光音響画像生成装置、及び方法
【課題】光音響画像生成装置において、追加の物理的手段を設けることなく人体の目に対する安全性を向上させる。
【解決手段】プローブ11は、レーザユニット13から導光された光の被検体に対する照射、及び被検体に対する超音波の送受信を行う。プローブ11は、光音響画像の生成に先立って超音波の送受信を行う。画像生成手段23は、超音波の受信結果に基づいて超音波画像を生成する。接触状態判断手段26は、超音波画像に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。制御手段24は、接触状態判断手段26で接触していると判断されたときに、レーザ発振トリガ信号を出力し、プローブ11から被検体に対して光を照射させる。
【解決手段】プローブ11は、レーザユニット13から導光された光の被検体に対する照射、及び被検体に対する超音波の送受信を行う。プローブ11は、光音響画像の生成に先立って超音波の送受信を行う。画像生成手段23は、超音波の受信結果に基づいて超音波画像を生成する。接触状態判断手段26は、超音波画像に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。制御手段24は、接触状態判断手段26で接触していると判断されたときに、レーザ発振トリガ信号を出力し、プローブ11から被検体に対して光を照射させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像生成装置及び方法に関し、更に詳しくは、被検体に光を照射し、光照射により被検体内で生じた超音波を検出して光音響画像を生成する光音響画像生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、パルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
ここで、光音響イメージングでは、比較的出力の高いレーザ光を生体内に照射する必要がある。安全性の観点からは、プローブが生体に接触していないときはパルスレーザ光の出射を抑止することが好ましい。これに関して、特許文献1には、光路上に配置された被測定物を検出する被測定物検出手段を設け、被測定物検出手段が被測定物を検出しているときに光照射を行うことが記載されている。被測定物の検出には、被測定物の特定を利用できる。具体的には、被測定物の遮光性、反射性、固有の温度、重さ、静電容量を利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、投光器と受光器との組や温度センサなど、被測定物の検出を行うためにプローブに追加の物理的手段が必要である。このような追加の物理的手段は、コストの上昇を招く。また、そのような追加の物理的手段を持たないプローブを用いたときには、被測定物の検出を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、追加の物理的手段を設けることなく人体の目に対する安全性を向上できる光音響画像生成装置、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、光源と、前記光源から導光された光の被検体に対する照射、及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブと、少なくとも、前記プローブから被検体に対して照射された光に対して前記プローブで受信された超音波である光音響信号に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段と、前記光音響画像の生成に先立って、前記プローブから送信された超音波に対して前記プローブで受信された超音波である反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する接触状態判断手段と、前記接触状態判断手段で接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光を照射させる制御手段とを備える光音響画像生成装置を提供する。
【0009】
本発明の光音響画像生成装置では、前記プローブが超音波の送受信を行う複数の超音波振動子を含んでおり、前記接触状態判断手段が、前記光音響画像で画像化する範囲のうちの少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する構成を採用することができる。
【0010】
前記光音響画像を画像化する範囲が複数のブロックに分けられており、前記接触状態判断手段が、複数のブロックのそれぞれについて、各ブロック内の少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断することとすることもできる。
【0011】
上記の場合、前記プローブが前記光を照射する範囲がブロック単位で切り替え可能であり、前記制御手段が、前記接触状態判断手段にて、前記プローブから光を照射すべきブロックについて前記プローブが被検体に接触していると判断されたとき、前記プローブから当該ブロックに光を照射させる構成とすることもできる。
【0012】
前記接触状態判断手段が、被検体の深さ方向所定の範囲における前記反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。
【0013】
前記画像生成手段が、前記反射音響信号に基づいて超音波画像を更に生成するものであり、前記接触状態判断手段が、前記生成された超音波画像を用いて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する構成を採用することができる。この場合、前記接触状態判断手段が、前記プローブが被検体に接触しない状態で生成された超音波画像の典型的な画像を参照画像として記憶しており、前記生成された超音波画像と前記参照画像との類似度に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。あるいは、これに代えて、前記接触状態判断手段が、前記生成された超音波画像の特徴解析を行い、その解析結果に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断することとしてもよい。
【0014】
超音波画像を用いるのに代えて、前記接触状態判断手段が、前記受信された反射音響信号の信号波形に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。この場合、前記接触状態判断手段が、前記反射音響信号の信号波形の特徴解析を行い、該特徴解析の結果に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。あるいは、これに代えて、前記接触状態判断手段が、前記プローブが被検体に接触しない状態で受信された反射音響信号の典型的な信号波形を参照信号波形として記憶しており、前記受信された反射音響信号の信号波形と前記参照信号波形との類似度に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。
【0015】
本発明では、前記光源が、レーザ媒質と、該レーザ媒質に励起光を照射する励起光源と、前記レーザ媒質を挟み込むように対向して配置され、光共振器を構成する一対のミラーと、前記光共振器内に配置されたQスイッチとを含む構成を採用できる。
【0016】
前記制御手段は、光音響画像の生成に際して、前記光源に、前記レーザ媒質に対して励起光を照射させる旨の励起トリガ信号を送信し、該励起トリガ信号の送信後で、かつ、前記接触状態判断手段が前記プローブが被検体に接触していると判断しているときに、前記光源に、前記Qスイッチをオンにする旨のQスイッチトリガ信号を送るものとすることができる。
【0017】
前記光源が、前記光共振器内に配置された波長選択素子を更に含み、相互に異なる複数の波長のレーザ光を出射する構成を採用することができる。
【0018】
前記波長選択素子が、透過波長が相互に異なる複数のバンドパスフィルタを含み、前記光源が、前記光共振器の光路上に挿入されるバンドパスフィルタが所定の順序で順次に切り替わるように前記波長選択手段を駆動する駆動手段を更に有する構成を採用できる。
【0019】
前記波長選択素子が、回転変位に伴って前記光共振器の光路上に選択的に挿入するバンドパスフィルタを切り替えるフィルタ回転体で構成され、前記駆動手段が前記フィルタ回転体を回転駆動することとしてもよい。
【0020】
前記画像生成手段が、被検体に照射された複数の波長のレーザ光に対して前記プローブで受信された、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する2波長データ演算手段を含み、該2波長データ演算手段で抽出された相対的な信号強度の大小関係に基づいて光音響画像を生成する構成を採用できる。
【0021】
前記画像生成手段が、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号に基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に含み、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記相対的な信号強度の大小関係に基づいて決定してもよい。
【0022】
前記光源が出射すべきパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、前記画像生成手段が、前記第1の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第1の光音響信号と、前記第2の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第2の光音響信号とのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する再構成手段とを更に含み、前記強度比抽出手段が、前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が、前記再構成画像から前記強度情報を抽出するようにしてもよい。
【0023】
本発明は、また、被検体に対する光照射及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブから、被検体に対して超音波の送信を行うステップと、前記プローブにより、前記送信された超音波に対する反射超音波を受信するステップと、前記受信された反射音波に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するステップと、前記プローブが被検体に接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光照射を行うステップと、前記プローブにより、前記光照射により被検体内で生じた超音波を受信するステップと、前記受信された、光照射により生じた超音波に基づいて光音響画像を生成するステップとを有することを特徴とする光音響画像生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光音響画像生成装置及び方法は、光音響画像の生成に先立って超音波の送受信を行い、超音波の検出結果に基づいてプローブが被検体に接触しているか否かを判断する。プローブが被検体に接触しているときに光照射を行うようにすることで、光が空間に放出されることを防ぐことができ、人体の目に対する安全性を向上できる。本発明では、超音波に基づいて接触を判断しているため、そのためだけの追加の物理的手段は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】プローブが被検体に接触していない状態で生成された超音波画像を例示する図。
【図3】プローブが被検体に接触した状態で生成された超音波画像を例示する図。
【図4】光音響画像生成時の動作手順を示すフローチャート。
【図5】光音響画像と超音波画像とを重畳した画像を例示する図。
【図6】本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図7】プローブが被検体に接触していない状態における反射音響信号の信号波形を例示する信号波形図。
【図8】プローブが被検体に接触した状態における反射音響信号の信号波形を例示する信号波形図。
【図9】第2実施形態における光音響画像生成時の動作手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の第3実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図11】レーザ光源ユニットを示すブロック図。
【図12】本発明の第4実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図13】レーザ光源ユニットを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)10は、超音波探触子(プローブ)11、超音波ユニット12、及び光源(レーザユニット)13を備える。光音響画像診断装置10は、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能である。レーザユニット13は、光音響画像生成の際に、被検体に照射する光(レーザ光)を生成する。レーザ光の波長は、観察対象物に応じて適宜設定すればよい。レーザユニット13が出射するレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光される。
【0027】
プローブ11は、光照射部を含み、レーザユニット13から導光されたレーザ光を被検体に向けて照射する。また、プローブ11は、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び被検体からの超音波の検出(受信)を行う。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有する。プローブ11は、例えば超音波画像の生成時は複数の超音波振動子から超音波を出力し、出力された超音波に対する反射超音波(以下、反射音響信号とも呼ぶ)を検出する。プローブ11は、光音響画像生成時は、被検体内の測定対象物がレーザユニット13からのレーザ光を吸収することで生じた超音波(以下、光音響信号とも呼ぶ)を検出する。
【0028】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、画像生成手段23、制御手段24、送信制御回路25、及び接触状態判断手段26を有する。受信回路21は、プローブ11が有する複数の超音波振動子が検出した超音波(光音響信号又は反射音響信号)を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば所定のサンプリング周期で超音波信号をサンプリングする。
【0029】
画像生成手段23は、AD変換手段22でサンプリングされた超音波に基づいて断層画像を生成する。画像生成手段23は、プローブ11で検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成すると共に、プローブ11で検出された反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する。画像生成手段23は、画像再構成手段231、検波手段232、対数変換手段233、及び画像構築手段234を含む。画像生成手段23内の各部の機能は、コンピュータが所定のプログラムに従って処理を動作することで実現できる。
【0030】
画像再構成手段231は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された超音波信号に基づいて、断層画像の各ラインのデータを生成する。画像再構成手段231は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。画像再構成手段231は、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行ってもよい。あるいは画像再構成手段231は、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行ってもよい。
【0031】
検波手段232は、画像再構成手段231が出力する各ラインのデータの包絡線を出力する。対数変換手段233は、検波手段232が出力する包絡線を対数変換し、ダイナミックレンジを広げる。画像構築手段234は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、断層画像を生成する。画像構築手段234は、例えば超音波信号(ピーク部分)の時間軸方向の位置を、断層画像における深さ方向の位置に変換して断層画像を生成する。画像表示手段14は、画像構築手段234が生成した断層画像を、表示モニタなどに表示する。
【0032】
制御手段24は、超音波ユニット12内の各部を制御する。制御手段24は、画像生成手段23で超音波画像を生成する場合は、送信制御回路25に超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路25は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。制御手段24は、超音波送信トリガ信号と同期して、AD変換手段22における反射音響信号のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0033】
一方、制御手段24は、画像生成手段23で光音響画像を生成する場合は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を送る。レーザユニット13は、トリガ信号を受けてレーザ発振を行い、レーザ光を出射する。制御手段24は、レーザ発振トリガ信号と同期して、AD変換手段22における光音響信号のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0034】
制御手段24は、光音響画像の生成では、レーザユニット13へのレーザ発振トリガ信号の出力に先立って、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、その超音波に対する反射音響信号を検出する。接触状態判断手段26は、プローブ11で検出された反射音響信号に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。より詳細には、接触状態判断手段26は、画像生成手段23が生成した、反射音響信号に基づく超音波画像を用いて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。
【0035】
接触状態判断手段26は、例えばプローブ11が被検体に接触していない状態で生成された超音波画像の典型的な画像を参照画像として記憶している。接触状態判断手段26は、画像生成手段23が生成した超音波画像と、記憶している参照画像とを比較し、その比較結果に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。接触状態判断手段26は、例えば画像生成手段23が生成した緒音波画像と参照画像との類似度を計算する。接触状態判断手段26は、2つの超音波画像の類似度が所定のしきい値以上のときは、プローブ11が被検体に接触していないと判断する。接触状態判断手段26は、類似度がしきい値よりも低ければ、プローブ11が被検体に接触していると判断する。
【0036】
制御手段24は、接触状態判断手段26にてプローブ11が被検体に接触していると判断された場合は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力し、被検体にレーザ光を照射させる。一方、接触状態判断手段26にてプローブ11が被検体に接触していないと判断されたときは、レーザユニット13に対するレーザ発振トリガ信号を抑止し、プローブ11からレーザ光を照射させない。
【0037】
図2は、プローブ11が被検体に接触していない状態で生成された超音波画像を例示する。同図において、紙面横方向は、プローブ11において超音波振動子が一次元的に配列された方向に対応し、縦方向は深さ方向に対応している。プローブ11が空気中にあるときに、つまりプローブ11を被検体に接触させずに超音波の送受信を行い、受信した超音波に基づいて超音波画像を生成すると、生成された超音波画像には、図2に示すように、プローブ11と空気との界面の高輝度エコーと、その多重エコーとが含まれる。
【0038】
