説明

光電変換装置及び光発電装置

【課題】 耐候性(光劣化や熱劣化)の問題を大幅に軽減しまたは解消し得る薄膜型非晶質シリコン系の光電変換装置を提供すること。
【解決手段】 光電変換装置は、透光性基板2と、透光性基板2の一主面に形成された透光性導電層3と、透光性導電層3上に形成された第1導電型非晶質シリコン半導体層4と、第1導電型非晶質シリコン半導体層4上に形成された真性型非晶質シリコン半導体層5と、真性型非晶質シリコン半導体層5上に形成された第2導電型非晶質シリコン半導体層6と、第2導電型非晶質シリコン半導体層6上に複数の島状に形成された触媒層7及び触媒層7間に形成されたシランカップリング層8と、触媒層7及びシランカップリング層8と間隔をあけて対向するよう配置された対極側構造体20と、触媒層7及びシランカップリング層8と対極側構造体20の間に設けられた電荷輸送層9とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光電変換効率が得られ、耐候性に優れ、しかも低コスト化に製造可能な光電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン結晶板を用いた通常のバルク型結晶系のシリコン太陽電池は、シリコン結晶板の厚みが300μm程度と厚いために、資源の有限性と材料コストの問題点がある上に、その結晶化のために1000℃以上の高温処理が必要であるというプロセスコストの問題点がある。その上、一つの発電セルを構成するシリコン結晶板のサイズ(約15cm角)には限界があるので、多数の発電セルを用いて大型(メートルオーダーのサイズ)のモジュールの作製に要するアセンブルコストがかかる。
【0003】
それに対して、非晶質(アモルファス)シリコン薄膜を用いた薄膜型アモルファスシリコン系の太陽電池は、厚み約0.3μmと非常に薄い非晶質シリコン薄膜と低温プロセス(約300℃)、そして自由サイズの大きな基板を用いることができることにより、上記の問題点がほとんど解消できる。
【0004】
従来、薄膜型アモルファスシリコン系の太陽電池は、ITO層から成る透明電極とアルミニウム等から成る金属電極を背面電極として積層させている。しかしながら、薄膜型アモルファスシリコン系の太陽電池は、非晶質シリコン薄膜は、製膜条件、基板の前処理、及び背面電極の形成時のダメージなどにより、ピンホールが形成され易い。ピンホールを通じて、背面電極である金属電極が、積層時に非晶質シリコン薄膜の基板となる透明導電性基板の透明電極と接触し、シャント抵抗を減少させることによるリーク電流の原因となり、出力の低下を引き起こす。特に、大面積のモジュールにおいては、リーク電流の発生が顕著となり、光電変換効率の低下、モジュールの出力低下を引き起こす。
【非特許文献1】ケミカルレター 第35版 (2006年) 第956頁(Chem. Lett. 35 (2006) p956)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリコン等の半導体と液状電解質を用いた湿式太陽電池における半導体特性の劣化については、従来より言及されており、その耐久性及び信頼性の向上は太陽電池等の新エネルギー開発にとって大きな課題である。
【0006】
単結晶シリコン太陽電池にPt触媒粒子を電解析出した光電変換素子についての耐久性及び信頼性の向上の研究は既に報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この光電変換素子は劣化が激しく、その耐久性及び信頼性が低いために、Pt触媒粒子の隙間にビニル基もしくはアルキル基を導入することによって劣化を防ぐことが試みられた。しかし、非特許文献1によると、24時間までの耐久性及び信頼性(光電変換効率の保持率22%)を示したのみにとどまる。
【0007】
従って、本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、耐候性(光劣化や熱劣化)の問題を大幅に軽減しまたは解消し得る薄膜型非晶質シリコン系の光電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換装置は、透光性基板と、前記透光性基板の一主面に形成された透光性導電層と、前記透光性導電層上に形成された第1導電型非晶質シリコン半導体層と、前記第1導電型非晶質シリコン半導体層上に形成された真性型非晶質シリコン半導体層と、前記真性型非晶質シリコン半導体層上に形成された第2導電型非晶質シリコン半導体層と、前記第2導電型非晶質シリコン半導体層上に複数の島状に形成された触媒層及び前記触媒層間に形成されたシランカップリング層と、前記触媒層及び前記シランカップリング層と間隔をあけて対向するよう配置された対極側構造体と、前記触媒層及び前記シランカップリング層と前記対極側構造体の間に設けられた電荷輸送層とを具備していることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記シランカップリング層は、ジアミノ基,アクリロキシプロピル基またはビニル基を有していることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記電荷輸送層は液状電解質であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記対極側構造体は、金属基板または透明導電性基板と、その上に形成された他の触媒層とを有していることