光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法
【課題】火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別する。
【解決手段】発光素子(11)と、パルス光の発光出力を制御する送光部コントローラ(12)とを有する送光部(10)と、パルス光を受光する受光素子(21)と、受光素子出力の直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラ(22)とを有する受光部(20)とを備え、送光部コントローラは、感知器毎に固有の発光パターンとなるように発光出力を制御し、発光パターンは、識別用の共通情報を有する識別用パルス光と、識別用パルス光で挟持された固有情報に基づくデジタルデータのビット列とを含むビット列で構成され、受光部コントローラは、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値の変化状態から火災判断および火災判断精度の劣化要因の特定を行う。
【解決手段】発光素子(11)と、パルス光の発光出力を制御する送光部コントローラ(12)とを有する送光部(10)と、パルス光を受光する受光素子(21)と、受光素子出力の直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラ(22)とを有する受光部(20)とを備え、送光部コントローラは、感知器毎に固有の発光パターンとなるように発光出力を制御し、発光パターンは、識別用の共通情報を有する識別用パルス光と、識別用パルス光で挟持された固有情報に基づくデジタルデータのビット列とを含むビット列で構成され、受光部コントローラは、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値の変化状態から火災判断および火災判断精度の劣化要因の特定を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域に送光部と受光部とを分離配置し、火災に伴う煙の発生による減光を検出して火災判断を行う光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電式分離型感知器では、発光ダイオード等の発光素子を備えた送光部から投光された光を、フォトダイオード等の受光素子を備えた受光部で受光し、火災に伴う煙による受光量の変化に基づいて、火災であるか否かの火災判断を行っている。
【0003】
光電式分離型感知器では、送光部と受光部との間の距離に相当する監視距離が、例えば、5m〜100m程度である。そこで、送光部、受光部では、それぞれレンズ等によって集光し、受光信号を増幅する必要がある。また、一般的には、省電力とするために、投光する光は、周期的に発光するパルス光であり、送光部と受光部との相互の同期を取るために同期線が必要となる。
【0004】
光電式分離型感知器は、その監視距離に応じてレンジ設定を行い、その結果、送光部の発光量および受光部の火災判定レベルである閾値が適宜設定される。送光部から出力される光を受光部で受光し、火災に伴う煙による受光出力信号値が前記閾値以下となるか否かによって、火災であるか否かの火災判断を行っている。
【0005】
このような光電式分離型感知器では、外乱光による火災判断精度の劣化としての誤作動や不作動を防止することが課題として挙げられる。例えば、外乱光として太陽光などの強い定常光が入射することで、受光素子出力が直流的に飽和してしまい、送光部からのパルス光を検出できなくなる。
【0006】
その結果、受光素子出力の直流成分をコンデンサ等で遮断した後に、後段の増幅器を介して得られるパルス成分の受光出力信号値が減少してしまうこととなり、火災と判断してしまう誤作動を起こすおそれがある。
【0007】
図10は、誤作動要因の説明図である。図10(a)〜(d)のそれぞれにおいて、左側の図の縦軸は、送光部からのパルス信号を受光する受光素子の出力(受光素子出力)を示しており、右側の図の縦軸は、受光素子出力の直流成分をコンデンサ等で遮断した後に、後段の増幅器を介して得られるパルス成分の受光出力信号値を示している。火災判断を行うに当たっては、右側に示した受光出力信号値を信号解析することとなる。
【0008】
従って、以降の説明においては、受光素子自体からの出力を「受光素子出力」と称し、直流成分を遮断した後の信号であり、火災判断の信号解析に用いられる信号を「受光出力信号値」と称し、区別することとする。
【0009】
また、各図の横軸は、時間であり、この図10では、4つのパルス光が連続して送光部から発光され、受光部で受光される状態を例示している。
【0010】
図10(a)は、煙の発生がない正常時における受光素子出力と受光出力信号値を示している。これに対して、図10(b)は、煙の発生があった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。これらの対比から明らかなように、基本的には、煙で減光した光を受光した受光出力信号値が所定の閾値以下に減少したか否かを判断することで、火災判断を行うことができる。
【0011】
一方、図10(c)は、煙の発生がない正常時に、パルス信号に加えて、弱い定常光が重なった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。また、図10(d)は、煙の発生がない正常時に、パルス信号に加えて、強い定常光が重なった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。
【0012】
定常光の影響により受光素子出力に飽和が生じた場合の受光出力信号値は、直流成分が遮断されることから、図10(c)あるいは図10(d)に示すように、正常時の図10(a)よりも減少し、煙による減光が発生したときである図10(b)と同様の信号となってしまう。また、図10(d)よりもさらに強い定常光により、それだけで飽和してしまう場合には、受光出力信号値としては全く出力されない状態となってしまう。
【0013】
この結果、定常光の影響を受けた図10(c)あるいは図10(d)において、図10(b)と同様の閾値により火災判断を行うと、受光出力信号値が減少していることから、火災と判断してしまう誤作動を起こすおそれが生じてしまう。
【0014】
そこで、このような定常光(太陽光等の強い定常光)の影響による火災判断精度の劣化としての誤作動を防止するために、受光素子出力の直流成分を検出し、検出した直流成分の大きさから定常光の影響があると判断した場合には、発報判別処理(火災判断処理)を一時的に停止する信号処理部を設けた光電式分離型感知器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−35984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
光電式分離型感知器は、煙を検出したい領域が広域にわたる場合には、送光部と受光部とのペアを、間隔を空けて複数設置する場合がある。このような設置状況では、複数の送光部の発光タイミングが重なり、受光部が複数の送光部からの光を同時に受光してしまった場合には、パルス光による受光素子出力は、1台の送光部から受光する場合における通常のパルス光による受光素子出力よりも増大するおそれがある。
【0017】
しかしながら、複数の送光部からのパルス光を同時に受光してしまった場合には、太陽光のような定常光ではないので、受光素子出力の直流成分の増加は僅かであり、直流信号成分に起因して受光素子出力が飽和することはない。従って、特許文献1では、そのような状況にあることを検出することができない。この結果、このような状況で火災に伴う煙が発生して煙による減光が生じても、受光出力が火災判定レベルまで低下せず、火災を検知できない状況の発生、すなわち、不作動のおそれがある。
【0018】
図11は、不作動要因の説明図である。先の図10と同様に、図11(a)〜(d)のそれぞれにおける左側の図の縦軸は、受光素子出力を示しており、図11(a)〜(d)のそれぞれにおける右側の図の縦軸は、受光出力信号値を示している。また、各図の横軸は、時間であり、この図11では、先の図10と同様に、4つのパルス信号が連続して送光部から発光され、受光部で受光される状態を例示している。
【0019】
図11(a)は、他のパルス光との重複が発生しておらず、かつ煙の発生がない正常時における受光素子出力と受光出力信号値を示しており、先の図10(a)と同様の状態を示している。これに対して、図11(b)は、他のパルス光との重複が発生しておらず、かつ煙の発生があった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示しており、先の図10(b)と同様の状態を示している。これらの対比から明らかなように、基本的には、煙で減光した光を受光した受光出力信号値が所定の閾値以下に減少したか否かを判断することで、火災判断を行うことができる。
【0020】
一方、図11(c)は、他のパルス光との重複が発生し、かつ煙の発生がない正常時において受光素子出力が飽和する場合の、受光素子出力と受光出力信号値を示している。また、図11(d)は、他のパルス光との重複が発生し、かつ煙の発生があったときで、受光素子出力が飽和する場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。なお、この図11(c)、11(d)では4つのパルス光のタイミングが完全に重複した場合を例示している。
【0021】
このようなパルス光の重複が発生した場合の受光出力信号値は、受光素子出力自体のパルスの高さが大きくなり飽和することから、図11(c)あるいは図11(d)に示すように、正常時の図11(a)よりも高い値のパルス信号となってしまう。
【0022】
この結果、他のパルス光との重複の影響を受けた図11(d)において、先の図10(b)と同様の閾値により火災判断を行うと、他のパルス光との重複の影響で、受光出力信号値が設定した閾値までは減少しないことから、火災を検知できない不作動を起こすおそれが生じてしまう。
【0023】
なお、図11(c)および図11(d)において受光素子が飽和しなかった場合であっても、受光出力信号値は、他のパルス光が重畳されることによって図11(b)における受光出力信号値よりも増大するので、火災による煙で減光したときに前記火災判断の閾値までは減少せず、火災を検知できない不作動を起こすおそれが生じる。
【0024】
また、従来の光電式分離型感知器においては、太陽光等の強い定常光の影響を受けた場合(誤作動要因に相当)、あるいは複数の送光部からのパルス光を同時に受光してしまった場合(不作動要因に相当)のそれぞれの劣化要因を識別することまでは行われていなかった。
【0025】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る光電式分離型感知器は、発光素子と、発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力の直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、送光部とは分離配置された受光部とを備えた光電式分離型感知器であって、送光部コントローラは、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように発光出力を制御し、該発光パターンは、繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された固有情報に基づくデジタルデータのビット列とを備え、受光部コントローラは、デジタルデータの固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行うものである。
【0027】
また、本発明に係る光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法は、発光素子と、発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力に含まれる直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、送光部とは分離配置された送光部とを備えた光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法であって、送光部コントローラにおいて、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように発光出力を制御し、該発光パターンは、繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された固有情報に基づくデジタルデータのビット列によって構成されている、第1ステップと、受光部コントローラにおいて、デジタルデータの固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行う第2ステップとを備え、第2ステップは、固有情報に基づくデジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算するステップと、背景レベル値を基準としたときの発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断するステップと、相対値が第1の所定値以下かつ第2の所定値以上の値をとることなく、第2の所定値未満の場合には外部から定常光を受光しているものと判断し、一時的に火災判断を行わないステップと、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットが検出された場合、またはデジタルデータのビット列において送光部からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットが検出された場合には、検出されたビットが、発