光電変換装置およびその製造方法
【課題】支持体の各凹部内に球状光電変換素子を収容する方式の光電変換装置において、所定位置に素子を正確、かつ確実に固定するとともに、素子の半導体と導電体層間を低抵抗で電気的接続ができる製造法を提供する。
【解決手段】球状の第1半導体を被覆する第2半導体層の一部から露出させた面に電極を形成した素子を用いる。この素子を、導電性支持体の凹部の底にある孔の縁部に導電性接着剤を塗布し、電極が支持体の裏側に臨むように装着する。次に、支持体の裏面側に、電気絶縁層および導電性金属シートを接合し、電気絶縁層および金属シートに孔をあけて電極を露出させ、そこに導電性ペーストを充填する。こうして各素子の電極を並列に接続した光電変換装置を作成する。
【解決手段】球状の第1半導体を被覆する第2半導体層の一部から露出させた面に電極を形成した素子を用いる。この素子を、導電性支持体の凹部の底にある孔の縁部に導電性接着剤を塗布し、電極が支持体の裏側に臨むように装着する。次に、支持体の裏面側に、電気絶縁層および導電性金属シートを接合し、電気絶縁層および金属シートに孔をあけて電極を露出させ、そこに導電性ペーストを充填する。こうして各素子の電極を並列に接続した光電変換装置を作成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の光電変換素子を実装した光電変換装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として光電変換装置が注目されている。代表的な光電変換装置は、結晶シリコン半導体ウエハからなる素子を用いたもの、およびアモルファスシリコンからなる半導体層を用いたものである。前者は、単結晶インゴットの製造および単結晶インゴットから半導体ウエハを製造するまでの工程が繁雑であり、しかも結晶の切削屑などにより高価なシリコン原料の利用率が低いので、コスト高となる。後者は、シリコンの未結合手に水素が結合しているアモルファス構造が、光照射によって水素が放たれて構造変化を起こしやすいため、光電変換効率が光照射により徐々に低下するという問題がある。
【0003】
前記のような特性低下がなく、安価で、高出力が期待できる光電変換装置として、球状のp型半導体の表面にn型半導体層を形成した球状の光電変換素子を用いたものが検討されている。この光電変換装置は、直径1mm前後の小さな球状素子を用いることにより、光電変換部全体の平均厚みを薄くし、原料Siの使用量を軽減するものである。
この種の光電変換装置としては、多数の凹部を有する支持体の各凹部内に、直径1mm前後の球状の光電変換素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として働かせるものが知られている(特許文献1および2など)。このような構成によれば、素子の材料、特に高価なSiの使用量を低減するとともに、反射鏡の作用により、素子に直接照射される光の4〜6倍の光を素子に照射できるので、光の有効利用ができるなどの利点を有する。
【0004】
この種の光電変換装置の代表的な構造が特許文献2に示されている。光電変換素子は、球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層が第1半導体の一部を露出させる開口部を有している。この光電変換素子を個々に取り付ける複数の凹部を有する支持体は、前記凹部の底に光電変換素子を嵌合し、第1半導体の露出面を支持体の裏面側に臨ませる孔を有している。支持体は、前記凹部の内面を形成し、第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層、およびその背面に設けた電気絶縁層からなる。支持体の孔をとおして第1半導体の露出部と接続される第1導電体層は支持体の背面に取り付けられる。
【0005】
第1半導体および第2半導体層をそれぞれ第1導電体層および第2導電体層と低抵抗で接続するために、第1半導体および第2半導体層にはあらかじめ電極が形成されている。
このような構成によると、支持体に素子を配置する前に、高温の熱処理を要する電極形成を行い、素子を支持体に配置した後に、比較的に低温で電極と導電体層とを接続することができるという利点を有する。しかし、第2半導体層側の電極は、第2半導体層の開口部周辺の曲面上に正確に位置決めし、しかも微細な形状に形成しなければならず、量産には不向きである。
【0006】
上記の支持体は、球状素子を収納する凹部を有する第2導電体層と、その裏面側に結合した樹脂製の電気絶縁体層とからなる二層構造になっている。この支持体を用いた場合には、あらかじめ第2半導体層側の電極が形成されていないと、第2半導体層と第2導電体層とを接続する工程での熱処理により、電気絶縁体層が軟化や変形などのダメージを受ける。
また、二層構造の支持体は、例えば、金属シートを加工して底部に孔を有する複数の凹部を形成した第2導電体層と、前記孔に対応した孔を有する電気絶縁性シートとを重ね合わせて、一体化して作製される。しかし、実際には、接着や熱圧着などにより両者を一体化する過程において、樹脂製の電気絶縁性シートが変形するため、孔のピッチや寸法、形状が変化して位置ずれが起こり易く、精度良く支持体を製作することは困難である。特許文献1の三層構造の支持体においても二層構造の支持体と同様の問題がある。
【特許文献1】特開2002−164554号公報
【特許文献2】特開2004−063564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多数の凹部を設けた支持体の各凹部内に球状の光電変換素子を1個ずつ収容する方式の光電変換装置の上記問題点を解決するものである。
本発明は、支持体が工程中にダメージを受けることをなくすとともに、素子の第1半導体と第1導電体層とを低抵抗で容易に電気的に接続できる光電変換装置の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、組立が容易で量産に適した光電変換装置ユニット、およびこのユニットの複数を直列に電気接続した光電変換装置モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置の製造方法は、
(1)球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、前記第2半導体層が前記第1半導体の一部を露出させる開口部を有する複数のほぼ球状の光電変換素子を用意する工程、
(2)前記第1半導体の露出部に電極を形成する工程、
(3)前記光電変換素子を内部に配置するための隣接する複数の凹部を有し、前記凹部が底部に前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を有する導電性の支持体を用意する工程、
(4)前記光電変換素子を、その第1半導体の露出部が前記孔から支持体の裏面側に臨むように、支持体の表面側から前記孔に嵌合して支持体に装着し、前記光電変換素子の第2半導体層を前記支持体に電気的に接続する工程、
(5)前記支持体の裏面側に、導電性金属シートおよび前記導電性金属シートと前記支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する工程、
(6)前記支持体に接合された電気絶縁層および導電性金属シートに孔をあけて前記光電変換素子の電極を当該孔内に露出させる工程、および
(7)前記孔に導電性ペーストを充填して前記電極と前記導電性金属シートとを電気的に接続する工程
を有することを特徴とする。
【0009】
前記工程(1)において用意される光電変換素子は、第2半導体層の外表面を被覆する反射防止膜をさらに有することが好ましい。
前記工程(4)が、複数の前記光電変換素子を前記支持体の孔に対応した保持部を有する光電変換素子担持体に、前記光電変換素子の第1半導体の露出部が所定方向を向くように姿勢を整えて配列する工程を含むことが好ましい。
前記工程(4)が、前記支持体における前記孔の縁部に、導電性接着剤を塗着する工程を含むことが好ましい。
【0010】
前記工程(5)が、支持体の裏面側に、導電性金属シートの片面に電気絶縁層が接合して一体化された複合シートを、その電気絶縁層を支持体に向けて接合することからなることが好ましい。
前記工程(5)が、前記支持体の裏面側に、電気絶縁性の接着剤を塗布する工程、および前記複合シートをその電気絶縁層を前記支持体の前記接着剤層に向けて接合する工程からなることが好ましい。
【0011】
本発明の光電変換装置は、
球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層が第1半導体の一部を露出させる開口部を有し、前記第1半導体の露出部に電極が形成されたほぼ球状の複数の光電変換素子、
前記光電変換素子を個々に取り付ける複数の凹部を有し、前記第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層を兼ねる支持体であって、前記凹部が、前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を底部に有する
支持体、ならびに
前記支持体の裏面側に電気絶縁層を介して接合された導電性金属シート
を備え、前記導電性金属シートは、電気絶縁層および導電性金属シートに設けられた孔に充填されている導電材により前記各電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明は、また、所定数の前記光電変換素子を支持した支持部と、その支持部を囲む鍔部とを有する光電変換装置ユニットの複数からなり、1つの光電変換装置ユニットの鍔部の前記支持体と、隣接する光電変換装置ユニットの鍔部の裏面に露出する前記導電性金属シートとが電気的に接続されている光電変換装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
この種の光電変換装置において、支持体は、第2半導体層と電気的に接続される第2導電体としての機能、支持体の表側に照射される光を素子に集光させる反射鏡としての機能、および素子を保持し、素子の第1半導体の電極と電気的に接続される第1導電体層を支持する機能を有する。したがって、支持体と第1導電体層との間には、両者を電気的に分離する電気絶縁層が設けられる。
本発明の製造方法においては、高温での熱処理を要する第1半導体の電極形成を素子の段階で行うととともに、第2半導体層と支持体との電気的な接続は、支持体が電気絶縁層を有しない段階で行う。したがって、支持体、およびこれに接合される電気絶縁層に、熱処理によるダメージを与えることがない。
【0013】
本発明では、素子を固定した支持体の裏面に、導電性金属シートおよび前記導電性金属シートと前記支持体とを隔離する電気絶縁層を接合した後、前記導電性金属シートおよび電気絶縁層に孔を設けて電極を露出させ、そこに導電性ペーストを充填することにより、素子の第1半導体の電極と第1導電体との電気的な接続をする。この方法によれば、孔を設ける位置は、支持体の凹部の中央部に対応する位置としてあらかじめ定められている。したがって、電極と第1導電体層とを接続するための孔をあらかじめ設けた電気絶縁層を支持体に貼り合わせる場合のような、位置合わせの不整合は生じない。また、孔を設け、そこに、導電性ペーストを充填するという比較的簡易な方法により、第1半導体の電極と第1導電体層とを確実に電気的な接続を行える。
このように本発明によれば、組立が容易で量産に適した光電変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、従来技術、特に特許文献2による提案の利点を取り入れ、かつ問題点を解決する手法を見出すことにより完成したものである。本発明における球状素子は、第1半導体側にあらかじめ電極を形成することを不可欠とするが、第2半導体層側には、必ずしも電極形成を必要としない。球状素子にあらかじめ第1半導体側の電極を形成することにより、後の工程において、電気絶縁層および支持体(第1導電体層)などがダメージを受けるような高温に曝されることを回避できる。
【0015】
第1半導体は、それ自体の不純物濃度が低く、高抵抗であるため、第1導電体層と低抵抗で電気的接続をするには、半導体層とAlなどの導電材が直接に接した状態で高温下の熱処理を行うか、導電性の優れた電極を介して接続することが要求される。第1半導体側の電極を形成するためには、例えば、ガラスフリットをバインダーとするガラスフリット型導電性ペーストを第1半導体の露出部に塗布し、これに550〜750℃、好ましくは650〜750℃で熱処理を施すことが望ましい。しかし、このような高温下では、樹脂製の電気絶縁層だけでなく、導電体層の一般的材料であるAlでも、変形・変質・破損などのダメージを受ける。この問題は、球状素子を支持体に位置決めする以前に第1半導体側電極を形成する本発明によって解決される。
【0016】
本発明においては、あらかじめ第2半導体側の電極を形成することを必ずしも必要としない。その理由は、第2半導体層は、第1半導体と異なり、不純物が高濃度に拡散されているので、低抵抗であることに起因する。第2半導体層とAlなどからなる第2導電体層とは、例えば熱硬化性樹脂をバインダーとする樹脂型導電性ペーストを介し、100〜200℃程度の比較的低い温度で熱処理することにより、低抵抗で電気的に接続される。低融点ガラスフリットをバインダーとする低温ガラスフリット型導電性ペーストを用いても、550℃より低い温度下の熱処理で良好な電気的接続が得られ、導電体層にダメージを与えることもない。
【0017】
従って、球状素子にあらかじめ第2半導体側の電極を形成しなくとも、例えば支持体の凹部の孔の縁部に導電性接着剤を塗布した後、支持体の前記孔に球状素子を装着し、比較的低温度で熱処理する手法により、第2半導体層を第2導電体層に電気的に接続し、同時に球状素子を支持体内の所定位置に固定することができる。
【0018】
