説明

光電変換素子および光電変換素子アレイおよびその製造方法ならびに電子機器

【課題】光照射によって発生した電力を外部に取り出す際の抵抗損失が少なく、さらに、入射面の開口率が高く、入射する光を有効に利用でき、しかも優れた光電変換特性を得ることができる色素増感太陽電池などの光電変換素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板1の一主面に透明電極2が設けられ、この透明電極2が設けられている透明基板1の面上には集電配線保護層9を備えた集電配線8が所定間隔を置いて設けられており、透明基板1の集電配線8が設けられた側の面には多孔質電極3が設けられている構造を有する色素増感光電変換素子において、透明基板1の集電配線8が設けられている面とは逆側の面である光入射側の面には、凸型立体形状を有する光導波構造11を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、光電変換素子およびその製造方法ならびに電子機器に関し、例えば色素増感太陽電池に用いて好適な光電変換素子およびその製造方法ならびにこの光電変換素子を用いる電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽光を電気エネルギーに変換する光電変換素子である太陽電池は太陽光をエネルギー源としているため、地球環境に対する影響が極めて少なく、より一層の普及が期待されている。
従来の太陽電池としては、単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン系太陽電池および非晶質(アモルファス)シリコン系太陽電池が主に用いられている。
【0003】
一方、1991年にグレッツェルらが提案した色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を得ることができ、しかも従来のシリコン系太陽電池とは異なり製造の際に大掛かりな装置を必要とせず、低コストで製造することができることなどにより注目されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
この色素増感太陽電池は、一般的に、光増感色素を結合させた酸化チタン(TiO2 )などからなる多孔質電極と、白金(Pt)などからなる対極とを対向させ、それらの間に電解液からなる電解質層が充填された構造を有する。電解液としては、ヨウ素(I)やヨウ化物イオン(I+ )などの酸化・還元種を含む電解質を溶媒に溶解したものが多く用いられる。
【0005】
従来、色素増感太陽電池の多孔質電極は、ガラスなどの透明基板上に積層して設けられたインジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO2(FTO)などの透明電極に半導体微粒子を積層させて形成される。
しかしながら、この色素増感太陽電池では、光の取り込み効率向上の為、透明電極を光透過性の高い極薄い層に形成する必要があり、そうすると透明電極のシート抵抗が高くなることで光照射によって発生した電力を外部に取り出す際の抵抗損失が増大してしまうという問題があった
【0006】
この問題を解決するために、近年、透明電極の表面に金属製のワイヤをグリッド状に張り巡らす構造、あるいは透明電極上に集電配線を配置し抵抗損失を低減させる構造が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。この結果、色素増感太陽電池における透明電極の抵抗損失の問題は改善されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−286434号公報
【特許文献2】特開2005− 11609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの文献で提案されている色素増感太陽電池は、多孔質電極の上部に銀(Ag)、アルミニウム(Al)などの金属の集電配線を配置して構成されているので、集電配線が多孔質電極に入射する光を遮ってしまう。その結果、多孔質電極の光入射面の開口率が低下し、多孔質電極に入射する光を有効に利用できないことにより、色素増感太陽電池の光電変換効率が低下してしまうというのが実情である。
【0009】
そこで、本開示が解決しようとする課題は、光照射によって発生した電力を外部に取り出す際の抵抗損失が少なく、さらに、光入射面の開口率が高く、入射する光を有効に利用でき、しかも優れた光電変換特性を得ることができる色素増感太陽電池などの光電変換素子およびその製造方法を提供することである。
本開示が解決しようとする他の課題は、上記のように優れた光電変換素子を用いた高性能の電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、上記課題を解決するために、本開示は、
基板上に設けられた多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と、上記対極との間に電解質層が設けられた構造を有し、
上記基板の多孔質電極が設けられている面には集電配線が設けられ、
上記基板の光入射側には光導波構造が設けられている光電変換素子である。
【0011】
また、本開示は、
複数の光電変換素子が配置され、
上記複数の光電変換素子は集合配線により互いの集電配線が接続されて集合化しており、少なくとも一つの上記光電変換素子は、
基板上に設けられた多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と、上記対極との間に電解質層が設けられた構造を有し、
上記基板の多孔質電極が設けられている面には集電配線が設けられ、
上記基板の光入射側には光導波構造が設けられている光電変換素子であって、
上記集合配線の光入射側には、さらに光導波構造が設けられている光電変換素子アレイである。
【0012】
また、本開示は、
基板の光入射側の面に光導波構造を設ける工程と、
上記基板の光入射側の面とは逆側の面に集電配線を形成し、さらに多孔質電極を積層して形成する工程と、
上記多孔質電極と対極との間に電解質層が充填された構造を形成する工程とを有する光電変換装置素子の製造方法である。
【0013】
また、本開示は、
少なくとも一つの光電変換素子を有し、
上記光電変換素子が、基板上に設けられた多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と、上記対極との間に電解質層が設けられた構造を有し、
上記基板の多孔質電極が設けられている面には集電配線が設けられ、
上記基板の光入射側には光導波構造が設けられている光電変換素子である電子機器である。
【0014】
本開示において、「基板」は部品が配置でき、少なくとも一部が光を透過可能であれば基本的にどのようなものであってもよく、典型的には透明基板であって、特に平面形状の透明材料で構成され、光が透過しやすく、多孔質電極内に上記光を導波可能な形状であることが好ましいが、基板の材質及び形状は、これらに限定されるものではなく、半透明材料、不透明材料またはこれに透明材料を組み合わせた材料で構成しても、曲面を有する形状または平面と曲面を組み合わせた形状で構成してもよい。
【0015】
本開示において、「光導波構造」は、光路変更素子であって、少なくとも一部が透明な材料で構成され、光電変換素子の基板の光入射側の面上または基板の光入射側の上方に設けられるほか、基板自体を加工することで透明基板自体を光導波構造とするものも含む。特に、透明材料で構成され、光が透過しやすく、光電変換素子に入射した光を屈折または反射させることで集電配線による光導波路の遮断を回避し、多孔質電極内に上記光を導波可能な形状であることが好ましいが、光導波構造はこれらに限定されるものではなく、半透明材料で構成してもよい。
【0016】
光導波構造の形状および材質は、光を透過可能な材質であれば基本的にはどのようなものであってもよく、光が透過しやすく、光電変換素子に入射した光を屈折または反射させて多孔質電極に入射させることで集電配線による光導波路の遮断を回避し、多孔質電極内に上記光を導波可能な形状であることが好ましい。特に、可視光領域において透過率が高く、集電配線による光導波路の遮断を回避し多孔質電極内に上記光を入射させる形状および材質であることが好ましく、典型的にはプリズム、レンズなどが挙げられるが、光導波構造は、これに限定されるものではなく、固体を利用するものであっても液体を利用するものであっても良く、特に液体を利用するものにあっては、エレクトロウェッティング(電気毛管現象)効果を利用した光学素子である液体レンズを用いることもできる。
【0017】
光導波構造の具体的な形状としては、具体的には凸型、凹型またはこれらを組み合わせた立体形状を有し、例えば、柱体、錐体、双錐体、錐台、多面体、球、部分球、球分などが挙げられ、特に、柱体であれば、その底面が凸形状である凸面柱体または凹形状である凹面柱体であるものが好適であって、底面の形状は、例えば、多角形、円、楕円、部分円(欠円)、部分楕円などの形状のうち、少なくとも1種類、または2種類以上を組み合わせた形状が選ばれるが、光導波構造の形状は、これに限定されるものではない。
【0018】
また、光導波構造を構成する具体的な材料としては、光を透過する材料であれば基本的にはどのように物であってもよく、特に透明であって光が透過しやすく、屈折率を有する材料であることが好適であり、具体的には、透明無機材料、透明プラスチックなどが挙げられ、透明無機材料であれば、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、リン酸ガラス、ソーダガラスなどのが挙げられ、透明プラスチックであれば、例えば、ポリエチレンテレフタラート(略号PET)、ポリエチレンナフタラート(略号PEN)、ポリブチレンテレフタラート(略号PBT)、アセチルセルロース(略号AC)、テトラアセチルセルロース(略号TAC)、ポリフェニレンスルフィド(略号PPS)、ポリカーボネート(略号PC)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
また、光導波構造の一部を鏡面または半鏡面にすることも出来る。また、光導波構造の光入射面における入射光の反射を抑制するために、光導波構造11の表面上に多層成膜またはナノサイズ構造体を形成して光反射防止層とすることも可能である。光導波構造の大きさは特に制限されず、光の透過率や、集電配線の大きさなどを勘案して、適宜設計・選択することができる。
【0019】
また、光導波構造は上述したように入射光の光導波が光電変換素子内の集電配線に遮断されないように、集電配線の設置形態に対応させて、典型的には基板に関して反対側に設けられた集電配線に沿って設けられるほかにも、光電変換素子をタイリングなどによって集合させて構成した光電変換素子アレイにおいても、複数の集電配線を接続する集合配線によって遮断される光導波に関して同様に設置形態に対応させて光導波構造を設置することもできるが、光導波構造の設置はこれらに限定されるものではない。
【0020】
光電変換素子は、最も典型的には、太陽電池として構成される。ただし、光電変換素子は、太陽電池以外のもの、例えば光センサーなどであってもよい。
【0021】
電子機器は、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含むが、具体例を挙げると、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品などである。この場合、光電変換素子は、例えばこれらの電子機器の電源として用いられる太陽電池である。
【0022】
上述のように構成された本技術においては、基板の多孔質電極が設けられている面に集電配線が設けられた光電変換素子に、光導波構造を基板の光入射側にさらに設けたので、集電配線が光照射によって発生した電子を外部に取り出す際の抵抗損失を抑制し、光電変換素子が入射した光を屈折または反射させることで、集電配線による光導波路の遮断を回避し多孔質電極内に上記光を入射させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、簡易な構成で集電配線に遮られることなく多孔質電極に光を効率よく入射できるので、光照射によって発生した電力を外部に取り出す際の抵抗損失が少なく、さらに、光入射面の開口率が高く、入射する光を有効に利用でき、しかも優れた光電変換特性を得ることができる光電変換素子を実現することができる。そして、この優れた光電変換素子を用いることにより、高性能の電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この開示の第1の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図2】この開示の実施例1−1による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図3】この開示の実施例1−1による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図4】この開示の実施例1−2による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図5】この開示の実施例1−3による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図6】この開示の実施例1−4による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図7】この開示の実施例1−5による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図8】この開示の色素増感光電変換素子の電流−電圧特性を示す略線図である。
【図9】この開示の第1の実施の形態の変形例による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図10】この開示の実施例1−6による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図11】この開示の実施例1−7による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図12】この開示の第2の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図13】この開示の実施例2−1による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図14】この開示の実施例2−1による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図15】この開示の第2の実施の形態の変形例による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図16】この開示の実施例2−2による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図17】この開示の実施例2−3による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図18】この開示の第3の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図19】この開示の実施例3−1による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図20】この開示の第4の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図21】この開示の第5の実施の形態による色素増感光電変換素子を示す断面図である。
【図22】この開示の実施例6−1による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図23】この開示の実施例6−2による色素増感光電変換素子の光導波構造の設計例を示す断面図である。
【図24】この開示の第7の実施の形態による色素増感光電変換素子アレイを示す断面図である。
【図25】従来の色素増感太陽電池の光導波構造を示す断面図である。
【図26】従来の色素増感太陽電池の光導波構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図25は一般的な色素増感太陽電池100の構造を示す要部断面図となる。
図25に示すように、この色素増感太陽電池100においては透明基板101の一主面にFTO層である透明電極102が設けられ、この透明電極102上にTiO2の焼結体で構成された多孔質電極103が設けられている。この多孔質電極103には一種又は複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。一方、対向基板104の一主面には透明導電層が設けられ、この透明導電層上に対極105が設けられている。そして、透明基板101上の多孔質電極103と対向基板104上の対極105との間にレドックス対としてI-/I3-の酸化還元種を用いた電解液からなる電解質層107が充填され、これらの透明基板101および対向基板104の外周部が封止材(図示せず)で封止されている。
色素増感光電変換素子100は多孔質電極103内に光が入射すると、透明電極102を負極、対極105を正極とする電池として動作する。具体的には、透明基板101および透明電極102を透過し、多孔質電極103に入射した光子を多孔質電極103に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と多孔質電極3との間の電気的結合を介して、多孔質電極3を構成するTiO2の伝導帯に引き出され、多孔質電極103を通って透明電極102に到達する。
一方、電子を失った光増感色素は、電解質層7中の還元剤、例えばI-から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層7中に酸化剤、例えばI3-(I2とI-との結合体)を生成する。
2I- 2+2e-
I+I- 3-
【0026】
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極105に到達し、上記の反応の逆反応によって対極105から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
3- 2 +I-
2 +2e- 2I-
透明電極102から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極105に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層107にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0027】
このように、光増感作用によって発生した電子は、多孔質電極103を通って透明電極102に到達し外部回路に送り出されるため、色素増感太陽電池100の光電変換効率を高める為には、発生した電子のエネルギーをロスさせずに外部に取り出すことが必要であり、この為には電子の取出し経路である透明電極102の内部抵抗を出来るだけ減少させ抵抗損失を抑える必要がある。
しかしながら、透明電極102は光の透過損失が大きい為、透明基板101に入射してくる光を最大限に利用するには透明電極102を極薄に形成する必要があり、透明電極102は比較的電気抵抗が大きくなってしまうのが実情である。
【0028】
そこで、発生した電子を外部に取り出す際のエネルギーロスを抑制するために、図26に示す様に、多孔質電極103の受光面に帯状の溝を設け、上記帯状の溝に嵌合にするように透明電極102上に銀(Ag)などの導電性の高い集電配線108を形成した。集電配線108は電解質層107を構成する電解液などに対して一般的に薬液耐性が低いので、集電配線108を電解液から保護するために集電配線保護層109が設けられている。集電配線108が設けたことにより、電子が多孔質電極103から導電性の高い集電配線108を径由して透明電極102に到達するので、発生した電子を外部に取り出す際のエネルギーロスが低減される。
【0029】
