説明

光音響画像診断装置、画像生成方法、及びプログラム

【課題】光音響画像診断装置において、光照射タイミングにばらつきが生じたときでも、生成される光音響画像の画像品質の低下を抑制する。
【解決手段】超音波画像構築手段18は、超音波画像を生成する。第1の光音響画像構築手段17は、被検体に照射された光により生じた光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。ずれ量検出手段19は、光音響画像と超音波画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出する。第2の光音響画像構築手段20は、検出されたずれに基づいて光音響画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響画像診断装置、画像生成方法、及びプログラムに関し、更に詳しくは、生体組織に光を照射し光照射に伴って発生する音響信号に基づいて画像生成を行う光音響画像診断装置、画像生成方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体に超音波を送信させると、その超音波は被検体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、レーザパルスなどのパルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。光音響画像と超音波画像とに関して、特許文献1には同じ位置で両画像を生成し、合成して表示することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、超音波診断装置をベースとした光音響画像診断装置では、光音響画像診断装置からレーザ光源に対してレーザ発光のトリガ信号を出力し、レーザ光源は、そのトリガ信号に応答してレーザ光を出射する。光音響画像診断装置は、レーザ光源から出力されたレーザ光により生じた光音響信号を超音波探触子で受信し、受信した光音響信号に対して画像再構成を行うことで画像化を行う。
【0006】
ここで、受信系である超音波探触子の受信開始タイミングは、レーザ光源へのトリガ信号の出力タイミングに基づいて固定的に定められる。つまり、トリガ信号の出力タイミングから、超音波探触子における光音響信号の受信開始(サンプリング開始)タイミングまでの間の時間は一定の時間である。しかしながら、レーザ光源がトリガ信号を受けてから、実際にレーザ光を出射するまでにかかる時間にはジッタが生じ、レーザ発光タイミングにばらつきが生じることがある。レーザ発光にばらつきが生じると、光音響信号が、所期の受信開始点よりもずれて受信開始されることがある。
【0007】
光音響信号の受信開始点が所期のタイミングからずれると、光音響画像において、測定対象物が本来の位置からずれて表示されることになる。例えば光照射タイミングが所期のタイミングよりも早くなると、そのタイミング差の分だけ超音波探触子において光音響信号が早く受信され、光音響画像において、測定対象物が全体位置として浅い位置に表示されることなる。また、それだけではなく、例えば遅延加算法を用いて複数チャンネルの信号を加算する際に、誤った位置に基づく遅延時間で信号が加算されることで、画像がぼけた画像となったり、アーチファクトが発生したりすることがある。
【0008】
上記問題を解消するためには、光音響信号の受信データをレーザ光源にジッタに合わせてその都度オフセットする必要がある。しかし、絶対基準がないため、適切にオフセット量を決めることは困難である。特許文献1に記載の技術は、単に光音響画像と超音波画像を合成して表示するというものに過ぎず、光音響画像における上記の問題をなんら解消するものではない。
【0009】
本発明は、上記に鑑み、光照射タイミングにばらつきが生じたときでも、生成される光音響画像の画像品質の低下を抑制できる光音響画像診断装置、画像生成方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、超音波画像を生成する超音波画像構築手段と、被検体内に照射された光により生じた光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、前記超音波画像と前記光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出するずれ量検出手段とを備え、前記光音響画像構築手段が、前記検出されたずれに基づいて前記光音響画像を再生成するものであることを特徴とする光音響画像診断装置を提供する。
