素からなる半導体(II−VI族半導体)等が挙げられる。
【0058】
本発明の光電変換半導体層には、特性に支障のない限りにおいて、半導体、所望の導電型とするための不純物以外の任意成分が含まれていても構わない。
【0059】
本発明の光電変換半導体層中において、不純物には濃度分布があってもよく、n型,p型,及びi型等の半導体性の異なる複数の層領域が含まれていても構わない。
【0060】
本発明の光電変換半導体層は、同一組成の1種類の粒子により構成されてもよいし、組成の異なる複数種類の粒子により構成されてもよいが、複数の粒子としてバンドギャップの異なる複数種類の粒子を含み、厚み方向のポテンシャルが分布を有していることが好ましいことを述べた。
【0061】
図3は、主なI−III−VI化合物半導体における格子定数とバンドギャップとの関係を示す図である。この図から、組成比を変えることにより様々な禁制帯幅(バンドギャップ)を得ることができることが分かる。すなわち、複数の粒子として、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素のうち少なくとも1種の元素の濃度の異なる複数種類の粒子を用い、厚み方向の該元素の濃度を変化させることにより、厚み方向のポテンシャルを変化させることができる。
【0062】
上記の化合物半導体(S)であれば、厚み方向の濃度を変化させる元素は、Cu,Ag,Al,Ga,In,S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種の元素であり、Ag,Ga,Al,及びSからなる群から選択された少なくとも1種の元素が好ましい。
【0063】
例えば、Cu(In,Ga)Se(CIGS)のGa濃度を厚み方向に変える、Cu(In,Al)SeのAl濃度を厚み方向に変える、(Cu,Ag)(In,Ga)SeのAg濃度を厚み方向に変える、Cu(In,Ga)(S,Se)のS濃度を厚み方向に変えるなどの組成傾斜構造が挙げられる。例えば、CIGSの場合、Gaの濃度を変えることで、1.04〜1.68eVの範囲でポテンシャルを調整できる。CIGSにおいてGa濃度に傾斜を付ける場合、Ga量が最大の粒子のGa濃度を1としたとき、Ga量が最小のGa濃度は特に制限されず、0.2〜0.9が好ましく、0.3〜0.8がより好ましく、0.4〜0.6が特に好ましい。
【0064】
組成分布は、電子線を細く絞ることができるFE−TEMにEDAXを付けた装置にて評価することができる。
組成分布はまた、国際公開第WO2006/009124号パンフレットに開示された方法を用いて発光スペクトルの半値幅から測定することができる。一般に、粒子の組成が異なるとそのバンドギャップも異なるため励起電子の再結合による発光波長が異なる。このため粒子間の組成分布が広くなると発光スペクトルも広がりを持つことになる。
【0065】
発光スペクトルの半値幅と粒子間の組成分布との相関に関しては、FE−TEMに付設されたEDAXにて粒子の組成を測定し、発光スペクトルとの相関を取ることで確認できる。発光スペクトル測定に用いる励起光の波長は特に制限されず、近紫外域〜可視域が好ましく、150〜800nmがより好ましく、400〜700nmが特に好ましい。
【0066】
例えば、本発明者の実際の測定例では、CIGSにおいて、InとGaのトータルの原子比率に対するGa原子比率の平均を同じ0.5としたとき、Ga原子比率の変動係数が60%の場合の550nmで励起した場合の発光スペクトルの半値幅は450nmであり、Ga原子比率の変動係数が30%の場合の同半値幅は200nmであった。このように、発光スペクトルの半値幅は粒子間の組成分布を反映する。
【0067】
発光スペクトルの半値幅は特に制限されず、例えばCIGSにおいて、発光スペクトルの半値幅は5〜450nmであることが好ましい。ここで、下限の5nmは熱的ゆらぎによるものであり、それ以下の半値幅は理論的にありえない。
【0068】
(光電変換半導体層の製造方法)
本発明の第1の光電変換半導体層の製造方法は、基板上に、前記複数の粒子、若しくは前記複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する工程を有することを特徴とするものである。
【0069】
本発明の第2の光電変換半導体層の製造方法は、基板上に、前記複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する工程と、前記分散媒を除去する工程とを有することを特徴とするものである。
前記分散媒を除去する工程は250℃以下の工程であることが好ましい。
【0070】
<粒子の製造方法>
本発明の光電変換半導体層に用いられる粒子の製造方法は特に制限されない。球状粒子の製造方法については、「背景技術」の項に挙げた特許文献1〜3,非特許文献1〜6に記載されている。板状粒子については、過去には、唯一非特許文献7にその製造方法が報告されている。本発明者は、非特許文献7に記載の公知の方法とは異なる新規な方法によって、板状粒子を製造することに成功している(後記「実施例」の項を参照)。
【0071】
金属−カルコゲン粒子は、気相法、液相法、あるいはその他の化合物半導体の粒子形成法により製造することができる。粒子の合着防止や量産性に優れることを考慮すると、液相法が好ましい。液相法としては、高分子存在法、高沸点溶媒法、正常ミセル法、及び逆ミセル法等が挙げられる。
【0072】
金属−カルコゲン粒子の好ましい製造方法としては、金属とカルコゲンとをそれぞれ塩または錯体の形で、アルコール系溶媒および/または水に溶解した溶液中で反応させる方法が挙げられる。この方法では、複分解反応あるいは還元反応を利用して反応させる。
【0073】
反応条件を調整することで、所望の形状と大きさの粒子を製造できる。本発明者は例えば、反応液のpHを調製することで、得られる粒子の形状と大きさを変えられることを見出している(後記「実施例」の項を参照)。
【0074】
金属の塩または錯体としては、金属ハロゲン化物、金属硫化物、金属硝酸塩、金属硫酸塩、金属リン酸塩、錯体金属塩、アンモニウム錯塩、クロロ錯塩、ヒドロキソ錯塩、シアノ錯塩、金属アルコラート、金属フェノラート、金属炭酸塩、カルボン酸金属塩、金属水素化物、及び金属有機化合物等が挙げられる。カルコゲンの塩または錯体としては、アルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩等が挙げられる。他にもカルコゲンの供給源としては、チオアセトアミドやチオール類等を用いてもよい。
【0075】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エトキシプロパノール、テトラフルオロプロパノールなどが挙げられ、好ましくはエトキシエタノール、エトキシプロパノールまたはテトラフルオロプロパノールである。
【0076】
金属化合物の還元に用いられる還元剤としては特に制限はなく、例えば、水素、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、アスコルビン酸、デキストリン、スーパーハイドライド(LiB(CH)、及びアルコール類などが挙げられる。
【0077】
