説明

免疫応答をモジュレートするための発現系

本発明は、標的抗原の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチドの発現に起因する、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質をモジュレートするための方法および組成物であって、ここで、ポリヌクレオチドにおける少なくとも1つのコドンを、交換されるコドンより、免疫応答を付与するために哺乳動物によって使用されるより高い、またはより低い選択性を有する同義のコドンに交換することによって、その免疫応答の質がモジュレートされる、方法および組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般的に遺伝子発現に関する。より詳しくは、本発明は、その応答が、標的抗原の少なくとも一部をコードするポリヌクレオチドの発現に起因する、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質をモジュレートするための方法に関し、それが交換するコドンより、免疫応答を付与するために哺乳動物によって使用されるより高いまたはより低い選択性を有する同義のコドンに、ポリヌクレオチドの少なくとも1つのコドンを交換することによって、質がモジュレートされる方法に関する。なおより詳しくは、本発明は、哺乳動物における抗原に対する免疫応答の質をモジュレートするためにそのコドン組成が改変されているタンパク質コードポリヌクレオチドを用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
形質転換細胞において異物異種遺伝子を発現させることは、今ではありふれている。例えばネズミおよびヒト遺伝子が含まれる多数の哺乳動物遺伝子が、細菌、酵母、昆虫、植物、および哺乳動物宿主細胞が含まれる様々な宿主細胞において首尾よく発現されている。しかし、発現系および組み換えDNA技術に関する急速に増えつつある知識にもかかわらず、選択された宿主細胞において異物または合成遺伝子を発現させようとする場合には、有意な障害がなおも存在する。例えば、合成遺伝子の翻訳は、たとえ強いプロモーターと共役させても、しばしば予想されるより進行がかなり遅い。同じことが宿主細胞に対して異物である外来遺伝子にも度々当てはまる。この予想より低い翻訳効率はしばしば、宿主細胞において高度に発現される遺伝子のコドン使用パターンと類似しないコドン使用パターンを有する遺伝子のタンパク質コード領域による。この点において、コドン利用は、異なる生物において非常に偏りがあってかなり多様であり、コドン使用の偏りはペプチド伸長速度を変更させうることが知られている。同様に、コドン使用パターンは、tRNAイソアクセプター(tRNA isoacceptor)の相対量に関連することや、大量対少量のタンパク質(protein of high versus low abundance)をコードする遺伝子は、そのコドン選択性に差を示すことも知られている。
【0003】
遺伝子発現に及ぼすコドン選択性現象の意味は、これらの現象がメッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率に影響を及ぼしうるという点において明白である。この点において、それに対して対応するイソtRNAが他のイソtRNAと比較して少ない量で存在する「まれなコドン」が翻訳されると、翻訳の際にリボソームを停止させる可能性があり、それによって新生ポリペプチド鎖の完成不全、および転写と翻訳の非カップリングが起こりうることは広く知られている。このように、外因性の遺伝子の発現は、生物の特定の宿主細胞または生物自身が、外因性の遺伝子の1つまたは複数のコドンに対応するイソtRNAの少ない量を有する場合には、重度に妨害される可能性がある。したがって、この分野における研究の主なねらいは、外因性の遺伝子が発現される特定の細胞に対するコドン選択性を最初に確認すること、および次にそれらの細胞における最適化発現のためにその遺伝子のコドン組成を変更することである。
【0004】
コドン最適化技術は、翻訳的に無効なタンパク質コード領域の翻訳速度論を改善するための技術として知られている。従来、これらの技術は、宿主細胞においてほとんどまたはめったに用いられないコドンを、宿主にとって好ましいコドンに交換することに基づいている。多くの生物の高度に発現された遺伝子に関するコドンの頻度は、文献から引き出すことができる(例えば、Nakamura et al., 1996, Nucleic Acids Res 24: 214-215(非特許文献1)を参照されたい)。これらの頻度は一般的に、好ましくは高度に発現されるその生物のタンパク質コード遺伝子のコレクションに対して、対応するアミノ酸をコードするために同義のコドンが用いられる機会の百分率として、「生物全体の平均に基づいて」表記される。
【0005】
典型的に、コドンは、以下のように分類される:(a)その使用頻度が、コドン使用にいかなる偏りも存在しない場合に予想される使用頻度の約4/3倍より上である場合には「一般的な」コドン(または「好ましい」コドン);(b)その使用頻度が、コドン使用にいかなる偏りも存在しない場合に予想される使用頻度の約2/3倍未満である場合には「まれな」コドン(または「好ましくない」コドン);および(c)その使用頻度が「一般的な」コドンと「まれな」コドンの使用頻度の中間である場合には、「中間の」コドン(または「あまり好ましくない」コドン)。アミノ酸はコドン2、3、4、または6個によってコードされうることから、コドン使用にいかなる偏りも存在しない場合に予測される、任意の選択されたコドンの使用頻度は、選択されたコドンと同じアミノ酸をコードする同義のコドンの数に依存するであろう。したがって、特定のアミノ酸に関して、コドンを「一般的」、「中間」、および「まれ」なカテゴリーに分類するための頻度の閾値は、そのアミノ酸に関する同義のコドンの数に依存するであろう。その結果、同義のコドンの選択肢6個を有するアミノ酸の場合、コドン使用にいかなる偏りも存在しない場合に予想されるであろうコドン使用頻度は、16%であり、このように、「一般的な」、「中間の」、および「まれな」コドンはそれぞれ、20%より上、10%から20%のあいだ、および10%より下の使用頻度を有するコドンとして定義される。同義のコドンの選択肢4個を有するアミノ酸の場合、コドン使用にいかなる偏りも存在しない場合に予想されるであろうコドン使用頻度は、25%であり、このように、「一般的な」、「中間の」、および「まれな」コドンはそれぞれ、33%より上、16〜33%のあいだ、および16%より下の使用頻度を有するコドンとして定義される。同義のコドンの選択肢3個を有する唯一のアミノ酸であるイソロイシンの場合、コドン使用にいかなる偏りも存在しない場合に予想されるであろうコドン使用頻度は、33%であり、このように、「一般的な」、「中間の」、および「まれな」コドンはそれぞれ、45%より上、20%から45%のあいだ、および20%より下の使用頻度を有するコドンとして定義される。同義のコドンの選択肢2個を有するアミノ酸の場合、コドン使用の偏りが存在しない場合に予想されるであろうコドン使用頻度は50%であり、このように、「一般的な」、「中間の」、および「まれな」コドンはそれぞれ、60%より上、30%から60%のあいだ、および30%未満の使用頻度を有するコドンとして定義される。このように、「一般的な」、「中間の」、および「まれな」クラス(またはそれぞれ、「好ましい」、「あまり好ましくない」、または「好ましくない」)へのコドンのカテゴリー分類は、生物全般(例えば、「ヒト全体」)に関するまたはあるクラスの生物全般(例えば、「哺乳動物全体」)に関するコドン使用の編集に慣例的に基づいている。例えば、哺乳動物細胞全般に関して好ましい、あまり好ましくない、および好ましくないコドンを開示するSeed(米国特許第5,786,464号(特許文献1)および第5,795,737号(特許文献2))を参照されたい。しかし、本発明者らは、WO 99/02694(特許文献3)およびWO 00/42190(特許文献4)において、1つの多細胞生物(例えば、哺乳動物または植物)の異なる細胞または組織において特定のイソtRNAの相対量に実質的な差が存在すること、およびこのことが、所定のコドン使用または組成を有するコード配列からのタンパク質翻訳において枢要な役割を果たすことを明らかにした。
【0006】
このように、多細胞生物の異なる細胞がコドン使用に同じ偏りを有するという当技術分野において認識された仮定とは対照的に、多細胞生物の1つの細胞タイプが、同じ生物のもう1つの細胞タイプとは異なるようにコドンを使用することが、初めて明らかとなった。言い換えれば、1つの生物の異なる細胞が、同じコドンに関して異なる翻訳効率を示しうること、および選択された細胞タイプにおいてどのコドンが好ましい、あまり好ましくない、または好ましくないかを予想することは不可能であることが発見された。したがって、選ばれた細胞タイプにおけるタンパク質産生を調節するために、または選ばれた細胞タイプにタンパク質産生を向けるために、細胞タイプのあいだのコドン翻訳効率の差を、遺伝子のコドン組成と共に利用することができると提唱された。
【0007】
ゆえに、特定の細胞タイプにおけるタンパク質コードポリヌクレオチドの発現を最適にするために、WO 99/02694(特許文献3)およびWO 00/42190(特許文献4)は、生物全体の平均に基づいて計算されるコドン頻度に頼るよりむしろ、その細胞タイプにおけるそれぞれのコドンに関する翻訳効率を最初に決定して、次にその決定に基づいてポリヌクレオチドをコドン改変することが必要であることを教示している。
【0008】
本発明者らはさらに、関心対象生物が呈する、または将来呈するであろう選択された表現型の質を増強または低減させるための戦略を、WO 2004/042059(特許文献5)において開示した。戦略は、単独で、または他の分子と会合して、関心対象生物において、選択された表現型を生物に与えるまたは付与する表現型関連ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのコドン改変を伴う。しかし、これまでの方法とは異なり、この戦略は、ある生物または生物のクラスにおける使用のその選択性に従って同義のコドンの序列を提供するデータに頼らない。同様に、生物または生物のクラスの1つまたは複数の細胞におけるその翻訳効率に従って同義のコドンの序列を提供するデータにも依拠しない。その代わりに、本発明は、生物もしくは生物のクラスが、またはその一部が、選択された表現型を提示するために用いるそれらの生物の選択性に基づく、表現型に関連するポリペプチドにおけるアミノ酸をコードする個々の同義のコドンの序列に依拠する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,786,464号
【特許文献2】米国特許第5,795,737号
【特許文献3】WO 99/02694
【特許文献4】WO 00/42190
【特許文献5】WO 2004/042059
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Nakamura et al., 1996, Nucleic Acids Res 24: 214-215
【発明の概要】
【0011】
本発明は、哺乳動物における抗原に対する液性免疫応答が含まれる免疫応答を呈示するための、哺乳動物の選択性に基づく、個々の同義のコドンの序列の実験的決定に、部分的に基づいて予測される。重要なことは、この序列は、例えばSeed(前記)によって開示されるような、高度に発現された哺乳動物タンパク質コード遺伝子のコレクションに対して、その対応するアミノ酸をコードするために用いられるコドンの頻度分析からの誘導可能なコドン頻度値の序列とは異なる。同様に、例えばCOS-1細胞および上皮細胞に関してWO 99/02694、ならびにCHO細胞に関してWO 2004/024915において開示されるように、特異的細胞タイプにおけるコドンの翻訳効率の分析から得られた翻訳効率値の序列とも異なる。実際に、本発明者らは、野生型配列において見いだされるコドンを、それらが交換するコドンより免疫応答の呈示に関して高い選択性を有するコドンに交換するための、野生型抗原コードポリヌクレオチドのコドン改変が、野生型配列について得られた免疫応答と比較して、コードされる抗原に対する免疫応答を有意に増強することを決定した。その結果、本発明は、哺乳動物における免疫応答を効率的に呈示するためにコドン最適化される抗原コードポリヌクレオチドの構築を初めて可能にする。
【0012】
このように、本発明の1つの局面では、ポリペプチドが標的抗原の少なくとも一部に対応する、同じポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドによって付与される質とは異なる質で、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答を付与するためのポリペプチドを産生することができる、合成ポリヌクレオチドを構築するための方法が提供される。これらの方法は一般的に、以下の段階を含む:(a)免疫応答の選択性の比較において、第一のコドンとは免疫応答の付与に関する異なる選択性(「免疫応答選択性」)を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの第一のコドンを選択する段階;および(b)コドンの免疫応答選択性の比較が表1によって表される、合成ポリヌクレオチドを構築するために、第一のコドンを同義のコドンに交換する段階。
【0013】
(表1)

【0014】
このように、標的抗原に対するより強いまたは増強された免疫応答(例えば、同一の条件下で親ポリヌクレオチドから産生された応答の少なくとも約110%、150%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、およびそのあいだの全ての整数の百分率である免疫応答)は、それが交換する第一のコドンより高い免疫応答選択性を有する同義のコドンを選択することによって達成されうる。特定の態様において、同義のコドンは、それが交換するコドンの免疫応答選択性より少なくとも約10%(および少なくとも約11%から少なくとも約1000%、およびそのあいだの全ての整数の百分率)高い、より高い免疫応答選択性を有するように選択される。このタイプの実例となる例において、第一のおよび同義のコドンは表2から選択される。
【0015】
(表2)


【0016】
このタイプの他の実例となる例において、第一のおよび同義のコドンは、表3から選択される。
【0017】
(表3)

【0018】
適切には、先に記した実例となる態様において、方法はさらに、免疫応答選択性の比較において第二のコドンよりも高い免疫応答を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの第二のコドンを選択する段階;および(b)コドンの免疫応答選択性の比較が表4によって表される、第二のコドンを同義のコドンに交換する段階を含む。
【0019】
(表4)


【0020】
逆に、標的抗原に対するより弱いまたは低減された免疫応答(例えば、同一の条件下で親ポリヌクレオチドから産生された応答の約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、1%未満およびそのあいだの全ての整数の百分率である免疫応答)は、それが交換する第一のコドンよりも低い免疫応答選択性を有する同義のコドンを選択することによって達成されうる。このタイプの特定の態様において、同義のコドンは、それが交換するコドンの免疫応答選択性の約90%未満である免疫応答選択性を有するように選択される。実例となる例において、第一のおよび同義のコドンは、表5から選択される。
【0021】
(表5)


【0022】
他の実例となる例において、第一のおよび同義のコドンは表6から選択される。
【0023】
(表6)

【0024】
適切には、先に記した実例となる例のいくつかにおいて、本方法はさらに、免疫応答選択性の比較において第二のコドンより低い免疫応答選択性を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの第二のコドンを選択する段階;および(b)コドンの免疫応答選択性の比較が表7によって表される、第二のコドンを同義のコドンに交換する段階、を含む。
【0025】
(表7)


【0026】
もう1つの局面において、本発明は、上記の方法のいずれか1つに従って構築された合成ポリヌクレオチドを提供する。
【0027】
本発明に従って、本明細書において記述される方法によって構築される合成ポリヌクレオチドは、哺乳動物において発現させ、標的抗原に対する免疫応答を誘発することに対して有用である。したがって、なおもう1つの局面において、本発明は、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続される本発明の合成ポリヌクレオチドを含むキメラ構築物を提供する。
【0028】
いくつかの態様において、キメラ構築物は、任意で薬学的に許容される賦形剤および/または担体を含む薬学的組成物の形状である。したがって、もう1つの局面において、本発明は、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によってその応答が付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答をモジュレートするために有用である薬学的組成物を提供する。これらの組成物は一般的に、キメラ構築物と薬学的に許容される賦形剤および/または担体とを含み、キメラ構築物は、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されて、および親ポリヌクレオチドにおける第一のコドンを、第一のコドンとは異なる免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドを含み、ならびに第一のおよび同義のコドンは表2、3、5、および6のいずれか1つに従って選択される。いくつかの態様において、組成物は、免疫応答の有効性を増強するアジュバントをさらに含む。いくつかの態様において、組成物は、経皮または皮膚投与、例えばバイオリスティックもしくはマイクロニードル送達または皮内注射による投与のために製剤化される。適切には、標的抗原に対してより強いまたは増強された免疫応答が望ましい態様において、第一のおよび同義のコドンは、表2または3に従って選択される。逆に、標的抗原に対するより弱いまたは低減された免疫応答が望ましい態様において、第一のおよび同義のコドンは、表5または6に従って選択される。
【0029】
なおもう1つの局面において、本発明は、その応答が、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質をモジュレートする方法を包含する。これらの方法は一般的に、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されて、および親ポリペプチドにおける第一のコドンを第一のコドンとは異なる免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって、親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドを哺乳動物に導入する段階を含み、ならびに第一のおよび同義のコドンは表2、3、5および6のいずれか1つに従って選択される。これらの方法において、合成ポリヌクレオチドの発現によって、同じ条件下で親ポリヌクレオチドの発現を通して得られた質とは異なる質の(例えば、より強いまたはより弱い)免疫応答が得られる。適切には、キメラ構築物は、哺乳動物の抗原提示細胞(例えば、樹状細胞、マクロファージ、ランゲルハンス細胞またはその前駆体)に構築物を送達することによって、哺乳動物に導入される。いくつかの態様において、キメラ構築物は、哺乳動物の皮膚および/または表皮に導入され(例えば、経皮または皮内投与によって)、この点において腹部が含まれる任意の適した投与部位が想定される。一般的に、免疫応答は、細胞性応答および液性免疫応答から選択される。いくつかの態様において、免疫応答は液性免疫応答である。他の態様において、免疫応答は細胞性免疫応答である。なお他の態様において、免疫応答は液性免疫応答および細胞性免疫応答である。
【0030】
関連する局面において、本発明は、その応答が、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を増強する方法を包含する。これらの方法は一般的に、第一の、および同義のコドンが表2または3に従って選択される、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されて、および親ポリペプチドにおける第一のコドンを第一のコドンより高い免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって、親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドを含むキメラ構築物を哺乳動物に導入する段階を含む。これらの方法において、合成ポリヌクレオチドの発現によって典型的に、同じ条件下で親ポリヌクレオチドの発現を通して得られる免疫応答より強いまたは増強された免疫応答が得られる。
【0031】
もう1つの関連する局面において、本発明は、その応答が標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を低減させる方法に拡大する。これらの方法は一般的に、以下を含む:第一のおよび同義のコドンが表5または6に従って選択される、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されて、および親ポリヌクレオチドの第一のコドンを第一のコドンより低い免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドを含むキメラ構築物を哺乳動物に投与する段階。これらの方法において、合成ポリヌクレオチドの発現によって典型的に、同じ条件下で親ポリヌクレオチドの発現を通して得られる免疫応答より弱いまたは低減された免疫応答が得られる。
【0032】
本発明のなおさらなる局面は、その応答が、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を増強する方法を包含する。これらの方法は一般的に、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続した第一のポリヌクレオチドを含む第一の核酸構築物と、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続して、第一のポリヌクレオチドのコドンに対応するイソtRNAをコードする第二のポリヌクレオチドを含む第二の核酸構築物とを哺乳動物に同時に導入する段階を含み、コドンは低いまたは中間の免疫応答選択性を有し、以下からなる群より選択される:

特定の態様において、コドンは、「低い」免疫応答選択性を有し、以下からなる群より選択される:


