光音響システム及び薬剤
【課題】 疾患部への薬剤の導入及び治療を適切に行なうことができる光音響システム及び薬剤を提供する。
【解決手段】 光音響システム100は、超音波造影剤140と光音響効果を示す光音響材料144と被検体200の特定の組織に集積する特性を有する標的薬142とを有する薬剤300を被検体200に投与させる投与器と、被検体200に超音波を照射する超音波探触子102と、被検体200に光を照射する光照射部120とを備える。
【解決手段】 光音響システム100は、超音波造影剤140と光音響効果を示す光音響材料144と被検体200の特定の組織に集積する特性を有する標的薬142とを有する薬剤300を被検体200に投与させる投与器と、被検体200に超音波を照射する超音波探触子102と、被検体200に光を照射する光照射部120とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響を用いる光音響システム及び薬剤に係り、特に、治療を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん剤や遺伝子治療に用いる遺伝子などの薬剤を悪性腫瘍の細胞内に導入して悪性腫瘍を治療することが提案されている。また、被検体の細胞内への薬剤の導入を促進するため、超音波診断装置を用い、静脈から被検体に投与した薬剤に超音波を所定時間照射して、薬剤の悪性腫瘍の細胞内への導入を促進することが提案されている。(例えば、特許文献1)。
【0003】
同文献によれば、被検体の体表面に超音波探触子を密着させて悪性腫瘍のある領域に超音波を照射し、そのエコー信号に基づいて超音波画像を生成し、その超音波画像に基づいて治療領域と超音波の照射計画を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-261253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、静脈から被検体に投与した薬剤が悪性腫瘍の存在する疾患部に超音波を所定時間照射しているが、薬剤が疾患部に到達したかどうかを操作者は確認することができない。よって、操作者は超音波を照射するタイミングを把握することができないため、疾患部への薬剤の導入及び治療が適切に行われていない可能性がある。
【0006】
本発明では、疾患部への薬剤の導入及び治療を適切に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、光音響システムは、超音波造影剤と光音響効果を示す光音響材料と被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有する薬剤を被検体に投与させる投与器と、被検体に超音波を照射する超音波探触子と、被検体に光を照射する光照射部とを備える。超音波造影剤に起因する断層画像と、光音響材料に起因する光音響画像と構成する画像構成部と、断層画像と光音響画像とを表示する表示部を備える。そして、光照射部は、断層画像を基に検出された薬剤の集積位置に光照射を行う。
【0008】
また、超音波造影剤と、光音響効果を示す光音響材料と、被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有することを特徴とする薬剤を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、疾患部への薬剤の導入及び治療を適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光音響システムに関する構成図。
【図2】本発明の画像構成部106の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例1の動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の超音波送受信部104で受信処理できる帯域と超音波の周波数の関係を示す図。
【図5】本発明の実施例2の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例2の一表示形態を示す図。
【図7】本発明の実施例3の一表示形態を示す図。
【図8】本発明の実施例4を示す図。
【図9】本発明の実施例4を示す図。
【図10】本発明の実施例4を示す図。
【図11】本発明の実施例4を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を適用してなる光音響システム及び薬剤ついて図を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明を適用した光音響システムの構成を示すブロック図である。
図1において、光音響システム100は、被検体200内に超音波を送受信して得られエコー信号を用いて診断部位の超音波画像を構成して表示する機能を有している。具体的には、光音響システム100は、被検体200に超音波を照射して反射した超音波を受信する超音波探触子102と、被検体200に送信する超音波信号を発生するためのパルス状の電気信号を発生させ、超音波探触子102で受信したエコー信号を電気信号に変換する超音波送受信部104と、エコー信号に基づく超音波画像を構成する画像構成部106と、画像構成部106で構成された超音波画像を表示する表示部108と、被検体200内に光を照射する光照射部120と、光照射部120に光を放射させる光源部122と、各構成要素を制御する制御部110と、制御部110に指示を与える操作部112とを備えて構成される。画像構成部106で構成される超音波画像には、断層画像、光音響画像、ドプラ画像、弾性画像などが含まれる。
【0013】
超音波探触子102は、被検体200に接触させて用いられる。超音波探触子102は、被検体200との間で超音波を送受信するものであり、超音波を発生すると共に反射エコーを受信する複数の振動子が内蔵されている。画像構成部106は、超音波探触子102から出力されるエコー信号を入力してデジタル信号に変換し、診断部位の超音波画像を構成する。
【0014】
画像構成部106は、図2に示すように、超音波送受信部104から出力されるエコー信号に基づく電気信号に基づいて超音波画像を構成する超音波画像構成部150と、該構成された超音波画像を表示部108の表示形式に合わせて超音波画像を変換するディジタルスキャンコンバータ部(以下、DSC部と記す)152と、超音波画像に付帯するためのスケールやマーク及び文字等のグラフィックデータを生成するグラフィックデータ生成部156と、DSC部152で変換された超音波画像とグラフィックデータ生成部156で生成したグラフィックデータとを合成して記憶する記憶部154とを備えて構成されている。
【0015】
グラフィックデータ生成部156は、操作者による操作部112の操作に基づく制御部110の指令よって、スケールやマーク、文字等のグラフィックデータを生成する。
【0016】
表示部108は、画像構成部106で構成された超音波画像及びグラフィックデータ、記憶部154に記憶された超音波画像及びグラフィックデータを表示するものであり、例えばCRTモニタ、液晶モニタからなる。記憶部154に記憶される超音波画像はRFデータであってもよい。
【0017】
