免疫したゼノマウス(XenoMouse)に由来するヒト抗体
【課題】ヒトの治療およびインビボでの診断において免疫原になりにくい、ヒト抗体を産生する方法の提供。
【解決手段】抗原投与に応答して完全なヒト抗体を産生するように改変された、内因性の遺伝子座を欠損しているトランスジェニック動物に、特異的な抗原を投与することにより、この抗原に対する、単離された完全なヒト抗体を調製する。続いてさまざまな操作を行なうことにより、抗体そのものまたはその類似体を得ることができる。
【解決手段】抗原投与に応答して完全なヒト抗体を産生するように改変された、内因性の遺伝子座を欠損しているトランスジェニック動物に、特異的な抗原を投与することにより、この抗原に対する、単離された完全なヒト抗体を調製する。続いてさまざまな操作を行なうことにより、抗体そのものまたはその類似体を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、免疫学の分野、特に、抗体の産生に関する。より具体的には、所望の抗体に対応する抗原を用いてトランスジェニック動物を免疫する段階を含む方法によって、該抗体を産生させることに関する。トランスジェニック動物は、内因性の抗体ではなく、ヒト抗体を産生するように改変されている。
【背景技術】
【0002】
先行技術
参照として本明細書に組み入れられる、1994年2月3日に発行された特許文献1において、抗原投与に応答して、内因性の抗体ではなく完全なヒト抗体を産生するように改変された、ヒト以外のトランスジェニック動物の作出について詳しく説明されている。要約すると、トランスジェニック宿主動物において、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする内因性の遺伝子座を不活化して、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子座をゲノムの中に挿入する。一般に、所望の改変形質をすべて備える動物は、改変すべき形質のすべてには足りない形質を有する中間的な動物を交配育種することによって得られる。本明細書で説明する好ましい態様におけるヒト以外の動物はマウスである。したがって、特に免疫原を投与したときに、これらの抗原に免疫特異的な、マウスの抗体でなく完全なヒト抗体を含む、ヒトの可変領域を有する抗体を産生するマウスについて説明する。
【0003】
このようなトランスジェニック動物が作出されれば、完全なヒト抗体を作製するための新しい方法を開発できるようになる。治療および診断に用いるためには、さまざまな免疫特異性を有する抗体が望ましい。従来の技術においてはヒト以外の宿主動物によって産生される抗体に特徴的な構造を有する免疫グロブリンが産生されるため、ヒトの治療およびインビボでの診断における使用を目的とする抗体は特に問題があった。このような抗体はヒトに用いると、免疫原になりやすい。
【0004】
上記の特許文献1で説明されているように、免疫原応答性のあるヒト以外のトランスジェニック動物が得られれば、ヒトを宿主に用いる必要なくヒト抗体を簡便に産生することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】PCT出願国際公開公報第94/02602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の開示
本発明は、少なくとも一つの工程に所望の抗原でヒト以外のトランスジェニック動物を免疫することが含まれる、ヒト抗体を産生する方法を提供することを目的とする。改変された動物は、内因性の抗体を産生できなくなるが、その代わりに、完全なヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。産生された抗体は、動物から直接的にまたはその動物由来の不死化B細胞から採取することができる。または、ヒトの可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を、抗体を直接採取するために回収し発現させるかまたは例えば一本鎖Fv分子のような抗体の類似体を得るために改変することができる。
【0007】
このように、本発明は一つの局面において、免疫応答を刺激するような条件の下で、ヒト以外の動物を抗原で免疫することを含む方法によって、特定の抗原に対する完全なヒト免疫グロブリンを産生する方法または該免疫グロブリンの類似体を産生するための方法に関する。ヒト以外の動物は、内因性の免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を実質的に産生することができないが、ヒトの可変領域および定常領域を両方とも有する免疫グロブリンを産生できるという特徴を有する。免疫応答が起きると、この動物は、抗原に特異的でかつ完全にヒト型である免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。望ましい特異性を有するヒト免疫グロブリンを、動物から、例えば血清から直接回収することができ、または動物から初期B細胞を採取して不死化させることができる。不死化したB細胞はヒト抗体の供給源として直接用いることができ、また、不死化したB細胞または免疫した動物の血液もしくはリンパ組織(脾臓、扁桃、リンパ節、骨髄)の初期B細胞から、抗体をコードする遺伝子を調製して、免疫グロブリンまたはその類似体を産生するために、改変するかまたは改変せずに、組換え宿主の中で発現させることができる。さらに、免疫した動物によって産生される免疫グロブリンのレパートリーをコードする遺伝子を用いて、望ましい親和性をもたらす可変領域をスクリーニングすることが可能な免疫グロブリンのライブラリーを作製することができる。望ましい特徴を有するライブラリーからのクローンは、標準的な組換え技術を用いて望ましい特徴を有する抗体またはその類似体を作出するために、所望の可変領域をコードする塩基配列の供給源としてさらなる操作に用いることができる。
【0008】
別の局面において、本発明は、上記の動物に由来する、ヒト以外の不死化したB細胞系に関する。さらに別の局面において、本発明は、望ましい特異性を有するヒト免疫グロブリンまたは同じ特異性を示すその類似体のいずれかをコードする遺伝子が含まれるように改変した組換え宿主細胞を提供することを目的とする。
【0009】
さらに別の局面において、本発明は、上記の方法によって調製された抗体またはその類似体およびそれらを産生するための組換え物質を提供することを目的とする。
【0010】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書に示す特定の抗原に対して免疫特異的な抗体および同様の免疫特異性を有する類似体、ならびにこれらの抗体を産生するのに有用な組換え物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕 所望の抗原に特異的なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための、以下の段階を含む方法:
免疫応答を刺激しそれにより該抗原に特異的な免疫グロブリンを分泌するB細胞をヒト以外の動物で産生させるような条件下で、内因性の免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を実質的に産生できないがヒト免疫グロブリンを産生することができる該動物に、該抗原またはその免疫原部位を投与する段階、および
該免疫グロブリンまたは類似体を回収する段階。
〔2〕 回収段階に、動物からポリクローナル免疫グロブリンまたは類似体を回収することが含まれる、〔1〕記載の方法。
〔3〕 回収段階に以下の段階が含まれる、〔1〕記載の方法:
抗原を用いて免疫した動物のB細胞を不死化する段階、その結果できた不死化細胞を、該抗原に特異的な免疫グロブリンを分泌するものを得るためにスクリーニングする段階、および
a)該不死化B細胞によって分泌される免疫グロブリンを回収する段階、または
b)不死化B細胞から少なくとも免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、選択的には該遺伝子を改変し、
免疫グロブリンもしくは類似体を産生するために、該遺伝子もしくはその改変遺伝子を発現させ、
該免疫グロブリンもしくは類似体を回収する段階。
〔4〕 回収段階に以下の段階が含まれる、〔1〕記載の方法:
動物の初期B細胞から免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収する段階、
免疫グロブリンを発現する該遺伝子のライブラリーを作製する段階、
抗原にとって望ましい親和性を有する免疫グロブリンを得るために該ライブラリーをスクリーニングする段階、
免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収する段階、
免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために、回収した該遺伝子を発現させる段階、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収する段階。
〔5〕 〔1〕記載の方法によって産生される免疫グロブリンまたは類似体をコードする塩基配列を含む組換えDNA分子。
〔6〕 コーディング塩基配列が、それを発現させることのできる調節配列に機能的に結合されている、〔5〕記載のDNA分子。
〔7〕 〔6〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔8〕 完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために該コーディング塩基配列が発現されるような条件下で、〔7〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、完全なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための方法。
〔9〕 〔3〕記載の方法によって調製される遺伝子または改変遺伝子に相当する塩基配列を含むDNA分子。
〔10〕 コーディング塩基配列が、それを発現させることのできる調節配列に機能的に結合されている、〔9〕記載のDNA分子。
〔11〕 〔9〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔12〕 完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために該コーディング塩基配列が発現されるような条件下で、〔11〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、完全なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための方法。
〔13〕 〔4〕記載の方法によって調製される、望ましい親和性を有するヒト免疫グロブリンをコードする塩基配列を含むDNA分子。
〔14〕 コーディング塩基配列が、それを発現させることのできる調節配列に機能的に結合されている、〔13〕記載のDNA分子。
〔15〕 〔13〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔16〕 完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために該コーディング塩基配列が発現されるような条件下で、〔15〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、完全なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための方法。
〔17〕 〔3〕の記載に従って調製される所望の抗原に対して完全なヒト免疫グロブリンを分泌する不死化B細胞。
〔18〕 〔17〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、免疫グロブリンまたは類似体を産生するための方法。
〔19〕 〔1〕記載の方法によって産生される、完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体。
〔20〕 所望の抗原が以下からなる群より選択される、〔19〕記載の免疫グロブリンまたはその類似体:
CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドB7.1、B7.2、B73、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、CDw52(キャンパス(Campath)抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、ならびにTCRからなる群より選択される白血球マーカー、
MHCクラスIまたはII、ルイスY抗原、SLex、SLey、SLea、およびSLebからなる群より選択される組織適合性抗原、
VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、αVβ3、LFA-1、Mac-1、p150,95、αvβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、ασβ4、αvβ5、αvβ6、およびαvβ7からなる群より選択されるインテグリン、
L-セレクチン、P-セレクチン、およびE-セレクチン、ならびにそれらのカウンターレセプターであるVCAM-1、ICAM-1、ICAM-2、およびLFA-3からなる群より選択されるセレクチン、
IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15からなる群より選択されるインターロイキン、
IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15Rからなる群より選択されるインターロイキンレセプター、
PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8からなる群より選択されるケモカイン、
TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、PTHrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(F3F−1)、ヒト・ラミニン、およびガストリン解離ペプチド(GRP)からなる群より選択される増殖因子、
TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、およびその他の造血レセプターからなる群より選択される増殖因子レセプター、
IFNCαR、IFNβR、およびIFNλRからなる群より選択されるインターフェロンレセプター、
IgE、FceRI、およびFCERIIからなる群より選択されるIgおよびそのレセプター、
her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリンからなる群より選択される腫瘍抗原、
ハウスダストダニ抗原、lol p1(草)抗原、およびウルシオールからなる群より選択されるアレルゲン、
CMV糖蛋白質B、H、およびgCIII、HIV-1のエンベロープ糖蛋白質、RSVのエンベロープ糖蛋白質、HSVのエンベロープ糖蛋白質、HPVのエンベロープ糖蛋白質、肝炎ファミリーの表面抗原からなる群より選択されるウイルス蛋白質、
シュードモナスの内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン(osteopontin/uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒コノトキシン(conotoxin)からなる群より選択される毒素、
補体C3b、補体C4a、補体C4b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン結合増殖阻害因子からなる群より選択される血液因子、ならびに
コレステロールエステル転移蛋白質、細胞膜結合基質メタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される酵素。
〔21〕 所望の抗原が、ヒトIL-6、ヒトIL-8、ヒトTNFα、ヒトCD4、ヒトL-セレクチン、ヒトgp39、ヒトIgE、ヒトαVβ3、ヒトフィブロシン(F3F−1)、ヒト・ラミニン、ヒトPTHrp、および破傷風毒素C(TTC)からなる群より選択される、〔14〕記載の免疫グロブリンまたは類似体。
〔22〕 〔19〕〜〔21〕記載の免疫グロブリンまたは類似体をコードする塩基配列を含む組換えDNA分子。
〔23〕 コーディング塩基配列が、好ましくはそれを発現させることのできる調節配列に結合されている、〔22〕記載のDNA分子。
〔24〕 〔23〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔25〕 所望の抗原に特異的な免疫グロブリンまたは類似体を産生するために該塩基配列が発現されるような条件下で、〔24〕記載の細胞または細胞系を培養すること、および免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、所望の抗原に特異的な免疫グロブリンまたは類似体を産生するための方法。
〔26〕 遷移状態類似体(transition state mimics)、白血球マーカー、組織適合性抗原、接着分子、インターロイキン、インターロイキンレセプター、ケモカイン、増殖因子、増殖因子レセプター、インターフェロンレセプター、免疫グロブリンおよびそのレセプター、腫瘍抗原、アレルゲン、ウイルス蛋白質、毒素、血液因子、酵素、ならびにその他の抗原であるガングリオシドGD3、ガングリオシドGB2、LMP1、LMP2、好酸球主要塩基性蛋白質、好酸球カチオン蛋白質、pANCA、アマドリ蛋白質、IV型コラーゲン、糖化脂質、λインターフェロン、A7、P-糖蛋白質、Fas(AFO-1)、および酸化LDLからなる群より選択される抗原と特異的に免疫反応する、ヒト抗体またはその類似体。
〔27〕 白血球マーカーが、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドB7.1、B7.2、B7.3、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、CDw52(キャンパス(Campath)抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、ならびにTCRからなる群より選択され、
組織適合性抗原が、MHCクラスIまたはII、ルイスy抗原、SLex、SLey、Slea、およびSLebからなる群より選択され、
接着分子が、VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、αVβ3、およびLFA-1、Mac-1、p150,95、αvβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、ασβ4、αvβ5、αvβ6、およびαvβ7、L-セレクチン、P-セレクチン、およびE-セレクチン、ならびにそれらのカウンターレセプターであるVCAM-1、ICAM-1、ICAM-2、およびLFA-3からなる群より選択され、
インターロイキンが、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15からなる群より選択され、
インターロイキンレセプターが、IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15Rからなる群より選択され、
ケモカインが、PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8からなる群より選択され、
増殖因子が、TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、PthrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(F3F−1)、ヒト・ラミニン、およびガストリン解離ペプチド(GRP)からなる群より選択され、
増殖因子レセプターが、TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、およびその他の造血レセプターからなる群より選択され、
インターフェロンレセプターが、IFNαR、IFNβR、およびIFNγRからなる群より選択され、
Igおよびそのレセプターが、IgE、FceRI、およびFCeRIIからなる群より選択され、
腫瘍抗原が、her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリンからなる群より選択され、
アレルゲンが、ハウスダストダニ抗原、lol p1(草)抗原、およびウルシオールからなる群より選択され、
ウイルス蛋白質が、CMV糖蛋白質B、H、およびGCIII、HIV-1のエンベロープ糖蛋白質、RSVのエンベロープ糖蛋白質、HSVのエンベロープ糖蛋白質、EBVのエンベロープ糖蛋白質、VZVのエンベロープ糖蛋白質、HPVのエンベロープ糖蛋白質、肝炎ファミリーの表面抗原からなる群より選択され、
毒素が、シュードモナスの内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン(osteopontin/uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒からなる群より選択され、
血液因子が、補体C3b、補体C5a、補体C5b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン結合増殖阻害因子からなる群より選択され、
酵素が、コレステロールエステル転移蛋白質、膜結合基質メタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される、〔26〕記載の抗体またはその類似体。
〔28〕 所望の抗原が、ヒトIL-6、ヒトIL-8、ヒトTNFα、ヒトCD4、ヒトL-セレクチン、ヒトgp39、ヒトIgE、および破傷風毒素C(TTC)からなる群より選択される、〔26〕記載の抗体またはその類似体。
〔29〕 所望の抗原がヒトIL-6である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔30〕 所望の抗原がヒトIL-8である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔31〕 所望の抗原がヒトTNFαである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔32〕 所望の抗原がヒトCD4である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔33〕 所望の抗原がヒトL-セレクチンである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔34〕 所望の抗原がヒトgp39である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔35〕 所望の抗原が破傷風毒素C(TTC)である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔36〕 所望の抗原がヒトIgEである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔37〕 所望の抗原がヒトαVβ3である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔38〕 所望の抗原がヒトフィブロシンである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔39〕 所望の抗原がヒトPTHrPである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔40〕 アゴニストまたは触媒である、〔26〕記載の抗体またはその類似体。
〔41〕 〔26〕〜〔40〕のいずれかに記載の抗体をコードする組換えDNA分子。
〔42〕 発現を可能にする調節配列に機能的に結合されている抗体またはその類似体をコードする塩基配列を有する、〔26〕〜〔40〕のいずれかに記載の抗体またはその類似体のための発現システムを含む組換えDNA分子。
〔43〕 〔42〕記載のDNA分子を含むように改変された組換え宿主細胞。
〔44〕 コード配列が発現されるような条件下で、〔43〕記載の細胞を培養すること、および産生された抗体または類似体を回収することを含む、抗体またはその類似体を産生するための方法。
〔45〕 ATCCアクセッション番号74367で識別されるyH1Cヒト重鎖YAC。
【0012】
発明の実施の形態
一般に、本発明に係る方法は、ヒト型の免疫特異的試薬が必要とされる抗原を、内因性の抗体ではなくヒト抗体を産生することができるよう遺伝的に改変されたヒト以外のトランスジェニック動物に投与することを含む。典型的には、この動物は、ゲノム中の内因性の重鎖および/またはカッパ軽鎖が不活化するように改変されているため、これらの内因性の遺伝子座は、抗原に応答して免疫グロブリンをコードする遺伝子を生成するために必要な再編成ができない。さらにこの動物は、少なくとも1個のヒト重鎖遺伝子座および少なくとも1個のヒト軽鎖遺伝子座をそのゲノムの中に安定的に備えており、それによって投与された抗原に応答してこの抗原に対する免疫特異的なヒト可変領域をコードする遺伝子を提供するために、ヒトの遺伝子座を再編成することができる。
【0013】