上記反応の際に吸着基含有低分子分散剤を用いることが好ましく、吸着基含有低分子分散剤としては、アルコール系溶媒や水に溶解するものが用いられる。低分子分散剤の分子量は、300以下が好ましく、200以下がより好ましい。吸着基としては、−SH、−CN、−NH2、−SO2OH、及び−COOH等が好ましいが、これらに限定されるものではない。さらに、これらの基を複数もつことも好ましい。また、上記の基の水素原子をアルカリ金属原子等で置換した塩も分散剤として用いられる。分散剤としては、R−SH、R−NH、R−COOH、HS−R'−(SOH)、HS−R'−NH、及びHS−R'−(COOH)で表される化合物等が好ましい。
【0078】
上記式中、Rは脂肪族基、芳香族基または複素環基(複素環中の水素原子を一個取り去った基)であり、R'はRの水素原子がさらに置換した基である。R'としてはアルキレン基、アリーレン基、複素環連結基(複素環中の水素原子を二個取り去った基)が好ましい。脂肪族基としてはアルキル基(炭素数2〜20、好ましくは、炭素数2〜16の直鎖または分岐のアルキル基で、置換基を有していてもよい。)が好ましい。芳香族基としては、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基が好ましい。複素環基及び複素環連結基の複素環としては、アゾール、ジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾールなどが好ましい。nは1〜3が好ましい。吸着基含有低分子分散剤の例としては、メルカプトプロパンスルホン酸、メルカプトコハク酸、オクタンチオール、デカンチオール、チオフェノール、チオクレゾール、メルカプトベンズイミダゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、5−アミノ−2−メルカプトチアジアゾール、2−メルカプト−3−フェニルイミダゾール、1−ジチアゾリルブチルカルボン酸などが挙げられる。分散剤の添加量は、生成する粒子の0.5〜5倍モルが好ましく、さらに、1〜3倍モルが好ましい。
【0079】
反応温度としては、0〜200℃の範囲が好ましく、より好ましくは0〜100℃の範囲である。添加する塩または錯塩のモル比は、目的とする組成比の比率が用いられる。吸着基含有低分子分散剤は、反応前の溶液中に添加する以外に、反応中または反応後に追加添加しても良い。
【0080】
反応は、攪拌された反応容器で行うことができ、磁力回転する密閉型小空間攪拌装置を用いることもできる。磁力回転する密閉型小空間攪拌装置としては、特開平10−43570号公報に記載された装置(A)が挙げられる。磁力回転する密閉型小空間攪拌装置を使用後、更に高剪断力を有する攪拌装置を用いることが好ましい。高剪断力を有する攪拌装置とは、攪拌羽根が基本的にタービン型あるいはパドル型の構造を有し、さらに、その羽根の端あるいは羽根と接する位置に鋭い刃を付けた構造であり、それをモーターで回転させる攪拌装置である。具体例として、ディゾルバー(特殊機化工業製)、オムニミキサー(ヤマト科学製)、ホモジナイザー(SMT製)などの装置が用いられる。
【0081】
反応液から粒子を精製するため、一般に良く知られているデカンテーション法、遠心分離法、限外濾過(UF)法を用いることで、副生成物や過剰の分散剤などの不要物を除去することができる。洗浄液としては、アルコール、水またはアルコール/水混合液を用い、凝集や乾固を起こさないように行う。
【0082】
金属−カルコゲン粒子の形成方法に関しては、金属の塩または錯体とカルコゲンの塩または錯体とを逆ミセル中に含有させ、混合することで反応させることもできる。さらに、この反応時に還元剤を逆ミセル中に含有させることもできる。具体的には、特開2003-239006号公報、特開2004-52042号公報などに記載の方法が参考にできる。
また、特表2007-537866号公報に記載のように分子クラスターを経由して粒子形成を行う方法も用いることができる。
【0083】
その他、特表2002-501003号公報、米国特許出願公開第2005/0183767A1号明細書、国際公開第WO2006/009124号パンフレット、Materials Transaction,Vol.49,No.3(2008)435、Thin Solid Films,Vol.480(2005)526、Thin Solid Films,Vol.480(2005)46、Thin Solid Films,Vol.515(2007)4036、Journal of Electronic Materials,Vol.27(1998)433などに記載の粒子形成方法を用いることもできる。
【0084】
<塗布工程>
基板上に、複数の粒子、若しくは複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する方法としては特に制限されない。塗布工程に先立ち、基板は充分に乾燥させておくことが好ましい。
【0085】
塗布方法としては、ウェブコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、ドクターブレードコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット法などを用いることができる。特に、ウェブコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット法に関しては、可撓性基板へのRoll to Roll製造が可能であり、好ましい。
【0086】
分散媒は必要に応じて使用することができ、水及び有機溶剤等の液体の分散媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、極性溶媒が好ましく、アルコール系の溶媒がより好ましい。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、エトキシプロパノール、テトラフルオロプロパノールなどが用いられ、エトキシエタノール、エトキシプロパノールまたはテトラフルオロプロパノール等が好ましい。塗布剤の粘度及び表面張力などの液物性に関しては、塗布方法に合わせて、上記の分散媒により好適な範囲に調節される。
【0087】
分散媒としては、固体の分散媒を用いることもできる。固体の分散媒としては、前記の吸着基含有低分子分散剤等が挙げられる。
【0088】
球状粒子の塗布を行うと、球状粒子は自然に最密に基板上に並び、粒子層を形成する。板状粒子を用いる場合も、粒子は自然に主面が基板面に対して平行になるように基板上に並び、粒子層を形成する。
【0089】
本発明では厚み方向に粒子を積層するが、一層ずつ形成することもできるし、同時に複数層を積層することもできる。厚み方向の組成を変える場合、組成の同じ粒子を用いて単層構造の粒子層を形成し、組成を変えて繰り返し積層していくこともできるし、組成の異なる複数種類の粒子を同時に供給して、厚み方向の組成の異なる積層構造の粒子層を一括形成することもできる。
【0090】
<分散媒の除去工程>
分散媒を使用する場合、必要に応じて、上記塗布工程後に分散媒を除去する工程を実施することができる。分散媒を除去する工程は250℃以下の工程であることが好ましい。
【0091】
水及び有機溶媒等の液体の分散媒は、常圧加熱乾燥、減圧乾燥、及び減圧加熱乾燥等によって除去できる。水及び有機溶媒等の液体の分散媒は、250℃以下の温度で充分に除去可能である。
固体の分散媒は、溶媒溶解、及び常圧加熱等によって除去できる。多くの有機物は250℃以下で分解されるため、固体の分散媒についても250℃以下の温度で充分に除去可能である。
【0092】
