説明

免疫応答を誘起するための組成物および方法

本発明は、免疫応答を誘起するための、特に癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起するための組成物、特に癌を処置および防止するための方法およびキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、35USC §119の下、2008年7月3日に出願された米国特許仮出願第61/077,922号の優先権を主張し、これは引用することにより全部、本明細書に編入する。
【0002】
発明の分野
本発明は、免疫応答を誘起するための、特に癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起するための組成物、方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌を処置する方法は、化学療法、放射線療法および手術の使用を含む。多数の腫瘍抗原の同定が、細胞に基づく治療を開発する試みを導いた。幾つかの方法は、腫瘍抗原、すなわち非腫瘍細胞よりは腫瘍細胞で優先的に発現されるポリペプチドを最初に同定することに依存した。例えば数種のヒト腫瘍抗原が黒色腫患者から単離され、そして同定および特性決定された。
【0004】
手術、放射線および化学療法を含む積極的な集学的治療にもかかわらず、癌患者の予後は比較的良くないままである。さらに癌に関する従来の治療の非特異的性質が、周辺の正常な、そして全身組織に対して無力化傷害を生じることが多い。したがって腫瘍細胞を標的とする効果的な治療および予防法を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
発明の要約
一つの観点では、本発明は癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対して個体に免疫応答を誘起する方法を提供する。この方法は、個体に、複数の発生細胞(developmental cell)抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を投与することを含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時に少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【0006】
別の観点では、本発明は発生細胞により発現される複数の抗原または複数の抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を提供する。この製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時、癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【0007】
他の観点では、本発明は予防または治療に有効な量の製薬学的に許容され得る組成物を提供し、ここで製薬学的に許容され得る組成物は、発生細胞により発現される複数の抗原または複数の抗原をコードする核酸を含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は個体に投与された時、癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【0008】
一つの観点では、本発明は癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対して個体に免疫応答を誘起する方法を提供する。この方法は個体に、有効量の抗原提示細胞、T−リンパ球または両方を含んでなる組成物を投与することを含んでなり、ここで抗原提示細胞およびTリンパ球は発生細胞により発現された複数の抗原の感作有効量でインビトロで
すでに感作されており、ここで有効量の抗原提示細胞、Tリンパ球または両方は少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起するために十分である。
【0009】
幾つかの観点では、本発明は癌抗原に感作された抗原提示細胞の作成法を提供し、この方法は抗原提示細胞を、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させることを含んでなる。
【0010】
一つの観点では、本発明は複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させた抗原提示細胞を含んでなる組成物を提供する。
【0011】
他の観点では、本発明は癌抗原特異的リンパ球の作成法を提供する。この方法は:
a)抗原提示細胞を、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させ;そして
b)リンパ球を工程a)の抗原提示細胞と、癌細胞に対する免疫応答を誘起できる癌抗原特異的リンパ球を生産するために十分な条件下で接触させる、
ことを含んでなる。
【0012】
一つの観点では、本発明は癌細胞に対する免疫応答を誘起できる癌抗原特異的リンパ球を生産するために十分な条件下で抗原提示細胞と接触させたTリンパ球を含んでなる組成物を提供し、ここで抗原提示細胞は複数の発生細胞抗原、または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロですでに接触されている。
【0013】
別の観点では、本発明は個体の癌を処置または防止する方法を提供し、この方法は、個体に本明細書に記載の組成物を治療または予防に有効な量で投与することを含んでなる。
【0014】
幾つかの観点では、本発明は、癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を個体に誘起する方法を提供し、この方法は個体に、複数の発生細胞抗原、または複数の発生細胞抗原をコードする核酸をエクスビボで負荷した樹状細胞を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を投与することを含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時、少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【0015】
他の観点では、本発明は癌細胞に対する免疫応答を個体に誘起する方法を提供し、この方法は複数の発生細胞抗原に対して生じた抗体を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を個体に投与することを含んでなる。
【0016】
別の観点では、本発明に従いキットが提供される。このキットは、発生細胞により発現される複数の抗原、または複数の抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は個体に投与された時、癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】全腫瘍RNAでワクチン接種した悪性星状細胞腫を持つマウスの生存パーセントに及ぼす効果を示すグラフである。
【図2】全胚RNAまたは全腫瘍RNAでワクチン接種した悪性神経膠腫を持つマウスの生存パーセントに及ぼす効果を比較するグラフである。
【図3】(a)増幅産物;および(b)インビトロ転写RNAを示すアガロースゲル電気泳動である。
【図4】CD133(−)RNAを用いた差引きハイブリダイゼーションを使用して、CD133(+)星状細胞腫中の癌幹細胞抗原を濃縮を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