図3は、プローブ11が被検体に接触した状態で生成された超音波画像を例示する。プローブ11が被検体に接触した状態で超音波の送信が行われた場合、プローブ11から送信された超音波は被検体の内部を進行し、組織界面で反射波が生じる。従って、受信超音波に基づいて超音波画像を生成すると、生成された超音波画像には、図3に示すように、組織の輪郭などが現れる。図2に示す超音波画像と図3に示す超音波画像とを比較すると、プローブ11が被検体に接触しているときと接触していないときとで、生成される超音波画像が大きく異なることがわかる。
【0039】
接触状態判断手段26は、例えば、図2に示すような、プローブ11が被検体に接触していないときの典型的な超音波画像を参照画像として記憶している。接触状態判断手段26は、例えば参照画像と画像生成手段23が生成した超音波画像との相関を求め、その相関に基づいて両者がどれだけ類似しているかを判断する。接触状態判断手段26は、両者の類似度をしきい値処理し、類似度が高ければ生成された超音波画像はプローブ11が被検体に接触していない状態で生成された超音波画像であると判断する。つまり、生成された超音波画像が図2に示すような画像であれば、接触状態判断手段26は、超音波画像の生成時にプローブ11が被検体に接触していなかったと判断する。一方、生成された超音波画像が図3に示すような画像である場合、参照画像との類似度は低くなる。この場合、接触状態判断手段26は、超音波画像の生成時にプローブ11が被検体に接触していたと判断する。
【0040】
上記では、接触状態判断手段26が参照画像を記憶しておき、参照画像と類似度に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することとしたが、超音波画像に基づく接触状態の判断は上記したものに限定されない。例えば、接触状態判断手段26が、画像生成手段23で生成された超音波画像の特徴解析を行い、その解析結果に基づいて接触しているか否かを判断してもよい。図2に示したように、プローブ11が被検体に接触しない状態で生成された超音波画像では、飽和した高輝度の線が超音波振動子と平行に等間隔で並ぶ。接触状態判断手段26は、例えば生成された超音波画像において、飽和した高輝度の線が超音波振動子と平行に等間隔で並んでいるときに、プローブ11が被検体に接触していない状態で超音波画像が生成されたと判断してもよい。
【0041】
図4は、光音響画像生成時の動作手順を示す。制御手段24は、被検体への光照射に先立って、超音波送信トリガ信号を送信制御回路25に出力する(ステップA1)。プローブ11は、被検体内へ超音波を送信する(ステップA2)。プローブ11は、被検体内で反射した反射音響信号を受信する(ステップA3)。超音波ユニット12内の画像生成手段23は、反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する(ステップA4)。
【0042】
接触状態判断手段26は、ステップA4で生成された超音波画像に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する(ステップA5)。プローブ11が被検体に接触していないと判断されたときはステップA1に戻り、プローブ11が被検体に接触していると判断されるまで、ステップA1〜A5を繰り返し実行する。
【0043】
ステップA5でプローブ11が被検体に接触していると判断されると、制御手段24は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力する(ステップA6)。レーザユニット13は、レーザ発振トリガ信号を受けた後にパルスレーザ光を出射する。レーザユニット13から出射したパルスレーザ光は、プローブ11から被検体に照射される(ステップA7)。
【0044】
プローブ11は、レーザ光の照射後、レーザ光の照射により生体内で発生した光音響信号を受信する(ステップA8)。超音波ユニット12内の画像生成手段は、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する(ステップA9)。画像表示手段14は、ステップA4で生成された超音波画像と、ステップA8で生成された光音響画像とを表示画面上に表示する(ステップA10)。画像表示手段14は、ステップB10では、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳表示する。
【0045】
図5は、光音響画像と超音波画像とを重畳した画像を例示する。同図において、横方向は超音波振動子が配列された方向に対応し、縦方向は深さ方向に対応している。画像表示手段14は、図5に示すように、例えば組織の輪郭が画像化される超音波画像(図3)に対し、例えば血管部分が画像化される光音響画像を重ねて表示する。
【0046】
本実施形態では、超音波画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断し、プローブ11が被検体に接触しているときにレーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力するようにしている。このようにすることで、空間中にレーザ光が出射する事態を避けることができ、人体の目に対する安全性を向上できる。また、本実施形態では超音波画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断しているため、接触状態の判断のために、それ専用の特別のセンサなどの追加の物理的手段が不要である。また、既存のプローブを用いたときでも、被検体への接触を判断可能である。
【0047】
続いて本発明の第2実施形態を説明する。図6は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)の構成は、図1に示す第1実施形態の光音響画像診断装置の構成と同様である。本実施形態では、接触状態判断手段26は、超音波画像に代えて、反射音響信号の信号波形に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判定する。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0048】
図7は、プローブ11が被検体に接触していない状態で超音波の送信を行ったときに検出される反射音響信号の信号波形を例示する。同図において、紙面縦方向は、サンプリング開始からの時間(被検体の深さ方向の位置)に対応し、横方向は信号レベルに対応する。プローブ11が被検体に接触していないときは、図7に示すように、信号レベルが飽和した点が周期的に複数現れるような信号波形の反射音響信号が検出される。このような信号波形の反射音響信号に基づいて超音波画像を生成すると、図2に示すような超音波画像が得られる。
【0049】
図8は、プローブ11が被検体に接触した状態で超音波の送受信を行ったときに検出される反射音響信号の信号波形を例示する。プローブ11が被検体に接触した状態で超音波の送信が行われた場合、プローブ11から送信された超音波は被検体の内部を進行し組織界面で反射して、図8に示すような、飽和レベルよりも低い振幅の信号波形が観察される。このような信号波形の反射音響信号に基づいて超音波画像を生成すると、図3に示すような超音波画像が得られる。図7に示す反射音響信号の信号波形と図8に示す反射音響信号の信号波形とを比較すると、プローブ11が被検体に接触しているときと接触していないときとで、反射音響信号の信号波形が大きく異なることがわかる。
【0050】
本実施形態では、接触状態判断手段26は、AD変換手段22でサンプリングされた反射音響信号を入力する。接触状態判断手段26は、反射音響信号の信号波形の特徴解析を行い、AD変換手段22でサンプリングされた反射音響信号の信号波形に、プローブ11が被検体に接触していないときに観察される反射音響信号の信号波形の特徴が表れているか否かを判断する。例えば接触状態判断手段26は、反射音響信号において振幅が飽和レベルに対応する所定のレベル以上となっている箇所がいくつあるかを調べると共に、その飽和レベルとなっている箇所の間隔を調べる。接触状態判断手段26は、例えば反射音響信号において複数の飽和レベルとなる個所が等間隔に並んでいるときは、プローブ11が被検体に接触していないと判断する。接触状態判断手段26は、逆に、飽和レベルとなる個所が等間隔に並んでいないときは、プローブ11が被検体に接触していると判断する。
【0051】
上記では、接触状態判断手段26が反射音響信号の特徴解析を行ってプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することとしたが、反射音響信号の信号波形基づく接触状態の判断は上記したものに限定されない。例えば、接触状態判断手段26は、図7に示すような、プローブ11が被検体に接触していないときの典型的な反射音響信号の信号波形を参照信号波形として記憶しておき、AD変換手段22が出力する反射音響信号の信号波形と参照信号との相関を求め、その相関に基づいて両者がどれだけ類似しているかを判断してもよい。その場合、接触状態判断手段26は、両者の類似度をしきい値処理し、類似度が高ければプローブ11が被検体に接触していると判断し、類似度が低ければプローブ11が被検体に接触していると判断すればよい。
【0052】
なお、接触状態判断手段26は、AD変換手段22でサンプリングされた反射音響信号に代えて、画像再構成手段231、検波手段232、又は対数変換手段233の出力信号を入力してもよい。その場合でも、超音波画像生成前の反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かの判断が可能である。
【0053】
図9は、本実施形態における光音響画像生成時の動作手順を示す。制御手段24は、被検体への光照射に先立って、超音波送信トリガ信号を送信制御回路25に出力する(ステップB1)。プローブ11は、被検体内へ超音波を送信する(ステップB2)。プローブ11は、被検体内で反射した反射音響信号を受信する(ステップB3)。ここまでのステップは、図4におけるステップA1〜A3と同様でよい。
【0054】
接触状態判断手段26は、ステップB3で受信された反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する(ステップB4)。接触状態判断手段26は、プローブ11が有する複数の超音波振動子で検出された反射音響信号のうち、少なくとも超音波振動子1ch分の反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。ステップB4でプローブ11が被検体に接触していないと判断されたときはステップB1に戻り、プローブ11が被検体に接触していると判断されるまで、ステップB1〜B4を繰り返し実行する。ステップB4でプローブ11が被検体に接触していると判断されると、画像生成手段23は、反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する(ステップB5)。
【0055】
制御手段24は、ステップB4でプローブ11が被検体に接触していると判断された後に、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力する(ステップB6)。レーザユニット13は、レーザ発振トリガ信号を受けた後にパルスレーザ光を出射する。レーザユニット13から出射したパルスレーザ光は、プローブ11から被検体に照射される(ステップB7)。プローブ11は、レーザ光の照射後、レーザ光の照射により生体内で発生した光音響信号を受信する(ステップB8)。
【0056】
超音波ユニット12内の画像生成手段は、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する(ステップB9)。画像表示手段14は、ステップB5で生成された超音波画像と、ステップB8で生成された光音響画像とを表示画面上に表示する(ステップB10)。画像表示手段14は、ステップB10では、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳表示する。ステップB6〜B10は、図4のステップA6〜A10と同様でよい。なお、超音波画像の生成は、特にステップB4でプローブ11が被検体に接触していると判断された直後に限定されるわけではなく、反射音響信号の受信後であれば任意のタイミングでよい。
【0057】
本実施形態では、検出された反射音響信号から生成された超音波画像に代えて、反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。プローブ11が被検体に接触していないときには、そのときに特有の信号波形が観察されるため、画像生成前の反射音響信号の信号波形を用いたときでも、第1実施形態と同様に、追加の物理手段を必要とせずに、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断できる。本実施形態では、超音波画像を生成せずにプローブ11の接触状態を判断できるため、第1実施形態に比して、接触状態を判断するための処理を簡素化できる。
【0058】
引き続き、本発明の第3実施形態を説明する。図10は、本発明の第3実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像診断装置10aは、超音波探触子(プローブ)11、超音波ユニット12a、及び光源(レーザユニット)13を備える。超音波ユニット12aは、受信回路21、AD変換手段22、画像生成手段23a、送信制御回路25、接触状態判断手段26、トリガ制御回路27、及び制御手段28を有する。本実施形態の光音響画像診断装置10aも、図1に示す第1実施形態の非光音響画像診断装置10と同様に、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能である。
【0059】
プローブ11は、光照射部を含み、レーザユニット13から導光されたレーザ光を被検体に向けて照射する。また、プローブ11は、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び被検体からの超音波の検出(受信)を行う。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有する。プローブ11には、モード切替スイッチ15が設けられている。プローブ11は、モード切替スイッチ15の有無を除けば、第1実施形態の光音響画像診断装置10で用いられるプローブ11と同じでよい。
【0060】
モード切替スイッチ15には、例えばオルタネート動作のプッシュスイッチを用いることができる。モード切替スイッチ15は、光音響画像の生成を含む動作モードと、光音響画像の生成を含まない動作モードとの間で動作モードを切り替えるために使用される。動作モードは、例えば超音波画像を生成するモード、光音響画像を生成するモード、及び超音波画像と光音響画像とを生成するモードを含む。医師などの操作者は、モード切替スイッチ15を押すことで、超音波画像、光音響画像、超音波画像及び光音響画像の双方を切り替えて表示させることができる。
【0061】
受信回路21は、プローブ11が有する複数の超音波振動子が検出した超音波(光音響信号又は反射音響信号)を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号、すなわち光音響信号及び反射音響信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば所定のサンプリング周期で超音波信号をサンプリングする。画像生成手段23aは、AD変換手段22でサンプリングされた超音波信号に基づいて断層画像、すなわち光音響画像と超音波画像とを生成する。
【0062】
画像生成手段23aは、受信メモリ235、データ分離手段236、光音響画像再構成手段237、検波・対数変換手段238、光音響画像構築手段239、超音波画像再構成手段240、検波・対数変換手段241、超音波画像構築手段242、及び画像合成手段243を含む。光音響画像再構成手段237及び超音波画像再構成手段240は、図1における画像再構成手段231に対応する。検波・対数変換手段238及び検波・対数変換手段241は、図1における検波手段232と対数変換手段233とに対応する。光音響画像構築手段239及び超音波画像構築手段242は、図1における画像構築手段234に対応する。
【0063】
受信メモリ235には、AD変換手段22でサンプリングされた超音波信号のサンプリングデータが格納される。すなわち、光音響信号のサンプリングデータである光音響データと、反射音響信号のサンプリングデータである反射超音波データとが格納される。データ分離手段236は、受信メモリ235に格納された光音響データと反射超音波データとを分離する。データ分離手段236は、光音響データを光音響画像再構成手段237に渡し、反射超音波データを超音波画像再構成手段240に渡す。
【0064】
光音響画像再構成手段237は、光音響データの再構成を行う。超音波画像再構成手段240は、反射超音波データの再構成を行う。光音響画像再構成手段237及び超音波画像再構成手段240が行う再構成は、画像再構成手段231(図1)が行う再構成と同じでよい。検波・対数変換手段238は、光音響画像再構成手段237で再構成された光音響データに対して検波を行い、対数変換を行う。検波・対数変換手段241は、超音波画像再構成手段240で再構成された反射超音波データに対して検波を行い、対数変換を施す。
【0065】
光音響画像構築手段239は、検波・対数変換が行われた光音響データに基づいて、光音響画像を生成する。超音波画像構築手段242は、検波・対数変換が行われた超音波データに基づいて、超音波画像を生成する。光音響画像構築手段239及び超音波画像構築手段242における画像生成は、画像構築手段234(図1)が行う画像生成と同じでよい。超音波画像構築手段242が生成した超音波画像は、接触状態判断手段26に与えられる。接触状態判断手段26は、超音波画像構築手段242で生成された超音波画像に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かの判断を行う。
【0066】
画像合成手段243は、光音響画像構築手段239で生成された光音響画像と、超音波画像構築手段242で生成された超音波画像とを合成する。画像合成手段243は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。その際、画像合成手段243は、光音響画像と超音波画像とで、対応点が同一の位置となるように位置合わせをすることが好ましい。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0067】
次いで、レーザユニット13の構成を詳細に説明する。図11は、レーザユニット13の構成を示す。レーザユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、バンドパスフィルタ56を有する。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、例えばアレキサンドライト結晶やCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6),Cr:LiCAF(Cr:LiCaAlF6)結晶,Ti:Sapphire結晶を用いることができる。フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源、例えば半導体レーザや固体レーザを、励起光源として用いてもよい。
【0068】
ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により光共振器が構成される。ここでは、ミラー54が出力側のミラーであるとする。光共振器内には、Qスイッチ55が挿入される。Qスイッチ55により、光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させることで、パルスレーザ光を得ることができる。バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)56は、レーザユニット13から出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した光を選択的に透過させる。バンドパスフィルタ56に代えて、所定の波長の光を透過するBRFなど、他の素子を用いてもよい。あるいは、バンドパスフィルタ56は省略してもよい。
【0069】
図10に戻り、トリガ制御回路27は、モード切替スイッチ15の操作状態に応じた動作モードの切り替えや、レーザユニット13に対するトリガ、送信制御回路25に対するトリガ、AD変換手段22に対するトリガなどを行う。制御手段28は、超音波ユニット12a内の各部に接続されており、各部の制御を行う。トリガ制御回路27及び制御手段28は、図1における制御手段24に対応する。
【0070】