【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたALA E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-1、IgkS1-2、IgkS1-3、IgkS1-4、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図2】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたARG E7構築物および対照(IgkS1-5、IgkS1-6、IgkS1-7、IgkS1-8、IgkS1-9、IgkS1-10、IgkC1、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図3】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたASNおよびLYS E7構築物ならびに対照(IgkC1、IgkS1-12、IgkS1-31、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図4】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたASP E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-13、IgkS1-14、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図5】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたCYS E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-15、IgkS1-16、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図6】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたGLU E7構築物および対照(IgkS1-17、IgkS1-18、IgkC2、およびIgkC1)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図7】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたGLN E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-19、IgkS1-20、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図8】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたGLY E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-21、IgkS1-22、IgkS1-23、IgkS1-24、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図9】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたHIS E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-25、IgkS1-26、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図10】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたILE E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-27、IgkS1-28、IgkS1-29、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図11】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたLEU E7構築物および対照(IgkS1-50、IgkS1-51、IgkS1-52、IgkS1-53、IgkS1-54、IgkS1-55、IgkC3、およびIgkC4)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。LEU E7構築物は腫瘍形成性である(すなわち、野生型E7タンパク質をコードする)。
【図12】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたPHE E7構築物および対照(IgkS1-32、IgkS1-33、IgkC1およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。この配列において2つのLEU残基がPHEに変異しており、そのためPHE残基は1個ではなくて3個存在する。
【図13】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたPRO E7構築物および対照(IgkS1-56、IgkS1-57、IgkS1-58、IgkS1-59、IgkC3、およびIgkC4)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。PRO E7構築物は腫瘍形成性である(すなわち、野生型E7タンパク質をコードする)。
【図14】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたSER E7構築物および対照(IgkS1-34、IgkS1-35、IgkS1-36、IgkS1-37、IgkS1-38、IgkS1-39、IgkC1、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図15】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたTHR E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-40、IgkS1-41、IgkS1-42、IgkS1-43、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図16】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたTYR E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-44、IgkS1-45、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図17】実施例1および表12においてさらに定義される、分泌されたVAL E7構築物および対照(IgkC1、IgkS1-46、IgkS1-47、IgkS1-48、IgkS1-49、およびIgkC2)のヌクレオチド配列アラインメントを描写する概略図である。配列はpCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にライゲーションされる。
【図18】(a)ELISA、(b)メモリーB細胞ELISPOT、および(c)IFN-γELISPOTによって測定した、最適化されたおよび脱最適化されたE7構築物による遺伝子銃免疫に対する応答を示すグラフ表示である。(a)に関して、1群あたりマウス8匹を免疫して(3週間離して4回免疫)、最後の免疫後3週間目に血清を採取した;(左)E7タンパク質ELISA、(右)E7ペプチド101 ELISA。1試料あたりウェルを2個ずつ行った。(b)および(c)に関して、マウスを3週間離して2回免疫して、第2回の免疫後3週間目に脾臓を採取した。脾臓を分析前にプールした。メモリーB細胞およびIFN-γELISPOTをそれぞれ、1試料あたり3個ずつのウェルで2回および3回行った。1回の繰り返しあたり1群あたりマウス3匹を用いた。(b)および(c)において示される結果は、個々の実験からの結果であり、完全なデータセットの代表である。本明細書において含まれる特定のELISPOT実験データは、図20における対応するデータと共に収集され、ゆえに直接比較してもよい。対応のない両側のt-検定を用いて、改変型構築物を野生型と比較した。*** P<0.001、** 0.001≦P<0.01、* 0.01≦P≦0.05、ns=有意ではない(P>0.05)。(a)において、O1〜O3は、対応のない両側のt-検定によって測定した場合にMCとは有意差がなかった。wt=野生型コドン使用E7;O1〜O3=コドン最適化E7構築物1〜3;W=コドン脱最適化E7;MC=哺乳動物コンセンサスコドン使用E7。
【図19】(a)ELISA、(b)メモリーB細胞ELISPOT、および(c)IFN-γELISPOTによって測定した、最適化および脱最適化構築物による皮内注射による免疫に対する応答を示すグラフ表示である。(a)に関して1群あたりマウス8匹を免疫して(3週間離して4回免疫)、最後の免疫後3週間目に血清を採取した;(左)E7タンパク質ELISA、(右)E7ペプチド101 ELISA。1試料あたりウェルを2個ずつ行った。(b)および(c)に関して、マウスを3週間離して2回免疫して、第2回の免疫後3週間目に脾臓を採取した。脾臓を分析前にプールした。メモリーB細胞およびIFN-γELISPOTをそれぞれ、1試料あたり3個ずつのウェルで2回および3回行った。1回の繰り返しあたり1群あたりマウス3匹を用いた。(b)および(c)において示される結果は、個々の実験からの結果であり、完全なデータセットの代表である。本明細書において含まれる特定のELISPOT実験データは、図20における対応するデータと共に収集され、ゆえに直接比較してもよい。対応のない両側のt-検定を用いて、改変型構築物を野生型と比較した。*** P<0.001、** 0.001≦P<0.01、* 0.01≦P≦0.05、ns=有意ではない(P>0.05)。(a)において、O1〜O3は、対応のない両側のt-検定によって測定した場合にMCとは有意差がなかった。wt=野生型コドン使用E7;O1〜O3=コドン最適化E7構築物1〜3;W=コドン脱最適化E7;MC=哺乳動物コンセンサスコドン使用E7。
【図20】皮内注射(白い棒グラフ)または遺伝子銃免疫(黒い棒グラフ)によって様々なgD2構築物によって免疫したマウスの血清の、C-末端HisタグgD2trに対する結合を測定するELISAの結果を示すグラフ表示である。HisタグgDtrタンパク質は、非精製状態(CHO細胞上清)で用いられたこと、および対照上清に対する非特異的結合のバックグラウンドの読みを結果から差し引いたことに注意されたい。
【0034】
(表8)配列の簡単な説明





【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
1.定義
特に明記していなければ、本明細書において用いられる全ての科学技術用語は、本発明が属する当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書における記述と類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実践または試験において用いることができるが、好ましい方法および材料を記述する。本発明の目的に関して、以下の用語を以下に定義する。
【0036】
冠詞「1つの」および「1つの(an)」は、本明細書において、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つ)ことを指す。例として、「1つのエレメント」は、1つのエレメントまたは1つより多いエレメントを意味する。
【0037】
「約」は、参照の量、レベル、値、頻度、百分率、寸法、大きさ、または量に対して15%変動するに過ぎない、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%変動するに過ぎない量、レベル、値、頻度、百分率、寸法、大きさ、または量を意味する。
【0038】
「同時に投与」、「同時に投与する」、または「同時投与する」という用語等は、2つまたはそれより多い活性物質を含有する1つの組成物の投与、または個別の組成物としての各活性物質の投与、および/または有効な結果が、そのような全ての活性物質が1つの組成物として投与される場合に得られる結果と同等である、短い十分な期間内で同時発生、同時、または連続的のいずれかで個別の経路によって送達される各活性物質の投与を指す。「同時」とは、活性物質が実質的に同時に投与される、望ましくは同じ製剤において投与されることを意味する。「同時発生的」とは、活性物質が近い時間で投与されること、例えば1つの物質が、もう1つの物質の投与前または後に約1分以内から約1日以内で投与されることを意味する。いかなる同時発生時間も有用である。しかし、同時に投与されない場合にもこのことはしばしば当てはまり、物質は、約1分以内から約8時間以内に投与され、好ましくは約1時間未満〜約4時間未満で投与される。同時発生的に投与される場合、物質は適切には被験者の同じ部位に投与される。「同じ部位」という用語には正確に同じ位置が含まれるが、約0.5〜約15センチメートルの範囲内、好ましくは約0.5〜約5センチメートルの範囲内でありうる。本明細書において用いられるように「個別に」という用語は、物質がある間隔で、例えば約1日〜数週間、または数ヶ月の間隔で投与されることを意味する。活性物質は、いずれの順で投与されてもよい。本明細書において用いられる「連続的に」という用語は、例えばある間隔で、または数分、数時間、数日、もしくは数週間の間隔で、物質が順に投与されることを意味する。適切であれば、活性物質は定期的な繰り返しサイクルで投与されてもよい。
【0039】
本明細書において用いられるように、「シス作用配列」もしくは「シス調節領域」という用語、または類似の用語は、遺伝子配列の発現が少なくとも部分的にヌクレオチドの配列によって調節される、発現可能な遺伝子配列に由来する任意のヌクレオチドの配列を意味すると理解され得る。当業者は、任意の構造遺伝子配列の発現レベルおよび/または細胞タイプ特異性および/または発達特異性を活性化、沈黙化、増強、抑制、またはそうでなければ変更することができる可能性があることを承知している。
【0040】
本明細書を通して、文脈がそれ以外を必要とする場合を除き、「含む」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という言葉は、記載の段階もしくは要素または段階もしくは要素の群が含まれるが、他の任意の段階もしくは要素または段階もしくは要素の群を除外しないことを暗示すると理解されるであろう。
【0041】
本明細書において用いられるように、「キメラ構築物」は、異種核酸エレメントを有するポリヌクレオチドを指す。キメラ構築物には、関心対象の配列または遺伝子の発現を指示することができるアセンブリを指す「発現カセット」または「発現構築物」が含まれる。発現カセットには一般的に、本発明の合成ポリヌクレオチドに機能的に連結した(転写を指示するために)プロモーターなどの制御エレメントが含まれ、しばしばポリアデニル化配列も同様に含まれる。本発明の一定の態様において、キメラ構築物はベクター内に含有されてもよい。キメラ構築物の成分に加えて、ベクターには、1つまたは複数の選択可能なマーカー、ベクターを一本鎖DNAとして存在させるシグナル(例えば、M13複製開始点)、少なくとも1つのマルチクローニングサイト、および「哺乳動物」の複製開始点(例えば、SV40またはアデノウイルス複製開始点)が含まれてもよい。
【0042】
本明細書において用いられるように、「付与された免疫応答」、「付与されている免疫応答」等は、哺乳動物に対するポリヌクレオチドの導入後に起こるまたは起こるであろう、しかし導入の非存在下では起こらないであろう、標的抗原に対する免疫応答の一時的または永続的な変化を指す。典型的に、そのような一時的または永続的な変化は、哺乳動物内もしくはあるクラスの哺乳動物内の、細胞における、または少なくとも1つの細胞、細胞タイプ、もしくは細胞クラスにおけるそのポリヌクレオチド内に含有される遺伝情報の転写および/または翻訳の結果として起こり、ポリヌクレオチドが提供されていない類似の哺乳動物または哺乳動物のクラスから、ポリヌクレオチドが提供されている哺乳動物または哺乳動物のクラスを区別するために用いることができる。
【0043】
「対応する」または「対応している」とは、標的抗原におけるアミノ酸配列に対して実質的な類似性を示すアミノ酸配列をコードする抗原を意味する。一般的に、抗原は、標的抗原の少なくとも一部(例えば、標的抗原のアミノ酸配列の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%)に対して少なくとも約30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の類似性または同一性を示すであろう。
【0044】
免疫応答をモジュレートする、または疾患もしくは状態を処置もしくは予防するという文脈における「有効量」とは、モジュレーション、処置、または予防を達成するために有効である1回投与として、または一連の投与の一部のいずれかとして、それを必要とする個体に組成物のその量を投与することを意味する。有効量は、処置される個体の健康および身体的状態、処置される個体の分類学上の群、組成物の処方、医学的状況の査定、および他の関連する要因に応じて多様となるであろう。量は、ルーチンの試行を通して決定されうる比較的広い範囲に入ると予想される。
【0045】
「免疫応答を増強する」、「より強い免疫応答を産生する」等の用語は、標的抗原(例えば、異物もしくは疾患特異的抗原、または自己抗原)に対する動物の応答能を増加させることを指し、これは例えばそのような抗原を攻撃するようにプライミングされている動物の細胞の数、活性、および能力の増加、または標的抗原と免疫的に相互作用する動物中の抗体の力価もしくは活性の増加、を検出することによって決定されうる。免疫応答の強さは、抗体力価または末梢血リンパ球の直接測定;細胞障害性Tリンパ球アッセイ;ナチュラルキラー細胞障害性アッセイ;リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイが含まれる細胞増殖アッセイ;免疫細胞サブセットのイムノアッセイ;感作された被験者における抗原に対して特異的なTリンパ球アッセイ;細胞性免疫に関する皮膚試験等が含まれる標準的な免疫アッセイによって測定されうる。そのようなアッセイは当技術分野において周知である。例えばErickson et al., 1993, J. Immunol. 151:4189-4199;Doe et al., 1994, Eur. J. Immunol. 24:2369-2376を参照されたい。細胞性免疫応答を測定する最近の方法には、T細胞集団による細胞内サイトカインもしくはサイトカイン分泌の測定、またはエピトープ特異的T細胞の測定(例えば四量体技術によって)が含まれる(McMichael, A. J., and O'Callaghan, C. A., 1998, J. Exp. Med. 187(9)1367-1371;Mcheyzer- Williams, M. G., et al., 1996, Immunol. Rev. 150:5-21;Lalvani, A., et al., 1997, J. Exp. Med. 186:859-865によって論評)。例えば、イムノアッセイによって測定される免疫応答の強さのいかなる統計学的に有意な増加も、本明細書において用いられる「免疫応答の増強」または「免疫増強」と見なされる。増強された免疫応答はまた、発熱および炎症のみならず、全身および局所感染症の治癒、疾患における症状の低減、すなわち腫瘍の大きさの減少、らい病、結核、マラリア、ナフサ性潰瘍、ヘルペスまたは乳頭腫様いぼ、歯肉炎、アテローム性動脈硬化症、カポジ肉腫などのAIDSの合併症、気管支感染症等が含まれるがこれらに限定されるわけではない疾患または障害の症状の改善などの身体的発現によっても示される。そのような身体的発現はまた、本明細書において用いられる「増強された免疫応答」または「免疫増強」を包含する。対照的に、「免疫応答を低減する」、「より弱い免疫応答を産生する」等は、標的抗原に対する動物の応答能の減少を指し、これは例えば先に記述されたようなイムノアッセイを行うことによって、または身体的発現を査定することによって決定されうる。
【0046】
「発現」または「遺伝子発現」という用語は、RNAメッセージの産生および/またはRNAメッセージのタンパク質もしくはポリペプチドへの翻訳を指す。
【0047】
「発現ベクター」とは、ベクターによってコードされるタンパク質の合成を指示することができる任意の自律性の遺伝子エレメントを意味する。そのような発現ベクターは、当業者に公知である。
【0048】
「遺伝子」という用語は、遺伝子に対応するゲノムDNA領域のみならず、エキソンに対応するcDNA配列または産物の機能型をコードするように操作された組み換え型分子の双方が含まれるようにその最も広い文脈において用いられる。
【0049】
本明細書において用いられるように、「異種」という用語は、天然に存在しない、または異なる起源から得られるエレメントの組み合わせを指す。
【0050】
「免疫応答」または「免疫学的応答」は、リンパ球、抗原提示細胞、貪食細胞、顆粒球、および上記の細胞または肝臓によって産生される可溶性の高分子(抗体、サイトカイン、および補体が含まれる)の協調作用を指し、それによって癌様細胞、転移腫瘍細胞、転移乳癌細胞、侵襲性の病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、または自己免疫もしくは病的炎症の場合には、正常なヒト細胞もしくは組織の、体に対する選択的障害、体の破壊、または体からの消失が起こる。いくつかの態様において、「免疫応答」は、導入された本発明の合成ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに対する液性および/または細胞性免疫応答が個体において発生することを包含する。当技術分野において公知であるように、「液性免疫応答」という用語には、抗体分子によって媒介される免疫応答が含まれ、包含するが、「細胞性免疫応答」には、T-リンパ球および/または他の白血球によって媒介される免疫応答が含まれ、包含される。このように、本発明の合成ポリヌクレオチドによって刺激される免疫応答は、抗体の産生を刺激する免疫応答であってもよい(例えば、毒素および病原体に結合することによって細菌毒素およびウイルスなどの病原体が細胞に入って複製することを遮断する中和抗体、典型的に細胞を感染および破壊から保護する)。合成ポリヌクレオチドはまた、細胞障害性Tリンパ球(CTL)の産生を誘発してもよい。よって、免疫応答には、以下の効果の1つまたは複数が含まれてもよい:B細胞による抗体の産生;および/または関心対象の組成物またはワクチンに存在する抗原または複数の抗原に対して特異的に向けられるサプレッサーT細胞および/またはメモリー/エフェクターT-細胞の活性化。いくつかの態様において、これらの応答は、感染性を中和する、および/または抗体-補体もしくは抗体依存的細胞障害性(ADCC)を媒介して、免疫された宿主に対して保護を提供するために役立つ可能性がある。そのような応答は、当技術分野において周知である標準的なイムノアッセイおよび中和アッセイを用いて決定されうる(例えば、Montefiori et al., 1988, J Clin Microbiol. 26:231-235;Dreyer et al., 1999, AIDS Res Hum Retroviruses 15(17):1563-1571を参照されたい)。哺乳動物の生得の免疫系はまた、免疫細胞上のToll様受容体および類似の受容体分子の活性化によって病原性生物および癌細胞の分子特色を認識してこれに応答する。生得の免疫系が活性化されると、様々な非適合性の免疫応答細胞が活性化されて、例えば様々なサイトカイン、リンフォカイン、およびケモカインを産生する。生得の免疫応答によって活性化される細胞には、例えば単球およびプラズマ細胞系列(MDC、PDC)の未成熟および成熟樹状細胞のみならず、γ、δ、α、およびβT細胞ならびにB細胞等が含まれる。このように、本発明はまた、生得の応答および適応性の応答の双方を伴う免疫応答も企図する。
【0051】
組成物は、以下のいずれかを行うことができる場合に「免疫原性」である:a)個体において標的抗原(例えば、ウイルスまたは腫瘍抗原)に対して免疫応答を生成することができる;またはb)物質もしくは組成物が投与されていない場合に起こるであろう免疫応答を超えて、個体における免疫応答を再構成、強化、または維持することができる。物質または組成物は、1回または複数回投与された場合に、これらの基準のいずれかを達成することができれば、免疫原性である。
【0052】
「免疫モジュレーション」、「免疫応答をモジュレートする」等は、刺激に応答する免疫系のモジュレーションを指し、これには標的抗原に対する免疫応答の増加もしくは減少、または主に液性の免疫応答である免疫応答から、より細胞性の免疫応答である応答に免疫応答を変化させる、およびその逆であることを指す。例えば、免疫のための抗原の量を減少させると、主に液性の免疫応答から主に細胞性免疫応答に免疫系の偏りを変化させることができることは、当技術分野において公知である。
【0053】
「イソアクセプティングトランスファーRNA(isoaccepting transfer RNA)」または「イソtRNA」は、そのアンチコドンヌクレオチド配列が異なるが、同じアミノ酸に対して特異的である1つまたは複数のトランスファーRNA分子を意味する。
【0054】
本明細書において用いられるように、「哺乳動物」という用語は、ヒト、ならびにチンパンジー、他の無尾猿および有尾猿種などの非ヒト霊長類が含まれる他の霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、およびウマなどの農場動物;イヌおよびネコなどの飼い慣らされた哺乳動物;ならびにマウス、ラット、およびモルモットなどの齧歯類が含まれる実験動物、が含まれるがこれらに限定されるわけではない任意の哺乳動物を指す。用語は、特定の年齢を指すわけではない。このように、成体および新生個体の双方が範囲に入ると意図される。
【0055】
「モジュレートする」、「モジュレート」等は、選択された表現型(例えば、免疫応答)の質を直接または間接的に増加または減少させることを意味する。一定の態様において、「モジュレーション」、「モジュレートする」は、所望の/選択された免疫応答が、合成ポリヌクレオチドと同じ条件下で親ポリヌクレオチドを用いた場合より効率的である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれより多く)、より迅速である(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれより多く)、程度がより大きく(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれより多く)、および/またはより容易に誘導される(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%またはそれより多く)ことを意味する。他の態様において、「モジュレーション」または「モジュレートする」とは、親ポリヌクレオチドによって付与された主に抗体性の免疫応答から、同じ条件下で合成ポリヌクレオチドによって付与された主に細胞性の免疫応答に免疫応答を変化させることを意味する。なお他の態様において、「モジュレーション」または「モジュレートする」は、親ポリヌクレオチドによって付与された主に細胞性の免疫応答から、同じ条件下で合成ポリヌクレオチドによって付与された主に抗体性の免疫応答に免疫応答を変化させることを意味する。
【0056】
「天然の遺伝子」は、タンパク質を天然にコードする遺伝子を意味する。しかし、親ポリヌクレオチドは、天然に存在しないが組み換え技術によって操作されているタンパク質をコードすることがありうる。
【0057】
「5'非コード領域」という用語は、本明細書において、遺伝子のポリペプチド産物を含むアミノ酸残基をコードする配列以外の、発現可能な遺伝子の上流の領域に由来する全てのヌクレオチド配列を含めるように、その最も広い文脈において用いられ、5'非コード領域は、遺伝子の発現を少なくとも部分的に付与する、活性化する、またはそうでなければ促進する。
【0058】
本明細書において用いられる、「オリゴヌクレオチド」という用語は、ホスホジエステル結合(または関連するその構造変種もしくは合成類似体)によって連結された多数のヌクレオチド単位(デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその関連する構造変種もしくは合成類似体)で構成されるポリマーを指す。このように、「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的に、ヌクレオチドおよびそれらのあいだの連結が天然に存在するヌクレオチドポリマーを指すが、この用語にはまたペプチド核酸(PNS)、ホスホラミデート、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、2-O-メチルリボ核酸等が含まれるがこれらに限定されるわけではない様々な類似体がその範囲内に含まれると理解されるであろう。分子の正確な大きさは、特定の応用に応じて多様であってもよい。オリゴヌクレオチドは典型的に長さがむしろ短く、一般的に約10〜30ヌクレオチドであるが、この用語は任意の長さの分子を指すことができるものの、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、典型的に大きいオリゴヌクレオチドのために用いられる。
【0059】
「機能的に接続された」、「機能的に連結した」等という用語は、本明細書において、そのように記述された成分がその通常の機能を行うために形作られるエレメントの整列を指す。このように、コード配列に機能的に連結した所定のプロモーターは、適当な酵素が存在する場合に、コード配列の発現を行うことができる。プロモーターは、その発現を指示するように機能する限り、コード配列に接触している必要はない。このように、例えば介在する翻訳されていないが転写される配列が、プロモーター配列とコード配列のあいだに存在することができ、プロモーター配列はそれでもなおコード配列に「機能的に連結した」と見なされうる。ゆえに、「機能的に接続された」などの用語には、プロモーターの調節的制御下に構造遺伝子を置く段階が含まれ、次に、プロモーターが遺伝子の転写および任意で翻訳を制御する。異種プロモーター/構造遺伝子の組み合わせを構築する場合、遺伝子配列またはプロモーターとそれが天然の状況で制御する遺伝子、すなわち遺伝子配列またはプロモーターが由来する遺伝子とのあいだの距離とほぼ同じである遺伝子転写開始部位からの距離に、遺伝子配列またはプロモーターを配置することが一般的に好ましい。当技術分野において公知であるように、この距離の何らかの変動は、機能を喪失することなく適合させることができる。同様に、その制御下に置かれる異種遺伝子に対する調節配列エレメントの好ましい配置は、その天然の状況;すなわちそれが由来する遺伝子、におけるエレメントの配置によって定義される。
【0060】
「薬学的に許容される担体」とは、局所適用または全身投与において安全に用いられる可能性がある固体または液体の増量剤、希釈剤、または封入物質を意味する。
【0061】
「表現型」という用語は、生物、組織、もしくは細胞、または生物、組織、もしくは細胞のクラスの遺伝子構成(すなわち、遺伝子型)と環境との相互作用に一般的に起因する、生物、組織、もしくは細胞、または生物、組織、もしくは細胞のクラスの任意の1つまたは複数の検出可能な物理的もしくは機能的特徴、特性、属性、または形質を意味する。
【0062】
「表現型選択性」は、選択された表現型を産生するために、生物がその選択性をもってコドンを用いる、選択性を意味する。この選択性は、例えば、選択された表現型を産生するポリペプチドをコードするコドンをオープンリーディングフレームにおいて含むポリヌクレオチドによって産生可能である選択された表現型の質によって証明されうる。一定の態様において、使用される選択性は、それによってポリヌクレオチドが生物に導入される経路とは無関係である。しかし、他の態様において、使用される選択性は、生物へのポリヌクレオチドの導入経路に依存する。
【0063】
本明細書において用いられるように、「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、またはDNAを指定する。この用語は典型的に、長さが30ヌクレオチドより大きいオリゴヌクレオチドを指す。
【0064】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーならびにその変種および合成類似体を指す。このように、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の化学類似体などの合成の非天然のアミノ酸であるアミノ酸ポリマーのみならず、天然に存在するアミノ酸ポリマーに当てはまる。本明細書において用いられるように、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、産物の最小の長さに限定されない。このように、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体等はこの定義に含まれる。完全長のタンパク質およびその断片の双方が定義に包含される。この用語にはまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等が含まれる。いくつかの態様において、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、本来の配列に対する欠失、付加、および置換(一般的に本質的に保存的)などの修飾が含まれるタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的変異誘発を通してのように故意であってもよく、またはタンパク質を産生する宿主の変異もしくはPCR増幅による誤りを通してなどの偶発的であってもよい。
【0065】
「ポリペプチド変種」および「変種」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸残基の付加、欠失、または置換(一般的に本質的に保存的)によって参照ポリペプチドとは異なるポリペプチドを指す。典型的に、変種は、標的抗原に対する免疫応答の誘導における抗原性活性などの、参照ポリペプチドの所望の活性を保持する。一般的に、変種ポリペプチドは、参照ポリペプチドと「実質的に類似である」または「実質的に同一であり」、例えば2つの配列を整列させた場合に、50%より多く、一般的に60%〜70%より多く、さらにより特に少なくとも90%〜95%またはそれより多くなどの、80%〜85%またはそれより多いアミノ酸配列同一性または類似性を有する。しばしば、変種は、本明細書において説明されるように同数のアミノ酸を含み、置換を含む。
【0066】
「プライマー」とは、DNAの鎖を対にした場合に、適した重合化物質の存在下でプライマー伸長産物の合成を開始することができるオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは、好ましくは増幅における最大効率のために一本鎖であるが、または二本鎖であってもよい。プライマーは、重合化物質の存在下で伸長産物の合成をプライミングするために十分に長くなければならない。プライマーの長さは、適用、使用される温度、鋳型反応条件、他の試薬、およびプライマー源が含まれる多くの要因に依存する。例えば、標的配列の複雑度に応じて、オリゴヌクレオチドプライマーは典型的に、15から35個またはそれより多いヌクレオチドを含有するが、より少ないヌクレオチドを含有してもよい。プライマーは、約200ヌクレオチドから数キロベースまたはそれより多いヌクレオチドなどの大きいポリヌクレオチドでありうる。プライマーは、それがハイブリダイズするように設計されて、合成開始のための部位として役立つ鋳型上の配列と「実質的に相補的」であるように選択されてもよい。「実質的に相補的である」とは、プライマーが、標的ヌクレオチド配列とハイブリダイズするために十分に相補的であることを意味する。好ましくは、プライマーは、ハイブリダイズするように設計される鋳型とミスマッチを含有しないが、これは必須ではない。例えば、非相補的ヌクレオチドをプライマーの5'端に付着させてもよく、プライマー配列の残りは鋳型と相補的である。または、プライマー配列がそれにハイブリダイズする鋳型の配列と十分な相補性を有し、それによってプライマーの伸長産物を合成するための鋳型を形成する限り、非相補的ヌクレオチドまたは一連の非相補的ヌクレオチドをプライマーのあいだに介在させることができる。
【0067】
本明細書において「プロモーター」という言及は、その最も広い文脈においてとられ、これには、発達および/または環境刺激に応答して、または組織特異的もしくは細胞タイプ特異的に遺伝子発現を変更するCCAATボックス配列および追加の調節エレメント(すなわち、上流の活性化配列、エンハンサー、およびサイレンサー)の存在下または非存在下で、正確な転写の開始にとって必要であるTATAボックスが含まれる古典的なゲノム遺伝子の転写調節配列が含まれる。プロモーターは、通常、それが発現を調節する構造遺伝子の上流または5'に配置されるが必ずしもその必要はない。さらに、プロモーターを含む調節エレメントは、通常、遺伝子の転写開始部位の2 kb以内に配置される。本発明に従う好ましいプロモーターは、細胞における発現をさらに増強するために、および/またはそれが機能的に接続する構造遺伝子の発現の時期を変更するために、1つまたは複数の特異的調節エレメントの追加のコピーを含有してもよい。
【0068】
「質」という用語は、本明細書においてその最も広い意味において用いられ、これには、表現型の、程度(measure)強さ、強度、度合い、または階級、例えば優れたまたは劣った免疫応答が含まれる。
【0069】
本明細書において用いられる「配列同一性」という用語は、配列が比較ウインドウに対してヌクレオチド毎にまたはアミノ酸毎に同一である程度を指す。このように、「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウに対して2つの最適に整列された配列を比較する段階、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が双方の配列において起こる位置の数を決定して、マッチした位置の数を生じる段階、マッチした位置の数を比較ウインドウにおける位置の総数(すなわち、ウインドウのサイズ)によって除する段階、および結果に100を乗じて配列同一性の百分率を生じる段階によって計算される。本発明の目的に関して、「配列同一性」は、DNASISコンピュータープログラム(Hitachi Software engineering Co., Ltd., South San Francisco, California, USAから入手可能なウィンドウズ用バージョン2.5)によって、ソフトウェアに添付された参照マニュアルにおいて用いられる標準的なデフォルトを用いて計算される「マッチ百分率」を意味すると理解されるであろう。
【0070】
「類似性」は、表10において定義されるように、同一であるか、または保存的置換を構成するアミノ酸の数の百分率を指す。類似性は、GAP(Deveraux et al. 1984, Nucleic Acids Research 12, 387-395)などの配列比較プログラムを用いて決定されてもよい。このようにして、本明細書において引用された配列と類似または実質的に異なる長さの配列を、例えばGAPによって用いられる比較アルゴリズムによって決定されるギャップをアラインメントに挿入することによって比較してもよい。
【0071】
2つまたはそれより多いポリヌクレオチドまたはポリペプチドのあいだの配列の関係を記述するために用いられる用語には、「参照配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」、および「実質的な同一性」が含まれる。「参照配列」は、ヌクレオチドおよびアミノ酸残基を含めて、長さが少なくとも12個であるが、たびたび15〜18個、しばしば少なくとも25個の単量体単位である。2つのポリヌクレオチドは各々が(1)2つのポリヌクレオチドのあいだで類似である配列(すなわち、完全なポリヌクレオチド配列のごく一部);および(2)2つのポリヌクレオチド間で互いに異なる配列、を含む可能性があることから、2つ(またはそれより多い)ポリヌクレオチドのあいだの配列比較は、配列類似性の局所領域を同定および比較するために、「比較ウィンドウ」にわたって2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって典型的に行われる。「比較ウィンドウ」は、2つの配列を最適に整列させた後に同数の接触位置の参照配列と比較した場合に、接触位置少なくとも6個、通常約50〜約100個、より通常約100〜約150個の概念的セグメントを指す。比較ウィンドウは、2つの配列の最適なアラインメントに関して参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して約20%またはそれ未満の付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピューターによる実行によって、または検分および選択された様々な任意の方法によって生成された最善のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウに対して最高の百分率相同性が得られる)によって行われてもよい。例えば、Altschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25:3389によって開示されるBLASTプログラムファミリーを参照してもよい。配列分析の詳細な考察は、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15の単元19.3において見いだされうる。
【0072】
本明細書において用いられる「合成ポリヌクレオチド」という用語は、組み換えまたは合成技術によって形成されるポリヌクレオチドを指し、典型的に天然において通常見いだされないポリヌクレオチドが含まれる。
【0073】
本明細書において用いられる「同義のコドン」という用語は、もう1つのコドンとは異なるヌクレオチド配列を有するが、そのもう1つのコドンと同じアミノ酸をコードするコドンを指す。
【0074】
「処置」、「処置する」、「処置された」等は、治療的および予防的処置の双方が含まれることを意味する。
【0075】
「ベクター」とは、その中に核酸配列が挿入またはクローニングされてもよい例えばプラスミド、バクテリオファージ、または植物ウイルスに由来する核酸分子、好ましくはDNA分子を意味する。ベクターは好ましくは、1つまたは複数の独自の制限部位を含有して、標的細胞もしくは組織またはその前駆体細胞もしくは組織が含まれる既定の宿主細胞において自立複製を行うことができてもよく、またはクローニングされた配列が再生可能であるように、既定の宿主のゲノムに組み入れられることができてもよい。したがって、ベクターは、自立複製するベクター、すなわちその複製が染色体の複製とは無関係である染色体外実体として存在するベクター、例えば直線状または閉鎖の環状プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であってもよい。ベクターは、自己複製を保証する任意の手段を含有してもよい。または、ベクターは、宿主細胞に導入された場合にゲノムに組み入れられて、それが組み入れられている染色体と共に複製するベクターであってもよい。ベクター系は、1つのベクターまたはプラスミド、2つまたはそれより多いベクターまたはプラスミドを含んでもよく、これらは共に、宿主細胞のゲノムに導入される総DNAまたはトランスポゾンを含有する。ベクターの選び方は典型的に、その中にベクターが導入される宿主細胞とベクターの適合性に依存する。ベクターにはまた、適した形質転換体を選択するために用いることができる抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーが含まれてもよい。そのような耐性遺伝子の例は当業者に周知である。
【0076】
2.省略語
以下の省略語を本出願を通して用いる:
nt=ヌクレオチド
nts=複数のヌクレオチド
aa=アミノ酸
kb=キロベースまたはキロベース対
kDa=キロダルトン
d=日
h=時間
s=秒
【0077】
3.哺乳動物におけるコドンの免疫応答選択性の序列
本発明は、哺乳動物における個々の同義のコドンの免疫応答選択性の序列を初めて提供する。この序列は、各々が抗原性ポリペプチド(例えば、乳頭腫ウイルスE7ポリペプチド)の異なるコード配列を含む一連のレポーター構築物を含む構築物系を用いて決定されたが、個々の構築物のコード配列は、親コード配列に存在するイソアクセプターコドン(isoacceptor codon)の各々の他の種の代わりにイソアクセプターコドンの1つの種を置換することによって、抗原性ポリペプチドをコードする親コード配列とは区別される。したがって、個々の合成構築物のコード配列は、抗原性ポリペプチドにおける特定のアミノ酸残基のほとんどの例を、好ましくはあらゆる例をコードするために同じイソアクセプターコドン(例えば、全てのアラニンに関してAlaGCT)を用い、個々の合成構築物は、ポリペプチド配列の全域において特定のアミノ酸残基をコードするために用いられるイソアクセプターコドンの種が異なる。本明細書において用いられるように、抗原性ポリペプチドにおける特定のアミノ酸残基をコードするために用いられるイソアクセプターコドンの種は、「標準化コドン」と呼ばれる。実例となる合成構築物系を実施例1において記述し、これはアミノ酸をコードする同義のコドンの完全な組を範囲に含む。
【0078】
試験哺乳動物(例えば、マウス)を、その中で個々の哺乳動物が異なる合成構築物によって免疫される合成構築物系によって免疫して、抗原性ポリペプチドに対する宿主の免疫応答(例えば、液性免疫応答または細胞性免疫応答)を各構築物に関して決定した。本発明に従って、個々の合成構築物から得られた免疫応答の強さは、試験哺乳動物における対応する標準化コドンの免疫選択性との直接相関を提供する。したがって、試験哺乳動物における所定の構築物から産生された免疫応答が強くなれば、対応する標準化コドンの免疫選択性はより高くなる。
【0079】
そのように決定された免疫応答選択性を、Seed(米国特許第5,786,464号および第5,795,737号を参照されたい)によって決定された哺乳動物細胞全般に関するコドン使用頻度の値に由来する翻訳効率と比較すると、コドンの序列のいくつかの差が明らかとなる。簡便にするために、これらの差を表9において強調し、この中でSeedの「好ましい」コドンを青色の背景で強調し、Seedの「あまり好ましくない」コドンを緑色の背景で強調し、およびSeedの「好ましくないコドン」を灰色の背景で強調する。
【0080】
(表9)