本発明の方法において有用な動物を構築するための詳細な説明は、上記のPCT出願国際公開公報第94/02602号で提供されている。本発明に関するYACの例は、例えば、「グリーン(Green)ら、Nature Genetics 7:13〜21 (1994)」で参照することができる。ゼノマウス(登録商標)の好ましい態様において、ヒト重鎖YAC、yH1C(1020 kb)およびヒト軽鎖YAC、yK2(880 kb)が用いられる。yH1Cには、870 kbのヒト可変領域、DおよびJHの全領域、ヒトμ、δおよびγ2の定常領域、ならびにマウス3'エンハンサーが含まれる。yK2には、650 kbの可変領域(Vκ)付近のヒト・カッパ鎖、Jκ全領域、ならびにCκおよびカッパ欠失因子(κde)を含むその隣接配列が含まれる。また、いずれのYACも、YACベクターのアーム上にヒトHPRT選択マーカーを含む。yH1CおよびyK2の構築は、当技術分野において周知の方法によって行った。要約すると、YACライブラリーをスクリーニングしてヒトの免疫グロブリン遺伝子座のセグメントを有するYACクローンを同定し(カルバーテセン(Calbertsen)ら、PNAS 87:4256 (1990))、標準的な技術(メンデス(Mendez)ら、Genomics 26:294〜307 (1995))を用いた組み換えによって重複するクローンを結合させた。yH1CおよびyK2を組み立てるための手順の詳細を、それぞれ、図1および図2に示す。
【0014】
yK2は、例えば、「バーク(Burke)ら、Science 236:806〜812 (1987)」、「ブラウンシュタイン(Brownstein)ら、Science 244:1348〜1351 (1989)」、 および「バーク(Burke)ら、Methods in Enzymology 194:251〜270 (1991)」に開示されているオルソン(Olson)ライブラリー由来のクローンA80-C7、A210-F10およびA203-C6から構築した。
所望の抗体を産生するための第一の段階は、抗原の投与である。この投与のための技術は常法であり、それには抗原そのものの性質に応じた適切な免疫化プロトコールおよび処方が含まれる。免疫原性を増強するために担体と共に抗原を投与すること、および/またはアジュバントを含む処方剤を用いること、および/または複数回の注射で投与すること、および/または免疫する経路を様々に変えることが必要となる可能性もある。このような技術は標準的なものであり、これらの最適化は、免疫特異的試薬が必要とされている特定の抗原の特徴に依存する。
【0015】
本明細書で用いられる「免疫特異的試薬」という語には、免疫グロブリンおよびその類似体が含まれる。「類似体」という語は、本明細書において特別な意味を有する。この語は、免疫特異性の原因となる、免疫グロブリンの完全にヒトに由来する部位を含む部分を意味する。特に、適当な立体配座をとるためには、フレーム領域(Fr)の十分な部位とともに、相補性決定領域(CDR)が必要とされる。典型的な免疫特異的な抗体の類似体には、F(ab")2、Fab'、およびFab領域が含まれる。例えば、適当な免疫特異性を有する一本鎖Fv類似体を得るための、可変領域の改変型が知られている。このようなFv構築の概説は、例えば、「ヒューストン(Huston)ら、Methods in Enzymology 203:46〜63 (1991)」に記載されている。ある抗体の可変領域と他の抗体の可変領域とを結合させることによって、複数の免疫特異性を有する抗体類似体を構築することも可能である。
【0016】
完全にヒト型であるという特徴を有する可変領域を、毒性、生物学的機能、別の結合特異性などを付与するさまざまな別の基質に結合させることもできる。本発明の方法によって産生される完全なヒト可変領域を含む部分には、一本鎖の融合蛋白質、ペプチド結合以外の共有的方法によって結合された分子、および凝集した分子が含まれる。共有的または非共有的に付加的分子に結合した可変領域を含む類似体の例として、以下の一覧の例が例示として含まれるが、これらに限定はされない。トラウネッカー(Traunecker), A.ら(Int. J. Cancer Supp. (1992) Supp 7:51〜52)は、CD3に対するFv領域を、可溶性CD4またはOVCAおよびIL-7などの他のリガンドに結合させた双特異的試薬のヤヌシン(janusin)について説明している。同様に、本発明の方法によって産生された完全なヒト可変領域からFv分子を構築して、引用された論文に示されているような代替的リガンドと結合させることもできる。ヒギンズ(Higgins), P.J.ら(J. Infect. Disease (1992)166:198〜202)は、GP120のV3領域中の特異的配列に対する抗体に交叉結合するOKT3を含む異種結合抗体について説明している。このような異種結合抗体は、少なくとも本発明に係る方法によって産生される免疫グロブリン中に含まれるヒト可変領域を用いて構築することもできる。この他の双特異的抗体の例には、「ファンガー(Fanger), M.W.ら、Cancer Treat. Res. (1993) 68:181〜194」および「ファンガー(Fanger), M.W.ら、Crit. Rev. Immunol. (1992) 12:101〜124」に説明されているものが含まれる。従来の抗体を含むイムノトキシンである結合体については、当技術分野において広範に説明されている。このトキシンは、従来の結合技術によって抗体に結合させることも、または蛋白質の毒素部分を含むイムノトキシンを融合蛋白質として産生することもできる。本発明に係る類似体は、このようなイムノトキシンを得るのに関連した方法で用いることができる。このようなイムノトキシンの具体例は、バイヤーズら(Byers, B.S.ら、Senimars Cell BIol. (1991) 2:59〜70)およびファンガーら(Fanger, M.W.ら、Immunol. Today (1991)12:51〜54)によって説明されているイムノトキシンである。
【0017】
本発明に係る免疫グロブリンおよび類似体の中には、免疫特異性を有する抗原がシグナル伝達機能を果たす場合に、その抗原に対してアゴニスト活性を有するものがあることにも留意すべきである。したがって、例えば細胞表面レセプターに対して免疫特異的な、本発明に係る方法によって調製された抗体またはその類似体のサブセットは、このレセプターを有する細胞から内因性のリガンドによって誘導される応答に相当する応答を誘導することができる。さらに、化学反応の遷移状態を模倣する基質に免疫特異的な抗体またはその類似体は、触媒活性を有すると考えられる。このように、本発明に係る抗体および類似体のサブセットは、酵素活性を有する抗体として機能しうる。
【0018】
つまり、上記の類似体などのさまざまな類似体を提供するための既知の技術によって、本発明に係るトランスジェニック動物で産生される免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収することができ、完全にヒトの可変領域をコードする塩基配列を操作することができる。さらに、免疫特異的な領域を保持している結合体を提供するための標準的な結合技術を用いて、ヒトの可変領域を含む免疫グロブリン自体を改変することができる。
【0019】
このように、免疫グロブリン「類似体」は、ヒト由来であるという特徴と免疫特異性とを保持している本発明に係る抗体の部位を含む部分を指す。これらは、望ましい特異性を付与するのに十分なヒト可変領域を保持していると考えられる。
【0020】
上述のように、本発明に係る方法はすべて、適当な抗原をトランスジェニック動物に投与することを含む。抗体自体の回収または産生は、さまざまな方法で行うことができる。
【0021】
第一に、そして最も簡便なものとして、動物によって産生され血流中に分泌されるポリクローナル抗体を、既知の技術を用いて回収することができる。これらの抗体の精製物は、標準的な精製技術、好ましくはプロテインA、抗免疫グロブリン、または抗原自体によるアフィニティークロマトグラフィーを含む精製技術によって、もちろん容易に調製することができる。いずれの場合にも、免疫化に成功したか否かをモニターするために、ELISAおよびRIAなどの標準的な技術を用いて血清中の抗原についての抗体レベルをモニターする。
【0022】
いくつかの応用例では、抗体の可変領域のみが必要とされる。Fab'、Fab、またはF(ab")2部位を生成するために適当な試薬でポリクローナル抗血清を処理することにより、完全にヒト型である特徴を保持した組成物が生じる。例えば免疫グロブリンの免疫特異的な部位を放射性同位体などの検出試薬に結合させることを含む免疫診断法における使用にはこのような断片で十分である。
【0023】
または、本発明に係る方法において用いられたトランスジェニック動物から、または免疫に応答してこれらの動物によって提供される再構成された遺伝子に由来する不死化B細胞から、望ましい特徴を有する免疫グロブリンおよび類似体を生成することができる。
【0024】
このように、動物から直接的に抗体を回収する代わりに、典型的には脾臓から、また必要に応じて、末梢血のリンパ球またはリンパ節からB細胞を採取して、さまざまな技術の何れかを用いて、最も一般的にはコーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)(Nature 245:495 (1975))によって説明されている融合方法を用いて不死化することができる。次に、この結果できたハイブリドーマ(または、さもなければ不死化したB細胞)を単一コロニーとして培養することができ、望ましい特異性を有する抗体の分泌に関するスクリーニングをすることができる。上記で説明したように、スクリーニングには、抗体が完全にヒト型である特徴を有することを確認することが含まれる。例えば、以下の実施例で説明するように、ハイブリドーマの上清中のモノクローナル抗体が、抗原および抗ヒト定常領域の両方に結合するサンドイッチELISAを用いることができる。適当なハイブリドーマを選抜した後、再び慣習的な技術を用いて、所望の抗体を回収することができる。それらは、インビボまたはインビトロのいずれかで腹水を産生させるための慣習的な方法を用いて不死化したB細胞を培養することによって、大量に調製することができる。こうしてできたモノクローナル抗体調製物の精製は、不死化した各コロニーが単一の型の抗体しか分泌しないため、血清の場合よりも手がかからない。いずれの場合でも、培養培地中の他の蛋白質から抗体を単離するための標準的な精製技術を用いることができる。
【0025】
動物由来の不死化したB細胞の培養物からヒト免疫グロブリンを直接採取する代わりに、不死化した細胞を、この後に続く発現および/または遺伝子操作のための再構成された重鎖および軽鎖の遺伝子座の供給源として用いることができる。再構成された抗体遺伝子は、cDNAを作製するために、適当なmRNAから逆転写することができる。必要に応じて、重鎖定常領域を、異なるアイソタイプの領域と交換するかまたはすべて除去することができる。一本鎖Fv領域をコードさせるために、可変領域を結合することができる。1つ以上の標的に結合することができるよう、複数のFv領域を連結することができ、または重鎖および軽鎖のキメラの組合せを用いることができる。遺伝子材料がいったん入手できれば、所望の標的に結合する能力とヒト型である特徴とを保持する上記のような類似体を設計することは容易である。
【0026】
適当な遺伝子材料を入手し、必要に応じて類似体をコードするように改変したならば、最低でもヒトの重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列を含むコード配列を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされるベクターに含まれている発現システムの中に挿入することができる。下記で説明するように、このような宿主細胞として、さまざまなものを用いることができるが、効果的なプロセッシングのためには、哺乳動物の細胞が好ましい。この目的にとって有用な典型的な哺乳動物細胞系には、CHO細胞、293細胞、またはNSO細胞が含まれる。
【0027】
次に、宿主細胞を増殖させコード配列を発現させるのに適当な培養条件の下で改変した組換え宿主細胞を培養することにより、抗体またはその類似体の産生が行われる。次に、この培養物から抗体を回収する。発現システムは、産生された抗体が培地中に分泌されるように、シグナルペプチドを含むよう設計することが好ましいが、細胞内で産生させることも可能である。
【0028】
類似体を産生するための免疫グロブリン遺伝子の改変型を計画的に設計することに加えて、所望の抗原に対し多様な親和性を有する抗体のレパートリーを含むライブラリーを作製するために、ファージディスプレイ技術を利用することができる。このようなレパートリーを産生するために、免疫した動物のB細胞を不死化する必要はなく、初期B細胞をDNA源として直接用いることができる。例えば脾臓に由来するB細胞から得たcDNA混合物を用いて、例えば大腸菌にトランスフェクションしたファージディスプレイ・ライブラリーなどの発現ライブラリーを調製することができる。このようにして生じた細胞について、所望の抗原に対する免疫反応性を試験する。このようなライブラリーから高親和性ヒト抗体を同定するための技術は、「グリフィス(Griffiths), A.D.ら、EMBO J. (1994) 13:3245〜3260」、「ニシム(Nissim), A.ら、同上、692〜698」および「グリフィス(Griffiths), A.Dら、同上 12:725〜734」によって説明されている。最後に、抗原に対して望ましい程度の結合親和性をもたらすクローンをライブラリーから同定し、このような結合の原因となる産物をコードするDNAを回収して、標準的な組換え発現をするよう操作する。ファージディスプレイ・ライブラリーは、予め操作された塩基配列を用いて構築することもでき、同じ方式でスクリーニングすることもできる。一般的に、重鎖および軽鎖をコードするcDNAは、別個に供給されるかまたはファージライブラリー中で産生されるよう、Fv類似体を形成するように結合されている。
【0029】
次に、抗原に対して最も高い親和性を有する抗体および適当なクローンから回収した遺伝子材料について、ファージライブラリーをスクリーニングする。さらに何回かスクリーニングすることにより、最初に分離された抗体の親和性を高めることができる。その後、抗体の組換え体を作出するかまたは所望の類似体を形成するよう改変するために、上記で説明したような操作が用いられる。
【0030】
ファージディスプレイ技術とゼノマウス(登録商標)とを組み合わせることにより、これまでのファージディスプレイの応用例よりも、はるかに有意な利点が提供される。典型的には、ファージディスプレイによって高度なヒト抗体が生成されるように、ヒトの骨髄または末梢血リンパ球のいずれかから、バートンら(Burton, D.R.ら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:10134〜10137)によって説明されているようにして、組合せ抗体ライブラリーを調製する。この方法を用いて、バートンら(Burton, D.R.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:10134〜10137)、ゼベディーら(Zebedee, S.L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:3175〜3179)、およびバーバスIIIら(Barbas III, C.F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1991) 88:10164〜10168)によって説明されているように、ヒトの病原体に対して高い親和性を有する抗体を、感染した個体すなわち既に「免疫されている」個体から単離することが可能である。しかし、ヒト抗原に反応する抗体を生成するためには、合成ライブラリー(バーバス(Barbas) III, C.F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 89:4457〜4461;クレムリ(Crameri), A.ら、BioTechniques (1995) 88:194〜196)を作製するか、または自己免疫患者からのライブラリー(ラッポート(Rapport), B.ら、Immunol. Today (1995) 16:43〜49;ポートラノ(Portolano), S.ら、J. Immunol. (1993)151:2839〜2851;および、フォーゲル(Vogel), M.ら、Eur. J. Immunol. (1994) 24:1200〜1207)もしくは正常な個体からのライブラリーすなわち未免疫ライブラリー(グリフィス(Griffiths), A.D.ら、EMBO J. (1994) 13:3245〜3260;グリフィス(Griffiths), A.D.ら、EMBO J. (1993) 12:725〜734;パーソン(Persson), M.A.A.ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA (1991) 88:2432〜2436;グリフィス(Griffiths), A.D., Curr. Opin. Immunol. (1993)5:263〜267;フーゲンブーム(Hoogenboom), H.R.ら、Science (1992) 258:1313〜1314;およびニシム(Nissim), A.ら、EMBO J. (1994), 692〜698)のいずれかからライブラリーを調製する必要があった。典型的には、ヒト蛋白質に対する高親和性抗体をこの方法で単離するのは非常に困難であることが明らかになっている。周知のように、親和性が増大する(affinity maturation)ためには体細胞変異が必要であり、また体細胞変異は抗原によって誘発される。ゼノマウスにおいてヒト蛋白質で反復的に免疫化すると体細胞変異が起き、結果的には高親和性の抗体が得られる。これらの抗体をコードする遺伝子は、マークスら(Marks, J.D.ら、J. Mol. Biol. (1991) 581〜596)によって説明されているように、PCRによって容易に増幅することができ、標準的な選別技術(ウィンター(Winter), G.ら、Annu. Rev. Immunol. (1994) 12:433〜55;およびバーバス(Barbas) III, C.F.ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA (1991) 88:7978〜7982)によって免疫特異的な抗体が単離される。
【0031】
上記のように、標準的な組換え技術を用いて、典型的にはチャイニーズハムスターの卵巣細胞などの望ましい宿主細胞中で操作可能な発現システムを構築することによって、改変されたまたは改変されていない再構成遺伝子座を操作し、所望の免疫グロブリンまたは類似体を、標準的な組換え発現技術を用いて作出し、慣習的な方法を用いて回収および精製する。
【0032】
前記の処理法を抗体産生に応用することによって、これまでにヒト抗体が利用できなかった抗原に関するヒトの免疫特異的な試薬の調製が可能になった。上記の方法によって産生された免疫グロブリンおよびそれにより可能になった類似体により、解析、診断、研究、および治療で使用するための新しい組成物が提供される。当然、特定の利用は、調製された免疫グロブリンまたは類似体に依存する。一般に、本発明の組成物は、同じ抗原に対して誘発されたヒト以外の抗体に起因するものと同じような有用性を有すると考えられる。このような有用性には、例えば、精製のための親和性リガンドとしての使用、免疫アッセイの試薬としての使用、免疫結合体の成分としての使用、および適当な指標のための治療用試薬としての使用が含まれる。
【0033】
特に、インビボで治療用試薬または診断用試薬を用いる場合には、完全にヒト型である特徴を有する抗体またはその類似体を使用することが非常に有益である。これらの試薬は、ヒト以外の生物種から発生したものとしての特徴を有する抗体またはその類似体によって生じる望ましくない免疫応答を回避させる。抗体を「ヒト化」するための別の試みでは、完全にヒト型である特徴を有する試薬は得られなかった。例えば、マウスの可変領域とヒトの定常領域とを有するキメラ抗体は、容易に調製することができるが、しかし、当然、可変領域にはマウスの特徴が残っている。フレーム領域を形成するアミノ酸配列をコードする遺伝子を操作することによって可変領域を「ヒト化」するためのはるかに困難な処理法でも、免疫特異性を破壊せずに、典型的にはヒト以外の生物に由来するCDRを操作することができないため、望ましい結果は得られない。
【0034】
したがって、本発明に係る方法により、初めて、完全なヒト免疫グロブリンまたは完全にヒト型である特徴を有する免疫特異的な領域を含む類似体が提供される。
【0035】
本発明に係る方法によって、ヒト抗体およびヒト類似体を得られる抗原は多数ある。これらの抗原には、以下の一群が含まれるが、これらに限定はされない:
CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドであるB7.1、B7.2、B7.3、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドであるgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、Cdw52(キャンパス(Campath)抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、ならびにTCRなどの白血球マーカー、
MHCクラスIまたはII、ルイスY抗原、Slex、Sley、Slea、およびSlebなどの組織適合性抗原、
VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、LFA-1、Mac-1、αVβ3、およびp150,95などのインテグリンを含む接着分子、
L-セレクチン、E-セレクチン、およびP-セレクチンなどのセレクチン、ならびにそれらのカウンターレセプターであるVCAM-1、ICAM-2、およびLFA-3、
IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15などのインターロイキン、
IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15などのインターロイキンレセプター、
PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、IP-10、ENA-78、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8などのケモカイン(chemokine)、
TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、PTHrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(F3F−1)、ラミニン、およびガストリン解離ペプチド(GRP)などの増殖因子、
TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、および他の造血レセプターなどの増殖因子レセプター、
IFNαR、IFNβR、IFNγRなどのインターフェロンレセプター、
Ig、ならびに、IGE、FceRIおよびFceRIIなどのIgレセプター、
her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリンなどの腫瘍抗原、
ハウスダストダニ抗原、lol p1(草)抗原、およびウルシオールなどのアレルゲン、
CMV糖蛋白質B、H、およびgCIII、HIV-1のエンベロープ糖蛋白質、RSVのエンベロープ糖蛋白質、HSVのエンベロープ糖蛋白質、EBVのエンベロープ糖蛋白質、VZVのエンベロープ糖蛋白質、HPVのエンベロープ糖蛋白質、肝炎ファミリーの表面抗原などのウイルス蛋白質、
シュードモナスの内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン(osteopontin/uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒などの毒素、
補体C3b、補体C5a、補体C5b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン結合増殖阻害因子などの血液因子、
コレステロールエステル転移蛋白質、細胞膜結合基質メタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)などの酵素、ならびに
ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、LMP1、LMP2、好酸球主要塩基性蛋白質、PTHrp、エオシン好性カチオン蛋白質、pANCA、アマドリ(Amadori)蛋白質、IV型コラーゲン、糖化脂質、γインターフェロン、A7、P-糖蛋白質とFas(AFO-1)、および酸化LDLを含むその他の抗原。
【0036】
特に、好ましい免疫グロブリンおよび類似体は、ヒトIL-6、ヒトIL-8、ヒトTNFα、ヒトCD4、ヒトL-セレクチン、ヒトPTHrp、およびヒトgp39に関して免疫特異的な免疫グロブリンおよび類似体である。ヒトTNFαおよびヒトIL-6と免疫反応する抗体および類似体は、悪液質および敗血症性ショックならびに自己免疫疾患を治療する上で有用である。GP39またはL-セレクチンと免疫反応する抗体および類似体も、自己免疫疾患を治療または予防する上で効果的である。さらに、抗gp39は、対宿主性移植片疾患の治療、器官移植拒絶の予防、および糸球体腎炎の治療に有用である。L-セレクチンに対する抗体および類似体は、再潅流性外傷に関連した虚血の治療に有用である。PTHrpに対する抗体は、骨の病気および転移性癌の治療に有用である。特定の態様において、IL-8に対するヒト抗体を、IL-8に関連した病状または状態の治療または予防に用いてもよい。このような状態には、腫瘍の転移、再潅流外傷、肺浮腫、喘息、心筋梗塞などの虚血性疾患、炎症性腸疾患(クローン病(Crohn's disease)および潰瘍性大腸炎など)、脳炎、ブドウ膜炎、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、脈管炎など)、変形性関節炎、痛風性関節炎、腎炎、腎不全、皮膚科症状(炎症性皮膚炎、乾癬、脈管炎性蕁麻疹およびアレルギー性脈管炎など)、網膜ブドウ膜炎、結膜炎、神経障害(発作、多発性硬化症および髄膜炎)、急性肺損傷、成人呼吸促進症候群(ARDS)、敗血症性ショック、細菌性肺炎、白血球漏出関連疾患、CNS炎症性障害、多器官不全、アルコール性肝炎、抗原-抗体複合体媒介性疾患、肺の炎症(胸膜炎、アヴェオリティス(aveolitis)、脈管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症)、ベーチェット病、ヴェーゲナー肉芽腫症、および脈管炎性症候群が含まれる。