以上のようにして、本発明の光電変換半導体層を製造することができる。本発明の光電変換半導体層は、非真空系プロセスで製造でき、真空成膜よりも低コストに製造することができる。本発明では250℃を超える焼結を実施しないので、高温プロセスの設備が不要であり、低コストに製造することができる。
【0093】
本発明では250℃を超える焼結を実施しないので、組成の異なる複数種類の粒子を用いる場合、これらの組成が均質化されることなく、それぞれの組成は層形成後もそのまま維持される。したがって、本発明の光電変換半導体層では、複数の粒子としてバンドギャップの異なる複数種類の粒子を用いることで、厚み方向のポテンシャルに分布を持たせることができる。そのため、シングルグレーティング構造あるいはダブルグレーティング構造等の傾斜バンド構造を形成することができ、従来の非真空成膜よりも高い光電変換効率を得ることができる。
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、厚み方向のポテンシャルを変化させることが可能であり、真空成膜よりも低コストに製造することができ、従来の非真空成膜よりも高光電変換効率を得ることが可能な光電変換半導体層とその製造方法を提供することができる。
【0095】
本発明の光電変換半導体層を構成する複数の粒子としては、板状粒子がより好ましい。この場合には、光電変換半導体層と電極との接触面積が大きく接触抵抗が小さい上、粒子間の接触面積も大きく、かつ、粒子の受光面積も大きく取れるため、より光電変換効率を実現することができる。
【0096】
本発明の光電変換半導体層を構成する複数の粒子として、アスペクト比3.0以下の球状粒子を用いる場合、分散度を20〜60%とすることが好ましい。かかる分散度の粒子を用いることで、光電変換半導体層の粒子充填率を50%以上とすることができ、光電変換半導体層の厚みあたりの光吸収率を高くし、キャリア移動のロスになる欠陥の生成を防ぎ、高効率な光電変換半導体層を実現することができる。
【0097】
「光電変換素子」
図面を参照して、本発明に係る一実施形態の光電変換素子の構造について説明する。図4Aは光電変換素子の短手方向の模式断面図、図4Bは光電変換素子の長手方向の模式断面図、図5は陽極酸化基板の構成を示す模式断面図、図6は陽極酸化基板の製造方法を示す斜視図である。視認しやすくするため、図中、各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0098】
光電変換素子1は、基板10上に、下部電極(裏面電極)20と光電変換半導体層30とバッファ層40と上部電極(透光性電極)50とが順次積層された素子である。光電変換半導体層30は、複数の球状粒子31が面方向及び厚み方向に配列した粒子層からなる光電変換半導体層30X(図1A)、又は複数の板状粒子32が面方向及び厚み方向に配列した粒子層からなる光電変換半導体層30Y(図1B)である。
【0099】
光電変換素子1には、短手方向断面視において、下部電極20のみを貫通する第1の開溝部61、光電変換層30とバッファ層40とを貫通する第2の開溝部62、及び上部電極50のみを貫通する第3の開溝部63が形成されており、長手方向断面視において、光電変換層30とバッファ層40と上部電極50とを貫通する第4の開溝部64が形成されている。
【0100】
上記構成では、第1〜第4の開溝部61〜64によって素子が多数のセルCに分離された構造が得られる。また、第2の開溝部62内に上部電極50が充填されることで、あるセルCの上部電極50が隣接するセルCの下部電極20に直列接続した構造が得られる。
【0101】
(基板)
本実施形態において、基板10はAlを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板である。
陽極酸化基板10は、図5の左図に示すように、Al基材11の両面側に陽極酸化膜12が形成されたものでもよいし、図5の右図に示すように、Al基材11の片面側に陽極酸化膜12が形成されたものでもよい。
【0102】
デバイスの製造過程において、AlとAlとの熱膨張係数差に起因した基板の反り、及びこれによる膜剥がれ等を抑制するには、図5の左図に示すようにAl基材11の両面側に陽極酸化膜12が形成されたものが好ましい。両面の陽極酸化方法としては、片面に絶縁材料を塗布して片面ずつ両面を陽極酸化する方法、及び両面を同時に陽極酸化する方法が挙げられる。
【0103】
陽極酸化基板10の両面側に陽極酸化膜12を形成する場合、基板両面の熱応力のバランスを考慮して、2つの陽極酸化膜12の膜厚がほぼ等しくする、若しくは光電変換層等が形成されない面側の陽極酸化膜12を他方の陽極酸化膜12よりもやや厚めとすることが好ましい。
【0104】
Al基材11としては、日本工業規格(JIS)の1000系純Alでもよいし、Al−Mn系合金、Al−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Si系合金、及びAl−Mg−Si系合金等のAlと他の金属元素との合金でもよい(「アルミニウムハンドブック第4版」(1990年、軽金属協会発行)を参照)。Al基材11には、Fe、Si、Mn、Cu、Mg、Cr、Zn、Bi、Ni、及びTi等の各種微量金属元素が含まれていてもよい。
【0105】
陽極酸化は、必要に応じて洗浄処理・研磨平滑化処理等が施されたAl基材11を陽極とし陰極と共に電解質に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで実施できる。陰極としてはカーボンやアルミニウム等が使用される。電解質としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、及びアミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
【0106】
陽極酸化条件は使用する電解質の種類にもより特に制限されない。条件としては例えば、電解質濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.005〜0.60A/cm、電圧1〜200V、電解時間3〜500分の範囲にあれば適当である。
【0107】
電解質としては、硫酸、リン酸、シュウ酸、若しくはこれらの混合液が好ましい。かかる電解質を用いる場合、電解質濃度4〜30質量%、液温10〜30℃、電流密度0.05〜0.30A/cm、及び電圧30〜150Vが好ましい。
【0108】
図6に示すように、Al基材11を陽極酸化すると、表面11sから該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、Alを主成分とする陽極酸化膜12が生成される。陽極酸化により生成される陽極酸化膜12は、多数の平面視略正六角形状の微細柱状体12aが隙間なく配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体12aの略中心部には、表面11sから深さ方向に略ストレートに延びる微細孔12bが開孔され、各微細柱状体12aの底面は丸みを帯びた形状となる。通常、微細柱状体12aの底部には微細孔12bのないバリア層(通常、厚み0.01〜0.4μm)が形成される。陽極酸化条件を工夫すれば、微細孔12bのない陽極酸化膜12を形成することもできる。
【0109】
陽極酸化膜12の微細孔12bの径は特に制限されない。表面平滑性及び絶縁特性の観点から、微細孔12bの径は好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。微細孔12bの径は10nm程度まで小さくすることが可能である。