しかしながら、これら集電配線108は、金属などの光遮光性材料であり、多孔質電極103の受光面の上部において一定の面積を占めて設けられるので、図26に示すように、透明電極102に入射した光が集電配線108または集電配線保護層109に遮断され多孔質電極103に到達できないので、多孔質電極103において発電に寄与出来ない領域が生まれる。つまり受光面における光電変換領域の面積が減少してしまう。
例えば、概ねコリメートされた平行光として近似できる光が入射面である透明基板101に垂直に入射する場合に、多孔質電極103の幅を5mm、集電配線108の幅を1.5mmとして透明電極102上に集電配線108が繰り返し配置された場合では、集電配線8が配置されていない場合の光入射面の開口率を100%とすると、集電配線108を設けることにより開口率は76.9%にまで低下し、これはそのまま光電変換効率の低下に寄与し、ひいては発電効率低下として寄与してしまうこととなる。
【0030】
そこで本開示者は、集電配線108に遮断され発電に寄与しえなかった入射光を、透明基板101内または透明基板101上または透明基板101の上方に設けられた光導波構造によって上記入射光の光導波路を変更することによって、集電配線108による入射光の遮断を回避し、発電部である多孔質電極103内に導波させ、光取り込み時の光入射面の開口率を理論上100%とすることの出来ることを案出するに至った。
【0031】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
第1の実施の形態の変形例(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
2.第2の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
第2の実施の形態の変形例(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
3.第3の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
4.第4の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
5.第5の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
6.第6の実施の形態(色素増感光電変換素子およびその製造方法)
7.第7の実施の形態(色素増感光電変換素子アレイおよびその製造方法)
【0032】
<1.第1の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図1は第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図である。
図1に示すように、この色素増感光電変換素子10においては、透明基板1の一主面に透明電極2が設けられ、この透明電極2が設けられている透明基板1の面上には集電配線保護層9を備えた集電配線8が所定間隔を置いて設けられており、透明基板1の集電配線8が設けられた側の面には多孔質電極3が設けられている。この多孔質電極3には一種または複数種の光増感色素(図示せず)が結合している。さらに、透明基板1の集電配線8が設けられている面とは逆側の面である光入射側の面には、凸型立体形状を有する光導波構造11が設けられている。一方、対向基板4の一主面には透明導電層が設けられ、この透明導電層上に対極5が設けられている。そして、透明基板1上の多孔質電極3と対向基板4上の対極5との間に電解液からなる電解質層7が充填され、これらの透明基板1および対向基板4の外周部が封止材(図示せず)で封止されている。
【0033】
多孔質電極3としては、典型的には、半導体微粒子を焼結させた多孔質半導体層が用いられる。光増感色素はこの半導体微粒子の表面に吸着している。半導体微粒子の材料としては、シリコンに代表される元素半導体、化合物半導体、ペロブスカイト構造を有する半導体などを用いることができる。これらの半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアとなり、アノード電流を生じるn型半導体であることが好ましい。具体的には、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)などの半導体が用いられる。これらの半導体の中でも、TiO2、取り分けアナターゼ型のTiO2を用いることが好ましい。ただし、半導体の種類はこれらに限定されるものではなく、必要に応じて、二種類以上の半導体を混合または複合化して用いることができる。また、半導体微粒子の形態は粒状、チューブ状、棒状などのいずれであってもよい。
上記の半導体微粒子の粒径に特に制限はないが、一次粒子の平均粒径で1〜200nmが好ましく、特に好ましくは5〜100nmである。また、半導体微粒子よりも大きいサイズの粒子を混合し、この粒子で入射光を散乱させ、量子収率を向上させることも可能である。この場合、別途混合する粒子の平均サイズは20〜500nmであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0034】
多孔質電極3は、できるだけ多くの光増感色素を結合させることができるように、半導体微粒子からなる多孔質半導体層の内部の空孔に面する微粒子表面も含めた実表面積の大きいものが好ましい。このため、多孔質電極3を透明基板1上に形成した状態での実表面積は、多孔質電極3の外側表面の面積(投影面積)に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。この比に特に上限はないが、通常1000倍程度である。
【0035】
一般に、多孔質電極3の厚さが増し、単位投影面積当たりに含まれる半導体微粒子の数が増加するほど、実表面積が増加し、単位投影面積に保持することができる光増感色素の量が増加するため、光吸収率が高くなる。一方、多孔質電極3の厚さが増加すると、光増感色素から多孔質電極3に移行した電子が集電配線8または透明電極2に達するまでに拡散する距離が増加するため、多孔質電極3内での電荷再結合による電子の損失も大きくなる。従って、多孔質電極3には好ましい厚さが存在するが、この厚さは一般的には0.1〜100μmであり、1〜50μmであることがより好ましく、3〜30μmであることが特に好ましい。
【0036】
電解質層7を構成する電解液としては、酸化還元系(レドックス対)を含む溶液が挙げられる。酸化還元系としては、具体的には、例えば、ヨウ素(I2)と金属または有機物のヨウ化物塩との組み合わせや、臭素(Br2)と金属または有機物の臭化物塩との組み合わせなどが用いられる。金属塩を構成するカチオンは、例えば、リチウム(Li+)、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、セシウム(Cs+)、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)などである。また、有機物塩を構成するカチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムイオン類、ピリジニウムイオン類、イミダゾリウムイオン類などの第四級アンモニウムイオンが好適なものであり、これらを単独に、あるいは二種類以上を混合して用いることができる。
【0037】
電解質層7を構成する電解液としては、上記のほかに、フェロシアン酸塩とフェリシアン酸塩との組み合わせや、フェロセンとフェリシニウムイオンとの組み合わせなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオールとアルキルジスルフィドとの組み合わせなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノンとキノンとの組み合わせなどを用いることもできる。
電解質層7の電解質としては、上記の中でも特に、ヨウ素(I2)と、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、イミダゾリウムヨーダイドなどの第四級アンモニウム化合物とを組み合わせた電解質が好ましい。電解質塩の濃度は溶媒に対して0.05M〜10Mが好ましく、さらに好ましくは0.2M〜3Mである。ヨウ素(I2)または臭素(Br2 )の濃度は0.0005M〜1Mが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5Mである。
【0038】
透明基板1は、透明な基板であって、光が透過しやすい材質と形状のものであれば特に限定されるものではなく、種々の基板材料を用いることができるが、特に可視光の透過率が高い基板材料を用いることが好ましい。また、色素増感光電変換素子に外部から侵入しようとする水分やガスを阻止する遮断性能が高く、また、耐溶剤性や耐候性に優れている材料が好ましい。具体的には、透明基板1の材料としては、石英やガラスなどの透明無機材料や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などの透明プラスチックが挙げられる。透明基板1の厚さは特に制限されず、光の透過率や、光電変換素子内外を遮断する性能を勘案して、適宜選択することができる。また、透明基板1の厚さは、0.2mm〜5mmであることが好ましく、また、0.5mm〜3mmであることが特に好ましく、0.5mm〜1.5mmであることが特に好ましいが、透明基板1の厚さはこれらに限定されるものではない。
【0039】
透明基板1上の一主面に設けられる透明電極2は、シート抵抗が小さいほど好ましく、具体的には500Ω/□以下であることが好ましく、100Ω/□以下であることがさらに好ましい。透明電極2を形成する材料としては公知の材料を用いることができ、必要に応じて選択される。この透明電極2を形成する材料は、具体的には、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、フッ素がドープされた酸化スズ(IV)SnO2 (FTO)、酸化スズ(IV)SnO2、酸化亜鉛(II)ZnO、インジウム−亜鉛複合酸化物(IZO)などが挙げられる。ただし、透明電極2を形成する材料は、これらに限定されるものではなく、二種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
集電配線8は、好適には柱体であって、その底面の形状は、三角形状、矩形状、台形状、多角形状、円形状、楕円形状、これらの形状の一部などであり、これらの中の一種または複数種の形状を組み合わせた形状を有しており、上記底面の形状および面積は一定であっても、変化があってもよい。また、上記底面の法線方向に伸びて柱体を形成しても、上記横断面が任意の角度方向に延びて曲柱体を形成してもよいが、集電配線8は上記に挙げたものには限定されず、透明基板1または透明電極2の少なくとも一部を覆うような、平面形状、曲面形状などであってもよい。
集電配線8の設置形態は、多孔質電極3と接していれば基本的にどのような設置形態でもよく、典型的には透明基板1または透明電極2上の少なくとも一部に、集電配線8の少なくとも一面が接し、上記透明基板1または透明電極2に接する面以外の面が多孔質電極3と接している構成で設けられ、例えば、等三重基板1または透明電極2上に設けられる集電配線8が、柱体である場合には、柱体の一側面または一側面の一部が透明基板1または透明電極2に接する形態で設けられる。集電配線8の設置形態は、典型的には透明基板1の辺に平行に帯状、直線状、曲線状などの中の一種または複数種を組み合わせた形態であって、多孔質電極3に設けられた溝と嵌合するように設けられるが、集電配線8の設置形態はこれらに限定されない。
また、集電配線8を電極とすることにより、色素増感光電変換素子10に透明電極2を設けなくても、集電配線8を負極として、好適には集電配線8を連結、接続することによって、色素増感光電変換素子10の外部に電子を取り出すことができる。その場合、集電配線8は透明基板1の多孔質電極3が設けられている側の面に多孔質電極3に接して設けられるが、集電配線8の設置は、これに限定されず、多孔質電極3内に集電配線を設けてもよい。
【0041】
特に、集電配線8が柱体であっての底面形状が矩形である場合には、所定間隔を置いて帯状または直線状に設ける形態が好適であって、集電配線8の具体的な寸法は、上記底面の長手方向(以下集電配線8の幅方向とする)の辺の長さが0.01〜5mmの範囲であることが好ましく、0.05〜1mmの範囲であることがより好ましい。また、上記底面の短手方向(以下集電配線8の厚さ方向とする)の辺の長さが1〜30μmの範囲にあることが好ましく、5〜10μmの範囲にあることがより好ましい。この場合、集電配線8は、透明基板1または透明電極2に、集電配線8の底面の幅方向の辺に対応する側面が接する形態で設けられる。また、例えば、上記底面が台形である場合にあっては、上記底面の透明基板1または透明電極2と接する辺を下底として、上記断面形状の高さが1〜30μmの範囲にあることが好ましく、5〜10μmの範囲にあることがより好ましい。また、例えば、上記断面形状が三角形である場合にあっては、上記断面形状の透明基板1または透明電極2と接する辺を底辺として、高さが1〜30μmの範囲にあることが好ましく、5〜10μmの範囲にあることがより好ましい。また、上述した集電配線8の具体例における、集電配線8の底面の延びる方向(以下集電配線8の奥行き方向とする)の長さは、透明基板1の形状、透明電極2の形状、集電配線8などの配置などにより適宜決められるが、これらに限定されず、例えば、集電配線8がシート状などの面形状である場合は、入射光を透過させるために集電配線8に空洞を設ける構成、例えば、集電配線8の面に複数の空洞を設けて千鳥格子状の集電配線8を構成することも有効であって、幅、厚さ、奥行きの長さは、好適には上述した範囲において適宜決めることができる。なお、集電配線8の幅方向、厚さ方向および奥行き方向は、透明基板1、透明電極2および光導波構造11が直柱体である場合においての幅方向、厚さ方向および奥行き方向と共通であり、以下、「幅方向」、「厚さ方向」および「奥行き方向」とする。
【0042】
集電配線8を構成する材料は導電性の高い材料が適宜選ばれ、具体的には金属材料、炭素材料、導電性高分子などが挙げられる。金属材料であれば、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)などが挙げられるが、集電配線8を構成する材料は、これらには限定されない。
集電配線8の多孔質電極3に接する面には、電解質層7を構成する電解液などが常時接することから、集電配線8を構成する材料に電解液耐性、溶剤耐性の低いものを選択する場合には、集電配線8を電解液などから保護するための集電配線保護層9を設けることができる。集電配線保護層9の形態は、典型的には集電配線8の表面全体または多孔質電極3と接する面を包被する形態で構成されるが、集電配線保護層9の形態は、これに限定されない。
集電配線保護層9に用いる材料は、耐電解液性、耐溶剤性に優れた材料から適宜選ばれ、具体的には金属酸化物材料、金属材料が挙げられる。酸化金属材料であれば、酸化アルミニウム(Al23)、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO3)、酸化ニオブ(Nb25)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化スズ(SnO2)などが挙げられ、金属材料であれば、例えば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ステンレス(SUS)、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)などが挙げられるが、集電配線保護層9に用いる材料は、これらに限定されない。
【0043】
光導波構造11は、凸型立体形状を有し、光を透過可能であれば基本的にはどのようなものであってもよく、上記に挙げた材質を適宜選択して構成され、その形状は好適には底面が線対称形状である柱体で構成されるが、光導波構造11の形状はこれに限定されるものではなく、非対称な形状であってもよく、また、錐体、多面体などであってもよい。また、光導波構造11は透明基板1の光入射側の面上に設けられ、好適には、透明基板1の光入射側の面とは反対側の面に設けられている集電配線8に沿って設けられる。光導波構造11は柱体であって底面が線対称な形状である場合には、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と光導波構造11の底面の幅方向における中心軸とが同一の直線上にあるように設けられることが最も好ましいが、光導波構造の設置は、これらに限定されるものではない。また、透明基板1を加工することによって、透明基板1に凸面または凹面を設け、透明基板1自体を光導波構造11としてもよく、特に凸部または凹部の垂直断面が線対称な形状にあっては、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と上記凸部または凹部の対称軸とが同一の直線上にあるように設けられる構成が好適である。
また、光導波構造11の形状は、上記に挙げた他にも、光導波構造11の設置位置、透明基板1の構成、集電配線8の形状などによっても適宜設計選択され、光導波構造11に入射した光が集電配線8による光導波路の遮断を回避可能で、多孔質電極3内に最も効率良く導波できる形状が選ばれ、特に集電配線8の幅を光導波構造11の幅と同じ長さにすることが好適である。
【0044】
光導波構造11の寸法は、光導波構造11が柱形状のプリズムである場合にあっては、底面の幅が0.1mm〜5mm、底面の厚さが0.1mm〜5mmおよび奥行きが10mm〜500mmであるのが好ましく、また、底面の幅が0.1mm〜0.8mm、底面の厚さが0.1mm〜1mmおよび奥行きが100mm〜500mmであることがより好ましく、また、底面の幅が0.1mm〜0.4mm、底面の厚さが0.1mm〜0.5mmおよび奥行きが200mm〜400mmであることが最も好ましい。また、光導波構造11が透明基板1に設けられた凸面である場合には、凸部の幅が0.1mm〜5mm、深さが0.1mm〜5mmおよび奥行きが10mm〜500mmであるのが好ましく、また、凸部の幅が0.1〜0.8mm、深さが0.1mm〜0.5mmおよび奥行きが100mm〜500mmであることがより好ましく、また、凸部の幅が0.1mm〜0.4mm、深さが0.1mm〜0.4mmおよび奥行きが200mm〜400mmであることが最も好ましいが、光導波構造11の形状、寸法は、これらの形状、寸法には限定されない。
【0045】
また、透明基板1または光導波構造11の光が入射する側の面上には、少なくとも一層からなる多層膜またはナノサイズ構造体を形成することにより光反射防止層20を設けることもできる。光反射防止層20が多層膜の場合には、透明基板1と光導波構造12とに設けられる光反射防止層20はそれぞれについて最適設計することが好ましいが、光反射防止層20は、これに限定されるものではない。また、光反射防止層20がナノサイズ構造体、例えばモスアイ構造からなる場合には、透明基板1と光導波構造11とに設けられる光反射防止層20は、モスアイ構造は原理的に入射角依存が少ないため、それぞれについて最適設計することなく同一構成のナノサイズ構造体を適用することが可能となるが、光反射防止層20は、これに限定されるものではない。
【0046】
光導波構造11が、特に凸型形状のプリズムで構成される場合における、光導波構造11の設計の一例を示す。
光導波構造11は、透明基板1の光入射側の面上に、透明基板1に関して集電配線8の反対側に設けられ、以下のように設計することができる。また、この場合においては、入射光は透明基板1に垂直な方向から入射する光に限定して考えるが、光導波構造11に入射する光は、これに限定されるものではなく、斜め方向からの入射光に関しても同様に設計することができる。
【0047】
集電配線8の幅をL1、厚さをL2とし、光導波構造11の幅をL3、厚さをL4、透明基板1の厚さをL5とし、空気の屈折率をna、光導波構造11の屈折率をnp、空気から光導波構造11に光が入射する界面での入射角をθ1、出射角をθ2とすると、スネルの法則より
【数1】

