免疫プロセスの特異的調節のための双性イオン多糖の使用
【課題】免疫調節用ポリマーの三次元分子構造決定、三次元コンピュータ分子モデリング、合理的薬剤設計に基づく新規な単離免疫調節ポリマーの提供、及び免疫調節ポリマーと共に免疫調節活性を有する療法剤を設計し、選択し、スクリーニングする方法の提供。
【解決手段】複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造-(S1-S2-S3-S4)-を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合アミノ部分を含む単離免疫調節ポリマー、及び一次構造を有する免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成する等の方法によって、免疫調節ポリマー候補をコンピュータにより設計し、選択し、スクリーニングする方法。
【解決手段】複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造-(S1-S2-S3-S4)-を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合アミノ部分を含む単離免疫調節ポリマー、及び一次構造を有する免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成する等の方法によって、免疫調節ポリマー候補をコンピュータにより設計し、選択し、スクリーニングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/251,747号、2000年12月5日出願に基づく優先権を請求する。
【0002】
本発明は、バイオテクノロジー、三次元分子構造決定、三次元コンピュータ分子モデリング、合理的薬剤設計、および免疫調節ポリマーの分野にある。本発明は、免疫調節ポリマーと共に、免疫調節活性を有する療法剤を設計し、選択し、そしてスクリーニングする方法に関する。本発明はまた、核磁気共鳴(NMR)、化学的方法、およびコンピュータ読み取り可能媒体上のガスクロマトグラフィー-質量分析データの使用に基づく合理的薬剤設計のため、多糖PS A2の三次元コンピュータモデリングも提供する。
【背景技術】
【0003】
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)種は、偏性嫌気性グラム陰性細菌であり、そして腹腔内敗血症および膿瘍などの、重症のヒト感染症から単離される、最も一般的な嫌気性菌である。Gorbach SLら(1974) Anaerobic Microorganisms in Intraabdominal Infections(Charles C. Thomas, イリノイ州スプリングフィールド)中, pp. 399-407;Aldridge KE(1995) Am J Surg 169:2S-7S;Polk BJら(1977) Ann Intern Med 86:567-71。膿瘍は、B.フラジリスによる感染に対する、特徴的な宿主反応であり、そしてかなりの罹患率および死亡率を引き起こす。Cross AS(1994) Lancet 343:248-9。動物モデルにおける以前の研究は、B.フラジリスから単離した莢膜多糖(CP)が、T細胞依存機構を介して、膿瘍形成の経過を調節可能であることを立証した。米国特許第5,679,654号;米国特許第5,700,787号;Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AOら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164, 719-24;Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40。より重要なことに、B.フラジリスCPは、B.フラジリス自体、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、および他の相乗的微生物を含む、非常に多様な膿瘍誘導微生物に対して保護することが可能である。Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AO ら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164, 719-24;Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40。炭水化物抗原がT細胞独立であるパラダイムと対照的に、B.フラジリスCPはT細胞を活性化して、増殖させ、そしてサイトカイン反応を誘発することに注目すると興味深い。Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40;Stein KE(1992) J Infect Dis 165:S49。
【0004】
B.フラジリス由来の免疫調節CPは、正および負電荷両方を高密度で持つ双性イオン多糖(ZPS)である点で、構造的に特殊である。以前の研究によって、B.フラジリス9343の莢膜由来の2つのZPS、PS A(以後、PS A1)およびPS Bが同定され(Pantosti Aら(1991) Infect Immun 59:2075-82;Baumann Hら(1992) Biochemistry 31:4081-9;Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9)、これらはどちらもin vitroでT細胞の強力な活性化因子であり、そしてin vivoで膿瘍形成に対して動物を保護する。Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AOら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J lmmunol 164, 719-24。これらの基の化学的中和はT細胞刺激を消滅させるため、電荷は、免疫学的活性の重大な決定要因である。Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AOら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164, 719-24。より最近の研究は、T細胞仲介膿瘍調節が、ZPSの共通の特性であることを示唆する。Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40。
【0005】
ZPSの分子電荷がその免疫学的効果の重大な決定要因である一方、これらの化合物の一次構造が有意に異なることを理解して、特に、これらの多糖のユニークな免疫学的特性に関連する可能性があるため、B.フラジリスの多様な株由来の異なるZPSの構造の詳細を理解する必要が依然としてある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、部分的に、特定の免疫調節ポリマーが、必要な電荷モチーフに加え、特徴的な三次元特性を持つという発見に基づく。免疫調節ポリマーは、サイトカイン産生、例えばインターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン10(IL-10)を誘導し;T細胞などの免疫細胞を活性化し;そして抗原特異的免疫グロブリンG(IgG)抗体産生を抑制することによって、免疫細胞機構を改変可能である。
【0007】
第一の側面において、本発明は、単離免疫調節ポリマーであって、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造-(S1-S2-S3-S4)-を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合(free)アミノ部分を含む、前記単離免疫調節ポリマーに関する。免疫調節ポリマーは、いくつかの態様において、天然存在ポリマーである。
【0008】
第一サブユニット上の負に荷電した部分は、いくつかの態様において、カルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートである。
サブユニットは、多様な態様において、既知の種類のポリマーサブユニットいずれかである。これらのサブユニットは、限定されるわけではないが、単糖、二糖、アミノ酸、ジペプチド、ヌクレオチド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、並びにそれらの組み合わせおよび類似体(analog)を含むことが可能である。1つの態様において、該サブユニットは、独立に、単糖またはその類似体である。別の態様において、サブユニットは、独立に、アミノ酸またはその類似体である。該サブユニットは、独立に、分枝または非分枝であるであることが可能であり、すなわち、これらはポリマーの主鎖の一部でない、付加されたサブユニットまたは他の置換基を含んでもまたは含まなくてもよい。いくつかの態様において、サブユニットS3は、分枝である。
【0009】
1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分は、いくつかの態様において、別の単位の第四サブユニット上の、二番目に最も近い(next-nearest)未結合アミノ部分から約32Å未満である。ポリマーが、一次、二次および三次構造を有することが可能であると認識すると、約32Åの距離は、ポリマーの主鎖に沿って測定する、または同等に、ポリマーの一次構造に沿って測定すると意味するよう、理解するものとする。同様に、用語「二番目に最も近い」は、この文脈で、主鎖または一次構造に沿って決定するように、近接することを意味する。さらに、約32Åの距離は、1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分の窒素および別の単位の二番目に最も近い第四サブユニット上の未結合アミノ部分の窒素間で測定したものを意味する。
【0010】
本発明は、第二の側面において、単離免疫調節多糖であって、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一の単糖M1、第二の単糖M2、第三の単糖M3、および第四の単糖M4を含む、構造-(M1-M2-M3-M4)-を有する四糖主鎖を含んでなり、各四糖主鎖が、第一の単糖M1上に負に荷電した部分および第四の単糖M4上に未結合アミノ部分を含む、前記単離免疫調節多糖に関する。いくつかの態様において、免疫調節多糖は、天然存在多糖である。好ましい態様において、免疫調節多糖は、バクテロイデス・フラジリス638Rの多糖PS A2である。多糖PS A2は、多糖PS A1とは異なると理解すべきである。
【0011】
いくつかの態様にしたがって、第一の単糖上の負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択される。
多糖の単糖は、独立に単糖またはその類似体であることが可能であり、そして分枝または非分枝であることが可能である。1つの態様において、反復単位の単糖M3は分枝である。
【0012】
いくつかの態様において、1つの反復単位上の第四の単糖上の未結合アミノ部分は、別の単位の第四の単糖上の、二番目に最も近い未結合アミノ部分から約32Å未満である。約32Å未満の距離、並びに別の単位の第四の単糖上の次に最も近い未結合アミノ部分は、多糖の主鎖または一次構造に沿って測定したものを意味するよう、理解するものとする
本発明のこれらの最初の2つの側面にしたがって、いくつかの態様において、複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位を含む。特定の態様において、複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の隣接する反復単位を含む。いくつかの態様において、免疫調節ポリマーまたは多糖は、複数の反復単位から本質的になる。反復単位は、特定の態様において、五量体であり;特定の態様において、反復単位は分枝五量体である。
【0013】
本発明は、第三の側面において、免疫細胞を活性化する薬剤調製物である。この側面にしたがった薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、本発明の第一の側面にしたがった単離免疫調節ポリマー、および薬学的に許容しうるキャリアーである。
【0014】
本発明は、第四の側面において、免疫細胞を活性化する薬剤調製物である。この側面にしたがった薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、本発明の第二の側面にしたがった単離免疫調節多糖、および薬学的に許容しうるキャリアーである。
【0015】
本発明は、第五の側面において、PS A2を含んでなる、単離免疫調節多糖である。
本発明は、第六の側面において、免疫細胞を活性化する薬剤調製物を提供する。この側面にしたがった薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、本発明の第五の側面にしたがった単離免疫調節多糖、および薬学的に許容しうるキャリアーである。
【0016】
いくつかの態様において、前述の薬剤調製物のいずれかのポリマーまたは多糖は、天然存在ポリマーまたは多糖の修飾型または誘導体である。
第七の側面において、本発明は、単離免疫調節ポリマーであって、複数の反復電荷モチーフを有する主鎖を含み、反復電荷が、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるようにポリマーに沿って配置されている、正電荷および負電荷であり、該ポリマーが、大部分の正電荷および負電荷が溶媒接近可能である、三次元溶液コンホメーションを有し、前記三次元溶液コンホメーションが複数のドッキング部位を有し、各ドッキング部位が幅約10Åおよび深さ約5Åである、前記免疫調節ポリマーである。
【0017】
本発明のこの側面にしたがったポリマーは、当該技術分野において知られる免疫調節ポリマーのいかなる種類であることも可能である。1つの態様において、免疫調節ポリマーは、PS A2などの多糖である。他の態様において、免疫調節ポリマーは、ポリペプチドまたは混合ポリマーである。
【0018】
本発明のこの側面および上記側面の各々にしたがった好ましい態様において、免疫調節ポリマーまたは多糖は、PS A1、PS B、チフス菌(Salmonella typhi)Vi抗原、大腸菌(Escherichia coli)K5抗原、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5型莢膜多糖、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)・エキソポリサッカライドII、B群連鎖球菌(group B streptococcus)III型莢膜多糖、緑膿菌(Pseudomonas aerugenosa)フィッシャー免疫型7O抗原、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)第I期リポ多糖O抗原、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)I型莢膜多糖、肺炎連鎖球菌群抗原:C物質、またはクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)・リポペプチドホスホグリカンではない。
【0019】
ポリマーは複数の反復単位を含むことが可能である。いくつかの態様において、ポリマーの複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位を含む。他の態様において、複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の隣接する反復単位を含む。特定の態様において、免疫調節ポリマーは、複数の反復単位から本質的になる。
【0020】
いくつかの態様において、電荷モチーフの正電荷は未結合アミノ基である。いくつかの態様において、電荷モチーフの負電荷はカルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートである。
【0021】
いくつかの態様において、三次元溶液コンホメーションはらせんを含む。好ましい態様において、らせんは右巻きらせんである。好ましい態様において、らせんは約20Åのピッチを有する。
【0022】
本発明のこの側面にしたがった免疫調節ポリマーは、ドッキング部位を含む。いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。いくつかの態様において、ドッキング部位は複数の溶媒接近可能電荷を含む。特定の態様において、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1、10-6 M-1、または10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。
【0023】
いくつかの態様において、免疫調節ポリマーのドッキング部位に結合されるポリペプチドのアルファらせんは、主要組織適合複合体(MHC)分子のアルファらせん、またはT細胞抗原受容体のアルファらせんである。
【0024】
さらに別の側面にしたがって、本発明は、免疫細胞を活性化する薬剤調製物である。該薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、上述の本発明の第七の側面にしたがった免疫調節ポリマーのいずれか、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む。
【0025】
本発明はまた、本発明のポリマーを用いて、免疫反応を改変する方法も提供する。これらの方法には、IL-2反応性障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、および癌;膿瘍形成;癒合形成、例えば術後手術癒合;Th1反応性障害、例えばインスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、および同種移植片拒絶;炎症性異常、例えば敗血症、炎症性腸疾患、骨盤炎症性疾患(PID)、尿路感染症、癌、癒合;自己免疫疾患;移植片対宿主疾患、例えば同種移植片生存促進;乾癬;急性糸球体腎炎;グッドパスチャー症候群;慢性関節リウマチを含む特定の自己免疫関節炎;全身性エリテマトーデス(狼瘡);シェーグレン症候群;自己免疫溶血性貧血;特発性血小板減少性紫斑病(ITP);並びに甲状腺炎の特定の型の治療または予防などの療法が含まれる。
【0026】
別の側面にしたがって、本発明は、感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法である。該方法は、こうした保護が必要な被験者に、感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0027】
さらに別の側面において、本発明は、手術部位で生じる手術癒合形成を減少させる方法に関する。該方法は、こうした治療が必要な被験者に、手術癒合形成を減少させるのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0028】
さらなる側面において、本発明は、IL-2分泌を誘導する方法を提供する。該方法は、こうしたIL-2分泌が必要な被験者に、IL-2分泌を誘導するのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0029】
別の側面において、本発明は、IL-10分泌を誘導する方法を提供する。該方法は、こうしたIL-10分泌が必要な被験者に、IL-10分泌を誘導するのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0030】
さらに別の側面にしたがって、本発明は、免疫調節ポリマー候補を選択する系を提供する。本発明のこの側面にしたがった系は、免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するインプットシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプットを有する、予測モジュール;並びにポリマーシグナルを受け取るインプット、予測モジュールによって生成された三次元溶液コンホメーションが(i)複数の反復単位、(ii)複数の溶媒接近可能電荷、並びに(iii)各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択するロジック、および免疫調節ポリマー候補が解析モジュールによって選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、解析モジュールを含む。
【0031】
1つの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復単位で構成される。反復単位は隣接していることが可能であるし、または介在配列によって分離されていることが可能である。
【0032】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフは、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるように主鎖に沿って配置されている、正電荷および負電荷である。好ましい態様において、電荷モチーフの正電荷は未結合アミノ基である。電荷モチーフの負電荷は、いくつかの態様において、カルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートであることが可能である。
【0033】
選択する免疫調節ポリマー候補は、いくつかの態様において、らせんを含んでなる三次元溶液コンホメーションを有する。好ましい態様において、らせんは約20Åのピッチを有する。
【0034】
選択する免疫調節ポリマー候補は、ドッキング部位を含む。いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。他の態様において、ドッキング部位は複数の溶媒接近可能電荷を含む。さらに他の態様において、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1、10-6 M-1、または10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。
【0035】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は糖主鎖を有する。いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は多糖である。さらに他の態様において、選択する免疫調節ポリマー候補はポリペプチド主鎖を有する。
【0036】
さらなる側面において、本発明は、免疫調節ポリマー候補を選択するコンピュータ実行法を提供する。本発明のこの側面にしたがった、コンピュータ実行法は、免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルを受け取り;免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションが、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能電荷、並びに各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択し;そして免疫調節ポリマー候補が選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力することを伴う。
【0037】
1つの態様において、免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルは、複数の免疫調節ポリマー候補を特定する。
1つの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復単位で構成される。反復単位は隣接していることが可能であるし、または介在配列によって分離されていることが可能である。
【0038】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフは、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるように主鎖に沿って配置されている、正電荷および負電荷である。好ましい態様において、電荷モチーフの正電荷は未結合アミノ基である。電荷モチーフの負電荷は、いくつかの態様において、カルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートであることが可能である。
【0039】
選択する免疫調節ポリマー候補は、いくつかの態様において、らせんを含んでなる三次元溶液コンホメーションを有する。好ましい態様において、らせんは、約20Åのピッチを有する。
【0040】
選択する免疫調節ポリマー候補は、ドッキング部位を含む。いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。他の態様において、ドッキング部位は複数の溶媒接近可能電荷を含む。さらに他の態様において、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3M-1、10-6M-1、または10-9M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。
【0041】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は糖主鎖を有する。いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は多糖である。さらに他の態様において、選択する免疫調節ポリマー候補はポリペプチド主鎖を有する。
【0042】
該方法は、いくつかの態様において、免疫細胞が、通常、活性化されない生理的条件下で、選択する免疫調節ポリマー候補を免疫細胞と接触させ、そして免疫細胞の活性化マーカーを測定することもまた伴う。
【0043】
さらに別の側面において、本発明は、免疫調節ポリマー候補を設計するための系を提供する。本発明のこの側面にしたがった系は、(a)化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するインプットシグナルを受け取るインプットであって、複数のバーチャルサブユニットが、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットが、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなる、前記インプット、(b)複数のバーチャルサブユニットから(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択するロジック、並びに(c)選択したバーチャルサブユニットシグナルを出力するアウトプットを有する、バーチャルサブユニット選択モジュール;選択したバーチャルサブユニットシグナルを受け取る第一のインプットおよび少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプットであって、テンプレートが複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記インプット、(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換するロジック、並びに免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定する、変換したテンプレートシグナルを出力するアウトプットを有する、変換モジュール;変換したテンプレートシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプットを有する、予測モジュール;並びにポリマーシグナルを受け取る第一のインプット、少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプット、およびポリマーシグナルおよびテンプレート間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するインプットシグナルを受け取る第三のインプット、比較規準にしたがって、ポリマーシグナルおよびテンプレートを比較するロジック、並びにポリマーシグナルおよびテンプレートの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、比較モジュールを含む。
【0044】
さらに別の側面にしたがって、本発明は、免疫調節ポリマー候補を設計するコンピュータ実行法を提供する。該コンピュータ実行法は、化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するシグナルを受け取り、複数のバーチャルサブユニットは、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットは、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなり;複数のバーチャルサブユニットから(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択し;少なくとも1つのテンプレートであって、複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記テンプレートを特定するシグナルを受け取り;(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換することによる一次構造を有する免疫調節ポリマー候補を生成し;一次構造を有する免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーション間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するシグナルを受け取り;比較規準にしたがって、免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションを比較し;そして免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するシグナルを出力することを含む。
【0045】
1つの態様において、参照免疫調節ポリマーはPS A2である。
いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補は多糖を含み;いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補は多糖である。いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補はポリペプチドを含み;いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補はポリペプチドである。
【0046】
本発明はまた、いくつかの側面において、本発明の免疫調節ポリマーを用いる医薬品の製造法も含む。該方法は、本発明の免疫調節ポリマーを、薬学的に許容しうるキャリアーに入れることを伴う。例えば、本発明は、IL-2反応性障害、例えばHIV感染、AIDS、癌;膿瘍形成、癒合形成、例えば術後手術癒合、Th1反応性障害、例えばインスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、同種移植片拒絶;炎症性異常、例えば敗血症、炎症性腸疾患、PID、尿路感染症、癌、癒合;自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、例えば同種移植片生存促進;乾癬;急性糸球体腎炎;グッドパスチャー症候群;慢性関節リウマチを含む特定の自己免疫関節炎;狼瘡;シェーグレン症候群;自己免疫溶血性貧血;ITP;並びに甲状腺炎の特定の型を治療するかまたは予防する方法において有用な医薬品を製造する方法を含む。
【0047】
本発明の限定は各々、本発明の多様な態様を含む可能性がある。したがって、1つの要素いずれかまたは要素の組み合わせを伴う、本発明の各々の限定が、本発明の各側面に含まれる可能性がある。
【0048】
詳細な説明
定義
用語「電荷モチーフ」は、本明細書において、正に荷電した未結合アミノ部分および負に荷電した部分を指す。負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、およびスルホネートからなる群より選択することが可能である。
【0049】
用語「ドッキング部位」は、本明細書において、別の分子との非ランダム分子間接触相互作用を達成し、そして/または安定化する際に関与する分子の物理的特徴または領域を指す。典型的には、これは、分子の外部表面の圧入(indentation)または溝を伴う。
【0050】
用語「免疫細胞」は、免疫系の細胞を指す。免疫細胞には、Tリンパ球(T細胞)、Bリンパ球(B細胞)、顆粒球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、およびそれらの前駆細胞が含まれる。免疫細胞は、活性化されていてもまたは静止していてもよく、そしてその種類および刺激に応じて、活性化免疫細胞には多様な特性がある。活性化免疫細胞は、抗原または他の免疫刺激との接触に反応して、増殖し、防御反応を始めるか、または始める準備をし、あるいは細胞表面分子または分泌分子の発現を増加させるよう刺激される、免疫系の細胞である。免疫細胞を活性化する物質は、静止または休止免疫細胞が活性化免疫細胞になるのを誘導する物質である。活性化免疫細胞は、特定の分泌産物、例えばサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、抗体(免疫グロブリン)、および小分子(例えば一酸化窒素、NO)を同化することが可能である。サイトカインには、限定なしに、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β、腫瘍壊死因子(TNF)-α、TNF-β、および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が含まれる。免疫細胞はまた、活性化に際して細胞表面上の特定の分子、例えばMHCクラスI、MHCクラスII、CD11b、CD20、CD25、CD28、CD40、CD43、CD54、CD62L、CD69、CD71、CD80、CD86、CD95L、CD106、CD134、およびCD134Lを上方制御することもまた可能である。免疫活性化マーカーを測定する方法は、一般の当業者に公知であり、これには酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、バイオアッセイ、イムノブロッティング、免疫親和性アッセイ、逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)等が含まれる。
【0051】
用語「免疫調節ポリマー」は、免疫系の細胞または免疫系の細胞と流体コミュニケーションにある細胞と接触した際、免疫細胞の活性化状態に変化を誘導するポリマーを指す。例えば、免疫細胞は、免疫調節ポリマーへのこうした曝露に反応して、サイトカインまたは抗体を分泌することが可能であるし、あるいは細胞表面抗原を発現することが可能である。上に示唆するように、免疫細胞の活性化状態の変化は、直接であっても、または間接的であってもよい。ポリマーは、構築するサブユニットのクラスに関して、ホモポリマーでも、またはヘテロポリマーでもよい。例えば、サブユニットの1つのクラスには、単糖が含まれ;サブユニットのクラスの他の例には、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、それらの置換誘導体、および類似体が含まれる。ポリマーは、ホモポリマーであることが可能であるし、または好ましくは、構築される個々のサブユニットに関してヘテロポリマーであることが可能である。例えば、単糖で構成されるヘテロポリマーは、複数の個々の単糖サブユニットを含むことが可能であり、この多くが当該技術分野に公知である。
【0052】
単糖は、より単純な化合物に加水分解不能な炭水化物である。二糖は、2つの単糖に加水分解可能な炭水化物である。個々の単糖サブユニットの限定されない例は、フコピラノース、フコース、フコサミン、ガラクトサミン、ガラクトサミヌロン酸(galactosaminuronic acid)、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルコサミン、グルコース、グルクロン酸、マンノヘプトース、マンノン酸、マンノサミン、マンノサミヌロン酸、マンノース、マンヌロン酸、並びにそれらの異性体および誘導体を含むことが可能である。
【0053】
アミノ酸は、ポリペプチドが由来する単量体である。アミノ酸には、限定されるわけではないが、天然アミノ酸が含まれる。天然アミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが含まれる。
【0054】
用語「介在配列」は、ポリマー主鎖に沿って現れるが、ポリマーの反復単位に対しては外因性である、化学的部分を指す。介在配列は、例えば、少なくとも1つの単糖、シクロアルキル、または2つの反復単位を架橋して多糖にするのに、化学的に適した他の部分を含むことが可能であり、ここで反復単位は糖類またはオリゴ糖である。別の限定されない例として、介在配列は、少なくとも1つのアミノ酸、アミノ酸類似体、または2つのオリゴペプチドを架橋してポリペプチドを形成するのに、化学的に適した他の部分を含むことが可能である。
【0055】
用語「生理学的条件」は、生存細胞の維持に適した条件を意味する。生理学的条件には、in vivoおよびin vitro条件が含まれる。典型的な生理学的条件には、温度、湿度、イオン強度、pH、酸素負荷、および生存細胞の維持に適した栄養素が含まれる。
【0056】
用語「多糖」は、アルドまたはケト-ヘキソース、ペント-ス、および/またはヘプトース単糖、並びにそれらの誘導体のポリマー型を指す。単糖は、グリコシド連結によって連結される。好ましくは、多糖は、最大10の単糖の反復単位で形成されることが可能であり、ここで各反復単位は、少なくとも1つの未結合アミノ部分、並びに:カルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、およびスルホネートからなる群より選択される、1つの負に荷電した部分を含む。より好ましくは、多糖は、最大5つの単糖の反復単位で形成される。1つのこうした多糖で、最も好ましいのは、本明細書に記載するB.フラジリス莢膜多糖複合体の多糖A2(PS A2)である。本発明にしたがって有用な多糖には、必要な荷電基が含まれる。これらの多糖は、細菌または他の天然存在供給源(例えば海草)に由来することが可能であるし、あるいはこれらは天然存在供給源由来の修飾多糖であることが可能であるし、あるいは合成多糖であることが可能である。注目すべきことに、多糖は、分枝多糖であることが可能である。莢膜多糖を得る出発材料として用いる細菌は、いくつかの供給源から商業的に得ることが可能である。例えば、B.フラジリス、NCTC9343およびATCC23745は、英国タイプ・カルチャー・コレクション(National Collection of Type Cultures)(英国ロンドン)およびアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(メリーランド州ベセスダ)から得ることが可能である。上記細菌から多糖Aおよび多糖Bを精製する方法が記載されている。Pantosti Aら(1991) Infect Immun 59:2075-82;Tzianabos AOら(1992) J Biol Chem 267:18230-5;Tzianabosらに発行された米国特許第5,679,654号。莢膜多糖は、ATCCを含む商業的供給源から純粋な型で得ることが可能である。
【0057】
天然存在多糖は、未結合アミノ部分、負に荷電した部分、または他の部分を含む、多様な部分を選択的に付加し、減じ、または修飾するよう、修飾することが可能である。例には、現存するN-アセチル基またはイミン基を修飾することによって、未結合アミノ基を付加するか、あるいはアルコール基からヒドロキシメチル基を形成することが含まれる。
【0058】
したがって、天然存在多糖に加え、少なくとも1つのN-アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸(負に荷電したカルボキシル基を含む糖)からなる多糖反復単位を修飾して、本発明の免疫調節因子を生じることが可能である。少なくとも1つのN-アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸を含有する多糖反復単位をN-アセチル化して、未結合アミノ基を生成することが可能であり、そしてこうして、正しい電荷モチーフを持つ多糖が生じるであろう。N-アセチル化可能な分子には、チフス菌莢膜多糖(Vi抗原)、大腸菌K5莢膜多糖、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖、およびリゾビウム・メリロティ・エキソポリサッカライドIIが含まれる。
【0059】
イミン部分(C=NH)を含有する多糖に関しては、未結合アミノ基は、一般の当業者に知られる慣用的化学技術によって、形成可能である。1つの適切な方法は、イミン基を未結合アミノ基に還元する、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の使用を伴う。これは、室温で2時間、攪拌しながら、過剰な5 mgのホウ化水素を、再蒸留水に溶解した多糖に添加することによって行う。その後、混合物を水に対して透析し、そして凍結乾燥する。DiFabio JLら(1989) Can J Chem 67:877-82。
【0060】
脱N-アセチル化は、一般の当業者に公知の慣用的化学技術によって達成可能である。1つの適切な方法は、水素化ホウ素ナトリウムを伴いまたは伴わず、アルカリの使用を伴う。20 mgの多糖を2 M NaOH(3 ml)に溶解し、そして水素化ホウ素ナトリウムを添加する(50 mg)。溶液を100℃に5時間加熱する。酸で中和した後、溶液を低温で再蒸留水に対して透析し、そして凍結乾燥する。DiFabio JLら(1989) Can J Chem 67:877-82。
【0061】
用語「PS A2」は、遺伝的によく性質決定されている株、B.フラジリス638Rの複雑な莢膜に存在する主な多糖を指す。多糖PS A2は、本明細書でさらに詳細に記載する。
用語「溶媒曝露表面」は、分子の三次元溶液相コンホメーションの表面形態を指し、ここで、分子のサブユニットまたは残基が、分子が存在する(または存在するであろう)溶媒に対して、分子の他のサブユニットまたは残基に対するよりも、より大きい全体の接触を有するならば、該サブユニットまたは残基は、溶媒曝露されているという。
【0062】
用語「被験者」は、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、家禽、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、およびげっ歯類を含む脊椎動物を指す。
用語「サブユニット」は、ポリマーの形成に関与するか、またはポリマーの基礎を形成することが可能な、化学的化合物または部分を指す。サブユニットは、それ自体、ポリマーの単位であることが可能であり、または組み合わせて、ポリマーのより大きい単位の形成に寄与することが可能である。典型的には、サブユニットは、単一の原子よりむしろ、化学的部分またはラジカルである。例えば、サブユニットは、単糖、アミノ酸、ヌクレオチドまたはヌクレオシド、C5-18シクロアルキル、またはC5-18アリール、およびそれらの類似体であることが可能である。サブユニットは、単位を形成する化学反応の規則にしたがって、組み合わせることが可能である(以下を参照されたい)。例えば、単糖サブユニットは、組み合わせてオリゴ糖を形成可能であるし;アミノ酸サブユニットは、組み合わせてオリゴペプチドを形成可能であるなどである。
【0063】
用語「三次元溶液コンホメーション」は、分子(または複数の分子)が溶液中にある際に想定される三次元空間中の、基レベル、または好ましくは原子レベルの分布を指す。好ましくは、溶液は水性溶液である。該用語は、溶液中の分子(類)の、天然での実際のコンホメーション、およびコンピュータ内表現(representation)を含む、対応するいずれかのモデル表現、両方を指す。典型的には、三次元溶液コンホメーションは、実験的化学および物理的測定、並びに所望により、コンピュータモデリングの組み合わせを通じて決定する。コンピュータモデリングは、ねじれおよび回転結合角緊張エネルギー、静電相互作用、並びに溶媒和のエネルギーなどの変数を考慮に入れた、反復計算を通じて、エネルギー最小化に導く方法を含むことが可能である。この用語は、大部分の例で、分子(類)の二次、三次および/または四次構造が、通常、一般の当業者に用いられるのと同じ意味のものに対応する。溶液構造は、例えば、結晶化に対して、溶媒和において関与する、分子内および分子間力の相違のため、対応する結晶構造とは異なる可能性がある。
【0064】
用語「単位」は、ポリマーの文脈において、ポリマーの構築ブロックを指す。単位は、典型的には複数のサブユニットを含む。本発明の好ましい態様にしたがって、単位は反復単位であることが可能であり、すなわちポリマーは特定の単位を複数含有する。単位は、ポリマー主鎖の形成に寄与する要素を含む。主鎖は、例えば、多糖、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、並びにそれらの類似体および組み合わせを含むことが可能である。好ましい態様において、ポリマー主鎖は非分枝であり、すなわち単位は、直鎖方式で共に連結されているが、個々のサブユニットは、側鎖置換基を含むことが可能であり、そしてポリマーの三次元コンホメーションは非直鎖である。例えば、ポリマーの単位は、末端と末端を連結したオリゴ糖であって、全体としてらせんのコンホメーションを有するポリマーを形成することが可能である。別の例として、ポリマーの単位は、末端と末端を連結したオリゴペプチドであって、全体としてらせんのコンホメーションを有するポリマーを形成することが可能である。ポリマーの構築ブロックである限り、単位は同一であっても、または異なっていてもよい。
【0065】
用語「バーチャルサブユニット」は、化学的ポリマーの形成に関与するか、またはポリマーの基礎を形成することが可能な化学的化合物または部分の、物理的に意味がある表現を指す。好ましい態様において、バーチャルサブユニットは、上に定義するような化学的部分のコンピュータ表現である。こうした表現には、少なくとも化学的部分の二次元全体の、そしてより好ましくは三次元全体の特徴と共に、化学的部分が、共有または水素結合を通じて別のバーチャルサブユニットに連結可能な、少なくとも1つの化学的に意味がある付着点を特定するように表現される、化学的部分に関する十分な情報が含まれる。より好ましい態様において、提示には、同一性およびバーチャルサブユニット中の少なくともすべての非水素原子の相対的位置に関する詳細な情報が含まれる。したがって、例えば、バーチャルサブユニットが単糖α-D-(+)-グルコースの表現であるならば、バーチャルサブユニットに対応する表現は、少なくとも以下の情報を含むであろう:酸素および5つの炭素原子(C1-C5)を含む、ふねまたはいす型六員環、環のC5に付着したエクアトリアル位(環の酸素に隣接)の第六炭素原子C6、および以下のように配置された5つのアルコール性ヒドロキシ基:C2、C3、C4上にエクアトリアルに、C1およびC6上にアキシアルに;すべての連結した非水素原子間の結合長;並びにすべての連結した非水素原子間の結合角。例えば、MorrisonおよびBoyd, Organic Chemistry 第3版(1973) Allyn and Bacon, ボストンを参照されたい。
【0066】
バーチャルサブユニットは、コア構成要素と共に、少なくとも1つの置換基を含むことが可能である。コアおよび/または置換基は、非荷電であってもよいし、あるいは未結合正電荷または未結合負電荷を含んでもよい。コア構成要素は、未置換化学部分、例えばグルコースなどの単糖に相当する。置換基は、適切なコア構成要素に付加するか、または該要素の別のラジカルに置換することが可能な化学的ラジカルに対応し、例えば、コア単糖グルコースからグルクロン酸またはグルコサミンを形成するカルボキシル基またはアミノ基がある。上記の例はいずれも例示目的のためのみに提供し、そしていかなる点でも限定することを意味しない。
【0067】
本発明にしたがって、免疫細胞を操作し、そして免疫関連障害のいくつかの種類を治療するのに有用な、特定の免疫調節ポリマーが、必要な電荷モチーフに加えて、特徴的な三次元特性を持つことを発見した。本明細書に記載する免疫調節ポリマーは、例えば、IL-2産生を誘導し、IL-10産生を誘導し、T細胞を活性化し、そして抗原特異的IgG抗体産生を抑制することによって、免疫細胞機能を改変することが可能である。免疫調節ポリマーである化合物の基は、好ましくは、正に荷電した未結合アミノ基および負に荷電した基に特徴付けられる、複数の電荷モチーフに加え、少なくとも10-3 M-1の親和性でポリペプチドのアルファらせんに結合するよう構築され、そして配置されたドッキング部位を有する。電荷分布および免疫調節ポリマー上のドッキング部位の組み合わせが、ポリマーおよび免疫細胞の細胞表面分子のアルファらせん間の相互作用を安定化すると考えられる。特に、ポリマーの構造的および荷電特徴の組み合わせが、ポリマーおよび主要組織適合(MHC)分子のアルファらせん間の相互作用を安定化すると考えられる。
【0068】
本発明は、部分的に、免疫調節ポリマーである特定の組成物およびその使用法に関する。したがって、1つの側面において、本発明は、免疫調節ポリマーであって、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造
-(S1-S2-S3-S4)-
を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合アミノ部分を含む、前記免疫調節ポリマーである、組成物である。特定の態様において、免疫調節ポリマーは、上述の反復単位構造のいくつかのコピーを含み、数は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、少なくともいくつかの反復単位は、反復単位に対して外因性のいくつかの介在配列に連結されることが可能である。特定の態様において、免疫調節ポリマーは、構造