【0110】
陽極酸化膜12の微細孔12bの開孔密度は特に制限されない。絶縁特性の観点から、微細孔12bの開孔密度は好ましくは100〜10000個/μmであり、より好ましくは100〜5000個/μmであり、特に好ましくは100〜1000個/μmである。
【0111】
陽極酸化膜12の表面粗さRaは特に制限されない。上層の光電変換層30を均一に形成する観点から、陽極酸化膜12の表面平滑性は高い方が好ましい。表面粗さRaは好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【0112】
Al基材11及び陽極酸化膜12の厚みは特に制限されない。陽極酸化基板10の機械的強度及び薄型軽量化等を考慮すれば、陽極酸化前のAl基材11の厚みは例えば0.05〜0.6mmが好ましく、0.1〜0.3mmがより好ましい。基板の絶縁性、機械的強度、及び薄型軽量化を考慮すれば、陽極酸化膜12の厚みは例えば0.1〜100μmが好ましい。
【0113】
陽極酸化膜12の微細孔12bには、必要に応じて公知の封孔処理を施してもよい。封孔処理により、耐電圧及び絶縁特性を向上させることが可能である。また、アルカリ金属を含む材料を用いて封孔を行うと、CIGS等からなる光電変換層30のアニール時にアルカリ金属、好ましくはNaが光電変換層30に拡散し、そのことにより光電変換層30の結晶性が向上し、光電変換効率が向上する場合がある。
【0114】
(電極、バッファ層)
下部電極20及び上部電極50はいずれも導電性材料からなる。光入射側の上部電極50は透光性を有する必要がある。
下部電極20の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,及びこれらの組合わせが好ましく、Moが特に好ましい。下部電極20の厚みは特に制限されず、0.3〜1.0μmが好ましい。
上部電極50の主成分としては特に制限されず、ZnO,ITO(インジウム錫酸化物),SnO,及びこれらの組合わせが好ましい。上部電極50の厚みは特に制限されず、0.6〜1.0μmが好ましい。
下部電極20及び/又は上部電極50は、単層構造でもよいし、2層構造等の積層構造もよい。
下部電極20及び上部電極50の成膜方法は特に制限されず、電子ビーム蒸着法やスパッタリング法等の気相成膜法が挙げられる。
【0115】
バッファ層40の主成分としては特に制限されず、CdS,ZnS,ZnO,ZnMgO,ZnS(O,OH) ,及びこれらの組合わせが好ましい。バッファ層40の厚みは特に制限されず、0.03〜0.1μmが好ましい。
好ましい組成の組合わせとしては例えば、Mo下部電極/CdSバッファ層/CIGS光電変換層/ZnO上部電極が挙げられる。
【0116】
光電変換層30〜上部電極50の導電型は特に制限されない。通常、光電変換層30はp層、バッファ層40はn層(n−CdS等)、上部電極50はn層(n−ZnO層等 )あるいはi層とn層との積層構造(i−ZnO層とn−ZnO層との積層等)とされる。かかる導電型では、光電変換層30と上部電極50との間に、pn接合、あるいはpin接合が形成されると考えられる。また、光電変換層30の上にCdSからなるバッファ層40を設けると、Cdが拡散して、光電変換層30の表層にn層が形成され、光電変換層30内にpn接合が形成されると考えられる。光電変換層30内のn層の下層にi層を設けて光電変換層30内にpin接合を形成してもよいと考えられる。
【0117】
(その他の構成)
ソーダライムガラス基板を用いた光電変換素子においては、基板中のアルカリ金属元素(Na元素)がCIGS層等の光電変換層に拡散し、エネルギー変換効率が高くなることが報告されている。本実施形態においても、アルカリ金属をCIGS層等の光電変換層に拡散させることは好ましい。
【0118】
アルカリ金属元素の拡散方法としては、Mo下部電極上に蒸着法またはスパッタリング法によってアルカリ金属元素を含有する層を形成する方法(特開平8−222750号公報等)、Mo下部電極上に浸漬法によりNaS等からなるアルカリ層を形成する方法(WO03/069684号パンフレット等)、Mo下部電極上に、In、Cu及びGa金属元素を含有成分としたプリカーサを形成した後このプリカーサに対して例えばモリブデン酸ナトリウムを含有した水溶液を付着させる方法等が挙げられる。絶縁性基板上にケイ酸ナトリウム等の層を形成して、アルカリ金属元素を供給する層としてもよい。Mo電極の上または下にポリモリブデン酸ナトリウムやポリタングステン酸ナトリウム等のポリ酸層を形成して、アルカリ金属元素を供給する層としてもよい。下部電極20の内部に、NaS,NaSe,NaCl,NaF,及びモリブデン酸ナトリウム塩等の1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を含む層を設ける構成としてもよい。
【0119】
光電変換素子1は必要に応じて、上記で説明した以外の任意の層を備えることができる。例えば、陽極酸化基板10と下部電極20との間、及び/又は下部電極20と光電変換層30との間に、必要に応じて、層同士の密着性を高めるための密着層(緩衝層)を設けることができる。また、必要に応じて、陽極酸化基板10と下部電極20との間に、アルカリイオンの拡散を抑制するアルカリバリア層を設けることができる。アルカリバリア層については、特開平8−222750号公報を参照されたい。
【0120】
本実施形態の光電変換素子1は、以上のように構成されている。本実施形態の光電変換素子1は本発明の光電変換半導体層30を備えたものであるので、低コストに製造することができ、従来の非真空成膜よりも高光電変換効率を得ることが可能な素子である。
【0121】
光電変換素子1は、太陽電池等に好ましく使用することができる。光電変換素子1に対して必要に応じて、カバーガラス、保護フィルム等を取り付けて、太陽電池とすることができる。
【0122】
(設計変更)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能である。
【0123】
上記実施形態では、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板10を用いる場合について説明した。
【0124】
基板としては、ガラス基板、表面に絶縁膜が成膜されたステンレス等の金属基板、及びポリイミド等の樹脂基板等の公知の基板を使用することができる。本発明の光電変換素子は、非真空プロセスで製造でき、高温熱処理プロセスも実施しないので、連続搬送系(Roll to Roll工程)により高速で製造が可能である。したがって、陽極酸化基板、表面に絶縁膜が成膜された金属基板、及び樹脂基板等の可撓性基板を用いることが好ましい。本発明は高温プロセスを実施としないので、安価で可撓性のある樹脂基板を用いることも可能である。
【0125】
熱応力による基板の反り等を抑制するためには基板とその上に形成される各層との間の熱膨張係数差が小さいことが好ましい。光電変換層及び下部電極(裏面電極)との熱膨張係数差、コスト、及び太陽電池に要求される特性等の観点から、また、大面積基板を用いる場合も、その表面全体にピンホールなく簡易に絶縁膜を形成することができことから、陽極酸化基板が特に好ましい。
【0126】
陽極酸化基板としては、実施形態で挙げた陽極酸化基板10の他に、
Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、