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記対極側構造体は、色素増感された多孔質の半導体層を有する光電変換体を有していることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記対極側構造体は、Cu(In,Ga)Se2層を有する光電変換体を有していることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記対極側構造体は、結晶シリコン層を有する光電変換体を有していることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、前記触媒層は、白金,パラジウム,ロジウム,カーボン及びポリチオフェンのうちの少なくとも1種から成ることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の光発電装置は、上記本発明の光電変換装置を発電手段として用い、前記発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光電変換装置は、透光性基板と、透光性基板の一主面に形成された透光性導電層と、透光性導電層上に形成された第1導電型非晶質シリコン半導体層と、第1導電型非晶質シリコン半導体層上に形成された真性型非晶質シリコン半導体層と、真性型非晶質シリコン半導体層上に形成された第2導電型非晶質シリコン半導体層と、第2導電型非晶質シリコン半導体層上に複数の島状に形成された触媒層及び触媒層間に形成されたシランカップリング層と、触媒層及びシランカップリング層と間隔をあけて対向するよう配置された対極側構造体と、触媒層及びシランカップリング層と対極側構造体の間に設けられた電荷輸送層とを具備していることから、シランカップリング層が第2導電型非晶質シリコン半導体層の表面に吸着し、触媒層が電解質によって化学的にエッチングされるのを防ぎ、また接着強度を高めて機械的に安定化させるように働く。その結果、触媒層の光照射及び高温加熱に対する耐久性及び信頼性を保持できるものとなる。また、触媒層は島状に形成されたものでよく、薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体の短所であるピンホールによる短絡不良を回避する効果がある。
【0018】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、シランカップリング層は、ジアミノ基,アクリロキシプロピル基またはビニル基を有していることから、触媒層の光照射及び高温加熱に対する耐久性及び信頼性をより有効に保持できる。
【0019】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、電荷輸送層は液状電解質であることから、触媒層を劣化させ易いが電荷の輸送特性に優れる液状電解質を、触媒層の劣化を抑えて使用することができる。即ち、シランカップリング層によって触媒層が化学的及び機械的に安定化するため、触媒層が液状電解質によって劣化し難いものとなるとともに、電荷の輸送特性に優れる液状電解質を用いることによって光電変換効率が向上する。
【0020】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、対極側構造体は、金属基板または透明導電性基板と、その上に形成された他の触媒層とを有していることから、対極側構造体からの出力を金属基板または透明導電性基板によって効率的に取り出すことができる。
【0021】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、対極側構造体は、色素増感された多孔質の半導体層を有する光電変換体を有していることから、第1導電型非晶質シリコン半導体層と真性型非晶質シリコン半導体層と第2導電型非晶質シリコン半導体層を含む薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体が短波長(300〜600nm程度)感度に優れ、色素増感された多孔質の半導体層を有する光電変換体が長波長(600〜900nm程度)感度に優れる。その結果、広い波長範囲(300〜900nm程度)にわたって光電変換が可能な光電変換装置となる。
【0022】
また、対極側構造体がPt層等の他の触媒層を含む場合には、他の触媒層が電荷輸送層と色素増感型の光電変換体とをオーミックコンタクトさせるオーミックコンタクト層として機能し、薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体と色素増感型の光電変換体との電気的な短絡を回避することができる。その結果、高い品質を有する積層型(タンデム型)光電変換装置を、高い生産性で製造することが可能となる。
【0023】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、対極側構造体は、Cu(In,Ga)Se2層を有する光電変換体を有していることから、第1導電型非晶質シリコン半導体層と真性型非晶質シリコン半導体層と第2導電型非晶質シリコン半導体層を含む薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体が短波長(300〜700nm程度)感度に優れ、Cu(In,Ga)Se2層を有する光電変換体が長波長(700〜1100nm程度)感度に優れる。その結果、広い波長範囲(300〜1100nm程度)にわたって光電変換が可能な光電変換装置となる。