-(S1-S2-S3-S4)n-
を含み、式中、nは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、反復単位は隣接して存在する。いくつかの態様において、ポリマーは、本質的に、完全に反復単位で構成される。
【0069】
免疫調節ポリマーは、第一のサブユニットに関連する負に荷電した部分を含む。好ましくは、負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択され、一方、選択可能な他のものは、サルフェートおよびスルホネートを含むことが可能である。
【0070】
ポリマーのサブユニット(例えばS1、S2、S3、S4・・・など)は:単糖、二糖、アミノ酸、ジペプチド、ヌクレオチド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、並びにそれらの組み合わせおよび類似体からなる群より独立に選択される。したがって、例えば、S1、S2、S3、およびS4は、S1およびS4が必要な負および正電荷を持つならば、単糖として独立に選択可能である。同様に、例えば、S1、S3、およびS4は、単糖として独立に選択可能であり、そしてS2は非糖C5-18シクロアルキル(例えばシクロヘキサニル、シクロヘキサノール)またはC5-18アリール(例えばベンジル)として選択可能である。
【0071】
天然存在サブユニットに加え、サブユニットは、天然存在サブユニットの類似体であることが可能である。例えば、単糖の類似体には、カルバモイルメチル安息香酸などが含まれる。例えば、Mallaise WJ(1999) Exp Clin Endocrinol Diabetes 107 Suppl 4:S140-3を参照されたい。アミノ酸の類似体、例えばペプトイド(Simon RJら(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:9367-71)は、当該技術分野に公知であり、ヌクレオチドの類似体、例えばサブユニット形成ペプチド核酸(ポリアミド核酸とも呼ばれる;Uhlmann E(1998) Biol Chem 379:1045-52)も同様である。
【0072】
免疫調節ポリマーは、分枝または非分枝であるサブユニットを含むことが可能である。したがって、例えば、反復単位中、上に示す4つのサブユニットに加え、示す4つのサブユニットの1つに、さらなるサブユニットを付着させることが可能である。その結果、該単位は、以下のいずれか1つを含む構造を有することが可能である:
【0073】
【化1】
【0074】
上に示す例は、多様な五量体を含み、S5は、先に定義するようなサブユニットであり、そして他のサブユニットいずれとも独立に選択可能である。単位構造および電荷モチーフが維持される限り、さらなる置換基Sxもまた、含むことが可能である。好ましい分枝五量体単位は
【0075】
【化2】
【0076】
であり、サブユニットS3が分枝である。
特定の態様において、1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分は、別の単位の第四サブユニット上の、二番目に最も近い未結合アミノ部分から約32Å未満である。
【0077】
本発明はまた、部分的に、1種類のポリマーの免疫調節多糖である特定の組成物およびその使用法にも関する。バクテロイデス・フラジリス638Rの多糖PS A2が免疫調節性であり、そして電荷分布の点、および三次元溶液コンホメーションの点、両方で、非常に順序だった構造を有することを発見した。これらの特徴両方が、多糖の免疫調節効果に寄与すると考えられる。以下に提示するように、PS A2は、a-eと略記する、5つの糖サブユニットを含有する反復単位に基づき、サブユニットは(a)2-アミノ-4-アセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-α-ガラクトース;(b)α-L-フコピラノース;(c)3-ヒドロキシブタン酸(Bu)のC3およびマンノヘプトースのC6間のエーテル結合を通じて、Buで置換した、マンノヘプトース;(d)N-アセチルマンノサミン;および(e)3-アセトアミド-3,6-ジデオキシグルコースである。糖サブユニットは、以下のように連結して、五糖反復単位を形成する:→2)-c-(1→3)-d-(1→4)[b-(1→2)]-e-(1→3)-a-(1→。単位の構造はまた
【0078】
【化3】
【0079】
と示すことも可能である。この構造にしたがって、cは、未結合カルボキシルを有し、そしてaは関連する未結合アミノ基を有する(図4も参照されたい)。したがって、反復単位は、未結合アミノ基および未結合負電荷、この場合、カルボキシル基である、電荷モチーフを含む。
【0080】
さらに、PS A2の三次元溶液コンホメーションは、本発明にしたがって、らせん1巻きあたり20Åのピッチおよび2つの反復単位を持つらせんであることを示した。PS A2の溶液コンホメーションは、規則的に間を空けたパターンで、ポリマーの外部表面上にあるすべての正および負電荷の曝露によって、さらに特徴付けられ、これによって、他の分子に容易に接近可能になる。らせんは、外側の境界が電荷に占められる、反復する大きい溝によってさらに特徴付けられる。反復する溝は、幅10Å、深さ5Å、および長さ10Åのドッキング部位を含み、ポリペプチドのアルファらせんに適応すると考えられる。
【0081】
したがって、いくつかの側面において、免疫調節ポリマーは、免疫調節多糖である。免疫調節多糖は、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一の単糖M1、第二の単糖M2、第三の単糖M3、および第四の単糖M4を含む、構造
-(M1-M2-M3-M4)-
を有する四糖主鎖を含んでなり、各四糖主鎖が、第一の単糖M1上に負に荷電した部分および第四の単糖M4上に未結合アミノ部分を含むことが可能である。特定の態様において、免疫調節多糖は、上述の反復単位構造のいくつかのコピーを含み、数は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、少なくともいくつかの反復単位は、反復単位に対して外因性のいくつかの介在配列に連結されることが可能である。特定の態様において、免疫調節多糖は、構造
-(M1-M2-M3-M4)n-
を含み、式中、nは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、反復単位は隣接して存在する。いくつかの態様において、多糖は、本質的に、完全に反復単位で構成される。
【0082】
本発明のこの側面にしたがった免疫調節多糖は、第一の単糖に関連する負に荷電した部分を含む。好ましくは、負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択され、一方、選択可能な他のものはサルフェートおよびスルホネートを含むことが可能である。
【0083】
サブユニットは、単糖およびその類似体から独立に選択する。したがって、例えば、M1、M2、M3、およびM4は、M1およびM4が、必要な負および正電荷を持つならば、単糖として独立に選択可能である。同様に、例えば、M1、M3、およびM4は、単糖として独立に選択可能であり、そしてM2は単糖類似体として選択可能である。上述のように、単糖の類似体には、例えば、カルバモイルメチル安息香酸が含まれる。Mallaise WJ(1999) Exp Clin Endocrinol Diabetes 107 Suppl 4:S140-3。
【0084】
さらに、免疫調節多糖は、分枝または非分枝である単糖を含むことが可能である。したがって、例えば、反復単位中、上に示す4つの単糖に加え、示す4つの単糖の1つに、さらなる単糖を付着させることが可能である。その結果、該単位は、以下のいずれか1つを含む構造を有することが可能である:
【0085】
【化4】
【0086】
上に示す例は、多様な五糖を含み、M5は、先に定義するような単糖であり、そして他の単糖いずれとも独立に選択可能である。単位構造および電荷モチーフが維持される限り、さらなる置換基Mxもまた、含むことが可能である。好ましい分枝五糖単位は
【0087】
【化5】
【0088】
であり、単糖M3が分枝である。好ましい態様において、免疫調節多糖はPS A2である。
1つの反復単位の第四の多糖上の未結合アミノ部分は、別の単位の第四の単糖上の、二番目に最も近い未結合アミノ部分から約32Å未満であることが可能である。
【0089】
本発明はまた、部分的に、PS A2を含んでなる、単離免疫調節多糖にも関する。本明細書において、用語「単離」は、物質に関連して、他の細胞構成要素を含む、その天然環境から除去されることを意味する。したがって、「単離」は、この文脈において、他の細胞構成要素を含む、その天然環境から除去された免疫調節多糖を指す。単離物質は、必ずしも純粋である必要はなく、すなわち、単離物質は、その天然環境から除去されている限り、他の物質と混合されていることが可能である。
【0090】
いくつかの免疫調節ポリマーは、水性溶液相中で、特定の三次元特性を有する。三次元特性には、(i)複数の反復電荷モチーフを有する主鎖、反復電荷モチーフは主鎖に沿って配置された正電荷および負電荷である;(ii)正電荷および負電荷の少なくとも大部分が、溶媒接近可能である、三次元溶液コンホメーション;並びに(iii)各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位が含まれる。
【0091】
連続する電荷モチーフの正電荷の配置は、約32Å未満で離れていることが可能である。この特性は、主鎖に許容されるであろうように、本質的に直鎖化した一次構造に沿って測定されるような配置を指す。言い換えると、約32Å未満の分離は、いかなる一次、一次構造に基づく二次、または三次構造によっても超えられないであろう分離の最大距離を示す。
【0092】
いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。電荷およびコンホメーションはどちらも免疫調節機能に重要であると考えられ、そして好ましい態様において、ドッキング部位は、複数の溶媒接近可能電荷(したがって、分子の外部表面上またはその近くであり、そして「溶媒曝露」であるように、溶媒に向かって配向される荷電した部分)を含む。
【0093】
ドッキング部位は、好ましくは、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。より好ましくは、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-6 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。さらにより好ましくは、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。特に好ましい態様において、こうしてポリマーに結合するアルファらせんは、免疫細胞上の表面分子のアルファらせんである。非常に好ましい態様において、こうしてポリマーに結合するアルファらせんは、免疫細胞表面上のMHC分子、例えばクラスII MHC分子のアルファらせんである。別の非常に好ましい態様において、こうしてポリマーに結合するアルファらせんは、T細胞抗原受容体のアルファらせんである。T細胞抗原受容体には、限定されるわけではないが、αβまたはγδ鎖が含まれる。一般の当業者には、特定のアクセサリー分子がαβまたはγδヘテロ二量体と関連し、そしてT細胞受容体の一部とみなされることが公知であり、これらには、例えば、CD3複合体に寄与するもの、例えばγ、δ、ε、ζ、およびη鎖が含まれる。特定のドッキング部位がアルファらせんに結合する能力およびその結合相互作用の力は、以下の実施例に記載する方法などの、当該技術分野において日常的な方法を用いて評価可能である。
【0094】
免疫調節ポリマーは、例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間のすべての整数を含む、複数の反復単位を含むことが可能である。反復単位は、いくつかの隣接する反復単位を含むことが可能であり、数は:少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間のすべての整数からなる群より選択される。いくつかの態様において、ポリマーは、反復単位から本質的になることが可能である。
【0095】
ポリマーの反復単位は、上述のように、例えば、オリゴ糖、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、それらの類似体および組み合わせを含むことが可能である。反復単位は、上述のように、サブユニット、例えば単糖、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの類似体で構成されることが可能である。免疫調節ポリマーは、いくつかの態様において、混合ポリマーであることが可能である。混合ポリマーは、少なくとも2つの異なる種類のサブユニット、例えば単糖およびアミノ酸を含有するポリマーである。
【0096】
先に記載するように、電荷モチーフの正電荷は、好ましくは、未結合アミノ基であり、そして電荷モチーフの負電荷は、好ましくはカルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、またはスルホネートである。好ましい態様において、電荷モチーフの負電荷は、カルボキシル基と共に存在する。
【0097】
特定の態様において、三次元溶液コンホメーションはらせんを含んでなる。らせんは、1巻きあたり、整数のまたは非整数の反復単位を含むことが可能であり、そして左巻きらせんであっても、または右巻きらせんであってもよい。好ましい態様において、らせんは、約20Åのピッチを有する。
【0098】
特定の態様において、免疫調節ポリマーは、特に、以下のいずれを除外することも可能である:PS A1、PS B、チフス菌Vi抗原、大腸菌K5抗原、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖、リゾビウム・メリロティ・エキソポリサッカライドII、B群連鎖球菌III型莢膜多糖、緑膿菌フィッシャー免疫型7O抗原、ソンネ赤痢菌第I期リポ多糖O抗原、肺炎連鎖球菌I型莢膜多糖、肺炎連鎖球菌群抗原:C物質、またはクルーズトリパノソーマ・リポペプチドホスホグリカン。
【0099】
本発明のポリマーは、多くの種類のポリマーを含む。「ポリマー」は、本明細書において、連結によって共に連結される個々の単位の直鎖主鎖を有する化合物である。用語「主鎖」は、ポリマー化学の分野における通常の意味を与えられる。ポリマーは、必要な電荷モチーフを有し、それによって、ペプチド核酸(核酸に連結したアミノ酸を有するもの)など、共に連結されるポリマー単位のありうる組み合わせいずれかを含有する限り、主鎖組成において、不均一であってもよい(本明細書において、混合ポリマーと称する)。いくつかの場合、本発明のポリマーは、主鎖に取り込まれた非ポリマー性化合物を有することが可能であるため、ポリマーは、当該技術分野に慣用的に知られるポリマーと異なる可能性がある。例えば、本発明のポリマーは、2組のアミノ酸を共に連結する有機リンカーを含有する領域以外、完全にアミノ酸で構成されることが可能である。好ましい態様において、ポリマーは、主鎖組成において均一であり、そして例えばポリペプチド、多糖、および炭水化物である。「核酸」は本明細書において、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのヌクレオチドで構成される、バイオポリマーである。ポリペプチドは、本明細書において、連結アミノ酸で構成されるバイオポリマーである。多糖は、本明細書において、連結糖で構成されるバイオポリマーである。
【0100】
ポリマーは、反復単位で構成されることが可能であり、例えば、全ポリマーが、反復電荷モチーフで構成されることが可能である。「単位」は、本明細書において、ポリマーの構築ブロックを示すのに、当該技術分野において知られる意味と一致して用いられ、例えばタンパク質の単位はアミノ酸であり、核酸の単位はヌクレオチドであり、多糖の単位は単糖であるなどである。反復単位で構成されるポリマーは、ポリマー中、少なくとも2回現れる単位の組で完全に構成されるものである。ポリマーの反復単位は、同一反復単位であっても、または非同一反復単位であってもよい。「同一反復単位」は、本明細書において、ポリマー中で反復され、そしてその中で、すべてのメンバーが同一組成を有し、そして他の組の単位のメンバーに対して、同一の順序で配置される、単位の組である。「非同一反復単位」は、本明細書において、ポリマー中で反復され、そしてその中で、すべてのメンバーが同一組成を有するのでなく、そして/または他の組の単位のメンバーに対して、同一の順序で配置されない、単位の組である。非同一反復単位のいくつかのメンバーは、すべてのメンバーが同一でない限り、他の組のメンバーと同一の順序および/または位置を有することが可能である。本発明の文脈で用いる際、非同一反復単位を有するポリマーは、すべて非同一反復単位、または同一および非同一反復単位の組み合わせを有することが可能なポリマーである。
【0101】
本発明のポリマーはまた、非反復単位で構成されることも可能である。非反復単位で構成されるポリマーは、本明細書において、完全には反復単位で構成されないポリマーである。例えば、非反復単位で構成されるポリマーは、ランダムポリマーであることが可能である。「ランダム」ポリマーは、反復電荷モチーフ以外の特定のまたは同定可能な順序を持たない単位を有するポリマーである。非反復単位で構成されるポリマーはまた、部分的にランダムであるが、いくつかの反復モチーフを含むハイブリッド反復ポリマーであることも可能である。
【0102】
ポリマーは、少なくとも2つの反復電荷モチーフを含む。「反復電荷モチーフ」は、本明細書において、正に荷電した未結合アミノ部分および負に荷電した部分で構成されるモチーフである。モチーフは、二重に荷電した単一単位、または1つの単位が正電荷を有し、そして第二の単位が負電荷を有する、多数単位で構成されることが可能である。電荷が異なる単位上に存在する場合、単位は、互いに隣接していてもよいし、あるいは他の荷電または中性単位に分離されていてもよい。好ましくは、荷電単位は中性単位に分離される。中性単位は、正および/または負電荷をもたない単位である。モチーフの荷電単位は、いかなる数であってもよいが、好ましくは10未満の中性単位で分離されることが可能である。反復電荷モチーフは、ポリマー内でいかなる配向で存在してもよい。例えば、中性単位に分離される2つの反復荷電を有するポリマーにおいて、ポリマーは、以下の順序を有することが可能である:正電荷の後にまず負電荷、次に中性単位、次に負電荷、そして最後に正電荷。あるいは、ポリマーは、以下の順序を有することが可能である:正電荷の後にまず負電荷、次に中性単位、次に正電荷、そして最後に負電荷など。
【0103】
「負に荷電した部分」は、本明細書において、負に荷電した基いずれかを指すが、好ましくはカルボキシル基である。未結合アミノ基を有する正に荷電したアミノ酸には、限定されるわけではないが、リジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、およびヒスチジン(H)が含まれる。負に荷電したアミノ酸には、限定されるわけではないが、アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)が含まれる。
【0104】
免疫調節ポリマーは、複数の反復電荷モチーフを有するが、2より大きいいかなる数を有することも可能である。全ポリマーは、例えば、反復電荷モチーフで構成されることが可能である。あるいは、ポリマーは、2および全ポリマーが反復電荷モチーフで構成される際の数(もちろん、ポリマーの大きさに応じるであろう)の間のいかなる数の反復電荷モチーフで構成されることも可能である。ポリマーは、例えば、少なくとも10、15、20、25、30、35などの反復電荷モチーフを有することが可能である。
【0105】
特定の態様にしたがって、電荷モチーフは、最大距離未満で、互いに分離される。この最大距離は、本質的に直鎖様式で配置された際、一次構造主鎖に沿って測定されるような、少なくとも2つの反復電荷モチーフの正に荷電した未結合アミノ部分間の距離として定量化する。あるいは、距離は、同様に、少なくとも2つの反復電荷モチーフの負に荷電した部分間の距離として定量化することが可能である。距離32Åは、一次配列で測定されるポリペプチドの8までのアミノ酸残基の距離に同等である。モチーフ間の距離は、もちろん、三次コンホメーションで測定した際、より短い可能性があるが、明確にするため、一次構造の形で測定する。この大きさを有するポリペプチド単位は、10アミノ酸残基に対応する最大サイズで構成され、そして各Xが、反復電荷モチーフの正に荷電した未結合アミノ部分であり;そして各Nが、独立に、反復電荷モチーフを含むことが可能な中性または荷電単位である、以下の構造を有する:
XN8X
反復単位の負に荷電した部分は、Xのどちらの側であってもよい。式XN8Xは、全ポリマーであってもよいし、またはより大きいポリマーのサブセットであってもよい。
【0106】
反復電荷モチーフ間の領域は、反復電荷モチーフ、他の単位またはサブユニット、あるいはそれらの混合物で構成されることが可能である。領域は、例えば、中性の介在配列であることが可能である。介在配列は、ポリマーの他の単位と同一の種類の単位であることが可能であるし、または完全に異なることが可能である。例えば、非ポリマー性有機部分であることが可能である。
【0107】
これらのポリマー上の正および負に荷電した基は、どちらも、免疫系に影響を与え、そして膿瘍形成に対して動物を保護する能力を調節する。どちらの電荷の完全な中和も、ポリマーの免疫調節能力を抑止する。
【0108】
本発明の免疫調節ポリマーは、上述の必要な電荷モチーフを有し、そして本明細書に記載するように、IL-2およびIL-10分泌の誘導などの機能いずれかを行う能力を有するポリマーである。本明細書に提供する本発明の好ましい免疫調節ポリマーの特定の例に加え、他の好ましいポリマーが同定可能であり、そしてIL-2またはIL-10の分泌を誘導する能力、あるいは他の免疫機能を改変する能力に関して試験することが可能である。ポリマーは、例えば、化合物ライブラリー中で同定することが可能であるし、または新規に合成することが可能である。これらの化合物は、その後、いかなる標準的なIL-2またはIL-10誘導アッセイにおいて、活性に関して試験することも可能である。こうしたアッセイは、一般の当業者に公知である。例えば、in vivo RNA解析を用いることが可能であるし、あるいは抗IL-2またはIL-10抗体を用いて、タンパク質解析を行うことが可能である。さらに、T細胞を用いたin vitroアッセイが使用可能である。ポリマーを培養中のT細胞集団に添加して、そしてIL-2またはIL-10の産生を評価することが可能である。
【0109】
本発明の免疫調節ポリマーは、いかなる供給源由来であってもよく、例えば、これらは、動物または植物抽出物、細菌、真菌、海草等の天然供給源から単離し、そして由来することが可能であるし、あるいは合成して調製することが可能である。例えば、ポリマーがポリペプチドである場合、ポリペプチド合成のために当該技術分野において知られる慣用法を用いて合成することが可能である。例えば、ランダムポリペプチドは、米国特許第3,849,550号およびTeitelbaumら, Eur J Immunol 1:242(1971)に開示する方法にしたがって調製可能である。これらの参考文献は、アミノ酸の調製を記載し、ここで、チロシン、アラニン、ガンマ-ベンジルグルタメートおよびイプシロン-N-トリフルオロアセチルリジンのN-カルボキシ無水物を、周囲温度で、インジオキサン中、イニシエーターとしてのジメチルアミンと重合させ、その後、氷酢酸中で、臭化水素を用いて、グルタミン酸のガンマ-カルボキシル基を脱ブロッキングし、そして1 Mピペリジンによってリジン残基からトリフルオロアセチル基を除去する。特定の配列を有するポリペプチドおよび他のアミノ酸もまた、当該技術分野に公知の装置および方法論を用いて、調製可能である。
【0110】
あるいは、ポリペプチドは、組換え技術を用いて調製可能である。こうした方法は、当該技術分野に公知であり、そして多くの参考文献に記載されている。例えばSambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。
【0111】
さらに、ポリマーは、中性単位の化学的修飾を用いて、正および負電荷を発展させ、現存する(または合成)ポリマーから調製することが可能である。例えば、ポリマーは、多糖を修飾するために、米国特許第5,700,787号および第5,679,654号に開示される方法にしたがって、化学的に修飾することが可能である。簡潔には、天然多糖単位のN-アセチル部分を修飾して、未結合アミノ基を生じることが可能である。したがって、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖などの、負電荷およびN-アセチル基を有する単位で構成される多糖は、各単量体反復単位が、次に、正および負に荷電した基両方を有するように、修飾することが可能である。イミン部分(C=NH)を含有する多糖に関しては、未結合アミノ基はまた、一般の当業者に知られる慣用的な化学技術によって、形成することも可能である。1つの適切な方法は、水素化ホウ素ナトリウムの使用を伴う。イミン基は、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元して、未結合アミノ基を生成することが可能である。これは、室温で2時間、攪拌しながら、過剰な5 mgのホウ化水素を、再蒸留水に溶解した多糖に添加することによって行う。その後、混合物を水に対して透析し、そして凍結乾燥する。
【0112】
ポリマーはまた、ポリペプチドおよびアミノ酸を修飾するための、Wold, F., 翻訳後タンパク質修飾:展望および期待, B.C. Johnson(監修), Posttranslational Covalent Modification of Proteins中, ニューヨーク;Academic, 1983, pp.1-12に記載される方法にしたがって、化学的に修飾可能である。
【0113】
本発明にしたがって有用なポリマーはまた、商業的供給源から得ることも可能である。
「合成ポリマー」は、本明細書において、化学的または組換え技術によって調製され、そしてそうでなければ天然には見出されないポリマーである。合成ポリマーは、天然存在ポリマーに配列が同一であってもよいが、必ずしも同一でなくてもよい。多糖、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ペプチド核酸などを含む、合成ポリマーの例および該ポリマーを調製する方法は、一般の当業者に公知である。
【0114】
合成ポリマーはまた、天然存在ポリマーに似ているが、修飾主鎖を有するポリマーも含むことが可能である。修飾主鎖を持つ、こうしたポリマーの例は、一般の当業者に公知であり、そして例えば、限定なしに、ホスホロチオエート核酸、メチルホスホネート核酸、およびペプチド核酸を含む。
【0115】
「非天然ポリマー」は、本明細書において、天然存在ポリマーと組成または配列が異なるポリマーである。これは、さらなる修飾を伴わない、天然供給源からの単離のみによっては調製不能である。
【0116】
ポリマーの電荷比は、ポリマー内の正および負電荷の数に応じるであろうし、そしてポリマーに応じて多様であろう。いくつかの例では、ポリマーがポリペプチドである場合、1:1の正対負電荷比を有する。
【0117】
本発明にしたがって有用なポリマーのサイズは、非常に多様である。特に非多糖ポリマーに関しては、0.5 kDaおよび50 kDaの間のポリマーが典型的であろう。1つの態様において、ポリマーサイズは、7 kDaおよび25 kDaの間である。いくつかの態様において、ポリマーサイズは、約50 kDaおよび約500 kDa未満の間である。さらに他の態様において、ポリマーサイズは、約500 kDaおよび約5000 kDaの間である。
【0118】
本発明の免疫調節ポリマーは、多様なin vitroおよび療法目的に有用であり、これらには、限定されるわけではないが、インターロイキン2(IL-2)反応性障害を治療し、膿瘍形成に対して動物を保護し、癒合形成を予防し、例えば術後手術癒合形成を減少させ、Th1反応性障害を治療し、自己免疫疾患を治療し、そして同種移植片生存を促進することが含まれる。
【0119】
したがって、本発明は、1つの側面において、IL-2分泌を誘導する方法である。この方法は、IL-2分泌細胞を、IL-2分泌を誘導するのに有効な量の本発明のポリマーに接触させることによって、行うことが可能である。IL-2は、一般の当業者に公知のサイトカインであり、そして多様な効果を発揮する。IL-2の生理学的効果の中に、免疫細胞、特にTリンパ球、NK細胞、およびBリンパ球の増殖および活性化の誘導がある。概説には、Paul WE(1999) Fundamental Immunology, 第4版, Lippincott-Raven, フィラデルフィアを参照されたい。
【0120】
IL-2分泌細胞は、本発明の非多糖ポリマーでの活性化に反応してIL-2を産生する細胞いずれかである。これらの細胞には、例えば、CD4+ Th1およびCD4+ Th2細胞およびCTL(CD8+)を含むTリンパ球が含まれる。IL-2分泌細胞を、IL-2分泌を誘導するのに有効な量のポリマーに接触させる。IL-2分泌を誘導するのに有効な量は、IL-2分泌のいかなる誘導も生じる量である。例えば、IL-2分泌細胞が、ポリマーと接触させた時点で、IL-2をまったく分泌していない場合、ポリマーがいかなるIL-2を誘導する能力も、ポリマーの有効な量である。IL-2分泌細胞がすでにIL-2を分泌している場合、ポリマーがその量を増加させる能力がまた、ポリマーの有効量である。
【0121】
IL-2を誘導するのが望ましい、多くの例がある。例えば、多様な実験的アッセイのため、in vitroでIL-2を誘導するのが望ましい。こうしたアッセイの例は、IL-2誘導をブロッキングするのに有用な化合物を同定するためのアッセイである。他のアッセイには、多様な系に対するIL-2の影響を測定するための生理学的アッセイが含まれる。多様なex vivo/in vivo条件で、IL-2を誘導するのもまた、望ましい。例えば、HIV感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、並びに癌、例えば腎細胞癌腫および黒色腫の治療において、IL-2が有用であることが知られる。
【0122】
したがって、本発明はまた、IL-2分泌を誘導することによって、IL-2反応性障害を治療する方法も含む。IL-2反応性障害を有する被験者に、本発明の免疫調節ポリマーを、IL-2分泌を誘導するのに有効な量で投与する。IL-2反応性障害を有する被験者は、手術を受ける準備が出来ていない被験者である。一般的に、被験者は、AIDSまたは癌、例えば腎細胞癌腫または黒色腫を有するか、あるいはこれらを発展させるリスクがある被験者である。
【0123】
多くの異常、特にT細胞依存免疫反応に関与するものは、本明細書に開示する方法および組成物を使用して、利益を得る可能性がある。例えば、有効なT細胞反応を始める能力が制限されているため、免疫不全である被験者、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した被験者は、IL-2のレベルを増加させると利益を得ることが知られる。
【0124】
本発明はまた、IL-10の分泌を誘導するのが望ましい場合はいつでも有用である。現在、IL-10が、炎症性異常を含む、多くの免疫仲介異常において、重要な役割を果たすと考えられている。いかなる特定の理論または機構に縛られることも意味しないが、本発明のポリマーは、最初のステップとして、IL-2の分泌を誘導するだけでなく、続いてIL-10の分泌も誘導すると考えられる。したがって、本発明のポリマーを投与した後に観察されるIL-10の分泌は、間接的である、すなわちIL-2分泌の結果として生じる影響に仲介されると考えられる。IL-10は、一般の当業者に公知のサイトカインであり、そして多様な生理学的効果を発揮する。IL-10は、IL-2産生を含む、Th1機能を阻害することが知られる重要なTh2サイトカインであるとみなされる。IL-10は、他の研究者によって、敗血症、炎症性腸疾患、および癒合などの、多くの種類の炎症過程を予防することが示されてきている。さらに、IL-10は、特定の自己免疫疾患、移植片対宿主疾患(GvHD)、および乾癬を予防する。したがって、本発明のポリマーは、例えば敗血症、炎症性腸疾患、骨盤炎症性疾患(PID)、尿路感染症、癌、または癒合などの障害を治療し、または予防するのに有用である。
【0125】
本発明はまた、被験者において、細菌性膿瘍形成を予防するのが望ましい場合はいつでも有用である。これには、計画手術法と共に、緊急の状況下で、こうした異常を治療する、予防的治療が含まれる。選択的手術には、以下の腹腔内手術が含まれる:右結腸半切除術;左結腸半切除術;S状結腸切除術;結腸亜全摘術;結腸全摘術;腹腔鏡下または開腹胆嚢摘出術;胃切除術など。緊急腹腔内手術には、以下の異常を正すものが含まれる:穿孔性潰瘍(十二指腸または胃);穿孔性憩室炎;閉塞性憩室炎;急性虫垂炎;穿孔性虫垂炎;閉鎖性腹部外傷;穿通性腹部外傷;膿瘍を排出するための二次手術など。本発明はまた、心臓手術および創傷感染を正すための手術などの非腹腔内手術でも有用である。本発明はまた、骨盤炎症性疾患(PID)、尿路感染症および結腸癌など、被験者を膿瘍形成に罹りやすくする疾患に関連しても有用である。本発明が関連する当該技術分野の一般の当業者は、本発明が有用である範囲の異常および方法を認識するであろう。
【0126】
膿瘍形成を予防するために投与する際、本発明の免疫調節ポリマーは、アジュバントと共に投与することが可能である。用語「アジュバント」は、ポリマーに取り込まれるか、またはポリマーと同時に投与され、そして被験者において免疫反応を増強する、いかなる物質も含む。アジュバントには、アルミニウム化合物、例えば、ゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、並びにフロイント完全または不完全アジュバント(ここでポリマーは、パラフィン油エマルジョンにおいて安定化した水の水性相に取り込まれている)が含まれる。パラフィン油の代わりに、異なる種類の油、例えば、スクアレンまたはピーナツ油を用いてもよい。アジュバント特性を持つ他の成分には、BCG(弱毒化ウシ結核菌(Mycobacterium bovis))、リン酸カルシウム、レバミゾール、イソプリノシン、ポリアニオン(例えば、ポリA:U)、レンチナン、百日咳毒素、脂質A、サポニン類、ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド)および希土類塩(例えば、ランタンおよびセリウム)が含まれる。アジュバントの量は、被験者および用いられる特定のポリマーに応じ、そして当業者により、過度の実験なしに容易に決定されることが可能である。好ましいアジュバントは、選択的にT細胞を刺激するものである。T細胞反応を抑制する可能性があるアジュバントは避けることが望ましい。
【0127】
本発明はまた、被験者において、癒合形成、例えば術後手術癒合形成を予防することが望ましい場合はいつでも、有用である。本発明の別の側面において、多くの一般的な種類の手術に関連する、術後手術癒合形成に対する保護を誘導する方法を提供する。これには、計画的外科的処置後と共に、緊急手術後の癒合形成を予防する予防的治療が含まれる。手術部位と離れた部位でのポリマーの投与が、術後手術癒合形成に対して保護を誘導することが可能であることが発見された。
【0128】
本発明はまた、骨盤炎症性疾患、炎症性腸疾患、尿路感染症および結腸癌などの自発的癒合形成に被験者を罹りやすくする疾患と関連しても有用である。本発明はしたがって、実質的にいかなる組織または器官に関与する炎症過程にも有用である。本発明が関連する当該技術分野の一般的な当業者は、本発明が有用である範囲の異常および方法を認識するであろう。
【0129】
術後手術癒合形成を予防するため投与する際、本発明のポリマーは、全身性を含め、手術部位から離れて、または術後手術癒合形成の可能性を減少させることが望ましい手術部位に局所的に投与することがいずれも可能である。本発明のポリマーは、水性溶液として、架橋したゲルとして、あるいは水性溶液および架橋ゲル型のいかなる一時的または物理的組み合わせとして、投与することも可能である。架橋ゲルは、反復電荷モチーフ、すなわち正に荷電した未結合アミノ部分および負に荷電した部分を、本発明にしたがって、術後手術癒合形成を減少させるかまたは予防する目的に十分な程度に、保持しなければならない。
【0130】
特定のポリマーを用いて、宿主T細胞を刺激し、そして多くの細菌に対する防御を誘導可能であることが発見されてきている。この防御効果はT細胞依存性であり、そして体液性抗体反応に仲介されない。こうしたものとして、本発明の調製の投与は、「予防接種」ではなく、そして調製は、免疫抗原を発現する細菌に特異的な防御を仲介する「ワクチン」ではない。
【0131】
本発明にしたがって、上述の免疫調節ポリマーは、T細胞を活性化してTh1サイトカインを産生するのに有用であることも見出された。本発明は、治療する宿主被験者においてT細胞を刺激することが望ましい場合はいつでも有用である。特に、本発明は、いくつかの異なる細菌いずれによる感染に対しても治療した宿主の防御を誘導することが望ましい場合はいつでも有用である。この防御効果はT細胞依存性であり、そして必ずしも体液性抗体反応に仲介されない。
【0132】
T細胞は、IL-2分泌を誘導するのに有効な量の、本発明の免疫調節ポリマーと接触させる。免疫調節ポリマーはT細胞を活性化し、IL-2およびインターフェロン-γ(IFN-γ)などのTh1特異的サイトカインの分泌を引き起こす。T細胞は、刺激されると、Th1またはTh2サイトカイン産生いずれかに向かって分化することが可能である。本発明の免疫調節ポリマーは、T細胞を活性化して、Th1サイトカインプロフィールを有するサイトカイン放出を仲介することが可能であり、そしてしたがって、T細胞を活性化してTh1サイトカインプロフィールを産生することが望ましい場合はいつでも有用である。
【0133】
「T細胞」は、本明細書において、部分的に、細胞表面上のCD3およびT細胞抗原受容体の発現によって特徴付けられる、胸腺由来リンパ球である。「Th1細胞」は、本明細書において、主に、IL-2、IFN-γ、およびリンホトキシンを分泌するCD4+ Tリンパ球である。Th1サイトカインプロフィールには、IL-2、IFN-γ、およびリンホトキシンが含まれる。
【0134】
本発明はまた、T細胞を活性化してTh1細胞特異的サイトカインを産生することによって、Th1細胞反応性障害を治療する方法も含む。該方法は、Th1細胞反応性障害を有する被験者に、T細胞によるIL-2分泌を誘導するのに有効な量の、本発明の免疫調節ポリマーを投与することによって達成する。Th1細胞反応性障害を有する被験者は、手術を受ける準備が出来ていないが、Th1細胞反応性障害を発展させるリスクがあるか、または該障害を有する被験者である。「Th1細胞反応性障害」は、Th1サイトカインで阻害される免疫仲介障害である。本明細書において、障害の発展が部分的にまたは完全に予防されるか、あるいは障害の度合いが減少するならば、障害は阻害される。Th1細胞反応性障害には、限定されるわけではないが、インスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、および同種移植片拒絶が含まれる。
【0135】
本発明にしたがって、本発明の特定の免疫調節ポリマーが、特定の抗原に対するIgG抗体反応を抑制し、そしてまた同種移植片生存を促進するのに有用なこともまた、発見された。本発明のこれらの側面にしたがって有用な免疫調節ポリマーには、およそ6:2:5:1のモル比、あるいは4-6:1.4-2.1:3.2-4.2:1、6:2:4.5:1、4.1-5.8:1.4-1.8:3.2-4.2:1、6:1.9:4.7:1、4.9:1.7:3.8:1、または6:1.8:4:1の比の、アラニン、グルタミン酸、リジン、およびチロシンで構成されるものを除いて、上に論じるポリマーが含まれる。一般的に、ポリマーは、グルタミン酸、リジン、アラニン、およびチロシンのみで構成される場合、文献に記載されるGLATおよびコポリマー1の型を特に排除する。いくつかの態様において、本発明の免疫調節ポリマーは、手術を受ける準備が出来ていない被験者において、これらの障害を治療するのに有用である。
【0136】
「特定の抗原に対する不適切なIgG抗体反応によって特徴付けられる障害」は、本明細書において、急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチを含む特定の自己免疫関節炎、全身性エリテマトーデス(狼瘡)、AIDS、シェーグレン症候群、自己免疫溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、並びに甲状腺炎の特定の型などの障害である。
【0137】
ポリマーはまた、同種移植片生存を促進するのにも有用である。用語「同種移植片生存の促進」は、本明細書において、未治療レシピエントにおける類似の移植の対応する機能を超えた、レシピエントと同種の別の個体由来の、移植した細胞、組織、または器官の生理学的に有用な機能の臨床的に測定可能な延長または維持を示す。
【0138】
本発明のポリマーは、それ自体、アジュバント特性を有する。本明細書に記載するポリマーがヒト免疫反応を増強する程度まで、これらは他の材料と組み合わせて、アジュバントとして使用可能である。
【0139】
本発明は、1以上の薬学的に許容しうるキャリアーおよび所望により他の療法成分と共に、本発明のポリマーを含んでなる、医学的使用のための薬剤組成物を提供する。したがって、本発明はまた、アジュバントあるいは抗細菌剤または他の療法剤および薬学的に許容しうるキャリアーと組み合わせた、上述の免疫調節ポリマーの薬剤組成物にも関する。
【0140】
本発明で有用なポリマーは、別の抗細菌抗生物質薬剤と別個に、または抗細菌抗生物質カクテルの形で、搬送することが可能である。抗細菌抗生物質カクテルは、本発明で有用なポリマーいずれかおよび抗細菌抗生物質薬剤および/または補充増強剤の混合物である。細菌感染の治療における抗生物質の使用は日常的である。この態様において、一般的な投与ビヒクル(例えば錠剤、移植物、注射可能溶液など)は、ポリマーおよび抗細菌抗生物質薬剤および/または補充増強剤両方を含有することが可能である。あるいは、抗細菌抗生物質薬剤は、別に投与することが可能である。抗細菌抗生物質薬剤は公知であり、そして限定なしに:アムジノシリン、アミノ配糖体、アモキシシリン、アンピシリン、アブロシリン(avlocillin)、バカンピシリン、カルベニシリン、セファクロール、セファドキシル(cefadoxil)、セファマンドール、セファゾリン、セフメノキシン(cefmenoxine)、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフタジドム(ceftazidme)、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム・アキセチル、セファレキシン、セフラジン、クロラムフェニコール、クラブラネート、クリンダマイシン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン(epicillin)、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、ヘタシリン、イミペネム、リンコマイシン、メチシリン、メトロニダゾール、メズロシリン、モキサラクタム、ナフシリン、ネオマイシン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、ピバンピシリン、キノロン類、リファンピン、スルバクタム、テトラサイクリン類、チカルシリン、チメンチン(timentin)、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、およびバンコマイシンを含む(GoodmanおよびGilmanのPharmacological Basis of Therapeutics, 第8版, 1993, McGraw Hill, Inc.を参照されたい)。本発明のポリマーと組み合わせて用いる療法剤の正確な量は、選択したポリマー、選択した用量および投与タイミング、投与様式、意図する手術いずれかの性質、並びに被験者の特定の特性を含む、多様な要因に応じるであろう。局所投与を行う場合、非常に少量しか(ナノグラムそしておそらくピコグラム)必要とされない可能性があることが理解されるであろう。選択する正確な量は、特に、閾値量が、免疫反応を好都合に増進するいかなる量でもよいであろうため、過度の実験を伴わずに決定可能である。したがって、搬送様式に応じて、ピコグラムからマイクログラム量がありうるが、ナノグラムからマイクログラム量が、最も有用である可能性があると考えられる。
【0141】
化合物は、望ましい生物学的結果を生じるのに有効な量で投与する。投与様式に応じて、1ナノグラム/キログラムから100ミリグラム/キログラムの範囲の用量が有効であろうと考えられる。好ましい範囲は、500ナノグラムおよび500マイクログラム/キログラムの間、そして最も好ましくは1マイクログラムおよび100マイクログラム/キログラムの間であると考えられる。絶対量は、多様な要因(投与が選択的手術または緊急手術と組み合わされるかどうか、同時治療、用量の数、並びに年齢、肉体状態、大きさおよび体重を含む個々の患者パラメータを含む)に応じるであろうし、そして日常的な実験以上のものを用いずに決定可能である。一般的に、最大用量、すなわち十分な医学的判断にしたがった最高安全用量を用いることが好ましい。
【0142】
1つの態様において、有効量は、膿瘍形成に対する防御を誘導する生物学的結果を生じる量である。膿瘍形成に対する防御を誘導するのに有効な量は、本明細書において、単独で、あるいはさらなる用量またはさらなる療法化合物と共に、特定の細菌による感染から生じる膿瘍形成を阻害するかまたは予防するであろう、本発明の免疫調節ポリマーの量である。
【0143】
外科的処置と組み合わせて投与する場合は特に、多数の用量の本発明の薬剤組成物が意図される。多数の用量は、手術に先行する3週間の期間に渡って、手術に先行する2週間の期間に渡って、手術に先行する1週間の期間に渡って、または手術に先行して24時間、投与することが可能である。さらに1以上の用量を、細菌曝露後、または手術後、投与することが可能である。細菌感染/混入およびそれに続く膿瘍形成に対する免疫反応増進を生じる、いかなる措置も使用可能であるが、最適用量および投薬措置は、膿瘍形成の発展を阻害するだけでなく、特定の細菌生物または多様な細菌生物による膿瘍形成に対する完全な防御を生じるであろうものである。多数の用量の特定のポリマーの搬送に望ましい時間間隔は、日常的な実験以上のものを用いずに、一般的な当業者によって、決定可能である。
【0144】
別の望ましい生物学的結果は、癒合形成の予防である。したがって、化合物は、癒合形成に対する防御を誘導するのに有効な量で投与することが可能である。術後手術癒合形成に対する防御を誘導するのに有効な量は、本明細書において、単独で、あるいはさらなる用量またはさらなる療法化合物と共に、術後手術癒合形成を阻害するかまたは予防するであろう、本発明の免疫調節ポリマーの量である。
【0145】
本発明の調製は、膿瘍形成を予防する目的で投与する際、感染と「組み合わせて」投与することが可能であり、つまり、膿瘍形成に対する防御効果が得られるように、宿主を膿瘍形成に罹りやすくする手術、外傷または疾患と、時間的に十分に近く、投与することが可能である。調製は、選択的手術の場合、手術のはるかに前に(すなわち週または月であってもよい)、好ましくは、手術に時間的により近く(そして後であってもよい)、追加投与を伴い、投与することが可能である。特に、緊急状況においては、調製は、外傷または手術の直前(分から時間)および/または後に投与することが可能である。細菌感染/混入に対して被験者の免疫反応を増進し、それによって、宿主反応の成功のチャンスを増加させ、そして膿瘍形成の可能性を減少させるため、手術に時間的に十分に近く、調製を投与することのみが重要である。
【0146】
本発明は、部分的に、免疫調節ポリマーの薬剤組成物およびその使用法に関する。したがって、1つの側面において、本発明は、上述のような免疫調節ポリマーの、免疫細胞を活性化するのに有効な量、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、免疫細胞を活性化するための薬剤組成物である。好ましい態様において、本発明のこの側面にしたがった薬剤組成物の免疫調節ポリマーは、PS A2またはその機能的同等物である。
【0147】
したがって、本発明の処方は、薬学的に許容しうる溶液中で投与され、該溶液は、日常的に、薬学的に許容しうる濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合するキャリアー、アジュバント、および所望による他の療法成分を含有することが可能である。
【0148】
ポリマーはそれ自体で(純なもの(neat))、または薬学的に許容しうる塩の形で投与することが可能である。医薬品に使用する際、塩は薬学的に許容しうるべきであるが、薬学的に許容し得ない塩を、それらの薬学的に許容しうる塩を調製するために、好適に用いてもよい。こうした塩には、限定されるわけではないが、以下の酸から調製されるものが含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、こうした塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として調製されてもよい。
【0149】
適切な緩衝剤には:酢酸および塩(1-2% w/v);クエン酸および塩(1-3% w/v);ホウ酸および塩(0.5-2.5% w/v);並びにリン酸および塩(0.8-2% w/v)が含まれる。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003-0.03% w/v);クロロブタノール(0.3-0.9% w/v);パラベン類(0.01-0.25% w/v)およびチメロサル(0.004-0.02% w/v)が含まれる。
