光電変換素子、光電変換素子モジュール、光電変換素子モジュールの製造方法、電子機器および建築物
【課題】色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子を用いた両面に光電変換部を有する低コストな光電変換素子モジュールおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】光電変換素子モジュールは互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子10を有する。光電変換素子10は、第1の多孔質電極2を有する第1の透明導電性基板1と、第2の多孔質電極2を有する第2の透明導電性基板5とが互いに対向しており、その間に対極3が設けられ、それぞれの間には第1の電解質層4と第2の電解質層7を有する。端部3aは第1の透明導電性基板1に対して突出しており、端部1aおよび5aが対極3に対して突出している。一つの色素増感光電変換素子10の端部1a上および端部5a上にそれぞれ互いに対向して設けられた導電材9と、もう一つの色素増感光電変換素子10の端部3aとが、互いに対向して設けられた2つの導電材9が端部3aを挟持する形で接続する。
【解決手段】光電変換素子モジュールは互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子10を有する。光電変換素子10は、第1の多孔質電極2を有する第1の透明導電性基板1と、第2の多孔質電極2を有する第2の透明導電性基板5とが互いに対向しており、その間に対極3が設けられ、それぞれの間には第1の電解質層4と第2の電解質層7を有する。端部3aは第1の透明導電性基板1に対して突出しており、端部1aおよび5aが対極3に対して突出している。一つの色素増感光電変換素子10の端部1a上および端部5a上にそれぞれ互いに対向して設けられた導電材9と、もう一つの色素増感光電変換素子10の端部3aとが、互いに対向して設けられた2つの導電材9が端部3aを挟持する形で接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換素子、光電変換素子モジュール、光電変換素子モジュールの製造方法、電子機器および建築物に関する。本開示は、より詳細には、例えば色素増感太陽電池モジュールに適用して好適な光電変換素子モジュールおよびその製造方法ならびに光電変換素子モジュールを用いる電子機器および建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
【0003】
従来より、太陽電池としては、単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池および非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池が主に用いられている。
【0004】
一方、1991年にグレッツェルらが提案した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を得ることができ、しかも従来のシリコン系太陽電池とは異なり製造の際に大掛かりな装置を必要とせず、低コストで製造することができることなどにより注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
この色素増感太陽電池は、一般的に、光増感色素を結合させた酸化チタンなどからなる多孔質電極と白金などからなる対極とを対向させ、それらの間に電解液からなる電解質層が充填された構造を有する。電解液としては、ヨウ素やヨウ化物イオンなどの酸化・還元種を含む電解質を溶媒に溶解したものが多く用いられる。
【0006】
ところで、一般的に、太陽電池の実際の使用においては複数の太陽電池を組み合わせた形態であるモジュールという単位で使用されることが一般的である。太陽電池モジュールは、例えば、建築物や電子機器などに装備し使用される。その中でも、特に、太陽電池モジュールを窓などの建材一体型として利用する場合に太陽光を受ける面と室内光を受ける面が存在することになる。太陽電池モジュールに照射される光を無駄なく発電電力として利用するためには、太陽電池モジュールの太陽光を受ける面と室内光を受ける面との両面を発電可能とすればよい。そこで、従来においては、完成した太陽電池同士を張り合わせて両面を受光面としたもの、太陽電池自体を透明にして両面に光が透過可能としたもの、これらを組み合わせたものなどを太陽電池モジュールとしていた。しかしながら、太陽電池同士を張り合わせて両面を受光面とするのは、製造コストが非常に高く、また、太陽電池自体を透明にして両面に光が透過可能とするのは、発電効率を大幅に犠牲にすることになる。
【0007】
これらの問題を解決するために、対極を一対の光電極により挟まれる形で設けた、タンデム型の色素増感太陽電池が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、このタンデム型の色素増感太陽電池を太陽電池モジュールとして使用するためには色素増感太陽電池同士を繋ぐタブ線などが必要となる。特に、色素増感太陽電池においては電極の取り出しが、正極、負極ともに同じ方向を向いているので、素子を直列に結線する場合のタブ線の引き回しがシリコン系太陽電池と比較して複雑となる。このようなことから、色素増感太陽電池のモジュール化には施工性の悪さやコスト高という新たな課題が生じる。
【0008】
また、一般的に、太陽電池の能力を表す指標として発電効率が挙げられる。これは単位面積当たりの発電電力を表すもので、実際の使い方においては複数の太陽電池を組み合わせた形態であるモジュールという単位で比較されることが一般的である。このとき、一つのモジュールを構成するに際して、モジュール面積のうち発電に寄与する部分ができるだけ多い方が光電変換効率の向上を図る上では有利となる。つまり、隙間なく太陽電池を敷き詰めることが光電変換効率の向上のポイントといえる。
図29に、複数の太陽電池を配線材で接続した従来の太陽電池モジュールの一例を示す。図29に示すように、基板100上に複数の太陽電池101が配置され、これらの太陽電池101が配線材102により互いに電気的に直列に接続されている。配線材102は互いに隣接する二つの太陽電池101の一つの太陽電池101のアノード電極(図示せず)ともう一つの太陽電池101のカソード電極(図示せず)とを接続するように設けられている。実際に、特許文献1に記載されたタンデム型の色素増感太陽電池を太陽電池101として太陽電池モジュールとすると、太陽電池101には、アノード電極間を接続しているねじや、リップなどの発電に寄与しない無効な面積が相当存在していることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2007−521668号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature,353,p.737-740,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1で提案されたタンデム型太陽電池をモジュール化する場合には、太陽電池をタブ線などの配線材で接続することから、互いに隣接する二つの太陽電池の間には配線の取り回しのための大きな隙間ができる。この大きな隙間は発電に寄与しない無効な面積となる。このため、従来のタブ線などの配線材で複数の太陽電池を接続する方法は、発電効率を高めるという観点からは最適な接続方法とは言えなかった。
【0012】
さらに、複数の両面型太陽電池を接続する場合あっては、配線の取り回しは更に複雑となり、上述した問題は更に大きくなる。
【0013】
そこで、本開示が解決しようとする課題は、色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子などの光電変換素子において、両面から入射する光を有効に発電利用可能で、構造が簡易かつ低コスト化を図ることができる両面型の光電変換素子およびその製造方法を提供することである。
【0014】
本開示が解決しようとする他の課題は、両面型の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールにおいて、光電変換素子の脱着が容易で、発電に寄与する有効面積の大幅な増加を図ることができ、しかも低コスト化を図ることができる両面型の光電変換素子モジュールおよびその製造方法を提供することである。
【0015】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた光電変換素子モジュールを用いた高性能の電子機器を提供することである。
【0016】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた光電変換素子モジュールを用いた建築物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本開示は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子である。
【0018】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールである。
【0019】
また、本開示は、
一方の主面に第1の多孔質電極が設けられた第1の透明導電性基板の上記第1の多孔質電極が設けられた面と、一方の主面に第2の多孔質電極が設けられた第2の透明導電性基板の上記第2の多孔質電極が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に対極を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間に第1の電解質層と第2の電解質層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法である。
【0020】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部ともう一つの光電変換素子の上記対極の突出部とが導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法である。
【0021】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器である。
【0022】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物である。
【0023】
本開示において、光電変換素子の平面形状は特に限定されないが、典型的には、長方形の平面形状を有し、上記の導電材は、光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するが、これに限定されるものではない。
【0024】
導電材は、典型的には少なくとも一種類の導電性材料からなるが、抵抗の低減を図る観点からは導電性材料は体積抵抗率が低いものが好ましく、具体的には、導電材の20℃における体積抵抗率が60(μΩ・cm)以下であることが好ましく、40(μΩ・cm)以下であることがより好ましく、20(μΩ・cm)以下であることが最も好ましい。これを満たす導電性材料としては、好適には金属材料である。金属材料は単体金属または合金により形成することができ、金属材料を、具体的に挙げると、例えば、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、アンチモン(Sb)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなり、合金としては、上記に挙げた材料の二元以上の合金などが挙げられる。また、光電変換素子同士の接続において、導電材がある程度の変形を要するという観点からは、導電性材料は柔らかい材質のものが好ましく、具体的には、導電材の20℃におけるビッカース硬度が、40(Hv)以下であることが好ましく、25(Hv)以下であることがより好ましく、15(Hv)以下であることが最も好ましい。ビッカース硬度は、負荷荷重50g、負荷時間15秒における値である。これらの条件を満たす材料は、具体的には、例えば、はんだ、銀、金、鉛、銀合金、金合金、鉛合金、スズ合金などが挙げられる。また、導電材は、上記に挙げた材料の炭化物、窒化物、ホウ化物などであってもよい。また、導電材は、導電性カーボンであってもよく、具体的には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、導電材は、導電性高分子であってもよく、具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。導電材は、必要に応じて、互いに異なる導電材からなる二層以上の導電層を積層した多層構造としてもよい。また、導電材は上記に挙げた材料などからなる少なくとも一種類の導電性粒子を樹脂などに混合させた導電性フィラー、上記に挙げた材料を含有する導電性フィルムなどであってもよいが、上記に挙げたものに限定されるものではない。
【0025】
光電変換素子は、典型的には、多孔質電極に光増感色素が結合(吸着)した色素増感光電変換素子である。この場合、光電変換素子の製造方法は、多孔質電極に光増感色素を結合(吸着)させる工程を有する。この多孔質電極は、典型的には、半導体からなる微粒子により構成される。半導体は、好適には、酸化チタン(TiO2 )、取り分けアナターゼ型のTiO2 を含む。
【0026】
第1の透明導電性基板は、透明基板の一方の主面の少なくとも一部に透明導電層が設けられている構成を有する。第1の透明導電性基板の透明基板上に設けられる透明導電層は導電性の薄膜であって、シート抵抗が小さいほど好ましい。具体的には500Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがさらに好ましい。これは、シート抵抗が100Ω/□を超えると、透明導電層の内部抵抗が著しく上昇するからである。また薄膜である透明導電層の厚さは、100nm以上500nm以下の範囲であることが好ましい。これは、厚さが100nmよりも薄いと表面抵抗値および内部抵抗が上昇し、500nmを超えると透明導電層に亀裂が入りやすくなるためである。また、透明導電層を構成する材料としては公知の材料を用いることができ、必要に応じて選択され、典型的には、金属酸化物であって、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO2(FTO)、酸化スズ(IV)SnO2、酸化亜鉛(II)ZnO、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)などが挙げられるが、透明導電層を構成する材料は、これらに限定されるものではなく、金属、鉱物の薄膜でもよく、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)などでもよいが、透明導電層を構成する材料は、これらに限定されない。また、上記で挙げたもの二種類以上を組み合わせて用いることもできる。このことは、第2の透明導電性基板5においても同様である。
【0027】
また、第1の透明導電性基板1は、対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出していることが好ましく、特に、対極の突出部を有する端部の反対側の端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出していることが好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の透明導電性基板5についても同様であり、対向する第1の透明導電性基板1の突出部の長さと第1の透明導電性基板5の突出部の長さとが等しいことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0028】
第1の多孔質電極としては、いわゆるコア−シェル構造の微粒子により構成されたものを用いてもよい。この多孔質電極としては、好適には、金属からなるコアとこのコアを取り巻く金属酸化物からなるシェルとからなる微粒子により構成されたものが用いられる。このような多孔質電極を用いると、この多孔質電極と対極との間に電解質層を設けた場合、電解液の電解質が金属/金属酸化物微粒子の金属からなるコアと接触することがないことから、電解質による多孔質電極の溶解を防止することができる。このため、金属/金属酸化物微粒子のコアを構成する金属として、従来使用が困難であった、表面プラズモン共鳴の効果が大きい金、銀、銅などを用いることができ、光電変換において表面プラズモン共鳴の効果を十分に得ることができる。また、電解液の電解質としてヨウ素系の電解質を用いることができる。金属/金属酸化物微粒子のコアを構成する金属としては、白金、パラジウムなどを用いることもできる。金属/金属酸化物微粒子のシェルを構成する金属酸化物としては使用する電解質に溶解しない金属酸化物が用いられ、必要に応じて選ばれる。このような金属酸化物としては、好適には、酸化チタン(TiO2 )、酸化スズ(SnO2 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )および酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属酸化物が用いられるが、これらに限定されない。例えば、酸化タングステン(WO3 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )などの金属酸化物を用いることもできる。微粒子の粒径は適宜選ばれるが、好適には1nm以上500nm以下である。また、微粒子のコアの粒径も適宜選ばれるが、好適には1nm以上200nm以下である。これは、第2の多孔質電極においても同様である。
【0029】
光電変換素子モジュールを構成する複数の光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する主面の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極と対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子であってもよいし、互いに隣接する二つの光電変換素子以外の一つまたは複数の光電変換素子がこれと異なる構成を有するものであってもよい。
【0030】
光電変換素子は、最も典型的には、太陽電池として構成される。光電変換素子は、太陽電池以外のもの、例えば光センサーなどであってもよいが、これらに限定されるものではなく、負極と正極とを有し光によって駆動する素子であれば基本的にはどのようなものであってもよい。
【0031】
光電変換素子モジュールは、最も典型的には、太陽電池モジュールとして構成される。ただし、光電変換素子モジュールは、太陽電池モジュール以外のもの、例えば光センサーモジュールなどであってもよい。
【0032】
電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品などである。この場合、光電変換素子は、例えばこれらの電子機器の電源として用いられる太陽電池である。
【0033】
建築物は、典型的にはビルディング、マンションなどの大型建築物であるが、これに限定されず、外壁面を有する建築された構造物であれば、基本的にはどのようなものであってもよい。建築物は、具体的には、例えば、戸建住宅、アパート、駅舎、校舎、庁舎、競技場、球場、病院、教会、工場、倉庫、小屋、車庫、橋などが挙げられ、特に、少なくとも1つの窓部(例えばガラス窓)あるいは採光部を有する建築された構造物であることが好ましいが、建築物は上記に挙げたものに限定されるものではない。
【0034】
建築物に設けられる光電変換素子および/または複数の光電変換素子が電気的に接続されている光電変換素子モジュールのうち、窓部あるいは採光部などに設けられるものは、2枚の透明板の間に挟持し、必要に応じて固定して構成することが好適であって、典型的には、光電変換素子および/または光電変換素子モジュールを2枚のガラス板の間に組み込み必要に応じて固定することによって構成される。
【0035】
本技術は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子を電気的に直列に接続する場合に限定されない。すなわち、本技術は、透明導電性基板と導電性基板との間に光電変換層を有する各種の光電変換素子を電気的に直列に接続する場合に適用することができ、具体的には次の通りである。
【0036】
すなわち、本開示は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、
第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子である。
【0037】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、 互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、
第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールである。
【0038】
また、本開示は、
一方の主面に透明導電層が設けられた第1の透明導電性基板の上記透明導電層が設けられた面と、一方の主面に透明導電層が設けられた第2の透明導電性基板の上記透明導電層が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、
上記第1の透明導電性基板と第2の透明導電性基板との間に導電性基板を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、
第1の透明導電性基板と上記導電性基板との間および第2の透明導電性基板と上記導電性基板との間に第1の光電変換層と第2の光電変換層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法である。
【0039】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、 互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、
第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対しても突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において、一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の突出部とを上記導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法である。
【0040】
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する側にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、導電性基板の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板は、上記導電性基板の突出部以外の少なくとも一部が上記導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器である。
【0041】
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する側にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、導電性基板の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板は、上記導電性基板の突出部以外の少なくとも一部が上記導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物である。
【0042】
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の対向する側にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有する光電変換素子には、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と対極との間に、それぞれ第1の電解質層および第2の電解質層とを有する光電変換素子のほかに、例えば、第1の光電変換層および第2の光電変換層としてp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合を用いる光電変換素子や光電変換層として有機半導体層を用いる光電変換素子などが含まれる。光電変換素子によっては、透明導電性基板および導電性基板の一方または双方が光電変換層に対する電極の役割を果たす。その他のことは、その性質に反しない限り、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と対極との間に、それぞれ第1の電解質層および第2の電解質層とを有する光電変換素子を用いる上記の光電変換素子モジュール、光電変換素子モジュールの製造方法および電子機器に関連して説明したことが成立する。
【0043】
上述の本開示によれば、光電変換素子を両面に発電素子を配置し対極を共通な構成としたので、簡易な構成で両面から入射する光を有効に発電利用可能することができるとともに、低コスト化を図ることができる。さらに、両面に受光部を有する光電変換素子の透明導電性基板の一端部ともう一つの両面に受光部を有する光電変換素子の光電変換素子の対極の一端部とを接続する構成としたので、接続に配線部材を必要としない。このことにより、従来と異なり、光電変換素子モジュールにおいて配線のための無効な面積が発生しない。また、光電変換素子同士の接続に必要なものは透明導電性基板に設けられた導電材だけであり、取り回しの為に配線を長くする必要が無いので配線抵抗が低減する。さらに、配線抵抗低減のために一般的に実施されている高コストの方法を用いる必要もないので、接続コストの大幅な低減が可能である。
【発明の効果】
【0044】
本開示によれば、色素増感光電変換素子やその他の光電変換素子において、簡易な構造で低コストに製造することができ、両面から入射する光を有効に発電利用可能とすることができる。さらに、色素増感光電変換素子やその他の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールの有効面積の大幅な増加を図ることができ、しかも接続コストの大幅な低減を図ることができる。そして、この優れた光電変換素子モジュールを用いることにより、高性能の電子機器および建築物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図2】第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図である。
【図3】第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図である。
【図4】第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図5】第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図である。
【図6】第3の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図7】第4の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図8】第5の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図9】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図および断面図である。
【図10】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図11】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図12】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図13】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図14】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図15】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図16】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図17】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図18】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図19】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図および断面図である。
【図20】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図21】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法を説明するための断面図である
【図22】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの設置後における素子の脱着を説明するための断面図である
【図23】第8の実施の形態による光電変換素子を示す断面図である。
【図24】第8の実施の形態による光電変換素子モジュールを構成する光電変換素子の別の具体例を示す断面図である。
【図25】第9の実施の形態による光電変換素子を示す断面図である。
【図26】第10の実施の形態による光電変換素子を示す断面図である。
【図27】第11の実施の形態による光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図28】第12の実施の形態による光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図29】従来の太陽電池モジュールを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
2.第2の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
3.第3の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
4.第4の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
5.第5の実施の形態(色素増感光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
6.第6の実施の形態(色素増感光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
7.第7の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
8.第8の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
9.第9の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
10.第10の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
11.第11の実施の形態(光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
12.第12の実施の形態(光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
【0047】
<1.第1の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図1Aは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。図1Bは第3の実施の形態による色素増感光電変換素子10の図3Aに直交する方向の色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
【0048】
図1Aに示すように、この色素増感光電変換素子10は、対極3の両面に第1の色素増感光電変換部および第2の色素増感光電変換部を有する両面型の色素増感光電変換素子であって、対極3の端部3aの少なくとも一部は、透明導電性基板より突出し、透明導電性基板の端部のうち対極3が突出した端部とは逆側の端部の少なくとも一部は、対極3よりも突出している。
【0049】
第1の色素増感光電変換部は、第1の多孔質電極2と、対極3の第1の触媒層3cとの間に第1の電解質層4が設けられている構成を有する。また、第2の色素増感光電変換部は、第1の多孔質電極6と、対極3の第2の触媒層3dとの間に第2の電解質層7が設けられている構成を有する。
【0050】
第1の多孔質電極2は、第1の透明導電性基板1の透明導電層1cの側の少なくとも一部に設けられ、第2の多孔質電極6は、第2の透明導電性基板5の透明導電層1cの側の少なくとも一部に設けられる。第1の透明導電性基板1と第2の多孔質電極6とは、それぞれの多孔質電極同士が互いに対向するように設けられ、その間に一定間隔を置いて対極3が設けられる。第1の多孔質電極2と対極3との間および第2の多孔質電極2と対極の間には、それぞれ電解液が充填された第1の電解質層4と第2の電解質層7とが設けられている。対極3の端部3aは、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出している。また、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部3aが突出している端部と反対側の端部である端部1aおよび端部5aが対極3に対して突出している。光は、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5にそれぞれ入射する。
【0051】
対極3は、金属基板3b上の、一方の主面の少なくとも一部に第1の触媒層3cが設けられ、もう一方の主面の少なくとも一部に第2の触媒層3dが設けられる。第1の触媒層3と第1の多孔質電極2とは互いに対向するように設けられている、第2の触媒層3dも同様に第2の多孔質電極6と対向して設けられている。また、対極3の端部3aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出する場所は、色素増感光電変換素子10の、側面の任意の場所の少なくとも一部であればよい。また、第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aが対極3から突出する場所は、対極3の端部3aが突出している場所に対向する場所であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、色素増感光電変換素子10の側面の任意の位置のうち対極3の端部3aが突出している場所以外の少なくとも一部であればよい。
【0052】
第1の多孔質電極2と第1の対極3との間、第2の多孔質電極6と第2の対極3との間には電解液などが充填されており、これらがそれぞれ第1の電解質層4および第2の電解質層7を形成している。第1の透明導電性基板と対極3との間、第2の透明導電性基板と対極3との間および/または第1の透明導電性基板と第2の透明導電性基板との間には、第1の電解質層4と、第2の電解質層7とをそれぞれ囲むようにして封止材8が設けられている。
【0053】
第1の多孔質電極2と対極3との間隔は、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の多孔質電極2と対極3との間隔においても同様である。第1の多孔質電極2および第2の多孔質電極6には、それぞれ一種又は複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。
【0054】
また、第1の透明導電性基板1を構成する透明基板1bと対極3を構成する金属基板3bとの距離は、例えば、30μm以上100μm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の透明導電性基板5を構成する透明基板5bと対極3を構成する金属基板3bとの距離も同様である。
【0055】
第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とは、好適には、互いにほぼ同じ大きさの長方形の形状を有し、平行かつ平行線に関し線対称な位置に設けられるが、これに限定されるものではない。第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5と、対極3とは、対極3の端部3aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出するように設けられ、第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aとが対極3に対して突出するような配置で設けられる。具体的には、例えば、第1の透明導電性基板1、第2の透明導電性基板5および対極3のそれぞれの主面が同じ大きさである場合には、それらの面に平行な方向に互いにずれて配置される。そうすると、対極3の一方の端部3aが素子本体から突出し、対極3の端部3aとは反対方向の、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aが対極3に対してそれぞれ突出する。端部1aの透明導電層1c上および端部5aの透明導電層5c上には、それぞれに少なくとも1つの銀などからなる電極が一定間隔を置いて互いに対向して設けられ、この場合においては導電材9が設けられる。
【0056】
対極3の端部3aの、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から突出する部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第1の透明導電性基板1の端部1aの対極3から突出している部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第2の透明導電性基板5の端部5aの対極3から突出している部分の長さは1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、対向する第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aとの突出部の長さは等しいことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0057】