【0081】
上記の表から明らかであるように、
(i)Seedによって、哺乳動物細胞において少なくとも1つの他の同義のコドンより高いコドン使用の序列を有すると考えられたいくつかのコドンは、実際にそのコドンまたは各々の他の同義のコドンより低い免疫応答選択性の序列を有する(例えば、AlaGCCは、AlaGCTより高いコドン使用の序列を有するが、より低い免疫応答選択性の序列を有し:GlyGGCは、GlyGGAより高いコドン使用の序列を有するが、より低い免疫応答選択性の序列を有し;PheTTCは、PheTTTより高いコドン使用の序列を有するが、より低い免疫応答選択性の序列を有し;SerAGCは、SerTCG、SerTCT、SerTCG、SerTCA、およびSerTCCのいずれか1つより高いコドン使用の序列を有するが、より低い免疫応答選択性の序列を有し;ならびにThrACCは、ThrACGより高いコドン使用の序列を有するが、より低い免疫応答選択性の序列を有する);
(ii)Seedによって、哺乳動物細胞において少なくとも1つの他の同義のコドンより低いコドン使用の序列を有すると考えられたいくつかのコドンは、実際にそのコドンまたは各々の他の同義のコドンより高い免疫応答選択性の序列を有する(例えば、AlaGCTは、AlaGCCより低いコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し:GlyGGAは、GlyGGCまたはGlyGGGより低いコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;PheTTTは、PheTTCより低いコドン使用序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;SerTCGは、SerAGCまたはSerTCCより低いコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;SerTCTおよびSerTCAは、SerAGCより低いコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;ならびにThrACGは、ThrACCより低いコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有する);
(iii)Seedによって哺乳動物細胞においてもう1つの同義のコドンより高いコドン使用の序列を有すると考えられたいくつかのコドンは、実際に、他の同義のコドンと同じ免疫応答選択性の序列を有する(例えば、GlnCAGは、GlnCAAより高いコドン使用の序列を有するが、同じ免疫応答選択性の序列を有し;HisCACは、HisCATより高いコドン使用の序列を有するが、同じ免疫応答選択性の序列を有し;LeuCTGは、LeuCTCより高いコドン使用の序列を有するが、同じ免疫応答選択性の序列を有し;LysAAGは、LysAAAより高いコドン使用の序列を有するが、同じ免疫応答選択性の序列を有し;ValGTGは、ValGTCより高いコドン使用の序列を有するが、同じ免疫応答選択性の序列を有する);
ならびに、(iv)Seedによって哺乳動物細胞において少なくとも1つの他の同義のコドンと同じコドン使用の序列を有すると考えられたいくつかのコドンは、実際に、そのコドンまたは各々の他の同義のコドンとは異なる免疫応答選択性の序列を有する(例えば、AlaGCTは、AlaGCAおよびAlaGCGと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;ArgCGA、ArgCGTおよびArgAGAは、ArgAGGおよびArgCGGと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;GluGAAは、GluGAGと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;GlyGGAは、GlyGGTと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;LeuCTAおよびLeuCTTは、LeuTTGおよびLeuTTAと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;ProCCTは、ProCCAまたはProCCGと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;SerTCGは、SerTCT、SerTCAおよびSerAGTのいずれか1つと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;SerTCTおよびSerTCAは、SerAGTと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;ThrACGは、ThrACAおよびThrACTのいずれか1つと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;ThrACGは、ThrACTと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有し;ValGTTは、ValGTAと同じコドン使用の序列を有するが、より高い免疫応答選択性の序列を有する)。
【0082】
したがって、本発明は、ポリヌクレオチドの少なくとも1つのコドンを、それが交換するコドンより高いまたは低い免疫応答産生の選択性を有する同義のコドンに交換することによって、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからの、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答のモジュレーションを初めて可能にする。ゆえに、いくつかの態様において、本発明は、同じポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドによって付与される免疫応答より増強されたまたはより強い免疫応答を付与するためにそこからポリペプチドを産生することができる合成ポリヌクレオチドを構築する方法を包含する。これらの方法は一般的に、第一のコドンより高い免疫応答選択性を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの1つのコドン(しばしば本明細書において任意で「第一のコドン」と呼ばれる)を表1から選択する段階、および合成ポリヌクレオチドを構築するために第一のコドンを同義のコドンに交換する段階を含む。第一のおよび同義のコドンの実例となる選択は、表2に従ってなされる。
【0083】
いくつかの態様において、第一のおよび同義のコドンの選択は、表3に従ってなされ、表3は、Seedによって開示されたコドン使用の序列に基づく選択を除外することを除き、表2と同じである。このタイプの実例となる例において、同義のコドンに交換するための第二のコドン(および望ましければその後のコドン)の選択は、表4に従ってなされる。
【0084】
同義のコドンが、その免疫応答選択性の序列(例えば、Ala、Ile、Leu、Pro、Ser、Thr、およびVal)に基づいて3つの順位(「高い」、「中間」、および「低い」順位)に分類される場合、選択される同義のコドンは、第一のコドンが低い順位のコドンである場合には高い順位のコドンである。しかし、これは必須ではなく、同義のコドンを、中間の順位のコドンから選択することができる。類似の免疫応答選択性を有する2つまたはそれより多い同義のコドンの場合、これらのコドンの任意の1つを用いて第一のコドンを交換することができると認識されるであろう。
【0085】
他の態様において、本発明は、同じポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドによって付与される免疫応答より低減されたまたは弱い免疫応答を付与するためにそこからポリペプチドを産生することができる合成ポリヌクレオチドを構築する方法を提供する。これらの方法は一般的に、第一のコドンより低い免疫応答選択性を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの第一のコドンを表1から選択する段階、および合成ポリヌクレオチドを構築するために第一のコドンを同義のコドンに交換する段階を含む。第一のおよび同義のコドンの実例となる選択は表5に従ってなされる。
【0086】
いくつかの態様において、第一のおよび同義のコドンの選択は、表6に従ってなされ、表6はSeedによって開示されたコドン使用の序列に基づく選択を除外することを除き、表5と同じである。このタイプの実例となる例において、同義のコドンに交換するための第二のコドン(および望ましければその後のコドン)の選択は、表7に従ってなされる。
【0087】
同義のコドンが先に記された3つの順位に分類される場合、第一のコドンが高い順位のコドンである場合、選択される同義のコドンは低い順位のコドンであることが好ましいが、これは必須ではなく、このように望ましければ、同義のコドンを中間の順位のコドンから選択することができる。
【0088】
一般的に、親ポリヌクレオチドによって産生される免疫応答と比較して合成ポリヌクレオチドから哺乳動物において産生される免疫応答の強さの差は、同義のコドンによって交換される第一/第二のコドンの数および第一/第二のコドンと同義のコドンのあいだの免疫応答選択性の序列の差に依存する。言い換えれば、そのような交換がより少なければ、および/または同義のコドンと第一/コドンコドンのあいだの免疫応答選択性の序列の差がより小さければ、合成ポリヌクレオチドによって産生される免疫応答と親ポリヌクレオチドによって産生される免疫応答の差はより小さくなる。逆に、そのような交換がより多ければ、および/または同義のコドンと第一/第二のコドンのあいだの免疫応答選択性の序列の差がより大きければ、合成ポリヌクレオチドによって産生される免疫応答と親ポリヌクレオチドによって産生される免疫応答の差はより大きくなる。
【0089】
親ポリヌクレオチドの全てのコドンを、第一/第二のコドンとは異なる(例えば、より高いまたはより低い)免疫応答選択性の序列を有する同義のコドンに交換することが好ましいが、必ずしもその必要はない。付与された免疫応答の変化は、部分的交換を行う場合であっても成就されうる。一般的に、交換段階は、親ポリヌクレオチドの第一/第二のコドンの少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、通常少なくとも約35%、40%、50%、および典型的に少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより多くに影響を及ぼす。より強いまたは増強された免疫応答が必要である態様において、一般的に、親ポリヌクレオチドにおけるいくつかの、好ましくはほとんどの、およびより好ましくは全ての低い順位のコドンを、中間のまたは好ましくは高い順位のコドンである同義のコドンに交換することが望ましい。典型的に、低い順位のコドンを中間または高い順位のコドンに交換すると、同じ条件下で親ポリヌクレオチドから産生された免疫応答と比較して、そのように構築された合成ポリヌクレオチドからの免疫応答の強さの増加が起こる。しかし、より強いまたはより増強された免疫応答が望ましい場合には、親ポリヌクレオチドにおけるいくつかの、好ましくはほとんどの、およびより好ましくは全ての中間の順位のコドンを、高い順位のコドンに交換することがしばしば望ましい。
【0090】
対照的に、より弱いまたは低減された免疫応答が必要であるいくつかの態様において、一般的に、親ポリヌクレオチドにおけるいくつかの、好ましくはほとんどの、およびより好ましくは全ての高い順位のコドンを、中間のまたは好ましくは低い順位のコドンである同義のコドンに交換することが望ましい。典型的に、高いコドンを中間または低い順位のコドンに交換すると、同じ条件下で親ポリヌクレオチドによって産生された免疫応答と比較して、そのように構築された合成ポリヌクレオチドからの免疫応答の強さの実質的な減少が起こるであろう。より弱いまたはより低減された免疫応答を付与することが望ましい特異的な態様において、一般的に、親ポリヌクレオチドにおけるいくつかの、好ましくはほとんどの、およびより好ましくは全ての中間の順位のコドンを低い順位のコドンに交換することが望ましい。
【0091】
より強いまたは増強された免疫応答を必要とする実例となる例において、第一/第二のコドンと同義のコドンのあいだの免疫応答選択性の序列の数および差は、合成ポリヌクレオチドによって付与される免疫応答が、同じ条件下で親ポリヌクレオチドによって付与される免疫応答の少なくとも約110%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%、またはそれより高くなるように選択される。逆に、より低いまたはより弱い免疫応答を必要とするいくつかの態様において、第一/第二のコドンと同義のコドンのあいだの表現型選択性の序列の数および差は、合成ポリヌクレオチドによって付与される免疫応答が、同じ条件下で親ポリヌクレオチドによって付与される免疫応答のわずか約90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、またはそれ未満であるように選択される。
【0092】
4.イソアクセプティングトランスファーRNAコードポリヌクレオチドの発現による哺乳動物における免疫応答のモジュレート
免疫の標的である細胞集団におけるイソtRNAのレベルを変化させることによって、標的抗原に対する免疫応答をモジュレートするために、第3章で考察したコドンの免疫応答選択性の序列を利用することが可能である。したがって、本発明はまた、その応答が標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を増強する方法も特色とする。これらの方法は一般的に、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続した第一のポリヌクレオチドを含む第一の核酸構築物を哺乳動物に導入する段階を含む。次に、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されて、および第一のポリヌクレオチドの低い免疫選択性コドンに対応するイソtRNAをコードする第二のポリヌクレオチドを含む第二の核酸構築物を哺乳動物に導入する。
【0093】
ゆえに、実際に、イソtRNAが、適切には