あるいはFeを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板を用いることも好ましい。
Fe材としては、ステンレス等が好ましい。
【実施例】
【0127】
本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
【0128】
(球状粒子P1〜P3の合成)
0℃のピリジン中で、CuIとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、20℃に温度を上げ、CuIとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーのCu(In,Ga)Se(CIGS)球状粒子を得た。反応終了後に遠心分離して、得られた球状粒子を単離した。原料組成を変えることにより、Ga濃度の異なる3数種類の球状粒子P1〜P3を得た。
球状粒子P1:Ga量が4.3at%のCIGS球状粒子、
球状粒子P2:Ga量が6.5at%のCIGS球状粒子、
球状粒子P3:Ga量が8.8at%のCIGS球状粒子。
得られた球状粒子のTEM観察を実施したところ、いずれも平均粒径0.2μmであった。粒子径の変動係数(分散度)はそれぞれ、29%(P1)、31%(P2)、35%(P3)であった。
【0129】
(球状粒子P4〜P6の合成)
0℃のピリジン中で、CuIとAgClOとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、20℃に温度を上げ、CuIとAgClOとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーの(Cu,Ag)(In,Ga)Se球状粒子を得、球状粒子P1〜P3と同様に単離した。原料組成を変えることにより、Ag濃度の異なる3数種類の球状粒子P4〜P6を得た。
球状粒子P4:Ag量が6.4at%の(Cu,Ag)(In,Ga)Se球状粒子、
球状粒子P5:Ag量が9.7at%の(Cu,Ag)(In,Ga)Se球状粒子、
球状粒子P6:Ag量が12.9at%の(Cu,Ag)(In,Ga)Se球状粒子。
得られた球状粒子のTEM観察を実施したところ、いずれも平均粒径0.2μmであった。粒子径の変動係数(分散度)はそれぞれ、32%(P4)、34%(P5)、35%(P6)であった。
【0130】
(球状粒子P7〜P9の合成)
0℃のピリジン中で、CuIとInIとAlIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、20℃に温度を上げ、CuIとInIとAlIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーのCu(In,Al)Se球状粒子を得、球状粒子P1〜P3と同様に単離した。原料組成を変えることにより、Al濃度の異なる3数種類の球状粒子P7〜P9を得た。
球状粒子P7:Al量が1.7at%のCu(In,Al)Se球状粒子、
球状粒子P8:Al量が2.6at%のCu(In,Al)Se球状粒子、
球状粒子P9:Al量が3.6at%のCu(In,Al)Se球状粒子。
得られた球状粒子のTEM観察を実施したところ、いずれも平均粒径0.2μm、粒子径の変動係数(分散度)は35%であった。
【0131】
(その他の球状粒子の合成)
球状粒子P1〜P9の合成において、20℃に温度上昇させてから添加する成分の量を変えることで平均粒径を変えることができ、例えば平均粒径0.2〜0.4μmの球状粒子を合成できた。
また、NaSeの代わりにNaSを用いることで、Seの代わりにSを含む以外は同様の組成の球状粒子を合成することができた。
【0132】
(板状粒子の合成P10〜P12)
本発明者は、非特許文献7に記載の公知の方法ではなく、新規な方法により光電変換層用の板状粒子の合成に成功した。
室温(25℃程度)で下記の溶液AとBとを体積比1:2で混合した後、撹拌しながら、60℃で反応させて、CuIn(S,Se)板状粒子P10を合成し、球状粒子P1〜P3と同様に単離した。
【0133】
溶液A:硫酸銅(0.1M)と硫酸インジウム (0.15M)の水溶液に、ヒドラジン(0.77M)と2,2’,2”−ニトリロトリエタノール(1.6M)を添加した溶液(pH=8.0に調整)。
溶液B:トータル濃度が0.9MになるNaSとNaSeの水溶液(pH=12.0に調整)。
それぞれの溶液のpHは水酸化ナトリウムで調整した。
【0134】
得られた板状粒子のTEM観察を実施したところ、表面形状は略六角形状であった。平均粒子厚みは0.4μm、平均等価円相当直径は10.2μm、等価円相当直径の変動係数は32%、アスペクト比は6.8であった。
【0135】
NaSとNaSeの組成比を変えることにより、Seの濃度の異なる3数種類の板状粒子P10〜P12を得た。
板状粒子P10:Se量が39.8at%のCuIn(S,Se)板状粒子、
板状粒子P11:Se量が35.9at%のCuIn(S,Se)板状粒子、
板状粒子P12:Se量が31.7at%のCuIn(S,Se)板状粒子。
【0136】
(その他の板状粒子の合成)
本発明者は、上記の溶液Aと溶液BのpHを変えることで、板状粒子の表面形状を変えることができることを見出した。
例えば、溶液BのpHを上記と同様12.0とした場合、溶液AのpHと板状粒子の表面形状との関係は概ね以下の通りであった。
溶液AのpH≧12のとき球状(不定形)、
溶液AのpH=9〜12のとき直方体状、
溶液AのpH=8〜9のとき六角平板状。
溶液AのpH=8、溶液BのpH=11の条件では、種々の表面形状の板状粒子が得られた。TEM表面写真を図7に示す。
【0137】
球状粒子P1〜P9、板状粒子P10〜P12について、それぞれ分散媒として日本ゼオン社のXeonexを用いて塗布剤を調製し、光電変換層の製造に供した。塗布剤中の粒子濃度は、30%とした。
【0138】
(実施例1−1)
ソーダライムガラス基板上に、RFスパッタリング法によって、Mo下部電極(裏面電極)を形成した。下部電極の厚みは約1.0μmとした。
次に、下部電極を形成した上記基板上に球状粒子P3を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P3(Ga:8.8at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P2を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P2(Ga:6.5at%)を単層で配列させた。分散媒はトルエンで溶解した後、180℃60分の加熱乾燥により除去した。これにより、2層積層粒子層からなるシングルグレーティング構造のCIGS光電変換層を形成した。
【0139】
次に、バッファ層として、積層構造の半導体膜を形成した。まず、約50nmの厚さのCdS膜を化学析出法により堆積した。化学析出法は、硝酸Cd、チオ尿素およびアンモニアを含む水溶液を約80℃に温め、上記光電変換層をこの水溶液に浸漬することにより行った。さらに、CdS膜の上に約80nmの厚さのZnO膜をMOCVD法で形成した。
【0140】
次に、MOCVD法により、上部電極(透光性電極)として約500nmの厚さのB添加ZnO膜を堆積し、さらに取出し外部電極としてAlを蒸着して、本発明の光電変換素子を得た。Air Mass(AM)=1.5、100mW/cm2の擬似太陽光を用いて光電変換効率を評価したところ、13%であった。
【0141】
(実施例1−2)