トリガ制御回路27は、モード切替スイッチ15からの信号に基づいて、動作モードの切り替えを行う。トリガ制御回路27は、例えばモード切替スイッチ15が操作されるたびに動作モードを切り替える。トリガ制御回路27は、例えば、初期状態、つまりモード切替スイッチ15が一度も押されていない状態では、動作モードを光音響画像の生成を含まない動作モード、例えば超音波画像のみを生成する動作モードに設定する。トリガ制御回路27は、動作モードが超音波画像生成モードのときにモード切替スイッチ15が押されると、動作モードを光音響画像生成モードに切り替える。トリガ制御回路27は、更にモード切替スイッチ15が押されると、動作モードを光音響画像生成モードから超音波画像と光音響画像との双方を生成するモードに切り替える。双方の画像を生成するモードでモード切替スイッチ15が押されたときは、動作モードを、超音波画像を生成するモードに戻す。以降、トリガ制御回路27は、モード切替スイッチ15が押されるたびに、動作モードを、超音波画像、光音響画像、超音波画像と光音響画像の双方を生成するモードの順に切り替えていく。
【0071】
また、トリガ制御回路27は、被検体に対する超音波送信に際して、送信制御回路25に超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路25は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。トリガ制御回路27は、超音波送信トリガ信号と同期してAD変換手段22にADトリガ信号(サンプリングトリガ信号)を送る。AD変換手段22は、ADトリガ信号を受けると、反射音響信号のサンプリングを開始する。
【0072】
トリガ制御回路27は、動作モードが光音響画像の生成を含むモードであるとき、レーザユニット13に、フラッシュランプ52(図11)からレーザロッド51へ励起光を照射させる旨のフラッシュランプトリガ信号(励起トリガ信号)を出力する。トリガ制御回路27は、例えば所定の時間間隔でフラッシュランプトリガ信号を出力する。フラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答してレーザロッド51に励起光を照射する。
【0073】
トリガ制御回路27は、励起光の照射後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断していれば、レーザユニット13のQスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力する。Qスイッチ55が、Qスイッチトリガ信号に応答して光共振器内の挿入損失を損失大から損失小に急激に変化させることで、出力側のミラー54からパルスレーザ光が出射する。トリガ制御回路27は、Qスイッチトリガ信号と同期してAD変換手段22にADトリガ信号を送る。AD変換手段22は、ADトリガ信号を受けると、光音響信号のサンプリングを開始する。
【0074】
一方、トリガ制御回路27は、フラッシュランプトリガ信号の出力後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していないと判断しているときは、Qスイッチトリガ信号を出力しない。この場合、レーザロッド51に対する励起は行われるものの、Qスイッチがオンしないため、パルスレーザ光は出射しない。なお、フラッシュランプトリガ信号及びQスイッチトリガ信号は、第1実施形態におけるレーザ発振トリガ信号に相当する。
【0075】
本実施形態では、レーザユニット13が光共振器内にQスイッチ55を有している。レーザをQスイッチ動作とすることで、レーザユニット13が出射するレーザ光を短パルス化することができる。また、本実施形態では、トリガ制御回路27は、プローブ11が被検体に接触していても、接触していなくても、フラッシュランプトリガ信号を出力し、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断すれば、Qスイッチトリガ信号を出力する。プローブ11が被検体に接触していないときは、フラッシュランプトリガ信号に応答してフラッシュランプ52がレーザロッド51に励起光を照射するももの、Qスイッチトリガ信号が出力されないために、レーザ光は出力されない。動作モードが光音響信号の生成を含み、かつ、プローブ11が被検体に接触しているときは、トリガ制御回路27がQスイッチトリガ信号を出力することで、レーザユニット13からレーザ光が出力される。
【0076】
ここで、フラッシュランプ52がオンになった直後はレーザの出力が安定しないことがある。このため、フラッシュランプ52は、定期的に発光し続けた方がよいと考えられる。本実施形態では、レーザ光の出力の制御はQスイッチ55で行っており、Qスイッチ55をオンにしなければレーザ光が出力されないため、レーザロッド51の励起は行いながらも、レーザ光出射を抑制できる。このため、レーザ光出射の有無とは無関係に、フラッシュランプ52を一定間隔で発光させることができる。Qスイッチ55を用いることで短パルス化が可能なことと併せて、レーザ出力を安定化させる効果があり、メリットが大きい。更には、フラッシュランプ52を例えば一定間隔で発光させ続けた場合、光共振器内の温度をほぼ一定に保つことができる効果も期待でき、熱レンズ効果に起因する光共振器条件の変動を避けることができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0077】
次いで、本発明の第4実施形態を説明する。図12は、本発明の第4実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像診断装置10bは、図10に示す第3実施形態の光音響画像診断装置10aとは、超音波ユニット12b内の画像生成手段23bが、2波長データ複素数化手段244、強度情報抽出手段245、及び2波長データ演算手段246を更に有する点で相違する。本実施形態では、レーザユニット13bから、相互に異なる複数の波長のレーザ光を被検体に照射する。画像生成手段23bは、被検体内の光吸収体における光吸収特性の波長依存性を利用して、例えば動脈と静脈とが判別可能な光音響画像を生成する。
【0078】
本実施形態におけるレーザユニット13bは、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を切り替えて出射する。レーザユニット13bから出射したパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。以下の説明においては、主に、レーザユニット13bが、第1の波長のパルスレーザ光と第2の波長のパルスレーザ光とを順次に出射するものとして説明する。
【0079】
例えば、第1の波長(中心波長)として約750nmを考え、第2の波長として約800nmを考える。ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも高い。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも低い。この性質を利用し、波長800nmで得られた光音響信号に対して、波長750nmで得られた光音響信号が相対的に大きいのか小さいのかを調べることで、動脈からの光音響信号と静脈からの光音響信号とを判別することができる。
【0080】
プローブ11は、被検体内からの超音波信号(光音響信号又は反射音響信号)を検出する。受信回路21は、プローブ11が検出した超音波信号を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号をサンプリングする。AD変換手段22は、例えばADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で超音波信号のサンプリングを行う。AD変換手段22は、反射音響信号をサンプリングした反射超音波データと、光音響信号をサンプリングした光音響データとを、受信メモリ235に格納する。
【0081】
AD変換手段22は、光音響信号については、レーザユニット13bから出射されるパルスレーザ光の各波長に対応した光音響信号のサンプリングデータを受信メモリ235に格納する。つまり、AD変換手段22は、被検体に第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第2の光音響データとを、受信メモリ235に格納する。
【0082】
データ分離手段236は、受信メモリ235に格納された超音波データと、第1及び第2の光音響データとを分離する。データ分離手段236は、反射超音波データを、超音波画像再構成手段240に渡す。また、第1及び第2の光音響データを、2波長データ複素数化手段244に渡す。反射超音波データがデータ分離手段236から超音波画像再構成手段240に送られて超音波画像が生成される点、及び、接触状態判断手段26が、生成された超音波画像に基づいてプローブ11の接触状態を判断する点は、第3実施形態と同様である。
【0083】
2波長データ複素数化手段244は、第1の光音響データと第2の光音響データのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する。以下では、2波長データ複素数化手段244が、第1の光音響データを実部とし、第2の光音響データを虚部とした複素数データを生成するものとして説明する。
【0084】
光音響画像再構成手段237は、2波長データ複素数化手段244から光音響データである複素数データを入力し、光音響データの再構成を行う。光音響画像再構成手段237は、入力された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う。フーリエ変換法による画像再構成には、例えば文献”Photoacoustic Image Reconstruction-A Quantitative Analysis”Jonathan I.Sperl et al. SPIE-OSA Vol.6631 663103 等に記載されている従来公知の方法を適用することができる。光音響画像再構成手段237は、再構成画像を示すフーリエ変換のデータを強度情報抽出手段245と2波長データ演算手段246とに入力する。
【0085】
2波長データ演算手段246は、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する。本実施形態では、2波長データ演算手段246は、光音響画像再構成手段237で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、実部と虚部とを比較したときに、相対的に、どちらがどれくらい大きいかを示す位相情報を抽出する。2波長データ演算手段246は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として生成する。なお、X=0の場合はθ=90°とする。実部を構成する第1の光音響データ(X)と虚部を構成する第2の光音響データ(Y)とが等しいとき、位相情報はθ=45°となる。位相情報は、相対的に第1の光音響データが大きいほどθ=0°に近づいていき、第2の光音響データが大きいほどθ=90°に近づいていく。
【0086】
強度情報抽出手段245は、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する。本実施形態では、強度情報抽出手段245は、光音響画像再構成手段237で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、強度情報を生成する。強度情報抽出手段245は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を、強度情報として抽出する。検波・対数変換手段238は、強度情報抽出手段245で抽出された強度情報を示すデータの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。
【0087】
光音響画像構築手段239は、2波長データ演算手段246から位相情報を入力し、検波・対数変換手段238から検波・対数変換処理後の強度情報を入力する。光音響画像構築手段239は、入力された位相情報と強度情報とに基づいて、光吸収体の分布画像である光音響画像を生成する。光音響画像構築手段239は、例えば入力された強度情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定する。また、光音響画像構築手段239は、例えば位相情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の色(表示色)を決定する。光音響画像構築手段239は、例えば例えば位相0°から90°の範囲を所定の色に対応させたカラーマップに用いて、入力された位相情報に基づいて各画素の色を決定する。
【0088】
ここで、位相0°から45°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも大きい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が大きい酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている動脈であると考えられる。一方、位相45°から90°の範囲は、第2の光音響データが第1の光音響データよりも小さい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が小さい脱酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている静脈であると考えられる。
【0089】
そこで、カラーマップとして、例えば位相が0°が赤色で、位相が45°に近づくに連れて無色(白色)になるように色が徐々に変化すると共に、位相90°が青色で、位相が45°に近づくに連れて白色になるように色が徐々に変化するようなカラーマップを用いる。この場合、光音響画像上で、動脈に対応した部分を赤色で表わし、静脈に対応した部分を青色で表わすことができる。強度情報を用いずに、階調値は一定として、位相情報に従って動脈に対応した部分と静脈に対応した部分との色分けを行うだけでもよい。
【0090】
画像合成手段243は、光音響画像構築手段239で生成された光音響画像と、超音波画像構築手段242で生成された超音波画像とを合成する。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0091】
続いて、レーザユニット13bの構成を詳細に説明する。図13は、レーザユニット13bの構成を示す。レーザユニット13bは、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、駆動手段57、駆動状態検出手段58、BPF制御回路59、及び波長選択素子60を有する。レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、及びQスイッチ55は、図11に示した、第3実施形態におけるレーザユニット13におけるそれらと同じでよい。
【0092】
波長選択素子60は、透過波長が相互に異なる複数のバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を含む。波長選択素子60は、複数のバンドパスフィルタを光共振器の光路上に選択的に挿入する。波長選択素子60は、例えば波長750nm(中心波長)の光を透過させる第1のバンドパスフィルタと、波長800nm(中心波長)の光を透過させる第2のバンドパスフィルタとを含む。光共振器の光路上に第1のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を750nmとすることができ、光共振器の光路上に第2のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を800nmとすることができる。
【0093】
駆動手段57は、光共振器の光路上に挿入されるバンドパスフィルタが所定の順序で順次に切り替わるように波長選択素子60を駆動する。駆動手段57には、例えばサーボモータを用いることができる。例えば波長選択素子60が、回転変位に伴って光共振器の光路上に選択的に挿入するバンドパスフィルタを切り替えるフィルタ回転体で構成されているとき、駆動手段57は、モータ出力軸の回転によりフィルタ回転体を回転駆動する。例えば、フィルタ回転体の半分(例えば回転変位位置0°から180°)を波長750nmの光を透過させる第1のバンドパスフィルタとし、残りの半分(例えば回転変位位置180°から360°)を波長800nmの光を透過させる第2のバンドパスフィルタとする。このようなフィルタ回転体を回転させることで、光共振器の光路上に、第1のバンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタとを、フィルタ回転体の回転速度に応じた切り替え速度で交互に挿入することができる。
【0094】
駆動状態検出手段58は、波長選択素子60の駆動状態を検出する。駆動状態検出手段58は、例えばフィルタ回転体である波長選択素子60の回転変位を検出する。駆動状態検出手段58は、例えばロータリーエンコーダーを含む。ロータリーエンコーダーは、サーボモータの出力軸に取り付けられたスリット入りの回転板と透過型フォトインタラプタとで、波長選択素子60であるフィルタ回転体の回転変位を検出し、BPF状態情報を生成する。駆動状態検出手段58は、フィルタ回転体の回転変位位置を示すBPF状態情報をBPF制御回路59に出力する。
【0095】
BPF制御回路59は、所定時間の間に駆動状態検出手段58が検出した回転変位の量が、フィルタ回転体の所定の回転速度に応じた量になるように駆動手段57に供給する電圧などを制御する。トリガ制御回路27は、BPF制御信号を通じて、BPF制御回路59に、フィルタ回転体の回転速度を指示する。BPF制御回路59は、例えばBPF状態情報をモニタし、所定時間の間にロータリーエンコーダーで検出されるサーボモータの回転軸の回転変位量が、指示された回転速度に対応した量に保たれるように、サーボモータに供給する電圧などを制御する。BPF制御回路59を用いるのに代えて、トリガ制御回路27がBPF状態情報をモニタし、波長選択素子60が所定の速度で駆動されるように、駆動手段57を制御するようにしてもよい。
【0096】
図12に戻り、制御手段28は、超音波ユニット12b内の各部の制御を行う。トリガ制御回路27は、レーザユニット13b内の波長選択素子60が光共振器の光路上に挿入するバンドパスフィルタが所定の切替え速度で切り替わるように、BPF制御回路59を制御する。トリガ制御回路27は、例えば、波長選択素子60を構成するフィルタ回転体を、所定の方向に所定の回転速度で連続的に回転させる旨のBPF制御信号を、BPF制御回路59に出力する。フィルタ回転体の回転速度は、例えばレーザユニット13bから出射すべきパルスレーザ光の波長の数(バンドパスフィルタの透過波長の数)と、単位時間当たりのパルスレーザの個数とに基づいて決定できる。
【0097】
トリガ制御回路27は、上記に加えて、モード切替スイッチ15の操作状態に応じた動作モードの切り替えや、レーザユニット13bに対するトリガ、送信制御回路25に対するトリガ、AD変換手段22に対するトリガなどを行う。動作モード切り換えの動作、送信制御回路25に対するトリガ、及びAD変換手段22に対するトリガについては、第3実施形態におけるトリガ制御回路27の動作と同じでよい。
【0098】
トリガ制御回路27は、動作モードが光音響画像の生成を含むモードであるとき、レーザユニット13bに、フラッシュランプ52(図13)からレーザロッド51へ励起光を照射させる旨のフラッシュランプトリガ信号(励起トリガ信号)を出力する。フラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答してレーザロッド51に励起光を照射する。トリガ制御回路27は、BPF状態信号に基づいて、フラッシュランプトリガ信号を出力する。例えばトリガ制御回路27は、BPF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応したバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入される波長選択素子60の駆動位置から、レーザロッド51の励起に要する時間の間に波長選択素子60が変位する量を差し引いた位置を示す情報になるとフラッシュランプトリガ信号を出力し、レーザロッド51に対して励起光を照射させる。トリガ制御回路27は、例えば所定の時間間隔で周期的にフラッシュランプトリガ信号を出力する。
【0099】