からなる群より選択される第一のポリヌクレオチドにおける低い免疫応答選択性のコドンに対応する場合、イソtRNAは第二の核酸構築物によって哺乳動物に導入される。特定の態様において、供給されたイソtRNAは、

からなる群より選択されてもよい「低い」免疫応答選択性のコドンを有するコドンに対して特異的である。第一の構築物(すなわち、抗原発現構築物)および第二の構築物(すなわち、イソtRNA発現構築物)は、同時または連続的に導入されてもよく(いずれかの順序で)、同じまたは異なる部位に導入されてもよい。いくつかの態様において、第一および第二の構築物は個別のベクターに含有される。他の態様において、それらは1つのベクターに含有される。望ましければ、第一のポリヌクレオチドの低い選択性のコドンに対応する異なるイソtRNAを各々が発現する2つまたはそれより多い第二の構築物を導入してもよい。第一および第二の核酸構築物は、任意の適した方法に従って構築されて、哺乳動物に同時または同時発生的に投与されてもよく、その実例となる例を本発明のキメラ構築物に関して以下に考察する。
【0094】
いくつかの態様において、個々のイソtRNA発現構築物が、他のイソtRNA発現構築物とは異なるイソtRNAを発現する、複数の異なるイソtRNA発現構築物(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれより多く)が、抗原発現構築物と同時または同時発生的に投与される。
【0095】
5.抗原
本発明において有用な標的抗原は典型的に、タンパク質様分子を含み、代表的な例にはポリペプチドおよびペプチドが含まれる。標的抗原は、宿主によって産生される内因性の抗原、または宿主に対して異物である外因性の抗原から選択されてもよい。適した内因性の抗原には、癌または腫瘍抗原が含まれるがこれらに限定されるわけではない。癌または腫瘍抗原の非制限的な例には、ABL1癌原遺伝子、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、原因不明の骨髄異形成、脱毛、胞状軟部肉腫、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星状細胞腫、毛細血管拡張性運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、頚部癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、結合組織形成性小細胞腫瘍、管癌、内分泌癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝臓外胆管癌、眼の癌、眼:黒色腫、網膜芽腫、ファロピー管癌、ファンコーニ貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸癌、胃腸-カルチノイド腫瘍、尿生殖器癌、生殖細胞腫瘍、妊娠栄養膜病、神経膠腫、婦人科癌、血液悪性疾患、ヘアリーセル白血病、頭頚部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー・フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性乳癌、腎臓の悪性棹状腫瘍、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口癌、多発性内分泌腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖障害、鼻癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽腫、神経線維腫症、ナイメーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼の癌、食道癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌、膵臓癌、鼻傍癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢神経外胚葉腫瘍、下垂体腫瘍、真性多血症、前立腺癌、まれな癌および関連障害、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、ロートムント-トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行上皮癌(膀胱)、移行上皮癌(腎-骨盤-尿道)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍から選択される癌または腫瘍からの抗原が含まれる。一定の態様において、癌または腫瘍は、黒色腫に関連する。黒色腫関連抗原の実例となる例には、メラノサイト分化抗原(例えば、gp100、MART、Melan-A/MART-1、TRP-1、Tyros、TRP2、MC1R、MUC1F、MUC1R、またはその組み合わせ)および黒色腫関連抗原(例えば、BAGE、GAGE-1、gp100In4、MAGE-1(例えば、GenBankアクセッション番号X54156およびAA494311)、MAGE-3、MAGE4、PRAME、TRP2IN2、NYNSO1a、NYNSO1b、LAGE1、p97黒色腫抗原(例えば、GenBankアクセッション番号M12154)p5タンパク質、gp75、癌胎児抗原、GM2およびGD2ガングリオシド、cdc27、p21ras、gp100Pmel117またはその組み合わせが含まれる。他の腫瘍特異的抗原には、etv6、aml1、シクロフィリンb(急性リンパ芽球性白血病);Ig-イディオタイプ(B細胞リンパ腫);E-カドヘリン、α-カテニン、β-カテニン、γ-カテニン、p120ctn(神経膠腫);p21ras(膀胱癌);p21ras(胆管癌);MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2(乳癌);p53、p21ras(頚部癌);p21ras、HER2/neu、c-erbB-2、MUCファミリー、Cripto-1タンパク質、Pim-1タンパク質(結腸癌);結腸直腸関連抗原(CRC)-CO17-1A/GA733、APC(結腸直腸癌);癌胎児抗原(CEA)(結腸直腸癌、絨毛癌);シクロフィリンb(上皮細胞癌);HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質(胃癌);α-フェトプロテイン(肝細胞癌);Imp-1、EBNA-1(ホジキンリンパ腫);CEA、MAGE-3、NY-ESO-1(肺癌);シクロフィリンb(リンパ様細胞由来白血病);MUCファミリー、p21ras(骨髄腫);HER2/neu、c-erbB-2(非小細胞肺癌);Imp-1、EBNA-1(鼻咽頭癌);MUCファミリー、HER2/neu、c-erbB-2、MAGE-A4、NY-ESO-1(卵巣癌);前立腺特異抗原(PSA)およびその抗原性エピトープPSA-1、PSA-2、およびPSA-3、PSMA、HER2/neu、c-erbB-2、ga733糖タンパク質(前立腺癌);HER2/neu、c-erbB-2(腎臓癌);ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質などのウイルス産物(頚部および食道の扁平細胞癌);NY-ESO-1(精巣癌);およびHTLV-1エピトープ(T細胞白血病))が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0096】
異物または外因性の抗原は、適切には病原性生物の抗原から選択される。実例となる病原性生物には、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、藻類、原生生物、およびアメーバが含まれるがこれらに限定されるわけではない。実例となるウイルスには、麻疹、ムンプス、風疹、灰白髄炎、A型、B型肝炎(例えば、GenBankアクセッション番号E02707)、およびC型肝炎(例えば、GenBankアクセッション番号E06890)のみならず、他の肝炎ウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス(例えば、4型および7型)、狂犬病(例えば、GenBankアクセッション番号M34678)、黄熱病、エプスタイン-バーウイルス、および乳頭腫ウイルスなどの他のヘルペスウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス(例えば、GenBankアクセッション番号E07883)、デング(例えば、GenBankアクセッション番号M24444)、ハンタウイルス、センダイウイルス、RSウイルス、オルトミクソウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ビスナウイルス、サイトメガロウイルス、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)(例えば、GenBankアクセッション番号U18552)が含まれるがこれらに限定されるわけではない疾患の原因であるウイルスが含まれる。そのようなウイルスに由来する任意の適した抗原が本発明の実践において有用である。例えば、HIVに由来する実例となるレトロウイルス抗原には、gag、pol、およびenv遺伝子の遺伝子産物などの抗原、Nefタンパク質、逆転写酵素、および他のHIV成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。肝炎ウイルス抗原の実例となる例には、B型肝炎ウイルスのS、M、およびLタンパク質、B型肝炎ウイルスのプレS抗原、および他の肝炎、例えばC型肝炎ウイルスRNAなどのA型、B型、およびC型肝炎ウイルス成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。インフルエンザウイルス抗原の実例となる例には、 血液凝集素およびノイラミニダーゼなどの抗原、および他のインフルエンザウイルス成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。麻疹ウイルス抗原の実例となる例には、麻疹ウイルス融合タンパク質などの抗原および他の麻疹ウイルス成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。風疹ウイルス抗原の実例となる例には、E1およびE2タンパク質などの抗原、ならびに他の風疹ウイルス成分;VP7scなどのロタウイルス抗原および他のロタウイルス成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。サイトメガロウイルス抗原の実例となる例には、エンベロープ糖タンパク質Bなどの抗原および他のサイトメガロウイルス抗原成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。RSウイルス抗原の非制限的な例には、RSV融合タンパク質、M2タンパク質などの抗原、および他のRSウイルス抗原成分が含まれる。単純ヘルペスウイルス抗原の実例となる例には、前初期タンパク質、糖タンパク質Dなどの抗原、および他の単純ヘルペスウイルス抗原成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。水痘帯状疱疹ウイルス抗原の非制限的な例には、9PI、gpIIなどの抗原および他の水痘帯状疱疹ウイルス抗原成分が含まれる。日本脳炎ウイルス抗原の非制限的な例には、タンパク質E、M-E、M-E-NS 1、NS 1、NS 1-NS2A、80%Eなどの抗原、および他の日本脳炎ウイルス抗原成分が含まれる。狂犬病ウイルス抗原の代表的な例には、狂犬病糖タンパク質、狂犬病核タンパク質などの抗原、および他の狂犬病ウイルス抗原成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。乳頭腫ウイルス抗原の実例となる例には、L1およびL2カプシドタンパク質のみならず、頚部癌に関連するE6/E7抗原が含まれるがこれらに限定されるわけではない。ウイルス抗原の追加の例に関しては、Fundamental Virology, Second Edition, eds. Fields, B.N. and Knipe, D.M., 1991, Raven Press, New Yorkを参照されたい。
【0097】
真菌の実例となる例には、アクレモニウム種(Acremonium spp.)、アスペルギルス種(Aspergillus spp.)、バシディオボールス種(Basidiobolus spp.)、ビポラーリス種(Bipolaris spp.)、ブラストミセス・デルマチディス(Blastomyces dermatidis)、カンジダ種(Candida spp.)、クラドフィアロフォラ・カリオニイ(Cladophialophora carrionii)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、コニディオボルス種(Conidiobolus spp.)、クリプトコックス種(Cryptococcus spp.)、カービュラリア種(Curvularia spp.)、表皮菌種(Epidermophyton spp.)、エキソフィアラ・ジェアンセルメイ(Exophiala jeanselmei)、エクセロヒルム種(Exserohilum spp.)、フォンセセア・コンパクタ(Fonsecaea compacta)、フォンセセア・ペドロソイ(Fonsecaea pedrosoi)、フザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・ソラニ(Fusarium solani)、ゲオトリクム・カンジダム(Geotrichum candidum)、ヒストプラスマ・カプスラーツム変種カプスラーツム(Histoplasma capsulatum var. capsulatum)、ヒストプラスマ・カプスラーツム変種デュボイシイ(Histoplasma capsulatum var. duboisii)、ホルテア・ウェルネキイ(Hortaea werneckii)、ラカジア・ロボイ(Lacazia loboi)、ラシオジプロジア・テオブロマエ(Lasiodiplodia theobromae)、レプトスフェリア・セネガレンシス(Leptosphaeria senegalensis)、マズレラ・グリセア(Madurella grisea)、マズレラ・ミセトマチス(Madurella mycetomatis)、でん風菌(Malassezia furfur)、小胞子菌種(Microsporum spp.)、ネオテスツジナ・ロサチイ(Neotestudina rosatii)、オニココラ・カナデンシス(Onychocola canadensis)、パラコクシジオイデス・ブラシリエンシス(Paracoccidioides brasiliensis)、フィアロフォラ・ベルコサ(Phialophora verrucosa)、ピエドライア・ホルタエ(Piedraia hortae)、ピエドラ・イアホルタエ(Piedra iahortae)、ピチリアシス・ベルシコロ(Pityriasis versicolor)、シュードアレシェリア・ボイディイ(Pseudallescheria boydii)、ピレノカエタ・ロメロイ(Pyrenochaeta romeroi)、リゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)、スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)、シタリジウム・ジミジアツム(Scytalidium dimidiatum)、スポロスリクス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)、白癬菌種(Trichophyton spp.)、トリコスポロン種(Trichosporon spp.)、接合菌(Zygomycete fungi)、アブシディア・コリムビフェラ(Absidia corymbifera)、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)およびリゾプス・アリズス(Rhizopus arrhizus)が含まれる。このように、本発明の組成物および方法において用いることができる代表的な真菌抗原には、カンジダ真菌抗原成分;熱ショックタンパク質60(HSP60)などのヒストプラスマ真菌抗原、および他のヒストプラスマ真菌抗原成分;被膜多糖類などのクリプトコックス真菌抗原および他のクリプトコックス真菌抗原成分;球状体抗原などのコクシジオイデス真菌抗原および他のコクシジオイデス真菌抗原成分;ならびにトリコフィチンなどの白癬菌真菌抗原および他のコクシジオイデス真菌抗原成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0098】
細菌の代表的な例には、ジフテリア(例えば、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheria))、百日咳(例えば、百日咳菌(Bordetella pertussis)、GenBankアクセッション番号M35274)、破傷風(例えば、破傷風菌(Clostridium tetani)、GenBankアクセッション番号M64353)、結核(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis))、細菌性肺炎(例えば、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae))、コレラ(例えば、コレラ菌(Vibrio cholerae))、炭疽(例えば、炭疽菌(Bacillus anthracis))、チフス、ペスト、細菌性赤痢(例えば、赤痢菌(Shigella dysenteriae))、ボツリヌス中毒(例えば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum))、サルモネラ症(例えば、GenBankアクセッション番号L03833)、消化性潰瘍(例えば、ピロリ菌(Helicobacter pylori))、レジオネラ病、ライム病(例えば、GenBankアクセッション番号U59487)が含まれるがこれらに限定されるわけではない疾患の原因である細菌が含まれる。他の病原性細菌には、大腸菌(Escherichia coli)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、および化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)が含まれる。このように、本発明の組成物および方法において用いることができる細菌抗原には、百日咳毒素、線維様血液凝集素、ペルタクチン、FM2、FIM3、アデニレートシクラーゼなどの百日咳細菌抗原、および他の百日咳細菌抗原成分;ジフテリア毒素またはトキソイドなどのジフテリア細菌抗原および他のジフテリア細菌抗原成分;破傷風毒素またはトキソイドなどの破傷風細菌抗原および他の破傷風細菌抗原成分;Mタンパク質などのブドウ球菌細菌抗原および他のブドウ球菌細菌抗原成分;リポ多糖類などのグラム陰性桿菌細菌抗原および他のグラム陰性細菌抗原成分;ミコール酸、熱ショックタンパク質65(HSP65)、30 kDa主要分泌タンパク質、抗原85Aなどの結核菌細菌抗原および他のマイコバクテリア抗原成分;ピロリ菌細菌抗原成分、ニューモリシン、肺炎球菌被膜多糖類などの肺炎球菌細菌抗原および他の肺炎球菌細菌抗原成分;被膜多糖類などのインフルエンザ菌細菌抗原および他のインフルエンザ菌細菌抗原成分;炭疽保護抗原などの炭疽菌細菌抗原および他の炭疽菌細菌抗原成分;rompAなどのリケッチア細菌抗原および他のリケッチア細菌抗原成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。同様に、他の任意の細菌、マイコバクテリア、マイコプラズマ、リケッチア、またはクラミジア抗原も本明細書において記述される細菌抗原と共に含まれる。
【0099】
原虫の実例となる例には、マラリア(例えば、GenBankアクセッション番号X53832)、鉤虫、オンコセルカ症(例えば、GenBankアクセッション番号M27807)、住血吸虫症(例えば、GenBankアクセッション番号LOS 198)、トキソプラスマ症、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、ジアルジア鞭毛虫症(GenBankアクセッション番号M33641)、アメーバ症、フィラリア症(例えば、GenBankアクセッション番号J03266)、ボレリア症、および旋毛虫症が含まれるがこれらに限定されるわけではない、疾患の原因である原虫が含まれる。このように本発明の組成物および方法において用いることができる原虫抗原には、メロゾイト表面抗原、スポロゾイト表面抗原、スポロゾイト周囲タンパク質抗原、生殖母細胞/生殖体表面抗原、血液段階抗原pf 155/RESAなどのマラリア原虫抗原および他のマラリア原虫抗原成分;SAG-1、p30などのトキソプラズマ抗原および他のトキソプラズマ抗原成分;グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、パラミオシンなどの住血吸虫抗原および他の住血吸虫抗原成分;gp63、リポホスホグリカンおよびその関連タンパク質などのリーシュマニア主要抗原および他のリーシュマニア抗原ならびに他のリーシュマニア抗原成分;ならびに75〜77 kDa抗原、56 kDa抗原などのクルーズトリパノソーマ抗原、および他のトリパノソーマ抗原成分が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0100】
本発明はまた、抗原としての毒素成分も企図し、その実例となる例には、ブドウ球菌エンテロトキシン、毒性ショック症候群毒素;レトロウイルス抗原(例えば、HIVに由来する抗原)、連鎖球菌抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン-A(SEA)、ブドウ球菌エンテロトキシン-B(SEB)、ブドウ球菌エンテロトキシン1-3(SE1-3)、ブドウ球菌エンテロトキシン-D(SED)、ブドウ球菌エンテロトキシン-E(SEE)のみならずマイコプラズマ、マイコバクテリウムおよびヘルペスウイルスに由来する毒素が含まれる。
【0101】
6.合成ポリヌクレオチドの構築
1つのコドンをもう1つのコドンに交換することは、当技術分野において公知の標準的な方法を用いて達成されうる。例えば、親ポリヌクレオチドのコドン改変は、例えばオリゴヌクレオチド特異的変異誘発、縮重オリゴヌクレオチドによる変異誘発、および領域特異的変異誘発が含まれるいくつかの公知の変異誘発技術を用いて行うことができる。実例となるインビトロ変異誘発技術は、例えば、米国特許第4,184,917号、第4,321,365号、および第4,351,901号、またはAusubel, et al(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, Inc. 1997)の関連する章において、およびSambrook, et al(MOLECULAR CLONING. A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Press, 1989)の関連する章において記述されている。インビトロ変異誘発の代わりに、例えば米国特許第4,293,652号において記述されるように容易に入手可能な機構を用いて合成ポリヌクレオチドをデノボで合成することができる。しかし、本発明は、合成ポリヌクレオチドを構築する任意の1つの特定の技術に依存せず、また向けられないことに注意すべきである。
【0102】
親ポリヌクレオチドは、適切には天然遺伝子である。しかし、親ポリヌクレオチドは、天然に存在しないが、組み換え技術を用いて操作されていてよい。親ポリヌクレオチドは、哺乳動物または他の動物が含まれるがこれらに限定されるわけではない真核細胞または原核細胞生物、ならびに酵母、細菌、原虫、およびウイルスなどの病原性生物などの任意の適した起源から得ることができる。
【0103】
本発明はまた、標的抗原の1つまたは複数の望ましい部分をコードする合成ポリヌクレオチドを企図する。いくつかの態様において、合成ポリヌクレオチドは、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、300、400、500、600、700、800、900個もしくは1000個、または少なくとも約2000、3000、4000個、もしくは5000個の接触アミノ酸残基、または完全長の標的抗原に存在するアミノ酸のほぼ総数までのアミノ酸残基をコードする。いくつかの態様において、合成ポリヌクレオチドは、標的抗原の同じまたは異なる複数の部分をコードする。このタイプの実例となる例において、合成ポリヌクレオチドは、マルチエピトープ融合タンパク質をコードする。多数の要因が部分の大きさの選び方に影響を及ぼしうる。例えば、合成ポリヌクレオチドによってコードされる個々の部分の大きさは、それがT細胞エピトープおよび/またはB細胞エピトープの大きさ、およびそのプロセシング必要条件を含めるように、または対応するように、選ぶことができる。当業者は、クラスI拘束T細胞エピトープが典型的に長さがアミノ酸残基8〜10個であり、非天然の隣接残基の隣に置かれる場合、そのようなエピトープはそれらが確実に効率よくプロセシングされて提示されるために、一般的に天然の隣接アミノ酸残基2〜3個を必要としうることを認識する。天然に隣接する残基が、ある役割を果たし得ると考えられるが、クラスII拘束T細胞エピトープは通常、長さがアミノ酸12〜25個の範囲であり、効率的なタンパク質分解プロセシングのため、天然に隣接する残基を必要としない可能性がある。クラスII拘束エピトープのもう1つの重要な特色は、それらが一般的に、クラスII MHC抗原のいずれかの側面上で保存された構造に配列非依存的に会合することによって、このコア安定化結合のいずれかの側面で隣接配列を有するクラスII MHC分子に特異的に結合するアミノ酸残基9〜10個のコアを中心に含有する点である。このように、クラスII拘束エピトープの機能的領域は典型的に、長さがアミノ酸残基約15個未満である。直線状のB細胞エピトープおよびクラスII拘束エピトープのようにそのプロセシングに影響を及ぼす要因の大きさは、そのようなエピトープがしばしばアミノ酸残基15個より大きさが小さいことからかなり可変的である。前述から、標的抗原の個々の部分の大きさは、アミノ酸残基少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30個であることが有利であるが必須ではない。適切には、個々の部分の大きさは、アミノ酸残基約500、200、100、80、60、50、40個に過ぎない。一定の有利な態様において、個々の部分の大きさは、ペプチド内に含有されるT細胞および/またはB細胞エピトープの抗原提示細胞による提示にとって十分である。
【0104】
当業者によって認識されるように、一般的に、その抗原に対する免疫応答を産生するために標的抗原と正確に同じアミノ酸配列を共有するポリペプチドによって免疫する必要はない。ゆえに、いくつかの態様において、合成ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、望ましくは、標的抗原の少なくとも一部の変種である。「変種」ポリペプチドには、1つもしくは複数のアミノ酸残基の欠失(いわゆる切断)もしくは標的抗原のN-末端および/もしくはC-末端に対する付加;標的抗原における1つもしくは複数の部位での1つもしくは複数のアミノ酸の欠失もしくは付加;または標的抗原における1つもしくは複数の部位での1つもしくは複数のアミノ酸の置換、によって標的抗原に由来するタンパク質が含まれる。本発明によって包含される変種ポリペプチドは、デフォルトパラメータを用いて本明細書において他所で記述される配列アラインメントプログラムによって決定した場合に、標的抗原またはその一部のアミノ酸配列と、少なくとも40%、50%、60%、70%、一般的に少なくとも75%、80%、85%、典型的に少なくとも約90%〜95%、またはそれより多く、およびより典型的に少なくとも約96%、97%、98%、99%、またはそれより多くの配列類似性または同一性を有するであろう。標的抗原の変種は、アミノ酸残基1000、500、400、300、200、100、50、もしくは20個もの多く、または適切にはアミノ酸残基1〜15個も少なく、6〜10個などの1〜10個もの少なく、5個も少なく、4、3、2個も少なく、またはアミノ酸残基1個でさえその抗原と異なってもよい。
【0105】
標的抗原の少なくとも一部に対応する変種ポリペプチドは、標的抗原アミノ酸配列と比較してその配列に沿って様々な位置で保存的アミノ酸置換を含有してもよい。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に交換されている置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されており、これらは一般的に以下のように細分類されうる。
【0106】
酸性:残基は、生理的pHでHイオンの損失により陰電荷を有し、残基は、ペプチドが生理的pHで水性培地に存在する場合に、それが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて表面位置を求めるように水溶液によって誘引される。酸性側鎖を有するアミノ酸には、グルタミン酸およびアスパラギン酸が含まれる。
【0107】
塩基性:残基は、生理的pHでまたはその1もしくは2 pH単位内(例えば、ヒスチジン)でHイオンとの会合により陽電荷を有し、残基は、ペプチドが生理的pHで水性培地に存在する場合にそれが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて表面位置を求めるように水溶液によって誘引される。塩基性側鎖を有するアミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。
【0108】
荷電:残基は生理的pHで帯電しており、ゆえに、酸性または塩基性側鎖を有するアミノ酸(すなわち、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、およびヒスチジン)が含まれる。
【0109】
疎水性:残基は、生理的pHでは帯電せず、残基は、ペプチドが水性培地に存在する場合にそれが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて内部位置を求めるように水溶液によって反発される。疎水性側鎖を有するアミノ酸には、チロシン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、およびトリプトファンが含まれる。
【0110】
中性/極性:残基は、生理的pHでは帯電しないが、残基は水溶液によって十分に反発されず、そのためペプチドが水性培地に存在する場合にそれが含有されるペプチドのコンフォメーションにおいて内部位置を求めるであろう。中性/極性の側鎖を有するアミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、システイン、ヒスチジン、セリン、およびトレオニンが含まれる。
【0111】
この記述はまた、たとえ極性基を欠損している場合であっても、その側鎖が疎水性を付与するほど十分に大きくないことから、一定のアミノ酸を「小さい」と特徴付けする。プロリンを例外として、「小さい」アミノ酸は、少なくとも1つの極性基が側鎖に存在する場合には炭素4個またはそれ未満を有するアミノ酸であり、極性基が存在しない場合には、炭素3個またはそれ未満を有するアミノ酸である。小さい側鎖を有するアミノ酸には、グリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンが含まれる。遺伝子コードされる二次アミノ酸プロリンは、ペプチド鎖の二次コンフォメーションに対するその公知の効果により特殊な例である。プロリンの構造は、その側鎖がαアミノ基の窒素のみならずα炭素にも結合しているという点において、他の全ての天然に存在するアミノ酸とは異なる。しかし、いくつかのアミノ酸類似性行列(例えばDayhoff et al. (1978) A model of evolutionary change in proteins. Matrices for determining distance relationships In M. O. Dayhoff, (ed.), Atlas of protein sequence and structure, Vol. 5, pp. 345-358, National Biomedical Research Foundation, Washington DC;およびGonnet et al., 1992, Science 256(5062): 144301445によって開示される、例えば、PAM120行列およびPAM250行列)は、グリシン、セリン、アラニン、およびトレオニンと同じ群にプロリンを含めている。ゆえに、本発明の目的に関して、プロリンは「小さい」アミノ酸として分類される。
【0112】
極性または非極性としての分類にとって必要な誘引または反発の程度は任意であり、ゆえに、本発明によって具体的に企図されるアミノ酸は、多様に分類されている。具体的に名称を挙げられていないほとんどのアミノ酸は、公知の挙動に基づいて分類されうる。
【0113】
アミノ酸残基はさらに、残基の側鎖置換基に関して、環状または非環状、および芳香族または非芳香族、自明分類(self explanatory classification)、ならびにその大小で細分類することができる。残基は、追加の極性置換基が存在する場合には、カルボキシル炭素を含めて全体で炭素原子4個またはそれ未満を含有する場合に小さいと見なされ、それ以外の場合には3個またはそれ未満を含有する場合に小さいと見なされる。当然、小さい残基は常に非芳香族である。その構造特性に応じて、アミノ酸残基は、2つまたはそれより多いクラスに入ってもよい。天然に存在するタンパク質アミノ酸に関して、このスキームに従う細分類を表10に提示する。
【0114】
(表10)