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したことによる重複ビットに該当すると判断し、重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を行うステップとを含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法によれば、火災判断を行うために、感知器毎に決められた固有の発光パターンとして、デジタルデータのビット列を含むパルス光を送信し、パルス光の受光出力信号値に基づいて信号解析を行うことにより、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器の送光部および受光部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器に用いられる発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光された際の受光出力信号値を示した説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、火災による煙が発生して、送光部からのパルス光が煙によって減光した際の受光出力信号値を示した説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、太陽光等の強い定常光が外乱光として入射した際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、隣接する、あるいは離れた位置にある、発光タイミングが重なった他の送光部からのパルス光を自身の送光部からのパルス光とともに、すなわち、複数の送光部からのパルス光を受光してしまった際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器で、火災判断および火災判断精度の劣化要因を識別するために用いられる所定値と、受光出力信号値との関係をまとめた説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2における光電式分離型感知器の送光部および受光部の内部構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3における光電式分離型感知器に用いられる、『1』となる特定のビットを付加した発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光され、煙による減光も受けなかった際の受光出力信号値を示した説明図である。
【図10】誤作動要因の説明図である。
【図11】不作動要因の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0031】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器を示す構成図である。光電式分離型感知器は、送光部10と受光部20とによって構成されている。
上述したように、送光部10と受光部20との間の距離(監視距離)は、例えば、5m〜100m程度であり、距離に応じてレンジ設定を行い、その結果、送光部10の発光量および受光部20の火災判定レベルである閾値が適宜設定される。送光部10から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光を受光部20で受光し、火災に伴う煙による受光出力信号値の変化に基づいて、火災であるか否かの火災判断を行う。また、火災判断を行いたい領域が広域にわたる場合には、このような送光部10と受光部20とのペアを、間隔を空けて複数設置することがある。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器の送光部10および受光部20の内部構成を示すブロック図である。送光部10は、発光素子11、および送光部コントローラ12を備えて構成されている。一方、受光部20は、受光素子21、受光部コントローラ22、故障時に点灯または点滅する故障表示灯23、火災判定時に点灯または点滅する火災表示灯24、および図示しない火災受信機へ火災信号および故障信号等を送出する信号出力部25を備えて構成されている。
【0033】
送光部コントローラ12は発光素子を制御し、発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光のオン/オフ、および発光強度等の発光パターンを制御する。一方、受光部コントローラ22は、受光素子21の出力の直流成分を遮断し、その後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化に基づいて、信号解析を行い、火災判断を行う。なお、受光素子21の出力の直流成分を遮断するためには、コンデンサ等を用いることが一般的であるが、図2では、受光部コントローラ22の内部機能に含めており、図示していない。
【0034】
本実施の形態1における光電式分離型感知器は、火災判断等の信号解析を行うための発光パターンとして、感知器毎に共通のヘッダおよびフッタ(感知器毎に共通である信号識別用の共通情報に相当)を構成する信号識別用のパルス光と、ヘッダ、フッタ間に挟持された、感知器毎に固有の情報(例えば、製造番号、アドレス等、重複することがない情報)に基づくデジタルデータのビット列からなるパルス光を用いて光通信を行うことを技術的特徴としている。
【0035】
より具体的には、このようなビット列による発光パターンを受光部20側で受光した際の受光出力信号値に基づいて、火災判断を行うとともに、火災判断精度の劣化要因を識別することを技術的特徴としているものである。そこで、まず始めに、本実施の形態1における送光部10から発光される発光パターン、およびこの発光パターンに対応して受光部20による信号解析で用いられる受光出力信号値について説明する。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器に用いられる発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光された際の受光出力信号値を示した説明図である。この図3における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0037】
ここで、図3に示す受光パターン(すなわち、外乱光等の影響を受けずに正常に受光され、火災による煙で減光していない際の受光パターンであることから、送光部10から発光される発光パターンに相当)は、以下のような規定を有している。
(1)送光部からのパルス光がないビットに対応して受光部20側で検出される受光出力信号値を『0』と定義する。
(2)(1)で定義した受光出力信号値を越え、かつ、送光部からのパルス光があるビットに対応して受光部20側で検出される受光出力信号値を『1』と定義する。
(3)送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値から逆算し、半分の受光出力信号値になるように設定された値を『ヘッダ』と定義する。
(4)受光出力信号値が『0』となるパルス光がないビットの後に、送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値の半分の受光出力信号値になるように設定された値を付加した2ビット分のビット列を『フッタ』と定義する。
(5)『ヘッダ』から『フッタ』までの間のデジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値を読み取る。
【0038】
なお、上記ヘッダおよびフッタは、これらに挟持されるデジタルデータの開始と終了とを識別するためのものであって、その目的が達成されるならば、上記の定義と異なる形態(例えば、前記デジタルデータと明確に区別される特定のデジタル値を示すパルス列)であってもよい。
【0039】
ここで、本実施の形態1では、ヘッダとフッタとに挟まれたデータとして、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンを有するデジタルデータを用いている。
【0040】
図3では、ヘッダとフッタとの間で、「01011101」という、パルス光があるビットとないビットが混在した8ビットのデジタル情報が、感知器に固有の発光パターンとして送信されている場合を例示している。
【0041】
従って、ヘッダ、フッタ、個々のビットに対応する受光出力信号値の情報は、火災判断を行う、あるいは火災判断の劣化要因を分析するための複数の情報として活用でき、さらに、デジタルデータとしてのまとまった情報は、発光パターンが固有に割り付けられた送光部を特定し、識別するための情報として活用できることとなる。
【0042】
この結果、このような規定に基づく受光パターンに対応した受光出力信号値に対して信号処理を施すことで、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器を得ることができる。そこで、火災判断および劣化要因の識別を行う具体的な方法について、次に説明する。
【0043】
[火災判断方法について]
図4は、本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、火災による煙が発生して、送光部からのパルス光が煙によって減光した際の受光出力信号値を示した説明図である。先の図3と同様に、この図4における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0044】
先の図3に示した発光パターンに従った情報通信時に、煙が発生していた場合には、この図4に示すように、受光部20側におけるヘッダ、フッタ、およびデジタルデータのビット列からなる個々のビットに対応した受光出力信号値のレベルが、全体に渡って低下することとなる。
【0045】
そこで、受光部コントローラ22は、例えば、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が火災判定レベルである第1の所定値以下に減少し、かつ、強い定常光を受けていると判定するレベルである、第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には、煙が発生したことによる減光が発生したとして、火災と判断することができる。なお、第2の所定値については「火災判断精度の劣化要因の識別方法について」の劣化要因1の項において詳細に説明する。
【0046】
また、受光部コントローラ22は、火災判断の際に、デジタルデータに対応する受光出力信号値だけではなく、その前後に存在するヘッダあるいはフッタ部分に対応する受光出力信号値を用いることもできる。
【0047】
例えば、この図4の例では、ヘッダおよびフッタに狭持されたデジタルデータ(01011101)のうち、『1』となっているビット(すなわち、送光部からのパルス光がある2、4、5、6、8ビット目に相当)に対応するそれぞれの受光出力信号値と、第1の所定値および第2の所定値との比較結果から、煙発生の有無による火災判断をすることができる。
【0048】
また、『1』となっている個々のビットについて個別にこのような火災判断を行い、所定の複数のビットで火災が判断したと判断した場合に、最終的に火災が発生したと判断することもでき、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を図ることができる。
【0049】
また、別の判断手法としては、次のような方法をとることもできる。まず、受光部コントローラ22は、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値を求める。
【0050】
さらに、受光部コントローラ22は、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値を求める。
【0051】
そして、受光部コントローラ22は、背景レベル値を基準としたときの発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が、煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断する。
【0052】
なお、発光レベル値および背景レベル値を求めるための、受光出力信号値を評価し数値化する具体的は方法としては、以下のような統計量を適用できる。
(1)平均化(相加平均)
(2)多数決論理(例えば、最大値と最小値を除いた残りの平均値を求める)
(3)相乗平均、中央値
【0053】
このような方法によっても、複数のビット情報を考慮することができ、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を図ることができる。
【0054】
また、受光部コントローラ22は、火災と判断した場合には、火災表示灯24により、火災の発生状態を通知することができ、さらに、信号出力部25を介して火災受信機へ火災信号を通知することができる(図2参照)。
【0055】
[火災判断精度の劣化要因の識別方法について]
次に、火災判断精度の劣化要因である、強い定常光の影響、および発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光を受光したことによる影響を識別する方法について説明する。
【0056】
(1)劣化要因1:強い定常光の有無の判断方法について
図5は、本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、太陽光等の強い定常光が外乱光として入射した際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。先の図3、図4と同様に、この図5における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0057】