トリガ制御回路2は、フラッシュランプトリガ信号の出力後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断していれば、レーザユニット13bのQスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力する。トリガ制御回路27は、波長選択素子60が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した透過波長のバンドパスフィルタを光共振器の光路上に挿入しているタイミングでQスイッチトリガ信号を出力する。例えば波長選択素子60がフィルタ回転体で構成されるとき、トリガ制御回路27は、BPF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応したバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入されていることを示す位置となっているときに、Qスイッチトリガ信号を出力する。Qスイッチ55が、Qスイッチトリガ信号に応答して光共振器内の挿入損失を損失大から損失小に急激に変化させることで、出力側のミラー54からパルスレーザ光が出射する。トリガ制御回路27は、Qスイッチトリガ信号と同期してAD変換手段22にADトリガ信号を送る。AD変換手段22は、ADトリガ信号を受けると、光音響信号のサンプリングを開始する。
【0100】
一方、トリガ制御回路27は、フラッシュランプトリガ信号の出力後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していないと判断しているときは、Qスイッチトリガ信号を出力しない。この場合、レーザロッド51に対する励起は行われるものの、Qスイッチがオンしないため、パルスレーザ光は出射しない。
【0101】
本実施形態では、レーザユニット13bが波長選択素子60を含んでおり、レーザユニット13bから、相互に異なる複数の波長のレーザ光を被検体に照射することができる。例えば、透過波長が異なる2つのバンドパスフィルタを含む波長選択素子60を連続的に駆動することで、2つのバンドパスフィルタを連続的、かつ選択的に光共振器の光路上に挿入することができ、レーザユニット13bから複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射することができる。複数の波長のパルスレーザ光を照射したときの光音響信号(光音響データ)を用いることで、各光吸収体の光吸収特性が波長に応じて異なることを利用した機能イメージングを行うことができる。
【0102】
本実施形態では、2つの波長で得られた第1の光音響データと、第2の光音響データとの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成し、その複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成している。このようにする場合、再構成は一度で済むため、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成する場合に比して、再構成を効率的に行うことができる。
【0103】
本実施形態においても、第3実施形態と同様に、トリガ制御回路27は、プローブ11が被検体に接触していても、接触していなくても、フラッシュランプトリガ信号を出力し、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断すれば、Qスイッチトリガ信号を出力する。このようにすることで、第3実施形態において説明したものと同様な効果が得られる。ここで、プローブ11が被検体に接触していないときはレーザ光が出射しないため、本実施形態において、プローブ11が被検体に接触していないときはフラッシュランプトリガ信号を出力しない構成とすることも可能である。しかしながら、フラッシュランプ52を定期的に発光し続けることは、レーザ出力の安定性などの面で有利であると考えられ、上記構成とすることが好ましいと考えられる。接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していないと判断しているときは、レーザ光は出力されないため、波長選択素子60の駆動を停止するようにしてもよい。この場合、波長選択素子60を駆動し続ける場合に比べて、消費電力を抑えることができる。
【0104】
なお、上記各実施形態では光音響画像と超音波画像とを重畳して表示する例について説明したが、光音響画像診断装置は、超音波画像のみを表示するモード、又は光音響画像のみを表示するモードで動作することも可能である。超音波画像のみを表示するモードでは、光音響画像の生成は行わずに、例えば図4のステップA1〜A4に相当するステップを実行して超音波画像を生成し、画像表示手段14に超音波画像を表示すればよい。光音響画像のみを生成するモードでは、例えば図4のステップA10において、ステップA4で生成した超音波画像を表示画面上に表示せずに、ステップA9で生成された光音響画像を表示画面上に表示すればよい。
【0105】
特に、表示画面上に超音波画像を表示しない場合、超音波画像は接触状態の判断に使用されるだけであるため、光音響画像の画像化範囲と同じ範囲で超音波画像の生成を行う必要はない。例えば第1実施形態において、図4のステップA2で、プローブ11の全ての超音波振動子から超音波の送信を行わずに、光音響画像で画像化する範囲のうちの一部に対応する超音波振動子から超音波の送信を行い、ステップA3で、その一部に対応する超音波振動子で反射音響信号を検出してもよい。その場合、接触状態判断手段26は、ステップA4において反射音響信号が得られた部分の超音波画像を生成し(超音波の部分画像の生成)、その部分画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。
【0106】
具体的に、超音波振動子が全部で192ch分あったとき、そのうちの中央の64chにおいて超音波の送受信を行って中央の部分について超音波画像を生成し、その中央の部分の超音波画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。第2実施形態においても同様に、図9のステップB3でプローブ11の全ての超音波振動子から超音波の送信を行わずに、光音響画像で画像化する範囲のうちの一部に対応する超音波振動子から超音波の送信を行ってもよい。その場合、ステップB4では、超音波の送受信を行った範囲のうちの少なくとも1ch分の超音波信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断すればよい。
【0107】
また、光音響画像を画像化する範囲を複数のブロックに分けたとき、接触状態判断手段26が、複数のブロックのそれぞれについて、各ブロック内の少なくとも一部に対応する超音波振動子で検出された反射音響信号に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することも可能である。例えば、192ch分の超音波振動子の範囲が光音響画像を生成する範囲に相当するとき、その192ch分の超音波振動子を64ch分ずつ、左側、中央、及び右側の3つのブロックに分割する。例えば画像生成手段23にて、左側のブロックに対応する64ch分の超音波振動子で検出された反射音響信号に基づいて左側ブロックの超音波画像(部分画像)を生成し、その部分画像に基づいて左側ブロックが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。中央のブロックと右側のブロックも同様に、各ブロックに対応した超音波の部分画像を生成し、各ブロックにおいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。超音波画像に代えて反射音響信号の信号波形に基づいて接触状態を判断する場合も、同様に、ブロックごとにプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することができる。
【0108】
例えばプローブ11がレーザ光を照射する範囲がブロック単位で切替え可能である場合には、少なくともレーザ光を照射しようとしているブロックにおいて超音波の送受信を行い、接触状態判断手段26が、そのブロックにおいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。その場合、制御手段24は、接触状態判断手段26にて、プローブ11からレーザ光を照射すべきブロックにおいてプローブ11が被検体に接触していると判断されたときに、プローブ11からそのブロックに対してレーザ光を照射させればよい。
【0109】
具体的に、プローブ11が左側、中央、及び右側の3つのブロックに対してレーザ光を切り替えて照射可能であるとする。プローブ11から、中央のブロックに対してレーザ光を照射しようとしているときは、少なくとも中央のブロックにおいて超音波の送受信を行い、接触状態判断手段26が、中央のブロックにおいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断すればよい。制御手段24は、中央のブロックにおいてプローブ11が被検体に接触していると判断されたときは、レーザ発振トリガ信号を出力し、プローブ11から中央のブロックに対してレーザ光を照射させればよい。
【0110】
上記各実施形態では、プローブ11が被検体に接触している否かを判断するために超音波の送受信を行い、その送受信で得られた反射音響画像に基づく超音波画像を表示画面上に表示しているが、これには限定されない。プローブ11が被検体に接触している否かを判断するための超音波の送受信とは別に超音波の送受信を行い、別の超音波の送受信で得られた反射音響信号に基づいて別途超音波画像を生成してもよい。例えば図4のステップA9で光音響画像を生成した後にプローブ11から超音波の送信を行い、プローブ11で反射音響信号を検出し、画像生成手段23で反射音響信号に基づいて超音波画像を別途生成してもよい。その場合、ステップA10では、ステップA4で生成した超音波画像に代えて、光音響画像の生成の後に別途生成された超音波画像を表示すればよい。
【0111】
接触状態判断手段26は、被検体の深さ方向の所定の範囲における反射音響信号に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。例えば第1実施形態では、画像生成手段23が被検体の表面から5mm〜10mmまでの範囲で超音波画像を生成し、接触状態判断手段26が、その範囲の超音波画像に基づいてプローブ11の接触状態を判断してもよい。また、第2実施形態では、AD変換手段22において、表面から5mm〜10mmの深さまでに対応する時間領域について反射音響信号のサンプリングを行い、接触状態判断手段26がサンプリングされた反射音響信号の信号波形に基づいてプローブ11の接触状態を判断してもよい。
【0112】
第4実施形態では、第1の光音響データと第2の光音響データとを複素数化する例について説明したが、複素数化せずに、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成してもよい。また、再構成の手法は、フーリエ変換法には限定されない。さらに、第4実施形態においては、複素数化して位相情報を用いて第1の光音響データと第2の光音響データの比を計算しているが、両者の強度情報から比を計算しても同様の効果が得られる。また、強度情報は、第1の再構成画像における信号強度と、第2の再構成画像における信号強度とに基づいて生成できる。
【0113】
光音響画像の生成に際して、被検体に照射されるパルスレーザ光の波長の数は2つには限られず、3以上のパルスレーザ光を被検体に照射し、各波長に対応する光音響データに基づいて光音響画像を生成してもよい。その場合、例えば2波長データ演算手段246は、各波長に対応する光音響データ間での相対的な信号強度の大小関係を位相情報として生成すればよい。また、強度情報抽出手段245は、例えば各波長に対応する光音響データにおける信号強度を1つにまとめたものを強度情報として生成すればよい。
【0114】
第4実施形態では、主に、波長選択素子60が、2つのバンドパスフィルタ領域を含むフィルタ回転体で構成される例を説明したが、波長選択素子60は、光共振器内で発振する光の波長を変化させるものであればよく、フィルタ回転体の構成には限定されない。例えば、波長選択素子60を、複数のバンドパスフィルタを円周状に配置した回転体で構成してもよい。波長選択素子60は回転体である必要はなく、例えば、複数のバンドパスフィルタを一列に並べたものでもよい。その場合、複数のバンドパスフィルタが循環的に光共振器の光路上に挿入されるよう波長選択素子60を駆動してもよいし、一列に並べられた複数のバンドパスフィルタが光共振器の光路上を横切るように波長選択素子60を往復駆動させてもよい。バンドパスフィルタに代えて、複屈折フィルタなどの波長選択素子を用いることも可能である。
【0115】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の光音響画像生成装置及び方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10:光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザユニット
14:画像表示手段
15:モード切替スイッチ
21:受信回路
22:AD変換手段
23:画像生成手段
24:制御手段
25:送信制御回路
26:接触状態判断手段
27:トリガ制御回路
28:制御手段
51:レーザロッド
52:フラッシュランプ
53、54:ミラー
55:Qスイッチ
56:バンドパスフィルタ
57:駆動手段
58:駆動状態検出手段
59:BPF制御回路
60:波長選択素子
231:画像再構成手段
232:検波手段
233:対数変換手段
234:画像構築手段
235:受信メモリ
236:データ分離手段
237:光音響画像再構成手段
238:検波・対数変換手段
239:光音響画像構築手段
240:超音波画像再構成手段
241:検波・対数変換手段
242:超音波画像構築手段
243:画像合成手段
244:2波長データ複素数化手段
245:強度情報抽出手段
246:2波長データ演算手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像生成装置及び方法に関し、更に詳しくは、被検体に光を照射し、光照射により被検体内で生じた超音波を検出して光音響画像を生成する光音響画像生成装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、パルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
ここで、光音響イメージングでは、比較的出力の高いレーザ光を生体内に照射する必要がある。安全性の観点からは、プローブが生体に接触していないときはパルスレーザ光の出射を抑止することが好ましい。これに関して、特許文献1には、光路上に配置された被測定物を検出する被測定物検出手段を設け、被測定物検出手段が被測定物を検出しているときに光照射を行うことが記載されている。被測定物の検出には、被測定物の特定を利用できる。具体的には、被測定物の遮光性、反射性、固有の温度、重さ、静電容量を利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、投光器と受光器との組や温度センサなど、被測定物の検出を行うためにプローブに追加の物理的手段が必要である。このような追加の物理的手段は、コストの上昇を招く。また、そのような追加の物理的手段を持たないプローブを用いたときには、被測定物の検出を行うことができない。
【0007】
本発明は、上記に鑑み、追加の物理的手段を設けることなく人体の目に対する安全性を向上できる光音響画像生成装置、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、光源と、前記光源から導光された光の被検体に対する照射、及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブと、少なくとも、前記プローブから被検体に対して照射された光に対して前記プローブで受信された超音波である光音響信号に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段と、前記光音響画像の生成に先立って、前記プローブから送信された超音波に対して前記プローブで受信された超音波である反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する接触状態判断手段と、前記接触状態判断手段で接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光を照射させる制御手段とを備える光音響画像生成装置を提供する。
【0009】
本発明の光音響画像生成装置では、前記プローブが超音波の送受信を行う複数の超音波振動子を含んでおり、前記接触状態判断手段が、前記光音響画像で画像化する範囲のうちの少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する構成を採用することができる。
【0010】
前記光音響画像を画像化する範囲が複数のブロックに分けられており、前記接触状態判断手段が、複数のブロックのそれぞれについて、各ブロック内の少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断することとすることもできる。
【0011】
上記の場合、前記プローブが前記光を照射する範囲がブロック単位で切り替え可能であり、前記制御手段が、前記接触状態判断手段にて、前記プローブから光を照射すべきブロックについて前記プローブが被検体に接触していると判断されたとき、前記プローブから当該ブロックに光を照射させる構成とすることもできる。
【0012】
前記接触状態判断手段が、被検体の深さ方向所定の範囲における前記反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。
【0013】
前記画像生成手段が、前記反射音響信号に基づいて超音波画像を更に生成するものであり、前記接触状態判断手段が、前記生成された超音波画像を用いて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する構成を採用することができる。この場合、前記接触状態判断手段が、前記プローブが被検体に接触しない状態で生成された超音波画像の典型的な画像を参照画像として記憶しており、前記生成された超音波画像と前記参照画像との類似度に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。あるいは、これに代えて、前記接触状態判断手段が、前記生成された超音波画像の特徴解析を行い、その解析結果に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断することとしてもよい。
【0014】
超音波画像を用いるのに代えて、前記接触状態判断手段が、前記受信された反射音響信号の信号波形に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。この場合、前記接触状態判断手段が、前記反射音響信号の信号波形の特徴解析を行い、該特徴解析の結果に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。あるいは、これに代えて、前記接触状態判断手段が、前記プローブが被検体に接触しない状態で受信された反射音響信号の典型的な信号波形を参照信号波形として記憶しており、前記受信された反射音響信号の信号波形と前記参照信号波形との類似度に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。
【0015】
本発明では、前記光源が、レーザ媒質と、該レーザ媒質に励起光を照射する励起光源と、前記レーザ媒質を挟み込むように対向して配置され、光共振器を構成する一対のミラーと、前記光共振器内に配置されたQスイッチとを含む構成を採用できる。
【0016】
前記制御手段は、光音響画像の生成に際して、前記光源に、前記レーザ媒質に対して励起光を照射させる旨の励起トリガ信号を送信し、該励起トリガ信号の送信後で、かつ、前記接触状態判断手段が前記プローブが被検体に接触していると判断しているときに、前記光源に、前記Qスイッチをオンにする旨のQスイッチトリガ信号を送るものとすることができる。
【0017】
前記光源が、前記光共振器内に配置された波長選択素子を更に含み、相互に異なる複数の波長のレーザ光を出射する構成を採用することができる。
【0018】
前記波長選択素子が、透過波長が相互に異なる複数のバンドパスフィルタを含み、前記光源が、前記光共振器の光路上に挿入されるバンドパスフィルタが所定の順序で順次に切り替わるように前記波長選択手段を駆動する駆動手段を更に有する構成を採用できる。
