説明

光音響画像形成装置及び光音響画像形成方法

【課題】 光音響トモグラフィーによる通常の被検体側定時の検出信号から簡便に被検体内部の平均音速を算出し、その実測した平均音速を用いて高解像度の画像データを得ることができる光音響画像形成診断を提供すること。
【解決手段】 本発明の光音響画像形成装置は、被検体にパルス光を照射するための光源11と、パルス光により被検体表面及び被検体内部で発生する音響波を検出する検出器17と、検出器で取得される検出信号から、被検体内部の画像データを取得する信号処理部20と、を有する。信号処理部が、被検体表面で発生し被検体内部を通過した第1の音響波により検出器から取得される検出信号から、被検体内部の平均音速を算出し、被検体内部で発生する音響波により検出器から取得される検出信号と上記で実測した平均音速とを用いて、被検体内部の画像データを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を被検体に照射することで被検体内から発生する音響波を検出して、該検出信号を処理することで被検体内部の画像データを取得する光音響画像形成装置及び光音響画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーなどの光源から生体に光を照射し、入射した光に基づいて得られる生体内の情報を画像化する光イメージング装置の研究が医療分野で積極的に進められている。この光イメージング技術の一つとして、Photo Acoustic Tomography(PAT:光音響トモグラフィー)がある。光音響トモグラフィーでは、光源から発生したパルス光を生体に照射し、生体内で伝播・拡散したパルス光のエネルギーを吸収した生体組織から発生した音響波(典型的に超音波である)を検出する。すなわち、腫瘍などの被検部位とそれ以外の組織との光エネルギーの吸収率の差を利用し、被検部位が照射された光エネルギーを吸収して瞬間的に膨張する際に発生する弾性波をトランスデューサで受信する。この検出信号を数学的に解析処理することにより、生体内の光学特性分布、特に、吸収係数分布を得ることができる。これらの情報は、被検体内の特定物質、例えば血液中に含まれるグルコースやヘモグロビンなどの定量的計測にも利用できる。近年、この光音響トモグラフィーを用いて、小動物の血管像をイメージングする前臨床研究や、この原理を乳がんなどの診断に応用する臨床研究が積極的に進められている。
【0003】
光音響トモグラフィーにおいては、通常、検出信号の数学的解析処理(画像再構成)の過程で、被検体内部の平均音速が計算に用いられる。一般的には、画像再構成に用いられる被検体内部の平均音速は、経験的な値や文献値などにより設定される。しかしながら、被検体の音速は個体差、さらには被検体の保持方法などにより変化するため、画像再構成に用いた平均音速と被検体内部の実際の平均音速が離れていた場合、画像再構成の計算に誤差が生じ、得られる画像の解像度が大きく劣化する課題があった。これは、一般的に使われる画像再構成理論が画像化領域内で音響波が伝播する音速を一定と仮定しているためであり、光音響トモグラフィーの画像再構成理論の原理に基づく課題である。
【0004】
PATで被検体内の音速を求める技術を開示するものとして特許文献1がある。特許文献1では、被検体設置場所の外に設置した微小光吸収体(音響波発生器)へ、被検体がない状態で光照射することにより発生した音響波と、被検体への光照射により発生した音響波と別々に取得する。これらの信号を比較解析することで被検体内部の音速分布を算出できるとしている。生体内の癌組織は局所的に音速が周囲とは異なることが知られており、この方法により得られた画像を用いることにより、被検体の診断が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1935346号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、あくまで被検体内の音速分布を求めることを目的としており、被検体内の平均音速を求めることについては、何ら開示も示唆もしていない。すなわち、上記したPAT特有の原理に基づく課題を解決するものではないし、上記課題を示唆すらしていない。また、被検体の音速を求めるために、被検体外側に置いた微小光吸収体への光照射により発生した光音響波信号と、被検体への光照射により発生した光音響波信号を別々に取得する必要がある。その結果、少なくとも2回以上の光音響信号計測を行う必要が生じ、画像形成までに多くの計測時間を要する。さらに、被検体内部の音速分布を求めるためには、複数の方向から、上記2つの信号を取得する必要があり、信号の計測回数及び、計測時間が飛躍的に増加する。
【0007】
本発明は、このような背景技術及び課題認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、PATによる通常の被検体側定時の検出信号から簡便に被検体内部の平均音速を算出し、その実測した平均音速を用いて高解像度の画像データを得ることができる光音響画像形成診断を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明の光音響画像形成装置は、
被検体にパルス光を照射するための光源と、
