説明

光電変換素子の製造装置

【課題】 キャリア1に太陽電池素子用シリコンウェハを収納し、エッチング溶液でエッチングする時、キャリア内で発生する処理中の反応熱がキャリア内部ほど篭もりやすく、キャリア内側ほど温度が上昇しやすくなる。この為キャリア内側の太陽電池素子用シリコンウェハのエッチング量が端側より大きくなり、オーバーエッチングになってしまう。
【解決手段】 複数枚の太陽電池素子用シリコンウェハ23を仕切り部25により互いに隔てて収納し、液槽内の溶液に浸漬するための太陽電池素子用シリコンウェハ23収納用キャリア10において、この仕切り部25の幅を前記キャリアの端部から中央部にかけて大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の太陽電池素子用シリコンウェハを隔てて収納する光電変換素子の製造装置のキャリアに関し、特に溶液によるエッチング加工を行う際に適した光電変換素子の製造装置のキャリアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は表面に入射した太陽光などの光エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、近年環境問題の高まりと共にこの太陽電池を使用した太陽光発電が注目を集めるようになってきた。
【0003】
太陽電池素子のうち主要なものは、使用材料の種類によって結晶系、アモルファス系、化合物系などに分類されが、現在市場で流通しているのはほとんどが結晶系シリコン太陽電池素子である。この結晶系シリコン太陽電池素子はさらに単結晶型、多結晶型に分類される。単結晶型シリコン太陽電池素子は基板の品質がよいため、高効率化が容易であるという長所を有する反面、基板の製造コストが大きいという短所を有する。それに対し、多結晶型シリコン太陽電池は基板品質が劣るために高効率化が難しいという弱点はあるものの、低コストで製造できるというメリットがある。
【0004】
このような単結晶又は多結晶のシリコン基板を用いて太陽電池素子を作製する場合には、その製造工程において10枚〜50枚のシリコン基板を1つのキャリアに収納し、このキャリアごと複数のシリコン基板を同時にエッチング溶液(エッチャント)中に浸漬させてエッチング処理する各種の処理工程が存在する。
【0005】
例えば、シリコンインゴットをスライスして作製した太陽電池素子用シリコンウェハでは、このスライスのために微細なダメージが太陽電池素子用シリコンウェハ全面に形成されるため、太陽電池素子の製造工程においては、このダメージ層を除去するため、5〜40%程度の水酸化ナトリウム溶液やフッ酸と硝酸の混合液で太陽電池素子用シリコンウェハ表面をエッチングすることが行われている。
【0006】
さらには、ボロンなどをドープしたP型太陽電池素子用シリコンウェハに燐などのN型不純物を熱拡散させた後、P型シリコンとN型シリコンを電気的に切り離すPN分離を行うために、拡散後の太陽電池素子用シリコンウェハの片面側のほぼ全面に耐酸又は耐アルカリのレジストを塗布した後、水酸化ナトリウム溶液やフッ酸と硝酸の混合液で太陽電池素子用シリコンウェハの一部をエッチングすることが行われている。
【0007】
このようなエッチング処理工程においては、生産性を高めるため、キャリアに多数のシリコン基板を収納し、エッチング溶液を貯留している複数の液槽内に搬送ロボットを用いて浸漬することにより、複数枚のシリコン基板を一括してエッチング処理するとともに、このキャリアに収納された基板を液槽から引き上げて、純水を満たした槽に再度浸漬し水洗している。その後エアーナイフなどでキャリアに清浄空気を吹付けて基板に付着した水滴を除去したり、また乾燥部に搬送して、エアーナイフやスピンドライヤにより溶液を乾燥させたりしていた。(例えば特許文献1の従来の技術参照)
【特許文献1】特開平9−64163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようなキャリアには、対向する両側面にシリコン基板を支持するための仕切り部が形成されており、この仕切り部によってシリコン基板を個別に収納するための支持溝部が形成されており、各シリコン基板はキャリアに形成された支持溝部に保持されて起立状態で収納されている。