【0037】
上記の抗体および類似体を用いて治療することができる典型的な自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、乾癬、シェーグレン硬皮症、混合結合組織病、皮膚筋炎、多発性筋炎、ライター症候群、ベーチェット病、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、多発性硬化症、重症筋無力症、および天疱瘡が含まれる。
【0038】
治療に応用するためには、薬学的に許容される投与形態で抗体を投与する。有効成分を所望の作用部位に到達させる方法であればいかなる方法によって投与してもよい。例えば、ボーラスとしてまたは一定時間継続する点滴によって、静脈内に、筋肉内に、皮下に、関節内に、滑膜内に、包膜内に、経口で、局所的または吸入経路によって投与することができる。抗体は、一回の投与としてもよいし、一連の処理として投与してもよい。
【0039】
非経口投与のために抗体を、溶液、懸濁液、乳液、または凍結乾燥粉末として、薬学的に許容される非経口賦形剤とともに処方することができる。抗体が、経口投与に適している場合、この処方剤に、例えば澱粉、セルロース、二酸化珪素、さまざまな糖、炭酸マグネシウム、またはリン酸カルシウムなどの適当な添加剤を含ませることができる。適当な賦形剤については、当技術分野における標準的な参考文献である最新版のレミントンの薬剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol)に記載されている。
【0040】
病気を予防または治療するための抗体の適当な用量は、特定の抗体の薬物速度論的特徴、投与の方式および経路、受容者の年齢、体重および健康状態、治療を受けるべき症状のタイプ、および症状の重さと経過、治療の頻度、同時に行われる治療、ならびに所望の生理学的効果などの既知の要素に依存する。下記の実施例は、例示を目的としたものであり、本発明を制限するものではない。
【0041】
これらの実施例において、ゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)と命名されたマウスを、初回免疫に用いる。ゼノマウスは、上記の参照文献であるPCT出願国際公開公報第94/02602号で詳細に説明されている。各抗原に対する適切な免疫化プロトコールは、下記の具体的な実施例で説明されている。標準的なELISAの方法を用いて、それぞれの場合に、免疫したゼノマウスの血清(または不死化したB細胞の上清)を希釈して、抗原特異的なヒト抗体のために用いた。この方式では、免疫するために用いた抗原を、微量滴定用プレートのウェルに固定化した。このプレートを洗浄し、ブロッキングしてから、血清(または上清)を段階希釈して加え、1時間〜2時間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)に結合させた抗ヒトκ鎖抗体、抗ヒトμ鎖抗体、または抗ヒトγ鎖抗体を加えて1時間インキュベートし、ヒト抗体の特徴を有する結合抗体を検出した。再び洗浄した後、発色試薬のo-フェニレンジアミン(OPD)基質および過酸化水素を加えてから30分後に、微量滴定用プレート読み取り器を用いて492 nmでプレートを測定した。
【0042】
別記しないかぎり、プレートコーティング用緩衝液(0.1 M炭酸緩衝液、pH 9.6)を用いて、抗原をコートした。使用した解析ブロッキング用緩衝液は、0.5%BSA、0.1%トウィーン(Tween)20、および0.01%チメロサールを含むPBSであり、発色のために用いた基質緩衝液は、クエン酸7.14 g/l、二塩基性リン酸ナトリウム17.96 g/lを含み、発色液(使用直前に調製される)は、10 mlの基質緩衝液にOPD 10 mgおよび過酸化水素 5 mlを加えたものであり、停止液(発色を停止するために用いられる)は2 M 硫酸であった。洗浄液は、0.05%トウィーン(Tween)20含有PBSであった。
【0043】
〔実施例1〕
ヒトIL-6に対するヒト抗体
8週〜20週齢のゼノマウスを3匹から5匹、週齢を合わせて、フロイント不完全アジュバントに乳状化した50μgのヒトIL-6を初回免疫として腹腔内投与することにより免疫し、以後の注射では、完全フロイントアジュバントに入れて免疫した。マウスは、2〜3週間の間隔で6回注射した。血清の滴定濃度は、二回目の投与後に決定し、その後も各投与後に決定した。注射後6日〜7日目に、後延髄叢から採血した。この血液は、血清を分離して採集する前に室温に約2時間おいて凝固させてから、4℃で少なくとも2時間インキュベートした。
【0044】
上記で説明したようにして、コーティング用緩衝液中2μg/mlの組換えヒトIL-6 100μl/ウェルを用いてELISAを行なった。そして、プレートを4℃で一晩または37℃で2時間インキュベートしてから、洗浄用緩衝液で3回洗浄した。次に、100μl/ウェルのブロッキング用緩衝液を加えて、室温で2時間インキュベートし、さらに3回洗浄した。
【0045】
そして、50μl/ウェルの希釈した血清試料(ならびに、陽性対照および陰性対照)をプレートに加えた。次に、プレートを室温で2時間インキュベートし、再び3回洗浄した。
【0046】
洗浄後、HRPに結合したマウス抗ヒトμ鎖抗体 100μl/ウェルを1/2,000に、またはHRPに結合したマウス抗ヒトκ鎖抗体 100μl/ウェルを1/2,000に、ブロッキング用緩衝液で希釈して加えた。室温で1時間インキュベートした後、このプレートを3回洗浄して、OPD基質で10分〜25分発色させた。そして、50μl/ウェルの停止液を加えて、ELISAプレート読み取り器を用い492nmで結果を読み取った。6回注射した後のゼノマウスから採取した血清を希釈して得られた希釈曲線を図3に示す。図3のデータから、抗ヒトκおよび抗ヒトμと免疫反応する抗IL-6の産生は、1:1,000以上の血清希釈度で検出されることが示される。
【0047】
〔実施例2〕
ヒトTNFαに対するヒト抗体
ヒトIL-6の代わりに組換えヒトTNFα(1回の注射につき5μg)を用いたこと以外は、実施例1で説明したようにして、免疫および血清の調製を行なった。ELISAプレートの最初のコーティングに、コーティング用緩衝液中1μg/mlの組換えヒトTNFαを100μl/ウェル用いたこと以外は、実施例1で説明したようにして、ELISAを行なった。
【0048】
6回誘導した後のゼノマウスから採取した血清を希釈して得られた希釈曲線を図4に示す。再び、ヒト抗TNFα結合の有意な滴定濃度が示された。
【0049】
ゼノマウスを1回および2回免疫した後のhγ、hμ、および、hκの血清滴定濃度を表1に示す。ゼノマウスにおいてTNFαで抗原投与することにより、最初の免疫では優位なIgM応答から、第二回目の免疫では大型IgG成分による免疫応答へと、アイソタイプが転換される。
【表1】
【0050】
〔実施例3〕
ヒトCD4に対するヒト抗体
トランスフェクションされた組換え細胞上のヒトCD4ζを用いて、以下のようにして、ヒトCD4抗原を表面蛋白質として調製した。ヒトCD4ζは、CD3複合体の成熟ζ鎖のCD4細胞外ドメイン、CD4膜通過ドメイン、および31〜142残基目に相当する細胞質ドメインを含む。「ロバーツ(Roberts)ら、Blood (1994) 84:2878」で説明されているヒトCD4ゼータ(F15 LTR)を、「フィナー(Finer)ら、Blood (1994) 83:43」に記載のカット(Kat)高効率形質導入法を用いて、「カラン(Callan), M.,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:10454」に記載されているラットの好塩基球性白血病細胞系RBL-2H3に導入した。要約すると、ウェルあたり106個のRBL-2H3細胞を、750μlのDMEMlow+20% FBS(ギブコ(Gibco))および16μg/mlのポリブレン中で、等量のプロウイルス上清とともに、37℃、5%CO2で2時間培養した。培地1mlを取り除いて750μlの感染用培地およびレトロウイルス上清を各ウェルに加え、この培養液を一晩インキュベートした。細胞を洗浄し、十分な細胞が選別に利用できるようになるまで、DMEMlow+10% FBS中で増殖させた。FACSTARプラス(ベクトンディキンソン(Becton Dickinson))を用いて、CD4ゼータを導入したRBL-2H3細胞を選別した。マウス抗ヒトCD4 PE抗体で、ヒトCD4に対する細胞の染色を行ない、上位2〜3%の発現細胞を選抜した。
【0051】
初回注射を頚部の基部に皮下注射により行ったことを除いて、実施例1で説明したように、マウス1匹当たり1×107個の細胞を用いて免疫化を行なった。マウスは、2〜3週間の間隔で6回注射した。血清を調製し、ELISAプレートの最初のコーティングに、可溶性組換えCD4を2μg/ml含む100μl/ウェルのコーティング用緩衝液を用いたこと以外は、実施例1で説明されているようにELISAによって解析した。6回注射した後のゼノマウスから採取した血清に対する滴定濃度曲線を図5に示す。ヒト抗CD4反応性の滴定濃度は、1:1,000の希釈度よりも高い濃度であることが示された。
【0052】
〔実施例4〕
ヒトL-セレクチンに対するヒト抗体
マウスプレB細胞300.19をLAM-1 cDNA(LAM-1は、L-セレクチンをコードする遺伝子である)でトランスフェクションして得られた高発現クローンであるC51細胞の表面提示蛋白質として(テッダー(Tedder)ら、J. Immunol. (1990) 144:532)または同じようにトランスフェクションされたCHO細胞を用いて、抗原を調製した。抗-Leu-8抗体を標識に用いた蛍光活性化細胞選別法を用いて、トランスフェクションされた細胞を選別した。
【0053】
C51細胞およびトランスフェクションしたCHO細胞を、100 mmプレート中10%FCSおよび1 mg/mlのG418を含むDME 4.5 g/lグルコース中で増殖させた。陰性対照細胞である3T3-P317細胞(モロニー(Moloney)ウイルスのgag/pol/env遺伝子でトランスフェクションした細胞)を、G418を除いた同じ培地中で増殖させた。
【0054】
初回免疫は、頚部の基部に皮下注射して行ない、その後の注射は、腹腔内に行なった。2〜3週間毎に合計5回注射したが、注射1回につき、7千万〜1億個のC51細胞またはトランスフェクションしたCHO細胞を用いた。
【0055】
実施例1で説明されているようにして血清を採集して、実施例1と同じプロトコールで、ELISAによって解析した。
ELISAのために、トランスフェクションした細胞を96穴プレートに接種し、細胞数により1日〜2日間細胞が単層になるまで増殖させ、集密状態になったときにELISAに用いた。冷却1×PBSによる最初の洗浄によって細胞を固定し、その後固定液(5%氷酢酸、95%エタノール)を加えた。プレートを−25℃で5分間インキュベートして、プレートシーラーでシールすることにより、この温度で保存することができる。
【0056】
このプレートを室温に戻し、プレートを振って固定液を除去し、10%FCS含有DMEM培地を各ウェル当たり200μl用いて5回洗浄し、ELISAを開始する。
【0057】
ウェルを、さまざまな希釈度の血清または陽性もしくは陰性対照で処理した。陽性対照のウェルには、ヒトL-セレクチンに対するマウスIgG1モノクローナル抗体が含まれていた。
【0058】
ウェルを45分間インキュベートして、顕微鏡で単層が完全であることを確認した。そしてこれらのウェルを、実施例1で説明したように、HRPを結合した抗ヒトκ鎖抗体または抗ヒトμ鎖抗体とともにインキュベートした。次に、このプレートを1%BSA/PBSで洗浄し、再度PBSで洗浄し、単層が完全であることを確認した。上述したように、プレートを発色させ、停止させ、読み取りを行った。ゼノマウスからの血清に関する結果を、図6および7に示す。L-セレクチンおよび対照用3T3細胞の両方に対するヒト抗体が得られた。しかし、血清滴定濃度はL-セレクチン発現細胞の方が、親株の3T3細胞に較べて高かった。これらの結果から、ゼノマウスが、ヒトμ重鎖領域とヒトκ軽鎖とを有する、L-セレクチンに特異的な抗体を産生することが示される。
【0059】
また、免疫したゼノマウスから得た抗血清を、L-セレクチンを発現するヒト好中球の染色について試験した。ヒトの好中球は、以下のようにして調製した:
末梢血を、正常な任意提供者から100ユニット/mlヘパリンで採集した。約3.5mlの血液で、等量の一段階ポリモルフ・グラジエント(One-step Polymorph Gradient)(アキュレイトケミカル(Accurate Chemical), Westbury, NY)の上を覆い、20℃、450×gで30分間遠心した。好中球分画を除去して、DPBS/2% FBSで2回洗浄した。
【0060】
そして、次の何れかで、好中球を染色した:
(1)C51細胞(L-セレクチンを発現する)で免疫したゼノマウスから採取した抗血清、
(2)陰性対照として、ヒトgp39を発現する細胞で免疫したゼノマウスから採取した抗血清。
【0061】
染色、洗浄した好中球をFACSによって解析した。ゼノマウスから採取した抗血清に関する結果を図8に示す。
【0062】
これらの結果から、免疫したゼノマウスの血清には、L-セレクチンと免疫反応する完全なヒト軽鎖を含む抗体が存在することが示される。陰性対照であるgp39で免疫したマウスの抗血清には、ヒト好中球に対して反応する抗体は含まれていない。
【0063】
〔実施例5〕
ヒトgp39に対するヒト抗体
gp39(CD40に対するリガンド)は、活性化されたヒトCD4 T細胞で発現される。本実施例にしたがって組換えgp39で免疫したゼノマウス(登録商標)の血清には、gp39に免疫特異的な完全なヒト抗体が含まれていた。
【0064】
抗原には、図9に示されているような哺乳動物発現ベクターP1K1.HUgp39/IRES NEOの中にクローニングされたgp39のcDNAを発現させる、300.19細胞またはCHO細胞の安定的なトランスフェクション体が含まれる。CHO細胞は、トランスフェクションする前に1:10に分けて、グリシン、ヒポキサンチン、およびチミジンを添加したDMEM(グルコース 4.5 g/l、FBS 10%、グルタミン2 mM、MEM、NEAA)に入れた。リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いて、9μg/10 cmプレート(6×105個の細胞)のgp39ベクターおよび1μg/10 cmプレートのDHFR発現ベクターpSV2DHFR(スブラナニ(Suburanani)ら、Mol Cell Biol(1981) 9:854)で細胞を共トランスフェクションした。24時間後、細胞を1:10に分けて、0.6 mg/mlのG418を含む最初の培地に移した。抗gp39抗体を用いたFACSによって、gp39を産生する細胞を選別した。
【0065】
実施例1に記載されているようにグループ別に分けたマウスを、gp39を発現する300.19細胞で免疫した。初回免疫は、頚部の基部に皮下注射して行ない、その後は2〜3週間毎に腹腔内注射により行なった。ELISAを行うために、実施例1で説明されているようにして血清を採集した。ELISA法は、実質的には、実施例1で示されているようにして行なったが、グルコース 4.5 g/l、FCS 10%、グルタミン 4 mM、およびMEM用の非必須アミノ酸(NEAA)溶液(100×)を含むDMEM中、100 mmプレートで増殖させた、gp39を発現するCHO細胞によって、プレートをコーティングした。ELISA解析の前日に、細胞をトリプシン処理してウェル濾過プレート中に105細胞/200μlで接種し、37℃で一晩インキュベートした。陽性対照はマウス抗ヒトgp39であり、陰性対照はgp39以外の抗原で免疫したマウスの抗血清であった。各解析毎に、50μlの試料を用いた。この解析法の残りの部分は、実施例1に記載されている。
【0066】
CHO細胞上で発現されたgp39で免疫したマウスから4回注射した後に採取した血清に対する滴定濃度曲線を図10に示す。図から分かるように、この血清は、HRPに結合した抗ヒトκ鎖抗体および抗ヒトμ鎖抗体によって検出可能な抗ヒトgp39免疫特異性を有していた。
【0067】
〔実施例6〕
破傷風毒素に対するヒトモノクローナル抗体の調製
本実施例において調製される抗体は、破傷風毒素で免疫したゼノマウスのB細胞を不死化して得たハイブリドーマによって分泌された。免疫化のプロトコールは、実施例1に示したものと同じで、腹腔内注射により初回免疫するために完全フロイントアジュバントに乳濁させた50μgの破傷風毒素を用い、以後は不完全フロイントアジュバントに取り込んだ抗原で腹腔内注射を行なった。マウスは、2〜3週間の間隔で合計4回注射した。
【0068】
抗破傷風毒素C(抗TTC)の許容される血清滴定濃度が得られてから、PBS中の抗原の最終的な免疫投与を、動物を殺処分する4日前に行ない、融合のために脾臓を回収した。
【0069】
ガルフールおよびミルスタイン(Galfre, G. and Milstein, C. Methods in Enzymology (1981) 73:3〜46)によって説明されているところに従って、脾臓細胞をミエローマ細胞P3X63-Ag8.653と融合させた。
【0070】
融合後、細胞を37℃、10%CO2で培養するために、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したHATを含む15%FCS DMEMに懸濁した。この細胞を微量滴定用プレートに接種して、HAT添加培地に移植するまで2週間、HAT添加培地に維持した。ELISAを用いた一次スクリーニングを行うために、ハイブリドーマを含むウェルから上清を採集した。
【0071】
ELISAは、実施例1で説明されているようにして行ったが、抗原のコーティングには、コーティング緩衝液に2μg/mlの破傷風毒素C(TTC)蛋白質を100μl/ウェルで入れ、その後4℃で一晩インキュベートするかまたは37℃で2時間インキュベートすることを含む。初回のELISAでは、実施例1で説明されているように、HRP結合マウス抗ヒトIgMを用いた。ELISA解析にしたがって抗TTCを分泌する2つのハイブリドーマ、クローンD5.1とクローンK4.1とを以後の解析に用いた。
【0072】
図11に示すように、クローンD5.1は、HRP結合抗ヒトμ鎖抗体およびHRP結合抗ヒトκ鎖抗体を用いて検出できる完全なヒト抗TTCを分泌する。このことは、図11において確認された。
【0073】
陽性対照(それぞれ、TNFα、IL-6、およびIL-8で免疫したゼノマウスからの血清)が陽性のELISA結果を示すような条件下における、TNFα、IL-6またはIL-8を固定化抗原として用いたELISAにおいて、D5.1によって分泌される抗体は免疫応答しなかった。
【0074】
図12および13に示されているように、このモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの完全な塩基配列が決定された。約106個のハイブリドーマ細胞からポリA mRNAを分離し、任意のヘキサマーをプライマーに用いるcDNAの作製に用いた。この産物の一部を、適当なプライマーを用いたPCRによって増幅した。
【0075】
この細胞系からヒトκ軽鎖が提供されることが知られているため、軽鎖をコードするcDNAのPCR増幅のために用いたプライマーは、定常領域の末端から合成を開始させるHKP-1(5'-CTCTGTGACACTCTCCTGGGAGTT-3';配列番号18)および可変領域のセグメントから合成を開始させるために等量で用いられる2つ目のプライマーB3(5'-GAAACGACACTCACGCAGTCTCCAGC-3';配列番号19)であった。
【0076】
D5.1(ヒトμ定常領域を含む)に由来する抗体の重鎖を増幅するため、MG-24VIを可変部から合成を開始するために用い、μP1(5'-TTTTCTTTGTTGCCGTTGGGGTGC-3';配列番号20)を定常領域の末端から合成開始するために用いた。
【0077】
クローンD5.1によって分泌される抗体の重鎖に対応する配列を示す図12を参照すると、この重鎖に、ヒトの可変部断片VH6、ヒト多様性領域DN1、およびヒトμ定常領域に結合したヒトJ分節JH4が含まれていることが分かる。生殖系列の配列では、可変領域の中に2塩基対の突然変異がいずれもCDR中にあった。さらに、2つの突然変異がD分節にあり、6個の非生殖系列の塩基付加がDb〜Jb結合部位にあった(生殖細胞系列 VH6:配列番号1;ハイブリドーマ D5.1.4:配列番号2;生殖細胞系列 JH4:配列番号3;生殖細胞系列 D(N1):配列番号4;生殖細胞系列 hMu:配列番号5)。
【0078】
最後に、クローンD5.1によって分泌される抗体の軽鎖を示す図13を参照すると、ヒトκ可変領域B3およびヒトκ結合領域JK3が示される。生殖系列の配列とは9個の塩基対が異なっており、3個はCDR1に落ちている(生殖細胞系列 B3:配列番号6;ハイブリドーマ 05 1.4:配列番号7;生殖細胞系列 JK3:配列番号8;生殖細胞系列 CK:配列番号9)。
【0079】
〔実施例7〕
PTHrpに対するヒト抗体
ゼノマウス-2(登録商標)の群を、ラトクリファら(Ratcliffeら、J. Immunol. Methods 127:109 (1990))の説明に従って、BTGに結合したPTHrp(1-34)または4分岐MAP(多重抗原性ペプチドシステム)として合成されたPTHrp(1-34)のいずれかを用いて腹腔内注射により免疫した。抗原は、CFA(完全フロイントアジュバント)に乳濁させ、動物1匹あたり25μgの用量を2週間の間隔で腹腔内注射し、2回注射した後採血した。この採血で得た血清を、前記で説明したようにしてELISAで解析した。
【0080】
ゼノマウス(登録商標)を1回免疫した後のhγ、hμ、およびhκに関する血清滴定濃度を表2に示す。PTHrpで免疫すると、7匹のうち5匹のゼノマウス(登録商標)が初回採血で低い血清滴定濃度を示したが、PTHrp-MAPを用いると、7匹のうち7匹とも初回採血で高い血清滴定濃度を示す。
【表2】
【0081】
〔実施例8〕
ヒトIL-8に対するヒト抗体
免疫および血清の調製は、ヒト組換えIL-8を免疫原として使用したこと以外、実施例1に説明されたところに従った。
【0082】
ELISAは回収した血清について行い、これも実施例1で説明されているところに正確に従ったが、ただし、抗原のコーティングには、0.5 mg/mlの組換えヒトIL-8を含むコーティング緩衝液を100μl/ウェルで用いた。6回注射した後のゼノマウスから採取したさまざまな血清を希釈して得られた結果が図14に示されている。ヒト抗IL-8結合が、再び、1:1,000の希釈度で示されるよりも高い濃度を有する血清希釈度で示された。
【0083】
〔実施例9〕
ヒトIL-8に対する高親和性ヒトモノクローナル抗体の調製
8週〜10週齢のゼノマウス(登録商標)4〜6匹のグループを用いて、免疫およびハイブリドーマ作製を行なった。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(CFA、シグマ(Sigma))に乳濁させた25μgの組換えヒトIL-8(バイオソースインターナショナル(Biosource International), CA, USA)を腹腔内投与してゼノマウス(登録商標)を免疫した。以後の注射はすべて、不完全フロイントアジュバント(IFA、シグマ(Sigma))に取り込ませた抗原によって行なった。ハイブリドーマ作製のために脾臓の供与体として用いた動物に対しては、リン酸緩衝食塩水(PBS)に入れた抗原の最終投与を、融合の4日前に行なった。免疫したゼノマウス(登録商標)の血清滴定濃度について、2回目の抗原投与の後に解析を開始し、その後抗原投与する度に解析した。注射後6日〜7日目に、後延髄叢から試験採血した。この血液は、血清を分離して採集する前に、室温に約2時間おいて凝固させてから4℃で少なくとも2時間インキュベートした。
【0084】
ハイブリドーマの作製
予め抗原で免疫したゼノマウス(登録商標)から採取した脾臓細胞を、ガルフールら(Galfre, G.ら、Methods in Enzymology 73:3〜46, (1981) )の説明に従って、bcl-2(NSO-bcl2)でトランスフェクションした非分泌性NSOミエローマ細胞と融合させた。要約すると、融合は、洗浄した脾臓細胞とミエローマ細胞とを5:1の割合で混合し、800×gの遠心分離でゆっくりと沈澱させることにより行った。上清を完全に除去した後、細胞に、1mlの50%PEG/DMSO(分子量1500のポリエチレングリコール、10%DMSO、シグマ(Sigma))を1分間以上かけて加えて処理し、この混合液をさらに1分間インキュベートし、そして、2mlのDMEMで2分間以上かけて徐々に希釈してから、8mlのDMEMで3分以上かけてさらに希釈した。この処理は、37℃でゆっくり撹拌を続けながら行った。融合後、細胞を、37℃、空気中10% CO2で培養するために、HATを含み、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した15%FCS DMEMに再懸濁した。この細胞を、平底の微量滴定用96穴プレートに接種した。培養物は、HT添加培地に移植するまでの2週間、HAT添加培地で維持した。ハイブリッド細胞の増殖を見るために定期的に培養液を調べ、上述したような抗原特異的なELISAで、ヒトμ鎖、ヒトγ2鎖、およびヒトκ鎖の存在について一次スクリーニング解析を行うために、ハイブリドーマを含むウェルの上清を回収した。陽性の培養液を48穴プレートに移植し、集密状態になったら24穴プレートに移植した。ヒトμ鎖、ヒトγ2鎖、およびヒトκ鎖の存在に関する抗原特異的なELISAで、上清を試験した。
【0085】
表3に示すように、ヒトIL-8に対して特異性を有する完全なヒト・モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマがいくつか、表に示した融合体から作出されていた。これらのヒト・モノクローナル抗体のすべてにおいて、ヒトのγ-2重鎖はヒトκ軽鎖と結合している。