また、光源部122は、例えば、所定の波長の光を放射する半導体レーザ若しくはLEDと、半導体レーザ若しくはLEDが発生する光を複数の異なる周波数で変調するための変調器を備えた複数の光モジュールとを備えている。光源部122で発生した光は、光伝管124によって光照射部120まで導かれる。なお、光照射部120は光源部122を一体化して備えることにより、被検体200へ光を光照射部120から直接照射することもできる。
【0018】
本発明においては、図1に示すように、薬剤300が投与器(図示しない。)を介して被検体200に投与される。薬剤300は、高調波超音波信号により断層画像で可視化することができる超音波造影剤140と、光音響効果により光音響画像で可視化することができる光音響材料144と、被検体200の特定の組織に薬効を示す標的薬142とにより構成されている。このように、超音波造影剤140の周囲に光音響材料144と標的薬142が複数配置されることにより、薬剤300が構成されている。なお、超音波造影剤140の内部に光音響材料144と標的薬142が複数配置され、薬剤300が構成されていてもよい。
【0019】
超音波造影剤140は、例えば、溶液中に微細な気泡を混入したものである。気泡が超音波を受けると、気泡の変形や破壊に起因する超音波、気泡表面の反射波からなる特有のエコー信号を発生するため、画像構成部106を介して、超音波造影剤140に起因する断層画像を表示部108に表示することができる。よって、操作者は、超音波造影剤140の位置、すなわち薬剤300の位置を断層画像で確認することができる。
【0020】
光音響材料144は、例えば、金粉末のような粉末媒体で構成される。光音響材料144は、光照射部120から照射された光のエネルギーを吸収することにより、熱が発生する。そして、発生した熱によって光音響材料144が膨張収縮することにより、超音波振動波が放出される。超音波造影剤140と同様に、画像構成部106を介して、光音響材料144に起因する光音響画像を表示部108に表示することができる。よって、操作者は、光音響材料144の位置、すなわち薬剤300の位置を光音響画像で確認することができる。
【0021】
標的薬142は、腫瘍のような疾患部である特定の組織132に特異的に結びつき、特定の組織132に対して特異的に作用するものである。標的薬142は、例えば、腫瘍に対して、温熱治療をすることができ、効率的に腫瘍を治療することができる。
【0022】
ここで、本実施例の光音響システムの動作について図1、図3を用いて説明する。
(S101)検査者は、投与器を用いて超音波造影剤140の周囲又は内部に光音響材料144と標的薬142が複数配置されて構成された薬剤300を被検体200内に投与する。
【0023】
(S102)薬剤300が被検体200に投与されると、薬剤300は血流によって被検体200の全身に広がる。薬剤300は、腫瘍のような疾患部である特定の組織132に集積する性質をもつ標的薬142を有しているため、薬剤300が特定の組織132に集積する。そのため、投薬から一定時間経過後、薬剤300が特定の組織132に集積していることが期待される。
【0024】
(S103)薬剤300が特定の組織132に集積したと考えられる一定時間経過後、特定の組織132に対し、超音波探触子102から超音波を照射する。薬剤300の超音波造影剤140が超音波非線形応答を呈し、高調波超音波信号が発生される。超音波探触子102でこの超音波を受信し、画像構成部106は高調波超音波信号に基づく断層画像を構成する。
【0025】
(S104)画像構成部106で構成された高調波超音波信号に基づく断層画像を表示部108に表示する。よって、検査者は、表示部108に表示された断層画像から薬剤300の集積位置を確認することができる。
【0026】
(S105)検査者が薬剤300の集積位置を把握し、薬剤300が特定の組織132に集積することが確認できた際、超音波探触子102から照射されている超音波を停止する。
【0027】
(S106)光照射部120は、断層画像を基に検出された薬剤300の集積位置に光照射を行う。すなわち、薬剤300の集積位置である特定の組織132に対し、光照射部120から光を照射する。薬剤300は、光音響材料144を有しているため、光音響材料144の材質、寸法に応じた所定周波数、エネルギーの光を照射すると、光音響効果を呈する。光音響材料144は照射された光エネルギーを超音波振動波と熱に変換する。
【0028】
光音響材料144の光音響効果による超音波振動波により、標的薬142が特定の組織132である標的細胞との接触機会が増大するため、薬効を促進することができる。また、光音響材料144の光音響効果による熱により、光音響材料144自体が高温になり、蒸散する。その結果、特定の組織132も高温となり、特定の組織132内の細胞130を死滅させることもできる。
【0029】
(S107)超音波探触子102で光音響材料144の光音響効果による超音波振動波を受信し、画像構成部106は光音響材料144で放射された超音波振動波に基づく光音響画像を構成する。
【0030】
(S108)検査者は、表示部108に表示された光音響画像の状況から薬剤300の薬効を確認することができる。光照射領域の光音響材料144がほぼ蒸散されると、光照射しても、光音響効果による超音波振動波が放射されない。よって、特定の部位132における超音波画像には、光音響材料144からの光音響画像が表示されない。
【0031】
(S109)特定の部位132からの超音波画像に光音響材料144からの光音響画像が表示されなくなったら、更なる光照射が不要である。そのため、光照射部120の光照射を停止する。
【0032】
このように、本実施例の光音響システム100によれば、超音波造影剤140と光音響効果を示す光音響材料144と被検体200の特定の組織に集積する特性を有する標的薬142とを有する薬剤300を被検体200に投与させる投与器と、被検体200に超音波を照射する超音波探触子102と、被検体200に光を照射する光照射部120とを備える。よって、疾患部への薬剤300の導入及び治療を適切に行なうことができる。
【0033】
具体的には、検査者は、光音響材料144を有する薬剤300の集積状況をリアルタイムに光音響画像として確認することができるため、光照射を行う際、光照射位置を同定することができ、薬剤集積部位に対して、安全に光を誘導することができる。また、光照射部120が光照射した際、光音響効果で生じた超音波振動波を光音響画像として可視化することができる。光照射部120が光照射して、光音響材料144が蒸散すれば、光音響材料144から超音波振動波が放射されない。よって、必要以上に光照射することによる被検体200の火傷等の可能性が減少する。
【0034】
なお、図4(a)に示すように、超音波送受信部104で受信処理できる帯域幅は、比帯域で150%程度であり、光音響効果で生じた超音波エネルギーを十分に捕捉できない。そこで、本発明では、光源部122は、光照射部120から照射される光を略超音波送信周波数f0で振幅変調或いはオンオフ制御する。振幅変調或いはオンオフ制御が行われた光は、光照射部120から被検体200に照射される。
【0035】