光電式分離型感知器が煙の有無を監視する空間は、送光部10と受光部20との間であり、火災感知器内部の微少空間における煙の有無を監視している光電式スポット型感知器よりも遙かに大きく長い空間を監視している。故に、火災による煙が発生した場合、光電式分離型感知器が監視している空間が煙で満たされるまでには時間がかかるので、この煙による減光は急激には起こらない。すなわち、受光出力信号値がステップ応答の如く急激に低下することはない。
【0058】
これに対し、太陽光等の強い定常光が受光部20に入射した場合、受光素子21が受光する光量は膨大であり、送光部10の発光素子11(例えば、発光ダイオード)が出力するパルス光よりも遙かに大きい。故に、太陽光等の強い定常光が受光部20に僅かでも入射した場合は、受光素子21の出力はステップ応答の如く、素早く直流的に飽和するレベルに達する。
【0059】
図5に示す受光出力信号値は、すでに図10(d)を用いて説明したように、先の図4における煙発生による減光が生じたときの受光出力信号値よりも小さな値となってしまう。火災が進行して濃い煙が大量に発生した場合には、煙による減光によって、このような受光出力信号値となることもあるが、前記説明の如く、急激にこのような小さな値となることはない。しかしながら、この図5における受光出力信号値は、火災判定レベルである第1の所定値よりも小さく、電子的ノイズレベルよりも大きく設定する第2の所定値よりもさらに小さいこととなる。
【0060】
従って、受光部コントローラ22は、受光出力信号値が、第1の所定値以下、かつ第2の所定値以上の値をとることなく、第2の所定値未満となってしまった場合には、煙による減光が発生したのではなく、外部から強い定常光を受光したことにより受光出力信号値が急激かつ大幅に減少したと判断することができる。
【0061】
受光部コントローラ22は、このようにして、外部から強い定常光を受光したと判断した場合には、火災判断を一時的に中止するとともに、このような状態となったことを、故障表示灯23を点灯または点滅させることにより通知することができ、さらに、信号出力部25を介して火災受信機へ通知することができる(図2参照)。
【0062】
また、受光部コントローラ22は、火災判断精度の劣化要因が強い定常光の影響であることを識別できるとともに、一時的に火災判断を停止することができるので、誤作動を防止することができる。
【0063】
さらに、複数のビット情報に基づくことで、先の火災判断と同様に、強い定常光の検出精度の向上を図ることができる。また、受光部コントローラ22は、強い定常光の有無を判断する際に、先の火災判断と同様に、デジタルデータに対応する受光出力信号値だけではなく、その前後に存在するヘッダあるいはフッタ部分に対応する受光出力信号値を用いることもできる。さらに、受光出力信号値として、先の火災判断と同様に、平均値等の統計量を用いることで、判断精度の向上を図ることもできる。
【0064】
(2)劣化要因2:発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光を受光しているか否かの判断方法について
図6は、本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、隣接する、あるいは離れた位置にある、発光タイミングが重なった他の送光部からのパルス光を自身の送光部からのパルス光とともに、すなわち、複数の送光部からのパルス光を受光してしまった際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。先の図3〜図5と同様に、この図6における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0065】
図6に示す受光出力信号値は、すでに図11(c)、(d)を用いて説明したように、先の図3における正常時で煙による減光が無い場合の受光出力信号値よりも、一部のビットで大きな値となってしまう。しかしながら、本実施の形態1で用いるデジタルデータは、感知器毎の固有情報に基づいているため、送光部毎に発光パターンが異なるデジタルデータを参照できるので、すべてのビットで重複が発生してしまう最悪の事態を防止でき、重複が発生するビットを一部だけにとどめることができる。図6においては、1〜8ビット目のうち、3、5、6、7ビット目で重複が発生したものの、1、2、4、8ビット目では重複が発生していない状態を例示している。
【0066】
従って、受光部コントローラ22は、次のような処理を行うことができる。まず始めに、受光部コントローラ22は、自身の感知器に事前に割り当てられた固有情報に基づくデジタルデータのビット列において、送光部10からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットがあるか否かを検出する。
【0067】
図6の例では、受光部コントローラ22は、2、4、5、6、8ビット目における受光出力信号値と、第3の所定値とを比較することで、5、6ビット目を第3の所定値以上あるビットとして検出する。
【0068】
さらに、受光部コントローラ22は、自身の感知器に事前に割り当てられた固有情報に基づくデジタルデータのビット列において、送光部10からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットがあるか否かを検出する。
【0069】
図6の例では、受光部コントローラ22は、1、3、7ビット目における受光出力信号値と、第4の所定値とを比較することで、3、7ビット目を第4の所定値以上あるビットとして検出する。
【0070】
次に、受光部コントローラ22は、第3の所定値以上あるビットとして検出した5、6ビット目と、第4の所定値以上あるビットとして検出した3、7ビット目を、他の送光部からのパルス光との重複が発生した重複ビットに該当すると判断する。そして、この場合には、受光部コントローラ22は、重複ビット以外のビットである1、2、4、8ビット目における受光出力信号値に基づいて、火災判断を行うことができる。
【0071】
従って、受光部コントローラ22は、発光のあるビットに対応する受光出力信号値が第3の所定値以上であるビット、および発光のないビットに対応する受光出力信号値が第4の所定値以上であるビットを他の送光部からのパルス光による重複ビットと判断でき、さらに、重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を継続して行うことができる。すなわち、受光部コントローラ22は、火災判断精度の劣化要因が重複ビットの影響であることを識別できるとともに、火災判断を停止することなく、不作動を防止することができる。
【0072】
また、受光部コントローラ22は、重複ビットがあると判断した場合には、重複ビット以外のビットを用いて火災判断を継続する一方で、他の送光部からのパルス光を重複して受光してしまっていることを、故障表示灯23(図2参照)を点灯または点滅させることにより表示することができ、さらに、信号出力部25を介して火災受信機へ通知することができる。
【0073】
なお、隣接する送光部同士で、重複した状態を検知しやすくするように、それぞれの送光部に固有に割り当てるデジタルデータを工夫することも可能である。
【0074】
図7は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器で、火災判断および火災判断精度の劣化要因を識別するために用いられる所定値と、受光出力信号値との関係をまとめた説明図である。
【0075】
本実施の形態1に係る受光部コントローラ22において、火災判断および火災判断精度の劣化要因を識別する方法をまとめると、以下のようになる。
[識別1]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第1の所定値より大きく第3の所定値より小さい範囲に存在する場合(図7における「正常値検出エリア」に相当)には、火災が発生していないと判断する。
[識別2]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第1の所定値以下で、第2の所定値以上の範囲に存在する場合(図7における「火災検出エリア」に相当)には、火災が発生したと判断する。
[識別3]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第1の所定値以下で第2の所定値以上の値をとることなく、前記第1の所定値以上で前記第3の所定値以下の値から、直接、第2の所定値未満の範囲となった場合(図7における「定常光検出エリア」に相当)には、ある一定以上の強い定常光が入力したと判断し、火災判断を一時的に中止することで、誤作動を未然に防ぐ。
[識別4]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第3の所定値以上の範囲に存在するビットがあるか、あるいは、送光部10からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値が、第4の所定値以上の範囲に存在するビットがある場合(図7における「重複ビット検出エリア」に相当)には、それらのビットを重複ビットと特定し、受光部と対応する送光部以外の、発光タイミングが重複した他の送光部のパルス光を受光したと判断し、重複ビット以外のビット情報に基づいて火災判断を継続することで、不作動を未然に防ぐ。
【0076】
上述した4種の識別のうち、識別1〜3では、送光部10からのパルス光があるビットに対して共通に現れる現象を判断している。一方、識別4では、送光部10からのパルス光があるビットとないビットの個々のビットに対して個別に現れる現象を判断している。
【0077】
また、第1の所定値〜第3の所定値に関しては、以下のような大小関係がある。
第3の所定値>第1の所定値>第2の所定値
そして、第4の所定値に関しては、必ずしも、図7に図示したように第2の所定値よりも小さく設定する必要はなく、重複ビットを検出するための適切な値として個別に設定できる。
【0078】
以上のように、実施の形態1によれば、火災判断を行うために、感知器毎に決められた固有の発光パターンとして、デジタルデータのビット列を含むパルス光を送光部が出力し、このパルス光を受光した受光部の受光出力信号値に基づいて受光部コントローラが信号解析を行う構成を備えている。この結果、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法を得ることができる。
【0079】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、火災判断精度の劣化要因が、発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光の影響であった場合には、重複が発生していないビットを用いて火災判断を継続する場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、受光部20で発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光の影響を検出した際に、発光タイミング修正指令を送光部10に与えることで、動的に、重複がない発光タイミングに調整し、火災判断を継続する場合について説明する。
【0080】
図8は、本発明の実施の形態2における光電式分離型感知器の送光部10および受光部20の内部構成を示すブロック図である。先の実施の形態1における図2の構成と比較すると、本実施の形態2における図8の構成は、送光部10内の送光部インターフェース回路(送光部I/F回路)16と、受光部20内の受光部インターフェース回路(受光部I/F回路)26とをさらに備え、送光部I/F回路16と受光部I/F回路26とが信号線30で接続されている点が異なっている。
【0081】
このような回路構成をさらに備えることで、本実施の形態2における光電式分離型感知器は、受光部20で重複ビットの存在を検出した場合には、その情報に基づく発光タイミング修正指令を送光部10に与えることが可能となる。そこで、発光タイミング修正指令に基づく一連の制御について、次に説明する。
【0082】
先の実施の形態1で説明したように、受光部コントローラ22は、発光のあるビットに対応する受光出力信号値が第3の所定値以上であるビット、および発光のないビットに対応する受光出力信号値が第4の所定値以上であるビットを重複ビットと特定することができる。
【0083】
そこで、重複ビットを検出した場合には、受光部コントローラ22は、受光部インターフェース回路(受光部I/F回路)26と信号線30とを介して、発光素子11による発光タイミングをずらすための指令(発光タイミング修正指令)を送光部10側に送信する。この発光タイミング修正指令を送光部インターフェース回路(送光部I/F回路)16を介して受信した送光部コントローラ12は、例えば、3秒間隔で発光を行っていたとすると、1回だけ4.5秒間隔にして半周期分ずらし、その後、再び3秒間隔で発光を続けるように、発光素子11の発光タイミングをずらすことができる。このような処理を行うことで、他の送光部からのパルス光を重複して受光することを回避することができ、すべてのビット情報を用いた火災判断を行うことが可能となる。
【0084】
以上のように、実施の形態2によれば、受光部での重複ビットの検出結果に基づいて発光タイミング修正指令を送光部に伝えることが可能な構成を備えている。この結果、発光タイミングが重複した他の送光部のパルス光を重複して受光した場合にも、動的に、適正な発光タイミングに修正し、すべてのビット情報を用いた火災判断を行うことが可能となる。
【0085】
なお、本実施の形態2では、発光タイミング修正指令に対応して、送光部10に備わる発光素子11の発光タイミングを半周期ずらす場合について説明したが、このような修正方法に限定されるものではない。例えば、発光タイミングの位相を所定量ずつ逐次ずらしていき、重複ビットが検出されない状態とすることなども可能である。
【0086】
実施の形態3.