【0024】
また、対極側構造体がPt層等の他の触媒層を含む場合には、他の触媒層が電荷輸送層とCu(In,Ga)Se2層を有する光電変換体とをオーミックコンタクトさせるオーミックコンタクト層として機能し、薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体とCu(In,Ga)Se2層を有する光電変換体との電気的な短絡を回避することができる。その結果、高い品質を有する積層型(タンデム型)光電変換装置を、高い生産性で製造することが可能となる。
【0025】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、対極側構造体は、結晶シリコン層を有する光電変換体を有していることから、第1導電型非晶質シリコン半導体層と真性型非晶質シリコン半導体層と第2導電型非晶質シリコン半導体層を含む薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体が短波長(300〜700nm程度)感度に優れ、結晶シリコン層を有する光電変換体が長波長(400〜1000nm程度)感度に優れる。その結果、広い波長範囲(300〜1000nm程度)にわたって光電変換が可能な光電変換装置となる。
【0026】
また、対極側構造体がPt層等の他の触媒層を含む場合には、他の触媒層が電荷輸送層と結晶シリコン層を有する光電変換体とをオーミックコンタクトさせるオーミックコンタクト層として機能し、薄膜型非晶質シリコン系の光電変換体と結晶シリコン層を有する光電変換体との電気的な短絡を回避することができる。その結果、高い品質を有する積層型(タンデム型)光電変換装置を、高い生産性で製造することが可能となる。
【0027】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、触媒層は、白金,パラジウム,ロジウム,カーボン及びポリチオフェンのうちの少なくとも1種から成ることから、電荷輸送層(電解質層)と第2導電型非晶質シリコン半導体層との間の電荷の授受を容易にするというという効果、即ち過電圧を低くするという効果を奏する。
【0028】
また、本発明の光発電装置は、上記本発明の光電変換装置を発電手段として用い、発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことから、耐久性及び信頼性が向上したものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の光電変換装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0030】
図1及び図2はそれぞれ、本発明の光電変換装置の実施の形態の例を示す断面図である。図1において、1は入射光、2はガラスやプラスチックから成る透光性基板、3はITO層等から成る透光性導電層、4は第1導電型(p型)非晶質シリコン半導体層、5は真性型(i型)非晶質シリコン層、6は第2導電型(n型)非晶質シリコン半導体層、7は触媒層、8はシランカップリング層、9は電荷輸送層である。
【0031】
また、10は多孔質の半導体層、11は増感色素、12は対極側構造体20側の他の透光性基板、13は対極側構造体20側の他の透光性導電層である。対極側構造体20は、透光性基板12、透光性導電層13、多孔質の半導体層10、増感色素10から成る。
【0032】
本発明の光電変換装置は、透光性基板2と、透光性基板2の一主面に形成された透光性導電層3と、透光性導電層3上に形成された第1導電型非晶質シリコン半導体層4と、第1導電型非晶質シリコン半導体層4上に形成された真性型非晶質シリコン半導体層5と、真性型非晶質シリコン半導体層5上に形成された第2導電型非晶質シリコン半導体層6と、第2導電型非晶質シリコン半導体層6上に複数の島状に形成された触媒層7及び触媒層7間に形成されたシランカップリング層8と、触媒層7及びシランカップリング層8と間隔をあけて対向するよう配置された対極側構造体20と、触媒層7及びシランカップリング層と対極側構造体20の間に設けられた電荷輸送層8とを具備している構成である。
【0033】
透光性基板2は、ガラスやプラスチックから成り、厚みは0.1〜5mm程度である。
【0034】
透光性導電層3は、ITO,酸化スズ等から成り、厚みは0.3〜2μm程度がよい。0.3μm未満では、シート抵抗が高くなり、光電変換装置のシリーズ抵抗が高くなるためFF特性が悪くなる。2μmを超えると、表面の凹凸が第1導電型非晶質シリコン半導体層4の厚みよりも大きくなり、第1導電型非晶質シリコン半導体層4で透光性導電層3の全面を安定にカバーするのが困難となる。透光性導電層3はCVD法等によって形成される。
【0035】
第1導電型非晶質シリコン半導体層4は、厚みは5〜30nm程度がよい。5nm未満では、開放電圧が低下する。30nmを超えると、短絡電流を低下させる。第1導電型非晶質シリコン半導体層4はプラズマCVD法等によって形成される。
【0036】
真性型非晶質シリコン半導体層5は、厚みは50〜800nm程度がよい。50nm未満では、透過する光を電気に変換する量が少なく、短絡電流が小さくなる。800nmを超えると、形成される内部電場が小さくなるので発生キャリアの収集効率が低下する。真性型非晶質シリコン半導体層5はプラズマCVD法等によって形成される。
【0037】