【0115】
保存的アミノ酸置換には、側鎖に基づく群分けが含まれる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群はグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり;ならびにイオウ含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。例えば、ロイシンをイソロイシンまたはバリンに、アスパラギン酸塩をグルタミン酸塩に、トレオニンをセリンに置換する場合、またはアミノ酸を構造的に関連するアミノ酸に類似の置換を行場合、得られた変種ポリペプチドの特性に対して主要な効果を有しないであろうと予測することは妥当である。保存的置換を、実例となる置換という見出しの下に、以下の表11に示す。より好ましい置換を、好ましい置換という見出しの下に示す。本発明の範囲内に入るアミノ酸置換は、一般的に、(a)置換領域におけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ、を維持することに対して、その影響が有意に異ならない置換を選択することによって達成される。置換が導入された後、変種を生物活性に関してスクリーニングする。
【0116】
(表11)実例となるおよび好ましいアミノ酸置換

【0117】
または、保存的置換を作出するための類似のアミノ酸を、側鎖の同一性に基づいて3つのカテゴリーに群分けすることができる。Zubay, G., Biochemistry, third edition, Wm.C. Brown Publishers (1993)において記述されるように、第一の群には、グルタミン酸、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、ヒスチジンが含まれ、これらは全てが荷電側鎖を有し;第二の群には、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、グルタミン、アスパラギンが含まれ;および第三の群には、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、メチオニンが含まれる。
【0118】
本発明はさらに、調節ポリヌクレオチドに機能的に連結された本発明の合成ポリヌクレオチドを含むキメラ構築物を企図する。調節ポリヌクレオチドは適切には、関心対象生物またはその生物の細胞における発現にとって適合性であろう転写および/または翻訳制御配列を含む。典型的に、転写および翻訳調節制御配列には、プロモーター配列、5'非コード領域、転写調節タンパク質または翻訳調節タンパク質の機能的結合部位などのシス調節領域、上流のオープンリーディングフレーム、リボソーム結合配列、転写開始部位、翻訳開始部位、ならびに/またはリーダー配列、終止コドン、翻訳終止部位、および3'非翻訳領域をコードするヌクレオチド配列が含まれるがこれらに限定されるわけではない。当技術分野において公知の構成的または誘導型プロモーターが本発明によって企図される。プロモーターは天然に存在するプロモーター、または1つより多いプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターのいずれかであってもよい。本発明によって企図されるプロモーター配列は、関心対象生物に対して本来であってもよく、または選ばれた生物においてその領域が機能的である代わりの起源に由来してもよい。プロモーターの選び方は、意図される宿主、または細胞もしくは組織タイプに応じて異なる。例えば、哺乳動物における発現のために用いることができるプロモーターには、カドミウムなどの重金属に応答して誘導されうるメタロチオネインプロモーター、β-アクチンプロモーターのみならず、SV40ラージT抗原プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期(IE)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびHPVプロモーター、中でも特にHPV上流調節領域(URR)などのウイルスプロモーターが含まれる。これらのプロモーターは全て十分に記述されており、当技術分野において容易に入手可能である。
【0119】
エンハンサーエレメントも同様に本明細書において哺乳動物構築物の発現レベルを増加させるために用いてもよい。例には、例えば、Dijkema et al.(1985, EMBO J. 4:761)において記述されるSV40初期遺伝子エンハンサー、例えばGorman et al,(1982, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777)において記述されるラウス肉腫ウイルスの長末端反復(LTR)に由来するエンハンサー/プロモーター、および例えばCMVイントロンA配列に含まれるエレメントなどの、Boshart et al.(1985, Cell 41:521)において記述されるヒトCMVに由来するエレメントが含まれる。
【0120】
キメラ構築物はまた、3'非翻訳配列を含んでもよい。3'非翻訳配列は、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を行うことができる他の任意の調節シグナルを含有するDNAセグメントを含む遺伝子のその一部を指す。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3'端に対するポリアデニル酸路の付加を行うことを特徴とする。ポリアデニル化シグナルは一般的に、規範的な型である5'-AATAAA-3'に対する相同性の存在によって認識されるが、変種はまれではない。3'非翻訳調節DNA配列には、好ましくはヌクレオチド約50〜1,000個が含まれ、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を行うことができる他の任意の調節シグナルに加えて転写および翻訳終止配列を含有してもよい。
【0121】
いくつかの態様において、キメラ構築物はさらに、構築物を含有する細胞を選択することができるように選択可能なマーカー遺伝子を含有する。選択遺伝子は当技術分野において周知であり、関心対象細胞における発現にとって適合性であろう。
【0122】
しかし、異種システムにおけるタンパク質コードポリヌクレオチドの発現は現在は周知であり、本発明は、任意の特定のベクター、転写制御配列、またはポリヌクレオチドの発現のための技術に向けられず、または依存しないことは理解されるであろう。むしろ、本明細書において記載される方法に従って調製された合成ポリヌクレオチドは、任意の適した構築物またはベクターの形で任意の適した様式で哺乳動物に導入されてもよく、合成ポリヌクレオチドは、任意の従来の様式で公知の転写調節エレメントと共に発現されてもよい。
【0123】
加えて、アジュバントをコードする配列が含まれるキメラ構築物を構築することができる。特に適しているのは、細菌ADPリボシル化毒素の無毒変異体、例えばジフテリア毒素、百日咳毒素(PT)、コレラ毒素(CT)、大腸菌熱不安定毒素(LT1およびLT2)、シュードモナスエンテロトキシンA、ボツリヌス菌C2およびC3毒素のみならず、ウェルシュ菌、C.スピリフォルマ(C. spiriforma)、およびC.ディフィシレ(C. difficile)からの毒素である。いくつかの態様において、キメラ構築物には、米国特許第6,818,222号において記述されるLT-K63およびLT-R72無毒変異体などの大腸菌の熱不安定毒素の無毒変異体のコード配列が含まれる。いくつかの態様において、アジュバントは、クラスI MHC経路を通して標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドのプロセシングおよび提示を増加させて、それによってポリペプチドに対する細胞性免疫の増強に至るタンパク質脱安定化エレメントである。実例となるタンパク質脱安定化エレメントには、関心対象ポリペプチドのアミノ末端での脱安定化アミノ酸、PEST領域またはユビキチンから選択されてもよいがこれらに限定されない細胞内タンパク質分解シグナルまたはデグロンが含まれる。例えば、ポリペプチドのコード配列は、そのように改変されたタンパク質が、例えばBachmair et al.、米国特許第5,093,242号、およびVarshavsky et al.、米国特許第5,122,463号によって開示されている、N-末端則経路に供されるように、そのアミノ末端で脱安定化アミノ酸を含めるように改変することができる。いくつかの態様において、脱安定化アミノ酸は、イソロイシンおよびグルタミン酸、特にヒスチジン、チロシン、およびグルタミンから、およびより特にアスパラギン酸、アスパラギン、フェニルアラニン、ロイシン、トリプトファン、およびリジンから選択される。一定の態様において、脱安定化アミノ酸はアルギニンである。いくつかのタンパク質において、アミノ末端の端部は、タンパク質のコンフォメーション(すなわち、その三次構造または四次構造)の結果として曖昧である。これらの場合において、タンパク質をN-末端則経路に供するためには、アミノ末端のより広範囲の変更が必要である可能性がある。例えば、アクセスできないアミノ末端のために、1つのアミノ末端残基を単に付加または交換するだけでは不十分である場合、いくつかのアミノ酸(基質タンパク質に対するユビキチン接合部位であるリジンが含まれる)を当初のアミノ末端に付加して、操作されたアミノ末端のアクセス可能性および/またはセグメント移動性を増加させてもよい。いくつかの態様において、ポリペプチドのアミノ末端領域をコードする核酸配列を、適切な状況においてリジン残基を導入するように改変することができる。これは、「万能脱安定化セグメント(universal destabilizing segment)」をコードするDNA構築物を使用することによって最も簡便に達成されうる。万能脱安定化セグメントは、特にセグメントとして移動可能で、1つまたは複数のリジン残基を含有するポリペプチド構造をコードする核酸構築物を含み、リジン残基のコドンは、タンパク質コード合成ポリヌクレオチドのコード配列内に構築物が挿入された場合に、リジン残基が完全なアミノ末端分解シグナルの第二の決定因子として役立つように、コードされたタンパク質のアミノ末端に空間的に十分に近位に存在するように構築物内に配置される。ポリペプチドコード合成ポリヌクレオチドの5'部分にそのような構築物を挿入すると、脱安定化に関する適切な状況においてコードされたポリペプチドにリジン残基(または複数のリジン残基)を提供する。他の態様において、ポリペプチドは、プロリン、グルタミン酸、セリン、およびトレオニンから選択されるアミノ酸に富むPEST領域を含有するように改変され、この領域は任意で電気的に陽性の側鎖を含むアミノ酸によって隣接される。この点において、細胞内半減期が約2時間未満であるタンパク質のアミノ酸配列は、例えばRogers et al.(1986, Science 234 (4774): 364-368)によって示されるように、プロリン(P)、グルタミン酸(E)、セリン(S)、およびトレオニン(T)に富む1つまたは複数の領域を含有することは公知である。なお他の態様において、ポリペプチドを、非改変ポリペプチドと比較して、その細胞内タンパク質分解速度が増加、増強、またはそうでなければ上昇している改変ポリペプチドを産生するために、ユビキチンまたはその生物活性断片に共役させる。
【0124】
1つまたは複数のアジュバントポリペプチドを、標的抗原の少なくとも一部に対応する「抗原性」ポリペプチドと同時発現させてもよい。一定の態様において、アジュバントおよび抗原性ポリペプチドは、1つまたは複数のアジュバントポリペプチドと1つまたは複数の抗原性ポリペプチドとを含む融合タンパク質の形で同時発現されてもよい。または、アジュバントおよび抗原性ポリペプチドは、個別のタンパク質として同時発現されてもよい。
【0125】
さらに、例えば1つのまたは1つより多い標的抗原に由来する、例えば関心対象の多数の抗原/エピトープをコードするキメラ抗原コード遺伝子配列が含まれるキメラ構築物を構築することができる。一定の態様において、例えばEMCV IRES等を用いて1つのmRNAから多数のアジュバントおよび/または抗原性ポリペプチドを発現させるマルチシストロニックカセット(例えば、バイシストロニックカセット)を構築することができる。他の態様において、アジュバントおよび/または抗原性ポリペプチドは、独立した転写調節エレメントに機能的に接続した個別のコード配列においてコードされうる。
【0126】
いくつかの態様において、本発明のキメラ構築物は、適切には自己複製染色体外ベクター(例えば、プラスミド)および宿主ゲノムに組み入れられるベクターから選択される発現ベクターの形である。このタイプの実例となる例において、発現ベクターは、シミアンウイルス40(SV40)またはウシ乳頭腫ウイルス(BPV)などのウイルスベクターであり、これは染色体外エレメントとしての複製能を有する(Eukaryotic Viral Vectors, Cold Spring Harbor Laboratory, Gluzman ed., 1982;Sarver et al , 1981 , Mol. Cell. Biol. 1 :486)。ウイルスベクターには、細胞にポリヌクレオチドまたはトランスジーンを導入して発現を指示するために改変された、レトロウイルス(レンチウイルス)、アデノ随伴ウイルス(例えば、AAVベクターについて記述するOkada, 1996, Gene Ther. 3:957-964;Muzyczka, 1994, J. Clin. Invst. 94:1351;米国特許第6,156,303号;第6,143,548号、第5,952,221号を参照されたい;同様に米国特許第6,004,799号;第5,833,993号を参照されたい)、アデノウイルス(例えば、米国特許第6,140,087号;第6,136,594号;第6,133,028号;第6,120,764号を参照されたい)、レオウイルス、ヘルペスウイルス、ロタウイルスゲノム等が含まれる。レトロウイルスベクターには、ネズミ白血病ウイルス(例えば、米国特許第6,132,731号を参照されたい)、テナガザル白血病ウイルス(例えば、米国特許第6,033,905号を参照されたい)、サル免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、米国特許第5,985,641号を参照されたい)、およびその組み合わせに基づくベクターが含まれうる。
【0127】
ベクターにはまた、インビボで動物細胞(例えば、幹細胞)に遺伝子を効率よく送達するベクターが含まれる(例えば、米国特許第5,821,235号および第5,786,340号;Croyle et al., 1998, Gene Ther. 5:645;Croyle et al., 1998, Pharm. Res. 15:1348;Croyle et al., 1998, Hum. Gene Ther. 9:561;Foreman et al., 1998, Hum. Gene Ther. 9:1313;Wirtz et al., 1999, Gut 44:800)。インビボ送達にとって適したアデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスベクターは、例えば、米国特許第5,700,470号、第5,731,172号、および第5,604,090号において記述される。インビボ送達にとって適した追加のベクターには、単純ヘルペスウイルスベクター(例えば、米国特許第5,501,979号を参照されたい)、レトロウイルスベクター(例えば、米国特許第5,624,820号、第5,693,508号、および第5,674,703号;ならびにWO92/05266およびWO92/14829を参照されたい)、ウシ乳頭腫ウイルス(BPV)ベクター(例えば、米国特許第5,719,054号を参照されたい)、CMVに基づくベクター(例えば、米国特許第5,561,063号を参照されたい)、ならびにパルボウイルス、ロタウイルス、およびノーウォークウイルスベクターが含まれる。レンチウイルスベクターは、分裂する細胞のみならず、非分裂細胞に感染させるために有用である(例えば、米国特許第6,013,516号を参照されたい)。
【0128】
関心対象抗原をコードする核酸分子を送達するために利用される追加のウイルスベクターには、ワクシニアウイルスおよび鶏痘ウイルスが含まれるポックスウイルス科に由来するベクターが含まれる。例として、キメラ構築物を発現するワクシニアウイルス組み換え体は、以下のように構築されうる。抗原コード配列を最初に、それがワクシニアプロモーターおよびチミジンキナーゼ(TK)をコードする配列などの隣接するワクシニアDNA配列に近接するように、適切なベクターに挿入する。次に、このベクターを用いて、ワクシニアに同時に感染した細胞にトランスフェクトさせる。相同組み換えは、ウイルスゲノムに、ワクシニアプロモーターと関心対象のコード配列をコードする遺伝子とを挿入するために役立つ。得られたTK-組み換え体は、5-ブロモデオキシウリジンの存在下で細胞を培養する段階およびそれに対して抵抗性のウイルスプラークを採取する段階によって選択されうる。
【0129】
または、鶏痘およびカナリア痘ウイルスなどのアビポックスウイルスも同様に、遺伝子を送達するために用いることができる。哺乳動物病原体からの免疫原を発現する組み換え型アビポックスウイルスは、非トリ種に投与した場合に保護免疫を付与することが知られている。アビポックスベクターを用いることは、アビポックス属のメンバーが感受性のあるトリ種に限って生産的に複製することができ、ゆえに哺乳動物細胞において感染性ではないことから、ヒトおよび他の哺乳動物種において特に望ましい。組み換え型アビポックスウイルスを産生するための方法は当技術分野において公知であり、ワクシニアウイルスの産生に関して先に記述したように遺伝子組み換えを使用する。例えば、WO 91/12882;WO 89/03429;およびWO 92/03545を参照されたい。
【0130】
Michael et al., J. Biol. Chem. (1993) 268:6866-6869およびWagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1992) 89:6099-6103において記述されるアデノウイルスキメラベクターなどの分子コンジュゲートベクターも同様に、遺伝子送達のために用いることができる。
【0131】
シンドビスウイルス(SIN)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)に由来するベクターなどの、しかしこれらに限定されないアルファウイルス属のメンバーも同様に、本発明のキメラ構築物を送達するためのウイルスベクターとして利用される。本発明の方法の実践にとって有用なシンドビスウイルス由来ベクターの記述に関しては、Dubensky et al.(1996, J. Virol. 70:508-519;および国際公開番号WO 95/07995、WO 96/17072)のみならず、Dubensky, Jr., T. W., et al、米国特許第5,843,723号およびDubensky, Jr., T. W.、米国特許第5,789,245号を参照されたい。このタイプの実例となるベクターは、シンドビスウイルスおよびベネズエラウマ脳炎ウイルスに由来する配列を含むキメラアルファウイルスベクターである。例えば、Perri et al.(2003, J. Virol. 77: 10394-10403)および国際公開番号WO 02/099035、WO 02/080982、WO 01/81609、およびWO 00/61772を参照されたい。
【0132】
他の実例となる態様において、レンチウイルスベクターは、選択された細胞または組織に本発明のキメラ構築物を送達するために使用される。典型的に、これらのベクターは、5'レンチウイルスLTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、1つまたは複数の関心対象遺伝子に機能的に連結したプロモーター、第二鎖DNA合成の開始点、および3'レンチウイルスLTRを含み、レンチウイルスベクターは、核輸送エレメントを含有する。核輸送エレメントは、関心対象コード配列の上流(5')または下流(3')のいずれに位置してもよい(例えば、本発明の合成GagまたはEnv発現カセット)。例えば、HIV、HIV-1、HIV-2、FIV、BIV、EIAV、MVV、CAEV、およびSIVからなる群より選択されるレンチウイルスが含まれる広く多様なレンチウイルスを本発明の状況において利用してもよい。レンチウイルスベクターの実例となる例は、PCT公開番号WO 00/66759、WO 00/00600、WO 99/24465、WO 98/51810、WO 99/51754、WO 99/31251、WO 99/30742、およびWO 99/15641において記述されている。望ましくは、第三世代のSINレンチウイルスを用いる。第三世代SIN(自己不活化)レンチウイルスの販売元には、Invitrogen(ViraPower Lentiviral Expression System)が含まれる。レンチウイルスベクターを構築、トランスフェクション、収集、および使用するための詳細な方法は、例えばhttp://www.invitrogen.com/Content/Tech- Online/molecular_biology/manuals__p-ps/virapower_lentiviral_system_man.pdf.で入手可能なInvitrogen技術マニュアル「ViraPower Lentiviral Expression System version B 050102 25-0501」において与えられる。レンチウイルスベクターは、遺伝子移入のための効率的な方法として出現した。生物学的安全性特徴の改善により、これらのベクターは、生物学的安全性レベル2(BL2)での使用に適するようになった。多数の安全性特色が第三世代のSIN(自己不活化)ベクターに組み入れられている。ウイルス3' LTR U3領域の欠失により、完全長のウイルスRNAを転写することができないプロウイルスが得られる。加えて、多数の不可欠な遺伝子がトランスで提供され、1ラウンドの感染および組み込みのみを行うことができるウイルス株を生じる。レンチウイルスベクターは、以下が含まれるいくつかの長所を有する:1)両栄養性エンベロープタンパク質を用いるベクターのシュードタイピングによってそれらは実質的にいかなる細胞タイプにも感染することができる;2)ニューロンが含まれる静止期の、分裂後の、分化した細胞への遺伝子送達が証明されている;3)その低い細胞毒性はトランスジーン送達系の中でも独自である;4)ゲノムへのウイルス組み込みによって長期間のトランスジーン発現が許容される;5)そのパッケージング能(6〜14 kb)は他のレトロウイルス、またはアデノ随伴ウイルスベクターよりかなり大きい。この系の能力の最近の証明において、GFPを発現するレンチウイルスベクターは、ネズミ幹細胞を感染させるために用いられ、それによって生存子孫、生殖系列伝搬、ならびにレポーターのプロモーターおよび組織特異的発現が得られた(Ailles, L. E. and Naldini, L., HIV-1-Derived Lentiviral Vectors. In: Trono,D. (Ed.), Lentiviral Vectors, Springer-Verlag, Berlin, Heidelberg, New York, 2002, pp. 31-52)。現在の世代のベクターの例は、Lois et al(2002, Science, 295 868-872)の論評の図2において概要されている。