先の実施の形態1、2で説明したように、本発明では、感知器毎に固有の発光パターンとしてのデジタルデータの情報を持たせている。そして、このような固有のデジタルデータとしては、それぞれの送光部に付けられた製造番号やアドレス等を割り付けることが考えられる。
【0087】
しかしながら、このようにして割り付けられたデジタルデータは、製造番号によっては、発光するビット(すなわち『1』に対応するビット)がほとんどない場合も考えられる。このような場合には、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を十分に得ることができないおそれがある。そこで、本実施の形態3では、固有のデジタルデータとは別に、『1』となるビットを1箇所以上に挿入することで、火災判断精度の向上を確保する場合について説明する。
【0088】
図9は、本発明の実施の形態3における光電式分離型感知器に用いられる、『1』となる特定のビットを付加した発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光され、煙による減光も受けなかった際の受光出力信号値を示した説明図である。先の図3〜図6と同様に、この図9における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0089】
図9(a)に1点鎖線として示したように、例えば、ヘッダの直後、フッタの直前、あるいは8ビットで構成されているデジタルデータの間に、必ず発光する『1』のビットを挿入することが考えられる。
【0090】
図9(b)は、デジタルデータ(01011101b)の1ビット目と2ビット目の間と、7ビット目と8ビット目の間の2箇所に、ハッチングで示したような、必ず発光する『1』のビットを挿入した場合を示している。同様に、図9(c)は、デジタルデータ(00000001b)の1ビット目と2ビット目の間と、7ビット目と8ビット目の間の2箇所に、ハッチングで示したような、必ず発光する『1』のビットを挿入した場合を示している。
【0091】
このような処理を行うことで、デジタルデータ(00000001b)だけでは、『1』となるビットが1つしかなかったものを、付加したビットにより3つのビットで『1』を持たせることができる。この結果、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を確保することができる。
【0092】
以上のように、実施の形態3によれば、送光部ごとに固有のデジタルデータに対して、必ず発光する『1』のビットを挿入することで、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を確保することが可能となる。
【0093】
なお、図9を用いた例では、ヘッダの直後、フッタの直前、あるいは8ビットで構成されているデジタルデータの間の1箇所以上に、必ず発光する『1』のビットを挿入する場合について説明したが、このような構成に限定されるものではない。例えばフッタの直前などの1箇所に、必ず発光する『1』のビットを複数挿入することでも、同様の効果を得ることができる。
【0094】
実施の形態4.
本実施の形態4では、ヘッダ、フッタ、およびデジタルデータのビット列からなる光信号を用いることで、同期線を不要とする光電式分離型感知器を実現できる点について説明する。なお、本実施の形態4における光電式分離型感知器の構成としては、先の実施の形態1における図2を用いて説明する。
【0095】
送光部10内の送光部コントローラ12は、発光素子11から一定周期で、先の実施の形態1で説明した規定に従って、例えば、先の図3に示すような、フッタとヘッダに挟持された信号(デジタル情報「01011101」)を送信する。
【0096】
一方、受光部20内の受光部コントローラ22は、受光素子21を介して受光出力信号値を受信する。そして、受光部コントローラ22は、受信した受光出力信号値について、上述した規定に基づいたヘッダとフッタの位置、およびその周期を解析することで、受信タイミングの同期を確立し、同期運転することができる。
【0097】
一度、同期が確立すると、その後の煙発生を監視し火災判断を行うモードにおいては、その同期タイミングに従って受信部の回路を起動することで、受信処理の必要がないタイミングでは、電源をオフしておくことが可能となり、省電力化を図ることができる。
【0098】
また、同期タイミングで受信信号の読み取りを行った際に、ヘッダとフッタの位置が正しく読み取れなくなった場合には、受光部コントローラ22は、なんらかの原因で同期がずれてしまったと判断することができる。この場合には、受光部コントローラ22は、ヘッダとフッタの位置を繰り返し読み取れるまで、受信処理を継続して行うことで、同期運転を回復することができる。
【0099】
なお、初期における同期タイミングおよび周期の解析、あるいは、その後に行う再度の同期タイミングおよび周期の解析に当たっては、受光部コントローラ22は、ヘッダとフッタの位置を最低でも2セット分取得できれば、同期タイミングおよび周期を特定できることとなる。また、ヘッダとフッタの位置を3セット以上取得し、平均値を求めることで、同期タイミングおよび周期の特定精度を向上させることができる。
【0100】
また、再度の同期タイミングおよび周期の解析を定期的に行うことで、同期線を用いない光電式分離型感知器においても、同期ずれの発生を防止することができる。
【0101】
以上のように、実施の形態4によれば、送光部の発光素子から出力される、ヘッダ、フッタ、およびデジタルデータのビット列からなる感知器に固有の発光パターンのパルス光を受光部の受光素子が繰り返し受光することで、受光部コントローラは、ヘッダとフッタに挟まれた情報の周期とタイミング(位相)を特定することができる。この結果、受光部側は、受光結果を解析することで、送光部と同期運転することができ、同期線を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 送光部、11 発光素子、12 送光部コントローラ、16 送光部インターフェース回路、20 受光部、21 受光素子、22 受光部コントローラ、23 故障表示灯、24 火災表示灯、25 信号出力部、26 受光部インターフェース回路、30 信号線。
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視領域に送光部と受光部とを分離配置し、火災に伴う煙の発生による減光を検出して火災判断を行う光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電式分離型感知器では、発光ダイオード等の発光素子を備えた送光部から投光された光を、フォトダイオード等の受光素子を備えた受光部で受光し、火災に伴う煙による受光量の変化に基づいて、火災であるか否かの火災判断を行っている。
【0003】
光電式分離型感知器では、送光部と受光部との間の距離に相当する監視距離が、例えば、5m〜100m程度である。そこで、送光部、受光部では、それぞれレンズ等によって集光し、受光信号を増幅する必要がある。また、一般的には、省電力とするために、投光する光は、周期的に発光するパルス光であり、送光部と受光部との相互の同期を取るために同期線が必要となる。
【0004】
光電式分離型感知器は、その監視距離に応じてレンジ設定を行い、その結果、送光部の発光量および受光部の火災判定レベルである閾値が適宜設定される。送光部から出力される光を受光部で受光し、火災に伴う煙による受光出力信号値が前記閾値以下となるか否かによって、火災であるか否かの火災判断を行っている。
【0005】
このような光電式分離型感知器では、外乱光による火災判断精度の劣化としての誤作動や不作動を防止することが課題として挙げられる。例えば、外乱光として太陽光などの強い定常光が入射することで、受光素子出力が直流的に飽和してしまい、送光部からのパルス光を検出できなくなる。
【0006】
その結果、受光素子出力の直流成分をコンデンサ等で遮断した後に、後段の増幅器を介して得られるパルス成分の受光出力信号値が減少してしまうこととなり、火災と判断してしまう誤作動を起こすおそれがある。
【0007】
図10は、誤作動要因の説明図である。図10(a)〜(d)のそれぞれにおいて、左側の図の縦軸は、送光部からのパルス信号を受光する受光素子の出力(受光素子出力)を示しており、右側の図の縦軸は、受光素子出力の直流成分をコンデンサ等で遮断した後に、後段の増幅器を介して得られるパルス成分の受光出力信号値を示している。火災判断を行うに当たっては、右側に示した受光出力信号値を信号解析することとなる。
【0008】
従って、以降の説明においては、受光素子自体からの出力を「受光素子出力」と称し、直流成分を遮断した後の信号であり、火災判断の信号解析に用いられる信号を「受光出力信号値」と称し、区別することとする。
【0009】
また、各図の横軸は、時間であり、この図10では、4つのパルス光が連続して送光部から発光され、受光部で受光される状態を例示している。
【0010】
図10(a)は、煙の発生がない正常時における受光素子出力と受光出力信号値を示している。これに対して、図10(b)は、煙の発生があった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。これらの対比から明らかなように、基本的には、煙で減光した光を受光した受光出力信号値が所定の閾値以下に減少したか否かを判断することで、火災判断を行うことができる。
【0011】
一方、図10(c)は、煙の発生がない正常時に、パルス信号に加えて、弱い定常光が重なった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。また、図10(d)は、煙の発生がない正常時に、パルス信号に加えて、強い定常光が重なった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。
【0012】
定常光の影響により受光素子出力に飽和が生じた場合の受光出力信号値は、直流成分が遮断されることから、図10(c)あるいは図10(d)に示すように、正常時の図10(a)よりも減少し、煙による減光が発生したときである図10(b)と同様の信号となってしまう。また、図10(d)よりもさらに強い定常光により、それだけで飽和してしまう場合には、受光出力信号値としては全く出力されない状態となってしまう。
【0013】
この結果、定常光の影響を受けた図10(c)あるいは図10(d)において、図10(b)と同様の閾値により火災判断を行うと、受光出力信号値が減少していることから、火災と判断してしまう誤作動を起こすおそれが生じてしまう。
【0014】
そこで、このような定常光(太陽光等の強い定常光)の影響による火災判断精度の劣化としての誤作動を防止するために、受光素子出力の直流成分を検出し、検出した直流成分の大きさから定常光の影響があると判断した場合には、発報判別処理(火災判断処理)を一時的に停止する信号処理部を設けた光電式分離型感知器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平5−35984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
光電式分離型感知器は、煙を検出したい領域が広域にわたる場合には、送光部と受光部とのペアを、間隔を空けて複数設置する場合がある。このような設置状況では、複数の送光部の発光タイミングが重なり、受光部が複数の送光部からの光を同時に受光してしまった場合には、パルス光による受光素子出力は、1台の送光部から受光する場合における通常のパルス光による受光素子出力よりも増大するおそれがある。
【0017】
しかしながら、複数の送光部からのパルス光を同時に受光してしまった場合には、太陽光のような定常光ではないので、受光素子出力の直流成分の増加は僅かであり、直流信号成分に起因して受光素子出力が飽和することはない。従って、特許文献1では、そのような状況にあることを検出することができない。この結果、このような状況で火災に伴う煙が発生して煙による減光が生じても、受光出力が火災判定レベルまで低下せず、火災を検知できない状況の発生、すなわち、不作動のおそれがある。
【0018】