本発明における支持体は、少なくとも受光面側の表面が導電性を有し、第2導電体層として機能する。この支持体は電気絶縁層と分離したものであり、第2半導体層と第2導電体層とを接続する場合の熱処理によりダメージを受ける懸念がない。一方、従来の二層もしくは三層構造の支持体を用いた場合には、支持体の凹部に位置決めされた球状素子が、電気絶縁層の熱変形により位置ずれを起こし、内部短絡や電気的接続不良を引き起こすことになる。
【0019】
本発明では、素子を固定した支持体の裏面に、導電性金属シートおよびこの導電性金属シートと支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する。次に、前記導電性金属シートおよび電気絶縁層に孔を設けて電極を露出させ、そこに導電性ペーストを充填することにより、素子の第1半導体の電極と第1導電体との電気的な接続をする。これによって各素子の電極は並列に電気接続される。この方法によれば、孔を形成する位置は、支持体の凹部の中央部に対応する位置としてあらかじめ定められている。したがって、電極と第1導電体層とを接続するための孔をあらかじめ設けた電気絶縁層を支持体に貼り合わせる場合のような、位置合わせの不整合は生じない。そのため、従来の二層または三層構造の支持体を用いた場合に生じた、電気絶縁層の寸法精度の問題は解決される。
【0020】
また、素子の第1半導体の電極と第1導電体層との電気的な接続、および各素子の電極相互の電気的な並列接続は、前記の孔が設けられた部分に導電性ペーストを充填するという比較的簡易な方法により実施することができる。さらに、第1導電体層および第2導電体層は、ともに金属シートなどにより作製される。したがって、多数の素子を固定した光電変換装置のユニット同士を直列または並列に接続する際には、導電体層同士をスポット溶接、超音波溶接またはレーザ溶接などにより、容易に接続することができる。
【0021】
支持体の凹部に素子を装着し、素子の第2半導体層と支持体とを電気的に接続する好ましい実施の形態は、導電性接着剤を塗布した支持体の凹部に素子を装着するに際し、第1半導体側の電極またはその周辺部に、他の部位よりも強い磁性を付与し、この素子に所定方向から磁場を印加して素子の姿勢を整えることである。この方法により、多数の球状素子を所定の姿勢で配列させることができ、正確かつ迅速に球状素子を支持体の所定位置に装着することができる。
以下、本発明の光電変換装置の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0022】
1)光電変換素子を用意する工程(1)
本工程では、球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層から第1半導体の一部を露出させたほぼ球状の光電変換素子を用意する。球状の第1半導体は、例えば、次のようにして作製する。
まず、極微量のホウ素を含むp型多結晶Si塊を坩堝内に供給して不活性ガス雰囲気中で溶融させる。この融液を坩堝底部の微小なノズル孔から滴下させ、その液滴を自然落下中に冷却して固化させる。こうして多結晶または単結晶の球状のp型半導体を作製することができる。
【0023】
上記のようにして作製した球状のp型半導体の表面を研磨し、さらにエッチングなどにより表面層の約50μmを除去した後、例えば、オキシ塩化リンを拡散源として800〜950℃で10〜30分間熱処理する。これにより、p型半導体の表面にリンを拡散させた、厚さ約0.5μm程度のn型半導体層を第2半導体層として形成する。n型半導体層は、フォスフィンを含むシランなどの混合ガスを用いたCVD法によっても形成することができる。
【0024】
第2半導体層を形成した後、第2半導体層上に反射防止膜を形成してもよい。この場合には、後の工程(4)において、第2半導体層と支持体(第2導電体層)とを反射防止膜を介して電気的に接続することになる。従って、本発明における反射防止膜は、導電性を有することが必要であり、例えば、溶液析出法、霧化法あるいはスプレー法などで形成したZnO、SnO2およびITO(In2O3−Sn)などを主体とする薄膜を用いることができる。
【0025】
上記のように球状の第1半導体の表面に第2半導体層を形成し、必要に応じて反射防止膜を形成した後、その一部を例えばグラインディングなどで研削して除去することにより、第2半導体層に開口部を形成し、第1半導体の一部を露出させる。この過程を図1(a)および(b)に示す。第2半導体層2で被覆された球状の第1半導体1の一部が切除され、平滑な切断面の外周部に第2半導体層の開口部3が形成され、その内側に第1半導体層の円形の露出部4が形成される。
第2半導体層の表面に反射防止膜を形成した場合は、第2半導体層とともに反射防止膜の一部を除去することにより第1半導体の露出部を形成する。そのような素子の例を図10(a)に示す。8は反射防止膜を表す。
【0026】
第2半導体層の開口部を形成するには、球状素子の表面の一部を残してパラフィンなどでマスキングし、エッチング処理によりマスキング部分以外の第2半導体層を除去する方法によっても形成できる。そのような方法によって第2半導体層の一部を除去した素子の縦断面図を図10(b)に示す。第2半導体層2の開口部3の内側に、第1半導体1がそのまま露出している。
【0027】
第1半導体は、真球であることが好ましいが、ほぼ球状であればよい。他の実施形態では、第1半導体は、芯体の外周面に第1半導体層が被覆されたものであってもよく、第1半導体の中心付近が空洞であってもよい。球状素子の直径は、0.5〜2mmが適当であり、より好ましくは0.8〜1.2mmである。これによって高純度Si等の高価な材料の使用量が少なく、発生電力が大きく、しかも取り扱いが容易な球状素子が得られる。例えば図1(b)の球状素子の中心点から開口部の外周部を結んだ中心角θは、45〜90°であればよく、60〜90°が好ましい。これにより、切削による廃棄材料の量を低減した上で、第1半導体と第1導電体層の電気的接続に必要な適切な開口部面積が得られる。
【0028】
上記の実施形態では、第1半導体がp型半導体であり、第2半導体層がn型半導体層である球状素子を示したが、第1半導体がn型半導体であり、第2半導体層がp型半導体層であってもよい。上記の実施形態では結晶Si半導体からなる球状素子を例示したが、化合物半導体やその他の材料からなってもよく、単結晶、多結晶以外に、アモルファス材料からなってもよい。また、第1半導体と第2半導体層の界面にノンドープ層を形成したpin形構造のものや、MIS形、ショットキーバリヤ形、ホモ接合形、およびヘテロ接合形などの構成を有していてもよい。
【0029】
2)第1半導体の電極を形成する工程(2)
本工程では、球状素子の第1半導体の露出部に電極を形成する。第1半導体側の電極は、例えば、第1半導体の露出部に導電性ペーストを塗布し、熱処理することにより形成することができる。第1半導体がp型半導体である場合には、一般的に、Al粉もしくはこれにAg粉などを混合した導電材を分散させたガラスフリット型導電性ペーストが用いられる。第1半導体がn型半導体である場合には、リン化合物とAg粉の混合物を導電材として用いるのが好ましい。これらの場合、所望の形状に導電性ペーストを塗布し、100℃前後で約10分間程度乾燥させた後、650〜750℃で10分間程度の熱処理をすれば良好な導電層(電極)を形成できる。
【0030】
上記の熱処理により、導電性ペースト中の導電材が第1半導体に拡散してSiとの合金層が形成されるとともに、溶融したガラスフリットがバインダーとなって電極が形成される。この合金層の作用により第1半導体と電極の接合部の接触抵抗が小さくなる。図1(c)は、図1(b)の球状素子の第1半導体の露出部に円形の電極を形成した球状素子の縦断面図であり、図2はその底面図である。電極5は、図1の球状素子の第1半導体の露出部4の中央部に、導電性ペーストを直径約300μmの円形部分にディスペンサーにより2ドット/秒の速度で塗布し、約700℃で熱処理して形成できる。導電性ペーストの塗布方法は、スクリーン印刷、オフセット印刷もしくはインクジェット法で行うこともできる。電極の形状は特に限定せず、円形以外に、楕円形、多角形、リング状あるいは点の集合などであってもよい。
【0031】
工程(4)の説明の中で後述するように、球状素子を支持体の凹部の所定位置に、より正確、かつ迅速に位置決めするために、第1半導体側の電極そのもの、その上部もしくは周辺部に、他の部位より強い磁性を付与することが有効である。磁性を付与された電極は、例えばガラスフリット型導電性ペーストにNi、Feなどの強磁性体材料の粉末を添加し、このペーストを図1(b)の球状素子の第1半導体の露出部に塗布し、熱処理することによって形成することができる。
【0032】
電極の上部または周辺部に強い磁性を付与する方法としては、それらの部位に強磁性体材料を含む磁性体層を形成すればよい。磁性体層は、例えば、次のようにして作製する。まず、Ni、Feなどの導電性を有する強磁性体材料の粉末および必要に応じて加えたAgなどの導電材を有機溶剤や熱硬化性樹脂などに分散させて、磁性体部形成用ペーストを調製する。このペーストをディスペンサーなどにより、電極の上面または周囲に塗布し、熱処理する。図11(a)は、図1(c)の球状素子の電極5の上面に、磁性体層6を形成した素子7Aの縦断面図である。図11(b)は、図1(c)の球状素子の電極5の周囲に、磁性体層6bを形成した素子7Bの縦断面図である。
【0033】
3)支持体を用意する工程(3)
本工程では、工程(2)で用意した球状素子を内部に配置するための多数の凹部を有し、球状素子の第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層を兼ねる支持体を用意する。この支持体の代表例として、厚さ0.2mmのAl薄板をプレス加工して作製した支持体の部分的な平面図を図3に示し、図4にそのIV−IV線断面図を示す。支持体10の凹部11は蜂の巣状に形成され、その開口端は六角形である。各開口端は相互に隣接し、凹部11は底になるほど狭くなっている。凹部11の底部に形成された孔12は、球状素子の第2半導体の開口部3よりやや大きい径を有する。孔12は円形であってもその他の形状であってもよいが、第1半導体の露出部と相似形であることが好ましい。
【0034】
後の工程(4)において第2半導体層を支持体の孔の縁部に接続することにより、支持体は第2半導体側の導電体(第2導電体層)として機能し、各球状素子の第2半導体層を電気的に並列に接続する役割を果たす。そのため、ここに用いる支持体の少なくとも受光面側は導電性を有することを必要とする。
【0035】
支持体10に耐熱性が乏しい材料を用いると、球状素子を位置決めした後の熱処理工程などによって変形あるいは変質し易いので、金属などの耐熱性を確保できる支持体用材料を使用することが好ましい。支持体の主材料としては、加工性、導電性、フレキシブル性およびコスト等を総合するとAlが好ましいが、Cu、ステンレス鋼およびNiなどの他の導電性材料であってもよい。導電性および光反射性に優れたAgなどのメッキ層を表面に形成することにより、導電体層および反射鏡としての機能を高めることもできる。
【0036】
図3の支持体以外に、図12〜14に例示するような様々な形態の支持体を使用することができる。図12の支持体10Aは、底部に孔32を有する多数の凹部31を形成した、Al製あるいはステンレス鋼製の基板部30をプレス加工等により作製し、少なくとも凹部31の内面に、メッキもしくは真空蒸着などによりAgなどの反射鏡層33を形成したものである。反射鏡層33の作用により、太陽電池の出力電流を大幅に増大させることができる。入射光を有効に球状素子に集光するために、各凹部の開口部の稜線部34の幅はできるだけ狭いことが好ましい。
【0037】
図13の支持体10Bは、厚み約1.0mmのAl製の基材40をプレス加工あるいは切削加工をすることにより、孔42を有する多数の凹部41を形成したものである。支持体の底面44は必ずしも平坦である必要はなく、凹凸状であってもよい。支持体の凹部41の内面は機械研磨などで鏡面化されている。鏡面化研磨の代わりに、メッキもしくは真空蒸着などでAgなどの反射鏡層を形成してもよい。
【0038】
後の工程における熱処理温度が比較的低い場合には、高融点を有する比較的耐熱性が優れた樹脂材料と金属材料を複合させた支持体を用いることができる。図14の支持体10Cは、孔52を有する多数の凹部51を成型加工により形成した樹脂製の基材50と、その表面に形成された金属薄膜53からなっている。凹部51の内面の金属薄膜53は反射鏡層としても作用する。支持体の底部54は特に平坦である必要はなく、凹凸があってもよい。基材50の材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびABC樹脂などを使用できる。なかでも長期信頼性およびフレキシブル性などが優れたポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0039】
金属材料を主体とする図3、図12および図13に例示したような支持体は、後の工程で第2半導体層と第2導電体層を接続する際に、例えば低温ガラスフリット型導電性ペーストおよび樹脂型導電性ペーストのいずれを用いた場合でも、熱処理によりダメージを受けることはない。例えば、Alを主材料とする通常の支持体の場合は、熱処理の最高温度が550℃に達しても何ら支障がない。一方、図14のような樹脂基材と金属薄膜の複合支持体を用いる場合には、比較的低温で熱処理できる樹脂型導電性ペーストを用いることが好ましい。
【0040】
4)光電変換素子を支持体に装着する工程(4)
本工程では、支持体の孔の縁部に、光電変換素子をその電極から第2半導体層の開口部の外周縁部にわたる部分が支持体の裏面側に露出し、かつ第2半導体層が支持体と接するように装着し、第2半導体層と支持体とを電気的に接続する。
好ましい工程をさらに詳しく述べれば、次のi)〜iv)の工程からなる。
i)支持体に導電性接着剤を塗着する工程、
ii)装着しようとする光電変換素子の姿勢を整える工程
iii)姿勢を整えた光電変換素子を支持体に装着する工程、および
iv)前記導電性接着剤を固化する工程。
【0041】