前記パルス光により被検体表面及び被検体内部で発生する音響波を検出する検出器と、
前記検出器から取得される検出信号から、被検体内部の画像データを取得する信号処理部と、を有し、
該信号処理部が、
前記被検体表面で発生し前記被検体内部を通過した第1の音響波により前記検出器で取得される検出信号から、前記被検体内部の平均音速を算出し、
前記被検体内部で発生する音響波により前記検出器から取得される検出信号と前記平均音速とを用いて、前記被検体内部の画像データを取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検体表面で発生し被検体内部を通過した音響波を受信することにより、被検体内部の平均音速を簡便に実測できる光音響画像形成装置を提供することができる。これにより、実測した平均音速を用いて高解像度の画像データを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1による光音響画像形成装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施形態1において、検出信号の処理の一例を説明するフロー図である。
【図3】本発明の実施形態1において、デジタル信号である検出信号の一例を示す模式図である。
【図4】(a)本発明の実施形態1に基づく第1の実施例において得られる画像である。(b)本発明に依らず、被検体内の平均音速を仮定した場合に得られる画像である。
【図5】(a)本発明の実施形態2による光音響画像形成装置の構成を模式的に示した図である。(b)本発明の実施形態2に基づく第2の実施例において得られる検出信号である。(c)第2の実施例において得られる画像である。
【図6】本発明の実施形態3による光音響画像形成装置の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0012】
(実施形態1−1:光音響画像形成装置)
まず、図1を参照しながら本実施形態にかかる光音響画像形成装置の構成を説明する。本実施形態の光音響画像形成装置は、被検体の内部の光学特性値情報を画像化する装置である。
【0013】
本実施形態の光音響画像形成装置は、基本的なハード構成として、光源11、検出器としての音響波探触子17、信号処理部20を有する。光源11から発せられたパルス光12は例えばレンズ、ミラー、光ファイバなどの光学系13により導かれ、生体などの被検体15に照射される。被検体15の内部を伝播した光のエネルギーの一部が血管などの光吸収体(結果的に音源となる)14に吸収されると、その光吸収体14の熱膨張により音響波(典型的には超音波)16が発生する。これは「光音響波」と呼ばれることもある。音響波16は音響波探触子17により検出され、信号収集器19でデジタル変換された後、信号処理器20で被検体の画像データに変換される。
【0014】
(光源11)
被検体が生体の場合、光源11からは生体を構成する成分のうち特定の成分に吸収される特定の波長の光を照射する。光源は、本実施形態の画像形成装置と一体として設けられていても良いし、光源を分離して別体として設けられていても良い。光源としては数ナノから数百ナノ秒オーダーのパルス光を発生可能なパルス光源が好ましい。具体的には効率的に音響波を発生させるために、10ナノ秒程度のパルス幅が使われる。光源としては大出力が得られるためレーザーが好ましいが、レーザーのかわりに発光ダイオードなどを用いることも可能である。レーザーとしては、固体レーザー、ガスレーザー、色素レーザー、半導体レーザーなど様々なレーザーを使用することができる。照射のタイミング、波形、強度などは不図示の制御部によって制御される。
【0015】
本発明において、使用する光源の波長は、被検体が生体の場合、生体の表面である皮膚で特徴的に吸収される波長を選択することが好ましい。具体的には500nm以上1200nm以下である。この場合、後述する処理において、被検体表面(例えば、皮膚)で発生した光音響信号と被検体内部の光吸収体(例えば、血管)で発生した光音響信号を区別しやすくなるためである。
【0016】
(光学系13)
光源11から照射された光12は、典型的にはレンズやミラーなどの光学部品により被検体に導かれるが、光ファイバなどの光導波路などを用いて伝搬させることも可能である。光学系13は、例えば、光を反射するミラーや、光を集光したり拡大したり形状を変化させるレンズなどである。このような光学部品は、光源から発せられた光12が被検体15に所望の形状で照射されれば、どのようなものを用いてもかまわない。なお、一般的に光はレンズで集光させるより、ある程度の面積に広げる方が生体への安全性ならびに診断領域を広げられるという観点で好ましい。また、光を被検体に照射する領域は移動可能であることが好ましい。言い換えると、本発明の画像形成装置は、光源から発生した光が被検体上を移動可能となるように構成されていることが好ましい。移動可能であることにより、より広範囲に光を照射することができる。また、光を被検体に照射する領域(被検体に照射される光)は、音響波探触子17と同期して移動するとさらに好ましい。光を被検体に照射する領域を移動させる方法としては、可動式ミラー等を用いる方法、光源自体を機械的に移動させる方法などがある。