導電材9は、色素増感光電変換素子10の一辺に平行にほぼその全長に渡って延在する長尺形状を有する。また、導電材9は、好適には、例えば、対極3の断面長手方向に関して線対称な位置にそれぞれ設けられるが、これに限定されるものではない。導電材9の厚さは、30μm以上1000μm以下であることが好ましく、30μm以上500μm以下であることがより好ましく、30μm以上100μm以下であることが最も好ましい。また、互いに対向して設けられた導電材9の間隔は、例えば、対極3の金属基板3bの断面短手方向の長さの85%以上99%以下であることが好ましく、90%以上99%以下であることがより好ましく、95%以上99%以下であることが最も好ましい。互いに対向して設けられた導電材9の具体的な間隔としては、例えば、0.3mm以上6mm以下であることが好ましく、0.3mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上4mm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、図1Bに示すように、図1Aに示した色素増感光電変換素子10の断面とは直交する方向の断面においては、第1の透明導電性基板1の両側の端部1dおよび1eと第2の透明導電性基板5の両側の端部5dおよび5eとが、対極3に対して突出しており、突出部には上述したものと同様に導電材9が設けられている。第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の上記突出部は、いずれか一方の対向する端部のみであってもよい。
【0059】
導電材9は、上記に挙げた導電性材料を適宜選択して構成することができる。特に、導電材9を厚く構成する場合においては、導電材9を多層構造とすることが好ましい。
【0060】
第1の多孔質電極2としては、典型的には、半導体微粒子を焼結させた多孔質半導体層が用いられる。光増感色素はこの半導体微粒子の表面に結合(吸着)している。半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する半導体などを用いることができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体であることが好ましい。具体的には、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化スズ(SnO2 )などの半導体が用いられる。これらの半導体の中でも、TiO2 、取り分けアナターゼ型のTiO2 を用いることが好ましい。ただし、半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて、二種以上の半導体を混合または複合化して用いることができる。また、半導体微粒子の形態は粒状、チューブ状、棒状などのいずれであってもよい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0061】
上記の半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1nm以上200nm以下が好ましく、特に好ましくは5nm以上100nm以下である。また、半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を混合し、この粒子で入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均サイズは20nm以上500nm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0062】
第1の多孔質電極2は、できるだけ多くの光増感色素を結合させることができるように、半導体微粒子からなる多孔質半導体層の内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましい。このため、第1の多孔質電極2を第1の透明導電性基板1の上に形成した状態での実表面積は、第1の多孔質電極2の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。この比に特に上限はないが、通常1000倍程度である。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0063】
一般に、第1の多孔質電極2の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積に保持することができる光増感色素の量が増加するため、光吸収率が高くなる。一方、第1の多孔質電極2の厚さが増加すると、光増感色素から第1の多孔質電極2に移行した電子が第1の透明導電性基板1に達するまでに拡散する距離が増加するため、第1の多孔質電極2内での電荷再結合による電子の損失も大きくなる。従って、第1の多孔質電極2には好ましい厚さが存在するが、この厚さは一般的には0.1μm以上100μm以下であり、1μm以上50μm以下であることがより好ましく、3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0064】
第1の電解質層4を構成する電解液としては、酸化還元系(レドックス対)を含む溶液が挙げられる。酸化還元系としては、適切な酸化還元電位を有する物質であれば、特に制限はない。具体的には、酸化還元系としては、例えば、ヨウ素(I2 )と金属または有機物のヨウ化物塩との組み合わせや、臭素(Br2 )と金属または有機物の臭化物塩との組み合わせなどが用いられる。金属塩を構成するカチオンは、例えば、リチウム(Li+ )、ナトリウム(Na+ )、カリウム(K+ )、セシウム(Cs+ )、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)などである。また、有機物塩を構成するカチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、イミダゾリウムイオン類などの第四級アンモニウムイオンが好適なものであり、これらを単独に、あるいは二種以上を混合して用いることができる。このことは、第2の電解質層7においても同様である。
【0065】
第1の電解質層4を構成する電解液としては、上記のほかに、コバルト、鉄、銅、ニッケル、白金などの遷移金属からなる有機金属錯体の酸化体・還元体の組み合わせ、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオールとアルキルジスルフィドとの組み合わせなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノンとキノンとの組み合わせなどを用いることもできる。このことは、第2の電解質層7においても同様である。
【0066】
第1の電解質層4を構成する電解液の電解質としては、上記の中でも特に、ヨウ素(I2 )と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、イミダゾリウムヨーダイドなどの第四級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M以上10M以下が好ましく、さらに好ましくは0.2M以上3M以下である。ヨウ素(I2 )または臭素(Br2 )の濃度は0.0005M以上1M以下が好ましく、さらに好ましくは0.001M以上0.5M以下である。このことは、第2の電解質層7においても同様である。
【0067】
電解液の電解質としては、上記の中でも特に、ヨウ素(I2 )と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、イミダゾリウムヨーダイドなどの第4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好適なものである。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M以上10M以下が好ましく、さらに好ましくは0.2M以上3M以下である。ヨウ素I2 または臭素Br2 の濃度は0.0005M以上1M以下が好ましく、さらに好ましくは0.001M以上0.5M以下である。また、開放電圧や短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることもできる。
【0068】
電解液を構成する溶媒としては、一般的には、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが用いられる。
【0069】
電解液を構成する溶媒としてはイオン液体を用いてもよく、こうすることで電解液の揮発の問題を改善することができる。イオン液体としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。
【0070】
第1の多孔質電極2に結合させる光増感色素は、増感作用を示すものであれば特に制限はなく、有機金属錯体、有機色素、金属・半導体ナノ粒子などを用いることができるが、この第1の多孔質電極2の表面に吸着する酸官能基を有するものが好ましい。この光増感色素は、一般的には、カルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。光増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、トリフェニルメタン系色素、インドリン系色素、ペリレン系色素、ポリチオフェンなどのπ共役系高分子やそのモノマーの2量体以上20量体以下、CdS、CdSeなどの量子ドットなどが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、光増感色素は、これらに限定されるものではない。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0071】
光増感色素の第1の多孔質電極2への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに第1の多孔質電極2を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を第1の多孔質電極2上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0072】
第1の多孔質電極2に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて第1の多孔質電極2の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0073】
第1の触媒層3cの材料としては、導電性物質または還元反応に対する触媒作用を有する構成であれば基本的にはどのようなものであってもよいが、絶縁性材料の、第1の電解質層4に面している側に導電層が形成されていれば、これも用いることが可能である。第1の触媒層3cの材料としては、電気化学的に安定な材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、導電性ポリマーなどを用いることが望ましい。
【0074】
特にカーボンを用いる場合には、第1の触媒層3cは、カーボンと無機バインダとを有する構成が好適である。カーボンは、炭素単体からなる物質であれば基本的にはどのようなものであってもよい。カーボンは、好適には、カーボン粒子が挙げられる。カーボン粒子の具体例としては、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは比表面積の大きなものが好適である。また、カーボンブラックは電気電導率の高いものが好適である。また、カーボンブラックはストラクチャ構造を形成しやすいものが好適である。また、カーボンブラックの一次粒子径の平均粒径は、3nm以上40nm以下であることが好ましく、3nm以上24nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることが最も好ましい。カーボンブラックは、具体的には、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられ、この中でも安価で比表面積の大きいケッチェンブラックが好適であるが、カーボンブラックはこれらのものに限定されるものではない。また、カーボンは上記で挙げたものの他に、線状または棒状のカーボン、グラファイト、黒鉛、アモルファスカーボン(ガラス状カーボン)、カーボン繊維、活性炭、石油コークス、C60 、C70 などのフラーレン類、単層または多重層のカーボンナノチューブなどであってもよい。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0075】
無機バインダは、電解質に侵されず、電気化学的に安定であり、カーボンを結着できる無機材料であれば基本的にはどのようなものであってもよく、具体的には、金属半導体、金属酸化物、ガラス組成物などであって、金属半導体であれば、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)などであって、金属酸化物であれば、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化シリコン(SiO2)、スピネル(MgAl2O4)などであって、ガラス組成物であれば、例えば、ガラスフリット、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)などが挙げられる。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0076】
カーボンと無機バインダとの含有量の比率は特に限定されるものではないが、触媒層6の全体質量を100%としたときに、無機バインダが10%以上60%以下含有されていることが好適であって、15%以上35%以下含有されていることがより好適である。触媒層6に含有される無機バインダが10%より少ないと触媒層6の結着力が著しく低くなってしまうからである。また触媒層6に含有される無機バインダが60%を超えると、触媒層6中のカーボンが減少することで触媒活性点が減少し、還元反応における触媒作用が低下し、ひいては光電変換効率の低下を招いてしまうからである。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0077】
また、第1の触媒層3cでの還元反応に対する触媒作用を向上させるために、第1の電解質層4に接している第1の触媒層3cの表面は、微細構造が形成され、実表面積が増大するように形成されていることが好ましい。例えば、第1の触媒層3cの表面は、白金であれば白金黒の状態に、導電性カーボンであれば多孔質カーボンの状態に形成されていることが好ましい。白金黒は、白金の陽極酸化法や塩化白金酸処理などによって、また多孔質カーボンは、導電性カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法によって形成することができる。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0078】
金属基板3bの材料としては、金属であれば任意のものを用いることができ、特に導電性に優れたものであることが好適である。金属は、金属単体、合金などが挙げられ、金属単体であれば、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、合金であれば、上記で挙げた金属材料の二元合金、三元合金などが挙げられ、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金など挙げられる。特に、上記で挙げた金属の中でも耐電解液性を有するものが好ましく、典型的には、チタン(Ti)およびその合金などを材料として用いるが、金属基板3bの材料は、これらのものに限定されるものではない。また、金属基板3bの板厚は0.3mm以上6mm以下であることが好ましく、0.3mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上4mm以下であることが最も好ましいが、これらのものに限定されるものではない。
【0079】
封止材6の材料としては、耐光性、絶縁性、防湿性などを備えた材料を用いることが好ましい。封止材の材料の具体例を挙げると、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、各種熱融着フィルムなどである。
【0080】
次に、この色素増感光電変換素子10の具体的に形態例について説明する。
【0081】
図2A〜Cおよび図3A〜Bは、色素増感光電変換素子10の具体的な形態の例を第2の透明導電性基板5の主面上方から見た平面図である。図2A〜Cに示すように、この例においては、長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出しており、それ以外の少なくとも一辺は、対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が突出している形態を有する。
【0082】
図3A〜Bに示すように、この例においては、主面が長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する二辺に渡る部分から対極3が突出しており、それ以外の少なくとも一辺、典型的には対極3の突出部とは反対側の隣接する二辺の少なくとも一辺は、対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が突出している形態を有するが、色素増感光電変換素子10の形態は上記のものには限定されず、適宜形態を選択することができ、具体的には、例えば、円形、楕円形、雲形、星形、n角形(n≧3)などであってもよい。
【0083】
また、第1の多孔質電極2、第1の触媒層3および第1の電解質層4で構成される第1の色素増感光電変換部と、第2の多孔質電極6、第2の触媒層3dおよび第2の電解質層7とで構成される第2の色素増感光電変換部とは、同一の材料、構成であっても良いし、別の材料、構成であってもよく、使用用途に応じて、上記に挙げた材料、構成などから適宜選択される。また、第1の色素増感光電変換部を
【0084】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子の動作について説明する。この説明においては、光が第1の透明導電性基板1のみに入射したことを想定する。
【0085】
この色素増感光電変換素子10は、光が第1の透明導電性基板1に入射すると、対極3を正極、第1の透明導電性基板1を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、第1の多孔質電極2の材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0086】
第1の透明導電性基板1を透過し、第1の多孔質電極2に入射した光子を第1の多孔質電極2に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と第1の多孔質電極2との間の電気的結合を介して、第1の多孔質電極2を構成するTiO2 の伝導帯に引き出され、第1の多孔質電極2を通って第1の透明導電性基板1に到達する。
【0087】
一方、電子を失った光増感色素は、第1の電解質層4中の還元剤、例えばI- から下記の反応によって電子を受け取り、第1の電解質層4中に酸化剤、例えばI3 - (I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
【0088】
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極3に到達し、上記の反応の逆反応によって対極3から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
【0089】
色素増感光電変換素子モジュールの一方の末端の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、色素増感光電変換素子モジュールの他方の末端の色素増感光電変換素子10の対極3に戻る。このようにして、光増感色素にも第1の電解質層4にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。このことは、第2の透明導電性基板5に光が入射した場合においても同様に光エネルギーが電気エネルギーに変換され、上記の説明において、第1の透明導電性基板1が第2の透明導電性基板5に、第1の多孔質電極2が第2の多孔質電極6に、第1の電解質層4が第2の電解質層7にそれぞれ置き換えられる。
【0090】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、透明基板1bを用意する。次に、透明基板1bの一主面にスパッタリング法などにより透明導電層1cを形成して、これを第1の透明導電性基板1とする。同様に、透明基板5bに透明導電層5cを形成して、これを第2の透明導電性基板5とする。
【0091】
次に、第1の透明導電性基板1の透明導電層1c上の少なくとも一部に、第1の多孔質電極2を形成する。同様に、第2の透明導電性基板5の透明導電層5c上の少なくとも一部に、第2の多孔質電極6を形成する。第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6とは、第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とを互いに対向させて配置した時に、第1の透明導電性基板1の長手方向に平行な線に関して線対称な位置となるように形成することが好ましい。また、第1の透明導電性基板1の端部を突出させるために、第1の透明導電性基板1の少なくとも一方の端部には第1の多孔質電極2を形成しないことが好ましく、同様に、第2の透明導電性基板5の少なくとも一方の端部には第2の多孔質電極6を形成しないことが好ましい。第1の透明導電性基板1における第1の多孔質電極2を形成する位置は、具体的には、例えば、第1の透明導電性基板1の主面上の少なくとも1方向において、第1の透明導電性基板1の断面長手方向における中心から所定の距離ずれた位置が第1の多孔質電極2の中心線となるように形成する。第2の多孔質電極6も、第1の多孔質電極2と同様に第2の透明導電性基板5の中心からずらして形成するが、これに限定されるものではない。
【0092】
第1の多孔質電極2の形成方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合、湿式製膜法を用いるのが好ましい。湿式製膜法では、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し、この分散液を透明基板1の透明導電層1c上に塗布または印刷する方法が好ましい。分散液の塗布方法または印刷方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。塗布方法としては、具体的には、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0093】
半導体微粒子の材料としてアナターゼ型TiO2 を用いる場合、このアナターゼ型TiO2 は、粉末状、ゾル状、またはスラリー状の市販品を用いてもよいし、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを形成してもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、ペースト状分散液の調製時に、乳鉢やボールミルなどを使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解消された粒子が再度凝集するのを防ぐために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などをペースト状分散液に添加することができる。また、ペースト状分散液の粘性を増すために、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいはセルロース系の増粘剤などの各種増粘剤をペースト状分散液に添加することもできる。のことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0094】
第1の多孔質電極2は、半導体微粒子を透明導電層1c上に塗布または印刷した後に、半導体微粒子同士を電気的に接続し、第1の多孔質電極2の機械的強度を向上させ、透明導電層1cとの密着性を向上させるために、焼成させて形成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると、透明導電層1cの電気抵抗が高くなり、さらには透明導電層1cが溶融することもあるため、通常は40℃以上700℃以下が好ましく、40℃以上650℃以下がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分以上10時間以下程度である。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0095】
第1の多孔質電極2を焼成後、半導体微粒子の表面積を増加させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば、四塩化チタン水溶液や直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルによるディップ処理を行ってもよい。透明導電層1cを支持する透明基板1としてプラスチック基板を用いる場合には、結着剤を含むペースト状分散液を用いて透明導電層1c上に第1の多孔質電極2を製膜し、加熱プレスによって透明導電層1cに圧着することも可能である。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0096】
次に、第1の多孔質電極2が形成された第1の透明導電性基板1を、光増感色素を所定の溶媒に溶解した溶液中に浸漬することにより、第1の多孔質電極2に光増感色素を結合させる。同様に第2の多孔質電極6にも光増感色素を結合させる。
【0097】
光増感色素の第1の多孔質電極2への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を、例えば、アルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに第1の多孔質電極2を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を第1の多孔質電極2上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。また、第1の多孔質電極2に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて第1の多孔質電極2の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0098】
次に、金属基板3bである金属板を用意し、金属基板3bの両主面上に、それぞれ第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dを形成する。第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dは、金属基板3bの両主面の任意の場所にそれぞれ形成できるが、第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dは、金属基板3bの断面短手方向における中心線に関して線対称な位置に形成することが好ましい。また、対極3の端部3aを突出させるために、対極3の少なくとも一端部には第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dを形成しないことが好ましい。対極3の突出部である端部3aを形成するために、具体的には、例えば、第1の触媒層3cを、主面上の少なくとも1方向において、対極3の断面長手方向における中心から所定の距離ずれた位置が第1の触媒層3cの中心線となるように形成し、第2の触媒層3dも、同様に、第2の透明導電性基板5の中心からずらして形成するが、第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dを形成する位置は、これに限定されるものではない。
【0099】
第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dの形成方法は湿式製膜法を用いる。湿式製膜法ではペースト状の分散液を調製し、この分散液を金属基板3bの一方の主面上の少なくとも一部に塗布または印刷する方法が好ましい。塗布方法としては、具体的には、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができ、また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。これらの湿式製膜法の中でも、第1の触媒層3cは、パターン塗布による成膜を行う必要がある。これは、金属基板3bの一方の主面上のうち端部3a以外の場所に選択的に形成することが好ましいためだからである。パターン塗布による成膜は、スクリーン印刷法を用いることが好適である。触媒層6の形成方法は、具体的には、例えば、カーボンと、有機バインダと、無機バインダとを溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し印刷用ペーストとする。
【0100】
次に、金属基板3bの一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの一方の主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。次に、金属基板3bのもう一方の主面にも同様に、金属基板3bのもう一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの両主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。
【0101】
上記スクリーン印刷用ペーストに配合するカーボンおよび無機バインダは上記に挙げた材料を適宜選択することができるが、好適には、カーボンとしてカーボンブラック、無機バインダとして酸化チタン(TiO2)が選ばれる。
【0102】
有機バインダは、具体的には、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カルボキシルビニルポリマなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、配合する有機バインダの分量を変えることによって、スクリーン印刷用ペーストのレオロジーを適宜制御することが可能である。
【0103】
また、溶媒としては、スクリーン印刷において良好な印刷を実現するために、高沸点溶媒が好適である。溶媒は、具体的には、例えば、テルピネオール、2−(2−n−ブトキシ)エタノール、1−フェノキシプロパン−2−オール、ブチルカルビトールなどが挙げられる。溶媒の沸点は200℃以上のものが好適であるが、これに限定されるものではない。また、高沸点の溶媒に、カーボン材料や有機バインダなどを高分散に維持する目的や、スクリーン印刷の塗布性を改善する目的で、低沸点の溶媒を混合させて用いてもよい。
【0104】
また、焼成温度の範囲には特に制限は無いが、有機バインダを消失させる必要性から、焼成温度は200℃以上800℃以下であることが好適であって、300℃以上500℃以下であることがより好適である。焼成温度が200℃よりも低いと、有機バインダを消失させることができず、また、焼成温度が800℃を超えると金属基板3bなどに物質変化や変形が起きる恐れがあるからである。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分以上10時間以下程度である。
【0105】
次に、得られた塗膜を焼成する。これは、塗膜を焼成することによって、カーボン同士が電気的に接続しており、機械的強度が高く、さらに金属基板3bと第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dとの結着性の高い対極3得られるからである。また、塗膜を焼成することによって、上記塗膜中の有機バインダが消失し、得られる対極3の第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3d中には細孔が形成され実表面積が大きくなるからである。
【0106】
また、対極3は、例えば、金属基板3bの両面の全面に例えばスパッタリング法などにより第1の触媒層3cまたは第1の触媒層3dの材料となる白金などの膜を形成した後、この膜をエッチングによりパターニングすることにより形成することもできる。
【0107】
次に、第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とを、所定の間隔を置いて互いに対向させて配置する。このとき対向する面は、それぞれ、第1の多孔質電極2が設けられている面、第2の多孔質電極6が設けられている面とする。第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とは、典型的には平行かつ平行線に関し線対称な位置に設けられるが、これに限定されるものではない。
【0108】
次に、第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6との間に一定間隔を置いて対極3を設ける。第1の多孔質電極2と対極3との間隔は、例えば、1μm以上100μm以下であることが好適であって、1μm以上50μm以下であることがより好適である。これは、第2の多孔質電極においても同様である。
【0109】
対極3は、典型的には、第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6とに平行に、第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6との間に一定距離を置いて設けられるが、これに限定されるものではない。また、対極3は、端部3aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から突出し、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aが対極3に対して突出するように設けられる。対極3は、具体的には、例えば、第1の透明導電性基板1の断面長手方向における中心線または第2の透明導電性基板5の断面長手方向における中心線に関して、直交する方向に一定距離ずらして設けられるが、これに限定されるものではない。
【0110】
そして、第1の透明導電性基板と対極3との間、第2の透明導電性基板と対極3との間および/または第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5との間をそれぞれ囲むようにして封止材8を形成し、第1の電解質層4および第2の電解質層7を構成する電解液が封入される空間を作り、この空間に例えば第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とにそれぞれ予め形成された注液口(図示せず)から電解液を注入し、第1の電解質層4および第2の電解質層7をそれぞれ形成する。その後、この注液口を塞ぐ。封止材8は、対極3の端部3aの内側、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aの内側にそれぞれ形成される。
【0111】
次に、端部1aにおける透明導電層1cの面上および端部5aにおける透明導電層5cの面上に、銀などからなる電極である導電材9をそれぞれ形成する。互いに対向して形成された導電材9は接触しないように所定の間隔が設けられている。また、導電材9は、好適には、対極3の断面長手方向の中心線に関して線対称な位置にそれぞれ形成し、色素増感光電変換素子10の一辺に平行にほぼその全長に渡って延在する長尺形状となるように形成する。
【0112】
また、導電材9を多層構造とすることも好ましく、具体的には、上述した体積抵抗率の値を満たす導電性材料からなる導電部材を第1の透明導電層1cおよび第2の透明導電層5cの面上にそれぞれ接合し、上記導電部材の互いに対向する面に、上述したビッカース硬度の値を満たす柔らかい導電性材料を積層して導電層を形成し、これを導電材9とするが、これに限定されるものではなく、単一の導電性材料で導電材9を構成しても良いし、3層以上の多層構造で導電材9を構成してもよい。上記導電層の厚さは、100μm以上300μm以下であることが好ましい。また、導電部材は、例えば、上記に挙げた導電性材料などから適宜選ばれるが、これらのものに限定されるものではない。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子10が製造される。
【0113】
<実施例1>
色素増感光電変換素子を以下のようにして製造した。
第1の多孔質電極2および第2の多孔質電極6を形成する際の原料であるTiO2 のペースト状分散液は、「色素増感太陽電池の最新技術」(荒川裕則監修、2001年、(株)シーエムシー)を参考にして作製した。すなわち、まず、室温で撹拌しながらチタンイソプロポキシド125mlを0.1Mの硝酸水溶液750mlに徐々に滴下した。滴下後、80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌を続けたところ、白濁した半透明のゾル溶液が得られた。このゾル溶液を室温になるまで放冷し、ガラスフィルタでろ過した後、溶媒を加えて溶液の体積を700mlにした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱反応を行わせた後、1時間超音波処理して分散化処理を行った。次に、この溶液をエバポレータを用いて40℃で濃縮し、TiO2 の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、TiO2 の質量の20%分のポリエチレングリコール(分子量50万)と、TiO2 の質量の30%分の粒子直径200nmのアナターゼ型TiO2 とを添加し、撹拌脱泡機で均一に混合し、粘性を増加させたTiO2 のペースト状分散液を得た。
【0114】
次に、透明基板1bの一主面の全面に透明導電層1cが設けられた第1の透明導電性基板1として、日本板硝子製アモルファス太陽電池用FTO基板(シート抵抗10Ω/□)を用意した。次に、このFTO基板を0.2mol/lの四塩化チタン溶液に70℃、40分間浸漬した。その後、純水で洗浄しエタノールを用いてリンスを行い十分に乾燥させた。第1の透明導電性基板1は、大きさ125mm×125mm、厚さ4mmである。第2の透明導電性基板5も第1の透明導電性基板1と同じものを用意する。
【0115】