まず、支持体に導電性接着剤を塗着する工程では、支持体の凹部の底に設けられた孔の少なくとも内壁面に導電性接着剤を塗着する。
素子7を支持体10の凹部に装着するための導電性接着剤を凹部11の孔12の周縁部に塗着する方法を以下に説明する。素子を装着するための接着剤の塗着部は、支持体の凹部11の底にあるので、通常のスクリーン印刷によっては接着剤を塗着することはできない。
【0042】
本実施の形態においては、支持体10の裏面側にスクリーン印刷により接着剤を塗着する。スクリーン印刷に用いるメタルマスク20は、図6に示すように、支持体10の孔12に対応して、孔12の開口端に沿うように配列された6個の開口部22からなる開口部群21を有している。開口部22は、支持体10の孔12の開口端の外側から孔内にまたがる部分に対応する形状を有している。例えば、支持体10は孔12を有する部分の厚みが0.12mmで、孔12の直径は0.85mm、メタルマスク20は厚みが50μmで、開口部22の直径0.3mmである。
【0043】
開口部22の中心が支持体10の孔12の開口端上に位置するように、版枠(図示しない)にて支持されたメタルマスク20を図5のように、支持体の裏面側にセットする。次いで、スキージ24をメタルマスク20の表面上を図矢印のように移動させ、メタルマスク20の開口部22をとおして支持体10上に、ペースト状の導電性接着剤13を印刷する。開口部22のうち、孔12の開口端の外側に対応する部分の接着剤は、孔12の周縁部上に転移される。前記の転移された部分に連なっている他の接着剤の部分は、孔12内へ落ち込み、さらにその末端部分は支持体10の反対側の面に付着する。こうして図7に示すように、メタルマスク20の開口部22から支持体10上へ移される接着剤は、孔12の周縁部から孔12の内壁面および反対側の面の周縁部にわたって、支持体に塗着される。このようにして孔12の開口端に沿って複数に分割されて導電性接着剤13が支持体10に塗着される。
【0044】
次に、装着しようとする光電変換素子の姿勢を整える工程では、光電変換素子を、支持体の孔に装着するのに適するように、姿勢を整える。
まず、図15A(1)のように、図3の支持体10の凹部11の配列パターンに対応するパターンで多数の窪み61を有する基板60を用意する。窪み61は、その底部に素子7の球状の部分とほぼ同じ形状の曲面部63を有し、中央部には孔62が設けられている。窪み61の深さ寸法は、図1(c)に示す球状素子7の高さよりやや大きく、窪みの上端の開口部の直径は、球状素子の直径よりやや大きい。曲面部63の上端の開口部の直径は、球状素子の第2半導体の開口部3の直径よりやや大きい。孔62の直径は、電極5の直径より大きい。
【0045】
次いで、工程(2)により作製した、図1(c)に示す球状素子7を多数用意し、これらを基板60上に転がして、それぞれの窪み61に球状素子7を収納する。この状態では、素子はそれぞれランダムな姿勢をとっている。
次に、図15A(2)に示すように、球状素子が配置された基板60の上面を軽く擦るように、樹脂製の平板65にスポンジシート66を張り合わせた摺動板64を静かに左から右方向に移動させる。これにより、窪み61から突出した部分の球状素子がスポンジシート66に擦られて、各球状素子は窪み61の内部を矢印方向に滑りながら回転する。例えば、図15(2)において、(a)のような素子7の姿勢は、(b)のような姿勢に変化し、さらに(c)のような姿勢に変化する。
【0046】
このように摺動板64を左から右方向に移動させる操作を継続すると、窪み61の上端の開口部の中央部に球状素子の電極5が位置するような姿勢になるまで素子が回転する。この時、球状素子の窪み61からの突出部がなくなり、摺動板64の移動による素子への外力がなくなって、上記の姿勢を維持したまま、球状素子の回転が停止する。上記の摺動板64の移動操作を数回繰り返すことにより、最終的には、全ての球状素子7は、図15A(3)に示すように、電極5を有する第1半導体の露出面が上を向く姿勢に制御される。
【0047】
次に、上記のように基板60の球状素子7の姿勢を整えたなら、図15B(4)のように、孔12の縁部に導電性接着剤13を塗着した支持体10と、基板60とを、支持体の凹部11と基板60の窪み61のそれぞれの中心部が対向するように重ね合わせる。次いで、孔62に対応するパターンで孔62より小径の突起部68を有する押し出し板67を、基板60の背面に配置する。突起部68の先端には、素子を保持するための凹部69を有する。
【0048】
押し出し板67を押し上げることにより、突起部68が基板60の孔62を通して窪み61に挿入され、各素子7が支持体10の凹部11に押し込まれる。これにより、図15B(5)のように、各素子が所定位置に位置決めされ、素子7は、電極5および第2半導体層2の開口部の外周部が支持体10の孔12より支持体の裏面側に露出する。同時に、素子7は、第2半導体層2の開口部3に近い部分が支持体の凹部の孔12の縁部ないしはその周辺部に、導電性接着剤13によって粘着し、各素子が支持体10に固定される。
【0049】
次に、素子の姿勢を整える工程の他の実施形態を図16および図17により説明する。
この実施形態では、電極の周辺部に、他の部位よりも強い磁性を有する磁性体部を備えた球状素子を用いる。この方法は、球状素子に所定方向から磁場を印加することにより、その球状素子を所定方位に配列させるものである。
【0050】
素子の姿勢を整える部材は、図16に示すように、吸脱着用フィルター70と整列用フィルター74からなり、これらは素子の磁性体部6bよりも磁性が弱い材料から作られている。吸脱着用フィルター70には、支持体10の凹部11と同じパターンで多数の突起部72が形成され、突起部72の中央部には、素子の第1半導体の露出部4より径のやや小さい吸脱着孔71が貫通して形成されている。整列用フィルター74には、素子7よりやや大きく、突起部72よりやや小さい径の多数の孔73が、吸脱着孔71と同じパターンで形成されている。
【0051】
まず、図16(1)に示すように、吸脱着孔71およびこれと対応する孔73の中心が同軸になるように、吸脱着用フィルター70の上に整列フィルター74を重ねあわせる。次に、これに振動を与え、吸脱着用フィルター70側の空気を減圧しながら、多数の球状素子7を整列フィルター74上に転がす。これにより、吸脱着孔71に素子7が吸引されて、図16(2)のように、全ての孔73に素子7が嵌まり込む。残余の素子は整列フィルター74と吸脱着用フィルター70を傾けることにより除去される。このようにして、吸脱着用フィルターの孔73に素子7がランダムな姿勢で配置される。ここでは、図11(b)に示すように、電極5の周辺部に磁性体部6bを設けた素子7Bを使用している。図11(a)に示す素子を使用することもできる。
【0052】
次に、ランダムな姿勢で配置された素子に所定方向から磁場を印加することにより、電極が所定方向を向くように姿勢を整える。ここで、球状素子に磁場を印加する好ましい方法の1つは、複数の直方体の磁石が平行に接合して構成される板状の磁石集合体を用いる。この磁石集合体における隣接する磁石の接合面に垂直な平面から素子に向けて磁場を印加し、その磁石の接合部からの吸引力により、素子の磁性体部を引き寄せ、所定方向を向くように姿勢を整える。磁石を集合させて使用することで、単体の磁石を分離して使用する場合よりも強い磁力が磁石接合部から得られる。磁石としては、フェライト磁石、Ni−Fe−B磁石、Sm−Co磁石などの永久磁石を用いることができる。
【0053】
ここでは、図17に示すように、断面が四角形の細長い複数の磁石81を接合させた磁石集合体88を備えた複合磁石体80を用いる。磁石集合体は、隣接する磁石81Aおよび81Bが接合している面に、垂直な平面において、異極性の磁極が交互に配列されるように構成されている。この磁石集合体の一方の面に、磁石集合体の吸引力により板状のバックヨーク(継鉄)89が吸着し、両者が一体化されて複合磁石体80が構成されている。この継鉄89の作用により、磁石集合体88の他方の面(磁力発生面)の磁石接合部82の吸引力が一層高められる。
次に、素子7Bが配置された図16(2)の部材の縁部にスペーサ75を配置し、これに、上記複合磁石体80の磁力発生面を図17(1)のように近接させる。この際、複合磁石体80の磁力発生面の磁石接合部82が、整列用フィルター74の孔73の中心部と対向するように位置合わせする。
【0054】
次いで、複合磁石体80を垂直に押し下げてスペーサ75上に配置することにより、素子7Bに磁場を印加し、磁石接合部82から孔73の中心部、即ち、素子7Bの中心部に向けて吸引力を作用させる。同時に、吸脱着用フィルター70の裏側の空気を加圧し、吸脱着孔71から素子7Bに浮力を与える。電極5が孔73の横方向や下方向に向く姿勢で配置されている素子の磁性体部6bに作用する吸引力は弱いので、磁石接合部82に磁性体部6bが吸着されにくい。しかし、どのような姿勢で配置されている素子であっても、上記の浮力によって孔73の中で浮動させることにより、磁性体部6bが孔73の上方向に向くときがあり、そのときには十分な吸引力が作用するので、磁性体部6bを磁石接合部82に吸着させることができる。これにより、全ての素子7Bが、図17(2)のように、電極5および磁性体部6bが上向きになるように姿勢が制御される。
【0055】
次いで、吸脱着用フィルター70の裏側の空気を減圧し、吸着された素子7Bをそのままの姿勢で複合磁石体80から脱着させ、吸脱着孔71に吸着させる。これにより、図17(3)のように、全ての素子が吸脱着用フィルターの吸脱着孔71内に所定の姿勢に整列される。その後、減圧状態を維持したまま、複合磁石体80を取り除き、さらに、整列フィルター74を真上方向に引き上げて、素子を吸着させた吸脱着用フィルター70から整列フィルター74を分離する。このようにして、図17(4)に示すように、全ての素子が吸脱着用フィルター70の所定位置に所定の姿勢で配置される。
【0056】
次に、図17(4)のように、吸脱着用フィルター70の孔71に吸着された素子を支持体10に装着する工程を図18により説明する。
まず、図18(1)のように、凹部11の孔12の縁部に導電性接着剤13を塗着した支持体10の下方に、吸脱着用フィルター70をその孔71の中心が支持体10の孔12の中心に対応するように、近接させる。次いで、支持体10を押し下げて吸脱着用フィルター70上に重ね合わせる。これにより、素子7Bの第2半導体層2の開口部近辺が支持体の孔12に嵌合する。このとき、第2半導体層2の開口部とその内側の第1半導体の露出部4、およびその露出部に形成された電極5と磁性体部6bが、支持体10の裏面側に露出する。同時に、素子7Bは、導電性接着剤13により、第2半導体層の開口部近傍の外周部が支持体の孔12の縁部に接着される。こうして、図18(2)に示すように、支持体10の全ての凹部11に、素子7Bがそれぞれ一個ずつ所定の姿勢で固定される。
【0057】
素子の固定を一層確実に行うためには、図18(3)に示すように、支持体10をそのままの位置に固定し、吸脱着用フィルター70の裏側から空気加圧し、孔71から素子7Bを押し上げる工程を設けてもよい。この後、熱処理することにより、導電性接着剤が固化し、素子7Bが固定され、同時に第2導電体である支持体10と第2半導体層2が電気的に接続される。
以上には、支持体に導電性接着剤を塗着してから、姿勢を整えた素子を支持体に装着することにより、素子の固定および第2半導体層と支持体との電気的な接続を行う好ましい例を示した。この他、姿勢を整えた素子を支持体の所定の位置に配置し、その後に素子の第2半導体層と支持体とを接続する導電性接着剤を塗着することもできる。
【0058】
5)支持体の裏面側に、導電性金属シートおよび電気絶縁層を接合する工程(5)
本工程では、前の工程(4)で球状素子が所定位置に固定された支持体の裏面側に、導電性金属シートおよびこの導電性金属シートと支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する。この導電性金属シートは、素子の第1半導体の電極を相互に並列に接続する第1導電体として機能する。電気絶縁層は、第1半導体側(第1半導体および第1導電体層)と第2半導体層側(第2半導体層および第2導電体層)とを電気的に絶縁する。
好ましい方法においては、まず、支持体の裏面に、孔から露出している素子の部分も含めて、電気絶縁性の接着剤層を形成し、その上側に、電気絶縁層を導電性金属シートの片面に接合して一体化した複合シートを配置してその電気絶縁層側を支持体に接合する。
【0059】
電気絶縁性の接着剤層を高速で形成する方法としては、スクリーン印刷法、スプレー法、オフセット印刷法、インクジェット法などにより、ペースト状の接着剤を塗布する手法がある。電気絶縁性接着剤の材料としては、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系などの各種の樹脂を用いることができる。コスト面および作業性を重視すれば、エポキシ系樹脂を用いるのが最も好ましい。これらの樹脂材料を有機溶媒や水に溶解または分散させて、塗着用ペーストを調製する。
スクリーン印刷法、オフセット印刷法は、高速で印刷ができるというメリットがある。これらの印刷法により、後の電気絶縁層を有する金属シートの接着に好都合な接着剤層を均一に形成することが好ましい。スプレー法は、設備の簡便性、生産性などの面から最も好ましく、低コストで接着剤層を形成できる。
【0060】
複合シートは、電気絶縁性シートと導電性金属シートとを貼り合わせたものが用いられる。電気絶縁性シートの材料としては、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリエーテルサルホン系、ポリエーテルエーテルケトン系、芳香族ポリアミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルイミド系およびフッ素系などの樹脂を用いることができる。金属シートは、アルミニウム箔が好適に用いられるが、他の金属、例えば銅箔、ニッケル箔などを用いることもできる。金属シートは、第1導電体層として働くに足る低電気抵抗を有することが好ましく、厚みは10〜100μm、電気絶縁層は厚み10〜100μmが好ましい。好ましい複合シートの例は、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる電気絶縁層に厚み20μmのアルミニウムシートを貼り合わせたものである。