その結果、図4(b)に示すように、光音響材料144が放射する超音波の周波数は、超音波送信周波数f0に変調されたことになる。よって、超音波送信周波数f0及び超音波送信周波数f0の高調波成分にピークを有する特性となる。このように、光振幅を超音波送信周波数で変調することにより、光音響材料144から放射される超音波振動波の周波数が、超音波送受信部104で処理できる帯域となる。また、信号強度も上昇するため、光音響効果を発現している光音響材料144を表示部108で可視化できるようになる。これにより、光音響材料144の集積位置が判るようになり、薬剤集積部位も把握できるようになった。また、疾患部に対し所定の光を照射することにより、薬剤活性化が図れ、標的薬142が標的細胞へ浸透する効率が高まる。
【実施例2】
【0036】
ここで、実施例2について、図1、図5、図6を用いて説明する。実施例1と異なる点は、超音波造影剤によって得られる薬剤集積状況と生体情報とを含む断層画像と光音響材料に起因する光音響画像とをともに表示部108に表示する点である。具体的には、光照射部120で光を照射する時間と、超音波探触子102で超音波を照射する時間とを切り替え、画像構成部106は光音響画像と断層画像を交互に構成する。よって、断層画像と光音響画像とを区別し、検査者に識別した情報として提示することができる。
【0037】
本実施例の光音響システム100の動作について図1と図5を用いて説明する。本実施例の光音響システム100の表示部108の表示形態について図6を用いて説明する。
【0038】
図5における(S101)〜(S105)までは実施例1の図3と同様であるため、説明を省略する。
(S201)薬剤300の集積部である特定の組織132に対し、光照射部120から光を照射する。薬剤300は、光音響材料144を有しているため、光音響効果を呈する。光音響材料144は照射された光エネルギーを超音波振動波と熱に変換する。
【0039】
(S202)超音波探触子102で光音響材料144の光音響効果による超音波振動波を受信し、画像構成部106は光音響材料144で放射された超音波振動波に基づく光音響画像を構成する。
検査者が操作卓8を介し、断層画像と光音響画像とを別々に表示するように設定した場合、図6に示すように、光音響画像は表示部108の右側に表示される。光音響領域162は光音響材料144の光音響効果によって変換された超音波振動波に基づいて構成された領域である。
そして、検査者は光音響画像を再度構成するか否かを操作部112で選択する。再度、光音響画像を構成する場合、(S201)に戻り、制御部110は光照射部120に光を照射させる。再度、光音響画像を構成しない場合、(S203)に進む。
【0040】
(S203)光照射部120の光照射を停止する。
【0041】
(S204)そして、特定の組織132に対し、超音波探触子102から超音波を照射する。
【0042】
(S205)超音波探触子102で超音波を受信し、画像構成部106は高調波超音波信号に基づく断層画像を構成する。検査者が操作卓8を介し、断層画像と光音響画像とを別々に表示するように設定した場合、図6に示すように、断層画像は表示部108の左側に表示される。画像領域160は、例えば、高調波超音波信号に基づいて構成された領域、又は生体情報を含む領域である。
【0043】
そして、検査者は断層画像を再度構成するか否かを操作部112で選択する。再度、断層画像を構成する場合、(S204)に戻り、制御部110は超音波探触子から超音波を照射させる。再度、断層画像を構成しない場合、(S206)に進む。
【0044】
(S206)超音波探触子から超音波の照射を停止する。
【0045】
(S207)検査者は、光音響画像及び断層画像を再度構成するか否かを操作部112で選択する。再度、光音響画像及び断層画像を構成する場合、(S201)に戻り、(S201)〜(S206)の光音響画像及び断層画像を構成する動作を繰り返す。光音響画像及び断層画像を構成しない場合、動作が終了する。
【0046】
ここでは、画像構成部106は、光照射部120で光を照射する時間と、超音波探触子102で超音波を照射する時間とを切り替えて、光音響画像及び断層画像を交互に構成する。光の照射が行われている場合、光音響画像は1画面分取得され、表示部108の右側に表示される。超音波の照射が行われている場合、断層画像は1画面分取得され、表示部108の左側に表示される。
【0047】
光音響画像のみでは、薬剤300の光音響材料144の集積部位しか光音響画像として表示されないため、病変周囲の状況、構造を観察するには不向きな画像であった。そこで、本実施例では、超音波造影剤によって得られる薬剤集積状況と生体情報とを含む断層画像と光音響材料144に起因する光音響画像とをともに表示部108に表示した。
【0048】
よって、光音響画像を表示する画面において薬剤存在状況を把握することができるのと同時に、断層画像を表示する画面において生体情報を把握することができるため、光音響を用いた診断治療に有用な表示形態となる。つまり、被検体200の生体情報とともに病変の薬剤300の薬剤存在状況を検査者に提供することができる。検査者は、表示部108に表示された断層画像及び光音響画像の状況から薬剤300の薬効を確認することができる。
【0049】
なお、超音波探触子102が、1次元探触子の場合は、1断面にて1画面となるが、2次元探触子、機械走査探触子の場合は、走査する領域が3次元となるため、複数断面の光音響像で1つの画面となり、超音波像構成の方法により、1画面取得時間が、1次元探触子使用時よりも長くなる場合がある。表示部108に表示された光音響画像は、光音響画像が再び構成されるまで、保持される。
【実施例3】
【0050】
ここで、実施例3について、図7を用いて説明する。実施例1、2と異なる点は、断層画像と光音響画像の表示形態を異ならせて合成した合成画像を表示部108に表示する点である。
【0051】
表示部108は、図7に示すように、超音波造影剤によって得られる薬剤集積状況と生体情報とを含む断層画像を左側に表示する。また、断層画像と光音響材料に起因する光音響画像とを重ね合わせた合成画像を右側に表示する。断層画像と光音響画像の合成画像を表示する際、光音響領域162を含む光音響画像をカラー(色相)で表示し、断層画像を白黒で表示する。
【0052】
具体的には、図2において、画像構成部106のDSC部152にカラーエンコーダ部(図示しない。)を備える。超音波送受信部104から超音波探触子102を介して超音波送受信を行って断層画像を構成する場合、光照射部120からの光照射を停止し、かつ、カラーエンコーダ部を使用しない。画像構成部106は断層画像を構成し、表示部108に表示するとともに、断層画像が再び構成されるまで、断層画像を保持する。このように、通常の白黒の断層画像を構成することができる。
【0053】
断層画像を1画面分取得したら、制御部110は、超音波送受信部104から超音波送受信を行わず、光照射部120から光照射を行なうように制御する。薬剤300に附随した光音響材料144は、光エネルギーを吸収し、超音波振動波を放射する。光音響効果による光音響画像を1画面分取得するとともに、画像構成部106のDSC部152で光音響画像を構成する。さらに、カラーエンコーダ部は光音響画像について色相変調を行う。カラーエンコーダ部は、光音響材料144から放射される超音波振動波の強弱に基づいて色相を決定する。例えば、光音響材料144から放射される超音波振動波が相対的に強ければ青色を付与し、光音響材料144から放射される超音波振動波が相対的に弱ければ赤色を付与する。