【0009】
図4は、太陽電池素子用シリコンウェハを収納した通常のキャリアを真上から見た図である。図4において、1はキャリア、2は太陽電池素子用シリコンウェハ、3は仕切り部、aは仕切り部の寸法、bは支持溝部の寸法を示す。
【0010】
太陽電池素子用シリコンウェハ2はキャリア1の仕切り部2の間にできた支持溝部の間に配置される。通常キャリア1の仕切り部の寸法aと支持溝部bはキャリアのどの部分でも一定であり、このため太陽電池素子用シリコンウェハ2もほぼ一定の間隔でキャリア1の内部に配置されることとなる。
【0011】
このようなキャリア1において、エッチング溶液の濃度、温度、時間を制御することで、そのバッチ単位でのエッチング量をコントロールにすることは可能であるが、キャリア内で発生する処理中の反応熱がキャリア内部ほど篭もりやすく、キャリア内側ほど温度が上昇しやすくなる。この為キャリア内側のエッチング量が端側より大きくなることが解っている。
【0012】
この対策として泡発生機工を槽内部に設置して、エッチング溶液を攪拌することが通常行われているが、キャリア1の外部が壁になり液が十分に撹拌されず、キャリア内のエッチング量のバラツキを小さくすることが困難であった。
【0013】
このため、キャリア1の端部に配置された太陽電池素子用シリコンウェハ2が所定の量エッチングされるようにしており、キャリア1の端部に配置された太陽電池素子用シリコンウェハ2のエッチング量は大きくなる。太陽電池素子用シリコンウェハ2のエッチング量が大きくなると、その厚みが薄くなり太陽電池素子のその後の工程において割れやクラックの発生が増加し、その歩留りが低下しコストが上昇してしまう。
【0014】
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、太陽電池素子用シリコンウェハのエッチング量をより均一にエッチング処理することで、太陽電池素子用シリコンウェハを薄くしてその後の太陽電池素子のデバイス工程での割れやクラック発生を防止することにより、安価な太陽電池素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するため、本発明の光電変換素子の製造装置は、キャリアに収容された多数の光電変換素子用半導体基板に液体中で所定の処理を施す光電変換素子の製造装置において、前記キャリアは、その内部に複数の前記半導体基板を互いに隔てて立設するための複数の仕切部を有し、且つ、該仕切部は、隣接する前記半導体基板の間隔が前記多数の光電変換素子用半導体基板の並んでいる方向の端部域より中央部域で大きくなるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光電変換素子の製造装置によれば、キャリアに収容された多数の光電変換素子用半導体基板に液体中で所定の処理を施す光電変換素子の製造装置において、前記キャリアは、その内部に複数の前記半導体基板を互いに隔てて立設するための複数の仕切部を有し、且つ、該仕切部は、隣接する前記半導体基板の間隔が前記多数の光電変換素子用半導体基板の並んでいる方向の端部域より中央部域で大きくなるように構成されるようにしたことにより、例えば、エッチング処理時にキャリアの中央部で発生する反応熱とその端部で発生する反応熱を制御することが可能となり、エッチング処理中のキャリア内のエッチング溶液の温度を均一にすることができる。
【0017】
これにより、キャリア中央部に配置された光電変換素子用シリコンウェハを必要以上にエッチングすることがなく、後の太陽電池素子のデバイス工程での歩留りを低下させることが無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明に係る光電変換素子の製造装置におけるキャリアを用いた1例のエッチング装置の概要を示す斜視図である。図1において、10は本発明に係る光電変換素子の製造装置におけるキャリア、11はエッチング溶液を入れるための槽、13はキャリアの搬送装置、14は水平移動用レール、15は昇降用シャフト、17は走行台車、18はアームの支柱、19はアームのハンド、20はアームの保持部、アームの支柱18とアームのハンド19及びアームの保持部20はアームを構成する。21はキャリアに設けられた保持部、23は太陽電池素子用シリコンウェハを示す。