【0061】
本工程を図9Aおよび図9Bにより説明する。
図9A(1)は、工程(5)により、支持体10の孔12の縁部に導電性接着剤13により素子7が固定された状態を示している。次に、図9A(2)のように、支持体10の裏面側に電気絶縁性接着剤を塗布して接着剤層14を形成する。次いで、金属シート16に電気絶縁層17を形成した複合シート15を支持体10の接着剤層14を形成した側に配置し、両者間を減圧にしながら複合シート15の電気絶縁層16側を支持体10に接合する。複合シート15は、図9B(4)のように、素子7が固定されている部分を中心としてその周囲に対応する部分の接着剤層14に密着する。
【0062】
図示の例では、支持体10の裏面は、凹部11に対応して孔12の部分が頂部となるように膨らんでいる。したがって、隣接する凹部と凹部との間の隔壁の裏面では、接着剤は塗着されているが、電気絶縁層17は密着していない。
上記のように、接着剤層14を塗布した後、電気絶縁層17を有する金属シート16を接合する方法によると、支持体10が薄い金属シートから構成されている場合、凹部と凹部との間の隔壁の裏面に接着剤が塗布される。この接着剤層は、支持体の前記隔壁を補強する効果を発揮する。また、接着剤層は、支持体の孔の部分に接着されている素子を支持体により強固に固定するのに役立つ。
【0063】
電気絶縁層17と導電性金属シート16が一体化された複合シート15を支持体10に接合する他の方法は、電気絶縁層17に接着剤を塗布し、その塗布面を支持体10の裏面に貼り付ける方法である。電気絶縁層17に熱接着性の樹脂材料を用いることもできる。これらの方法によると、支持体の凹部間の隔壁の裏面には、接着剤層が密着しない。
上記のようにして電気絶縁層を有する金属シートを接合した後、必要に応じて、接着剤の固化ないし硬化のための熱処理を施す。
また、電気絶縁層と導電性金属シートは、あらかじめ一体化されている必要はなく、電気絶縁層として前記絶縁性シートや絶縁性接着剤層を支持体裏面に接合させた後、この電気絶縁層に前記の導電性金属シートを接合させてもよい。
【0064】
6)電気絶縁層および導電性金属シートに孔をあけて光電変換素子の電極を露出させる工程(6)
本工程では、第1導電体層として働く金属シートと素子7の電極5とを電気的に接続するための導電路となる孔を形成する。
図9B(4)の状態において、素子7の第1半導体1の電極5を露出させるために、孔12の中央に対応する部分にレーザを照射し、金属シート16、電気絶縁層17および接着剤層14を部分的に除去し、孔18を形成する(図9B(5))。レーザ照射用装置として出力12WのYAGレーザを用い、約0.017秒の照射時間で直径約100〜150μmの照射部領域の電気絶縁層および導電性金属シートを除去することができる。
レーザにより金属シートなどに孔をあける方法は、図11(a)に示すように、電極5上に磁性体部6を形成した素子7Aを用いる場合に適用することもできる。すなわち、適切な条件でレーザを照射すると、被照射部の金属シート16、電気絶縁層17および接着剤層14とともに磁性体部6を同時に除去することができる。磁性体部6は、図16および図17により説明したように、素子の姿勢を整える際には有効であるが、電極5に比べると一般的に電気的抵抗が大きい。従って、磁性体部6が金属シート16と電極5とを低電気抵抗で接続するための妨げになる場合がある。そのような場合は、導電性ペーストにより金属シートと電極とを接続する前に、磁性体部6を除去することが好ましい。
【0065】
7)電気絶縁層および導電性金属シートの孔に導電性ペーストを充填して素子の電極と導電性金属シートとを電気的に接続する工程(7)
本工程では、前記の工程(6)で形成した孔18に、導電性のペースト19を充填し、金属シート16と電極5とを電気的に接続する(図9B(6))。
ここに用いる導電性ペーストは、電気絶縁層が変形・変質などのダメージを受けない温度下で固化するものを選択することが好ましい。一般的には、100〜200℃という比較的低い熱処理温度で固化できる樹脂型導電性ペーストを用いることが好ましい。電気絶縁層が、高融点ガラスやフッ素系樹脂など比較的耐熱性が優れた材料からなる場合には、低温ガラスフリット型導電性ペーストも使用できる。導電性ペーストの塗布方法としては、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、およびスプレー法がある。
【0066】
以上のようにして得られる本発明の光電変換装置においては、球状の光電変換素子が支持体の凹部内の所定位置に強固に固定され、さらに、支持体に固定された全ての素子の第1半導体と第2導電体層、第2半導体層と第2導電体層とが確実に電気的に接続される。
本発明による光電変換装置は、一定数の素子を固定したユニットとして作製される。そのようなユニットは、直列または並列に接続することにより、所定の電圧の所定の電力を取り出せる太陽電池装置として利用することができる。
光電変換装置のユニット同士を直列に接続する例を以下に説明する。
ここに用いた光電変換装置ユニットは、支持体が方形で、所定数の光電変換素子を支持した支持部と、その支持部を囲む鍔部とを有する。各光電変換装置ユニットは、その鍔部の一辺の支持体の部分、およびこれと対向する辺の鍔部裏面に露出する導電性金属シートの部分が接続部となる。
【0067】
図19は、直径約1mmの光電変換素子を約1800個固定した支持体を有する光電変換装置のユニットを示す。このユニット100は、サイズが50×150mmである。このユニットは、その周縁部が、支持体10、並びに接着剤層14により接合された電気絶縁層17および導電性金属シート16からなる。このユニットの短辺側の縁部103および104は、前記の4層からなっている。長辺側の一方の縁部101の端は、支持体10、接着剤層14および電気絶縁層17が取り除かれ、金属シート16が表側に露出している。他方の縁部102の端は、裏側の接着剤層14、電気絶縁層17および金属シート16が取り除かれ、支持体10のみからなっている。
【0068】
このようなユニットの複数を、図20のように、それらの縁部101と102とを重ね合わせ、スポット溶接、超音波溶接またはレーザ溶接などにより相互に接続することにより、ユニット同士を直列に接続することができる。
図21は、縁部101の端が支持体10のみ除かれている例を示す。この例では、金属シート16の上に電気絶縁層17および接着剤層14を有しているので、図左側のユニットの金属シート16に、右側のユニットの支持体10を接続するには、支持体10側から超音波またはレーザを照射する溶接法をとる。図20および図21はユニット同士を直列に接続する例を示しているが、隣接するユニットの支持体同士および金属シート同士を溶接することにより、ユニットを並列に接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明による光電変換装置は、特に太陽電池として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における、第1半導体の露出部に電極を有する光電変換素子を作製する工程を示す縦断面図である。
【図2】第1半導体の露出部に電極を有する光電変換素子の底面図である。
【図3】本発明の実施形態における支持体の平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】支持体に導電性接着剤を印刷する様子を示す縦断面図である。
【図6】導電性接着剤の印刷に用いるメタルスクリーンの平面図である。
【図7】導電性接着剤を印刷された支持体の縦断面図である。
【図8】支持体に光電変換素子を装着した状態を示す断面図である。
【図9A】支持体の裏面に電気絶縁層と導電性金属シートとの複合シートを接合する工程の前半を示す縦断面図である。
【図9B】支持体の裏面に電気絶縁層と導電性金属シートとの複合シートを接合する工程の後半を示す縦断面図である。
【図10】第1半導体の露出部を形成した素子の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の光電変換素子の他の実施形態の例を示す縦断面図である。
【図12】本発明の支持体の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図13】本発明の支持体のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【図14】本発明の支持体のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【図15A】本発明の実施形態において素子の姿勢を整えて支持体に装着する工程の前半を示す縦断面図である。
【図15B】本発明の実施形態において素子の姿勢を整えて支持体に装着する工程の後半を示す縦断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態において素子の姿勢を整える工程の前半を示す縦断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態において素子の姿勢を整える工程の後半を示す縦断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態において姿勢を整えた素子を支持体に装着する工程を示す縦断面図である。
【図19】本発明による光電変換装置のユニットを示す平面図である。
【図20】本発明による光電変換装置のユニットを直列に接続する例を示す要部を断面にした側面図である。
【図21】本発明による光電変換装置のユニットを直列に接続する他の例を示す要部を断面にした側面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 第1半導体
2 第2半導体層
3 第2半導体層の開口部
4 第1半導体の露出部
5 電極
6、6b 磁性体層
7、7A、7B 光電変換素子
8 反射防止膜
10 支持体
11 凹部
12 孔
13 導電性接着剤
14 電気絶縁性接着剤層
15 複合シート
16 導電性金属シート
17 電気絶縁層
18 削孔により形成された孔
19 導電性ペースト
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の光電変換素子を実装した光電変換装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンなエネルギー源として光電変換装置が注目されている。代表的な光電変換装置は、結晶シリコン半導体ウエハからなる素子を用いたもの、およびアモルファスシリコンからなる半導体層を用いたものである。前者は、単結晶インゴットの製造および単結晶インゴットから半導体ウエハを製造するまでの工程が繁雑であり、しかも結晶の切削屑などにより高価なシリコン原料の利用率が低いので、コスト高となる。後者は、シリコンの未結合手に水素が結合しているアモルファス構造が、光照射によって水素が放たれて構造変化を起こしやすいため、光電変換効率が光照射により徐々に低下するという問題がある。
【0003】
前記のような特性低下がなく、安価で、高出力が期待できる光電変換装置として、球状のp型半導体の表面にn型半導体層を形成した球状の光電変換素子を用いたものが検討されている。この光電変換装置は、直径1mm前後の小さな球状素子を用いることにより、光電変換部全体の平均厚みを薄くし、原料Siの使用量を軽減するものである。
この種の光電変換装置としては、多数の凹部を有する支持体の各凹部内に、直径1mm前後の球状の光電変換素子を取り付け、凹部内面を反射鏡として働かせるものが知られている(特許文献1および2など)。このような構成によれば、素子の材料、特に高価なSiの使用量を低減するとともに、反射鏡の作用により、素子に直接照射される光の4〜6倍の光を素子に照射できるので、光の有効利用ができるなどの利点を有する。
【0004】
この種の光電変換装置の代表的な構造が特許文献2に示されている。光電変換素子は、球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層が第1半導体の一部を露出させる開口部を有している。この光電変換素子を個々に取り付ける複数の凹部を有する支持体は、前記凹部の底に光電変換素子を嵌合し、第1半導体の露出面を支持体の裏面側に臨ませる孔を有している。支持体は、前記凹部の内面を形成し、第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層、およびその背面に設けた電気絶縁層からなる。支持体の孔をとおして第1半導体の露出部と接続される第1導電体層は支持体の背面に取り付けられる。
【0005】
第1半導体および第2半導体層をそれぞれ第1導電体層および第2導電体層と低抵抗で接続するために、第1半導体および第2半導体層にはあらかじめ電極が形成されている。
このような構成によると、支持体に素子を配置する前に、高温の熱処理を要する電極形成を行い、素子を支持体に配置した後に、比較的に低温で電極と導電体層とを接続することができるという利点を有する。しかし、第2半導体層側の電極は、第2半導体層の開口部周辺の曲面上に正確に位置決めし、しかも微細な形状に形成しなければならず、量産には不向きである。
【0006】
上記の支持体は、球状素子を収納する凹部を有する第2導電体層と、その裏面側に結合した樹脂製の電気絶縁体層とからなる二層構造になっている。この支持体を用いた場合には、あらかじめ第2半導体層側の電極が形成されていないと、第2半導体層と第2導電体層とを接続する工程での熱処理により、電気絶縁体層が軟化や変形などのダメージを受ける。