が成立する。
また、透明基板1の屈折率をng、光導波構造11から透明基板1に光が入射する界面での入射角をφ1、出射角をφ2とすると、スネルの法則より
【数2】

が成立する。
ここで、
【数3】

とする。
ここで、光導波構造11を透明基板1上に設ける場合において、光導波構造11の幅方向における端面から入射した光が、光導波構造11内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLp、透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLgとすると、集電配線8による光導波路の遮断を回避するためには
【数4】

を満たす必要がある。
さらに、光導波構造11の頂角部に上記平行光が入射するときを考えると、入射した光は反転照射となるため集電配線8をより避ける光路を通るが、光導波構造11の厚さL4が高くなりすぎると光導波構造11内部の鉛直面で光が反射してしまい、多孔質電極3に効率よく光を導波できない。これを避けるためには、光導波構造11内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lp'として、
【数5】

を満たす必要がある。
本実施の形態における色素増感光電変換素子10は、数式(4)および(5)を満足するように、集電配線8の幅L1、厚さL2、光導波構造11の幅L3、厚さL4、透明基板1の厚さL5、光導波構造11の屈折率np、透明基板1の屈折率ng、光導波構造11に光が入射する界面での入射角θ1および光導波構造11の設置位置が適宜決定されるが、光導波構造11の設計方法は、これに限定されるものではない。
【0048】
多孔質電極3に結合させる光増感色素は増感作用を示すものであれば特に制限はないが、この多孔質電極3の表面に吸着する酸官能基を有するものが好ましい。光増感色素は、一般的には、カルボキシ基、リン酸基などを有するものが好ましく、この中でも特にカルボキシ基を有するものが好ましい。光増感色素の具体例を挙げると、例えば、ローダミンB、ローズベンガル、エオシン、エリスロシンなどのキサンテン系色素、メロシアニン、キノシアニン、クリプトシアニンなどのシアニン系色素、フェノサフラニン、カブリブルー、チオシン、メチレンブルーなどの塩基性染料、クロロフィル、亜鉛ポルフィリン、マグネシウムポルフィリンなどのポルフィリン系化合物が挙げられ、その他のものとしてはアゾ色素、フタロシアニン化合物、クマリン系化合物、ビピリジン錯化合物、アントラキノン系色素、多環キノン系色素などが挙げられる。これらの中でも、リガンド(配位子)がピリジン環またはイミダゾリウム環を含み、Ru、Os、Ir、Pt、Co、FeおよびCuからなる群より選ばれた少なくとも一種類の金属の錯体の色素は量子収率が高く好ましい。特に、シス−ビス(イソチオシアナート)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(II)またはトリス(イソチオシアナート)−ルテニウム(II)−2,2' :6' ,2" −ターピリジン−4,4' ,4" −トリカルボン酸を基本骨格とする色素分子は吸収波長域が広く好ましい。ただし、光増感色素は、これらに限定されるものではない。
光増感色素としては、典型的には、これらのうちの一種類のものを用いるが、二種類以上の光増感色素を混合して用いてもよい。二種類以上の光増感色素を混合して用いる場合、光増感色素は、好適には、多孔質電極3に保持された、MLCT(Metal to Ligand Charge Transfer)を引き起こす性質を有する無機錯体色素と、この多孔質電極3に保持された、分子内CT(Charge Transfer)の性質を有する有機分子色素とを有する。この場合、無機錯体色素と有機分子色素とは、多孔質電極3に互いに異なる立体配座で吸着する。無機錯体色素は、好適には、多孔質電極3に結合する官能基としてカルボキシル基またはホスホノ基を有する。また、有機分子色素は、好適には、同一炭素に、多孔質電極3に結合する官能基としてカルボキシル基またはホスホノ基とシアノ基、アミノ基、チオール基またはチオン基とを有する。無機錯体色素は例えばポリピリジン錯体、有機分子色素は例えば、電子供与性の基と電子受容性の基とを併せ持ち、分子内CTの性質を有する芳香族多環共役系分子である。
【0049】
光増感色素の多孔質電極3への吸着方法に特に制限はないが、上記の光増感色素を例えばアルコール類、ニトリル類、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ジメチルスルホキシド、アミド類、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類、炭酸エステル類、ケトン類、炭化水素、水などの溶媒に溶解させ、これに多孔質電極3を浸漬したり、光増感色素を含む溶液を多孔質電極3上に塗布したりすることができる。また、光増感色素の分子同士の会合を低減する目的でデオキシコール酸などを添加してもよい。必要に応じて紫外線吸収剤を併用することもできる。
【0050】
多孔質電極3に光増感色素を吸着させた後に、過剰に吸着した光増感色素の除去を促進する目的で、アミン類を用いて多孔質電極3の表面を処理してもよい。アミン類の例としてはピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンなどが挙げられ、これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし、有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0051】
対極5の材料としては、導電性物質であれば任意のものを用いることができるが、絶縁性材料の電解質層7に面している側に導電層が形成されていれば、これも用いることが可能である。対極5の材料としては、電気化学的に安定な材料を用いることが好ましく、具体的には、白金、金、カーボン、導電性ポリマーなどを用いることが望ましい。
【0052】
また、対極5での還元反応に対する触媒作用を向上させるために、電解質層7に接している対極5の表面は、微細構造が形成され、実表面積が増大するように形成されていることが好ましい。例えば、対極5の表面は、白金であれば白金黒の状態に、カーボンであれば多孔質カーボンの状態に形成されていることが好ましい。白金黒は、白金の陽極酸化法や塩化白金酸処理などによって、また多孔質カーボンは、カーボン微粒子の焼結や有機ポリマーの焼成などの方法によって形成することができる。
【0053】
対極5は対向基板4の一主面に形成された透明導電層上に形成されているが、これに限定されるものではない。対向基板4の材料としては、不透明なガラス、プラスチック、セラミック、金属などを用いてもよいし、透明材料、例えば透明なガラスやプラスチックなどを用いてもよい。透明導電層としては、透明電極2と同様なものを用いることができる。
【0054】
封止材の材料としては、耐光性、絶縁性、防湿性などを備えた材料を用いることが好ましい。封止材の材料の具体例を挙げると、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、アクリル樹脂、ポリイソブチレン樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート) 、アイオノマー樹脂、セラミック、各種熱融着フィルムなどである。
【0055】
また、電解液を注入する場合、注入口が必要であるが、多孔質電極3およびこれに対向する部分の対極5上でなければ注入口の場所は特に限定されない。また、電解液の注入方法に特に制限はないが、外周が予め封止され、溶液の注入口を開けられた光電変換素子の内部に減圧下で注液を行う方法が好ましい。この場合、注入口に溶液を数滴垂らし、毛細管現象により注液する方法が簡便である。また、必要に応じて減圧または加熱下で注液の操作を行うこともできる。完全に溶液が注入された後、注入口に残った溶液を除去し、注入口を封止する。この封止方法にも特に制限はないが、必要であればガラス板やプラスチック基板を封止剤で貼り付けて封止することもできる。また、この方法以外にも、液晶パネルの液晶滴下注入(ODF;One Drop Filling)工程のように、電解液を基板上に滴下して減圧下で貼り合わせて封止することもできる。封止を行った後、電解液を多孔質電極3へ十分に含漬させるため、必要に応じて加熱、加圧の操作を行うことも可能である。
【0056】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス材料を所望の凸形立体形状に加工成形し、光導波構造11を形成する。光導波構造11の形成には従来公知の技術を適宜選択することができる。例えば、鋳造成形、切削成形、モールド成形、射出成形などが挙げられ、特に透明(光硬化)樹脂ディスペンスによるフロー法またはナノインプリント法により形成することが好ましいが、光導波構造11の形成方法は、これらに限定されるものではない。
次に、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面に、光導波構造11を接合する。接合方法は従来公知の技術を適宜選択することができる。例えば、接着、融着、光学溶着などが挙げられるが、光導波構造11の接合方法は、これに限定されるものではない。光導波構造11の接合は、接合に高温、高圧などの特殊な環境を必要としない限り、これ以降の工程において、または色素増感光電変換素子10が完成した後において接合することも可能である。
また、上記の工程に代えて、透明基板1を加工することによって凸形立体形状を形成することによっても光導波構造11とすることもできる。透明基板1を光導波構造11とする場合の加工方法には従来公知の方法が適宜選択され、例えば、切削成形、モールド成形などが挙げられるが、透明基板1の加工方法は、これに限定されるものではない。
次に、透明基板1の光導波構造11が設けられている面とは逆側の面にスパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。集電配線8を互いに連結、接続して電極とする場合にはこの工程を省略する。
【0057】
次に、透明基板1または透明電極2上にアルミニウム(Al)を所望のパターンに真空蒸着し集電配線8を形成する。さらに、集電配線8の表面を熱処理または電気的処理もしく化学的処理によって酸化させることによって集電配線保護層9を形成する。
【0058】
次に、透明基板1の集電配線8が設けられている面に多孔質電極3を形成する。この多孔質電極3の形成方法に特に制限はないが、物性、利便性、製造コストなどを考慮した場合、湿式製膜法を用いるのが好ましい。湿式製膜法では、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを水などの溶媒に均一に分散させたペースト状の分散液を調製し、この分散液を透明基板1または透明電極2上に塗布または印刷する方法が好ましい。分散液の塗布方法または印刷方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。具体的には、塗布方法としては、例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法などを用いることができる。また、印刷方法としては、凸版印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、凹版印刷法、ゴム版印刷法、スクリーン印刷法などを用いることができる。
【0059】
半導体微粒子の材料としてアナターゼ型TiO2を用いる場合、このアナターゼ型TiO2 は、粉末状、ゾル状、またはスラリー状の市販品を用いてもよいし、酸化チタンアルコキシドを加水分解するなどの公知の方法によって所定の粒径のものを形成してもよい。市販の粉末を使用する際には粒子の二次凝集を解消することが好ましく、ペースト状分散液の調製時に、乳鉢やボールミルなどを使用して粒子の粉砕を行うことが好ましい。このとき、二次凝集が解消された粒子が再度凝集するのを防ぐために、アセチルアセトン、塩酸、硝酸、界面活性剤、キレート剤などをペースト状分散液に添加することができる。また、ペースト状分散液の粘性を増すために、ポリエチレンオキシドやポリビニルアルコールなどの高分子、あるいはセルロース系の増粘剤などの各種増粘剤をペースト状分散液に添加することもできる。
【0060】
多孔質電極3は、半導体微粒子を透明基板1または透明電極2上に塗布または印刷した後に、半導体微粒子同士を電気的に接続し、多孔質電極3の機械的強度を向上させ、透明基板1または透明電極2との密着性を向上させるために、焼成することが好ましい。焼成温度の範囲に特に制限はないが、透明電極2上に形成する場合にあっては、温度を上げ過ぎると、透明電極2の電気抵抗が高くなり、さらには透明電極2が溶融することもあるため、通常は40〜700℃が好ましく、40〜650℃がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限はないが、通常は10分〜10時間程度である。
【0061】
焼成後、半導体微粒子の表面積を増加させたり、半導体微粒子間のネッキングを高めたりする目的で、例えば、四塩化チタン水溶液や直径10nm以下の酸化チタン超微粒子ゾルによるディップ処理を行ってもよい。透明電極2を形成する場合にあっては、透明電極2を支持する透明基板1としてプラスチック基板を用いる場合には、結着剤を含むペースト状分散液を用いて透明電極2上に多孔質電極3を製膜し、加熱プレスによって透明電極2に圧着することも可能である。
【0062】
次に、多孔質電極3が形成された透明基板1を、光増感色素を所定の溶媒に溶解した溶液中に浸漬することにより、多孔質電極3に光増感色素を結合させる。
【0063】
一方、対向基板4上にスパッタリング法などにより透明導電層および対極5を順次形成する。
次に、透明基板1と対向基板4とを多孔質電極3と対極5とが所定の間隔、例えば1〜100μm、好ましくは1〜50μmの間隔をおいて互いに対向するように配置する。そして、透明基板1および対向基板4の外周部に封止材(図示せず)を形成して電解質層7が封入される空間を作り、この空間に例えば透明基板1に予め形成された注液口(図示せず)から電解液を注入し、電解質層7を形成する。その後、この注液口を塞ぐ。
集電配線8を互いに連結、接続して電極とする場合には、集合配線などにより集電配線8を適宜接続する。
以上により、目的とする色素増感光電変換素子が製造される。
【0064】
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
この色素増感光電変換素子は、光が入射すると、対極5を正極、透明電極2または集電配線8を負極とする電池として動作する。その原理は次の通りである。なお、ここでは、集電配線8の材料としてアルミニウム(Al)、透明電極2の材料としてFTOを用い、多孔質電極3の材料としてTiO2を用い、レドックス対としてI-/I3-の酸化還元種を用いることを想定しているが、これに限定されるものではない。また、多孔質電極3に一種類の光増感色素が結合していることを想定する。また、特別な場合を除き、透明基板1または光導波構造11に入射する光は概ねコリメートされた平行光として近似できる光が透明基板1に垂直に入射する場合を想定する。
【0065】
透明基板1を透過し、その中の一部は光導波構造11を経て多孔質電極3に入射した光子を多孔質電極3に結合した光増感色素が吸収すると、この光増感色素中の電子が基底状態(HOMO)から励起状態(LUMO)へ励起される。こうして励起された電子は、光増感色素と多孔質電極3との間の電気的結合を介して、多孔質電極3を構成するTiO2の伝導帯に引き出され、多孔質電極3を通り、集電配線8または透明電極2に到達する。
【0066】
一方、電子を失った光増感色素は、電解質層7中の還元剤、例えばI-から下記の反応によって電子を受け取り、電解質層7中に酸化剤、例えばI3-(I2 とI- との結合体)を生成する。
2I- → I2+2e-
2+I- → I3-
【0067】
こうして生成された酸化剤は拡散によって対極5に到達し、上記の反応の逆反応によって対極5から電子を受け取り、もとの還元剤に還元される。
3- → I2+I-
2+2e- → 2I-
【0068】
透明電極2または集電配線8から外部回路へ送り出された電子は、外部回路で電気的仕事をした後、対極5に戻る。このようにして、光増感色素にも電解質層7にも何の変化も残さず、光エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0069】
<実施例1−1>
色素増感光電変換素子10を以下のように製造した。
まず、無色透明のガラス板を用意し、上記ガラス板を加工成形し光導波構造11を形成する。光導波構造11の形状は、五角形を底面とし、底面から垂直に伸びる直柱体であって、光導波構造11の底面は五角形の5つの角度のうち3つが90°、残りの2つの角度は135°である線対称な形状を有しており、端部における角度がいずれも90°である辺に対向する角を頂角θtとし、光導波構造11の底面の幅L3は集電配線8の幅L1と同一とする。また、集電配線8の奥行きをL6とすると、本実施例で製造される光導波構造11においては、L3=0.4mm、L6=40mm、θt=90°において、厚さはL4=0.21mm、屈折率はnp=1.49となる。光導波構造11の詳細な設計方法については後述する。
次に、厚さ1.1mmの無色透明なガラス板を、縦方向を40mm、横方向を42.8mmの大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面と、光導波構造11の上記頂角と対向する側面とを融着によって接合する。光導波構造11は透明基板1上に、光導波構造11の長手方向が奥行き方向と平行となるように透明基板1上に、5mm間隔ごとに透明基板1上からはみ出すことなく7本設けられる。すなわち、5mmの間隔は透明基板1上に8つ設けられる。
【0070】
次に、透明基板1の光導波構造11が設けられている光入射側の面とは逆側の面にスパッタリング法により透明導電層であるFTO層を形成して透明電極2を形成する。透明電極2上には、アルミニウム(Al)を真空蒸着し集電配線8を形成する。集電配線のパターンは、底面形状が幅0.4mm、厚さ10μmの長方形であって、奥行き方向に40mm伸びる直柱体である。この集電配線8は幅方向の中心軸を光導波構造11の中心軸と同じとなるように、5mmの間隔で透明基板1上に7本設けられる。5mmの間隔は透明基板1上に8つ設けられ、光導波構造11を設けない場合の、色素増感光電変換素子10の光入射面の入射光に対する開口率は93.5%となる。さらに、集電配線8の表面を熱酸化法などによって酸化させることによって集電配線保護層9を形成する。集電配線8は透明基板1に関して光導波構造11の反対側の透明電極2に、集電配線8の底面の幅方向における中心軸が光導波構造11の対称軸と同一直線上にあるような位置に形成される。
【0071】
実施例1−1による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法の一例を以下に示す。
図2は実施例1−1による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の一端部に光が入射した場合の光導波路を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図3は実施例1−1による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の頂角部に光が入射した場合の光導波路を示す断面図で、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図2に示すように本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は、その形状が五角形を底面とし、底面から垂直に伸びる直柱体であって、上記底面は五角形の5つの角のうち3つの角度が90°、残りの角の角度は135°である線対称な形状を有しており、角度が135°である2つの角に挟まれたθt=90°を頂角とする。
【0072】
ここで、光導波構造11の光入射側の面において、頂角を除く一端部に概ねコリメートされた平行光として近似できる光が透明基板1に垂直に入射する場合、集電配線8の幅L1をL1=0.4mmとすると、数式(4)から、光導波構造11の幅方向の端部から入射した光が集電配線8による光導波路の遮断を回避するためには、光導波構造11内の入射光路に沿った距離の幅方向成分Lpと透明基板1内の入射光路に沿った距離の幅方向成分Lgとの和が0.4mmよりも大きくなればよい。
具体的には、光導波構造11の入射面における左右の端部のうちの一方の端部に光が入射すると、空気から光導波構造11に光が入射する界面での入射角は
θ1=90°−(θt/2)=45°となり、空気の屈折率をna=1.00、光導波構造11の屈折率をnp=1.49とすると、数式(1)より空気から光導波構造11に光が入射する界面での出射角θ2=28.3°となる。
次に、光導波構造11から透明基板1に光が入射する界面での入射角をφ1、出射角をφ2、透明基板1の屈折率をng=1.55とすると、数式(3)よりφ1=16.7°となり、数式(2)よりφ2=16.0°を得る。
【0073】
ここで、光導波構造の幅をL3、厚さをL4、透明基板の厚さをL5とすると、LpおよびLgは、
【数6】