【0150】
本発明の薬剤組成物は、所望により薬学的に許容しうるキャリアーに含まれる、有効量のポリマーを含有する。用語「薬学的に許容しうるキャリアー」は、ヒトまたは他の動物への投与に適した、1以上の適合する固体または液体充填剤(filler)、希釈剤または被包(encapsulating)物質を意味する。用語「キャリアー」は天然または合成の有機または無機成分を指し、これと活性成分を組み合わせて投与を容易にする。薬剤組成物の構成要素はまた、本発明のポリマーと、そして互いに、望ましい薬剤効能を実質的に損なうであろう相互作用がないような方式で、混ぜ合わせることが可能である。
【0151】
非経口投与に適した組成物は、好適に、レシピエントの血液と等張であることが可能な、無菌水性調製を含んでなる。許容しうるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として、慣用的に使用される。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む、いかなる無刺激性の不揮発性油を使用することも可能である。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用を見出す。皮下、筋内、腹腔内、静脈内投与などに適したキャリアー処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, ペンシルバニア州イーストンに見出すことが可能である。
【0152】
本発明で有用なポリマーは、1より多いポリマーの混合物中で搬送可能である。混合物は、いくつかのポリマーからなることが可能である。
多様な投与経路が利用可能である。選択する特定の様式はもちろん、選択した特定のポリマー、治療する特定の異常および療法効果に必要な投薬量に応じるであろう。本発明の方法は、一般的に言って、医学的に許容しうるいかなる投与様式を用いて実施することも可能であり、すなわち、臨床的に許容し得ない副作用を引き起こすことなく、有効なレベルの免疫反応を生じる、いかなる様式を用いることも可能である。好ましい投与様式は、非経口経路である。用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋内、または腹腔内注射または注入技術が含まれる。
【0153】
組成物は、好適に、単位投薬型で提供されることが可能であり、そして薬学業に公知のいかなる方法によって調製することも可能である。すべての方法は、1以上の付属の成分を構成するキャリアーとポリマーを会合させる工程を含む。一般的に、組成物は、液体キャリアー、細分割された固体キャリアー、またはその両方とポリマーを、一様に、そして緊密に会合させ、そしてその後、必要であれば製品を成形することによって調製される。ポリマーは凍結乾燥して保存することが可能である。
【0154】
他の搬送系には、時間放出、遅延放出または持続放出搬送系が含まれることが可能である。こうした系は、抗炎症剤の反復投与を回避し、被験者および医師の利便を増加させることが可能である。多くの種類の放出搬送系が利用可能であり、そして一般の当業者に知られている。これらにはポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などのポリマーに基づく系が含まれる。薬剤を含有する前述のポリマーの微小カプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載される。搬送系はまた、非ポリマー系も含み、これらには:コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロールまたはモノ、ジ、トリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;慣用的結合剤および賦形剤(excipients)を用いる圧縮錠剤;部分的融合移植物等が含まれる。特定の例には、限定されるわけではないが:(a)本発明の剤が、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号に記載されるような、マトリックス内の形で含有される、侵食系、および(b)活性構成要素が、調節された速度で、米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号に記載されるようなポリマーから浸透する、拡散系が含まれる。さらに、ポンプに基づくハードウェア搬送系が使用可能であり、このうちいくつかは移植に適応している。
【0155】
他の側面において、本発明は、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションに関連する特定のパラメータに基づいて、免疫調節ポリマー候補を選択する系および方法を提供する。上述のパラメータに基づいて、1つの免疫調節ポリマー候補でさえ選択する過程が複雑であるため、系および方法は、好ましくはコンピュータで実行する。該方法は、免疫調節ポリマー候補の一次構造に基づいて、ポリマーの三次元溶液コンホメーションを予測し、そして予測される三次元溶液コンホメーションが、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能電荷、並びに各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択することを伴う。
【0156】
巨大分子の三次元溶液相コンホメーションを予測し、そして解析する、コンピュータに基づく方法は、一般の当業者に公知である。例には、MayoらによるPCT公告WO98/47089;Mandelらに対する米国特許第6,110,672号;Hendryに対する米国特許第5,888,741号;Balajiらに対する米国特許第5,331,573号;Dahiyat BIら(1997) Science 278:82-7;およびSchneider Gら(2000) J Comput Aided Mol Des 14:487-94が含まれる。さらに、この目的に利用可能な、いくつかのコンピュータ・ソフトウェア・アプリケーションおよびパッケージがあり、これには例えば、視覚化、モデリング、力場計算、エネルギー最小化、および分子動力学シミュレーションのための、Molecular Simulations、カリフォルニア州サンディエゴのInsight II 98.0が含まれる。こうしたプログラムを実行するのに適したコンピュータ・ハードウェアが商業的に入手可能であり、これには例えば2つのR12000 270 MHzおよび2つのR10000 180 MHz IP27中央処理装置(CPU;Silicon Graphics、カリフォルニア州マウンテンビュー)を備えたOrion 200ワークステーションが含まれる。いわゆる神経ネットワークを用いて、巨大分子の三次元溶液相コンホメーションを予測し、そして解析するのに関与する種類のシミュレーションおよび計算を行うのに、特に利益がある可能性がある。例えばBaldi P(1999) Bioinformatics 15:937-46;Stahl Mら(2000) Protein Eng 13:83-8を参照されたい。
【0157】
計算を実行するためのコンピュータ・インプットデータには、少なくとも、構造式として免疫調節ポリマー候補の化学的同一性を特定するのに十分な情報、すなわち分子のすべての原子間の化学的関係(共有結合)が含まれる。いくつかの場合、例えば低解像度結晶構造に基づくインプットデータのように、特定の結合の存在および性質を与えるのに十分である可能性がある。インプットデータは、いくつかのありうる物理的および化学的供給源のいずれに由来することも可能であり、これには、化学的解析、物理的解析(例えば融点、凝固点降下など)、配列決定解析、NMRデータ、結晶構造データ、質量分析、ガスクロマトグラフィー、円二色性データを含む光学解析と共に、一般の当業者に公知の他の方法が含まれる。
【0158】
コンピュータ・インプットデータは、上に定義するような、全ポリマー、ポリマーの一部、またはポリマーの単位のみを特定することが可能である。インプットデータが、ポリマーの単位のみを特定するデータを含む場合、コンピュータはデータを用いて、提供された単位を複数有する構造を構築することが可能である。
【0159】
特定の好ましい態様において、コンピュータ・インプットデータは、免疫調節ポリマー候補のライブラリーを含む。該ライブラリーは、多様な度合いの化学的関連性および非関連性の複数の免疫調節ポリマー候補を含み、そして2程度に少なく、そして10、100、1000、またはさらに多い免疫調節ポリマー候補を含むことが可能である。ライブラリーは、上に定義するような、全ポリマー、ポリマーの一部、またはポリマーの単位のみを特定するデータを含むことが可能である。
【0160】
コンピュータが操作するソフトウェアは、各免疫調節ポリマー候補に関して、三次元溶液相コンホメーションを計算する。こうした計算には、大きさ、電荷、距離、およびエネルギーに関する多くのパラメータが含まれ、そして典型的には、化学的および物理的に、両方で、妥当なコンホメーションに到達するように設計される、エネルギー最小化計算を伴う。
【0161】
免疫調節ポリマー候補の三次元溶液相コンホメーションを予測した後、ポリマー候補は、特定の特徴の存在または非存在に基づいて、選択するかまたは選択しない。これらの特徴には、最小限、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能な正および/または負電荷、並びに幅約10Åおよび深さ約5Åの複数のドッキング部位が含まれる。特定のポリマー候補を選択する際に考慮可能なさらなる特徴は、正電荷および負電荷である、反復電荷モチーフの存在を含むことが可能である。特定の好ましい態様において、反復電荷モチーフを有する、選択した免疫調節ポリマー候補における反復電荷モチーフの正電荷は、未結合アミン基によって提供される。特定の好ましい態様において、反復電荷モチーフを有する、選択した免疫調節ポリマー候補における反復電荷モチーフの負電荷は、カルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、またはスルホネート部分によって提供される。
【0162】
特定のポリマー候補を選択すると選択する際に考慮可能なさらなる特徴は、主鎖に沿った反復単位の関係を含むことが可能である。特定の態様において、反復単位は隣接している。いくつかの態様において、反復単位は介在配列によって分離されることが可能である。
【0163】
特定のポリマー候補を選択するかどうか選択する際に考慮可能なさらなる特徴は、らせんコンホメーションのポリマーによる前提(assumption)を含むことが可能である。全ポリマーがらせんである可能性があるか、またはポリマーの一部がらせんドメインを含む可能性がある。らせんは左巻きでもまたは右巻きでもよい。いくつかの態様において、らせんは約20Åのピッチを有する。例えば、PS A2は、ピッチ20Åの右巻きらせんを有し、そしてSp1は、ピッチ19Åの右巻きらせんを有する(さらに以下を参照されたい)。いくつかの態様において、反復単位は、らせん1巻きあたり整数倍で存在する。例えば、PS A2は、らせん1巻きあたり2反復単位を有する。いくつかの態様において、反復単位は、らせん1巻きあたり非整数倍で存在することが可能である。
【0164】
既定のポリマー候補を選択するのを選択するための規準として、ドッキング部位のさらなる特徴が使用可能である。これらの特徴には、ドッキング部位の長さおよびポリペプチドのアルファらせんに対するドッキング部位の親和性が含まれる。好ましい態様において、ドッキング部位の長さは少なくとも約10Åである。実質的により短いドッキング部位は、潜在的なドッキングパートナーに対する特異性または親和性を限定する可能性がある。特定の態様において、選択した免疫調節ポリマー候補のドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1の親和性で、そしてより好ましくは少なくとも10-6 M-1の親和性で、そしてさらにより好ましくは少なくとも10-9 M-1の親和性でポリペプチドのアルファらせんに結合するよう構築され、そして配置される。親和性は、分子モデリング計算によって、または実験的測定によって、決定可能である。実験的測定法は、アフィニティークロマトグラフィー、表面プラズモン共鳴(SPR、BIA)、円二色性と共に、一般の当業者に明らかであろう他の方法に基づくことが可能である。
【0165】
特定の態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、糖主鎖を有する。いくつかの好ましい態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は多糖である。いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補はポリペプチドである。
【0166】
さらなる側面において、本発明は、PS A2などの免疫調節ポリマーの三次元溶液構造の知識に基づいて、免疫調節ポリマー候補を設計する系および方法を提供する。したがって、該系および方法は、合理的薬剤設計に使用可能である。系および方法が複雑であるため、好ましくはコンピュータで実行する。コンピュータモデリングを用いて、テンプレート三次元構造に課される特定の制約にしたがって、バーチャルサブユニットからポリマーを構築すると共に、こうしてコンピュータ内で生成したポリマーと参照免疫調節ポリマーにより提供されるテンプレートの三次元構造との間の比較を行う。
【0167】
本発明のこの側面にしたがった方法は、再び、先に定義するようなコンピュータを用い、テンプレート免疫調節ポリマーの三次元コンホメーションを特定するインプットデータの供給源と共に提供する。該方法を実行するのに使用可能なコンピュータ・プログラムの例には、Schneider Gら(2000) J Comp Aided Mol Des 14:487-94およびMayoらによるPCT公告WO 98/47089が含まれる。
【0168】
コンピュータはまた、バーチャルサブユニットのライブラリーも提供し、プログラムは、このライブラリーから、ポリマーを構築するサブユニットを選択するであろう。バーチャルサブユニットは、上に定義され、糖、アミノ酸、ヌクレオチド、その類似体と共にさらなる化学的部分および置換基などの真の化学的実体のコンピュータ使用可能表現に対応する。置換基は、付加するか、またはコア構造の他の置換基に関して置換することが可能な側鎖とみなすことが可能であり、例えば単糖へのカルボキシル基またはアミノ基の付加である。
【0169】
プログラムの制御下でコンピュータが実行する方法は、化学結合形成に関して、化学の慣用的な規則、例えば有機化学および生化学の規則にしたがう。こうした規則は、一般の当業者に公知であり、そして例えば、MorrisonおよびBoyd, Organic Chemistry 第3版(1973) Allyn and Bacon, ボストンに見出すことが可能である。
【0170】
本発明のこれらの側面にしたがった系および方法は、免疫調節ポリマー候補の実験的試験をさらに含むことが可能である。こうした試験は、in vitroおよびin vivoで行うことが可能であり、そして免疫細胞が通常、活性化されない条件下で、免疫細胞と免疫調節ポリマー候補を接触させ、そして接触させた免疫細胞の活性化マーカーを測定することを含む。免疫細胞の活性化の測定は、例えば、分泌産物(例えばサイトカイン、増殖因子、ケモカイン、一酸化窒素、抗体)の測定、バイオアッセイ(例えば細胞傷害性、肉芽腫形成、生存補助など)、表面マーカー解析(FACS)、カルシウム取り込みまたは流動、呼吸活性と共に、一般の当業者に認識される他の方法を含む技術にしたがって、達成可能である。免疫細胞が免疫調節ポリマー候補との接触に関連して活性化されることが測定によって示されるならば、さらなる使用または解析のため、免疫調節ポリマー候補を選択する。逆に、免疫細胞が免疫調節ポリマー候補との接触に関連して活性化されないことが測定によって示されるならば、さらなる使用または解析のため、免疫調節ポリマー候補を選択しない。この態様にしたがった免疫調節ポリマー候補は、上述の特徴(すなわち接触および測定を除く)に基づく、先に選択した免疫調節ポリマー候補であることが可能であり、そしてその後、接触および測定の結果に基づいて、さらに選択するかまたは選択しないことが可能である。あるいは、最初の選択は、接触および測定を含んで行うことが可能である。
【0171】
免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するのに関連して、上述の方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、以下に記載するコンピュータ・システムの多様な態様などの、コンピュータ・システムを用いて、実行可能であるが、上述の方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、多くの他の異なる機械が使用可能であるため、その実行において、本明細書に記載するいかなる特定のコンピュータ・システムにも限定されない。
【0172】
こうしたコンピュータ・システムは、いくつかの既知の構成要素および回路を含むことが可能であり、これには、以下により詳細に記載するような、演算処理装置(すなわちプロセッサ)、メモリ・システム、インプットおよびアウトプット装置、並びにインターフェース、トランスポート回路(例えば1以上のバス)、ビデオおよびオーディオ・データインプット/アウトプット(I/O)サブシステム、特殊用途ハードウェアと共に、他の構成要素および回路が含まれる。さらに、コンピュータ・システムは、マルチプロセッサ・コンピュータ・システムであることが可能であるし、またはコンピュータ・ネットワークに渡って連結された複数のコンピュータを含むことが可能である。
【0173】
コンピュータ・システムは、プロセッサ、例えばIntelから入手可能なシリーズx86、CeleronおよびPentinumプロセッサの1、AMDおよびCyrixの同様の装置、Motorolaから入手可能な680X0シリーズのマイクロプロセッサ、およびIBMのPowerPCマイクロプロセッサなどの商業的に入手可能なプロセッサを含むことが可能である。多くの他のプロセッサが入手可能である。コンピュータ・システムは、特定のプロセッサに限定されない。
【0174】
プロセッサは、典型的には、オペレーティング・システムと呼ばれるプログラムを実行し、この例はWindows(登録商標)NT、Windows(登録商標)95または98、UNIX(登録商標)、Linux、DOS、VMS、MacOSおよびOS8であり、他のコンピュータ・プログラムの実行を制御し、そしてスケジューリング、デバッギング、インプット/アウトプット制御、アカウンティング、コンパイル、記憶割り当て、データ管理およびメモリ管理、およびコミュニケーション制御および関連サービスを提供する。プロセッサおよびオペレーティング・システムは、共に、コンピュータ・プラットホームを定義し、これに合わせて、高レベルプログラミング言語でアプリケーション・プログラムが書かれる。コンピュータ・システムは、特定のコンピュータ・プラットホームに限定されない。
【0175】
コンピュータ・システムは、メモリ・システムを含むことが可能であり、これは典型的には、コンピュータ読み取り可能および書き込み可能不揮発性記録媒体を含み、この例は磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリおよびテープである。こうした記録媒体は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、読み取り/書き込みCDまたはメモリスティック、あるいは永続的な、例えばハードドライブであることが可能である。こうした記録媒体は、典型的にはバイナリ型(すなわち、1および0のシーケンスとして翻訳される型)のシグナルを記憶する。ディスク(磁気または光)は、こうしたシグナルを記憶可能な、いくつかのトラックを有する。こうしたシグナルは、マイクロプロセッサに実行されるプログラム、例えばアプリケーション・プログラム、またはアプリケーション・プログラムによってプロセシングされる情報を定義することが可能である。
【0176】
コンピュータ・システムのメモリ・システムはまた、集積回路記憶素子を含むことも可能であり、これは典型的には、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)またはスタティック・メモリ(SRAM)などの揮発性のランダム・アクセス・メモリである。典型的には、オペレーション中、プロセッサは不揮発性記録媒体から集積回路記憶素子に、プログラムおよびデータを読ませ、これは典型的には、不揮発性記録媒体、例えばディスクよりも、プログラム命令およびデータにプロセッサがより迅速にアクセスするのを可能にする。
【0177】
プロセッサは、一般的に、プログラム命令にしたがって、集積回路記憶素子内のデータを操作し、そしてその後、プロセシングが完了した後、操作したデータを不揮発性記録媒体にコピーする。不揮発性記録媒体および集積回路記録素子間のデータ移動を管理するため、多様な機構が知られ、そして免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するのに関連して上述する方法、行為、系、およびシステム・エレメントを実行するコンピュータ・システムは、いかなる特定の機構にも限定されない。コンピュータ・システムは、特定のメモリ・システムに限定されない。
【0178】
上述のこうしたメモリ・システムの少なくとも一部を用いて、免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため開示する系および方法に関連して上述するデータ構造の1以上を記憶することが可能である。例えば、不揮発性記録媒体の少なくとも一部は、こうしたデータ構造の1以上を含むデータベースの少なくとも一部を記憶することが可能である。こうしたデータベースは、多様な種類のデータベースのいずれであることも可能であり、例えばデータが区切り記号によって分離されるデータ単位に編成されるフラットファイル・データベース、データが表で記憶されるデータ単位に編成される関係型データファイル、データがオブジェクトとして記憶されるデータ単位に編成されるオブジェクト指向データベース、または別の種類のデータベースであることが可能である。
【0179】
コンピュータ・システムは、ビデオおよびオーディオデータI/Oサブシステムを含むことが可能である。サブシステムのオーディオ部分は、アナログ・デジタル変換(A/D)コンバータを含むことが可能であり、これはアナログオーディオ情報を受け取り、そしてこれをデジタル情報に変換する。デジタル情報は、ハードディスク上に記憶するため、既知の圧縮システムを用いて圧縮して、別の時に使用することが可能である。I/Oサブシステムの典型的なビデオ部分は、多くが当該技術分野において知られる、ビデオ画像コンプレッサ/デコンプレッサを含むことが可能である。こうしたコンプレッサ/デコンプレッサは、アナログビデオ情報を圧縮デジタル情報に変換し、そしてその逆も行う。圧縮デジタル情報は、ハードディスク上に記憶して、後で使用することが可能である。
【0180】
コンピュータ・システムは、1以上のアウトプット装置を含むことが可能である。アウトプット装置の例は、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)および他のビデオアウトプット装置、プリンタ、モデムまたはネットワークインターフェースなどのコミュニケーション装置、ディスクまたはテープなどの記憶装置、およびスピーカなどのオーディオアウトプット装置を含む。
【0181】
コンピュータ・システムはまた、1以上のインプット装置を含むことも可能である。インプット装置の例には、キーボード、キーパッド、トラックボール、マウス、ペンおよびタブレット、上述のようなコミュニケーション装置、並びにオーディオおよびビデオキャプチャ装置およびセンサーなどのデータインプット装置が含まれる。コンピュータ・システムは、本明細書に記載する、特定のインプットまたはアウトプット装置に限定されない。
【0182】
コンピュータ・システムは、特にプログラミングされた、特殊用途ハードウェア、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことが可能である。こうした特殊用途ハードウェアは、免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため本明細書に開示する系および方法に関連して上述する方法、行為および系の1以上を実行するよう設定可能である。
【0183】
コンピュータ・システムおよびその構成要素は、多様な1以上の適切なコンピュータ・プログラミング言語のいずれを用いてもプログラム可能である可能性がある。こうした言語は、手続き型プログラミング言語、例えばC、Pascal、FortranおよびBASIC、オブジェクト指向言語、例えばC++、Java(登録商標)およびEiffel、並びにスクリプト言語またはアセンブリ言語などの他の言語を含むことが可能である。
【0184】
免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため本明細書に開示する系および方法に関連して上述する方法、行為および系は、こうしたコンピュータ・システムによって実行可能な、手続き型プログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、他の言語およびその組み合わせを含む、多様な適切なプログラミング言語のいずれを用いても実行可能である。こうした方法および行為は、コンピュータ・プログラムの別個のモジュールとして実行可能であるし、または別個のコンピュータ・プログラムとして個々に実行可能である。こうしたモジュールおよびプログラムは、別個のコンピュータ上で実行可能である。
【0185】
免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため本明細書に開示する系および方法に関連して上述する方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、ソフトウェア、ハードウェアまたはファームウェア、あるいはこの3つの組み合わせいずれかで、上述のコンピュータ・システムの一部として、または独立の構成要素として、実行可能である。
【0186】
こうした方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、個々にまたは組み合わせて、コンピュータ読み取り可能媒体、例えば不揮発性記録媒体、集積回路記憶素子、またはその組み合わせ上のコンピュータ読み取り可能シグナルとして明白に具象化される、コンピュータ・プログラム・プロダクトとして、実行可能である。こうした方法および行為の各々に関して、こうしたコンピュータ・プログラム・プロダクトは、例えば、コンピュータが実行する結果、該方法または行為を実行するようコンピュータに命令する、1以上のプログラムの一部として、命令を定義する、コンピュータ読み取り可能媒体上に明白に具象化される、コンピュータ読み取り可能シグナルを含んでなることが可能である。
【実施例】
【0187】
実施例1. PS A2
細菌株およびB.フラジリス株638Rの莢膜多糖の単離。B.フラジリス株638R(Privitera Gら(1979) J Infect Dis 139:97-101)は、ペプトン-酵母ブロス中、-80℃で維持した。ラット脾臓(オスウィスターラット、175-200 g、Charles River Laboratories、マサチューセッツ州ウィルミントン)で細菌を5回連続して継代することによって、CPCの産生を増進し、そして抽出物中のグリコーゲン含量を最小限にした。Kasper DLら(1980) J Infect Dis 142:750-6。まず、PBS中の108生物を、ラットに腹腔内注射し、そして脾臓を分散させることによって、24時間後に回収した。生物は、5%ヒツジ血液を含むブルセラ寒天(PML Microbiologicals、カナダ・オンタリオ州ミソソーガ)上で嫌気的に一晩培養した。接種および回収過程を反復した。莢膜産生増進は、全細菌に対する多価抗血清を用いた電子顕微鏡研究によって確認した。継代後、細菌は、先に記載されるように、16リットルバッチ培養で、嫌気的に増殖させた。Pantosti Aら(1991) Infect Immunol 59:2075-82;Tzianabos AOら(1992) J Biol Chem 267:18230-5。細胞は遠心分離によって採取し(平均湿重量、244 g)、そして水中に懸濁した。熱フェノール/水を用いて細菌細胞からCPCを抽出し、そしてRNアーゼ、DNアーゼ、およびプロナーゼで徹底的に消化した。透析産物(平均乾重量、2 g)は、pH9.8の3%デオキシコール酸含有緩衝液中、Sephracyl S-400HR(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)のカラム上でクロマトグラフィーにかけて、CPCからリポ多糖を分離した。Pantosti Aら(1991) Infect Immunol 59:2075-82;Tzianabos AOら(1992) J Biol Chem 267:18230-5。クロマトグラフィー分画は、単離過程全体を通じて、280、260および206 nmのUV吸光、屈折率、並びにBCA法(Pierce、イリノイ州ロックフォード)、および銀染色SDS-PAGEゲル(Laemmli UK(1970) Nature 227:680-5)、ドットブロット、免疫電気泳動(IEP)、および免疫拡散(Ouchterlony O(1958) Prog Allergy 5:1-78;Pantosti Aら(1991) Infect Immunol 59:2075-82)によるタンパク質の測定によって解析した。S-400HRでのゲルろ過クロマトグラフィー後、銀染色SDS-PAGEは、CPCに相当する高分子量抗原(タンパク質標準にしたがって、160 kDa以上)を含む分画を示した。続いて、溶出分画は、リポ多糖(LPS)、並びに消化したタンパク質および核酸に相当する、ゲル先端の20 kDaより小さい抗原を示した。CPCおよびLPSの間で溶出した分画は、両方の物質を含有した。もっぱら莢膜多糖を含有し、そして二重免疫拡散によって、全細菌に対する抗血清と反応する分画をプールし、濃縮し、アルコール沈殿し、透析し、そして凍結乾燥した。CPC(平均乾重量、0.2 g)は、IEP(50 mM Tris緩衝液、pH7.3中)によって調べ、これは、2つが正に、そして1つが負に荷電した、3つの主な構成要素、並びに正電極および負電極に向かって移動する、2つの弱い別個の構成要素を示した。
【0188】
酸処理(5%酢酸、100℃1時間)、透析および凍結乾燥したCPCは、50 mM Tris緩衝液pH7.3中で、Q-Sepharose FF(Amersham Pharmacia Biotech)を含有するカラム上に装填した。抗原は、Tris緩衝液およびNaCl勾配で溶出した。さらなる精製工程は、pH4の水中のS-Sepharose(Amersham Pharmacia Biotech)、50 mM Tris緩衝液pH8.6中のQ-Sepharose FF(Amersham Pharmacia Biotech)での陰イオン交換クロマトグラフィー、50 mM PBS、pH7.3中のSephracyl S-300HR(Amersham Pharmacia Biotech)でのゲルろ過クロマトグラフィー、および等電点電気泳動を必要とした。分離したポリマーは、ポリクローナル抗血清との反応性を維持した。異なる測定によって同一のようである分画をプールし、透析し、凍結乾燥し、そして高解像度(500 MHz)プロトン核磁気共鳴(NMR)分光法によって解析した。最終産物は、混入タンパク質、核酸、リポ多糖、および脂質を本質的に含まないことが見出された。Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9。莢膜多糖は、動物に投与するため、無菌、発熱物質不含生理食塩水中で調製した。
【0189】
PS A2は、株NCTC9343のPS A1をコードする638R染色体の同一領域中の生合成領域にコードされる。Comstock LEら(2000)(1999) J Bacteriol 181:6192-6。PS A2は、中性pHで正電荷モチーフに対して主に中性を示し、これはpH6.2で変化せず、そしてpH8.6でわずかに正電極に向かってシフトした。等電点電気泳動によって、PS A2の正確な等電点を決定しようとすると、4.5および10の間のpH範囲に渡って、広い分布が示された。しかし、多様な解析の組み合わせによって決定されるような、PS A2の構造およびコンホメーションは、反復単位あたり1つの未結合アミノ基および1つのカルボキシル基を持つポリマーを示し、これは、ポリマーに平均正味中性電荷モチーフを与え、そしてポリマーを平衡双性イオン多糖と分類する特性である。
【0190】
膿瘍誘導のための動物モデル。2つの独立の実験において、100、10、1、または0.1μgの莢膜多糖および無菌盲腸内容物(希釈、PBS中1:4)を含有する0.5 mlの注射体積を、6匹の異系交配オスウィスターラット(150-175 g、Charles River Laboratories)の群に、18ゲージ注射針を通じた注射によって、腹腔内投与した。対照として、莢膜多糖の代わりにPBSを用いた。曝露6日後、ラットを屠殺し、そしてその後、治療状態を知らない観察者によって、巨視的に可視である腹腔内膿瘍に関して調べた。肉眼的に可視である膿瘍を顕微鏡的に確認した。1以上の膿瘍の発展を陽性結果とみなした。
【0191】
統計解析。in vivo実験は、別個の用量反応関係(マイクログラム用量)および膿瘍誘導用量の中央値に対する直接の干渉の評価を可能にする構造化ロジスティック回帰モデルで解析し、この中央値は、50%の動物で、膿瘍を誘導するのに必要な多糖の理論的用量(AD50)である。Cox C(1990) Biometrics 46:709-18;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164:719-24;Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9。尤度比試験は、用量反応勾配およびAD50の共通性に関する仮定について行った。曝露後2日以内に死んだラットは、その死が麻酔のためであるので、解析に含めなかった。
【0192】
実験的膿瘍形成における多糖の生物学的活性。 試験した用量範囲の多糖はすべて、用量依存方式で、腹腔内膿瘍を誘導した(PS A1およびPS A2、p<0.001)。B.フラジリスNCTC9343のPS A1は、最も強力な膿瘍誘導双性イオン多糖であり、AD50は0.28μgであった。株638Rの双性イオン多糖PS A2のAD50は4.79μgであり、17倍高かった。
【0193】
組成解析。PS A2の単糖構成要素は、対応するアルジトール・アセテート誘導体のガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)解析によって同定した。Wang Yら(1994) Carbohydr Res 260:305-17。糖構成要素のD/L立体配置は、ブタノール分解、過アセチル化(peracetylation)、およびGC-MS解析によって確立した。Gerwig GJら(1978) Carbohydr Res 62:349-57。商業的に入手可能なD-およびL-フコース(Fuc)、D-グリセロ-D-マンノヘプトース(Hep)、およびN-アセチル-D-マンノサミン(ManNAc)は標準として働いた(Fluka、ウィスコンシン州ミルウォーキー)。2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトースを含有するB.フラジリス9343由来のPS A1もまた、標準として用いた。Pantosti Aら(1991) Infect Immun 59:2075-82;Baumann Hら(1992) Biochemistry 31:4081-9。3-アセトアミド-3,6-ジデオキシグルコース(ADG)の真正の標準は入手不能であるため、その立体配置は分子モデリングによって得た。Baumann Hら(1992) Biochemistry 31:4081-9;Bock K(1983) Pure Appl Chem 55:605-22。3-ヒドロキシブタン酸(Bu)のキラリティは、メタノール分解、およびトリフルオロアセチル化の後、Lipodex Aキラルカラム(Macherey-Nagel、ドイツ・デューレン)上のGC-MS解析によって決定した。Hermansson Kら(1993) Eur J Biochem 212:801-9。
【0194】
GC-MS解析。すべての解析は、キャピラリーDB17カラム(J&W Scientific、カリフォルニア州フォルソム)を備えたHP 6890/5973 GC-MSD分光計(Hewlett Packard、デラウェア州ウィルミントン)上で行った。質量検出は、70 eVでの電子イオン化によって得て、そしてイオンは45から550 m/zでスキャンした。
【0195】
穏やかな塩基処理。この方法を用いて、Buがエーテルまたはエステル結合いずれを通じて多糖に連結しているかを同定した。これは後者のみが穏やかな塩基切断を受け入れるためである。PS A2の2 mg試料を、室温で2時間、0.5 mlの0.5 M NaOHで処理し、水に対して徹底的に透析し、そして凍結乾燥した。その後、試料は、1H NMR分光法によって調べた。
【0196】
NMR分光法。核磁気共鳴(NMR)実験は、Varian Unity 500およびUnity Plus 750分光計(Varian、カリフォルニア州パロアルト)上で行った。0.7 mlのD2Oに溶解したPS A2の10 mg試料を、2D実験に用いた。1H-1H二量子フィルタ相関分光法(DQF-COSY;Derome AEら(1990) J Magn Reson 88;177-85)、総相関分光法(TOCSY;Bax Aら(1985) J Magn Reson 65:355-60)、および核オーバーハウザー増進分光法(NOESY;Bodenhausen Gら(1984) J Magn Reson 58:370-88)は、Varianにより提供される標準的なパルスシーケンスで行った。各次元で10 ppmのスペクトル幅を用い、そしてNOESYに関しては80および100 msの混合時間を使用した。多様なTOCSY実験に関して、スピンロック時間は、50、80、および100 msであった。1H-13C異核多量子コヒーレンス(HMQC;Bax Aら(1986) J Magn Reson 67:565-9)、分極移動による無歪曲増進(DEPT)-HMQC(Bendall MRら(1981) J Am Chem Soc 103:4603-5)、および異核多重結合コヒーレンス(HMBC;Lerner Lら(1987) Carbohydr Res 166:35-46)スペクトルは、それぞれ10および200 ppmのプロトンおよび炭素スペクトル幅で記録した。HMQCスペクトルは、炭素デカップリングを伴いそして伴わずに得た。後者を用いて、アノマー炭素に関する1JC,Hカップリング定数を決定した。スペクトルは、一般的に70℃で得た。NOESYスペクトルもまた、37℃で測定した。1H化学シフトは、外部較正されるように、4.36 ppmでの水の共鳴を基準とした。13C化学シフトは、22.5 ppmでの外部CH3I標準を基準とした。
【0197】
構造計算。すべての計算は、2つのR12000 270-MHzおよび2つのR10000 180-MHz IP27 CPUを備えたOrion 200ワークステーション(Silicon Graphics、カリフォルニア州マウンテンビュー)上で行った。Insight II 2000プログラムパッケージ(Molecular Simulations、カリフォルニア州サンディエゴ)を視覚化、モデリング、力場計算、エネルギー最小化、および分子動力学シミュレーションに用いた。サーフェスレンダリングおよび定性的ポアソン・ボルツマン静電計算をGRASP(Nicholls Aら(1991) Proteins 11:281-96)およびSPOCKで行った。Christopher JA(1998) SPOCK:構造特性観察および計算キット、巨大分子設計センター、テキサスA&M大学、テキサス州カレッジステーション。調和ポテンシャル関数を伴い、そして交差項(cross term)を含む一致価力場(consistent valence force field)(CVFF)をすべての計算に用いた。Martin-Pastor Mら(2000) Biochemistry 39:4674-83。最急勾配降下の最初の50ステップ後、最小化のため、ポラック-リビエル(Polak-Ribiere)・コンジュゲート勾配法を使用した。以下に記載するように、PS A2の各反復単位は、5つの単糖(残基a-e)、並びに未結合アミノおよびカルボン酸で構成される二重電荷モチーフを含有する。一般的に、残基aおよびcは、減圧下でのシミュレーションのため、非荷電で処理し、そして水中でのシミュレーションのため荷電して処理した。1つの反復単位中の5つの糖各々の個々のモデルは、減圧下でエネルギー最小化した(ε=4・r、切捨てなし、最終収束<0.001 kcal・mol-1・Å-1)。5つのグリコシド(glycosidic)結合各々に関するΦH-ΨH総エネルギーマップは、10°増分で、0°から360°まで、両方の角度を系統的に回転させることによって得た。すべての連結に関して、各々362の二糖構造を減圧下で最小化し(ε=4・r、切捨てなし、最終収束<0.001 kcal・mol-1・Å-1)、一方、ΦHおよびΨHは拘束した(k=1000 kcal・mol-1でコサイン拘束)。ΦHおよびΨHは、それぞれ、H1-C1-O1-CX’およびC1-O1-CX’-HX’と定義される。Homans SW(1990) Biochemistry 29:9110-8。エネルギーランドスケープの検査は、以下のようにΦHおよびΨHの各対の全体的な最小の同定を可能にした(括弧内は連結):-36°、35°(ac);-52°、1°(cd);-27°、-21°(de);42°、3°(be);および57°、-11°(ea)。これらのコンホメーションは、多様なグリコシド二面角から出発して、そして最小化に際して、全体的な最小に向かう収束を示すことによって、確認した。ねじれ角パラメータを用いて、4つの反復単位の最初のモデルを構築した。観察される残基間NOE距離拘束はすべて、1.8Åの近位標的値、およびそれぞれ、強いNOEクロスピークに関して3.3Å、そして弱いクロスピークに関して5.0Åの遠位標的値で、平底エネルギー条件の形でモデルに添加した。力定数は、スケーリング因子1で、100 kcal・mol-1・Å-2に設定した。
【0198】
構造計算およびさらなる微調整のため、2つの溶媒シミュレーションアプローチを取った。第一のアプローチでは、溶媒蒸発を予防するため、空間に固定した2.5Å厚の外側の水の殻に取り巻かれた15Å厚の平衡化した水の層で、四量体のすべての側部をコーティングした(3207の可動性水分子)。群に基づく加重(9.5Å切り捨て、1.0Åスプライン、0.5Åバッファ)およびε=1で、<0.01 kcal・mol-1・Å-1の最終収束にアンサンブルを最小化した。第二のアプローチにおいて、四量体を、寸法60×30×30Å3の平衡化水ボックス(1571水分子)に浸し、そして群に基づく加重(15.0Å切り捨て、2.0Åスプライン、1.0Åバッファ)およびε=1で、定期的境界状態シミュレーションとして系を設定した。水ボックスをさらに平衡化するため、四量体を空間に束縛し、そして水分子のみの移動を可能にした。最小化は1000ステップで行った。その後、束縛を解放し、そしてさらなる最小化を500ステップ行った。この段階で、全平衡化アンサンブルの10 psおよび30 ps NOE拘束分子動力学シミュレーション両方を開始した。系は、Discover98.0(Molecular Simulations)で実行されるようなアンダーセン法によって、一定の体積および298±10°Kで維持した。1.0 fsの時間ステップおよびベルレ速度積分法を用いた。アンサンブルは、<0.01 kcal・mol-1・Å-1に最小化された。
【0199】
結果
PS A2の組成。PS A2の構成要素は、化学的誘導体化およびGC-MS解析によって同定されるように、L-Fuc、D-ManNAc、D-Hep、D-ADG、2-アミノ-4-アセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-D-ガラクトース(D-ATT)、および(S)-Buである。これらの構成要素の正確な構造および置換基を、NMR分光法によってさらに確立しそして確認した。PS A2の1H NMRスペクトル(図1)は5.26、4.97、4.84、4.79、および4.70 ppmの、5つのアノマープロトンシグナルを明らかにする。これらは、PS A2の1H-13C HMQCスペクトル(図2)に示すように、それぞれ、98.41、100.18、97.43、100.48、および103.81 ppmの5つの炭素共鳴と相関する。これらの化学シフトは、ピラノースのアノマープロトンおよび炭素の特徴である。Gorin PA(1981) Adv Carbohydr Chem Biochem 38:13-104。PS A2の5つの単糖は、そのプロトン化学シフトにしたがって、残基a、b、c、d、およびeと命名する(図1)。すべての構成要素の完全な1Hおよび13C化学シフトは、以下に記載するように、2D NMR分光法によって決定した。
【0200】
残基aの割り当て(α-D-AAT)。この残基の6つのプロトンすべての化学シフトは、多糖の1H-1H DQF-COSYスペクトルから容易に得た(未提示)。隣接する炭素に付着するプロトンのみが、COSYスペクトルと相関を示すため、プロトン化学シフトは、配列中の隣接するプロトンが割り当てられると、決定可能である。既知のアノマー共鳴から出発して、この戦略を用いて、糖環の6つのプロトンすべてを追跡した。H1(δ5.26 ppm)は、3.99 ppmの共鳴とクロスピークを示すため、後者は、はっきりとH2に割り当てられた。H2シグナルはまた、4.32 ppmのシグナルとクロスピークを示し、これは明らかにH3によるものである。同様に、H3は4.46 ppmのシグナルと相関し、これはH4に割り当てられた。さらに、H4は4.59 ppmの共鳴(H5)と相関し、そしてH5は、1.10 ppmのシグナル(H6)とクロスピークを有する。こうして、完全プロトン化学シフト割り当てを得た(表1)。
【0201】
【表1】
【0202】
プロトンが同定されたら、対応する炭素の化学シフトは、C-H対の炭素およびプロトン間の異核相関から容易に決定した。1H-13C HMQCスペクトルから明らかになるように(図2)、残基aのC1-C6は、それぞれ、98.41、50.92、74.25、55.27、66.56、および17.08 ppmで現れる。H6(δ1.10 ppm)およびC6(δ17.08 ppm)両方の化学シフトは、6位がメチル基をもつことを示す。C2(δ50.92 ppm)の化学シフトは、アミンで置換された炭素に特徴的であり、一方、C4(δ55.27 ppm)のものは、C4でのアセトアミド基を示唆する。後者は、PS A2の1H-13C HMBCスペクトル中のH4およびアセトアミドカルボニル炭素(δ175.51 ppm)間の3結合相関によって確認された。
【0203】
GC-MSによる組成解析に基づいて、残基aは、ガラクト立体配置を想定すると期待される。この結論は、PS A2の1H-1H NOESYスペクトルから得た、残基内NOE(核オーバーハウザー効果)によって支持される(図3)。H4は、H3およびH5両方に強いNOEを示し、これは、H4が、H3およびH5とごく近接しており、そしてしたがって、糖環の同じ側にあることを示す。さらに、残基aは、そのアノマー中心でα-立体配置を採用し、これはH1の低磁場(down-field)化学シフト(δ5.26 ppm、一重項)と共に、特徴的な3JH1,H2(<3 Hz)および1JC1,H1(194 Hz)カップリング定数から明らかである。Gorin PA(1981) Adv Carbohydr Chem Biochem 38:13-104。これらのデータの組み合わせによって、残基aは2-アミノ-4-アセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-α-D-ガラクトピラノースと同定された。
【0204】
残基bの割り当て(α-L-Fuc)。プロトン共鳴の割り当ては、残基aの場合のように単純ではなかった。4.97 ppmのH1共鳴から出発して、H2(δ3.69 ppm)およびH3(δ3.59 ppm)は、H1-H2およびH2-H3 DQF-COSYクロスピークにしたがって割り当てた。しかし、DQF-COSYでH3-H4相関がまったく観察不能であったため、H4の割り当ては、H1から生じる全相関に頼る。TOCSYスペクトルにおいて、H1は、それぞれ、3.69、3.59、および3.65 ppmの3つのシグナル全体と相関した。最初の2つは、H2およびH3から生じるため、第三の共鳴はH4に起因するはずである。PS A2のNOESYスペクトルにおいて(図3)、H3およびH4はどちらも、4.14 ppmのシグナルと相関し、そしてH2は、1.17 ppmのシグナルにNOEを示す。これらの2つのプロトン(δ4.14および1.17 ppm)は、残基bのH2、H3、およびH4にごく近接する。したがって、これらもまた、この残基上に位置する。さらに、4.14および1.17 ppmのシグナルは、DQF-COSYおよびTOCSYスペクトル両方において、互いに相関するため、これらをそれぞれ、H5およびH6に割り当てた。プロトン割り当てに基づいて、C1-C6の化学シフトは、1H-13C HMQCスペクトルから容易に得られた(図2および表1)。
【0205】
H5およびH6は、最初、ある程度あいまいに割り当てたが、これらは、HMBCスペクトルから多重結合H-C相関によって確認した。H1およびC5、H5およびC4、並びにH6およびC5の間の3結合相関は、明らかに、H5およびH6が残基b上に位置することを示す。炭素およびプロトン化学シフトはどちらも(表1)、6-デオキシヘキソピラノースに典型的である。L-Fucは、GC-MS解析に同定される唯一のこうした糖であるため、残基bはフコースであるはずであった。さらに、H1は、1H-NMRスペクトルで一重項(3JH1,H2<3 Hz)として現れ(図1)、そして1JC1,H1は185 Hzである。両方の値は、アノマー中心でのα-立体配置を示す。したがって、残基bはα-L-フコピラノシドとして同定された。