【0019】
前記波長選択素子が、回転変位に伴って前記光共振器の光路上に選択的に挿入するバンドパスフィルタを切り替えるフィルタ回転体で構成され、前記駆動手段が前記フィルタ回転体を回転駆動することとしてもよい。
【0020】
前記画像生成手段が、被検体に照射された複数の波長のレーザ光に対して前記プローブで受信された、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する2波長データ演算手段を含み、該2波長データ演算手段で抽出された相対的な信号強度の大小関係に基づいて光音響画像を生成する構成を採用できる。
【0021】
前記画像生成手段が、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号に基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に含み、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記相対的な信号強度の大小関係に基づいて決定してもよい。
【0022】
前記光源が出射すべきパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、前記画像生成手段が、前記第1の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第1の光音響信号と、前記第2の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第2の光音響信号とのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する再構成手段とを更に含み、前記強度比抽出手段が、前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が、前記再構成画像から前記強度情報を抽出するようにしてもよい。
【0023】
本発明は、また、被検体に対する光照射及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブから、被検体に対して超音波の送信を行うステップと、前記プローブにより、前記送信された超音波に対する反射超音波を受信するステップと、前記受信された反射音波に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するステップと、前記プローブが被検体に接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光照射を行うステップと、前記プローブにより、前記光照射により被検体内で生じた超音波を受信するステップと、前記受信された、光照射により生じた超音波に基づいて光音響画像を生成するステップとを有することを特徴とする光音響画像生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光音響画像生成装置及び方法は、光音響画像の生成に先立って超音波の送受信を行い、超音波の検出結果に基づいてプローブが被検体に接触しているか否かを判断する。プローブが被検体に接触しているときに光照射を行うようにすることで、光が空間に放出されることを防ぐことができ、人体の目に対する安全性を向上できる。本発明では、超音波に基づいて接触を判断しているため、そのためだけの追加の物理的手段は必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図2】プローブが被検体に接触していない状態で生成された超音波画像を例示する図。
【図3】プローブが被検体に接触した状態で生成された超音波画像を例示する図。
【図4】光音響画像生成時の動作手順を示すフローチャート。
【図5】光音響画像と超音波画像とを重畳した画像を例示する図。
【図6】本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図7】プローブが被検体に接触していない状態における反射音響信号の信号波形を例示する信号波形図。
【図8】プローブが被検体に接触した状態における反射音響信号の信号波形を例示する信号波形図。
【図9】第2実施形態における光音響画像生成時の動作手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の第3実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図11】レーザ光源ユニットを示すブロック図。
【図12】本発明の第4実施形態の光音響画像生成装置を示すブロック図。
【図13】レーザ光源ユニットを示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)10は、超音波探触子(プローブ)11、超音波ユニット12、及び光源(レーザユニット)13を備える。光音響画像診断装置10は、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能である。レーザユニット13は、光音響画像生成の際に、被検体に照射する光(レーザ光)を生成する。レーザ光の波長は、観察対象物に応じて適宜設定すればよい。レーザユニット13が出射するレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光される。
【0027】
プローブ11は、光照射部を含み、レーザユニット13から導光されたレーザ光を被検体に向けて照射する。また、プローブ11は、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び被検体からの超音波の検出(受信)を行う。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有する。プローブ11は、例えば超音波画像の生成時は複数の超音波振動子から超音波を出力し、出力された超音波に対する反射超音波(以下、反射音響信号とも呼ぶ)を検出する。プローブ11は、光音響画像生成時は、被検体内の測定対象物がレーザユニット13からのレーザ光を吸収することで生じた超音波(以下、光音響信号とも呼ぶ)を検出する。
【0028】
超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、画像生成手段23、制御手段24、送信制御回路25、及び接触状態判断手段26を有する。受信回路21は、プローブ11が有する複数の超音波振動子が検出した超音波(光音響信号又は反射音響信号)を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば所定のサンプリング周期で超音波信号をサンプリングする。
【0029】
画像生成手段23は、AD変換手段22でサンプリングされた超音波に基づいて断層画像を生成する。画像生成手段23は、プローブ11で検出された光音響信号に基づいて光音響画像を生成すると共に、プローブ11で検出された反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する。画像生成手段23は、画像再構成手段231、検波手段232、対数変換手段233、及び画像構築手段234を含む。画像生成手段23内の各部の機能は、コンピュータが所定のプログラムに従って処理を動作することで実現できる。
【0030】
画像再構成手段231は、プローブ11の複数の超音波振動子で検出された超音波信号に基づいて、断層画像の各ラインのデータを生成する。画像再構成手段231は、例えばプローブ11の64個の超音波振動子からのデータを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。画像再構成手段231は、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行ってもよい。あるいは画像再構成手段231は、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行ってもよい。
【0031】
検波手段232は、画像再構成手段231が出力する各ラインのデータの包絡線を出力する。対数変換手段233は、検波手段232が出力する包絡線を対数変換し、ダイナミックレンジを広げる。画像構築手段234は、対数変換が施された各ラインのデータに基づいて、断層画像を生成する。画像構築手段234は、例えば超音波信号(ピーク部分)の時間軸方向の位置を、断層画像における深さ方向の位置に変換して断層画像を生成する。画像表示手段14は、画像構築手段234が生成した断層画像を、表示モニタなどに表示する。
【0032】
制御手段24は、超音波ユニット12内の各部を制御する。制御手段24は、画像生成手段23で超音波画像を生成する場合は、送信制御回路25に超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路25は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。制御手段24は、超音波送信トリガ信号と同期して、AD変換手段22における反射音響信号のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0033】
一方、制御手段24は、画像生成手段23で光音響画像を生成する場合は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を送る。レーザユニット13は、トリガ信号を受けてレーザ発振を行い、レーザ光を出射する。制御手段24は、レーザ発振トリガ信号と同期して、AD変換手段22における光音響信号のサンプリング開始タイミングを制御する。
【0034】
制御手段24は、光音響画像の生成では、レーザユニット13へのレーザ発振トリガ信号の出力に先立って、プローブ11から超音波を送信させる。プローブ11は、その超音波に対する反射音響信号を検出する。接触状態判断手段26は、プローブ11で検出された反射音響信号に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。より詳細には、接触状態判断手段26は、画像生成手段23が生成した、反射音響信号に基づく超音波画像を用いて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。
【0035】
接触状態判断手段26は、例えばプローブ11が被検体に接触していない状態で生成された超音波画像の典型的な画像を参照画像として記憶している。接触状態判断手段26は、画像生成手段23が生成した超音波画像と、記憶している参照画像とを比較し、その比較結果に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。接触状態判断手段26は、例えば画像生成手段23が生成した緒音波画像と参照画像との類似度を計算する。接触状態判断手段26は、2つの超音波画像の類似度が所定のしきい値以上のときは、プローブ11が被検体に接触していないと判断する。接触状態判断手段26は、類似度がしきい値よりも低ければ、プローブ11が被検体に接触していると判断する。
【0036】
制御手段24は、接触状態判断手段26にてプローブ11が被検体に接触していると判断された場合は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力し、被検体にレーザ光を照射させる。一方、接触状態判断手段26にてプローブ11が被検体に接触していないと判断されたときは、レーザユニット13に対するレーザ発振トリガ信号を抑止し、プローブ11からレーザ光を照射させない。
【0037】
図2は、プローブ11が被検体に接触していない状態で生成された超音波画像を例示する。同図において、紙面横方向は、プローブ11において超音波振動子が一次元的に配列された方向に対応し、縦方向は深さ方向に対応している。プローブ11が空気中にあるときに、つまりプローブ11を被検体に接触させずに超音波の送受信を行い、受信した超音波に基づいて超音波画像を生成すると、生成された超音波画像には、図2に示すように、プローブ11と空気との界面の高輝度エコーと、その多重エコーとが含まれる。
【0038】
図3は、プローブ11が被検体に接触した状態で生成された超音波画像を例示する。プローブ11が被検体に接触した状態で超音波の送信が行われた場合、プローブ11から送信された超音波は被検体の内部を進行し、組織界面で反射波が生じる。従って、受信超音波に基づいて超音波画像を生成すると、生成された超音波画像には、図3に示すように、組織の輪郭などが現れる。図2に示す超音波画像と図3に示す超音波画像とを比較すると、プローブ11が被検体に接触しているときと接触していないときとで、生成される超音波画像が大きく異なることがわかる。
【0039】
接触状態判断手段26は、例えば、図2に示すような、プローブ11が被検体に接触していないときの典型的な超音波画像を参照画像として記憶している。接触状態判断手段26は、例えば参照画像と画像生成手段23が生成した超音波画像との相関を求め、その相関に基づいて両者がどれだけ類似しているかを判断する。接触状態判断手段26は、両者の類似度をしきい値処理し、類似度が高ければ生成された超音波画像はプローブ11が被検体に接触していない状態で生成された超音波画像であると判断する。つまり、生成された超音波画像が図2に示すような画像であれば、接触状態判断手段26は、超音波画像の生成時にプローブ11が被検体に接触していなかったと判断する。一方、生成された超音波画像が図3に示すような画像である場合、参照画像との類似度は低くなる。この場合、接触状態判断手段26は、超音波画像の生成時にプローブ11が被検体に接触していたと判断する。
【0040】
上記では、接触状態判断手段26が参照画像を記憶しておき、参照画像と類似度に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することとしたが、超音波画像に基づく接触状態の判断は上記したものに限定されない。例えば、接触状態判断手段26が、画像生成手段23で生成された超音波画像の特徴解析を行い、その解析結果に基づいて接触しているか否かを判断してもよい。図2に示したように、プローブ11が被検体に接触しない状態で生成された超音波画像では、飽和した高輝度の線が超音波振動子と平行に等間隔で並ぶ。接触状態判断手段26は、例えば生成された超音波画像において、飽和した高輝度の線が超音波振動子と平行に等間隔で並んでいるときに、プローブ11が被検体に接触していない状態で超音波画像が生成されたと判断してもよい。
【0041】
図4は、光音響画像生成時の動作手順を示す。制御手段24は、被検体への光照射に先立って、超音波送信トリガ信号を送信制御回路25に出力する(ステップA1)。プローブ11は、被検体内へ超音波を送信する(ステップA2)。プローブ11は、被検体内で反射した反射音響信号を受信する(ステップA3)。超音波ユニット12内の画像生成手段23は、反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する(ステップA4)。
【0042】
接触状態判断手段26は、ステップA4で生成された超音波画像に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する(ステップA5)。プローブ11が被検体に接触していないと判断されたときはステップA1に戻り、プローブ11が被検体に接触していると判断されるまで、ステップA1〜A5を繰り返し実行する。
【0043】
ステップA5でプローブ11が被検体に接触していると判断されると、制御手段24は、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力する(ステップA6)。レーザユニット13は、レーザ発振トリガ信号を受けた後にパルスレーザ光を出射する。レーザユニット13から出射したパルスレーザ光は、プローブ11から被検体に照射される(ステップA7)。
【0044】
プローブ11は、レーザ光の照射後、レーザ光の照射により生体内で発生した光音響信号を受信する(ステップA8)。超音波ユニット12内の画像生成手段は、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する(ステップA9)。画像表示手段14は、ステップA4で生成された超音波画像と、ステップA8で生成された光音響画像とを表示画面上に表示する(ステップA10)。画像表示手段14は、ステップB10では、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳表示する。
【0045】
図5は、光音響画像と超音波画像とを重畳した画像を例示する。同図において、横方向は超音波振動子が配列された方向に対応し、縦方向は深さ方向に対応している。画像表示手段14は、図5に示すように、例えば組織の輪郭が画像化される超音波画像(図3)に対し、例えば血管部分が画像化される光音響画像を重ねて表示する。
【0046】
本実施形態では、超音波画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断し、プローブ11が被検体に接触しているときにレーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力するようにしている。このようにすることで、空間中にレーザ光が出射する事態を避けることができ、人体の目に対する安全性を向上できる。また、本実施形態では超音波画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断しているため、接触状態の判断のために、それ専用の特別のセンサなどの追加の物理的手段が不要である。また、既存のプローブを用いたときでも、被検体への接触を判断可能である。
【0047】
続いて本発明の第2実施形態を説明する。図6は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)の構成は、図1に示す第1実施形態の光音響画像診断装置の構成と同様である。本実施形態では、接触状態判断手段26は、超音波画像に代えて、反射音響信号の信号波形に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判定する。その他の点は第1実施形態と同様である。
【0048】
図7は、プローブ11が被検体に接触していない状態で超音波の送信を行ったときに検出される反射音響信号の信号波形を例示する。同図において、紙面縦方向は、サンプリング開始からの時間(被検体の深さ方向の位置)に対応し、横方向は信号レベルに対応する。プローブ11が被検体に接触していないときは、図7に示すように、信号レベルが飽和した点が周期的に複数現れるような信号波形の反射音響信号が検出される。このような信号波形の反射音響信号に基づいて超音波画像を生成すると、図2に示すような超音波画像が得られる。
【0049】
図8は、プローブ11が被検体に接触した状態で超音波の送受信を行ったときに検出される反射音響信号の信号波形を例示する。プローブ11が被検体に接触した状態で超音波の送信が行われた場合、プローブ11から送信された超音波は被検体の内部を進行し組織界面で反射して、図8に示すような、飽和レベルよりも低い振幅の信号波形が観察される。このような信号波形の反射音響信号に基づいて超音波画像を生成すると、図3に示すような超音波画像が得られる。図7に示す反射音響信号の信号波形と図8に示す反射音響信号の信号波形とを比較すると、プローブ11が被検体に接触しているときと接触していないときとで、反射音響信号の信号波形が大きく異なることがわかる。
【0050】
本実施形態では、接触状態判断手段26は、AD変換手段22でサンプリングされた反射音響信号を入力する。接触状態判断手段26は、反射音響信号の信号波形の特徴解析を行い、AD変換手段22でサンプリングされた反射音響信号の信号波形に、プローブ11が被検体に接触していないときに観察される反射音響信号の信号波形の特徴が表れているか否かを判断する。例えば接触状態判断手段26は、反射音響信号において振幅が飽和レベルに対応する所定のレベル以上となっている箇所がいくつあるかを調べると共に、その飽和レベルとなっている箇所の間隔を調べる。接触状態判断手段26は、例えば反射音響信号において複数の飽和レベルとなる個所が等間隔に並んでいるときは、プローブ11が被検体に接触していないと判断する。接触状態判断手段26は、逆に、飽和レベルとなる個所が等間隔に並んでいないときは、プローブ11が被検体に接触していると判断する。
【0051】