図11は、不作動要因の説明図である。先の図10と同様に、図11(a)〜(d)のそれぞれにおける左側の図の縦軸は、受光素子出力を示しており、図11(a)〜(d)のそれぞれにおける右側の図の縦軸は、受光出力信号値を示している。また、各図の横軸は、時間であり、この図11では、先の図10と同様に、4つのパルス信号が連続して送光部から発光され、受光部で受光される状態を例示している。
【0019】
図11(a)は、他のパルス光との重複が発生しておらず、かつ煙の発生がない正常時における受光素子出力と受光出力信号値を示しており、先の図10(a)と同様の状態を示している。これに対して、図11(b)は、他のパルス光との重複が発生しておらず、かつ煙の発生があった場合における受光素子出力と受光出力信号値を示しており、先の図10(b)と同様の状態を示している。これらの対比から明らかなように、基本的には、煙で減光した光を受光した受光出力信号値が所定の閾値以下に減少したか否かを判断することで、火災判断を行うことができる。
【0020】
一方、図11(c)は、他のパルス光との重複が発生し、かつ煙の発生がない正常時において受光素子出力が飽和する場合の、受光素子出力と受光出力信号値を示している。また、図11(d)は、他のパルス光との重複が発生し、かつ煙の発生があったときで、受光素子出力が飽和する場合における受光素子出力と受光出力信号値を示している。なお、この図11(c)、11(d)では4つのパルス光のタイミングが完全に重複した場合を例示している。
【0021】
このようなパルス光の重複が発生した場合の受光出力信号値は、受光素子出力自体のパルスの高さが大きくなり飽和することから、図11(c)あるいは図11(d)に示すように、正常時の図11(a)よりも高い値のパルス信号となってしまう。
【0022】
この結果、他のパルス光との重複の影響を受けた図11(d)において、先の図10(b)と同様の閾値により火災判断を行うと、他のパルス光との重複の影響で、受光出力信号値が設定した閾値までは減少しないことから、火災を検知できない不作動を起こすおそれが生じてしまう。
【0023】
なお、図11(c)および図11(d)において受光素子が飽和しなかった場合であっても、受光出力信号値は、他のパルス光が重畳されることによって図11(b)における受光出力信号値よりも増大するので、火災による煙で減光したときに前記火災判断の閾値までは減少せず、火災を検知できない不作動を起こすおそれが生じる。
【0024】
また、従来の光電式分離型感知器においては、太陽光等の強い定常光の影響を受けた場合(誤作動要因に相当)、あるいは複数の送光部からのパルス光を同時に受光してしまった場合(不作動要因に相当)のそれぞれの劣化要因を識別することまでは行われていなかった。
【0025】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明に係る光電式分離型感知器は、発光素子と、発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力の直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、送光部とは分離配置された受光部とを備えた光電式分離型感知器であって、送光部コントローラは、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように発光出力を制御し、該発光パターンは、繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された固有情報に基づくデジタルデータのビット列とを備え、受光部コントローラは、デジタルデータの固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行うものである。
【0027】
また、本発明に係る光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法は、発光素子と、発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力に含まれる直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、送光部とは分離配置された送光部とを備えた光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法であって、送光部コントローラにおいて、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように発光出力を制御し、該発光パターンは、繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された固有情報に基づくデジタルデータのビット列によって構成されている、第1ステップと、受光部コントローラにおいて、デジタルデータの固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行う第2ステップとを備え、第2ステップは、固有情報に基づくデジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算するステップと、背景レベル値を基準としたときの発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断するステップと、相対値が第1の所定値以下かつ第2の所定値以上の値をとることなく、第2の所定値未満の場合には外部から定常光を受光しているものと判断し、一時的に火災判断を行わないステップと、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットが検出された場合、またはデジタルデータのビット列において送光部からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットが検出された場合には、検出されたビットが、発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したことによる重複ビットに該当すると判断し、重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を行うステップとを含むものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法によれば、火災判断を行うために、感知器毎に決められた固有の発光パターンとして、デジタルデータのビット列を含むパルス光を送信し、パルス光の受光出力信号値に基づいて信号解析を行うことにより、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器の送光部および受光部の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器に用いられる発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光された際の受光出力信号値を示した説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、火災による煙が発生して、送光部からのパルス光が煙によって減光した際の受光出力信号値を示した説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、太陽光等の強い定常光が外乱光として入射した際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、隣接する、あるいは離れた位置にある、発光タイミングが重なった他の送光部からのパルス光を自身の送光部からのパルス光とともに、すなわち、複数の送光部からのパルス光を受光してしまった際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器で、火災判断および火災判断精度の劣化要因を識別するために用いられる所定値と、受光出力信号値との関係をまとめた説明図である。
【図8】本発明の実施の形態2における光電式分離型感知器の送光部および受光部の内部構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の実施の形態3における光電式分離型感知器に用いられる、『1』となる特定のビットを付加した発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光され、煙による減光も受けなかった際の受光出力信号値を示した説明図である。
【図10】誤作動要因の説明図である。
【図11】不作動要因の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
【0031】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器を示す構成図である。光電式分離型感知器は、送光部10と受光部20とによって構成されている。
上述したように、送光部10と受光部20との間の距離(監視距離)は、例えば、5m〜100m程度であり、距離に応じてレンジ設定を行い、その結果、送光部10の発光量および受光部20の火災判定レベルである閾値が適宜設定される。送光部10から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光を受光部20で受光し、火災に伴う煙による受光出力信号値の変化に基づいて、火災であるか否かの火災判断を行う。また、火災判断を行いたい領域が広域にわたる場合には、このような送光部10と受光部20とのペアを、間隔を空けて複数設置することがある。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器の送光部10および受光部20の内部構成を示すブロック図である。送光部10は、発光素子11、および送光部コントローラ12を備えて構成されている。一方、受光部20は、受光素子21、受光部コントローラ22、故障時に点灯または点滅する故障表示灯23、火災判定時に点灯または点滅する火災表示灯24、および図示しない火災受信機へ火災信号および故障信号等を送出する信号出力部25を備えて構成されている。
【0033】
送光部コントローラ12は発光素子を制御し、発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光のオン/オフ、および発光強度等の発光パターンを制御する。一方、受光部コントローラ22は、受光素子21の出力の直流成分を遮断し、その後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化に基づいて、信号解析を行い、火災判断を行う。なお、受光素子21の出力の直流成分を遮断するためには、コンデンサ等を用いることが一般的であるが、図2では、受光部コントローラ22の内部機能に含めており、図示していない。
【0034】
本実施の形態1における光電式分離型感知器は、火災判断等の信号解析を行うための発光パターンとして、感知器毎に共通のヘッダおよびフッタ(感知器毎に共通である信号識別用の共通情報に相当)を構成する信号識別用のパルス光と、ヘッダ、フッタ間に挟持された、感知器毎に固有の情報(例えば、製造番号、アドレス等、重複することがない情報)に基づくデジタルデータのビット列からなるパルス光を用いて光通信を行うことを技術的特徴としている。
【0035】
より具体的には、このようなビット列による発光パターンを受光部20側で受光した際の受光出力信号値に基づいて、火災判断を行うとともに、火災判断精度の劣化要因を識別することを技術的特徴としているものである。そこで、まず始めに、本実施の形態1における送光部10から発光される発光パターン、およびこの発光パターンに対応して受光部20による信号解析で用いられる受光出力信号値について説明する。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器に用いられる発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光された際の受光出力信号値を示した説明図である。この図3における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0037】