【0017】
(被検体及び光吸収体)
これらは本発明の画像形成装置の一部を構成するものではないが、以下に説明する。本発明の光音響画像形成装置は、人や動物の悪性腫瘍や血管疾患などの診断や化学治療の経過観察などを主な目的とする。よって、被検体としては生体、具体的には人体や動物の乳房や指、手足などの診断の対象部位が想定される。被検体内部の光吸収体14としては、被検体内で相対的に吸収係数が高いものを示し、例えば、人体が測定対象であれば酸化あるいは還元ヘモグロビンやそれらを含む多く含む血管あるいは新生血管を多く含む悪性腫瘍が該当する。また、図示してはないが被検体表面の光吸収体としては皮膚表面付近にあるメラニンである。本発明において「生体情報」とは、光照射によって生じた音響波の発生源分布であり、生体内の初期音圧分布、あるいはそれから導かれる光エネルギー吸収密度分布及び、それらの情報から得られる生体組織を構成する物質の濃度分布を示す。例えば、物質の濃度分布とは酸素飽和度などである。画像化したこれらの生体情報が「画像データ」である。
【0018】
(音響波探触子17)
パルス光により被検体表面及び被検体内部で発生する音響波を検出する検出器である音響波探触子17は、音響波を検知し、アナログ信号である電気信号に変換するものである。以後、単に探触子あるいはトランスデューサということもある。圧電現象を用いたトランスデューサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量の変化を用いたトランスデューサなど音響波信号を検知できるものであれば、どのような音響波検出器を用いてもよい。本実施形態の探触子17は、典型的には複数の受信素子が1次元あるいは2次元に配置されたものが良い。このような多次元配列素子を用いることで、同時に複数の場所で音響波を検出することができ、検出時間を短縮できると共に、被検体の振動などの影響を低減できる。
【0019】
(平板プレート18)
本実施形態において被検体15は、平板プレート18aにより圧迫固定されており、平板プレート18aを介して光照射が行われる。平板プレートは被検体を保持する機能を有し、光を通過させるために光学的に透明な素材が使われる。典型的には、アクリルが用いられる。なお、音響波も通過させる必要がある場合には反射を抑えるために被検体との音響インピーダンス差が小さいものを用いることが好ましい。被検体が生体の場合、典型的にはポリメチルペンテンなどが使われる。厚みは保持によりプレートの変形が抑えられる強度を保てればどのような厚さでも良いが、典型的には10mm程度である。サイズは被検体を保持できればどのようなサイズでも問題ないが、基本的には被検体と同サイズになる。
【0020】
なお、図1においては光照射側にのみ平板プレート18aが設けられ、探触子17は直接被検体15と接触しているが、探触子17の全面にも平板プレートがあってもよい。すなわち、互いに略平行に配置された第1及び第2の平板プレートにより被検体が両側から圧迫固定されてもよい。第1のプレート側(18a)に光源を、第2のプレート側(図1では不図示)に探触子17を配置する。
【0021】
(信号収集器19)
本実施形態の画像形成装置は、探触子17より得られた電気信号を増幅し、それをアナログ信号からデジタル信号に変換する信号収集器19を有することが好ましい。信号収集器19は、典型的には増幅器、A/D変換器、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップなどで構成される。探触子から得られる検出信号が複数の場合は、同時に複数の信号を処理できることが望ましい。それにより、画像を形成するまでの時間を短縮できる。
【0022】
なお、本明細書において「検出信号」とは、探触子17から取得されるアナログ信号も、その後AD変換されたデジタル信号も含む概念である。そして、検出信号は「光音響信号」ともいう。
【0023】
(信号処理部20)
信号処理部20は、本発明の特徴的処理である被検体内部の平均音速の算出を行う。そして、被検体内部で発生する音響波からの検出信号と上記で算出した平均音速を用いて、被検体内部の画像データを取得する(画像再構成)。詳細は後述するが、平均音速の算出は、被検体表面で発生し被検体内部を通過した音響波(第1の音響波)により取得される検出信号に基づいて行われる点が本発明の特徴である。実際に被検体内部を通過した音響波を元に平均音速の算出を行うことは、算出値が被検体内部の平均音速の実測値であることを意味する。また、被検体への光照射によって、被検体表面及び被検体内部の両方から音響波が発生するため、信号処理の工夫により平均音速の算出と、被検体内部の画像データの取得を一回の光照射で行うことができる。
【0024】