【0011】
前記光音響画像構築手段が、前記光音響信号の時間軸を前記ずれ量検出手段で検出された時間軸方向のずれの分だけ補正して前記光音響信号の再生成を行うものとすることができる。
【0012】
光音響画像診断装置が、前記ずれ量検出手段で検出されたずれが所定のしきい値以下になるまで、前記光音響画像の再生成と前記ずれの検出とを繰り返し行う構成とすることができる。
【0013】
前記ずれ量検出手段が、前記超音波画像と前記光音響画像との相関を求め、該求めた相関に基づいて前記ずれ量を検出する構成を採用してもよい。
【0014】
上記に代えて、光音響画像診断装置が、前記超音波画像から所定の特徴点を抽出して特徴点画像を生成する特徴点抽出手段を更に備え、前記ずれ量検出手段が、前記特徴点画像と前記光音響画像との相関を求め、該求めた相関に基づいて前記ずれ量を検出する構成としてもよい。この場合、前記特徴点抽出手段は、前記超音波画像から血管部分に該当する特徴点を抽出し、該抽出された血管部分から成る血管画像を前記特徴点画像として生成してもよい。
【0015】
前記ずれ量検出手段は、前記超音波画像に対して設定された比較ポイントと、前記光音響画像に対して設定された、前記超音波画像における比較ポイントに対応する比較ポイントとのずれ量を検出してもよい。
【0016】
本発明は、また、被検体内に出力された超音波に対する反射音響信号に基づいて超音波画像を生成するステップと、被検体内に照射された光により生じた光音響信号を取得し、該取得した光音響信号に基づいて光音響画像を生成するステップと、前記超音波画像と前記光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出するステップと、前記検出されたずれに基づいて前記光音響画像を再生成するステップとを有することを特徴とする光音響画像生成方法を提供する。
【0017】
更に本発明は、コンピュータに、被検体内に出力された超音波に対する反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する手順と、被検体内に照射された光により生じた光音響信号を取得し、該取得した光音響信号に基づいて光音響画像を生成する手順と、前記超音波画像と前記光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出する手順と、前記検出されたずれに基づいて前記光音響画像を再生成する手順とを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光音響画像診断装置では、光音響画像と超音波画像との間のずれ量を求め、求めたずれの量を用いて光音響画像の構成を再度行う。このようにすることで、光照射のトリガの出力から実際に光が照射されるまでの時間にばらつきが生じたときでも、光音響発生源の深さ方向の位置ずれを補正することができる。光音響発生源の位置を補正した状態で光音響画像の構成を再度行うことにより、光音響画像の画像品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響画像診断装置を示すブロック図。
【図2】遅延加算法による画像構成を示す図。
【図3】CBP法による画像構成を示す図。
【図4】動作手順を示すフローチャート。
【図5】サンプリング開始からの経過時間と遅延時間との関係を示す図。
【図6】遅延加算が正しく行われない例を示す図。
【図7】超音波画像を例示する図。
【図8】暫定的に生成された光音響画像を例示する図。
【図9】再生成された光音響画像を例示する図。
【図10】本発明の第2実施形態の光音響画像診断装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響画像診断装置を示す。光音響画像診断装置10は、超音波探触子11、AD変換手段12、トリガ制御手段13、レーザ光源14、信号処理手段15、及び画像表示手段22を備える。光音響画像診断装置10は、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能である。レーザ光源14は、光音響画像生成の際に、被検体内にレーザ光を照射する。レーザ光の波長は、観察対象物に応じて適宜設定すればよい。
【0021】
超音波探触子11は、被検体に対する超音波の出力、及び被検体からの音響信号の検出を行う。超音波探触子11は、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子(素子)を有する。超音波探触子11は、例えば超音波画像の生成時は複数の超音波振動子から超音波を出力し、出力された超音波に対する反射超音波(以下、反射音響信号とも呼ぶ)を検出する。超音波探触子11は、光音響画像生成時は、被検体内の測定対象物がレーザ光源14からのレーザ光を吸収することで生じた超音波(以下、光音響信号とも呼ぶ)を検出する。