第2導電型非晶質シリコン半導体層6は、厚みは5〜50nm程度がよい。5nm未満では、開放電圧が低下する。50nmを超えると、光電変換装置のシリーズ抵抗が増大する。第2導電型非晶質シリコン半導体層6はプラズマCVD法等によって形成される。
【0038】
触媒層7は、第2導電型非晶質シリコン半導体層6上に複数の島状に形成されるが、その厚みは0.5〜20nm程度がよい。0.5nm未満では、島状の触媒層7同士の間の距離が離れすぎて、触媒効果が得られにくくなる。20nmを超えると、透過光量が低下するとともに、第2導電型非晶質シリコン半導体層6の全面が触媒層(金属層)7で被覆されるため、電荷輸送層9と第2導電型非晶質シリコン半導体層6との短絡を回避する効果が低減されてしまう。触媒層7は、スパッタリング法等によって形成されるが、複数の島状に形成するには、上記のように、極めて薄い厚みに形成するにとどめるという操作を行って実現することができる。
【0039】
シランカップリング層8は、厚みは0.1〜3nm程度の1分子層程度の厚みがよい。0.1nm未満では、非晶質シリコン半導体層の酸化による劣化を抑えることが難しくなる。3nmを超えると、触媒層7を完全に覆うことによって触媒層7が不活性化することになる。
【0040】
シランカップリング層8は、透光性導電層3、第1導電型非晶質シリコン半導体層4、真性型非晶質シリコン半導体層5、第2導電型非晶質シリコン半導体層6、及び触媒層7が形成された透光性基板2を、シランカップリング剤の溶液に浸漬する方法等によって形成できる。この場合、透光性基板2のシランカップリング層8が形成される部位以外の部位をマスクで覆った状態で浸漬することが好ましい。
【0041】
本発明の光電変換装置は好ましくは、シランカップリング層8は、ジアミノ基,アクリロキシプロピル基またはビニル基を有している。この構成により、触媒層7の光照射及び高温加熱に対する耐久性及び信頼性をより有効に保持できる。即ち、触媒層7が光照射及び高温加熱によって第2導電型非晶質シリコン半導体層6から剥離するのを有効に抑えることができる。
【0042】
ジアミノ基(R−NH−CH−CH−NH)は、触媒層7を成すPt等と結合する機能性置換基であり、触媒層7を化学的及び機械的により安定化させるように働く。その結果、触媒層7が光照射及び高温加熱によって第2導電型非晶質シリコン半導体層6から剥離するのをより有効に抑えることができる。
【0043】
シランカップリング層8がジアミノ基を含む場合、その含有量は2重量%以上がよい。2重量%未満では、触媒層7の安定化が難しくなる。
【0044】
また、アクリロキシプロピル基(R−C−O−CO−CH=CH),ビニル基(R−CH=CH)は、シランカップリング剤同士でポリマー化するように働く機能性置換基であり、シランカップリング層8を化学的及び機械的により強固にかつ安定化させるように働く。その結果、触媒層7が光照射及び高温加熱によって第2導電型非晶質シリコン半導体層6から剥離するのをより有効に抑えることができる。
【0045】
シランカップリング層8がアクリロキシプロピル基を含む場合、その含有量は10重量%以上がよい。10重量%未満では、第2導電型非晶質シリコン半導体層6の表面においてシランカップリング層8がポリマー化し難くなる。
【0046】
シランカップリング層8がビニル基を含む場合、その含有量は10重量%以上がよい。10重量%未満では、第2導電型非晶質シリコン半導体層6の表面においてシランカップリング層8がポリマー化し難くなる。
【0047】
また、本発明の光電変換装置は好ましくは、電荷輸送層9は液状電解質であることがよい。この構成により、触媒層7を劣化させ易いが電荷の輸送特性に優れる液状電解質を、触媒層7の劣化を抑えて使用することができる。即ち、シランカップリング層8によって触媒層7が化学的及び機械的に安定化するため、触媒層7が液状電解質によって劣化し難いものとなるとともに、電荷の輸送特性に優れる液状電解質を用いることによって光電変換効率が向上する。
【0048】
電荷輸送層9が液状電解質から成る場合、電荷輸送層9は、ヨウ素/ヨウ化物塩,臭素/臭化物塩,コバルト錯体及びフェロシアン化カリウム等から成る。
【0049】
また、電荷輸送層9は、ゲル電解質,ポリマー電解質等の固体電解質、ポリチオフェン・ポリピロール,ポリフェニレンビニレン等の導電性ポリマー、またはフラーレン誘導体,ペンタセン誘導体,ペリレン誘導体,トリフェニルジアミン誘導体等の有機分子電子輸送剤から成るものであってもよい。
【0050】
電荷輸送層9の厚みは0.01〜500μm程度がよい。0.1μm未満では、正極側と対極側が接してショートするおそれがある。500μmを超えると、抵抗成分である電荷輸送層9の増加による光電変換効率の低下を招き易く、また、電荷輸送層9が液状電解質である場合、液体部分の増量による封止の不具合が生じ易い。
【0051】
また、本発明の光電変換装置は、対極側構造体20は、金属基板または透明導電性基板と、その上に形成された他の触媒層とを有していることがよい。この場合、金属基板としては、チタン,モリブデン,タングステン,ニッケル等から成るものを用いることができる。透明導電性基板としては、ガラスやプラスチック基板上にITO層、酸化スズ層等を形成したものを用いることができる。
【0052】
図2は、対極側構造体20が、透明導電性基板と、その上に形成された他の触媒層を有している構成である場合を示すものである。透明導電性基板は、透光性基板12と、その上に形成されたITO層等から成る透光性導電層13とから成る。透光性導電層13上に、複数の島状に形成されたPt(白金)等から成る触媒層17が形成されている。