【0054】
そして、DSC部152では、構成された白黒の断層画像とカラーの光音響画像を合成し、表示部108に合成画像が表示される。
【0055】
光音響効果を示す薬剤300の位置を断層画像上に重ねて表示できるため、被検体200の生体情報とともに病変の薬剤300の薬剤存在状況を検査者に提供することができる。検査者は、表示部108に表示された断層画像及び光音響画像の状況から薬剤300の薬効を確認することができる。
【実施例4】
【0056】
ここで、実施例4について、図8〜図11を用いて説明する。実施例1〜3と異なる点は、制御部110は光照射部120の光照射エネルギーと超音波探触子102の超音波照射エネルギーを制御する点である。
【0057】
上記実施例において、薬剤300の光音響材料144の光音響効果で、光音響材料144の超音波振動、発熱、蒸散等の何れかの効果、或いは、これら複合の効果で、標的薬142が特定の組織132へ取り込まれる構成を示した。
【0058】
薬剤300には、超音波造影剤140が附随しているので、超音波造影剤140を超音波照射エネルギーで崩壊させれば、特定の領域132である標的細胞に一過性の穿孔を開け、標的薬142を特定の組織132の細胞130内へ取り込ませることができる。
【0059】
図8に示すように、被検体200に薬剤300が投与され、薬剤300の標的薬142が腫瘍のような疾患部である特定の組織132に結びつくことにより、薬剤300が特定の組織132に集積する。
【0060】
図9に示すように、制御部110は、超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせるとともに、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせる。超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーの超音波送信を基に、画像構成部106は断層画像を構成する。また、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を基に、画像構成部106は光音響画像を構成する。表示部108は、断層画像及び光音響画像を表示する。
【0061】
制御部110が超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせるとともに、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせた後、図10に示すように、制御部110は、光音響材料144が蒸散又は発熱する程度の強いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせる。光音響材料144が蒸散又は発熱する程度の強いエネルギーの光照射によって、光音響材料144が、光エネルギーを吸収する。光音響材料144が光音響効果によって超音波振動波を放射する。よって、薬剤300が特定の組織132との接触機会、接触面積が増加し、標的薬142が特定の組織132へ薬効を効かせる可能性が増えた。また、光音響材料144が発熱するため、薬剤20が活性化し、標的薬142が特定の組織132へ薬効を効かせる可能性が増えた。
【0062】
そして、光音響材料144は蒸散する。光音響材料144の蒸散に伴うエネルギー放射で、特定の組織132に一過性の穿孔を開けることができる。よって、標的薬142が特定の組織132へ導入される機会が増えた。薬剤300附随の標的薬142が特定の組織132へ取り込まれ、所定の薬効を示すことができる。
【0063】
制御部110が超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせるとともに、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせた後、図11に示すように、制御部110は、超音波造影剤140が振動又は崩壊する程度の強いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせる。超音波造影剤140が振動又は崩壊する程度の強いエネルギーの超音波照射により、薬剤300附随の超音波造影剤140が振動するため、薬剤300が特定の組織132との接触機会、接触面積が増加し、標的薬142が特定の部位132へ薬効を効かせる可能性がさらに増えた。
【0064】
また、薬剤300が附随している超音波造影剤140が崩壊することにより、特定の部位132に一過性の穿孔を開け、標的薬142が特定の部位132に導入される機会がさらに増えた。
【0065】
本実施例によれば、制御部110は光照射部120の光照射エネルギーと超音波探触子102の超音波照射エネルギーを制御する。よって、光音響材料144に光照射することにより標的薬142の薬効が活性化され、標的薬142が特定の部位132に取り込まれる効果の他に、超音波照射による超音波造影剤140の振動及び崩壊により、標的薬142の薬効が活性化される。また、標的薬142が特定の部位132に効率的に取り込むことができる。
【符号の説明】
【0066】
100 光音響システム、102 超音波探触子、104 超音波送受信部、106 画像構成部、108 表示部、110 制御部、112 操作部、120 光照射部、122 光源部、140 超音波造影剤、142 標的薬、144 光音響材料、300 薬剤
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響を用いる光音響システム及び薬剤に係り、特に、治療を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
抗がん剤や遺伝子治療に用いる遺伝子などの薬剤を悪性腫瘍の細胞内に導入して悪性腫瘍を治療することが提案されている。また、被検体の細胞内への薬剤の導入を促進するため、超音波診断装置を用い、静脈から被検体に投与した薬剤に超音波を所定時間照射して、薬剤の悪性腫瘍の細胞内への導入を促進することが提案されている。(例えば、特許文献1)。
【0003】
同文献によれば、被検体の体表面に超音波探触子を密着させて悪性腫瘍のある領域に超音波を照射し、そのエコー信号に基づいて超音波画像を生成し、その超音波画像に基づいて治療領域と超音波の照射計画を設定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-261253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、静脈から被検体に投与した薬剤が悪性腫瘍の存在する疾患部に超音波を所定時間照射しているが、薬剤が疾患部に到達したかどうかを操作者は確認することができない。よって、操作者は超音波を照射するタイミングを把握することができないため、疾患部への薬剤の導入及び治療が適切に行われていない可能性がある。
【0006】