出願人は、個体の癌細胞、特に癌幹細胞を、発生細胞により発現される抗原のコホートを使用することにより、または抗原をコードする核酸を使用することにより免疫的に標的化できることを見いだした。腫瘍の発生は、胎児発生中の胚細胞のように細胞の増殖的および侵襲状態を思い起こさせる組織分化の初期状態への先祖返りに似ている。すなわち広い種類の腫瘍でも発現される可能性がある特定の発生的に調節された抗原は、汎用的な腫瘍拒絶抗原として、例えば悪性疾患に対する免疫療法で役立つ可能性がある。本発明はこのように腫瘍抗原の単離および同定の必要性を回避することができる。
【0019】
例えば本発明は、限定するわけではないが脳の癌(例えば神経膠腫)、肺癌、肝臓癌、頚癌、軟部肉腫、内分泌腫瘍、造血器癌、黒色腫、膀胱癌、乳癌、すい臓癌、前立腺癌、結腸癌および卵巣癌の治療の開発に応用することができる。
【0020】
I.定義
本明細書において、用語「免疫応答」とは抗原または抗原決定基に対する免疫系による任意の応答を称する。例示的な免疫応答には体液性免疫応答(例えば抗原特異的抗体(中和化または別の様式の)の生産)および細胞媒介型免疫応答(例えばリンパ球増殖)を含む。
【0021】
本明細書において、用語「発生細胞」とは、胚細胞、胚性幹細胞(ESC)、胎児細胞、胎生幹細胞、胎盤細胞、胎盤前駆細胞、臍帯幹細胞、臍帯血由来の胚様細胞、および出生後、組織特異的前駆細胞を称する。「発生細胞」は、初代細胞またはそれらから得られた細胞株であることができ、増殖、形質転換、クローニングおよび/または他の任意の種類の操作を用いて、もしくは用いずに得られた安定な細胞株を含む。
【0022】
本明細書において、用語「発生細胞抗原」は、発生細胞により発現された抗原に相当する抗原を称する。
【0023】
II.方法および組成物
一つの観点では、本発明は癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対して個体に免疫応答を誘起する方法を提供する。この方法は個体に、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を投与することを含んでなり、ここで組成物は個体に投与された時に少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【0024】
一般に免疫応答には体液性免疫応答、細胞媒介型免疫応答、または双方を含むことができる。例えばMHCIIタンパク質が関与する免疫経路を介する抗原提示または直接的なB細胞刺激は、体液性応答を生じることができ、そしてMHCIタンパク質が関与する経路を介した抗原提示は、免疫系の細胞性部門(cellular arm)を誘起することができる。
【0025】
体液性応答は、製薬学的に許容され得る組成物を受容している個体に由来する血清サンプル中の抗体レベルに関する標準的イムノアッセイにより測定することができる。細胞性免疫応答はT細胞が関与する応答であり、そしてインビトロもしくはインビボで測定することができる。例えば全身的な細胞性免疫応答は、製薬学的に許容され得る組成物の投与
後の適切な時間に、個体からサンプリングした細胞中(例えば末梢血白血球(PBL))のT細胞増殖活性として測定することができる。例えば末梢血単核細胞(PBMC)と刺激物とを適切な期間インキュベーションした後、[H]チミジンの取り込みを測定することができる。増殖しているT細胞のサブセットは、フローサイトメトリーを使用して測定することができる。T細胞傷害性(CTh)も測定することができる。
【0026】
一つの態様では、誘起される免疫応答は新形成疾患またはそれに随伴する症状、特に癌(例えば腫瘍)の予防的または治療的処置に十分である。したがって製薬学的に許容され得る組成物の有利な効果は、一般に少なくとも一部は免疫媒介型となるが、本明細書に記載する組成物および方法が本発明の範囲に入るために免疫応答が陽性に示される必要はない。
【0027】
ヒトおよびヒト以外の脊椎動物の両方への投与が本発明の範囲では企図されている。獣医学的応用も企図される。一般に個体は、免疫応答を誘起することができる任意の生物である。個体の例には限定するわけではないが、ヒト、家畜、イヌ、ネコ、マウス、ラットおよびそれらのトランスジェニック種を含む。
【0028】
個体は新形成疾患(例えば腫瘍)を有するか、あるいは新形成疾患発症の危険性があるいずれかであることができる。個体は臨床的基準により、例えば進行した新形成疾患または臨床的に測定可能な腫瘍を現している高い全身腫瘍組織量を有するものについて特徴付けることができる。臨床的に測定可能な腫瘍は腫瘍塊に基づき検出できるものである(例えば触診、MRI、CATスキャン、X線による)。このように例えば本発明による製薬学的に許容され得る組成物は、個体の状態を緩和する目的で進行した疾患を有する個体に投与することができる。好ましくは腫瘍塊の減少が本発明の製薬学的に許容され得る組成物の投与の結果として起こるが、任意の臨床的改善が利益を構成する。臨床的改善には、例えば進行の危険性もしくは速度の低下、または病理学的結果としての腫瘍の減少を含む。
【0029】
別の例として、個体は癌の病歴があり、そして別の治療法に反応してきた者であることができる。この他の療法には例えば、外科的切除、放射線療法、化学療法および他の免疫療法の様式を含んだかもしれない。そしてこの他の治療による結果として個体は臨床的に測定できる腫瘍を示さない。しかし個体は元の腫瘍の部位の近くに、または転移によるいずれかにより癌の再発または進行の危険性があると診断された個体であることができる。そのような個体はさらに高リスクおよび低リスク個体と分類することができる。この細分は初期の処置前または後に観察される特徴に基づき作成することができる。これらの特徴は臨床分野では知られており、そしてそれぞれ異なる癌について適切に定められる。高リスクのサブグループに典型的な特徴は、腫瘍が近接した組織に浸潤しているか、またはリンパ節への関与を示すものである。すなわち例えば本発明の製薬学的に許容され得る組成物は、再発に対する予防的手段として主に抗癌応答を誘起するために個体に投与することができる。好ましくは組成物の投与は癌の再発を遅らせ、あるいはさらに好ましくは再発の危険性を減らす(すなわち治癒率の向上)。そのようなパラメーターは、他の患者集団および他の治療様式と比較して測定することができる。
【0030】
製薬学的に許容され得る組成物は、適切な任意の時期に投与することができる。例えば投与は、全身腫瘍組織量を有する個体の従来の治療前またはその最中に行い、そして腫瘍が臨床的に検出できなくなった後まで続けることができる。また投与は再発の兆候を示す個体に続けることができる。
【0031】
癌細胞は任意の種類の癌であることができ、限定するわけではないが脳の癌(すなわち神経膠腫)、肺癌、肝臓癌、頚癌、軟部肉腫、内分泌腫瘍、造血器癌、黒色腫、膀胱癌、
乳癌、すい臓癌、前立腺癌、結腸癌、卵巣癌、皮膚癌およびそれらの組み合わせを含む。また癌は良性または悪性と特徴付けることができる。一つの態様では、癌は悪性度が高い神経膠腫である。別の態様では、悪性度が高い神経膠腫は多形性神経膠芽腫、未分化神経膠星状細胞腫または希突起神経膠腫である。
【0032】