次に、上記のTiO2 のペースト状分散液を、第1の透明導電性基板1である第1のFTO基板上の透明導電層1cであるFTO層の上にブレードコーティング法によって塗布し、大きさ113mm×110mm、厚さ20μmの微粒子層を形成した。微粒子層は、第1のFTO基板上の断面長手方向の中心から右方向に1.5mmずれた位置を微粒子層の中心として、直交する方向に関して左右対称となるように形成した。また、第2のFTO基板上には、断面長手方向の中心から左方向に1.5mmずれた位置を微粒子層の中心として、直交する方向に関して左右対称となるように形成した。その後、500℃に30分間保持して、TiO2 微粒子をFTO層上に焼結した。焼結されたTiO2 膜へ0.1Mの塩化チタン(IV)TiCl4 水溶液を滴下し、室温下で15時間保持した後、洗浄し、再び500℃で30分間焼成を行った。この後、紫外光照射装置を用いてTiO2 焼結体に紫外光を30分間照射し、このTiO2 焼結体に含まれる有機物などの不純物をTiO2 の光触媒作用によって酸化分解して除去し、TiO2 焼結体の活性を高める処理を行い、第1の酸化チタン層を得た。第2の酸化チタン層も上記と同様に、第2のFTO基板上のFTO層上に形成することで得た。
【0116】
光増感色素として、十分に精製したZ991色素23.8mgを、アセトニトリルとtert−ブタノールとを1:1の体積比で混合した混合溶媒50mlに溶解させ、光増感色素溶液を調製した。
【0117】
次に、第1の酸化チタン層をこの光増感色素溶液に室温下で24時間浸漬し、TiO2 微粒子表面に光増感色素を保持させた。次に、4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液およびアセトニトリルを順に用いて第1の多孔質電極2を洗浄した後、暗所で溶媒を蒸発させ、乾燥させた。第2の酸化チタン層においても同様の処理を行った。こうして、第1のFTO基板上に形成された第1の多孔質電極と、第2のFTO基板上に形成された第2の多孔質電極とを得た。
【0118】
一方、溶媒としての3−メトキシプロピオニトリル(MPN)に、1.0Mの1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド(MPImI)、0.1Mのヨウ素I2 、そして添加剤として0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させ、電解液を調製した。
【0119】
次に、金属基板3bとして大きさ115mm×120mm、厚さ0.5mmの純チタン板を用意した。次に、上記チタン板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し大きさ113mm×110mmの塗膜を形成した。塗膜は、上記チタン板の主面上の任意の一端から6mm形成し、上記一端と直交する方向の上記チタン板の中心線に関して線対称に形成した。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、上記チタン板上に第1のカーボン層を有する対極を得た。同様に、上記チタン板上の第1のカーボン層が形成されている側とは逆側の主面に第2のカーボン層を形成した。第2のカーボン層は、第1のカーボン層が形成されている位置と、上記チタン板の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に形成した。また、第1および第2のカーボン層をチタン板に形成する場合において、上記チタン板の両面にそれぞれ塗膜を形成してから、加熱、乾燥することによって第1および第2のカーボン層を形成してもよい。
【0120】
次に、得られた第1のカーボン層および第2のカーボン層の焼成を行った。1時間30分で400℃にまで昇温させ、400℃で30分保持し焼成した。この工程により、完全にエチルセルロースを分解し消失させることで、チタン板の両主面に第1の触媒層と第2の触媒層とを有する対極が得られた。得られた第1の触媒層と第2の触媒層の厚みは約45μmであった。また、対極3を製造する場合において、チタン板の主面上に第1の触媒層を形成してから、反対側の主面上に第2の触媒層を形成してもよい。
【0121】
次に、第1のFTO基板の第1の多孔質電極が設けられている面と第2のFTO基板5の第1の多孔質電極が設けられている面とを、所定の間隔を置いて互いに対向させる。
【0122】
次に、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極との間に一定間隔を置いて対極を設ける。第1の多孔質電極と対極との間隔は25μmとした。第2の多孔質電極と対極との間隔も同様に25μmとした。このことは、第2の多孔質電極においても同様である。
【0123】
第1のFTO基板と第2のFTO基板とは、対極3の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に設けられ、対極は、第1の触媒層と第1の多孔質電極とが、それぞれの断面長手方向の中心線が共通となるように設けられる。これにより、対極は、対極の端部が第1のFTO基板および第2のFTO基板から突出し、第1のFTO基板の端部および第2のFTO基板の端部が対極に対して突出するように設けられる。突出部の長さは、それぞれのFTO基板の端部、対極の端部がともに3mmであった。
【0124】
そして、第1のFTO基板と対極との間、第2のFTO基板と対極との間、第1のFTO基板と第2のFTO基板との間をそれぞれ囲むようにして厚さ30μmのアイオノマー樹脂フィルムとアクリル系紫外線硬化樹脂で封止する。
【0125】
次に、電解液を、予め第1のFTO基板と第2のFTO基板とに設けた注液口から送液ポンプを用いてそれぞれ注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。こうして第1の電解質層と第2の電解質層とが形成される。この後、注液口をアイオノマー樹脂フィルム、アクリル樹脂およびガラス基板で封止した。次に、第1のFTO基板の端部におけるFTO層の面上および第2のFTO基板の端部におけるFTO層の面上に、銀合金からなる導電材をそれぞれ形成する。導電材9の厚さは50μmであって、奥行き方向に平行に延在する長尺形状を有する。互いに対向する導電材9の間隔は0.4mmであった。こうして色素増感光電変換素子を完成した。
【0126】
この第1の実施の形態によれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この色素増感光電変換素子においては、両主面に触媒層3cを有する対極3に関して対向する位置に、一定間隔をおいて第1の多孔質電極2および第2の多孔質電極6が設けられ、それぞれの間には電解液が充填された第1の電解質層4と第2の電解質層7を有する。このため、この色素増感光電変換素子10においては、両主面に入射した光を有効に発電利用することが出来る。また、対極3を共通化したので、色素増感光電変換素子10の構成部材を削減することができ、製造工程も省略することが出来る。これによって、両面から照射される光を有効に発電利用可能であって、光電変換特性が優れた色素増感光電変換素子を低コストで製造することができる。
【0127】
<2.第2の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図4Aは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。図4Bは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10の図2Aに直交する方向の色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図4Aに示すように、この色素増感光電変換素子10は、対極3の両側の端部3eおよび3fが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出している。また、図4Bに示すように、端部3eおよび3fが突出する方向とは直交する方向には、第1の透明導電性基板1の両側の端部である1dおよび5dと、第2の透明導電性基板5の両側の端部である1eおよび5eとが対極3に対して突出しており、それぞれの透明導電性基板の突出部には上述したものと同様に導電材9が設けられている。また、透明導電性基板の突出部は、一方の対向する端部のみであってもよい。
【0128】
図5A〜Cは、この色素増感光電変換素子10の具体的な形態例を第2の透明導電性基板5の主面上方から見た平面図である。図5AおよびBに示すように、この例においては、主面が長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の対向する2辺のそれぞれ少なくとも一部から対極3が突出しており、それ以外の少なくとも一辺は、対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5が突出している形態を有する。また、図5Cに示すように、この例においては、長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する三辺に渡る部分から対極3が突出しており、それ以外一辺は対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5が突出している形態を有するが、色素増感光電変換素子10の形態は上記のものには限定されず、適宜形態を選択することができ、具体的には、例えば、円形、楕円形、雲形、星形、n角形(n≧3)などであってもよい。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0129】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0130】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から両端部が突出可能な大きさの金属基板3bを用いて対極3を形成し、対極3の両側の端部3e、3fを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出するように色素増感光電変換素子10を形成する。第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dは、対極3の両側の端部3e、3fを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出可能で、かつ第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の直交する端部の少なくとも一方が突出可能な位置および大きさで形成する。また、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5と対極3とを、対極3の両側の端部3a、3hを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出させ、かつ第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の直交する端部の少なくとも一方が突出するように配置する。上記以外のことは、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0131】
<実施例2>
金属基板3bとして大きさ131mm×112mm、厚さ0.5mmの純チタン板を用意した。
次に、上記チタン板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し大きさ113mm×110mmの塗膜を形成した。塗膜は、チタン板の中央部に形成した。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、チタン板上にカーボン層である第1の触媒層を有する対極を得た。同様に、チタン板上の第1の触媒層3が形成されている側とは逆側の主面に第2の触媒層を形成した。第2の触媒層も、同様にチタン板の中央部に形成した。
【0132】
次に、第1のFTO基板の第1の多孔質電極が設けられている面と第2のFTO基板の第1の多孔質電極が設けられている面とを、所定の間隔を置いて互いに対向させる。このとき、対極3の両端部が第1のFTO基板および第2のFTO基板から突出するように設けられ、対極3の両端部の突出部の長さはともに3mmであった。上記以外のことは実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0133】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることが出来る。
【0134】
<3.第3の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図6は第3の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図6に示すように、この色素増感光電変換素子10は、第1および第2の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10の対極3における金属基板3bに代えて導電性基板3gとしたものである。導電性基板3gは、基板3h上に導電層3iが設けられている。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0135】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0136】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法は、対極3を金属基板3bに代えて導電性基板3gとして形成した。導電性基板3gは、基板3hの全面に例えばスパッタリング法などにより導電層3iを形成する。上記以外のことは第1および第2の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0137】
<実施例3>
導電性基板3gとして大きさ115mm×120mm、厚さ1.1mmのガラス板を用意した。次に、上記ガラス板の両主面の全面にスパッタリング法によってFTO層を形成し導電性基板であるFTO基板とした。次に、上記FTO基板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し大きさ113mm×110mmの塗膜を形成した。上記塗膜は、上記FTO基板の主面上の任意の一端から形成し、一端とは直交する方向の上記FTO基板の中心線に関して線対称に形成した。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、上記FTO基板上に第1のカーボン層を有する対極3を得た。同様に、上記FTO基板3上の第1のカーボン層が形成されている側とは逆側の主面に第2のカーボン層を形成した。第2のカーボン層は、第1のカーボン層が形成されている位置と、チタン板の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に形成した。上記以外のことは実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0138】
この第3の実施の形態によれば、第1および2の実施の形態と同様な利点を得ることが出来る。
【0139】
<4.第4の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図7は第4の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図7に示すように、この色素増感光電変換素子10は、第1〜第3の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10の対極3に、両主面に貫通する貫通孔11を少なくとも1つ設けたものである。貫通孔11は、第1電解質層4と第2の電解質層7とを繋ぐ形態で設けられている。貫通孔11の表面には第1の触媒層3cまたは第2の触媒層3dと同じ構成の触媒層3hが設けられている。また、必要に応じて貫通孔11には触媒層3hを形成しない形態としてもよい。また、貫通孔11の形状は、どのようなものであってもよく、具体的には、例えば、円柱形状、楕円柱形状、n角柱形状(nは3以上の自然数)、円錐台形状、楕円錐台形状、n角錐台形状(nは3以上の自然数)、多面体形状、これらを組み合わせた形状などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。対極3の第1の触媒層3cと接する面の面積に対する、貫通孔11の占める面積は、0.01%以上50%以下であることが好ましく、0.01%以上20%以下であることがより好ましく0.01%以上1%以下であることが最も好ましい。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0140】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0141】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
対極3を作製する場合に、まず、金属基板3bに、両主面に通じる貫通孔11を少なくとも1つ形成する。貫通孔11の形成方法は従来公知の方法を適宜選択する。次に、金属基板3bの一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの一方の主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。次に、金属基板3bのもう一方の主面にも同様に、金属基板3bのもう一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの両主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。このとき、貫通孔11が、上記スクリーン印刷用ペーストによって塞がっている状態とする。次に、貫通孔11よりも細い金属棒などを、上記スクリーン印刷用ペーストによって塞がった貫通孔11に挿入し、金属棒が貫通した状態とする。貫通孔11が複数あるときは、それぞれの貫通孔11に金属棒を挿入し、金属棒が貫通した状態とする。次に、得られた塗膜を有する金属基板を、金属棒ごと焼成する。焼成後に、金属棒を除去する。こうして、貫通孔11内部にも触媒層3hが形成された対極3が得られた。また、金属棒に代えて、150℃以上400℃以下で消失する材料からなる棒を貫通孔11に挿入しても良い。150℃以上400℃以下で消失する材料としては、樹脂などが挙げられる。この場合においては、焼成することによって貫通孔11に挿入された棒が消失するので、棒を除去する工程を必要としない。また、貫通孔11を別の方法としては、第1の実施の形態による製造方法で得られた対極3に従来公知の方法で貫通孔11を形成する。この場合においては貫通孔11の内部に触媒層3hが形成されない。
【0142】
また、第1の電解質層4と第2の電解質層7とが形成する場合に、第1の電解質層4および第2の電解質層7を構成する電解液が封入される空間には、例えば、第1の透明導電性基板1にのみ予め形成された注液口(図示せず)から電解液を注入することで、第1の電解質層4および第2の電解質層7を一度に形成する。その後、この注液口を塞ぐ。封止材8は、対極3の端部3aの内側、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aの内側にそれぞれ形成される。上記以外のことは第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0143】
<実施例4>
金属基板3bとして大きさ115mm×120mm、厚さ0.5mmのチタン板を用意した。次に、上記チタン板に、両主面を貫通する直径1.5mmの貫通孔11を設ける。貫通孔11は、の位置は、上記チタン板の任意の角部から、横方向に60mm、縦方向に57.5mm進んだ上記チタン板上の点を中心として、10mm間隔で千鳥格子状に25つ形成した。
【0144】
次に、上記チタン板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し塗膜を形成した。塗膜は、上記チタン板の上記角部から横に55mm、縦に57.5mm進んだ上記チタン板上の点を中心として、縦113mm、横110mmの大きさで形成した。同様に、上記チタン板上の第1のカーボン層が形成されている側とは逆側の主面に第2のカーボン層を形成した。第2のカーボン層は、第1のカーボン層が形成されている位置と、上記チタン板の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に形成した。次に、直径1mmのポリカーボネート棒を、それぞれ貫通孔11に挿入し貫通させる。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、上記チタン板の両主面上に第1のカーボン層と第2のカーボン層とを有する対極を得た。
【0145】
次に、得られた第1のカーボン層および第2のカーボン層の焼成を行った。1時間30分で400℃にまで昇温させ、400℃で30分保持し焼成した。この工程により、完全にエチルセルロースおよびポリカーボネートを分解し消失させることで、金属基板3bの両主面に第1の触媒層3cと第2の触媒層3dとを有し、両主面を貫通する貫通孔を有する対極が得られた。得られた第1の触媒層と第2の触媒層の厚みは約45μmであった。
【0146】
第1の電解質層と第2の電解質層は、電解液を、予め第1のFTO基板に設けた注液口から送液ポンプを用いて注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。こうして第1の電解質層と第2の電解質層とが一度に形成される。この後、注液口をアイオノマー樹脂フィルム、アクリル樹脂およびガラス基板で封止し、色素増感光電変換素子を完成した。その他のことは実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0147】
この第4の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、対極3に貫通孔11を設けたので、第1の電解質層4と第2の電解質層7を形成する場合に、注液口が1箇所のみの1回の注液で、第1の電解質層4と第2の電解質層7が形成可能となり、製造工程が省略されることで製造コストを低減させることができる。また、第1の触媒層3cと第2の触媒層3dに加えて、さらに貫通孔内部に触媒層3hを形成したので触媒層の表面積が増加し、正極側の触媒作用が増大するので、素子全体の直流抵抗が低減され、光電変換効率が向上する。これによって、両面から照射される光を有効に発電利用可能であって、光電変換特性が優れた色素増感光電変換素子を低コストで製造することができる。
【0148】
<5.第5の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図8は第5の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図8に示すように、この色素増感光電変換素子10は第1〜第4の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10において、それぞれ突出している第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方が、もう一方に対して突出している。端部1aと端部5aとは導電材9で電気的に接続されている。端部1aと端部5aのうち、突出部が短い方の端部によって形成された空間は導電材9によって少なくとも一部が埋められていることが好ましく、完全に埋められていることがより好ましい。また、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方のみが突出している構成であってもよい。このとき、導電材9は透明導電層の側部に設けられる。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0149】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0150】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5と対極3とを配置する場合において、対極3の端部3aを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一方の側から突出するように設け、それとは反対のもう一方の側は、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aがともに突出するように設ける。このとき、端部1aおよび端部5aのうち、いずれか一方はもう一方よりも突出するように設けられている。例えば、端部1aが端部5aよりも突出して設けるとき、一方の透明導電性基板の主面がもう一方の透明導電性基板よりも大きいことが好ましい。また、端部1aおよび端部5aのうち、いずれか一方のみが突出するように設けてもよい。次に、第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aとの間に導電材9を設け、第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とを電気的に接続する。こうして、色素増感光電変換素子10を形成する。
【0151】
また、別の製造方法としては、第1の実施の形態の製造方法で色素増感光電変換素子10を作成し、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第1の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方の端部の突出部の少なくとも一部を切除する。上記以外のことは第1〜第4のいずれかの実施の形態の色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0152】
<実施例5>
第1の透明導電性基板1として、大きさ125mm×125mm、厚さ4mmのFTO基板を用意し、第2の透明導電性基板5として大きさ125mm×122mm、厚さ4mmのFTO基板を用意する。
【0153】
次に、上記のTiO2 のペースト状分散液を、第1のFTO基板上のFTO層の上にブレードコーティング法によって塗布し、大きさ113mm×110mm、厚さ200μmの微粒子層を形成した。微粒子層は、第1のFTO基板の断面長手方向の中心から右方向に1.5mm移動し、奥行き方向に0mm移動した位置を微粒子層の中心として形成した。また、第2のFTO基板には、断面長手方向の中心から左方向に0mm移動し、奥行き方向に0mm移動した位置を微粒子層の中心として形成した。
【0154】
第1のFTO基板と第2のFTO基板と対極とを設ける場合には、第1のFTO基板と第2のFTO基板とを、対極の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に設け、対極は、第1の触媒層と第1の多孔質電極とを、それぞれの断面長手方向の中心線が共通となるように設ける。これにより、対極は、対極の端部が第1のFTO基板および第2のFTO基板から突出し、第1のFTO基板の端部および第2のFTO基板の端部が対極に対して突出するように設けられる。突出部の長さは、対極の端部が3mm、第1のFTO基板の端部が3mm、第2のFTO基板の端部が0mmであった。
【0155】
次に、第1のFTO基板の端部と第1のFTO基板の端部とを銀合金からなる導電材9で接続する。導電材9は第2のFTO基板の端部の突出部を埋める形態で設けられ、さらに、第1のFTO基板の端部上の全面に設けられる。導電材9の断面形状は略L字形状であり、奥行き方向に平行に延在する長尺形状を有する。その他のことは、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0156】
この第5の実施の形態によれば、第1〜第4の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0157】
<6.第6の実施の形態>
[色素増感光電変換素子モジュール]
図9Aは第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図、図9Bは図9AのB−B線に沿っての断面図である。
図9AおよびBに示すように、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、複数の色素増感光電変換素子10が互いに電気的に直列に接続されている。色素増感光電変換素子10は、第1〜第4の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10である。色素増感光電変換素子モジュールは、第1〜第4の実施の形態のいずれか1種類の色素増感光電変換素子10のみで構成してもよいし、第1〜第4の実施の形態のいずれか2種類以上の色素増感光電変換素子10を組み合わせて構成してもよい。これらの色素増感光電変換素子10は、典型的には同一平面内に配置される。また、この色素増感光電変換素子モジュールは、一般的には基板(図示せず)上に配置される。この色素増感光電変換素子モジュールの大きさは特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、小さいものでは例えば数cm程度、大きいものでは例えば1m以上である。
【0158】
図10Aは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態を示す要部断面図である。図10Bは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第1の例を示す平面図である。
図10AおよびBに示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、それとは反対側の辺においては、対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。
【0159】
互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、一つの色素増感光電変換素子10の端部1a上および端部5a上にそれぞれ互いに対向して設けられた導電材9と、もう一つの色素増感光電変換素子10の端部3aとが、互いに対向して設けられた2つの導電材9が端部3aを挟持する形態で接続され、互いに電気的に直列に接続されている。このとき、一つの色素増感光電変換素子10に設けられた2つの導電材9の接続界面は、もう一つの色素増感光電変換素子10の端部3aによってそれぞれ若干削られ、これにより端部3aと導電材9とが密着した形態で接続されている。
【0160】
図11は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第2の例を示す斜視図である。図11に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10素子の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3から突出している色素増感光電変換素子10としたものである。
互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0161】
図12は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第2の例を示す斜視図である。図12に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する二辺に渡る部分から対極3が突出し、残りの二辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3から突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0162】
図13は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第3の例を示す斜視図である。図13に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の対向する2辺のそれぞれ少なくとも一部から対極3が突出し、残りの二辺にいては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0163】
図14は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第4の例を示す斜視図である。図14に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10のうち、一つを、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、もう一つを、上記一つの色素増感光電変換素子10もしくは第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する二辺に渡る部分から対極3が突出し、残りの二辺における透明導電性基板の端部が対極3から突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0164】
図15は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第5の例を示す斜視図である。図15に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10のうち、一つを、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、もう一つを、上記一つの色素増感光電変換素子10もしくは第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の対向する2辺のそれぞれ少なくとも一部から対極3が突出し、残りの二辺における透明導電性基板の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0165】
図16は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第6の例を示す斜視図である。
図16に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10のうち、一つを、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺における透明導電性基板の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、もう一つを、上記一つの色素増感光電変換素子10もしくは第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する三辺に渡る部分から対極3が突出し、残りの一辺における透明導電性基板の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0166】
このように、この色素増感光電変換素子モジュールは、構成する色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの突出のさせ方、接続のしかたによって、発電電力を効率よく取り出せる接続レイアウトを適宜選択することができる。特に、上述した接続形態の例の中でも、接続形態の第2の例が最もレイアウトの自由度があり、また、色素増感光電変換素子モジュールの出力電流電圧の調整が容易なレイアウトとすることができる。
【0167】
[色素増感光電変換素子モジュールの動作]
この色素増感光電変換素子モジュールの動作について説明する。
この色素増感光電変換素子モジュールを構成する各色素増感光電変換素子10の動作は、第1〜第4実施の形態によるいずれかの色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0168】
[色素増感光電変換素子モジュールの製造方法]
この色素増感光電変換素子モジュールの製造方法について説明する。
図17および図18は、色素増感光電変換素子モジュールの製造工程を示す要部断面図である。
図17に示すように、まず、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの側面と、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5にそれぞれ設けられた導電材9と封止材8とで囲まれる空間とを互いに平行に保持し対向させる。
【0169】
次に、図18に示すように、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の断面短手方向の中心線と、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間の断面短手方向の中心線とが同一の線上となるように保持し、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aを、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間に挿入して両素子を接続する。このとき、一つの色素増感光電変換素子10に設けられた対極3の端部3aによって、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板にそれぞれ設けられた導電材9の対向する面の一部が削りとられることで圧着することが好ましい。一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9との接触面積は基本的にはどのような大きさであっても良いが、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の一方の導電材9との接触面積は、透明導電性基板の主面の面積の3%以上20%以下であることが好ましく、5%以上15%以下であることがより好ましく、5%以上10%以下であることが最も好ましい。これは、透明導電性基板の主面の3%以下であると接触抵抗が増大し、また、20%以上であると、モジュールとした時の単位面積当たりの発電効率が低くなる。
【0170】
また、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aを、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間に挿入する場合に、別の方法として、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aを加熱した後に、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間に挿入して接続することもできる。このとき、一つの色素増感光電変換素子10に設けられた対極3の端部3aによって、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板にそれぞれ設けられた導電材9の対向する面の一部が溶融することで接合することが好ましい。そのため、導電材9を構成する導電材料は融点が低いものであることが好ましく、具体的には、例えば、はんだ、銀合金、導電性高分子などが挙げられる。また、導電材9の対向する面のみを融点が低い導電材料で構成することもでき、具体的には、例えば、導電材9の対向する面に導電性フィルムなどを貼付して設けた構成などが挙げられる。対極3の端部3aの加熱温度は、導電材9の融点などにもよるが、一般的には100℃以上200℃以下に選ばれる。例えば、導電材9をはんだで形成する場合には、加熱温度は例えば150℃以上190℃以下である。以上のようにして、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士が互いに電気的に直列に接続され、目的とする色素増感光電変換素子モジュールが製造される。