【数7】

となり、数式(6)および(7)から、数式(4)を満たすL3、L4、L5は、例えば、L4=0.5mm、L5=1.1mmと設定できる。そうすると、L1=L3=0.4mmなので、Lp+Lg=0.41mmでL1=0.4mmよりも大きくなり、数式(4)を満足する。
【0074】
また、本実施例において、光導波構造11の頂角部に上記平行光が入射するときを考えると、図3に示すとおり、入射した光は光導波構造11内で反転照射となるため集電配線8をより避ける導波光路を通るが、光導波構造11の厚さL4が高くなりすぎると光導波構造11内部の鉛直面で光が反射してしまい、多孔質電極3に効率よく光を導波できない。これを避けるためには、数式(5)を満たす必要がある。本実施例の設計例では光導波構造11内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lp'として、Lp'=L4tanφ1=0.15<0.2で満足している。
このように、光導波構造11の厚さL4の値を大きくなると光導波構造11内での内部反射と言う問題が起こる。この問題が起こりにくくするためには、光導波構造11内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lpの値に対して透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lgの値を十分に大きくする必要がある。
また、本実施例における光導波構造11は線対称な形状であって、集電配線8底面の幅方向における中心軸と上記対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設置されるので、上記端部と反対側の端部から入射した光についても同様に集電配線8による光導波路の遮断を回避できる。
【0075】
以上より、本実施例における光導波構造11において、光導波構造11の頂角θt=90°、屈折率np=1.49および透明基板1の屈折率ng=1.55とした場合では、特に光導波構造11の幅L3の長さを集電配線8の幅L1と同じ0.4mmとする場合において、光導波構造11の厚さL4をL4=0.5mmとし、透明基板1の厚さL5を1.1mm以上とすると、光導波構造11の入射面に透明基板1と垂直な方向から入射した全ての光が集電配線8による光導波路の遮断を回避することができる。
本実施例においては、頂角θt、光導波構造11の屈折率npおよび透明基板1の屈折率ngを設定した後に、数式(4)および(5)を満たすL3、L4およびL5を適宜設定することで、光導波構造11が設計されるが、これに限定されるものではなく、例えば、L3、L4およびL5を設定した後にθt、npおよびngを適宜設定して光導波構造11を設計することもできる。
【0076】
また、透明基板1の厚さL5が大きい、例えばL5が1.4mm以上の場合などには、透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lgのみで光導波が光導波構造11の大きさによらずに、集電配線8による光導波路の遮断を回避可能であるので、光導波構造11は光導波路の変更のみに寄与すれば良く、厚さL4の値がごく小さい、例えば三角柱のような形状とすることもできる。 さらに、本実施例における光導波構造11の設計する場合において、透明基板1の厚さL5を予め設定し、
【数8】

を満足するφ2を得ることによって、各材料の屈折率および透明基板1の厚さL5に応じて、光導波構造の大きさによらず集電配線8による光導波路の遮断を回避可能な入射角θ1および頂角θtを設定することもできる。
【0077】
多孔質電極3を形成する際の原料であるTiO2のペースト状分散液は、「色素増感太陽電池の最新技術」(荒川裕則監修、2001年、(株)シーエムシー)を参考にして作製した。すなわち、まず、室温で撹拌しながらチタンイソプロポキシド125mlを0.1Mの硝酸水溶液750mlに徐々に滴下した。滴下後、80℃の恒温槽に移し、8時間撹拌を続けたところ、白濁した半透明のゾル溶液が得られた。このゾル溶液を室温になるまで放冷し、ガラスフィルタでろ過した後、溶媒を加えて溶液の体積を700mlにした。得られたゾル溶液をオートクレーブへ移し、220℃で12時間水熱反応を行わせた後、1時間超音波処理して分散化処理を行った。次に、この溶液をエバポレータを用いて40℃で濃縮し、TiO2の含有量が20wt%になるように調製した。この濃縮ゾル溶液に、TiO2の質量の20%分のポリエチレングリコール(分子量50万)と、TiO2の質量の30%分の粒子直径200nmのアナターゼ型TiO2とを添加し、撹拌脱泡機で均一に混合し、粘性を増加させたTiO2のペースト状分散液を得た。
【0078】
上記のTiO2のペースト状分散液を、透明電極2であるFTO層または集電配線保護層9である酸化アルミニウム層の上にブレードコーティング法によって塗布し、大きさ5mm×5mm、厚さ200μmの微粒子層を形成した。その後、500℃に30分間保持して、TiO2微粒子をFTO層上に焼結した。焼結されたTiO2膜へ0.1Mの塩化チタン(IV)TiCl4 水溶液を滴下し、室温下で15時間保持した後、洗浄し、再び500℃で30分間焼成を行った。この後、紫外光照射装置を用いてTiO2焼結体に紫外光を30分間照射し、このTiO2焼結体に含まれる有機物などの不純物をTiO2の光触媒作用によって酸化分解して除去し、TiO2焼結体の活性を高める処理を行い、多孔質電極3を得た。
【0079】
光増感色素として、十分に精製したZ907 23.8mgを、アセトニトリルとtert−ブタノールとを1:1の体積比で混合した混合溶媒50mlに溶解させ、光増感色素溶液を調製した。
次に、多孔質電極3をこの光増感色素溶液に室温下で24時間浸漬し、TiO2 微粒子表面に光増感色素を保持させた。次に、4−tert−ブチルピリジンのアセトニトリル溶液およびアセトニトリルを順に用いて多孔質電極3を洗浄した後、暗所で溶媒を蒸発させ、乾燥させた。
【0080】
対極5は、予め直径0.5mmの注液口が形成されたFTO層の上に厚さ50nmのクロム層および厚さ100nmの白金層を順次スパッタリング法によって積層し、その上に塩化白金酸のイソプロピルアルコール(2−プロパノール)溶液をスプレーコートし、385℃、15分間加熱することにより形成した。
【0081】
次に、透明基板1と対向基板4とをそれらの多孔質電極3と対極5とが対向するように配置し、外周を厚さ30μmのアイオノマー樹脂フィルムとアクリル系紫外線硬化樹脂とによって封止した。
【0082】
一方、EMImTCBとdiglyme とを1:1の重量比で混合した混合溶媒 2.0gに1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨーダイド 1.0g、ヨウ素I2 0.10g、そしてN−ブチルベンズイミダゾール(NBB) 0.054gを溶解させ、電解液を調製した。
【0083】
この電解液を予め準備した色素増感光電変換素子の注液口から送液ポンプを用いて注入し、減圧することで素子内部の気泡を追い出した。こうして電解質層7が形成される。次に、注液口をアイオノマー樹脂フィルム、アクリル樹脂およびガラス基板で封止し、色素増感光電変換素子を完成した。
【0084】
<実施例1−2>
光導波構造11を、頂角を有し底面が線対称な形状である柱形状の凸型プリズムとして、幅L3を、集電配線8の幅L1よりも小さいものとし、この形状に基づいて光導波構造11の寸法と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0085】
実施例1−2による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法の一例を以下に示す。
図4は実施例1−2による色素増感光電変換素子10の光導波構造11を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図4に示すように、本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は、幅L3=0.2mm、頂角θt=90°として実施例1と同様に設計される。光導波構造11に入射した光は空気と光導波構造11との入射界面での屈折および光導波構造11と透明基板1との入射界面での屈折により光導波の光路が変更され、多孔質電極3に入射する。このとき、透明基板1上に設けられ集電配線8による光導波路の遮断を、上記屈折による光路変更によって回避するように光導波構造11を設計する必要がある。設置位置については、透明基板1の光入射側の面に、光導波構造11の底面が線対称な形状を有しているので、光導波構造11の底面の対称軸が集電配線8底面の幅方向における中心軸と同一直線上にあるように光導波構造11を設置すればよい。
【0086】
ここで、光導波構造11の入射面の左端部から光が入射して光導波構造11と透明基板1内を導波したとすると、例えば、透明基板1の厚さL5=1.0mmとすると、数式(7)より、透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分LgはLg=0.28で、数式(4)より導かれるL1−((L1−L3)/2)=0.3mmよりも小さく、光導波構造11の厚さL4を設定する必要がある。そこで数式(6)より、数式(4)を満足する光導波構造11の厚さL4は、L4=0.17+0.1=0.27mmと設定できる。そうすると、Lp+Lg=0.33mmで0.3mmよりも大きくなり、数式(4)を満足する。また、光導波構造11内の光導波の反射を検討すると、光導波構造11内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lp'として、Lp'= 4tanφ1=0.08mm<0.1であり数式(5)を満足しているので、光導波構造11内の鉛直面での反射は起こることはない。
また、本実施例における光導波構造11は線対称な形状であって、透明基板1の光入射側の面に、上記底面の対称軸が集電配線8の幅方向における中心軸と同一直線上にあるように設置されるので、光導波構造11を、光導波構造11の幅L3=0.2mm、頂角θt=90°、光導波構造11の厚さL4=0.17mm、および光導波構造11の屈折率np=1.49として構成すれば、入射面右端部から入射した光についても同様に集電配線8による光導波路の遮断を回避できる。
【0087】
以上より、本実施例における色素増感光電変換素子10の光導波構造11において、光導波構造11の厚さL4=0.27mmおよび透明基板1の厚さL5=1.0mmとすると、光導波構造11の入射面に透明基板1と垂直な方向から入射した全ての光が集電配線8による光導波路の遮断を回避することができる。また、本実施例においては、頂角θt、光導波構造11の屈折率npおよび透明基板1の屈折率ngを設定した後に、数式(4)および(5)を満たすL3、L4およびL5を適宜設定することで、光導波構造11が設計されるが、光導波構造11の設計方法はこれに限定されるものではなく、例えば、L3、L4およびL5を設定した後にθt、npおよびngを適宜設定して光導波構造11を設計することもできる。
また、透明基板1の厚さL5が大きい、例えばL5≧1.1mmの場合では、ngの値のみで数式(4)を満足するので、光導波構造11は光導波路の変更のみに寄与すれば良く、光導波構造11の厚さL4によらずに光導波が集電配線8による光導波路の遮断を回避可能である。これにより、光導波構造11の厚さL4の値がごく小さい、例えば三角柱のような形状とすることもできる。さらに、本実施例における光導波構造11の設計する場合において、L5を予め設定し、数式(8)を満足するφ2を得ることによって、各材料の屈折率およびL5に応じて、光導波構造の大きさによらず集電配線8による光導波路の遮断を回避可能な入射角θ1および頂角θtを設定することもできる。
【0088】
<実施例1−3>
光導波構造11を、頂角を有し底面が線対称な形状である柱形状の凸型プリズムとして、幅L3を集電配線8の幅L1よりも大きいものとし、この形状に基づいて光導波構造11の寸法と透明基板1の厚さを決定した。
その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0089】
実施例1−3による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法の一例を以下に示す。
図5は実施例1−3による色素増感光電変換素子の光導波構造11を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図5に示すように、本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は、幅L3=0.6mm、頂角θt=90°として実施例1と同様に設計される。光導波構造11に入射した光は空気と光導波構造11との入射界面での屈折および光導波構造11と透明基板1との入射界面での屈折により光導波の光路が変更され、多孔質電極3に入射する。このとき、集電配線8による光導波路の遮断を、上記屈折による光路変更によって回避可能なように光導波構造11を設計する必要がある。設置位置については、光導波構造11の底面が線対称な形状を有しているので、集電配線8の幅方向における中心軸と上記対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設置すればよい。
【0090】
ここで、光導波構造11の入射面左端部から光が入射して光導波構造11と透明基板1内を導波したとすると、透明基板1の厚さL5=1.0mmとして、数式(7)より、透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lg=0.28で、数式(4)から導かれるL1−((L1−L3)/2)=0.5mmよりも小さく、光導波構造11の厚さL4を設定する必要がある、そこで数式(6)より、数式(4)を満足する光導波構造11の厚さL4は、L4=0.77+0.3=0.97mmと設定できる。そうすると、光導波構造11内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lp=0.23となり、Lp+Lg=0.51mmで0.5mmよりも大きくなり、数式(4)を満足する。また、光導波構造11内の光導波の反射を検討すると、光導波構造11内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lp'として、Lp'=L4tanφ1=0.29<0.3であり数式(5)を満足しているので、光導波構造11内の鉛直面での反射は起こることはない。
また、本実施例における光導波構造11は、線対称な形状である底面を有すr柱体であって、集電配線8の幅方向における中心軸と上記対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設置されているので、光導波構造11を、幅L3=0.6mm、頂角θt=90°、厚さL4=0.68mm、および屈折率np=1.49とすれば、上記端部と反対側の端部から入射した光についても同様に集電配線8による光導波路の遮断を回避できる。
【0091】
以上より、本実施例における光導波構造11において、光導波構造11の厚さL4をL4=0.68mmおよび透明基板1の厚さL5を1.1mm以上とすると、光導波構造11の入射面に透明基板1と垂直な方向から入射した全ての光が集電配線8による光導波路の遮断による光導波路の遮断を回避することができる。本実施例においては、頂角θt、光導波構造11の屈折率npおよび透明基板1の屈折率ngを設定した後に、数式(4)および(5)を満たすL3、L4およびL5を適宜設定することで、光導波構造11が設計されるが、光導波構造11の設計方法は、これに限定されるものではなく、例えば、L3、L4およびL5を設定した後にθt、npおよびngを適宜設定して光導波構造11を設計することもできる。
また、透明基板1の厚さL5の値が大きい、例えばL5≧1.79mmの場合などには、透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lgのみで光導波が集電配線8による光導波路の遮断を回避可能であるので、光導波構造11は光導波の光路変更のみに寄与すればよく、光導波構造11の厚さL4の長さがごく小さい、例えば三角柱のような形状とすることもできる。さらに、本実施例における光導波構造11の設計する場合において、透明基板1の厚さL5を予め設定し、数式(8)を満足するφ2を得ることによって、各材料の屈折率およびL5に応じて、光導波構造の大きさによらず集電配線8による光導波路の遮断を回避可能な入射角θ1および頂角θtを設定することもできる。
【0092】
<実施例1−4>
光導波構造11を、頂角を有し非対称な形状である底面を有する柱体型凸型プリズムとし、この形状に基づいて光導波構造11の寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0093】
実施例1−4による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法の一例を以下に示す。
図6は実施例1−4による色素増感光電変換素子の光導波構造11を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図6に示すように、本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は、幅L3=0.4mm、頂角θt=90°として、頂角θtは頂角θt対向する辺に下ろした垂線が対向する辺を3:1に分割するような位置となるような形状を有している。光導波構造11に入射した光は空気と光導波構造11との入射界面での屈折および光導波構造と透明基板1との入射界面での屈折により光導波の光路が変更され、多孔質電極3に入射する。このとき、集電配線8による光導波路の遮断を、上記屈折による光路変更によって回避するように光導波構造11を設計する必要がある。また、本実施例における光導波構造11は、底面が左右非対称な形状を有する柱体であるので、光導波構造11の光入射側の面の左右の端部から入射するそれぞれの光について独立に考えて設計する必要がある。また、光導波構造11の設置位置についても光導波構造11の底面の形状が非対称であるので、適宜設定する必要がある。
【0094】
ここで、実施例1−1と同様に、光導波構造11の光入射側の面左端部から入射する平行光について考えると、光導波構造の頂部左側の入射角θ1Lはθ1L=60°となり、数式(1)より出射角θ2L=35.5°、数式(3)よりφ1L=25.5°、数式(2)よりφ2L=24.4°が導かれる。よって、数式(6)および(7)から、数式(4)を満たす光導波構造11の幅L3L、光導波構造11の厚さL4Lは、例えば、透明基板1の厚さL5をL5=1.0mmとすると、数式(7)より透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分LgL=0.45となり、光導波構造11の底面の中心軸と集電配線8の中心軸が同じとなる位置に設置した場合、光導波構造11がどのような大きさであっても光導波構造11の光入射側の面左端部から入射した光導波は集電配線8による光導波路の遮断を回避することができる。
一方、光導波構造11の光入射側の面右端部から入射する光について考えると、光導波構造の頂部右側の入射角θ1Rはθ1R=30°となり、数式(1)より出射角θ2R=19.6°、数式(3)よりφ1R=10.4°、数式(2)よりφ2R=9.9°が導かれる。よって、数式(6)および(7)から、数式(4)を満たす光導波構造11の幅L3R、光導波構造11の厚さL4Rは、例えば、透明基板1の厚さL5をL5=1.0mmとすると、透明基板1内を導波し通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分LgR=0.17となり、光導波構造11を光導波構造11の底面の中心軸と集電配線8の中心軸とが同じとなる位置に設置した場合、上記光導波が集電配線8を回避することができない。そこで、LpRを考える必要が出てくるが、数式(6)より集電配線8による光導波路の遮断を回避可能な光導波構造11を設計すると、光導波構造11の厚さL4R=2.57+0.14=2.71mmとなる。
【0095】
次に、上述した設計による光導波構造11の形状が数式(5)を満足し、光導波構造11内での光導波の反射が起きないか検討する。光導波構造11内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分を左右の入射光においてそれぞれLpL'、LpR'として上記の各値を数式(5)に代入すると、LpL'=L4tanφ1L=1.27mm、LpR'=L4tanφ1R=0.59mmであり、数式(5)よりLpL'=L4tanφ1L<0.3mm、LpR'=L4tanφ1R<0.1mmを満足しないので、光導波構造11内の鉛直面での反射が起こることになる。
そこで、光導波構造11の底面の中心軸を、集電配線8の底面の中心軸から右側にL1−LgR=0.23mmシフトした位置として設置すると考えると、光導波構造11の光入射側の面左端部から入射した光導波はLpL+ LpR>0.4+0.23=0.63mmを満たす必要があり、同様に透明基板1の厚さL5をL5=1.0mmとすると、数式(6)および(7)より、L4=0.40+0.14=0.54mmとなる。
また、光導波構造11の光入射側の面右端部から入射した光導波においてはLpL+LpR>0.4−0.23=0.17mmを満たす必要があり、L4=0.54mmであれば、LgL+LpL=0.24>0.17で満足している。また、LpL'=L4tanφ1L=0.24mm、LpR'=L4tanφ1R=0.095mmであり、LpL'=<0.3mm、LpR'=<0.1mmとなるので数式(5)を満足する。よって光導波構造11内の鉛直面での反射が起こることはない。
【0096】
<実施例1−5>
光導波構造11を、円の一部を直線で切り取った欠円形状の底面を有し、奥行き方向に垂直に伸びる直柱体である片凸型のレンズとし、この形状に基づいて光導波構造11の寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0097】
図7は実施例1−5による色素増感光電変換素子の光導波構造11を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図7に示すように、本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は円の一部を直線で切り取った欠円形状の底面を有し、底面から垂直に伸びる直柱体である片凸型の直柱体レンズである。
【0098】
実施例1−5による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法の一例を以下に示す。
本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は柱体であって、その底面は円の直線で切り取った欠円形状であるので、光導波構造11に入射した光はレンズ効果によって集光され、透明基板1を透過し、多孔質電極3に入射する。このとき、集電配線8による光導波路の遮断を、上記集光によって回避するように光導波構造11を設計する必要がある。
【0099】
そこで、光導波構造11の屈折率をnp、上記円の半径をR、焦点距離をFとすると
【数9】