製薬学的に許容され得る組成物は、治療または予防に有効な量で投与されることができ、ここで製薬学的に許容され得る組成物は複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸を単独、または1もしくは複数の他の抗原と組み合わせて含んでなる。本発明の製薬学的に許容され得る組成物の個体への投与は、既知の手法を使用して、そして所望する効果を達成するために十分な投薬用量および期間で行うことができる。例えば製薬学的に許容され得る組成物の治療または予防に有効な量は、個体の年齢、性別および体重といった因子に従い変動することができる。投薬計画は、治療または予防効果を提供する免疫応答を含む所望の免疫応答を誘起するために、当業者により調整され得る。
【0033】
製薬学的に許容され得る組成物は、個体の任意の適切な部位に、例えば原発腫瘍に対して遠位または近位部位に投与することができる。投与経路は非経口、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、鼻内、静脈内(留置カテーテルの仲介を含む)に、輸入リンパ管を介して、または処置する新形成疾患および個体の状態の点から適切な他の経路によることができる。好ましくは用量は所望の応答をもたらすために効果的な量および期間で投与され、それは免疫応答、または新形成疾患またはそれに随伴する症状の予防的もしくは治療的処置を誘起する。
【0034】
製薬学的に許容され得る組成物は、個体に免疫応答を誘起する治療を含む他の治療に引き続いて、その前にまたはそれと同時存在的にも与えることができる。例えば個体は化学療法(例えばテモゾロミドのようなアルキル化剤)、放射線療法、および本発明の組成物の免疫原性を妨害しないように好ましく提供される他の治療のような他の形態の免疫療法により前以て、または同時に処置されることができる。
【0035】
投与は介護者(例えば医師、獣医師)により正しく時期を決められ、そして個体の臨床的状態、投与の目的および/または企図されるか、または投与される他の治療に依存することができる。幾つかの態様では、初期用量が投与され、そして個体は免疫的または臨床的応答のいずれか、好ましくは両方について監視される。免疫的監視の適切な手段には、患者の末梢血リンパ球(PBL)を応答物として、そして新形成細胞を刺激物として使用することを含む。また免疫反応は投与部位の遅延型炎症応答により測定することもできる。初期投与に続いて1もしくは複数回の投与を、適切に、典型的には毎月、半月毎に、または好ましくは週単位で所望の効果に達するまで与えることができる。その後、追加免疫感作または維持用量を必要に応じて、特に免疫または臨床的利益が消えた(subside)と思われる時に与えることができる。
【0036】
胎児発生中および胚性幹細胞内に発現される多くの発生的に調節されるタンパク質は、哺乳動物種間(および場合によってはショウジョウバエ(Drosophila)においても)で保存されており、そしてヒトのタンパク質および核酸レベルで高度な相同性を表す。したがって異種の胚組織抗原および胚性幹細胞抗原は、本発明による使用のためにヒトの胚抗原の適切な代替物を表すことができる抗原の例である。一つの態様では、複数の発生細胞抗原は個体に対して異種系、同種系、またはオートロガスである。別の態様では、複数の発生細胞抗原は、個体に対して異種系であり、この複数の発生細胞抗原は、個体に対して異種の発生細胞により発現される抗原に対応する。
【0037】
以下にさらに具体的に説明するように、製薬学的に許容され得る組成物は、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸を含んでなる。
【0038】
A.核酸
一般に個体は、核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を任意の非経口経路を介して接種されることができる。例えば個体は静脈内、腹腔内、皮内、皮下、吸入または筋肉内経路により、あるいは遺伝子銃を使用した粒子衝撃により接種されることができる。好ましくは筋肉組織はポリヌクレオチドの送達および発現の部位となることができる。ポリヌクレオチドの用量は、例えば長期間にわたり投与を延長するために多数回および/または反復注射により筋肉内に投与することができる。すなわち筋肉細胞は、複数の発生細胞抗原をコードするポリヌクレオチドを注射されることができ、そして発現した抗原は、発生細胞抗原に対する免疫応答を誘起するために、主要組織適合性遺伝子複合体の抗原の状態で、筋肉細胞により提示されることができる。
【0039】
表皮は、例えば直接的注射または粒子衝撃のいずれかによるポリヌクレオチドの送達および発現のための別の有用な部位となることができる。ポリヌクレオチドの用量は、長期間にわたり投与を延ばすために、例えば多回注射または衝撃により表皮に投与することができる。例えば皮膚細胞に複数の発生細胞抗原をコードするポリヌクレオチドを注射することができ、そして発現した抗原は、発生細胞抗原に対する免疫応答を誘起するために、主要組織適合性遺伝子複合体の抗原の状態で、皮膚細胞により提示されることができる。
【0040】
また個体は粘膜経路により接種されることもできる。ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド含有点鼻剤、吸入薬、座薬、微小球カプセル化ポリヌクレオチドを含むさまざまな方法により、またはポリヌクレオチドを被覆した金粒子の衝撃により粘膜表面に投与することができる。例えば複数の発生細胞抗原をコードする核酸は、呼吸粘膜表面に投与することができる。
【0041】
注射のための塩水、または粒子衝撃のための金粒子のような適切な生理学的に適合する媒体がポリヌクレオチドを個体に導入するために適切している。
【0042】
1.RNA
幾つかの態様では、製薬学的に許容され得る組成物は複数の発生細胞抗原をコードする核酸を含んでなる。一つの態様では、複数の抗原をコードする核酸はRNA、例えば細胞の全RNAおよび/またはpolyARNAを含んでなる。RNAは、複数の発生細胞抗原を提供するアミノ酸鎖の細胞内合成を導くために、転写可能なRNA鋳型を含んでなる。複数の発生細胞抗原をコードするRNAは、インビトロで転写されることもでき、例えば逆転写されてcDNAを生産し、これは次に所望によりPCRにより増幅され、所望により引き続きcDNAのクローニングを使用して、または使用せずにインビトロで転写され得る。
【0043】
また含まれるのは、タンパク質、脂質および/またはDNAのような非RNA成分の濃度を下げ、それによりRNAの調製物の濃縮するために、非RNA成分(1もしくは複数)に関する分別調製物として提供されるRNAである。すなわちRNAがRNAおよび非RNA成分を含んでなる調製物から提供される場合、この調製物は分画または別の方法で処理されて調製物中に存在する可能性があるタンパク質、脂質および/またはDNAの濃度を下げ、そして調製物中のRNAを濃縮することができる。例えば当業者に知られているRNA精製法を使用して少なくとも部分的にRNAを精製することができる。任意にRNA調製物はプロテアーゼまたはRNアーゼを含まないDNアーゼを用いて処理される。
【0044】
場合によりRNA調製物は、例えば癌幹細胞特異的RNAが提供されるように、RNAに関して分画されることもできる(例えば差引きハイブリダイゼーションにより)。発生
細胞と発現プロファイルを共有することができる腫瘍細胞の幹細胞画分内で発現される抗原は、この取り組みにより効率的に標的とされることができる。癌幹細胞は、標準的治療に対してより耐性であり、そして腫瘍の再発に貢献することができる。したがって差引きハイブリダイゼーションのような技術は、癌幹細胞のサブセットで特異的に発現される抗原を濃縮するために利用することができ、したがって差引きハイブリダイゼーションを使用して例えば正常な分娩後組織中で発現される抗原をコードするRNAを含まないRNA調製物を提供することができる。そのような分画は、正常組織で発現され得る抗原をコードするRNAの少なくとも一部を除去することにより、悪性細胞中で発現される共有(shared)発生細胞抗原をコードするRNAを提供することができる。