光電変換層のプロセスを下記に変更する以外は実施例1−1と同様にして、本発明の光電変換素子を得た。
下部電極を形成した基板上に球状粒子P3を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P3(Ga:8.8at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P2を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P2(Ga:6.5at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P1を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P1(Ga:4.3at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P2を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P2(Ga:0.3at%)を単層で配列させた。分散媒をトルエンで溶解した後、180℃60分の加熱乾燥により除去し、4積層粒子層からなるダブルグレーティング構造の光電変換層を形成した。実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、14%であった。
【0142】
(実施例1−3)
光電変換層のプロセスを下記に変更する以外は実施例1−1と同様にして、本発明の光電変換素子を得た。
下部電極を形成した基板上に球状粒子P6を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P6(Ag:6.4at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P5を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P5(Ag:9.7at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P4を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P4(Ag:12.9at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P5を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P5(Ag:9.7at%)を単層で配列させた。分散媒をトルエンで溶解した後、180℃60分の加熱乾燥により除去し、4積層粒子層からなるダブルグレーティング構造の光電変換層を形成した。実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、12%であった。
【0143】
(実施例1−4)
光電変換層のプロセスを下記に変更する以外は実施例1−1と同様にして、本発明の光電変換素子を得た。
下部電極を形成した基板上に球状粒子P9を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P9(Al:3.6at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P8を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P8(Al:2.6at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P7を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P7(Al:1.7at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P8を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P8(Al:2.6at%)を単層で配列させた。分散媒をトルエンで溶解した後、180℃60分の加熱乾燥により除去し、4積層粒子層からなるダブルグレーティング構造の光電変換層を形成した。実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、13%であった。
【0144】
(実施例1−5)
基材としてAl合金1050材(Al純度99.5%、0.30mm厚)に陽極酸化処理をして、基材の両面に陽極酸化膜を形成し、水洗処理及び乾燥処理を実施して、陽極酸化基板を得た。陽極酸化膜の厚みが9.0μm(そのうちバリア層の厚みが0.38μm)、微細孔の孔径が100nm前後の陽極酸化膜を形成した。
陽極酸化条件は以下の通りとした。
電解液:16℃の0.5Mシュウ酸水溶液中、直流電源、電圧40V。
ソーダライムガラス基板の代わりに上記陽極酸化基板を用いる以外は実施例1−2と同様にして、本発明の光電変換素子を得た。実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、14%であった。
【0145】
(実施例1−6)
光電変換層のプロセスを下記に変更する以外は実施例1−1と同様にして、本発明の光電変換素子を得た。
下部電極を形成した基板上に球状粒子P12を分散させた塗布剤を塗布して、板状粒子P12(Se:31.7at%)を単層で配列させ、この上に板状粒子P11を分散させた塗布剤を塗布して、板状粒子P11(Se:35.9at%)を単層で配列させ、この上に板状粒子P10を分散させた塗布剤を塗布して、板状粒子P10(Se:39.8at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P11を分散させた塗布剤を塗布して、板状粒子P11(:35.9at%)を単層で配列させた。その後、分散媒をトルエンで溶解した後、180℃60分の加熱乾燥により除去し、4積層粒子層からなるダブルグレーティング構造の光電変換層を形成した。実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、13%であった。
【0146】
(比較例1−1)
光電変換層のプロセスを変更する以外は実施例1−1と同様にして、比較用の光電変換素子を得た。
0℃の反応のみを実施した以外は球状粒子P1〜P3の合成と同様にして、CIGS球状粒子(Ga:6.5at%)を合成した。平均粒子径は15nm、粒子径の変動係数(分散度)は40%であった。球状粒子P1〜P3と同様に、分散媒として日本ゼオン社のXeonexを用いて塗布剤を調製し、光電変換層の製造に供した。
【0147】
下部電極を形成した基板上に得られた上記塗布剤を塗布した。乾燥後厚み0.1μmとなるように、塗布剤を塗布した。その後、200℃で10分間のプレ加熱を計15回実施した後、520℃で20分間の焼結を実施し、さらに180℃で10分間の酸素アニールを実施して、CIGS光電変換層を形成した。実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、11%であった。
【0148】
(比較例1−2)
米国特許6488770号明細書に記載の方法により、CIGS球状粒子(Ga:2.1at%)を合成した。平均粒子径は1.5μm、粒子径の変動係数(分散度)は29%であった。球状粒子P1〜P3と同様に、分散媒として日本ゼオン社のXeonexを用いて塗布剤を調製し、光電変換層の製造に供した。