本発明では、疾患部への薬剤の導入及び治療を適切に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、光音響システムは、超音波造影剤と光音響効果を示す光音響材料と被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有する薬剤を被検体に投与させる投与器と、被検体に超音波を照射する超音波探触子と、被検体に光を照射する光照射部とを備える。超音波造影剤に起因する断層画像と、光音響材料に起因する光音響画像と構成する画像構成部と、断層画像と光音響画像とを表示する表示部を備える。そして、光照射部は、断層画像を基に検出された薬剤の集積位置に光照射を行う。
【0008】
また、超音波造影剤と、光音響効果を示す光音響材料と、被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有することを特徴とする薬剤を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、疾患部への薬剤の導入及び治療を適切に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光音響システムに関する構成図。
【図2】本発明の画像構成部106の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例1の動作を示すフローチャート。
【図4】本発明の超音波送受信部104で受信処理できる帯域と超音波の周波数の関係を示す図。
【図5】本発明の実施例2の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例2の一表示形態を示す図。
【図7】本発明の実施例3の一表示形態を示す図。
【図8】本発明の実施例4を示す図。
【図9】本発明の実施例4を示す図。
【図10】本発明の実施例4を示す図。
【図11】本発明の実施例4を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を適用してなる光音響システム及び薬剤ついて図を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明を適用した光音響システムの構成を示すブロック図である。
図1において、光音響システム100は、被検体200内に超音波を送受信して得られエコー信号を用いて診断部位の超音波画像を構成して表示する機能を有している。具体的には、光音響システム100は、被検体200に超音波を照射して反射した超音波を受信する超音波探触子102と、被検体200に送信する超音波信号を発生するためのパルス状の電気信号を発生させ、超音波探触子102で受信したエコー信号を電気信号に変換する超音波送受信部104と、エコー信号に基づく超音波画像を構成する画像構成部106と、画像構成部106で構成された超音波画像を表示する表示部108と、被検体200内に光を照射する光照射部120と、光照射部120に光を放射させる光源部122と、各構成要素を制御する制御部110と、制御部110に指示を与える操作部112とを備えて構成される。画像構成部106で構成される超音波画像には、断層画像、光音響画像、ドプラ画像、弾性画像などが含まれる。
【0013】
超音波探触子102は、被検体200に接触させて用いられる。超音波探触子102は、被検体200との間で超音波を送受信するものであり、超音波を発生すると共に反射エコーを受信する複数の振動子が内蔵されている。画像構成部106は、超音波探触子102から出力されるエコー信号を入力してデジタル信号に変換し、診断部位の超音波画像を構成する。
【0014】
画像構成部106は、図2に示すように、超音波送受信部104から出力されるエコー信号に基づく電気信号に基づいて超音波画像を構成する超音波画像構成部150と、該構成された超音波画像を表示部108の表示形式に合わせて超音波画像を変換するディジタルスキャンコンバータ部(以下、DSC部と記す)152と、超音波画像に付帯するためのスケールやマーク及び文字等のグラフィックデータを生成するグラフィックデータ生成部156と、DSC部152で変換された超音波画像とグラフィックデータ生成部156で生成したグラフィックデータとを合成して記憶する記憶部154とを備えて構成されている。
【0015】
グラフィックデータ生成部156は、操作者による操作部112の操作に基づく制御部110の指令よって、スケールやマーク、文字等のグラフィックデータを生成する。
【0016】
表示部108は、画像構成部106で構成された超音波画像及びグラフィックデータ、記憶部154に記憶された超音波画像及びグラフィックデータを表示するものであり、例えばCRTモニタ、液晶モニタからなる。記憶部154に記憶される超音波画像はRFデータであってもよい。
【0017】
また、光源部122は、例えば、所定の波長の光を放射する半導体レーザ若しくはLEDと、半導体レーザ若しくはLEDが発生する光を複数の異なる周波数で変調するための変調器を備えた複数の光モジュールとを備えている。光源部122で発生した光は、光伝管124によって光照射部120まで導かれる。なお、光照射部120は光源部122を一体化して備えることにより、被検体200へ光を光照射部120から直接照射することもできる。
【0018】
本発明においては、図1に示すように、薬剤300が投与器(図示しない。)を介して被検体200に投与される。薬剤300は、高調波超音波信号により断層画像で可視化することができる超音波造影剤140と、光音響効果により光音響画像で可視化することができる光音響材料144と、被検体200の特定の組織に薬効を示す標的薬142とにより構成されている。このように、超音波造影剤140の周囲に光音響材料144と標的薬142が複数配置されることにより、薬剤300が構成されている。なお、超音波造影剤140の内部に光音響材料144と標的薬142が複数配置され、薬剤300が構成されていてもよい。
【0019】
超音波造影剤140は、例えば、溶液中に微細な気泡を混入したものである。気泡が超音波を受けると、気泡の変形や破壊に起因する超音波、気泡表面の反射波からなる特有のエコー信号を発生するため、画像構成部106を介して、超音波造影剤140に起因する断層画像を表示部108に表示することができる。よって、操作者は、超音波造影剤140の位置、すなわち薬剤300の位置を断層画像で確認することができる。
【0020】
光音響材料144は、例えば、金粉末のような粉末媒体で構成される。光音響材料144は、光照射部120から照射された光のエネルギーを吸収することにより、熱が発生する。そして、発生した熱によって光音響材料144が膨張収縮することにより、超音波振動波が放出される。超音波造影剤140と同様に、画像構成部106を介して、光音響材料144に起因する光音響画像を表示部108に表示することができる。よって、操作者は、光音響材料144の位置、すなわち薬剤300の位置を光音響画像で確認することができる。
【0021】
標的薬142は、腫瘍のような疾患部である特定の組織132に特異的に結びつき、特定の組織132に対して特異的に作用するものである。標的薬142は、例えば、腫瘍に対して、温熱治療をすることができ、効率的に腫瘍を治療することができる。
【0022】
ここで、本実施例の光音響システムの動作について図1、図3を用いて説明する。
(S101)検査者は、投与器を用いて超音波造影剤140の周囲又は内部に光音響材料144と標的薬142が複数配置されて構成された薬剤300を被検体200内に投与する。
【0023】