また、二層構造の支持体は、例えば、金属シートを加工して底部に孔を有する複数の凹部を形成した第2導電体層と、前記孔に対応した孔を有する電気絶縁性シートとを重ね合わせて、一体化して作製される。しかし、実際には、接着や熱圧着などにより両者を一体化する過程において、樹脂製の電気絶縁性シートが変形するため、孔のピッチや寸法、形状が変化して位置ずれが起こり易く、精度良く支持体を製作することは困難である。特許文献1の三層構造の支持体においても二層構造の支持体と同様の問題がある。
【特許文献1】特開2002−164554号公報
【特許文献2】特開2004−063564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多数の凹部を設けた支持体の各凹部内に球状の光電変換素子を1個ずつ収容する方式の光電変換装置の上記問題点を解決するものである。
本発明は、支持体が工程中にダメージを受けることをなくすとともに、素子の第1半導体と第1導電体層とを低抵抗で容易に電気的に接続できる光電変換装置の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、組立が容易で量産に適した光電変換装置ユニット、およびこのユニットの複数を直列に電気接続した光電変換装置モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置の製造方法は、
(1)球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、前記第2半導体層が前記第1半導体の一部を露出させる開口部を有する複数のほぼ球状の光電変換素子を用意する工程、
(2)前記第1半導体の露出部に電極を形成する工程、
(3)前記光電変換素子を内部に配置するための隣接する複数の凹部を有し、前記凹部が底部に前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を有する導電性の支持体を用意する工程、
(4)前記光電変換素子を、その第1半導体の露出部が前記孔から支持体の裏面側に臨むように、支持体の表面側から前記孔に嵌合して支持体に装着し、前記光電変換素子の第2半導体層を前記支持体に電気的に接続する工程、
(5)前記支持体の裏面側に、導電性金属シートおよび前記導電性金属シートと前記支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する工程、
(6)前記支持体に接合された電気絶縁層および導電性金属シートに孔をあけて前記光電変換素子の電極を当該孔内に露出させる工程、および
(7)前記孔に導電性ペーストを充填して前記電極と前記導電性金属シートとを電気的に接続する工程
を有することを特徴とする。
【0009】
前記工程(1)において用意される光電変換素子は、第2半導体層の外表面を被覆する反射防止膜をさらに有することが好ましい。
前記工程(4)が、複数の前記光電変換素子を前記支持体の孔に対応した保持部を有する光電変換素子担持体に、前記光電変換素子の第1半導体の露出部が所定方向を向くように姿勢を整えて配列する工程を含むことが好ましい。
前記工程(4)が、前記支持体における前記孔の縁部に、導電性接着剤を塗着する工程を含むことが好ましい。
【0010】
前記工程(5)が、支持体の裏面側に、導電性金属シートの片面に電気絶縁層が接合して一体化された複合シートを、その電気絶縁層を支持体に向けて接合することからなることが好ましい。
前記工程(5)が、前記支持体の裏面側に、電気絶縁性の接着剤を塗布する工程、および前記複合シートをその電気絶縁層を前記支持体の前記接着剤層に向けて接合する工程からなることが好ましい。
【0011】
本発明の光電変換装置は、
球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層が第1半導体の一部を露出させる開口部を有し、前記第1半導体の露出部に電極が形成されたほぼ球状の複数の光電変換素子、
前記光電変換素子を個々に取り付ける複数の凹部を有し、前記第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層を兼ねる支持体であって、前記凹部が、前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を底部に有する
支持体、ならびに
前記支持体の裏面側に電気絶縁層を介して接合された導電性金属シート
を備え、前記導電性金属シートは、電気絶縁層および導電性金属シートに設けられた孔に充填されている導電材により前記各電極と電気的に接続されていることを特徴とする。
本発明は、また、所定数の前記光電変換素子を支持した支持部と、その支持部を囲む鍔部とを有する光電変換装置ユニットの複数からなり、1つの光電変換装置ユニットの鍔部の前記支持体と、隣接する光電変換装置ユニットの鍔部の裏面に露出する前記導電性金属シートとが電気的に接続されている光電変換装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
この種の光電変換装置において、支持体は、第2半導体層と電気的に接続される第2導電体としての機能、支持体の表側に照射される光を素子に集光させる反射鏡としての機能、および素子を保持し、素子の第1半導体の電極と電気的に接続される第1導電体層を支持する機能を有する。したがって、支持体と第1導電体層との間には、両者を電気的に分離する電気絶縁層が設けられる。
本発明の製造方法においては、高温での熱処理を要する第1半導体の電極形成を素子の段階で行うととともに、第2半導体層と支持体との電気的な接続は、支持体が電気絶縁層を有しない段階で行う。したがって、支持体、およびこれに接合される電気絶縁層に、熱処理によるダメージを与えることがない。
【0013】
本発明では、素子を固定した支持体の裏面に、導電性金属シートおよび前記導電性金属シートと前記支持体とを隔離する電気絶縁層を接合した後、前記導電性金属シートおよび電気絶縁層に孔を設けて電極を露出させ、そこに導電性ペーストを充填することにより、素子の第1半導体の電極と第1導電体との電気的な接続をする。この方法によれば、孔を設ける位置は、支持体の凹部の中央部に対応する位置としてあらかじめ定められている。したがって、電極と第1導電体層とを接続するための孔をあらかじめ設けた電気絶縁層を支持体に貼り合わせる場合のような、位置合わせの不整合は生じない。また、孔を設け、そこに、導電性ペーストを充填するという比較的簡易な方法により、第1半導体の電極と第1導電体層とを確実に電気的な接続を行える。
このように本発明によれば、組立が容易で量産に適した光電変換装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、従来技術、特に特許文献2による提案の利点を取り入れ、かつ問題点を解決する手法を見出すことにより完成したものである。本発明における球状素子は、第1半導体側にあらかじめ電極を形成することを不可欠とするが、第2半導体層側には、必ずしも電極形成を必要としない。球状素子にあらかじめ第1半導体側の電極を形成することにより、後の工程において、電気絶縁層および支持体(第1導電体層)などがダメージを受けるような高温に曝されることを回避できる。
【0015】
第1半導体は、それ自体の不純物濃度が低く、高抵抗であるため、第1導電体層と低抵抗で電気的接続をするには、半導体層とAlなどの導電材が直接に接した状態で高温下の熱処理を行うか、導電性の優れた電極を介して接続することが要求される。第1半導体側の電極を形成するためには、例えば、ガラスフリットをバインダーとするガラスフリット型導電性ペーストを第1半導体の露出部に塗布し、これに550〜750℃、好ましくは650〜750℃で熱処理を施すことが望ましい。しかし、このような高温下では、樹脂製の電気絶縁層だけでなく、導電体層の一般的材料であるAlでも、変形・変質・破損などのダメージを受ける。この問題は、球状素子を支持体に位置決めする以前に第1半導体側電極を形成する本発明によって解決される。
【0016】
本発明においては、あらかじめ第2半導体側の電極を形成することを必ずしも必要としない。その理由は、第2半導体層は、第1半導体と異なり、不純物が高濃度に拡散されているので、低抵抗であることに起因する。第2半導体層とAlなどからなる第2導電体層とは、例えば熱硬化性樹脂をバインダーとする樹脂型導電性ペーストを介し、100〜200℃程度の比較的低い温度で熱処理することにより、低抵抗で電気的に接続される。低融点ガラスフリットをバインダーとする低温ガラスフリット型導電性ペーストを用いても、550℃より低い温度下の熱処理で良好な電気的接続が得られ、導電体層にダメージを与えることもない。
【0017】
従って、球状素子にあらかじめ第2半導体側の電極を形成しなくとも、例えば支持体の凹部の孔の縁部に導電性接着剤を塗布した後、支持体の前記孔に球状素子を装着し、比較的低温度で熱処理する手法により、第2半導体層を第2導電体層に電気的に接続し、同時に球状素子を支持体内の所定位置に固定することができる。
【0018】
本発明における支持体は、少なくとも受光面側の表面が導電性を有し、第2導電体層として機能する。この支持体は電気絶縁層と分離したものであり、第2半導体層と第2導電体層とを接続する場合の熱処理によりダメージを受ける懸念がない。一方、従来の二層もしくは三層構造の支持体を用いた場合には、支持体の凹部に位置決めされた球状素子が、電気絶縁層の熱変形により位置ずれを起こし、内部短絡や電気的接続不良を引き起こすことになる。
【0019】
本発明では、素子を固定した支持体の裏面に、導電性金属シートおよびこの導電性金属シートと支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する。次に、前記導電性金属シートおよび電気絶縁層に孔を設けて電極を露出させ、そこに導電性ペーストを充填することにより、素子の第1半導体の電極と第1導電体との電気的な接続をする。これによって各素子の電極は並列に電気接続される。この方法によれば、孔を形成する位置は、支持体の凹部の中央部に対応する位置としてあらかじめ定められている。したがって、電極と第1導電体層とを接続するための孔をあらかじめ設けた電気絶縁層を支持体に貼り合わせる場合のような、位置合わせの不整合は生じない。そのため、従来の二層または三層構造の支持体を用いた場合に生じた、電気絶縁層の寸法精度の問題は解決される。
【0020】
また、素子の第1半導体の電極と第1導電体層との電気的な接続、および各素子の電極相互の電気的な並列接続は、前記の孔が設けられた部分に導電性ペーストを充填するという比較的簡易な方法により実施することができる。さらに、第1導電体層および第2導電体層は、ともに金属シートなどにより作製される。したがって、多数の素子を固定した光電変換装置のユニット同士を直列または並列に接続する際には、導電体層同士をスポット溶接、超音波溶接またはレーザ溶接などにより、容易に接続することができる。
【0021】
支持体の凹部に素子を装着し、素子の第2半導体層と支持体とを電気的に接続する好ましい実施の形態は、導電性接着剤を塗布した支持体の凹部に素子を装着するに際し、第1半導体側の電極またはその周辺部に、他の部位よりも強い磁性を付与し、この素子に所定方向から磁場を印加して素子の姿勢を整えることである。この方法により、多数の球状素子を所定の姿勢で配列させることができ、正確かつ迅速に球状素子を支持体の所定位置に装着することができる。
以下、本発明の光電変換装置の製造方法の各工程について詳細に説明する。
【0022】
1)光電変換素子を用意する工程(1)
本工程では、球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層から第1半導体の一部を露出させたほぼ球状の光電変換素子を用意する。球状の第1半導体は、例えば、次のようにして作製する。
まず、極微量のホウ素を含むp型多結晶Si塊を坩堝内に供給して不活性ガス雰囲気中で溶融させる。この融液を坩堝底部の微小なノズル孔から滴下させ、その液滴を自然落下中に冷却して固化させる。こうして多結晶または単結晶の球状のp型半導体を作製することができる。
【0023】
上記のようにして作製した球状のp型半導体の表面を研磨し、さらにエッチングなどにより表面層の約50μmを除去した後、例えば、オキシ塩化リンを拡散源として800〜950℃で10〜30分間熱処理する。これにより、p型半導体の表面にリンを拡散させた、厚さ約0.5μm程度のn型半導体層を第2半導体層として形成する。n型半導体層は、フォスフィンを含むシランなどの混合ガスを用いたCVD法によっても形成することができる。
【0024】
第2半導体層を形成した後、第2半導体層上に反射防止膜を形成してもよい。この場合には、後の工程(4)において、第2半導体層と支持体(第2導電体層)とを反射防止膜を介して電気的に接続することになる。従って、本発明における反射防止膜は、導電性を有することが必要であり、例えば、溶液析出法、霧化法あるいはスプレー法などで形成したZnO、SnO2およびITO(In2O3−Sn)などを主体とする薄膜を用いることができる。
【0025】
上記のように球状の第1半導体の表面に第2半導体層を形成し、必要に応じて反射防止膜を形成した後、その一部を例えばグラインディングなどで研削して除去することにより、第2半導体層に開口部を形成し、第1半導体の一部を露出させる。この過程を図1(a)および(b)に示す。第2半導体層2で被覆された球状の第1半導体1の一部が切除され、平滑な切断面の外周部に第2半導体層の開口部3が形成され、その内側に第1半導体層の円形の露出部4が形成される。
第2半導体層の表面に反射防止膜を形成した場合は、第2半導体層とともに反射防止膜の一部を除去することにより第1半導体の露出部を形成する。そのような素子の例を図10(a)に示す。8は反射防止膜を表す。
【0026】
第2半導体層の開口部を形成するには、球状素子の表面の一部を残してパラフィンなどでマスキングし、エッチング処理によりマスキング部分以外の第2半導体層を除去する方法によっても形成できる。そのような方法によって第2半導体層の一部を除去した素子の縦断面図を図10(b)に示す。第2半導体層2の開口部3の内側に、第1半導体1がそのまま露出している。