【0133】
キメラ構築物はまた、ベクターがなくとも送達されうる。例えば、キメラ構築物は、被験者に、または被験者に由来する細胞に送達する前に、リポソームにおいてDNAまたはRNAとしてパッケージングされうる。脂質封入は一般的に、核酸に安定に結合または捕捉してこれを保持することができるリポソームを用いて達成される。濃縮DNA対脂質調製物の比率は多様であり得るが、一般的に約1:1(mg DNA:マイクロモル脂質)であるか、または脂質がそれより多い。核酸を送達するための担体としてのリポソームの使用に関する論評に関しては、Hug and Sleight, (1991, Biochim. Biophys. Acta. 1097:1-17);およびStraubinger et al., in Methods of Enzymology (1983), Vol. 101, pp. 512-527を参照されたい。
【0134】
本発明において用いられるリポソーム調製物には、陽イオン(陽性荷電)、陰イオン(陰性荷電)および中性調製物が含まれ、陽イオンリポソームが特に好ましい。陽イオンリポソームは、機能的型でのプラスミドDNA(Felgner et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7416);mRNA(Malone et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6077-6081);および精製転写因子(Debs et al., 1990, J. Biol. Chem. 265:10189-10192)の細胞内送達を媒介することが示されている。
【0135】
陽イオンリポソームは容易に入手可能である。例えば、N[1-2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリエチルアンモニウム(DOTMA)リポソームは、 GIBCO BRL, Grand Island, N. Y.から商標Lipofectinとして入手可能である(同様に、Felgner et al., 1987, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7416を参照されたい)。他の市販の脂質には、(DDAB/DOPE)およびDOTAP/DOPE(Boerhinger)が含まれる。代わりの陽イオンリポソームは、当技術分野において周知の技術を用いて容易に入手可能な材料から調製することができる。例えば、DOTAP(1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン)リポソームの合成に関する記述については、Szoka et al., 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:4194-4198:PCT公開番号WO 90/11092を参照されたい。
【0136】
同様に、陰イオンおよび中性リポソームは、Avanti Polar Lipids(Birmingham, Ala.)などから容易に入手可能であるか、または容易に入手可能な材料を用いて容易に調製することができる。そのような材料には、中でもホスファチジルコリン、コレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が含まれる。これらの材料を、DOTMAおよびDOTAP開始材料と適切な比率で混合することができる。これらの材料を用いてリポソームを作出する方法は、当技術分野において周知である。
【0137】
リポソームは、マルチラメラ小胞(MLV)、小さいユニラメラ小胞(SUV)、または大きいユニラメラ小胞(LUV)を含みうる。様々なリポソーム-核酸複合体が、当技術分野において公知の方法を用いて調製される。例えば、Straubinger et al., in METHODS OF IMMUNOLOGY (1983), Vol. 101, pp. 512-527;Szoka et al., 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:4194-4198;Papahadjopoulos et al., 1975, Biochim. Biophys. Acta 394:483;Wilson et al., 1979, Cell 17:77);Deamer and Bangham, 1976, Biochim. Biophys. Acta 443:629;Ostro et al., 1977, Biochem. Biophys. Res. Commun. 76:836;Fraley et al, 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:3348);Enoch and Strittmatter, 1979, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:145);Fraley et al., 1980, J. Biol. Chem. 255:10431;Szoka and Papahadjopoulos, 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:145;およびSchaefer-Ridder et al., 1982, Science 215:166を参照されたい。
【0138】
キメラ構築物はまた、Papahadjopoulos et al., 1975, Biochem. Biophys. Acta. 394:483-491によって記述される組成物と類似の蝸牛殻状脂質組成物(cochleate lipid compound)において送達されうる。同様に米国特許第4,663,161号および第4,871,488号を参照されたい。
【0139】
キメラ構築物はまた、微粒子担体に封入、吸着、または会合させてもよい。そのような担体は、免疫系に対して選択されたキメラ構築物の多数のコピーを提示する。粒子は、マクロファージおよび樹状細胞などの専門的な抗原提示細胞によって取り込まれうるか、および/またはサイトカイン放出の刺激などの他の機序を通して抗原提示を増強することができる。微粒子担体の例には、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来する担体のみならず、ポリ(ラクチド)およびPLGとして知られるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)に由来するマイクロ粒子が含まれる。例えば、Jeffery et al., 1993, Pharm. Res. 10:362-368;McGee J. P., et al., 1997, J Microencapsul. 14(2): 197-210;O'Hagan D. T., et al., 1993, Vaccine 11(2):149-54を参照されたい。
【0140】
さらに、他の微粒子系およびポリマーを、キメラ構築物のインビボ送達のために用いることができる。例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジンなどのポリマーのみならず、これらの分子の共役物は、関心対象核酸を移入するために有用である。同様に、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、またはリン酸ストロンチウム、ベントナイトおよびカオリンが含まれるケイ酸アルミニウム、酸化クロム、ケイ酸マグネシウム、タルク等などの他の不溶性無機塩を用いる沈殿が、本発明と共に利用される。遺伝子移入にとって有用な送達系の論評に関しては、例えば、Felgner, P. L., Advanced Drug Delivery Reviews (1990) 5:163-187を参照されたい。ペプトイド(Zuckerman, R. N., et al., 1998年11月3日に公布された米国特許第5,831,005号)も同様に、本発明の構築物の送達のために用いられてもよい。
【0141】
加えて、金およびタングステンなどの微粒子担体を用いるバイオリスティック送達系は、本発明のキメラ構築物を送達するために特に有用である。粒子を、送達される合成発現カセットによってコーティングして、一般的に低減された大気圧下で、「遺伝子銃」からの火薬の放出を用いて高速に加速する。そのような技術およびそのために有用な器械の記述に関しては、例えば、米国特許第4,945,050号;第5,036,006号;第5,100,792号;第5,179,022号;第5,371,015号;および第5,478,744号を参照されたい。実例となる例において、気体によって駆動される粒子加速は、PowderMed Pharmaceuticals PLC(Oxford, UK)およびPowderMed Vaccines Inc.(Madison, Wis.)によって製造される装置などの装置によって達成することができ、その例は、米国特許第5,846,796号;第6,010,478号;第5,865,796号;第5,584,807号;および欧州特許第0500 799号において記述されている。このアプローチは、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド粒子などの顕微鏡的粒子の乾燥粉末製剤を、携帯型の装置によって生成されたヘリウムガスジェット内で高速に加速して粒子を関心対象標的組織に噴射する、無針送達アプローチを提供する。本発明の組成物のガス駆動無針注射にとって有用である可能性がある他の装置および方法には、Bioject, Inc.(Portland, Oreg.)によって提供される装置および方法が含まれ、そのいくつかの例は、米国特許第4,790,824号;第5,064,413号;第5,312,335号;第5,383,851号;第5,399,163号;第5,520,639号および第5,993,412号において記述される。
【0142】
または、マイクロカニューレまたはマイクロ針に基づく装置(Becton Dickinsonおよび他社によって開発されている装置などの)を用いて、本発明のキメラ構築物を投与することができる。このタイプの実例となる装置は、EP 1 092 444 A1、および2000年6月29日に提出された米国特許出願第606,909号において記述されている。標準的なスチール製のカニューレはまた、1999年10月14日に提出された米国特許出願第417,671号において記述される装置および方法を用いる皮内送達のために用いることができる。これらの方法および装置には、カニューレの全長によって、または深さを制限する特色を超えて露出されるカニューレの全長によって定義される、貫通の深さが制限される狭いゲージの(約30 G)「マイクロカニューレ」を通しての物質の送達が含まれる。キメラ構築物が含まれる物質の標的化送達は、1つのマイクロカニューレを通して、またはマイクロカニューレ(または「マイクロ針」)のアレイを通して、例えば投与される物質がその中に含有されるリザーバーに含まれてもよくもしくは取り付けられてもよい注射装置に搭載された3〜6個のマイクロニードルのいずれかを通して、達成されうることは、本発明の範囲内である。
【0143】
7.組成物
本発明はまた、本明細書において記述されるキメラ構築物の1つまたは複数を含む組成物、特に免疫モジュレート組成物を提供する。免疫モジュレート組成物はキメラ構築物の混合物を含んでもよく、次にこれを、例えば同じまたは異なるベクターまたは媒体を用いて送達してもよい。抗原は、個々にまたは例えば予防的(すなわち感染または疾患を予防するため)または治療的(感染または疾患を治療するため)免疫モジュレート組成物と併用して投与されてもよい。免疫モジュレート組成物は、所望の効果を達成するために、1回より多く投与されてもよい(例えば、「プライミング」投与の後に1回またはそれより多くの「追加投与」)。同じ組成物を、1回または複数回のプライミングおよび1回または複数回の追加免疫段階において投与することができる。または、異なる組成物をプライミングおよび追加免疫のために用いることができる。
【0144】
免疫モジュレート組成物には一般的に、水、生理食塩液、グリセロール、エタノール等などの1つまたは複数の「薬学的に許容される賦形剤または媒体」が含まれるであろう。加えて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等などの補助物質がそのような媒体に存在してもよい。
【0145】
免疫モジュレート組成物は典型的に、先に言及した成分に加えて、1つまたは複数の「薬学的に許容される担体」を含む。これらには、組成物を投与される個体に対して有害な抗体の産生をそれ自身が誘導しない任意の担体が含まれる。適した担体は、典型的に、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび脂質凝集体(油滴またはリポソームなどの)などの大きく、ゆっくりと代謝される高分子である。そのような担体は当業者に周知である。組成物はまた、水、生理食塩液、グリセロール等などの希釈剤を含有してもよい。加えて、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質等などの補助物質が存在してもよい。薬学的に許容される成分に関する詳細な考察は、Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy. 20th ed., ISBN: 0683306472において利用可能である。
【0146】
薬学的に適合性の塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩などの無機塩のみならず、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩などの有機酸の塩も同様に本発明の組成物において用いることができる。特に有用なタンパク質基質は、血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、免疫グロブリン分子、サイログロブリン、卵白アルブミン、破傷風トキソイド、および当業者に周知の他のタンパク質である。
【0147】
本発明のキメラ構築物は、リポソームおよびPLGなどの微粒子担体に吸着、その中に捕捉、またはそうでなければ会合させることができる。
【0148】
本発明のキメラ構築物は、哺乳動物に送達するための組成物に製剤化される。これらの組成物は予防的(感染を予防するため)または治療的(感染後の疾患を処置するため)のいずれであってもよい。組成物は、それが投与される個体において免疫応答が生成される抗原の量がインビボで産生されうるように、関心対象遺伝子の「治療的有効量」を含む。正確な量は、中でも、処置される被験者、処置される被験者の年齢および全身状態;被験者の免疫系が抗体を合成する能力;望ましい保護の程度;処置される状態の重症度;選択される特定の抗原およびその投与様式に応じて変化する。適切な有効量は当業者によって容易に決定されうる、このように、「治療的有効量」は、ルーチンの試行を通して決定することができる比較的広い範囲に入る。
【0149】
(例えば、先に記述したように)製剤化した後、本発明の組成物を、被験者に直接投与することができる。キメラ構築物含有組成物のインビボでの直接送達は一般的に、先に記述したように、従来のシリンジ、Bioject(商標)などの無針装置、またはAccell(商標)遺伝子送達系(PowderMed Ltd, Oxford, England)などの遺伝子銃もしくはマイクロニードル装置のいずれかを用いて、ベクターと共にまたはベクターを伴わずに達成される。構築物は、皮下、表皮、皮内、筋肉内、静脈内、粘膜内(鼻腔内、直腸内、および膣内)、腹腔内、または経口のいずれかによって送達(例えば、投与)されうる。表皮の細胞への核酸の送達は、この投与様式が皮膚関連リンパ様細胞に対するアクセスを提供し、レシピエントにおける核酸(例えば、DNA)の一過性の存在を提供することから、特に好ましい。1つの投与様式には、経口接種および肺内投与、坐剤、無針注射、経皮、局所適用、および経皮適用が含まれる。用量の処置は、1回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであってもよい。
【0150】
本発明が容易に理解され、実際に効果を発揮するために、特に好ましい態様をこれから以下の非制限的な実施例によって記述する。
【実施例】
【0151】
実施例1
哺乳動物におけるコドンの免疫応答選択性を決定するための合成構築物システム
材料および方法
プライマーの設計/合成および配列の操作
部位特異的変異誘発のためのオリゴヌクレオチドを、変異誘発キットマニュアル(Quikchange II Site-directed Mutagenesis kitまたはQuikchange Multi Site-directed Mutagenesis Kit; Stratagene, La Jolla CA)に含まれるガイドラインに従って設計した。これらのプライマーは、Sigma(以前のProligo)によって合成およびPAGE精製された。
【0152】
全遺伝子合成のためのオリゴヌクレオチドは、肉眼によって設計されて、Sigma(以前のProligo)によって合成された。プライマーは、標準的な脱塩オリゴとして供給された。オリゴヌクレオチドの追加の精製を行わなかった。
【0153】
配列の操作および分析は、Biomanager(ANGIS)のプログラムスイートならびにNCBI (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/wblast2.cgi)のBLAST、New England BiolabsのNEBcutter V2.0(http://tools.neb.com/NEBcutter2/index.php)、the Translate Tool on ExPASy(http://au.expasy.org/tools/dna.html)、およびthe SignalP 3.0サーバー(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)が含まれる様々な他のウェブに基づくプログラムを用いて実行された。
【0154】
標準的なクローニング技術
制限酵素消化物、アルカリホスファターゼ処置、およびライゲーションは、酵素の製造元の説明書(New England Biolabs、Roche、およびFermentasが含まれる様々な製造元)に従って実行した。
【0155】
アガロースゲルからのDNAの精製およびミニプレップDNAの調製物は、市販のキット(Qiagen, Bio-Rad, Macherey-Nagel)を用いて実行した。
【0156】
アガロースゲル電気泳動、DNAからの混入タンパク質のフェノール/クロロホルム抽出、DNAのエタノール沈殿、および他の基本的な分子生物学技法は、Current Protocols in Molecular Biology(Wiley InterScienceから入手可能な電子書籍;Ausubelらによる編集)において記述されるプロトコルと類似の標準的なプロトコルを用いて実行された。
【0157】
シークエンシングは、Australian Genome Research Facility(AGRF, Brisbane)によって実行された。
【0158】
全遺伝子合成
オーバーラップした〜35から50量体オリゴヌクレオチド(Sigma-Proligo)を用いて、より長いDNA配列を合成した。クローニングを容易にするために制限酵素部位を組み入れた。断片を合成するために用いられた方法は、Smith et al.(2003)において与えられた方法に基づいている。第一に、上部または底部の鎖のオリゴヌクレオチドを混合した後、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK;New England Biolabs)を用いてリン酸化した。次に、オリゴヌクレオチド混合物を標準的なフェノール/クロロホルム抽出および酢酸ナトリウム/エタノール(NaAc/EtOH)沈殿によってPNKから精製した。上部および底部の鎖に関するオリゴヌクレオチド混合物の等量を混合して、95℃で2分間加熱することによってオリゴヌクレオチドを変性させた。試料を55℃まで徐々に冷却することによってオリゴヌクレオチドをアニールして、アニールしたオリゴヌクレオチドをTaqリガーゼ(New England Biolabs)を用いてライゲーションした。得られた断片をフェノール/CHCl3抽出およびNaAc/EtOH沈殿によって精製した。
【0159】
Clontech Advantage HF 2 PCRキット(Clontech)によって、製造元の説明書に従って、断片の端部を塞いで、断片を最も外側のフォワードおよびリバースプライマーを用いて増幅した。端部を塞ぐために、以下のPCRを用いた:94℃で15秒の変性段階、温度を7分間で55℃まで減少させた後55℃で2分間維持する遅いアニール段階、および72℃で6分間の伸長段階を35サイクル。次に、72℃で7分間の最終伸長段階を実行した。断片を増幅するための第二のPCRは以下を伴った:94℃で30秒間の初回変性段階の後に、94℃で15秒、55℃で30秒、および68℃で1分間を25サイクルならびに68℃で3分間の最終伸長段階。
【0160】
次に、断片をゲル電気泳動によって精製して、消化し、関連するベクターにライゲーションした。ライゲーション混合物による大腸菌の形質転換後、多数のコロニーに関してミニプレップを作出して、インサートをシークエンシングした。時に、完全に正確な配列を有するクローンを単離することが不可能であった。そのような場合、1回または複数回の部位特異的変異誘発によって誤りを固定した。
【0161】
部位特異的変異誘発
変異誘発は、Quikchange II Site-directed Mutagenesis Kit またはQuikchange Multi Site-directed Mutagenesis Kit(Stratagene, La Jolla CA)を用いて、適切なPAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)精製プライマー(Sigma)によって、製造元の説明書に従って行った。
【0162】
構築物の調製
コドン選択性の表を作成するために用いられる構築物の詳細を表12に要約する。構築物は全てInvitrogenからのpCDNA3を用いて作出して、使用前にシークエンシングによって確認した。
【0163】
(表12)分泌型E7構築物シリーズ1および2の要約