【表3】
【0086】
ゼノマウス(登録商標)ハイブリドーマの動力学的定数の評価
これらの抗体の動力学的パラメータ、特に、オン・オフの速度および解離定数(KD)を決定するために、バイオコア(BIOcore)装置(ファルマシア(Pharmacia))で解析した。バイオコア(BIOcore)装置は、抗原でコートした金のチップへの抗体の結合を測定するために、プラスモンの共鳴を利用する。
バイオコア(BIOcore)の試薬および仕組み:
【0087】
バイオコア(BIOcore)装置、CM5センサー用チップ、界面活性剤P20、ならびにN-ヒドロキシサクシニミド(NHS)、N-エチル-N-1-(3-ジエチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)およびエタノールアミンを含む結合キットをファルマシアバイオセンサー社(Pharmacia Biosensor)から購入した。センサーの表面に固定する抗原の密度を低くして組換えヒトIL-8を表面上に固定し、製造業者によって概説されている一般的な処理手順に従って行った。要約すると、HEPES緩衝液(HBS; 10 mM HEPES, 150 mM NaCl, 0.05 % 界面活性剤P20, pH 7.4)で装置を洗浄し平衡化した後、表面を活性化して、引き続き結合および動力学的実験をするためにIL-8を固定化した。センサーの表面は、活性化するため、等量のNHS(0.1 M)とEDC(0.1 M)との混合液5μlを、10μl/分で表面を横切って流れるように注入し、5 mMのマレイン酸緩衝液、pH 6.0中、12μg/mlのリガンド(ヒト組換えIL-8)5μlを活性化された表面を横切って流れるように注入し、最後に、結合が起こらなかった活性化部位を、35μlの1 Mエタノールアミンを注入して遮断した。非共有結合のリガンドを除去するために、5μlの0.1 M HClを注入して、表面を洗浄した。固定化処理はすべて、HBSを10μl/分で流し続けながら行なった。約100共鳴単位(RU)のリガンド(別々の実験で、82 RUおよび139 RU)をセンサーチップの上に固定化した(製造業者によれば、1,000 RUは、固定化蛋白質約1 ng/mm2に相当する)。
【0088】
これらのリガンドで覆われた表面を用いて、リガンドへの特異的な結合および動力学的実験のために、ハイブリドーマ上清を解析した。これらのセンサーチップのリガンドから解析物質を解離させるための最適な再生条件で、結合と再生とを幾度繰り返しても結合の有意な喪失が観察されない条件は、10μlの100 mM HClの注入である。
IL-8に特異的な完全なヒトモノクローナル抗体の解離ならびに結合速度および見かけ上の親和性定数の決定。
【0089】
反応物の一方をセンサー表面に固定するバイオコア(BIOcore)を用いて、動力学的測定値の決定を、製造業者によって指示されているカールソン(Karlsson)らの「新しい生物学的センサーに基づく解析システムを用いた、モノクローナル抗体-抗原の相互作用の動力学的解析」(J. Immunol. Methods (19910 145, 229))において説明されている方法に従って行なった。要約すると、2つの分子AとBとの間で起きる単一の部位で相互作用は、次の等式で表される。
d[AB]/dt=ka[A][B]-kd[AB]
ここで、Bは表面に固定されており、Aは一定の濃度Cで注入される。この反応は、複合体[AB]の濃度の測定値であり、濃度の項はすべて、バイオコア(BIOcore)の反応単位(RU)として表すことができる。
dR/dt−kaC(Rmax−R)−kdR
ここで、dR/dtは、シグナルの変化速度であり、Cは解析物質の濃度、Rmaxは解析物質の最大結合能力をRUで表したもの、Rは時間tにおけるシグナルをRUで表したものである。この解析において、kaおよびkdの値は、センサーの表面上の固定化リガンドの濃度とは無関係である。製造業者によって提供されるソフトウェアのBIA評価2.1(BIA evaluation 2.1)を用いて、解離速度(kd)および結合速度(ka)を決定した。固定化IL-8を含む表面へのハイブリドーマ上清の注入が完了した後、一定の緩衝液流速45μl/分で10分間続く解離相の間、解離速度定数を測定した。結合相は、流速45μl/分で1.25分以上続くが、このデータは、この前に決定されたkd値を用いたモデルにおいて適合する。異なる濃度の抗IL-8ハイブリドーマ上清について、結合を試験し動力学的なデータを解析するときには、異なるレベルの固定化リガンドを有する少なくとも2つの表面を用いた。これら2つの表面で決定された動力学的定数を表4に示す。親和性は、多様であり、7×10−11から2×10−9 Mの範囲で決定された。これは、正常なマウスから得たマウスモノクローナル抗体の親和性と全く変わらない値である。
【表4】
【0090】
ヒト好中球の単離方法および抗体活性の解析
IL-8のインビボでの一次的な機能は、好中球を誘引して活性化することである。好中球は、AレセプターおよびBレセプターと名づけられた2つの異なるIL-8のレセプターを表面に発現させている。完全なヒト抗体がIL-8の活性を中和できるか否かを判定するために、ヒト好中球を用いて、2つの異なるインビトロ解析を行なった。一つ目の解析方法では、放射性標識したIL-8が好中球のIL-8レセプターに結合することを、抗体によってブロックできるか否かを試験した。二番目の解析方法では、抗体によって、IL-8に誘導された好中球応答、すなわち好中球の表面におけるインテグリンMac-1の上昇制御がブロックされるか否かを試験した。Mac-1には、2本のペプチド鎖、CD11bとCD18とが含まれる。典型的には、抗CD11b抗体が検出のために用いられる。
【0091】
好中球の単離:
ヒトの好中球は、採血したばかりの血液または軟膜から単離される。ヒトの血液は、EDTAを含む滅菌チューブを静脈穿刺することによって集める。軟膜は、スタンフォード血液銀行(Stanford Blood Bank)から入手する。抗凝固血液をプラスチックバッグに入れて、2600×gで10分間、ブレーキをかけずに20℃で遠心分離して調製する。血漿上清を吸引してバッグから除き、軟膜すなわち細胞層上層(40〜50 ml/バッグ)を回収する。1単位の軟膜(40〜50 ml)を、Ca2+、Mg2+を含まないPBSで、最終容量が120 mlになるよう希釈する。30 mlの血液または希釈した軟膜を、50 mlの遠心管の中の、フィコールパック・プラス(Ficoll-Paque Plus)(ファルマシアバイオテク(Pharmacia Biotech))の20 mlの層の上に移し入れる。この遠心管を、500×gで20分間、ブレーキをかけずに20℃で遠心分離する。上清、界面の単核球細胞、および沈澱の上の層を注意深く除去する。単核球細胞を完全に取り除くために、好中球と赤血球とを含む細胞沈殿物を5mlのPBSに再懸濁して、きれいな50 ml遠心管に移し入れる。細胞を、Ca2+、Mg2+を含まないPBSで洗浄する(300×gで4℃、5分間)。次に、塩化アンモニウムで赤血球を溶解する。細胞を、155 mM NH4Clおよび10 nM EDTA、pH 7.2〜7.4を含む氷冷溶液40 mlに再懸濁する。この遠心管を、時折混合しながら、10分間氷中に置いてから、300×g、4℃で5分間遠心分離する。この沈澱をPBSに再懸濁して、1回洗浄する(300×gで4℃、5分間)。もし、赤血球の溶解が不完全なようであれば、塩化アンモニウムによる処理を繰り返す。好中球をもう一度洗浄して、最後に、解析用培地(10%ウシ胎児血清、2 mM L-グルタミン、5×10−5の2-メルカプトエタノール、1×非必須アミノ酸、1 mMピルビン酸ナトリウム、および10 mM HEPESを添加したRPMI-1640)で3×107細胞/mlの密度に懸濁するか、または結合緩衝液(0.1%ウシ血清アルブミン、および0.02% NaN3を含むPBS)で6×106細胞/mlの密度に懸濁する。
【0092】
IL-8レセプター結合解析:
マルチスクリーンフィルタープレート(96穴、ミリポア(Millipore)、MADVN6550)を、0.1%ウシ血清アルブミンおよび0.02% NaN3を含むPBS結合緩衝液で、25℃で2時間、前処理した。4×105個の好中球、0.23 nM [125I]-ヒト-IL-8(アマーシャム(Amersham)、IM-249)およびPBS結合緩衝液でさまざまな濃度にした抗体を含む最終容量150μlを各ウェルに加え、プレートを4℃で90分間インキュベートした。細胞を200μlの氷冷PBSで5回洗浄し、PBSを吸引して除いた。フィルターを風乾して、3.5 mlのシンチレーション液(Beckman Ready Safe)を加えて、ベックマン(Beckman)LS6000ICカウンターでフィルターをカウントした。得られたデータは、%特異的結合 [125I]-IL-8で表され、抗体存在下でのcpmを、PBS結合緩衝液のみのときのcpmで割ってから100を掛けて計算されたものである(図15)。試験したヒト抗IL-8モノクローナル抗体6種ともすべて、ヒト好中球へのIL-8の結合をブロックした。
【0093】
好中球CD11b(Mac-1)発現解析:
最終濃度10 nMのヒトIL-8を、さまざまな濃度のモノクローナル抗体と共に、4℃で30分間および37℃でさらに30分間、予めインキュベートしておいた。好中球(4×105個/ウェル)を、抗体の存在下または非存在下で、4℃で90分間、IL-8と接触させて、PE結合マウス抗ヒトCD11b(Beckman DIckinson)と45分間、4℃でインキュベートした。細胞を、2%ウシ胎児血清を含む氷冷PBSで洗浄した。ベクトン・ディキンソン(Beckton DIckinson)社のファクスキャン(FACscan)細胞分析器で蛍光測定した。本実験では、ヒトCD11bに対するマウスモノクローナル抗体をR&Dシステム(R&D System)社から入手して陽性対照として用い、精製されたヒトミエローマIgG2(カルバイオケム(Calbiochem))を陰性対照として用いた。好中球上でのCD11bの発現レベルを測定し、平均蛍光チャンネル値(fluorescence channnel)として表示した。陰性対照抗体から得られた平均蛍光チャンネル値を、実験試料の平均蛍光チャンネル値から引き算した。
表5に示すように、6つの抗体のうち5つがCD11bの上昇制御をある程度ブロックし、5つのうち3つが完全に遮断した。
【表5】
CD11b発現のバックグラウンド値は、670(平均蛍光)で、10 nMのヒトIL-8の存在下におけるCD11b発現は、771である。
【0094】
抗hIL-8ハイブリドーマから生じた免疫グロブリンの転写物の配列解析
すべての配列は、ヒトVHおよびヒトVκファミリーに特異的なプライマー(マークス(Marks)ら、1991; Euro. J. Immunol. 21:985〜991)、ならびにヒトγ2定常領域に特異的なプライマー(MG-40d; 5'-GCTGAGGGAGTAGAGTCCTGAGGACTGT-3';配列番号21)またはヒトκ定常領域に特異的なプライマー(HKP2;グリーン(Green)ら、1994; Nature Genetics 7:13〜21)を用いて、ハイブリドーマD1.1、K2.2、K4.2、およびK4.3から調製されたRNAのRT-PCR反応によって生成されたPCR断片のダイレクトシークエンシングによって得られた。図16A〜Hにおいて、4つのクローンの両鎖を配列決定し、完全な配列になるよう解析した。すべての配列は、「V BASE 配列ディレクトリ」(トムリンソン(Tomlinson)ら、MRC Centre for Protein Engineering, Cambridge, UK)に対するアラインメントによって解析した。可変領域とJ(結合)領域とを括弧[ ]で示した。「N」を含む塩基は、作成された配列の中で不確かなものであることを示している。
【0095】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマD1.1の重鎖の転写物には、ヒトVH4〜21(DP-63)の可変領域(生殖系列の配列と比較すると7箇所の点突然変異が見られた)、ヒトの21-10rcD分節、ヒトJH3 J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16A参照。(配列番号10)
【0096】
ハイブリドーマD1.1のκ軽鎖の転写物には、Vκ08/018(DPK1)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると16箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ3 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16B参照。(配列番号11)
【0097】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマK2.2の重鎖の転写物には、ヒトVH3-30可変領域(生殖系列の配列と比較すると3箇所の点突然変異が見られた)、ヒトのIR3rc D分節、ヒトJH4 J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16C参照。(配列番号12)
【0098】
ハイブリドーマK2.2のκ軽鎖の転写物には、VκIV(B3;DPK24)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると9箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ3 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16D参照。(配列番号13)
【0099】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマK4.2の重鎖の転写物には、ヒトVH4-34可変領域(生殖系列の配列と比較すると8箇所の点突然変異が見られた)、ヒトのK1 D分節、ヒトJH4J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16E参照。(配列番号14)
【0100】
ハイブリドーマK4.2のκ軽鎖の転写物には、Vκ08/018(DPK1)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると6箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ4 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16F参照。(配列番号15)
【0101】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマK4.3の重鎖の転写物には、ヒトVH5-51(DP-73)可変領域、ヒトのM5-a/M5-b D分節、ヒトJH4 J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16G参照。(配列番号16)
【0102】
ハイブリドーマK4.3のκ軽鎖の転写物には、Vκ02/012(DPK9)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると9箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ4 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16H参照。(配列番号17)
【0103】
本明細書において引用されている出版物および特許出願はすべて、特別かつ個々に参照として本明細書に組み入れられているものとする。
【0104】
上記の発明は、理解を明確にすることを目的として、例示および実施例という形で、ある程度詳細に説明してきたが、本発明の開示から、添付の請求の範囲の精神または意図から逸脱することなくこれに一定の変更および修正を加えられることは当業者には容易に理解されると考えられる。
【0105】
生物学的寄託物
サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)に含まれているyH1Cは、米国メリーランド州ロックビル20852、パークローンドライブ(Parklawn Drive)12301にある米国標準培養株コレクション(American Type Culture Collection)(「ATCC」)に、1996年4月26日に寄託し、ATCC寄託番号74367を与えられた。このYACの寄託は、例示の目的でのみなされたものであり、本発明の請求内容を実施するためにこの寄託物が必要であるということを出願人が認めていることを意味するのではない。
【0106】
このような行為が可能なすべての指定国について、指定国の法律の下で法的に許容される範囲で、例えば、EPC規則28(4)、英国特許法規1982規則17(3)、豪州規定3.25(3)、およびその他の指定国において必要な変更が加えられている類似の条項など、関連する特許法規に従って、寄託された微生物の試料は、それが発行された場合にのみ、個々の専門家が利用可能となることを要請する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、yH1Cヒト重鎖YACの構造の概略図である。
【図2】図2は、yK2ヒト・カッパ(κ)軽鎖YACの構造の概略図である。
【図3】図3は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトIL-6で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した抗IL-6抗体の血清滴定濃度を示している。
【図4】図4は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトTNF-αで免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した抗TNF-α抗体の血清滴定濃度を示している。
【図5】図5は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトCD4で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した抗CD4抗体の血清滴定濃度を示している。
【図6】図6は、細胞表面でL-セレクチン(L-selectin)を発現する300.19細胞で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)の血清滴定濃度を示している。ヒトμ定常領域の重鎖を有していれば、ELISA解析を用いてこれらの抗体を検出することができる。
【図7】図7は、細胞表面でL-セレクチン(L-selectin)を発現する300.19細胞で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)の血清滴定濃度を示している。ヒトκ軽鎖を有してさえいれば、ELISA解析を用いてこれらの抗体を検出することができる。
【図8】図8は、ヒトL-セレクチン(L-selectin)で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した血清でインキュベートし、ヒト軽鎖κ領域と免疫交差反応をする抗体で標識したヒト好中球のFACS解析を示している。
【図9】図9は、ヒト蛋白質gp39の産生をもたらす哺乳動物細胞をトランスフェクションするために用いたプラスミドの概略図を示す。
【図10】図10は、ヒトgp39を発現するCHO細胞で免疫したマウスの血清滴定濃度曲線を表す。このELISAで検出された抗体は、gp39と免疫交差反応し、ヒトκ軽鎖およびヒト重鎖μ定常領域を含んでいる。
【図11】図11は、ハイブリドーマクローンD5.1によって分泌されるモノクローナル抗体に関する滴定濃度曲線である。このクローンは、破傷風毒素C(TTC)で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から得られたものであり、ヒトκ軽鎖およびヒト重鎖のμ定常領域を含んでいる。
【図12A】図12は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4(D5.1のサブクローン)の重鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図12B】図12は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4(D5.1のサブクローン)の重鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図13A】図13は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4のカッパ軽鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図13B】図13は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4のカッパ軽鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図14】図14は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトIL-8で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)の抗IL-8抗体の血清滴定濃度を示している。
【図15A】図15は、モノクローナル抗ヒトIL-8抗体による、ヒト好中球へのIL-8の結合阻害を示している。
【図15B】図15は、モノクローナル抗ヒトIL-8抗体による、ヒト好中球へのIL-8の結合阻害を示している。
【図16A】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16B】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16C】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16D】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16E】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16F】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16G】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16H】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
本発明は、免疫学の分野、特に、抗体の産生に関する。より具体的には、所望の抗体に対応する抗原を用いてトランスジェニック動物を免疫する段階を含む方法によって、該抗体を産生させることに関する。トランスジェニック動物は、内因性の抗体ではなく、ヒト抗体を産生するように改変されている。
【背景技術】
【0002】
先行技術
参照として本明細書に組み入れられる、1994年2月3日に発行された特許文献1において、抗原投与に応答して、内因性の抗体ではなく完全なヒト抗体を産生するように改変された、ヒト以外のトランスジェニック動物の作出について詳しく説明されている。要約すると、トランスジェニック宿主動物において、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする内因性の遺伝子座を不活化して、ヒト免疫グロブリンの重鎖および軽鎖をコードする遺伝子座をゲノムの中に挿入する。一般に、所望の改変形質をすべて備える動物は、改変すべき形質のすべてには足りない形質を有する中間的な動物を交配育種することによって得られる。本明細書で説明する好ましい態様におけるヒト以外の動物はマウスである。したがって、特に免疫原を投与したときに、これらの抗原に免疫特異的な、マウスの抗体でなく完全なヒト抗体を含む、ヒトの可変領域を有する抗体を産生するマウスについて説明する。
【0003】
このようなトランスジェニック動物が作出されれば、完全なヒト抗体を作製するための新しい方法を開発できるようになる。治療および診断に用いるためには、さまざまな免疫特異性を有する抗体が望ましい。従来の技術においてはヒト以外の宿主動物によって産生される抗体に特徴的な構造を有する免疫グロブリンが産生されるため、ヒトの治療およびインビボでの診断における使用を目的とする抗体は特に問題があった。このような抗体はヒトに用いると、免疫原になりやすい。
【0004】
上記の特許文献1で説明されているように、免疫原応答性のあるヒト以外のトランスジェニック動物が得られれば、ヒトを宿主に用いる必要なくヒト抗体を簡便に産生することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】PCT出願国際公開公報第94/02602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の開示
本発明は、少なくとも一つの工程に所望の抗原でヒト以外のトランスジェニック動物を免疫することが含まれる、ヒト抗体を産生する方法を提供することを目的とする。改変された動物は、内因性の抗体を産生できなくなるが、その代わりに、完全なヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。産生された抗体は、動物から直接的にまたはその動物由来の不死化B細胞から採取することができる。または、ヒトの可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を、抗体を直接採取するために回収し発現させるかまたは例えば一本鎖Fv分子のような抗体の類似体を得るために改変することができる。
【0007】