【0027】
第1半導体は、真球であることが好ましいが、ほぼ球状であればよい。他の実施形態では、第1半導体は、芯体の外周面に第1半導体層が被覆されたものであってもよく、第1半導体の中心付近が空洞であってもよい。球状素子の直径は、0.5〜2mmが適当であり、より好ましくは0.8〜1.2mmである。これによって高純度Si等の高価な材料の使用量が少なく、発生電力が大きく、しかも取り扱いが容易な球状素子が得られる。例えば図1(b)の球状素子の中心点から開口部の外周部を結んだ中心角θは、45〜90°であればよく、60〜90°が好ましい。これにより、切削による廃棄材料の量を低減した上で、第1半導体と第1導電体層の電気的接続に必要な適切な開口部面積が得られる。
【0028】
上記の実施形態では、第1半導体がp型半導体であり、第2半導体層がn型半導体層である球状素子を示したが、第1半導体がn型半導体であり、第2半導体層がp型半導体層であってもよい。上記の実施形態では結晶Si半導体からなる球状素子を例示したが、化合物半導体やその他の材料からなってもよく、単結晶、多結晶以外に、アモルファス材料からなってもよい。また、第1半導体と第2半導体層の界面にノンドープ層を形成したpin形構造のものや、MIS形、ショットキーバリヤ形、ホモ接合形、およびヘテロ接合形などの構成を有していてもよい。
【0029】
2)第1半導体の電極を形成する工程(2)
本工程では、球状素子の第1半導体の露出部に電極を形成する。第1半導体側の電極は、例えば、第1半導体の露出部に導電性ペーストを塗布し、熱処理することにより形成することができる。第1半導体がp型半導体である場合には、一般的に、Al粉もしくはこれにAg粉などを混合した導電材を分散させたガラスフリット型導電性ペーストが用いられる。第1半導体がn型半導体である場合には、リン化合物とAg粉の混合物を導電材として用いるのが好ましい。これらの場合、所望の形状に導電性ペーストを塗布し、100℃前後で約10分間程度乾燥させた後、650〜750℃で10分間程度の熱処理をすれば良好な導電層(電極)を形成できる。
【0030】
上記の熱処理により、導電性ペースト中の導電材が第1半導体に拡散してSiとの合金層が形成されるとともに、溶融したガラスフリットがバインダーとなって電極が形成される。この合金層の作用により第1半導体と電極の接合部の接触抵抗が小さくなる。図1(c)は、図1(b)の球状素子の第1半導体の露出部に円形の電極を形成した球状素子の縦断面図であり、図2はその底面図である。電極5は、図1の球状素子の第1半導体の露出部4の中央部に、導電性ペーストを直径約300μmの円形部分にディスペンサーにより2ドット/秒の速度で塗布し、約700℃で熱処理して形成できる。導電性ペーストの塗布方法は、スクリーン印刷、オフセット印刷もしくはインクジェット法で行うこともできる。電極の形状は特に限定せず、円形以外に、楕円形、多角形、リング状あるいは点の集合などであってもよい。
【0031】
工程(4)の説明の中で後述するように、球状素子を支持体の凹部の所定位置に、より正確、かつ迅速に位置決めするために、第1半導体側の電極そのもの、その上部もしくは周辺部に、他の部位より強い磁性を付与することが有効である。磁性を付与された電極は、例えばガラスフリット型導電性ペーストにNi、Feなどの強磁性体材料の粉末を添加し、このペーストを図1(b)の球状素子の第1半導体の露出部に塗布し、熱処理することによって形成することができる。
【0032】
電極の上部または周辺部に強い磁性を付与する方法としては、それらの部位に強磁性体材料を含む磁性体層を形成すればよい。磁性体層は、例えば、次のようにして作製する。まず、Ni、Feなどの導電性を有する強磁性体材料の粉末および必要に応じて加えたAgなどの導電材を有機溶剤や熱硬化性樹脂などに分散させて、磁性体部形成用ペーストを調製する。このペーストをディスペンサーなどにより、電極の上面または周囲に塗布し、熱処理する。図11(a)は、図1(c)の球状素子の電極5の上面に、磁性体層6を形成した素子7Aの縦断面図である。図11(b)は、図1(c)の球状素子の電極5の周囲に、磁性体層6bを形成した素子7Bの縦断面図である。
【0033】
3)支持体を用意する工程(3)
本工程では、工程(2)で用意した球状素子を内部に配置するための多数の凹部を有し、球状素子の第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層を兼ねる支持体を用意する。この支持体の代表例として、厚さ0.2mmのAl薄板をプレス加工して作製した支持体の部分的な平面図を図3に示し、図4にそのIV−IV線断面図を示す。支持体10の凹部11は蜂の巣状に形成され、その開口端は六角形である。各開口端は相互に隣接し、凹部11は底になるほど狭くなっている。凹部11の底部に形成された孔12は、球状素子の第2半導体の開口部3よりやや大きい径を有する。孔12は円形であってもその他の形状であってもよいが、第1半導体の露出部と相似形であることが好ましい。
【0034】
後の工程(4)において第2半導体層を支持体の孔の縁部に接続することにより、支持体は第2半導体側の導電体(第2導電体層)として機能し、各球状素子の第2半導体層を電気的に並列に接続する役割を果たす。そのため、ここに用いる支持体の少なくとも受光面側は導電性を有することを必要とする。
【0035】
支持体10に耐熱性が乏しい材料を用いると、球状素子を位置決めした後の熱処理工程などによって変形あるいは変質し易いので、金属などの耐熱性を確保できる支持体用材料を使用することが好ましい。支持体の主材料としては、加工性、導電性、フレキシブル性およびコスト等を総合するとAlが好ましいが、Cu、ステンレス鋼およびNiなどの他の導電性材料であってもよい。導電性および光反射性に優れたAgなどのメッキ層を表面に形成することにより、導電体層および反射鏡としての機能を高めることもできる。
【0036】
図3の支持体以外に、図12〜14に例示するような様々な形態の支持体を使用することができる。図12の支持体10Aは、底部に孔32を有する多数の凹部31を形成した、Al製あるいはステンレス鋼製の基板部30をプレス加工等により作製し、少なくとも凹部31の内面に、メッキもしくは真空蒸着などによりAgなどの反射鏡層33を形成したものである。反射鏡層33の作用により、太陽電池の出力電流を大幅に増大させることができる。入射光を有効に球状素子に集光するために、各凹部の開口部の稜線部34の幅はできるだけ狭いことが好ましい。
【0037】
図13の支持体10Bは、厚み約1.0mmのAl製の基材40をプレス加工あるいは切削加工をすることにより、孔42を有する多数の凹部41を形成したものである。支持体の底面44は必ずしも平坦である必要はなく、凹凸状であってもよい。支持体の凹部41の内面は機械研磨などで鏡面化されている。鏡面化研磨の代わりに、メッキもしくは真空蒸着などでAgなどの反射鏡層を形成してもよい。
【0038】
後の工程における熱処理温度が比較的低い場合には、高融点を有する比較的耐熱性が優れた樹脂材料と金属材料を複合させた支持体を用いることができる。図14の支持体10Cは、孔52を有する多数の凹部51を成型加工により形成した樹脂製の基材50と、その表面に形成された金属薄膜53からなっている。凹部51の内面の金属薄膜53は反射鏡層としても作用する。支持体の底部54は特に平坦である必要はなく、凹凸があってもよい。基材50の材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびABC樹脂などを使用できる。なかでも長期信頼性およびフレキシブル性などが優れたポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0039】
金属材料を主体とする図3、図12および図13に例示したような支持体は、後の工程で第2半導体層と第2導電体層を接続する際に、例えば低温ガラスフリット型導電性ペーストおよび樹脂型導電性ペーストのいずれを用いた場合でも、熱処理によりダメージを受けることはない。例えば、Alを主材料とする通常の支持体の場合は、熱処理の最高温度が550℃に達しても何ら支障がない。一方、図14のような樹脂基材と金属薄膜の複合支持体を用いる場合には、比較的低温で熱処理できる樹脂型導電性ペーストを用いることが好ましい。
【0040】
4)光電変換素子を支持体に装着する工程(4)
本工程では、支持体の孔の縁部に、光電変換素子をその電極から第2半導体層の開口部の外周縁部にわたる部分が支持体の裏面側に露出し、かつ第2半導体層が支持体と接するように装着し、第2半導体層と支持体とを電気的に接続する。
好ましい工程をさらに詳しく述べれば、次のi)〜iv)の工程からなる。
i)支持体に導電性接着剤を塗着する工程、
ii)装着しようとする光電変換素子の姿勢を整える工程
iii)姿勢を整えた光電変換素子を支持体に装着する工程、および
iv)前記導電性接着剤を固化する工程。
【0041】
まず、支持体に導電性接着剤を塗着する工程では、支持体の凹部の底に設けられた孔の少なくとも内壁面に導電性接着剤を塗着する。
素子7を支持体10の凹部に装着するための導電性接着剤を凹部11の孔12の周縁部に塗着する方法を以下に説明する。素子を装着するための接着剤の塗着部は、支持体の凹部11の底にあるので、通常のスクリーン印刷によっては接着剤を塗着することはできない。
【0042】
本実施の形態においては、支持体10の裏面側にスクリーン印刷により接着剤を塗着する。スクリーン印刷に用いるメタルマスク20は、図6に示すように、支持体10の孔12に対応して、孔12の開口端に沿うように配列された6個の開口部22からなる開口部群21を有している。開口部22は、支持体10の孔12の開口端の外側から孔内にまたがる部分に対応する形状を有している。例えば、支持体10は孔12を有する部分の厚みが0.12mmで、孔12の直径は0.85mm、メタルマスク20は厚みが50μmで、開口部22の直径0.3mmである。
【0043】
開口部22の中心が支持体10の孔12の開口端上に位置するように、版枠(図示しない)にて支持されたメタルマスク20を図5のように、支持体の裏面側にセットする。次いで、スキージ24をメタルマスク20の表面上を図矢印のように移動させ、メタルマスク20の開口部22をとおして支持体10上に、ペースト状の導電性接着剤13を印刷する。開口部22のうち、孔12の開口端の外側に対応する部分の接着剤は、孔12の周縁部上に転移される。前記の転移された部分に連なっている他の接着剤の部分は、孔12内へ落ち込み、さらにその末端部分は支持体10の反対側の面に付着する。こうして図7に示すように、メタルマスク20の開口部22から支持体10上へ移される接着剤は、孔12の周縁部から孔12の内壁面および反対側の面の周縁部にわたって、支持体に塗着される。このようにして孔12の開口端に沿って複数に分割されて導電性接着剤13が支持体10に塗着される。
【0044】
次に、装着しようとする光電変換素子の姿勢を整える工程では、光電変換素子を、支持体の孔に装着するのに適するように、姿勢を整える。
まず、図15A(1)のように、図3の支持体10の凹部11の配列パターンに対応するパターンで多数の窪み61を有する基板60を用意する。窪み61は、その底部に素子7の球状の部分とほぼ同じ形状の曲面部63を有し、中央部には孔62が設けられている。窪み61の深さ寸法は、図1(c)に示す球状素子7の高さよりやや大きく、窪みの上端の開口部の直径は、球状素子の直径よりやや大きい。曲面部63の上端の開口部の直径は、球状素子の第2半導体の開口部3の直径よりやや大きい。孔62の直径は、電極5の直径より大きい。
【0045】
次いで、工程(2)により作製した、図1(c)に示す球状素子7を多数用意し、これらを基板60上に転がして、それぞれの窪み61に球状素子7を収納する。この状態では、素子はそれぞれランダムな姿勢をとっている。
次に、図15A(2)に示すように、球状素子が配置された基板60の上面を軽く擦るように、樹脂製の平板65にスポンジシート66を張り合わせた摺動板64を静かに左から右方向に移動させる。これにより、窪み61から突出した部分の球状素子がスポンジシート66に擦られて、各球状素子は窪み61の内部を矢印方向に滑りながら回転する。例えば、図15(2)において、(a)のような素子7の姿勢は、(b)のような姿勢に変化し、さらに(c)のような姿勢に変化する。
【0046】
このように摺動板64を左から右方向に移動させる操作を継続すると、窪み61の上端の開口部の中央部に球状素子の電極5が位置するような姿勢になるまで素子が回転する。この時、球状素子の窪み61からの突出部がなくなり、摺動板64の移動による素子への外力がなくなって、上記の姿勢を維持したまま、球状素子の回転が停止する。上記の摺動板64の移動操作を数回繰り返すことにより、最終的には、全ての球状素子7は、図15A(3)に示すように、電極5を有する第1半導体の露出面が上を向く姿勢に制御される。
【0047】
次に、上記のように基板60の球状素子7の姿勢を整えたなら、図15B(4)のように、孔12の縁部に導電性接着剤13を塗着した支持体10と、基板60とを、支持体の凹部11と基板60の窪み61のそれぞれの中心部が対向するように重ね合わせる。次いで、孔62に対応するパターンで孔62より小径の突起部68を有する押し出し板67を、基板60の背面に配置する。突起部68の先端には、素子を保持するための凹部69を有する。
【0048】
押し出し板67を押し上げることにより、突起部68が基板60の孔62を通して窪み61に挿入され、各素子7が支持体10の凹部11に押し込まれる。これにより、図15B(5)のように、各素子が所定位置に位置決めされ、素子7は、電極5および第2半導体層2の開口部の外周部が支持体10の孔12より支持体の裏面側に露出する。同時に、素子7は、第2半導体層2の開口部3に近い部分が支持体の凹部の孔12の縁部ないしはその周辺部に、導電性接着剤13によって粘着し、各素子が支持体10に固定される。
【0049】