【0053】
また、本発明の光電変換装置は、対極側構造体20は、色素増感された多孔質の半導体層10を有する光電変換体を有していることがよい。この場合の構成(タンデム型光電変換装置)を図1に示す。
【0054】
図1に示すように、対極側構造体20側に、色素増感された多孔質の半導体層10を有する光電変換体(色素増感型光電変換体)が設けられている。色素増感型光電変換体は、他の透光性基板12、他の透光性基板12上に形成された他の透光性導電層13、他の透光性導電層13上に形成された色素増感された多孔質の半導体層10を有する。
【0055】
多孔質の半導体層10の材料や組成としては、酸化チタン(TiO)が最適であり、他の材料としては、チタン(Ti),亜鉛(Zn),スズ(Sn),ニオブ(Nb),インジウム(In),イットリウム(Y),ランタン(La),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta),ハフニウム(Hf),ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba),カルシウム(Ca),バナジウム(V),タングステン(W)等の金属元素の少なくとも1種以上の金属酸化物半導体がよく、また窒素(N),炭素(C),弗素(F),硫黄(S),塩素(Cl),リン(P)等の非金属元素の1種以上を含有していてもよい。酸化チタン等はいずれも電子エネルギーバンドギャップが可視光のエネルギーより大きい2〜5eVの範囲にあり、好ましい。また、多孔質の半導体層5は、電子エネルギー準位においてその伝導帯が増感色素4の伝導帯よりも低いn型半導体がよい。
【0056】
多孔質の半導体層10としては、二酸化チタン等からなるとともに内部に微細な空孔(空孔径が好ましくは10〜40nm程度のものであり、22nmのときに変換効率がピークを示す)を多数有する多孔質のn型酸化物半導体層等であるのがよい。多孔質の半導体層10の空孔径が10nm未満の場合、増感色素11の浸透及び吸着が阻害され、十分な増感色素11の吸着量が得られず、また、電解質の拡散が妨げられるために拡散抵抗が増大することから、光電変換効率が低下することとなる。40nmを超えると、多孔質の半導体層10の比表面積が減少するため、増感色素11の吸着量を確保するためには厚みを厚くしなければならなくなり、厚みを厚くしすぎると光が透過しにくくなり、増感色素11が光を吸収できないこと、また、多孔質の半導体層10に注入された電荷の移動距離が長くなるため電荷の再結合によるロスが大きくなること、さらに、電解質の拡散距離も増大するため拡散抵抗が増大することから、やはり光電変換効率が低下することとなる。
【0057】
多孔質の半導体層10は、粒状体、または針状体,チューブ状体,柱状体等の線状体、またはこれら種々の線状体が集合してなるものであって、多孔質体であることにより、増感色素11を吸着する表面積が増え、光電変換効率を高めることができる。多孔質の半導体層10は、空孔率が20〜80%、より好適には40〜60%である多孔質体であるのがよい。多孔質化により光作用極層としての表面積を1000倍以上に高めることができ、光吸収と光電変換と電子伝導を効率よく行うことができる。
【0058】
なお、多孔質の半導体層10の空孔率は、ガス吸着測定装置を用いて窒素ガス吸着法によって試料の等温吸着曲線を求め、BJH(Barrett-Joyner-Halenda)法,CI(Chemical Ionization)法,DH(Dollimore-Heal)法等によって空孔容積を求め、これと試料の粒子密度から得ることができる。
【0059】
多孔質の半導体層10の形状は、その表面積が大きくなりかつ電気抵抗が小さい形状がよく、例えば微細粒子もしくは微細線状体からなるのがよい。その平均粒径もしくは平均線径は5〜500nmであるのがよく、より好適には10〜200nmがよい。ここで、平均粒径もしくは平均線径の5〜500nmにおける下限値は、これ未満になると材料の微細化ができず、上限値は、これを超えると接合面積が小さくなり光電流が著しく小さくなることによる。
【0060】
また、多孔質の半導体層10を多孔質体とすることにより、これに増感色素11を吸着させて成る色素増感型光電変換体としての表面が凹凸状となり、光閉じ込め効果をもたらして、変換効率をより高めることができる。
【0061】
また、多孔質の半導体層10の厚みは0.1〜50μmがよく、より好適には1〜20μmがよい。ここで、0.1〜50μmにおける下限値は、これより厚みが小さくなると光電変換作用が著しく小さくなって実用に適さず、上限値は、これを超えて厚みが厚くなると光が透過しなくなって光が入射しなくなることによる。
【0062】
多孔質の半導体層10が酸化チタンからなる場合、以下のようにして形成される。まず、TiOのアナターゼ粉末にアセチルアセトンを添加した後、脱イオン水とともに混練し、界面活性剤で安定化させた酸化チタンのペーストを作製する。作製したペーストをドクターブレード法やバーコート法等で透光性基板12上の透光性導電層13上に一定速度で塗布し、大気中で300〜600℃、好適には400〜500℃で、10〜60分、好適には20〜40分加熱処理することにより、多孔質の半導体層10を形成する。この手法は簡便であり、好ましい。
【0063】