【0171】
<実施例6>
実施例1の製造方法により色素増感光電変換素子を製造した。
次に、一つの色素増感光電変換素子のチタン板の端部と、もう一つの色素増感光電変換素子の互いに対向して設けられたFTO基板の端部上にそれぞれ設けられた銀電極とを、上記銀電極の間の空間にチタン板の端部をチタン板の断面長手方向に3mm挿入することで接続した。上記チタン板の厚さは0.5mm、上記銀電極の間隔は0.4mmであるので、上記銀電極の対向する面はそれぞれ0.05mmずつ削られる。接続条件は、加圧圧力50KPa、時間20秒とした。以上のようにして、二つの色素増感光電変換素子を互いに電気的に直列に接続し、同様に複数接続することによって色素増感光電変換素子モジュールを完成した。
【0172】
<実施例7>
一つの色素増感光電変換素子のチタン板の端部をあらかじめ熱し、もう一つの色素増感光電変換素子に対向して設けられたFTO基板の端部上に対向してそれぞれ設けられたはんだ電極とを、上記銀電極の間の空間にチタン板の端部をチタン板の断面長手方向に3mm挿入することで接続した。チタン板の端部の加熱温度は250℃とした。上記チタン板の厚さは0.5mm、上記銀電極の間隔は0.4mmであるので、上記銀電極の対向する面はそれぞれ0.05mmずつ溶融する。接合条件は、加圧圧力50KPa、温度250℃、時間20秒とした。その他のことは、実施例6と同様にして色素増感光電変換素子モジュールを完成した。
【0173】
この第5の実施の形態によれば、第1〜第4の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1および第2の透明導電性基板5の端部1aおよび5aとを導電材9を介して互いに接続することにより互いに電気的に直列に接続している。このため、複数の色素増感光電変換素子10の接続にタブ線や導電性接着剤などによる配線を必要としない。これにより、配線抵抗による電極低下を飛躍的に抑えることができる。また、色素増感光電変換素子10同士が互いに密接して配置されており、発電に寄与しない無効な面積が実質的に存在しない。これによって、色素増感光電変換素子モジュールの有効面積の大幅な増加を図ることができる。さらに、互いに密接して配置されているので意匠性が高い。また、色素増感光電変換素子10同士の接続の自由度が高く、様々な接続形態を容易に構築可能であるので、使用環境に応じて色素増感光電変換素子モジュールを個別に設計する必要が無く、さらに、色素増感光電変換素子10同士の接続に、新たな部材を必要としないので、色素増感光電変換素子モジュールの製造工程を大幅に簡略化でき、ひいては色素増感光電変換素子モジュールの大幅な低コスト化を図ることができる。また、色素増感光電変換素子10の接続には熱を要しなくても可能なことから、例えば、熱接合による封止材16、第1の多孔質電極2、対極3などの素子本体の構造に悪影響が生じるのを防止することができる。このため、色素増感光電変換素子10の特性や信頼性の劣化を防止することができ、特性や信頼性が優れた色素増感光電変換素子モジュールを得ることができる。
【0174】
<7.第7の実施の形態>
[色素増感光電変換素子モジュール]
図19Aは第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図、図9Bは図19AのC−C線に沿っての断面図である。
図19AおよびBに示すように、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、複数の色素増感光電変換素子10が互いに電気的に直列に接続されている。色素増感光電変換素子10は、第5の実施の形態の色素増感光電変換素子10である。隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、互いに逆向きに接続されている。
【0175】
図20Aは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態を示す要部断面図である。図20Bは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の例を示す平面図である。 図20AおよびBに示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第5の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、それとは反対側の辺においては、透明導電性基板1の端部1aが対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10に第1の接続端子12aおよび第2の接続端子12bからなる接続機構を設けて互いに接続したものである。
【0176】
互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの側面には第1の接続端子12aが設けられており、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板1の端部1a上には導電材9を介して、第2の接続端子12bが設けられている。対極3の端部3aと第1の接続端子12aとおよび導電材9と第2の接続端子12bとは電気的に接続されている。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、互いに逆向きに配置され、第1の接続端子12aと第2の接続端子12bとが嵌合することによって接続され、互いに電気的に直列に接続されている。これにより一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板1の端部1aとが電気的に接続されている。
【0177】
接続機構は、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を電気的に接続可能であれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、接続部が外力に対し安定であることが好ましく、一定の操作で脱着が可能であるものが好ましい。接続機構を構成する第一の接続端子12aおよび第2の接続端子12bは、典型的には、例えば、第1の接続端子9aをオス、第2の接続端子9bをメスとしたコネクタなどの着脱機構が挙げられるが、これに限定されるものではなく、従来公知の接続機構を適宜選択することができる。
【0178】
第1の接続端子12aが設けられる位置は、対極3の端部3a上であれば基本的にはどこであってもよいが、特に、対極3の側面を含んだ少なくとも一部に設けられることが好ましい。また、第2の接続端子12bが設けられる位置は、導電材9上であれば基本的にはどこであってもよいが、導電材9の側部の主面を含んだ少なくとも一部に設けられることが好ましい。また、第1の接続端子12aと第2の接続端子12bとは、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10において、それぞれ対応した位置に設けられることが好ましい。また、第2の接続端子12bは透明導電性基板1の端部1aの透明導電層1c上に設けてもよい。
【0179】
上記以外のことは第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様である。
【0180】
[色素増感光電変換素子モジュールの動作]
この色素増感光電変換素子モジュールの動作は、第5の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの動作と同様である。
【0181】
[色素増感光電変換素子モジュールの製造方法]
この色素増感光電変換素子モジュールの製造方法について説明する。
図21Aは、色素増感光電変換素子モジュールの製造工程を示す要部断面図である。図21Bは接続機構である第1の接続端子12aと第2の接続端子12bの平面図、図21Cは図21BのD−D線に沿っての断面図である。
図21Aに示すように、まず、第5の実施の形態の製造方法で色素増感光電変換素子10を複数製造する。次に、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの側面に第1の接続端子12aを電気的に接続して設ける。次に、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9の側部主面に第2の接続端子12bを設ける。図21BおよびCに示すように、第1の接続端子12aと、第2の接続端子12bとは互いに嵌合可能な形状を有している。次に、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1の端部1aとを互いに平行に保持して対向させる。このとき、一つの色素増感光電変換素子10ともう一つの色素増感光電変換素子10とは端部の突出部が小さい方の透明導電性基板が互いに対向する向きに配置する。次に、図22に示すように、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aをもう一つの色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1の端部1a上に垂直に下ろすことで、一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板11の対極3の端部3aに設けられた第1の接続端子12aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9に設けられた第2の接続端子12aとを嵌合させ両素子を接続する。
【0182】
接続機構である第1の接続端子12aと第2の接続端子12aとは、接続後であっても一定の操作で着脱が自由にできることが好ましい。着脱機構は従来公知のものを適宜選択することができるが、具体的には、例えば、ラッチ着脱機構、ピン着脱機構、エッジコネクタなどが挙げられる。第1の接続端子12aと第2の接続端子12aとの着脱が可能となることによって、色素増感光電変換素子モジュールを構成する全ての色素増感光電変換素子10が素子単独での着脱可能となる。
【0183】
図22Aは完成後の色素増感光電変換素子モジュールの一例を示した要部断面図である。図22Bは完成後の色素増感光電変換素子モジュールから色素増感光電変換素子10を着脱する一例を示した要部断面図である。
【0184】
図22Aに示すように、この色素増感光電変換素子モジュールは、3つの色素増感光電変換素子10を上述した製造方法によって製造し完成したものである。ここで、色素増感光電変換素子モジュールを構成する3つの色素増感光電変換素子10のうち、中央に接続された色素増感光電変換素子10のみを交換する場合、従来の色素増感光電変換素子モジュールは、両端に接続されたいずれかの色素増感光電変換素子10を取り外して交換していたが、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、図22Bに示すように、隣り合う色素増感光電変換素子10の第1の接続端子12aと第2の接続端子12aとの接続をそれぞれ解除することによって容易に中央に接続された色素増感光電変換素子10のみを取り外すことができる。
【0185】
上記以外のことは第5の実施の形態の色素増感光電変換素子モジュールの製造方法と同様である。
【0186】
<実施例8>
実施例5の製造方法により色素増感光電変換素子を製造した。
次に、一つの色素増感光電変換素子のチタン板の端部の側面にメス型金属端子を設け、もう一つの色素増感光電変換素子の互いに対向して設けられた2枚のFTO基板の端部に設けられた銀電極の側部主面に上記メス型金属端子に対応するオス型金属端子を設けた。次に、一つの色素増感光電変換素子10のチタン板と、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1のFTO基板の端部とを互いに平行に保持して対向させた。このとき、一つの色素増感光電変換素子10ともう一つの色素増感光電変換素子10とは端部の突出部が小さい方のFTO基板が互いに対向する向きに配置した。次に、一つの色素増感光電変換素子10のチタン板の端部をもう一つの色素増感光電変換素子10の第1のFTO基板の端部1a上に垂直に下ろすことで、一つの色素増感光電変換素子に設けられたメス型金属端子と、もう一つの色素増感光電変換素子10に設けられたオス型金属端子とが嵌合し両素子が接続された。さらに、同様に複数接続することによって色素増感光電変換素子モジュールを完成した。
【0187】
この第7の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、構成する色素増感光電変換素子10を透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方が、もう一方よりも突出している構成とし、隣り合う色素増感光電変換素子10を互いに上下を逆転して配置し、一つの色素増感光電変換素子の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9とに着脱自在な接続機構を設けて両素子を接続したので、色素増感光電変換素子モジュールの完成後においても、色素増感光電変換素子モジュールを構成する色素増感光電変換素子10のうち、目的の色素増感光電変換素子10のみを着脱し交換することができる。これにより、例えば、多数の色素増感光電変換素子10を接続した大型の色素増感光電変換素子モジュールにおいて、一部の色素増感光電変換素子10に故障が生じても、周辺の色素増感光電変換素子10を取り外すことなく、故障が生じた色素増感光電変換素子10のみを取り外すことができる。これは、色素増感光電変換素子モジュールを設置した状態での作業が可能であるので、整備、修理工程の簡略化によって整備の大幅な低コスト化を図ることができる。また、色素増感光電変換素子モジュールを設置したままで、色素増感光電変換素子10の構成や接続回路を変えることができるので、使用用途、季節などに応じた色素増感光電変換素子モジュールの仕様を容易に変更することができる。このため、設置後においても仕様変更が容易であり、信頼性が優れた色素増感光電変換素子モジュールを得ることができる。
【0188】
<8.第8の実施の形態>
[光電変換素子]
図23Aは第8の実施の形態による光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。図23Bは第8の実施の形態による光電変換素子20の図23Aに直交する方向の光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。
【0189】
図23Aに示すように、この光電変換素子は、第1の透明導電性基板21と、第2の透明導電性基板25とが、それぞれの透明導電層が互いに対向するように設けられ、その間に一定の間隔を置いて導電性基板23が設けられ、それぞれの透明導電性基板と導電性基板23との間には第1の光電変換層22と第2の光電変換層27とが設けられている構成を有する。必要に応じて絶縁層28をそれぞれの光電変換層および対極3と導電材9との間に設ける。光は、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5にそれぞれ入射する。
【0190】
第1の光電変換層22は、順次積層された透明導電層22a、有機半導体層22bおよび中間層22cを含む。透明導電層22aの材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]のような導電性高分子が用いられる。有機半導体層22bの材料としては、例えば、共役系高分子P3HTとフラーレン誘導体PCBMとを混合した半導体(P3HT:PCBM)などが用いられる。中間層22cとしては、導電性基板23への電子輸送を円滑に行い、かつ、正孔(ホール)の輸送を阻止する機能を有するもの、例えば、TiO2 膜などが用いられる。
【0191】
第1の透明導電性基板21は、透明基板21b上に透明導電層21cが設けられている構成を有し、第2の透明導電性基板25は透明基板25b上に透明導電層25cが設けられている構成を有する。第1の透明導電性基板21と、第2の透明導電性基板25とは、透明導電層21cと透明導電層25cとが互いに対向するようにして設けられている。さらに、透明導電層21cと透明導電層25cとの間には、一定距離を置いて導電性基板23が設けられている。
【0192】
また、第1の透明導電性基板21と導電性基板23を構成する金属基板3bとの距離は、例えば、30μm以上100μm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の透明導電性基板2と導電性基板23との距離も同様である。
【0193】
第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とは、好適には、互いにほぼ同じ大きさの長方形の形状を有し、平行かつ平行線に関し線対称な位置に設けられるが、これに限定されるものではない。第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5と、導電性基板23とは、導電性基板23の端部23aが光電変換素子20の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出するように設けられ、第1の透明導電性基板21の端部21aと第2の透明導電性基板25の端部25aとが導電性基板23に対して突出するような配置で設けられる。具体的には、例えば、第1の透明導電性基板21、第2の透明導電性基板25および導電性基板23のそれぞれの主面が同じ大きさである場合には、それらの面に平行な方向に互いにずれて配置される。そうすると、導電性基板23の一方の端部23aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出し、導電性基板23の端部23aとは反対方向の、第1の透明導電性基板21の端部21aおよび第2の透明導電性基板25の端部25aが導電性基板23に対してそれぞれ突出する。端部21aの透明導電層21c上および端部25aの透明導電層25c上には、それぞれに少なくとも1つの銀などからなる電極が一定間隔を置いて互いに対向して設けられ、この場合においては導電材29が設けられる。
【0194】
導電性基板23の端部23aの、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から突出している部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第1の透明導電性基板21の端部1aの導電性基板23から突出している部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第2の透明導電性基板25の端部25aの導電性基板23から突出している部分の長さは1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、対向する第1の透明導電性基板21の端部21aと第2の透明導電性基板25の端部25aとの突出部の長さは等しいことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0195】
また、図23Bに示すように、図23Aに示した光電変換素子20の断面とは直交する方向の断面においては、第1の透明導電性基板21の両側の端部21dおよび21eと第2の透明導電性基板25の両側の端部25dおよび25eとが、導電性基板23に対して突出しており、突出部には上述したものと同様に導電材29が設けられている。第1の透明導電性基板21および第2の透明導電性基板25の上記突出部は、いずれか一方の対向する端部のみであってもよい。また、必要に応じて絶縁層28をそれぞれの光電変換層および対極3と導電材9との間に設ける。
【0196】
第1の透明導電性基板21、第2の透明導電性基板25を形成する材料は、使用する光電変換層に応じて適宜選ばれ、第1の透明導電性基板1、第2の透明導電性基板5を形成する材料として上記に挙げた材料を適宜選択することができ、特に好適には、抵抗率が小さい導電材料、例えばITOなどの透明導電性金属酸化物や金属などが用いられる。
【0197】
また、導電性基板23は、使用する光電変換層に応じて適宜選ばれ、第1の透明導電性基板1、第2の透明導電性基板5および金属基板3bを形成する材料として上記に挙げた材料を適宜選択することができ、特に好適には、抵抗率が小さい導電材料、例えばITOなどの透明導電性金属酸化物やアルミニウムなどの金属などが用いられる。
【0198】
また、絶縁層28は、各種の絶縁体を用いることができ、固体の絶縁体とすることが好ましいが、これに限定されず、例えば、空気であってもよい。
【0199】
また、第1の光電変換層22および第2の光電変換層27は、例えば、無機半導体または有機半導体により形成されたp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合や有機光電変換材料などにより形成される。
【0200】
図24に光電変換素子20の他の具体的な構成例を示す。図24に示すように、この例では、第1の光電変換層22は、n型半導体層22dとp型半導体層22eとからなるpn接合により形成されている。n型半導体層22dおよびp型半導体層22eは、各種の無機半導体または有機半導体からなり、形態も単結晶、多結晶、非晶質のいずれであってもよい。無機半導体としては、例えば、Si、GaAs、GaPなどが挙げられる。有機半導体としては、ポリアセチレン(好ましくは二置換型ポリアセチレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリピロール、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−ビチオフェン)(F8T2)、ポリ(1−ヘキシル−2−フェニルアセチレン)(PHX PA)(発光材料としては青色の発光を示す)、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体(PDPA−n Bu)(発光材料としては緑色の発光を示す)、ポリ(ピリジン)(PPy)、ポリ(ピリジルビニレン)(PPyV)、シアノ置換型ポリ(p−フェニレンビニレン)(CNPPV)、ポリ(3,9−ジ−tert−ブチルインデノ[1,2−b]フルオレン(PIF)などが挙げられる。必要に応じて絶縁層28をそれぞれの光電変換層および対極3と導電材9との間に設ける。
【0201】
また、第1の光電変換層22と、第2の光電変換層27とは、同一の材料、構成であっても良いし、別の材料、構成であってもよく、使用用途に応じて、上記に挙げた材料、構成などから適宜選択される。また、第1の光電変換層22または第2の光電変換層27を上述した色素増感光電変換部としてもよく、具体的には、例えば、太陽光が照射される面側をpn接合型の光電変換層とし、室内光が照射される面側を色素増感光電変換部として光電変換素子20を構成するハイブリッド型の太陽電池が挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記以外のことは、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の第1および第2の色素増感光電変換部以外のことと同様である。
【0202】
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子は、第1の実施の形態における色素増感光電変換素子10の第1および第2の色素増感光電変換部を第1の光電変換層22と第2の光電変換層27として、従来公知の方法で光電変換素子20を製造した。
【0203】
この第8の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0204】
<9.第9の実施の形態>
[光電変換素子]
【0205】
図25Aは第9の実施の形態による光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。図25Bは第9の実施の形態による光電変換素子20の図25Aに直交する方向の光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。
図25Aに示すように、この光電変換素子20は、導電性基板23の両側の端部23eおよび23fが光電変換素子20の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出している。また、図25Bに示すように、端部23eおよび23fが突出する方向とは直交する方向には、第1の透明導電性基板21の両側の端部である21dおよび25dと、第2の透明導電性基板5の両側の端部である21eおよび25eとが導電性基板23に対して突出しており、それぞれの透明導電性基板の突出部には上述したものと同様に導電材29が設けられている。また、透明導電性基板の突出部は、一方の対向する端部のみであってもよい。
【0206】
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子は、第2の実施の形態における色素増感光電変換素子10の第1および第2の色素増感光電変換部を第1の光電変換層22と第2の光電変換層27として、従来公知の方法で光電変換素子20を製造した。
【0207】
この第9の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0208】
<10.第10の実施の形態>
[光電変換素子]
図26は第10の実施の形態による光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。
図26に示すように、この光電変換素子20は第8および第9の実施の形態のいずれかの光電変換素子20において、それぞれ突出している第1の透明導電性基板21の端部21aおよび第2の透明導電性基板25の端部25aのいずれか一方が、もう一方よりも突出している。端部21aと端部25aとは導電材29で電気的に接続されている。端部21aと端部25aのうち、突出部が短い方の端部によって形成された空間は導電材29によって少なくとも一部が埋められていることが好ましく、完全に埋められていることがより好ましい。また、第1の透明導電性基板21の端部21aおよび第2の透明導電性基板25の端部25aのいずれか一方のみが突出している構成であってもよい。このとき、導電材29は透明導電層の側部に設けられる。上記以外のことは、第5の実施の形態による色素増感光電変換素子の第1および第2の色素増感光電変換部以外のことと同様である。
【0209】
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子は、第2の実施の形態における色素増感光電変換素子10の第1および第2の色素増感光電変換部を第1の光電変換層22と第2の光電変換層27として、従来公知の方法で光電変換素子20を製造した。
【0210】
この第10の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0211】
<11.第11の実施の形態>
[光電変換素子モジュール]
【0212】
図27は第11の実施の形態の光電変換素子モジュールのうち、互いに隣接する二つの光電変換素子20同士の接続形態を示す要部断面図である。
図27に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の代わりに、第8および/または第9の実施の形態の光電変換素子20を用いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様に接続したものである。その他のことは第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様である。
【0213】
[光電変換素子モジュールの製造方法]
この光電変換素子モジュールは、色素増感光電変換素子10の代わりに光電変換素子20を用いることを除いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法と同様にして製造することができる。
【0214】
この第11の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0215】
<12.第12の実施の形態>
[光電変換素子モジュール]
【0216】
図28は第12の実施の形態の光電変換素子モジュールのうち、互いに隣接する二つの光電変換素子20同士の接続形態を示す要部断面図である。
図28に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の代わりに、第10の実施の形態の光電変換素子20を用いて、第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様に接続したものである。その他のことは第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様である。
【0217】
[光電変換素子モジュールの製造方法]
この光電変換素子モジュールは、色素増感光電変換素子10の代わりに光電変換素子20を用いることを除いて、第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法と同様にして製造することができる。
【0218】
この第12の実施の形態によれば、第7の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0219】
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【0220】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子。
(2)上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられている(1)に記載の光電変換素子。
(3)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する(1)または(2)に記載の光電変換素子。
(4)上記導電材は、はんだまたは銀合金である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の光電変換素子。
(5)上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1の電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる(1)〜(4)のいずれか一項に記載の光電変換素子。
(6)互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュール。
(7)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する(6)に記載の光電変換素子モジュール。
(8)上記導電材は、はんだ、銀合金および導電性フィラーのいずれかである(6)または(7)に記載の光電変換素子モジュール。
(9)上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる(6)〜(8)のいずれか一項に記載の光電変換素子モジュール。
(10)一方の主面に第1の多孔質電極が設けられた第1の透明導電性基板の上記第1の多孔質電極が設けられた面と、一方の主面に第2の多孔質電極が設けられた第2の透明導電性基板の上記第2の多孔質電極が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に対極を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間に第1の電解質層と第2の電解質層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法。
(11)上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部を、上記対極に対して突出させて設け、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にそれぞれ導電材を設ける(10)に記載の光電変換素子の製造方法。
(12)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成した(10)または(11)に記載の光電変換素子の製造方法。
(13)上記導電材は、はんだまたは銀合金である(10)〜(12)のいずれか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
(14)互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部ともう一つの光電変換素子の上記対極の突出部とが導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法。
(15)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成する(14)に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
(16)上記導電材は、はんだまたは銀合金である(14)または(15)に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
(17)光電変換素子モジュールを用い、上記光電変換素子モジュールが、互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器。
(18) 光電変換素子モジュールを用い、上記光電変換素子モジュールが、互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物。
(19)上記光電変換素子および/または上記光電変換素子モジュールのうち、少なくとも1つは2枚の透明板の間に挟持されている(18)に記載の建築物。
【符号の説明】
【0221】
10…色素増感光電変換素子、1…第1の透明導電性基板、1a…端部、2…第1の多孔質電極、3…対極、3a…端部、4…第1の電解質層、5…第2の透明導電性基板、5a…端部、6…第2の多孔質電極、7…第2の電解質層、8…封止材、20…光電変換素子、21…第1の透明導電性基板、21a…端部、22…第1の光電変換層、3…導電性基板、23a…端部、28…絶縁層、25…第2の透明導電性基板、25a…端部、26…第2の光電変換層。
【技術分野】
【0001】
本開示は、光電変換素子、光電変換素子モジュール、光電変換素子モジュールの製造方法、電子機器および建築物に関する。本開示は、より詳細には、例えば色素増感太陽電池モジュールに適用して好適な光電変換素子モジュールおよびその製造方法ならびに光電変換素子モジュールを用いる電子機器および建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
【0003】
従来より、太陽電池としては、単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池および非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池が主に用いられている。
【0004】
一方、1991年にグレッツェルらが提案した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を得ることができ、しかも従来のシリコン系太陽電池とは異なり製造の際に大掛かりな装置を必要とせず、低コストで製造することができることなどにより注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
この色素増感太陽電池は、一般的に、光増感色素を結合させた酸化チタンなどからなる多孔質電極と白金などからなる対極とを対向させ、それらの間に電解液からなる電解質層が充填された構造を有する。電解液としては、ヨウ素やヨウ化物イオンなどの酸化・還元種を含む電解質を溶媒に溶解したものが多く用いられる。
【0006】
ところで、一般的に、太陽電池の実際の使用においては複数の太陽電池を組み合わせた形態であるモジュールという単位で使用されることが一般的である。太陽電池モジュールは、例えば、建築物や電子機器などに装備し使用される。その中でも、特に、太陽電池モジュールを窓などの建材一体型として利用する場合に太陽光を受ける面と室内光を受ける面が存在することになる。太陽電池モジュールに照射される光を無駄なく発電電力として利用するためには、太陽電池モジュールの太陽光を受ける面と室内光を受ける面との両面を発電可能とすればよい。そこで、従来においては、完成した太陽電池同士を張り合わせて両面を受光面としたもの、太陽電池自体を透明にして両面に光が透過可能としたもの、これらを組み合わせたものなどを太陽電池モジュールとしていた。しかしながら、太陽電池同士を張り合わせて両面を受光面とするのは、製造コストが非常に高く、また、太陽電池自体を透明にして両面に光が透過可能とするのは、発電効率を大幅に犠牲にすることになる。
【0007】
これらの問題を解決するために、対極を一対の光電極により挟まれる形で設けた、タンデム型の色素増感太陽電池が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、このタンデム型の色素増感太陽電池を太陽電池モジュールとして使用するためには色素増感太陽電池同士を繋ぐタブ線などが必要となる。特に、色素増感太陽電池においては電極の取り出しが、正極、負極ともに同じ方向を向いているので、素子を直列に結線する場合のタブ線の引き回しがシリコン系太陽電池と比較して複雑となる。このようなことから、色素増感太陽電池のモジュール化には施工性の悪さやコスト高という新たな課題が生じる。
【0008】
また、一般的に、太陽電池の能力を表す指標として発電効率が挙げられる。これは単位面積当たりの発電電力を表すもので、実際の使い方においては複数の太陽電池を組み合わせた形態であるモジュールという単位で比較されることが一般的である。このとき、一つのモジュールを構成するに際して、モジュール面積のうち発電に寄与する部分ができるだけ多い方が光電変換効率の向上を図る上では有利となる。つまり、隙間なく太陽電池を敷き詰めることが光電変換効率の向上のポイントといえる。