ここで、図3に示す受光パターン(すなわち、外乱光等の影響を受けずに正常に受光され、火災による煙で減光していない際の受光パターンであることから、送光部10から発光される発光パターンに相当)は、以下のような規定を有している。
(1)送光部からのパルス光がないビットに対応して受光部20側で検出される受光出力信号値を『0』と定義する。
(2)(1)で定義した受光出力信号値を越え、かつ、送光部からのパルス光があるビットに対応して受光部20側で検出される受光出力信号値を『1』と定義する。
(3)送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値から逆算し、半分の受光出力信号値になるように設定された値を『ヘッダ』と定義する。
(4)受光出力信号値が『0』となるパルス光がないビットの後に、送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値の半分の受光出力信号値になるように設定された値を付加した2ビット分のビット列を『フッタ』と定義する。
(5)『ヘッダ』から『フッタ』までの間のデジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値を読み取る。
【0038】
なお、上記ヘッダおよびフッタは、これらに挟持されるデジタルデータの開始と終了とを識別するためのものであって、その目的が達成されるならば、上記の定義と異なる形態(例えば、前記デジタルデータと明確に区別される特定のデジタル値を示すパルス列)であってもよい。
【0039】
ここで、本実施の形態1では、ヘッダとフッタとに挟まれたデータとして、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンを有するデジタルデータを用いている。
【0040】
図3では、ヘッダとフッタとの間で、「01011101」という、パルス光があるビットとないビットが混在した8ビットのデジタル情報が、感知器に固有の発光パターンとして送信されている場合を例示している。
【0041】
従って、ヘッダ、フッタ、個々のビットに対応する受光出力信号値の情報は、火災判断を行う、あるいは火災判断の劣化要因を分析するための複数の情報として活用でき、さらに、デジタルデータとしてのまとまった情報は、発光パターンが固有に割り付けられた送光部を特定し、識別するための情報として活用できることとなる。
【0042】
この結果、このような規定に基づく受光パターンに対応した受光出力信号値に対して信号処理を施すことで、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器を得ることができる。そこで、火災判断および劣化要因の識別を行う具体的な方法について、次に説明する。
【0043】
[火災判断方法について]
図4は、本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、火災による煙が発生して、送光部からのパルス光が煙によって減光した際の受光出力信号値を示した説明図である。先の図3と同様に、この図4における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0044】
先の図3に示した発光パターンに従った情報通信時に、煙が発生していた場合には、この図4に示すように、受光部20側におけるヘッダ、フッタ、およびデジタルデータのビット列からなる個々のビットに対応した受光出力信号値のレベルが、全体に渡って低下することとなる。
【0045】
そこで、受光部コントローラ22は、例えば、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が火災判定レベルである第1の所定値以下に減少し、かつ、強い定常光を受けていると判定するレベルである、第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には、煙が発生したことによる減光が発生したとして、火災と判断することができる。なお、第2の所定値については「火災判断精度の劣化要因の識別方法について」の劣化要因1の項において詳細に説明する。
【0046】
また、受光部コントローラ22は、火災判断の際に、デジタルデータに対応する受光出力信号値だけではなく、その前後に存在するヘッダあるいはフッタ部分に対応する受光出力信号値を用いることもできる。
【0047】
例えば、この図4の例では、ヘッダおよびフッタに狭持されたデジタルデータ(01011101)のうち、『1』となっているビット(すなわち、送光部からのパルス光がある2、4、5、6、8ビット目に相当)に対応するそれぞれの受光出力信号値と、第1の所定値および第2の所定値との比較結果から、煙発生の有無による火災判断をすることができる。
【0048】
また、『1』となっている個々のビットについて個別にこのような火災判断を行い、所定の複数のビットで火災が判断したと判断した場合に、最終的に火災が発生したと判断することもでき、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を図ることができる。
【0049】
また、別の判断手法としては、次のような方法をとることもできる。まず、受光部コントローラ22は、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値を求める。
【0050】
さらに、受光部コントローラ22は、デジタルデータのビット列に対応する受光出力信号値のうち、デジタルデータのビット列において送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値を求める。
【0051】
そして、受光部コントローラ22は、背景レベル値を基準としたときの発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が、煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断する。
【0052】
なお、発光レベル値および背景レベル値を求めるための、受光出力信号値を評価し数値化する具体的は方法としては、以下のような統計量を適用できる。
(1)平均化(相加平均)
(2)多数決論理(例えば、最大値と最小値を除いた残りの平均値を求める)
(3)相乗平均、中央値
【0053】
このような方法によっても、複数のビット情報を考慮することができ、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を図ることができる。
【0054】
また、受光部コントローラ22は、火災と判断した場合には、火災表示灯24により、火災の発生状態を通知することができ、さらに、信号出力部25を介して火災受信機へ火災信号を通知することができる(図2参照)。
【0055】
[火災判断精度の劣化要因の識別方法について]
次に、火災判断精度の劣化要因である、強い定常光の影響、および発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光を受光したことによる影響を識別する方法について説明する。
【0056】
(1)劣化要因1:強い定常光の有無の判断方法について
図5は、本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、太陽光等の強い定常光が外乱光として入射した際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。先の図3、図4と同様に、この図5における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0057】
光電式分離型感知器が煙の有無を監視する空間は、送光部10と受光部20との間であり、火災感知器内部の微少空間における煙の有無を監視している光電式スポット型感知器よりも遙かに大きく長い空間を監視している。故に、火災による煙が発生した場合、光電式分離型感知器が監視している空間が煙で満たされるまでには時間がかかるので、この煙による減光は急激には起こらない。すなわち、受光出力信号値がステップ応答の如く急激に低下することはない。
【0058】
これに対し、太陽光等の強い定常光が受光部20に入射した場合、受光素子21が受光する光量は膨大であり、送光部10の発光素子11(例えば、発光ダイオード)が出力するパルス光よりも遙かに大きい。故に、太陽光等の強い定常光が受光部20に僅かでも入射した場合は、受光素子21の出力はステップ応答の如く、素早く直流的に飽和するレベルに達する。
【0059】
図5に示す受光出力信号値は、すでに図10(d)を用いて説明したように、先の図4における煙発生による減光が生じたときの受光出力信号値よりも小さな値となってしまう。火災が進行して濃い煙が大量に発生した場合には、煙による減光によって、このような受光出力信号値となることもあるが、前記説明の如く、急激にこのような小さな値となることはない。しかしながら、この図5における受光出力信号値は、火災判定レベルである第1の所定値よりも小さく、電子的ノイズレベルよりも大きく設定する第2の所定値よりもさらに小さいこととなる。
【0060】
従って、受光部コントローラ22は、受光出力信号値が、第1の所定値以下、かつ第2の所定値以上の値をとることなく、第2の所定値未満となってしまった場合には、煙による減光が発生したのではなく、外部から強い定常光を受光したことにより受光出力信号値が急激かつ大幅に減少したと判断することができる。
【0061】
受光部コントローラ22は、このようにして、外部から強い定常光を受光したと判断した場合には、火災判断を一時的に中止するとともに、このような状態となったことを、故障表示灯23を点灯または点滅させることにより通知することができ、さらに、信号出力部25を介して火災受信機へ通知することができる(図2参照)。
【0062】
また、受光部コントローラ22は、火災判断精度の劣化要因が強い定常光の影響であることを識別できるとともに、一時的に火災判断を停止することができるので、誤作動を防止することができる。
【0063】
さらに、複数のビット情報に基づくことで、先の火災判断と同様に、強い定常光の検出精度の向上を図ることができる。また、受光部コントローラ22は、強い定常光の有無を判断する際に、先の火災判断と同様に、デジタルデータに対応する受光出力信号値だけではなく、その前後に存在するヘッダあるいはフッタ部分に対応する受光出力信号値を用いることもできる。さらに、受光出力信号値として、先の火災判断と同様に、平均値等の統計量を用いることで、判断精度の向上を図ることもできる。
【0064】
(2)劣化要因2:発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光を受光しているか否かの判断方法について
図6は、本発明の実施の形態1による光電式分離型感知器において、隣接する、あるいは離れた位置にある、発光タイミングが重なった他の送光部からのパルス光を自身の送光部からのパルス光とともに、すなわち、複数の送光部からのパルス光を受光してしまった際の受光出力信号値の一例を示した説明図である。先の図3〜図5と同様に、この図6における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0065】
図6に示す受光出力信号値は、すでに図11(c)、(d)を用いて説明したように、先の図3における正常時で煙による減光が無い場合の受光出力信号値よりも、一部のビットで大きな値となってしまう。しかしながら、本実施の形態1で用いるデジタルデータは、感知器毎の固有情報に基づいているため、送光部毎に発光パターンが異なるデジタルデータを参照できるので、すべてのビットで重複が発生してしまう最悪の事態を防止でき、重複が発生するビットを一部だけにとどめることができる。図6においては、1〜8ビット目のうち、3、5、6、7ビット目で重複が発生したものの、1、2、4、8ビット目では重複が発生していない状態を例示している。
【0066】
従って、受光部コントローラ22は、次のような処理を行うことができる。まず始めに、受光部コントローラ22は、自身の感知器に事前に割り当てられた固有情報に基づくデジタルデータのビット列において、送光部10からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットがあるか否かを検出する。