【0022】
AD変換手段12は、超音波探触子11が有する複数の超音波振動子が検出した超音波をデジタル信号に変換する。AD変換手段12は、例えば所定のサンプリング周期で、検出された超音波をサンプリングする。トリガ制御手段13は、レーザ光源14から被検体内へのレーザ光の照射タイミングを制御する。また、トリガ制御手段13は、超音波探触子11から被検体内への超音波の出力タイミングを制御する。更にトリガ制御手段13は、AD変換手段12による超音波(光音響信号又は反射音響信号)のサンプリング開始のタイミングを制御する。
【0023】
トリガ制御手段13は、光音響画像生成時にレーザ光源14にトリガ信号(光音響トリガ)を出力する。レーザ光源14は、光音響トリガに応答して被検体内にレーザ光を出力する。AD変換手段12は、光音響トリガのタイミングと所定の時間関係にあるタイミングで光音響信号のサンプリングを開始する。また、トリガ制御手段13は、超音波画像生成時に超音波探触子11にトリガ信号(超音波送信トリガ)を出力する。超音波探触子11は、超音波送信トリガに応答して被検体内に超音波を出力する。AD変換手段12は、超音波送信トリガのタイミングと所定の時間関係にあるタイミングで反射音響信号のサンプリングを開始する。
【0024】
信号処理手段15は、モード切替手段16、第1の光音響画像構築手段17、超音波画像構築手段18、ずれ量検出手段19、第2の光音響画像構築手段20、及び画像選択手段21を備える。信号処理手段15は、AD変換手段12でデジタル信号に変換された光音響信号及び反射音響信号に基づいて、光音響画像及び超音波画像の生成を行う。信号処理手段15内の各部の機能は、コンピュータが所定のプログラムに従って処理を実行することで実現できる。
【0025】
モード切替手段16は、光音響画像生成モードと超音波画像生成モードとを切り替える。モード切替手段16は、光音響画像生成モード時は、AD変換手段12が出力する光音響信号のサンプリング結果を第1の光音響画像構築手段17に入力する。モード切替手段16は、超音波画像生成モード時は、AD変換手段12が出力する反射音響信号のサンプリング結果を超音波画像構築手段18に入力する。
【0026】
第1の光音響画像構築手段17は、入力される光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。超音波画像構築手段18は、反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する。ずれ量検出手段19は、超音波画像と光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出する。ここで、画像間の時間軸方向のずれは、画像における深さ方向の位置のずれに相当する。ずれ量検出手段19は、例えば超音波画像と光音響画像との相関を求め、求めた相関に基づいて画像間の時間軸方向のずれ量を検出する。
【0027】
第2の光音響画像構築手段20は、ずれ量検出手段19で検出されたずれに基づいて光音響画像を再生成する。第1の光音響画像構築手段17における画像生成手法と、第2の光音響画像構築手段20における画像生成手法とは同じ手法でよい。なお、図1では便宜上、第1の光音響画像構築手段17と第2の光音響画像構築手段20とを別個の手段としているが、光音響信号に基づく光音響画像の生成と、検出されたずれだけ補正した光音響画像の再生成との双方を1つの光音響画像構築手段で行ってもよい。
【0028】
画像選択手段21は、少なくとも第2の光音響画像構築手段20で生成された光音響画像を出力する。画像選択手段21は、例えば光音響画像と超音波画像とを選択的に出力する。あるいは光音響画像と超音波画像とを合成して出力してもよい。画像表示手段22は、例えば表示モニタなどの装置であり、画像選択手段21が出力する画像を表示画面上に表示する。画像表示手段22は、例えば光音響画像と超音波画像とを並べて表示する。あるいは画像表示手段22は、光音響画像と超音波画像とを切り替えて表示してもよいし、光音響画像と超音波画像とを重ねて表示してもよい。
【0029】