多孔質の半導体層10の低温成長法としては、電析法、泳動電着法、水熱合成法等がよく、電子輸送特性を良くするための後処理としては、マイクロ波処理、CVD法によるプラズマ処理や熱触媒処理等、UV照射処理等がよい。低温成長法による多孔質の半導体層10としては、電析法による多孔質ZnO層、泳動電着法による多孔質TiO層等からなるものがよい。
【0064】
また、多孔質の半導体層10の多孔質体の表面に、TiCl処理、即ちTiCl溶液に10時間浸漬し、水洗し、450℃で30分間焼成する処理を施すとよく、電子電導性がよくなって変換効率が高まる。
【0065】
また、多孔質の半導体層10と透光性基板12の間に、n型酸化物半導体の極薄の緻密層を挿入するとよく、逆電流が抑制できるので変換効率が高まる。
【0066】
また、多孔質の半導体層10は、酸化物半導体微粒子の焼結体から成るとともに、酸化物半導体微粒子の平均粒径が透光性基板12側より厚み方向に漸次大きくなっていることが好ましく、例えば多孔質の半導体層10が酸化物半導体微粒子の平均粒径が異なる2層の積層体からなるものとするのがよい。具体的には、透光性基板12側に平均粒径が小さい酸化物半導体微粒子を用い、触媒層7側に平均粒径が大きい酸化物半導体微粒子(散乱粒子)を用いることで、平均粒径が大きい多孔質の半導体層10によって光散乱と光反射による光閉じ込め効果が生じ、変換効率を高めることができる。
【0067】
より具体的には、平均粒径が小さい酸化物半導体微粒子として、平均粒径が約20nmのものを100wt%(重量%)使用し、平均粒径が大きい酸化物半導体微粒子として、平均粒径が約20nmのものを70wt%及び平均粒径が約180nmのものを30wt%混合して使用すればよい。これらの重量比、平均粒径、それぞれの膜厚を変えることで、最適な光閉じ込め効果が得られる。また、積層数を2層から複数層に増やしたり、これらの境界が生じないように塗布形成したりすることにより、平均粒径を透光性基板12側から厚み方向に漸次大きくなるように形成することができる。
【0068】
増感色素11としては、例えば、ルテニウム−トリス,ルテニウム−ビス,オスミウム−トリス,オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、多核錯体、またはルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、またはフタロシアニンやポルフィリン、多環芳香族化合物、ローダミンB等のキサンテン系色素であることが好ましい。
【0069】
多孔質の半導体層10に増感色素11を吸着させるためには、増感色素11に少なくとも1個以上のカルボキシル基,スルホニル基,ヒドロキサム酸基,アルコキシ基,アリール基,ホスホリル基等を置換基として有することが有効である。ここで、置換基は増感色素11自体を多孔質の半導体層10に強固に化学吸着させることができ、励起状態の増感色素11から多孔質の半導体層10へ容易に電荷移動できるものであればよい。
【0070】
多孔質の半導体層10に増感色素11を吸着させる方法としては、例えば透光性基板12上に形成された多孔質の半導体層10を、増感色素11を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0071】
多孔質の半導体層10に増感色素11を吸着させる際の増感色素11を溶解させる溶液の溶媒としては、エタノール等のアルコール類,アセトン等のケトン類,ジエチルエーテル等のエーテル類,アセトニトリル等の窒素化合物等を1種または2種以上混合したものが挙げられる。溶液中の増感色素11の濃度は5×10−5〜2×10−3mol/l(l(リットル):1000cm)程度が好ましい。
【0072】
多孔質の半導体層10に増感色素11を吸着させる際、溶液及び雰囲気の温度の条件は特に限定するものではなく、例えば、大気圧下もしくは真空中、室温もしくは基板2加熱の条件が挙げられる。増感色素11の吸着にかける時間は増感色素11及び溶液の種類、溶液の濃度、増感色素11の溶液の循環量等により適宜調整することができる。これにより、増感色素11を多孔質の半導体層10に吸着させることができる。
【0073】
また、本発明の光電変換装置は、対極側構造体は、Cu(In,Ga)Se2層(CIS層)を有する光電変換体(CIS型光電変換体)を有していることがよい。この場合、タンデム型光電変換装置が構成される。CIS型光電変換体は、ZnOから成るn型窓層、Cu(In,Ga)Se2層(光吸収層)を有する構成である。
【0074】
また、本発明の光電変換装置は、対極側構造体は、結晶シリコン層を有する光電変換体(結晶シリコン型光電変換体)を有していることがよい。この場合、タンデム型光電変換装置が構成される。結晶シリコン型光電変換体は、単結晶シリコン半導体、多結晶シリコン半導体、微結晶シリコン半導体を用いたものであり、具体的には、p型微結晶シリコン半導体、i型多結晶シリコン半導体、n型微結晶シリコン半導体を積層したpin積層構造のものである。
【0075】
また、本発明の光電変換装置は、触媒層7は、白金,パラジウム,ロジウム,カーボン及びポリチオフェンのうちの少なくとも1種から成ることがよい。これらの材料は、電荷輸送層8に対して過電圧の低い触媒である。過電圧を下げる触媒層7は、電荷輸送層8と第2導電型非晶質シリコン半導体層6との電荷の授受を容易にするための層であり、電荷輸送層8と第2導電型非晶質シリコン半導体層6とのオーミック接合を確保するための層である。なお、過電圧とは、光電変換装置を動作させるために最初に印加する大きな電圧のことをいう。