上記では、接触状態判断手段26が反射音響信号の特徴解析を行ってプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することとしたが、反射音響信号の信号波形基づく接触状態の判断は上記したものに限定されない。例えば、接触状態判断手段26は、図7に示すような、プローブ11が被検体に接触していないときの典型的な反射音響信号の信号波形を参照信号波形として記憶しておき、AD変換手段22が出力する反射音響信号の信号波形と参照信号との相関を求め、その相関に基づいて両者がどれだけ類似しているかを判断してもよい。その場合、接触状態判断手段26は、両者の類似度をしきい値処理し、類似度が高ければプローブ11が被検体に接触していると判断し、類似度が低ければプローブ11が被検体に接触していると判断すればよい。
【0052】
なお、接触状態判断手段26は、AD変換手段22でサンプリングされた反射音響信号に代えて、画像再構成手段231、検波手段232、又は対数変換手段233の出力信号を入力してもよい。その場合でも、超音波画像生成前の反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かの判断が可能である。
【0053】
図9は、本実施形態における光音響画像生成時の動作手順を示す。制御手段24は、被検体への光照射に先立って、超音波送信トリガ信号を送信制御回路25に出力する(ステップB1)。プローブ11は、被検体内へ超音波を送信する(ステップB2)。プローブ11は、被検体内で反射した反射音響信号を受信する(ステップB3)。ここまでのステップは、図4におけるステップA1〜A3と同様でよい。
【0054】
接触状態判断手段26は、ステップB3で受信された反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する(ステップB4)。接触状態判断手段26は、プローブ11が有する複数の超音波振動子で検出された反射音響信号のうち、少なくとも超音波振動子1ch分の反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。ステップB4でプローブ11が被検体に接触していないと判断されたときはステップB1に戻り、プローブ11が被検体に接触していると判断されるまで、ステップB1〜B4を繰り返し実行する。ステップB4でプローブ11が被検体に接触していると判断されると、画像生成手段23は、反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する(ステップB5)。
【0055】
制御手段24は、ステップB4でプローブ11が被検体に接触していると判断された後に、レーザユニット13に対してレーザ発振トリガ信号を出力する(ステップB6)。レーザユニット13は、レーザ発振トリガ信号を受けた後にパルスレーザ光を出射する。レーザユニット13から出射したパルスレーザ光は、プローブ11から被検体に照射される(ステップB7)。プローブ11は、レーザ光の照射後、レーザ光の照射により生体内で発生した光音響信号を受信する(ステップB8)。
【0056】
超音波ユニット12内の画像生成手段は、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する(ステップB9)。画像表示手段14は、ステップB5で生成された超音波画像と、ステップB8で生成された光音響画像とを表示画面上に表示する(ステップB10)。画像表示手段14は、ステップB10では、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳表示する。ステップB6〜B10は、図4のステップA6〜A10と同様でよい。なお、超音波画像の生成は、特にステップB4でプローブ11が被検体に接触していると判断された直後に限定されるわけではなく、反射音響信号の受信後であれば任意のタイミングでよい。
【0057】
本実施形態では、検出された反射音響信号から生成された超音波画像に代えて、反射音響信号の信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断する。プローブ11が被検体に接触していないときには、そのときに特有の信号波形が観察されるため、画像生成前の反射音響信号の信号波形を用いたときでも、第1実施形態と同様に、追加の物理手段を必要とせずに、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断できる。本実施形態では、超音波画像を生成せずにプローブ11の接触状態を判断できるため、第1実施形態に比して、接触状態を判断するための処理を簡素化できる。
【0058】
引き続き、本発明の第3実施形態を説明する。図10は、本発明の第3実施形態の光音響画像生成装置を示す。光音響画像診断装置10aは、超音波探触子(プローブ)11、超音波ユニット12a、及び光源(レーザユニット)13を備える。超音波ユニット12aは、受信回路21、AD変換手段22、画像生成手段23a、送信制御回路25、接触状態判断手段26、トリガ制御回路27、及び制御手段28を有する。本実施形態の光音響画像診断装置10aも、図1に示す第1実施形態の非光音響画像診断装置10と同様に、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能である。
【0059】
プローブ11は、光照射部を含み、レーザユニット13から導光されたレーザ光を被検体に向けて照射する。また、プローブ11は、被検体に対する超音波の出力(送信)、及び被検体からの超音波の検出(受信)を行う。プローブ11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を有する。プローブ11には、モード切替スイッチ15が設けられている。プローブ11は、モード切替スイッチ15の有無を除けば、第1実施形態の光音響画像診断装置10で用いられるプローブ11と同じでよい。
【0060】
モード切替スイッチ15には、例えばオルタネート動作のプッシュスイッチを用いることができる。モード切替スイッチ15は、光音響画像の生成を含む動作モードと、光音響画像の生成を含まない動作モードとの間で動作モードを切り替えるために使用される。動作モードは、例えば超音波画像を生成するモード、光音響画像を生成するモード、及び超音波画像と光音響画像とを生成するモードを含む。医師などの操作者は、モード切替スイッチ15を押すことで、超音波画像、光音響画像、超音波画像及び光音響画像の双方を切り替えて表示させることができる。
【0061】
受信回路21は、プローブ11が有する複数の超音波振動子が検出した超音波(光音響信号又は反射音響信号)を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号、すなわち光音響信号及び反射音響信号をデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば所定のサンプリング周期で超音波信号をサンプリングする。画像生成手段23aは、AD変換手段22でサンプリングされた超音波信号に基づいて断層画像、すなわち光音響画像と超音波画像とを生成する。
【0062】
画像生成手段23aは、受信メモリ235、データ分離手段236、光音響画像再構成手段237、検波・対数変換手段238、光音響画像構築手段239、超音波画像再構成手段240、検波・対数変換手段241、超音波画像構築手段242、及び画像合成手段243を含む。光音響画像再構成手段237及び超音波画像再構成手段240は、図1における画像再構成手段231に対応する。検波・対数変換手段238及び検波・対数変換手段241は、図1における検波手段232と対数変換手段233とに対応する。光音響画像構築手段239及び超音波画像構築手段242は、図1における画像構築手段234に対応する。
【0063】
受信メモリ235には、AD変換手段22でサンプリングされた超音波信号のサンプリングデータが格納される。すなわち、光音響信号のサンプリングデータである光音響データと、反射音響信号のサンプリングデータである反射超音波データとが格納される。データ分離手段236は、受信メモリ235に格納された光音響データと反射超音波データとを分離する。データ分離手段236は、光音響データを光音響画像再構成手段237に渡し、反射超音波データを超音波画像再構成手段240に渡す。
【0064】
光音響画像再構成手段237は、光音響データの再構成を行う。超音波画像再構成手段240は、反射超音波データの再構成を行う。光音響画像再構成手段237及び超音波画像再構成手段240が行う再構成は、画像再構成手段231(図1)が行う再構成と同じでよい。検波・対数変換手段238は、光音響画像再構成手段237で再構成された光音響データに対して検波を行い、対数変換を行う。検波・対数変換手段241は、超音波画像再構成手段240で再構成された反射超音波データに対して検波を行い、対数変換を施す。
【0065】
光音響画像構築手段239は、検波・対数変換が行われた光音響データに基づいて、光音響画像を生成する。超音波画像構築手段242は、検波・対数変換が行われた超音波データに基づいて、超音波画像を生成する。光音響画像構築手段239及び超音波画像構築手段242における画像生成は、画像構築手段234(図1)が行う画像生成と同じでよい。超音波画像構築手段242が生成した超音波画像は、接触状態判断手段26に与えられる。接触状態判断手段26は、超音波画像構築手段242で生成された超音波画像に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かの判断を行う。
【0066】
画像合成手段243は、光音響画像構築手段239で生成された光音響画像と、超音波画像構築手段242で生成された超音波画像とを合成する。画像合成手段243は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳することで画像合成を行う。その際、画像合成手段243は、光音響画像と超音波画像とで、対応点が同一の位置となるように位置合わせをすることが好ましい。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0067】
次いで、レーザユニット13の構成を詳細に説明する。図11は、レーザユニット13の構成を示す。レーザユニット13は、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、バンドパスフィルタ56を有する。レーザロッド51は、レーザ媒質である。レーザロッド51には、例えばアレキサンドライト結晶やCr:LiSAF(Cr:LiSrAlF6),Cr:LiCAF(Cr:LiCaAlF6)結晶,Ti:Sapphire結晶を用いることができる。フラッシュランプ52は、励起光源であり、レーザロッド51に励起光を照射する。フラッシュランプ52以外の光源、例えば半導体レーザや固体レーザを、励起光源として用いてもよい。
【0068】
ミラー53、54は、レーザロッド51を挟んで対向しており、ミラー53、54により光共振器が構成される。ここでは、ミラー54が出力側のミラーであるとする。光共振器内には、Qスイッチ55が挿入される。Qスイッチ55により、光共振器内の挿入損失を損失大(低Q)から損失小(高Q)へと急速に変化させることで、パルスレーザ光を得ることができる。バンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)56は、レーザユニット13から出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した光を選択的に透過させる。バンドパスフィルタ56に代えて、所定の波長の光を透過するBRFなど、他の素子を用いてもよい。あるいは、バンドパスフィルタ56は省略してもよい。
【0069】
図10に戻り、トリガ制御回路27は、モード切替スイッチ15の操作状態に応じた動作モードの切り替えや、レーザユニット13に対するトリガ、送信制御回路25に対するトリガ、AD変換手段22に対するトリガなどを行う。制御手段28は、超音波ユニット12a内の各部に接続されており、各部の制御を行う。トリガ制御回路27及び制御手段28は、図1における制御手段24に対応する。
【0070】
トリガ制御回路27は、モード切替スイッチ15からの信号に基づいて、動作モードの切り替えを行う。トリガ制御回路27は、例えばモード切替スイッチ15が操作されるたびに動作モードを切り替える。トリガ制御回路27は、例えば、初期状態、つまりモード切替スイッチ15が一度も押されていない状態では、動作モードを光音響画像の生成を含まない動作モード、例えば超音波画像のみを生成する動作モードに設定する。トリガ制御回路27は、動作モードが超音波画像生成モードのときにモード切替スイッチ15が押されると、動作モードを光音響画像生成モードに切り替える。トリガ制御回路27は、更にモード切替スイッチ15が押されると、動作モードを光音響画像生成モードから超音波画像と光音響画像との双方を生成するモードに切り替える。双方の画像を生成するモードでモード切替スイッチ15が押されたときは、動作モードを、超音波画像を生成するモードに戻す。以降、トリガ制御回路27は、モード切替スイッチ15が押されるたびに、動作モードを、超音波画像、光音響画像、超音波画像と光音響画像の双方を生成するモードの順に切り替えていく。
【0071】
また、トリガ制御回路27は、被検体に対する超音波送信に際して、送信制御回路25に超音波送信トリガ信号を送る。送信制御回路25は、トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。トリガ制御回路27は、超音波送信トリガ信号と同期してAD変換手段22にADトリガ信号(サンプリングトリガ信号)を送る。AD変換手段22は、ADトリガ信号を受けると、反射音響信号のサンプリングを開始する。
【0072】
トリガ制御回路27は、動作モードが光音響画像の生成を含むモードであるとき、レーザユニット13に、フラッシュランプ52(図11)からレーザロッド51へ励起光を照射させる旨のフラッシュランプトリガ信号(励起トリガ信号)を出力する。トリガ制御回路27は、例えば所定の時間間隔でフラッシュランプトリガ信号を出力する。フラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答してレーザロッド51に励起光を照射する。
【0073】
トリガ制御回路27は、励起光の照射後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断していれば、レーザユニット13のQスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力する。Qスイッチ55が、Qスイッチトリガ信号に応答して光共振器内の挿入損失を損失大から損失小に急激に変化させることで、出力側のミラー54からパルスレーザ光が出射する。トリガ制御回路27は、Qスイッチトリガ信号と同期してAD変換手段22にADトリガ信号を送る。AD変換手段22は、ADトリガ信号を受けると、光音響信号のサンプリングを開始する。
【0074】
一方、トリガ制御回路27は、フラッシュランプトリガ信号の出力後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していないと判断しているときは、Qスイッチトリガ信号を出力しない。この場合、レーザロッド51に対する励起は行われるものの、Qスイッチがオンしないため、パルスレーザ光は出射しない。なお、フラッシュランプトリガ信号及びQスイッチトリガ信号は、第1実施形態におけるレーザ発振トリガ信号に相当する。
【0075】
本実施形態では、レーザユニット13が光共振器内にQスイッチ55を有している。レーザをQスイッチ動作とすることで、レーザユニット13が出射するレーザ光を短パルス化することができる。また、本実施形態では、トリガ制御回路27は、プローブ11が被検体に接触していても、接触していなくても、フラッシュランプトリガ信号を出力し、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断すれば、Qスイッチトリガ信号を出力する。プローブ11が被検体に接触していないときは、フラッシュランプトリガ信号に応答してフラッシュランプ52がレーザロッド51に励起光を照射するももの、Qスイッチトリガ信号が出力されないために、レーザ光は出力されない。動作モードが光音響信号の生成を含み、かつ、プローブ11が被検体に接触しているときは、トリガ制御回路27がQスイッチトリガ信号を出力することで、レーザユニット13からレーザ光が出力される。
【0076】
ここで、フラッシュランプ52がオンになった直後はレーザの出力が安定しないことがある。このため、フラッシュランプ52は、定期的に発光し続けた方がよいと考えられる。本実施形態では、レーザ光の出力の制御はQスイッチ55で行っており、Qスイッチ55をオンにしなければレーザ光が出力されないため、レーザロッド51の励起は行いながらも、レーザ光出射を抑制できる。このため、レーザ光出射の有無とは無関係に、フラッシュランプ52を一定間隔で発光させることができる。Qスイッチ55を用いることで短パルス化が可能なことと併せて、レーザ出力を安定化させる効果があり、メリットが大きい。更には、フラッシュランプ52を例えば一定間隔で発光させ続けた場合、光共振器内の温度をほぼ一定に保つことができる効果も期待でき、熱レンズ効果に起因する光共振器条件の変動を避けることができる。その他の効果は第1実施形態と同様である。
【0077】
次いで、本発明の第4実施形態を説明する。図12は、本発明の第4実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像診断装置10bは、図10に示す第3実施形態の光音響画像診断装置10aとは、超音波ユニット12b内の画像生成手段23bが、2波長データ複素数化手段244、強度情報抽出手段245、及び2波長データ演算手段246を更に有する点で相違する。本実施形態では、レーザユニット13bから、相互に異なる複数の波長のレーザ光を被検体に照射する。画像生成手段23bは、被検体内の光吸収体における光吸収特性の波長依存性を利用して、例えば動脈と静脈とが判別可能な光音響画像を生成する。
【0078】
本実施形態におけるレーザユニット13bは、相互に異なる複数の波長のパルスレーザ光を切り替えて出射する。レーザユニット13bから出射したパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いてプローブ11まで導光され、プローブ11から被検体に向けて照射される。以下の説明においては、主に、レーザユニット13bが、第1の波長のパルスレーザ光と第2の波長のパルスレーザ光とを順次に出射するものとして説明する。
【0079】
例えば、第1の波長(中心波長)として約750nmを考え、第2の波長として約800nmを考える。ヒトの動脈に多く含まれる酸素化ヘモグロビン(酸素と結合したヘモグロビン:oxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも高い。一方、静脈に多く含まれる脱酸素化ヘモグロビン(酸素と結合していないヘモグロビンdeoxy-Hb)の波長750nmにおける分子吸収係数は、波長800nmにおける分子吸収係数よりも低い。この性質を利用し、波長800nmで得られた光音響信号に対して、波長750nmで得られた光音響信号が相対的に大きいのか小さいのかを調べることで、動脈からの光音響信号と静脈からの光音響信号とを判別することができる。
【0080】
プローブ11は、被検体内からの超音波信号(光音響信号又は反射音響信号)を検出する。受信回路21は、プローブ11が検出した超音波信号を受信する。AD変換手段22は、受信回路21が受信した超音波信号をサンプリングする。AD変換手段22は、例えばADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で超音波信号のサンプリングを行う。AD変換手段22は、反射音響信号をサンプリングした反射超音波データと、光音響信号をサンプリングした光音響データとを、受信メモリ235に格納する。
【0081】
AD変換手段22は、光音響信号については、レーザユニット13bから出射されるパルスレーザ光の各波長に対応した光音響信号のサンプリングデータを受信メモリ235に格納する。つまり、AD変換手段22は、被検体に第1の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第1の光音響データと、第2の波長のパルスレーザ光が照射されたときにプローブ11で検出された光音響信号をサンプリングした第2の光音響データとを、受信メモリ235に格納する。
【0082】
データ分離手段236は、受信メモリ235に格納された超音波データと、第1及び第2の光音響データとを分離する。データ分離手段236は、反射超音波データを、超音波画像再構成手段240に渡す。また、第1及び第2の光音響データを、2波長データ複素数化手段244に渡す。反射超音波データがデータ分離手段236から超音波画像再構成手段240に送られて超音波画像が生成される点、及び、接触状態判断手段26が、生成された超音波画像に基づいてプローブ11の接触状態を判断する点は、第3実施形態と同様である。