AA=アミノ酸、CU=コドン使用、mc=哺乳動物コンセンサス、wt=野生型、onc=腫瘍形成性、non-onc=非腫瘍形成性、Sec seq=分泌配列、N/A=当てはまらない
【0164】
対照構築物
対照E7構築物は、Liu et al.(2002)からの構築物に基づいた。野生型または哺乳動物コンセンサスコドン使用に関して、腫瘍形成性(すなわち、野生型)および非腫瘍形成性E7対照構築物の双方を作出した。「非腫瘍形成性」E7はD21G、C24G、E26G変異、すなわち、E7を非形質転換にすることが報告されている変異を有するE7である(Edmonds and Vousden, 1989;Heck et al., 1992)。
【0165】
分泌配列は、抗HLA-DR抗体軽鎖に関するハツカネズミ(Mus musculus)IgK RNAに由来した(GenBankアクセッション番号D84070)。いくつかの構築物に関して、この配列のコドン使用を改変した。
【0166】
野生型コドン使用対照構築物
Liuらの野生型(wt)コドン使用E7構築物を、wtコドン使用非腫瘍形成性E7構築物を作出するために、部位特異的変異誘発PCRにおける鋳型として用いた。
【0167】
非腫瘍形成性および腫瘍形成性野生型コドン使用E7配列を増幅して、5' BamHI部位および3' EcoRI部位を組み入れた。得られた断片をBamHIおよびEcoRI切断pCDNA3にクローニングして、シークエンシングした。分泌断片を、隣接するKpnIおよびBamHI部位によって野生型コドン使用を用いて全遺伝子合成によって作出した。次にコザック分泌断片を、KpnI/BamHI切断pCDNA3-wtE7(非腫瘍形成性または腫瘍形成性)にライゲーションして、pCDNA3-Igk-nE7およびpCDNA3-Igk-E7(それぞれ、IgkC1およびIgkC3と呼ばれる;表12を参照されたい)を作出した。構築物の同一性をシークエンシングによって確認した。
【0168】
哺乳動物コンセンサス(mc)コドン使用対照構築物
当初の哺乳動物コンセンサス(mc)E7構築物(L28F、Q70R、およびE35欠失;Liu et al., 2002)において誤りが存在したことから、これを用いなかった。mc非腫瘍形成性E7対照構築物を全遺伝子合成によって合成した。mc腫瘍形成性E7(すなわち、野生型E7)対照構築物を、1回の部位特異的変異誘発によって、mc非腫瘍形成性E7構築物から作出した。
【0169】
分泌型のmc腫瘍形成性および非腫瘍形成性構築物は、mc E7配列を、BamHI部位を導入するフォワードプライマーおよびEcoRI部位を組み入れるリバースプライマーによって増幅することによって作出した。得られたE7断片を、pCDNA3におけるそれぞれの部位にクローニングしてシークエンシングした。5'および3'でそれぞれ、KpnIおよびBamHI部位に隣接するmc分泌配列を合成して、pCDNA3-mcE7(腫瘍形成性または非腫瘍形成性)のKpnIおよびBamHI部位にライゲーションして、pCDNA3-mcIgk-mcnE7およびpCDNA3-mcIgk-mcE7(それぞれ、IgkC2およびIgkC4と呼ばれる;表12を参照されたい)を作出した。構築物の同一性をシークエンシングによって確認した。
【0170】
個々のコドンに関して改変された主に野生型コドン使用を有する分泌された非腫瘍形成性E7構築物
E7の非腫瘍形成型をコードするプラスミドを、ProおよびLeuコドン、終止コドンおよび非縮重アミノ酸のコドンを除く全てのコドンに関して作出した。PheはE7配列において1回限り起こることから、2つのLeu残基L15およびL22のコドンをPheコドンに変異させた。技術の組み合わせを用いて、これらの構築物を作出した。いくつかの変異が必要である場合、非腫瘍形成性E7をコードする対照構築物の1回または複数回の部位特異的変異誘発を行った(対照構築物の詳細は上記の「対照構築物」において与えられる)。より広範囲の改変が必要である場合、全遺伝子合成を使用した。用いた方法によらず、これらの構築物には全て、pCDNA3のKpnIおよびEcoRI部位にクローニングされる同一の上流および下流の配列を有するE7コード配列が含まれる。次に、これらの構築物を以下に記述されるように、分泌配列を含めるように改変した。
【0171】
第一に、全遺伝子合成法を用いて、KpnIおよびBamHI部位に隣接する分泌配列が含まれるDNA断片を合成した。いくつかの構築物に関して、関心対象アミノ酸は分泌配列において起こり、そのように個々の改変分泌配列断片を作出した。分泌配列において起こらないアミノ酸に関する構築物に関して、野生型分泌配列を用いた。これらの断片を、KpnIおよびBamHIによって消化した。次に、関連するnE7構築物を鋳型として標準的なPCRプロトコルを用いて、BamHI部位をE7配列の5'端に導入した。3' EcoRI部位を保持した。得られたE7断片をBamHIおよびEcoRIによって切断して、精製し、pCDNA3にライゲーションした。シークエンシングの後、プラスミドをKpnIおよびBamHIによって切断して、関連するKpnI/BamHI分泌配列と共にライゲーションした。次に、構築物の配列を確認した。構築物IgkS1-1からIgkS1-49をこのようにして作出した(配列の比較に関して表12ならびに図1〜11、13、および15〜17を参照されたい)。
【0172】
個々のProまたはLeuコドンが改変された分泌されたE7構築物
ProまたはLeuコドンが個々に改変されたE7 DNA配列を設計した。これらのE7 DNAに関するコドン使用の残りは、ProおよびLeu構築物の全てに関して同じであったが、野生型または哺乳動物コンセンサスコドン使用とは異なった。[このコドン使用は、マウスをGFP構築物によって免疫することによる本発明者らの予備的なデータに基づいたことに注意されたい]。
【0173】
HindIIIおよびBamHI部位によって隣接されるPro/Leu E7 DNA断片を全遺伝子合成によって作出して、pCDNA3のHindIIIおよびBamHI部位にクローニングした。これらの構築物を鋳型として用いて、標準的なPCR法によって、KpnI部位を、Pro/Leu E7配列の上流に組み入れて、EcoRI部位を下流に組み入れた。得られた断片をKpnIおよびEcoRIによって切断して、pCDNA3にクローニングした。次に、これらの構築物を用いてProまたはLeuコドン改変を有する分泌されたE7構築物を作出した。
【0174】
最初に、全遺伝子合成法を用いて、KpnIおよびBamHI部位に隣接する分泌配列が含まれるDNA断片を合成した。ProおよびLeuは分泌配列において起こることから、個々に改変された分泌配列断片を異なる構築物に関して作出した。これらの断片をKpnIおよびBamHIによって消化した。次に、関連するProまたはLeu E7構築物を鋳型として標準的なPCRプロトコルを用いて、BamHI部位をE7配列の5'端に導入した。3' EcoRI部位は保持した。得られた断片をBamHIおよびEcoRIによって切断して、精製し、pCDNA3にライゲーションした。シークエンシング後、プラスミドをKpnIおよびBamHIによって切断して、関連するKpnI BamHI分泌配列と共にライゲーションした。得られた構築物をシークエンシングして、IgkS1-50からIgkS1-59と表示した(配列比較に関して表12ならびに図12および14を参照されたい)。
【0175】
個々のコドンに関して改変された主に野生型のコドン使用を有する分泌されたE7構築物
腫瘍形成性E7の分泌型(すなわち野生型E7タンパク質)をコードする構築物を、非腫瘍形成性E7の分泌型をコードするプラスミドの部位特異的変異誘発によって作出した。これを、以下のアミノ酸のコドンに関する構築物に関して行った:Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、Ile、Ser、ThrおよびVal。
【0176】
部位特異的変異誘発を、Quikchange II Site- directed Mutagenesis kit(Stratagene, La Jolla CA)および適切なPAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)精製プライマー(Sigma)を用いて製造元の説明書に従って実行した。pCDNA-kIgkX-nE7Xシリーズの構築物を変異誘発の鋳型として用いた(すなわち、構築物IgkSl-13から24、IgkSl-27から29、IgkSl-34から43、およびIgkSl-46から49)。プライマーは望ましいG21D、G24C、G26E変異を導入した。
【0177】
得られた構築物、IgkS2-13から24、IgkS2-27から29、IgkS2-34から43、およびIgkS2-46から49(表8、SEQ ID NO:1〜29を参照されたい)は、関連するアミノ酸のコドンが変化していることおよびそれらが腫瘍形成性E7をコードすることを除き、Igk分泌配列およびE7配列に関する野生型コドン使用を有する。
【0178】
リンカー構築物
N-末端Igk分泌配列の後にリンカー配列(XXGXGXX、式中Xは特定の構築物に関して関連するアミノ酸であり、Gはグリシンである)およびE7タンパク質をコードする構築物を、以下のアミノ酸の各々に関して作出した:Asn、Ala、Lys、Arg、Phe、HisおよびTyr。
【0179】
Igk分泌配列(哺乳動物コンセンサスコドン使用を有する)およびリンカー配列からなる断片を、製造元によって推奨されるように、Taqポリメラーゼおよび標準的なサイクリング条件を用いてPCRによって作出した。
【0180】
断片を、KpnI部位にアニールする共通のフォワードプライマー
(5'TTGAATAGGTACCGCCGCCACCATGGAGACCGACACCCTCC3';SEQ ID NO:90)
、コザック配列、およびIgk分泌配列の開始点を用いて、pCDNA3-kmcIgk-mcE7から増幅した。リバースプライマーは、各リンカー構築物に関して異なり、Igk分泌配列(哺乳動物コンセンサスコドン使用を有する)の端部にアニールして、関連するリンカー配列および3' BamHI部位をコードする新しい配列を導入した。
【0181】
断片をKpnI/BamHIによって消化して、KpnI/BamHI切断pCDNA3-mcIgk-mcE7(すなわち、コザック配列および分泌配列が消化によってプラスミドから除去されている)にライゲーションして、pCDNA3-mcIgk-linkerX-mcE7(すなわち、表8、SEQ ID NO:30〜49によって図示されるIgkS2-1から12、IgkS2-25および26、IgkS2-30から33、ならびにIgkS2-44および45)を作出した。
【0182】
Asnに関して、断片を同様にKpnI/BamHI切断pCDNA3-Igk-nE7Asn1/2(すなわちIgkS1-11および12)にライゲーションしてpCDNA3-mcIgk-linkerN1/2-nE7Asn1/2(すなわち、IgkS2-11bおよびIgkS2-12b、表12を参照されたい)を作出した。
【0183】
E7タンパク質発現
細胞培養
CHO細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)(DKSH)、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミン(InvitrogenのGIBCO)を含有するDMEM(InvitrogenのGIBCO)において37℃および5%CO2において培養した。細胞を、トランスフェクションの24時間前に、6ウェルプレートにおいて3×105個/ウェルで平板培養した。各トランスフェクションに関してDNA 2μgをOptiMEM(InvitrogenのGIBCO)50μLおよびPlus試薬(Invitrogen)4μLと共に混合して室温(RT)で30分間インキュベートした。リポフェクタミン(Invitrogen;OptiMEM 50μL中に5μL)を加えて、複合体をRTで30分間インキュベートした。細胞をOptiMEMによってすすぎ、OptiMEM 2 mLを各ウェルに加えて、次に複合体を加えた。細胞を37℃および5%CO2において終夜インキュベートした。翌朝、複合体を除去して、2%FBSを含有する新鮮なDMEM 2 mlを各ウェルに加えた。
【0184】
細胞沈降物および上清をトランスフェクションの約40時間後に収集した。細胞沈降物を溶解緩衝液(PBS中に0.1%NP-40、2μg/mLアプロチニン、1μg/mLロイペプチンおよび2 mM PMSF)に浮遊させた。トランスフェクションは1試料あたり2個ずつ実行し、繰り返した。空のベクター(pCDNA3)による対照トランスフェクションも同様に実行した。
【0185】
ウェスタンブロッティング
CHO細胞上清または溶解物のウェスタンブロットを、標準的なプロトコルに従って実行した。簡単に説明すると、これは、最初にポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって試料を分離する段階を伴った。細胞溶解物の場合、総タンパク質30μgを各試料に関してローディングした。上清の場合、各30μLをローディングした。タンパク質試料をSDS-PAGEローディング緩衝液によって10分間沸騰させてから、12%SDS-PAGEゲルにローディングして、ゲルを150〜200 Vでおよそ1時間泳動させた。
【0186】
分離したタンパク質をゲルからPVDFメンブレンに転写した(100 Vで1時間)。メンブレンを5%スキムミルク(PBS/0.05%Tween 20(PBS-T))によって室温で1時間ブロックした後、5%スキムミルク(PBS-T中)中で濃度1:1000の一次抗体、HPV-16 E7マウスモノクローナル抗体(Zymed Laboratories)と共に4℃で終夜インキュベートした。メンブレンをPBS-T(3×10分)において洗浄した後、二次抗体である抗マウスIgG(Sigma)を5%スキムミルク中で加えて、メンブレンを室温で4時間インキュベートした。メンブレンを先に記述したように洗浄して、溶液A(水4.425 mL、ルミノール50μL、p-クマリン22μLおよび1 M Tris、pH 8.5 500 μL)と溶液B(水4.5 mL、30%H2O2 3μL、および1 M Tris、pH 8.5 500 μL)の等量を含有する混合物において1分間インキュベートした後、乾燥させて、プラスチックラップで覆った。フィルムを様々な時間(1分、3分、または10分)ブロットに露出して、フィルムを現像した。
【0187】
遺伝子銃免疫プロトコル
プラスミドの精製
ワクチン接種のために用いられるプラスミドは全て、大腸菌株DH5αにおいて増殖させ、Nucleobond Maxi Kit(Machery-Nagal)を用いて精製された。DNA濃度を260 nmで分光測光法によって定量した。
【0188】
DNA/金カートリッジの調製
プラスミドDNAによる金粒子のコーティングは、0.5 mg金/カートリッジのマイクロキャリアローディング量(MLQ)、および2 μg DNA/mg金のDNAローディング比を用いて、Biorad Helios Gene Gun Systemの説明マニュアルにおいて記述されたとおりに行った。これによって、調製したカートリッジあたりDNA 1μgが得られた。簡単に説明すると、0.05 Mスペルミジン(Sigma)50μLを1.0μm金粒子(Bio-Rad)25 mgに加えて、スペルミジン/金を3秒間超音波処理した。プラスミドDNA 50μgを加えた後に、撹拌しながら1 M CaCl2 100μLを滴下して加えた。混合物を室温で10分間沈殿させた後、遠心してDNA/金を沈降させた。沈降物をHPLC等級のエタノール(Scharlau)によって3回洗浄した後、0.5 mg/mLポリビニルピロリドン(PVP)(Bio-Rad)を含有するHPLC等級のエタノールに浮遊させた。金/プラスミド浮遊液をTefzelチューブにコーティングして、0.5インチカートリッジを調製した。
【0189】
マウスの遺伝子銃免疫
雌性C57BL6/J(6〜8週齢)(ARC5 WAまたはMonash Animal Services, VIC)8匹の群を、関連するDNAによって0日目、21日目、42日目、および63日目に免疫した。各免疫の前日に、各マウスの腹部の毛を刈って、脱毛クリーム(Nair)を1分間適用した。Helios遺伝子銃(Biorad)によって400 psiの圧を用いてDNAを送達した。マウスの腹部のいずれかの側に2ショットを与え、1ショットあたりDNA 1μgを送達した。初回免疫の2日前およびその後の各免疫の2週間後(2日目、35日目、56日目、および77日目)に眼内出血により血清を採取した。
【0190】
E7免疫応答を測定するためのELISA
HPV 16E7(Frazer et al., 1995)の完全長に及ぶペプチド9個を用いてE7抗体応答を測定した。ペプチドは、Auspep(Melbourne)によって合成され、>70%純度まで精製された。Frazer et al.において記述されるペプチドGF101〜106およびGF108〜109を作出した。GF107の代わりに、GF 107a:HYNIVTFCCKCDSTLRLを用いたことに注意されたい。
【0191】
GF102n、GF103n、およびGF104nとそれぞれ呼ばれるGF102 D13G、GF103 D5G/C8G/E10G、およびGF104E2Gペプチドも同様に合成した。これらのペプチドは、非腫瘍形成性E7に対する抗体を測定する場合のELISAのために用いられ、すなわち、これらのペプチドはE7タンパク質を非腫瘍形成性にするために作出された変異を組み入れる。
【0192】
マイクロタイタープレートを10μg/ml E7ペプチド50μL/ウェルによって終夜コーティングした。コーティング後、マイクロタイタープレート(Maxisorp、Nunc)をPBS/0.05%Tween 20(PBS-T)によって2回洗浄した後、PBS-T中の5%スキムミルク粉末100μLによって37℃で2時間ブロックした。ブロック後、プレートをPBS-Tによって3回洗浄して、1:100倍希釈したマウス血清50μLを37℃で2時間加えた。血清は全て1試料あたり2個ずつのウェルにおいてアッセイした。次にプレートをPBS-Tによって3回洗浄して、ヒツジ抗マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ共役体(Sigma)50μLを1:1000倍希釈で加えた。1時間後、プレートを洗浄して、OPD基質50μLを加えた。30分後に吸光度を測定して、2.5 M HCl 25μLをMultiskan EXプレートリーダー(Pathtech)において490 nmで加えた。以下の対照が含まれることに注意されたい:陽性対照のための対照一次抗体、二次抗体のみ、および0日目の血清/陰性対照としての非免疫マウスからの血清。
【0193】
これらの実験から決定されたコドンの免疫応答選択性を表1に作表する。
【0194】
実施例2
H5N1 HAに対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変A型インフルエンザウイルス(H5N1)HA DNAの構築
A型インフルエンザウイルスの血液凝集素のHA遺伝子(A/Hong Kong/213/03(H5N1)、MDCK単離体、発育鶏卵単離体)の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:50において示され、SEQ ID NO:51において示されるアミノ酸配列をコードする。その配列内のいくつかのコドンを、実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型のヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:52に示す。
【0195】
実施例3
H3N1 HAに対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変A型インフルエンザウイルス(H3N1)DNAの構築
A型インフルエンザウイルスの血液凝集素のHA遺伝子(A/swine/Korea/PZ72-1/2006(H3N1))の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:53において示され、SEQ ID NO:54において示されるアミノ酸配列をコードする。具体的に、方法は、野生型のヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:55に示す。
【0196】
実施例4
H5N1 NAに対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変A型インフルエンザウイルス(H5N1)NA DNAの構築
A型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼのNA遺伝子(A/Hong Kong/213/03(H5N1)、NA遺伝子ノイラミニダーゼ、MDCK単離体、発育鶏卵単離体)の野生型ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:56において示され、SEQ ID NO:57において示されるアミノ酸配列をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:58に示す。
【0197】
実施例5
H3N1 NAに対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変A型インフルエンザウイルス(H3N1)NA DNAの構築
A型インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼのNA遺伝子(A/swine/MI/PU243/04(H3N1))の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:59において示され、SEQ ID NO:60において示されるアミノ酸配列をコードする。その配列内のいくつかのコドンを、実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:61に示す。
【0198】
実施例6
HCV E1(1AH77)に対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変C型肝炎ウイルスE1(1AH77)DNAの構築
C型肝炎ウイルスE1の野生型ヌクレオチド配列(ポリタンパク質ヌクレオチド配列AF009606から、血清型1A、単離体H77)は、SEQ ID NO:62において示され、SEQ ID NO:63において示されるアミノ酸配列(NP 751920)をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:64に示す。
【0199】
実施例7
HCV E2(1AH77)に対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変C型肝炎ウイルスE2(1AH77)DNAの構築
C型肝炎ウイルスE2の野生型ヌクレオチド配列(ポリタンパク質ヌクレオチド配列AF009606から、血清型1A、単離体H77)は、SEQ ID NO:65において示され、SEQ ID NO:66において示されるアミノ酸配列(NP 751921)をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:67に示す。
【0200】
実施例8
EBV 1型GP350に対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変エプスタインバーウイルス1型GP350 DNAの構築
エプスタイン-バーウイルスEBV 1型gp350(Gene BLLF1、鎖77142-79865)の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:68において示され、SEQ ID NO:69において示されるアミノ酸配列(CAD53417)をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:70に示す。
【0201】
実施例9
EBV 2型GP350に対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変エプスタインバーウイルス2型GP350 DNAの構築
エプスタイン-バーウイルスEBV 2型gp350(Gene BLLF1、鎖77267-29936)の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:71において示され、SEQ ID NO:72において示されるアミノ酸配列(YP 001129462)をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:73に示す。
【0202】
実施例10
HESV-2糖タンパク質Bに対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質B DNAの構築
単純ヘルペスウイルス2型、糖タンパク質B株HG52(ゲノム株NC 001798)の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:74において示され、SEQ ID NO:75において示されるアミノ酸配列(CAB06752)をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:76に示す。
【0203】
実施例11
HSV-2糖タンパク質Dに対して増強された免疫応答を付与するためのコドン改変単純ヘルペスウイルス2型糖タンパク質D DNAの構築
単純ヘルペスウイルス2型、糖タンパク質D株HG52(ゲノム株NC 001798)の野生型ヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:77において示され、SEQ ID NO:78において示されるアミノ酸配列(NP 044536)をコードする。その配列内のいくつかのコドンを実施例1において記述される方法を用いて変異させた。具体的に、方法は、野生型ヌクレオチド配列のコドンを、表1において表されるように、交換されるコドンより高い免疫応答選択性を有する対応する同義のコドンに交換する段階を伴った。高い免疫応答選択性のコドンを含む実例となるコドン改変ヌクレオチド配列をSEQ ID NO:79に示す。
【0204】
実施例12
最適化E7およびHSV-2構築物
最適および最も最適でないE7構築物の設計および合成
1つの脱最適化(W)および3つの最適化(O1〜O3)E7構築物を、表1(「免疫コリコード(Coricode)表」)において要約されるコドン選択性を用いて設計および作出した。最も好ましくないコドンを、構築物Wのために用いた。配列がSEQ ID NO:81において示される第一の最適化構築物O1に関して、コドンの全てを、最も最適であると決定されたそれらのコドンに改変した。その配列がSEQ ID NO:82において示されるO2は、全てのAlaをGCTに、Arg CGGおよびAGGをそれぞれCGAおよびAGAに;GluをGAAに;GlyをGGAに;IleをATCに;全てのLeuをCTGに;PheをTTTに、ProをCCTまたはCCCに、SerをTCGに、ThrをACGに;およびGTGを除く全てのValをGTCに変化させる段階を伴った、代わりの最適化構築物である。O2の改変は、LeuおよびIleを除き、コドンを哺乳動物コンセンサスに好ましいコドンに変化させる段階を回避した。配列がSEQ ID NO:83において示されるO3に関して、コドンのあいだに特に明白な差が観察される、および最適なコドンが哺乳動物コンセンサスに好ましいコドンではない一定のアミノ酸のみを改変した。特に、O3において、全ての好ましくないGly、Leu、Pro、Ser、およびThrコドンをそれぞれ、GGA、CTC、CCT、TCGおよびACGに変化させて、好ましいコドンが既に用いられている場合には、それを変更しなかった。O3における他のアミノ酸のコドンは改変しなかった。
【0205】
最適なおよび最も最適でないE7構築物によるバイオリスティック免疫に対する液性および細胞性応答
図18(a)において認められる可能性があるように、3つの最適化構築物(O1〜O3)は全て、ペプチドELISAおよびGST-E7タンパク質ELISAの双方によって測定した場合に野生型構築物より有意に大きい抗体応答を生じた。応答の大きさは、3つの最適化構築物のあいだで統計学的に有意な差はなかった。その配列がSEQ ID NO:84において示される脱最適化構築物Wは、非常に低い抗体応答を生じ、その配列がSEQ ID NO:80において示される野生型(wt)コドン使用(CU)構築物よりわずかに低いように思われたが統計学的に差はなかった。その代表的な例が図18において示されるIFN-γELISPOT実験から、抗体応答を最大限にするためのコドン選択性は、T細胞応答を最大限にするために必要な選択性と類似であるように思われる:脱最適化構築物Wは、IFN-γELISPOTアッセイにおいて測定可能な応答を生じることができず、最適化構築物の2つ(O2およびO3)は、野生型CU構築物より統計学的に有意に大きい応答を生じた。3回の繰り返しのあいだ、O2およびO3に対する応答は、互いに統計学的な差はなかった。予想外に、および抗体の傾向とは対照的に、3回の繰り返し実験の2回において、O1はwt CU構築物と類似の細胞応答を生じたが、これはO2またはO3構築物によって達成された応答より低かった。
【0206】
最適なおよび最も最適でないE7構築物の皮内注射による免疫に対する液性および細胞性応答
皮内注射によって送達された最適化、野生型CU、および脱最適化構築物に対するマウスの液性および細胞性応答も同様に測定して、結果を図19において要約する。一般的に、バイオリスティック送達の場合と類似の傾向が、皮内注射に関して観察された。
【0207】
E7タンパク質ELISAから、3つの最適化構築物O1〜O3は全て、抗体の生成に関して野生型構築物より良好であり、脱最適化構築物は、野生型と類似の非常に低い抗体応答を生じたことは明らかである。最適化構築物は全て、IFN-γELISPOTにおいて野生型構築物より有意に多くのスポットを生じ、脱最適化構築物は測定可能な応答を生じることができなかった。
【0208】
皮内免疫では5倍超の用量を送達したにもかかわらず、皮内(ID)送達ワクチンの抗体応答の大きさよりも、遺伝子銃免疫に対する抗体応答の大きさが大きかった。
【0209】
最適および最も最適でないHSV-2構築物の設計および合成
単純ヘルペスウイルス2型の完全長の糖タンパク質D(gD2)をコードする3つの最適化構築物(O1〜O3;その配列はそれぞれ、SEQ ID NO:86〜88において示される)、および脱最適化構築物(W;その配列はSEQ ID NO:88において示される)を調製した。wt CUを有する対照構築物pCDNA3-gD2も同様に作出した。配列がSEQ ID NO:85において示される野生型CUは、MC CUに近い。
【0210】
最適なおよび最も最適でないgD2構築物によるバイオリスティックおよび皮内免疫に対する液性応答
C57Bl/6マウスを、E7構築物の場合と同じ免疫プロトコルを用いて、2群(マウス8匹/構築物;皮内注射(ID)および遺伝子銃送達のために用いられる)において免疫した。
【0211】
1群には、pCDNA3-gD2およびpCDNA3-gD2 O1が含まれた。2群には、pCDNA3-gD2、pCDNA3-gD2 O2、pCDNA3-gD2 O3、およびpCDNA3-gD2 Wが含まれた。
【0212】
抗体応答を、C-末端Hisタグおよび切断型gD2を含有するCHO細胞上清によってコーティングしたプレートを用いてELISAによって測定した。切断はアミノ酸残基331位で起こり、膜貫通領域を除去して、それによってタンパク質は培地に分泌される。空のベクターをトランスフェクトしたCHO細胞からの上清をコーティングした対照ELISAプレートを対照として用いた。
【0213】
バイオリスティックおよび皮内注射送達経路の双方に関して、3つの最適化構築物がwt CU gD2構築物と類似のレベルの抗体を生成することが見いだされた(図20)。脱最適化構築物W gD2は、特に皮内注射によって送達された場合に、抗体の生成が非常に不良であった。2つの送達法によって類似のレベルの抗体が得られた。
【0214】
今日まで、ヒトにおける疾患の処置または予防のための市場にDNAワクチンはない。DNAワクチンによって生成された免疫応答を最大限にする必要があり、本発明は、免疫応答を産生するためにより高い選択性を有するコドンを用いることによってDNAワクチンの有効性を増強する様式を開示する。
【0215】
本実施例において記述される試験は、HPV 16 E7およびHSV-2糖タンパク質D(gD2)遺伝子の最適化または脱最適化に免疫コリコード表を適用する段階、ならびに免疫コリコード表がマウスなどの哺乳動物に対するこれらの遺伝子のバイオリスティック送達に対する抗体または細胞応答をそれぞれ増強または低減することを証明することによって、免疫コリコード表をバリデーションした。
【0216】
材料および方法
ELISPOTアッセイ
IFNγ-ELISPOTに関して、マウスを0日目と21日目に2回免疫して、脾臓を2回目の免疫後3週目に採取した。
【0217】
皮内注射プロトコル
皮内注射による免疫の時期および頻度は遺伝子銃免疫の場合と同じであった。各免疫時に、片方の耳あたりDNA 5μgを注射して、すなわちマウス1匹あたり1回の免疫あたり全量10μgを投与した。免疫前の体毛の除去は不要であった。採血および脾臓の採取時期は、遺伝子銃免疫マウスの場合と同じであった。
【0218】
GST-E7 ELISA
プレートを10μg/mL GST-タグE7タンパク質(the Diamantina Institute, The University of Queensland, BrisbaneのFrazer groupによって提供)50μLによって終夜コーティングしたことを除き、GST-E7 ELISAを、ペプチドELISAと同じ様式で実行した。
【0219】
HSV-2 gD ELISA
このELISAは、C-末端Hisタグおよび切断型gD2タンパク質をコードするベクターをトランスフェクトしたCHO細胞からの上清によってプレートをコーティングしたことを除き、E7 ELISAと同じ様式で実行した。空のベクターをトランスフェクトしたCHO細胞からの上清をコーティングした対照細胞も同様に用いた。
【0220】
HPV特異的応答の検出
HPV特異的応答を検出するために、96ウェルフィルターELISPOTプレート(Millipore)を、0.1 M NaHCO3中で10μg/mL HPV GST-タグE7タンパク質によって終夜コーティングした。総IgG分泌細胞を検出するために、96ウェルフィルターELISPOTプレートをMgCl2およびCaCl2の非存在下でPBS中で2μg/mLヤギ抗マウスIg(Sigma)によって終夜コーティングした。コーティング後、プレートを、FCSを含有しない完全なDMEMによって1回洗浄した後、10%FCSを添加した完全なDMEMによって37℃で1時間ブロックした。培養マウス脾細胞を洗浄して、ELISPOTプレートに細胞106個/100μLで加えた。HPV特異的メモリーB細胞を検出するために、プレートを37℃で終夜インキュベートして、総IgG細胞を測定するために、プレートを37℃で1時間インキュベートした。検出に関して、本発明者らは、PBS-T/1%FCS中でビオチニル化ヤギ抗マウスIgG(Sigma)を用いた後に5μg/mL HRP-共役アビジン(Pierce)を用い、3-アミノ-9-エチルカルボゾール(Sigma)を用いて顕色した。顕色したプレートを自動ELISPOTプレートカウンターを用いて計数した。
【0221】
E7 IFN-γELISPOT
96ウェルフィルタープレート(Millipore)を4μg/mLモノクローナル抗体(AN18;Mabtech)によって終夜コーティングした。コーティング後、プレートを完全なRPMIによって1回洗浄し、10%仔ウシ胎児血清(FCS;CSL Ltd)を有する完全なRPMIによって2時間ブロックした。マウス脾臓を単細胞浮遊液にして、ACK溶解緩衝液によって処置して、洗浄し、107個/mlの濃度に浮遊させた。脾細胞(106個/ウェル)を各ウェルに加えた後、組み換え型hIL-2(ProSpec-Tany TechnoGene Ltd)およびペプチドをそれぞれ、最終濃度10 IU/ウェルおよび1μg/mLで添加した完全なRPMIを加えた。ペプチドの非存在下でhIL-2を含有する培地を対照ウェルに加えた。プレートを37℃で5〜8%CO2においておよそ18時間インキュベートした。
【0222】
終夜インキュベートした後、プレートを水道水ですすぐことによって細胞を溶解した後、PBS/0.05%Tween 20(PBS-T)において6回洗浄した。検出するために、PBS-T/2%FCS中でビオチニル化検出mAb(R4-6A2;Mabtech)を加えた後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役ストレプトアビジンおよびDAB(Sigma)を加えた。顕色したプレートを自動ELISPOTプレートカウンターを用いて計数した。
【0223】
本明細書において引用されたあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、その全内容物が参照により本明細書に組み入れられる。
【0224】
本明細書におけるいかなる参考文献の引用も、そのような引用が、本出願に対して「先行技術」として利用できると認めたと解釈してはならない。
【0225】
本明細書を通して、目的は、本発明の好ましい態様を説明することであり、本発明を任意の1つの態様にまたは特色の特異的なコレクションに限定することではない。ゆえに、当業者は本開示に照らして、実例となる特定の態様に様々な改変および変化を行うことができ、それらも本発明の範囲に含まれることを認識するであろう。そのような改変および変化は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれると意図される。
【0226】
関係書目