【0076】
本発明の光発電装置は、上記本発明の光電変換装置を発電手段として用い、発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成した構成である。具体的には、光発電装置は、光電変換装置、光電変換装置から出力された直流電流を交流電流に変換するインバータ装置、電気モーターや照明装置等の負荷等を有する構成であり、建築物の屋根や壁面に設置される太陽電池等として使用される。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の光電変換装置の実施例について説明する。図1の構成の光電変換装置を以下のようにして作製した。
【0078】
透光性基板2として、シート抵抗10Ω/□(スクエア)の厚み1μmのSnO2:F層(フッ素ドープSnO2層)から成る透光性導電層3が一主面に形成されたガラス基板(サイズ2cm×2cm、厚み2mm)を準備した。
【0079】
次に、プラズマCVD装置を用いて、透光性導電層3上に、第1導電型非晶質シリコン半導体層4としてのp型a−Si:H層、真性型非晶質シリコン半導体層5としてのi型a−Si:H層、第2導電型非晶質シリコン半導体層6としてのn型a−Si:H層を、順次連続して真空中で形成した。
【0080】
なお、p型a−Si:H層は、半導体の導電型がp型で、H(水素)ドープされたアモルファスシリコン(a−Si)層を意味する。
【0081】
p型a−Si:H層を形成する際の原料ガスとして、SiHガス,Hガス,Bガス(Hで500ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm、10sccm、2sccmとし、厚み90Å(9nm)として堆積させた。
【0082】
i型a−Si:H層を形成する際の原料ガスとして、SiHガス,Hガスを用い、これらのガスの流量をそれぞれ30sccm、80sccmとし、厚み1700Å(170nm)として堆積させた。
【0083】
n型a−Si:H層を形成する際の原料ガスとして、SiHガス,Hガス,PHガス(Hで1000ppmに希釈したもの)を用い、これらのガスの流量をそれぞれ3sccm、30sccm、6sccmとして、厚み100Å(10nm)として堆積させた。
【0084】
透光性基板2の温度は、pin構造層(p型a−Si:H層、i型a−Si:H層、n型a−Si:H層)の何れの形成の場合も220℃とした。
【0085】
次に、触媒層7としてのPt(白金)層を、厚み5nmとなるように、スパッタリング法によって形成した。このとき、Pt層は、厚みが非常に薄いために島状に成膜された。
【0086】
次に、透光性導電層3、pin構造層及びPt層が形成された透光性基板2を、シランカップリング剤の溶液に12時間浸漬さて、n型a−Si:H層の表面にシランカップリング剤を吸着させた。その後、エタノールで余分なシランカップリング剤をリンスし、Pt層間に厚み1nmのシランカップリング層8が形成されたものとした。
【0087】
他方、対極側構造体20側の透光性基板12として、シート抵抗10Ω/□の厚み1.2μmのSnO2:F層から成る透光性導電層13が一主面に形成されたガラス基板(サイズ2cm×2cm、厚み3mm)を準備した。
【0088】
次に、透光性導電層13上に、対極側構造体20(他の触媒層)としてのPt層を、厚み5nmとなるようにスパッタリング法によって形成した。このとき、Pt層は厚みが非常に薄いために島状に形成されていた。
【0089】
次に、透光性基板2のpin構造層等が形成された一主面の外周部と、透光性基板12の対極側構造体20等が形成された一主面の外周部とを、フィルム状の熱可塑性接着剤(デュポン社製商品名「Bynel4164」)を介して、貼り合わせて気密に封止した。透光性基板2と透光性基板12の間の間隔(電荷輸送層9の厚みに相当する)は20μmであった。
【0090】
その後、透光性基板12に予め形成しておいた貫通孔から、電荷輸送層8として、沃素(I2),沃化カルシウム(CaI),テトラブチルピリジンを含む液状電解質を注入して、光電変換装置を作製した。
【0091】
なお、光電変換装置として以下の6種を作製した。即ち、シランカップリング層8にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを含むものを光電変換装置A、シランカップリング層に3−アミノプロピルトリエトキシシランを含むものを光電変換装置B、シランカップリング層に3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含むものを光電変換装置C、シランカップリング層に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含むものを光電変換装置D、シランカップリング層にビニルトリメトキシシランを含むものを光電変換装置E、シランカップリング層に3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを含むものを光電変換装置F、とした。
【0092】
また、比較例として、シランカップリング層8がない以外は上記実施例と同じ構成の光電変換装置を作製した。
【0093】
実施例及び比較例の面積1cm2の光電変換装置について、AM1.5のソーラーシミュレータの光を照射、温度47度で耐久性及び信頼性の試験を行った。
【0094】