信号処理部20には典型的にはワークステーションなどが用いられ、平均音速の算出処理や画像再構成処理などがあらかじめプログラミングされたソフトウェアにより行われる。例えば、ワークステーションで使われるソフトウェアは検出信号から平均音速を求める処理やノイズ低減処理を行う信号処理モジュールと、画像再構成を行う画像再構成モジュールとの2つのモジュールからなる。なお、光音響トモグラフィーにおいては、通常、画像再構成前の前処理として、ノイズ低減処理などが各位置で受信された信号に対して行われるが、それらは信号処理モジュールで行われることが好ましい。また、画像再構成モジュールでは、画像再構成による画像データの形成が行われ、画像再構成アルゴリズムとして、例えば、トモグラフィー技術で通常に用いられるタイムドメインあるいはフーリエドメインでの逆投影などが適応される。PATの画像再構成手法には、代表的なものとしてフーリエ変換法、ユニバーサルバックプロジェクション法やフィルタードバックプロジェクション法などがあるが、いずれの手法においてもパラメータとして平均音速を用いるため、本発明で正確に平均音速を実測することが好ましい。
【0025】
なお、場合によっては、信号収集器19、信号処理部20は一体化される場合もある。この場合、ワークステーションで行うようなソフトウェア処理ではなく、ハードウェア処理により被検体の画像データを生成することもできる。
【0026】
(表示装置21)
表示装置21は信号処理部20で出力される画像データを表示する装置であり、典型的には液晶ディスプレイなどが利用される。なお、本発明の画像診断装置とは別に提供されていても良い。
【0027】
(検出信号の処理)
次に、信号処理部20で行う被検体内部の平均音速を算出する処理について、図2及び図3も参照しつつ説明する。下記の番号は図2における処理の番号と一致する。
【0028】
処理(1)(S201):検出信号データを解析して、パルス光の照射から第1の音響波の検出までの「第1の時間(tsurface)」を算出する工程
図1に示された信号収集器19から得られるデジタル信号(図3)を解析して、第1の時間(tsurface)を特定する。通常、被検体15にパルス光照射を行うと、図3に示されたように、複数のN型形状の信号が観測される。主にそれらは、被検体内部にある光吸収体14(例えば生体の場合は血液など)及び、被検体表面(例えば生体の場合は皮膚表面の色素など)から発生した光音響による検出信号である。なお、光照射された被検体表面で比較的大きな光音響波が発生する原因は、たとえ被検体表面の光吸収係数が小さくても、そこに照射される光強度は被検体内部に比べると大きいためである。なお、図3の例においてAが被検体内部にある光吸収体14から発生した光音響波による検出信号で、Bが被検体表面で発生した光音響波による検出信号である。図3ではパルス光照射の時刻をt=0としている。そして、被検体のサイズと光速を考慮すると、パルス光照射と同時刻に、ぞれぞれの箇所から同時に光音響波が発生すると擬制して構わない。つまり、パルス光の被検体内部での伝播時間は、音響波の伝播時間(音響波の計測時間)に比べて無視できるほど小さい。
【0029】
以下に、被検体内部で発生した光音響波信号Aと被検体表面で発生した光音響波信号Bとを区別する手法を説明する。本実施形態では、圧迫プレート18aに固定された被検体表面から第1の音響波が発生する。図1のように光照射領域とは反対側の被検体表面に探触子17が配置される場合は、被検体内部の光吸収体14から発生した光音響波よりも被検体表面で発生した光音響波のほうが探触子17への到達時刻が遅いので、その特性を利用することで容易に他の光音響信号(例えば図3のA)と区別できる。すなわち、最後に検出される大きな光音響波が第1の音響波と判断できる。
【0030】
また、本実施形態のように平板プレートなどによって、光を照射する被検体表面を図1のように平面状にすると、被検体表面から発生する光音響波は平面波的に伝播する。一方、被検体内部の光吸収体は光照射領域に比べて十分に小さいため、多くの場合、光音響波16は球面波的に伝播する。図1の破線A及びBは、光音響波の波面を示している。このような伝播特性の違いを考慮して、被検体表面で発生した音響波による検出信号を強調する信号処理を行うことも好ましい。これにより、精度良く第1の音響波を検出することができるため、平均音速の算出精度も向上する。
【0031】
上記処理の具体例は以下のとおりである。例えば、複数の受信素子で検出された検出信号を比較することができる。複数の受信素子が被検体表面に当てられていた場合、平面波は複数の受信素子にほぼ同時に到達するが、球面波は複数の受信素子で異なった時刻に到達する。よって、このように比較することで、被検体表面からの音響波か被検体内部からの音響波かを区別することができる。
【0032】
また、複数の受信素子で検出されたそれぞれの全検出信号を全受信素子で平均化しても良い。「全検出信号」とは、被検体表面及び被検体内部の光音響波両方を受信した検出信号の全体を意味する。この処理では、複数の受信素子で、同時刻に検出される被検体表面からの音響波に由来する検出信号は強めあうが、異なった時刻に検出される被検体内部からの音響波に由来する検出信号は弱めあう。このような特性を用いることで、ノイズなどが含まれた信号においても、被検体表面で発生した光音響波信号のみを特定できる。
【0033】