(S102)薬剤300が被検体200に投与されると、薬剤300は血流によって被検体200の全身に広がる。薬剤300は、腫瘍のような疾患部である特定の組織132に集積する性質をもつ標的薬142を有しているため、薬剤300が特定の組織132に集積する。そのため、投薬から一定時間経過後、薬剤300が特定の組織132に集積していることが期待される。
【0024】
(S103)薬剤300が特定の組織132に集積したと考えられる一定時間経過後、特定の組織132に対し、超音波探触子102から超音波を照射する。薬剤300の超音波造影剤140が超音波非線形応答を呈し、高調波超音波信号が発生される。超音波探触子102でこの超音波を受信し、画像構成部106は高調波超音波信号に基づく断層画像を構成する。
【0025】
(S104)画像構成部106で構成された高調波超音波信号に基づく断層画像を表示部108に表示する。よって、検査者は、表示部108に表示された断層画像から薬剤300の集積位置を確認することができる。
【0026】
(S105)検査者が薬剤300の集積位置を把握し、薬剤300が特定の組織132に集積することが確認できた際、超音波探触子102から照射されている超音波を停止する。
【0027】
(S106)光照射部120は、断層画像を基に検出された薬剤300の集積位置に光照射を行う。すなわち、薬剤300の集積位置である特定の組織132に対し、光照射部120から光を照射する。薬剤300は、光音響材料144を有しているため、光音響材料144の材質、寸法に応じた所定周波数、エネルギーの光を照射すると、光音響効果を呈する。光音響材料144は照射された光エネルギーを超音波振動波と熱に変換する。
【0028】
光音響材料144の光音響効果による超音波振動波により、標的薬142が特定の組織132である標的細胞との接触機会が増大するため、薬効を促進することができる。また、光音響材料144の光音響効果による熱により、光音響材料144自体が高温になり、蒸散する。その結果、特定の組織132も高温となり、特定の組織132内の細胞130を死滅させることもできる。
【0029】
(S107)超音波探触子102で光音響材料144の光音響効果による超音波振動波を受信し、画像構成部106は光音響材料144で放射された超音波振動波に基づく光音響画像を構成する。
【0030】
(S108)検査者は、表示部108に表示された光音響画像の状況から薬剤300の薬効を確認することができる。光照射領域の光音響材料144がほぼ蒸散されると、光照射しても、光音響効果による超音波振動波が放射されない。よって、特定の部位132における超音波画像には、光音響材料144からの光音響画像が表示されない。
【0031】
(S109)特定の部位132からの超音波画像に光音響材料144からの光音響画像が表示されなくなったら、更なる光照射が不要である。そのため、光照射部120の光照射を停止する。
【0032】
このように、本実施例の光音響システム100によれば、超音波造影剤140と光音響効果を示す光音響材料144と被検体200の特定の組織に集積する特性を有する標的薬142とを有する薬剤300を被検体200に投与させる投与器と、被検体200に超音波を照射する超音波探触子102と、被検体200に光を照射する光照射部120とを備える。よって、疾患部への薬剤300の導入及び治療を適切に行なうことができる。
【0033】
具体的には、検査者は、光音響材料144を有する薬剤300の集積状況をリアルタイムに光音響画像として確認することができるため、光照射を行う際、光照射位置を同定することができ、薬剤集積部位に対して、安全に光を誘導することができる。また、光照射部120が光照射した際、光音響効果で生じた超音波振動波を光音響画像として可視化することができる。光照射部120が光照射して、光音響材料144が蒸散すれば、光音響材料144から超音波振動波が放射されない。よって、必要以上に光照射することによる被検体200の火傷等の可能性が減少する。
【0034】
なお、図4(a)に示すように、超音波送受信部104で受信処理できる帯域幅は、比帯域で150%程度であり、光音響効果で生じた超音波エネルギーを十分に捕捉できない。そこで、本発明では、光源部122は、光照射部120から照射される光を略超音波送信周波数f0で振幅変調或いはオンオフ制御する。振幅変調或いはオンオフ制御が行われた光は、光照射部120から被検体200に照射される。
【0035】
その結果、図4(b)に示すように、光音響材料144が放射する超音波の周波数は、超音波送信周波数f0に変調されたことになる。よって、超音波送信周波数f0及び超音波送信周波数f0の高調波成分にピークを有する特性となる。このように、光振幅を超音波送信周波数で変調することにより、光音響材料144から放射される超音波振動波の周波数が、超音波送受信部104で処理できる帯域となる。また、信号強度も上昇するため、光音響効果を発現している光音響材料144を表示部108で可視化できるようになる。これにより、光音響材料144の集積位置が判るようになり、薬剤集積部位も把握できるようになった。また、疾患部に対し所定の光を照射することにより、薬剤活性化が図れ、標的薬142が標的細胞へ浸透する効率が高まる。
【実施例2】
【0036】
ここで、実施例2について、図1、図5、図6を用いて説明する。実施例1と異なる点は、超音波造影剤によって得られる薬剤集積状況と生体情報とを含む断層画像と光音響材料に起因する光音響画像とをともに表示部108に表示する点である。具体的には、光照射部120で光を照射する時間と、超音波探触子102で超音波を照射する時間とを切り替え、画像構成部106は光音響画像と断層画像を交互に構成する。よって、断層画像と光音響画像とを区別し、検査者に識別した情報として提示することができる。
【0037】
本実施例の光音響システム100の動作について図1と図5を用いて説明する。本実施例の光音響システム100の表示部108の表示形態について図6を用いて説明する。
【0038】
図5における(S101)〜(S105)までは実施例1の図3と同様であるため、説明を省略する。
(S201)薬剤300の集積部である特定の組織132に対し、光照射部120から光を照射する。薬剤300は、光音響材料144を有しているため、光音響効果を呈する。光音響材料144は照射された光エネルギーを超音波振動波と熱に変換する。
【0039】
(S202)超音波探触子102で光音響材料144の光音響効果による超音波振動波を受信し、画像構成部106は光音響材料144で放射された超音波振動波に基づく光音響画像を構成する。
検査者が操作卓8を介し、断層画像と光音響画像とを別々に表示するように設定した場合、図6に示すように、光音響画像は表示部108の右側に表示される。光音響領域162は光音響材料144の光音響効果によって変換された超音波振動波に基づいて構成された領域である。
そして、検査者は光音響画像を再度構成するか否かを操作部112で選択する。再度、光音響画像を構成する場合、(S201)に戻り、制御部110は光照射部120に光を照射させる。再度、光音響画像を構成しない場合、(S203)に進む。
【0040】
(S203)光照射部120の光照射を停止する。
【0041】
(S204)そして、特定の組織132に対し、超音波探触子102から超音波を照射する。
【0042】