【0083】
2波長データ複素数化手段244は、第1の光音響データと第2の光音響データのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する。以下では、2波長データ複素数化手段244が、第1の光音響データを実部とし、第2の光音響データを虚部とした複素数データを生成するものとして説明する。
【0084】
光音響画像再構成手段237は、2波長データ複素数化手段244から光音響データである複素数データを入力し、光音響データの再構成を行う。光音響画像再構成手段237は、入力された複素数データから、フーリエ変換法(FTA法)により画像再構成を行う。フーリエ変換法による画像再構成には、例えば文献”Photoacoustic Image Reconstruction-A Quantitative Analysis”Jonathan I.Sperl et al. SPIE-OSA Vol.6631 663103 等に記載されている従来公知の方法を適用することができる。光音響画像再構成手段237は、再構成画像を示すフーリエ変換のデータを強度情報抽出手段245と2波長データ演算手段246とに入力する。
【0085】
2波長データ演算手段246は、各波長に対応した光音響データ間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する。本実施形態では、2波長データ演算手段246は、光音響画像再構成手段237で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、実部と虚部とを比較したときに、相対的に、どちらがどれくらい大きいかを示す位相情報を抽出する。2波長データ演算手段246は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、θ=tan−1(Y/X)を位相情報として生成する。なお、X=0の場合はθ=90°とする。実部を構成する第1の光音響データ(X)と虚部を構成する第2の光音響データ(Y)とが等しいとき、位相情報はθ=45°となる。位相情報は、相対的に第1の光音響データが大きいほどθ=0°に近づいていき、第2の光音響データが大きいほどθ=90°に近づいていく。
【0086】
強度情報抽出手段245は、各波長に対応した光音響データに基づいて信号強度を示す強度情報を生成する。本実施形態では、強度情報抽出手段245は、光音響画像再構成手段237で再構成された再構成画像を入力データとし、複素数データである入力データから、強度情報を生成する。強度情報抽出手段245は、例えば複素数データがX+iYで表わされるとき、(X2+Y2)1/2を、強度情報として抽出する。検波・対数変換手段238は、強度情報抽出手段245で抽出された強度情報を示すデータの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。
【0087】
光音響画像構築手段239は、2波長データ演算手段246から位相情報を入力し、検波・対数変換手段238から検波・対数変換処理後の強度情報を入力する。光音響画像構築手段239は、入力された位相情報と強度情報とに基づいて、光吸収体の分布画像である光音響画像を生成する。光音響画像構築手段239は、例えば入力された強度情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の輝度(階調値)を決定する。また、光音響画像構築手段239は、例えば位相情報に基づいて、光吸収体の分布画像における各画素の色(表示色)を決定する。光音響画像構築手段239は、例えば例えば位相0°から90°の範囲を所定の色に対応させたカラーマップに用いて、入力された位相情報に基づいて各画素の色を決定する。
【0088】
ここで、位相0°から45°の範囲は、第1の光音響データが第2の光音響データよりも大きい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が大きい酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている動脈であると考えられる。一方、位相45°から90°の範囲は、第2の光音響データが第1の光音響データよりも小さい範囲であるため、光音響信号の発生源は、波長798nmに対する吸収よりも波長756nmに対する吸収の方が小さい脱酸素化ヘモグロビンを主に含む血液が流れている静脈であると考えられる。
【0089】
そこで、カラーマップとして、例えば位相が0°が赤色で、位相が45°に近づくに連れて無色(白色)になるように色が徐々に変化すると共に、位相90°が青色で、位相が45°に近づくに連れて白色になるように色が徐々に変化するようなカラーマップを用いる。この場合、光音響画像上で、動脈に対応した部分を赤色で表わし、静脈に対応した部分を青色で表わすことができる。強度情報を用いずに、階調値は一定として、位相情報に従って動脈に対応した部分と静脈に対応した部分との色分けを行うだけでもよい。
【0090】
画像合成手段243は、光音響画像構築手段239で生成された光音響画像と、超音波画像構築手段242で生成された超音波画像とを合成する。合成された画像は、画像表示手段14に表示される。画像合成を行わずに、画像表示手段14に、光音響画像と超音波画像とを並べて表示し、或いは光音響画像と超音波画像とを切り替えてすることも可能である。
【0091】
続いて、レーザユニット13bの構成を詳細に説明する。図13は、レーザユニット13bの構成を示す。レーザユニット13bは、レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、Qスイッチ55、駆動手段57、駆動状態検出手段58、BPF制御回路59、及び波長選択素子60を有する。レーザロッド51、フラッシュランプ52、ミラー53、54、及びQスイッチ55は、図11に示した、第3実施形態におけるレーザユニット13におけるそれらと同じでよい。
【0092】
波長選択素子60は、透過波長が相互に異なる複数のバンドパスフィルタ(BPF:Band Pass Filter)を含む。波長選択素子60は、複数のバンドパスフィルタを光共振器の光路上に選択的に挿入する。波長選択素子60は、例えば波長750nm(中心波長)の光を透過させる第1のバンドパスフィルタと、波長800nm(中心波長)の光を透過させる第2のバンドパスフィルタとを含む。光共振器の光路上に第1のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を750nmとすることができ、光共振器の光路上に第2のバンドパスフィルタを挿入することで、光発振器の発振波長を800nmとすることができる。
【0093】
駆動手段57は、光共振器の光路上に挿入されるバンドパスフィルタが所定の順序で順次に切り替わるように波長選択素子60を駆動する。駆動手段57には、例えばサーボモータを用いることができる。例えば波長選択素子60が、回転変位に伴って光共振器の光路上に選択的に挿入するバンドパスフィルタを切り替えるフィルタ回転体で構成されているとき、駆動手段57は、モータ出力軸の回転によりフィルタ回転体を回転駆動する。例えば、フィルタ回転体の半分(例えば回転変位位置0°から180°)を波長750nmの光を透過させる第1のバンドパスフィルタとし、残りの半分(例えば回転変位位置180°から360°)を波長800nmの光を透過させる第2のバンドパスフィルタとする。このようなフィルタ回転体を回転させることで、光共振器の光路上に、第1のバンドパスフィルタと第2のバンドパスフィルタとを、フィルタ回転体の回転速度に応じた切り替え速度で交互に挿入することができる。
【0094】
駆動状態検出手段58は、波長選択素子60の駆動状態を検出する。駆動状態検出手段58は、例えばフィルタ回転体である波長選択素子60の回転変位を検出する。駆動状態検出手段58は、例えばロータリーエンコーダーを含む。ロータリーエンコーダーは、サーボモータの出力軸に取り付けられたスリット入りの回転板と透過型フォトインタラプタとで、波長選択素子60であるフィルタ回転体の回転変位を検出し、BPF状態情報を生成する。駆動状態検出手段58は、フィルタ回転体の回転変位位置を示すBPF状態情報をBPF制御回路59に出力する。
【0095】
BPF制御回路59は、所定時間の間に駆動状態検出手段58が検出した回転変位の量が、フィルタ回転体の所定の回転速度に応じた量になるように駆動手段57に供給する電圧などを制御する。トリガ制御回路27は、BPF制御信号を通じて、BPF制御回路59に、フィルタ回転体の回転速度を指示する。BPF制御回路59は、例えばBPF状態情報をモニタし、所定時間の間にロータリーエンコーダーで検出されるサーボモータの回転軸の回転変位量が、指示された回転速度に対応した量に保たれるように、サーボモータに供給する電圧などを制御する。BPF制御回路59を用いるのに代えて、トリガ制御回路27がBPF状態情報をモニタし、波長選択素子60が所定の速度で駆動されるように、駆動手段57を制御するようにしてもよい。
【0096】
図12に戻り、制御手段28は、超音波ユニット12b内の各部の制御を行う。トリガ制御回路27は、レーザユニット13b内の波長選択素子60が光共振器の光路上に挿入するバンドパスフィルタが所定の切替え速度で切り替わるように、BPF制御回路59を制御する。トリガ制御回路27は、例えば、波長選択素子60を構成するフィルタ回転体を、所定の方向に所定の回転速度で連続的に回転させる旨のBPF制御信号を、BPF制御回路59に出力する。フィルタ回転体の回転速度は、例えばレーザユニット13bから出射すべきパルスレーザ光の波長の数(バンドパスフィルタの透過波長の数)と、単位時間当たりのパルスレーザの個数とに基づいて決定できる。
【0097】
トリガ制御回路27は、上記に加えて、モード切替スイッチ15の操作状態に応じた動作モードの切り替えや、レーザユニット13bに対するトリガ、送信制御回路25に対するトリガ、AD変換手段22に対するトリガなどを行う。動作モード切り換えの動作、送信制御回路25に対するトリガ、及びAD変換手段22に対するトリガについては、第3実施形態におけるトリガ制御回路27の動作と同じでよい。
【0098】
トリガ制御回路27は、動作モードが光音響画像の生成を含むモードであるとき、レーザユニット13bに、フラッシュランプ52(図13)からレーザロッド51へ励起光を照射させる旨のフラッシュランプトリガ信号(励起トリガ信号)を出力する。フラッシュランプ52は、フラッシュランプトリガ信号に応答してレーザロッド51に励起光を照射する。トリガ制御回路27は、BPF状態信号に基づいて、フラッシュランプトリガ信号を出力する。例えばトリガ制御回路27は、BPF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応したバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入される波長選択素子60の駆動位置から、レーザロッド51の励起に要する時間の間に波長選択素子60が変位する量を差し引いた位置を示す情報になるとフラッシュランプトリガ信号を出力し、レーザロッド51に対して励起光を照射させる。トリガ制御回路27は、例えば所定の時間間隔で周期的にフラッシュランプトリガ信号を出力する。
【0099】
トリガ制御回路2は、フラッシュランプトリガ信号の出力後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断していれば、レーザユニット13bのQスイッチ55にQスイッチトリガ信号を出力する。トリガ制御回路27は、波長選択素子60が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応した透過波長のバンドパスフィルタを光共振器の光路上に挿入しているタイミングでQスイッチトリガ信号を出力する。例えば波長選択素子60がフィルタ回転体で構成されるとき、トリガ制御回路27は、BPF状態情報が、出射すべきパルスレーザ光の波長に対応したバンドパスフィルタが光共振器の光路上に挿入されていることを示す位置となっているときに、Qスイッチトリガ信号を出力する。Qスイッチ55が、Qスイッチトリガ信号に応答して光共振器内の挿入損失を損失大から損失小に急激に変化させることで、出力側のミラー54からパルスレーザ光が出射する。トリガ制御回路27は、Qスイッチトリガ信号と同期してAD変換手段22にADトリガ信号を送る。AD変換手段22は、ADトリガ信号を受けると、光音響信号のサンプリングを開始する。
【0100】
一方、トリガ制御回路27は、フラッシュランプトリガ信号の出力後、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していないと判断しているときは、Qスイッチトリガ信号を出力しない。この場合、レーザロッド51に対する励起は行われるものの、Qスイッチがオンしないため、パルスレーザ光は出射しない。
【0101】
本実施形態では、レーザユニット13bが波長選択素子60を含んでおり、レーザユニット13bから、相互に異なる複数の波長のレーザ光を被検体に照射することができる。例えば、透過波長が異なる2つのバンドパスフィルタを含む波長選択素子60を連続的に駆動することで、2つのバンドパスフィルタを連続的、かつ選択的に光共振器の光路上に挿入することができ、レーザユニット13bから複数波長のレーザ光を連続的に切り換えて出射することができる。複数の波長のパルスレーザ光を照射したときの光音響信号(光音響データ)を用いることで、各光吸収体の光吸収特性が波長に応じて異なることを利用した機能イメージングを行うことができる。
【0102】
本実施形態では、2つの波長で得られた第1の光音響データと、第2の光音響データとの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成し、その複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成している。このようにする場合、再構成は一度で済むため、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成する場合に比して、再構成を効率的に行うことができる。
【0103】
本実施形態においても、第3実施形態と同様に、トリガ制御回路27は、プローブ11が被検体に接触していても、接触していなくても、フラッシュランプトリガ信号を出力し、接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していると判断すれば、Qスイッチトリガ信号を出力する。このようにすることで、第3実施形態において説明したものと同様な効果が得られる。ここで、プローブ11が被検体に接触していないときはレーザ光が出射しないため、本実施形態において、プローブ11が被検体に接触していないときはフラッシュランプトリガ信号を出力しない構成とすることも可能である。しかしながら、フラッシュランプ52を定期的に発光し続けることは、レーザ出力の安定性などの面で有利であると考えられ、上記構成とすることが好ましいと考えられる。接触状態判断手段26がプローブ11が被検体に接触していないと判断しているときは、レーザ光は出力されないため、波長選択素子60の駆動を停止するようにしてもよい。この場合、波長選択素子60を駆動し続ける場合に比べて、消費電力を抑えることができる。
【0104】
なお、上記各実施形態では光音響画像と超音波画像とを重畳して表示する例について説明したが、光音響画像診断装置は、超音波画像のみを表示するモード、又は光音響画像のみを表示するモードで動作することも可能である。超音波画像のみを表示するモードでは、光音響画像の生成は行わずに、例えば図4のステップA1〜A4に相当するステップを実行して超音波画像を生成し、画像表示手段14に超音波画像を表示すればよい。光音響画像のみを生成するモードでは、例えば図4のステップA10において、ステップA4で生成した超音波画像を表示画面上に表示せずに、ステップA9で生成された光音響画像を表示画面上に表示すればよい。
【0105】
特に、表示画面上に超音波画像を表示しない場合、超音波画像は接触状態の判断に使用されるだけであるため、光音響画像の画像化範囲と同じ範囲で超音波画像の生成を行う必要はない。例えば第1実施形態において、図4のステップA2で、プローブ11の全ての超音波振動子から超音波の送信を行わずに、光音響画像で画像化する範囲のうちの一部に対応する超音波振動子から超音波の送信を行い、ステップA3で、その一部に対応する超音波振動子で反射音響信号を検出してもよい。その場合、接触状態判断手段26は、ステップA4において反射音響信号が得られた部分の超音波画像を生成し(超音波の部分画像の生成)、その部分画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。
【0106】
具体的に、超音波振動子が全部で192ch分あったとき、そのうちの中央の64chにおいて超音波の送受信を行って中央の部分について超音波画像を生成し、その中央の部分の超音波画像に基づいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。第2実施形態においても同様に、図9のステップB3でプローブ11の全ての超音波振動子から超音波の送信を行わずに、光音響画像で画像化する範囲のうちの一部に対応する超音波振動子から超音波の送信を行ってもよい。その場合、ステップB4では、超音波の送受信を行った範囲のうちの少なくとも1ch分の超音波信号波形に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断すればよい。
【0107】
また、光音響画像を画像化する範囲を複数のブロックに分けたとき、接触状態判断手段26が、複数のブロックのそれぞれについて、各ブロック内の少なくとも一部に対応する超音波振動子で検出された反射音響信号に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することも可能である。例えば、192ch分の超音波振動子の範囲が光音響画像を生成する範囲に相当するとき、その192ch分の超音波振動子を64ch分ずつ、左側、中央、及び右側の3つのブロックに分割する。例えば画像生成手段23にて、左側のブロックに対応する64ch分の超音波振動子で検出された反射音響信号に基づいて左側ブロックの超音波画像(部分画像)を生成し、その部分画像に基づいて左側ブロックが被検体に接触しているか否かを判断してもよい。中央のブロックと右側のブロックも同様に、各ブロックに対応した超音波の部分画像を生成し、各ブロックにおいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。超音波画像に代えて反射音響信号の信号波形に基づいて接触状態を判断する場合も、同様に、ブロックごとにプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断することができる。
【0108】
例えばプローブ11がレーザ光を照射する範囲がブロック単位で切替え可能である場合には、少なくともレーザ光を照射しようとしているブロックにおいて超音波の送受信を行い、接触状態判断手段26が、そのブロックにおいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。その場合、制御手段24は、接触状態判断手段26にて、プローブ11からレーザ光を照射すべきブロックにおいてプローブ11が被検体に接触していると判断されたときに、プローブ11からそのブロックに対してレーザ光を照射させればよい。
【0109】
具体的に、プローブ11が左側、中央、及び右側の3つのブロックに対してレーザ光を切り替えて照射可能であるとする。プローブ11から、中央のブロックに対してレーザ光を照射しようとしているときは、少なくとも中央のブロックにおいて超音波の送受信を行い、接触状態判断手段26が、中央のブロックにおいてプローブ11が被検体に接触しているか否かを判断すればよい。制御手段24は、中央のブロックにおいてプローブ11が被検体に接触していると判断されたときは、レーザ発振トリガ信号を出力し、プローブ11から中央のブロックに対してレーザ光を照射させればよい。
【0110】