このように、本発明は一つの局面において、免疫応答を刺激するような条件の下で、ヒト以外の動物を抗原で免疫することを含む方法によって、特定の抗原に対する完全なヒト免疫グロブリンを産生する方法または該免疫グロブリンの類似体を産生するための方法に関する。ヒト以外の動物は、内因性の免疫グロブリンの重鎖または軽鎖を実質的に産生することができないが、ヒトの可変領域および定常領域を両方とも有する免疫グロブリンを産生できるという特徴を有する。免疫応答が起きると、この動物は、抗原に特異的でかつ完全にヒト型である免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。望ましい特異性を有するヒト免疫グロブリンを、動物から、例えば血清から直接回収することができ、または動物から初期B細胞を採取して不死化させることができる。不死化したB細胞はヒト抗体の供給源として直接用いることができ、また、不死化したB細胞または免疫した動物の血液もしくはリンパ組織(脾臓、扁桃、リンパ節、骨髄)の初期B細胞から、抗体をコードする遺伝子を調製して、免疫グロブリンまたはその類似体を産生するために、改変するかまたは改変せずに、組換え宿主の中で発現させることができる。さらに、免疫した動物によって産生される免疫グロブリンのレパートリーをコードする遺伝子を用いて、望ましい親和性をもたらす可変領域をスクリーニングすることが可能な免疫グロブリンのライブラリーを作製することができる。望ましい特徴を有するライブラリーからのクローンは、標準的な組換え技術を用いて望ましい特徴を有する抗体またはその類似体を作出するために、所望の可変領域をコードする塩基配列の供給源としてさらなる操作に用いることができる。
【0008】
別の局面において、本発明は、上記の動物に由来する、ヒト以外の不死化したB細胞系に関する。さらに別の局面において、本発明は、望ましい特異性を有するヒト免疫グロブリンまたは同じ特異性を示すその類似体のいずれかをコードする遺伝子が含まれるように改変した組換え宿主細胞を提供することを目的とする。
【0009】
さらに別の局面において、本発明は、上記の方法によって調製された抗体またはその類似体およびそれらを産生するための組換え物質を提供することを目的とする。
【0010】
さらに別の局面において、本発明は、本明細書に示す特定の抗原に対して免疫特異的な抗体および同様の免疫特異性を有する類似体、ならびにこれらの抗体を産生するのに有用な組換え物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕 所望の抗原に特異的なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための、以下の段階を含む方法:
免疫応答を刺激しそれにより該抗原に特異的な免疫グロブリンを分泌するB細胞をヒト以外の動物で産生させるような条件下で、内因性の免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を実質的に産生できないがヒト免疫グロブリンを産生することができる該動物に、該抗原またはその免疫原部位を投与する段階、および
該免疫グロブリンまたは類似体を回収する段階。
〔2〕 回収段階に、動物からポリクローナル免疫グロブリンまたは類似体を回収することが含まれる、〔1〕記載の方法。
〔3〕 回収段階に以下の段階が含まれる、〔1〕記載の方法:
抗原を用いて免疫した動物のB細胞を不死化する段階、その結果できた不死化細胞を、該抗原に特異的な免疫グロブリンを分泌するものを得るためにスクリーニングする段階、および
a)該不死化B細胞によって分泌される免疫グロブリンを回収する段階、または
b)不死化B細胞から少なくとも免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、選択的には該遺伝子を改変し、
免疫グロブリンもしくは類似体を産生するために、該遺伝子もしくはその改変遺伝子を発現させ、
該免疫グロブリンもしくは類似体を回収する段階。
〔4〕 回収段階に以下の段階が含まれる、〔1〕記載の方法:
動物の初期B細胞から免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収する段階、
免疫グロブリンを発現する該遺伝子のライブラリーを作製する段階、
抗原にとって望ましい親和性を有する免疫グロブリンを得るために該ライブラリーをスクリーニングする段階、
免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収する段階、
免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために、回収した該遺伝子を発現させる段階、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収する段階。
〔5〕 〔1〕記載の方法によって産生される免疫グロブリンまたは類似体をコードする塩基配列を含む組換えDNA分子。
〔6〕 コーディング塩基配列が、それを発現させることのできる調節配列に機能的に結合されている、〔5〕記載のDNA分子。
〔7〕 〔6〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔8〕 完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために該コーディング塩基配列が発現されるような条件下で、〔7〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、完全なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための方法。
〔9〕 〔3〕記載の方法によって調製される遺伝子または改変遺伝子に相当する塩基配列を含むDNA分子。
〔10〕 コーディング塩基配列が、それを発現させることのできる調節配列に機能的に結合されている、〔9〕記載のDNA分子。
〔11〕 〔9〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔12〕 完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために該コーディング塩基配列が発現されるような条件下で、〔11〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、完全なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための方法。
〔13〕 〔4〕記載の方法によって調製される、望ましい親和性を有するヒト免疫グロブリンをコードする塩基配列を含むDNA分子。
〔14〕 コーディング塩基配列が、それを発現させることのできる調節配列に機能的に結合されている、〔13〕記載のDNA分子。
〔15〕 〔13〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔16〕 完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体を産生させるために該コーディング塩基配列が発現されるような条件下で、〔15〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、完全なヒト免疫グロブリンまたはその類似体を産生するための方法。
〔17〕 〔3〕の記載に従って調製される所望の抗原に対して完全なヒト免疫グロブリンを分泌する不死化B細胞。
〔18〕 〔17〕記載の細胞を培養すること、および該免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、免疫グロブリンまたは類似体を産生するための方法。
〔19〕 〔1〕記載の方法によって産生される、完全なヒト免疫グロブリンまたは類似体。
〔20〕 所望の抗原が以下からなる群より選択される、〔19〕記載の免疫グロブリンまたはその類似体:
CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドB7.1、B7.2、B73、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、CDw52(キャンパス(Campath)抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、ならびにTCRからなる群より選択される白血球マーカー、
MHCクラスIまたはII、ルイスY抗原、SLex、SLey、SLea、およびSLebからなる群より選択される組織適合性抗原、
VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、αVβ3、LFA-1、Mac-1、p150,95、αvβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、ασβ4、αvβ5、αvβ6、およびαvβ7からなる群より選択されるインテグリン、
L-セレクチン、P-セレクチン、およびE-セレクチン、ならびにそれらのカウンターレセプターであるVCAM-1、ICAM-1、ICAM-2、およびLFA-3からなる群より選択されるセレクチン、
IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15からなる群より選択されるインターロイキン、
IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15Rからなる群より選択されるインターロイキンレセプター、
PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8からなる群より選択されるケモカイン、
TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、PTHrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(F3F−1)、ヒト・ラミニン、およびガストリン解離ペプチド(GRP)からなる群より選択される増殖因子、
TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、およびその他の造血レセプターからなる群より選択される増殖因子レセプター、
IFNCαR、IFNβR、およびIFNλRからなる群より選択されるインターフェロンレセプター、
IgE、FceRI、およびFCERIIからなる群より選択されるIgおよびそのレセプター、
her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリンからなる群より選択される腫瘍抗原、
ハウスダストダニ抗原、lol p1(草)抗原、およびウルシオールからなる群より選択されるアレルゲン、
CMV糖蛋白質B、H、およびgCIII、HIV-1のエンベロープ糖蛋白質、RSVのエンベロープ糖蛋白質、HSVのエンベロープ糖蛋白質、HPVのエンベロープ糖蛋白質、肝炎ファミリーの表面抗原からなる群より選択されるウイルス蛋白質、
シュードモナスの内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン(osteopontin/uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒コノトキシン(conotoxin)からなる群より選択される毒素、
補体C3b、補体C4a、補体C4b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン結合増殖阻害因子からなる群より選択される血液因子、ならびに
コレステロールエステル転移蛋白質、細胞膜結合基質メタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される酵素。
〔21〕 所望の抗原が、ヒトIL-6、ヒトIL-8、ヒトTNFα、ヒトCD4、ヒトL-セレクチン、ヒトgp39、ヒトIgE、ヒトαVβ3、ヒトフィブロシン(F3F−1)、ヒト・ラミニン、ヒトPTHrp、および破傷風毒素C(TTC)からなる群より選択される、〔14〕記載の免疫グロブリンまたは類似体。
〔22〕 〔19〕〜〔21〕記載の免疫グロブリンまたは類似体をコードする塩基配列を含む組換えDNA分子。
〔23〕 コーディング塩基配列が、好ましくはそれを発現させることのできる調節配列に結合されている、〔22〕記載のDNA分子。
〔24〕 〔23〕記載のDNA分子を含むように改変された細胞または細胞系。
〔25〕 所望の抗原に特異的な免疫グロブリンまたは類似体を産生するために該塩基配列が発現されるような条件下で、〔24〕記載の細胞または細胞系を培養すること、および免疫グロブリンまたは類似体を回収することを含む、所望の抗原に特異的な免疫グロブリンまたは類似体を産生するための方法。
〔26〕 遷移状態類似体(transition state mimics)、白血球マーカー、組織適合性抗原、接着分子、インターロイキン、インターロイキンレセプター、ケモカイン、増殖因子、増殖因子レセプター、インターフェロンレセプター、免疫グロブリンおよびそのレセプター、腫瘍抗原、アレルゲン、ウイルス蛋白質、毒素、血液因子、酵素、ならびにその他の抗原であるガングリオシドGD3、ガングリオシドGB2、LMP1、LMP2、好酸球主要塩基性蛋白質、好酸球カチオン蛋白質、pANCA、アマドリ蛋白質、IV型コラーゲン、糖化脂質、λインターフェロン、A7、P-糖蛋白質、Fas(AFO-1)、および酸化LDLからなる群より選択される抗原と特異的に免疫反応する、ヒト抗体またはその類似体。
〔27〕 白血球マーカーが、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドB7.1、B7.2、B7.3、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、CDw52(キャンパス(Campath)抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、ならびにTCRからなる群より選択され、
組織適合性抗原が、MHCクラスIまたはII、ルイスy抗原、SLex、SLey、Slea、およびSLebからなる群より選択され、
接着分子が、VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、αVβ3、およびLFA-1、Mac-1、p150,95、αvβ1、gpIIbIIIa、αRβ3、ασβ4、αvβ5、αvβ6、およびαvβ7、L-セレクチン、P-セレクチン、およびE-セレクチン、ならびにそれらのカウンターレセプターであるVCAM-1、ICAM-1、ICAM-2、およびLFA-3からなる群より選択され、
インターロイキンが、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15からなる群より選択され、
インターロイキンレセプターが、IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15Rからなる群より選択され、
ケモカインが、PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8からなる群より選択され、
増殖因子が、TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、PthrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(F3F−1)、ヒト・ラミニン、およびガストリン解離ペプチド(GRP)からなる群より選択され、
増殖因子レセプターが、TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、およびその他の造血レセプターからなる群より選択され、
インターフェロンレセプターが、IFNαR、IFNβR、およびIFNγRからなる群より選択され、
Igおよびそのレセプターが、IgE、FceRI、およびFCeRIIからなる群より選択され、
腫瘍抗原が、her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリンからなる群より選択され、
アレルゲンが、ハウスダストダニ抗原、lol p1(草)抗原、およびウルシオールからなる群より選択され、
ウイルス蛋白質が、CMV糖蛋白質B、H、およびGCIII、HIV-1のエンベロープ糖蛋白質、RSVのエンベロープ糖蛋白質、HSVのエンベロープ糖蛋白質、EBVのエンベロープ糖蛋白質、VZVのエンベロープ糖蛋白質、HPVのエンベロープ糖蛋白質、肝炎ファミリーの表面抗原からなる群より選択され、
毒素が、シュードモナスの内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン(osteopontin/uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒からなる群より選択され、
血液因子が、補体C3b、補体C5a、補体C5b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン結合増殖阻害因子からなる群より選択され、
酵素が、コレステロールエステル転移蛋白質、膜結合基質メタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)からなる群より選択される、〔26〕記載の抗体またはその類似体。
〔28〕 所望の抗原が、ヒトIL-6、ヒトIL-8、ヒトTNFα、ヒトCD4、ヒトL-セレクチン、ヒトgp39、ヒトIgE、および破傷風毒素C(TTC)からなる群より選択される、〔26〕記載の抗体またはその類似体。
〔29〕 所望の抗原がヒトIL-6である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔30〕 所望の抗原がヒトIL-8である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔31〕 所望の抗原がヒトTNFαである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔32〕 所望の抗原がヒトCD4である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔33〕 所望の抗原がヒトL-セレクチンである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔34〕 所望の抗原がヒトgp39である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔35〕 所望の抗原が破傷風毒素C(TTC)である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔36〕 所望の抗原がヒトIgEである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔37〕 所望の抗原がヒトαVβ3である、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔38〕 所望の抗原がヒトフィブロシンである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔39〕 所望の抗原がヒトPTHrPである、〔19〕記載の抗体またはその類似体。
〔40〕 アゴニストまたは触媒である、〔26〕記載の抗体またはその類似体。
〔41〕 〔26〕〜〔40〕のいずれかに記載の抗体をコードする組換えDNA分子。
〔42〕 発現を可能にする調節配列に機能的に結合されている抗体またはその類似体をコードする塩基配列を有する、〔26〕〜〔40〕のいずれかに記載の抗体またはその類似体のための発現システムを含む組換えDNA分子。
〔43〕 〔42〕記載のDNA分子を含むように改変された組換え宿主細胞。
〔44〕 コード配列が発現されるような条件下で、〔43〕記載の細胞を培養すること、および産生された抗体または類似体を回収することを含む、抗体またはその類似体を産生するための方法。
〔45〕 ATCCアクセッション番号74367で識別されるyH1Cヒト重鎖YAC。
【0012】
発明の実施の形態
一般に、本発明に係る方法は、ヒト型の免疫特異的試薬が必要とされる抗原を、内因性の抗体ではなくヒト抗体を産生することができるよう遺伝的に改変されたヒト以外のトランスジェニック動物に投与することを含む。典型的には、この動物は、ゲノム中の内因性の重鎖および/またはカッパ軽鎖が不活化するように改変されているため、これらの内因性の遺伝子座は、抗原に応答して免疫グロブリンをコードする遺伝子を生成するために必要な再編成ができない。さらにこの動物は、少なくとも1個のヒト重鎖遺伝子座および少なくとも1個のヒト軽鎖遺伝子座をそのゲノムの中に安定的に備えており、それによって投与された抗原に応答してこの抗原に対する免疫特異的なヒト可変領域をコードする遺伝子を提供するために、ヒトの遺伝子座を再編成することができる。
【0013】
本発明の方法において有用な動物を構築するための詳細な説明は、上記のPCT出願国際公開公報第94/02602号で提供されている。本発明に関するYACの例は、例えば、「グリーン(Green)ら、Nature Genetics 7:13〜21 (1994)」で参照することができる。ゼノマウス(登録商標)の好ましい態様において、ヒト重鎖YAC、yH1C(1020 kb)およびヒト軽鎖YAC、yK2(880 kb)が用いられる。yH1Cには、870 kbのヒト可変領域、DおよびJHの全領域、ヒトμ、δおよびγ2の定常領域、ならびにマウス3'エンハンサーが含まれる。yK2には、650 kbの可変領域(Vκ)付近のヒト・カッパ鎖、Jκ全領域、ならびにCκおよびカッパ欠失因子(κde)を含むその隣接配列が含まれる。また、いずれのYACも、YACベクターのアーム上にヒトHPRT選択マーカーを含む。yH1CおよびyK2の構築は、当技術分野において周知の方法によって行った。要約すると、YACライブラリーをスクリーニングしてヒトの免疫グロブリン遺伝子座のセグメントを有するYACクローンを同定し(カルバーテセン(Calbertsen)ら、PNAS 87:4256 (1990))、標準的な技術(メンデス(Mendez)ら、Genomics 26:294〜307 (1995))を用いた組み換えによって重複するクローンを結合させた。yH1CおよびyK2を組み立てるための手順の詳細を、それぞれ、図1および図2に示す。
【0014】
yK2は、例えば、「バーク(Burke)ら、Science 236:806〜812 (1987)」、「ブラウンシュタイン(Brownstein)ら、Science 244:1348〜1351 (1989)」、 および「バーク(Burke)ら、Methods in Enzymology 194:251〜270 (1991)」に開示されているオルソン(Olson)ライブラリー由来のクローンA80-C7、A210-F10およびA203-C6から構築した。
所望の抗体を産生するための第一の段階は、抗原の投与である。この投与のための技術は常法であり、それには抗原そのものの性質に応じた適切な免疫化プロトコールおよび処方が含まれる。免疫原性を増強するために担体と共に抗原を投与すること、および/またはアジュバントを含む処方剤を用いること、および/または複数回の注射で投与すること、および/または免疫する経路を様々に変えることが必要となる可能性もある。このような技術は標準的なものであり、これらの最適化は、免疫特異的試薬が必要とされている特定の抗原の特徴に依存する。
【0015】
本明細書で用いられる「免疫特異的試薬」という語には、免疫グロブリンおよびその類似体が含まれる。「類似体」という語は、本明細書において特別な意味を有する。この語は、免疫特異性の原因となる、免疫グロブリンの完全にヒトに由来する部位を含む部分を意味する。特に、適当な立体配座をとるためには、フレーム領域(Fr)の十分な部位とともに、相補性決定領域(CDR)が必要とされる。典型的な免疫特異的な抗体の類似体には、F(ab")2、Fab'、およびFab領域が含まれる。例えば、適当な免疫特異性を有する一本鎖Fv類似体を得るための、可変領域の改変型が知られている。このようなFv構築の概説は、例えば、「ヒューストン(Huston)ら、Methods in Enzymology 203:46〜63 (1991)」に記載されている。ある抗体の可変領域と他の抗体の可変領域とを結合させることによって、複数の免疫特異性を有する抗体類似体を構築することも可能である。
【0016】
完全にヒト型であるという特徴を有する可変領域を、毒性、生物学的機能、別の結合特異性などを付与するさまざまな別の基質に結合させることもできる。本発明の方法によって産生される完全なヒト可変領域を含む部分には、一本鎖の融合蛋白質、ペプチド結合以外の共有的方法によって結合された分子、および凝集した分子が含まれる。共有的または非共有的に付加的分子に結合した可変領域を含む類似体の例として、以下の一覧の例が例示として含まれるが、これらに限定はされない。トラウネッカー(Traunecker), A.ら(Int. J. Cancer Supp. (1992) Supp 7:51〜52)は、CD3に対するFv領域を、可溶性CD4またはOVCAおよびIL-7などの他のリガンドに結合させた双特異的試薬のヤヌシン(janusin)について説明している。同様に、本発明の方法によって産生された完全なヒト可変領域からFv分子を構築して、引用された論文に示されているような代替的リガンドと結合させることもできる。ヒギンズ(Higgins), P.J.ら(J. Infect. Disease (1992)166:198〜202)は、GP120のV3領域中の特異的配列に対する抗体に交叉結合するOKT3を含む異種結合抗体について説明している。このような異種結合抗体は、少なくとも本発明に係る方法によって産生される免疫グロブリン中に含まれるヒト可変領域を用いて構築することもできる。この他の双特異的抗体の例には、「ファンガー(Fanger), M.W.ら、Cancer Treat. Res. (1993) 68:181〜194」および「ファンガー(Fanger), M.W.ら、Crit. Rev. Immunol. (1992) 12:101〜124」に説明されているものが含まれる。従来の抗体を含むイムノトキシンである結合体については、当技術分野において広範に説明されている。このトキシンは、従来の結合技術によって抗体に結合させることも、または蛋白質の毒素部分を含むイムノトキシンを融合蛋白質として産生することもできる。本発明に係る類似体は、このようなイムノトキシンを得るのに関連した方法で用いることができる。このようなイムノトキシンの具体例は、バイヤーズら(Byers, B.S.ら、Senimars Cell BIol. (1991) 2:59〜70)およびファンガーら(Fanger, M.W.ら、Immunol. Today (1991)12:51〜54)によって説明されているイムノトキシンである。