さらに、被検体表面で発生した音響波による検出信号を特定する方法としては、パターンマッチング処理を利用する方法を利用できる。例えば、パターンマッチング処理により被検体表面からの音響波特有のN型検出信号を特定し、特定したN型検出信号の時間位置を第1の時間tsurfaceとする。具体的にはN型信号の最小ピークあるいは最大ピークの時間位置をtsurfaceとする。また、上述した方法を用いて被検体表面からの音響波以外の検出信号を低減したあとに、最大値や最小値探索により被検体表面で発生した音響波のN型検出信号のピークを検出する方法などを利用することができる。この方法でもN型信号の最小ピークあるいは最大ピークの時間位置をtsurfaceとする。以上の方法などにより、第1の時間tsurfaceを算出できる。なお、被検体表面からの音響波によるN型検出信号の最大ピークあるいは最小ピークの時間位置のうち、どちらかを第1の時間にするかは探触子の特性によって変化する。
【0034】
処理(2)(202):第1の時間(tsurface)と、被検体表面と検出器との距離と、から被検体内部の平均音速を算出する工程
上記の処理で得られた第1の時間(tsurface)と光照射位置である被検体表面から探触子までの距離:dとから被検体の平均音速caverageを算出する。ここでは単純な以下の式で求めることができる。
average=a/tsurface (式1)
探触子17が直接被検体15に設置されている本実施形態においては、第1の音響波は第1の時間(tsurface)をかけて被検体内部のみを伝播していることになるため、上記の式で算出することができる。これは、被検体表面で発生し内部を通過する音響波を利用して、被検体の平均音速を実測できることを意味する。
【0035】
なお、距離dは図1の例では、第1のプレート18aに固定された被検体表面から探触子までの距離となる。これは既知の値として、本実施形態の信号処理モジュールに組み込まれていても良いし、可動であるプレート18aの位置制御により測定可能でも良い。また、任意の距離センサーで測定可能でも良いし、被検体全体を画像化できるカメラなどで被検体の形状を測定し、測定結果から求めても良い。
【0036】
処理(3)(203):算出したの平均音速を用いて、被検体内部で発生する音響波の検出信号を処理して、被検体内部の画像データを形成する工程
処理(2)で得られた被検体の平均音速caverageと、信号収集器19から出力される複数のデジタル検出信号を用いて画像再構成処理を行い、被検体の光学特性に関連したデータを形成する。一般的な光音響トモグラフィーで利用されるタイムドメインあるいはフーリエドメインでの逆投影などが適応される。
【0037】
以上の工程を行うことで、被検体への光照射により得られた信号のみで簡便に被検体の平均音速を算出でき、その平均音速を画像再構成に用いることで、音速の違いにより解像度が低下することのない画像を得ることができる。
【実施例1】
【0038】
本実施形態を適用した光音響トモグラフィーを用いた画像形成装置の一例について説明する。図1の装置概略図を用いて説明する。本実施例においては、光源11として波長1064nmで約10ナノ秒のパルス光を発生するQスイッチYAGレーザーを用いた。パルスレーザー光12から発せられる光パルスのエネルギーは0.6Jであり、そのパルス光をミラーとビームエキスパンダーなどの光学システム13を用いて、半径約2cm程度まで広げた。被検体15としては生体を模擬したファントムを用いた。ファントムは1%のイントラリピッドを寒天で固めたものを利用し、このファントムの平均音速は既知であり、1512m/sec.である。ファントムの大きさは幅:12cm、高さ:8cm、奥行き:4cmとした。また、このファントム内には直径0.03cmのゴム製の黒色ワイヤが中心付近に光吸収体14として埋め込まれている。このファントムを探触子17と厚さ1cmのアクリルプレート18aで挟んだ結果、距離センサーにより得られたファントムの奥行き方向の厚さ(d)は4cmとなった。このように奥行き方向の厚さを規定されたファントムに対して、パルス光12を照射した。音響波探触子17としてはPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)で作られた超音波トランスデューサを用いた。このトランスデューサは2次元アレイ型で、素子数は18×18の素子、正方形型、素子ピッチは2mmである。また、素子の幅は約2mmである。なお、この音響波探触子は光照射領域と同期して、ファントムの面内方向に移動可能になっており、大きな領域を画像化できるように構成されている。
【0039】
図1のように、このファントムの片側の平面(探触子の対向側)に、パルス光を照射すると、光照射側のファントム表面による光吸収による光音響波と、ファントム内に拡散した光がゴム製ワイヤで吸収されることにより生じる光音響波が発生する。その光音響波を超音波トランスデューサで、324チャンネル同時に受信し、その検出信号をアンプ、ADコンバーター、FPGAからなる信号収集器19を用いて、全チャンネルでの光音響信号のデジタルデータを取得した。なお、信号のS/N比を向上させるために、36回レーザーを照射し、得られたすべての検出信号を時間平均化した。その後、得られたデジタルデータを信号処理器20であるワークステーション(WS)へ転送し、WS内に保存した。次に、この保存した受信データに対して、全素子ごとの受信データを平均化処理した。その結果、ファントム内の光吸収体から発生した光音響波信号は、素子ごとの各受信データでの検出時刻が異なるため、平均化により著しく小さくなった。一方、被検体表面で発生した光音響波信号は、素子ごとの各受信データにおいてほぼ同じ検出時刻であるため、平均化により、その他の信号に対して強調された。次に、その全検出信号を平均化した信号に対して、信号の最小値を検出し、その最小値に対応する時間を、被検体表面で発生した光音響波信号の検出時間とした。その結果、得られた検出時間は約26.5μ秒であった。この検出時間とファントムの奥行き方向の厚さから得られたファントムの平均音速は1510m/sec.であり、実際のファントムの音速とほぼ一致した。