上記各実施形態では、プローブ11が被検体に接触している否かを判断するために超音波の送受信を行い、その送受信で得られた反射音響画像に基づく超音波画像を表示画面上に表示しているが、これには限定されない。プローブ11が被検体に接触している否かを判断するための超音波の送受信とは別に超音波の送受信を行い、別の超音波の送受信で得られた反射音響信号に基づいて別途超音波画像を生成してもよい。例えば図4のステップA9で光音響画像を生成した後にプローブ11から超音波の送信を行い、プローブ11で反射音響信号を検出し、画像生成手段23で反射音響信号に基づいて超音波画像を別途生成してもよい。その場合、ステップA10では、ステップA4で生成した超音波画像に代えて、光音響画像の生成の後に別途生成された超音波画像を表示すればよい。
【0111】
接触状態判断手段26は、被検体の深さ方向の所定の範囲における反射音響信号に基づいて、プローブ11が被検体に接触しているか否かを判断してもよい。例えば第1実施形態では、画像生成手段23が被検体の表面から5mm〜10mmまでの範囲で超音波画像を生成し、接触状態判断手段26が、その範囲の超音波画像に基づいてプローブ11の接触状態を判断してもよい。また、第2実施形態では、AD変換手段22において、表面から5mm〜10mmの深さまでに対応する時間領域について反射音響信号のサンプリングを行い、接触状態判断手段26がサンプリングされた反射音響信号の信号波形に基づいてプローブ11の接触状態を判断してもよい。
【0112】
第4実施形態では、第1の光音響データと第2の光音響データとを複素数化する例について説明したが、複素数化せずに、第1の光音響データと第2の光音響データとを別々に再構成してもよい。また、再構成の手法は、フーリエ変換法には限定されない。さらに、第4実施形態においては、複素数化して位相情報を用いて第1の光音響データと第2の光音響データの比を計算しているが、両者の強度情報から比を計算しても同様の効果が得られる。また、強度情報は、第1の再構成画像における信号強度と、第2の再構成画像における信号強度とに基づいて生成できる。
【0113】
光音響画像の生成に際して、被検体に照射されるパルスレーザ光の波長の数は2つには限られず、3以上のパルスレーザ光を被検体に照射し、各波長に対応する光音響データに基づいて光音響画像を生成してもよい。その場合、例えば2波長データ演算手段246は、各波長に対応する光音響データ間での相対的な信号強度の大小関係を位相情報として生成すればよい。また、強度情報抽出手段245は、例えば各波長に対応する光音響データにおける信号強度を1つにまとめたものを強度情報として生成すればよい。
【0114】
第4実施形態では、主に、波長選択素子60が、2つのバンドパスフィルタ領域を含むフィルタ回転体で構成される例を説明したが、波長選択素子60は、光共振器内で発振する光の波長を変化させるものであればよく、フィルタ回転体の構成には限定されない。例えば、波長選択素子60を、複数のバンドパスフィルタを円周状に配置した回転体で構成してもよい。波長選択素子60は回転体である必要はなく、例えば、複数のバンドパスフィルタを一列に並べたものでもよい。その場合、複数のバンドパスフィルタが循環的に光共振器の光路上に挿入されるよう波長選択素子60を駆動してもよいし、一列に並べられた複数のバンドパスフィルタが光共振器の光路上を横切るように波長選択素子60を往復駆動させてもよい。バンドパスフィルタに代えて、複屈折フィルタなどの波長選択素子を用いることも可能である。
【0115】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の光音響画像生成装置及び方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
10:光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザユニット
14:画像表示手段
15:モード切替スイッチ
21:受信回路
22:AD変換手段
23:画像生成手段
24:制御手段
25:送信制御回路
26:接触状態判断手段
27:トリガ制御回路
28:制御手段
51:レーザロッド
52:フラッシュランプ
53、54:ミラー
55:Qスイッチ
56:バンドパスフィルタ
57:駆動手段
58:駆動状態検出手段
59:BPF制御回路
60:波長選択素子
231:画像再構成手段
232:検波手段
233:対数変換手段
234:画像構築手段
235:受信メモリ
236:データ分離手段
237:光音響画像再構成手段
238:検波・対数変換手段
239:光音響画像構築手段
240:超音波画像再構成手段
241:検波・対数変換手段
242:超音波画像構築手段
243:画像合成手段
244:2波長データ複素数化手段
245:強度情報抽出手段
246:2波長データ演算手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から導光された光の被検体に対する照射、及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブと、
少なくとも、前記プローブから被検体に対して照射された光に対して前記プローブで受信された超音波である光音響信号に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段と、
前記光音響画像の生成に先立って、前記プローブから送信された超音波に対して前記プローブで受信された超音波である反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する接触状態判断手段と、
前記接触状態判断手段で接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光を照射させる制御手段とを備える光音響画像生成装置。
【請求項2】
前記プローブが超音波の送受信を行う複数の超音波振動子を含んでおり、前記接触状態判断手段が、前記光音響画像で画像化する範囲のうちの少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響画像生成装置。
【請求項3】
前記光音響画像を画像化する範囲が複数のブロックに分けられており、前記接触状態判断手段が、複数のブロックのそれぞれについて、各ブロック内の少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項2に記載の光音響画像生成装置。
【請求項4】
前記プローブが前記光を照射する範囲がブロック単位で切り替え可能であり、前記制御手段が、前記接触状態判断手段にて、前記プローブから光を照射すべきブロックについて前記プローブが被検体に接触していると判断されたとき、前記プローブから当該ブロックに光を照射させるものであることを特徴とする請求項3に記載の光音響画像生成装置。
【請求項5】
前記接触状態判断手段が、被検体の深さ方向所定の範囲における前記反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から4何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項6】
前記画像生成手段が、前記反射音響信号に基づいて超音波画像を更に生成するものであり、前記接触状態判断手段が、前記生成された超音波画像を用いて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項7】
前記接触状態判断手段が、前記プローブが被検体に接触しない状態で生成された超音波画像の典型的な画像を参照画像として記憶しており、前記生成された超音波画像と前記参照画像との類似度に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項6に記載の光音響画像生成装置。
【請求項8】
前記接触状態判断手段が、前記受信された反射音響信号の信号波形に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項9】
前記接触状態判断手段が、前記反射音響信号の信号波形の特徴解析を行い、該特徴解析の結果に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項8に記載の光音響画像生成装置。
【請求項10】
前記光源が、レーザ媒質と、該レーザ媒質に励起光を照射する励起光源と、前記レーザ媒質を挟み込むように対向して配置され、光共振器を構成する一対のミラーと、前記光共振器内に配置されたQスイッチとを含むことを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項11】
前記制御手段が、光音響画像の生成に際して、前記光源に、前記レーザ媒質に対して励起光を照射させる旨の励起トリガ信号を送信し、該励起トリガ信号の送信後で、かつ、前記接触状態判断手段が前記プローブが被検体に接触していると判断しているときに、前記光源に、前記Qスイッチをオンにする旨のQスイッチトリガ信号を送るものであることを特徴とする請求項10に記載の光音響画像生成装置。
【請求項12】
前記光源が、前記光共振器内に配置された波長選択素子更に含み、相互に異なる複数の波長のレーザ光を出射することを特徴とする請求項10又は11に記載の光音響画像生成装置。
【請求項13】
前記波長選択素子が、透過波長が相互に異なる複数のバンドパスフィルタを含み、前記光源が、前記光共振器の光路上に挿入されるバンドパスフィルタが所定の順序で順次に切り替わるように前記波長選択手段を駆動する駆動手段を更に有することを特徴とする請求項12に記載の光音響画像生成装置。
【請求項14】
前記波長選択素子が、回転変位に伴って前記光共振器の光路上に選択的に挿入するバンドパスフィルタを切り替えるフィルタ回転体で構成され、前記駆動手段が前記フィルタ回転体を回転駆動するものであることを特徴とする請求項13に記載の光音響画像生成装置。
【請求項15】
前記画像生成手段が、被検体に照射された複数の波長のレーザ光に対して前記プローブで受信された、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する2波長データ演算手段を含み、該2波長データ演算手段で抽出された相対的な信号強度の大小関係に基づいて光音響画像を生成するものであることを特徴とする請求項12から14何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項16】
前記画像生成手段が、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号に基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に含み、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記相対的な信号強度の大小関係に基づいて決定するものであることを特徴とする特徴とする請求項15に記載の光音響画像生成装置。
【請求項17】
前記光源が出射すべきパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、
前記画像生成手段が、前記第1の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第1の光音響信号と、前記第2の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第2の光音響信号とのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する再構成手段とを更に含み、
前記強度比抽出手段が、前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が、前記再構成画像から前記強度情報を抽出するものであることを特徴とする請求項16に記載の光音響画像生成装置。
【請求項18】
被検体に対する光照射及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブから、被検体に対して超音波の送信を行うステップと、
前記プローブにより、前記送信された超音波に対する反射超音波を受信するステップと、
前記受信された反射音波に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するステップと、
前記プローブが被検体に接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光照射を行うステップと、
前記プローブにより、前記光照射により被検体内で生じた超音波を受信するステップと、
前記受信された、光照射により生じた超音波に基づいて光音響画像を生成するステップとを有することを特徴とする光音響画像生成方法。
【請求項1】
光源と、
前記光源から導光された光の被検体に対する照射、及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブと、
少なくとも、前記プローブから被検体に対して照射された光に対して前記プローブで受信された超音波である光音響信号に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段と、
前記光音響画像の生成に先立って、前記プローブから送信された超音波に対して前記プローブで受信された超音波である反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断する接触状態判断手段と、
前記接触状態判断手段で接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光を照射させる制御手段とを備える光音響画像生成装置。
【請求項2】
前記プローブが超音波の送受信を行う複数の超音波振動子を含んでおり、前記接触状態判断手段が、前記光音響画像で画像化する範囲のうちの少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響画像生成装置。
【請求項3】
前記光音響画像を画像化する範囲が複数のブロックに分けられており、前記接触状態判断手段が、複数のブロックのそれぞれについて、各ブロック内の少なくとも一部に対応する超音波振動子で受信された反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項2に記載の光音響画像生成装置。
【請求項4】
前記プローブが前記光を照射する範囲がブロック単位で切り替え可能であり、前記制御手段が、前記接触状態判断手段にて、前記プローブから光を照射すべきブロックについて前記プローブが被検体に接触していると判断されたとき、前記プローブから当該ブロックに光を照射させるものであることを特徴とする請求項3に記載の光音響画像生成装置。
【請求項5】
前記接触状態判断手段が、被検体の深さ方向所定の範囲における前記反射音響信号に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から4何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項6】
前記画像生成手段が、前記反射音響信号に基づいて超音波画像を更に生成するものであり、前記接触状態判断手段が、前記生成された超音波画像を用いて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項7】
前記接触状態判断手段が、前記プローブが被検体に接触しない状態で生成された超音波画像の典型的な画像を参照画像として記憶しており、前記生成された超音波画像と前記参照画像との類似度に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項6に記載の光音響画像生成装置。
【請求項8】
前記接触状態判断手段が、前記受信された反射音響信号の信号波形に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項1から5何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項9】
前記接触状態判断手段が、前記反射音響信号の信号波形の特徴解析を行い、該特徴解析の結果に基づいて前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するものであることを特徴とする請求項8に記載の光音響画像生成装置。
【請求項10】
前記光源が、レーザ媒質と、該レーザ媒質に励起光を照射する励起光源と、前記レーザ媒質を挟み込むように対向して配置され、光共振器を構成する一対のミラーと、前記光共振器内に配置されたQスイッチとを含むことを特徴とする請求項1から9の何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項11】
前記制御手段が、光音響画像の生成に際して、前記光源に、前記レーザ媒質に対して励起光を照射させる旨の励起トリガ信号を送信し、該励起トリガ信号の送信後で、かつ、前記接触状態判断手段が前記プローブが被検体に接触していると判断しているときに、前記光源に、前記Qスイッチをオンにする旨のQスイッチトリガ信号を送るものであることを特徴とする請求項10に記載の光音響画像生成装置。
【請求項12】
前記光源が、前記光共振器内に配置された波長選択素子更に含み、相互に異なる複数の波長のレーザ光を出射することを特徴とする請求項10又は11に記載の光音響画像生成装置。
【請求項13】
前記波長選択素子が、透過波長が相互に異なる複数のバンドパスフィルタを含み、前記光源が、前記光共振器の光路上に挿入されるバンドパスフィルタが所定の順序で順次に切り替わるように前記波長選択手段を駆動する駆動手段を更に有することを特徴とする請求項12に記載の光音響画像生成装置。
【請求項14】
前記波長選択素子が、回転変位に伴って前記光共振器の光路上に選択的に挿入するバンドパスフィルタを切り替えるフィルタ回転体で構成され、前記駆動手段が前記フィルタ回転体を回転駆動するものであることを特徴とする請求項13に記載の光音響画像生成装置。
【請求項15】
前記画像生成手段が、被検体に照射された複数の波長のレーザ光に対して前記プローブで受信された、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号間の相対的な信号強度の大小関係を抽出する2波長データ演算手段を含み、該2波長データ演算手段で抽出された相対的な信号強度の大小関係に基づいて光音響画像を生成するものであることを特徴とする請求項12から14何れかに記載の光音響画像生成装置。
【請求項16】
前記画像生成手段が、複数の波長のそれぞれに対応した光音響信号に基づいて信号強度を示す強度情報を生成する強度情報抽出手段を更に含み、前記光音響画像の各画素の階調値を前記強度情報に基づいて決定すると共に、各画素の表示色を前記相対的な信号強度の大小関係に基づいて決定するものであることを特徴とする特徴とする請求項15に記載の光音響画像生成装置。
【請求項17】
前記光源が出射すべきパルスレーザ光の複数の波長が第1の波長と第2の波長を含み、
前記画像生成手段が、前記第1の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第1の光音響信号と、前記第2の波長のパルスレーザ光が被検体に照射されたときに前記プローブで受信された第2の光音響信号とのうちの何れか一方を実部、他方を虚部とした複素数データを生成する複素数化手段と、前記複素数データからフーリエ変換法により再構成画像を生成する再構成手段とを更に含み、
前記強度比抽出手段が、前記再構成画像から前記大小関係としての位相情報を抽出し、前記強度情報抽出手段が、前記再構成画像から前記強度情報を抽出するものであることを特徴とする請求項16に記載の光音響画像生成装置。
【請求項18】
被検体に対する光照射及び被検体に対する超音波の送受信を行うプローブから、被検体に対して超音波の送信を行うステップと、
前記プローブにより、前記送信された超音波に対する反射超音波を受信するステップと、
前記受信された反射音波に基づいて、前記プローブが被検体に接触しているか否かを判断するステップと、
前記プローブが被検体に接触していると判断されたときに、前記プローブから被検体に対して光照射を行うステップと、
前記プローブにより、前記光照射により被検体内で生じた超音波を受信するステップと、
前記受信された、光照射により生じた超音波に基づいて光音響画像を生成するステップとを有することを特徴とする光音響画像生成方法。
【図1】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図5】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図5】
【公開番号】特開2012−187389(P2012−187389A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−279154(P2011−279154)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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