実施例の各光電変換装置における16時間経過の光電変換効率の初期値からの変化率は、光電変換装置Aは−52%(マイナスは初期値からの光電変換効率向上を示す)、光電変換装置Bは17%、光電変換装置Cは36%、光電変換装置Dは25%、光電変換装置Eは11%、光電変換装置Fは1%であった。
【0095】
これに対して、比較例の光電変換装置は、16時間経過の光電変換効率の初期値からの低下率は45%であった。
【0096】
実施例の光電変換装置のうち、信頼性が最も安定した3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランをシランカップリング層8に含む光電変換装置Fに関しては、第2導電型非晶質シリコン半導体層の表面にシランカップリング剤が吸着した後に、末端のアクリロキシ基がポリマー化することによって、第2導電型非晶質シリコン半導体層の表面を保護していることによると考えられる。
【0097】
実施例の光電変換装置のうち、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランをシランカップリング層8に含む光電変換装置Aが、光電変換効率が初期値から16時間経過後に52%も向上したのは、シランカップリング層に含まれるジアミノ基がPt層の表面をカバーし、試験後にPt層の表面が剥き出しになって、初期値に比べて光電変換効率が向上したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の光電変換装置について実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の光電変換装置について実施の形態の他例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0099】
2:透光性基板
3:透光性導電層
4:第1導電型(p型)非晶質シリコン半導体層
5:真性型(i型)非晶質シリコン層
6:第2導電型(n型)非晶質シリコン半導体層
7:触媒層
8:シランカップリング層
9:電荷輸送層
10:多孔質の半導体層
11:増感色素
12:対極側構造体側の透光性基板
13:対極側構造体側の透光性導電層
20:対極側構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と、前記透光性基板の一主面に形成された透光性導電層と、前記透光性導電層上に形成された第1導電型非晶質シリコン半導体層と、前記第1導電型非晶質シリコン半導体層上に形成された真性型非晶質シリコン半導体層と、前記真性型非晶質シリコン半導体層上に形成された第2導電型非晶質シリコン半導体層と、前記第2導電型非晶質シリコン半導体層上に複数の島状に形成された触媒層及び前記触媒層間に形成されたシランカップリング層と、前記触媒層及び前記シランカップリング層と間隔をあけて対向するよう配置された対極側構造体と、前記触媒層及び前記シランカップリング層と前記対極側構造体の間に設けられた電荷輸送層とを具備していることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記シランカップリング層は、ジアミノ基,アクリロキシプロピル基またはビニル基を有していることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記電荷輸送層は液状電解質であることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記対極側構造体は、金属基板または透明導電性基板と、その上に形成された他の触媒層とを有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記対極側構造体は、色素増感された多孔質の半導体層を有する光電変換体を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記対極側構造体は、Cu(In,Ga)Se2層を有する光電変換体を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記対極側構造体は、結晶シリコン層を有する光電変換体を有していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記触媒層は、白金,パラジウム,ロジウム,カーボン及びポリチオフェンのうちの少なくとも1種から成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載の光電変換装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの光電変換装置を発電手段として用い、前記発電手段の発電電力を負荷へ供給するように成したことを特徴とする光発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−244258(P2008−244258A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84505(P2007−84505)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成18年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電システム未来技術研究開発委託事業」、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】