が成立する。
ここで、集電配線8は、底面が幅L1=0.4mm、厚さL2=10μmの矩形であって、底面から垂直に伸びる直柱体とし、この集電配線8が、5mmの間隔で透明基板1上に、透明基板1の縦方向と平行に設けられている。光導波構造11は集電配線8の底面の中心軸上に光導波構造11の端点が来るように透明基板1の縦方向隙間無く並べている。そうすると、光導波構造11の底面の幅L3である欠円の弦の長さをL3=5.4mmすることができる。また透明基板1の厚さを1.0mmとして、光導波構造11に入射した光が集電配線8の遮断を回避するには、簡単の為、光導波構造11の厚さを無視すると、光導波構造11の焦点距離Fは、焦点距離Fが1mm以上の場合は、0.4:1.0=5.4:Fを満たすFよりも小さくなければならない。また、焦点距離Fが1未満の場合は、5.2:1.01=5.4:2Fを満たすFよりも大きくなければならない。そうすると、焦点距離Fは0.53mm≦F≦13.5mmであればよく、例えば焦点距離がF=13.5mmの場合にあっては、簡単の為、透明基板1と光導波構造11の屈折率を同一とし、その値をnp=ng=1.50とすると、数式(9)より半径R=6.75mmとなる。これにより、本実施例の光導波構造11の形状は、半径R=6.75mmの円を、弦が5.4mmとなるように直線で切り取った欠円形状を底面であって、上記底面から垂直に伸びる直柱体であり、集電配線8の底面の中心軸上に光導波構造11の幅方向の端点がくるように、透明基板1の光入射側の面に設置される。
【0100】
<比較例1>
光導波構造11の作製および光導波構造11を設ける工程を省略し、その他は実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0101】
図8は、実施例1−1および比較例1による色素増感光電変換素子10の電流−電圧特性を示す略線図である。
図8においては、光導波構造11を設けた実施例1−1の色素増感光電変換素子10の電流−電圧特性を「光導波構造あり」、光導波構造11を設けなかった比較例1の色素増感光電変換素子10の電流−電圧特性を「光導波構造なし」とした。
図8に示すとおり、「光導波構造あり」である実施例1−1の色素増感光電変換素子10が、「光導波構造なし」である比較例1の色素増感光電変換素子10よりも、電流特性、電圧特性ともに向上し、実施例1−1の色素増感光電変換素子10の光電変換効率は比較例1の色素増感光電変換素子10と比較して放電変換効率が0.53%上昇した。これは、入射光に対する光入射面の開口率が93.5%である色素増感光電変換素子10を、開口率100%として光電変換効率を計算したときの理論値(0.66%の上昇)と非常に合致するものであり、実施例1−1の色素増感光電変換素子10の入射光に対する光入射面の開口率は、光導波構造11によって100%に近い値となったと考えられ、本実施の形態における光導波構造11の効果が実証された。
【0102】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、色素増感光電変換素子10の透明基板1または透明電極2上に集電配線保護層9を備えた集電配線8を所定の間隔をおいて設け、透明基板1の光入射側の面上に、集電配線8に対応して光導波構造11を設けたので、集電配線8により多孔質電極3で発生した電子を外部に取り出す際のエネルギーロスが低減でき、さらに、光導波構造11により色素増感光電変換素子10の光入射側の面より入射する光を集電配線8に遮られることなく多孔質電極3内に光を効率よく導波できるので、入射光の利用率が高く、しかも優れた光電変換特性を得ることができる光電変換素子を得ることができる。
【0103】
[色素増感光電変換素子]
図9は第1の実施の形態の変形例による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図9に示すように、この色素増感光電変換素子10において、光導波構造11を透明基板1上には設けず、光導波構造11の光入射側の面の上方に設けたものである。光導波構造11は、好適には、光導波構造11の一主面と透明基板1の一主面とが平行に所定の距離を置いて対向した形態で設けられる。光導波構造11の一主面と透明基板1の一主面との間には開空間が形成され、上記開空間内は気体で満たされた気体層となっている。
気体層は典型的には空気層17であるが、これに限定されない。また、光導波構造11の上方に、第2の気体層を介して、さらに光導波構造を設けた多段構造で構成してもよい。多段構造で構成する場合に新たに設けられる光導波構造は、無色透明であって、光の透過力に優れ、入射光の導波光路を変更可能であるものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、凸面形状であっても、凹面形状であってもよい。また、これらの光導波構造11の設置についても集電配線8による光導波路の遮断が回避可能であれば、設置に用いる光導波構造の個数、設置方法はどのようなものであってもよい。
【0104】
また、光導波構造11の一主面と透明基板1の一主面とが離れて設置されるので、その距離は上記両主面の最短距離が1μm〜10mmの範囲であることが好ましく、1μm〜1mmの範囲であることがより好ましく、1μm〜500μmであることが最も好ましいが、光導波構造11の設置形態および設置距離はこれに限定されない。また、光導波構造11の設置後においても適宜変更が可能で、具体的には、移動、回転、除去、交換などが可能である。特に、光導波構造11に入射する光の角度が変化する場合などにおいて、光導波構造11を回転および/または移動させて入射する光の角度に対応することにより、光導波が集電配線8による光導波路の遮断を回避することもできる。
また、光導波構造11を多段構造としたときに光導波構造11の上方に設けられる光導波構造11aは、特にその形状が柱形状であって底面が線対称な形状である場合には、集電配線8の幅方向における中心軸と光導波構造11の底面の対称軸と光導波構造11aの底面の対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設けられるのが好ましいが、光導波構造11aの形状および設置は、これに限定されるものではない。
また、光導波構造11の形状は、第1の実施の形態で挙げた他に、透明基板1への設置を前提としないので、設置の際に透明基板1と対向する面を平面とする必要がない。よって、光導波構造11に入射した光が、透明基板1を透過し、集電配線8による光導波路の遮断を回避して多孔質電極3内に最も効率良く到達できる形状であれば基本的にはどのような形状であってもよく、円柱形状、円錐形状であってもよい。光導波構造11の大きさに関しては、特に、集電配線8の幅を光導波構造11の幅と同じ長さにすることが好ましいが、光導波構造11は、これらの形状、寸法には限定されない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0105】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス材料を所望の形状に加工成形し、光導波構造11を形成する。光導波構造11の形成には従来公知の技術を適宜選択することができる。例えば、鋳造成形、切削成形、モールド成形、射出成形などが挙げられるが、光導波構造11の形成方法はこれに限定されるものではない。
次に、透明基板1の一主面にスパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。集電配線8を互いに連結、接続して電極とする場合にはこの工程を省略する。
次に、透明電極2上にアルミニウム(Al)を所望のパターンに真空蒸着し集電配線8を形成する。さらに、集電配線8の表面を熱処理または電気的処理もしく化学的処理によって酸化させることによって集電配線保護層9を形成する。
【0106】
次に、透明基板1の透明電極2が設けられている面とは逆側の面である透明基板1の光入射側の面の上方に、集電配線8に対応して、色素増感光電変換素子10とは独立に光導波構造11を付設する。光導波構造11の設置方法は従来公知の技術を適宜選択することができ、例えば、接着、圧着、挟着、嵌着などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0107】
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、その一部が光導波構造11および気体層を経て透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0108】
<実施例1−6>
光導波構造11を、底面が頂角を有し線対称な形状である柱形状の凸型プリズムとして、光導波構造11を上記頂角に対向する側面と、透明基板1の光入射側の面とが平行に対向した形態で、集電配線8の幅方向における中心軸と光導波構造11の底面の対称軸とが同一直線上にあるように、透明基板1と所定の距離を置いて設け、この形態に基づいて光導波構造11の寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0109】
図10は実施例1−6による色素増感光電変換素子の光導波構造11を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図10に示すように、本実施例の色素増感光電変換素子10に設けられる光導波構造11は、実施例1−1で設計するものと同様なものを用いる。すなわち、光導波構造11の形状は、五角形を底面とし、底面から垂直に伸びる直柱体であって、上記底面が五角形の5つの角のうち3つの角度が90°、残りの角の角度は135°である線対称な形状を有しており、角度が135°である2つの角に挟まれたθt=90°を頂角とする。光導波構造11は、光導波構造11の頂角θtに対向する側面と、透明基板1の光が入射する側の面とが、平行に所定の距離を置いて対向した形態で設けられる。光導波構造11と、透明基板1との間の空間には空気層17が形成される。
光導波構造11に入射した光は、光導波構造11と空気との入射界面、光導波構造11と空気層17との入射界面および空気層17と透明基板1との入射界面でそれぞれ屈折することにより光導波の光路が変更され、透明基板1を透過して多孔質電極3に入射する。このとき、透明電極2上に設けられ集電配線8による光導波路の遮断を、上述した屈折による光路変更によって回避可能なように光導波構造11を設計する必要がある。光導波構造11の設置位置については、光導波構造11の底面が線対称な形状を有しているので、集電配線8の幅方向における中心軸と上記底面の対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設置すればよい。
【0110】
実施例1−6による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法の一例を以下に示す。
本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11は、実施例1−1と同様に設計され、光導波構造11の底面は、幅L3=0.4mm、厚さL4=0.5mmおよび頂角θt=90°で線対称な形状を有しており、光導波構造11は上記底面に垂直な方向に伸びる直柱体である。
ここで、光導波構造11の入射面左端部に、透明基板1と垂直な方向から平行光が入射したとすると、光導波構造11から空気層17を経て透明基板1に入射するため、空気層17の厚さをL7として、空気層17における光導波も考慮に入れる必要がある。
そこで、空気の屈折率をna、光導波構造11の屈折率をnp、空気から光導波構造11に光が入射する界面での入射角をθ1、出射角をθ2とすると、スネルの法則より数式(1)が成立する。
また、光導波構造11から空気層17に光が入射する界面での入射角をφ1、出射角をφ3とすると、スネルの法則より
【数10】

が成立する。
また、このときφ1は数式(3)を満たしている。
また、光導波構造11と透明基板1は平行に設置されているので、空気層17を介した光の入射面と出射面も平行であり、空気層17から透明基板1に光が入射する界面での入射角はφ3であり、出射角をφ4、透明基板1の屈折率をngとすると、スネルの法則により、
【数11】

が成立する。
【0111】
ここで、光導波構造11が、光導波構造11における上記頂角に対向する側面と、透明基板1における光が入射する側の面とが平行に対向し、透明基板1の上方に所定の距離を置いて設けられる場合において、光導波構造11の幅方向端面から入射した光が、光導波構造11内を通過する際の導波光路に沿った距離の幅方向成分をLp、空気層17内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLa、透明基板1内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLgとすると、入射光が集電配線8による光導波路の遮断を回避するためには
【数12】

を満たせばよく、この数式(12)を満足するように、集電配線8の幅L1、厚さL2、光導波構造11の幅L3、厚さL4、空気層17の厚さL7、透明基板1の厚さL5、光導波構造11の屈折率np、透明基板1の屈折率ng、光導波構造11に光が入射する界面での入射角θ1および光導波構造11の設置位置が適宜決定される。
本実施例においては、光導波構造11の頂角はθt=90°であるので、入射角θ1はθ1=45°となり、空気の屈折率をna=1.00、光導波構造11の屈折率をnp=1.49とすると、数式(1)より空気から光導波構造11に光が入射する界面での出射角θ2=28.3°となる。
次に、光導波構造11から空気層17に光が入射する界面での入射角をφ1、出射角をφ3とすると、数式(3)よりφ1=16.7°となり、数式(10)よりφ3=25.4°を得る。
次に、空気層17から透明基板1に光が入射する界面での入射角をφ3、出射角をφ4、透明基板1の屈折率をng=1.55とすると、数式(11)よりφ4=16.1°となる。
ここで、光導波構造の幅をL3、厚さをL4、空気層17の厚さをL7、透明電極2を備えた透明基板の厚さをL5として、光導波構造11内を通過する際の導波光路に沿った距離の幅方向成分Lpは数式(6)より導かれ、また、空気層17内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Laおよび透明基板1内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lgは、
【数13】