【0045】
このように例えば正常な成人組織由来のRNAを使用して差引きハイブリダイゼーションを行うことができる。したがって一つの態様では、複数の発生細胞抗原をコードする核酸は、成人細胞では転写されないか、または成人細胞中で転写されるならば、発生細胞に比べて実質的に低下したレベルで発現されるRNA転写産物について濃縮される。
【0046】
複数の発生細胞抗原をコードするRNAを調製するために、当業者は多くの方法を利用することができる。例えば放出された全RNAを含んでなる発生細胞調製物は、Opti−MEM(登録商標)のような哺乳動物細胞の培養基またはリン酸緩衝化生理食塩水のようなバッファー中で発生細胞を超音波処理することにより調製することができる。細胞を破壊するための他の方法も、その方法がRNAを完全に分解しなければ適している。例えばRNAは、イソシアン酸グアニジニウム法および/またはpolyARNAを単離するためのオリゴdTクロマトグラフィー法のような通例のRNA精製法を使用することにより調製することもできる。また、例えば発生細胞から調製されたRNAをcDNAに逆転写させることができ、次いでこれは通常のPCR法により増幅させて、抗原をコードするRNAに対応するcDNAの本質的に非限定的供給を提供することができる。通常のインビトロ転写技術および細菌ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写されたRNAを生産するか、あるいはインビトロで転写されたRNAは複数の発生細胞抗原をコードするクローン化DNA配列から合成することができる。
【0047】
2.DNA
別の態様では、複数の発生細胞抗原をコードする核酸は、複数の発生細胞抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するDNAを含んでなる。例えば複数の発生細胞抗原をコードするDNAのオープンリーディングフレームを有する発現ベクターを含んでなる製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与されることができる。
【0048】
複数の発生細胞抗原をコードするオープンリーディングフレームを含んでなるゲノムDNAフラグメントおよび/またはcDNAを、本発明の方法に使用することができる。cDNAは、複数の発生細胞抗原をコードする上記RNAから当業者に知られている技術を使用して調製することができる。
【0049】
DNAは例えば物理的な断片化により、または好ましくは酵素的分解により、すなわち制限エンドヌクレアーゼの使用により断片化され得る。断片化法は当業者には周知であり、そしてサイズおよび組成が異なるフラグメントを得るために変えることができる(例えば異なる制限エンドヌクレアーゼまたは組み合わせ、および消化時間を使用することによる)。複数の発生細胞抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するDNAまたはそのフラグメントは、当該技術分野で既知の方法および試薬により発現ベクターにクローン化することができる。例えば発現ベクターのライブラリーまたはそのサブ−ライブラリーを含んでなる製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与されることができる。
【0050】
DNA発現ライブラリーの調製は、周知方法により行うことができる。選択可能なマー
カー(例えばアンピシリン)および好ましくは複製起点(例えばori)および適切なプロモーターを有する標準的なクローニングベクターを使用することができる。次いで細菌(例えば大腸菌(E.coli))または他の適切な宿主がベクターにより形質転換され、そして形質転換体が標準的手順により培養され、そしてプラスミドDNAがクロマトグラフィーまたは有機分離のような方法により単離される。例えばプラスミドは、オープンリーディングフレームにより発現される複数の抗原を、MHCIまたはIIに向けることができる部位へクローニングするために利用できる。免疫応答を誘起するために使用される発現ベクターおよびその使用法は、米国特許出願公報第20040241140号明細書に記載され、これは免疫応答を誘起するために使用される発現ベクターおよびその使用法の教示に関して本明細書に編入される。
【0051】
細胞に取り込まれた場合(例えば筋肉細胞、樹状細胞のような抗原提示細胞(APC)、マクロファージ等)、DNA分子は染色体外分子として細胞中に存在でき、かつ/または染色体に組み込まれることができる。DNAはプラスミドの状態で細胞に導入されることができ、これは別個の遺伝子物質として留まることができる。あるいは染色体に組み込まれることができる線状DNAを細胞に導入することができる。場合によっては、DNAを細胞に導入する場合、DNAの染色体への組み込みを促進する試薬を加えることができる。
【0052】
このように好ましくはDNAは、オープンリーディングフレームの発現に必要な調節要素を含む。そのような要素には例えば、プロモーター、開始コドン、終止コドンおよびポリアデニレーションシグナルを含むことができる。さらに、エンハンサーを含むことができる。当該技術分野で知られているように、これらの要素は好ましくは発生細胞抗原をコードする配列に操作可能に連結される。調節要素は好ましくは、それらが投与される個体の種で操作可能であるように選択される。コーディング配列を含むフレイム内に開始コドンおよび終止コドンが含まれることが好ましい。
【0053】
プロモーターの例には限定するわけではないが、サルウイルス40(SV40)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、HIV長末端反復配列(LTR)プロモーターのようなヒト免疫不全ウイルス(HIV)、モロニーウイルス、CMV前初期プロモーターのようなサイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバールウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)に由来するプロモーター、ならびにヒト アクチン、ヒト ミオシン、ヒト ヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチンおよびヒトメタロチオネインのようなヒトの遺伝子に由来するプロモーターを含む。適切なポリアデニレーションシグナルの例には、限定するわけではないがSV40ポリアデニレーションシグナルおよびLTRポリアデニレーションシグナルがある。
【0054】
DNA発現に必要な調節要素に加えて、他の要素もDNA分子に含んでよい。そのような追加の要素にはエンハンサーがある。エンハンサーには上記プロモーターを含む。好適なエンハンサー/プロモーターには、例えばヒト アクチン、ヒト ミオシン、ヒト ヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、およびCMV、RSVおよびEBVに由来するもののようなウイルスエンハンサーがある。
【0055】
任意にDNAは担体または送達ベクターに操作可能に取り込まれることができる。有用な送達ベクターには限定するわけではないが、生分解性マイクロカプセル、免疫刺激複合体(ISCOM)またはリポソーム、およびウイルスまたは細菌のように遺伝的に工作されて弱毒化された生担体がある。
【0056】