【0040】
次に、検出信号に対して離散ウェーブレット変換によるノイズ低減処理を行った後に、算出されたファントムの平均音速を用いて、画像再構成を行った。ここではタイムドメイン方式であるユニバーサルバックプロジェクション法を用いてボリュームデータを形成した。このとき使用したボクセル間隔は0.05cmとした。画像化範囲は11.8cm×11.8cm×4.0cmである。そのときに得られた画像の一例を図4(a)に示す。
【0041】
次に、ファントムの平均音速測定は行わずに、ファントムの平均音速を生体の平均音速である1540m/秒と仮定し、WSに保存した検出信号データを用いて再び画像再構成を行った。そのときの得られた画像の一例を図4(b)に示す。
【0042】
図4(a)と(b)を比較すると、ゴム製ワイヤから発生した初期音圧の幅が明らかに1540m/秒より、1510m/秒の平均音速で画像再構成した画像のほうが狭くなっていることが分かる。また、画像のボケも少ない。つまり、解像度が向上している。このように、被検体の平均音速が推定できない場合おいて、本発明で被検体の平均音速を実測することにより解像度の低下を低減できた。
【0043】
(実施形態1−2)
実施形態1−1においては、探触子17が被検体15に直接設置されていた。しかし、本実施形態においては、互いに略平行に配置された第1及び第2の平板プレートによって、被検体を両側から圧迫固定する場合を想定する。そして、探触子17は、第2の平板プレート表面に設置される。この場合、第1のプレートで固定された被検体表面で発生した音響波が、第1の音響波となる。第1の音響波は、被検体内部のみならず、第2のプレート内も伝播してから探触子17に受信されるため、実施形態1−1で説明した第1の時間(tsurface)は、第1の音響波が被検体内部を通過した時間そのものではなくなる。このように、平均音速を算出するのに必要不可欠な第1の音響波が探触子17に到達するまでの経路に、被検体内部以外の領域が含まれる場合、それを考慮して平均音速を求める必要がある。
【0044】
具体的には、第1の時間(tsurface)から、「第1の音響波が第2のプレートを通過するのに要する時間」を減算して、第1の音響波が被検体内部を通過するのに要した第2の時間を算出する。「第1の音響波が第2のプレートを通過するのに要する時間」は、第2のプレートの音速(材質から固有に求まる)と厚さとから既知の値として、信号処理モジュールに組み込むことができる。
【0045】
また、第1の音響波の被検体内部での伝播距離は、第1及び第2のプレート間の距離dと擬制することができる。よって、(式1)において、第1の時間(tsurface)に替えて第2の時間と、距離dに替えてdを入力すれば、被検体の平均音速を実測することができる。
【0046】
(実施形態2)
実施形態1においては、1箇所から発生する音響波(第1の音響波)のみを利用して平均音速を算出した。本実施形態では、複数の被検体表面で発生した音響波を利用して平均音速を算出する例を示す。すなわち、第1の音響波と、該第1の音響波の発生する被検体表面とは異なる被検体表面で発生した第2の音響波と、の検出信号から平均音速を算出する。以下、第2の実施例に基づいて説明する。
【実施例2】
【0047】
実施例2として、光音響トモグラフィーを用いた画像形成装置において、二方向からレーザーを照射する例について図5(a)を参照して説明する。本実施例にかかる装置の基本構成は実施例1と同じであるが、被検体15を二つのプレート18a,bで挟むことで、被検体のサイズを規定した。すなわち、プレートの間隔を制御することで被検体のサイズを規定する。プレートの厚さはそれぞれ1cmである。光照射は実施例1と同様な方向と、探触子17側からもプレート18bを通して被検体に光照射できる構成になっている。ファントムはウレタンゴムに酸化チタンとインクを混ぜたものを利用した。ファントムの大きさは幅8cm、高さ8cm、奥行き5cmとした。また、このファントム内には直径0.5cmの円柱形状で、インクを多く混ぜることで母材材料とは吸収係数を高くしたものを光吸収体として埋め込んだ。このファントムを2枚のプレートで挟んだ結果、距離センサーにより得られたファントムの奥行き方向の厚さは4.9cmとなった。このように奥行き方向の厚さを規定されたファントムに対して、パルス光12をファントムの両側から照射した。2つの光源からはパルスの発光が同期して行われるようになっている。探触子17としてはPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)で作られた超音波トランスデューサを用いた。このトランスデューサは2次元アレイ型で、素子数は15×23の素子、正方形型、素子ピッチは2mmである。また、素子の幅は約2mmである。
【0048】