【数14】

より導かれる。
【0112】
ここで、透明基板の厚さL5をL5=1.0mmと設定すると、数式(14)よりLg=0.28mmとなり数式(12)を満たすためには、La、Lpを設定する必要がある。ここで、Lpは数式(6)よりLp=0.09mmであるので、Laは0.03mm以上である必要がある。これを満たす空気層17の厚さL7は数式(14)より、0.07mmよりも大きければよい。
また、透明基板の厚さL5をL5=0.5mmと設定すると、数式(14)よりLg=0.14mmとなる。ここで、Lpは数式(6)よりLp=0.09mmであるので、Laを0.17mm以上にするためには、空気層17の厚さL7は数式(14)より、0.36mmよりも大きければよい。
また、光導波構造11は数式(5)を満たしている必要があるが、実施例1−1と同様な光導波構造11を用いているので、数式(5)を満たすのは明らかである。
また、本実施例においては、光導波構造11の形状、寸法および透明基板1の厚さL5を予め設定し、それに対応させて光導波構造11の設置位置を決定する方法を選んだが、この方法に限定されるものではなく、設置位置を予め決定し、その後に数式(12)および(5)を満たすように、光導波構造11のその他の形状および寸法を決定することもできる。
【0113】
<実施例1−7>
光導波構造11を、底面が頂角を有し線対称な形状である柱形状の凸型プリズムとして、光導波構造11を上記頂角と透明基板1の光入射側の面とが対向した形態で、集電配線8の幅方向における中心軸と光導波構造11の底面の対称軸とが同一直線上にあるように、透明基板1と所定の距離を置いて設け、さらに、光導波構造11の上方に、光導波構造11と同一形状を有する光導波構造11aを光導波構造11の頂角に対向する面と光導波構造11aの頂角に対向する面とを向かい合わせた形態で設け、光導波構造11および11aは、底面の対称軸が、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と光導波構造11の底面の中心軸とが同一の直線上となるように設けられおり、この形態に基づいて光導波構造11の寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0114】
図11は実施例1−7による色素増感光電変換素子の光導波構造11を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図11に示すように、本実施例の色素増感光電変換素子10に設けられる光導波構造11は、実施例1−1で用いたものと同様なものを用いる。すなわち、光導波構造11の形状は、五角形を底面とし、底面から垂直に伸びる直柱体であって、上記底面が五角形の5つの角のうち3つの角度が90°、残りの角の角度は135°である線対称な形状を有しており、角度が135°である2つの角に挟まれたθt=90°を頂角とする。光導波構造11は、光導波構造11の上記頂角と、透明基板1の光が入射する側の面とが向かい合った形態で、光導波構造11と透明基板1は所定の距離を置いて設けられる。光導波構造11の上方に設けられる光導波構造11aは、光導波構造11と同一形状、同一寸法であり、光導波構造11aは光導波構造11の頂角に対向する面と光導波構造11aの頂角に対向する面とを向かい合わせた形態で、光導波構造11および11aの底面の対称軸と、集電配線8の底面の中心軸とが共通となるように設けられている。
光導波構造11aと、光導波構造11との間、光導波構造11と透明基板1との間の空間には、それぞれ空気層17、第2の空気層18が形成され、光導波構造11aに入射した光は、光導波構造11aと空気との入射界面、光導波構造11aと第2の空気層18との入射界面、第2の空気層18と光導波構造11との入射界面、光導波構造11と空気層17との入射界面および空気層17と透明基板1との入射界面でそれぞれ屈折することにより入射光の光導波路が変更され、透明電極2を経て多孔質電極3に導波される。このとき、透明電極2上に設けられ集電配線8による光導波路の遮断を、上記屈折による光路変更によって回避するように光導波構造11および11aを設計する必要がある。設置位置については、光導波構造11の底面が線対称な形状を有しているので、集電配線8底面の幅方向における中心軸と光導波構造11の底面の対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設置すれすればよい。このとき、光導波構造11および11aの少なくとも一方が線対称な形状を有していない場合には水平方向の設置位置を設定する必要がある。
【0115】
本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造11の設計方法は、上述した実施例における設計方法を適宜組み合わせることにより決定される。
本実施例において、光導波構造11aの幅方向における端面から入射した平行光が光導波構造11内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLp1、空気層17内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLa1、光導波構造11a内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLp2、第二の空気層18内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLa2、透明基板1内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLgとすると、上記入射光の光導波が集電配線8の光導波路の遮断を受けないためには、
【数15】

を満たせばよく、この数式(15)と、光導波構造11内部での反射を回避するための数式(4)を満足するように、集電配線8の幅L1、厚さL2、光導波構造11の幅L3、厚さL4、空気層17の厚さL7、第2の空気層18の厚さL8、透明基板1の厚さL5、光導波構造11の屈折率np、透明基板1の屈折率ng、光導波構造11に光が入射する界面での入射角θ1および光導波構造11の設置位置が適宜決定される。
【0116】
以上のように、この第1の実施の形態の変形例によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波構造11および/または11aを透明基板1上に固定して設置しないので、光導波構造11および/または11aの設置位置を簡易に変更することが可能で、集電配線8の形態に応じて光導波構造11および11aの設置位置および設置形態を適宜選択することで、集電配線8の形態に応じて新たに光導波構造11を設計する必要が無くなる。
また、光導波構造11および/または11aの設置位置を変更することによって、様々な角度からの入射光に対応することができる。さらに、光の入射方向や位置に応じて光導波構造11および/または11aを動かすことが可能なので、光の入射方向や位置が時刻とともに変化する場合にあっても、色素増感光電変換素子10の光入射面の開口率が常に最大となるようにすることもできる。
また、光導波構造11および/または11aは透明基板1から所定の距離をおいて設置されるので、光導波構造11と透明基板1との間には空気層17、光導波構造11と光導波構造11aとの間には第2の空気層18が形成され、空気層17および/または第2の空気層18における光導波路の距離を大きくとることにより、入射光が集電配線8による光導波路の遮断を回避するために、透明基板1を必要以上に厚くしたり、光導波構造11を必要以上に大きくしたりする必要がない。
また、光導波構造11は色素増感光電変換素子10とは独立して設けられるので、光導波構造11が破損した場合においても光導波構造11のみを交換すればよく低コストを実現できる。
また、光導波構造11の上方に光導波構造を設ける多段構造とすることにより、様々な形態の光導波構造を組み合わせて光導波路を適宜設計できるので、例えば、局所的な領域でのみでしか採光ができない場所などに色素増感光電変換素子10を設置する場合にあっても、色素増感光電変換素子10の光入射面における開口率を高い値に維持することができる。
【0117】
<2.第2の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図12は第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図12に示すように、この色素増感光電変換素子10において、光入射側の面に、凹型立体形状を有する光導波構造12が設けられている。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0118】
光導波構造12は、凹型立体形状を有し、無色透明であって、光の透過力に優れ、入射光の光導波路を変更可能なものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、上記に挙げた材質を適宜選択して構成され、その形状は好適には底面が線対称形状である柱体で構成されるが、光導波構造12の形状はこれに限定されるものではなく、非対称な形状であってもよく、また、多面体などであってもよい。また、光導波構造12は透明基板1の光入射側の面上に設けられ、好適には、透明基板1の光入射側の面とは反対側の面に設けられている集電配線8に沿って設けられる。光導波構造12は、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と光導波構造12の底面の幅方向の中心軸とが同一の直線上にあるように設けられることが最も好ましいが、光導波構造の設置は、これらに限定されるものではなく、透明基板1を加工することによって、透明基板1に凹面を設け、透明基板1自体を光導波構造12としてもよく、特に上記凹面の垂直断面が線対称な形状にあっては、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と上記凹面の対称軸とが同一の直線上にあるように設けられる構成が好適である。
また、光導波構造12の形状は、上記に挙げた他にも、光導波構造12の設置位置、透明基板1の構成、集電配線8の形状などによっても適宜設計選択され、光導波構造12に入射した光が集電配線8による光導波路の遮断を回避可能で、多孔質電極3内に最も効率良く導波できる形状が選ばれ、特に集電配線8の幅を光導波構造12の幅と同じ長さにすることが好適である。
光導波構造12の寸法は、光導波構造12が柱形状のプリズムである場合にあっては、底面の幅が0.1mm〜5mm、底面の厚さが0.1mm〜5mmおよび奥行きが10mm〜500mmであるのが好ましく、また、底面の幅が0.1mm〜0.8mm、底面の厚さが0.1mm〜1mmおよび奥行きが100mm〜500mmであることがより好ましく、また、底面の幅が0.1mm〜0.4mm、底面の厚さが0.1mm〜0.5mmおよび奥行きが200mm〜400mmであることが最も好ましい。また、光導波構造12が透明基板1に設けられた凹面である場合には、凹部の幅が0.1mm〜5mm、深さが0.1mm〜5mmおよび奥行きが10mm〜500mmであるのが好ましく、また、凹部の幅が0.1〜0.8mm、深さが0.1mm〜0.5mmおよび奥行きが100mm〜500mmであることがより好ましく、また、凹部の幅が0.1mm〜0.4mm、深さが0.1mm〜0.4mmおよび奥行きが200mm〜400mmであることが最も好ましいが、光導波構造12の形状、寸法は、これらの形状、寸法には限定されない。
【0119】
光導波構造12は透明基板1の光入射側の面上に、透明基板1に関して集電配線8の反対側に設けられ、以下のように設計することができる。また、この場合においては、入射光は、透明電極2に垂直な方向から入射する光に限定して考えるが、光導波構造12に入射する光は、これに限定されるものではない。
【0120】
透明電極2に設けられている集電配線8の幅をL1、厚さをL2とし、光導波構造12の幅をL3、厚さをL4、透明電極2が設けられた透明基板1の厚さをL5とし、空気の屈折率をna、光導波構造12の屈折率をnp、空気から光導波構造12に光が入射する界面での入射角をθ1、出射角をθ2とすると、スネルの法則より数式(1)が成立する。
また、透明基板1の屈折率をng、光導波構造12から透明基板1に光が入射する界面での入射角をφ1、出射角をφ2とすると、スネルの法則より数式(2)が成立する。また、数式(3)も成立している。
【0121】
ここで、光導波構造12を透明基板1に設ける場合において、光導波構造12の幅方向における中心である最凹部から入射した光が、光導波構造12内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLp、透明基板1内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分をLgとすると、入射光が集電配線8による光導波路の遮断を回避するためには
【数16】

を満たす必要がある。さらに、光導波構造12の端面に上記平行光が入射するときを考えると、入射した光は反転照射となるため集電配線8をより避ける光路を通るが、光導波構造12内部の鉛直面で光が反射してしまい、多孔質電極3に効率よく光を導波できない。これを避けるためには、光導波構造12に設けられる凹部の幅をLpwとすると、光導波構造12内を通過する際の光路に沿った距離の幅方向成分Lp'= L4tanφ1より、
【数17】