任意にまたDNAは、細胞による遺伝物質の取り込みを改善する試薬を提供されることができる。例えばDNAは安息香酸エステル、アニリド、アミジンおよびウレタンからな
る群から選択される取り込み促進試薬と一緒に配合されるか、またはそれと一緒に投与されることができる。
【0057】
B.抗原
他の態様では、製薬学的に許容され得る組成物は複数の発生細胞抗原を含んでなる。複数の発生細胞抗原は、例えば全細胞ライセート、タンパク質またはペプチド抽出物、細胞物質(例えば生または不活化細胞)、限定するわけではないが細胞屑、アポトーシス細胞のような粒状物質、リポソーム、膜小胞、微小球等のような脂質凝集物を含む任意の形態であることができる。
【0058】
一つの態様では、複数の発生細胞抗原は発生細胞を含んでなる。発生細胞は製薬学的に許容され得る組成物中に存在し得る他の成分と直接的に組み合わせることができる。所望により、発生細胞はいったん個体に投与されれば増殖を最小にするか、または防ぐために不活性化されることができる。不活性化のための任意の物理的、化学的または生物学的手段を使用することができ、それらには限定するわけではないが、放射線照射およびマイトマイシンCでの処理を含む。また発生細胞は、グルタルアルデヒド、パラホルムアルデヒドまたはホルマリンのような化学品で固定することができる。またそれらは、デオキシコレートまたはオクチルグルコシドのようなイオン性または非イオン性界面活性剤中にあることができ、あるいは例えばウイルスを使用して処理することができる。
【0059】
所望により、発生細胞の可溶化細胞懸濁液を清澄化するか、または任意の数の標準的な生化学分離法にかけて、例えば免疫沈降またはアフィニティ精製スキームを使用して複数の抗原を濃縮することができる。複数の抗原の濃縮度は、少なくとも全細胞ライセートの2、3、4、6、8、10倍以上、またはさらに好ましくは100倍以上である。一つの態様では、発生細胞の外膜に付随する抗原が濃縮される。
【0060】
製薬学的に許容され得る組成物の他の成分と合わせる前に、発生細胞からそれらを処理するために使用した化学品を、例えば遠心および固定した細胞の洗浄、または可溶化懸濁物の透析により激減させることができる。好ましくは細胞を培養するために使用してよい成長培地および/または因子は、少なくとも一部が細胞調製物から除去される。例えば培養基中の血清(例えばウシ胎児血清、ウシ血清)成分、または他の生物的補充物は、そのような成分に対する免疫学的副作用を回避するために除去することができる。
【0061】
例えば製薬学的に許容され得る組成物の細胞成分は、反復遠心によるように、適切な薬理学的に適合性のある賦形剤中へと洗浄することができる。適合性のある賦形剤には、リン酸塩もしくはHEPESのような生理学的に適合性のあるバッファー、およびデキストロースのような栄養、生理学的に適合性のあるイオン、またはアミノ酸を含むか、または含まない等張性塩水、ならびに発生細胞群、特に他の免疫原性成分を含まないものを含む使用に適する種々の培養基がある。アルブミンおよび血漿画分のような運搬試薬(carrying reagent)、および不活性増粘剤も使用できる。製薬学的に許容され得る組成物中に存在する限り、不活性生物成分は好ましくは同じ種に由来し、そしてさらに一層好ましくは投与する個体から事前に得られる。
【0062】
C.樹状細胞療法
当業者は、樹状細胞(DC)をインビトロで生成する能力も、本発明にしたがい複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸をDCにエクスビボで負荷し、そして癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起するための戦略としての「DCワクチン」の投与に使用することができると認識している。臨床前実験では、DCがBおよびTリンパ球でデノボおよびリコール応答(recall response)の有力なアクチベーターになることが示された。
【0063】
幾つかの態様では、本発明は癌細胞により発現される少なくとも一つの抗原に対して個体に免疫応答を誘起する方法を提供し、この方法は個体に、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸をエクスビボで負荷した樹状細胞を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を個体に投与することを含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時に少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起する。
【0064】
したがって、本発明の発生細胞抗原に感作した抗原提示細胞およびこれらの抗原提示細胞で生成した発生抗原特異的Tリンパ球は、予防または治療的応用のための免疫調節組成物において活性化合物として使用することができる。以下に記載するように、幾つかの態様では、本発明の抗原に感作した抗原提示細胞は、個体への養子免疫伝達のための細胞傷害性Tリンパ球(CTL)(例えばCD8+またはCD4+CTL)の生成に使用することができる。
【0065】
D.組成物
他の観点では、本発明は発生細胞により発現される複数の発生細胞抗原または複数の抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を提供する。この製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時、発生細胞の少なくとも一つの抗原に対する免疫応答を誘起することができる。本発明の製薬学的に許容され得る組成物は新形成疾患またはその症状の予防的または治療的処置、特に個体の癌(または腫瘍)の防止または処置のためのワクチン組成物として有用となることができる。
【0066】
発生細胞により発現される複数の抗原、または複数の抗原をコードする核酸は上記の通りである。幾つかの態様では、製薬学的に許容され得る組成物はさらに生理学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含んでなる。配合および投与に関する技法は、レミングトンの製薬科学(Remington’s Pharmaceutical Science),マック出版社(Mack Publishing Co.,)イーストン、ペンシルバニア州の最新版に見いだすことができる。
【0067】
当該技術分野で知られている製薬学的に許容され得る担体には、限定するわけではないが滅菌水、塩水、グルコース、デキストロースまたは緩衝液がある。希釈剤、安定化剤(例えば糖およびアミノ酸)、保存剤、浸潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、粘度を強める添加剤等の作用物質。好ましくは培地および担体は最小の副作用を生じるか、または副作用がない。
【0068】
他の態様では、製薬学的に許容され得る組成物はさらに生理学的に許容され得るアジュバントを含んでなる。好ましくは使用するアジュバントは免疫原性の上昇を提供する。アジュバントは抗原の遅延型放出(slow release)を提供できるものであることができるか(例えばアジュバントはリポソームであることができる)、または本来免疫原性であり、それにより抗原と相乗的に機能することができるアジュバントであり得る。例えばアジュバントは核酸の取り込みを促進し、免疫系の細胞を投与の部位に補充し、または応答するリンパ節細胞の免疫賦活化を促進する既知のアジュバントまたは他の物質であることができる。アジュバントには限定するわけではないが、免疫調節分子(例えばサイトカイン)、油と水のエマルジョン、水酸化アルミニウム、グルカン、硫酸デキストラン、酸化鉄、アルギン酸ナトリウム、Bacto−アジュバント、ポリアミノ酸のような合成ポリマーおよびアミノ酸のコポリマー、サポニン、パラフィン油およびムラミルジペプチドがある。