【0017】
本発明に係る免疫グロブリンおよび類似体の中には、免疫特異性を有する抗原がシグナル伝達機能を果たす場合に、その抗原に対してアゴニスト活性を有するものがあることにも留意すべきである。したがって、例えば細胞表面レセプターに対して免疫特異的な、本発明に係る方法によって調製された抗体またはその類似体のサブセットは、このレセプターを有する細胞から内因性のリガンドによって誘導される応答に相当する応答を誘導することができる。さらに、化学反応の遷移状態を模倣する基質に免疫特異的な抗体またはその類似体は、触媒活性を有すると考えられる。このように、本発明に係る抗体および類似体のサブセットは、酵素活性を有する抗体として機能しうる。
【0018】
つまり、上記の類似体などのさまざまな類似体を提供するための既知の技術によって、本発明に係るトランスジェニック動物で産生される免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収することができ、完全にヒトの可変領域をコードする塩基配列を操作することができる。さらに、免疫特異的な領域を保持している結合体を提供するための標準的な結合技術を用いて、ヒトの可変領域を含む免疫グロブリン自体を改変することができる。
【0019】
このように、免疫グロブリン「類似体」は、ヒト由来であるという特徴と免疫特異性とを保持している本発明に係る抗体の部位を含む部分を指す。これらは、望ましい特異性を付与するのに十分なヒト可変領域を保持していると考えられる。
【0020】
上述のように、本発明に係る方法はすべて、適当な抗原をトランスジェニック動物に投与することを含む。抗体自体の回収または産生は、さまざまな方法で行うことができる。
【0021】
第一に、そして最も簡便なものとして、動物によって産生され血流中に分泌されるポリクローナル抗体を、既知の技術を用いて回収することができる。これらの抗体の精製物は、標準的な精製技術、好ましくはプロテインA、抗免疫グロブリン、または抗原自体によるアフィニティークロマトグラフィーを含む精製技術によって、もちろん容易に調製することができる。いずれの場合にも、免疫化に成功したか否かをモニターするために、ELISAおよびRIAなどの標準的な技術を用いて血清中の抗原についての抗体レベルをモニターする。
【0022】
いくつかの応用例では、抗体の可変領域のみが必要とされる。Fab'、Fab、またはF(ab")2部位を生成するために適当な試薬でポリクローナル抗血清を処理することにより、完全にヒト型である特徴を保持した組成物が生じる。例えば免疫グロブリンの免疫特異的な部位を放射性同位体などの検出試薬に結合させることを含む免疫診断法における使用にはこのような断片で十分である。
【0023】
または、本発明に係る方法において用いられたトランスジェニック動物から、または免疫に応答してこれらの動物によって提供される再構成された遺伝子に由来する不死化B細胞から、望ましい特徴を有する免疫グロブリンおよび類似体を生成することができる。
【0024】
このように、動物から直接的に抗体を回収する代わりに、典型的には脾臓から、また必要に応じて、末梢血のリンパ球またはリンパ節からB細胞を採取して、さまざまな技術の何れかを用いて、最も一般的にはコーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)(Nature 245:495 (1975))によって説明されている融合方法を用いて不死化することができる。次に、この結果できたハイブリドーマ(または、さもなければ不死化したB細胞)を単一コロニーとして培養することができ、望ましい特異性を有する抗体の分泌に関するスクリーニングをすることができる。上記で説明したように、スクリーニングには、抗体が完全にヒト型である特徴を有することを確認することが含まれる。例えば、以下の実施例で説明するように、ハイブリドーマの上清中のモノクローナル抗体が、抗原および抗ヒト定常領域の両方に結合するサンドイッチELISAを用いることができる。適当なハイブリドーマを選抜した後、再び慣習的な技術を用いて、所望の抗体を回収することができる。それらは、インビボまたはインビトロのいずれかで腹水を産生させるための慣習的な方法を用いて不死化したB細胞を培養することによって、大量に調製することができる。こうしてできたモノクローナル抗体調製物の精製は、不死化した各コロニーが単一の型の抗体しか分泌しないため、血清の場合よりも手がかからない。いずれの場合でも、培養培地中の他の蛋白質から抗体を単離するための標準的な精製技術を用いることができる。
【0025】
動物由来の不死化したB細胞の培養物からヒト免疫グロブリンを直接採取する代わりに、不死化した細胞を、この後に続く発現および/または遺伝子操作のための再構成された重鎖および軽鎖の遺伝子座の供給源として用いることができる。再構成された抗体遺伝子は、cDNAを作製するために、適当なmRNAから逆転写することができる。必要に応じて、重鎖定常領域を、異なるアイソタイプの領域と交換するかまたはすべて除去することができる。一本鎖Fv領域をコードさせるために、可変領域を結合することができる。1つ以上の標的に結合することができるよう、複数のFv領域を連結することができ、または重鎖および軽鎖のキメラの組合せを用いることができる。遺伝子材料がいったん入手できれば、所望の標的に結合する能力とヒト型である特徴とを保持する上記のような類似体を設計することは容易である。
【0026】
適当な遺伝子材料を入手し、必要に応じて類似体をコードするように改変したならば、最低でもヒトの重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列を含むコード配列を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされるベクターに含まれている発現システムの中に挿入することができる。下記で説明するように、このような宿主細胞として、さまざまなものを用いることができるが、効果的なプロセッシングのためには、哺乳動物の細胞が好ましい。この目的にとって有用な典型的な哺乳動物細胞系には、CHO細胞、293細胞、またはNSO細胞が含まれる。
【0027】
次に、宿主細胞を増殖させコード配列を発現させるのに適当な培養条件の下で改変した組換え宿主細胞を培養することにより、抗体またはその類似体の産生が行われる。次に、この培養物から抗体を回収する。発現システムは、産生された抗体が培地中に分泌されるように、シグナルペプチドを含むよう設計することが好ましいが、細胞内で産生させることも可能である。
【0028】
類似体を産生するための免疫グロブリン遺伝子の改変型を計画的に設計することに加えて、所望の抗原に対し多様な親和性を有する抗体のレパートリーを含むライブラリーを作製するために、ファージディスプレイ技術を利用することができる。このようなレパートリーを産生するために、免疫した動物のB細胞を不死化する必要はなく、初期B細胞をDNA源として直接用いることができる。例えば脾臓に由来するB細胞から得たcDNA混合物を用いて、例えば大腸菌にトランスフェクションしたファージディスプレイ・ライブラリーなどの発現ライブラリーを調製することができる。このようにして生じた細胞について、所望の抗原に対する免疫反応性を試験する。このようなライブラリーから高親和性ヒト抗体を同定するための技術は、「グリフィス(Griffiths), A.D.ら、EMBO J. (1994) 13:3245〜3260」、「ニシム(Nissim), A.ら、同上、692〜698」および「グリフィス(Griffiths), A.Dら、同上 12:725〜734」によって説明されている。最後に、抗原に対して望ましい程度の結合親和性をもたらすクローンをライブラリーから同定し、このような結合の原因となる産物をコードするDNAを回収して、標準的な組換え発現をするよう操作する。ファージディスプレイ・ライブラリーは、予め操作された塩基配列を用いて構築することもでき、同じ方式でスクリーニングすることもできる。一般的に、重鎖および軽鎖をコードするcDNAは、別個に供給されるかまたはファージライブラリー中で産生されるよう、Fv類似体を形成するように結合されている。
【0029】
次に、抗原に対して最も高い親和性を有する抗体および適当なクローンから回収した遺伝子材料について、ファージライブラリーをスクリーニングする。さらに何回かスクリーニングすることにより、最初に分離された抗体の親和性を高めることができる。その後、抗体の組換え体を作出するかまたは所望の類似体を形成するよう改変するために、上記で説明したような操作が用いられる。
【0030】
ファージディスプレイ技術とゼノマウス(登録商標)とを組み合わせることにより、これまでのファージディスプレイの応用例よりも、はるかに有意な利点が提供される。典型的には、ファージディスプレイによって高度なヒト抗体が生成されるように、ヒトの骨髄または末梢血リンパ球のいずれかから、バートンら(Burton, D.R.ら、Proc.Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:10134〜10137)によって説明されているようにして、組合せ抗体ライブラリーを調製する。この方法を用いて、バートンら(Burton, D.R.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 88:10134〜10137)、ゼベディーら(Zebedee, S.L.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:3175〜3179)、およびバーバスIIIら(Barbas III, C.F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1991) 88:10164〜10168)によって説明されているように、ヒトの病原体に対して高い親和性を有する抗体を、感染した個体すなわち既に「免疫されている」個体から単離することが可能である。しかし、ヒト抗原に反応する抗体を生成するためには、合成ライブラリー(バーバス(Barbas) III, C.F.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1991) 89:4457〜4461;クレムリ(Crameri), A.ら、BioTechniques (1995) 88:194〜196)を作製するか、または自己免疫患者からのライブラリー(ラッポート(Rapport), B.ら、Immunol. Today (1995) 16:43〜49;ポートラノ(Portolano), S.ら、J. Immunol. (1993)151:2839〜2851;および、フォーゲル(Vogel), M.ら、Eur. J. Immunol. (1994) 24:1200〜1207)もしくは正常な個体からのライブラリーすなわち未免疫ライブラリー(グリフィス(Griffiths), A.D.ら、EMBO J. (1994) 13:3245〜3260;グリフィス(Griffiths), A.D.ら、EMBO J. (1993) 12:725〜734;パーソン(Persson), M.A.A.ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA (1991) 88:2432〜2436;グリフィス(Griffiths), A.D., Curr. Opin. Immunol. (1993)5:263〜267;フーゲンブーム(Hoogenboom), H.R.ら、Science (1992) 258:1313〜1314;およびニシム(Nissim), A.ら、EMBO J. (1994), 692〜698)のいずれかからライブラリーを調製する必要があった。典型的には、ヒト蛋白質に対する高親和性抗体をこの方法で単離するのは非常に困難であることが明らかになっている。周知のように、親和性が増大する(affinity maturation)ためには体細胞変異が必要であり、また体細胞変異は抗原によって誘発される。ゼノマウスにおいてヒト蛋白質で反復的に免疫化すると体細胞変異が起き、結果的には高親和性の抗体が得られる。これらの抗体をコードする遺伝子は、マークスら(Marks, J.D.ら、J. Mol. Biol. (1991) 581〜596)によって説明されているように、PCRによって容易に増幅することができ、標準的な選別技術(ウィンター(Winter), G.ら、Annu. Rev. Immunol. (1994) 12:433〜55;およびバーバス(Barbas) III, C.F.ら、Proc. Natl. Acad.Sci. USA (1991) 88:7978〜7982)によって免疫特異的な抗体が単離される。
【0031】
上記のように、標準的な組換え技術を用いて、典型的にはチャイニーズハムスターの卵巣細胞などの望ましい宿主細胞中で操作可能な発現システムを構築することによって、改変されたまたは改変されていない再構成遺伝子座を操作し、所望の免疫グロブリンまたは類似体を、標準的な組換え発現技術を用いて作出し、慣習的な方法を用いて回収および精製する。
【0032】
前記の処理法を抗体産生に応用することによって、これまでにヒト抗体が利用できなかった抗原に関するヒトの免疫特異的な試薬の調製が可能になった。上記の方法によって産生された免疫グロブリンおよびそれにより可能になった類似体により、解析、診断、研究、および治療で使用するための新しい組成物が提供される。当然、特定の利用は、調製された免疫グロブリンまたは類似体に依存する。一般に、本発明の組成物は、同じ抗原に対して誘発されたヒト以外の抗体に起因するものと同じような有用性を有すると考えられる。このような有用性には、例えば、精製のための親和性リガンドとしての使用、免疫アッセイの試薬としての使用、免疫結合体の成分としての使用、および適当な指標のための治療用試薬としての使用が含まれる。
【0033】
特に、インビボで治療用試薬または診断用試薬を用いる場合には、完全にヒト型である特徴を有する抗体またはその類似体を使用することが非常に有益である。これらの試薬は、ヒト以外の生物種から発生したものとしての特徴を有する抗体またはその類似体によって生じる望ましくない免疫応答を回避させる。抗体を「ヒト化」するための別の試みでは、完全にヒト型である特徴を有する試薬は得られなかった。例えば、マウスの可変領域とヒトの定常領域とを有するキメラ抗体は、容易に調製することができるが、しかし、当然、可変領域にはマウスの特徴が残っている。フレーム領域を形成するアミノ酸配列をコードする遺伝子を操作することによって可変領域を「ヒト化」するためのはるかに困難な処理法でも、免疫特異性を破壊せずに、典型的にはヒト以外の生物に由来するCDRを操作することができないため、望ましい結果は得られない。
【0034】
したがって、本発明に係る方法により、初めて、完全なヒト免疫グロブリンまたは完全にヒト型である特徴を有する免疫特異的な領域を含む類似体が提供される。
【0035】
本発明に係る方法によって、ヒト抗体およびヒト類似体を得られる抗原は多数ある。これらの抗原には、以下の一群が含まれるが、これらに限定はされない:
CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD11a、b、c、CD13、CD14、CD18、CD19、CD20、CD22、CD23、CD27およびそのリガンド、CD28およびそのリガンドであるB7.1、B7.2、B7.3、CD29およびそのリガンド、CD30およびそのリガンド、CD40およびそのリガンドであるgp39、CD44、CD45およびアイソフォーム、Cdw52(キャンパス(Campath)抗原)、CD56、CD58、CD69、CD72、CTLA-4、LFA-1、ならびにTCRなどの白血球マーカー、
MHCクラスIまたはII、ルイスY抗原、Slex、Sley、Slea、およびSlebなどの組織適合性抗原、
VLA-1、VLA-2、VLA-3、VLA-4、VLA-5、VLA-6、LFA-1、Mac-1、αVβ3、およびp150,95などのインテグリンを含む接着分子、
L-セレクチン、E-セレクチン、およびP-セレクチンなどのセレクチン、ならびにそれらのカウンターレセプターであるVCAM-1、ICAM-2、およびLFA-3、
IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、およびIL-15などのインターロイキン、
IL-1R、IL-2R、IL-3R、IL-4R、IL-5R、IL-6R、IL-7R、IL-8R、IL-9R、IL-10R、IL-11R、IL-12R、IL-13R、IL-14R、およびIL-15などのインターロイキンレセプター、
PF4、RANTES、MIP1α、MCP1、IP-10、ENA-78、NAP-2、Groα、Groβ、およびIL-8などのケモカイン(chemokine)、
TNFアルファ、TGFベータ、TSH、VEGF/VPF、PTHrP、EGFファミリー、FGF、PDGFファミリー、エンドセリン、フィブロシン(F3F−1)、ラミニン、およびガストリン解離ペプチド(GRP)などの増殖因子、
TNFアルファR、RGFベータR、TSHR、VEGFR/VPFR、FGFR、EGFR、PTHrPR、PDGFRファミリー、EPO-R、GCSF-R、および他の造血レセプターなどの増殖因子レセプター、
IFNαR、IFNβR、IFNγRなどのインターフェロンレセプター、
Ig、ならびに、IGE、FceRIおよびFceRIIなどのIgレセプター、
her2-neu、ムチン、CEA、およびエンドシアリンなどの腫瘍抗原、
ハウスダストダニ抗原、lol p1(草)抗原、およびウルシオールなどのアレルゲン、
CMV糖蛋白質B、H、およびgCIII、HIV-1のエンベロープ糖蛋白質、RSVのエンベロープ糖蛋白質、HSVのエンベロープ糖蛋白質、EBVのエンベロープ糖蛋白質、VZVのエンベロープ糖蛋白質、HPVのエンベロープ糖蛋白質、肝炎ファミリーの表面抗原などのウイルス蛋白質、
シュードモナスの内毒素およびオステオポンチン/ウロポンチン(osteopontin/uropontin)、ヘビ毒、クモ毒、およびハチ毒などの毒素、
補体C3b、補体C5a、補体C5b-9、Rh因子、フィブリノーゲン、フィブリン、およびミエリン結合増殖阻害因子などの血液因子、
コレステロールエステル転移蛋白質、細胞膜結合基質メタロプロテアーゼ、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)などの酵素、ならびに
ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、LMP1、LMP2、好酸球主要塩基性蛋白質、PTHrp、エオシン好性カチオン蛋白質、pANCA、アマドリ(Amadori)蛋白質、IV型コラーゲン、糖化脂質、γインターフェロン、A7、P-糖蛋白質とFas(AFO-1)、および酸化LDLを含むその他の抗原。
【0036】
特に、好ましい免疫グロブリンおよび類似体は、ヒトIL-6、ヒトIL-8、ヒトTNFα、ヒトCD4、ヒトL-セレクチン、ヒトPTHrp、およびヒトgp39に関して免疫特異的な免疫グロブリンおよび類似体である。ヒトTNFαおよびヒトIL-6と免疫反応する抗体および類似体は、悪液質および敗血症性ショックならびに自己免疫疾患を治療する上で有用である。GP39またはL-セレクチンと免疫反応する抗体および類似体も、自己免疫疾患を治療または予防する上で効果的である。さらに、抗gp39は、対宿主性移植片疾患の治療、器官移植拒絶の予防、および糸球体腎炎の治療に有用である。L-セレクチンに対する抗体および類似体は、再潅流性外傷に関連した虚血の治療に有用である。PTHrpに対する抗体は、骨の病気および転移性癌の治療に有用である。特定の態様において、IL-8に対するヒト抗体を、IL-8に関連した病状または状態の治療または予防に用いてもよい。このような状態には、腫瘍の転移、再潅流外傷、肺浮腫、喘息、心筋梗塞などの虚血性疾患、炎症性腸疾患(クローン病(Crohn's disease)および潰瘍性大腸炎など)、脳炎、ブドウ膜炎、自己免疫疾患(慢性関節リウマチ、シェーグレン症候群、脈管炎など)、変形性関節炎、痛風性関節炎、腎炎、腎不全、皮膚科症状(炎症性皮膚炎、乾癬、脈管炎性蕁麻疹およびアレルギー性脈管炎など)、網膜ブドウ膜炎、結膜炎、神経障害(発作、多発性硬化症および髄膜炎)、急性肺損傷、成人呼吸促進症候群(ARDS)、敗血症性ショック、細菌性肺炎、白血球漏出関連疾患、CNS炎症性障害、多器官不全、アルコール性肝炎、抗原-抗体複合体媒介性疾患、肺の炎症(胸膜炎、アヴェオリティス(aveolitis)、脈管炎、肺炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、嚢胞性線維症)、ベーチェット病、ヴェーゲナー肉芽腫症、および脈管炎性症候群が含まれる。
【0037】
上記の抗体および類似体を用いて治療することができる典型的な自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、乾癬、シェーグレン硬皮症、混合結合組織病、皮膚筋炎、多発性筋炎、ライター症候群、ベーチェット病、1型糖尿病、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、多発性硬化症、重症筋無力症、および天疱瘡が含まれる。
【0038】
治療に応用するためには、薬学的に許容される投与形態で抗体を投与する。有効成分を所望の作用部位に到達させる方法であればいかなる方法によって投与してもよい。例えば、ボーラスとしてまたは一定時間継続する点滴によって、静脈内に、筋肉内に、皮下に、関節内に、滑膜内に、包膜内に、経口で、局所的または吸入経路によって投与することができる。抗体は、一回の投与としてもよいし、一連の処理として投与してもよい。
【0039】
非経口投与のために抗体を、溶液、懸濁液、乳液、または凍結乾燥粉末として、薬学的に許容される非経口賦形剤とともに処方することができる。抗体が、経口投与に適している場合、この処方剤に、例えば澱粉、セルロース、二酸化珪素、さまざまな糖、炭酸マグネシウム、またはリン酸カルシウムなどの適当な添加剤を含ませることができる。適当な賦形剤については、当技術分野における標準的な参考文献である最新版のレミントンの薬剤科学(Remington's Pharmaceutical Sciences, A. Osol)に記載されている。
【0040】
病気を予防または治療するための抗体の適当な用量は、特定の抗体の薬物速度論的特徴、投与の方式および経路、受容者の年齢、体重および健康状態、治療を受けるべき症状のタイプ、および症状の重さと経過、治療の頻度、同時に行われる治療、ならびに所望の生理学的効果などの既知の要素に依存する。下記の実施例は、例示を目的としたものであり、本発明を制限するものではない。
【0041】
これらの実施例において、ゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)と命名されたマウスを、初回免疫に用いる。ゼノマウスは、上記の参照文献であるPCT出願国際公開公報第94/02602号で詳細に説明されている。各抗原に対する適切な免疫化プロトコールは、下記の具体的な実施例で説明されている。標準的なELISAの方法を用いて、それぞれの場合に、免疫したゼノマウスの血清(または不死化したB細胞の上清)を希釈して、抗原特異的なヒト抗体のために用いた。この方式では、免疫するために用いた抗原を、微量滴定用プレートのウェルに固定化した。このプレートを洗浄し、ブロッキングしてから、血清(または上清)を段階希釈して加え、1時間〜2時間インキュベートした。洗浄後、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)に結合させた抗ヒトκ鎖抗体、抗ヒトμ鎖抗体、または抗ヒトγ鎖抗体を加えて1時間インキュベートし、ヒト抗体の特徴を有する結合抗体を検出した。再び洗浄した後、発色試薬のo-フェニレンジアミン(OPD)基質および過酸化水素を加えてから30分後に、微量滴定用プレート読み取り器を用いて492 nmでプレートを測定した。
【0042】
別記しないかぎり、プレートコーティング用緩衝液(0.1 M炭酸緩衝液、pH 9.6)を用いて、抗原をコートした。使用した解析ブロッキング用緩衝液は、0.5%BSA、0.1%トウィーン(Tween)20、および0.01%チメロサールを含むPBSであり、発色のために用いた基質緩衝液は、クエン酸7.14 g/l、二塩基性リン酸ナトリウム17.96 g/lを含み、発色液(使用直前に調製される)は、10 mlの基質緩衝液にOPD 10 mgおよび過酸化水素 5 mlを加えたものであり、停止液(発色を停止するために用いられる)は2 M 硫酸であった。洗浄液は、0.05%トウィーン(Tween)20含有PBSであった。
【0043】
〔実施例1〕
ヒトIL-6に対するヒト抗体
8週〜20週齢のゼノマウスを3匹から5匹、週齢を合わせて、フロイント不完全アジュバントに乳状化した50μgのヒトIL-6を初回免疫として腹腔内投与することにより免疫し、以後の注射では、完全フロイントアジュバントに入れて免疫した。マウスは、2〜3週間の間隔で6回注射した。血清の滴定濃度は、二回目の投与後に決定し、その後も各投与後に決定した。注射後6日〜7日目に、後延髄叢から採血した。この血液は、血清を分離して採集する前に室温に約2時間おいて凝固させてから、4℃で少なくとも2時間インキュベートした。
【0044】
上記で説明したようにして、コーティング用緩衝液中2μg/mlの組換えヒトIL-6 100μl/ウェルを用いてELISAを行なった。そして、プレートを4℃で一晩または37℃で2時間インキュベートしてから、洗浄用緩衝液で3回洗浄した。次に、100μl/ウェルのブロッキング用緩衝液を加えて、室温で2時間インキュベートし、さらに3回洗浄した。