を満たす必要がある。
本実施の形態における色素増感光電変換素子10においては、数式(16)および(17)を満足するように、集電配線8の幅L1、厚さL2、光導波構造12の幅L3、厚さL4、透明基板1の厚さL5、光導波構造12の屈折率np、透明基板1の屈折率ng、光導波構造12に光が入射する界面での入射角θ1および光導波構造12の設置位置が適宜決定される。
【0122】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス材料を所望の凹形状に加工成形し、光導波構造12を形成する。光導波構造12の形成には従来公知の技術を適宜選択することができる。例えば、鋳造成形、切削成形、モールド成形、射出成形などが挙げられるが、光導波構造12の形成方法は、これに限定されるものではない。
次に、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面に、光導波構造12を接合する。接合方法は従来公知の技術を適宜選択することができる。例えば、接着、融着、光学溶着などが挙げられるが、光導波構造12の接合方法はこれに限定されるものではない。光導波構造12の接合は、接合に高温、高圧などの特殊な環境を必要としない限り、これ以降の工程において、または色素増感光電変換素子10が完成した後において接合することも可能である。
また、上記の工程に代えて、透明基板1を加工することによって凹面形状を形成することによっても光導波構造12とすることもできる。透明基板1を光導波構造12とする場合の加工方法には従来公知の方法が適宜選択され、例えば、切削成形、モールド成形などが挙げられるが、透明基板1の加工方法は、これに限定されるものではない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0123】
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、その一部が光導波構造12を経て透明基板1透過して多孔質電極3に達する。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0124】
<実施例2−1>
光導波構造12を、直方体プリズムに長手方向に垂直な断面形状が線対称なV字形状である溝が設けられている柱形状の凹型プリズムとし、上記プリズムの底面形状は線対称であって、上記溝角は90°であり、上記溝部を有する側面が光入射面であって、上記溝部に対向する側面と、透明基板1の光が入射する側の平面とが平行とを接合する形態で透明基板1上に設け、この形状に基づいて光導波構造12の寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0125】
図13および図14は実施例2−1による色素増感光電変換素子の光導波構造12を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図13に示すように、本実施例の色素増感光電変換素子10に設けられる光導波構造12の形状は、2つの凸部と、1つの凹部とを有する線対称な形状を底面とし、底面から垂直に伸びる直柱体であって、上記底面は、上記四つの凸部のうち二つの凸部の角度はθt2=45°、上記二つの凸部に挟まれたV字の凹部の最凹部の溝角は90°の角度を有しており、最凹部は底面の幅方向の中心軸上にあり、その他の角度は90°である多角形状を有している。光導波構造12は、光導波構造12の上記凹部に対向する面と、透明基板1の光が入射する側の面とが接合されている形態で、光導波構造12の底面の対称軸が集電配線8の底面の幅方向における中心軸と同一直線上にあるように透明基板1上に設けられており、光導波構造12に入射した光は、光導波構造12を通過した後に、透明基板1を経て多孔質電極3に入射する。
【0126】
実施例2−1による色素増感光電変換素子10の光導波構造12の設計方法の一例を以下に示す。
図13に示すように、本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造12の光入射側の面において、頂角を除く一端部に概ねコリメートされた平行光として近似できる光が透明基板1に垂直に入射する場合、透明電極2に形成される集電配線8の幅L1=0.4mmと設定すると、数式(16)から、光導波構造12の底面の中心軸上の入射面から入射した光が、集電配線8による光導波路の遮断を回避するためには、光導波構造12内の入射光路に沿った距離の幅方向成分Lpと透明基板1内の入射光路に沿った距離の幅方向成分Lgとの和が0.2mmよりも大きくなればよい。
具体的には、光導波構造12の中心線部から光が入射すると、空気から光導波構造12に光が入射する界面での入射角はθ1=90°−θt2=45°となり、空気の屈折率をna=1.00、光導波構造12の屈折率をnp=1.49とすると、数式(1)より空気から光導波構造12に光が入射する界面での出射角θ2=28.3°となる。次に、光導波構造12から透明基板1に光が入射する界面での入射角をφ1、出射角をφ2、透明基板1の屈折率をng=1.55とすると、数式(3)よりφ1=16.7°となり、数式(2)よりφ2=16.0°を得る。
ここで、光導波構造の幅をL3、厚さをL4、透明電極2を備えた透明基板の厚さをL5とすると、数式(6)および(7)から、数式(16)を満たすL3、L4、L5は、例えば、L4=0.2mm、L5=0.71mmと設定できる。そうすると、Lp=0.2mm、Lg=0.01mmとなり、Lp+Lg=0.21mmでLp=0.2mmよりも大きくなり、数式(16)を満足する。
さらに、光導波構造12内での光導波の反射を検討すると、光導波構造12の端面に上記平行光が入射するときを考えると、数式(17)を満たす必要がある。ここで、光導波構造12に設けられる凹部の幅をLpw=L1=0.4mmであるので、数式(17)より、とりうるべき幅L3はL3=0.8mmとなり、図14に示すような光導波構造12の形態となる。
また、本実施例においては、光導波構造12の幅L4をあらかじめ設定し、それに対応させて光導波構造12のその他の寸法および透明基板1の厚さL5決定する方法を選んだが、光導波構造12の設計方法は、この方法に限定されるものではなく、例えば透明基板1の厚さL4を予め設定し、その後に数式(16)および(17)を満たすように光導波構造12のその他の形状、寸法などを決定することもできる。
【0127】
以上のように、この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波構造12を柱形状の凹型プリズムとしたことにより、光導波構造12の厚さおよび透明基板1の厚さを小さくすることができるので、薄型の光導波構造12とすることができる。さらに、この光導波構造12により色素増感光電変換素子10の光入射側の面より入射する光を集電配線8に遮られることなく多孔質電極3内に光を効率よく入射できるので、入射光の利用率が高く、しかも優れた光電変換特性を得ることができる光電変換素子を得ることができる。
【0128】
[色素増感光電変換素子]
図15は第2の実施の形態の変形例による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図15に示すように、この色素増感光電変換素子10において、光導波構造12を透明基板1上には設けず、光導波構造12の光入射側の面の上方に設けたものである。光導波構造12は、好適には、光導波構造12の一主面と透明基板1の一主面とが平行に所定の距離を置いて対向した形態で設けられる。光導波構造12の一主面と透明基板1の一主面との間には開空間が形成され、上記開空間内は気体で満たされた気体層となっている。
気体層は典型的には空気層17であるが、これに限定されない。また、光導波構造12の上方に、空気層を介して、さらに光導波構造を設けた多段構造で構成してもよい。多段構造で構成する場合に新たに設けられる光導波構造は、無色透明であって、光の透過力に優れ、入射光の導波光路を変更可能であるものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、凸面形状であっても、凹面形状であってもよい。また、これらの光導波構造12の設置についても集電配線8による光導波路の遮断が回避可能であれば、設置に用いる光導波構造の個数、設置方法はどのようなものであってもよい。
【0129】
また、光導波構造12の一主面と透明基板1の一主面とが離れて設置されるので、その距離は上記両主面の最短距離が1μm〜10mmの範囲であることが好ましく、1μm〜1mmの範囲であることがより好ましく、1μm〜500μmであることが最も好ましいが、光導波構造12の設置形態および設置距離はこれに限定されない。また、光導波構造12の設置後においても適宜変更が可能で、具体的には、移動、回転、除去、交換などが可能である。特に、光導波構造12に入射する光の角度が変化する場合などにおいて、光導波構造12を回転および/または移動させて入射する光の角度に対応することにより、光導波が集電配線8による光導波路の遮断を回避することもできる。
また、光導波構造12を多段構造としたときに光導波構造12の上方に設けられる光導波構造11aは、特にその形状が柱形状であって底面が線対称な形状である場合には、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と光導波構造12の底面の対称軸と光導波構造11aの底面の対称軸とが同一直線上にあるように透明基板1上に設けられるのが好ましいが、光導波構造11aの形状および設置は、これに限定されるものではない。
【0130】
また、光導波構造12の形状は、上述の実施の形態で挙げた他に、透明基板1への設置を前提としないので、透明基板1と対向する面を平面とする必要がない。よって、光導波構造12に入射した光が、透明基板1を透過し、集電配線8による光導波路の遮断を回避して多孔質電極3内に最も効率良く到達できる形状であれば基本的にはどのような形状であってもよく、円柱形状、円錐形状であってもよい。光導波構造12の大きさに関しては、特に、集電配線8の幅を光導波構造12の幅と同じ長さにすることが好ましいが、光導波構造12は、これらの形状、寸法には限定されない。
上記以外のことは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0131】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス材料を所望の形状に加工成形し、光導波構造12を形成する。光導波構造12の形成には従来公知の技術を適宜選択することができる。例えば、鋳造成形、切削成形、モールド成形、射出成形などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
次に、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面にスパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。
次に、透明電極2上にアルミニウム(Al)を所望のパターンに真空蒸着し集電配線8を形成する。さらに、集電配線8の表面を熱処理または電気的処理もしく化学的処理によって酸化させることによって集電配線保護層9を形成する。
【0132】
次に、透明基板1の透明電極2が設けられている面とは逆側の透明基板1の上方に、集電配線8に対応して、色素増感光電変換素子10とは独立に光導波構造12を付設する。光導波構造12の設置方法は従来公知の技術を適宜選択することができ、例えば、接着、圧着、挟着、嵌着などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記以外のことは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0133】
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、その一部が光導波構造12および空気層を経て透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
上記以外のことは第2の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0134】
<実施例2−2>
光導波構造12を、光導波構造12を、直方体プリズムの一側面に左右対称なV字の溝が設けられている柱形状の凹型プリズムとし、上記プリズムの底面形状は線対称であって、上記溝角は90°であり、光導波構造12における上記凹部に対向する平面と、透明基板1の光が入射する側の平面とが平行に対向した形態で、光導波構造12と透明基板1は所定の距離を置いて設け、光導波構造12は、底面の対称軸が、集電配線8の底面の幅方向における中心軸と共通な直線上にあるように設けられおり、この形態に基づいて光導波構造12の寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0135】
図16は実施例2−2による色素増感光電変換素子の光導波構造12を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図16に示すように、本実施例の色素増感光電変換素子10に設けられる光導波構造12は、実施例2−1で設計するものと同様なものを用いる。すなわち、四つの凸部と、一つの凹部とを有する線対称な形状を底面とし、底面から垂直に伸びる直柱体であって、上記底面は、上記四つの凸部のうち二つの凸部の角度はθt2=45°、上記二つの凸部に挟まれた凹部の最凹部の角度は270°の角度を有しており、最凹部は底面の幅方向の中心軸上にあり、その他の角度は90°である多角形状を有している。光導波構造12は、光導波構造12の上記凹部に対向する面と、透明基板1の光が入射する側の面とが、平行に所定の距離を置いて対向した形態で設けられる。光導波構造12と、透明基板1との間の空間には空気層17が形成され、光導波構造12に入射した光は、光導波構造12を通過した後に、上記空気層および透明基板1を経て多孔質電極3内に入射する。
【0136】
本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造12の設計方法は、上述した実施例1−7による色素増感光電変換素子10の光導波構造12と同様な設計方法により、数式(12)および(4)を満たすように、光導波構造12および光導波構造12aの形状および寸法、透明基板の厚さなどが決定される。
【0137】
<実施例2−3>
光導波構造12を、四つの凸部と、一つの凹部とを有する線対称な形状である底面を有する柱形状の凹型プリズムとして、上記凹部に対向する平面と、透明基板1の光が入射する側の平面とが平行に対向した形態で、光導波構造12と透明基板1は所定の距離を置いて設け、光導波構造12の上方に、頂角を有し線対称な形状である底面を有する柱形状の凸型プリズムである光導波構造12aを設け、光導波構造12および12aは、底面の対称軸が集電配線8の底面の幅方向における中心軸とが同一の直線上になるように設けられおり、この形態に基づいて光導波構造12および12aの寸法および設置位置と透明基板1の厚さを決定した。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0138】
図17は実施例2−3による色素増感光電変換素子の光導波構造12を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図17に示すように、本実施例の色素増感光電変換素子10に設けられる光導波構造12の形状は、四つの凸部と、一つの凹部とを有する線対称な形状を底面とし、上記底面から垂直に伸びる直柱体であって、上記底面は、上記四つの凸部のうち二つの凸部の角度は45°、上記二つの凸部に挟まれた光導波構造12の凹部は270°の角度を有しており、その他の凸部の角度は90°である多角形状を有している。光導波構造12は、光導波構造12の上記凹部に対向する面と、透明基板1の光が入射する側の面とが、平行に所定の距離を置いて対向した形態で設けられている。光導波構造12の上方には、さらに、光導波構造12と同一形状を有する光導波構造12aを、光導波構造12aの上記頂角に対向する面と、光導波構造12の上記凹部とが、所定の距離を置いて対向した形態で設けられ、光導波構造12および12aは、底面の対称軸が集電配線8の底面の幅方向における中心軸とが同一の直線上にあるように設けられている。
光導波構造12aと、光導波構造12との間、光導波構造12と透明基板1との間の空間には、それぞれ空気層17が形成され、光導波構造12aに入射した光は、光導波構造12a内を通過し、空気層17を経て光導波構造12に入射し、光導波構造12内を通過した光は第2の空気層18および透明基板1を経て、多孔質電極3に入射する。
【0139】
本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造12および12aの設計方法は、上述した実施例1−7による色素増感光電変換素子10の光導波構造12と同様な設計方法により、数式(15)および(17)を満たすように、光導波構造12および光導波構造12aの形状および寸法、透明基板の厚さなどが決定されるが、光導波構造12および12aの設計方法はこれに限定されるものではない。
【0140】
以上のように、この第2の実施の形態の変形例によれば、第2の実施の形態と同様な利点に加えて、光導波構造12および/または12aを透明基板1上に固定しないので、光導波構造12および/または12aの設置位置を簡易に変更することが可能で、集電配線8の形態に応じて光導波構造12および12aの設置位置および設置形態を適宜選択することで、集電配線8の形態に応じて新たに光導波構造12を設計する必要が無くなる。
また、光導波構造12および/または12aの設置位置を変更することによって、様々な角度からの入射光に対応することができる。さらに、光の入射方向や位置に応じて光導波構造12および/または12aを動かすことが可能なので、光の入射方向や位置が時刻とともに変化する場合にあっても、色素増感光電変換素子10の光入射面の開口率が常に最大となるようにすることもできる。
また、光導波構造12および/または12aは透明基板1から所定の距離をおいて設置されるので、光導波構造12と透明基板1との間には空気層17、光導波構造12と光導波構造12aとの間には第2の空気層18が形成され、空気層17および/または第2の空気層18における光導波路の距離を大きくとることにより、入射光が集電配線8による光導波路の遮断を回避するために、透明基板1を必要以上に厚くしたり、光導波構造12を必要以上に大きくしたりする必要がない。
また、光導波構造12は色素増感光電変換素子10とは独立して設けられるので、光導波構造12が破損した場合においても光導波構造12のみを交換すればよく低コストを実現できる。
また、光導波構造12の上方に光導波構造を設ける多段構造とすることにより、様々な形態の光導波構造を組み合わせて光導波路を適宜設計できるので、例えば、局所的な領域でのみでしか採光ができない場所などに色素増感光電変換素子10を設置する場合にあっても、光入射面の開口率を高い値に維持することができる。
【0141】
<3.第3の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図18は第3の実施の形態による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図18に示すように、この色素増感光電変換素子10においては、光導波構造として透明基板1の一主面である光入射側の面を加工することにより、凸面形状または凹面形状を形成し、これを光導波構造13としたものである。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0142】
透明基板1上の一主面を加工して形成される光導波構造13は、上記入射面に入射した光の導波光路を変更ことができ、入射光の光路が集電配線8による光導波路の遮断を回避できるものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、上記に挙げた光導波構造の形状を、透明基板の光入射側の面を加工して形成して構成するほかに、透明基板1に溝を形成して凹型構造を構成することもできる。入射光の光路を変えることができるものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、具体的には、例えば、長手方向に垂直な断面形状がV字形状、U字形状、矩形状、多角形状、半円形状などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
光導波構造13の寸法は、光導波構造13が透明基板1に設けられる溝である場合にあっては、溝部の幅が0.1mm〜5mm、深さが0.1mm〜5mmおよび奥行きが10mm〜500mmであるのが好ましく、また、溝部の幅が0.1〜0.8mm、深さが0.1mm〜0.5mmおよび奥行きが100mm〜500mmであることがより好ましく、また、溝部の幅が0.1mm〜0.4mm、深さが0.1mm〜0.4mmおよび奥行きが200mm〜400mmであることが最も好ましいが、光導波構造11の形状、寸法は、これらの形状、寸法には限定されない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10のと同様である。
【0143】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面を加工し、反対側の面に形成される集電配線8に対応した位置に溝を削成などして光導波構造13を形成する。透明基板1の加工方法は、透明基板1の光透過を低下させることなく溝を形成できるものであれば、基本的にはどのような方法であってもよく、具体的には、切削成形、モールド成形、射出成形などが挙げられるが、透明基板1の加工方法は、これらに限定されるものではない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0144】
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、光導波構造13が形成されている透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0145】
<実施例3−1>
透明基板1を切削加工して透明基板1の光入射側の面上に凹部である溝を形成し、これを光導波構造13とした。
次に、透明基板1の光入射側の面とは逆側の面にスパッタリング法により透明導電層であるFTO層を形成して透明電極2を形成する。その他のことは実施例1−1と同様にして色素増感光電変換素子10を製造した。
【0146】
図19は実施例3−1による色素増感光電変換素子10の透明基板1を示す断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図19に示すように、色素増感光電変換素子10に設けられた透明基板1の光入射側の面上には、5mmの間隔を置いて長手方向に垂直な断面形状がV字の溝が形成される溝列を形成しており、上記溝が光導波構造13となっている。
光導波構造13は、透明基板1の光入射側の面側に、長手方向に垂直な断面形状がV字形状の溝を形成することによって構成され、上記溝の垂直断面は、溝の最深部の角度が90°であって線対称な形状を有している。透明基板1に入射した光の一部は上記V字の溝である光導波構造13を通過した後に、透明基板1を経て多孔質電極3に入射する。
光導波構造13は、光導波構造13の鉛直断面の中心軸と、透明電極2に形成される集電配線8の鉛直断面の中心軸とが同一線上となるように透明基板1の光入射側の面に設けられる。
【0147】
実施例3−1による色素増感光電変換素子10の光導波構造13の設計方法の一例を以下に示す。
本実施例による色素増感光電変換素子10の光導波構造13の光入射側の面において、頂角を除く一端部に概ねコリメートされた平行光として近似できる光が透明基板1に垂直に入射する場合、透明電極2に形成される集電配線8の幅L1をL1=0.4mmと設定すると、数式(16)から、光導波構造13である透明基板1の上記V字の溝の中心軸部から入射した光が集電配線8による光導波路の遮断を回避するためには、透明基板1内の入射光路に沿った距離の幅方向成分Lgと透明基板1内の入射光路に沿った距離の幅方向成分Lgが0.2mmよりも大きくなれば良く、この条件を満たす、光導波構造13の寸法が適宜決定される。
また、本実施例においては、光導波構造13である透明基板1に設けられた溝の幅L3をあらかじめ設定し、それに対応させて、光導波構造13のその他の寸法および透明基板1の厚さL5決定してもよいし、透明基板1の厚さを予め設定し、その後に数式(16)を満たすように光導波構造13の形状、寸法などを決定してもよいが、光導波構造13の設計方法はこれらに限定されない。
【0148】
以上のように、この第3の実施の形態の色素増感光電変換素子10によれば、第1および第2の実施の形態と同様な利点に加えて、透明基板1自体を加工して光導波構造としたので、プリズムなどの光導波構造が不要となり、製造工程も簡素化できるので低コストを実現でき、また光導波構造13と透明基板1は同一材料なので、光導波構造13と透明基板1との界面での入射光が反射することによる損失がない。また、特に凹型の光導波構造13としたことにより、透明基板1上にプリズムなどの突起物を設けないので、薄型に形成することができる。
【0149】