【0206】
残る残基の割り当て。同様のアプローチを用いて、残る残基の完全なプロトンおよび炭素化学シフトを得た(表1)。化学シフトは、残基c、d、およびeをそれぞれ、Hep、ManNAc、およびADGと同定する。残基cおよびdの1JC1,H1カップリング定数は、それぞれ、168および171 Hzであり、これはアノマー中心でのα-立体配置を示す。Janeway CA Jrら(1994) Immunobiology(Garland Publishing、ニューヨーク州ニューヨーク), pp.4:1-4:35。残基eのH1(4.70 ppm)は、8 Hzの3JH1,H2の二重項として現れ(図1)、これは、アノマー中心でのβ-立体配置を強く示す。
【0207】
配列決定。次の仕事は、ポリマーの連結位置および配列を決定するものであった。こうした情報は、2つの残基間のグリコシド結合に渡る、長い範囲の1H-13C相関から直接得ることが可能である。Lerner L(1987) Carbohydr Res 166:35-46。PS A2のHMBCスペクトルは、δH 3.85 ppmおよびδC 98.41 ppmのクロスピークを明らかにし、これは残基cのH2(H2c)および残基aのC1(C1a)から生じ、そしてグリコシド連結H2c-C2c-O1a-C1aに渡る、3結合カップリングに対応する。したがって、残基cおよびaは連結し、そして連結は、残基aの1位、残基cの2位を伴い、こうしてa-(1→2)-cの配列を持つ断片を確立する。同様に、H1c(δH 4.84 ppm)およびC3d(δC 78.24 ppm)は、HMBCスペクトルにおいてクロスピークを示すため、残基cおよびdは、c-(1→3)-d配列に連結される。d-(1→4)-e断片は、C1dおよびH4e間の相関によって示される。さらに、H1eおよびC3a間の長い範囲の相関から確立されるように、残基eは、e-(1→3)-aの形で残基aに連結される。
【0208】
上述の断片を連結すると、a-(1→2)-c-(1→3)-d-(1→4)-e-(1→3)-aの直鎖配列が生じる。したがって、基本的構築単位c-d-e-a反復は、それ自体、ポリマー主鎖を産生する。さらに、残基bは、C1bおよびH2e間の相関に示されるように、1→2連結を介して、eに連結される。残基eは、残基a、b、およびdに連結され、そして構造において分枝ポイントを形成する。したがって、PS A2の反復単位は、→2)-c-(1→3)-d-(1→4)[b-(1→2)]-e-(1→3)-a-(1→の配列を持つ分枝五糖である。さらに、Hep(残基c)は、BuのC3およびcのC6間のエーテル連結を通じて、Buで置換される。連結位置は、HMBCスペクトルにおいて、BuのC3およびH6c間の長い範囲の相関によって確認される。Buが穏やかな塩基処理を受け入れないという観察は、エステル連結でなく、エーテル連結を強く支持する。PS A2の化学構造を、こうして完全に決定し、そしてこれを図4に示す。
【0209】
NOE距離拘束。反復単位あたり、総数41の残基内および10の残基間NOEクロスピークを観察する(図3)。残基内NOEを用いて、個々の残基a-eの絶対的立体配置を決定した。残基間NOEは、距離拘束として、全体的な構造計算に取り込んだ。NOEクロスピーク強度は、強い(s)または弱い(w)いずれかに分類し、そしてそれぞれ、1.8-3.3Åおよび1.8-5.0Å距離間隔と解釈した。検出される残基間NOEは以下のとおりである:c1-a5(s)、c2-a1(s)、c1-d3(s)、c5-d2(s)、d1-e6(s)、d2-e6(w)、e1-a3(s)、e2-b1(s)、a2-b5(w)、およびa2-b6(w)。最後の2つのNOEは非隣接残基間で生じる。ΦH-ΨHグリッド検索に基づく、4つの反復単位の最初のモデルが、それ自体、既に、8つの残基間距離を完全に満たしており、残る2つが標的値に近いことは、注目に値する。
【0210】
PS A2の三次元構造。PS A2の1つの四量体(4つの反復単位)の好ましい溶液コンホメーションは、NOE拘束分子機構および動力学計算から、エネルギー最小化によって計算した。最終モデルは、残基内および残基間NOEクロスピークすべてと優れて一致していた。四量体は、1巻きあたり2つの反復単位および20Åのピッチを持つ、右巻きらせんを示す(図5)。分子は、静電表面表現に例示されるように、高密度の電荷で覆われている(図5B)。すべての電荷は、分子の最も外側の表面上に曝露されており、そして結合相互作用に好ましい位置にある。正および負電荷は、らせん鎖の側面に沿って交互に並び、そして10Åのほぼ等しい距離のジグザグパターンにしたがう。らせんは、長軸に対して、おおよそ垂直に配向する、規則的な一連の溝によって特徴付けられる。これらの溝は、幅約10Å、長さ10Å、および深さ5Åである。特定の溝の4つの縁はすべて、それぞれ、残基ax-1(アミン)、cx(カルボキシレート)、ax(アミン)、およびcx+1(カルボキシレート)由来の電荷に占められ、xは、既定の反復単位を示す。最初の電荷は、溝の外側に向き、一方、他の3つは内側に向く。四量体は、左から右に数えて、それぞれ、反復単位1-3および2-4の間に形成される2つの完全な溝を含有する(図5Bの矢印)。
【0211】
ZPSにおける構造-活性関係のモデル。PS A2のコンホメーションモデルは、他の分子とのZPSの相互作用に関する、もっともらしい機構を示唆する。1つのシナリオでは、PS A2は、主に、反対の電荷を交互に高密度で示す「側面に沿って」他の分子に結合する(上記を参照されたい)。高結合親和性は、親水性ヒドロキシルへの多くの水素結合、そしてより低い度合いでファンデルワールス相互作用に関する潜在能力に補充される、豊富な静電相互作用を介して達成されるであろう。別のシナリオでは、PS A2の溝は、主な結合ドメインとして作用する。各溝の幾何構造は、タンパク質由来のαらせんの挿入に対応することが可能であろう。このアイディアを試験するため、末端に荷電した側鎖を持つ、仮定的なαらせん(10-14量体)を、コンピュータ内で、PS A2の溝にドッキングさせ、そして非常によく適合することを見出した(図6)。溝の縁の電荷は、ペプチドを係留するのを補助する可能性がある。多数の塩架橋に加え、該複合体は、主に、溝の内部表面に沿った疎水性相互作用によって、安定化可能である。これらのシナリオのどちらでも、重要な位に位置する、荷電した基は、結合に重要に寄与し、これが、電荷がZPSの生物学的活性の本質的な決定要因であることを説明するであろう。
【0212】
「溝結合モデル」は、ZPSのT細胞刺激活性の魅力的な説明を提供する。一般的に、T細胞活性化は、抗原提示細胞上の主要組織適合(MHC)分子に結合した抗原の特異的認識によって開始される。抗原-MHC複合体へのT細胞受容体の物理的結合が、感染性微生物に特異的なT細胞反応を誘発する。Janeway CA Jrら(1994) Immunobiology(Garland、ニューヨーク州ニューヨーク)中, pp 4:1-4:35。結晶学的研究によって、αらせんがMHC分子の抗原結合間隙の側面境界を形成することが明らかになった。Stern LJら(1994) Nature 368:215-21;Reinherz ELら(1999) Science 286:1913-21。これに関連して、PS A2が、溝にαらせんを捕捉することによって、MHC分子と複合体を形成することが可能である。PS A2が数百の反復単位を含むポリマー性であり、そしてしたがって、多数の結合部位を提供することは注目に値する。さらに、PS A2は、両方のタンパク質上のαらせんをつなぎとめることによって、T細胞受容体およびMHC分子を架橋することが可能である。
【0213】
双性イオン多糖の観察される免疫調節効果を説明すると考えられる溝結合モデルを補助する際、PS A2およびクラスII MHCを伴う、微小熱量測定、溶液相NMR、BIACore、およびアフィニティークロマトグラフィーは、該モデルと一致する。
【0214】
ZPSおよびMHC分子のペプチド断片間の結合の測定。
等温滴定熱量測定(ITC)。2つの分子が結合する際、熱は、起こる結合量に正比例して、放出されるかまたは吸収されるかいずれかである。この熱の測定は、結合会合定数(Ka)、化学量論(N)、並びに会合のギブス自由エネルギー(ΔG)へのエンタルピー(ΔH)およびエントロピー(ΔS)寄与の正確な測定を可能にする。
【0215】
Ac-Ala-Glu(-)-Tyr-Tyr-Asn-Lys(+)-Gln-Tyr-Leu-Glu(-)-Gln-Thr-Arg(+)-Ala-Glu(-)-Leu-Asp(-)-Thr-NH2の配列を持つ、ネズミMHC-II IA β1ドメイン(PIIb1)由来の18量体ペプチド断片を化学的に合成した。この断片は、MHC上のペプチド結合溝の側面αらせん境界の一部である。MHCペプチドおよび多糖間の結合を試験するため、いくつかのITC実験を行った。すべての実験は、VP ITC装置(MicroCal、マサチューセッツ州ノーザンプトン)上で行った。典型的な実験では、多糖(0.02 mg/ml)5または10μlアリコットを、300 rpmで迅速に混合しながら、1.4 mlのペプチド(0.015 mg/ml)溶液に注入した。各注入間には4分の間隔があった。多糖およびペプチドはどちらも、10 mM PBS緩衝液、pH7.2に溶解した。
【0216】
ぺプチドPIIb1は、PS A2および肺炎連鎖球菌の1型莢膜多糖(CP1)に強い結合を示した。対照ペプチド(Lys-Asp)15は、PS A2またはCP1に結合を示さなかった。対照多糖、B群連鎖球菌(GBS)由来のIII型莢膜多糖は、ペプチドPIIb1への結合を示さなかった。
【0217】
円二色性(CD)。複合体形成に際して、ペプチドおよび/または多糖は、コンホメーション変化を経る可能性がある。この現象は、ヘパリンへの特定のペプチドの結合に関して、先に観察されている。我々のペプチドがコンホメーション変化を経るかどうか試験するため、CD分光法を用いて、未結合および結合ペプチド両方を評価した。すべてのCDスペクトルは、AVIA CD分光計(AVIA、ニュージャージー州レークウッド)上に記録した。多糖およびペプチドは、10 mM PBS、pH7.2中の1 mg/ml溶液として調製した。CDスペクトルは、ペプチドおよび多糖どちらに関しても単独で得て、そしてその後、多糖の5μlアリコットを、ペプチド溶液中に滴定し、そして混合物に関してCDスペクトルを記録した。240-190 nm領域のスペクトルを解析して、二次構造要素の部分的な割合を決定した。これらの進行中の研究は、我々の多糖が、αらせんペプチドに優先的に結合し、そして安定化するかどうかを検証するであろう。
【0218】
NMR分光法。ペプチドPIIb1およびCP1間の結合部位を決定するため、CP1をペプチド溶液に滴定し、そしてプロトン化学シフト変化を観察した。PIIb1にCP1を添加すると、いくつかのシグナルで化学シフト移動(displacement)が引き起こされ、最も注目すべきは、アスパラギン酸残基の側鎖プロトンであった(図7を参照されたい)。対照として、CP14(肺炎連鎖球菌14型莢膜、中性多糖)をPIIb1に滴定した。多量のCP14を添加して始めて、1つのシグナルでわずかな化学シフト変化が観察された。同様の滴定実験を用いて、相互作用の化学量論を得ることが可能である。
【0219】
実施例2.Sp1
肺炎連鎖球菌1型多糖(Sp1)(Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9)は、腹腔内膿瘍のラットモデルで試験した際、同一のT細胞活性およびその結果の細菌膿瘍形成を制御する能力を共有する(Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275:6733-40;Lindberg Bら(1980) Carbohydr Res 78:111-7)。Sp1は、三糖反復単位からなる直鎖ポリマーであり、ガラクツロン酸(GalA、残基aおよびc)、2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトース(Sug、残基b)を含有し、→3)-α-D-GalA(a)-(1→3)-α-D-Sug(b)-(1→4)-α-D-GalA(c)-(1→(17,22)の配列を持つ。Sp1の各反復単位は、1つの正に荷電したアミンおよび2つの負に荷電したカルボキシル基を含有する。
【0220】
Sp1の精製。1型肺炎連鎖球菌由来の未精製PS抽出物をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ジョージア州アトランタ)から購入した。未精製材料の20 mg試料を、1.5 mlの2 M NaOHに溶解し、そして混入リビトール-リン酸タイコ酸を分解するため、80℃で3時間加熱した。Jennings HJら(1980) Biochemistry 19:4712-9;van Dam JEGら(1990) Antonie van Leewenhoek 58:1-47。混合物をその後、2 M HClで中和し、脱イオン水に対して徹底的に透析し、そして凍結乾燥した。その後、産物をSephacryl S300カラム(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州)上で精製し、0.05%アジドを含有するリン酸緩衝生理食塩水(0.01 Mリン酸、0.15 M NaCl、pH7.24)で溶出した。分画は、炭水化物に関して、屈折率検出装置によって、そして混入タンパク質に関して280 nmでUV検出装置によって監視した。Sp1は、カラムの空隙容量近くで溶出し、そして100 kDaの平均分子量を有した。Sp1分画をプールし、脱イオン水に対して徹底的に透析し、そして凍結乾燥した。構造および純度は、NMR解析によって実証した。
【0221】
NMR分光法。すべてのNMRスペクトルは、D2Oで1度交換して、そして0.7 mlのD2Oに再度溶解した、8 mgの精製Sp1試料から得た。NMR実験は、Varian Unity500装置上で、37℃で行った。1H化学シフトは、外部較正されるように、4.36 ppmでの水の共鳴を基準とした。13C化学シフトは、22.5 ppmでの外部CH3I標準を基準とした。大部分のスペクトルは、標準パルスシーケンスの位相弁別TPPIモードで得た。Sanders JKMら, Modern NMR Spectroscopy, 第2版, 1993, Oxford Press;Braun Sら, 150 and More Basic NMR Experiments, 1998, Wiley-VCH。1H-1H TOCSY(Bax Aら(1985) J Magn Reson 65:355-60)、DQF-COSY(Piantini Uら(1982) J Am Chem Soc 104:6800-1)、およびNOESY(Bodenhausen Gら(1984) J Magn Reson 58:370-88)は、両次元で10 ppmのスペクトル幅で記録した。TOCSYに関して80 msのスピンロック時間を用いた。NOESYスペクトルは、それぞれ、25、50、75、および100 msの混合時間で記録した。NOEクロスピークは、各スペクトルに関して、同一の統合限界にしたがって統合した。3JH,Hカップリングは、DQF-COSYおよびE.COSYから測定した。Griesinger Cら(1987) J Magn Reson 75:474-92。1H-13C HMQC(Bax Aら(1986) J Magn Reson 67:565-9)、1H-13C HMBC(Bax Aら(1986) J Am Chem Soc 108:2093-4)は、それぞれ、炭素次元で100および180 ppmで記録した。HMQCスペクトルは、獲得中、13Cデカップリングを伴いそして伴わずに得た。後者を用いて、1JC,Hカップリング定数を抽出した。データは、VNMRまたはNMRPipeいずれかでプロセシングした。一般的に、512×2048のデータマトリックスを得て、そしてプロセシング中に1024×2048にゼロ・フィルタした。デジタル解像に対応するt1およびt2次元両方で、sine-bellまたは他のウィンドウ関数を適用した。スペクトルは、相訂正し、そしてベースラインを平らにした。
【0222】
分子モデリング。分子機構および動力学計算は、R10000 195 MHz中央処理装置を備えたOctaneワークステーション(Silicon Graphics、カリフォルニア州マウンテンビュー)上のINSIGHT II 2000/Discoverプログラム(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ)で行った。荷電および非荷電型両方で、多様な二糖コンホメーションのグリッド検索において、一致した結果を生じるため、調和ポテンシャル関数および交差項を含む一致価力場(CVFF)をすべての計算に用いた(Hagler ATら(1979) J Am Chem Soc 101:5122-30)。非結合相互作用の計算には、切捨ては課さなかった。すべての計算は、別に明記しない限り、距離依存誘電定数(ε=4・r)で、減圧下で行った。サーフェスレンダリングおよび定量的ポアソン・ボルツマン静電計算をGRASP(Nicholls Aら(1991) Proteins 11:281-96)およびSPOCK(Christopher JA(1998) SPOCK:構造特性観察および計算キット(巨大分子設計センター、テキサスA&M大学、テキサス州カレッジステーション)で行った。
【0223】
単糖モデル構築。Sp1の3つの単糖残基の分子モデルは、INSIGHT II 2000プログラムのBiopolymerモジュールで構築した。残基bの未結合アミン、並びに残基aおよびcのカルボン酸は非荷電で処理した。各単糖の最初のモデルは、最大誘導体が1000.0 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、最急勾配降下によってエネルギー最小化し、その後、ポラック-リビエル・コンジュゲート勾配法で、最大誘導体が10.0 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、そしてニュートン最小化アルゴリズム(BFGS)で、最大誘導体が0.001 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、エネルギー最小化した。
【0224】
グリッド検索。Sp1反復単位の3つのグリコシド連結各々に関するコンホメーション優先度を、ΦHおよびΨH二面角の系統的なグリッド検索によって評価した。ΦHおよびΨHは、それぞれ、H1-C1-O1-CX’およびC1-O1-CX’-HX’と定義され、一方、X’はグリコシド連結部位を指す。ΦH-ΨH総エネルギーマップは、10°増分で、-180°から180°まで、両方の角度を系統的に回転させることによって得た。すべての連結に関して、単糖に関して上述するのと同一の方法で、各々362の二糖構造をエネルギー最小化し、一方、ΦHおよびΨH二面角、並びにピラノース環のいすコンホメーションを拘束した(k=1,000 kcal・mol-1でコサイン拘束)。各エネルギーマップ中の最低エネルギーコンホメーションを選択して、対応する二糖を構築し、そして構造をさらにエネルギー最小化した。この微調整工程を用いて、グリッド検索の正確さを実証した。電荷分布を評価するため、残基bのアミン、並びにaおよびcのカルボキシレート基を、別個の計算で、非荷電および荷電で処理した。非荷電で処理した場合、距離依存誘電定数ε=4rを用いた。荷電で処理した場合、ε=4r、80および80rを調べた。
【0225】
拘束エネルギー最小化。Sp1の4つの反復単位の最初の分子モデル(4RU、12単糖を含有する)は、グリッド検索計算から得た、好ましい二面角を用いて構築した。構造バイアスを制限するため、最初のモデルとして、直鎖およびランダムコンホメーションもまた、構築した。観察される残基間NOE距離拘束はすべて、1.8Åの近位標的値、およびそれぞれ、強いNOEクロスピークに関して3.3Å、そして弱いクロスピークに関して5.0Åの遠位標的値で、平底エネルギー条件の形で最初のモデルに添加した。力定数は、スケーリング因子1で、100 kcal・mol-1・Å-2に設定した。分子モデルは、最大誘導体が1000.0 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、最急勾配降下によってエネルギー最小化し、その後、ポラック-リビエル・コンジュゲート勾配法で、最大誘導体が0.001 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、エネルギー最小化した。
【0226】
拘束分子動力学。構造を微調整するため、NOE拘束を用いたSp1 4RUの分子動力学(MD)シミュレーションを行った。エネルギー最小化した構造を、MDシミュレーションの出発幾何構造として用いた。シミュレーションしたアニーリングシミュレーションは、5 psあたり10Kで700から300Kまで5周期行った。最終構造は、最終収束<0.001 kcal・mol-1・Å-1まで300Kで完全に最小化した。300Kで1.0 fs時間ステップを用いたベルレ速度アルゴリズムを用いて、一定NVT MD計算を行った。温度は、平衡化期では速度スケーリング、そして産生期ではアンダーセン・アルゴリズムによって、衝突頻度1.0で調節した。系は、10 ps平衡化し、そして産生実行は500 ps行った。ポテンシャル・エネルギーは10 ps未満で平衡化するため、平衡化期は放棄した。中間構造は、解析目的のため、毎0.1 psで保存した。
【0227】
NOE逆算。NOESYスペクトルは、75 msの混合時間で、プログラムMORASS(マルチスピン・オーバーハウザー緩和解析およびシミュレーション)を用いて、Sp1 4RUの3D構造からシミュレーションした。付着する13Cによる自己緩和状態として、1JCH値をNOEシミュレーションに取り込んで、異核双極緩和を説明した。Martin-Pastor Mら(1999) Biochemistry 38:8045-55;Wuthrich K(1986) NMR of Proteins and Nucleic Acids, John Wiley & Sons, ニューヨーク;Bush CA(1994) Methods Enzymol 240:446-59。
【0228】
結果
化学シフト割り当て。NOE由来距離拘束を伴うNMR分光法は、溶液中の糖のコンホメーションを得る可能性を提供する。このアプローチは、まず、分子中の1Hおよび13C共鳴の完全な割り当てを必要とする。Sp1は、2つのガラクツロン酸残基および2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトースを持つ、三糖反復単位で構成される。その一次構造は、化学的方法によって、先に決定された。Lindberg Bら(1980) Carbohydr Res 78:111-7;Li Yら(2001) Immunity 14:93-104。Sp1の広範囲NMR解析は行われておらず、そしてNMR化学シフトは割り当てられておらず、そして公表されていない。1Hおよび13C化学シフトを得るため、1D 1Hおよび2D TOCSY、DQF-COSY、NOESY、HMQC、およびHMBCを含む、NMR実験の組み合わせを行った。シグナルはよく分離され、そしてこれらの実験は、表2に示すような、明白な割り当てに十分であった。NMR解析および割り当てはまた、Sp1の化学構造も確認した。
【0229】
【表2】
【0230】
NOE由来距離拘束。NOEから距離拘束を得るため、それぞれ、25、50、75、および100 msの混合時間で、Sp1のNOESYスペクトルを獲得した。隣接しない残基間でのNOE接触は、炭水化物ではまれにしか観察されないため、NOEクロスピークは、同一単糖または隣接する残基内のプロトンに割り当てた。反復単位あたり、総数24の残基内および24の残基間NOEクロスピークを観察した。4つの混合時間でのこれらのクロスピークすべての量を統合し、そしてNOE構築曲線を得た。大部分のNOE強度は、25から100 msで増加したが、2つは、25から75 msで増加し、そして100 msでわずかに減少した。75 msのシグナルは、スピン拡散によって影響を受けず、そしてまた、ゼロ量子コヒーレンス・アーチファクトは最小限であるため、構築曲線の代わりに混合時間75 msでのNOE強度を用いて、距離拘束を測定した。Wuthrich K(1986) NMR of Proteins and Nucleic Acids, John Wiley & Sons, ニューヨーク。NOEクロスピーク強度は、強いかまたは弱いかいずれかに分類し、そしてそれぞれ、1.8Å-3.3Åおよび1.8Å-5.0Å距離間隔と解釈した。残基間NOE由来拘束は、全体的な構造計算に取り込んだ。
【0231】
コンホメーション優先度。多糖およびオリゴ糖は、回転的に柔軟なグリコシド結合によって共に連結される単糖からなる。オリゴ糖の全体の形状は、主に、グリコシド連結周囲の回転柔軟度に依存し、一方、糖環の固有の柔軟度は、むしろ限定されており、そしてペンダント基の異なる配向が、糖のコンホメーション空間に限定的な影響を有する。個々のグリコシド構成要素の連結および置換パターンによる、Sp1のコンホメーション優先度を評価するため、3つのグリコシド連結すべてに関して、体系的なグリッド検索を行った。この解析では、各グリコシド連結のΦHおよびΨH角は、-180から+180度まで10度増分で独立に変化し、そして各ファイ-プサイ対に関して、総エネルギーを評価した。各二糖に関する、ΦH-ΨHエネルギー輪郭マップを得た。各二糖単位に関して、1つのエネルギー最小プラトーがあった。その結果、最低エネルギーΦH-ΨH対は、以下のとおりであった(括弧内は連結):-50°、-35°(ab);-41°、9°(bc);-41°、-35°(ca)。これらのコンホメーションは、各グリコシド連結に関して多様な二面角から出発し、そして最小化に際して、全体的な最小に向かって収束を示した。
【0232】
構造計算。Sp1の構造は、12量体(4RU)、14量体、および18量体を含む、いくつかの反復単位のコンホメーションをモデリングすることによって、調べた。1つの反復単位は、一般的に、多糖のコンホメーションの全体的な表現を得るには短すぎる。さらに、数反復のモデリングは、緩んだ末端によるアーチファクトを除去し、こうして数反復の中央部分のパラメータを取ることによって、ポリマー構造の組み立てを可能にするであろう。Sp1の4RUの好ましいコンホメーションは、2つのアプローチで残基間NOE距離拘束を用いたエネルギー最小化によって計算した。第一のアプローチでは、グリッド検索から得たファイ-プサイ角を用いて4RUの最初のモデルを構築し、そしてその後、NOE由来距離拘束を用いて、完全に最小化した。わずかに異なるアプローチでは、最初のモデルは、まず、NOE距離拘束を伴わずに最小化し、そして次に、伴って最小化した。これらの2つの最小化スキームは、12量体、14量体、および18量体に関して、事実上、同一の結果を生じた。abおよびcaの平均ファイ-プサイ角は、二糖コンホメーショングリッド検索から得たものと一致した。bc連結に関しては、好ましい二面角は、グリッド検索の二番目に小さいエネルギー最小に近かった。
【0233】
分子動力学。Sp1のコンホメーションは、残基間NOE距離拘束をすべて取り込むことによる、拘束MDシミュレーションによって微調整した。シミュレーションしたアニーリングアプローチにおいて、700から300Kの5周期のシミュレーションしたアニーリングを行った。4RUのコンホメーションは、各周期の終わりに完全に最小化した。このシミュレーションは、5つの異なるコンホメーションを生じた。b-c連結の二面角は、最高の柔軟性を示し、特にプサイ角は、-27.9°から27.7°で変化した。これらの結果は、ab連結が最も柔軟でなく、そしてbcが最も柔軟な連結であることを示した。
【0234】
NOE逆算。上述の計算は、Sp1のいくつかの好ましいコンホメーションを生じた。実験的NOEパラメータを最も満たすのはどのコンホメーションかを決定するため、Sp1のNOESYスペクトルを、混合時間75 msで、各コンホメーションから逆算した。Bush CA(1994) Methods Enzymol 240:446-59。最終モデルは残基内および残基間NOEクロスピークと優れて一致している。
【0235】
Sp1のコンホメーション。Sp1の全体の形状は、1巻きあたり8残基および19Åのピッチの右巻きらせんと記載することが可能である。アミン(正電荷)は、分子の最も外側の表面上に曝露されており、そして結合相互作用に好ましい位置にある。MDシミュレーションにおいて構造間の重原子に関して計算したRMSDは、2Åの桁であった。これは、優れた収束が達成されていることを示す。この類似のコンホメーションへの収束の成功は、拘束MDシミュレーションが正確であることを示す。最も重要な相違は、末端領域で生じ、そしておそらく、端のほつれに起因しうる。
【0236】
Sp1コンホメーションをPS A2のものと比較すると、グリコシド酸素原子およびアミノ基の優れた重ね合わせがあることが観察された。Sp CP1のグリコシド酸素原子は、1.5ÅのRMSD値で、PS A2のものに重ね合わせ可能であり、これは、これらの2つのZPSが、一次構造が異なるのにもかかわらず、本質的に同一の主鎖構造を有することを示す。Sp1のアミン中の窒素原子は、5.1ÅのRMSD値で、PS A2のものに重ね合わせ可能である。興味深いことに、2つの多糖のアミンの空間配置は、類似のパターンを示した。両分子において、アミンは外側を指し、そしてジグザグ様式で配置される。Sp1 4RU中心での2つの隣接アミン間の平均距離は15Åであり、これはPS A2のものに非常に近い。
【0237】
巨視的構造。Sp1の巨視的/形態学的特徴は、X線線維回折によって調べられているセルロースおよびいくつかの多糖と同様に、伸長した原線維様構造を形成すると期待されるであろう。5 mg/mlの濃度でPBSに溶解したSp1は、炭素ナノプローブを用いて、原子間力顕微鏡によって調べた。画像は、Sp1が実際に糸状構造を形成することを示した。
【0238】
前述する明細書は、当業者が本発明を実施するのを可能にするのに十分であるとみなされる。実施例は、本発明の1つの側面の単一の例示として意図され、そして機能的に同等の他の態様が、本発明の範囲内であるため、本発明は、提供する実施例によって範囲が限定されないものとする。当業者には、前述の説明から、本明細書に示し、そして記載するものに加えて、本発明の多様な修飾が明らかになるであろうし、そして該修飾は付随する請求項の範囲内に属する。本発明の利点および目的は、本発明の各態様に、必ずしも包含されない。
【0239】
本出願に引用される、すべての参考文献、特許および特許公告は、本明細書に完全に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】図1は、70℃で記録したPS A2の1H NMRスペクトルを示すグラフである。
【図2】図2は、PS A2の1H-13C HMQCスペクトルを示すグラフである。各クロスピークは、C-H対に対応する。a1は残基aの1位を指すことに注目されたい。未標識ピークは、混入物質によるものである。
【図3】図3は、37℃および750 MHzの場強度で記録した、PS A2の1H-1H NOESYスペクトルを示すグラフである。メチルプロトン領域は示していない。7つの残基間NOEクロスピークを標識する。a1-c2は残基aのH1および残基cのH2間の相関を指すことに注目されたい。
【図4】図4は、PS A2の1つの反復単位の化学的構造を示す図である。
【図5】図5は、(A)PS A2の1つの四量体(4つの反復単位)のらせん構造のスティックモデル、および(B)四量体の静電表面表現を示すグラフ対である。(A)において、炭素は緑、酸素は赤、窒素は青、そして水素は白に色分けする。(B)において、正電荷は青、負電荷は赤に色分けし、そして2つの溝は矢印で示す。両モデルは、同一に配向され、左側が観察者側にわずかに傾き、8つの電荷すべてが同時に見えるようにしてある。
【図6】図6は、PS A2の溝の1つに結合したタンパク質αらせんのモデルを示す図である。PS A2の静電表面は、らせんの15Å以内に示す。らせんはリボンで示し、そして表面の色分けスキームは、図5Bのものと同一である。
【図7】図7は、ネズミMHC-II IA β1(PIIb1)の18量体断片にCP1を加えた際の、NMR化学シフト移動を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第60/251,747号、2000年12月5日出願に基づく優先権を請求する。
【0002】
本発明は、バイオテクノロジー、三次元分子構造決定、三次元コンピュータ分子モデリング、合理的薬剤設計、および免疫調節ポリマーの分野にある。本発明は、免疫調節ポリマーと共に、免疫調節活性を有する療法剤を設計し、選択し、そしてスクリーニングする方法に関する。本発明はまた、核磁気共鳴(NMR)、化学的方法、およびコンピュータ読み取り可能媒体上のガスクロマトグラフィー-質量分析データの使用に基づく合理的薬剤設計のため、多糖PS A2の三次元コンピュータモデリングも提供する。
【背景技術】
【0003】
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)種は、偏性嫌気性グラム陰性細菌であり、そして腹腔内敗血症および膿瘍などの、重症のヒト感染症から単離される、最も一般的な嫌気性菌である。Gorbach SLら(1974) Anaerobic Microorganisms in Intraabdominal Infections(Charles C. Thomas, イリノイ州スプリングフィールド)中, pp. 399-407;Aldridge KE(1995) Am J Surg 169:2S-7S;Polk BJら(1977) Ann Intern Med 86:567-71。膿瘍は、B.フラジリスによる感染に対する、特徴的な宿主反応であり、そしてかなりの罹患率および死亡率を引き起こす。Cross AS(1994) Lancet 343:248-9。動物モデルにおける以前の研究は、B.フラジリスから単離した莢膜多糖(CP)が、T細胞依存機構を介して、膿瘍形成の経過を調節可能であることを立証した。米国特許第5,679,654号;米国特許第5,700,787号;Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AOら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164, 719-24;Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40。より重要なことに、B.フラジリスCPは、B.フラジリス自体、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、および他の相乗的微生物を含む、非常に多様な膿瘍誘導微生物に対して保護することが可能である。Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AO ら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164, 719-24;Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40。炭水化物抗原がT細胞独立であるパラダイムと対照的に、B.フラジリスCPはT細胞を活性化して、増殖させ、そしてサイトカイン反応を誘発することに注目すると興味深い。Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40;Stein KE(1992) J Infect Dis 165:S49。
【0004】
B.フラジリス由来の免疫調節CPは、正および負電荷両方を高密度で持つ双性イオン多糖(ZPS)である点で、構造的に特殊である。以前の研究によって、B.フラジリス9343の莢膜由来の2つのZPS、PS A(以後、PS A1)およびPS Bが同定され(Pantosti Aら(1991) Infect Immun 59:2075-82;Baumann Hら(1992) Biochemistry 31:4081-9;Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9)、これらはどちらもin vitroでT細胞の強力な活性化因子であり、そしてin vivoで膿瘍形成に対して動物を保護する。Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AOら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J lmmunol 164, 719-24。これらの基の化学的中和はT細胞刺激を消滅させるため、電荷は、免疫学的活性の重大な決定要因である。Brubaker JOら(1999) J Immunol 162:2235-42;Tzianabos AOら(1995) Infect Immun 62:4881-6;Tzianabos AOら(1995) J Clin Invest 96:2727-31;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164, 719-24。より最近の研究は、T細胞仲介膿瘍調節が、ZPSの共通の特性であることを示唆する。Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275, 6733-40。
【0005】
ZPSの分子電荷がその免疫学的効果の重大な決定要因である一方、これらの化合物の一次構造が有意に異なることを理解して、特に、これらの多糖のユニークな免疫学的特性に関連する可能性があるため、B.フラジリスの多様な株由来の異なるZPSの構造の詳細を理解する必要が依然としてある。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、部分的に、特定の免疫調節ポリマーが、必要な電荷モチーフに加え、特徴的な三次元特性を持つという発見に基づく。免疫調節ポリマーは、サイトカイン産生、例えばインターロイキン2(IL-2)またはインターロイキン10(IL-10)を誘導し;T細胞などの免疫細胞を活性化し;そして抗原特異的免疫グロブリンG(IgG)抗体産生を抑制することによって、免疫細胞機構を改変可能である。
【0007】
第一の側面において、本発明は、単離免疫調節ポリマーであって、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造-(S1-S2-S3-S4)-を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合(free)アミノ部分を含む、前記単離免疫調節ポリマーに関する。免疫調節ポリマーは、いくつかの態様において、天然存在ポリマーである。
【0008】
第一サブユニット上の負に荷電した部分は、いくつかの態様において、カルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートである。
サブユニットは、多様な態様において、既知の種類のポリマーサブユニットいずれかである。これらのサブユニットは、限定されるわけではないが、単糖、二糖、アミノ酸、ジペプチド、ヌクレオチド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、並びにそれらの組み合わせおよび類似体(analog)を含むことが可能である。1つの態様において、該サブユニットは、独立に、単糖またはその類似体である。別の態様において、サブユニットは、独立に、アミノ酸またはその類似体である。該サブユニットは、独立に、分枝または非分枝であるであることが可能であり、すなわち、これらはポリマーの主鎖の一部でない、付加されたサブユニットまたは他の置換基を含んでもまたは含まなくてもよい。いくつかの態様において、サブユニットS3は、分枝である。
【0009】
1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分は、いくつかの態様において、別の単位の第四サブユニット上の、二番目に最も近い(next-nearest)未結合アミノ部分から約32Å未満である。ポリマーが、一次、二次および三次構造を有することが可能であると認識すると、約32Åの距離は、ポリマーの主鎖に沿って測定する、または同等に、ポリマーの一次構造に沿って測定すると意味するよう、理解するものとする。同様に、用語「二番目に最も近い」は、この文脈で、主鎖または一次構造に沿って決定するように、近接することを意味する。さらに、約32Åの距離は、1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分の窒素および別の単位の二番目に最も近い第四サブユニット上の未結合アミノ部分の窒素間で測定したものを意味する。
【0010】
本発明は、第二の側面において、単離免疫調節多糖であって、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一の単糖M1、第二の単糖M2、第三の単糖M3、および第四の単糖M4を含む、構造-(M1-M2-M3-M4)-を有する四糖主鎖を含んでなり、各四糖主鎖が、第一の単糖M1上に負に荷電した部分および第四の単糖M4上に未結合アミノ部分を含む、前記単離免疫調節多糖に関する。いくつかの態様において、免疫調節多糖は、天然存在多糖である。好ましい態様において、免疫調節多糖は、バクテロイデス・フラジリス638Rの多糖PS A2である。多糖PS A2は、多糖PS A1とは異なると理解すべきである。
【0011】
いくつかの態様にしたがって、第一の単糖上の負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択される。
多糖の単糖は、独立に単糖またはその類似体であることが可能であり、そして分枝または非分枝であることが可能である。1つの態様において、反復単位の単糖M3は分枝である。
【0012】
いくつかの態様において、1つの反復単位上の第四の単糖上の未結合アミノ部分は、別の単位の第四の単糖上の、二番目に最も近い未結合アミノ部分から約32Å未満である。約32Å未満の距離、並びに別の単位の第四の単糖上の次に最も近い未結合アミノ部分は、多糖の主鎖または一次構造に沿って測定したものを意味するよう、理解するものとする
本発明のこれらの最初の2つの側面にしたがって、いくつかの態様において、複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位を含む。特定の態様において、複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の隣接する反復単位を含む。いくつかの態様において、免疫調節ポリマーまたは多糖は、複数の反復単位から本質的になる。反復単位は、特定の態様において、五量体であり;特定の態様において、反復単位は分枝五量体である。
【0013】
本発明は、第三の側面において、免疫細胞を活性化する薬剤調製物である。この側面にしたがった薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、本発明の第一の側面にしたがった単離免疫調節ポリマー、および薬学的に許容しうるキャリアーである。
【0014】
本発明は、第四の側面において、免疫細胞を活性化する薬剤調製物である。この側面にしたがった薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、本発明の第二の側面にしたがった単離免疫調節多糖、および薬学的に許容しうるキャリアーである。
【0015】
本発明は、第五の側面において、PS A2を含んでなる、単離免疫調節多糖である。
本発明は、第六の側面において、免疫細胞を活性化する薬剤調製物を提供する。この側面にしたがった薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、本発明の第五の側面にしたがった単離免疫調節多糖、および薬学的に許容しうるキャリアーである。
【0016】
いくつかの態様において、前述の薬剤調製物のいずれかのポリマーまたは多糖は、天然存在ポリマーまたは多糖の修飾型または誘導体である。
第七の側面において、本発明は、単離免疫調節ポリマーであって、複数の反復電荷モチーフを有する主鎖を含み、反復電荷が、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるようにポリマーに沿って配置されている、正電荷および負電荷であり、該ポリマーが、大部分の正電荷および負電荷が溶媒接近可能である、三次元溶液コンホメーションを有し、前記三次元溶液コンホメーションが複数のドッキング部位を有し、各ドッキング部位が幅約10Åおよび深さ約5Åである、前記免疫調節ポリマーである。
【0017】
本発明のこの側面にしたがったポリマーは、当該技術分野において知られる免疫調節ポリマーのいかなる種類であることも可能である。1つの態様において、免疫調節ポリマーは、PS A2などの多糖である。他の態様において、免疫調節ポリマーは、ポリペプチドまたは混合ポリマーである。
【0018】
本発明のこの側面および上記側面の各々にしたがった好ましい態様において、免疫調節ポリマーまたは多糖は、PS A1、PS B、チフス菌(Salmonella typhi)Vi抗原、大腸菌(Escherichia coli)K5抗原、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5型莢膜多糖、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)・エキソポリサッカライドII、B群連鎖球菌(group B streptococcus)III型莢膜多糖、緑膿菌(Pseudomonas aerugenosa)フィッシャー免疫型7O抗原、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)第I期リポ多糖O抗原、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)I型莢膜多糖、肺炎連鎖球菌群抗原:C物質、またはクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)・リポペプチドホスホグリカンではない。
【0019】
ポリマーは複数の反復単位を含むことが可能である。いくつかの態様において、ポリマーの複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位を含む。他の態様において、複数の反復単位は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の隣接する反復単位を含む。特定の態様において、免疫調節ポリマーは、複数の反復単位から本質的になる。
【0020】
いくつかの態様において、電荷モチーフの正電荷は未結合アミノ基である。いくつかの態様において、電荷モチーフの負電荷はカルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートである。
【0021】
いくつかの態様において、三次元溶液コンホメーションはらせんを含む。好ましい態様において、らせんは右巻きらせんである。好ましい態様において、らせんは約20Åのピッチを有する。
【0022】
本発明のこの側面にしたがった免疫調節ポリマーは、ドッキング部位を含む。いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。いくつかの態様において、ドッキング部位は複数の溶媒接近可能電荷を含む。特定の態様において、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1、10-6 M-1、または10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。
【0023】
いくつかの態様において、免疫調節ポリマーのドッキング部位に結合されるポリペプチドのアルファらせんは、主要組織適合複合体(MHC)分子のアルファらせん、またはT細胞抗原受容体のアルファらせんである。
【0024】
さらに別の側面にしたがって、本発明は、免疫細胞を活性化する薬剤調製物である。該薬剤調製物は、免疫細胞を活性化するのに有効な量の、上述の本発明の第七の側面にしたがった免疫調節ポリマーのいずれか、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む。
【0025】
本発明はまた、本発明のポリマーを用いて、免疫反応を改変する方法も提供する。これらの方法には、IL-2反応性障害、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、および癌;膿瘍形成;癒合形成、例えば術後手術癒合;Th1反応性障害、例えばインスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、および同種移植片拒絶;炎症性異常、例えば敗血症、炎症性腸疾患、骨盤炎症性疾患(PID)、尿路感染症、癌、癒合;自己免疫疾患;移植片対宿主疾患、例えば同種移植片生存促進;乾癬;急性糸球体腎炎;グッドパスチャー症候群;慢性関節リウマチを含む特定の自己免疫関節炎;全身性エリテマトーデス(狼瘡);シェーグレン症候群;自己免疫溶血性貧血;特発性血小板減少性紫斑病(ITP);並びに甲状腺炎の特定の型の治療または予防などの療法が含まれる。
【0026】
別の側面にしたがって、本発明は、感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法である。該方法は、こうした保護が必要な被験者に、感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0027】
さらに別の側面において、本発明は、手術部位で生じる手術癒合形成を減少させる方法に関する。該方法は、こうした治療が必要な被験者に、手術癒合形成を減少させるのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0028】
さらなる側面において、本発明は、IL-2分泌を誘導する方法を提供する。該方法は、こうしたIL-2分泌が必要な被験者に、IL-2分泌を誘導するのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0029】