【0045】
そして、50μl/ウェルの希釈した血清試料(ならびに、陽性対照および陰性対照)をプレートに加えた。次に、プレートを室温で2時間インキュベートし、再び3回洗浄した。
【0046】
洗浄後、HRPに結合したマウス抗ヒトμ鎖抗体 100μl/ウェルを1/2,000に、またはHRPに結合したマウス抗ヒトκ鎖抗体 100μl/ウェルを1/2,000に、ブロッキング用緩衝液で希釈して加えた。室温で1時間インキュベートした後、このプレートを3回洗浄して、OPD基質で10分〜25分発色させた。そして、50μl/ウェルの停止液を加えて、ELISAプレート読み取り器を用い492nmで結果を読み取った。6回注射した後のゼノマウスから採取した血清を希釈して得られた希釈曲線を図3に示す。図3のデータから、抗ヒトκおよび抗ヒトμと免疫反応する抗IL-6の産生は、1:1,000以上の血清希釈度で検出されることが示される。
【0047】
〔実施例2〕
ヒトTNFαに対するヒト抗体
ヒトIL-6の代わりに組換えヒトTNFα(1回の注射につき5μg)を用いたこと以外は、実施例1で説明したようにして、免疫および血清の調製を行なった。ELISAプレートの最初のコーティングに、コーティング用緩衝液中1μg/mlの組換えヒトTNFαを100μl/ウェル用いたこと以外は、実施例1で説明したようにして、ELISAを行なった。
【0048】
6回誘導した後のゼノマウスから採取した血清を希釈して得られた希釈曲線を図4に示す。再び、ヒト抗TNFα結合の有意な滴定濃度が示された。
【0049】
ゼノマウスを1回および2回免疫した後のhγ、hμ、および、hκの血清滴定濃度を表1に示す。ゼノマウスにおいてTNFαで抗原投与することにより、最初の免疫では優位なIgM応答から、第二回目の免疫では大型IgG成分による免疫応答へと、アイソタイプが転換される。
【表1】
【0050】
〔実施例3〕
ヒトCD4に対するヒト抗体
トランスフェクションされた組換え細胞上のヒトCD4ζを用いて、以下のようにして、ヒトCD4抗原を表面蛋白質として調製した。ヒトCD4ζは、CD3複合体の成熟ζ鎖のCD4細胞外ドメイン、CD4膜通過ドメイン、および31〜142残基目に相当する細胞質ドメインを含む。「ロバーツ(Roberts)ら、Blood (1994) 84:2878」で説明されているヒトCD4ゼータ(F15 LTR)を、「フィナー(Finer)ら、Blood (1994) 83:43」に記載のカット(Kat)高効率形質導入法を用いて、「カラン(Callan), M.,ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1993) 90:10454」に記載されているラットの好塩基球性白血病細胞系RBL-2H3に導入した。要約すると、ウェルあたり106個のRBL-2H3細胞を、750μlのDMEMlow+20% FBS(ギブコ(Gibco))および16μg/mlのポリブレン中で、等量のプロウイルス上清とともに、37℃、5%CO2で2時間培養した。培地1mlを取り除いて750μlの感染用培地およびレトロウイルス上清を各ウェルに加え、この培養液を一晩インキュベートした。細胞を洗浄し、十分な細胞が選別に利用できるようになるまで、DMEMlow+10% FBS中で増殖させた。FACSTARプラス(ベクトンディキンソン(Becton Dickinson))を用いて、CD4ゼータを導入したRBL-2H3細胞を選別した。マウス抗ヒトCD4 PE抗体で、ヒトCD4に対する細胞の染色を行ない、上位2〜3%の発現細胞を選抜した。
【0051】
初回注射を頚部の基部に皮下注射により行ったことを除いて、実施例1で説明したように、マウス1匹当たり1×107個の細胞を用いて免疫化を行なった。マウスは、2〜3週間の間隔で6回注射した。血清を調製し、ELISAプレートの最初のコーティングに、可溶性組換えCD4を2μg/ml含む100μl/ウェルのコーティング用緩衝液を用いたこと以外は、実施例1で説明されているようにELISAによって解析した。6回注射した後のゼノマウスから採取した血清に対する滴定濃度曲線を図5に示す。ヒト抗CD4反応性の滴定濃度は、1:1,000の希釈度よりも高い濃度であることが示された。
【0052】
〔実施例4〕
ヒトL-セレクチンに対するヒト抗体
マウスプレB細胞300.19をLAM-1 cDNA(LAM-1は、L-セレクチンをコードする遺伝子である)でトランスフェクションして得られた高発現クローンであるC51細胞の表面提示蛋白質として(テッダー(Tedder)ら、J. Immunol. (1990) 144:532)または同じようにトランスフェクションされたCHO細胞を用いて、抗原を調製した。抗-Leu-8抗体を標識に用いた蛍光活性化細胞選別法を用いて、トランスフェクションされた細胞を選別した。
【0053】
C51細胞およびトランスフェクションしたCHO細胞を、100 mmプレート中10%FCSおよび1 mg/mlのG418を含むDME 4.5 g/lグルコース中で増殖させた。陰性対照細胞である3T3-P317細胞(モロニー(Moloney)ウイルスのgag/pol/env遺伝子でトランスフェクションした細胞)を、G418を除いた同じ培地中で増殖させた。
【0054】
初回免疫は、頚部の基部に皮下注射して行ない、その後の注射は、腹腔内に行なった。2〜3週間毎に合計5回注射したが、注射1回につき、7千万〜1億個のC51細胞またはトランスフェクションしたCHO細胞を用いた。
【0055】
実施例1で説明されているようにして血清を採集して、実施例1と同じプロトコールで、ELISAによって解析した。
ELISAのために、トランスフェクションした細胞を96穴プレートに接種し、細胞数により1日〜2日間細胞が単層になるまで増殖させ、集密状態になったときにELISAに用いた。冷却1×PBSによる最初の洗浄によって細胞を固定し、その後固定液(5%氷酢酸、95%エタノール)を加えた。プレートを−25℃で5分間インキュベートして、プレートシーラーでシールすることにより、この温度で保存することができる。
【0056】
このプレートを室温に戻し、プレートを振って固定液を除去し、10%FCS含有DMEM培地を各ウェル当たり200μl用いて5回洗浄し、ELISAを開始する。
【0057】
ウェルを、さまざまな希釈度の血清または陽性もしくは陰性対照で処理した。陽性対照のウェルには、ヒトL-セレクチンに対するマウスIgG1モノクローナル抗体が含まれていた。
【0058】
ウェルを45分間インキュベートして、顕微鏡で単層が完全であることを確認した。そしてこれらのウェルを、実施例1で説明したように、HRPを結合した抗ヒトκ鎖抗体または抗ヒトμ鎖抗体とともにインキュベートした。次に、このプレートを1%BSA/PBSで洗浄し、再度PBSで洗浄し、単層が完全であることを確認した。上述したように、プレートを発色させ、停止させ、読み取りを行った。ゼノマウスからの血清に関する結果を、図6および7に示す。L-セレクチンおよび対照用3T3細胞の両方に対するヒト抗体が得られた。しかし、血清滴定濃度はL-セレクチン発現細胞の方が、親株の3T3細胞に較べて高かった。これらの結果から、ゼノマウスが、ヒトμ重鎖領域とヒトκ軽鎖とを有する、L-セレクチンに特異的な抗体を産生することが示される。
【0059】
また、免疫したゼノマウスから得た抗血清を、L-セレクチンを発現するヒト好中球の染色について試験した。ヒトの好中球は、以下のようにして調製した:
末梢血を、正常な任意提供者から100ユニット/mlヘパリンで採集した。約3.5mlの血液で、等量の一段階ポリモルフ・グラジエント(One-step Polymorph Gradient)(アキュレイトケミカル(Accurate Chemical), Westbury, NY)の上を覆い、20℃、450×gで30分間遠心した。好中球分画を除去して、DPBS/2% FBSで2回洗浄した。
【0060】
そして、次の何れかで、好中球を染色した:
(1)C51細胞(L-セレクチンを発現する)で免疫したゼノマウスから採取した抗血清、
(2)陰性対照として、ヒトgp39を発現する細胞で免疫したゼノマウスから採取した抗血清。
【0061】
染色、洗浄した好中球をFACSによって解析した。ゼノマウスから採取した抗血清に関する結果を図8に示す。
【0062】
これらの結果から、免疫したゼノマウスの血清には、L-セレクチンと免疫反応する完全なヒト軽鎖を含む抗体が存在することが示される。陰性対照であるgp39で免疫したマウスの抗血清には、ヒト好中球に対して反応する抗体は含まれていない。
【0063】
〔実施例5〕
ヒトgp39に対するヒト抗体
gp39(CD40に対するリガンド)は、活性化されたヒトCD4 T細胞で発現される。本実施例にしたがって組換えgp39で免疫したゼノマウス(登録商標)の血清には、gp39に免疫特異的な完全なヒト抗体が含まれていた。
【0064】
抗原には、図9に示されているような哺乳動物発現ベクターP1K1.HUgp39/IRES NEOの中にクローニングされたgp39のcDNAを発現させる、300.19細胞またはCHO細胞の安定的なトランスフェクション体が含まれる。CHO細胞は、トランスフェクションする前に1:10に分けて、グリシン、ヒポキサンチン、およびチミジンを添加したDMEM(グルコース 4.5 g/l、FBS 10%、グルタミン2 mM、MEM、NEAA)に入れた。リン酸カルシウムトランスフェクション法を用いて、9μg/10 cmプレート(6×105個の細胞)のgp39ベクターおよび1μg/10 cmプレートのDHFR発現ベクターpSV2DHFR(スブラナニ(Suburanani)ら、Mol Cell Biol(1981) 9:854)で細胞を共トランスフェクションした。24時間後、細胞を1:10に分けて、0.6 mg/mlのG418を含む最初の培地に移した。抗gp39抗体を用いたFACSによって、gp39を産生する細胞を選別した。
【0065】
実施例1に記載されているようにグループ別に分けたマウスを、gp39を発現する300.19細胞で免疫した。初回免疫は、頚部の基部に皮下注射して行ない、その後は2〜3週間毎に腹腔内注射により行なった。ELISAを行うために、実施例1で説明されているようにして血清を採集した。ELISA法は、実質的には、実施例1で示されているようにして行なったが、グルコース 4.5 g/l、FCS 10%、グルタミン 4 mM、およびMEM用の非必須アミノ酸(NEAA)溶液(100×)を含むDMEM中、100 mmプレートで増殖させた、gp39を発現するCHO細胞によって、プレートをコーティングした。ELISA解析の前日に、細胞をトリプシン処理してウェル濾過プレート中に105細胞/200μlで接種し、37℃で一晩インキュベートした。陽性対照はマウス抗ヒトgp39であり、陰性対照はgp39以外の抗原で免疫したマウスの抗血清であった。各解析毎に、50μlの試料を用いた。この解析法の残りの部分は、実施例1に記載されている。
【0066】
CHO細胞上で発現されたgp39で免疫したマウスから4回注射した後に採取した血清に対する滴定濃度曲線を図10に示す。図から分かるように、この血清は、HRPに結合した抗ヒトκ鎖抗体および抗ヒトμ鎖抗体によって検出可能な抗ヒトgp39免疫特異性を有していた。
【0067】
〔実施例6〕
破傷風毒素に対するヒトモノクローナル抗体の調製
本実施例において調製される抗体は、破傷風毒素で免疫したゼノマウスのB細胞を不死化して得たハイブリドーマによって分泌された。免疫化のプロトコールは、実施例1に示したものと同じで、腹腔内注射により初回免疫するために完全フロイントアジュバントに乳濁させた50μgの破傷風毒素を用い、以後は不完全フロイントアジュバントに取り込んだ抗原で腹腔内注射を行なった。マウスは、2〜3週間の間隔で合計4回注射した。
【0068】
抗破傷風毒素C(抗TTC)の許容される血清滴定濃度が得られてから、PBS中の抗原の最終的な免疫投与を、動物を殺処分する4日前に行ない、融合のために脾臓を回収した。
【0069】
ガルフールおよびミルスタイン(Galfre, G. and Milstein, C. Methods in Enzymology (1981) 73:3〜46)によって説明されているところに従って、脾臓細胞をミエローマ細胞P3X63-Ag8.653と融合させた。
【0070】
融合後、細胞を37℃、10%CO2で培養するために、グルタミンおよびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したHATを含む15%FCS DMEMに懸濁した。この細胞を微量滴定用プレートに接種して、HAT添加培地に移植するまで2週間、HAT添加培地に維持した。ELISAを用いた一次スクリーニングを行うために、ハイブリドーマを含むウェルから上清を採集した。
【0071】
ELISAは、実施例1で説明されているようにして行ったが、抗原のコーティングには、コーティング緩衝液に2μg/mlの破傷風毒素C(TTC)蛋白質を100μl/ウェルで入れ、その後4℃で一晩インキュベートするかまたは37℃で2時間インキュベートすることを含む。初回のELISAでは、実施例1で説明されているように、HRP結合マウス抗ヒトIgMを用いた。ELISA解析にしたがって抗TTCを分泌する2つのハイブリドーマ、クローンD5.1とクローンK4.1とを以後の解析に用いた。
【0072】
図11に示すように、クローンD5.1は、HRP結合抗ヒトμ鎖抗体およびHRP結合抗ヒトκ鎖抗体を用いて検出できる完全なヒト抗TTCを分泌する。このことは、図11において確認された。
【0073】
陽性対照(それぞれ、TNFα、IL-6、およびIL-8で免疫したゼノマウスからの血清)が陽性のELISA結果を示すような条件下における、TNFα、IL-6またはIL-8を固定化抗原として用いたELISAにおいて、D5.1によって分泌される抗体は免疫応答しなかった。
【0074】
図12および13に示されているように、このモノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAの完全な塩基配列が決定された。約106個のハイブリドーマ細胞からポリA mRNAを分離し、任意のヘキサマーをプライマーに用いるcDNAの作製に用いた。この産物の一部を、適当なプライマーを用いたPCRによって増幅した。
【0075】
この細胞系からヒトκ軽鎖が提供されることが知られているため、軽鎖をコードするcDNAのPCR増幅のために用いたプライマーは、定常領域の末端から合成を開始させるHKP-1(5'-CTCTGTGACACTCTCCTGGGAGTT-3';配列番号18)および可変領域のセグメントから合成を開始させるために等量で用いられる2つ目のプライマーB3(5'-GAAACGACACTCACGCAGTCTCCAGC-3';配列番号19)であった。
【0076】
D5.1(ヒトμ定常領域を含む)に由来する抗体の重鎖を増幅するため、MG-24VIを可変部から合成を開始するために用い、μP1(5'-TTTTCTTTGTTGCCGTTGGGGTGC-3';配列番号20)を定常領域の末端から合成開始するために用いた。
【0077】
クローンD5.1によって分泌される抗体の重鎖に対応する配列を示す図12を参照すると、この重鎖に、ヒトの可変部断片VH6、ヒト多様性領域DN1、およびヒトμ定常領域に結合したヒトJ分節JH4が含まれていることが分かる。生殖系列の配列では、可変領域の中に2塩基対の突然変異がいずれもCDR中にあった。さらに、2つの突然変異がD分節にあり、6個の非生殖系列の塩基付加がDb〜Jb結合部位にあった(生殖細胞系列 VH6:配列番号1;ハイブリドーマ D5.1.4:配列番号2;生殖細胞系列 JH4:配列番号3;生殖細胞系列 D(N1):配列番号4;生殖細胞系列 hMu:配列番号5)。
【0078】
最後に、クローンD5.1によって分泌される抗体の軽鎖を示す図13を参照すると、ヒトκ可変領域B3およびヒトκ結合領域JK3が示される。生殖系列の配列とは9個の塩基対が異なっており、3個はCDR1に落ちている(生殖細胞系列 B3:配列番号6;ハイブリドーマ 05 1.4:配列番号7;生殖細胞系列 JK3:配列番号8;生殖細胞系列 CK:配列番号9)。
【0079】
〔実施例7〕
PTHrpに対するヒト抗体
ゼノマウス-2(登録商標)の群を、ラトクリファら(Ratcliffeら、J. Immunol. Methods 127:109 (1990))の説明に従って、BTGに結合したPTHrp(1-34)または4分岐MAP(多重抗原性ペプチドシステム)として合成されたPTHrp(1-34)のいずれかを用いて腹腔内注射により免疫した。抗原は、CFA(完全フロイントアジュバント)に乳濁させ、動物1匹あたり25μgの用量を2週間の間隔で腹腔内注射し、2回注射した後採血した。この採血で得た血清を、前記で説明したようにしてELISAで解析した。
【0080】
ゼノマウス(登録商標)を1回免疫した後のhγ、hμ、およびhκに関する血清滴定濃度を表2に示す。PTHrpで免疫すると、7匹のうち5匹のゼノマウス(登録商標)が初回採血で低い血清滴定濃度を示したが、PTHrp-MAPを用いると、7匹のうち7匹とも初回採血で高い血清滴定濃度を示す。
【表2】
【0081】
〔実施例8〕
ヒトIL-8に対するヒト抗体
免疫および血清の調製は、ヒト組換えIL-8を免疫原として使用したこと以外、実施例1に説明されたところに従った。
【0082】
ELISAは回収した血清について行い、これも実施例1で説明されているところに正確に従ったが、ただし、抗原のコーティングには、0.5 mg/mlの組換えヒトIL-8を含むコーティング緩衝液を100μl/ウェルで用いた。6回注射した後のゼノマウスから採取したさまざまな血清を希釈して得られた結果が図14に示されている。ヒト抗IL-8結合が、再び、1:1,000の希釈度で示されるよりも高い濃度を有する血清希釈度で示された。
【0083】
〔実施例9〕
ヒトIL-8に対する高親和性ヒトモノクローナル抗体の調製
8週〜10週齢のゼノマウス(登録商標)4〜6匹のグループを用いて、免疫およびハイブリドーマ作製を行なった。初回免疫には、完全フロイントアジュバント(CFA、シグマ(Sigma))に乳濁させた25μgの組換えヒトIL-8(バイオソースインターナショナル(Biosource International), CA, USA)を腹腔内投与してゼノマウス(登録商標)を免疫した。以後の注射はすべて、不完全フロイントアジュバント(IFA、シグマ(Sigma))に取り込ませた抗原によって行なった。ハイブリドーマ作製のために脾臓の供与体として用いた動物に対しては、リン酸緩衝食塩水(PBS)に入れた抗原の最終投与を、融合の4日前に行なった。免疫したゼノマウス(登録商標)の血清滴定濃度について、2回目の抗原投与の後に解析を開始し、その後抗原投与する度に解析した。注射後6日〜7日目に、後延髄叢から試験採血した。この血液は、血清を分離して採集する前に、室温に約2時間おいて凝固させてから4℃で少なくとも2時間インキュベートした。
【0084】
ハイブリドーマの作製
予め抗原で免疫したゼノマウス(登録商標)から採取した脾臓細胞を、ガルフールら(Galfre, G.ら、Methods in Enzymology 73:3〜46, (1981) )の説明に従って、bcl-2(NSO-bcl2)でトランスフェクションした非分泌性NSOミエローマ細胞と融合させた。要約すると、融合は、洗浄した脾臓細胞とミエローマ細胞とを5:1の割合で混合し、800×gの遠心分離でゆっくりと沈澱させることにより行った。上清を完全に除去した後、細胞に、1mlの50%PEG/DMSO(分子量1500のポリエチレングリコール、10%DMSO、シグマ(Sigma))を1分間以上かけて加えて処理し、この混合液をさらに1分間インキュベートし、そして、2mlのDMEMで2分間以上かけて徐々に希釈してから、8mlのDMEMで3分以上かけてさらに希釈した。この処理は、37℃でゆっくり撹拌を続けながら行った。融合後、細胞を、37℃、空気中10% CO2で培養するために、HATを含み、L-グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシンを添加した15%FCS DMEMに再懸濁した。この細胞を、平底の微量滴定用96穴プレートに接種した。培養物は、HT添加培地に移植するまでの2週間、HAT添加培地で維持した。ハイブリッド細胞の増殖を見るために定期的に培養液を調べ、上述したような抗原特異的なELISAで、ヒトμ鎖、ヒトγ2鎖、およびヒトκ鎖の存在について一次スクリーニング解析を行うために、ハイブリドーマを含むウェルの上清を回収した。陽性の培養液を48穴プレートに移植し、集密状態になったら24穴プレートに移植した。ヒトμ鎖、ヒトγ2鎖、およびヒトκ鎖の存在に関する抗原特異的なELISAで、上清を試験した。
【0085】
表3に示すように、ヒトIL-8に対して特異性を有する完全なヒト・モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマがいくつか、表に示した融合体から作出されていた。これらのヒト・モノクローナル抗体のすべてにおいて、ヒトのγ-2重鎖はヒトκ軽鎖と結合している。
【表3】
【0086】
ゼノマウス(登録商標)ハイブリドーマの動力学的定数の評価
これらの抗体の動力学的パラメータ、特に、オン・オフの速度および解離定数(KD)を決定するために、バイオコア(BIOcore)装置(ファルマシア(Pharmacia))で解析した。バイオコア(BIOcore)装置は、抗原でコートした金のチップへの抗体の結合を測定するために、プラスモンの共鳴を利用する。
バイオコア(BIOcore)の試薬および仕組み:
【0087】
バイオコア(BIOcore)装置、CM5センサー用チップ、界面活性剤P20、ならびにN-ヒドロキシサクシニミド(NHS)、N-エチル-N-1-(3-ジエチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)およびエタノールアミンを含む結合キットをファルマシアバイオセンサー社(Pharmacia Biosensor)から購入した。センサーの表面に固定する抗原の密度を低くして組換えヒトIL-8を表面上に固定し、製造業者によって概説されている一般的な処理手順に従って行った。要約すると、HEPES緩衝液(HBS; 10 mM HEPES, 150 mM NaCl, 0.05 % 界面活性剤P20, pH 7.4)で装置を洗浄し平衡化した後、表面を活性化して、引き続き結合および動力学的実験をするためにIL-8を固定化した。センサーの表面は、活性化するため、等量のNHS(0.1 M)とEDC(0.1 M)との混合液5μlを、10μl/分で表面を横切って流れるように注入し、5 mMのマレイン酸緩衝液、pH 6.0中、12μg/mlのリガンド(ヒト組換えIL-8)5μlを活性化された表面を横切って流れるように注入し、最後に、結合が起こらなかった活性化部位を、35μlの1 Mエタノールアミンを注入して遮断した。非共有結合のリガンドを除去するために、5μlの0.1 M HClを注入して、表面を洗浄した。固定化処理はすべて、HBSを10μl/分で流し続けながら行なった。約100共鳴単位(RU)のリガンド(別々の実験で、82 RUおよび139 RU)をセンサーチップの上に固定化した(製造業者によれば、1,000 RUは、固定化蛋白質約1 ng/mm2に相当する)。
【0088】
これらのリガンドで覆われた表面を用いて、リガンドへの特異的な結合および動力学的実験のために、ハイブリドーマ上清を解析した。これらのセンサーチップのリガンドから解析物質を解離させるための最適な再生条件で、結合と再生とを幾度繰り返しても結合の有意な喪失が観察されない条件は、10μlの100 mM HClの注入である。
IL-8に特異的な完全なヒトモノクローナル抗体の解離ならびに結合速度および見かけ上の親和性定数の決定。
【0089】
反応物の一方をセンサー表面に固定するバイオコア(BIOcore)を用いて、動力学的測定値の決定を、製造業者によって指示されているカールソン(Karlsson)らの「新しい生物学的センサーに基づく解析システムを用いた、モノクローナル抗体-抗原の相互作用の動力学的解析」(J. Immunol. Methods (19910 145, 229))において説明されている方法に従って行なった。要約すると、2つの分子AとBとの間で起きる単一の部位で相互作用は、次の等式で表される。
d[AB]/dt=ka[A][B]-kd[AB]
ここで、Bは表面に固定されており、Aは一定の濃度Cで注入される。この反応は、複合体[AB]の濃度の測定値であり、濃度の項はすべて、バイオコア(BIOcore)の反応単位(RU)として表すことができる。
dR/dt−kaC(Rmax−R)−kdR
ここで、dR/dtは、シグナルの変化速度であり、Cは解析物質の濃度、Rmaxは解析物質の最大結合能力をRUで表したもの、Rは時間tにおけるシグナルをRUで表したものである。この解析において、kaおよびkdの値は、センサーの表面上の固定化リガンドの濃度とは無関係である。製造業者によって提供されるソフトウェアのBIA評価2.1(BIA evaluation 2.1)を用いて、解離速度(kd)および結合速度(ka)を決定した。固定化IL-8を含む表面へのハイブリドーマ上清の注入が完了した後、一定の緩衝液流速45μl/分で10分間続く解離相の間、解離速度定数を測定した。結合相は、流速45μl/分で1.25分以上続くが、このデータは、この前に決定されたkd値を用いたモデルにおいて適合する。異なる濃度の抗IL-8ハイブリドーマ上清について、結合を試験し動力学的なデータを解析するときには、異なるレベルの固定化リガンドを有する少なくとも2つの表面を用いた。これら2つの表面で決定された動力学的定数を表4に示す。親和性は、多様であり、7×10−11から2×10−9 Mの範囲で決定された。これは、正常なマウスから得たマウスモノクローナル抗体の親和性と全く変わらない値である。
【表4】
【0090】
ヒト好中球の単離方法および抗体活性の解析