【0069】
幾つかの態様では、アジュバントは不完全フロイントアジュバント(Montanid
e ISA 51)またはコリネバクテリウム グラニュロサム(Corynebacterium granulosum)P40を含んでなる。
【0070】
一つの態様では、アジュバントは免疫調節分子を含んでなる。例えば免疫調節分子は組換えタンパク質サイトカイン、ケモカイン、または免疫刺激剤、または免疫応答を強化するように設計されたサイトカイン、ケモカインもしくは免疫刺激剤をコードする核酸であることができる。アジュバントは、複数の抗原または複数の抗原をコードする核酸と組み合わせるか、またはそれらに結合させることができる。ベクターから発現できないアジュバントは、同時に、または任意の順序で順次投与することができる。
【0071】
免疫調節サイトカインの例には、インターフェロン(例えばIFNα、IFNβおよびIFNγ)、インターロイキン(例えばIL−1,IL−2,IL−3,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−8,IL−9,IL−10,IL−12およびIL−20)、腫瘍壊死因子(例えばTNFαおよびTNFβ)、エリスロポエチン(EPO)、FLT−3リガンド、gIp10,TCA−3,MCP−1,MIF,MIP−1α,MIP−1β,ランテス、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、および顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ならびに前記の任意の機能的フラグメントがある。ケモカイン受容体、すなわちCXC,CC,CまたはCX3Cケモカイン受容体に結合する任意の免疫調節サイトカインも本発明の内容において使用することができる。ケモカインの例には限定するわけではないが、Mip1α,Mip−1β,Mip−3α(Larc),Mip−3β,ランテス,Hcc−1,Mpif−1,Mpif−2,Mcp−1,Mcp−2,Mcp−3,Mcp−4,Mcp−5,Eotaxin,Tarc,Elc,I309,IL−8,Gcp−2 Gro−α,Gro−β,Gro−γ,Nap−2,Ena−78,Gcp−2,Ip−10,Mig,I−Tac,Sdf−1およびBca−1(Blc)、ならびに前記の任意の機能的フラグメントがある。
【0072】
別の態様では、アジュバントは:GM−CSF,G−CSF,IL−2,IL−4,IL−7,IL−12,IL−15,IL−21,TNF−αおよびM−CSFからなる群から選択されるサイトカインを含んでなる。幾つかの態様では、アジュバントはフロイントアジュバント(Montanide ISA 51)またはコリネバクテリウム グラニュロサム(Corynebacterium granulosum)P40を含んでなる。例えば一つの態様では、GM−CSFまたはIL−7をコードする配列は、発生細胞抗原をコードするオープンリーディングフレームを有するベクターに、あるいは抗原が投与される時と同時またはその時期に投与される別のベクターに含むことができる。別の態様では、製薬学的に許容され得る組成物は、発生細胞または細胞株の状態で発生細胞により発現される複数の抗原を含んでなり、ここで発生細胞または細胞株は、免疫刺激を提供するためにサイトカインを生産するように遺伝的に改変されて、複数の抗原に対して特異的免疫応答を生じる。幾つかの態様では、製薬学的に許容され得る組成物は、発生細胞または細胞株の状態で発生細胞により発現される複数の抗原;および1もしくは複数のサイトカイン発現細胞株を含んでなる。そのような組成物は、適切な数のサイトカイン生産細胞を含めることにより、または複数のサイトカインを適切な比率で生産するような細胞のカクテルを用いて、各タイプの癌に、または各個体用に誂えることができる。
【0073】
当業者は本発明の方法および組成物が、例えば限定するわけではないが化学療法剤、免疫療法剤、免疫調節物質、抗−血管形成剤、およびホルモン剤のような1もしくは複数の他の作用物質を含んでなる方法および/または組成物のような併用療法(combination therapy)の一部として使用することができることを知っている。様々な態様において、1もしく複数の他の作用物質は、例えば「癌の化学療法剤(Cancer Chemotherapeutic Agents)」、アメリカ化学学会、199
5,W.O.Foye編集により記載されているように、天然または合成の化学療法剤であることができる。
【0074】
一つの態様では、化学療法剤は、低分子低分子受容体アンタゴニスト、例えばausバタラニブ、SU 11248またはAZD−6474、EGFRまたはHER2アンタゴニスト、例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、CI−1033またはヘルセプチン、抗体、例えばベバシズマブ、セツキシマブ、リツキシマブ、DNAアルキル化剤、例えばシスプラチン、オキサリプラチンまたはカルボプラチン、アントラサイクリン、例えばドキソルビシンまたはエピルビシン、代謝拮抗物質、例えば5−FU、ペメトレクスド、ゲムシタビンまたはカペシタビン、カンプトテシン、例えばイリノテカンまたはトポテカン、抗癌剤、例えばパクリタキセルまたはドセタキセル、エピドフィロトキシン、例えばエトポシドまたはテニポシド、プロテアソームインヒビター、例えばボルテゾミブ、あるいは抗炎症剤、例えばセレコキシブまたはロフェコキシブを、場合によっては製薬学的に許容され得る塩の状態で、水和物および/または溶媒和物の状態で、そして場合によっては個々の光学異性体の状態で、それらの個々のエナンチオマーまたはラセミ体の混合物でなる群から選択される。
【0075】
別の態様では、化学療法剤は、低分子VEGF受容体アンタゴニスト、例えばバタラニブ(PTK−787/ZK222584),SU−5416,SU−6668,SU−11248,SU−14813,AZD−6474,AZD−2171,CP−547632,CEP−7055,AG−013736,IM−842またはGW−786034、二重EGFR/HER2アンタゴニスト、例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、CI−1033またはGW−2016、EGFRアンタゴニスト、例えば、イレッサ(ZD−1839)、タルセバ(OSI−774)、PKI−166、EKB−569、HKI−272またはヘルセプチン、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼのアンタゴニスト、例えばBAY−43−9006またはBAY−57−9006、キナゾリン誘導体、例えば、4−〔(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ〕−6−{〔4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル〕アミノ}−7−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−キナゾリンまたは4−〔(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ〕−6−{〔4−(ホモモルホリン−4−イル)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル〕アミノ}−7−〔(S)−(テトラヒドロフラン−3−イル)オキシ〕−キナゾリン、またはこれらの製薬学的に許容され得る塩、合成小分子のもとに分類されないタンパク質キナーゼ受容体アンタゴニスト、例えばアトラセンタン、リツキシマブ、セツキシマブ、アバスチン.TM.