図29に、複数の太陽電池を配線材で接続した従来の太陽電池モジュールの一例を示す。図29に示すように、基板100上に複数の太陽電池101が配置され、これらの太陽電池101が配線材102により互いに電気的に直列に接続されている。配線材102は互いに隣接する二つの太陽電池101の一つの太陽電池101のアノード電極(図示せず)ともう一つの太陽電池101のカソード電極(図示せず)とを接続するように設けられている。実際に、特許文献1に記載されたタンデム型の色素増感太陽電池を太陽電池101として太陽電池モジュールとすると、太陽電池101には、アノード電極間を接続しているねじや、リップなどの発電に寄与しない無効な面積が相当存在していることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2007−521668号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nature,353,p.737-740,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1で提案されたタンデム型太陽電池をモジュール化する場合には、太陽電池をタブ線などの配線材で接続することから、互いに隣接する二つの太陽電池の間には配線の取り回しのための大きな隙間ができる。この大きな隙間は発電に寄与しない無効な面積となる。このため、従来のタブ線などの配線材で複数の太陽電池を接続する方法は、発電効率を高めるという観点からは最適な接続方法とは言えなかった。
【0012】
さらに、複数の両面型太陽電池を接続する場合あっては、配線の取り回しは更に複雑となり、上述した問題は更に大きくなる。
【0013】
そこで、本開示が解決しようとする課題は、色素増感太陽電池などの色素増感光電変換素子などの光電変換素子において、両面から入射する光を有効に発電利用可能で、構造が簡易かつ低コスト化を図ることができる両面型の光電変換素子およびその製造方法を提供することである。
【0014】
本開示が解決しようとする他の課題は、両面型の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールにおいて、光電変換素子の脱着が容易で、発電に寄与する有効面積の大幅な増加を図ることができ、しかも低コスト化を図ることができる両面型の光電変換素子モジュールおよびその製造方法を提供することである。
【0015】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた光電変換素子モジュールを用いた高性能の電子機器を提供することである。
【0016】
この発明が解決しようとするさらに他の課題は、上記のような優れた光電変換素子モジュールを用いた建築物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本開示は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子である。
【0018】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールである。
【0019】
また、本開示は、
一方の主面に第1の多孔質電極が設けられた第1の透明導電性基板の上記第1の多孔質電極が設けられた面と、一方の主面に第2の多孔質電極が設けられた第2の透明導電性基板の上記第2の多孔質電極が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に対極を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間に第1の電解質層と第2の電解質層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法である。
【0020】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部ともう一つの光電変換素子の上記対極の突出部とが導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法である。
【0021】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器である。
【0022】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物である。
【0023】
本開示において、光電変換素子の平面形状は特に限定されないが、典型的には、長方形の平面形状を有し、上記の導電材は、光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するが、これに限定されるものではない。
【0024】
導電材は、典型的には少なくとも一種類の導電性材料からなるが、抵抗の低減を図る観点からは導電性材料は体積抵抗率が低いものが好ましく、具体的には、導電材の20℃における体積抵抗率が60(μΩ・cm)以下であることが好ましく、40(μΩ・cm)以下であることがより好ましく、20(μΩ・cm)以下であることが最も好ましい。これを満たす導電性材料としては、好適には金属材料である。金属材料は単体金属または合金により形成することができ、金属材料を、具体的に挙げると、例えば、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ベリリウム(Be)、アンチモン(Sb)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなり、合金としては、上記に挙げた材料の二元以上の合金などが挙げられる。また、光電変換素子同士の接続において、導電材がある程度の変形を要するという観点からは、導電性材料は柔らかい材質のものが好ましく、具体的には、導電材の20℃におけるビッカース硬度が、40(Hv)以下であることが好ましく、25(Hv)以下であることがより好ましく、15(Hv)以下であることが最も好ましい。ビッカース硬度は、負荷荷重50g、負荷時間15秒における値である。これらの条件を満たす材料は、具体的には、例えば、はんだ、銀、金、鉛、銀合金、金合金、鉛合金、スズ合金などが挙げられる。また、導電材は、上記に挙げた材料の炭化物、窒化物、ホウ化物などであってもよい。また、導電材は、導電性カーボンであってもよく、具体的には、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒鉛、カーボンナノチューブなどが挙げられる。また、導電材は、導電性高分子であってもよく、具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどが挙げられる。導電材は、必要に応じて、互いに異なる導電材からなる二層以上の導電層を積層した多層構造としてもよい。また、導電材は上記に挙げた材料などからなる少なくとも一種類の導電性粒子を樹脂などに混合させた導電性フィラー、上記に挙げた材料を含有する導電性フィルムなどであってもよいが、上記に挙げたものに限定されるものではない。
【0025】
光電変換素子は、典型的には、多孔質電極に光増感色素が結合(吸着)した色素増感光電変換素子である。この場合、光電変換素子の製造方法は、多孔質電極に光増感色素を結合(吸着)させる工程を有する。この多孔質電極は、典型的には、半導体からなる微粒子により構成される。半導体は、好適には、酸化チタン(TiO2 )、取り分けアナターゼ型のTiO2 を含む。
【0026】
第1の透明導電性基板は、透明基板の一方の主面の少なくとも一部に透明導電層が設けられている構成を有する。第1の透明導電性基板の透明基板上に設けられる透明導電層は導電性の薄膜であって、シート抵抗が小さいほど好ましい。具体的には500Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがさらに好ましい。これは、シート抵抗が100Ω/□を超えると、透明導電層の内部抵抗が著しく上昇するからである。また薄膜である透明導電層の厚さは、100nm以上500nm以下の範囲であることが好ましい。これは、厚さが100nmよりも薄いと表面抵抗値および内部抵抗が上昇し、500nmを超えると透明導電層に亀裂が入りやすくなるためである。また、透明導電層を構成する材料としては公知の材料を用いることができ、必要に応じて選択され、典型的には、金属酸化物であって、例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO2(FTO)、酸化スズ(IV)SnO2、酸化亜鉛(II)ZnO、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)などが挙げられるが、透明導電層を構成する材料は、これらに限定されるものではなく、金属、鉱物の薄膜でもよく、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)などでもよいが、透明導電層を構成する材料は、これらに限定されない。また、上記で挙げたもの二種類以上を組み合わせて用いることもできる。このことは、第2の透明導電性基板5においても同様である。
【0027】
また、第1の透明導電性基板1は、対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出していることが好ましく、特に、対極の突出部を有する端部の反対側の端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出していることが好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の透明導電性基板5についても同様であり、対向する第1の透明導電性基板1の突出部の長さと第1の透明導電性基板5の突出部の長さとが等しいことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0028】
第1の多孔質電極としては、いわゆるコア−シェル構造の微粒子により構成されたものを用いてもよい。この多孔質電極としては、好適には、金属からなるコアとこのコアを取り巻く金属酸化物からなるシェルとからなる微粒子により構成されたものが用いられる。このような多孔質電極を用いると、この多孔質電極と対極との間に電解質層を設けた場合、電解液の電解質が金属/金属酸化物微粒子の金属からなるコアと接触することがないことから、電解質による多孔質電極の溶解を防止することができる。このため、金属/金属酸化物微粒子のコアを構成する金属として、従来使用が困難であった、表面プラズモン共鳴の効果が大きい金、銀、銅などを用いることができ、光電変換において表面プラズモン共鳴の効果を十分に得ることができる。また、電解液の電解質としてヨウ素系の電解質を用いることができる。金属/金属酸化物微粒子のコアを構成する金属としては、白金、パラジウムなどを用いることもできる。金属/金属酸化物微粒子のシェルを構成する金属酸化物としては使用する電解質に溶解しない金属酸化物が用いられ、必要に応じて選ばれる。このような金属酸化物としては、好適には、酸化チタン(TiO2 )、酸化スズ(SnO2 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )および酸化亜鉛(ZnO)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属酸化物が用いられるが、これらに限定されない。例えば、酸化タングステン(WO3 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )などの金属酸化物を用いることもできる。微粒子の粒径は適宜選ばれるが、好適には1nm以上500nm以下である。また、微粒子のコアの粒径も適宜選ばれるが、好適には1nm以上200nm以下である。これは、第2の多孔質電極においても同様である。
【0029】
光電変換素子モジュールを構成する複数の光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する主面の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極と対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子であってもよいし、互いに隣接する二つの光電変換素子以外の一つまたは複数の光電変換素子がこれと異なる構成を有するものであってもよい。
【0030】
光電変換素子は、最も典型的には、太陽電池として構成される。光電変換素子は、太陽電池以外のもの、例えば光センサーなどであってもよいが、これらに限定されるものではなく、負極と正極とを有し光によって駆動する素子であれば基本的にはどのようなものであってもよい。
【0031】
光電変換素子モジュールは、最も典型的には、太陽電池モジュールとして構成される。ただし、光電変換素子モジュールは、太陽電池モジュール以外のもの、例えば光センサーモジュールなどであってもよい。
【0032】
電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品などである。この場合、光電変換素子は、例えばこれらの電子機器の電源として用いられる太陽電池である。
【0033】
建築物は、典型的にはビルディング、マンションなどの大型建築物であるが、これに限定されず、外壁面を有する建築された構造物であれば、基本的にはどのようなものであってもよい。建築物は、具体的には、例えば、戸建住宅、アパート、駅舎、校舎、庁舎、競技場、球場、病院、教会、工場、倉庫、小屋、車庫、橋などが挙げられ、特に、少なくとも1つの窓部(例えばガラス窓)あるいは採光部を有する建築された構造物であることが好ましいが、建築物は上記に挙げたものに限定されるものではない。
【0034】
建築物に設けられる光電変換素子および/または複数の光電変換素子が電気的に接続されている光電変換素子モジュールのうち、窓部あるいは採光部などに設けられるものは、2枚の透明板の間に挟持し、必要に応じて固定して構成することが好適であって、典型的には、光電変換素子および/または光電変換素子モジュールを2枚のガラス板の間に組み込み必要に応じて固定することによって構成される。
【0035】
本技術は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子を電気的に直列に接続する場合に限定されない。すなわち、本技術は、透明導電性基板と導電性基板との間に光電変換層を有する各種の光電変換素子を電気的に直列に接続する場合に適用することができ、具体的には次の通りである。
【0036】
すなわち、本開示は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、
第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子である。
【0037】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、 互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、
第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールである。
【0038】
また、本開示は、
一方の主面に透明導電層が設けられた第1の透明導電性基板の上記透明導電層が設けられた面と、一方の主面に透明導電層が設けられた第2の透明導電性基板の上記透明導電層が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、
上記第1の透明導電性基板と第2の透明導電性基板との間に導電性基板を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、
第1の透明導電性基板と上記導電性基板との間および第2の透明導電性基板と上記導電性基板との間に第1の光電変換層と第2の光電変換層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法である。
【0039】
また、本開示は、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、 互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、
第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対しても突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において、一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の突出部とを上記導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法である。
【0040】
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する側にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、導電性基板の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板は、上記導電性基板の突出部以外の少なくとも一部が上記導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器である。
【0041】
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子モジュールを有し、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する側にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有し、導電性基板の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板は、上記導電性基板の突出部以外の少なくとも一部が上記導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記導電性基板の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物である。
【0042】
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の対向する側にそれぞれ設けられた第1の光電変換層および第2の光電変換層と、第1の光電変換層と第2の光電変換層との間に設けられた導電性基板とを有する光電変換素子には、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と対極との間に、それぞれ第1の電解質層および第2の電解質層とを有する光電変換素子のほかに、例えば、第1の光電変換層および第2の光電変換層としてp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合を用いる光電変換素子や光電変換層として有機半導体層を用いる光電変換素子などが含まれる。光電変換素子によっては、透明導電性基板および導電性基板の一方または双方が光電変換層に対する電極の役割を果たす。その他のことは、その性質に反しない限り、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と対極との間に、それぞれ第1の電解質層および第2の電解質層とを有する光電変換素子を用いる上記の光電変換素子モジュール、光電変換素子モジュールの製造方法および電子機器に関連して説明したことが成立する。
【0043】
上述の本開示によれば、光電変換素子を両面に発電素子を配置し対極を共通な構成としたので、簡易な構成で両面から入射する光を有効に発電利用可能することができるとともに、低コスト化を図ることができる。さらに、両面に受光部を有する光電変換素子の透明導電性基板の一端部ともう一つの両面に受光部を有する光電変換素子の光電変換素子の対極の一端部とを接続する構成としたので、接続に配線部材を必要としない。このことにより、従来と異なり、光電変換素子モジュールにおいて配線のための無効な面積が発生しない。また、光電変換素子同士の接続に必要なものは透明導電性基板に設けられた導電材だけであり、取り回しの為に配線を長くする必要が無いので配線抵抗が低減する。さらに、配線抵抗低減のために一般的に実施されている高コストの方法を用いる必要もないので、接続コストの大幅な低減が可能である。
【発明の効果】
【0044】
本開示によれば、色素増感光電変換素子やその他の光電変換素子において、簡易な構造で低コストに製造することができ、両面から入射する光を有効に発電利用可能とすることができる。さらに、色素増感光電変換素子やその他の光電変換素子を用いた光電変換素子モジュールの有効面積の大幅な増加を図ることができ、しかも接続コストの大幅な低減を図ることができる。そして、この優れた光電変換素子モジュールを用いることにより、高性能の電子機器および建築物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図2】第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図である。
【図3】第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図である。
【図4】第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図5】第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図である。
【図6】第3の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図7】第4の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図8】第5の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す平面図および断面図である。
【図9】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図および断面図である。
【図10】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図11】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図12】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図13】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図14】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図15】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図16】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの接続の一例を示す斜視図である。
【図17】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図18】第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図19】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図および断面図である。
【図20】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図21】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法を説明するための断面図である
【図22】第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの設置後における素子の脱着を説明するための断面図である
【図23】第8の実施の形態による光電変換素子を示す断面図である。
【図24】第8の実施の形態による光電変換素子モジュールを構成する光電変換素子の別の具体例を示す断面図である。
【図25】第9の実施の形態による光電変換素子を示す断面図である。
【図26】第10の実施の形態による光電変換素子を示す断面図である。
【図27】第11の実施の形態による光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図28】第12の実施の形態による光電変換素子モジュールにおける互いに隣接する二つの光電変換素子の接続部を拡大して示す断面図である。
【図29】従来の太陽電池モジュールを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
2.第2の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
3.第3の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
4.第4の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
5.第5の実施の形態(色素増感光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
6.第6の実施の形態(色素増感光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
7.第7の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
8.第8の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
9.第9の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
10.第10の実施の形態(光電変換素子およびその製造方法)
11.第11の実施の形態(光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
12.第12の実施の形態(光電変換素子モジュールおよびその製造方法)
【0047】
<1.第1の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図1Aは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。図1Bは第3の実施の形態による色素増感光電変換素子10の図3Aに直交する方向の色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
【0048】
図1Aに示すように、この色素増感光電変換素子10は、対極3の両面に第1の色素増感光電変換部および第2の色素増感光電変換部を有する両面型の色素増感光電変換素子であって、対極3の端部3aの少なくとも一部は、透明導電性基板より突出し、透明導電性基板の端部のうち対極3が突出した端部とは逆側の端部の少なくとも一部は、対極3よりも突出している。
【0049】
第1の色素増感光電変換部は、第1の多孔質電極2と、対極3の第1の触媒層3cとの間に第1の電解質層4が設けられている構成を有する。また、第2の色素増感光電変換部は、第1の多孔質電極6と、対極3の第2の触媒層3dとの間に第2の電解質層7が設けられている構成を有する。
【0050】
第1の多孔質電極2は、第1の透明導電性基板1の透明導電層1cの側の少なくとも一部に設けられ、第2の多孔質電極6は、第2の透明導電性基板5の透明導電層1cの側の少なくとも一部に設けられる。第1の透明導電性基板1と第2の多孔質電極6とは、それぞれの多孔質電極同士が互いに対向するように設けられ、その間に一定間隔を置いて対極3が設けられる。第1の多孔質電極2と対極3との間および第2の多孔質電極2と対極の間には、それぞれ電解液が充填された第1の電解質層4と第2の電解質層7とが設けられている。対極3の端部3aは、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出している。また、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部3aが突出している端部と反対側の端部である端部1aおよび端部5aが対極3に対して突出している。光は、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5にそれぞれ入射する。
【0051】
対極3は、金属基板3b上の、一方の主面の少なくとも一部に第1の触媒層3cが設けられ、もう一方の主面の少なくとも一部に第2の触媒層3dが設けられる。第1の触媒層3と第1の多孔質電極2とは互いに対向するように設けられている、第2の触媒層3dも同様に第2の多孔質電極6と対向して設けられている。また、対極3の端部3aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出する場所は、色素増感光電変換素子10の、側面の任意の場所の少なくとも一部であればよい。また、第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aが対極3から突出する場所は、対極3の端部3aが突出している場所に対向する場所であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、色素増感光電変換素子10の側面の任意の位置のうち対極3の端部3aが突出している場所以外の少なくとも一部であればよい。
【0052】
第1の多孔質電極2と第1の対極3との間、第2の多孔質電極6と第2の対極3との間には電解液などが充填されており、これらがそれぞれ第1の電解質層4および第2の電解質層7を形成している。第1の透明導電性基板と対極3との間、第2の透明導電性基板と対極3との間および/または第1の透明導電性基板と第2の透明導電性基板との間には、第1の電解質層4と、第2の電解質層7とをそれぞれ囲むようにして封止材8が設けられている。
【0053】
第1の多孔質電極2と対極3との間隔は、例えば、1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の多孔質電極2と対極3との間隔においても同様である。第1の多孔質電極2および第2の多孔質電極6には、それぞれ一種又は複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。
【0054】
また、第1の透明導電性基板1を構成する透明基板1bと対極3を構成する金属基板3bとの距離は、例えば、30μm以上100μm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の透明導電性基板5を構成する透明基板5bと対極3を構成する金属基板3bとの距離も同様である。
【0055】
第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とは、好適には、互いにほぼ同じ大きさの長方形の形状を有し、平行かつ平行線に関し線対称な位置に設けられるが、これに限定されるものではない。第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5と、対極3とは、対極3の端部3aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出するように設けられ、第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aとが対極3に対して突出するような配置で設けられる。具体的には、例えば、第1の透明導電性基板1、第2の透明導電性基板5および対極3のそれぞれの主面が同じ大きさである場合には、それらの面に平行な方向に互いにずれて配置される。そうすると、対極3の一方の端部3aが素子本体から突出し、対極3の端部3aとは反対方向の、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aが対極3に対してそれぞれ突出する。端部1aの透明導電層1c上および端部5aの透明導電層5c上には、それぞれに少なくとも1つの銀などからなる電極が一定間隔を置いて互いに対向して設けられ、この場合においては導電材9が設けられる。
【0056】
対極3の端部3aの、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から突出する部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第1の透明導電性基板1の端部1aの対極3から突出している部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第2の透明導電性基板5の端部5aの対極3から突出している部分の長さは1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、対向する第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aとの突出部の長さは等しいことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0057】
導電材9は、色素増感光電変換素子10の一辺に平行にほぼその全長に渡って延在する長尺形状を有する。また、導電材9は、好適には、例えば、対極3の断面長手方向に関して線対称な位置にそれぞれ設けられるが、これに限定されるものではない。導電材9の厚さは、30μm以上1000μm以下であることが好ましく、30μm以上500μm以下であることがより好ましく、30μm以上100μm以下であることが最も好ましい。また、互いに対向して設けられた導電材9の間隔は、例えば、対極3の金属基板3bの断面短手方向の長さの85%以上99%以下であることが好ましく、90%以上99%以下であることがより好ましく、95%以上99%以下であることが最も好ましい。互いに対向して設けられた導電材9の具体的な間隔としては、例えば、0.3mm以上6mm以下であることが好ましく、0.3mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上4mm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、図1Bに示すように、図1Aに示した色素増感光電変換素子10の断面とは直交する方向の断面においては、第1の透明導電性基板1の両側の端部1dおよび1eと第2の透明導電性基板5の両側の端部5dおよび5eとが、対極3に対して突出しており、突出部には上述したものと同様に導電材9が設けられている。第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の上記突出部は、いずれか一方の対向する端部のみであってもよい。
【0059】
導電材9は、上記に挙げた導電性材料を適宜選択して構成することができる。特に、導電材9を厚く構成する場合においては、導電材9を多層構造とすることが好ましい。
【0060】
第1の多孔質電極2としては、典型的には、半導体微粒子を焼結させた多孔質半導体層が用いられる。光増感色素はこの半導体微粒子の表面に結合(吸着)している。半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する半導体などを用いることができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体であることが好ましい。具体的には、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3 )、酸化ニオブ(Nb2 O5 )、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3 )、酸化スズ(SnO2 )などの半導体が用いられる。これらの半導体の中でも、TiO2 、取り分けアナターゼ型のTiO2 を用いることが好ましい。ただし、半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて、二種以上の半導体を混合または複合化して用いることができる。また、半導体微粒子の形態は粒状、チューブ状、棒状などのいずれであってもよい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0061】
上記の半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1nm以上200nm以下が好ましく、特に好ましくは5nm以上100nm以下である。また、半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を混合し、この粒子で入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均サイズは20nm以上500nm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0062】
第1の多孔質電極2は、できるだけ多くの光増感色素を結合させることができるように、半導体微粒子からなる多孔質半導体層の内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましい。このため、第1の多孔質電極2を第1の透明導電性基板1の上に形成した状態での実表面積は、第1の多孔質電極2の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。この比に特に上限はないが、通常1000倍程度である。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0063】
一般に、第1の多孔質電極2の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積に保持することができる光増感色素の量が増加するため、光吸収率が高くなる。一方、第1の多孔質電極2の厚さが増加すると、光増感色素から第1の多孔質電極2に移行した電子が第1の透明導電性基板1に達するまでに拡散する距離が増加するため、第1の多孔質電極2内での電荷再結合による電子の損失も大きくなる。従って、第1の多孔質電極2には好ましい厚さが存在するが、この厚さは一般的には0.1μm以上100μm以下であり、1μm以上50μm以下であることがより好ましく、3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0064】
第1の電解質層4を構成する電解液としては、酸化還元系(レドックス対)を含む溶液が挙げられる。酸化還元系としては、適切な酸化還元電位を有する物質であれば、特に制限はない。具体的には、酸化還元系としては、例えば、ヨウ素(I2 )と金属または有機物のヨウ化物塩との組み合わせや、臭素(Br2 )と金属または有機物の臭化物塩との組み合わせなどが用いられる。金属塩を構成するカチオンは、例えば、リチウム(Li+ )、ナトリウム(Na+ )、カリウム(K+ )、セシウム(Cs+ )、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)などである。また、有機物塩を構成するカチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、イミダゾリウムイオン類などの第四級アンモニウムイオンが好適なものであり、これらを単独に、あるいは二種以上を混合して用いることができる。このことは、第2の電解質層7においても同様である。
【0065】
第1の電解質層4を構成する電解液としては、上記のほかに、コバルト、鉄、銅、ニッケル、白金などの遷移金属からなる有機金属錯体の酸化体・還元体の組み合わせ、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオールとアルキルジスルフィドとの組み合わせなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノンとキノンとの組み合わせなどを用いることもできる。このことは、第2の電解質層7においても同様である。
【0066】
第1の電解質層4を構成する電解液の電解質としては、上記の中でも特に、ヨウ素(I2 )と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、イミダゾリウムヨーダイドなどの第四級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M以上10M以下が好ましく、さらに好ましくは0.2M以上3M以下である。ヨウ素(I2 )または臭素(Br2 )の濃度は0.0005M以上1M以下が好ましく、さらに好ましくは0.001M以上0.5M以下である。このことは、第2の電解質層7においても同様である。
【0067】
電解液の電解質としては、上記の中でも特に、ヨウ素(I2 )と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、イミダゾリウムヨーダイドなどの第4級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好適なものである。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M以上10M以下が好ましく、さらに好ましくは0.2M以上3M以下である。ヨウ素I2 または臭素Br2 の濃度は0.0005M以上1M以下が好ましく、さらに好ましくは0.001M以上0.5M以下である。また、開放電圧や短絡電流を向上させる目的で4−tert−ブチルピリジンやベンズイミダゾリウム類などの各種添加剤を加えることもできる。
【0068】
電解液を構成する溶媒としては、一般的には、水、アルコール類、エーテル類、エステル類、炭酸エステル類、ラクトン類、カルボン酸エステル類、リン酸トリエステル類、複素環化合物類、ニトリル類、ケトン類、アミド類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、炭化水素などが用いられる。
【0069】
電解液を構成する溶媒としてはイオン液体を用いてもよく、こうすることで電解液の揮発の問題を改善することができる。イオン液体としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。
【0070】
第1の多孔質電極2に結合させる光増感色素は、増感作用を示すものであれば特に制限はなく、有機金属錯体、有機色素、金属・半導体ナノ粒子などを用いることができるが、この第1の多孔質電極2の表面に吸着する酸官能基を有するものが好ましい。この光増感色素は、一般的には、カルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。光増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素、トリフェニルメタン系色素、インドリン系色素、ペリレン系色素、ポリチオフェンなどのπ共役系高分子やそのモノマーの2量体以上20量体以下、CdS、CdSeなどの量子ドットなどが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、光増感色素は、これらに限定されるものではない。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0071】
光増感色素の第1の多孔質電極2への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに第1の多孔質電極2を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を第1の多孔質電極2上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0072】
第1の多孔質電極2に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて第1の多孔質電極2の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0073】
第1の触媒層3cの材料としては、導電性物質または還元反応に対する触媒作用を有する構成であれば基本的にはどのようなものであってもよいが、絶縁性材料の、第1の電解質層4に面している側に導電層が形成されていれば、これも用いることが可能である。第1の触媒層3cの材料としては、電気化学的に安定な材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、導電性ポリマーなどを用いることが望ましい。
【0074】
特にカーボンを用いる場合には、第1の触媒層3cは、カーボンと無機バインダとを有する構成が好適である。カーボンは、炭素単体からなる物質であれば基本的にはどのようなものであってもよい。カーボンは、好適には、カーボン粒子が挙げられる。カーボン粒子の具体例としては、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは比表面積の大きなものが好適である。また、カーボンブラックは電気電導率の高いものが好適である。また、カーボンブラックはストラクチャ構造を形成しやすいものが好適である。また、カーボンブラックの一次粒子径の平均粒径は、3nm以上40nm以下であることが好ましく、3nm以上24nm以下であることがより好ましく、3nm以上15nm以下であることが最も好ましい。カーボンブラックは、具体的には、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどが挙げられ、この中でも安価で比表面積の大きいケッチェンブラックが好適であるが、カーボンブラックはこれらのものに限定されるものではない。また、カーボンは上記で挙げたものの他に、線状または棒状のカーボン、グラファイト、黒鉛、アモルファスカーボン(ガラス状カーボン)、カーボン繊維、活性炭、石油コークス、C60 、C70 などのフラーレン類、単層または多重層のカーボンナノチューブなどであってもよい。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0075】
無機バインダは、電解質に侵されず、電気化学的に安定であり、カーボンを結着できる無機材料であれば基本的にはどのようなものであってもよく、具体的には、金属半導体、金属酸化物、ガラス組成物などであって、金属半導体であれば、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In2O3)などであって、金属酸化物であれば、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニア(ZrO2)、酸化シリコン(SiO2)、スピネル(MgAl2O4)などであって、ガラス組成物であれば、例えば、ガラスフリット、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)などが挙げられる。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0076】
カーボンと無機バインダとの含有量の比率は特に限定されるものではないが、触媒層6の全体質量を100%としたときに、無機バインダが10%以上60%以下含有されていることが好適であって、15%以上35%以下含有されていることがより好適である。触媒層6に含有される無機バインダが10%より少ないと触媒層6の結着力が著しく低くなってしまうからである。また触媒層6に含有される無機バインダが60%を超えると、触媒層6中のカーボンが減少することで触媒活性点が減少し、還元反応における触媒作用が低下し、ひいては光電変換効率の低下を招いてしまうからである。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0077】
また、第1の触媒層3cでの還元反応に対する触媒作用を向上させるために、第1の電解質層4に接している第1の触媒層3cの表面は、微細構造が形成され、実表面積が増大するように形成されていることが好ましい。例えば、第1の触媒層3cの表面は、白金であれば白金黒の状態に、導電性カーボンであれば多孔質カーボンの状態に形成されていることが好ましい。白金黒は、白金の陽極酸化法や塩化白金酸処理などによって、また多孔質カーボンは、導電性カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法によって形成することができる。このことは、第2の触媒層3dにおいても同様である。
【0078】
金属基板3bの材料としては、金属であれば任意のものを用いることができ、特に導電性に優れたものであることが好適である。金属は、金属単体、合金などが挙げられ、金属単体であれば、例えば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)などが挙げられ、合金であれば、上記で挙げた金属材料の二元合金、三元合金などが挙げられ、例えば、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金など挙げられる。特に、上記で挙げた金属の中でも耐電解液性を有するものが好ましく、典型的には、チタン(Ti)およびその合金などを材料として用いるが、金属基板3bの材料は、これらのものに限定されるものではない。また、金属基板3bの板厚は0.3mm以上6mm以下であることが好ましく、0.3mm以上5mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上4mm以下であることが最も好ましいが、これらのものに限定されるものではない。
【0079】
封止材6の材料としては、耐光性、絶縁性、防湿性などを備えた材料を用いることが好ましい。封止材の材料の具体例を挙げると、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、各種熱融着フィルムなどである。
【0080】
次に、この色素増感光電変換素子10の具体的に形態例について説明する。
【0081】
図2A〜Cおよび図3A〜Bは、色素増感光電変換素子10の具体的な形態の例を第2の透明導電性基板5の主面上方から見た平面図である。図2A〜Cに示すように、この例においては、長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出しており、それ以外の少なくとも一辺は、対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が突出している形態を有する。
【0082】
図3A〜Bに示すように、この例においては、主面が長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する二辺に渡る部分から対極3が突出しており、それ以外の少なくとも一辺、典型的には対極3の突出部とは反対側の隣接する二辺の少なくとも一辺は、対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が突出している形態を有するが、色素増感光電変換素子10の形態は上記のものには限定されず、適宜形態を選択することができ、具体的には、例えば、円形、楕円形、雲形、星形、n角形(n≧3)などであってもよい。
【0083】
また、第1の多孔質電極2、第1の触媒層3および第1の電解質層4で構成される第1の色素増感光電変換部と、第2の多孔質電極6、第2の触媒層3dおよび第2の電解質層7とで構成される第2の色素増感光電変換部とは、同一の材料、構成であっても良いし、別の材料、構成であってもよく、使用用途に応じて、上記に挙げた材料、構成などから適宜選択される。また、第1の色素増感光電変換部を
【0084】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子の動作について説明する。この説明においては、光が第1の透明導電性基板1のみに入射したことを想定する。
【0085】
この色素増感光電変換素子10は、光が第1の透明導電性基板1に入射すると、対極3を正極、第1の透明導電性基板1を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、第1の多孔質電極2の材料としてTiO2 を用い、レドックス対としてI- /I3 - の酸化還元種を用いることを想定しているが、これに限定されるものではない。
【0086】
第1の透明導電性基板1を透過し、第1の多孔質電極2に入射した光子を第1の多孔質電極2に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と第1の多孔質電極2との間の電気的結合を介して、第1の多孔質電極2を構成するTiO2 の伝導帯に引き出され、第1の多孔質電極2を通って第1の透明導電性基板1に到達する。
【0087】
一方、電子を失った光増感色素は、第1の電解質層4中の還元剤、例えばI- から下記の反応によって電子を受け取り、第1の電解質層4中に酸化剤、例えばI3 - (I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2 + 2e-
I2 + I- → I3 -
【0088】
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極3に到達し、上記の反応の逆反応によって対極3から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
I3 - → I2 + I-
I2 + 2e- → 2I-
【0089】
色素増感光電変換素子モジュールの一方の末端の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、色素増感光電変換素子モジュールの他方の末端の色素増感光電変換素子10の対極3に戻る。このようにして、光増感色素にも第1の電解質層4にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。このことは、第2の透明導電性基板5に光が入射した場合においても同様に光エネルギーが電気エネルギーに変換され、上記の説明において、第1の透明導電性基板1が第2の透明導電性基板5に、第1の多孔質電極2が第2の多孔質電極6に、第1の電解質層4が第2の電解質層7にそれぞれ置き換えられる。
【0090】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、透明基板1bを用意する。次に、透明基板1bの一主面にスパッタリング法などにより透明導電層1cを形成して、これを第1の透明導電性基板1とする。同様に、透明基板5bに透明導電層5cを形成して、これを第2の透明導電性基板5とする。
【0091】
次に、第1の透明導電性基板1の透明導電層1c上の少なくとも一部に、第1の多孔質電極2を形成する。同様に、第2の透明導電性基板5の透明導電層5c上の少なくとも一部に、第2の多孔質電極6を形成する。第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6とは、第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とを互いに対向させて配置した時に、第1の透明導電性基板1の長手方向に平行な線に関して線対称な位置となるように形成することが好ましい。また、第1の透明導電性基板1の端部を突出させるために、第1の透明導電性基板1の少なくとも一方の端部には第1の多孔質電極2を形成しないことが好ましく、同様に、第2の透明導電性基板5の少なくとも一方の端部には第2の多孔質電極6を形成しないことが好ましい。第1の透明導電性基板1における第1の多孔質電極2を形成する位置は、具体的には、例えば、第1の透明導電性基板1の主面上の少なくとも1方向において、第1の透明導電性基板1の断面長手方向における中心から所定の距離ずれた位置が第1の多孔質電極2の中心線となるように形成する。第2の多孔質電極6も、第1の多孔質電極2と同様に第2の透明導電性基板5の中心からずらして形成するが、これに限定されるものではない。
【0092】
第1の多孔質電極2の形成方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合、湿式製膜法を用いるのが好ましい。湿式製膜法では、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し、この分散液を透明基板1の透明導電層1c上に塗布または印刷する方法が好ましい。分散液の塗布方法または印刷方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。塗布方法としては、具体的には、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0093】
半導体微粒子の材料としてアナターゼ型TiO2 を用いる場合、このアナターゼ型TiO2 は、粉末状、ゾル状、またはスラリー状の市販品を用いてもよいし、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを形成してもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、ペースト状分散液の調製時に、乳鉢やボールミルなどを使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解消された粒子が再度凝集するのを防ぐために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などをペースト状分散液に添加することができる。また、ペースト状分散液の粘性を増すために、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいはセルロース系の増粘剤などの各種増粘剤をペースト状分散液に添加することもできる。のことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0094】
第1の多孔質電極2は、半導体微粒子を透明導電層1c上に塗布または印刷した後に、半導体微粒子同士を電気的に接続し、第1の多孔質電極2の機械的強度を向上させ、透明導電層1cとの密着性を向上させるために、焼成させて形成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、温度を上げ過ぎると、透明導電層1cの電気抵抗が高くなり、さらには透明導電層1cが溶融することもあるため、通常は40℃以上700℃以下が好ましく、40℃以上650℃以下がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分以上10時間以下程度である。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0095】
第1の多孔質電極2を焼成後、半導体微粒子の表面積を増加させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば、四塩化チタン水溶液や直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルによるディップ処理を行ってもよい。透明導電層1cを支持する透明基板1としてプラスチック基板を用いる場合には、結着剤を含むペースト状分散液を用いて透明導電層1c上に第1の多孔質電極2を製膜し、加熱プレスによって透明導電層1cに圧着することも可能である。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0096】
次に、第1の多孔質電極2が形成された第1の透明導電性基板1を、光増感色素を所定の溶媒に溶解した溶液中に浸漬することにより、第1の多孔質電極2に光増感色素を結合させる。同様に第2の多孔質電極6にも光増感色素を結合させる。
【0097】
光増感色素の第1の多孔質電極2への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を、例えば、アルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに第1の多孔質電極2を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を第1の多孔質電極2上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。また、必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。また、第1の多孔質電極2に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて第1の多孔質電極2の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。このことは、第2の多孔質電極6においても同様である。
【0098】
次に、金属基板3bである金属板を用意し、金属基板3bの両主面上に、それぞれ第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dを形成する。第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dは、金属基板3bの両主面の任意の場所にそれぞれ形成できるが、第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dは、金属基板3bの断面短手方向における中心線に関して線対称な位置に形成することが好ましい。また、対極3の端部3aを突出させるために、対極3の少なくとも一端部には第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dを形成しないことが好ましい。対極3の突出部である端部3aを形成するために、具体的には、例えば、第1の触媒層3cを、主面上の少なくとも1方向において、対極3の断面長手方向における中心から所定の距離ずれた位置が第1の触媒層3cの中心線となるように形成し、第2の触媒層3dも、同様に、第2の透明導電性基板5の中心からずらして形成するが、第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dを形成する位置は、これに限定されるものではない。
【0099】
第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dの形成方法は湿式製膜法を用いる。湿式製膜法ではペースト状の分散液を調製し、この分散液を金属基板3bの一方の主面上の少なくとも一部に塗布または印刷する方法が好ましい。塗布方法としては、具体的には、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができ、また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。これらの湿式製膜法の中でも、第1の触媒層3cは、パターン塗布による成膜を行う必要がある。これは、金属基板3bの一方の主面上のうち端部3a以外の場所に選択的に形成することが好ましいためだからである。パターン塗布による成膜は、スクリーン印刷法を用いることが好適である。触媒層6の形成方法は、具体的には、例えば、カーボンと、有機バインダと、無機バインダとを溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し印刷用ペーストとする。
【0100】
次に、金属基板3bの一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの一方の主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。次に、金属基板3bのもう一方の主面にも同様に、金属基板3bのもう一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの両主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。
【0101】
上記スクリーン印刷用ペーストに配合するカーボンおよび無機バインダは上記に挙げた材料を適宜選択することができるが、好適には、カーボンとしてカーボンブラック、無機バインダとして酸化チタン(TiO2)が選ばれる。
【0102】
有機バインダは、具体的には、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カルボキシルビニルポリマなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、配合する有機バインダの分量を変えることによって、スクリーン印刷用ペーストのレオロジーを適宜制御することが可能である。
【0103】
また、溶媒としては、スクリーン印刷において良好な印刷を実現するために、高沸点溶媒が好適である。溶媒は、具体的には、例えば、テルピネオール、2−(2−n−ブトキシ)エタノール、1−フェノキシプロパン−2−オール、ブチルカルビトールなどが挙げられる。溶媒の沸点は200℃以上のものが好適であるが、これに限定されるものではない。また、高沸点の溶媒に、カーボン材料や有機バインダなどを高分散に維持する目的や、スクリーン印刷の塗布性を改善する目的で、低沸点の溶媒を混合させて用いてもよい。
【0104】
また、焼成温度の範囲には特に制限は無いが、有機バインダを消失させる必要性から、焼成温度は200℃以上800℃以下であることが好適であって、300℃以上500℃以下であることがより好適である。焼成温度が200℃よりも低いと、有機バインダを消失させることができず、また、焼成温度が800℃を超えると金属基板3bなどに物質変化や変形が起きる恐れがあるからである。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分以上10時間以下程度である。
【0105】
次に、得られた塗膜を焼成する。これは、塗膜を焼成することによって、カーボン同士が電気的に接続しており、機械的強度が高く、さらに金属基板3bと第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dとの結着性の高い対極3得られるからである。また、塗膜を焼成することによって、上記塗膜中の有機バインダが消失し、得られる対極3の第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3d中には細孔が形成され実表面積が大きくなるからである。
【0106】
また、対極3は、例えば、金属基板3bの両面の全面に例えばスパッタリング法などにより第1の触媒層3cまたは第1の触媒層3dの材料となる白金などの膜を形成した後、この膜をエッチングによりパターニングすることにより形成することもできる。
【0107】
次に、第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とを、所定の間隔を置いて互いに対向させて配置する。このとき対向する面は、それぞれ、第1の多孔質電極2が設けられている面、第2の多孔質電極6が設けられている面とする。第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とは、典型的には平行かつ平行線に関し線対称な位置に設けられるが、これに限定されるものではない。
【0108】
次に、第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6との間に一定間隔を置いて対極3を設ける。第1の多孔質電極2と対極3との間隔は、例えば、1μm以上100μm以下であることが好適であって、1μm以上50μm以下であることがより好適である。これは、第2の多孔質電極においても同様である。
【0109】
対極3は、典型的には、第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6とに平行に、第1の多孔質電極2と第2の多孔質電極6との間に一定距離を置いて設けられるが、これに限定されるものではない。また、対極3は、端部3aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から突出し、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aが対極3に対して突出するように設けられる。対極3は、具体的には、例えば、第1の透明導電性基板1の断面長手方向における中心線または第2の透明導電性基板5の断面長手方向における中心線に関して、直交する方向に一定距離ずらして設けられるが、これに限定されるものではない。
【0110】
そして、第1の透明導電性基板と対極3との間、第2の透明導電性基板と対極3との間および/または第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5との間をそれぞれ囲むようにして封止材8を形成し、第1の電解質層4および第2の電解質層7を構成する電解液が封入される空間を作り、この空間に例えば第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とにそれぞれ予め形成された注液口(図示せず)から電解液を注入し、第1の電解質層4および第2の電解質層7をそれぞれ形成する。その後、この注液口を塞ぐ。封止材8は、対極3の端部3aの内側、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aの内側にそれぞれ形成される。
【0111】
次に、端部1aにおける透明導電層1cの面上および端部5aにおける透明導電層5cの面上に、銀などからなる電極である導電材9をそれぞれ形成する。互いに対向して形成された導電材9は接触しないように所定の間隔が設けられている。また、導電材9は、好適には、対極3の断面長手方向の中心線に関して線対称な位置にそれぞれ形成し、色素増感光電変換素子10の一辺に平行にほぼその全長に渡って延在する長尺形状となるように形成する。
【0112】
また、導電材9を多層構造とすることも好ましく、具体的には、上述した体積抵抗率の値を満たす導電性材料からなる導電部材を第1の透明導電層1cおよび第2の透明導電層5cの面上にそれぞれ接合し、上記導電部材の互いに対向する面に、上述したビッカース硬度の値を満たす柔らかい導電性材料を積層して導電層を形成し、これを導電材9とするが、これに限定されるものではなく、単一の導電性材料で導電材9を構成しても良いし、3層以上の多層構造で導電材9を構成してもよい。上記導電層の厚さは、100μm以上300μm以下であることが好ましい。また、導電部材は、例えば、上記に挙げた導電性材料などから適宜選ばれるが、これらのものに限定されるものではない。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子10が製造される。
【0113】
<実施例1>
色素増感光電変換素子を以下のようにして製造した。
第1の多孔質電極2および第2の多孔質電極6を形成する際の原料であるTiO2 のペースト状分散液は、「色素増感太陽電池の最新技術」(荒川裕則監修、2001年、(株)シーエムシー)を参考にして作製した。すなわち、まず、室温で撹拌しながらチタンイソプロポキシド125mlを0.1Mの硝酸水溶液750mlに徐々に滴下した。滴下後、80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌を続けたところ、白濁した半透明のゾル溶液が得られた。このゾル溶液を室温になるまで放冷し、ガラスフィルタでろ過した後、溶媒を加えて溶液の体積を700mlにした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱反応を行わせた後、1時間超音波処理して分散化処理を行った。次に、この溶液をエバポレータを用いて40℃で濃縮し、TiO2 の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、TiO2 の質量の20%分のポリエチレングリコール(分子量50万)と、TiO2 の質量の30%分の粒子直径200nmのアナターゼ型TiO2 とを添加し、撹拌脱泡機で均一に混合し、粘性を増加させたTiO2 のペースト状分散液を得た。
【0114】
次に、透明基板1bの一主面の全面に透明導電層1cが設けられた第1の透明導電性基板1として、日本板硝子製アモルファス太陽電池用FTO基板(シート抵抗10Ω/□)を用意した。次に、このFTO基板を0.2mol/lの四塩化チタン溶液に70℃、40分間浸漬した。その後、純水で洗浄しエタノールを用いてリンスを行い十分に乾燥させた。第1の透明導電性基板1は、大きさ125mm×125mm、厚さ4mmである。第2の透明導電性基板5も第1の透明導電性基板1と同じものを用意する。
【0115】
次に、上記のTiO2 のペースト状分散液を、第1の透明導電性基板1である第1のFTO基板上の透明導電層1cであるFTO層の上にブレードコーティング法によって塗布し、大きさ113mm×110mm、厚さ20μmの微粒子層を形成した。微粒子層は、第1のFTO基板上の断面長手方向の中心から右方向に1.5mmずれた位置を微粒子層の中心として、直交する方向に関して左右対称となるように形成した。また、第2のFTO基板上には、断面長手方向の中心から左方向に1.5mmずれた位置を微粒子層の中心として、直交する方向に関して左右対称となるように形成した。その後、500℃に30分間保持して、TiO2 微粒子をFTO層上に焼結した。焼結されたTiO2 膜へ0.1Mの塩化チタン(IV)TiCl4 水溶液を滴下し、室温下で15時間保持した後、洗浄し、再び500℃で30分間焼成を行った。この後、紫外光照射装置を用いてTiO2 焼結体に紫外光を30分間照射し、このTiO2 焼結体に含まれる有機物などの不純物をTiO2 の光触媒作用によって酸化分解して除去し、TiO2 焼結体の活性を高める処理を行い、第1の酸化チタン層を得た。第2の酸化チタン層も上記と同様に、第2のFTO基板上のFTO層上に形成することで得た。
【0116】
光増感色素として、十分に精製したZ991色素23.8mgを、アセトニトリルとtert−ブタノールとを1:1の体積比で混合した混合溶媒50mlに溶解させ、光増感色素溶液を調製した。
【0117】
次に、第1の酸化チタン層をこの光増感色素溶液に室温下で24時間浸漬し、TiO2 微粒子表面に光増感色素を保持させた。次に、4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液およびアセトニトリルを順に用いて第1の多孔質電極2を洗浄した後、暗所で溶媒を蒸発させ、乾燥させた。第2の酸化チタン層においても同様の処理を行った。こうして、第1のFTO基板上に形成された第1の多孔質電極と、第2のFTO基板上に形成された第2の多孔質電極とを得た。
【0118】
一方、溶媒としての3−メトキシプロピオニトリル(MPN)に、1.0Mの1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド(MPImI)、0.1Mのヨウ素I2 、そして添加剤として0.3MのN−ブチルベンズミダゾール(NBB)を溶解させ、電解液を調製した。
【0119】
次に、金属基板3bとして大きさ115mm×120mm、厚さ0.5mmの純チタン板を用意した。次に、上記チタン板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し大きさ113mm×110mmの塗膜を形成した。塗膜は、上記チタン板の主面上の任意の一端から6mm形成し、上記一端と直交する方向の上記チタン板の中心線に関して線対称に形成した。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、上記チタン板上に第1のカーボン層を有する対極を得た。同様に、上記チタン板上の第1のカーボン層が形成されている側とは逆側の主面に第2のカーボン層を形成した。第2のカーボン層は、第1のカーボン層が形成されている位置と、上記チタン板の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に形成した。また、第1および第2のカーボン層をチタン板に形成する場合において、上記チタン板の両面にそれぞれ塗膜を形成してから、加熱、乾燥することによって第1および第2のカーボン層を形成してもよい。
【0120】
次に、得られた第1のカーボン層および第2のカーボン層の焼成を行った。1時間30分で400℃にまで昇温させ、400℃で30分保持し焼成した。この工程により、完全にエチルセルロースを分解し消失させることで、チタン板の両主面に第1の触媒層と第2の触媒層とを有する対極が得られた。得られた第1の触媒層と第2の触媒層の厚みは約45μmであった。また、対極3を製造する場合において、チタン板の主面上に第1の触媒層を形成してから、反対側の主面上に第2の触媒層を形成してもよい。
【0121】
次に、第1のFTO基板の第1の多孔質電極が設けられている面と第2のFTO基板5の第1の多孔質電極が設けられている面とを、所定の間隔を置いて互いに対向させる。
【0122】
次に、第1の多孔質電極と第2の多孔質電極との間に一定間隔を置いて対極を設ける。第1の多孔質電極と対極との間隔は25μmとした。第2の多孔質電極と対極との間隔も同様に25μmとした。このことは、第2の多孔質電極においても同様である。
【0123】
第1のFTO基板と第2のFTO基板とは、対極3の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に設けられ、対極は、第1の触媒層と第1の多孔質電極とが、それぞれの断面長手方向の中心線が共通となるように設けられる。これにより、対極は、対極の端部が第1のFTO基板および第2のFTO基板から突出し、第1のFTO基板の端部および第2のFTO基板の端部が対極に対して突出するように設けられる。突出部の長さは、それぞれのFTO基板の端部、対極の端部がともに3mmであった。
【0124】
そして、第1のFTO基板と対極との間、第2のFTO基板と対極との間、第1のFTO基板と第2のFTO基板との間をそれぞれ囲むようにして厚さ30μmのアイオノマー樹脂フィルムとアクリル系紫外線硬化樹脂で封止する。
【0125】
次に、電解液を、予め第1のFTO基板と第2のFTO基板とに設けた注液口から送液ポンプを用いてそれぞれ注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。こうして第1の電解質層と第2の電解質層とが形成される。この後、注液口をアイオノマー樹脂フィルム、アクリル樹脂およびガラス基板で封止した。次に、第1のFTO基板の端部におけるFTO層の面上および第2のFTO基板の端部におけるFTO層の面上に、銀合金からなる導電材をそれぞれ形成する。導電材9の厚さは50μmであって、奥行き方向に平行に延在する長尺形状を有する。互いに対向する導電材9の間隔は0.4mmであった。こうして色素増感光電変換素子を完成した。