(S205)超音波探触子102で超音波を受信し、画像構成部106は高調波超音波信号に基づく断層画像を構成する。検査者が操作卓8を介し、断層画像と光音響画像とを別々に表示するように設定した場合、図6に示すように、断層画像は表示部108の左側に表示される。画像領域160は、例えば、高調波超音波信号に基づいて構成された領域、又は生体情報を含む領域である。
【0043】
そして、検査者は断層画像を再度構成するか否かを操作部112で選択する。再度、断層画像を構成する場合、(S204)に戻り、制御部110は超音波探触子から超音波を照射させる。再度、断層画像を構成しない場合、(S206)に進む。
【0044】
(S206)超音波探触子から超音波の照射を停止する。
【0045】
(S207)検査者は、光音響画像及び断層画像を再度構成するか否かを操作部112で選択する。再度、光音響画像及び断層画像を構成する場合、(S201)に戻り、(S201)〜(S206)の光音響画像及び断層画像を構成する動作を繰り返す。光音響画像及び断層画像を構成しない場合、動作が終了する。
【0046】
ここでは、画像構成部106は、光照射部120で光を照射する時間と、超音波探触子102で超音波を照射する時間とを切り替えて、光音響画像及び断層画像を交互に構成する。光の照射が行われている場合、光音響画像は1画面分取得され、表示部108の右側に表示される。超音波の照射が行われている場合、断層画像は1画面分取得され、表示部108の左側に表示される。
【0047】
光音響画像のみでは、薬剤300の光音響材料144の集積部位しか光音響画像として表示されないため、病変周囲の状況、構造を観察するには不向きな画像であった。そこで、本実施例では、超音波造影剤によって得られる薬剤集積状況と生体情報とを含む断層画像と光音響材料144に起因する光音響画像とをともに表示部108に表示した。
【0048】
よって、光音響画像を表示する画面において薬剤存在状況を把握することができるのと同時に、断層画像を表示する画面において生体情報を把握することができるため、光音響を用いた診断治療に有用な表示形態となる。つまり、被検体200の生体情報とともに病変の薬剤300の薬剤存在状況を検査者に提供することができる。検査者は、表示部108に表示された断層画像及び光音響画像の状況から薬剤300の薬効を確認することができる。
【0049】
なお、超音波探触子102が、1次元探触子の場合は、1断面にて1画面となるが、2次元探触子、機械走査探触子の場合は、走査する領域が3次元となるため、複数断面の光音響像で1つの画面となり、超音波像構成の方法により、1画面取得時間が、1次元探触子使用時よりも長くなる場合がある。表示部108に表示された光音響画像は、光音響画像が再び構成されるまで、保持される。
【実施例3】
【0050】
ここで、実施例3について、図7を用いて説明する。実施例1、2と異なる点は、断層画像と光音響画像の表示形態を異ならせて合成した合成画像を表示部108に表示する点である。
【0051】
表示部108は、図7に示すように、超音波造影剤によって得られる薬剤集積状況と生体情報とを含む断層画像を左側に表示する。また、断層画像と光音響材料に起因する光音響画像とを重ね合わせた合成画像を右側に表示する。断層画像と光音響画像の合成画像を表示する際、光音響領域162を含む光音響画像をカラー(色相)で表示し、断層画像を白黒で表示する。
【0052】
具体的には、図2において、画像構成部106のDSC部152にカラーエンコーダ部(図示しない。)を備える。超音波送受信部104から超音波探触子102を介して超音波送受信を行って断層画像を構成する場合、光照射部120からの光照射を停止し、かつ、カラーエンコーダ部を使用しない。画像構成部106は断層画像を構成し、表示部108に表示するとともに、断層画像が再び構成されるまで、断層画像を保持する。このように、通常の白黒の断層画像を構成することができる。
【0053】
断層画像を1画面分取得したら、制御部110は、超音波送受信部104から超音波送受信を行わず、光照射部120から光照射を行なうように制御する。薬剤300に附随した光音響材料144は、光エネルギーを吸収し、超音波振動波を放射する。光音響効果による光音響画像を1画面分取得するとともに、画像構成部106のDSC部152で光音響画像を構成する。さらに、カラーエンコーダ部は光音響画像について色相変調を行う。カラーエンコーダ部は、光音響材料144から放射される超音波振動波の強弱に基づいて色相を決定する。例えば、光音響材料144から放射される超音波振動波が相対的に強ければ青色を付与し、光音響材料144から放射される超音波振動波が相対的に弱ければ赤色を付与する。
【0054】
そして、DSC部152では、構成された白黒の断層画像とカラーの光音響画像を合成し、表示部108に合成画像が表示される。
【0055】
光音響効果を示す薬剤300の位置を断層画像上に重ねて表示できるため、被検体200の生体情報とともに病変の薬剤300の薬剤存在状況を検査者に提供することができる。検査者は、表示部108に表示された断層画像及び光音響画像の状況から薬剤300の薬効を確認することができる。
【実施例4】
【0056】
ここで、実施例4について、図8〜図11を用いて説明する。実施例1〜3と異なる点は、制御部110は光照射部120の光照射エネルギーと超音波探触子102の超音波照射エネルギーを制御する点である。
【0057】
上記実施例において、薬剤300の光音響材料144の光音響効果で、光音響材料144の超音波振動、発熱、蒸散等の何れかの効果、或いは、これら複合の効果で、標的薬142が特定の組織132へ取り込まれる構成を示した。
【0058】
薬剤300には、超音波造影剤140が附随しているので、超音波造影剤140を超音波照射エネルギーで崩壊させれば、特定の領域132である標的細胞に一過性の穿孔を開け、標的薬142を特定の組織132の細胞130内へ取り込ませることができる。
【0059】
図8に示すように、被検体200に薬剤300が投与され、薬剤300の標的薬142が腫瘍のような疾患部である特定の組織132に結びつくことにより、薬剤300が特定の組織132に集積する。
【0060】
図9に示すように、制御部110は、超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせるとともに、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせる。超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーの超音波送信を基に、画像構成部106は断層画像を構成する。また、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を基に、画像構成部106は光音響画像を構成する。表示部108は、断層画像及び光音響画像を表示する。
【0061】