次に、素子の姿勢を整える工程の他の実施形態を図16および図17により説明する。
この実施形態では、電極の周辺部に、他の部位よりも強い磁性を有する磁性体部を備えた球状素子を用いる。この方法は、球状素子に所定方向から磁場を印加することにより、その球状素子を所定方位に配列させるものである。
【0050】
素子の姿勢を整える部材は、図16に示すように、吸脱着用フィルター70と整列用フィルター74からなり、これらは素子の磁性体部6bよりも磁性が弱い材料から作られている。吸脱着用フィルター70には、支持体10の凹部11と同じパターンで多数の突起部72が形成され、突起部72の中央部には、素子の第1半導体の露出部4より径のやや小さい吸脱着孔71が貫通して形成されている。整列用フィルター74には、素子7よりやや大きく、突起部72よりやや小さい径の多数の孔73が、吸脱着孔71と同じパターンで形成されている。
【0051】
まず、図16(1)に示すように、吸脱着孔71およびこれと対応する孔73の中心が同軸になるように、吸脱着用フィルター70の上に整列フィルター74を重ねあわせる。次に、これに振動を与え、吸脱着用フィルター70側の空気を減圧しながら、多数の球状素子7を整列フィルター74上に転がす。これにより、吸脱着孔71に素子7が吸引されて、図16(2)のように、全ての孔73に素子7が嵌まり込む。残余の素子は整列フィルター74と吸脱着用フィルター70を傾けることにより除去される。このようにして、吸脱着用フィルターの孔73に素子7がランダムな姿勢で配置される。ここでは、図11(b)に示すように、電極5の周辺部に磁性体部6bを設けた素子7Bを使用している。図11(a)に示す素子を使用することもできる。
【0052】
次に、ランダムな姿勢で配置された素子に所定方向から磁場を印加することにより、電極が所定方向を向くように姿勢を整える。ここで、球状素子に磁場を印加する好ましい方法の1つは、複数の直方体の磁石が平行に接合して構成される板状の磁石集合体を用いる。この磁石集合体における隣接する磁石の接合面に垂直な平面から素子に向けて磁場を印加し、その磁石の接合部からの吸引力により、素子の磁性体部を引き寄せ、所定方向を向くように姿勢を整える。磁石を集合させて使用することで、単体の磁石を分離して使用する場合よりも強い磁力が磁石接合部から得られる。磁石としては、フェライト磁石、Ni−Fe−B磁石、Sm−Co磁石などの永久磁石を用いることができる。
【0053】
ここでは、図17に示すように、断面が四角形の細長い複数の磁石81を接合させた磁石集合体88を備えた複合磁石体80を用いる。磁石集合体は、隣接する磁石81Aおよび81Bが接合している面に、垂直な平面において、異極性の磁極が交互に配列されるように構成されている。この磁石集合体の一方の面に、磁石集合体の吸引力により板状のバックヨーク(継鉄)89が吸着し、両者が一体化されて複合磁石体80が構成されている。この継鉄89の作用により、磁石集合体88の他方の面(磁力発生面)の磁石接合部82の吸引力が一層高められる。
次に、素子7Bが配置された図16(2)の部材の縁部にスペーサ75を配置し、これに、上記複合磁石体80の磁力発生面を図17(1)のように近接させる。この際、複合磁石体80の磁力発生面の磁石接合部82が、整列用フィルター74の孔73の中心部と対向するように位置合わせする。
【0054】
次いで、複合磁石体80を垂直に押し下げてスペーサ75上に配置することにより、素子7Bに磁場を印加し、磁石接合部82から孔73の中心部、即ち、素子7Bの中心部に向けて吸引力を作用させる。同時に、吸脱着用フィルター70の裏側の空気を加圧し、吸脱着孔71から素子7Bに浮力を与える。電極5が孔73の横方向や下方向に向く姿勢で配置されている素子の磁性体部6bに作用する吸引力は弱いので、磁石接合部82に磁性体部6bが吸着されにくい。しかし、どのような姿勢で配置されている素子であっても、上記の浮力によって孔73の中で浮動させることにより、磁性体部6bが孔73の上方向に向くときがあり、そのときには十分な吸引力が作用するので、磁性体部6bを磁石接合部82に吸着させることができる。これにより、全ての素子7Bが、図17(2)のように、電極5および磁性体部6bが上向きになるように姿勢が制御される。
【0055】
次いで、吸脱着用フィルター70の裏側の空気を減圧し、吸着された素子7Bをそのままの姿勢で複合磁石体80から脱着させ、吸脱着孔71に吸着させる。これにより、図17(3)のように、全ての素子が吸脱着用フィルターの吸脱着孔71内に所定の姿勢に整列される。その後、減圧状態を維持したまま、複合磁石体80を取り除き、さらに、整列フィルター74を真上方向に引き上げて、素子を吸着させた吸脱着用フィルター70から整列フィルター74を分離する。このようにして、図17(4)に示すように、全ての素子が吸脱着用フィルター70の所定位置に所定の姿勢で配置される。
【0056】
次に、図17(4)のように、吸脱着用フィルター70の孔71に吸着された素子を支持体10に装着する工程を図18により説明する。
まず、図18(1)のように、凹部11の孔12の縁部に導電性接着剤13を塗着した支持体10の下方に、吸脱着用フィルター70をその孔71の中心が支持体10の孔12の中心に対応するように、近接させる。次いで、支持体10を押し下げて吸脱着用フィルター70上に重ね合わせる。これにより、素子7Bの第2半導体層2の開口部近辺が支持体の孔12に嵌合する。このとき、第2半導体層2の開口部とその内側の第1半導体の露出部4、およびその露出部に形成された電極5と磁性体部6bが、支持体10の裏面側に露出する。同時に、素子7Bは、導電性接着剤13により、第2半導体層の開口部近傍の外周部が支持体の孔12の縁部に接着される。こうして、図18(2)に示すように、支持体10の全ての凹部11に、素子7Bがそれぞれ一個ずつ所定の姿勢で固定される。
【0057】
素子の固定を一層確実に行うためには、図18(3)に示すように、支持体10をそのままの位置に固定し、吸脱着用フィルター70の裏側から空気加圧し、孔71から素子7Bを押し上げる工程を設けてもよい。この後、熱処理することにより、導電性接着剤が固化し、素子7Bが固定され、同時に第2導電体である支持体10と第2半導体層2が電気的に接続される。
以上には、支持体に導電性接着剤を塗着してから、姿勢を整えた素子を支持体に装着することにより、素子の固定および第2半導体層と支持体との電気的な接続を行う好ましい例を示した。この他、姿勢を整えた素子を支持体の所定の位置に配置し、その後に素子の第2半導体層と支持体とを接続する導電性接着剤を塗着することもできる。
【0058】
5)支持体の裏面側に、導電性金属シートおよび電気絶縁層を接合する工程(5)
本工程では、前の工程(4)で球状素子が所定位置に固定された支持体の裏面側に、導電性金属シートおよびこの導電性金属シートと支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する。この導電性金属シートは、素子の第1半導体の電極を相互に並列に接続する第1導電体として機能する。電気絶縁層は、第1半導体側(第1半導体および第1導電体層)と第2半導体層側(第2半導体層および第2導電体層)とを電気的に絶縁する。
好ましい方法においては、まず、支持体の裏面に、孔から露出している素子の部分も含めて、電気絶縁性の接着剤層を形成し、その上側に、電気絶縁層を導電性金属シートの片面に接合して一体化した複合シートを配置してその電気絶縁層側を支持体に接合する。
【0059】
電気絶縁性の接着剤層を高速で形成する方法としては、スクリーン印刷法、スプレー法、オフセット印刷法、インクジェット法などにより、ペースト状の接着剤を塗布する手法がある。電気絶縁性接着剤の材料としては、エポキシ系、ポリイミド系、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系などの各種の樹脂を用いることができる。コスト面および作業性を重視すれば、エポキシ系樹脂を用いるのが最も好ましい。これらの樹脂材料を有機溶媒や水に溶解または分散させて、塗着用ペーストを調製する。
スクリーン印刷法、オフセット印刷法は、高速で印刷ができるというメリットがある。これらの印刷法により、後の電気絶縁層を有する金属シートの接着に好都合な接着剤層を均一に形成することが好ましい。スプレー法は、設備の簡便性、生産性などの面から最も好ましく、低コストで接着剤層を形成できる。
【0060】
複合シートは、電気絶縁性シートと導電性金属シートとを貼り合わせたものが用いられる。電気絶縁性シートの材料としては、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリエーテルサルホン系、ポリエーテルエーテルケトン系、芳香族ポリアミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルイミド系およびフッ素系などの樹脂を用いることができる。金属シートは、アルミニウム箔が好適に用いられるが、他の金属、例えば銅箔、ニッケル箔などを用いることもできる。金属シートは、第1導電体層として働くに足る低電気抵抗を有することが好ましく、厚みは10〜100μm、電気絶縁層は厚み10〜100μmが好ましい。好ましい複合シートの例は、厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムからなる電気絶縁層に厚み20μmのアルミニウムシートを貼り合わせたものである。
【0061】
本工程を図9Aおよび図9Bにより説明する。
図9A(1)は、工程(5)により、支持体10の孔12の縁部に導電性接着剤13により素子7が固定された状態を示している。次に、図9A(2)のように、支持体10の裏面側に電気絶縁性接着剤を塗布して接着剤層14を形成する。次いで、金属シート16に電気絶縁層17を形成した複合シート15を支持体10の接着剤層14を形成した側に配置し、両者間を減圧にしながら複合シート15の電気絶縁層16側を支持体10に接合する。複合シート15は、図9B(4)のように、素子7が固定されている部分を中心としてその周囲に対応する部分の接着剤層14に密着する。
【0062】
図示の例では、支持体10の裏面は、凹部11に対応して孔12の部分が頂部となるように膨らんでいる。したがって、隣接する凹部と凹部との間の隔壁の裏面では、接着剤は塗着されているが、電気絶縁層17は密着していない。
上記のように、接着剤層14を塗布した後、電気絶縁層17を有する金属シート16を接合する方法によると、支持体10が薄い金属シートから構成されている場合、凹部と凹部との間の隔壁の裏面に接着剤が塗布される。この接着剤層は、支持体の前記隔壁を補強する効果を発揮する。また、接着剤層は、支持体の孔の部分に接着されている素子を支持体により強固に固定するのに役立つ。
【0063】
電気絶縁層17と導電性金属シート16が一体化された複合シート15を支持体10に接合する他の方法は、電気絶縁層17に接着剤を塗布し、その塗布面を支持体10の裏面に貼り付ける方法である。電気絶縁層17に熱接着性の樹脂材料を用いることもできる。これらの方法によると、支持体の凹部間の隔壁の裏面には、接着剤層が密着しない。
上記のようにして電気絶縁層を有する金属シートを接合した後、必要に応じて、接着剤の固化ないし硬化のための熱処理を施す。
また、電気絶縁層と導電性金属シートは、あらかじめ一体化されている必要はなく、電気絶縁層として前記絶縁性シートや絶縁性接着剤層を支持体裏面に接合させた後、この電気絶縁層に前記の導電性金属シートを接合させてもよい。
【0064】
6)電気絶縁層および導電性金属シートに孔をあけて光電変換素子の電極を露出させる工程(6)
本工程では、第1導電体層として働く金属シートと素子7の電極5とを電気的に接続するための導電路となる孔を形成する。
図9B(4)の状態において、素子7の第1半導体1の電極5を露出させるために、孔12の中央に対応する部分にレーザを照射し、金属シート16、電気絶縁層17および接着剤層14を部分的に除去し、孔18を形成する(図9B(5))。レーザ照射用装置として出力12WのYAGレーザを用い、約0.017秒の照射時間で直径約100〜150μmの照射部領域の電気絶縁層および導電性金属シートを除去することができる。
レーザにより金属シートなどに孔をあける方法は、図11(a)に示すように、電極5上に磁性体部6を形成した素子7Aを用いる場合に適用することもできる。すなわち、適切な条件でレーザを照射すると、被照射部の金属シート16、電気絶縁層17および接着剤層14とともに磁性体部6を同時に除去することができる。磁性体部6は、図16および図17により説明したように、素子の姿勢を整える際には有効であるが、電極5に比べると一般的に電気的抵抗が大きい。従って、磁性体部6が金属シート16と電極5とを低電気抵抗で接続するための妨げになる場合がある。そのような場合は、導電性ペーストにより金属シートと電極とを接続する前に、磁性体部6を除去することが好ましい。
【0065】
7)電気絶縁層および導電性金属シートの孔に導電性ペーストを充填して素子の電極と導電性金属シートとを電気的に接続する工程(7)
本工程では、前記の工程(6)で形成した孔18に、導電性のペースト19を充填し、金属シート16と電極5とを電気的に接続する(図9B(6))。
ここに用いる導電性ペーストは、電気絶縁層が変形・変質などのダメージを受けない温度下で固化するものを選択することが好ましい。一般的には、100〜200℃という比較的低い熱処理温度で固化できる樹脂型導電性ペーストを用いることが好ましい。電気絶縁層が、高融点ガラスやフッ素系樹脂など比較的耐熱性が優れた材料からなる場合には、低温ガラスフリット型導電性ペーストも使用できる。導電性ペーストの塗布方法としては、ディスペンサー法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、およびスプレー法がある。
【0066】
以上のようにして得られる本発明の光電変換装置においては、球状の光電変換素子が支持体の凹部内の所定位置に強固に固定され、さらに、支持体に固定された全ての素子の第1半導体と第2導電体層、第2半導体層と第2導電体層とが確実に電気的に接続される。