光音響画像の生成には、遅延加算法を用いることができる。図2は、遅延加算法による画像構成を示す。図2において、縦方向の位置zは、光音響信号のサンプリング開始からの経過時間に対応する。遅延加算法では、空間上の点(x,z)にある音源から発生した球面波が超音波探触子11の素子面に到達する時間が同じ観測素子データを加算し、音源を描出する。例えば図2において黒丸の点を音源とするデータを描出する場合、この音源からの光音響信号が各素子に到達する時間が同じになる白丸の点のデータを加算する。
【0030】
上記に代えて、光音響画像の生成にCBP(Circular Back Projection)法を用いることもできる。図3は、CBP法による画像構成を示す。CBP法では、超音波探触子11の各素子のデータに対して、各素子を中心とした円内に音源の候補点があるとして、空間的に円として足し合わせていくことで、音源の可能性が最も高い点が描出される。例えば紙面向かって最も左側の素子の直下にある点が測定点(xr,tr)であるとした場合、半径c×trの円上のどこかに音源があるとして円を描く。これを素子データ全てに対して行うことで、音源が描出できる。
【0031】
図4は、動作手順を示す。トリガ制御手段13は、超音波探触子11に超音波送信トリガを出力する(ステップS1)。超音波探触子11は、被検体内に超音波を出力し、被検体内で反射した反射音響信号を検出する。AD変換手段12は、超音波送信トリガに基づくタイミングで反射音響信号のサンプリングを開始し、反射音響データを取得する(ステップS2)。モード切替手段16は、取得された反射音響データを超音波画像構築手段18に入力する。超音波画像構築手段18は、反射音響データに基づいて超音波画像を生成する(ステップS3)。超音波画像の生成には、任意の生成手法を用いることができる。
【0032】
続いて、トリガ制御手段13は、レーザ光源14に光音響トリガを出力する(ステップS4)。レーザ光源14は、光音響トリガに応答して例えばパルスレーザ光を被検体内に照射する。超音波探触子11は、被検体内に照射された光により生じた光音響信号を検出する。AD変換手段12は、光音響トリガに基づくタイミングで光音響信号のサンプリングを開始し、光音響データを取得する(ステップS5)。モード切替手段16は、取得された光音響データを第1の光音響画像構築手段17に入力する。第1の光音響画像構築手段17は、光音響データに基づいて光音響画像を生成する(ステップS6)。
【0033】
なお、上記では、反射音響データを先に取得して超音波画像を生成し、その後に光音響データを取得して光音響画像を生成することとしているが、反射音響データの取得と光音響データの取得とはどちらが先でもよい。また、取得した反射音響データと光音響データとを図示しない素子データメモリにいったん記憶しておき、素子データメモリに超音波画像の生成と光音響画像の生成とに必要な情報を記憶した後に超音波画像と光音響画像とを生成してもよい。
【0034】
ずれ量検出手段19は、ステップS3で生成された超音波画像と、ステップS6で生成された光音響画像とを入力する。ずれ量検出手段19は、超音波画像と光音響画像との時間軸方向の位置のずれ量を検出する(ステップS7)。ずれ量検出手段19は、例えば超音波画像と光音響画像との位置を相対的にずらしつつ、各ずらした位置で両画像間の相関(類似度)を求める。ずれ量検出手段19は、両画像間の相関が最も高くなるずらし量を、画像間のずれ量として検出する。
【0035】
ずれ量検出手段19は、検出したずれ量を第2の光音響画像構築手段20に出力する。第2の光音響画像構築手段20は、入力されたずれ量に基づいて、第1の光音響画像構築手段17が光音響画像の生成元とした光音響データから光音響画像を生成する(ステップS8)。第2の光音響画像構築手段20は、例えば光音響データにおける時間軸を、ずれ量検出手段19で検出されたずれ量の分だけ補正して光音響画像を生成する。
【0036】
画像選択手段21は、例えばユーザ操作に応じて光音響画像又は超音波画像を画像表示手段22に出力する(ステップS9)。ステップS9で出力される光音響画像は、第1の光音響画像構築手段17で生成された光音響画像ではなく、第2の光音響画像構築手段20で生成された光音響画像である。画像表示手段22は、例えば光音響画像と超音波画像とを並べて、或いは切り替えて表示する。
【0037】
ここで、光音響トリガの出力からレーザ光源14が実際にレーザ光を被検体内に照射するまでにかかる時間にはばらつきがあり、ステップS7で第1の光音響画像構築手段17が生成する光音響画像は、測定対象物の深さ方向の位置が所期の位置(本来の位置)からずれた状態で生成されることがある。測定対象物の深さ方向の位置が本来の位置からずれると、例えば遅延加算法(図2)により光音響データから光音響画像を生成する際に、光音響画像がぼけた状態の画像となることがある。以下、これについて説明する。