別の側面において、本発明は、IL-10分泌を誘導する方法を提供する。該方法は、こうしたIL-10分泌が必要な被験者に、IL-10分泌を誘導するのに有効な量で、本発明の薬剤調製物いずれかを投与することを伴う。
【0030】
さらに別の側面にしたがって、本発明は、免疫調節ポリマー候補を選択する系を提供する。本発明のこの側面にしたがった系は、免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するインプットシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプットを有する、予測モジュール;並びにポリマーシグナルを受け取るインプット、予測モジュールによって生成された三次元溶液コンホメーションが(i)複数の反復単位、(ii)複数の溶媒接近可能電荷、並びに(iii)各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択するロジック、および免疫調節ポリマー候補が解析モジュールによって選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、解析モジュールを含む。
【0031】
1つの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復単位で構成される。反復単位は隣接していることが可能であるし、または介在配列によって分離されていることが可能である。
【0032】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフは、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるように主鎖に沿って配置されている、正電荷および負電荷である。好ましい態様において、電荷モチーフの正電荷は未結合アミノ基である。電荷モチーフの負電荷は、いくつかの態様において、カルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートであることが可能である。
【0033】
選択する免疫調節ポリマー候補は、いくつかの態様において、らせんを含んでなる三次元溶液コンホメーションを有する。好ましい態様において、らせんは約20Åのピッチを有する。
【0034】
選択する免疫調節ポリマー候補は、ドッキング部位を含む。いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。他の態様において、ドッキング部位は複数の溶媒接近可能電荷を含む。さらに他の態様において、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1、10-6 M-1、または10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。
【0035】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は糖主鎖を有する。いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は多糖である。さらに他の態様において、選択する免疫調節ポリマー候補はポリペプチド主鎖を有する。
【0036】
さらなる側面において、本発明は、免疫調節ポリマー候補を選択するコンピュータ実行法を提供する。本発明のこの側面にしたがった、コンピュータ実行法は、免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルを受け取り;免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションが、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能電荷、並びに各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択し;そして免疫調節ポリマー候補が選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力することを伴う。
【0037】
1つの態様において、免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルは、複数の免疫調節ポリマー候補を特定する。
1つの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復単位で構成される。反復単位は隣接していることが可能であるし、または介在配列によって分離されていることが可能である。
【0038】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフは、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるように主鎖に沿って配置されている、正電荷および負電荷である。好ましい態様において、電荷モチーフの正電荷は未結合アミノ基である。電荷モチーフの負電荷は、いくつかの態様において、カルボキシル、ホスフェート、またはホスホネートであることが可能である。
【0039】
選択する免疫調節ポリマー候補は、いくつかの態様において、らせんを含んでなる三次元溶液コンホメーションを有する。好ましい態様において、らせんは、約20Åのピッチを有する。
【0040】
選択する免疫調節ポリマー候補は、ドッキング部位を含む。いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。他の態様において、ドッキング部位は複数の溶媒接近可能電荷を含む。さらに他の態様において、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3M-1、10-6M-1、または10-9M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。
【0041】
いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は糖主鎖を有する。いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は多糖である。さらに他の態様において、選択する免疫調節ポリマー候補はポリペプチド主鎖を有する。
【0042】
該方法は、いくつかの態様において、免疫細胞が、通常、活性化されない生理的条件下で、選択する免疫調節ポリマー候補を免疫細胞と接触させ、そして免疫細胞の活性化マーカーを測定することもまた伴う。
【0043】
さらに別の側面において、本発明は、免疫調節ポリマー候補を設計するための系を提供する。本発明のこの側面にしたがった系は、(a)化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するインプットシグナルを受け取るインプットであって、複数のバーチャルサブユニットが、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットが、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなる、前記インプット、(b)複数のバーチャルサブユニットから(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択するロジック、並びに(c)選択したバーチャルサブユニットシグナルを出力するアウトプットを有する、バーチャルサブユニット選択モジュール;選択したバーチャルサブユニットシグナルを受け取る第一のインプットおよび少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプットであって、テンプレートが複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記インプット、(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換するロジック、並びに免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定する、変換したテンプレートシグナルを出力するアウトプットを有する、変換モジュール;変換したテンプレートシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプットを有する、予測モジュール;並びにポリマーシグナルを受け取る第一のインプット、少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプット、およびポリマーシグナルおよびテンプレート間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するインプットシグナルを受け取る第三のインプット、比較規準にしたがって、ポリマーシグナルおよびテンプレートを比較するロジック、並びにポリマーシグナルおよびテンプレートの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、比較モジュールを含む。
【0044】
さらに別の側面にしたがって、本発明は、免疫調節ポリマー候補を設計するコンピュータ実行法を提供する。該コンピュータ実行法は、化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するシグナルを受け取り、複数のバーチャルサブユニットは、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットは、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなり;複数のバーチャルサブユニットから(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択し;少なくとも1つのテンプレートであって、複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記テンプレートを特定するシグナルを受け取り;(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換することによる一次構造を有する免疫調節ポリマー候補を生成し;一次構造を有する免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーション間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するシグナルを受け取り;比較規準にしたがって、免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションを比較し;そして免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するシグナルを出力することを含む。
【0045】
1つの態様において、参照免疫調節ポリマーはPS A2である。
いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補は多糖を含み;いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補は多糖である。いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補はポリペプチドを含み;いくつかの態様において、免疫調節ポリマー候補はポリペプチドである。
【0046】
本発明はまた、いくつかの側面において、本発明の免疫調節ポリマーを用いる医薬品の製造法も含む。該方法は、本発明の免疫調節ポリマーを、薬学的に許容しうるキャリアーに入れることを伴う。例えば、本発明は、IL-2反応性障害、例えばHIV感染、AIDS、癌;膿瘍形成、癒合形成、例えば術後手術癒合、Th1反応性障害、例えばインスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、同種移植片拒絶;炎症性異常、例えば敗血症、炎症性腸疾患、PID、尿路感染症、癌、癒合;自己免疫疾患、移植片対宿主疾患、例えば同種移植片生存促進;乾癬;急性糸球体腎炎;グッドパスチャー症候群;慢性関節リウマチを含む特定の自己免疫関節炎;狼瘡;シェーグレン症候群;自己免疫溶血性貧血;ITP;並びに甲状腺炎の特定の型を治療するかまたは予防する方法において有用な医薬品を製造する方法を含む。
【0047】
本発明の限定は各々、本発明の多様な態様を含む可能性がある。したがって、1つの要素いずれかまたは要素の組み合わせを伴う、本発明の各々の限定が、本発明の各側面に含まれる可能性がある。
【0048】
詳細な説明
定義
用語「電荷モチーフ」は、本明細書において、正に荷電した未結合アミノ部分および負に荷電した部分を指す。負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、およびスルホネートからなる群より選択することが可能である。
【0049】
用語「ドッキング部位」は、本明細書において、別の分子との非ランダム分子間接触相互作用を達成し、そして/または安定化する際に関与する分子の物理的特徴または領域を指す。典型的には、これは、分子の外部表面の圧入(indentation)または溝を伴う。
【0050】
用語「免疫細胞」は、免疫系の細胞を指す。免疫細胞には、Tリンパ球(T細胞)、Bリンパ球(B細胞)、顆粒球、単球、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞、およびそれらの前駆細胞が含まれる。免疫細胞は、活性化されていてもまたは静止していてもよく、そしてその種類および刺激に応じて、活性化免疫細胞には多様な特性がある。活性化免疫細胞は、抗原または他の免疫刺激との接触に反応して、増殖し、防御反応を始めるか、または始める準備をし、あるいは細胞表面分子または分泌分子の発現を増加させるよう刺激される、免疫系の細胞である。免疫細胞を活性化する物質は、静止または休止免疫細胞が活性化免疫細胞になるのを誘導する物質である。活性化免疫細胞は、特定の分泌産物、例えばサイトカイン、ケモカイン、増殖因子、抗体(免疫グロブリン)、および小分子(例えば一酸化窒素、NO)を同化することが可能である。サイトカインには、限定なしに、インターロイキン(IL)-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IL-18、インターフェロン(IFN)-α、IFN-β、IFN-γ、トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β、腫瘍壊死因子(TNF)-α、TNF-β、および顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が含まれる。免疫細胞はまた、活性化に際して細胞表面上の特定の分子、例えばMHCクラスI、MHCクラスII、CD11b、CD20、CD25、CD28、CD40、CD43、CD54、CD62L、CD69、CD71、CD80、CD86、CD95L、CD106、CD134、およびCD134Lを上方制御することもまた可能である。免疫活性化マーカーを測定する方法は、一般の当業者に公知であり、これには酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、バイオアッセイ、イムノブロッティング、免疫親和性アッセイ、逆転写酵素/ポリメラーゼ連鎖反応(RT/PCR)等が含まれる。
【0051】
用語「免疫調節ポリマー」は、免疫系の細胞または免疫系の細胞と流体コミュニケーションにある細胞と接触した際、免疫細胞の活性化状態に変化を誘導するポリマーを指す。例えば、免疫細胞は、免疫調節ポリマーへのこうした曝露に反応して、サイトカインまたは抗体を分泌することが可能であるし、あるいは細胞表面抗原を発現することが可能である。上に示唆するように、免疫細胞の活性化状態の変化は、直接であっても、または間接的であってもよい。ポリマーは、構築するサブユニットのクラスに関して、ホモポリマーでも、またはヘテロポリマーでもよい。例えば、サブユニットの1つのクラスには、単糖が含まれ;サブユニットのクラスの他の例には、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、それらの置換誘導体、および類似体が含まれる。ポリマーは、ホモポリマーであることが可能であるし、または好ましくは、構築される個々のサブユニットに関してヘテロポリマーであることが可能である。例えば、単糖で構成されるヘテロポリマーは、複数の個々の単糖サブユニットを含むことが可能であり、この多くが当該技術分野に公知である。
【0052】
単糖は、より単純な化合物に加水分解不能な炭水化物である。二糖は、2つの単糖に加水分解可能な炭水化物である。個々の単糖サブユニットの限定されない例は、フコピラノース、フコース、フコサミン、ガラクトサミン、ガラクトサミヌロン酸(galactosaminuronic acid)、ガラクトース、ガラクツロン酸、グルコン酸、グルコサミン、グルコース、グルクロン酸、マンノヘプトース、マンノン酸、マンノサミン、マンノサミヌロン酸、マンノース、マンヌロン酸、並びにそれらの異性体および誘導体を含むことが可能である。
【0053】
アミノ酸は、ポリペプチドが由来する単量体である。アミノ酸には、限定されるわけではないが、天然アミノ酸が含まれる。天然アミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが含まれる。
【0054】
用語「介在配列」は、ポリマー主鎖に沿って現れるが、ポリマーの反復単位に対しては外因性である、化学的部分を指す。介在配列は、例えば、少なくとも1つの単糖、シクロアルキル、または2つの反復単位を架橋して多糖にするのに、化学的に適した他の部分を含むことが可能であり、ここで反復単位は糖類またはオリゴ糖である。別の限定されない例として、介在配列は、少なくとも1つのアミノ酸、アミノ酸類似体、または2つのオリゴペプチドを架橋してポリペプチドを形成するのに、化学的に適した他の部分を含むことが可能である。
【0055】
用語「生理学的条件」は、生存細胞の維持に適した条件を意味する。生理学的条件には、in vivoおよびin vitro条件が含まれる。典型的な生理学的条件には、温度、湿度、イオン強度、pH、酸素負荷、および生存細胞の維持に適した栄養素が含まれる。
【0056】
用語「多糖」は、アルドまたはケト-ヘキソース、ペント-ス、および/またはヘプトース単糖、並びにそれらの誘導体のポリマー型を指す。単糖は、グリコシド連結によって連結される。好ましくは、多糖は、最大10の単糖の反復単位で形成されることが可能であり、ここで各反復単位は、少なくとも1つの未結合アミノ部分、並びに:カルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、およびスルホネートからなる群より選択される、1つの負に荷電した部分を含む。より好ましくは、多糖は、最大5つの単糖の反復単位で形成される。1つのこうした多糖で、最も好ましいのは、本明細書に記載するB.フラジリス莢膜多糖複合体の多糖A2(PS A2)である。本発明にしたがって有用な多糖には、必要な荷電基が含まれる。これらの多糖は、細菌または他の天然存在供給源(例えば海草)に由来することが可能であるし、あるいはこれらは天然存在供給源由来の修飾多糖であることが可能であるし、あるいは合成多糖であることが可能である。注目すべきことに、多糖は、分枝多糖であることが可能である。莢膜多糖を得る出発材料として用いる細菌は、いくつかの供給源から商業的に得ることが可能である。例えば、B.フラジリス、NCTC9343およびATCC23745は、英国タイプ・カルチャー・コレクション(National Collection of Type Cultures)(英国ロンドン)およびアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(メリーランド州ベセスダ)から得ることが可能である。上記細菌から多糖Aおよび多糖Bを精製する方法が記載されている。Pantosti Aら(1991) Infect Immun 59:2075-82;Tzianabos AOら(1992) J Biol Chem 267:18230-5;Tzianabosらに発行された米国特許第5,679,654号。莢膜多糖は、ATCCを含む商業的供給源から純粋な型で得ることが可能である。
【0057】
天然存在多糖は、未結合アミノ部分、負に荷電した部分、または他の部分を含む、多様な部分を選択的に付加し、減じ、または修飾するよう、修飾することが可能である。例には、現存するN-アセチル基またはイミン基を修飾することによって、未結合アミノ基を付加するか、あるいはアルコール基からヒドロキシメチル基を形成することが含まれる。
【0058】
したがって、天然存在多糖に加え、少なくとも1つのN-アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸(負に荷電したカルボキシル基を含む糖)からなる多糖反復単位を修飾して、本発明の免疫調節因子を生じることが可能である。少なくとも1つのN-アセチル糖および少なくとも1つのウロン酸を含有する多糖反復単位をN-アセチル化して、未結合アミノ基を生成することが可能であり、そしてこうして、正しい電荷モチーフを持つ多糖が生じるであろう。N-アセチル化可能な分子には、チフス菌莢膜多糖(Vi抗原)、大腸菌K5莢膜多糖、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖、およびリゾビウム・メリロティ・エキソポリサッカライドIIが含まれる。
【0059】
イミン部分(C=NH)を含有する多糖に関しては、未結合アミノ基は、一般の当業者に知られる慣用的化学技術によって、形成可能である。1つの適切な方法は、イミン基を未結合アミノ基に還元する、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)の使用を伴う。これは、室温で2時間、攪拌しながら、過剰な5 mgのホウ化水素を、再蒸留水に溶解した多糖に添加することによって行う。その後、混合物を水に対して透析し、そして凍結乾燥する。DiFabio JLら(1989) Can J Chem 67:877-82。
【0060】
脱N-アセチル化は、一般の当業者に公知の慣用的化学技術によって達成可能である。1つの適切な方法は、水素化ホウ素ナトリウムを伴いまたは伴わず、アルカリの使用を伴う。20 mgの多糖を2 M NaOH(3 ml)に溶解し、そして水素化ホウ素ナトリウムを添加する(50 mg)。溶液を100℃に5時間加熱する。酸で中和した後、溶液を低温で再蒸留水に対して透析し、そして凍結乾燥する。DiFabio JLら(1989) Can J Chem 67:877-82。
【0061】
用語「PS A2」は、遺伝的によく性質決定されている株、B.フラジリス638Rの複雑な莢膜に存在する主な多糖を指す。多糖PS A2は、本明細書でさらに詳細に記載する。
用語「溶媒曝露表面」は、分子の三次元溶液相コンホメーションの表面形態を指し、ここで、分子のサブユニットまたは残基が、分子が存在する(または存在するであろう)溶媒に対して、分子の他のサブユニットまたは残基に対するよりも、より大きい全体の接触を有するならば、該サブユニットまたは残基は、溶媒曝露されているという。
【0062】
用語「被験者」は、ヒト、霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、家禽、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、およびげっ歯類を含む脊椎動物を指す。
用語「サブユニット」は、ポリマーの形成に関与するか、またはポリマーの基礎を形成することが可能な、化学的化合物または部分を指す。サブユニットは、それ自体、ポリマーの単位であることが可能であり、または組み合わせて、ポリマーのより大きい単位の形成に寄与することが可能である。典型的には、サブユニットは、単一の原子よりむしろ、化学的部分またはラジカルである。例えば、サブユニットは、単糖、アミノ酸、ヌクレオチドまたはヌクレオシド、C5-18シクロアルキル、またはC5-18アリール、およびそれらの類似体であることが可能である。サブユニットは、単位を形成する化学反応の規則にしたがって、組み合わせることが可能である(以下を参照されたい)。例えば、単糖サブユニットは、組み合わせてオリゴ糖を形成可能であるし;アミノ酸サブユニットは、組み合わせてオリゴペプチドを形成可能であるなどである。
【0063】
用語「三次元溶液コンホメーション」は、分子(または複数の分子)が溶液中にある際に想定される三次元空間中の、基レベル、または好ましくは原子レベルの分布を指す。好ましくは、溶液は水性溶液である。該用語は、溶液中の分子(類)の、天然での実際のコンホメーション、およびコンピュータ内表現(representation)を含む、対応するいずれかのモデル表現、両方を指す。典型的には、三次元溶液コンホメーションは、実験的化学および物理的測定、並びに所望により、コンピュータモデリングの組み合わせを通じて決定する。コンピュータモデリングは、ねじれおよび回転結合角緊張エネルギー、静電相互作用、並びに溶媒和のエネルギーなどの変数を考慮に入れた、反復計算を通じて、エネルギー最小化に導く方法を含むことが可能である。この用語は、大部分の例で、分子(類)の二次、三次および/または四次構造が、通常、一般の当業者に用いられるのと同じ意味のものに対応する。溶液構造は、例えば、結晶化に対して、溶媒和において関与する、分子内および分子間力の相違のため、対応する結晶構造とは異なる可能性がある。
【0064】
用語「単位」は、ポリマーの文脈において、ポリマーの構築ブロックを指す。単位は、典型的には複数のサブユニットを含む。本発明の好ましい態様にしたがって、単位は反復単位であることが可能であり、すなわちポリマーは特定の単位を複数含有する。単位は、ポリマー主鎖の形成に寄与する要素を含む。主鎖は、例えば、多糖、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、並びにそれらの類似体および組み合わせを含むことが可能である。好ましい態様において、ポリマー主鎖は非分枝であり、すなわち単位は、直鎖方式で共に連結されているが、個々のサブユニットは、側鎖置換基を含むことが可能であり、そしてポリマーの三次元コンホメーションは非直鎖である。例えば、ポリマーの単位は、末端と末端を連結したオリゴ糖であって、全体としてらせんのコンホメーションを有するポリマーを形成することが可能である。別の例として、ポリマーの単位は、末端と末端を連結したオリゴペプチドであって、全体としてらせんのコンホメーションを有するポリマーを形成することが可能である。ポリマーの構築ブロックである限り、単位は同一であっても、または異なっていてもよい。
【0065】
用語「バーチャルサブユニット」は、化学的ポリマーの形成に関与するか、またはポリマーの基礎を形成することが可能な化学的化合物または部分の、物理的に意味がある表現を指す。好ましい態様において、バーチャルサブユニットは、上に定義するような化学的部分のコンピュータ表現である。こうした表現には、少なくとも化学的部分の二次元全体の、そしてより好ましくは三次元全体の特徴と共に、化学的部分が、共有または水素結合を通じて別のバーチャルサブユニットに連結可能な、少なくとも1つの化学的に意味がある付着点を特定するように表現される、化学的部分に関する十分な情報が含まれる。より好ましい態様において、提示には、同一性およびバーチャルサブユニット中の少なくともすべての非水素原子の相対的位置に関する詳細な情報が含まれる。したがって、例えば、バーチャルサブユニットが単糖α-D-(+)-グルコースの表現であるならば、バーチャルサブユニットに対応する表現は、少なくとも以下の情報を含むであろう:酸素および5つの炭素原子(C1-C5)を含む、ふねまたはいす型六員環、環のC5に付着したエクアトリアル位(環の酸素に隣接)の第六炭素原子C6、および以下のように配置された5つのアルコール性ヒドロキシ基:C2、C3、C4上にエクアトリアルに、C1およびC6上にアキシアルに;すべての連結した非水素原子間の結合長;並びにすべての連結した非水素原子間の結合角。例えば、MorrisonおよびBoyd, Organic Chemistry 第3版(1973) Allyn and Bacon, ボストンを参照されたい。
【0066】
バーチャルサブユニットは、コア構成要素と共に、少なくとも1つの置換基を含むことが可能である。コアおよび/または置換基は、非荷電であってもよいし、あるいは未結合正電荷または未結合負電荷を含んでもよい。コア構成要素は、未置換化学部分、例えばグルコースなどの単糖に相当する。置換基は、適切なコア構成要素に付加するか、または該要素の別のラジカルに置換することが可能な化学的ラジカルに対応し、例えば、コア単糖グルコースからグルクロン酸またはグルコサミンを形成するカルボキシル基またはアミノ基がある。上記の例はいずれも例示目的のためのみに提供し、そしていかなる点でも限定することを意味しない。
【0067】
本発明にしたがって、免疫細胞を操作し、そして免疫関連障害のいくつかの種類を治療するのに有用な、特定の免疫調節ポリマーが、必要な電荷モチーフに加えて、特徴的な三次元特性を持つことを発見した。本明細書に記載する免疫調節ポリマーは、例えば、IL-2産生を誘導し、IL-10産生を誘導し、T細胞を活性化し、そして抗原特異的IgG抗体産生を抑制することによって、免疫細胞機能を改変することが可能である。免疫調節ポリマーである化合物の基は、好ましくは、正に荷電した未結合アミノ基および負に荷電した基に特徴付けられる、複数の電荷モチーフに加え、少なくとも10-3 M-1の親和性でポリペプチドのアルファらせんに結合するよう構築され、そして配置されたドッキング部位を有する。電荷分布および免疫調節ポリマー上のドッキング部位の組み合わせが、ポリマーおよび免疫細胞の細胞表面分子のアルファらせん間の相互作用を安定化すると考えられる。特に、ポリマーの構造的および荷電特徴の組み合わせが、ポリマーおよび主要組織適合(MHC)分子のアルファらせん間の相互作用を安定化すると考えられる。
【0068】
本発明は、部分的に、免疫調節ポリマーである特定の組成物およびその使用法に関する。したがって、1つの側面において、本発明は、免疫調節ポリマーであって、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造
-(S1-S2-S3-S4)-
を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合アミノ部分を含む、前記免疫調節ポリマーである、組成物である。特定の態様において、免疫調節ポリマーは、上述の反復単位構造のいくつかのコピーを含み、数は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、少なくともいくつかの反復単位は、反復単位に対して外因性のいくつかの介在配列に連結されることが可能である。特定の態様において、免疫調節ポリマーは、構造
-(S1-S2-S3-S4)n-
を含み、式中、nは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、反復単位は隣接して存在する。いくつかの態様において、ポリマーは、本質的に、完全に反復単位で構成される。
【0069】
免疫調節ポリマーは、第一のサブユニットに関連する負に荷電した部分を含む。好ましくは、負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択され、一方、選択可能な他のものは、サルフェートおよびスルホネートを含むことが可能である。
【0070】
ポリマーのサブユニット(例えばS1、S2、S3、S4・・・など)は:単糖、二糖、アミノ酸、ジペプチド、ヌクレオチド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、並びにそれらの組み合わせおよび類似体からなる群より独立に選択される。したがって、例えば、S1、S2、S3、およびS4は、S1およびS4が必要な負および正電荷を持つならば、単糖として独立に選択可能である。同様に、例えば、S1、S3、およびS4は、単糖として独立に選択可能であり、そしてS2は非糖C5-18シクロアルキル(例えばシクロヘキサニル、シクロヘキサノール)またはC5-18アリール(例えばベンジル)として選択可能である。
【0071】
天然存在サブユニットに加え、サブユニットは、天然存在サブユニットの類似体であることが可能である。例えば、単糖の類似体には、カルバモイルメチル安息香酸などが含まれる。例えば、Mallaise WJ(1999) Exp Clin Endocrinol Diabetes 107 Suppl 4:S140-3を参照されたい。アミノ酸の類似体、例えばペプトイド(Simon RJら(1992) Proc Natl Acad Sci USA 89:9367-71)は、当該技術分野に公知であり、ヌクレオチドの類似体、例えばサブユニット形成ペプチド核酸(ポリアミド核酸とも呼ばれる;Uhlmann E(1998) Biol Chem 379:1045-52)も同様である。
【0072】
免疫調節ポリマーは、分枝または非分枝であるサブユニットを含むことが可能である。したがって、例えば、反復単位中、上に示す4つのサブユニットに加え、示す4つのサブユニットの1つに、さらなるサブユニットを付着させることが可能である。その結果、該単位は、以下のいずれか1つを含む構造を有することが可能である:
【0073】
【化1】
【0074】
上に示す例は、多様な五量体を含み、S5は、先に定義するようなサブユニットであり、そして他のサブユニットいずれとも独立に選択可能である。単位構造および電荷モチーフが維持される限り、さらなる置換基Sxもまた、含むことが可能である。好ましい分枝五量体単位は
【0075】
【化2】
【0076】
であり、サブユニットS3が分枝である。
特定の態様において、1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分は、別の単位の第四サブユニット上の、二番目に最も近い未結合アミノ部分から約32Å未満である。
【0077】
本発明はまた、部分的に、1種類のポリマーの免疫調節多糖である特定の組成物およびその使用法にも関する。バクテロイデス・フラジリス638Rの多糖PS A2が免疫調節性であり、そして電荷分布の点、および三次元溶液コンホメーションの点、両方で、非常に順序だった構造を有することを発見した。これらの特徴両方が、多糖の免疫調節効果に寄与すると考えられる。以下に提示するように、PS A2は、a-eと略記する、5つの糖サブユニットを含有する反復単位に基づき、サブユニットは(a)2-アミノ-4-アセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-α-ガラクトース;(b)α-L-フコピラノース;(c)3-ヒドロキシブタン酸(Bu)のC3およびマンノヘプトースのC6間のエーテル結合を通じて、Buで置換した、マンノヘプトース;(d)N-アセチルマンノサミン;および(e)3-アセトアミド-3,6-ジデオキシグルコースである。糖サブユニットは、以下のように連結して、五糖反復単位を形成する:→2)-c-(1→3)-d-(1→4)[b-(1→2)]-e-(1→3)-a-(1→。単位の構造はまた
【0078】
【化3】
【0079】
と示すことも可能である。この構造にしたがって、cは、未結合カルボキシルを有し、そしてaは関連する未結合アミノ基を有する(図4も参照されたい)。したがって、反復単位は、未結合アミノ基および未結合負電荷、この場合、カルボキシル基である、電荷モチーフを含む。
【0080】
さらに、PS A2の三次元溶液コンホメーションは、本発明にしたがって、らせん1巻きあたり20Åのピッチおよび2つの反復単位を持つらせんであることを示した。PS A2の溶液コンホメーションは、規則的に間を空けたパターンで、ポリマーの外部表面上にあるすべての正および負電荷の曝露によって、さらに特徴付けられ、これによって、他の分子に容易に接近可能になる。らせんは、外側の境界が電荷に占められる、反復する大きい溝によってさらに特徴付けられる。反復する溝は、幅10Å、深さ5Å、および長さ10Åのドッキング部位を含み、ポリペプチドのアルファらせんに適応すると考えられる。
【0081】
したがって、いくつかの側面において、免疫調節ポリマーは、免疫調節多糖である。免疫調節多糖は、複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一の単糖M1、第二の単糖M2、第三の単糖M3、および第四の単糖M4を含む、構造
-(M1-M2-M3-M4)-
を有する四糖主鎖を含んでなり、各四糖主鎖が、第一の単糖M1上に負に荷電した部分および第四の単糖M4上に未結合アミノ部分を含むことが可能である。特定の態様において、免疫調節多糖は、上述の反復単位構造のいくつかのコピーを含み、数は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、少なくともいくつかの反復単位は、反復単位に対して外因性のいくつかの介在配列に連結されることが可能である。特定の態様において、免疫調節多糖は、構造
-(M1-M2-M3-M4)n-
を含み、式中、nは、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間の整数いずれかの整数である。これらの態様にしたがって、反復単位は隣接して存在する。いくつかの態様において、多糖は、本質的に、完全に反復単位で構成される。
【0082】
本発明のこの側面にしたがった免疫調節多糖は、第一の単糖に関連する負に荷電した部分を含む。好ましくは、負に荷電した部分は:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択され、一方、選択可能な他のものはサルフェートおよびスルホネートを含むことが可能である。
【0083】
サブユニットは、単糖およびその類似体から独立に選択する。したがって、例えば、M1、M2、M3、およびM4は、M1およびM4が、必要な負および正電荷を持つならば、単糖として独立に選択可能である。同様に、例えば、M1、M3、およびM4は、単糖として独立に選択可能であり、そしてM2は単糖類似体として選択可能である。上述のように、単糖の類似体には、例えば、カルバモイルメチル安息香酸が含まれる。Mallaise WJ(1999) Exp Clin Endocrinol Diabetes 107 Suppl 4:S140-3。
【0084】
さらに、免疫調節多糖は、分枝または非分枝である単糖を含むことが可能である。したがって、例えば、反復単位中、上に示す4つの単糖に加え、示す4つの単糖の1つに、さらなる単糖を付着させることが可能である。その結果、該単位は、以下のいずれか1つを含む構造を有することが可能である:
【0085】
【化4】
【0086】
上に示す例は、多様な五糖を含み、M5は、先に定義するような単糖であり、そして他の単糖いずれとも独立に選択可能である。単位構造および電荷モチーフが維持される限り、さらなる置換基Mxもまた、含むことが可能である。好ましい分枝五糖単位は
【0087】
【化5】
【0088】
であり、単糖M3が分枝である。好ましい態様において、免疫調節多糖はPS A2である。
1つの反復単位の第四の多糖上の未結合アミノ部分は、別の単位の第四の単糖上の、二番目に最も近い未結合アミノ部分から約32Å未満であることが可能である。
【0089】
本発明はまた、部分的に、PS A2を含んでなる、単離免疫調節多糖にも関する。本明細書において、用語「単離」は、物質に関連して、他の細胞構成要素を含む、その天然環境から除去されることを意味する。したがって、「単離」は、この文脈において、他の細胞構成要素を含む、その天然環境から除去された免疫調節多糖を指す。単離物質は、必ずしも純粋である必要はなく、すなわち、単離物質は、その天然環境から除去されている限り、他の物質と混合されていることが可能である。
【0090】
いくつかの免疫調節ポリマーは、水性溶液相中で、特定の三次元特性を有する。三次元特性には、(i)複数の反復電荷モチーフを有する主鎖、反復電荷モチーフは主鎖に沿って配置された正電荷および負電荷である;(ii)正電荷および負電荷の少なくとも大部分が、溶媒接近可能である、三次元溶液コンホメーション;並びに(iii)各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位が含まれる。
【0091】
連続する電荷モチーフの正電荷の配置は、約32Å未満で離れていることが可能である。この特性は、主鎖に許容されるであろうように、本質的に直鎖化した一次構造に沿って測定されるような配置を指す。言い換えると、約32Å未満の分離は、いかなる一次、一次構造に基づく二次、または三次構造によっても超えられないであろう分離の最大距離を示す。
【0092】
いくつかの態様において、ドッキング部位は、少なくとも長さ約10Åである。電荷およびコンホメーションはどちらも免疫調節機能に重要であると考えられ、そして好ましい態様において、ドッキング部位は、複数の溶媒接近可能電荷(したがって、分子の外部表面上またはその近くであり、そして「溶媒曝露」であるように、溶媒に向かって配向される荷電した部分)を含む。
【0093】
ドッキング部位は、好ましくは、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。より好ましくは、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-6 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。さらにより好ましくは、ドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている。特に好ましい態様において、こうしてポリマーに結合するアルファらせんは、免疫細胞上の表面分子のアルファらせんである。非常に好ましい態様において、こうしてポリマーに結合するアルファらせんは、免疫細胞表面上のMHC分子、例えばクラスII MHC分子のアルファらせんである。別の非常に好ましい態様において、こうしてポリマーに結合するアルファらせんは、T細胞抗原受容体のアルファらせんである。T細胞抗原受容体には、限定されるわけではないが、αβまたはγδ鎖が含まれる。一般の当業者には、特定のアクセサリー分子がαβまたはγδヘテロ二量体と関連し、そしてT細胞受容体の一部とみなされることが公知であり、これらには、例えば、CD3複合体に寄与するもの、例えばγ、δ、ε、ζ、およびη鎖が含まれる。特定のドッキング部位がアルファらせんに結合する能力およびその結合相互作用の力は、以下の実施例に記載する方法などの、当該技術分野において日常的な方法を用いて評価可能である。
【0094】
免疫調節ポリマーは、例えば、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間のすべての整数を含む、複数の反復単位を含むことが可能である。反復単位は、いくつかの隣接する反復単位を含むことが可能であり、数は:少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、およびその間のすべての整数からなる群より選択される。いくつかの態様において、ポリマーは、反復単位から本質的になることが可能である。
【0095】
ポリマーの反復単位は、上述のように、例えば、オリゴ糖、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、それらの類似体および組み合わせを含むことが可能である。反復単位は、上述のように、サブユニット、例えば単糖、アミノ酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、およびそれらの類似体で構成されることが可能である。免疫調節ポリマーは、いくつかの態様において、混合ポリマーであることが可能である。混合ポリマーは、少なくとも2つの異なる種類のサブユニット、例えば単糖およびアミノ酸を含有するポリマーである。
【0096】
先に記載するように、電荷モチーフの正電荷は、好ましくは、未結合アミノ基であり、そして電荷モチーフの負電荷は、好ましくはカルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、またはスルホネートである。好ましい態様において、電荷モチーフの負電荷は、カルボキシル基と共に存在する。
【0097】
特定の態様において、三次元溶液コンホメーションはらせんを含んでなる。らせんは、1巻きあたり、整数のまたは非整数の反復単位を含むことが可能であり、そして左巻きらせんであっても、または右巻きらせんであってもよい。好ましい態様において、らせんは、約20Åのピッチを有する。
【0098】
特定の態様において、免疫調節ポリマーは、特に、以下のいずれを除外することも可能である:PS A1、PS B、チフス菌Vi抗原、大腸菌K5抗原、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖、リゾビウム・メリロティ・エキソポリサッカライドII、B群連鎖球菌III型莢膜多糖、緑膿菌フィッシャー免疫型7O抗原、ソンネ赤痢菌第I期リポ多糖O抗原、肺炎連鎖球菌I型莢膜多糖、肺炎連鎖球菌群抗原:C物質、またはクルーズトリパノソーマ・リポペプチドホスホグリカン。
【0099】
本発明のポリマーは、多くの種類のポリマーを含む。「ポリマー」は、本明細書において、連結によって共に連結される個々の単位の直鎖主鎖を有する化合物である。用語「主鎖」は、ポリマー化学の分野における通常の意味を与えられる。ポリマーは、必要な電荷モチーフを有し、それによって、ペプチド核酸(核酸に連結したアミノ酸を有するもの)など、共に連結されるポリマー単位のありうる組み合わせいずれかを含有する限り、主鎖組成において、不均一であってもよい(本明細書において、混合ポリマーと称する)。いくつかの場合、本発明のポリマーは、主鎖に取り込まれた非ポリマー性化合物を有することが可能であるため、ポリマーは、当該技術分野に慣用的に知られるポリマーと異なる可能性がある。例えば、本発明のポリマーは、2組のアミノ酸を共に連結する有機リンカーを含有する領域以外、完全にアミノ酸で構成されることが可能である。好ましい態様において、ポリマーは、主鎖組成において均一であり、そして例えばポリペプチド、多糖、および炭水化物である。「核酸」は本明細書において、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのヌクレオチドで構成される、バイオポリマーである。ポリペプチドは、本明細書において、連結アミノ酸で構成されるバイオポリマーである。多糖は、本明細書において、連結糖で構成されるバイオポリマーである。
【0100】
ポリマーは、反復単位で構成されることが可能であり、例えば、全ポリマーが、反復電荷モチーフで構成されることが可能である。「単位」は、本明細書において、ポリマーの構築ブロックを示すのに、当該技術分野において知られる意味と一致して用いられ、例えばタンパク質の単位はアミノ酸であり、核酸の単位はヌクレオチドであり、多糖の単位は単糖であるなどである。反復単位で構成されるポリマーは、ポリマー中、少なくとも2回現れる単位の組で完全に構成されるものである。ポリマーの反復単位は、同一反復単位であっても、または非同一反復単位であってもよい。「同一反復単位」は、本明細書において、ポリマー中で反復され、そしてその中で、すべてのメンバーが同一組成を有し、そして他の組の単位のメンバーに対して、同一の順序で配置される、単位の組である。「非同一反復単位」は、本明細書において、ポリマー中で反復され、そしてその中で、すべてのメンバーが同一組成を有するのでなく、そして/または他の組の単位のメンバーに対して、同一の順序で配置されない、単位の組である。非同一反復単位のいくつかのメンバーは、すべてのメンバーが同一でない限り、他の組のメンバーと同一の順序および/または位置を有することが可能である。本発明の文脈で用いる際、非同一反復単位を有するポリマーは、すべて非同一反復単位、または同一および非同一反復単位の組み合わせを有することが可能なポリマーである。
【0101】
本発明のポリマーはまた、非反復単位で構成されることも可能である。非反復単位で構成されるポリマーは、本明細書において、完全には反復単位で構成されないポリマーである。例えば、非反復単位で構成されるポリマーは、ランダムポリマーであることが可能である。「ランダム」ポリマーは、反復電荷モチーフ以外の特定のまたは同定可能な順序を持たない単位を有するポリマーである。非反復単位で構成されるポリマーはまた、部分的にランダムであるが、いくつかの反復モチーフを含むハイブリッド反復ポリマーであることも可能である。
【0102】
ポリマーは、少なくとも2つの反復電荷モチーフを含む。「反復電荷モチーフ」は、本明細書において、正に荷電した未結合アミノ部分および負に荷電した部分で構成されるモチーフである。モチーフは、二重に荷電した単一単位、または1つの単位が正電荷を有し、そして第二の単位が負電荷を有する、多数単位で構成されることが可能である。電荷が異なる単位上に存在する場合、単位は、互いに隣接していてもよいし、あるいは他の荷電または中性単位に分離されていてもよい。好ましくは、荷電単位は中性単位に分離される。中性単位は、正および/または負電荷をもたない単位である。モチーフの荷電単位は、いかなる数であってもよいが、好ましくは10未満の中性単位で分離されることが可能である。反復電荷モチーフは、ポリマー内でいかなる配向で存在してもよい。例えば、中性単位に分離される2つの反復荷電を有するポリマーにおいて、ポリマーは、以下の順序を有することが可能である:正電荷の後にまず負電荷、次に中性単位、次に負電荷、そして最後に正電荷。あるいは、ポリマーは、以下の順序を有することが可能である:正電荷の後にまず負電荷、次に中性単位、次に正電荷、そして最後に負電荷など。
【0103】
「負に荷電した部分」は、本明細書において、負に荷電した基いずれかを指すが、好ましくはカルボキシル基である。未結合アミノ基を有する正に荷電したアミノ酸には、限定されるわけではないが、リジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、およびヒスチジン(H)が含まれる。負に荷電したアミノ酸には、限定されるわけではないが、アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)が含まれる。
【0104】
免疫調節ポリマーは、複数の反復電荷モチーフを有するが、2より大きいいかなる数を有することも可能である。全ポリマーは、例えば、反復電荷モチーフで構成されることが可能である。あるいは、ポリマーは、2および全ポリマーが反復電荷モチーフで構成される際の数(もちろん、ポリマーの大きさに応じるであろう)の間のいかなる数の反復電荷モチーフで構成されることも可能である。ポリマーは、例えば、少なくとも10、15、20、25、30、35などの反復電荷モチーフを有することが可能である。