【0149】
上記で得た球状粒子を用い、Sol. Energy Mater. Sol. Cells 87 (2005) 25-32に記載の方法に従って、光電変換素子を得た。
実施例1−1と同様に光電変換効率を評価したところ、10%であった。
【0150】
各例における主な製造条件と評価結果を表1に示す。
【0151】
【表1】

【0152】
(実施例2−1)
0℃のピリジン中で、CuIとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、20℃に温度を上げ、CuIとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、平均粒径0.2μmのCIGS球状粒子を得た。Ga量は6.5at%とした。
その後、溶媒をオレイルアミンとし、4級アンモニウム塩化物を加えて220℃で球状粒子を成長させた。得られた粒子のTEM観察を実施したところ、平均粒径0.4μm、アスペクト比3.0、粒子径の変動係数(分散度)25%であった。球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。
【0153】
スパッタ法によりMo下部電極を形成したガラス基板上に、乾燥後厚み0.1μmとなるように、上記塗布剤を塗布した。その後、250℃で60分間加熱乾燥させて、CIGS光電変換層を形成した。光電変換層の粒子充填率は52%であった。
その後、CBD法によりCdSバッファ層を形成し、MOCVD法によりB添加ZnO上部電極(透光性電極)を形成した。最後に、Al取出し外部電極を付けて、光電変換素子を作製した。光電変換効率は13%であった。
【0154】
(実施例2−2)
0℃のピリジン中で、CuIとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、100℃に温度を上げ、CuIとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーのCIGS球状粒子を得た。Ga量は6.5at%とした。得られた球状粒子のTEM観察を実施したところ、平均粒径0.3μm、アスペクト比2.5、粒子径の変動係数(分散度)53%であった。
球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。この塗布剤を用いて実施例2−1と同様のプロセスで光電変換素子を得た。光電変換層の粒子充填率は62%であり、光電変換効率は14%であった。
【0155】
(実施例2−3)
実施例2−1と同じプロセスにて平均粒径0.2μmのCIGS球状粒子を得た後、溶媒をオレイルアミンとし、4級アンモニウム塩化物を加えて240℃で粒子を成長させた。得られた球状粒子のTEM観察を実施したところ、平均粒径0.4μm、アスペクト比1.7、粒子径の変動係数(分散度)32%であった。
球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。この塗布剤を用いて実施例2−1と同様のプロセスで光電変換素子を得た。光電変換層の粒子充填率は71%であり、光電変換効率は15%であった。
【0156】
(実施例2−4)
ガラス基板の代わりに実施例1−5に記載の陽極酸化基板を用いた以外は実施例2−3と同様にして、光電変換素子を得た。光電変換効率は14%であった。
【0157】
(実施例2−5)
球状粒子P1〜P3と同様のプロセスで、Ga量の異なる下記3種類のCIGS球状粒子を得た(P21〜P23)。詳細には、0℃のピリジン中で、CuIとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、15℃に温度を上げ、CuIとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーのCu(In,Ga)Se(CIGS)球状粒子を得た。CuIとInIとGaIとNaSeの添加時間は球状粒子P1〜P3の2/3に短縮した。これらの添加時間と反応温度を変えることで、球状粒子P1〜P3と平均粒径は同一(0.2μm)であるが、アスペクト比及び変動係数(分散度)がそれぞれ以下の通りである下記3種類の球状粒子を得た。
球状粒子P21:Ga量4.3at%、アスペクト比1.4、分散度45%、
球状粒子P22:Ga量6.5at%、アスペクト比1.6、分散度51%、
球状粒子P23:Ga量8.8at%、アスペクト比1.6、分散度55%。
【0158】
球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。これらの塗布剤を用い、実施例2−1と同様のプロセスで光電変換素子を得た。光電変換層の形成プロセスは以下の通りとした。
【0159】
Mo下部電極を形成したガラス基板上に球状粒子P23を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P23(Ga:8.8at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P22を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P22(Ga:6.5at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P21を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P21(Ga:4.3at%)を単層で配列させ、この上に球状粒子P22を分散させた塗布剤を塗布して、球状粒子P22(Ga:6.5at%)を単層で配列させた。分散媒をトルエンで溶解した後、180℃60分の加熱乾燥により除去し、4積層粒子層からなるダブルグレーティング構造の光電変換層を形成した。光電変換層の粒子充填率は75%であった。得られた素子の光電変換効率は16%であった。
【0160】
(比較例2-1)
0℃のピリジン中で、CuIとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、20℃に温度を上げ、CuIとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーのCIGS球状粒子を得た。得られた粒子のTEM観察を実施したところ、平均粒径0.2μm、アスペクト比4.0、粒子径の変動係数(分散度)18%であった。球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。
【0161】
スパッタ法によりMo下部電極を形成したガラス基板上に、乾燥後厚み0.1μmとなるように、上記塗布剤を塗布した。その後、200℃で10分間のプレ加熱を計15回実施した後、520℃で20分間の焼結を実施し、さらに180℃で10分間の酸素アニールを実施して、CIGS光電変換層を形成した。光電変換層の粒子充填率は60%であった。
その後、CBD法によりCdSバッファ層を形成し、MOCVD法によりB添加ZnO上部電極(透光性電極)を形成した。最後に、Al取出し外部電極を付けて、光電変換素子を作製した。光電変換効率は12%であった。
【0162】
(実施例3−1)
光電変換層の形成プロセスにおいて、200℃10分間のプレ加熱を計15回、520℃20分間の焼結、及び180℃10分間の酸素アニールを実施する代わりに、250℃60分間の乾燥を実施した以外は、比較例2−1と同様にして、光電変換素子を得た。光電変換効率は7%であった。
【0163】