【0020】
太陽電池素子を作製するために太陽電池素子用シリコンウェハには、上述のようにフッ酸、硝酸等の酸溶液や水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液などによるエッチング処理が施される。
【0021】
このエッチング装置としては、図1に示されるように、種々の溶液を貯留した複数の液槽11を一列に備え、処理される太陽電池素子用シリコンウェハ23を多数(ここでいう多数とは4つ以上を意味する)収納したキャリア10を搬送手段13により、これらの槽11に順次浸漬させて自動的に処理される。通常、最後に純水等を用いて洗浄される。そして、洗浄後の太陽電池素子用シリコンウェハ11をキャリア1と共にエアーナイフ等を用いて、基板に付着した純水等の溶液を除去する。
【0022】
図1に示されるように、搬送装置13は、水平方向の移動を行なうための水平移動用レール14と走行台車17及び鉛直方向の移動を行なうための昇降用シャフト15と、キャリアを保持するためのハンド19とを有している。これらの各部を動作することによって、キャリアを、所望の経路、速度、姿勢で搬送することができる。但し、各部は必ずしも連携して動作する必要はなく、所望の動作が実現すればよい。
【0023】
水平移動機構は、水平移動用レール14とこのレール14に走行自在に設けられた走行台車17からなる。走行台車17が水平移動用レール14に沿って移動することにより、水平方向への移動を実現している。
【0024】
昇降機構は、走行台車17に取り付けられた鉛直方向に伸縮自在な昇降用シャフト15を含んで構成されている。支柱を伸縮させることにより、鉛直方向への移動を実現している。
【0025】
そして、昇降用シャフト15に取り付けられたアームの支柱18の先端にアームのハンド19が設けられ、このハンド19の先端にはアームの保持部20を有している。キャリア10を保持するには、キャリア側部に設けられた突起部21を保持部20で保持すればよく、また、ハンド19の間隔を広げることで、ハンド19からキャリア10を離したりすることができる。
【0026】
尚、走行台車17はサーボモーターを備えており、このモータの発生する力によって作動される。また、搬送装置13に設けられたシーケンサーなどの制御手段により、キャリア10を保持、運搬、上下に移動する。
【0027】
図2、図3はこのようなエッチング装置に用いられる本発明に係る光電変換素子の製造装置におけるキャリア10を示したものである。
【0028】
図2は本発明に係るキャリア10に太陽電池素子用シリコンウェハを収納したものを真上から見たものである。図2において、23は太陽電池素子用シリコンウェハ、24は支持溝部、25は仕切り部を示し、さらに25aはキャリア端部の仕切り部の幅、25bはキャリア端部と中央部の間の仕切り部の幅、25cはキャリア中央部の仕切り部の幅を示す。
【0029】
キャリア10は、太陽電池素子用シリコンウェハ23の端部に配置され、隣接する太陽電池素子用シリコンウェハとを仕切る、仕切り部25が形成されており、この仕切り部25によって太陽電池素子用シリコンウェハ1を個別に支持、収納するための支持溝部24が形成されている。
【0030】
さらに本発明に係るキャリア10においては、仕切り部25の幅がキャリア10の端部から中央部にかけて大きくしたことを特徴とする。即ちキャリア端部の仕切り部の幅25aに比べキャリア端部と中央部の間の仕切り部の幅25bは大きくなっており、さらにキャリア端部と中央部の間の仕切り部の幅25bに比べキャリア中央部の仕切り部の幅25cはさらに大きくなっている。
【0031】
例えば150mm各程度の多結晶太陽電池素子用シリコンウェハを20〜30%の水酸化ナトリウウム水溶液でエッチングするときに使用する太陽電池素子用シリコンウェハが16枚入るキャリア10では、キャリア端部の仕切り部の幅25aは1〜2mm程度、キャリア端部と中央部の間の仕切り部の幅25bは3〜5mm程度、キャリア中央部の仕切り部の幅25cは6〜8mm程度が最適である。
【0032】