【0105】
特定の態様にしたがって、電荷モチーフは、最大距離未満で、互いに分離される。この最大距離は、本質的に直鎖様式で配置された際、一次構造主鎖に沿って測定されるような、少なくとも2つの反復電荷モチーフの正に荷電した未結合アミノ部分間の距離として定量化する。あるいは、距離は、同様に、少なくとも2つの反復電荷モチーフの負に荷電した部分間の距離として定量化することが可能である。距離32Åは、一次配列で測定されるポリペプチドの8までのアミノ酸残基の距離に同等である。モチーフ間の距離は、もちろん、三次コンホメーションで測定した際、より短い可能性があるが、明確にするため、一次構造の形で測定する。この大きさを有するポリペプチド単位は、10アミノ酸残基に対応する最大サイズで構成され、そして各Xが、反復電荷モチーフの正に荷電した未結合アミノ部分であり;そして各Nが、独立に、反復電荷モチーフを含むことが可能な中性または荷電単位である、以下の構造を有する:
XN8X
反復単位の負に荷電した部分は、Xのどちらの側であってもよい。式XN8Xは、全ポリマーであってもよいし、またはより大きいポリマーのサブセットであってもよい。
【0106】
反復電荷モチーフ間の領域は、反復電荷モチーフ、他の単位またはサブユニット、あるいはそれらの混合物で構成されることが可能である。領域は、例えば、中性の介在配列であることが可能である。介在配列は、ポリマーの他の単位と同一の種類の単位であることが可能であるし、または完全に異なることが可能である。例えば、非ポリマー性有機部分であることが可能である。
【0107】
これらのポリマー上の正および負に荷電した基は、どちらも、免疫系に影響を与え、そして膿瘍形成に対して動物を保護する能力を調節する。どちらの電荷の完全な中和も、ポリマーの免疫調節能力を抑止する。
【0108】
本発明の免疫調節ポリマーは、上述の必要な電荷モチーフを有し、そして本明細書に記載するように、IL-2およびIL-10分泌の誘導などの機能いずれかを行う能力を有するポリマーである。本明細書に提供する本発明の好ましい免疫調節ポリマーの特定の例に加え、他の好ましいポリマーが同定可能であり、そしてIL-2またはIL-10の分泌を誘導する能力、あるいは他の免疫機能を改変する能力に関して試験することが可能である。ポリマーは、例えば、化合物ライブラリー中で同定することが可能であるし、または新規に合成することが可能である。これらの化合物は、その後、いかなる標準的なIL-2またはIL-10誘導アッセイにおいて、活性に関して試験することも可能である。こうしたアッセイは、一般の当業者に公知である。例えば、in vivo RNA解析を用いることが可能であるし、あるいは抗IL-2またはIL-10抗体を用いて、タンパク質解析を行うことが可能である。さらに、T細胞を用いたin vitroアッセイが使用可能である。ポリマーを培養中のT細胞集団に添加して、そしてIL-2またはIL-10の産生を評価することが可能である。
【0109】
本発明の免疫調節ポリマーは、いかなる供給源由来であってもよく、例えば、これらは、動物または植物抽出物、細菌、真菌、海草等の天然供給源から単離し、そして由来することが可能であるし、あるいは合成して調製することが可能である。例えば、ポリマーがポリペプチドである場合、ポリペプチド合成のために当該技術分野において知られる慣用法を用いて合成することが可能である。例えば、ランダムポリペプチドは、米国特許第3,849,550号およびTeitelbaumら, Eur J Immunol 1:242(1971)に開示する方法にしたがって調製可能である。これらの参考文献は、アミノ酸の調製を記載し、ここで、チロシン、アラニン、ガンマ-ベンジルグルタメートおよびイプシロン-N-トリフルオロアセチルリジンのN-カルボキシ無水物を、周囲温度で、インジオキサン中、イニシエーターとしてのジメチルアミンと重合させ、その後、氷酢酸中で、臭化水素を用いて、グルタミン酸のガンマ-カルボキシル基を脱ブロッキングし、そして1 Mピペリジンによってリジン残基からトリフルオロアセチル基を除去する。特定の配列を有するポリペプチドおよび他のアミノ酸もまた、当該技術分野に公知の装置および方法論を用いて、調製可能である。
【0110】
あるいは、ポリペプチドは、組換え技術を用いて調製可能である。こうした方法は、当該技術分野に公知であり、そして多くの参考文献に記載されている。例えばSambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。
【0111】
さらに、ポリマーは、中性単位の化学的修飾を用いて、正および負電荷を発展させ、現存する(または合成)ポリマーから調製することが可能である。例えば、ポリマーは、多糖を修飾するために、米国特許第5,700,787号および第5,679,654号に開示される方法にしたがって、化学的に修飾することが可能である。簡潔には、天然多糖単位のN-アセチル部分を修飾して、未結合アミノ基を生じることが可能である。したがって、黄色ブドウ球菌5型莢膜多糖などの、負電荷およびN-アセチル基を有する単位で構成される多糖は、各単量体反復単位が、次に、正および負に荷電した基両方を有するように、修飾することが可能である。イミン部分(C=NH)を含有する多糖に関しては、未結合アミノ基はまた、一般の当業者に知られる慣用的な化学技術によって、形成することも可能である。1つの適切な方法は、水素化ホウ素ナトリウムの使用を伴う。イミン基は、水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元して、未結合アミノ基を生成することが可能である。これは、室温で2時間、攪拌しながら、過剰な5 mgのホウ化水素を、再蒸留水に溶解した多糖に添加することによって行う。その後、混合物を水に対して透析し、そして凍結乾燥する。
【0112】
ポリマーはまた、ポリペプチドおよびアミノ酸を修飾するための、Wold, F., 翻訳後タンパク質修飾:展望および期待, B.C. Johnson(監修), Posttranslational Covalent Modification of Proteins中, ニューヨーク;Academic, 1983, pp.1-12に記載される方法にしたがって、化学的に修飾可能である。
【0113】
本発明にしたがって有用なポリマーはまた、商業的供給源から得ることも可能である。
「合成ポリマー」は、本明細書において、化学的または組換え技術によって調製され、そしてそうでなければ天然には見出されないポリマーである。合成ポリマーは、天然存在ポリマーに配列が同一であってもよいが、必ずしも同一でなくてもよい。多糖、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ペプチド核酸などを含む、合成ポリマーの例および該ポリマーを調製する方法は、一般の当業者に公知である。
【0114】
合成ポリマーはまた、天然存在ポリマーに似ているが、修飾主鎖を有するポリマーも含むことが可能である。修飾主鎖を持つ、こうしたポリマーの例は、一般の当業者に公知であり、そして例えば、限定なしに、ホスホロチオエート核酸、メチルホスホネート核酸、およびペプチド核酸を含む。
【0115】
「非天然ポリマー」は、本明細書において、天然存在ポリマーと組成または配列が異なるポリマーである。これは、さらなる修飾を伴わない、天然供給源からの単離のみによっては調製不能である。
【0116】
ポリマーの電荷比は、ポリマー内の正および負電荷の数に応じるであろうし、そしてポリマーに応じて多様であろう。いくつかの例では、ポリマーがポリペプチドである場合、1:1の正対負電荷比を有する。
【0117】
本発明にしたがって有用なポリマーのサイズは、非常に多様である。特に非多糖ポリマーに関しては、0.5 kDaおよび50 kDaの間のポリマーが典型的であろう。1つの態様において、ポリマーサイズは、7 kDaおよび25 kDaの間である。いくつかの態様において、ポリマーサイズは、約50 kDaおよび約500 kDa未満の間である。さらに他の態様において、ポリマーサイズは、約500 kDaおよび約5000 kDaの間である。
【0118】
本発明の免疫調節ポリマーは、多様なin vitroおよび療法目的に有用であり、これらには、限定されるわけではないが、インターロイキン2(IL-2)反応性障害を治療し、膿瘍形成に対して動物を保護し、癒合形成を予防し、例えば術後手術癒合形成を減少させ、Th1反応性障害を治療し、自己免疫疾患を治療し、そして同種移植片生存を促進することが含まれる。
【0119】
したがって、本発明は、1つの側面において、IL-2分泌を誘導する方法である。この方法は、IL-2分泌細胞を、IL-2分泌を誘導するのに有効な量の本発明のポリマーに接触させることによって、行うことが可能である。IL-2は、一般の当業者に公知のサイトカインであり、そして多様な効果を発揮する。IL-2の生理学的効果の中に、免疫細胞、特にTリンパ球、NK細胞、およびBリンパ球の増殖および活性化の誘導がある。概説には、Paul WE(1999) Fundamental Immunology, 第4版, Lippincott-Raven, フィラデルフィアを参照されたい。
【0120】
IL-2分泌細胞は、本発明の非多糖ポリマーでの活性化に反応してIL-2を産生する細胞いずれかである。これらの細胞には、例えば、CD4+ Th1およびCD4+ Th2細胞およびCTL(CD8+)を含むTリンパ球が含まれる。IL-2分泌細胞を、IL-2分泌を誘導するのに有効な量のポリマーに接触させる。IL-2分泌を誘導するのに有効な量は、IL-2分泌のいかなる誘導も生じる量である。例えば、IL-2分泌細胞が、ポリマーと接触させた時点で、IL-2をまったく分泌していない場合、ポリマーがいかなるIL-2を誘導する能力も、ポリマーの有効な量である。IL-2分泌細胞がすでにIL-2を分泌している場合、ポリマーがその量を増加させる能力がまた、ポリマーの有効量である。
【0121】
IL-2を誘導するのが望ましい、多くの例がある。例えば、多様な実験的アッセイのため、in vitroでIL-2を誘導するのが望ましい。こうしたアッセイの例は、IL-2誘導をブロッキングするのに有用な化合物を同定するためのアッセイである。他のアッセイには、多様な系に対するIL-2の影響を測定するための生理学的アッセイが含まれる。多様なex vivo/in vivo条件で、IL-2を誘導するのもまた、望ましい。例えば、HIV感染、後天性免疫不全症候群(AIDS)、並びに癌、例えば腎細胞癌腫および黒色腫の治療において、IL-2が有用であることが知られる。
【0122】
したがって、本発明はまた、IL-2分泌を誘導することによって、IL-2反応性障害を治療する方法も含む。IL-2反応性障害を有する被験者に、本発明の免疫調節ポリマーを、IL-2分泌を誘導するのに有効な量で投与する。IL-2反応性障害を有する被験者は、手術を受ける準備が出来ていない被験者である。一般的に、被験者は、AIDSまたは癌、例えば腎細胞癌腫または黒色腫を有するか、あるいはこれらを発展させるリスクがある被験者である。
【0123】
多くの異常、特にT細胞依存免疫反応に関与するものは、本明細書に開示する方法および組成物を使用して、利益を得る可能性がある。例えば、有効なT細胞反応を始める能力が制限されているため、免疫不全である被験者、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した被験者は、IL-2のレベルを増加させると利益を得ることが知られる。
【0124】
本発明はまた、IL-10の分泌を誘導するのが望ましい場合はいつでも有用である。現在、IL-10が、炎症性異常を含む、多くの免疫仲介異常において、重要な役割を果たすと考えられている。いかなる特定の理論または機構に縛られることも意味しないが、本発明のポリマーは、最初のステップとして、IL-2の分泌を誘導するだけでなく、続いてIL-10の分泌も誘導すると考えられる。したがって、本発明のポリマーを投与した後に観察されるIL-10の分泌は、間接的である、すなわちIL-2分泌の結果として生じる影響に仲介されると考えられる。IL-10は、一般の当業者に公知のサイトカインであり、そして多様な生理学的効果を発揮する。IL-10は、IL-2産生を含む、Th1機能を阻害することが知られる重要なTh2サイトカインであるとみなされる。IL-10は、他の研究者によって、敗血症、炎症性腸疾患、および癒合などの、多くの種類の炎症過程を予防することが示されてきている。さらに、IL-10は、特定の自己免疫疾患、移植片対宿主疾患(GvHD)、および乾癬を予防する。したがって、本発明のポリマーは、例えば敗血症、炎症性腸疾患、骨盤炎症性疾患(PID)、尿路感染症、癌、または癒合などの障害を治療し、または予防するのに有用である。
【0125】
本発明はまた、被験者において、細菌性膿瘍形成を予防するのが望ましい場合はいつでも有用である。これには、計画手術法と共に、緊急の状況下で、こうした異常を治療する、予防的治療が含まれる。選択的手術には、以下の腹腔内手術が含まれる:右結腸半切除術;左結腸半切除術;S状結腸切除術;結腸亜全摘術;結腸全摘術;腹腔鏡下または開腹胆嚢摘出術;胃切除術など。緊急腹腔内手術には、以下の異常を正すものが含まれる:穿孔性潰瘍(十二指腸または胃);穿孔性憩室炎;閉塞性憩室炎;急性虫垂炎;穿孔性虫垂炎;閉鎖性腹部外傷;穿通性腹部外傷;膿瘍を排出するための二次手術など。本発明はまた、心臓手術および創傷感染を正すための手術などの非腹腔内手術でも有用である。本発明はまた、骨盤炎症性疾患(PID)、尿路感染症および結腸癌など、被験者を膿瘍形成に罹りやすくする疾患に関連しても有用である。本発明が関連する当該技術分野の一般の当業者は、本発明が有用である範囲の異常および方法を認識するであろう。
【0126】
膿瘍形成を予防するために投与する際、本発明の免疫調節ポリマーは、アジュバントと共に投与することが可能である。用語「アジュバント」は、ポリマーに取り込まれるか、またはポリマーと同時に投与され、そして被験者において免疫反応を増強する、いかなる物質も含む。アジュバントには、アルミニウム化合物、例えば、ゲル、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、並びにフロイント完全または不完全アジュバント(ここでポリマーは、パラフィン油エマルジョンにおいて安定化した水の水性相に取り込まれている)が含まれる。パラフィン油の代わりに、異なる種類の油、例えば、スクアレンまたはピーナツ油を用いてもよい。アジュバント特性を持つ他の成分には、BCG(弱毒化ウシ結核菌(Mycobacterium bovis))、リン酸カルシウム、レバミゾール、イソプリノシン、ポリアニオン(例えば、ポリA:U)、レンチナン、百日咳毒素、脂質A、サポニン類、ペプチド(例えば、ムラミルジペプチド)および希土類塩(例えば、ランタンおよびセリウム)が含まれる。アジュバントの量は、被験者および用いられる特定のポリマーに応じ、そして当業者により、過度の実験なしに容易に決定されることが可能である。好ましいアジュバントは、選択的にT細胞を刺激するものである。T細胞反応を抑制する可能性があるアジュバントは避けることが望ましい。
【0127】
本発明はまた、被験者において、癒合形成、例えば術後手術癒合形成を予防することが望ましい場合はいつでも、有用である。本発明の別の側面において、多くの一般的な種類の手術に関連する、術後手術癒合形成に対する保護を誘導する方法を提供する。これには、計画的外科的処置後と共に、緊急手術後の癒合形成を予防する予防的治療が含まれる。手術部位と離れた部位でのポリマーの投与が、術後手術癒合形成に対して保護を誘導することが可能であることが発見された。
【0128】
本発明はまた、骨盤炎症性疾患、炎症性腸疾患、尿路感染症および結腸癌などの自発的癒合形成に被験者を罹りやすくする疾患と関連しても有用である。本発明はしたがって、実質的にいかなる組織または器官に関与する炎症過程にも有用である。本発明が関連する当該技術分野の一般的な当業者は、本発明が有用である範囲の異常および方法を認識するであろう。
【0129】
術後手術癒合形成を予防するため投与する際、本発明のポリマーは、全身性を含め、手術部位から離れて、または術後手術癒合形成の可能性を減少させることが望ましい手術部位に局所的に投与することがいずれも可能である。本発明のポリマーは、水性溶液として、架橋したゲルとして、あるいは水性溶液および架橋ゲル型のいかなる一時的または物理的組み合わせとして、投与することも可能である。架橋ゲルは、反復電荷モチーフ、すなわち正に荷電した未結合アミノ部分および負に荷電した部分を、本発明にしたがって、術後手術癒合形成を減少させるかまたは予防する目的に十分な程度に、保持しなければならない。
【0130】
特定のポリマーを用いて、宿主T細胞を刺激し、そして多くの細菌に対する防御を誘導可能であることが発見されてきている。この防御効果はT細胞依存性であり、そして体液性抗体反応に仲介されない。こうしたものとして、本発明の調製の投与は、「予防接種」ではなく、そして調製は、免疫抗原を発現する細菌に特異的な防御を仲介する「ワクチン」ではない。
【0131】
本発明にしたがって、上述の免疫調節ポリマーは、T細胞を活性化してTh1サイトカインを産生するのに有用であることも見出された。本発明は、治療する宿主被験者においてT細胞を刺激することが望ましい場合はいつでも有用である。特に、本発明は、いくつかの異なる細菌いずれによる感染に対しても治療した宿主の防御を誘導することが望ましい場合はいつでも有用である。この防御効果はT細胞依存性であり、そして必ずしも体液性抗体反応に仲介されない。
【0132】
T細胞は、IL-2分泌を誘導するのに有効な量の、本発明の免疫調節ポリマーと接触させる。免疫調節ポリマーはT細胞を活性化し、IL-2およびインターフェロン-γ(IFN-γ)などのTh1特異的サイトカインの分泌を引き起こす。T細胞は、刺激されると、Th1またはTh2サイトカイン産生いずれかに向かって分化することが可能である。本発明の免疫調節ポリマーは、T細胞を活性化して、Th1サイトカインプロフィールを有するサイトカイン放出を仲介することが可能であり、そしてしたがって、T細胞を活性化してTh1サイトカインプロフィールを産生することが望ましい場合はいつでも有用である。
【0133】
「T細胞」は、本明細書において、部分的に、細胞表面上のCD3およびT細胞抗原受容体の発現によって特徴付けられる、胸腺由来リンパ球である。「Th1細胞」は、本明細書において、主に、IL-2、IFN-γ、およびリンホトキシンを分泌するCD4+ Tリンパ球である。Th1サイトカインプロフィールには、IL-2、IFN-γ、およびリンホトキシンが含まれる。
【0134】
本発明はまた、T細胞を活性化してTh1細胞特異的サイトカインを産生することによって、Th1細胞反応性障害を治療する方法も含む。該方法は、Th1細胞反応性障害を有する被験者に、T細胞によるIL-2分泌を誘導するのに有効な量の、本発明の免疫調節ポリマーを投与することによって達成する。Th1細胞反応性障害を有する被験者は、手術を受ける準備が出来ていないが、Th1細胞反応性障害を発展させるリスクがあるか、または該障害を有する被験者である。「Th1細胞反応性障害」は、Th1サイトカインで阻害される免疫仲介障害である。本明細書において、障害の発展が部分的にまたは完全に予防されるか、あるいは障害の度合いが減少するならば、障害は阻害される。Th1細胞反応性障害には、限定されるわけではないが、インスリン依存性糖尿病、実験的アレルギー性脳脊髄炎、炎症性腸疾患、および同種移植片拒絶が含まれる。
【0135】
本発明にしたがって、本発明の特定の免疫調節ポリマーが、特定の抗原に対するIgG抗体反応を抑制し、そしてまた同種移植片生存を促進するのに有用なこともまた、発見された。本発明のこれらの側面にしたがって有用な免疫調節ポリマーには、およそ6:2:5:1のモル比、あるいは4-6:1.4-2.1:3.2-4.2:1、6:2:4.5:1、4.1-5.8:1.4-1.8:3.2-4.2:1、6:1.9:4.7:1、4.9:1.7:3.8:1、または6:1.8:4:1の比の、アラニン、グルタミン酸、リジン、およびチロシンで構成されるものを除いて、上に論じるポリマーが含まれる。一般的に、ポリマーは、グルタミン酸、リジン、アラニン、およびチロシンのみで構成される場合、文献に記載されるGLATおよびコポリマー1の型を特に排除する。いくつかの態様において、本発明の免疫調節ポリマーは、手術を受ける準備が出来ていない被験者において、これらの障害を治療するのに有用である。
【0136】
「特定の抗原に対する不適切なIgG抗体反応によって特徴付けられる障害」は、本明細書において、急性糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、慢性関節リウマチを含む特定の自己免疫関節炎、全身性エリテマトーデス(狼瘡)、AIDS、シェーグレン症候群、自己免疫溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、並びに甲状腺炎の特定の型などの障害である。
【0137】
ポリマーはまた、同種移植片生存を促進するのにも有用である。用語「同種移植片生存の促進」は、本明細書において、未治療レシピエントにおける類似の移植の対応する機能を超えた、レシピエントと同種の別の個体由来の、移植した細胞、組織、または器官の生理学的に有用な機能の臨床的に測定可能な延長または維持を示す。
【0138】
本発明のポリマーは、それ自体、アジュバント特性を有する。本明細書に記載するポリマーがヒト免疫反応を増強する程度まで、これらは他の材料と組み合わせて、アジュバントとして使用可能である。
【0139】
本発明は、1以上の薬学的に許容しうるキャリアーおよび所望により他の療法成分と共に、本発明のポリマーを含んでなる、医学的使用のための薬剤組成物を提供する。したがって、本発明はまた、アジュバントあるいは抗細菌剤または他の療法剤および薬学的に許容しうるキャリアーと組み合わせた、上述の免疫調節ポリマーの薬剤組成物にも関する。
【0140】
本発明で有用なポリマーは、別の抗細菌抗生物質薬剤と別個に、または抗細菌抗生物質カクテルの形で、搬送することが可能である。抗細菌抗生物質カクテルは、本発明で有用なポリマーいずれかおよび抗細菌抗生物質薬剤および/または補充増強剤の混合物である。細菌感染の治療における抗生物質の使用は日常的である。この態様において、一般的な投与ビヒクル(例えば錠剤、移植物、注射可能溶液など)は、ポリマーおよび抗細菌抗生物質薬剤および/または補充増強剤両方を含有することが可能である。あるいは、抗細菌抗生物質薬剤は、別に投与することが可能である。抗細菌抗生物質薬剤は公知であり、そして限定なしに:アムジノシリン、アミノ配糖体、アモキシシリン、アンピシリン、アブロシリン(avlocillin)、バカンピシリン、カルベニシリン、セファクロール、セファドキシル(cefadoxil)、セファマンドール、セファゾリン、セフメノキシン(cefmenoxine)、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォキシチン、セフタジドム(ceftazidme)、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム・アキセチル、セファレキシン、セフラジン、クロラムフェニコール、クラブラネート、クリンダマイシン、クロキサシリン、シクラシリン、ジクロキサシリン、エピシリン(epicillin)、エリスロマイシン、フルクロキサシリン、ヘタシリン、イミペネム、リンコマイシン、メチシリン、メトロニダゾール、メズロシリン、モキサラクタム、ナフシリン、ネオマイシン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリン、ピバンピシリン、キノロン類、リファンピン、スルバクタム、テトラサイクリン類、チカルシリン、チメンチン(timentin)、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、およびバンコマイシンを含む(GoodmanおよびGilmanのPharmacological Basis of Therapeutics, 第8版, 1993, McGraw Hill, Inc.を参照されたい)。本発明のポリマーと組み合わせて用いる療法剤の正確な量は、選択したポリマー、選択した用量および投与タイミング、投与様式、意図する手術いずれかの性質、並びに被験者の特定の特性を含む、多様な要因に応じるであろう。局所投与を行う場合、非常に少量しか(ナノグラムそしておそらくピコグラム)必要とされない可能性があることが理解されるであろう。選択する正確な量は、特に、閾値量が、免疫反応を好都合に増進するいかなる量でもよいであろうため、過度の実験を伴わずに決定可能である。したがって、搬送様式に応じて、ピコグラムからマイクログラム量がありうるが、ナノグラムからマイクログラム量が、最も有用である可能性があると考えられる。
【0141】
化合物は、望ましい生物学的結果を生じるのに有効な量で投与する。投与様式に応じて、1ナノグラム/キログラムから100ミリグラム/キログラムの範囲の用量が有効であろうと考えられる。好ましい範囲は、500ナノグラムおよび500マイクログラム/キログラムの間、そして最も好ましくは1マイクログラムおよび100マイクログラム/キログラムの間であると考えられる。絶対量は、多様な要因(投与が選択的手術または緊急手術と組み合わされるかどうか、同時治療、用量の数、並びに年齢、肉体状態、大きさおよび体重を含む個々の患者パラメータを含む)に応じるであろうし、そして日常的な実験以上のものを用いずに決定可能である。一般的に、最大用量、すなわち十分な医学的判断にしたがった最高安全用量を用いることが好ましい。
【0142】
1つの態様において、有効量は、膿瘍形成に対する防御を誘導する生物学的結果を生じる量である。膿瘍形成に対する防御を誘導するのに有効な量は、本明細書において、単独で、あるいはさらなる用量またはさらなる療法化合物と共に、特定の細菌による感染から生じる膿瘍形成を阻害するかまたは予防するであろう、本発明の免疫調節ポリマーの量である。
【0143】
外科的処置と組み合わせて投与する場合は特に、多数の用量の本発明の薬剤組成物が意図される。多数の用量は、手術に先行する3週間の期間に渡って、手術に先行する2週間の期間に渡って、手術に先行する1週間の期間に渡って、または手術に先行して24時間、投与することが可能である。さらに1以上の用量を、細菌曝露後、または手術後、投与することが可能である。細菌感染/混入およびそれに続く膿瘍形成に対する免疫反応増進を生じる、いかなる措置も使用可能であるが、最適用量および投薬措置は、膿瘍形成の発展を阻害するだけでなく、特定の細菌生物または多様な細菌生物による膿瘍形成に対する完全な防御を生じるであろうものである。多数の用量の特定のポリマーの搬送に望ましい時間間隔は、日常的な実験以上のものを用いずに、一般的な当業者によって、決定可能である。
【0144】
別の望ましい生物学的結果は、癒合形成の予防である。したがって、化合物は、癒合形成に対する防御を誘導するのに有効な量で投与することが可能である。術後手術癒合形成に対する防御を誘導するのに有効な量は、本明細書において、単独で、あるいはさらなる用量またはさらなる療法化合物と共に、術後手術癒合形成を阻害するかまたは予防するであろう、本発明の免疫調節ポリマーの量である。
【0145】
本発明の調製は、膿瘍形成を予防する目的で投与する際、感染と「組み合わせて」投与することが可能であり、つまり、膿瘍形成に対する防御効果が得られるように、宿主を膿瘍形成に罹りやすくする手術、外傷または疾患と、時間的に十分に近く、投与することが可能である。調製は、選択的手術の場合、手術のはるかに前に(すなわち週または月であってもよい)、好ましくは、手術に時間的により近く(そして後であってもよい)、追加投与を伴い、投与することが可能である。特に、緊急状況においては、調製は、外傷または手術の直前(分から時間)および/または後に投与することが可能である。細菌感染/混入に対して被験者の免疫反応を増進し、それによって、宿主反応の成功のチャンスを増加させ、そして膿瘍形成の可能性を減少させるため、手術に時間的に十分に近く、調製を投与することのみが重要である。
【0146】
本発明は、部分的に、免疫調節ポリマーの薬剤組成物およびその使用法に関する。したがって、1つの側面において、本発明は、上述のような免疫調節ポリマーの、免疫細胞を活性化するのに有効な量、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、免疫細胞を活性化するための薬剤組成物である。好ましい態様において、本発明のこの側面にしたがった薬剤組成物の免疫調節ポリマーは、PS A2またはその機能的同等物である。
【0147】
したがって、本発明の処方は、薬学的に許容しうる溶液中で投与され、該溶液は、日常的に、薬学的に許容しうる濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合するキャリアー、アジュバント、および所望による他の療法成分を含有することが可能である。
【0148】
ポリマーはそれ自体で(純なもの(neat))、または薬学的に許容しうる塩の形で投与することが可能である。医薬品に使用する際、塩は薬学的に許容しうるべきであるが、薬学的に許容し得ない塩を、それらの薬学的に許容しうる塩を調製するために、好適に用いてもよい。こうした塩には、限定されるわけではないが、以下の酸から調製されるものが含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、こうした塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩として調製されてもよい。
【0149】
適切な緩衝剤には:酢酸および塩(1-2% w/v);クエン酸および塩(1-3% w/v);ホウ酸および塩(0.5-2.5% w/v);並びにリン酸および塩(0.8-2% w/v)が含まれる。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003-0.03% w/v);クロロブタノール(0.3-0.9% w/v);パラベン類(0.01-0.25% w/v)およびチメロサル(0.004-0.02% w/v)が含まれる。
【0150】
本発明の薬剤組成物は、所望により薬学的に許容しうるキャリアーに含まれる、有効量のポリマーを含有する。用語「薬学的に許容しうるキャリアー」は、ヒトまたは他の動物への投与に適した、1以上の適合する固体または液体充填剤(filler)、希釈剤または被包(encapsulating)物質を意味する。用語「キャリアー」は天然または合成の有機または無機成分を指し、これと活性成分を組み合わせて投与を容易にする。薬剤組成物の構成要素はまた、本発明のポリマーと、そして互いに、望ましい薬剤効能を実質的に損なうであろう相互作用がないような方式で、混ぜ合わせることが可能である。
【0151】
非経口投与に適した組成物は、好適に、レシピエントの血液と等張であることが可能な、無菌水性調製を含んでなる。許容しうるビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル溶液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として、慣用的に使用される。この目的のため、合成モノまたはジグリセリドを含む、いかなる無刺激性の不揮発性油を使用することも可能である。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用を見出す。皮下、筋内、腹腔内、静脈内投与などに適したキャリアー処方は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, ペンシルバニア州イーストンに見出すことが可能である。
【0152】
本発明で有用なポリマーは、1より多いポリマーの混合物中で搬送可能である。混合物は、いくつかのポリマーからなることが可能である。
多様な投与経路が利用可能である。選択する特定の様式はもちろん、選択した特定のポリマー、治療する特定の異常および療法効果に必要な投薬量に応じるであろう。本発明の方法は、一般的に言って、医学的に許容しうるいかなる投与様式を用いて実施することも可能であり、すなわち、臨床的に許容し得ない副作用を引き起こすことなく、有効なレベルの免疫反応を生じる、いかなる様式を用いることも可能である。好ましい投与様式は、非経口経路である。用語「非経口」には、皮下、静脈内、筋内、または腹腔内注射または注入技術が含まれる。
【0153】
組成物は、好適に、単位投薬型で提供されることが可能であり、そして薬学業に公知のいかなる方法によって調製することも可能である。すべての方法は、1以上の付属の成分を構成するキャリアーとポリマーを会合させる工程を含む。一般的に、組成物は、液体キャリアー、細分割された固体キャリアー、またはその両方とポリマーを、一様に、そして緊密に会合させ、そしてその後、必要であれば製品を成形することによって調製される。ポリマーは凍結乾燥して保存することが可能である。
【0154】
他の搬送系には、時間放出、遅延放出または持続放出搬送系が含まれることが可能である。こうした系は、抗炎症剤の反復投与を回避し、被験者および医師の利便を増加させることが可能である。多くの種類の放出搬送系が利用可能であり、そして一般の当業者に知られている。これらにはポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などのポリマーに基づく系が含まれる。薬剤を含有する前述のポリマーの微小カプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載される。搬送系はまた、非ポリマー系も含み、これらには:コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロールまたはモノ、ジ、トリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;慣用的結合剤および賦形剤(excipients)を用いる圧縮錠剤;部分的融合移植物等が含まれる。特定の例には、限定されるわけではないが:(a)本発明の剤が、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号に記載されるような、マトリックス内の形で含有される、侵食系、および(b)活性構成要素が、調節された速度で、米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号に記載されるようなポリマーから浸透する、拡散系が含まれる。さらに、ポンプに基づくハードウェア搬送系が使用可能であり、このうちいくつかは移植に適応している。
【0155】
他の側面において、本発明は、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションに関連する特定のパラメータに基づいて、免疫調節ポリマー候補を選択する系および方法を提供する。上述のパラメータに基づいて、1つの免疫調節ポリマー候補でさえ選択する過程が複雑であるため、系および方法は、好ましくはコンピュータで実行する。該方法は、免疫調節ポリマー候補の一次構造に基づいて、ポリマーの三次元溶液コンホメーションを予測し、そして予測される三次元溶液コンホメーションが、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能電荷、並びに各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択することを伴う。
【0156】
巨大分子の三次元溶液相コンホメーションを予測し、そして解析する、コンピュータに基づく方法は、一般の当業者に公知である。例には、MayoらによるPCT公告WO98/47089;Mandelらに対する米国特許第6,110,672号;Hendryに対する米国特許第5,888,741号;Balajiらに対する米国特許第5,331,573号;Dahiyat BIら(1997) Science 278:82-7;およびSchneider Gら(2000) J Comput Aided Mol Des 14:487-94が含まれる。さらに、この目的に利用可能な、いくつかのコンピュータ・ソフトウェア・アプリケーションおよびパッケージがあり、これには例えば、視覚化、モデリング、力場計算、エネルギー最小化、および分子動力学シミュレーションのための、Molecular Simulations、カリフォルニア州サンディエゴのInsight II 98.0が含まれる。こうしたプログラムを実行するのに適したコンピュータ・ハードウェアが商業的に入手可能であり、これには例えば2つのR12000 270 MHzおよび2つのR10000 180 MHz IP27中央処理装置(CPU;Silicon Graphics、カリフォルニア州マウンテンビュー)を備えたOrion 200ワークステーションが含まれる。いわゆる神経ネットワークを用いて、巨大分子の三次元溶液相コンホメーションを予測し、そして解析するのに関与する種類のシミュレーションおよび計算を行うのに、特に利益がある可能性がある。例えばBaldi P(1999) Bioinformatics 15:937-46;Stahl Mら(2000) Protein Eng 13:83-8を参照されたい。
【0157】
計算を実行するためのコンピュータ・インプットデータには、少なくとも、構造式として免疫調節ポリマー候補の化学的同一性を特定するのに十分な情報、すなわち分子のすべての原子間の化学的関係(共有結合)が含まれる。いくつかの場合、例えば低解像度結晶構造に基づくインプットデータのように、特定の結合の存在および性質を与えるのに十分である可能性がある。インプットデータは、いくつかのありうる物理的および化学的供給源のいずれに由来することも可能であり、これには、化学的解析、物理的解析(例えば融点、凝固点降下など)、配列決定解析、NMRデータ、結晶構造データ、質量分析、ガスクロマトグラフィー、円二色性データを含む光学解析と共に、一般の当業者に公知の他の方法が含まれる。
【0158】
コンピュータ・インプットデータは、上に定義するような、全ポリマー、ポリマーの一部、またはポリマーの単位のみを特定することが可能である。インプットデータが、ポリマーの単位のみを特定するデータを含む場合、コンピュータはデータを用いて、提供された単位を複数有する構造を構築することが可能である。
【0159】
特定の好ましい態様において、コンピュータ・インプットデータは、免疫調節ポリマー候補のライブラリーを含む。該ライブラリーは、多様な度合いの化学的関連性および非関連性の複数の免疫調節ポリマー候補を含み、そして2程度に少なく、そして10、100、1000、またはさらに多い免疫調節ポリマー候補を含むことが可能である。ライブラリーは、上に定義するような、全ポリマー、ポリマーの一部、またはポリマーの単位のみを特定するデータを含むことが可能である。
【0160】
コンピュータが操作するソフトウェアは、各免疫調節ポリマー候補に関して、三次元溶液相コンホメーションを計算する。こうした計算には、大きさ、電荷、距離、およびエネルギーに関する多くのパラメータが含まれ、そして典型的には、化学的および物理的に、両方で、妥当なコンホメーションに到達するように設計される、エネルギー最小化計算を伴う。
【0161】
免疫調節ポリマー候補の三次元溶液相コンホメーションを予測した後、ポリマー候補は、特定の特徴の存在または非存在に基づいて、選択するかまたは選択しない。これらの特徴には、最小限、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能な正および/または負電荷、並びに幅約10Åおよび深さ約5Åの複数のドッキング部位が含まれる。特定のポリマー候補を選択する際に考慮可能なさらなる特徴は、正電荷および負電荷である、反復電荷モチーフの存在を含むことが可能である。特定の好ましい態様において、反復電荷モチーフを有する、選択した免疫調節ポリマー候補における反復電荷モチーフの正電荷は、未結合アミン基によって提供される。特定の好ましい態様において、反復電荷モチーフを有する、選択した免疫調節ポリマー候補における反復電荷モチーフの負電荷は、カルボキシル、ホスフェート、ホスホネート、サルフェート、またはスルホネート部分によって提供される。
【0162】
特定のポリマー候補を選択すると選択する際に考慮可能なさらなる特徴は、主鎖に沿った反復単位の関係を含むことが可能である。特定の態様において、反復単位は隣接している。いくつかの態様において、反復単位は介在配列によって分離されることが可能である。
【0163】
特定のポリマー候補を選択するかどうか選択する際に考慮可能なさらなる特徴は、らせんコンホメーションのポリマーによる前提(assumption)を含むことが可能である。全ポリマーがらせんである可能性があるか、またはポリマーの一部がらせんドメインを含む可能性がある。らせんは左巻きでもまたは右巻きでもよい。いくつかの態様において、らせんは約20Åのピッチを有する。例えば、PS A2は、ピッチ20Åの右巻きらせんを有し、そしてSp1は、ピッチ19Åの右巻きらせんを有する(さらに以下を参照されたい)。いくつかの態様において、反復単位は、らせん1巻きあたり整数倍で存在する。例えば、PS A2は、らせん1巻きあたり2反復単位を有する。いくつかの態様において、反復単位は、らせん1巻きあたり非整数倍で存在することが可能である。
【0164】
既定のポリマー候補を選択するのを選択するための規準として、ドッキング部位のさらなる特徴が使用可能である。これらの特徴には、ドッキング部位の長さおよびポリペプチドのアルファらせんに対するドッキング部位の親和性が含まれる。好ましい態様において、ドッキング部位の長さは少なくとも約10Åである。実質的により短いドッキング部位は、潜在的なドッキングパートナーに対する特異性または親和性を限定する可能性がある。特定の態様において、選択した免疫調節ポリマー候補のドッキング部位は、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1の親和性で、そしてより好ましくは少なくとも10-6 M-1の親和性で、そしてさらにより好ましくは少なくとも10-9 M-1の親和性でポリペプチドのアルファらせんに結合するよう構築され、そして配置される。親和性は、分子モデリング計算によって、または実験的測定によって、決定可能である。実験的測定法は、アフィニティークロマトグラフィー、表面プラズモン共鳴(SPR、BIA)、円二色性と共に、一般の当業者に明らかであろう他の方法に基づくことが可能である。
【0165】
特定の態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は、糖主鎖を有する。いくつかの好ましい態様において、選択する免疫調節ポリマー候補は多糖である。いくつかの態様において、選択する免疫調節ポリマー候補はポリペプチドである。
【0166】
さらなる側面において、本発明は、PS A2などの免疫調節ポリマーの三次元溶液構造の知識に基づいて、免疫調節ポリマー候補を設計する系および方法を提供する。したがって、該系および方法は、合理的薬剤設計に使用可能である。系および方法が複雑であるため、好ましくはコンピュータで実行する。コンピュータモデリングを用いて、テンプレート三次元構造に課される特定の制約にしたがって、バーチャルサブユニットからポリマーを構築すると共に、こうしてコンピュータ内で生成したポリマーと参照免疫調節ポリマーにより提供されるテンプレートの三次元構造との間の比較を行う。
【0167】
本発明のこの側面にしたがった方法は、再び、先に定義するようなコンピュータを用い、テンプレート免疫調節ポリマーの三次元コンホメーションを特定するインプットデータの供給源と共に提供する。該方法を実行するのに使用可能なコンピュータ・プログラムの例には、Schneider Gら(2000) J Comp Aided Mol Des 14:487-94およびMayoらによるPCT公告WO 98/47089が含まれる。
【0168】
コンピュータはまた、バーチャルサブユニットのライブラリーも提供し、プログラムは、このライブラリーから、ポリマーを構築するサブユニットを選択するであろう。バーチャルサブユニットは、上に定義され、糖、アミノ酸、ヌクレオチド、その類似体と共にさらなる化学的部分および置換基などの真の化学的実体のコンピュータ使用可能表現に対応する。置換基は、付加するか、またはコア構造の他の置換基に関して置換することが可能な側鎖とみなすことが可能であり、例えば単糖へのカルボキシル基またはアミノ基の付加である。
【0169】
プログラムの制御下でコンピュータが実行する方法は、化学結合形成に関して、化学の慣用的な規則、例えば有機化学および生化学の規則にしたがう。こうした規則は、一般の当業者に公知であり、そして例えば、MorrisonおよびBoyd, Organic Chemistry 第3版(1973) Allyn and Bacon, ボストンに見出すことが可能である。
【0170】
本発明のこれらの側面にしたがった系および方法は、免疫調節ポリマー候補の実験的試験をさらに含むことが可能である。こうした試験は、in vitroおよびin vivoで行うことが可能であり、そして免疫細胞が通常、活性化されない条件下で、免疫細胞と免疫調節ポリマー候補を接触させ、そして接触させた免疫細胞の活性化マーカーを測定することを含む。免疫細胞の活性化の測定は、例えば、分泌産物(例えばサイトカイン、増殖因子、ケモカイン、一酸化窒素、抗体)の測定、バイオアッセイ(例えば細胞傷害性、肉芽腫形成、生存補助など)、表面マーカー解析(FACS)、カルシウム取り込みまたは流動、呼吸活性と共に、一般の当業者に認識される他の方法を含む技術にしたがって、達成可能である。免疫細胞が免疫調節ポリマー候補との接触に関連して活性化されることが測定によって示されるならば、さらなる使用または解析のため、免疫調節ポリマー候補を選択する。逆に、免疫細胞が免疫調節ポリマー候補との接触に関連して活性化されないことが測定によって示されるならば、さらなる使用または解析のため、免疫調節ポリマー候補を選択しない。この態様にしたがった免疫調節ポリマー候補は、上述の特徴(すなわち接触および測定を除く)に基づく、先に選択した免疫調節ポリマー候補であることが可能であり、そしてその後、接触および測定の結果に基づいて、さらに選択するかまたは選択しないことが可能である。あるいは、最初の選択は、接触および測定を含んで行うことが可能である。
【0171】
免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するのに関連して、上述の方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、以下に記載するコンピュータ・システムの多様な態様などの、コンピュータ・システムを用いて、実行可能であるが、上述の方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、多くの他の異なる機械が使用可能であるため、その実行において、本明細書に記載するいかなる特定のコンピュータ・システムにも限定されない。
【0172】
こうしたコンピュータ・システムは、いくつかの既知の構成要素および回路を含むことが可能であり、これには、以下により詳細に記載するような、演算処理装置(すなわちプロセッサ)、メモリ・システム、インプットおよびアウトプット装置、並びにインターフェース、トランスポート回路(例えば1以上のバス)、ビデオおよびオーディオ・データインプット/アウトプット(I/O)サブシステム、特殊用途ハードウェアと共に、他の構成要素および回路が含まれる。さらに、コンピュータ・システムは、マルチプロセッサ・コンピュータ・システムであることが可能であるし、またはコンピュータ・ネットワークに渡って連結された複数のコンピュータを含むことが可能である。
【0173】
コンピュータ・システムは、プロセッサ、例えばIntelから入手可能なシリーズx86、CeleronおよびPentinumプロセッサの1、AMDおよびCyrixの同様の装置、Motorolaから入手可能な680X0シリーズのマイクロプロセッサ、およびIBMのPowerPCマイクロプロセッサなどの商業的に入手可能なプロセッサを含むことが可能である。多くの他のプロセッサが入手可能である。コンピュータ・システムは、特定のプロセッサに限定されない。
【0174】
プロセッサは、典型的には、オペレーティング・システムと呼ばれるプログラムを実行し、この例はWindows(登録商標)NT、Windows(登録商標)95または98、UNIX(登録商標)、Linux、DOS、VMS、MacOSおよびOS8であり、他のコンピュータ・プログラムの実行を制御し、そしてスケジューリング、デバッギング、インプット/アウトプット制御、アカウンティング、コンパイル、記憶割り当て、データ管理およびメモリ管理、およびコミュニケーション制御および関連サービスを提供する。プロセッサおよびオペレーティング・システムは、共に、コンピュータ・プラットホームを定義し、これに合わせて、高レベルプログラミング言語でアプリケーション・プログラムが書かれる。コンピュータ・システムは、特定のコンピュータ・プラットホームに限定されない。
【0175】
コンピュータ・システムは、メモリ・システムを含むことが可能であり、これは典型的には、コンピュータ読み取り可能および書き込み可能不揮発性記録媒体を含み、この例は磁気ディスク、光ディスク、フラッシュメモリおよびテープである。こうした記録媒体は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、読み取り/書き込みCDまたはメモリスティック、あるいは永続的な、例えばハードドライブであることが可能である。こうした記録媒体は、典型的にはバイナリ型(すなわち、1および0のシーケンスとして翻訳される型)のシグナルを記憶する。ディスク(磁気または光)は、こうしたシグナルを記憶可能な、いくつかのトラックを有する。こうしたシグナルは、マイクロプロセッサに実行されるプログラム、例えばアプリケーション・プログラム、またはアプリケーション・プログラムによってプロセシングされる情報を定義することが可能である。
【0176】
コンピュータ・システムのメモリ・システムはまた、集積回路記憶素子を含むことも可能であり、これは典型的には、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)またはスタティック・メモリ(SRAM)などの揮発性のランダム・アクセス・メモリである。典型的には、オペレーション中、プロセッサは不揮発性記録媒体から集積回路記憶素子に、プログラムおよびデータを読ませ、これは典型的には、不揮発性記録媒体、例えばディスクよりも、プログラム命令およびデータにプロセッサがより迅速にアクセスするのを可能にする。