【0038】
図5は、サンプリング開始からの経過時間と遅延時間との関係を示す。光音響画像の生成では、例えば32個の素子データを遅延加算することで、1ライン分のデータを生成するものとする。図5において、縦軸は、AD変換手段12におけるサンプリング開始からの経過時間を表わす。これは音源の深さ方向の位置に相当する。横軸は、1ライン分のデータを生成する際に加算される超音波探触子11の素子の位置に対応する。図5には、経過時間100μsから、100μs刻みで、各経過時間位置の画像データを生成する際の遅延時間を表わす曲線を示している。例えば光音響画像における300μsに対応する位置の画像データを生成する際には、300μsから、図5において黒丸を付した曲線と300μsとの差で表わされる遅延時間分だけ遅延した時刻の素子データ(32ch分)を加算する。
【0039】
図6は、遅延加算が正しく行われない例を示す。例えばレーザ光の照射タイミングが、所期のタイミングから100μsだけ早まったとする。レーザ照射タイミングが早まることで、例えば経過時間300μsの地点に存在する音源からの光音響信号が、経過時間200μsの地点からの光音響信号として受信されることになる。図6においては、経過時間300μsに対応する位置の遅延時間を表わす線を、200μsの位置にずらして破線で示している。本来、図6において黒丸を付した、経過時間300μsに対応する曲線(破線)に基づいて定まる遅延時間で各素子の素子データを遅延加算すべきところ、白四角を付した経過時間200μsに対応する曲線に基づいて定まる遅延時間で各素子の素子データを遅延加算することで、正しく画像生成を行うことができず、画像が全体的にぼけた感じの画像となる。
【0040】
一方、超音波画像を考えると、トリガ制御手段13が超音波探触子11に対して超音波送信トリガを出力してから実際に超音波探触子11が被検体内に超音波を出力するまでに要する時間に一定であると考えられる。従って、超音波画像では、上記したようなばらつきによる位置ずれの問題は生じない。そこで、本実施形態では、超音波画像を基準画像として、ずれ量検出手段19においてその基準画像と光音響画像とのずれを求める。つまり第1の光音響画像構築手段17において光照射タイミングにばらつきがないものとして暫定的に光音響画像を生成し、ずれ量検出手段19において、その暫定的に生成された光音響画像と超音波画像とを比較して画像間のずれ量を求める。その後、第2の光音響画像構築手段20において、求められたずれ量分だけ光音響データを補正し、光音響画像を再度生成する。
【0041】
図7は超音波画像を示し、図8は暫定的に生成された光音響画像を示す。光音響画像における測定対象物は血管部分であるとする。血管部分は、図7に示す超音波画像と、図8に示す光音響画像との双方に現れている。ずれ量検出手段19は、例えば光音響画像を超音波画像に対して所定範囲内で深さ方向に1画素(時間方向に1時刻)ずつずらしつつ、超音波画像の画素値と光音響画像の画素値との差の総和を、両画像間の相関として算出する。この相関は、超音波画像に含まれる血管部分と、光音響画像に含まれる血管部分との位置が重なるずらし量のときに、最大値を取ることになると考えられる。ずれ量検出手段19は、相関値が最大となるときのずらし量を、ずれ量として検出する。
【0042】
図9は、再生成された光音響画像を示す。図8に示す暫定的に生成された光音響画像では、例えば遅延加算において、本来の位置からずれた位置に基づく遅延時間で各素子のデータが加算されるため(図6参照)、血管部分がぼけた画像となっている。本実施形態では、第2の光音響画像構築手段20において、超音波画像と光音響画像とのずれの分だけ時間軸(深さ方向の位置)を補正し、光音響データに基づいて光音響画像の生成をやり直す。このようにすることで、光照射のトリガの出力から実際に光が照射されるまでの時間にばらつきが生じたときでも、光音響発生源の深さ方向の位置ずれを補正することができる。また、光音響発生源の位置を補正した状態で光音響画像の構成を再度行うことにより、暫定的に生成した光音響画像に対して画像品質を向上できる。
【0043】