このようなファントムへの光照射の結果、第1及び第2のプレート18a,bで固定されたファントム表面から第1及び第2の音響波が発生し、ファントム内の光吸収体からも音響波が発生する。これらの音響波を超音波トランスデューサで、345チャンネル同時に受信し、その検出信号をアンプ、ADコンバーター、FPGAからなる信号収集器19を用いて、全チャンネルでの光音響信号のデジタルデータを取得した。受信された信号の一例を図5(b)に示す。図5(b)のBは探触子側のファントム表面から発生した音響波(第2の音響波)の検出信号である。Aはファントム内部にある光吸収体で発生した光音響波の検出信号である。B’は探触子とは反対側の光照射によりファントム表面で発生した光音響(第1の音響波)の検出信号である。
【0049】
第1の音響波は、ファントム内部を通過し、第2のプレート18bを通過して探触子17に到達する。一方、第2の音響波は、ファントム内部を通過することなく、第2のプレート18bのみを通過して探触子17に到達する。第1及び第2の音響波とも、第2のプレートを通過する時間は同じである。よって、第1及び第2の音響波の検出時刻の差、すなわち、BとB’との時間差35.8μsecを算出すれば、第1の音響波がファントム内部のみを通過するのに要した時間が求まる。この時間を、ファントム表面間の距離である4.9cmで除することによって、ファントムの平均音速を求めると1370m/秒であった。
【0050】
次に、全チャンネルでの光音響信号のデジタル受信データと算出された平均音速を用いて、画像再構成を行った。ここではタイムドメイン方式であるユニバーサルバックプロジェクション法を用いてボリュームデータを形成した。このとき使用したボクセル間隔は0.025cmとした。画像化範囲は3.0cm×4.6cm×4.9cmである。そのときに得られた画像の一例を図5(c)に示す。画像にはファントム内に配置された光吸収体が画像化されており、それらの位置は実際のファントム内の光吸収体の位置と一致していた。また、この光吸収体の画像を解析すると、解像度は約2mmであり、理論限界解像度である2mmとほぼ一致した。このように、被検体の平均音速が分からない場合おいて、本発明を利用することで、解像度劣化のない画像を得ることができた。

このように本実施形態では、第1の音響波と第2の音響波との検出時刻の差を、第1の音響波と第2の音響波とを発生させる被検体表面間の距離で除することによって、平均音速を算出することができる。この算出方法は、第1の音響波と第2の音響波とが探触子17に到達するまでの通過経路が共通しており、その差分の通過経路が被検体内部のみとなる場合に有効である。
【0051】
本実施形態では、第1及び第2の音響波の検出時刻差を利用して平均音速を算出できるため、実施形態1のようにパルス光の照射タイミングを正確に把握する必要がない。そのため、光源のシステムの不安定性など外部要因による計測誤差の影響を受けないという面で有利である。また、本実施形態においては第2のプレート18bは必須ではないが、探触子17の全面に第2のプレート18bが存在する場合であっても、時間差を取る処理によって第2のプレート18bを通過する時間は相殺されるので、実施形態1−2のような補正をする必要もない。
【0052】
なお、本実施形態においては実施例2に示したような両面照射である必要はなく、実施形態1のような片側照射でも構わない。片側照射の場合には、第1のプレートに固定された被検体表面に照射された光は、被検体内を減衰しながら伝播し、反対側の被検体表面に到達することもある。その場合は、反対側の被検体表面から微弱な第2の音響波が生じうる。ただし、被検体の厚みが4cm程度であれば、確実に時間差を取るという観点からも、第2の音響波の強度を確保する必要があるため、両側から照射することが好ましい。
【0053】
また、本実施形態においては実施例2における距離センサは必須ではない。第1及び第2の音響波を発生する被検体表面間の距離は既知でよい。
【0054】
(実施形態3)
実施形態1,2においては、少なくとも1つの平板プレート18aにより被検体が固定されていたが、本発明はそれに限られることはない。プレートにより形状を規定されない被検体に探触子17を設置して測定する例を以下の実施例3に示す。
【実施例3】
【0055】
図6に示した装置概略図を用いて説明する。本実施例においては、基本構成は実施例1及び2と同じであるが、被検体の形状を測定するカメラ22を有する。カメラ22で被検体をキャプチャーして、その画像解析から探触子17と光照射領域の距離dを算出する。被検体表面で発生した音響波は、探触子17に到達するまでに被検体内部のみを通過するため、実施形態1−1で示した式1を用いることができ、距離dに替えて、距離dを入力して、平均音速を算出する。そして、それを用いて被検体の生体情報データを再構成する。このように、被検体の形状が複雑な場合においても、カメラにより被検体の形状を確認できれば、被検体の平均音速を算出でき、解像度劣化のない画像を得ることができる。
【0056】
(実施形態4)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0057】
11 光源
17 音響波探触子
18 平板プレート
20 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にパルス光を照射するための光源と、