本発明による光電変換装置は、一定数の素子を固定したユニットとして作製される。そのようなユニットは、直列または並列に接続することにより、所定の電圧の所定の電力を取り出せる太陽電池装置として利用することができる。
光電変換装置のユニット同士を直列に接続する例を以下に説明する。
ここに用いた光電変換装置ユニットは、支持体が方形で、所定数の光電変換素子を支持した支持部と、その支持部を囲む鍔部とを有する。各光電変換装置ユニットは、その鍔部の一辺の支持体の部分、およびこれと対向する辺の鍔部裏面に露出する導電性金属シートの部分が接続部となる。
【0067】
図19は、直径約1mmの光電変換素子を約1800個固定した支持体を有する光電変換装置のユニットを示す。このユニット100は、サイズが50×150mmである。このユニットは、その周縁部が、支持体10、並びに接着剤層14により接合された電気絶縁層17および導電性金属シート16からなる。このユニットの短辺側の縁部103および104は、前記の4層からなっている。長辺側の一方の縁部101の端は、支持体10、接着剤層14および電気絶縁層17が取り除かれ、金属シート16が表側に露出している。他方の縁部102の端は、裏側の接着剤層14、電気絶縁層17および金属シート16が取り除かれ、支持体10のみからなっている。
【0068】
このようなユニットの複数を、図20のように、それらの縁部101と102とを重ね合わせ、スポット溶接、超音波溶接またはレーザ溶接などにより相互に接続することにより、ユニット同士を直列に接続することができる。
図21は、縁部101の端が支持体10のみ除かれている例を示す。この例では、金属シート16の上に電気絶縁層17および接着剤層14を有しているので、図左側のユニットの金属シート16に、右側のユニットの支持体10を接続するには、支持体10側から超音波またはレーザを照射する溶接法をとる。図20および図21はユニット同士を直列に接続する例を示しているが、隣接するユニットの支持体同士および金属シート同士を溶接することにより、ユニットを並列に接続することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明による光電変換装置は、特に太陽電池として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態における、第1半導体の露出部に電極を有する光電変換素子を作製する工程を示す縦断面図である。
【図2】第1半導体の露出部に電極を有する光電変換素子の底面図である。
【図3】本発明の実施形態における支持体の平面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】支持体に導電性接着剤を印刷する様子を示す縦断面図である。
【図6】導電性接着剤の印刷に用いるメタルスクリーンの平面図である。
【図7】導電性接着剤を印刷された支持体の縦断面図である。
【図8】支持体に光電変換素子を装着した状態を示す断面図である。
【図9A】支持体の裏面に電気絶縁層と導電性金属シートとの複合シートを接合する工程の前半を示す縦断面図である。
【図9B】支持体の裏面に電気絶縁層と導電性金属シートとの複合シートを接合する工程の後半を示す縦断面図である。
【図10】第1半導体の露出部を形成した素子の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の光電変換素子の他の実施形態の例を示す縦断面図である。
【図12】本発明の支持体の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図13】本発明の支持体のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【図14】本発明の支持体のさらに他の実施形態を示す縦断面図である。
【図15A】本発明の実施形態において素子の姿勢を整えて支持体に装着する工程の前半を示す縦断面図である。
【図15B】本発明の実施形態において素子の姿勢を整えて支持体に装着する工程の後半を示す縦断面図である。
【図16】本発明の他の実施形態において素子の姿勢を整える工程の前半を示す縦断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態において素子の姿勢を整える工程の後半を示す縦断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態において姿勢を整えた素子を支持体に装着する工程を示す縦断面図である。
【図19】本発明による光電変換装置のユニットを示す平面図である。
【図20】本発明による光電変換装置のユニットを直列に接続する例を示す要部を断面にした側面図である。
【図21】本発明による光電変換装置のユニットを直列に接続する他の例を示す要部を断面にした側面図である。
【符号の説明】
【0071】
1 第1半導体
2 第2半導体層
3 第2半導体層の開口部
4 第1半導体の露出部
5 電極
6、6b 磁性体層
7、7A、7B 光電変換素子
8 反射防止膜
10 支持体
11 凹部
12 孔
13 導電性接着剤
14 電気絶縁性接着剤層
15 複合シート
16 導電性金属シート
17 電気絶縁層
18 削孔により形成された孔
19 導電性ペースト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、前記第2半導体層が前記第1半導体の一部を露出させる開口部を有する複数のほぼ球状の光電変換素子を用意する工程、
(2)前記第1半導体の露出部に電極を形成する工程、
(3)前記光電変換素子を内部に配置するための隣接する複数の凹部を有し、前記凹部が底部に前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を有する導電性の支持体を用意する工程、
(4)前記光電変換素子を、その第1半導体の露出部が前記孔から支持体の裏面側に臨むように、支持体の表面側から前記孔に嵌合して支持体に装着し、前記光電変換素子の第2半導体層を前記支持体に電気的に接続する工程、
(5)前記支持体の裏面側に、導電性金属シートおよび前記導電性金属シートと前記支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する工程、
(6)前記支持体に接合された電気絶縁層および導電性金属シートに孔をあけて前記光電変換素子の電極を当該孔内に露出させる工程、および
(7)前記孔に導電性ペーストを充填して前記電極と前記導電性金属シートとを電気的に接続する工程
を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(5)が、支持体の裏面側に、導電性金属シートの片面に電気絶縁層が接合して一体化された複合シートを、その電気絶縁層を支持体に向けて接合することからなる請求項1記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において用意される光電変換素子が、第2半導体層の外表面を被覆する反射防止膜をさらに有する請求項1または2記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(4)が、複数の前記光電変換素子を前記支持体の孔に対応した保持部を有する光電変換素子担持体に、前記光電変換素子の第1半導体の露出部が所定方向を向くように姿勢を整えて配列する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(4)が、前記支持体における前記孔の縁部に、導電性接着剤を塗着する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(5)が、前記支持体の裏面側に、電気絶縁性の接着剤を塗布する工程、および前記複合シートをその電気絶縁層を前記支持体の前記接着剤層に向けて接合する工程からなる請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項7】
球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層が第1半導体の一部を露出させる開口部を有し、前記第1半導体の露出部に電極が形成されたほぼ球状の複数の光電変換素子、
前記光電変換素子を個々に取り付ける複数の凹部を有し、前記第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層を兼ねる支持体であって、前記凹部が、前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を底部に有する支持体、ならびに
前記支持体の裏面側に電気絶縁層を介して接合された導電性金属シート、
を備え、前記導電性金属シートは、電気絶縁層および導電性金属シートに設けられた孔に充填されている導電材により前記各電極と電気的に接続されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
所定数の前記光電変換素子を支持した支持部と、その支持部を囲む鍔部とを有する光電変換装置ユニットの複数からなり、1つの光電変換装置ユニットの鍔部の前記支持体と、隣接する光電変換装置ユニットの鍔部の裏面に露出する前記導電性金属シートとが電気的に接続されている請求項7記載の光電変換装置。
【請求項1】
(1)球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、前記第2半導体層が前記第1半導体の一部を露出させる開口部を有する複数のほぼ球状の光電変換素子を用意する工程、
(2)前記第1半導体の露出部に電極を形成する工程、
(3)前記光電変換素子を内部に配置するための隣接する複数の凹部を有し、前記凹部が底部に前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を有する導電性の支持体を用意する工程、
(4)前記光電変換素子を、その第1半導体の露出部が前記孔から支持体の裏面側に臨むように、支持体の表面側から前記孔に嵌合して支持体に装着し、前記光電変換素子の第2半導体層を前記支持体に電気的に接続する工程、
(5)前記支持体の裏面側に、導電性金属シートおよび前記導電性金属シートと前記支持体とを隔離する電気絶縁層を接合する工程、
(6)前記支持体に接合された電気絶縁層および導電性金属シートに孔をあけて前記光電変換素子の電極を当該孔内に露出させる工程、および
(7)前記孔に導電性ペーストを充填して前記電極と前記導電性金属シートとを電気的に接続する工程
を有することを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項2】
前記工程(5)が、支持体の裏面側に、導電性金属シートの片面に電気絶縁層が接合して一体化された複合シートを、その電気絶縁層を支持体に向けて接合することからなる請求項1記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(1)において用意される光電変換素子が、第2半導体層の外表面を被覆する反射防止膜をさらに有する請求項1または2記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(4)が、複数の前記光電変換素子を前記支持体の孔に対応した保持部を有する光電変換素子担持体に、前記光電変換素子の第1半導体の露出部が所定方向を向くように姿勢を整えて配列する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
前記工程(4)が、前記支持体における前記孔の縁部に、導電性接着剤を塗着する工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(5)が、前記支持体の裏面側に、電気絶縁性の接着剤を塗布する工程、および前記複合シートをその電気絶縁層を前記支持体の前記接着剤層に向けて接合する工程からなる請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換装置の製造方法。
【請求項7】
球状の第1半導体およびその表面を被覆する第2半導体層からなり、第2半導体層が第1半導体の一部を露出させる開口部を有し、前記第1半導体の露出部に電極が形成されたほぼ球状の複数の光電変換素子、
前記光電変換素子を個々に取り付ける複数の凹部を有し、前記第2半導体層と電気的に接続される第2導電体層を兼ねる支持体であって、前記凹部が、前記第2半導体層の開口部より大きいが前記光電変換素子より小さい孔を底部に有する支持体、ならびに
前記支持体の裏面側に電気絶縁層を介して接合された導電性金属シート、
を備え、前記導電性金属シートは、電気絶縁層および導電性金属シートに設けられた孔に充填されている導電材により前記各電極と電気的に接続されていることを特徴とする光電変換装置。
【請求項8】
所定数の前記光電変換素子を支持した支持部と、その支持部を囲む鍔部とを有する光電変換装置ユニットの複数からなり、1つの光電変換装置ユニットの鍔部の前記支持体と、隣接する光電変換装置ユニットの鍔部の裏面に露出する前記導電性金属シートとが電気的に接続されている請求項7記載の光電変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2007−27497(P2007−27497A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208877(P2005−208877)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー二十一 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(502139910)株式会社クリーンベンチャー二十一 (33)
【Fターム(参考)】
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