ここで、光音響画像と超音波画像とを重畳して(合成して)、或いは並べて表示することを考えると、位置ずれだけを問題とするのであれば、第1の光音響画像構築手段17で生成された光音響画像(図8)をずれの分だけ位置補正して超音波画像と重ねてやればよい。しかしながら、第1の光音響画像構築手段17で生成された光音響画像は誤った位置に基づく画像生成が行われているため、単に位置を合わせるだけでは、ぼけた光音響画像と超音波画像と合成されることになる。本実施形態では、光音響信号の時間軸を検出されたずれの分だけ補正して再生成しているため、光音響データを補正して光音響画像の生成をやり直すため、例えば超音波画像と光音響画像とを合成して表示する際に、本来の位置に基づいて生成された画像品質が高い光音響画像と超音波画像とを合成することができる。
【0044】
なお、上記の実施形態の説明では、光音響画像の生成手法として遅延加算法及びCBP法を説明したが、光音響画像の生成手法は特に限定されない。例えば第1の光音響画像構築手段17及び第2の光音響画像構築手段20が、ハフ変換法により光音響画像を生成するものであってもよい。あるいは、第1の光音響画像構築手段17及び第2の光音響画像構築手段20が、フーリエ変換法により光音響画像を生成するものであってもよい。
【0045】
続いて、本発明の第2実施形態を説明する。図10は、本発明の第2実施形態の光音響画像診断装置を示す。本実施形態の光音響画像診断装置10aは、図1に示す第1実施形態の光音響画像診断装置10の構成に加えて、特徴点抽出手段23を備える。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0046】
特徴点抽出手段23は、超音波画像から所定の特徴点を抽出し、特徴点画像を生成する。特徴点抽出手段23は、例えば超音波画像から血管部分に該当する特徴点を抽出し、抽出した血管部分から成る血管画像を特徴点画像として生成する。ずれ量検出手段19は、超音波画像から特徴点が抽出された特徴点画像と光音響画像とに基づいて、両画像間のずれ量を検出する。ずれ量検出手段19は、例えば特徴点画像と光音響画像との相対的な位置をずらしつつ、両画像間の相関を求め、求めた相関に基づいて画像間の位置のずれ量を検出する。
【0047】
ずれ量検出後の動作は、第1実施形態と同様である。すなわち、第2の光音響画像構築手段20にて、検出されたずれの分だけ光音響信号を補正して光音響画像を再生する。本実施形態においても、第1実施形態で得られる効果と同様な効果を得ることができる。すなわち、測定対象物を本来の位置に表示できると共に、光音響画像の画像品質を向上できる。また、本実施形態では、例えば相関に基づいて超音波波画像と光音響画像とのずれ量を検出する際に、比較の対象を絞ったうえで、画像間のずれ量を検出することができる。例えば光音響画像として画像化される部分を特徴点として抽出することで、超音波画像(特徴点画像)と光音響画像とのずれ量を精度よく求めることができる。
【0048】
なお、上記各実施形態では、検出されたずれ量を用いた光音響画像の再生成を1度だけ行う例について説明したが、これには限定されない。例えば、光音響画像と超音波画像との間のずれ量の検出と、検出されたずれ量に基づく光音響画像の再生成とを複数回繰り返し行ってもよい。より詳細には、図4に示すフローチャートにおいて、ステップS8で第2の光音響画像構築手段20が光音響画像の生成を行った後にステップS7に戻り、戻ったステップS7において、ずれ量検出手段19が、第2の光音響画像構築手段20で生成された光音響画像と超音波画像とに基づいてずれ量を検出してもよい。その後、ステップS8に進んで、検出されたずれ量に基づいて光音響画像の生成をやり直す。この場合、例えばずれ量検出手段19で検出されたずれ量が所定のしきい値以下となったときにループ終了とすればよい。ずれ量の検出と光音響画像の再生成とを繰り返し行う場合、補正が進むにつれて光音響画像の画像品質が向上するため、ずれ量検出手段19において検出されるずれの誤差を減少させて再生成される光音響画像の画像品質を更に向上させることができる。
【0049】
上記各実施形態では、光音響画像と超音波画像(特徴点画像)との相関を算出することで画像間のずれ量を検出することとしたが、ずれ量検出の手法はこれには限定されない。例えば光音響画像診断装置内に、光音響画像と超音波画像とに互いに対応する比較ポイントを設定する比較ポイント設定手段を設け、ずれ量検出手段19が、超音波画像に対して設定された比較ポイントと、光音響画像に対して設定された比較ポイントとのずれ量を検出してもよい。比較ポイント設定手段は、例えば超音波画像と光音響画像との特徴解析を行い、その解析結果に従って比較ポイントを設定してもよい。あるいは比較ポイント設定手段は、ユーザに対して比較ポイントの設定を促し、ユーザが指定したポイントを比較ポイントして設定してもよい。