【0067】
図6の例では、受光部コントローラ22は、2、4、5、6、8ビット目における受光出力信号値と、第3の所定値とを比較することで、5、6ビット目を第3の所定値以上あるビットとして検出する。
【0068】
さらに、受光部コントローラ22は、自身の感知器に事前に割り当てられた固有情報に基づくデジタルデータのビット列において、送光部10からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットがあるか否かを検出する。
【0069】
図6の例では、受光部コントローラ22は、1、3、7ビット目における受光出力信号値と、第4の所定値とを比較することで、3、7ビット目を第4の所定値以上あるビットとして検出する。
【0070】
次に、受光部コントローラ22は、第3の所定値以上あるビットとして検出した5、6ビット目と、第4の所定値以上あるビットとして検出した3、7ビット目を、他の送光部からのパルス光との重複が発生した重複ビットに該当すると判断する。そして、この場合には、受光部コントローラ22は、重複ビット以外のビットである1、2、4、8ビット目における受光出力信号値に基づいて、火災判断を行うことができる。
【0071】
従って、受光部コントローラ22は、発光のあるビットに対応する受光出力信号値が第3の所定値以上であるビット、および発光のないビットに対応する受光出力信号値が第4の所定値以上であるビットを他の送光部からのパルス光による重複ビットと判断でき、さらに、重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を継続して行うことができる。すなわち、受光部コントローラ22は、火災判断精度の劣化要因が重複ビットの影響であることを識別できるとともに、火災判断を停止することなく、不作動を防止することができる。
【0072】
また、受光部コントローラ22は、重複ビットがあると判断した場合には、重複ビット以外のビットを用いて火災判断を継続する一方で、他の送光部からのパルス光を重複して受光してしまっていることを、故障表示灯23(図2参照)を点灯または点滅させることにより表示することができ、さらに、信号出力部25を介して火災受信機へ通知することができる。
【0073】
なお、隣接する送光部同士で、重複した状態を検知しやすくするように、それぞれの送光部に固有に割り当てるデジタルデータを工夫することも可能である。
【0074】
図7は、本発明の実施の形態1における光電式分離型感知器で、火災判断および火災判断精度の劣化要因を識別するために用いられる所定値と、受光出力信号値との関係をまとめた説明図である。
【0075】
本実施の形態1に係る受光部コントローラ22において、火災判断および火災判断精度の劣化要因を識別する方法をまとめると、以下のようになる。
[識別1]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第1の所定値より大きく第3の所定値より小さい範囲に存在する場合(図7における「正常値検出エリア」に相当)には、火災が発生していないと判断する。
[識別2]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第1の所定値以下で、第2の所定値以上の範囲に存在する場合(図7における「火災検出エリア」に相当)には、火災が発生したと判断する。
[識別3]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第1の所定値以下で第2の所定値以上の値をとることなく、前記第1の所定値以上で前記第3の所定値以下の値から、直接、第2の所定値未満の範囲となった場合(図7における「定常光検出エリア」に相当)には、ある一定以上の強い定常光が入力したと判断し、火災判断を一時的に中止することで、誤作動を未然に防ぐ。
[識別4]送光部10からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値が、第3の所定値以上の範囲に存在するビットがあるか、あるいは、送光部10からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値が、第4の所定値以上の範囲に存在するビットがある場合(図7における「重複ビット検出エリア」に相当)には、それらのビットを重複ビットと特定し、受光部と対応する送光部以外の、発光タイミングが重複した他の送光部のパルス光を受光したと判断し、重複ビット以外のビット情報に基づいて火災判断を継続することで、不作動を未然に防ぐ。
【0076】
上述した4種の識別のうち、識別1〜3では、送光部10からのパルス光があるビットに対して共通に現れる現象を判断している。一方、識別4では、送光部10からのパルス光があるビットとないビットの個々のビットに対して個別に現れる現象を判断している。
【0077】
また、第1の所定値〜第3の所定値に関しては、以下のような大小関係がある。
第3の所定値>第1の所定値>第2の所定値
そして、第4の所定値に関しては、必ずしも、図7に図示したように第2の所定値よりも小さく設定する必要はなく、重複ビットを検出するための適切な値として個別に設定できる。
【0078】
以上のように、実施の形態1によれば、火災判断を行うために、感知器毎に決められた固有の発光パターンとして、デジタルデータのビット列を含むパルス光を送光部が出力し、このパルス光を受光した受光部の受光出力信号値に基づいて受光部コントローラが信号解析を行う構成を備えている。この結果、火災判断精度の向上を図るとともに、火災判断精度の劣化要因を識別できる光電式分離型感知器および光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法を得ることができる。
【0079】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、火災判断精度の劣化要因が、発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光の影響であった場合には、重複が発生していないビットを用いて火災判断を継続する場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、受光部20で発光タイミングが重複した他の送光部からのパルス光の影響を検出した際に、発光タイミング修正指令を送光部10に与えることで、動的に、重複がない発光タイミングに調整し、火災判断を継続する場合について説明する。
【0080】
図8は、本発明の実施の形態2における光電式分離型感知器の送光部10および受光部20の内部構成を示すブロック図である。先の実施の形態1における図2の構成と比較すると、本実施の形態2における図8の構成は、送光部10内の送光部インターフェース回路(送光部I/F回路)16と、受光部20内の受光部インターフェース回路(受光部I/F回路)26とをさらに備え、送光部I/F回路16と受光部I/F回路26とが信号線30で接続されている点が異なっている。
【0081】
このような回路構成をさらに備えることで、本実施の形態2における光電式分離型感知器は、受光部20で重複ビットの存在を検出した場合には、その情報に基づく発光タイミング修正指令を送光部10に与えることが可能となる。そこで、発光タイミング修正指令に基づく一連の制御について、次に説明する。
【0082】
先の実施の形態1で説明したように、受光部コントローラ22は、発光のあるビットに対応する受光出力信号値が第3の所定値以上であるビット、および発光のないビットに対応する受光出力信号値が第4の所定値以上であるビットを重複ビットと特定することができる。
【0083】
そこで、重複ビットを検出した場合には、受光部コントローラ22は、受光部インターフェース回路(受光部I/F回路)26と信号線30とを介して、発光素子11による発光タイミングをずらすための指令(発光タイミング修正指令)を送光部10側に送信する。この発光タイミング修正指令を送光部インターフェース回路(送光部I/F回路)16を介して受信した送光部コントローラ12は、例えば、3秒間隔で発光を行っていたとすると、1回だけ4.5秒間隔にして半周期分ずらし、その後、再び3秒間隔で発光を続けるように、発光素子11の発光タイミングをずらすことができる。このような処理を行うことで、他の送光部からのパルス光を重複して受光することを回避することができ、すべてのビット情報を用いた火災判断を行うことが可能となる。
【0084】
以上のように、実施の形態2によれば、受光部での重複ビットの検出結果に基づいて発光タイミング修正指令を送光部に伝えることが可能な構成を備えている。この結果、発光タイミングが重複した他の送光部のパルス光を重複して受光した場合にも、動的に、適正な発光タイミングに修正し、すべてのビット情報を用いた火災判断を行うことが可能となる。
【0085】
なお、本実施の形態2では、発光タイミング修正指令に対応して、送光部10に備わる発光素子11の発光タイミングを半周期ずらす場合について説明したが、このような修正方法に限定されるものではない。例えば、発光タイミングの位相を所定量ずつ逐次ずらしていき、重複ビットが検出されない状態とすることなども可能である。
【0086】
実施の形態3.
先の実施の形態1、2で説明したように、本発明では、感知器毎に固有の発光パターンとしてのデジタルデータの情報を持たせている。そして、このような固有のデジタルデータとしては、それぞれの送光部に付けられた製造番号やアドレス等を割り付けることが考えられる。
【0087】
しかしながら、このようにして割り付けられたデジタルデータは、製造番号によっては、発光するビット(すなわち『1』に対応するビット)がほとんどない場合も考えられる。このような場合には、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を十分に得ることができないおそれがある。そこで、本実施の形態3では、固有のデジタルデータとは別に、『1』となるビットを1箇所以上に挿入することで、火災判断精度の向上を確保する場合について説明する。
【0088】
図9は、本発明の実施の形態3における光電式分離型感知器に用いられる、『1』となる特定のビットを付加した発光パターンが、外乱光等の影響を受けずに正常に受光され、煙による減光も受けなかった際の受光出力信号値を示した説明図である。先の図3〜図6と同様に、この図9における横軸は、発光タイミングに相当する時間を示しており、縦軸は、受光部コントローラ22で信号解析を行うための受光出力信号値の電圧レベル(V)の一例を示している。
【0089】
図9(a)に1点鎖線として示したように、例えば、ヘッダの直後、フッタの直前、あるいは8ビットで構成されているデジタルデータの間に、必ず発光する『1』のビットを挿入することが考えられる。
【0090】
図9(b)は、デジタルデータ(01011101b)の1ビット目と2ビット目の間と、7ビット目と8ビット目の間の2箇所に、ハッチングで示したような、必ず発光する『1』のビットを挿入した場合を示している。同様に、図9(c)は、デジタルデータ(00000001b)の1ビット目と2ビット目の間と、7ビット目と8ビット目の間の2箇所に、ハッチングで示したような、必ず発光する『1』のビットを挿入した場合を示している。
【0091】
このような処理を行うことで、デジタルデータ(00000001b)だけでは、『1』となるビットが1つしかなかったものを、付加したビットにより3つのビットで『1』を持たせることができる。この結果、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を確保することができる。
【0092】
以上のように、実施の形態3によれば、送光部ごとに固有のデジタルデータに対して、必ず発光する『1』のビットを挿入することで、複数の情報に基づいた火災判断精度の向上を確保することが可能となる。
【0093】
なお、図9を用いた例では、ヘッダの直後、フッタの直前、あるいは8ビットで構成されているデジタルデータの間の1箇所以上に、必ず発光する『1』のビットを挿入する場合について説明したが、このような構成に限定されるものではない。例えばフッタの直前などの1箇所に、必ず発光する『1』のビットを複数挿入することでも、同様の効果を得ることができる。
【0094】
実施の形態4.