【0177】
プロセッサは、一般的に、プログラム命令にしたがって、集積回路記憶素子内のデータを操作し、そしてその後、プロセシングが完了した後、操作したデータを不揮発性記録媒体にコピーする。不揮発性記録媒体および集積回路記録素子間のデータ移動を管理するため、多様な機構が知られ、そして免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するのに関連して上述する方法、行為、系、およびシステム・エレメントを実行するコンピュータ・システムは、いかなる特定の機構にも限定されない。コンピュータ・システムは、特定のメモリ・システムに限定されない。
【0178】
上述のこうしたメモリ・システムの少なくとも一部を用いて、免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため開示する系および方法に関連して上述するデータ構造の1以上を記憶することが可能である。例えば、不揮発性記録媒体の少なくとも一部は、こうしたデータ構造の1以上を含むデータベースの少なくとも一部を記憶することが可能である。こうしたデータベースは、多様な種類のデータベースのいずれであることも可能であり、例えばデータが区切り記号によって分離されるデータ単位に編成されるフラットファイル・データベース、データが表で記憶されるデータ単位に編成される関係型データファイル、データがオブジェクトとして記憶されるデータ単位に編成されるオブジェクト指向データベース、または別の種類のデータベースであることが可能である。
【0179】
コンピュータ・システムは、ビデオおよびオーディオデータI/Oサブシステムを含むことが可能である。サブシステムのオーディオ部分は、アナログ・デジタル変換(A/D)コンバータを含むことが可能であり、これはアナログオーディオ情報を受け取り、そしてこれをデジタル情報に変換する。デジタル情報は、ハードディスク上に記憶するため、既知の圧縮システムを用いて圧縮して、別の時に使用することが可能である。I/Oサブシステムの典型的なビデオ部分は、多くが当該技術分野において知られる、ビデオ画像コンプレッサ/デコンプレッサを含むことが可能である。こうしたコンプレッサ/デコンプレッサは、アナログビデオ情報を圧縮デジタル情報に変換し、そしてその逆も行う。圧縮デジタル情報は、ハードディスク上に記憶して、後で使用することが可能である。
【0180】
コンピュータ・システムは、1以上のアウトプット装置を含むことが可能である。アウトプット装置の例は、ブラウン管(CRT)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)および他のビデオアウトプット装置、プリンタ、モデムまたはネットワークインターフェースなどのコミュニケーション装置、ディスクまたはテープなどの記憶装置、およびスピーカなどのオーディオアウトプット装置を含む。
【0181】
コンピュータ・システムはまた、1以上のインプット装置を含むことも可能である。インプット装置の例には、キーボード、キーパッド、トラックボール、マウス、ペンおよびタブレット、上述のようなコミュニケーション装置、並びにオーディオおよびビデオキャプチャ装置およびセンサーなどのデータインプット装置が含まれる。コンピュータ・システムは、本明細書に記載する、特定のインプットまたはアウトプット装置に限定されない。
【0182】
コンピュータ・システムは、特にプログラミングされた、特殊用途ハードウェア、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことが可能である。こうした特殊用途ハードウェアは、免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため本明細書に開示する系および方法に関連して上述する方法、行為および系の1以上を実行するよう設定可能である。
【0183】
コンピュータ・システムおよびその構成要素は、多様な1以上の適切なコンピュータ・プログラミング言語のいずれを用いてもプログラム可能である可能性がある。こうした言語は、手続き型プログラミング言語、例えばC、Pascal、FortranおよびBASIC、オブジェクト指向言語、例えばC++、Java(登録商標)およびEiffel、並びにスクリプト言語またはアセンブリ言語などの他の言語を含むことが可能である。
【0184】
免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため本明細書に開示する系および方法に関連して上述する方法、行為および系は、こうしたコンピュータ・システムによって実行可能な、手続き型プログラミング言語、オブジェクト指向プログラミング言語、他の言語およびその組み合わせを含む、多様な適切なプログラミング言語のいずれを用いても実行可能である。こうした方法および行為は、コンピュータ・プログラムの別個のモジュールとして実行可能であるし、または別個のコンピュータ・プログラムとして個々に実行可能である。こうしたモジュールおよびプログラムは、別個のコンピュータ上で実行可能である。
【0185】
免疫調節ポリマー候補を選択するかまたは設計するため本明細書に開示する系および方法に関連して上述する方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、ソフトウェア、ハードウェアまたはファームウェア、あるいはこの3つの組み合わせいずれかで、上述のコンピュータ・システムの一部として、または独立の構成要素として、実行可能である。
【0186】
こうした方法、行為、系、およびシステム・エレメントは、個々にまたは組み合わせて、コンピュータ読み取り可能媒体、例えば不揮発性記録媒体、集積回路記憶素子、またはその組み合わせ上のコンピュータ読み取り可能シグナルとして明白に具象化される、コンピュータ・プログラム・プロダクトとして、実行可能である。こうした方法および行為の各々に関して、こうしたコンピュータ・プログラム・プロダクトは、例えば、コンピュータが実行する結果、該方法または行為を実行するようコンピュータに命令する、1以上のプログラムの一部として、命令を定義する、コンピュータ読み取り可能媒体上に明白に具象化される、コンピュータ読み取り可能シグナルを含んでなることが可能である。
【実施例】
【0187】
実施例1. PS A2
細菌株およびB.フラジリス株638Rの莢膜多糖の単離。B.フラジリス株638R(Privitera Gら(1979) J Infect Dis 139:97-101)は、ペプトン-酵母ブロス中、-80℃で維持した。ラット脾臓(オスウィスターラット、175-200 g、Charles River Laboratories、マサチューセッツ州ウィルミントン)で細菌を5回連続して継代することによって、CPCの産生を増進し、そして抽出物中のグリコーゲン含量を最小限にした。Kasper DLら(1980) J Infect Dis 142:750-6。まず、PBS中の108生物を、ラットに腹腔内注射し、そして脾臓を分散させることによって、24時間後に回収した。生物は、5%ヒツジ血液を含むブルセラ寒天(PML Microbiologicals、カナダ・オンタリオ州ミソソーガ)上で嫌気的に一晩培養した。接種および回収過程を反復した。莢膜産生増進は、全細菌に対する多価抗血清を用いた電子顕微鏡研究によって確認した。継代後、細菌は、先に記載されるように、16リットルバッチ培養で、嫌気的に増殖させた。Pantosti Aら(1991) Infect Immunol 59:2075-82;Tzianabos AOら(1992) J Biol Chem 267:18230-5。細胞は遠心分離によって採取し(平均湿重量、244 g)、そして水中に懸濁した。熱フェノール/水を用いて細菌細胞からCPCを抽出し、そしてRNアーゼ、DNアーゼ、およびプロナーゼで徹底的に消化した。透析産物(平均乾重量、2 g)は、pH9.8の3%デオキシコール酸含有緩衝液中、Sephracyl S-400HR(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)のカラム上でクロマトグラフィーにかけて、CPCからリポ多糖を分離した。Pantosti Aら(1991) Infect Immunol 59:2075-82;Tzianabos AOら(1992) J Biol Chem 267:18230-5。クロマトグラフィー分画は、単離過程全体を通じて、280、260および206 nmのUV吸光、屈折率、並びにBCA法(Pierce、イリノイ州ロックフォード)、および銀染色SDS-PAGEゲル(Laemmli UK(1970) Nature 227:680-5)、ドットブロット、免疫電気泳動(IEP)、および免疫拡散(Ouchterlony O(1958) Prog Allergy 5:1-78;Pantosti Aら(1991) Infect Immunol 59:2075-82)によるタンパク質の測定によって解析した。S-400HRでのゲルろ過クロマトグラフィー後、銀染色SDS-PAGEは、CPCに相当する高分子量抗原(タンパク質標準にしたがって、160 kDa以上)を含む分画を示した。続いて、溶出分画は、リポ多糖(LPS)、並びに消化したタンパク質および核酸に相当する、ゲル先端の20 kDaより小さい抗原を示した。CPCおよびLPSの間で溶出した分画は、両方の物質を含有した。もっぱら莢膜多糖を含有し、そして二重免疫拡散によって、全細菌に対する抗血清と反応する分画をプールし、濃縮し、アルコール沈殿し、透析し、そして凍結乾燥した。CPC(平均乾重量、0.2 g)は、IEP(50 mM Tris緩衝液、pH7.3中)によって調べ、これは、2つが正に、そして1つが負に荷電した、3つの主な構成要素、並びに正電極および負電極に向かって移動する、2つの弱い別個の構成要素を示した。
【0188】
酸処理(5%酢酸、100℃1時間)、透析および凍結乾燥したCPCは、50 mM Tris緩衝液pH7.3中で、Q-Sepharose FF(Amersham Pharmacia Biotech)を含有するカラム上に装填した。抗原は、Tris緩衝液およびNaCl勾配で溶出した。さらなる精製工程は、pH4の水中のS-Sepharose(Amersham Pharmacia Biotech)、50 mM Tris緩衝液pH8.6中のQ-Sepharose FF(Amersham Pharmacia Biotech)での陰イオン交換クロマトグラフィー、50 mM PBS、pH7.3中のSephracyl S-300HR(Amersham Pharmacia Biotech)でのゲルろ過クロマトグラフィー、および等電点電気泳動を必要とした。分離したポリマーは、ポリクローナル抗血清との反応性を維持した。異なる測定によって同一のようである分画をプールし、透析し、凍結乾燥し、そして高解像度(500 MHz)プロトン核磁気共鳴(NMR)分光法によって解析した。最終産物は、混入タンパク質、核酸、リポ多糖、および脂質を本質的に含まないことが見出された。Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9。莢膜多糖は、動物に投与するため、無菌、発熱物質不含生理食塩水中で調製した。
【0189】
PS A2は、株NCTC9343のPS A1をコードする638R染色体の同一領域中の生合成領域にコードされる。Comstock LEら(2000)(1999) J Bacteriol 181:6192-6。PS A2は、中性pHで正電荷モチーフに対して主に中性を示し、これはpH6.2で変化せず、そしてpH8.6でわずかに正電極に向かってシフトした。等電点電気泳動によって、PS A2の正確な等電点を決定しようとすると、4.5および10の間のpH範囲に渡って、広い分布が示された。しかし、多様な解析の組み合わせによって決定されるような、PS A2の構造およびコンホメーションは、反復単位あたり1つの未結合アミノ基および1つのカルボキシル基を持つポリマーを示し、これは、ポリマーに平均正味中性電荷モチーフを与え、そしてポリマーを平衡双性イオン多糖と分類する特性である。
【0190】
膿瘍誘導のための動物モデル。2つの独立の実験において、100、10、1、または0.1μgの莢膜多糖および無菌盲腸内容物(希釈、PBS中1:4)を含有する0.5 mlの注射体積を、6匹の異系交配オスウィスターラット(150-175 g、Charles River Laboratories)の群に、18ゲージ注射針を通じた注射によって、腹腔内投与した。対照として、莢膜多糖の代わりにPBSを用いた。曝露6日後、ラットを屠殺し、そしてその後、治療状態を知らない観察者によって、巨視的に可視である腹腔内膿瘍に関して調べた。肉眼的に可視である膿瘍を顕微鏡的に確認した。1以上の膿瘍の発展を陽性結果とみなした。
【0191】
統計解析。in vivo実験は、別個の用量反応関係(マイクログラム用量)および膿瘍誘導用量の中央値に対する直接の干渉の評価を可能にする構造化ロジスティック回帰モデルで解析し、この中央値は、50%の動物で、膿瘍を誘導するのに必要な多糖の理論的用量(AD50)である。Cox C(1990) Biometrics 46:709-18;Kalka-Moll WMら(2000) J Immunol 164:719-24;Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9。尤度比試験は、用量反応勾配およびAD50の共通性に関する仮定について行った。曝露後2日以内に死んだラットは、その死が麻酔のためであるので、解析に含めなかった。
【0192】
実験的膿瘍形成における多糖の生物学的活性。 試験した用量範囲の多糖はすべて、用量依存方式で、腹腔内膿瘍を誘導した(PS A1およびPS A2、p<0.001)。B.フラジリスNCTC9343のPS A1は、最も強力な膿瘍誘導双性イオン多糖であり、AD50は0.28μgであった。株638Rの双性イオン多糖PS A2のAD50は4.79μgであり、17倍高かった。
【0193】
組成解析。PS A2の単糖構成要素は、対応するアルジトール・アセテート誘導体のガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)解析によって同定した。Wang Yら(1994) Carbohydr Res 260:305-17。糖構成要素のD/L立体配置は、ブタノール分解、過アセチル化(peracetylation)、およびGC-MS解析によって確立した。Gerwig GJら(1978) Carbohydr Res 62:349-57。商業的に入手可能なD-およびL-フコース(Fuc)、D-グリセロ-D-マンノヘプトース(Hep)、およびN-アセチル-D-マンノサミン(ManNAc)は標準として働いた(Fluka、ウィスコンシン州ミルウォーキー)。2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトースを含有するB.フラジリス9343由来のPS A1もまた、標準として用いた。Pantosti Aら(1991) Infect Immun 59:2075-82;Baumann Hら(1992) Biochemistry 31:4081-9。3-アセトアミド-3,6-ジデオキシグルコース(ADG)の真正の標準は入手不能であるため、その立体配置は分子モデリングによって得た。Baumann Hら(1992) Biochemistry 31:4081-9;Bock K(1983) Pure Appl Chem 55:605-22。3-ヒドロキシブタン酸(Bu)のキラリティは、メタノール分解、およびトリフルオロアセチル化の後、Lipodex Aキラルカラム(Macherey-Nagel、ドイツ・デューレン)上のGC-MS解析によって決定した。Hermansson Kら(1993) Eur J Biochem 212:801-9。
【0194】
GC-MS解析。すべての解析は、キャピラリーDB17カラム(J&W Scientific、カリフォルニア州フォルソム)を備えたHP 6890/5973 GC-MSD分光計(Hewlett Packard、デラウェア州ウィルミントン)上で行った。質量検出は、70 eVでの電子イオン化によって得て、そしてイオンは45から550 m/zでスキャンした。
【0195】
穏やかな塩基処理。この方法を用いて、Buがエーテルまたはエステル結合いずれを通じて多糖に連結しているかを同定した。これは後者のみが穏やかな塩基切断を受け入れるためである。PS A2の2 mg試料を、室温で2時間、0.5 mlの0.5 M NaOHで処理し、水に対して徹底的に透析し、そして凍結乾燥した。その後、試料は、1H NMR分光法によって調べた。
【0196】
NMR分光法。核磁気共鳴(NMR)実験は、Varian Unity 500およびUnity Plus 750分光計(Varian、カリフォルニア州パロアルト)上で行った。0.7 mlのD2Oに溶解したPS A2の10 mg試料を、2D実験に用いた。1H-1H二量子フィルタ相関分光法(DQF-COSY;Derome AEら(1990) J Magn Reson 88;177-85)、総相関分光法(TOCSY;Bax Aら(1985) J Magn Reson 65:355-60)、および核オーバーハウザー増進分光法(NOESY;Bodenhausen Gら(1984) J Magn Reson 58:370-88)は、Varianにより提供される標準的なパルスシーケンスで行った。各次元で10 ppmのスペクトル幅を用い、そしてNOESYに関しては80および100 msの混合時間を使用した。多様なTOCSY実験に関して、スピンロック時間は、50、80、および100 msであった。1H-13C異核多量子コヒーレンス(HMQC;Bax Aら(1986) J Magn Reson 67:565-9)、分極移動による無歪曲増進(DEPT)-HMQC(Bendall MRら(1981) J Am Chem Soc 103:4603-5)、および異核多重結合コヒーレンス(HMBC;Lerner Lら(1987) Carbohydr Res 166:35-46)スペクトルは、それぞれ10および200 ppmのプロトンおよび炭素スペクトル幅で記録した。HMQCスペクトルは、炭素デカップリングを伴いそして伴わずに得た。後者を用いて、アノマー炭素に関する1JC,Hカップリング定数を決定した。スペクトルは、一般的に70℃で得た。NOESYスペクトルもまた、37℃で測定した。1H化学シフトは、外部較正されるように、4.36 ppmでの水の共鳴を基準とした。13C化学シフトは、22.5 ppmでの外部CH3I標準を基準とした。
【0197】
構造計算。すべての計算は、2つのR12000 270-MHzおよび2つのR10000 180-MHz IP27 CPUを備えたOrion 200ワークステーション(Silicon Graphics、カリフォルニア州マウンテンビュー)上で行った。Insight II 2000プログラムパッケージ(Molecular Simulations、カリフォルニア州サンディエゴ)を視覚化、モデリング、力場計算、エネルギー最小化、および分子動力学シミュレーションに用いた。サーフェスレンダリングおよび定性的ポアソン・ボルツマン静電計算をGRASP(Nicholls Aら(1991) Proteins 11:281-96)およびSPOCKで行った。Christopher JA(1998) SPOCK:構造特性観察および計算キット、巨大分子設計センター、テキサスA&M大学、テキサス州カレッジステーション。調和ポテンシャル関数を伴い、そして交差項(cross term)を含む一致価力場(consistent valence force field)(CVFF)をすべての計算に用いた。Martin-Pastor Mら(2000) Biochemistry 39:4674-83。最急勾配降下の最初の50ステップ後、最小化のため、ポラック-リビエル(Polak-Ribiere)・コンジュゲート勾配法を使用した。以下に記載するように、PS A2の各反復単位は、5つの単糖(残基a-e)、並びに未結合アミノおよびカルボン酸で構成される二重電荷モチーフを含有する。一般的に、残基aおよびcは、減圧下でのシミュレーションのため、非荷電で処理し、そして水中でのシミュレーションのため荷電して処理した。1つの反復単位中の5つの糖各々の個々のモデルは、減圧下でエネルギー最小化した(ε=4・r、切捨てなし、最終収束<0.001 kcal・mol-1・Å-1)。5つのグリコシド(glycosidic)結合各々に関するΦH-ΨH総エネルギーマップは、10°増分で、0°から360°まで、両方の角度を系統的に回転させることによって得た。すべての連結に関して、各々362の二糖構造を減圧下で最小化し(ε=4・r、切捨てなし、最終収束<0.001 kcal・mol-1・Å-1)、一方、ΦHおよびΨHは拘束した(k=1000 kcal・mol-1でコサイン拘束)。ΦHおよびΨHは、それぞれ、H1-C1-O1-CX’およびC1-O1-CX’-HX’と定義される。Homans SW(1990) Biochemistry 29:9110-8。エネルギーランドスケープの検査は、以下のようにΦHおよびΨHの各対の全体的な最小の同定を可能にした(括弧内は連結):-36°、35°(ac);-52°、1°(cd);-27°、-21°(de);42°、3°(be);および57°、-11°(ea)。これらのコンホメーションは、多様なグリコシド二面角から出発して、そして最小化に際して、全体的な最小に向かう収束を示すことによって、確認した。ねじれ角パラメータを用いて、4つの反復単位の最初のモデルを構築した。観察される残基間NOE距離拘束はすべて、1.8Åの近位標的値、およびそれぞれ、強いNOEクロスピークに関して3.3Å、そして弱いクロスピークに関して5.0Åの遠位標的値で、平底エネルギー条件の形でモデルに添加した。力定数は、スケーリング因子1で、100 kcal・mol-1・Å-2に設定した。
【0198】
構造計算およびさらなる微調整のため、2つの溶媒シミュレーションアプローチを取った。第一のアプローチでは、溶媒蒸発を予防するため、空間に固定した2.5Å厚の外側の水の殻に取り巻かれた15Å厚の平衡化した水の層で、四量体のすべての側部をコーティングした(3207の可動性水分子)。群に基づく加重(9.5Å切り捨て、1.0Åスプライン、0.5Åバッファ)およびε=1で、<0.01 kcal・mol-1・Å-1の最終収束にアンサンブルを最小化した。第二のアプローチにおいて、四量体を、寸法60×30×30Å3の平衡化水ボックス(1571水分子)に浸し、そして群に基づく加重(15.0Å切り捨て、2.0Åスプライン、1.0Åバッファ)およびε=1で、定期的境界状態シミュレーションとして系を設定した。水ボックスをさらに平衡化するため、四量体を空間に束縛し、そして水分子のみの移動を可能にした。最小化は1000ステップで行った。その後、束縛を解放し、そしてさらなる最小化を500ステップ行った。この段階で、全平衡化アンサンブルの10 psおよび30 ps NOE拘束分子動力学シミュレーション両方を開始した。系は、Discover98.0(Molecular Simulations)で実行されるようなアンダーセン法によって、一定の体積および298±10°Kで維持した。1.0 fsの時間ステップおよびベルレ速度積分法を用いた。アンサンブルは、<0.01 kcal・mol-1・Å-1に最小化された。
【0199】
結果
PS A2の組成。PS A2の構成要素は、化学的誘導体化およびGC-MS解析によって同定されるように、L-Fuc、D-ManNAc、D-Hep、D-ADG、2-アミノ-4-アセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-D-ガラクトース(D-ATT)、および(S)-Buである。これらの構成要素の正確な構造および置換基を、NMR分光法によってさらに確立しそして確認した。PS A2の1H NMRスペクトル(図1)は5.26、4.97、4.84、4.79、および4.70 ppmの、5つのアノマープロトンシグナルを明らかにする。これらは、PS A2の1H-13C HMQCスペクトル(図2)に示すように、それぞれ、98.41、100.18、97.43、100.48、および103.81 ppmの5つの炭素共鳴と相関する。これらの化学シフトは、ピラノースのアノマープロトンおよび炭素の特徴である。Gorin PA(1981) Adv Carbohydr Chem Biochem 38:13-104。PS A2の5つの単糖は、そのプロトン化学シフトにしたがって、残基a、b、c、d、およびeと命名する(図1)。すべての構成要素の完全な1Hおよび13C化学シフトは、以下に記載するように、2D NMR分光法によって決定した。
【0200】
残基aの割り当て(α-D-AAT)。この残基の6つのプロトンすべての化学シフトは、多糖の1H-1H DQF-COSYスペクトルから容易に得た(未提示)。隣接する炭素に付着するプロトンのみが、COSYスペクトルと相関を示すため、プロトン化学シフトは、配列中の隣接するプロトンが割り当てられると、決定可能である。既知のアノマー共鳴から出発して、この戦略を用いて、糖環の6つのプロトンすべてを追跡した。H1(δ5.26 ppm)は、3.99 ppmの共鳴とクロスピークを示すため、後者は、はっきりとH2に割り当てられた。H2シグナルはまた、4.32 ppmのシグナルとクロスピークを示し、これは明らかにH3によるものである。同様に、H3は4.46 ppmのシグナルと相関し、これはH4に割り当てられた。さらに、H4は4.59 ppmの共鳴(H5)と相関し、そしてH5は、1.10 ppmのシグナル(H6)とクロスピークを有する。こうして、完全プロトン化学シフト割り当てを得た(表1)。
【0201】
【表1】
【0202】
プロトンが同定されたら、対応する炭素の化学シフトは、C-H対の炭素およびプロトン間の異核相関から容易に決定した。1H-13C HMQCスペクトルから明らかになるように(図2)、残基aのC1-C6は、それぞれ、98.41、50.92、74.25、55.27、66.56、および17.08 ppmで現れる。H6(δ1.10 ppm)およびC6(δ17.08 ppm)両方の化学シフトは、6位がメチル基をもつことを示す。C2(δ50.92 ppm)の化学シフトは、アミンで置換された炭素に特徴的であり、一方、C4(δ55.27 ppm)のものは、C4でのアセトアミド基を示唆する。後者は、PS A2の1H-13C HMBCスペクトル中のH4およびアセトアミドカルボニル炭素(δ175.51 ppm)間の3結合相関によって確認された。
【0203】
GC-MSによる組成解析に基づいて、残基aは、ガラクト立体配置を想定すると期待される。この結論は、PS A2の1H-1H NOESYスペクトルから得た、残基内NOE(核オーバーハウザー効果)によって支持される(図3)。H4は、H3およびH5両方に強いNOEを示し、これは、H4が、H3およびH5とごく近接しており、そしてしたがって、糖環の同じ側にあることを示す。さらに、残基aは、そのアノマー中心でα-立体配置を採用し、これはH1の低磁場(down-field)化学シフト(δ5.26 ppm、一重項)と共に、特徴的な3JH1,H2(<3 Hz)および1JC1,H1(194 Hz)カップリング定数から明らかである。Gorin PA(1981) Adv Carbohydr Chem Biochem 38:13-104。これらのデータの組み合わせによって、残基aは2-アミノ-4-アセトアミド-2,4,6-トリデオキシ-α-D-ガラクトピラノースと同定された。
【0204】
残基bの割り当て(α-L-Fuc)。プロトン共鳴の割り当ては、残基aの場合のように単純ではなかった。4.97 ppmのH1共鳴から出発して、H2(δ3.69 ppm)およびH3(δ3.59 ppm)は、H1-H2およびH2-H3 DQF-COSYクロスピークにしたがって割り当てた。しかし、DQF-COSYでH3-H4相関がまったく観察不能であったため、H4の割り当ては、H1から生じる全相関に頼る。TOCSYスペクトルにおいて、H1は、それぞれ、3.69、3.59、および3.65 ppmの3つのシグナル全体と相関した。最初の2つは、H2およびH3から生じるため、第三の共鳴はH4に起因するはずである。PS A2のNOESYスペクトルにおいて(図3)、H3およびH4はどちらも、4.14 ppmのシグナルと相関し、そしてH2は、1.17 ppmのシグナルにNOEを示す。これらの2つのプロトン(δ4.14および1.17 ppm)は、残基bのH2、H3、およびH4にごく近接する。したがって、これらもまた、この残基上に位置する。さらに、4.14および1.17 ppmのシグナルは、DQF-COSYおよびTOCSYスペクトル両方において、互いに相関するため、これらをそれぞれ、H5およびH6に割り当てた。プロトン割り当てに基づいて、C1-C6の化学シフトは、1H-13C HMQCスペクトルから容易に得られた(図2および表1)。
【0205】
H5およびH6は、最初、ある程度あいまいに割り当てたが、これらは、HMBCスペクトルから多重結合H-C相関によって確認した。H1およびC5、H5およびC4、並びにH6およびC5の間の3結合相関は、明らかに、H5およびH6が残基b上に位置することを示す。炭素およびプロトン化学シフトはどちらも(表1)、6-デオキシヘキソピラノースに典型的である。L-Fucは、GC-MS解析に同定される唯一のこうした糖であるため、残基bはフコースであるはずであった。さらに、H1は、1H-NMRスペクトルで一重項(3JH1,H2<3 Hz)として現れ(図1)、そして1JC1,H1は185 Hzである。両方の値は、アノマー中心でのα-立体配置を示す。したがって、残基bはα-L-フコピラノシドとして同定された。
【0206】
残る残基の割り当て。同様のアプローチを用いて、残る残基の完全なプロトンおよび炭素化学シフトを得た(表1)。化学シフトは、残基c、d、およびeをそれぞれ、Hep、ManNAc、およびADGと同定する。残基cおよびdの1JC1,H1カップリング定数は、それぞれ、168および171 Hzであり、これはアノマー中心でのα-立体配置を示す。Janeway CA Jrら(1994) Immunobiology(Garland Publishing、ニューヨーク州ニューヨーク), pp.4:1-4:35。残基eのH1(4.70 ppm)は、8 Hzの3JH1,H2の二重項として現れ(図1)、これは、アノマー中心でのβ-立体配置を強く示す。
【0207】
配列決定。次の仕事は、ポリマーの連結位置および配列を決定するものであった。こうした情報は、2つの残基間のグリコシド結合に渡る、長い範囲の1H-13C相関から直接得ることが可能である。Lerner L(1987) Carbohydr Res 166:35-46。PS A2のHMBCスペクトルは、δH 3.85 ppmおよびδC 98.41 ppmのクロスピークを明らかにし、これは残基cのH2(H2c)および残基aのC1(C1a)から生じ、そしてグリコシド連結H2c-C2c-O1a-C1aに渡る、3結合カップリングに対応する。したがって、残基cおよびaは連結し、そして連結は、残基aの1位、残基cの2位を伴い、こうしてa-(1→2)-cの配列を持つ断片を確立する。同様に、H1c(δH 4.84 ppm)およびC3d(δC 78.24 ppm)は、HMBCスペクトルにおいてクロスピークを示すため、残基cおよびdは、c-(1→3)-d配列に連結される。d-(1→4)-e断片は、C1dおよびH4e間の相関によって示される。さらに、H1eおよびC3a間の長い範囲の相関から確立されるように、残基eは、e-(1→3)-aの形で残基aに連結される。
【0208】
上述の断片を連結すると、a-(1→2)-c-(1→3)-d-(1→4)-e-(1→3)-aの直鎖配列が生じる。したがって、基本的構築単位c-d-e-a反復は、それ自体、ポリマー主鎖を産生する。さらに、残基bは、C1bおよびH2e間の相関に示されるように、1→2連結を介して、eに連結される。残基eは、残基a、b、およびdに連結され、そして構造において分枝ポイントを形成する。したがって、PS A2の反復単位は、→2)-c-(1→3)-d-(1→4)[b-(1→2)]-e-(1→3)-a-(1→の配列を持つ分枝五糖である。さらに、Hep(残基c)は、BuのC3およびcのC6間のエーテル連結を通じて、Buで置換される。連結位置は、HMBCスペクトルにおいて、BuのC3およびH6c間の長い範囲の相関によって確認される。Buが穏やかな塩基処理を受け入れないという観察は、エステル連結でなく、エーテル連結を強く支持する。PS A2の化学構造を、こうして完全に決定し、そしてこれを図4に示す。
【0209】
NOE距離拘束。反復単位あたり、総数41の残基内および10の残基間NOEクロスピークを観察する(図3)。残基内NOEを用いて、個々の残基a-eの絶対的立体配置を決定した。残基間NOEは、距離拘束として、全体的な構造計算に取り込んだ。NOEクロスピーク強度は、強い(s)または弱い(w)いずれかに分類し、そしてそれぞれ、1.8-3.3Åおよび1.8-5.0Å距離間隔と解釈した。検出される残基間NOEは以下のとおりである:c1-a5(s)、c2-a1(s)、c1-d3(s)、c5-d2(s)、d1-e6(s)、d2-e6(w)、e1-a3(s)、e2-b1(s)、a2-b5(w)、およびa2-b6(w)。最後の2つのNOEは非隣接残基間で生じる。ΦH-ΨHグリッド検索に基づく、4つの反復単位の最初のモデルが、それ自体、既に、8つの残基間距離を完全に満たしており、残る2つが標的値に近いことは、注目に値する。
【0210】
PS A2の三次元構造。PS A2の1つの四量体(4つの反復単位)の好ましい溶液コンホメーションは、NOE拘束分子機構および動力学計算から、エネルギー最小化によって計算した。最終モデルは、残基内および残基間NOEクロスピークすべてと優れて一致していた。四量体は、1巻きあたり2つの反復単位および20Åのピッチを持つ、右巻きらせんを示す(図5)。分子は、静電表面表現に例示されるように、高密度の電荷で覆われている(図5B)。すべての電荷は、分子の最も外側の表面上に曝露されており、そして結合相互作用に好ましい位置にある。正および負電荷は、らせん鎖の側面に沿って交互に並び、そして10Åのほぼ等しい距離のジグザグパターンにしたがう。らせんは、長軸に対して、おおよそ垂直に配向する、規則的な一連の溝によって特徴付けられる。これらの溝は、幅約10Å、長さ10Å、および深さ5Åである。特定の溝の4つの縁はすべて、それぞれ、残基ax-1(アミン)、cx(カルボキシレート)、ax(アミン)、およびcx+1(カルボキシレート)由来の電荷に占められ、xは、既定の反復単位を示す。最初の電荷は、溝の外側に向き、一方、他の3つは内側に向く。四量体は、左から右に数えて、それぞれ、反復単位1-3および2-4の間に形成される2つの完全な溝を含有する(図5Bの矢印)。
【0211】
ZPSにおける構造-活性関係のモデル。PS A2のコンホメーションモデルは、他の分子とのZPSの相互作用に関する、もっともらしい機構を示唆する。1つのシナリオでは、PS A2は、主に、反対の電荷を交互に高密度で示す「側面に沿って」他の分子に結合する(上記を参照されたい)。高結合親和性は、親水性ヒドロキシルへの多くの水素結合、そしてより低い度合いでファンデルワールス相互作用に関する潜在能力に補充される、豊富な静電相互作用を介して達成されるであろう。別のシナリオでは、PS A2の溝は、主な結合ドメインとして作用する。各溝の幾何構造は、タンパク質由来のαらせんの挿入に対応することが可能であろう。このアイディアを試験するため、末端に荷電した側鎖を持つ、仮定的なαらせん(10-14量体)を、コンピュータ内で、PS A2の溝にドッキングさせ、そして非常によく適合することを見出した(図6)。溝の縁の電荷は、ペプチドを係留するのを補助する可能性がある。多数の塩架橋に加え、該複合体は、主に、溝の内部表面に沿った疎水性相互作用によって、安定化可能である。これらのシナリオのどちらでも、重要な位に位置する、荷電した基は、結合に重要に寄与し、これが、電荷がZPSの生物学的活性の本質的な決定要因であることを説明するであろう。
【0212】
「溝結合モデル」は、ZPSのT細胞刺激活性の魅力的な説明を提供する。一般的に、T細胞活性化は、抗原提示細胞上の主要組織適合(MHC)分子に結合した抗原の特異的認識によって開始される。抗原-MHC複合体へのT細胞受容体の物理的結合が、感染性微生物に特異的なT細胞反応を誘発する。Janeway CA Jrら(1994) Immunobiology(Garland、ニューヨーク州ニューヨーク)中, pp 4:1-4:35。結晶学的研究によって、αらせんがMHC分子の抗原結合間隙の側面境界を形成することが明らかになった。Stern LJら(1994) Nature 368:215-21;Reinherz ELら(1999) Science 286:1913-21。これに関連して、PS A2が、溝にαらせんを捕捉することによって、MHC分子と複合体を形成することが可能である。PS A2が数百の反復単位を含むポリマー性であり、そしてしたがって、多数の結合部位を提供することは注目に値する。さらに、PS A2は、両方のタンパク質上のαらせんをつなぎとめることによって、T細胞受容体およびMHC分子を架橋することが可能である。
【0213】
双性イオン多糖の観察される免疫調節効果を説明すると考えられる溝結合モデルを補助する際、PS A2およびクラスII MHCを伴う、微小熱量測定、溶液相NMR、BIACore、およびアフィニティークロマトグラフィーは、該モデルと一致する。
【0214】
ZPSおよびMHC分子のペプチド断片間の結合の測定。
等温滴定熱量測定(ITC)。2つの分子が結合する際、熱は、起こる結合量に正比例して、放出されるかまたは吸収されるかいずれかである。この熱の測定は、結合会合定数(Ka)、化学量論(N)、並びに会合のギブス自由エネルギー(ΔG)へのエンタルピー(ΔH)およびエントロピー(ΔS)寄与の正確な測定を可能にする。
【0215】
Ac-Ala-Glu(-)-Tyr-Tyr-Asn-Lys(+)-Gln-Tyr-Leu-Glu(-)-Gln-Thr-Arg(+)-Ala-Glu(-)-Leu-Asp(-)-Thr-NH2の配列を持つ、ネズミMHC-II IA β1ドメイン(PIIb1)由来の18量体ペプチド断片を化学的に合成した。この断片は、MHC上のペプチド結合溝の側面αらせん境界の一部である。MHCペプチドおよび多糖間の結合を試験するため、いくつかのITC実験を行った。すべての実験は、VP ITC装置(MicroCal、マサチューセッツ州ノーザンプトン)上で行った。典型的な実験では、多糖(0.02 mg/ml)5または10μlアリコットを、300 rpmで迅速に混合しながら、1.4 mlのペプチド(0.015 mg/ml)溶液に注入した。各注入間には4分の間隔があった。多糖およびペプチドはどちらも、10 mM PBS緩衝液、pH7.2に溶解した。
【0216】
ぺプチドPIIb1は、PS A2および肺炎連鎖球菌の1型莢膜多糖(CP1)に強い結合を示した。対照ペプチド(Lys-Asp)15は、PS A2またはCP1に結合を示さなかった。対照多糖、B群連鎖球菌(GBS)由来のIII型莢膜多糖は、ペプチドPIIb1への結合を示さなかった。
【0217】
円二色性(CD)。複合体形成に際して、ペプチドおよび/または多糖は、コンホメーション変化を経る可能性がある。この現象は、ヘパリンへの特定のペプチドの結合に関して、先に観察されている。我々のペプチドがコンホメーション変化を経るかどうか試験するため、CD分光法を用いて、未結合および結合ペプチド両方を評価した。すべてのCDスペクトルは、AVIA CD分光計(AVIA、ニュージャージー州レークウッド)上に記録した。多糖およびペプチドは、10 mM PBS、pH7.2中の1 mg/ml溶液として調製した。CDスペクトルは、ペプチドおよび多糖どちらに関しても単独で得て、そしてその後、多糖の5μlアリコットを、ペプチド溶液中に滴定し、そして混合物に関してCDスペクトルを記録した。240-190 nm領域のスペクトルを解析して、二次構造要素の部分的な割合を決定した。これらの進行中の研究は、我々の多糖が、αらせんペプチドに優先的に結合し、そして安定化するかどうかを検証するであろう。
【0218】
NMR分光法。ペプチドPIIb1およびCP1間の結合部位を決定するため、CP1をペプチド溶液に滴定し、そしてプロトン化学シフト変化を観察した。PIIb1にCP1を添加すると、いくつかのシグナルで化学シフト移動(displacement)が引き起こされ、最も注目すべきは、アスパラギン酸残基の側鎖プロトンであった(図7を参照されたい)。対照として、CP14(肺炎連鎖球菌14型莢膜、中性多糖)をPIIb1に滴定した。多量のCP14を添加して始めて、1つのシグナルでわずかな化学シフト変化が観察された。同様の滴定実験を用いて、相互作用の化学量論を得ることが可能である。
【0219】
実施例2.Sp1
肺炎連鎖球菌1型多糖(Sp1)(Tzianabos AOら(1993) Science 262:416-9)は、腹腔内膿瘍のラットモデルで試験した際、同一のT細胞活性およびその結果の細菌膿瘍形成を制御する能力を共有する(Tzianabos AOら(2000) J Biol Chem 275:6733-40;Lindberg Bら(1980) Carbohydr Res 78:111-7)。Sp1は、三糖反復単位からなる直鎖ポリマーであり、ガラクツロン酸(GalA、残基aおよびc)、2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトース(Sug、残基b)を含有し、→3)-α-D-GalA(a)-(1→3)-α-D-Sug(b)-(1→4)-α-D-GalA(c)-(1→(17,22)の配列を持つ。Sp1の各反復単位は、1つの正に荷電したアミンおよび2つの負に荷電したカルボキシル基を含有する。
【0220】
Sp1の精製。1型肺炎連鎖球菌由来の未精製PS抽出物をアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ジョージア州アトランタ)から購入した。未精製材料の20 mg試料を、1.5 mlの2 M NaOHに溶解し、そして混入リビトール-リン酸タイコ酸を分解するため、80℃で3時間加熱した。Jennings HJら(1980) Biochemistry 19:4712-9;van Dam JEGら(1990) Antonie van Leewenhoek 58:1-47。混合物をその後、2 M HClで中和し、脱イオン水に対して徹底的に透析し、そして凍結乾燥した。その後、産物をSephacryl S300カラム(Amersham Pharmacia Biotech、ニュージャージー州)上で精製し、0.05%アジドを含有するリン酸緩衝生理食塩水(0.01 Mリン酸、0.15 M NaCl、pH7.24)で溶出した。分画は、炭水化物に関して、屈折率検出装置によって、そして混入タンパク質に関して280 nmでUV検出装置によって監視した。Sp1は、カラムの空隙容量近くで溶出し、そして100 kDaの平均分子量を有した。Sp1分画をプールし、脱イオン水に対して徹底的に透析し、そして凍結乾燥した。構造および純度は、NMR解析によって実証した。
【0221】
NMR分光法。すべてのNMRスペクトルは、D2Oで1度交換して、そして0.7 mlのD2Oに再度溶解した、8 mgの精製Sp1試料から得た。NMR実験は、Varian Unity500装置上で、37℃で行った。1H化学シフトは、外部較正されるように、4.36 ppmでの水の共鳴を基準とした。13C化学シフトは、22.5 ppmでの外部CH3I標準を基準とした。大部分のスペクトルは、標準パルスシーケンスの位相弁別TPPIモードで得た。Sanders JKMら, Modern NMR Spectroscopy, 第2版, 1993, Oxford Press;Braun Sら, 150 and More Basic NMR Experiments, 1998, Wiley-VCH。1H-1H TOCSY(Bax Aら(1985) J Magn Reson 65:355-60)、DQF-COSY(Piantini Uら(1982) J Am Chem Soc 104:6800-1)、およびNOESY(Bodenhausen Gら(1984) J Magn Reson 58:370-88)は、両次元で10 ppmのスペクトル幅で記録した。TOCSYに関して80 msのスピンロック時間を用いた。NOESYスペクトルは、それぞれ、25、50、75、および100 msの混合時間で記録した。NOEクロスピークは、各スペクトルに関して、同一の統合限界にしたがって統合した。3JH,Hカップリングは、DQF-COSYおよびE.COSYから測定した。Griesinger Cら(1987) J Magn Reson 75:474-92。1H-13C HMQC(Bax Aら(1986) J Magn Reson 67:565-9)、1H-13C HMBC(Bax Aら(1986) J Am Chem Soc 108:2093-4)は、それぞれ、炭素次元で100および180 ppmで記録した。HMQCスペクトルは、獲得中、13Cデカップリングを伴いそして伴わずに得た。後者を用いて、1JC,Hカップリング定数を抽出した。データは、VNMRまたはNMRPipeいずれかでプロセシングした。一般的に、512×2048のデータマトリックスを得て、そしてプロセシング中に1024×2048にゼロ・フィルタした。デジタル解像に対応するt1およびt2次元両方で、sine-bellまたは他のウィンドウ関数を適用した。スペクトルは、相訂正し、そしてベースラインを平らにした。
【0222】
分子モデリング。分子機構および動力学計算は、R10000 195 MHz中央処理装置を備えたOctaneワークステーション(Silicon Graphics、カリフォルニア州マウンテンビュー)上のINSIGHT II 2000/Discoverプログラム(Accelrys、カリフォルニア州サンディエゴ)で行った。荷電および非荷電型両方で、多様な二糖コンホメーションのグリッド検索において、一致した結果を生じるため、調和ポテンシャル関数および交差項を含む一致価力場(CVFF)をすべての計算に用いた(Hagler ATら(1979) J Am Chem Soc 101:5122-30)。非結合相互作用の計算には、切捨ては課さなかった。すべての計算は、別に明記しない限り、距離依存誘電定数(ε=4・r)で、減圧下で行った。サーフェスレンダリングおよび定量的ポアソン・ボルツマン静電計算をGRASP(Nicholls Aら(1991) Proteins 11:281-96)およびSPOCK(Christopher JA(1998) SPOCK:構造特性観察および計算キット(巨大分子設計センター、テキサスA&M大学、テキサス州カレッジステーション)で行った。
【0223】
単糖モデル構築。Sp1の3つの単糖残基の分子モデルは、INSIGHT II 2000プログラムのBiopolymerモジュールで構築した。残基bの未結合アミン、並びに残基aおよびcのカルボン酸は非荷電で処理した。各単糖の最初のモデルは、最大誘導体が1000.0 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、最急勾配降下によってエネルギー最小化し、その後、ポラック-リビエル・コンジュゲート勾配法で、最大誘導体が10.0 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、そしてニュートン最小化アルゴリズム(BFGS)で、最大誘導体が0.001 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、エネルギー最小化した。
【0224】
グリッド検索。Sp1反復単位の3つのグリコシド連結各々に関するコンホメーション優先度を、ΦHおよびΨH二面角の系統的なグリッド検索によって評価した。ΦHおよびΨHは、それぞれ、H1-C1-O1-CX’およびC1-O1-CX’-HX’と定義され、一方、X’はグリコシド連結部位を指す。ΦH-ΨH総エネルギーマップは、10°増分で、-180°から180°まで、両方の角度を系統的に回転させることによって得た。すべての連結に関して、単糖に関して上述するのと同一の方法で、各々362の二糖構造をエネルギー最小化し、一方、ΦHおよびΨH二面角、並びにピラノース環のいすコンホメーションを拘束した(k=1,000 kcal・mol-1でコサイン拘束)。各エネルギーマップ中の最低エネルギーコンホメーションを選択して、対応する二糖を構築し、そして構造をさらにエネルギー最小化した。この微調整工程を用いて、グリッド検索の正確さを実証した。電荷分布を評価するため、残基bのアミン、並びにaおよびcのカルボキシレート基を、別個の計算で、非荷電および荷電で処理した。非荷電で処理した場合、距離依存誘電定数ε=4rを用いた。荷電で処理した場合、ε=4r、80および80rを調べた。
【0225】
拘束エネルギー最小化。Sp1の4つの反復単位の最初の分子モデル(4RU、12単糖を含有する)は、グリッド検索計算から得た、好ましい二面角を用いて構築した。構造バイアスを制限するため、最初のモデルとして、直鎖およびランダムコンホメーションもまた、構築した。観察される残基間NOE距離拘束はすべて、1.8Åの近位標的値、およびそれぞれ、強いNOEクロスピークに関して3.3Å、そして弱いクロスピークに関して5.0Åの遠位標的値で、平底エネルギー条件の形で最初のモデルに添加した。力定数は、スケーリング因子1で、100 kcal・mol-1・Å-2に設定した。分子モデルは、最大誘導体が1000.0 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、最急勾配降下によってエネルギー最小化し、その後、ポラック-リビエル・コンジュゲート勾配法で、最大誘導体が0.001 kcal・mol-1・Å-1未満になるまで、エネルギー最小化した。
【0226】
拘束分子動力学。構造を微調整するため、NOE拘束を用いたSp1 4RUの分子動力学(MD)シミュレーションを行った。エネルギー最小化した構造を、MDシミュレーションの出発幾何構造として用いた。シミュレーションしたアニーリングシミュレーションは、5 psあたり10Kで700から300Kまで5周期行った。最終構造は、最終収束<0.001 kcal・mol-1・Å-1まで300Kで完全に最小化した。300Kで1.0 fs時間ステップを用いたベルレ速度アルゴリズムを用いて、一定NVT MD計算を行った。温度は、平衡化期では速度スケーリング、そして産生期ではアンダーセン・アルゴリズムによって、衝突頻度1.0で調節した。系は、10 ps平衡化し、そして産生実行は500 ps行った。ポテンシャル・エネルギーは10 ps未満で平衡化するため、平衡化期は放棄した。中間構造は、解析目的のため、毎0.1 psで保存した。