制御部110が超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせるとともに、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせた後、図10に示すように、制御部110は、光音響材料144が蒸散又は発熱する程度の強いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせる。光音響材料144が蒸散又は発熱する程度の強いエネルギーの光照射によって、光音響材料144が、光エネルギーを吸収する。光音響材料144が光音響効果によって超音波振動波を放射する。よって、薬剤300が特定の組織132との接触機会、接触面積が増加し、標的薬142が特定の組織132へ薬効を効かせる可能性が増えた。また、光音響材料144が発熱するため、薬剤20が活性化し、標的薬142が特定の組織132へ薬効を効かせる可能性が増えた。
【0062】
そして、光音響材料144は蒸散する。光音響材料144の蒸散に伴うエネルギー放射で、特定の組織132に一過性の穿孔を開けることができる。よって、標的薬142が特定の組織132へ導入される機会が増えた。薬剤300附随の標的薬142が特定の組織132へ取り込まれ、所定の薬効を示すことができる。
【0063】
制御部110が超音波造影剤140を振動させない程度の弱いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせるとともに、光音響材料144が蒸散又は発熱しない程度の弱いエネルギーの光照射を光照射部120に行わせた後、図11に示すように、制御部110は、超音波造影剤140が振動又は崩壊する程度の強いエネルギーで超音波照射を超音波探触子102に行わせる。超音波造影剤140が振動又は崩壊する程度の強いエネルギーの超音波照射により、薬剤300附随の超音波造影剤140が振動するため、薬剤300が特定の組織132との接触機会、接触面積が増加し、標的薬142が特定の部位132へ薬効を効かせる可能性がさらに増えた。
【0064】
また、薬剤300が附随している超音波造影剤140が崩壊することにより、特定の部位132に一過性の穿孔を開け、標的薬142が特定の部位132に導入される機会がさらに増えた。
【0065】
本実施例によれば、制御部110は光照射部120の光照射エネルギーと超音波探触子102の超音波照射エネルギーを制御する。よって、光音響材料144に光照射することにより標的薬142の薬効が活性化され、標的薬142が特定の部位132に取り込まれる効果の他に、超音波照射による超音波造影剤140の振動及び崩壊により、標的薬142の薬効が活性化される。また、標的薬142が特定の部位132に効率的に取り込むことができる。
【符号の説明】
【0066】
100 光音響システム、102 超音波探触子、104 超音波送受信部、106 画像構成部、108 表示部、110 制御部、112 操作部、120 光照射部、122 光源部、140 超音波造影剤、142 標的薬、144 光音響材料、300 薬剤
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波造影剤と光音響効果を示す光音響材料と被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有する薬剤を前記被検体に投与させる投与器と、前記被検体に超音波を照射する超音波探触子と、前記被検体に光を照射する光照射部とを備えることを特徴とする光音響システム。
【請求項2】
前記超音波造影剤に起因する断層画像と、前記光音響材料に起因する光音響画像と構成する画像構成部と、前記断層画像と前記光音響画像とを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1記載の光音響システム。
【請求項3】
前記画像構成部は、前記光照射部で光を照射する時間と前記超音波探触子で超音波を照射する時間に基づいて、前記光音響画像と前記断層画像を交互に構成することを特徴とする請求項2記載の光音響システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記断層画像と前記光音響画像の表示形態を異ならせて合成した合成画像を表示することを特徴とする請求項2記載の光音響システム。
【請求項5】
前記光照射部は、前記断層画像を基に検出された前記薬剤の集積位置に光照射を行うことを特徴とする請求項2記載の光音響システム。
【請求項6】
前記光照射部から照射される光を振幅変調或いはオンオフ制御する光源部を備えることを特徴とする請求項1記載の光音響システム。
【請求項7】
前記光照射部の光照射エネルギーと前記超音波探触子の超音波照射エネルギーを制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の光音響システム。
【請求項8】
超音波造影剤と、光音響効果を示す光音響材料と、被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有することを特徴とする薬剤。
【請求項9】
前記超音波造影剤の周囲若しくは内部に前記光音響材料と前記標的薬が複数配置されることを特徴とする請求項8記載の薬剤。
【請求項1】
超音波造影剤と光音響効果を示す光音響材料と被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有する薬剤を前記被検体に投与させる投与器と、前記被検体に超音波を照射する超音波探触子と、前記被検体に光を照射する光照射部とを備えることを特徴とする光音響システム。
【請求項2】
前記超音波造影剤に起因する断層画像と、前記光音響材料に起因する光音響画像と構成する画像構成部と、前記断層画像と前記光音響画像とを表示する表示部を備えることを特徴とする請求項1記載の光音響システム。
【請求項3】
前記画像構成部は、前記光照射部で光を照射する時間と前記超音波探触子で超音波を照射する時間に基づいて、前記光音響画像と前記断層画像を交互に構成することを特徴とする請求項2記載の光音響システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記断層画像と前記光音響画像の表示形態を異ならせて合成した合成画像を表示することを特徴とする請求項2記載の光音響システム。
【請求項5】
前記光照射部は、前記断層画像を基に検出された前記薬剤の集積位置に光照射を行うことを特徴とする請求項2記載の光音響システム。
【請求項6】
前記光照射部から照射される光を振幅変調或いはオンオフ制御する光源部を備えることを特徴とする請求項1記載の光音響システム。
【請求項7】
前記光照射部の光照射エネルギーと前記超音波探触子の超音波照射エネルギーを制御する制御部を備えることを特徴とする請求項1記載の光音響システム。
【請求項8】
超音波造影剤と、光音響効果を示す光音響材料と、被検体の特定の組織に集積する特性を有する標的薬とを有することを特徴とする薬剤。
【請求項9】
前記超音波造影剤の周囲若しくは内部に前記光音響材料と前記標的薬が複数配置されることを特徴とする請求項8記載の薬剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−39166(P2013−39166A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176454(P2011−176454)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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