【0126】
この第1の実施の形態によれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この色素増感光電変換素子においては、両主面に触媒層3cを有する対極3に関して対向する位置に、一定間隔をおいて第1の多孔質電極2および第2の多孔質電極6が設けられ、それぞれの間には電解液が充填された第1の電解質層4と第2の電解質層7を有する。このため、この色素増感光電変換素子10においては、両主面に入射した光を有効に発電利用することが出来る。また、対極3を共通化したので、色素増感光電変換素子10の構成部材を削減することができ、製造工程も省略することが出来る。これによって、両面から照射される光を有効に発電利用可能であって、光電変換特性が優れた色素増感光電変換素子を低コストで製造することができる。
【0127】
<2.第2の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図4Aは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。図4Bは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10の図2Aに直交する方向の色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図4Aに示すように、この色素増感光電変換素子10は、対極3の両側の端部3eおよび3fが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出している。また、図4Bに示すように、端部3eおよび3fが突出する方向とは直交する方向には、第1の透明導電性基板1の両側の端部である1dおよび5dと、第2の透明導電性基板5の両側の端部である1eおよび5eとが対極3に対して突出しており、それぞれの透明導電性基板の突出部には上述したものと同様に導電材9が設けられている。また、透明導電性基板の突出部は、一方の対向する端部のみであってもよい。
【0128】
図5A〜Cは、この色素増感光電変換素子10の具体的な形態例を第2の透明導電性基板5の主面上方から見た平面図である。図5AおよびBに示すように、この例においては、主面が長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の対向する2辺のそれぞれ少なくとも一部から対極3が突出しており、それ以外の少なくとも一辺は、対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5が突出している形態を有する。また、図5Cに示すように、この例においては、長方形の形状を有する色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する三辺に渡る部分から対極3が突出しており、それ以外一辺は対極3に対して第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5が突出している形態を有するが、色素増感光電変換素子10の形態は上記のものには限定されず、適宜形態を選択することができ、具体的には、例えば、円形、楕円形、雲形、星形、n角形(n≧3)などであってもよい。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0129】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0130】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から両端部が突出可能な大きさの金属基板3bを用いて対極3を形成し、対極3の両側の端部3e、3fを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出するように色素増感光電変換素子10を形成する。第1の触媒層3cおよび第2の触媒層3dは、対極3の両側の端部3e、3fを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出可能で、かつ第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の直交する端部の少なくとも一方が突出可能な位置および大きさで形成する。また、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5と対極3とを、対極3の両側の端部3a、3hを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出させ、かつ第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の直交する端部の少なくとも一方が突出するように配置する。上記以外のことは、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0131】
<実施例2>
金属基板3bとして大きさ131mm×112mm、厚さ0.5mmの純チタン板を用意した。
次に、上記チタン板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し大きさ113mm×110mmの塗膜を形成した。塗膜は、チタン板の中央部に形成した。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、チタン板上にカーボン層である第1の触媒層を有する対極を得た。同様に、チタン板上の第1の触媒層3が形成されている側とは逆側の主面に第2の触媒層を形成した。第2の触媒層も、同様にチタン板の中央部に形成した。
【0132】
次に、第1のFTO基板の第1の多孔質電極が設けられている面と第2のFTO基板の第1の多孔質電極が設けられている面とを、所定の間隔を置いて互いに対向させる。このとき、対極3の両端部が第1のFTO基板および第2のFTO基板から突出するように設けられ、対極3の両端部の突出部の長さはともに3mmであった。上記以外のことは実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0133】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることが出来る。
【0134】
<3.第3の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図6は第3の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図6に示すように、この色素増感光電変換素子10は、第1および第2の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10の対極3における金属基板3bに代えて導電性基板3gとしたものである。導電性基板3gは、基板3h上に導電層3iが設けられている。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0135】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0136】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法は、対極3を金属基板3bに代えて導電性基板3gとして形成した。導電性基板3gは、基板3hの全面に例えばスパッタリング法などにより導電層3iを形成する。上記以外のことは第1および第2の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0137】
<実施例3>
導電性基板3gとして大きさ115mm×120mm、厚さ1.1mmのガラス板を用意した。次に、上記ガラス板の両主面の全面にスパッタリング法によってFTO層を形成し導電性基板であるFTO基板とした。次に、上記FTO基板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し大きさ113mm×110mmの塗膜を形成した。上記塗膜は、上記FTO基板の主面上の任意の一端から形成し、一端とは直交する方向の上記FTO基板の中心線に関して線対称に形成した。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、上記FTO基板上に第1のカーボン層を有する対極3を得た。同様に、上記FTO基板3上の第1のカーボン層が形成されている側とは逆側の主面に第2のカーボン層を形成した。第2のカーボン層は、第1のカーボン層が形成されている位置と、チタン板の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に形成した。上記以外のことは実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0138】
この第3の実施の形態によれば、第1および2の実施の形態と同様な利点を得ることが出来る。
【0139】
<4.第4の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図7は第4の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図7に示すように、この色素増感光電変換素子10は、第1〜第3の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10の対極3に、両主面に貫通する貫通孔11を少なくとも1つ設けたものである。貫通孔11は、第1電解質層4と第2の電解質層7とを繋ぐ形態で設けられている。貫通孔11の表面には第1の触媒層3cまたは第2の触媒層3dと同じ構成の触媒層3hが設けられている。また、必要に応じて貫通孔11には触媒層3hを形成しない形態としてもよい。また、貫通孔11の形状は、どのようなものであってもよく、具体的には、例えば、円柱形状、楕円柱形状、n角柱形状(nは3以上の自然数)、円錐台形状、楕円錐台形状、n角錐台形状(nは3以上の自然数)、多面体形状、これらを組み合わせた形状などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。対極3の第1の触媒層3cと接する面の面積に対する、貫通孔11の占める面積は、0.01%以上50%以下であることが好ましく、0.01%以上20%以下であることがより好ましく0.01%以上1%以下であることが最も好ましい。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0140】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0141】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
対極3を作製する場合に、まず、金属基板3bに、両主面に通じる貫通孔11を少なくとも1つ形成する。貫通孔11の形成方法は従来公知の方法を適宜選択する。次に、金属基板3bの一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの一方の主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。次に、金属基板3bのもう一方の主面にも同様に、金属基板3bのもう一方の主面上のうち端部3a以外の少なくとも一部に、上記スクリーン印刷用ペーストを塗料としてスクリーン印刷し、金属基板3bの両主面上の少なくとも一部に塗膜を有する金属基板3bを得る。このとき、貫通孔11が、上記スクリーン印刷用ペーストによって塞がっている状態とする。次に、貫通孔11よりも細い金属棒などを、上記スクリーン印刷用ペーストによって塞がった貫通孔11に挿入し、金属棒が貫通した状態とする。貫通孔11が複数あるときは、それぞれの貫通孔11に金属棒を挿入し、金属棒が貫通した状態とする。次に、得られた塗膜を有する金属基板を、金属棒ごと焼成する。焼成後に、金属棒を除去する。こうして、貫通孔11内部にも触媒層3hが形成された対極3が得られた。また、金属棒に代えて、150℃以上400℃以下で消失する材料からなる棒を貫通孔11に挿入しても良い。150℃以上400℃以下で消失する材料としては、樹脂などが挙げられる。この場合においては、焼成することによって貫通孔11に挿入された棒が消失するので、棒を除去する工程を必要としない。また、貫通孔11を別の方法としては、第1の実施の形態による製造方法で得られた対極3に従来公知の方法で貫通孔11を形成する。この場合においては貫通孔11の内部に触媒層3hが形成されない。
【0142】
また、第1の電解質層4と第2の電解質層7とが形成する場合に、第1の電解質層4および第2の電解質層7を構成する電解液が封入される空間には、例えば、第1の透明導電性基板1にのみ予め形成された注液口(図示せず)から電解液を注入することで、第1の電解質層4および第2の電解質層7を一度に形成する。その後、この注液口を塞ぐ。封止材8は、対極3の端部3aの内側、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aの内側にそれぞれ形成される。上記以外のことは第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0143】
<実施例4>
金属基板3bとして大きさ115mm×120mm、厚さ0.5mmのチタン板を用意した。次に、上記チタン板に、両主面を貫通する直径1.5mmの貫通孔11を設ける。貫通孔11は、の位置は、上記チタン板の任意の角部から、横方向に60mm、縦方向に57.5mm進んだ上記チタン板上の点を中心として、10mm間隔で千鳥格子状に25つ形成した。
【0144】
次に、上記チタン板の一主面のうちの少なくとも一部に、スクリーン印刷用ペーストを塗料として、スクリーン印刷機(ニューロング:LS−100)で印刷し塗膜を形成した。塗膜は、上記チタン板の上記角部から横に55mm、縦に57.5mm進んだ上記チタン板上の点を中心として、縦113mm、横110mmの大きさで形成した。同様に、上記チタン板上の第1のカーボン層が形成されている側とは逆側の主面に第2のカーボン層を形成した。第2のカーボン層は、第1のカーボン層が形成されている位置と、上記チタン板の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に形成した。次に、直径1mmのポリカーボネート棒を、それぞれ貫通孔11に挿入し貫通させる。その後、得られた塗膜中の溶液を蒸発させる目的で100℃のホットプレートで加熱し乾燥させ、上記チタン板の両主面上に第1のカーボン層と第2のカーボン層とを有する対極を得た。
【0145】
次に、得られた第1のカーボン層および第2のカーボン層の焼成を行った。1時間30分で400℃にまで昇温させ、400℃で30分保持し焼成した。この工程により、完全にエチルセルロースおよびポリカーボネートを分解し消失させることで、金属基板3bの両主面に第1の触媒層3cと第2の触媒層3dとを有し、両主面を貫通する貫通孔を有する対極が得られた。得られた第1の触媒層と第2の触媒層の厚みは約45μmであった。
【0146】
第1の電解質層と第2の電解質層は、電解液を、予め第1のFTO基板に設けた注液口から送液ポンプを用いて注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。こうして第1の電解質層と第2の電解質層とが一度に形成される。この後、注液口をアイオノマー樹脂フィルム、アクリル樹脂およびガラス基板で封止し、色素増感光電変換素子を完成した。その他のことは実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0147】
この第4の実施の形態によれば、第1〜第3の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような利点を得ることができる。すなわち、対極3に貫通孔11を設けたので、第1の電解質層4と第2の電解質層7を形成する場合に、注液口が1箇所のみの1回の注液で、第1の電解質層4と第2の電解質層7が形成可能となり、製造工程が省略されることで製造コストを低減させることができる。また、第1の触媒層3cと第2の触媒層3dに加えて、さらに貫通孔内部に触媒層3hを形成したので触媒層の表面積が増加し、正極側の触媒作用が増大するので、素子全体の直流抵抗が低減され、光電変換効率が向上する。これによって、両面から照射される光を有効に発電利用可能であって、光電変換特性が優れた色素増感光電変換素子を低コストで製造することができる。
【0148】
<5.第5の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図8は第5の実施の形態による色素増感光電変換素子10の構成を示す要部断面図である。
図8に示すように、この色素増感光電変換素子10は第1〜第4の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10において、それぞれ突出している第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方が、もう一方に対して突出している。端部1aと端部5aとは導電材9で電気的に接続されている。端部1aと端部5aのうち、突出部が短い方の端部によって形成された空間は導電材9によって少なくとも一部が埋められていることが好ましく、完全に埋められていることがより好ましい。また、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方のみが突出している構成であってもよい。このとき、導電材9は透明導電層の側部に設けられる。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0149】
[色素増感光電変換素子の動作]
この色素増感光電変換素子10の動作は、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0150】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5と対極3とを配置する場合において、対極3の端部3aを色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一方の側から突出するように設け、それとは反対のもう一方の側は、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aがともに突出するように設ける。このとき、端部1aおよび端部5aのうち、いずれか一方はもう一方よりも突出するように設けられている。例えば、端部1aが端部5aよりも突出して設けるとき、一方の透明導電性基板の主面がもう一方の透明導電性基板よりも大きいことが好ましい。また、端部1aおよび端部5aのうち、いずれか一方のみが突出するように設けてもよい。次に、第1の透明導電性基板1の端部1aと第2の透明導電性基板5の端部5aとの間に導電材9を設け、第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とを電気的に接続する。こうして、色素増感光電変換素子10を形成する。
【0151】
また、別の製造方法としては、第1の実施の形態の製造方法で色素増感光電変換素子10を作成し、第1の透明導電性基板1の端部1aおよび第1の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方の端部の突出部の少なくとも一部を切除する。上記以外のことは第1〜第4のいずれかの実施の形態の色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0152】
<実施例5>
第1の透明導電性基板1として、大きさ125mm×125mm、厚さ4mmのFTO基板を用意し、第2の透明導電性基板5として大きさ125mm×122mm、厚さ4mmのFTO基板を用意する。
【0153】
次に、上記のTiO2 のペースト状分散液を、第1のFTO基板上のFTO層の上にブレードコーティング法によって塗布し、大きさ113mm×110mm、厚さ200μmの微粒子層を形成した。微粒子層は、第1のFTO基板の断面長手方向の中心から右方向に1.5mm移動し、奥行き方向に0mm移動した位置を微粒子層の中心として形成した。また、第2のFTO基板には、断面長手方向の中心から左方向に0mm移動し、奥行き方向に0mm移動した位置を微粒子層の中心として形成した。
【0154】
第1のFTO基板と第2のFTO基板と対極とを設ける場合には、第1のFTO基板と第2のFTO基板とを、対極の断面短手方向の中心線に関して線対称な位置に設け、対極は、第1の触媒層と第1の多孔質電極とを、それぞれの断面長手方向の中心線が共通となるように設ける。これにより、対極は、対極の端部が第1のFTO基板および第2のFTO基板から突出し、第1のFTO基板の端部および第2のFTO基板の端部が対極に対して突出するように設けられる。突出部の長さは、対極の端部が3mm、第1のFTO基板の端部が3mm、第2のFTO基板の端部が0mmであった。
【0155】
次に、第1のFTO基板の端部と第1のFTO基板の端部とを銀合金からなる導電材9で接続する。導電材9は第2のFTO基板の端部の突出部を埋める形態で設けられ、さらに、第1のFTO基板の端部上の全面に設けられる。導電材9の断面形状は略L字形状であり、奥行き方向に平行に延在する長尺形状を有する。その他のことは、実施例1と同様にして色素増感光電変換素子を完成した。
【0156】
この第5の実施の形態によれば、第1〜第4の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0157】
<6.第6の実施の形態>
[色素増感光電変換素子モジュール]
図9Aは第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図、図9Bは図9AのB−B線に沿っての断面図である。
図9AおよびBに示すように、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、複数の色素増感光電変換素子10が互いに電気的に直列に接続されている。色素増感光電変換素子10は、第1〜第4の実施の形態のいずれかの色素増感光電変換素子10である。色素増感光電変換素子モジュールは、第1〜第4の実施の形態のいずれか1種類の色素増感光電変換素子10のみで構成してもよいし、第1〜第4の実施の形態のいずれか2種類以上の色素増感光電変換素子10を組み合わせて構成してもよい。これらの色素増感光電変換素子10は、典型的には同一平面内に配置される。また、この色素増感光電変換素子モジュールは、一般的には基板(図示せず)上に配置される。この色素増感光電変換素子モジュールの大きさは特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、小さいものでは例えば数cm程度、大きいものでは例えば1m以上である。
【0158】
図10Aは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態を示す要部断面図である。図10Bは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第1の例を示す平面図である。
図10AおよびBに示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、それとは反対側の辺においては、対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。
【0159】
互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、一つの色素増感光電変換素子10の端部1a上および端部5a上にそれぞれ互いに対向して設けられた導電材9と、もう一つの色素増感光電変換素子10の端部3aとが、互いに対向して設けられた2つの導電材9が端部3aを挟持する形態で接続され、互いに電気的に直列に接続されている。このとき、一つの色素増感光電変換素子10に設けられた2つの導電材9の接続界面は、もう一つの色素増感光電変換素子10の端部3aによってそれぞれ若干削られ、これにより端部3aと導電材9とが密着した形態で接続されている。
【0160】
図11は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第2の例を示す斜視図である。図11に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10素子の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3から突出している色素増感光電変換素子10としたものである。
互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0161】
図12は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第2の例を示す斜視図である。図12に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する二辺に渡る部分から対極3が突出し、残りの二辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3から突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0162】
図13は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第3の例を示す斜視図である。図13に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の対向する2辺のそれぞれ少なくとも一部から対極3が突出し、残りの二辺にいては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0163】
図14は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第4の例を示す斜視図である。図14に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10のうち、一つを、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、もう一つを、上記一つの色素増感光電変換素子10もしくは第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する二辺に渡る部分から対極3が突出し、残りの二辺における透明導電性基板の端部が対極3から突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0164】
図15は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第5の例を示す斜視図である。図15に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10のうち、一つを、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺においては対向して設けられた第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、もう一つを、上記一つの色素増感光電変換素子10もしくは第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の対向する2辺のそれぞれ少なくとも一部から対極3が突出し、残りの二辺における透明導電性基板の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0165】
図16は互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の第6の例を示す斜視図である。
図16に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10のうち、一つを、第1の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、残りの三辺における透明導電性基板の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、もう一つを、上記一つの色素増感光電変換素子10もしくは第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の隣接する三辺に渡る部分から対極3が突出し、残りの一辺における透明導電性基板の端部が対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10としたものである。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の接続形態は第1の例と同様である。
【0166】
このように、この色素増感光電変換素子モジュールは、構成する色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの突出のさせ方、接続のしかたによって、発電電力を効率よく取り出せる接続レイアウトを適宜選択することができる。特に、上述した接続形態の例の中でも、接続形態の第2の例が最もレイアウトの自由度があり、また、色素増感光電変換素子モジュールの出力電流電圧の調整が容易なレイアウトとすることができる。
【0167】
[色素増感光電変換素子モジュールの動作]
この色素増感光電変換素子モジュールの動作について説明する。
この色素増感光電変換素子モジュールを構成する各色素増感光電変換素子10の動作は、第1〜第4実施の形態によるいずれかの色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0168】
[色素増感光電変換素子モジュールの製造方法]
この色素増感光電変換素子モジュールの製造方法について説明する。
図17および図18は、色素増感光電変換素子モジュールの製造工程を示す要部断面図である。
図17に示すように、まず、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの側面と、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5にそれぞれ設けられた導電材9と封止材8とで囲まれる空間とを互いに平行に保持し対向させる。
【0169】
次に、図18に示すように、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の断面短手方向の中心線と、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間の断面短手方向の中心線とが同一の線上となるように保持し、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aを、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間に挿入して両素子を接続する。このとき、一つの色素増感光電変換素子10に設けられた対極3の端部3aによって、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板にそれぞれ設けられた導電材9の対向する面の一部が削りとられることで圧着することが好ましい。一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9との接触面積は基本的にはどのような大きさであっても良いが、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の一方の導電材9との接触面積は、透明導電性基板の主面の面積の3%以上20%以下であることが好ましく、5%以上15%以下であることがより好ましく、5%以上10%以下であることが最も好ましい。これは、透明導電性基板の主面の3%以下であると接触抵抗が増大し、また、20%以上であると、モジュールとした時の単位面積当たりの発電効率が低くなる。
【0170】
また、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aを、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間に挿入する場合に、別の方法として、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aを加熱した後に、もう一つの色素増感光電変換素子10の上記空間に挿入して接続することもできる。このとき、一つの色素増感光電変換素子10に設けられた対極3の端部3aによって、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板にそれぞれ設けられた導電材9の対向する面の一部が溶融することで接合することが好ましい。そのため、導電材9を構成する導電材料は融点が低いものであることが好ましく、具体的には、例えば、はんだ、銀合金、導電性高分子などが挙げられる。また、導電材9の対向する面のみを融点が低い導電材料で構成することもでき、具体的には、例えば、導電材9の対向する面に導電性フィルムなどを貼付して設けた構成などが挙げられる。対極3の端部3aの加熱温度は、導電材9の融点などにもよるが、一般的には100℃以上200℃以下に選ばれる。例えば、導電材9をはんだで形成する場合には、加熱温度は例えば150℃以上190℃以下である。以上のようにして、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士が互いに電気的に直列に接続され、目的とする色素増感光電変換素子モジュールが製造される。
【0171】
<実施例6>
実施例1の製造方法により色素増感光電変換素子を製造した。
次に、一つの色素増感光電変換素子のチタン板の端部と、もう一つの色素増感光電変換素子の互いに対向して設けられたFTO基板の端部上にそれぞれ設けられた銀電極とを、上記銀電極の間の空間にチタン板の端部をチタン板の断面長手方向に3mm挿入することで接続した。上記チタン板の厚さは0.5mm、上記銀電極の間隔は0.4mmであるので、上記銀電極の対向する面はそれぞれ0.05mmずつ削られる。接続条件は、加圧圧力50KPa、時間20秒とした。以上のようにして、二つの色素増感光電変換素子を互いに電気的に直列に接続し、同様に複数接続することによって色素増感光電変換素子モジュールを完成した。
【0172】
<実施例7>
一つの色素増感光電変換素子のチタン板の端部をあらかじめ熱し、もう一つの色素増感光電変換素子に対向して設けられたFTO基板の端部上に対向してそれぞれ設けられたはんだ電極とを、上記銀電極の間の空間にチタン板の端部をチタン板の断面長手方向に3mm挿入することで接続した。チタン板の端部の加熱温度は250℃とした。上記チタン板の厚さは0.5mm、上記銀電極の間隔は0.4mmであるので、上記銀電極の対向する面はそれぞれ0.05mmずつ溶融する。接合条件は、加圧圧力50KPa、温度250℃、時間20秒とした。その他のことは、実施例6と同様にして色素増感光電変換素子モジュールを完成した。
【0173】
この第5の実施の形態によれば、第1〜第4の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1および第2の透明導電性基板5の端部1aおよび5aとを導電材9を介して互いに接続することにより互いに電気的に直列に接続している。このため、複数の色素増感光電変換素子10の接続にタブ線や導電性接着剤などによる配線を必要としない。これにより、配線抵抗による電極低下を飛躍的に抑えることができる。また、色素増感光電変換素子10同士が互いに密接して配置されており、発電に寄与しない無効な面積が実質的に存在しない。これによって、色素増感光電変換素子モジュールの有効面積の大幅な増加を図ることができる。さらに、互いに密接して配置されているので意匠性が高い。また、色素増感光電変換素子10同士の接続の自由度が高く、様々な接続形態を容易に構築可能であるので、使用環境に応じて色素増感光電変換素子モジュールを個別に設計する必要が無く、さらに、色素増感光電変換素子10同士の接続に、新たな部材を必要としないので、色素増感光電変換素子モジュールの製造工程を大幅に簡略化でき、ひいては色素増感光電変換素子モジュールの大幅な低コスト化を図ることができる。また、色素増感光電変換素子10の接続には熱を要しなくても可能なことから、例えば、熱接合による封止材16、第1の多孔質電極2、対極3などの素子本体の構造に悪影響が生じるのを防止することができる。このため、色素増感光電変換素子10の特性や信頼性の劣化を防止することができ、特性や信頼性が優れた色素増感光電変換素子モジュールを得ることができる。
【0174】
<7.第7の実施の形態>
[色素増感光電変換素子モジュール]
図19Aは第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールを示す平面図、図9Bは図19AのC−C線に沿っての断面図である。
図19AおよびBに示すように、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、複数の色素増感光電変換素子10が互いに電気的に直列に接続されている。色素増感光電変換素子10は、第5の実施の形態の色素増感光電変換素子10である。隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、互いに逆向きに接続されている。
【0175】
図20Aは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態を示す要部断面図である。図20Bは互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10同士の接続形態の例を示す平面図である。 図20AおよびBに示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を、ともに、第5の実施の形態の色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の一辺の少なくとも一部から対極3が突出し、それとは反対側の辺においては、透明導電性基板1の端部1aが対極3に対して突出している色素増感光電変換素子10とし、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10に第1の接続端子12aおよび第2の接続端子12bからなる接続機構を設けて互いに接続したものである。
【0176】