【0227】
NOE逆算。NOESYスペクトルは、75 msの混合時間で、プログラムMORASS(マルチスピン・オーバーハウザー緩和解析およびシミュレーション)を用いて、Sp1 4RUの3D構造からシミュレーションした。付着する13Cによる自己緩和状態として、1JCH値をNOEシミュレーションに取り込んで、異核双極緩和を説明した。Martin-Pastor Mら(1999) Biochemistry 38:8045-55;Wuthrich K(1986) NMR of Proteins and Nucleic Acids, John Wiley & Sons, ニューヨーク;Bush CA(1994) Methods Enzymol 240:446-59。
【0228】
結果
化学シフト割り当て。NOE由来距離拘束を伴うNMR分光法は、溶液中の糖のコンホメーションを得る可能性を提供する。このアプローチは、まず、分子中の1Hおよび13C共鳴の完全な割り当てを必要とする。Sp1は、2つのガラクツロン酸残基および2-アセトアミド-4-アミノ-2,4,6-トリデオキシガラクトースを持つ、三糖反復単位で構成される。その一次構造は、化学的方法によって、先に決定された。Lindberg Bら(1980) Carbohydr Res 78:111-7;Li Yら(2001) Immunity 14:93-104。Sp1の広範囲NMR解析は行われておらず、そしてNMR化学シフトは割り当てられておらず、そして公表されていない。1Hおよび13C化学シフトを得るため、1D 1Hおよび2D TOCSY、DQF-COSY、NOESY、HMQC、およびHMBCを含む、NMR実験の組み合わせを行った。シグナルはよく分離され、そしてこれらの実験は、表2に示すような、明白な割り当てに十分であった。NMR解析および割り当てはまた、Sp1の化学構造も確認した。
【0229】
【表2】
【0230】
NOE由来距離拘束。NOEから距離拘束を得るため、それぞれ、25、50、75、および100 msの混合時間で、Sp1のNOESYスペクトルを獲得した。隣接しない残基間でのNOE接触は、炭水化物ではまれにしか観察されないため、NOEクロスピークは、同一単糖または隣接する残基内のプロトンに割り当てた。反復単位あたり、総数24の残基内および24の残基間NOEクロスピークを観察した。4つの混合時間でのこれらのクロスピークすべての量を統合し、そしてNOE構築曲線を得た。大部分のNOE強度は、25から100 msで増加したが、2つは、25から75 msで増加し、そして100 msでわずかに減少した。75 msのシグナルは、スピン拡散によって影響を受けず、そしてまた、ゼロ量子コヒーレンス・アーチファクトは最小限であるため、構築曲線の代わりに混合時間75 msでのNOE強度を用いて、距離拘束を測定した。Wuthrich K(1986) NMR of Proteins and Nucleic Acids, John Wiley & Sons, ニューヨーク。NOEクロスピーク強度は、強いかまたは弱いかいずれかに分類し、そしてそれぞれ、1.8Å-3.3Åおよび1.8Å-5.0Å距離間隔と解釈した。残基間NOE由来拘束は、全体的な構造計算に取り込んだ。
【0231】
コンホメーション優先度。多糖およびオリゴ糖は、回転的に柔軟なグリコシド結合によって共に連結される単糖からなる。オリゴ糖の全体の形状は、主に、グリコシド連結周囲の回転柔軟度に依存し、一方、糖環の固有の柔軟度は、むしろ限定されており、そしてペンダント基の異なる配向が、糖のコンホメーション空間に限定的な影響を有する。個々のグリコシド構成要素の連結および置換パターンによる、Sp1のコンホメーション優先度を評価するため、3つのグリコシド連結すべてに関して、体系的なグリッド検索を行った。この解析では、各グリコシド連結のΦHおよびΨH角は、-180から+180度まで10度増分で独立に変化し、そして各ファイ-プサイ対に関して、総エネルギーを評価した。各二糖に関する、ΦH-ΨHエネルギー輪郭マップを得た。各二糖単位に関して、1つのエネルギー最小プラトーがあった。その結果、最低エネルギーΦH-ΨH対は、以下のとおりであった(括弧内は連結):-50°、-35°(ab);-41°、9°(bc);-41°、-35°(ca)。これらのコンホメーションは、各グリコシド連結に関して多様な二面角から出発し、そして最小化に際して、全体的な最小に向かって収束を示した。
【0232】
構造計算。Sp1の構造は、12量体(4RU)、14量体、および18量体を含む、いくつかの反復単位のコンホメーションをモデリングすることによって、調べた。1つの反復単位は、一般的に、多糖のコンホメーションの全体的な表現を得るには短すぎる。さらに、数反復のモデリングは、緩んだ末端によるアーチファクトを除去し、こうして数反復の中央部分のパラメータを取ることによって、ポリマー構造の組み立てを可能にするであろう。Sp1の4RUの好ましいコンホメーションは、2つのアプローチで残基間NOE距離拘束を用いたエネルギー最小化によって計算した。第一のアプローチでは、グリッド検索から得たファイ-プサイ角を用いて4RUの最初のモデルを構築し、そしてその後、NOE由来距離拘束を用いて、完全に最小化した。わずかに異なるアプローチでは、最初のモデルは、まず、NOE距離拘束を伴わずに最小化し、そして次に、伴って最小化した。これらの2つの最小化スキームは、12量体、14量体、および18量体に関して、事実上、同一の結果を生じた。abおよびcaの平均ファイ-プサイ角は、二糖コンホメーショングリッド検索から得たものと一致した。bc連結に関しては、好ましい二面角は、グリッド検索の二番目に小さいエネルギー最小に近かった。
【0233】
分子動力学。Sp1のコンホメーションは、残基間NOE距離拘束をすべて取り込むことによる、拘束MDシミュレーションによって微調整した。シミュレーションしたアニーリングアプローチにおいて、700から300Kの5周期のシミュレーションしたアニーリングを行った。4RUのコンホメーションは、各周期の終わりに完全に最小化した。このシミュレーションは、5つの異なるコンホメーションを生じた。b-c連結の二面角は、最高の柔軟性を示し、特にプサイ角は、-27.9°から27.7°で変化した。これらの結果は、ab連結が最も柔軟でなく、そしてbcが最も柔軟な連結であることを示した。
【0234】
NOE逆算。上述の計算は、Sp1のいくつかの好ましいコンホメーションを生じた。実験的NOEパラメータを最も満たすのはどのコンホメーションかを決定するため、Sp1のNOESYスペクトルを、混合時間75 msで、各コンホメーションから逆算した。Bush CA(1994) Methods Enzymol 240:446-59。最終モデルは残基内および残基間NOEクロスピークと優れて一致している。
【0235】
Sp1のコンホメーション。Sp1の全体の形状は、1巻きあたり8残基および19Åのピッチの右巻きらせんと記載することが可能である。アミン(正電荷)は、分子の最も外側の表面上に曝露されており、そして結合相互作用に好ましい位置にある。MDシミュレーションにおいて構造間の重原子に関して計算したRMSDは、2Åの桁であった。これは、優れた収束が達成されていることを示す。この類似のコンホメーションへの収束の成功は、拘束MDシミュレーションが正確であることを示す。最も重要な相違は、末端領域で生じ、そしておそらく、端のほつれに起因しうる。
【0236】
Sp1コンホメーションをPS A2のものと比較すると、グリコシド酸素原子およびアミノ基の優れた重ね合わせがあることが観察された。Sp CP1のグリコシド酸素原子は、1.5ÅのRMSD値で、PS A2のものに重ね合わせ可能であり、これは、これらの2つのZPSが、一次構造が異なるのにもかかわらず、本質的に同一の主鎖構造を有することを示す。Sp1のアミン中の窒素原子は、5.1ÅのRMSD値で、PS A2のものに重ね合わせ可能である。興味深いことに、2つの多糖のアミンの空間配置は、類似のパターンを示した。両分子において、アミンは外側を指し、そしてジグザグ様式で配置される。Sp1 4RU中心での2つの隣接アミン間の平均距離は15Åであり、これはPS A2のものに非常に近い。
【0237】
巨視的構造。Sp1の巨視的/形態学的特徴は、X線線維回折によって調べられているセルロースおよびいくつかの多糖と同様に、伸長した原線維様構造を形成すると期待されるであろう。5 mg/mlの濃度でPBSに溶解したSp1は、炭素ナノプローブを用いて、原子間力顕微鏡によって調べた。画像は、Sp1が実際に糸状構造を形成することを示した。
【0238】
前述する明細書は、当業者が本発明を実施するのを可能にするのに十分であるとみなされる。実施例は、本発明の1つの側面の単一の例示として意図され、そして機能的に同等の他の態様が、本発明の範囲内であるため、本発明は、提供する実施例によって範囲が限定されないものとする。当業者には、前述の説明から、本明細書に示し、そして記載するものに加えて、本発明の多様な修飾が明らかになるであろうし、そして該修飾は付随する請求項の範囲内に属する。本発明の利点および目的は、本発明の各態様に、必ずしも包含されない。
【0239】
本出願に引用される、すべての参考文献、特許および特許公告は、本明細書に完全に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】図1は、70℃で記録したPS A2の1H NMRスペクトルを示すグラフである。
【図2】図2は、PS A2の1H-13C HMQCスペクトルを示すグラフである。各クロスピークは、C-H対に対応する。a1は残基aの1位を指すことに注目されたい。未標識ピークは、混入物質によるものである。
【図3】図3は、37℃および750 MHzの場強度で記録した、PS A2の1H-1H NOESYスペクトルを示すグラフである。メチルプロトン領域は示していない。7つの残基間NOEクロスピークを標識する。a1-c2は残基aのH1および残基cのH2間の相関を指すことに注目されたい。
【図4】図4は、PS A2の1つの反復単位の化学的構造を示す図である。
【図5】図5は、(A)PS A2の1つの四量体(4つの反復単位)のらせん構造のスティックモデル、および(B)四量体の静電表面表現を示すグラフ対である。(A)において、炭素は緑、酸素は赤、窒素は青、そして水素は白に色分けする。(B)において、正電荷は青、負電荷は赤に色分けし、そして2つの溝は矢印で示す。両モデルは、同一に配向され、左側が観察者側にわずかに傾き、8つの電荷すべてが同時に見えるようにしてある。
【図6】図6は、PS A2の溝の1つに結合したタンパク質αらせんのモデルを示す図である。PS A2の静電表面は、らせんの15Å以内に示す。らせんはリボンで示し、そして表面の色分けスキームは、図5Bのものと同一である。
【図7】図7は、ネズミMHC-II IA β1(PIIb1)の18量体断片にCP1を加えた際の、NMR化学シフト移動を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離免疫調節ポリマーであって:
複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造
-(S1-S2-S3-S4)-
を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合(free)アミノ部分を含む
前記単離免疫調節ポリマー。
【請求項2】
複数の反復単位が:少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位からなる群より選択される、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項3】
複数の反復単位の反復単位が隣接している、請求項2の単離免疫調節ポリマー。
【請求項4】
複数の反復単位から本質的になる、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項5】
第一サブユニット上の負に荷電した部分が:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択される、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項6】
サブユニットが:単糖、二糖、アミノ酸、ジペプチド、ヌクレオチド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、並びにそれらの組み合わせおよび類似体(analog)からなる群より独立に選択される、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項7】
サブユニットが、独立に、単糖またはその類似体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項8】
サブユニットが、独立に、アミノ酸またはその類似体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項9】
サブユニットが、独立に、分枝または非分枝である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項10】
サブユニットS3が分枝である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項11】
反復単位が五量体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項12】
反復単位が分枝五量体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項13】
天然存在ポリマーである、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項14】
1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分が、別の単位の第四サブユニット上の、二番目に最も近い(next-nearest)未結合アミノ部分から約32Å未満である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項15】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項1記載の単離免疫調節ポリマー;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項16】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項2-14のいずれか1項記載の単離免疫調節ポリマー;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項17】
単離免疫調節多糖であって:
複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一の単糖M1、第二の単糖M2、第三の単糖M3、および第四の単糖M4を含む、構造
-(M1-M2-M3-M4)-
を有する四糖主鎖を含んでなり、各四糖主鎖が、第一の単糖M1上に負に荷電した部分および第四の単糖M4上に未結合アミノ部分を含む
前記単離免疫調節多糖。
【請求項18】
PS A2である、請求項17の免疫調節多糖。
【請求項19】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項17記載の単離免疫調節多糖;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項20】
PS A2を含んでなる、単離免疫調節多糖。
【請求項21】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項20記載の単離免疫調節多糖;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項22】
単離免疫調節ポリマーであって:
複数の反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフが、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるようにポリマーに沿って配置されている正電荷および負電荷であり、該ポリマーが、大部分の正電荷および負電荷が溶媒接近可能である三次元溶液コンホメーションを有し、前記三次元溶液コンホメーションが複数のドッキング部位を有し、各ドッキング部位が幅約10Åおよび深さ約5Åである
前記単離免疫調節ポリマー。
【請求項23】
PS A1、PS B、チフス菌(Salmonella typhi)Vi抗原、大腸菌(Escherichia coli)K5抗原、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5型莢膜多糖、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)・エキソポリサッカライドII、B群連鎖球菌(group B streptococcus)III型莢膜多糖、緑膿菌(Pseudomonas aerugenosa)フィッシャー免疫型7O抗原、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)第I期リポ多糖O抗原、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)I型莢膜多糖、肺炎連鎖球菌群抗原:C物質、およびクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)・リポペプチドホスホグリカンからなる群より選択されない、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項24】
複数の反復単位を含んでなる、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項25】
複数の反復単位が:少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位からなる群より選択される、請求項24の単離免疫調節ポリマー。
【請求項26】
複数の反復単位の反復単位が隣接している、請求項25の単離免疫調節ポリマー。
【請求項27】
複数の反復単位から本質的になる、請求項24の単離免疫調節ポリマー。
【請求項28】
電荷モチーフの正電荷が未結合アミノ基である、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項29】
三次元溶液コンホメーションがらせんを含んでなる、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項30】
らせんが約20Åのピッチを有する、請求項29の単離免疫調節ポリマー。
【請求項31】
混合ポリマーである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項32】
ドッキング部位が、少なくとも長さ約10Åである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項33】
ドッキング部位が複数の溶媒接近可能電荷を含む、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項34】
ドッキング部位が、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項35】
ドッキング部位が、生理的条件下、少なくとも10-6 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項36】
ドッキング部位が、生理的条件下、少なくとも10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項37】
ポリペプチドのアルファらせんが主要組織適合複合体(MHC)分子のアルファらせんである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項38】
ポリペプチドのアルファらせんがT細胞抗原受容体のアルファらせんである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項39】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項22-38のいずれか1項記載の単離免疫調節ポリマー;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項40】
感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法であって:
こうした保護が必要な被験者に、感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項41】
手術部位で生じる手術癒合形成を減少させる方法であって:
こうした手術癒合形成の減少が必要な被験者に、手術癒合形成を減少させるのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項42】
インターロイキン2(IL-2)分泌を誘導する方法であって:
こうしたIL-2分泌が必要な被験者に、IL-2分泌を誘導するのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項43】
インターロイキン10(IL-10)分泌を誘導する方法であって:
こうしたIL-10分泌が必要な被験者に、IL-10分泌を誘導するのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項44】
免疫調節ポリマー候補を選択する系であって:
免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するインプットシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプットを有する、予測モジュール;並びに
ポリマーシグナルを受け取るインプット、予測モジュールによって生成された三次元溶液コンホメーションが(i)複数の反復単位、(ii)複数の溶媒接近可能電荷、並びに(iii)各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択するロジック、および免疫調節ポリマー候補が解析モジュールによって選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、解析モジュール
を含んでなる、前記系。
【請求項45】
免疫調節ポリマー候補を選択するコンピュータ実行法であって:
免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルを受け取り;
免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;
免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションが、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能電荷、並びに各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択し;そして
免疫調節ポリマー候補が選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項46】
免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルが、複数の免疫調節ポリマー候補を特定する、請求項45の方法。
【請求項47】
選択する免疫調節ポリマー候補が反復単位で構成される、請求項45の方法。
【請求項48】
反復単位が隣接している、請求項47の方法。
【請求項49】
反復単位が、介在配列により分離されている、請求項47の方法。
【請求項50】
選択する免疫調節ポリマー候補が反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフが、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるようにポリマーに沿って配置されている、正電荷および負電荷である、請求項45の方法。
【請求項51】
選択する免疫調節ポリマー候補が糖主鎖を有する、請求項45の方法。
【請求項52】
選択する免疫調節ポリマー候補が多糖である、請求項45の方法。
【請求項53】
選択する免疫調節ポリマー候補がポリペプチド主鎖を有する、請求項45の方法。
【請求項54】
免疫細胞が、通常、活性化されない生理的条件下で、選択する免疫調節ポリマー候補を免疫細胞と接触させ;そして
免疫細胞の活性化マーカーを測定する
ことをさらに含んでなる、請求項45の方法。
【請求項55】
免疫調節ポリマー候補を設計するための系であって:
(a)化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するインプットシグナルを受け取るインプットであって、複数のバーチャルサブユニットが、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットが、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなる、前記インプット、(b)複数のバーチャルサブユニットから(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択するロジック、並びに(c)選択したバーチャルサブユニットシグナルを出力するアウトプットを有する、バーチャルサブユニット選択モジュール;
選択したバーチャルサブユニットシグナルを受け取る第一のインプットおよび少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプットであって、テンプレートが複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記インプット、(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換するロジック、並びに免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定する、変換したテンプレートシグナルを出力するアウトプット、を有する、変換モジュール;
変換したテンプレートシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプット、を有する、予測モジュール;並びに
ポリマーシグナルを受け取る第一のインプット、少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプット、およびポリマーシグナルおよびテンプレート間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するインプットシグナルを受け取る第三のインプット、比較規準にしたがって、ポリマーシグナルおよびテンプレートを比較するロジック、並びにポリマーシグナルおよびテンプレートの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、比較モジュール
を含んでなる、前記系。
【請求項56】
免疫調節ポリマー候補を設計するコンピュータ実行法であって:
化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するシグナルを受け取り、複数のバーチャルサブユニットは、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットは、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなり;
複数のバーチャルサブユニットから、(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択し;
少なくとも1つのテンプレートであって、複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記テンプレートを特定するシグナルを受け取り;
(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換すること、による一次構造を有する免疫調節ポリマー候補を生成し;
一次構造を有する免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;
免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーション間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するシグナルを受け取り;
比較規準にしたがって、免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションを比較し;そして
免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するシグナルを出力する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項57】
参照免疫調節ポリマーがPS A2である、請求項56の方法。
【請求項58】
免疫調節ポリマー候補が多糖を含んでなる、請求項56の方法。
【請求項59】
免疫調節ポリマー候補が多糖である、請求項56の方法。
【請求項60】
免疫調節化合物候補がポリペプチドを含んでなる、請求項56の方法。
【請求項61】
免疫調節化合物候補がポリペプチドである、請求項56の方法。
【請求項1】
単離免疫調節ポリマーであって:
複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一サブユニットS1、第二サブユニットS2、第三サブユニットS3、および第四サブユニットS4を含む、構造
-(S1-S2-S3-S4)-
を有する四量体主鎖を含んでなり、各四量体主鎖が、第一サブユニットS1上に負に荷電した部分および第四サブユニットS4上に未結合(free)アミノ部分を含む
前記単離免疫調節ポリマー。
【請求項2】
複数の反復単位が:少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位からなる群より選択される、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項3】
複数の反復単位の反復単位が隣接している、請求項2の単離免疫調節ポリマー。
【請求項4】
複数の反復単位から本質的になる、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項5】
第一サブユニット上の負に荷電した部分が:カルボキシル、ホスフェート、およびホスホネートからなる群より選択される、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項6】
サブユニットが:単糖、二糖、アミノ酸、ジペプチド、ヌクレオチド、C5-18シクロアルキル、C5-18アリール、並びにそれらの組み合わせおよび類似体(analog)からなる群より独立に選択される、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項7】
サブユニットが、独立に、単糖またはその類似体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項8】
サブユニットが、独立に、アミノ酸またはその類似体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項9】
サブユニットが、独立に、分枝または非分枝である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項10】
サブユニットS3が分枝である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項11】
反復単位が五量体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項12】
反復単位が分枝五量体である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項13】
天然存在ポリマーである、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項14】
1つの反復単位の第四サブユニット上の未結合アミノ部分が、別の単位の第四サブユニット上の、二番目に最も近い(next-nearest)未結合アミノ部分から約32Å未満である、請求項1の単離免疫調節ポリマー。
【請求項15】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項1記載の単離免疫調節ポリマー;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項16】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項2-14のいずれか1項記載の単離免疫調節ポリマー;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項17】
単離免疫調節多糖であって:
複数の反復単位を含んでなり、各反復単位が、各々他と独立に、第一の単糖M1、第二の単糖M2、第三の単糖M3、および第四の単糖M4を含む、構造
-(M1-M2-M3-M4)-
を有する四糖主鎖を含んでなり、各四糖主鎖が、第一の単糖M1上に負に荷電した部分および第四の単糖M4上に未結合アミノ部分を含む
前記単離免疫調節多糖。
【請求項18】
PS A2である、請求項17の免疫調節多糖。
【請求項19】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項17記載の単離免疫調節多糖;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項20】
PS A2を含んでなる、単離免疫調節多糖。
【請求項21】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項20記載の単離免疫調節多糖;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項22】
単離免疫調節ポリマーであって:
複数の反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフが、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるようにポリマーに沿って配置されている正電荷および負電荷であり、該ポリマーが、大部分の正電荷および負電荷が溶媒接近可能である三次元溶液コンホメーションを有し、前記三次元溶液コンホメーションが複数のドッキング部位を有し、各ドッキング部位が幅約10Åおよび深さ約5Åである
前記単離免疫調節ポリマー。
【請求項23】
PS A1、PS B、チフス菌(Salmonella typhi)Vi抗原、大腸菌(Escherichia coli)K5抗原、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)5型莢膜多糖、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)・エキソポリサッカライドII、B群連鎖球菌(group B streptococcus)III型莢膜多糖、緑膿菌(Pseudomonas aerugenosa)フィッシャー免疫型7O抗原、ソンネ赤痢菌(Shigella sonnei)第I期リポ多糖O抗原、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)I型莢膜多糖、肺炎連鎖球菌群抗原:C物質、およびクルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)・リポペプチドホスホグリカンからなる群より選択されない、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項24】
複数の反復単位を含んでなる、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項25】
複数の反復単位が:少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、および少なくとも20の反復単位からなる群より選択される、請求項24の単離免疫調節ポリマー。
【請求項26】
複数の反復単位の反復単位が隣接している、請求項25の単離免疫調節ポリマー。
【請求項27】
複数の反復単位から本質的になる、請求項24の単離免疫調節ポリマー。
【請求項28】
電荷モチーフの正電荷が未結合アミノ基である、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項29】
三次元溶液コンホメーションがらせんを含んでなる、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項30】
らせんが約20Åのピッチを有する、請求項29の単離免疫調節ポリマー。
【請求項31】
混合ポリマーである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項32】
ドッキング部位が、少なくとも長さ約10Åである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項33】
ドッキング部位が複数の溶媒接近可能電荷を含む、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項34】
ドッキング部位が、生理的条件下、少なくとも10-3 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項35】
ドッキング部位が、生理的条件下、少なくとも10-6 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項36】
ドッキング部位が、生理的条件下、少なくとも10-9 M-1の親和性で、ポリペプチドのアルファらせんに結合するように構築され、そして配置されている、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項37】
ポリペプチドのアルファらせんが主要組織適合複合体(MHC)分子のアルファらせんである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項38】
ポリペプチドのアルファらせんがT細胞抗原受容体のアルファらせんである、請求項22の単離免疫調節ポリマー。
【請求項39】
免疫細胞を活性化するのに有効な量の、請求項22-38のいずれか1項記載の単離免疫調節ポリマー;および
薬学的に許容しうるキャリアー
を含んでなる、免疫細胞を活性化する薬剤調製物。
【請求項40】
感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導する方法であって:
こうした保護が必要な被験者に、感染に関連する膿瘍形成に対する保護を誘導するのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項41】
手術部位で生じる手術癒合形成を減少させる方法であって:
こうした手術癒合形成の減少が必要な被験者に、手術癒合形成を減少させるのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項42】
インターロイキン2(IL-2)分泌を誘導する方法であって:
こうしたIL-2分泌が必要な被験者に、IL-2分泌を誘導するのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項43】
インターロイキン10(IL-10)分泌を誘導する方法であって:
こうしたIL-10分泌が必要な被験者に、IL-10分泌を誘導するのに有効な量で、請求項15、19、および21のいずれか1項記載の薬剤調製物を投与する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項44】
免疫調節ポリマー候補を選択する系であって:
免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するインプットシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプットを有する、予測モジュール;並びに
ポリマーシグナルを受け取るインプット、予測モジュールによって生成された三次元溶液コンホメーションが(i)複数の反復単位、(ii)複数の溶媒接近可能電荷、並びに(iii)各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択するロジック、および免疫調節ポリマー候補が解析モジュールによって選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、解析モジュール
を含んでなる、前記系。
【請求項45】
免疫調節ポリマー候補を選択するコンピュータ実行法であって:
免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルを受け取り;
免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;
免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションが、複数の反復単位、複数の溶媒接近可能電荷、並びに各々、幅約10Åおよび深さ約5Åである複数のドッキング部位を含むならば、免疫調節ポリマー候補を選択し;そして
免疫調節ポリマー候補が選択されるならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項46】
免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定するシグナルが、複数の免疫調節ポリマー候補を特定する、請求項45の方法。
【請求項47】
選択する免疫調節ポリマー候補が反復単位で構成される、請求項45の方法。
【請求項48】
反復単位が隣接している、請求項47の方法。
【請求項49】
反復単位が、介在配列により分離されている、請求項47の方法。
【請求項50】
選択する免疫調節ポリマー候補が反復電荷モチーフを有し、反復電荷モチーフが、連続する電荷モチーフの正電荷が約32Å未満で離れるようにポリマーに沿って配置されている、正電荷および負電荷である、請求項45の方法。
【請求項51】
選択する免疫調節ポリマー候補が糖主鎖を有する、請求項45の方法。
【請求項52】
選択する免疫調節ポリマー候補が多糖である、請求項45の方法。
【請求項53】
選択する免疫調節ポリマー候補がポリペプチド主鎖を有する、請求項45の方法。
【請求項54】
免疫細胞が、通常、活性化されない生理的条件下で、選択する免疫調節ポリマー候補を免疫細胞と接触させ;そして
免疫細胞の活性化マーカーを測定する
ことをさらに含んでなる、請求項45の方法。
【請求項55】
免疫調節ポリマー候補を設計するための系であって:
(a)化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するインプットシグナルを受け取るインプットであって、複数のバーチャルサブユニットが、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットが、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなる、前記インプット、(b)複数のバーチャルサブユニットから(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択するロジック、並びに(c)選択したバーチャルサブユニットシグナルを出力するアウトプットを有する、バーチャルサブユニット選択モジュール;
選択したバーチャルサブユニットシグナルを受け取る第一のインプットおよび少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプットであって、テンプレートが複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記インプット、(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換するロジック、並びに免疫調節ポリマー候補の一次構造を特定する、変換したテンプレートシグナルを出力するアウトプット、を有する、変換モジュール;
変換したテンプレートシグナルを受け取るインプット、免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成するロジック、および免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを特定するポリマーシグナルを出力するアウトプット、を有する、予測モジュール;並びに
ポリマーシグナルを受け取る第一のインプット、少なくとも1つのテンプレートを特定するインプットシグナルを受け取る第二のインプット、およびポリマーシグナルおよびテンプレート間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するインプットシグナルを受け取る第三のインプット、比較規準にしたがって、ポリマーシグナルおよびテンプレートを比較するロジック、並びにポリマーシグナルおよびテンプレートの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するアウトプットシグナルを出力するアウトプットを有する、比較モジュール
を含んでなる、前記系。
【請求項56】
免疫調節ポリマー候補を設計するコンピュータ実行法であって:
化学的化合物に対応する複数のバーチャルサブユニットを特定するシグナルを受け取り、複数のバーチャルサブユニットは、正電荷を有するバーチャルサブユニット、負電荷を有するバーチャルサブユニット、および電荷を持たないバーチャルサブユニットを含み、各バーチャルサブユニットは、コア、および所望により、コアに付着した少なくとも1つの荷電または中性置換基を含んでなり;
複数のバーチャルサブユニットから、(i)正電荷を有するバーチャルサブユニット、(ii)負電荷を有するバーチャルサブユニット、または(iii)(i)および(ii)両方を選択し;
少なくとも1つのテンプレートであって、複数の反復単位を有する参照免疫調節ポリマーの三次元溶液相の代表であり、各単位が、少なくとも、正電荷を有する第一のサブユニットおよび負電荷を有する第二のサブユニットにより提供される電荷モチーフを含んでなる、前記テンプレートを特定するシグナルを受け取り;
(i)テンプレートの電荷モチーフの正電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した正電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、(ii)テンプレートの電荷モチーフの負電荷を有するサブユニットを、複数のバーチャルサブユニットから選択した負電荷を有するバーチャルサブユニットと変換するか、または(iii)(i)および(ii)両方を変換すること、による一次構造を有する免疫調節ポリマー候補を生成し;
一次構造を有する免疫調節ポリマー候補の三次元溶液コンホメーションを生成し;
免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーション間の類似性を測定するよう選択した比較規準を特定するシグナルを受け取り;
比較規準にしたがって、免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションを比較し;そして
免疫調節ポリマー候補およびテンプレートの三次元溶液コンホメーションの比較が、比較規準を満たすならば、免疫調節ポリマー候補を特定するシグナルを出力する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項57】
参照免疫調節ポリマーがPS A2である、請求項56の方法。
【請求項58】
免疫調節ポリマー候補が多糖を含んでなる、請求項56の方法。
【請求項59】
免疫調節ポリマー候補が多糖である、請求項56の方法。
【請求項60】
免疫調節化合物候補がポリペプチドを含んでなる、請求項56の方法。
【請求項61】
免疫調節化合物候補がポリペプチドである、請求項56の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2009−102305(P2009−102305A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223701(P2008−223701)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【分割の表示】特願2002−547492(P2002−547492)の分割
【原出願日】平成13年12月5日(2001.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(501368643)ザ・ブリガーム・アンド・ウーメンズ・ホスピタル・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【分割の表示】特願2002−547492(P2002−547492)の分割
【原出願日】平成13年12月5日(2001.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(501368643)ザ・ブリガーム・アンド・ウーメンズ・ホスピタル・インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】
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