<4.第4の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図20は第4の実施の形態による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図20に示すように、この色素増感光電変換素子10においては、光導波構造として透明基板1の一主面である光入射側の面の逆側の面を加工することにより、凸面形状または凹面形状を形成し光導波構造13とし、光導波構造13および光導波構造13が形成されている側の透明基板1上に透明電極2を形成したものである。上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0150】
透明基板1上の一主面を加工して形成される光導波構造13は、入射光の光路を変えることができるものであれば基本的にはどのようなものであってもよく、上記に挙げた光導波構造の形状を透明基板1の一主面上に透明基板1自体を加工して形成し構成するほかに、透明基板1に溝を形成して凹型構造を構成することもできる。上記溝の形状は、具体的には、例えば、長手方向に垂直な断面形状がV字形状、U字形状、矩形状、半円形状などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0151】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面を加工し、同一面側に透明電極2を介して形成される集電配線8に対応した位置に凹型形状または凸型形状である光導波構造13を形成する。透明基板1の加工方法は、透明基板1の光透過を低下させることなく凹型形状または凸型形状を形成できるものであれば、基本的にはどのような方法であってもよく、具体的には、切削成形、モールド成形、射出成形などが挙げられるが、透明基板1の加工方法は、これらに限定されるものではない。
次に、透明基板1の光導波構造13が設けられた側の面に、スパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。透明電極2は集電配線8および多孔質電極3に接する面が平面となるように形成されるのが好ましいが、透明電極2の形態はこれに限定されるものではない。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0152】
[色素増感太陽電池の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、光導波構造13が形成されている透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
以上のように、この第4の実施の形態の色素増感光電変換素子10によれば、上述した実施の形態と同様な利点に加えて、透明基板1自体を加工して光導波構造としたので、プリズムなどの光導波構造が不要となり、製造工程も簡素化できるので低コストを実現でき、また光導波構造13と透明基板1は同一材料なので、光導波構造13と透明基板1との界面での入射光が反射することによる損失がない。また、特に凹型の光導波構造13としたことにより、透明基板1上にプリズムなどの突起物を設けないので、薄型に形成することができる。
【0153】
<5.第5の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
図21は第5の実施の形態による色素増感光電変換素子10を示す要部断面図であり、図中の太線は入射光の光導波路を示す。
図21に示すように、この色素増感光電変換素子10において、透明基板1の透明電極2が設けられている面とは逆側の面である光入射側の面に、光導波構造14が設けられており、光導波構造14をエレクトロウェッティング(電気毛管現象)効果を利用した光学素子である液体レンズとしたものである。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0154】
液体レンズである光導波構造14は、上述した実施の形態の光導波構造においてそれぞれ適用が可能であり、特に、上記に挙げた光導波構造であるプリズムである光導波構造について適用することが好ましい。このときの光導波構造14の形態は、レンズ部分の形態を上記に挙げたプリズムの形態として適宜選択することができる。また、液体レンズは、絶縁体を介して導電性を有する液体と電極との間に電圧を印加すると、液体が帯電することによってその界面自由エネルギーが減少し、気−液界面、あるいは液−液界面の形状(曲率)が変化する現象であるエレクトロウェッティング効果を利用して、入射光の入射角を、電圧によって可変とできるので、光導波構造14内を透過する光導波路を制御可能とし集電配線8の光導波路の遮断を回避することができる。
【0155】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面に、光導波構造14である液体レンズを設置する。設置方法は従来公知の技術を適宜選択することができる。光導波構造14の接合は、これ以降の工程において、または色素増感光電変換素子10が完成した後において接合することも可能である。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
【0156】
[色素増感光電変換素子の動作]
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。-
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、光導波構造14または透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
光導波構造14は液体レンズで構成されているので、絶縁体を介して導電性を有する液体と電極との間に電圧を印加すると、液体が帯電することによってその界面自由エネルギーが減少し、気−液界面、あるいは液−液界面の形状(曲率)が変化する現象であるエレクトロウェッティング効果が起き、入射光の入射角を、電圧によって可変させることで、光導波構造14内を透過する光導波路を制御可能とし集電配線8の光導波路の遮断を回避することができる。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0157】
以上のように、この第5の実施の形態の色素増感光電変換素子10によれば、上述した実施の形態と同様な利点に加えて、光導波構造14を液体レンズとしたので、エレクトロウェッティング効果を利用して、入射光の入射角を、電圧によって可変とすることにより、光導波構造14内を透過する光導波の光路を制御可能となり、集電配線8の形状に応じて光導波構造14のレンズ曲率を変更できるので、集電配線8の形状に応じて個別に光導波構造を設計する必要がなくなり、また色素増感光電変換素子10の入射面に入射する光の入射角が変化する場合にあっても、上記入射光の入射角に応じて光導波構造14のレンズ曲率を変更すればよいので、新たな光導波構造を設けたり、光導波構造を動かしたりすることなく、上記入射光の入射角の変化に対応することができる。
【0158】
<6.第6の実施の形態>
[色素増感光電変換素子]
多孔質電極3を帯状に分割し透明電極2に設けられる集電配線8を、色素増感光電変換素子10の発電量に従った抵抗値計算から導かれた最適な形状(配置、太さ、本数)とし、集電配線8の形状に対応して光導波構造15を透明基板1または透明基板1上に設けたものである。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10と同様である。
【0159】
集電配線8の形状は直線形状に限られず、曲線形状、格子形状、渦巻き形状、楔形形状、波型形状、またはこれらの形状を組み合わせたものであってもよいが、これらに限定されるものではない。また、集電配線8の幅を可変とすることもできる。
光導波構造15は上述した実施の形態における光導波構造について適宜適用することができる。
【0160】
[色素増感光電変換素子の製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子10の製造方法について説明する。
まず、ガラス板を所望の大きさに切り出し、これを透明基板1とする。
次に、透明基板1の一主面にスパッタリング法などにより透明導電層を形成して透明電極2を形成する。
次に、透明電極2上にアルミニウム(Al)を所望のパターンに真空蒸着し集電配線8を形成する。さらに、集電配線8の表面を熱処理または電気的処理もしく化学的処理によって酸化させることによって集電配線保護層9を形成する。
次に、透明基板1または透明基板上に、集電配線8の形状に対応して光導波構造15を設ける。
また、上記の製造方法における工程は、先に透明基板1または透明基板1上に光導波構造15を形成する工程を経た後に、透明基板1上に透明電極2を形成する工程としてもよい。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の製造方法と同様である。
[色素増感光電変換素子の動作]
【0161】
次に、この色素増感光電変換素子の動作について説明する。
色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、光導波構造15が形成されている透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様である。
【0162】
<実施例6−1>
図22A、BおよびCは、実施例6−1による色素増感光電変換素子10の透明基板1を示す要部外観図および要部断面図である。図22Aは色素増感光電変換素子10の光入射側の面を上部から見た外観図、図22Bは色素増感光電変換素子10の透明基板1を図22Aに示すA−A’直線で切った要部垂直断面図、図22Cは色素増感光電変換素子10の透明基板1を図Aに示すB−B’直線で切った要部垂直断面図である。
図22A、BおよびCに示すように、この色素増感光電変換素子10においては、透明電極2に設けられる集電配線8の厚さおよび幅を、集電配線8の伸びる方向に可変とし、集電配線8に対応させて光導波構造15として透明基板1に設けた長手方向に垂直な断面形状がV字形状の溝の深さおよび幅を、V字の溝が伸びる方向に関して可変としたものである。集電配線8に対応して光導波構造14を設計する場合には、上述した実施の形態において示された、数式(4)を満たすように光導波構造14の形態を適宜決定する。
【0163】
<実施例6−2>
図23A、B、CおよびDは、実施例6−2による色素増感光電変換素子10を示す要部外観図および要部断面図である。図23Aは色素増感光電変換素子10の光入射側の面を上部から見た外観図、図23Bは色素増感光電変換素子10を図23Aに示すC−C’の直線で切った要部垂直断面図である。図23Cは色素増感光電変換素子10を図23Aに示すD−D’の直線で切った要部垂直断面図である。図23Dは色素増感光電変換素子10を図23Aに示すD−D’の直線で切った要部垂直断面図である。
図23A〜Dに示すように、この色素増感光電変換素子10においては、透明電極2に設けられる集電配線8の形状を長手方向が直線と曲線とで組み合わされたベンド形状とし、集電配線8による入射光の光導波路の遮断が回避可能な光導波構造15として透明基板1に長手方向に垂直な断面形状がV字形状の溝を設け、光導波構造15のV字の溝の形状の長手方向の形状を集電配線8と同様にベンド形状としたものである。
【0164】
以上のように、この第6の実施の形態の色素増感光電変換素子10によれば、上述した実施の形態と同様な利点に加えて、透明電極2に設けられる集電配線8を、色素増感光電変換素子10の発電量に従った抵抗値計算から導かれた最適な形状(配置、太さおよび本数)とし、集電配線8の形状に対応して光導波構造15を透明基板1または透明基板1上に設けたので、集電配線8の集電効率が向上し上記抵抗値を低減させることができ、さらに光導波構造15を集電配線8に対応させて設計および設置したので、色素増感光電変換素子10の光入射面の開口率が向上し、これらの相乗効果によって光電変換効率を向上させることができる。
【0165】
<7.第7の実施の形態>
[色素増感光電変換素子アレイ]
図24A、BおよびCは、第7の実施の形態による色素増感光電変換素子アレイ30を示す要部外観図および要部断面図である。図24Aは色素増感光電変換素子アレイ30の光入射側の面を上部から見た外観図、図24Bは色素増感光電変換素子アレイ30を図24Aに示すF−F’直線で切った要部垂直断面図である。また、図24Cは色素増感光電変換素子アレイ30を図24Aに示すG−G’直線で切った要部垂直断面図である。
図24A、BおよびCに示すように、本実施の形態における色素増感光電変換素子アレイ30は、色素増感光電変換素子10が複数配置され、集合配線31でそれぞれの色素増感光電変換素子10の集電配線8が互いに連結、接続することにより集合化(タイリング)し構成される素子アレイとすることで、色素増感光電変換素子の光入射側の面を大面積化し光電変換効率を向上させたものである。集電配線8を接続する集合配線31の接続形態は色素増感光電変換素子アレイ30として所望の電圧、電流に従い任意に決定することができ、具体的には、直列であっても、並列であっても、これらを組み合わせた形態であってもよい。また、集合配線31には配線を介して負荷22が接続されるが、負荷22の接続はこれに限定されるものではない。また、集合配線31でそれぞれの色素増感光電変換素子10の集電配線8を連結、接続することで、色素増感光電変換素子アレイ3の負極とすることもできる。
【0166】
また、色素増感光電変換素子10の透明電極2には多孔質電極3を帯状に分割する形態で集電配線8が設けられており、透明基板1には光導波構造15である溝が集電配線8による入射光の光導波を回避できる形態で設けられているが、集電配線8および光導波構造15の形態はこれらに限定されるものではなく、上述した実施の形態における集電配線および光導波構造を適宜用いることができる。
また、色素増感光電変換素子アレイ30は、例えば、同一構成の色素増感光電変換素子10を4つ並べることにより構成され、色素増感光電変換素子10は同一方向に所定の間隔を設けて2行2列で整列して配置され、それぞれの色素増感光電変換素子10集電配線8に直交する方向の側面には、集電配線8を互い接続可能に集合配線31が設けられるが、色素増感光電変換素子10の構成、色素増感光電変換素子アレイ30の構成はこれらに限定されるものではなく、色素増感光電変換素子アレイ30を、少なくとも2つ以上の色素増感光電変換素子10で構成することができ、また、違う構成の色素増感光電変換素子10を組み合わせて構成することもできる。
【0167】
ここで、上述したように色素増感光電変換素子10を集合配線31で接続し色素増感光電変換素子アレイ30とすると、集合配線31上に入射した光は、集合配線31に反射され多孔質電極3に入射することはないので、発電に寄与することができない。
【0168】
そこで、この問題を解消するために、集合配線31に入射する光の光導波路を変更することによって、上記入射光の光導波が多孔質電極3内に到達できるようにすればよい。
具体的には、図24Cに示すように、第2の光導波構造である光導波構造16を集合配線31上に設ける。光導波構造16は、集合配線31の長手方向に沿って透明基板1に溝を設けることで構成され、透明基板1に入射した光の光導波路を光導波構造16による屈折により変更することにより、集合配線31に遮断されていた入射光の光導波路が、集合配線31による光路遮断を回避し多孔質電極3に入射することで、色素増感光電変換素子アレイ30の光入射面の開口率を向上させることができる。具体的には、図24AおよびCに示すように、透明基板1を集合配線31の光入射側の面を覆うように延長して設置し、集合配線31の上部の透明基板1に入射した光の光導波が、集合配線31による光路遮断を回避し多孔質電極3に到達可能なように、集合配線31の上部の透明基板1に光導波構造16を設けられる。
光導波構造16は図24に示したような、長手方向に垂直な断面形状がV字である溝が好適であり、上記V字形状が線対称であることが最も好適であるが、光導波構造16はこれに限定されるものではなく、上述した実施の形態および実施例における光導波構造を適宜選択することができる。
【0169】
光導波構造16の集合配線31上への設置は、色素増感光電変換素子10における透明基板1を集電配線8の奥行き方向に延長し、透明基板1以外の層よりもはみ出して構成し、そこに光導波構造16を設けてもよいし、色素増感光電変換素子10に集合配線31を設けた後に独立して光導波構造16を集合配線31上にさらに設けて透明基板1としてもよいが、透明基板1の集合配線31上への設置は、これに限定されるものではない。また、光導波構造16は、集合配線31上に接して設けてもよいし、集合配線31の上方に間隔を置いて設けてもよい。
光導波構造16として、長手方向に垂直な断面形状が線対称なV字の溝を透明基板1に設けた場合においては、色素増感光電変換素子アレイ30の光入射面の開口率は、5%の開口率向上となるが、光導波構造16の形態および配置はこれに限定されるものではなく、上述した実施の形態から適宜選択して適用することができる。
【0170】
[色素増感光電変換素子アレイの製造方法]
次に、この色素増感光電変換素子アレイ30の製造方法について説明する。
まず、上述した色素増感光電変換素子10の製造方法により色素増感光電変換素子10を少なくとも2つ以上作製する。
次に、作製した複数の色素増感光電変換素子10を、色素増感光電変換素子10同士が集合配線31で接続可能なように配置する。
次に、集合配線31によりそれぞれの色素増感光電変換素子10の集電配線8を接続し、集合配線31に集電配線8が集合した形態とする。接続形態は並列接続であっても、直列接続であっても、これらを組み合わせ形態であってもよい。
次に、集合配線31の光入射側の面上に透明基板1を設ける。
次に、集合配線31の上部の透明基板1に入射した光の光導波が、集合配線31の光路遮断を回避し多孔質電極3に到達可能なように、透明基板1に光導波構造16を形成する。
光導波構造16は、集合配線31上もしくは上方に、透明基板1を介さずに直接設けることもできる。
次に、必要に応じて集合配線31に配線を介して負荷を接続する。
こうして、色素増感光電変換素子アレイ30が完成した。
【0171】
[色素増感光電変換素子アレイの動作]
次に、この色素増感光電変換素子アレイ30の動作について説明する。
色素増感光電変換素子アレイ30を構成する色素増感光電変換素子10の光入射側の面から入射した光は、光導波構造15が形成されている透明基板1を透過して多孔質電極3に達する。
また、集合配線31に入射した光の一部は透明基板1に設けられた光導波構造16を透過し、多孔質電極3に入射する。
上記以外のことは第1の実施の形態による色素増感光電変換素子10の動作と同様であり、さらに集合配線31により、各々の色素増感光電変換素子10から集電され、外部に電子が取り出される。
【0172】
以上のように、この第7の実施の形態の色素増感光電変換素子アレイ30によれば、色素増感光電変換素子アレイ30を構成している複数の色素増感光電変換素子10同士を接続する集合配線31上に光導波構造16を設けたので、本来発電に寄与しなかった集合配線31に入射した光の光導波路を光導波構造16によって変更することにより、多孔質電極3に到達させることができ、色素増感光電変換素子10をタイリングなどで大面積化し色素増感光電変換素子アレイ30とした場合では、色素増感光電変換素子アレイ30の光入射面における開口率を向上させることができ、色素増感光電変換素子アレイ30の光電変換効率も向上させることが可能となる。
【0173】
以上、この開示の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この開示は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の実施の形態および実施例において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0174】
1,101…透明基板、2,102透明電極…、3,103…多孔質電極、4,104…対向基板、5,105…対極、7,107…電解質層、8,108…集電配線、8,108…集電配線、9,109…集電配線保護層、10,100…色素増感光電変換素子、11,11a,12,12a,13,14,15,16…光導波構造、17…空気層、18…第2の空気層、20…光反射防止層、30…色素増感光電変換素子アレイ、31…集合配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と、上記対極との間に電解質層が設けられた構造を有し、
上記基板の多孔質電極が設けられている面には集電配線が設けられ、
上記基板の光入射側には光導波構造が設けられている光電変換素子。
【請求項2】
上記光導波構造は上記集電配線による上記入射光の光導波路の遮断を回避し、上記多孔質電極内に上記入射光を導波可能に設けられる請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
上記光導波構造は柱形状を有する凸型プリズムである請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
上記光導波構造の底面の形状が線対称な形状である請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
上記集電配線は矩形を底面とする柱体であって、上記集電配線には上記電解質層中の電解液から上記集電配線を保護するための集電配線保護層が設けられている請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
上記基板は透明基板であって、上記光導波構造は上記透明基板の光入射側の面上に設けられている請求項5に記載の光電変換素子。
【請求項7】
上記基板と上記多孔質電極との間には透明電極が設けられている請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
上記光導波構造の表面上に光反射防止層が設けられている請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項9】
上記光反射防止層は上記光導波構造の表面上に多層成膜またはナノサイズ構造体を形成して構成される請求項8に記載の光電変換素子。
【請求項10】
上記光導波構造は液体レンズである請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項11】
上記光導波構造は上記基板の光入射側の面上に形成された凸面または凹面である請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項12】
上記光導波構造は上記基板の上記光入射側の面上に設けた溝である請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項13】
上記溝は、その長手方向に垂直な断面形状がV字形状であって、上記V字形状が線対称な形状を有する請求項12に記載の光電変換素子。
【請求項14】
上記光電変換素子は色素増感太陽電池である請求項7に記載の光電変換素子。
【請求項15】
複数の光電変換素子が配置され、
上記複数の光電変換素子は集合配線により互いの集電配線が接続されて集合化しており、少なくとも一つの上記光電変換素子は、
基板上に設けられた多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と、上記対極との間に電解質層が設けられた構造を有し、
上記基板の多孔質電極が設けられている面には集電配線が設けられ、
上記基板の光入射側には光導波構造が設けられている光電変換素子であって、
上記集合配線の光入射側には、さらに光導波構造が設けられている光電変換素子アレイ。
【請求項16】
上記光導波構造は長手方向に垂直な断面形状がV字形状である溝である請求項15に記載の光電変換素子アレイ。
【請求項17】
上記光電変換素子は色素増感太陽電池である請求項16に記載の光電変換素子アレイ。
【請求項18】
基板の光入射側の面に光導波構造を設ける工程と、
上記基板の光入射側の面とは逆側の面に集電配線を形成し、さらに多孔質電極を積層して形成する工程と、
上記多孔質電極と対極との間に電解質層が充填された構造を形成する工程とを有する光電変換素子の製造方法。
【請求項19】
上記光導波構造は透明(光硬化)樹脂ディスペンスによるフロー法またはナノインプリント法により形成する請求項18に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項20】
少なくとも一つの光電変換素子を有し、
上記光電変換素子が、基板上に設けられた多孔質電極と、対極と、上記多孔質電極と、上記対極との間に電解質層が設けられた構造を有し、
上記基板の多孔質電極が設けられている面には集電配線が設けられ、
上記基板の光入射側には光導波構造が設けられている光電変換素子である電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−204178(P2012−204178A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68511(P2011−68511)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】