(実施例3−2)
室温(25℃程度)で下記の溶液AとBとを体積比1:2で混合した後、撹拌しながら、60℃で20分間反応させて、CuInS粒子を合成した。
溶液A:硫酸銅(0.1M)と硫酸インジウム (0.15M)の水溶液に、ヒドラジン(0.77M)と2,2’,2”−ニトリロトリエタノール(1.6M)を添加した溶液(pH=8.0に調整)。
溶液B:NaS(0.9M)の水溶液(pH=12.0に調整)。
それぞれの溶液のpHは水酸化ナトリウムで調整した。
【0164】
得られた粒子のTEM観察を実施したところ、略六角形状の板状粒子であった。平均粒子厚みは0.9μm、平均等価円相当直径は4.1μm、等価円相当直径の変動係数(分散度)は48%、アスペクト比は4.5であった。
球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。この塗布剤を用いて実施例2−1と同様のプロセスで光電変換素子を得た。光電変換層の粒子充填率は48%であり、光電変換効率は11%であった。
【0165】
(実施例3−3)
0℃のピリジン中で、CuIとInIとGaIとNaSeとを混合して、小サイズ粒子(粒子径10〜20nm程度)を生成させた後、10℃で、CuIとInIとGaIとNaSeとを徐々に添加することで、サブミクロンオーダーのCIGS球状粒子を得た。得られた球状粒子のTEM観察を実施したところ、平均粒径0.2μm、アスペクト比3.0、粒子径の変動係数(分散度)65%であった。
球状粒子P1〜P3と同様に塗布剤を調製して、光電変換層の製造に供した。この塗布剤を用いて実施例2−1と同様のプロセスで光電変換素子を得た。光電変換層の粒子充填率は47%であり、光電変換効率は8%であった。
【0166】
実施例2−1〜2−5、3−1〜3−3、及び比較例2−1の結果を表2に示す。
【0167】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の光電変換素子及びその製造方法は、太陽電池、及び赤外センサ等の用途に好ましく適用できる。
【符号の説明】
【0169】
1 光電変換素子(太陽電池)
10 陽極酸化基板
11 Al基材
12 陽極酸化膜
20 下部電極
30X,30Y,30 光電変換半導体層
31 球状粒子
32 板状粒子
40 バッファ層
50 上部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収により電流を発生する光電変換半導体層において、
複数の粒子が面方向及び厚み方向に配列した粒子層からなることを特徴とする光電変換半導体層。
【請求項2】
前記複数の粒子としてバンドギャップの異なる複数種類の粒子を含み、厚み方向のポテンシャルが分布を有していることを特徴とする請求項1に記載の光電変換半導体層。
【請求項3】
厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが複数の傾きを有していることを特徴とする請求項2に記載の光電変換半導体層。
【請求項4】
厚み方向の位置とポテンシャルとの関係のグラフが2つの傾きを有するダブルグレーティング構造であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換半導体層。
【請求項5】
前記複数の粒子のアスペクト比が3.0以下であり、粒子径の変動係数が20〜60%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換半導体層。
【請求項6】
層全体の体積に対して前記複数の粒子が占める体積充填率が50%以上であることを特徴する請求項1〜5に記載の光電変換半導体層。
【請求項7】
主成分が、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換半導体層。
【請求項8】
主成分が、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることを特徴とする請求項7に記載の光電変換半導体層。
【請求項9】
主成分が、
Cu及びAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることを特徴とする請求項8に記載の光電変換半導体層。
【請求項10】
前記複数の粒子として、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素のうち少なくとも1種の元素の濃度の異なる複数種類の粒子を含み、厚み方向のポテンシャルが分布を有していることを特徴とする請求項8又は9に記載の光電変換半導体層。
【請求項11】
前記複数の粒子は球状粒子及び/又は板状粒子であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光電変換半導体層。
【請求項12】
250℃を超える熱処理を経ずに製造されたものであることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の光電変換半導体層。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の光電変換半導体層の製造方法であって、
基板上に、前記複数の粒子、若しくは前記複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する工程を有することを特徴とする光電変換半導体層の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の光電変換半導体層の製造方法であって、
基板上に、前記複数の粒子及び分散媒を含む塗布剤を塗布する工程と、
前記分散媒を除去する工程とを有することを特徴とする光電変換半導体層の製造方法。
【請求項15】
前記分散媒を除去する工程は250℃以下の工程であることを特徴とする請求項14に記載の光電変換半導体層の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれかに記載の光電変換半導体層と該光電変換半導体層で発生した電流を取り出す電極とを備えたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項17】
可橈性基板を用いた素子であり、該可橈性基板上に前記光電変換半導体層と前記電極とを備えたことを特徴とする請求項16に記載の光電変換素子。
【請求項18】
前記可橈性基板は、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板であることを特徴とする請求項17に記載の光電変換素子。
【請求項19】
前記可橈性基板は、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板であることを特徴とする請求項17に記載の光電変換素子。
【請求項20】
前記可橈性基板は、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板であることを特徴とする請求項17に記載の光電変換素子。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれかに記載の光電変換素子を備えたことを特徴とする太陽電池。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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