IL-8のインビボでの一次的な機能は、好中球を誘引して活性化することである。好中球は、AレセプターおよびBレセプターと名づけられた2つの異なるIL-8のレセプターを表面に発現させている。完全なヒト抗体がIL-8の活性を中和できるか否かを判定するために、ヒト好中球を用いて、2つの異なるインビトロ解析を行なった。一つ目の解析方法では、放射性標識したIL-8が好中球のIL-8レセプターに結合することを、抗体によってブロックできるか否かを試験した。二番目の解析方法では、抗体によって、IL-8に誘導された好中球応答、すなわち好中球の表面におけるインテグリンMac-1の上昇制御がブロックされるか否かを試験した。Mac-1には、2本のペプチド鎖、CD11bとCD18とが含まれる。典型的には、抗CD11b抗体が検出のために用いられる。
【0091】
好中球の単離:
ヒトの好中球は、採血したばかりの血液または軟膜から単離される。ヒトの血液は、EDTAを含む滅菌チューブを静脈穿刺することによって集める。軟膜は、スタンフォード血液銀行(Stanford Blood Bank)から入手する。抗凝固血液をプラスチックバッグに入れて、2600×gで10分間、ブレーキをかけずに20℃で遠心分離して調製する。血漿上清を吸引してバッグから除き、軟膜すなわち細胞層上層(40〜50 ml/バッグ)を回収する。1単位の軟膜(40〜50 ml)を、Ca2+、Mg2+を含まないPBSで、最終容量が120 mlになるよう希釈する。30 mlの血液または希釈した軟膜を、50 mlの遠心管の中の、フィコールパック・プラス(Ficoll-Paque Plus)(ファルマシアバイオテク(Pharmacia Biotech))の20 mlの層の上に移し入れる。この遠心管を、500×gで20分間、ブレーキをかけずに20℃で遠心分離する。上清、界面の単核球細胞、および沈澱の上の層を注意深く除去する。単核球細胞を完全に取り除くために、好中球と赤血球とを含む細胞沈殿物を5mlのPBSに再懸濁して、きれいな50 ml遠心管に移し入れる。細胞を、Ca2+、Mg2+を含まないPBSで洗浄する(300×gで4℃、5分間)。次に、塩化アンモニウムで赤血球を溶解する。細胞を、155 mM NH4Clおよび10 nM EDTA、pH 7.2〜7.4を含む氷冷溶液40 mlに再懸濁する。この遠心管を、時折混合しながら、10分間氷中に置いてから、300×g、4℃で5分間遠心分離する。この沈澱をPBSに再懸濁して、1回洗浄する(300×gで4℃、5分間)。もし、赤血球の溶解が不完全なようであれば、塩化アンモニウムによる処理を繰り返す。好中球をもう一度洗浄して、最後に、解析用培地(10%ウシ胎児血清、2 mM L-グルタミン、5×10−5の2-メルカプトエタノール、1×非必須アミノ酸、1 mMピルビン酸ナトリウム、および10 mM HEPESを添加したRPMI-1640)で3×107細胞/mlの密度に懸濁するか、または結合緩衝液(0.1%ウシ血清アルブミン、および0.02% NaN3を含むPBS)で6×106細胞/mlの密度に懸濁する。
【0092】
IL-8レセプター結合解析:
マルチスクリーンフィルタープレート(96穴、ミリポア(Millipore)、MADVN6550)を、0.1%ウシ血清アルブミンおよび0.02% NaN3を含むPBS結合緩衝液で、25℃で2時間、前処理した。4×105個の好中球、0.23 nM [125I]-ヒト-IL-8(アマーシャム(Amersham)、IM-249)およびPBS結合緩衝液でさまざまな濃度にした抗体を含む最終容量150μlを各ウェルに加え、プレートを4℃で90分間インキュベートした。細胞を200μlの氷冷PBSで5回洗浄し、PBSを吸引して除いた。フィルターを風乾して、3.5 mlのシンチレーション液(Beckman Ready Safe)を加えて、ベックマン(Beckman)LS6000ICカウンターでフィルターをカウントした。得られたデータは、%特異的結合 [125I]-IL-8で表され、抗体存在下でのcpmを、PBS結合緩衝液のみのときのcpmで割ってから100を掛けて計算されたものである(図15)。試験したヒト抗IL-8モノクローナル抗体6種ともすべて、ヒト好中球へのIL-8の結合をブロックした。
【0093】
好中球CD11b(Mac-1)発現解析:
最終濃度10 nMのヒトIL-8を、さまざまな濃度のモノクローナル抗体と共に、4℃で30分間および37℃でさらに30分間、予めインキュベートしておいた。好中球(4×105個/ウェル)を、抗体の存在下または非存在下で、4℃で90分間、IL-8と接触させて、PE結合マウス抗ヒトCD11b(Beckman DIckinson)と45分間、4℃でインキュベートした。細胞を、2%ウシ胎児血清を含む氷冷PBSで洗浄した。ベクトン・ディキンソン(Beckton DIckinson)社のファクスキャン(FACscan)細胞分析器で蛍光測定した。本実験では、ヒトCD11bに対するマウスモノクローナル抗体をR&Dシステム(R&D System)社から入手して陽性対照として用い、精製されたヒトミエローマIgG2(カルバイオケム(Calbiochem))を陰性対照として用いた。好中球上でのCD11bの発現レベルを測定し、平均蛍光チャンネル値(fluorescence channnel)として表示した。陰性対照抗体から得られた平均蛍光チャンネル値を、実験試料の平均蛍光チャンネル値から引き算した。
表5に示すように、6つの抗体のうち5つがCD11bの上昇制御をある程度ブロックし、5つのうち3つが完全に遮断した。
【表5】
CD11b発現のバックグラウンド値は、670(平均蛍光)で、10 nMのヒトIL-8の存在下におけるCD11b発現は、771である。
【0094】
抗hIL-8ハイブリドーマから生じた免疫グロブリンの転写物の配列解析
すべての配列は、ヒトVHおよびヒトVκファミリーに特異的なプライマー(マークス(Marks)ら、1991; Euro. J. Immunol. 21:985〜991)、ならびにヒトγ2定常領域に特異的なプライマー(MG-40d; 5'-GCTGAGGGAGTAGAGTCCTGAGGACTGT-3';配列番号21)またはヒトκ定常領域に特異的なプライマー(HKP2;グリーン(Green)ら、1994; Nature Genetics 7:13〜21)を用いて、ハイブリドーマD1.1、K2.2、K4.2、およびK4.3から調製されたRNAのRT-PCR反応によって生成されたPCR断片のダイレクトシークエンシングによって得られた。図16A〜Hにおいて、4つのクローンの両鎖を配列決定し、完全な配列になるよう解析した。すべての配列は、「V BASE 配列ディレクトリ」(トムリンソン(Tomlinson)ら、MRC Centre for Protein Engineering, Cambridge, UK)に対するアラインメントによって解析した。可変領域とJ(結合)領域とを括弧[ ]で示した。「N」を含む塩基は、作成された配列の中で不確かなものであることを示している。
【0095】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマD1.1の重鎖の転写物には、ヒトVH4〜21(DP-63)の可変領域(生殖系列の配列と比較すると7箇所の点突然変異が見られた)、ヒトの21-10rcD分節、ヒトJH3 J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16A参照。(配列番号10)
【0096】
ハイブリドーマD1.1のκ軽鎖の転写物には、Vκ08/018(DPK1)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると16箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ3 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16B参照。(配列番号11)
【0097】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマK2.2の重鎖の転写物には、ヒトVH3-30可変領域(生殖系列の配列と比較すると3箇所の点突然変異が見られた)、ヒトのIR3rc D分節、ヒトJH4 J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16C参照。(配列番号12)
【0098】
ハイブリドーマK2.2のκ軽鎖の転写物には、VκIV(B3;DPK24)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると9箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ3 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16D参照。(配列番号13)
【0099】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマK4.2の重鎖の転写物には、ヒトVH4-34可変領域(生殖系列の配列と比較すると8箇所の点突然変異が見られた)、ヒトのK1 D分節、ヒトJH4J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16E参照。(配列番号14)
【0100】
ハイブリドーマK4.2のκ軽鎖の転写物には、Vκ08/018(DPK1)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると6箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ4 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16F参照。(配列番号15)
【0101】
V-baseデータベースで見つけられた配列との配列アラインメントによると、ハイブリドーマK4.3の重鎖の転写物には、ヒトVH5-51(DP-73)可変領域、ヒトのM5-a/M5-b D分節、ヒトJH4 J(結合)領域、およびヒトγ2定常領域が含まれる。図16G参照。(配列番号16)
【0102】
ハイブリドーマK4.3のκ軽鎖の転写物には、Vκ02/012(DPK9)と相同性を有するヒトκ可変領域(生殖系列の配列と比較すると9箇所の点突然変異が見られた)、ヒトJκ4 J(結合)領域、およびヒトκ定常領域が含まれる。図16H参照。(配列番号17)
【0103】
本明細書において引用されている出版物および特許出願はすべて、特別かつ個々に参照として本明細書に組み入れられているものとする。
【0104】
上記の発明は、理解を明確にすることを目的として、例示および実施例という形で、ある程度詳細に説明してきたが、本発明の開示から、添付の請求の範囲の精神または意図から逸脱することなくこれに一定の変更および修正を加えられることは当業者には容易に理解されると考えられる。
【0105】
生物学的寄託物
サッカロマイセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)に含まれているyH1Cは、米国メリーランド州ロックビル20852、パークローンドライブ(Parklawn Drive)12301にある米国標準培養株コレクション(American Type Culture Collection)(「ATCC」)に、1996年4月26日に寄託し、ATCC寄託番号74367を与えられた。このYACの寄託は、例示の目的でのみなされたものであり、本発明の請求内容を実施するためにこの寄託物が必要であるということを出願人が認めていることを意味するのではない。
【0106】
このような行為が可能なすべての指定国について、指定国の法律の下で法的に許容される範囲で、例えば、EPC規則28(4)、英国特許法規1982規則17(3)、豪州規定3.25(3)、およびその他の指定国において必要な変更が加えられている類似の条項など、関連する特許法規に従って、寄託された微生物の試料は、それが発行された場合にのみ、個々の専門家が利用可能となることを要請する。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、yH1Cヒト重鎖YACの構造の概略図である。
【図2】図2は、yK2ヒト・カッパ(κ)軽鎖YACの構造の概略図である。
【図3】図3は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトIL-6で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した抗IL-6抗体の血清滴定濃度を示している。
【図4】図4は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトTNF-αで免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した抗TNF-α抗体の血清滴定濃度を示している。
【図5】図5は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトCD4で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した抗CD4抗体の血清滴定濃度を示している。
【図6】図6は、細胞表面でL-セレクチン(L-selectin)を発現する300.19細胞で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)の血清滴定濃度を示している。ヒトμ定常領域の重鎖を有していれば、ELISA解析を用いてこれらの抗体を検出することができる。
【図7】図7は、細胞表面でL-セレクチン(L-selectin)を発現する300.19細胞で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)の血清滴定濃度を示している。ヒトκ軽鎖を有してさえいれば、ELISA解析を用いてこれらの抗体を検出することができる。
【図8】図8は、ヒトL-セレクチン(L-selectin)で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から採取した血清でインキュベートし、ヒト軽鎖κ領域と免疫交差反応をする抗体で標識したヒト好中球のFACS解析を示している。
【図9】図9は、ヒト蛋白質gp39の産生をもたらす哺乳動物細胞をトランスフェクションするために用いたプラスミドの概略図を示す。
【図10】図10は、ヒトgp39を発現するCHO細胞で免疫したマウスの血清滴定濃度曲線を表す。このELISAで検出された抗体は、gp39と免疫交差反応し、ヒトκ軽鎖およびヒト重鎖μ定常領域を含んでいる。
【図11】図11は、ハイブリドーマクローンD5.1によって分泌されるモノクローナル抗体に関する滴定濃度曲線である。このクローンは、破傷風毒素C(TTC)で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)から得られたものであり、ヒトκ軽鎖およびヒト重鎖のμ定常領域を含んでいる。
【図12A】図12は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4(D5.1のサブクローン)の重鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図12B】図12は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4(D5.1のサブクローン)の重鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図13A】図13は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4のカッパ軽鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図13B】図13は、抗破傷風毒素モノクローナル抗体D5.1.4のカッパ軽鎖のDNA配列である。変異型生殖系列を四角で囲ってある。
【図14】図14は、ヒトκ軽鎖および/またはヒトμ重鎖を含む、ヒトIL-8で免疫したゼノマウス(XenoMouse)(登録商標)の抗IL-8抗体の血清滴定濃度を示している。
【図15A】図15は、モノクローナル抗ヒトIL-8抗体による、ヒト好中球へのIL-8の結合阻害を示している。
【図15B】図15は、モノクローナル抗ヒトIL-8抗体による、ヒト好中球へのIL-8の結合阻害を示している。
【図16A】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16B】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16C】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16D】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16E】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16F】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16G】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【図16H】図16(A〜H)は、抗IL-8抗体D1.1(16A〜B)、K2.2(16C〜D)、K4.2(16E〜F)およびK4.3(16G〜H)の重鎖およびカッパ軽鎖のDNA配列である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合し、EGFRに対するEGFの結合を阻害する、単離された完全なヒト抗体。
【請求項2】
細胞に対するEGFの結合を中和する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
109M-1を上回るEGFR親和性を有する、請求項1または2記載の抗体。
【請求項4】
癌細胞のEGF依存性増殖を阻害する、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
重鎖が、ヒトVH4〜31またはVH4〜61遺伝子を利用するヌクレオチド配列にコードされる、請求項1記載の抗体。
【請求項6】
重鎖アミノ酸配列が、生殖系列VH4〜31またはVH4〜61アミノ酸配列の1つまたは複数の変異を含む、請求項5記載の抗体。
【請求項7】
変異が、図30に示すVH4〜31またはVH4〜61アミノ酸配列において変異した1つまたは複数の位置に存在する、請求項6記載の抗体。
【請求項8】
重鎖アミノ酸配列が、図30に示すアミノ酸配列のうちの1つを含む、請求項5〜7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
軽鎖が、ヒトVK018遺伝子を利用するヌクレオチド配列にコードされる、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
軽鎖アミノ酸配列が、生殖系列VK108遺伝子アミノ酸配列の1つまたは複数の変異を含む、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
軽鎖アミノ酸配列が、図6のアミノ酸配列において変異した位置に1つまたは複数の変異を含む、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
軽鎖アミノ酸配列が、図6に示すアミノ酸配列のうちの1つを含む、請求項9〜11に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の完全なヒト抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項14】
請求項13記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項15】
ハイブリドーマまたはマウス細胞である、請求項16記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項13記載の核酸を含む宿主細胞を培養する段階を含む、請求項1〜12記載の抗体を作製する方法。
【請求項17】
宿主細胞がハイブリドーマ細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
癌治療薬を製造するための、請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項19】
腫瘍細胞の増殖阻害薬を製造するための、請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項20】
薬物が、癌細胞のEGF媒介増殖刺激作用を阻害する、請求項18または19記載の使用。
【請求項21】
細胞または腫瘍を、インビトロで請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体に接触させる段階を含む、EGF依存性細胞増殖または腫瘍増殖を阻害する方法。
【請求項22】
上皮増殖因子受容体(EGFR)を、インビトロで請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体に接触させる段階を含む、EGFRに対する上皮増殖因子(EGF)の結合を阻害する方法であって、ここで、抗体はEGFRに対するEGFの結合を阻害することが可能である方法。
【請求項1】
上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合し、EGFRに対するEGFの結合を阻害する、単離された完全なヒト抗体。
【請求項2】
細胞に対するEGFの結合を中和する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
109M-1を上回るEGFR親和性を有する、請求項1または2記載の抗体。
【請求項4】
癌細胞のEGF依存性増殖を阻害する、請求項1〜3のいずれか一項記載の抗体。
【請求項5】
重鎖が、ヒトVH4〜31またはVH4〜61遺伝子を利用するヌクレオチド配列にコードされる、請求項1記載の抗体。
【請求項6】
重鎖アミノ酸配列が、生殖系列VH4〜31またはVH4〜61アミノ酸配列の1つまたは複数の変異を含む、請求項5記載の抗体。
【請求項7】
変異が、図30に示すVH4〜31またはVH4〜61アミノ酸配列において変異した1つまたは複数の位置に存在する、請求項6記載の抗体。
【請求項8】
重鎖アミノ酸配列が、図30に示すアミノ酸配列のうちの1つを含む、請求項5〜7のいずれか一項記載の抗体。
【請求項9】
軽鎖が、ヒトVK018遺伝子を利用するヌクレオチド配列にコードされる、請求項1〜8のいずれか一項記載の抗体。
【請求項10】
軽鎖アミノ酸配列が、生殖系列VK108遺伝子アミノ酸配列の1つまたは複数の変異を含む、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
軽鎖アミノ酸配列が、図6のアミノ酸配列において変異した位置に1つまたは複数の変異を含む、請求項10記載の抗体。
【請求項12】
軽鎖アミノ酸配列が、図6に示すアミノ酸配列のうちの1つを含む、請求項9〜11に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の完全なヒト抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項14】
請求項13記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項15】
ハイブリドーマまたはマウス細胞である、請求項16記載の宿主細胞。
【請求項16】
請求項13記載の核酸を含む宿主細胞を培養する段階を含む、請求項1〜12記載の抗体を作製する方法。
【請求項17】
宿主細胞がハイブリドーマ細胞である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
癌治療薬を製造するための、請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項19】
腫瘍細胞の増殖阻害薬を製造するための、請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体の使用。
【請求項20】
薬物が、癌細胞のEGF媒介増殖刺激作用を阻害する、請求項18または19記載の使用。
【請求項21】
細胞または腫瘍を、インビトロで請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体に接触させる段階を含む、EGF依存性細胞増殖または腫瘍増殖を阻害する方法。
【請求項22】
上皮増殖因子受容体(EGFR)を、インビトロで請求項1〜12のいずれか一項記載の抗体に接触させる段階を含む、EGFRに対する上皮増殖因子(EGF)の結合を阻害する方法であって、ここで、抗体はEGFRに対するEGFの結合を阻害することが可能である方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図16H】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図16D】
【図16E】
【図16F】
【図16G】
【図16H】
【公開番号】特開2007−167070(P2007−167070A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544(P2007−544)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【分割の表示】特願2005−294297(P2005−294297)の分割
【原出願日】平成8年4月29日(1996.4.29)
【出願人】(398005777)アブジェニックス インク. (40)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【分割の表示】特願2005−294297(P2005−294297)の分割
【原出願日】平成8年4月29日(1996.4.29)
【出願人】(398005777)アブジェニックス インク. (40)
【Fターム(参考)】
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