本実施の形態4では、ヘッダ、フッタ、およびデジタルデータのビット列からなる光信号を用いることで、同期線を不要とする光電式分離型感知器を実現できる点について説明する。なお、本実施の形態4における光電式分離型感知器の構成としては、先の実施の形態1における図2を用いて説明する。
【0095】
送光部10内の送光部コントローラ12は、発光素子11から一定周期で、先の実施の形態1で説明した規定に従って、例えば、先の図3に示すような、フッタとヘッダに挟持された信号(デジタル情報「01011101」)を送信する。
【0096】
一方、受光部20内の受光部コントローラ22は、受光素子21を介して受光出力信号値を受信する。そして、受光部コントローラ22は、受信した受光出力信号値について、上述した規定に基づいたヘッダとフッタの位置、およびその周期を解析することで、受信タイミングの同期を確立し、同期運転することができる。
【0097】
一度、同期が確立すると、その後の煙発生を監視し火災判断を行うモードにおいては、その同期タイミングに従って受信部の回路を起動することで、受信処理の必要がないタイミングでは、電源をオフしておくことが可能となり、省電力化を図ることができる。
【0098】
また、同期タイミングで受信信号の読み取りを行った際に、ヘッダとフッタの位置が正しく読み取れなくなった場合には、受光部コントローラ22は、なんらかの原因で同期がずれてしまったと判断することができる。この場合には、受光部コントローラ22は、ヘッダとフッタの位置を繰り返し読み取れるまで、受信処理を継続して行うことで、同期運転を回復することができる。
【0099】
なお、初期における同期タイミングおよび周期の解析、あるいは、その後に行う再度の同期タイミングおよび周期の解析に当たっては、受光部コントローラ22は、ヘッダとフッタの位置を最低でも2セット分取得できれば、同期タイミングおよび周期を特定できることとなる。また、ヘッダとフッタの位置を3セット以上取得し、平均値を求めることで、同期タイミングおよび周期の特定精度を向上させることができる。
【0100】
また、再度の同期タイミングおよび周期の解析を定期的に行うことで、同期線を用いない光電式分離型感知器においても、同期ずれの発生を防止することができる。
【0101】
以上のように、実施の形態4によれば、送光部の発光素子から出力される、ヘッダ、フッタ、およびデジタルデータのビット列からなる感知器に固有の発光パターンのパルス光を受光部の受光素子が繰り返し受光することで、受光部コントローラは、ヘッダとフッタに挟まれた情報の周期とタイミング(位相)を特定することができる。この結果、受光部側は、受光結果を解析することで、送光部と同期運転することができ、同期線を不要とすることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 送光部、11 発光素子、12 送光部コントローラ、16 送光部インターフェース回路、20 受光部、21 受光素子、22 受光部コントローラ、23 故障表示灯、24 火災表示灯、25 信号出力部、26 受光部インターフェース回路、30 信号線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、
前記パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力の直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、前記送光部とは分離配置された受光部と
を備えた光電式分離型感知器であって、
前記送光部コントローラは、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように前記発光出力を制御し、
該発光パターンは、前記繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された前記固有情報に基づくデジタルデータのビット列とを備え、
前記受光部コントローラは、前記デジタルデータの前記固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行う
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項2】
請求項1に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラは、
前記固有情報に基づく前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値のうち、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算し、
前記背景レベル値を基準としたときの前記発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断し、
前記相対値が前記第1の所定値以下かつ前記第2の所定値以上の値をとることなく、前記第2の所定値未満の場合には外部から定常光を受光しているものと判断し、一時的に前記火災判断を行わない
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラは、
前記固有情報に基づく前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値のうち、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算し、
前記背景レベル値を基準としたときの前記発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断し、
前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットが検出された場合、または前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットが検出された場合には、検出された前記ビットが、発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したことによる重複ビットに該当すると判断し、前記重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を行う
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項4】
請求項3に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラと前記送光部コントローラとのデータ通信を行う信号線をさらに有し、
前記受光部コントローラは、前記発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したと判断した場合には、自身の送光部から投光されるパルス光の発光タイミングをずらすように、前記信号線を介して前記送光部コントローラに対して指令を送る
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラは、前記発光パターンに基づく前記受光出力信号値の繰り返しパターンから同期情報を取得するとともに、前記受光出力信号値に含まれるデジタルデータから固有情報を抽出することによって対となる固有の送光部を識別して同期運転をする
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項6】
発光素子と、前記発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、
前記パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力に含まれる直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、前記送光部とは分離配置された送光部と
を備えた光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法であって、
前記送光部コントローラにおいて、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように前記発光出力を制御し、該発光パターンは、前記繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された前記固有情報に基づくデジタルデータのビット列によって構成されている、第1ステップと、
前記受光部コントローラにおいて、前記デジタルデータの前記固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行う第2ステップと
を備え、
前記第2ステップは、
前記固有情報に基づく前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値のうち、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算するステップと、
前記背景レベル値を基準としたときの前記発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断するステップと、
前記相対値が前記第1の所定値以下かつ前記第2の所定値以上の値をとることなく、前記第2の所定値未満の場合には外部から定常光を受光しているものと判断し、一時的に前記火災判断を行わないステップと、
前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットが検出された場合、または前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットが検出された場合には、検出された前記ビットが、発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したことによる重複ビットに該当すると判断し、前記重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を行うステップと
を含むことを特徴とする光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法。
【請求項1】
発光素子と、前記発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、
前記パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力の直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、前記送光部とは分離配置された受光部と
を備えた光電式分離型感知器であって、
前記送光部コントローラは、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように前記発光出力を制御し、
該発光パターンは、前記繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された前記固有情報に基づくデジタルデータのビット列とを備え、
前記受光部コントローラは、前記デジタルデータの前記固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行う
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項2】
請求項1に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラは、
前記固有情報に基づく前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値のうち、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算し、
前記背景レベル値を基準としたときの前記発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断し、
前記相対値が前記第1の所定値以下かつ前記第2の所定値以上の値をとることなく、前記第2の所定値未満の場合には外部から定常光を受光しているものと判断し、一時的に前記火災判断を行わない
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラは、
前記固有情報に基づく前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値のうち、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算し、
前記背景レベル値を基準としたときの前記発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断し、
前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットが検出された場合、または前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットが検出された場合には、検出された前記ビットが、発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したことによる重複ビットに該当すると判断し、前記重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を行う
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項4】
請求項3に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラと前記送光部コントローラとのデータ通信を行う信号線をさらに有し、
前記受光部コントローラは、前記発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したと判断した場合には、自身の送光部から投光されるパルス光の発光タイミングをずらすように、前記信号線を介して前記送光部コントローラに対して指令を送る
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の光電式分離型感知器において、
前記受光部コントローラは、前記発光パターンに基づく前記受光出力信号値の繰り返しパターンから同期情報を取得するとともに、前記受光出力信号値に含まれるデジタルデータから固有情報を抽出することによって対となる固有の送光部を識別して同期運転をする
ことを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項6】
発光素子と、前記発光素子から所定の周期で繰り返し出力されるパルス光の発光出力を制御する送光部コントローラとを有する送光部と、
前記パルス光を受光する受光素子と、該受光素子出力に含まれる直流成分を遮断した後のパルス成分からなる受光出力信号値の変化によって火災判断を行う受光部コントローラとを有し、前記送光部とは分離配置された送光部と
を備えた光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法であって、
前記送光部コントローラにおいて、感知器毎の固有情報に基づいて感知器毎に固有の発光パターンとなるように前記発光出力を制御し、該発光パターンは、前記繰り返し出力されるパルス光が連続するビット列で構成され、該ビット列は、感知器毎に共通である信号識別用の共通情報を有する信号識別用パルス光と、該信号識別用パルス光で挟持された前記固有情報に基づくデジタルデータのビット列によって構成されている、第1ステップと、
前記受光部コントローラにおいて、前記デジタルデータの前記固有情報によって対応する送光部からの信号を識別し、前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値の変化状態から、火災判断を行うとともに火災判断精度の劣化要因の特定を行う第2ステップと
を備え、
前記第2ステップは、
前記固有情報に基づく前記デジタルデータのビット列に対応する前記受光出力信号値のうち、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した発光レベル値と、前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応する受光出力信号値を評価し数値化した背景レベル値とを演算するステップと、
前記背景レベル値を基準としたときの前記発光レベル値の相対的な大きさを示す相対値が煙による減光を火災と判断する閾値である第1の所定値以下に減少し、かつ前記第1の所定値よりも小さい第2の所定値以上の場合には火災と判断するステップと、
前記相対値が前記第1の所定値以下かつ前記第2の所定値以上の値をとることなく、前記第2の所定値未満の場合には外部から定常光を受光しているものと判断し、一時的に前記火災判断を行わないステップと、
前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光があるビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が平常時よりも高い値に相当する第3の所定値以上あるビットが検出された場合、または前記デジタルデータのビット列において前記送光部からのパルス光がないビットに対応するビットの中で、前記受光出力信号値が第4の所定値以上あるビットが検出された場合には、検出された前記ビットが、発光タイミングが重複した複数の送光部のパルス光を受光したことによる重複ビットに該当すると判断し、前記重複ビット以外のビットにおける受光出力信号値に基づいて火災判断を行うステップと
を含むことを特徴とする光電式分離型感知器に用いられる信号解析方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−212403(P2012−212403A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78700(P2011−78700)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】
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