互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの側面には第1の接続端子12aが設けられており、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板1の端部1a上には導電材9を介して、第2の接続端子12bが設けられている。対極3の端部3aと第1の接続端子12aとおよび導電材9と第2の接続端子12bとは電気的に接続されている。互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10は、互いに逆向きに配置され、第1の接続端子12aと第2の接続端子12bとが嵌合することによって接続され、互いに電気的に直列に接続されている。これにより一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板1の端部1aとが電気的に接続されている。
【0177】
接続機構は、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10を電気的に接続可能であれば、基本的にはどのようなものであってもよいが、接続部が外力に対し安定であることが好ましく、一定の操作で脱着が可能であるものが好ましい。接続機構を構成する第一の接続端子12aおよび第2の接続端子12bは、典型的には、例えば、第1の接続端子9aをオス、第2の接続端子9bをメスとしたコネクタなどの着脱機構が挙げられるが、これに限定されるものではなく、従来公知の接続機構を適宜選択することができる。
【0178】
第1の接続端子12aが設けられる位置は、対極3の端部3a上であれば基本的にはどこであってもよいが、特に、対極3の側面を含んだ少なくとも一部に設けられることが好ましい。また、第2の接続端子12bが設けられる位置は、導電材9上であれば基本的にはどこであってもよいが、導電材9の側部の主面を含んだ少なくとも一部に設けられることが好ましい。また、第1の接続端子12aと第2の接続端子12bとは、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10において、それぞれ対応した位置に設けられることが好ましい。また、第2の接続端子12bは透明導電性基板1の端部1aの透明導電層1c上に設けてもよい。
【0179】
上記以外のことは第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様である。
【0180】
[色素増感光電変換素子モジュールの動作]
この色素増感光電変換素子モジュールの動作は、第5の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの動作と同様である。
【0181】
[色素増感光電変換素子モジュールの製造方法]
この色素増感光電変換素子モジュールの製造方法について説明する。
図21Aは、色素増感光電変換素子モジュールの製造工程を示す要部断面図である。図21Bは接続機構である第1の接続端子12aと第2の接続端子12bの平面図、図21Cは図21BのD−D線に沿っての断面図である。
図21Aに示すように、まず、第5の実施の形態の製造方法で色素増感光電変換素子10を複数製造する。次に、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aの側面に第1の接続端子12aを電気的に接続して設ける。次に、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9の側部主面に第2の接続端子12bを設ける。図21BおよびCに示すように、第1の接続端子12aと、第2の接続端子12bとは互いに嵌合可能な形状を有している。次に、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1の端部1aとを互いに平行に保持して対向させる。このとき、一つの色素増感光電変換素子10ともう一つの色素増感光電変換素子10とは端部の突出部が小さい方の透明導電性基板が互いに対向する向きに配置する。次に、図22に示すように、一つの色素増感光電変換素子10の対極3の端部3aをもう一つの色素増感光電変換素子10の第1の透明導電性基板1の端部1a上に垂直に下ろすことで、一つの色素増感光電変換素子10の透明導電性基板11の対極3の端部3aに設けられた第1の接続端子12aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9に設けられた第2の接続端子12aとを嵌合させ両素子を接続する。
【0182】
接続機構である第1の接続端子12aと第2の接続端子12aとは、接続後であっても一定の操作で着脱が自由にできることが好ましい。着脱機構は従来公知のものを適宜選択することができるが、具体的には、例えば、ラッチ着脱機構、ピン着脱機構、エッジコネクタなどが挙げられる。第1の接続端子12aと第2の接続端子12aとの着脱が可能となることによって、色素増感光電変換素子モジュールを構成する全ての色素増感光電変換素子10が素子単独での着脱可能となる。
【0183】
図22Aは完成後の色素増感光電変換素子モジュールの一例を示した要部断面図である。図22Bは完成後の色素増感光電変換素子モジュールから色素増感光電変換素子10を着脱する一例を示した要部断面図である。
【0184】
図22Aに示すように、この色素増感光電変換素子モジュールは、3つの色素増感光電変換素子10を上述した製造方法によって製造し完成したものである。ここで、色素増感光電変換素子モジュールを構成する3つの色素増感光電変換素子10のうち、中央に接続された色素増感光電変換素子10のみを交換する場合、従来の色素増感光電変換素子モジュールは、両端に接続されたいずれかの色素増感光電変換素子10を取り外して交換していたが、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、図22Bに示すように、隣り合う色素増感光電変換素子10の第1の接続端子12aと第2の接続端子12aとの接続をそれぞれ解除することによって容易に中央に接続された色素増感光電変換素子10のみを取り外すことができる。
【0185】
上記以外のことは第5の実施の形態の色素増感光電変換素子モジュールの製造方法と同様である。
【0186】
<実施例8>
実施例5の製造方法により色素増感光電変換素子を製造した。
次に、一つの色素増感光電変換素子のチタン板の端部の側面にメス型金属端子を設け、もう一つの色素増感光電変換素子の互いに対向して設けられた2枚のFTO基板の端部に設けられた銀電極の側部主面に上記メス型金属端子に対応するオス型金属端子を設けた。次に、一つの色素増感光電変換素子10のチタン板と、もう一つの色素増感光電変換素子10の第1のFTO基板の端部とを互いに平行に保持して対向させた。このとき、一つの色素増感光電変換素子10ともう一つの色素増感光電変換素子10とは端部の突出部が小さい方のFTO基板が互いに対向する向きに配置した。次に、一つの色素増感光電変換素子10のチタン板の端部をもう一つの色素増感光電変換素子10の第1のFTO基板の端部1a上に垂直に下ろすことで、一つの色素増感光電変換素子に設けられたメス型金属端子と、もう一つの色素増感光電変換素子10に設けられたオス型金属端子とが嵌合し両素子が接続された。さらに、同様に複数接続することによって色素増感光電変換素子モジュールを完成した。
【0187】
この第7の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点に加えて、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この色素増感光電変換素子モジュールにおいては、構成する色素増感光電変換素子10を透明導電性基板1の端部1aおよび第2の透明導電性基板5の端部5aのいずれか一方が、もう一方よりも突出している構成とし、隣り合う色素増感光電変換素子10を互いに上下を逆転して配置し、一つの色素増感光電変換素子の対極3の端部3aと、もう一つの色素増感光電変換素子10の導電材9とに着脱自在な接続機構を設けて両素子を接続したので、色素増感光電変換素子モジュールの完成後においても、色素増感光電変換素子モジュールを構成する色素増感光電変換素子10のうち、目的の色素増感光電変換素子10のみを着脱し交換することができる。これにより、例えば、多数の色素増感光電変換素子10を接続した大型の色素増感光電変換素子モジュールにおいて、一部の色素増感光電変換素子10に故障が生じても、周辺の色素増感光電変換素子10を取り外すことなく、故障が生じた色素増感光電変換素子10のみを取り外すことができる。これは、色素増感光電変換素子モジュールを設置した状態での作業が可能であるので、整備、修理工程の簡略化によって整備の大幅な低コスト化を図ることができる。また、色素増感光電変換素子モジュールを設置したままで、色素増感光電変換素子10の構成や接続回路を変えることができるので、使用用途、季節などに応じた色素増感光電変換素子モジュールの仕様を容易に変更することができる。このため、設置後においても仕様変更が容易であり、信頼性が優れた色素増感光電変換素子モジュールを得ることができる。
【0188】
<8.第8の実施の形態>
[光電変換素子]
図23Aは第8の実施の形態による光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。図23Bは第8の実施の形態による光電変換素子20の図23Aに直交する方向の光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。
【0189】
図23Aに示すように、この光電変換素子は、第1の透明導電性基板21と、第2の透明導電性基板25とが、それぞれの透明導電層が互いに対向するように設けられ、その間に一定の間隔を置いて導電性基板23が設けられ、それぞれの透明導電性基板と導電性基板23との間には第1の光電変換層22と第2の光電変換層27とが設けられている構成を有する。必要に応じて絶縁層28をそれぞれの光電変換層および対極3と導電材9との間に設ける。光は、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5にそれぞれ入射する。
【0190】
第1の光電変換層22は、順次積層された透明導電層22a、有機半導体層22bおよび中間層22cを含む。透明導電層22aの材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]のような導電性高分子が用いられる。有機半導体層22bの材料としては、例えば、共役系高分子P3HTとフラーレン誘導体PCBMとを混合した半導体(P3HT:PCBM)などが用いられる。中間層22cとしては、導電性基板23への電子輸送を円滑に行い、かつ、正孔(ホール)の輸送を阻止する機能を有するもの、例えば、TiO2 膜などが用いられる。
【0191】
第1の透明導電性基板21は、透明基板21b上に透明導電層21cが設けられている構成を有し、第2の透明導電性基板25は透明基板25b上に透明導電層25cが設けられている構成を有する。第1の透明導電性基板21と、第2の透明導電性基板25とは、透明導電層21cと透明導電層25cとが互いに対向するようにして設けられている。さらに、透明導電層21cと透明導電層25cとの間には、一定距離を置いて導電性基板23が設けられている。
【0192】
また、第1の透明導電性基板21と導電性基板23を構成する金属基板3bとの距離は、例えば、30μm以上100μm以下であることが好ましいが、これに限定されるものではない。このことは、第2の透明導電性基板2と導電性基板23との距離も同様である。
【0193】
第1の透明導電性基板1と第2の透明導電性基板5とは、好適には、互いにほぼ同じ大きさの長方形の形状を有し、平行かつ平行線に関し線対称な位置に設けられるが、これに限定されるものではない。第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5と、導電性基板23とは、導電性基板23の端部23aが光電変換素子20の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出するように設けられ、第1の透明導電性基板21の端部21aと第2の透明導電性基板25の端部25aとが導電性基板23に対して突出するような配置で設けられる。具体的には、例えば、第1の透明導電性基板21、第2の透明導電性基板25および導電性基板23のそれぞれの主面が同じ大きさである場合には、それらの面に平行な方向に互いにずれて配置される。そうすると、導電性基板23の一方の端部23aが第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5に対して突出し、導電性基板23の端部23aとは反対方向の、第1の透明導電性基板21の端部21aおよび第2の透明導電性基板25の端部25aが導電性基板23に対してそれぞれ突出する。端部21aの透明導電層21c上および端部25aの透明導電層25c上には、それぞれに少なくとも1つの銀などからなる電極が一定間隔を置いて互いに対向して設けられ、この場合においては導電材29が設けられる。
【0194】
導電性基板23の端部23aの、第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5から突出している部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第1の透明導電性基板21の端部1aの導電性基板23から突出している部分の長さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、第2の透明導電性基板25の端部25aの導電性基板23から突出している部分の長さは1mm以上10mm以下であることが好ましく、3mm以上7mm以下であることがより好ましく、3mm以上5mm以下であることが最も好ましい。また、対向する第1の透明導電性基板21の端部21aと第2の透明導電性基板25の端部25aとの突出部の長さは等しいことが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0195】
また、図23Bに示すように、図23Aに示した光電変換素子20の断面とは直交する方向の断面においては、第1の透明導電性基板21の両側の端部21dおよび21eと第2の透明導電性基板25の両側の端部25dおよび25eとが、導電性基板23に対して突出しており、突出部には上述したものと同様に導電材29が設けられている。第1の透明導電性基板21および第2の透明導電性基板25の上記突出部は、いずれか一方の対向する端部のみであってもよい。また、必要に応じて絶縁層28をそれぞれの光電変換層および対極3と導電材9との間に設ける。
【0196】
第1の透明導電性基板21、第2の透明導電性基板25を形成する材料は、使用する光電変換層に応じて適宜選ばれ、第1の透明導電性基板1、第2の透明導電性基板5を形成する材料として上記に挙げた材料を適宜選択することができ、特に好適には、抵抗率が小さい導電材料、例えばITOなどの透明導電性金属酸化物や金属などが用いられる。
【0197】
また、導電性基板23は、使用する光電変換層に応じて適宜選ばれ、第1の透明導電性基板1、第2の透明導電性基板5および金属基板3bを形成する材料として上記に挙げた材料を適宜選択することができ、特に好適には、抵抗率が小さい導電材料、例えばITOなどの透明導電性金属酸化物やアルミニウムなどの金属などが用いられる。
【0198】
また、絶縁層28は、各種の絶縁体を用いることができ、固体の絶縁体とすることが好ましいが、これに限定されず、例えば、空気であってもよい。
【0199】
また、第1の光電変換層22および第2の光電変換層27は、例えば、無機半導体または有機半導体により形成されたp型半導体層とn型半導体層とからなるpn接合や有機光電変換材料などにより形成される。
【0200】
図24に光電変換素子20の他の具体的な構成例を示す。図24に示すように、この例では、第1の光電変換層22は、n型半導体層22dとp型半導体層22eとからなるpn接合により形成されている。n型半導体層22dおよびp型半導体層22eは、各種の無機半導体または有機半導体からなり、形態も単結晶、多結晶、非晶質のいずれであってもよい。無機半導体としては、例えば、Si、GaAs、GaPなどが挙げられる。有機半導体としては、ポリアセチレン(好ましくは二置換型ポリアセチレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)、ポリピロール、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−ビチオフェン)(F8T2)、ポリ(1−ヘキシル−2−フェニルアセチレン)(PHX PA)(発光材料としては青色の発光を示す)、ポリ(ジフェニルアセチレン)誘導体(PDPA−n Bu)(発光材料としては緑色の発光を示す)、ポリ(ピリジン)(PPy)、ポリ(ピリジルビニレン)(PPyV)、シアノ置換型ポリ(p−フェニレンビニレン)(CNPPV)、ポリ(3,9−ジ−tert−ブチルインデノ[1,2−b]フルオレン(PIF)などが挙げられる。必要に応じて絶縁層28をそれぞれの光電変換層および対極3と導電材9との間に設ける。
【0201】
また、第1の光電変換層22と、第2の光電変換層27とは、同一の材料、構成であっても良いし、別の材料、構成であってもよく、使用用途に応じて、上記に挙げた材料、構成などから適宜選択される。また、第1の光電変換層22または第2の光電変換層27を上述した色素増感光電変換部としてもよく、具体的には、例えば、太陽光が照射される面側をpn接合型の光電変換層とし、室内光が照射される面側を色素増感光電変換部として光電変換素子20を構成するハイブリッド型の太陽電池が挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記以外のことは、第1の実施の形態による色素増感光電変換素子の第1および第2の色素増感光電変換部以外のことと同様である。
【0202】
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子は、第1の実施の形態における色素増感光電変換素子10の第1および第2の色素増感光電変換部を第1の光電変換層22と第2の光電変換層27として、従来公知の方法で光電変換素子20を製造した。
【0203】
この第8の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0204】
<9.第9の実施の形態>
[光電変換素子]
【0205】
図25Aは第9の実施の形態による光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。図25Bは第9の実施の形態による光電変換素子20の図25Aに直交する方向の光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。
図25Aに示すように、この光電変換素子20は、導電性基板23の両側の端部23eおよび23fが光電変換素子20の第1の透明導電性基板1および第2の透明導電性基板5の両側から突出している。また、図25Bに示すように、端部23eおよび23fが突出する方向とは直交する方向には、第1の透明導電性基板21の両側の端部である21dおよび25dと、第2の透明導電性基板5の両側の端部である21eおよび25eとが導電性基板23に対して突出しており、それぞれの透明導電性基板の突出部には上述したものと同様に導電材29が設けられている。また、透明導電性基板の突出部は、一方の対向する端部のみであってもよい。
【0206】
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子は、第2の実施の形態における色素増感光電変換素子10の第1および第2の色素増感光電変換部を第1の光電変換層22と第2の光電変換層27として、従来公知の方法で光電変換素子20を製造した。
【0207】
この第9の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0208】
<10.第10の実施の形態>
[光電変換素子]
図26は第10の実施の形態による光電変換素子20の構成を示す要部断面図である。
図26に示すように、この光電変換素子20は第8および第9の実施の形態のいずれかの光電変換素子20において、それぞれ突出している第1の透明導電性基板21の端部21aおよび第2の透明導電性基板25の端部25aのいずれか一方が、もう一方よりも突出している。端部21aと端部25aとは導電材29で電気的に接続されている。端部21aと端部25aのうち、突出部が短い方の端部によって形成された空間は導電材29によって少なくとも一部が埋められていることが好ましく、完全に埋められていることがより好ましい。また、第1の透明導電性基板21の端部21aおよび第2の透明導電性基板25の端部25aのいずれか一方のみが突出している構成であってもよい。このとき、導電材29は透明導電層の側部に設けられる。上記以外のことは、第5の実施の形態による色素増感光電変換素子の第1および第2の色素増感光電変換部以外のことと同様である。
【0209】
[光電変換素子の製造方法]
この光電変換素子は、第2の実施の形態における色素増感光電変換素子10の第1および第2の色素増感光電変換部を第1の光電変換層22と第2の光電変換層27として、従来公知の方法で光電変換素子20を製造した。
【0210】
この第10の実施の形態によれば、第5の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0211】
<11.第11の実施の形態>
[光電変換素子モジュール]
【0212】
図27は第11の実施の形態の光電変換素子モジュールのうち、互いに隣接する二つの光電変換素子20同士の接続形態を示す要部断面図である。
図27に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の代わりに、第8および/または第9の実施の形態の光電変換素子20を用いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様に接続したものである。その他のことは第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様である。
【0213】
[光電変換素子モジュールの製造方法]
この光電変換素子モジュールは、色素増感光電変換素子10の代わりに光電変換素子20を用いることを除いて、第6の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法と同様にして製造することができる。
【0214】
この第11の実施の形態によれば、第6の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0215】
<12.第12の実施の形態>
[光電変換素子モジュール]
【0216】
図28は第12の実施の形態の光電変換素子モジュールのうち、互いに隣接する二つの光電変換素子20同士の接続形態を示す要部断面図である。
図28に示すように、この例においては、互いに隣接する二つの色素増感光電変換素子10の代わりに、第10の実施の形態の光電変換素子20を用いて、第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様に接続したものである。その他のことは第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールと同様である。
【0217】
[光電変換素子モジュールの製造方法]
この光電変換素子モジュールは、色素増感光電変換素子10の代わりに光電変換素子20を用いることを除いて、第7の実施の形態による色素増感光電変換素子モジュールの製造方法と同様にして製造することができる。
【0218】
この第12の実施の形態によれば、第7の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0219】
以上、実施の形態および実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【0220】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子。
(2)上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられている(1)に記載の光電変換素子。
(3)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する(1)または(2)に記載の光電変換素子。
(4)上記導電材は、はんだまたは銀合金である(1)〜(3)のいずれか一項に記載の光電変換素子。
(5)上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1の電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる(1)〜(4)のいずれか一項に記載の光電変換素子。
(6)互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュール。
(7)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する(6)に記載の光電変換素子モジュール。
(8)上記導電材は、はんだ、銀合金および導電性フィラーのいずれかである(6)または(7)に記載の光電変換素子モジュール。
(9)上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる(6)〜(8)のいずれか一項に記載の光電変換素子モジュール。
(10)一方の主面に第1の多孔質電極が設けられた第1の透明導電性基板の上記第1の多孔質電極が設けられた面と、一方の主面に第2の多孔質電極が設けられた第2の透明導電性基板の上記第2の多孔質電極が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に対極を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間に第1の電解質層と第2の電解質層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法。
(11)上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部を、上記対極に対して突出させて設け、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にそれぞれ導電材を設ける(10)に記載の光電変換素子の製造方法。
(12)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成した(10)または(11)に記載の光電変換素子の製造方法。
(13)上記導電材は、はんだまたは銀合金である(10)〜(12)のいずれか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
(14)互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部ともう一つの光電変換素子の上記対極の突出部とが導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法。
(15)上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成する(14)に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
(16)上記導電材は、はんだまたは銀合金である(14)または(15)に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
(17)光電変換素子モジュールを用い、上記光電変換素子モジュールが、互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器。
(18) 光電変換素子モジュールを用い、上記光電変換素子モジュールが、互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物。
(19)上記光電変換素子および/または上記光電変換素子モジュールのうち、少なくとも1つは2枚の透明板の間に挟持されている(18)に記載の建築物。
【符号の説明】
【0221】
10…色素増感光電変換素子、1…第1の透明導電性基板、1a…端部、2…第1の多孔質電極、3…対極、3a…端部、4…第1の電解質層、5…第2の透明導電性基板、5a…端部、6…第2の多孔質電極、7…第2の電解質層、8…封止材、20…光電変換素子、21…第1の透明導電性基板、21a…端部、22…第1の光電変換層、3…導電性基板、23a…端部、28…絶縁層、25…第2の透明導電性基板、25a…端部、26…第2の光電変換層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子。
【請求項2】
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられている請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
上記導電材は、はんだまたは銀合金である請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1の電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュール。
【請求項7】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する請求項6に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項8】
上記導電材は、はんだ、銀合金および導電性フィラーのいずれかである請求項7に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項9】
上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる請求項6に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項10】
一方の主面に第1の多孔質電極が設けられた第1の透明導電性基板の上記第1の多孔質電極が設けられた面と、一方の主面に第2の多孔質電極が設けられた第2の透明導電性基板の上記第2の多孔質電極が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に対極を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間に第1の電解質層と第2の電解質層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部を、上記対極に対して突出させて設け、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にそれぞれ導電材を設ける請求項10に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成した請求項11に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
上記導電材は、はんだまたは銀合金である請求項12に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項14】
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部ともう一つの光電変換素子の上記対極の突出部とが導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法。
【請求項15】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成する請求項14に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
【請求項16】
上記導電材は、はんだまたは銀合金である請求項15に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
【請求項17】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器。
【請求項18】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物。
【請求項19】
上記光電変換素子および/または上記光電変換素子モジュールのうち、少なくとも1つは2枚の透明板の間に挟持されている請求項18に記載の建築物。
【請求項1】
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出している光電変換素子。
【請求項2】
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられている請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
上記導電材は、はんだまたは銀合金である請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1の電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュール。
【請求項7】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材は上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有する請求項6に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項8】
上記導電材は、はんだ、銀合金および導電性フィラーのいずれかである請求項7に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項9】
上記対極には貫通孔がさらに設けられ、上記貫通孔は上記第1電解質層と上記第2の電解質層とを繋いでいる請求項6に記載の光電変換素子モジュール。
【請求項10】
一方の主面に第1の多孔質電極が設けられた第1の透明導電性基板の上記第1の多孔質電極が設けられた面と、一方の主面に第2の多孔質電極が設けられた第2の透明導電性基板の上記第2の多孔質電極が設けられた面とを互いに対向させて設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に対極を、少なくともその一部が上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出するように設ける工程と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間に第1の電解質層と第2の電解質層とをそれぞれ形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法。
【請求項11】
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部を、上記対極に対して突出させて設け、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にそれぞれ導電材を設ける請求項10に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項12】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成した請求項11に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項13】
上記導電材は、はんだまたは銀合金である請求項12に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項14】
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されている光電変換素子モジュールを製造する場合に、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の突出部ともう一つの光電変換素子の上記対極の突出部とが導電材を介して互いに接続する光電変換素子モジュールの製造方法。
【請求項15】
上記光電変換素子は長方形の平面形状を有し、上記導電材を上記光電変換素子の一辺に平行に延在する長尺形状を有するように形成する請求項14に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
【請求項16】
上記導電材は、はんだまたは銀合金である請求項15に記載の光電変換素子モジュールの製造方法。
【請求項17】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである電子機器。
【請求項18】
光電変換素子モジュールを用い、
上記光電変換素子モジュールが、
互いに電気的に直列に接続された複数の光電変換素子を有し、
上記複数の光電変換素子のうちの少なくとも互いに隣接する二つの光電変換素子は、
互いに対向して設けられた第1の透明導電性基板および第2の透明導電性基板と、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の互いに対向する主面上の少なくとも一部にそれぞれ設けられた第1の多孔質電極および第2の多孔質電極と、
上記第1の多孔質電極と上記第2の多孔質電極との間に設けられた対極と、
上記第1の多孔質電極と上記対極との間および上記第2の多孔質電極と上記対極との間にそれぞれ設けられた第1の電解質層および第2の電解質層とを有し、
上記対極の少なくとも一部は、上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の端部のうち、上記対極の突出部を有する端部以外の少なくとも一端部の少なくとも一部が、上記対極に対して突出しており、
上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出した端部の互いに対向する面にはそれぞれ導電材が設けられ、
上記互いに隣接する二つの光電変換素子の間の部分において一つの光電変換素子の上記第1の透明導電性基板および上記第2の透明導電性基板の上記突出部と、もう一つの光電変換素子の上記対極の上記突出部とが上記導電材を介して互いに接続されているものである建築物。
【請求項19】
上記光電変換素子および/または上記光電変換素子モジュールのうち、少なくとも1つは2枚の透明板の間に挟持されている請求項18に記載の建築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
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【図22】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−114778(P2013−114778A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257337(P2011−257337)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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