前記パルス光により被検体表面及び被検体内部で発生する音響波を検出する検出器と、
前記検出器から取得される検出信号から、被検体内部の画像データを取得する信号処理部と、を有し、
該信号処理部が、
前記被検体表面で発生し前記被検体内部を通過した第1の音響波により前記検出器で取得される検出信号から、前記被検体内部の平均音速を算出し、
前記被検体内部で発生する音響波により前記検出器から取得される検出信号と前記平均音速とを用いて、前記被検体内部の画像データを取得することを特徴とする光音響画像形成装置。
【請求項2】
前記信号処理部が、
前記パルス光の照射から前記第1の音響波の検出までの時間と、前記被検体表面と前記検出器との距離と、から前記被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項1に記載の光音響画像形成装置。
【請求項3】
前記信号処理部が、
前記第1の音響波と、該第1の音響波とは異なる前記被検体表面で発生した第2の音響波と、により前記検出器から取得される検出信号から、前記被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項1に記載の光音響画像形成装置。
【請求項4】
前記信号処理部が、
前記第1の音響波と前記第2の音響波との検出時刻の差を、前記第1の音響波と前記第2の音響波とを発生させる被検体表面間の距離で除することによって、前記被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項3に記載の光音響画像形成装置。
【請求項5】
前記信号処理部が、
前記被検体表面及び前記被検体内部で発生する音響波を検出した全検出信号に対して、前記被検体表面で発生した音響波と前記被検体内部で発生した音響波との伝播特性の違いを考慮して、前記被検体表面で発生した音響波による検出信号を強調する処理を行い、前記被検体表面で発生した音響波の検出信号を特定し、該検出信号から被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光音響画像形成装置。
【請求項6】
前記処理が、前記検出器を構成する複数の受信素子で検出されたそれぞれの全検出信号のデータ平均化であることを特徴とする請求項5に記載の光音響画像形成装置。
【請求項7】
前記被検体を両側から圧迫固定する互いに略平行に配置された第1及び第2の平板プレートを有し、
前記第1のプレート側に前記光源を、前記第2のプレートに接触して前記検出器を配置し、
前記第1のプレートで固定された前記被検体表面で発生した音響波が、前記第1の音響波であることを特徴とする請求項1に記載の光音響画像形成装置。
【請求項8】
前記信号処理部が、
前記パルス光の照射から前記第1の音響波の検出までの第1の時間と、前記第1のプレートに固定された被検体表面と前記検出器との距離と、から前記被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項7に記載の光音響画像形成装置。
【請求項9】
前記信号処理部が、
前記第1の時間から、前記第1の音響波が前記第2のプレートを通過する時間を減算して、該音響波が前記被検体内部を通過するのに要した第2の時間を算出し、
該第2の時間を、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの距離で除することによって、前記被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項8に記載の光音響画像形成装置。
【請求項10】
前記信号処理部が、
第1及び第2のプレートで固定された前記被検体表面から発生した第1及び第2の音響波の前記検出器による検出時刻の差を、前記第1の音響波と前記第2の音響波とを発生させる被検体表面間の距離で除することによって、前記被検体内部の平均音速を算出することを特徴とする請求項7に記載の光音響画像形成装置。
【請求項11】
前記光源と同期して発光する第2の光源を前記第2のプレート側に配置することを特徴とする請求項10に記載の光音響画像形成装置。
【請求項12】
被検体へのパルス光の照射により、被検体表面及び被検体内部で発生した音響波を検出器で検出し、検出信号を処理して被検体内部の画像データを形成する光音響画像形成方法であって、
前記被検体表面で発生し前記被検体内部を通過した音響波を検出した検出信号から、前記被検体内部の平均音速を算出する工程と、
前記被検体内部で発生した音響波を検出した検出信号と前記平均音速とを用いて、前記被検体内部の画像データを取得する工程と、
を有することを特徴とする光音響画像形成方法。
【請求項13】
コンピュータに、
請求項12に記載の光音響画像形成方法を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−160936(P2011−160936A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25864(P2010−25864)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】