このような仕切り部25の幅は、上記のように太陽電池素子用シリコンウェハ23の2から5枚ごとに段階的に大きくしても良いし、1枚ごとに序々に連続的に大きくしても良い。
【0033】
このように複数枚の太陽電池素子用シリコンウェハを仕切り部により互いに隔てて収納し、液槽内の溶液に浸漬するための太陽電池素子用シリコンウェハ収納用キャリアにおいて、前記仕切り部の幅が前記キャリアの端部から中央部にかけて大きくしたことにより、エッチング処理時にキャリアの中央部で発生する反応熱とその端部で発生する反応熱を制御することが可能となり、エッチング処理中のキャリア内のエッチング溶液の温度を均一にすることができる。
【0034】
また太陽電池素子用シリコンウェハ23を入れる支持溝部24の深さは、太陽電池素子用シリコンウェハ23の厚みにより異なるが一例として、3〜15mm程度、幅は、1〜5mm程度であることが好ましい。
【0035】
図3は本発明に光電変換素子の製造装置における係るキャリア10の側面図を示す。図3に示すように本発明にかかるキャリア10においては、その側部には側板27が2枚程度間を空けて設けられ、さらにキャリア10下部には、収納された太陽電池素子用シリコンウェハ23が落下しないように支え材28が設けられている。
【0036】
このようにキャリア10の上部及び底部には開口部を有しているほうが、エッチング溶液を太陽電池素子用シリコンウェハ23に均一に接触させることができ、さらにスピンドライ等により太陽電池素子用シリコンウェハ23を乾燥させる際において容易に太陽電池素子用シリコンウェハ23に付着した水滴を飛ばすことができるため好ましい。
【0037】
このようなキャリア10の材質としては、フッ素樹脂(PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)等)やエンジニアリング・プラスチック(PEEK(ポリエーテルケトン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等)等の耐薬品性樹脂が用いられ、一体物に削り出してもよく、また同じ樹脂製のネジを用いて組み立てにより作製してもよい。またフッ素樹脂などの耐薬品性樹脂で被複されたSUS(ステンレス)等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る光電変換素子の製造装置におけるキャリアを用いた1例のエッチング装置の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る光電変換素子の製造装置におけるキャリアに太陽電池素子用シリコンウェハを収納したものを真上から見たものである。
【図3】本発明に係る光電変換素子の製造装置におけるキャリアの側面図である。
【図4】光電変換素子の製造装置におけるシリコンウェハを収納した通常のキャリアを真上から見た図である。
【符号の説明】
【0039】
a;仕切り部の寸法
b;支持溝部の寸法
1、10;キャリア
2、23;太陽電池素子用シリコンウェハ
3;仕切り部
11;槽
13;キャリアの搬送装置
14;水平移動用レール
15;昇降用シャフト
17;走行台車
18;アームの支柱
19;アームのハンド
20;アームの保持部
21;キャリアに設けられた保持部
23;太陽電池素子用シリコンウェハ
24;支持溝部
25;仕切り部
25a;キャリア端部の仕切り部の幅
25b;キャリア端部と中央部の間の仕切り部の幅
25c;キャリア中央部の仕切り部の幅
27;側板
28;支え材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアに収容された多数の光電変換素子用半導体基板に液体中で所定の処理を施す光電変換素子の製造装置において、
前記キャリアは、その内部に複数の前記半導体基板を互いに隔てて立設するための複数の仕切部を有し、且つ、該仕切部は、隣接する前記半導体基板の間隔が前記多数の光電変換素子用半導体基板の並んでいる方向の端部域より中央部域で大きくなるように構成されることを特徴とする光電変換素子の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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