【0050】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の光音響画像診断装置、画像生成方法、及びプログラムは、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
10:光音響画像診断装置
11:超音波探触子
12:AD変換手段
13:トリガ制御手段
14:レーザ光源
15:信号処理手段
16:モード切替手段
17、20:光音響画像構築手段
18:超音波画像構築手段
19:ずれ量検出手段
21:画像選択手段
22:画像表示手段
23:特徴点抽出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波画像を生成する超音波画像構築手段と、
被検体内に照射された光により生じた光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像構築手段と、
前記超音波画像と前記光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出するずれ量検出手段とを備え、
前記光音響画像構築手段が、前記検出されたずれに基づいて前記光音響画像を再生成するものであることを特徴とする光音響画像診断装置。
【請求項2】
前記光音響画像構築手段が、前記光音響信号の時間軸を前記ずれ量検出手段で検出された時間軸方向のずれの分だけ補正して前記光音響信号の再生成を行うものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響画像診断装置。
【請求項3】
前記ずれ量検出手段で検出されたずれが所定のしきい値以下になるまで、前記光音響画像の再生成と前記ずれの検出とを繰り返し行うものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光音響画像診断装置。
【請求項4】
前記ずれ量検出手段が、前記超音波画像と前記光音響画像との相関を求め、該求めた相関に基づいて前記ずれ量を検出するものであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の光音響画像診断装置。
【請求項5】
前記超音波画像から所定の特徴点を抽出して特徴点画像を生成する特徴点抽出手段を更に備え、前記ずれ量検出手段が、前記特徴点画像と前記光音響画像との相関を求め、該求めた相関に基づいて前記ずれ量を検出するものであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の光音響画像診断装置。
【請求項6】
前記特徴点抽出手段が、前記超音波画像から血管部分に該当する特徴点を抽出し、該抽出された血管部分から成る血管画像を前記特徴点画像として生成するものであることを特徴とする請求項5に記載の光音響画像診断装置。
【請求項7】
前記ずれ量検出手段が、前記超音波画像に対して設定された比較ポイントと、前記光音響画像に対して設定された、前記超音波画像における比較ポイントに対応する比較ポイントとのずれ量を検出するものであることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の光音響画像診断装置。
【請求項8】
被検体内に出力された超音波に対する反射音響信号に基づいて超音波画像を生成するステップと、
被検体内に照射された光により生じた光音響信号を取得し、該取得した光音響信号に基づいて光音響画像を生成するステップと、
前記超音波画像と前記光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出するステップと、
前記検出されたずれに基づいて前記光音響画像を再生成するステップとを有することを特徴とする光音響画像生成方法。
【請求項9】
コンピュータに、
被検体内に出力された超音波に対する反射音響信号に基づいて超音波画像を生成する手順と、
被検体内に照射された光により生じた光音響信号を取得し、該取得した光音響信号に基づいて光音響画像を生成する手順と、
前記超音波画像と前記光音響画像とに基づいて、両画像間の時間軸方向のずれ量を検出する手順と、
前記検出されたずれに基づいて前記光音響画像を再生成する手順とを実行させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−75511(P2012−75511A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221235(P2010−221235)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】