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、同じポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドにより付与される免疫応答とは異なった質で、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答を付与するポリペプチドを生成可能な合成ポリヌクレオチドを構築するための方法であって、該ポリペプチドは該標的抗原の少なくとも一部に対応する、方法:
(a)同義のコドンと交換するために親ポリヌクレオチドの第一のコドンを選択する段階であって、該同義のコドンは、免疫応答選択性の比較において、免疫応答の付与に関して第一のコドンとは異なる選択性(「免疫応答選択性」)を示すことに基づいて選択される、段階;および
(b)該合成ポリヌクレオチドを構築するために該第一のコドンを該同義のコドンに交換する段階であって、コドンの免疫応答選択性の比較が以下の表1によって表される、段階;
(表1)


【請求項2】
合成ポリヌクレオチドが、同じ条件下で親ポリヌクレオチドより強いまたは増強された免疫応答を付与し、かつ、第一のコドンおよび同義のコドンが以下の表2から選択される、請求項1記載の方法:
(表2)



【請求項3】
合成ポリヌクレオチドが、同じ条件下で親ポリヌクレオチドより強い、または増強された免疫応答を付与し、かつ、第一のおよび同義のコドンが以下の表3から選択される、請求項1記載の方法:
(表3)


【請求項4】
免疫応答選択性の比較において第二のコドンより高い免疫応答選択性を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの第二のコドンを選択する段階;および(b)コドンの免疫応答選択性の比較が以下の表4によって表される、該第二のコドンを同義のコドンに交換する段階、をさらに含む、請求項3記載の方法:
(表4)



【請求項5】
合成ポリヌクレオチドが、同じ条件下で親ポリヌクレオチドより弱いまたは低減された免疫応答を付与し、かつ、第一のコドンおよび同義のコドンが以下の表5から選択される、請求項1記載の方法:
(表5)



【請求項6】
合成ポリヌクレオチドが、同じ条件下で親ポリヌクレオチドより弱いまたは低減された免疫応答を付与し、かつ、第一のコドンおよび同義のコドンが以下の表6から選択される、請求項1記載の方法:
(表6)


【請求項7】
免疫応答選択性の比較において第二のコドンより低い免疫応答選択性を示すことに基づいて選択される同義のコドンに交換するために、親ポリヌクレオチドの第二のコドンを選択する段階;および(b)コドンの免疫応答選択性の比較が以下の表7によって表される、第二のコドンを同義のコドンに交換する段階、をさらに含む、請求項6記載の方法:
(表7)



【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に従って構築される、合成ポリヌクレオチド。
【請求項9】
合成ポリヌクレオチドが調節ポリヌクレオチドに機能的に接続される、請求項8に従って構築される合成ポリヌクレオチド構築物を含むキメラ構築物。
【請求項10】
標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する、免疫応答をモジュレートするために有用な、キメラ構築物と薬学的に許容される賦形剤および/または担体を含む薬学的組成物であって、ここで、該キメラ構築物は、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続された合成ポリヌクレオチドであり、かつ、親ポリヌクレオチドにおける第一のコドンを、第一のコドンとは異なる免疫応答選択性を有する同義のコドンへ交換されることによって該親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドを含み、ここで、該第一のコドンおよび同義のコドンが表2、3、5および6のいずれか1つに従って選択される、薬学的組成物。
【請求項11】
免疫応答の有効性を増強するアジュバントをさらに含む、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
経皮投与のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項13】
表皮投与のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項14】
皮膚投与のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項15】
皮内投与のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項16】
バイオリスティック送達のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項17】
マイクロニードル送達のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項18】
皮内注射のために製剤化される、請求項10記載の組成物。
【請求項19】
合成ポリヌクレオチドが、同じ条件下で親ポリヌクレオチドより強いまたは増強された免疫応答を付与し、かつ、第一のコドンおよび同義のコドンが表2または3に従って選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項20】
合成ポリヌクレオチドが、同じ条件下で親ポリヌクレオチドより弱いまたは低減された免疫応答を付与し、かつ、第一のコドンおよび同義のコドンが表5または6に従って選択される、請求項10記載の組成物。
【請求項21】
以下の段階を含む、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質をモジュレートする方法:調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されており、かつ、親ポリヌクレオチドにおける第一のコドンを、第一のコドンとは異なる免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドであって、ここで、第一のコドンおよび同義のコドンが表2、3、5および6のいずれか1つに従って選択される合成ポリヌクレオチドを哺乳動物に導入する段階。
【請求項22】
合成ポリヌクレオチドの発現によって、同じ条件下で親ポリヌクレオチドの発現を通して得られた免疫応答とは異なる質の免疫応答が得られる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
キメラ構築物が、哺乳動物の抗原提示細胞に構築物を送達することによって、哺乳動物に導入される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
キメラ構築物が、哺乳動物の皮膚および/または表皮に導入される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
キメラ構築物が、経皮投与によって哺乳動物に導入される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
キメラ構築物が、表皮投与によって哺乳動物に導入される、請求項21記載の方法。
【請求項27】
キメラ構築物が、皮内投与によって哺乳動物に導入される、請求項21記載の方法。
【請求項28】
キメラ構築物が、腹部の皮膚または表皮に導入される、請求項21記載の方法。
【請求項29】
免疫応答が細胞性免疫応答および液性免疫応答から選択される、請求項21記載の方法。
【請求項30】
免疫応答が液性免疫応答である、請求項21記載の方法。
【請求項31】
以下の段階を含む、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を増強する方法:調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されており、かつ、親ポリヌクレオチドにおける第一のコドンを、第一のコドンより高い免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドであって、ここで、第一のコドンおよび同義のコドンが表2または3に従って選択されて、それによって導入された合成ポリヌクレオチドの発現が、同じ条件下で親ポリヌクレオチドの発現によって付与された免疫応答よりも強いまたは増強された免疫応答を付与する合成ポリヌクレオチドを含むキメラ構築物を哺乳動物に導入する段階。
【請求項32】
以下の段階を含む、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする親ポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を低減させる方法:調節ポリヌクレオチドに機能的に接続されており、かつ、親ポリヌクレオチドにおける第一のコドンを、第一のコドンより低い免疫応答選択性を有する同義のコドンに交換することによって親ポリヌクレオチドとは区別される合成ポリヌクレオチドであって、ここで、第一のおよび同義のコドンが表5または6に従って選択され、それによって導入された合成ポリヌクレオチドの発現が、同じ条件下で親ポリヌクレオチドの発現によって付与された免疫応答よりも弱いまたは低減された免疫応答を付与する合成ポリヌクレオチドを含むキメラ構築物を哺乳動物に導入する段階。
【請求項33】
以下の段階を含む、標的抗原の少なくとも一部に対応するポリペプチドをコードする第一のポリヌクレオチドの発現によって付与される、哺乳動物における標的抗原に対する免疫応答の質を増強する方法:コドンが、低いまたは中間の免疫応答選択性を有し、

からなる群より選択される、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続した第一のポリヌクレオチドを含む第一の核酸構築物と、調節ポリヌクレオチドに機能的に接続しており、かつ、第一のポリヌクレオチドのコドンに対応するイソtRNAをコードする第二のポリヌクレオチドを含む第二の核酸構築物とを哺乳動物に同時導入する段階。
【請求項34】
コドンが、「低い」免疫応答選択性を有し、

からなる群より選択される、請求項33記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2011−500035(P2011−500035A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529192(P2010−529192)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際出願番号】PCT/AU2008/001463
【国際公開番号】WO2009/049350
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(505167565)ザ ユニバーシティー オブ クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】