(ベバシズマブ)、IMC−1C11、エルビツクス(C−225)、DC−101、EMD−72000、ビタキシン、イマチニブ、タンパク質チロシンキナーゼインヒビター(これは融合タンパク質である)、例えばVEGFトラップ、アルキル化剤または白金化合物、例えばメルファラン、シクロホスファミド、オキサザホスホリン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、テトラプラチン、イプロプラチン、マイトマイシン、ストレプトゾシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ブスルファン、イフォスファミド、ストレプトゾシン、チオテパ、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード、例えば、メクロレタミン、エチレンイミン化合物、アルキルスルホネート、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームのドキソルビシン(ドキシル)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ダクチノマイシン、ジスタマイシンまたはそれらの誘導体、ネトロプシン、ピメンジモール、マイトマイシン、CC−1065、デュオカルマイシン、ミトラマイシン、クロモマイシン、オリボマイシン、フタラニリド、例えばプロパミジンまたはスチルバミジン、アントラマイシン、アジリジン、ニトロソウレアまたはその誘導体、ピリミジンまたはプリン類似体またはヌクレオシドジホスフェートレダクターゼのアンタゴニストもしくはインヒビター、例えば、シタラビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ペメトレキセド、テガフル/ウラシル、ウラシルマスタード、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メルカプトプリン、クラドリビン、チオグアニン、メトトレキセート、ペントスタチン、ヒドロキシウレア、または葉酸、フレオマイシン、ブレオマイシンまたはその誘導体もしくは塩、CHPP、BZPP、MTPP、BAPP、リブロマイシン、アクリジンまたはその誘導体、リファマイシン、アクチノマイシン、アドラマイシン、カンプトテシン、例えばイリノテカン(カンプトサー)またはトポテカン、アムサクリンまたはその類似体、三環式カルボキサミド、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、例えばSAHA、MD−275、トリコスタチンA、CBHA、LAQ824、またはバルプロ酸、植物由来の抗癌剤、例えばパクリタキセル(タキソール)、ドセタキセルまたはタキソテール、ビンカアルカロイド、例えばナベルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンまたはビノレルビン、トロポロンアルカロイド、例えばコルヒシンまたはその誘導体、マクロリド、例えばマイタンシン、アンサミトシンまたはリゾキシン、抗有糸分裂ペプチド、例えばフォモプシンまたはドラスタチン、エピポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシンの誘導体、例えばエトポシドまたはテニポシド、ステガナシン、抗有糸分裂カルバメート誘導体、例えばコムブレタスタチンまたはアンフェチニル、プロカルバジン、プロテアソームインヒビター、例えばボルテゾミブ、酵素、例えばアスパラギナーゼ、ペギル化アスパラギナーゼ(ペガスパルガーゼ)またはチミジン−ホスホリラーゼインヒビター、ゲスタゲンまたはエストロゲン、例えばエストラムスチン(T−66)またはメゲストロール、アンチアンドロゲン、例えばフルタミド、カソデクス、アナンドロンまたはシプロテロンアセテート、アロマターゼインヒビター、例えばアミノグルテチミド、アナストロゾール、ホルメスタンまたはレトロゾール、GNrH類似体、例えばリュープロレリン、ブセレリン、ゴセレリンまたはトリプトレリン、アンチエストロゲン、例えばタモキシフェンまたはそのクエン酸塩、ドロロキシフェン、トリオキシフェン、ラロキシフェンまたはジンドキシフェン、17β−エストラジオールの誘導体、例えばICI 164,384またはICI 182,780、アミノグルテチミド、ホルメスタン、ファドロゾール、フィナステリド、ケトコナゾール、LH−RHアンタゴニスト、例えばロイプロリド、ステロイド、例えばプレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ブデノシド、フルオコルトロンまたはトリアムシノロン、インターフェロン、例えばインターフェロンβ、インターロイキン、例えばIL−10またはIL−12、抗TNFα抗体、例えばエタネルセプト、免疫調節剤、例えばサリドマイド、そのR−鏡像体及びS−鏡像体およびにその誘導体、またはレビミド(CC−5013)、ロイコトリエンアンタゴニスト、マイトマイシンC、アジリドキノン、例えばBMY−42355、AZQまたはEO−9、2−ニトロイミダゾール、例えばミソニダゾール、NLP−1またはNLA−1、ニトロアクリジン、ニトロキノリン、ニトロピラゾロアクリジン、“二重機能”ニトロ芳香族化合物、例えばRSU−1069またはRB−6145、CB−1954、ナイトロジェンマスタードのN−オキサイド、例えばニトロミン、ナイトロジェンマスタードの金属錯体、抗CD3抗体または抗CD25抗体、トレランス誘導剤、ビホスホネートまたはその誘導体、例えばミノドロン酸またはその誘導体(YM−529、Ono−5920、YH−529)、ゾレドロン酸一水和物、イバンドロネートナトリウム水和物またはクロドロネート二ナトリウム、ニトロイミダゾール、例えばメトロニダゾール、ミソニダゾール、ベンズニダゾールまたはニモラゾール、ニトロアリール化合物、例えばRSU−1069、ニトロキシルまたはN−オキサイド、例えばSR−4233、ハロゲン化ピリミジン類似体、例えばブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、チオホスフェート、例えばWR−272 1、光化学活性化剤、例えばポルフィマー、フォトフリン、ベンゾポルフィリン誘導体、フェオホルビド誘導体、メロシアニン540(MC−540)またはスズエチオポルプリン、アンチテンプレートまたはアンチセンスRNAまたはDNA、例えばオブリメルセン、非ステロイド炎症薬、例えばアセチルサリチル酸、メサラジン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルビプロフェン、フェノプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ミロプロフェン、チオキサプロフェン、スプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、インドメタシン、スリンダック、トルメチン、ゾメピラック、ナブメトン、ジクロフェナック、フェンクロフェナック、アルクロフェナック、ブロムフェナック、イブフェナック、アセクロフェナック、アセメタシン、フェンチアザック、クリダナック、エトドラック、オキシピナック、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルミン酸、トルフェナム酸、ジフルニサール、フルフェニサール、ピロキシカム、テノキシカム、ロモキシカム、ニメスリド、メロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、または非ステロイド炎症剤の製薬学的に許容され得る塩、細胞傷害抗生物質、癌細胞の表面分子を標的とする抗体、例えばアポリズマブまたは1D09C3、メタロプロテイナーゼのインヒビター、例えばTIMP−1またはTIMP−2、亜鉛、オンコジーンのインヒビター、例えばP53およびRb、希土類元素の錯体、例えばランタニドの複素環錯体、光化学治療薬、例えばPUVA、転写因子複合体ESX/DRIP130/Sur−2のインヒビター、HER−2発現のインヒビター、例えば熱ショックタンパク質HSP90モジュレーターゲルダナマイシンおよびその誘導体17−アリルアミノゲルダナマイシンまたは17−AAG、またはIM−842、テトラチオモリブデート、スクアラミン、コンブレスタチンA4、TNP−470、マリマスタット、ネオバスタット、ビカルタミド、アバレリクス、オレゴボマブ、ミツモマブ、TLK−286、アレムツズマブ、イブリツモマブ、テモゾロミド、デニロイキンジフチトクス、アルデスロイキン、デカルバジン、フロクスウリジン、プリカマイシン、ミトタン、ピポブロマン、プリカマイシン、タムロキシフェンおよびテストラクトンから選択される治療薬からなる群から選択される。好適な好ましい化合物には、小分子VEGF受容体アンタゴニスト、例えばバタラニブ(PTK−787/ZK222584)、SU−5416、SU−6668、SU−11248、SU−14813、AZD−6474、EGFR/HER2アンタゴニスト、例えばCI−1033またはGW−2016、EGFRアンタゴニスト、例えばイレッサ(ゲフェチニブ、ZD−1839)、タルセバ(エルロチニブ、OSI−774)、PKI−166、EKB−569、HKI−272またはヘルセプチン、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼのアンタゴニスト、例えばBAY−43−9006またはBAY−57−9006、アトラセンタン、リツキシマブ、セツキシマブ、アバスチン.TM.(ベバシズマブ)、IMC−1C11、エルビツクス(C−225)、DC−101、EMD−72000、ビタキシン、イマチニブ、アルキル化剤または白金化合物、例えばメルファラン、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームのドキソルビシン(ドキシル)、エピルビシン、イダルビシン、ピリミジンまたはプリン類似体あるいはヌクレオシドジホスフェートレダクターゼのアンタゴニストまたはインヒビター、例えばシタラビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ペメトレキセド、テガフル/ウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、メルカプトプリン、メトトレキセート、抗癌剤、例えばパクリタキセル(タキソール)またはドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えばナベルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンまたはビノレルビン、抗有糸分裂ペプチド、例えばドラスタチン、エピポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシンの誘導体、例えばエトポシドまたはテニポシド、非ステロイド炎症薬、例えばメロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、癌細胞の表面分子を標的とする抗体、例えばアポリズマブまたは1D09C3あるいは熱ショックタンパク質HSP90モジュレーターゲルダナマイシンおよびその誘導体17−アリルアミノゲルダナマイシンまたは17−AAGがある。
【0076】
別の態様では、化学療法剤はチューブリンと相互作用するか、または結合する化合物、合成低分子VEGF受容体アンタゴニスト、低分子増殖因子受容体アンタゴニスト、合成低分子に分類されないEGF受容体および/またはVEGF受容体および/またはインテグリン受容体、または任意の他のタンパク質チロシンキナーゼ受容体のインヒビター、融合タンパク質であるEGF受容体および/またはVEGF受容体および/またはインテグリン受容体、または任意の他のタンパク質チロシンキナーゼ受容体に向けられたインヒビター、DNAインターカレーターとして、またはDNA架橋剤として、DNA小溝結合化合物を含め核酸と相互作用し、そしてアルキル化剤または白金化合物に分類される化合物、核酸と相互作用し、そしてアントラサイクリンに分類される化合物、代謝拮抗物質、天然の半合成または合成ブレオマイシン型抗生物質、DNA転写酵素のインヒビター、そして特にトポイソメラーゼIもしくはトポイソメラーゼIIインヒビター、クロマチン修飾剤、有糸分裂インヒビター、抗有糸分裂剤、細胞周期インヒビター、プロテアソームインヒビター、酵素、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、ホルモンインヒビター、ステロイド生合成のインヒビター、ステロイド、サイトカイン、低酸素−選択的サイトトキシン、サイトカインのインヒビター、リンホカイン、サイトカインに対する抗体、経口および非経口耐容導入剤、補助剤、化学的放射線増感剤および保護剤、光化学的に活性化される薬剤、合成ポリ−またはオリゴヌクレオチド、任意に修飾された、または結合された非コテロイド抗炎症剤、細胞傷害性抗体、癌細胞の表面分子を標的とする抗体、増殖因子またはその受容体の標的とする抗体、メタロプロティナーゼのインヒビター、金属、癌遺伝子のインヒビター、遺伝子転写またはRNA翻訳またはタンパク質発現のインヒビター、希土類元素の錯体および光化学治療剤からなる群から選択される。
【0077】
別の態様では、化学療法剤はパクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えばナベルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンまたはビノレルビン、アルキル化剤または白金化合物、例えば、メルファラン、シクロホスファミド、オキサザホスホリン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、サトラプラチン、テトラプラチン、イプロプラチン、マイトマイシン、ストレプトゾシン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ブスルファン、イフォスファミド、ストレプトゾシン、チオテパ、クロラムブシル、ナイトロジェンマスタード、例えばメクロレタミン、免疫調節剤、例えばサリドマイド、そのR−鏡像体およびS−鏡像体ならびにその誘導体、またはレビミド(CC−5013)、エチレンイミン化合物、アルキルスルホネート、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、リポソームのドキソルビシン(ドキシル)、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、ダクチノマイシン、ジスタマイシンまたはその誘導体、ネトロプシン、ピメンジモール、マイトマイシン、CC−1065、デュオカルマイシン、ミトラマイシン、クロモマイシン、オリボマイシン、フタラニリド、例えばプロパミジンまたはスチルバミジン、アントラマイシン、アジリジン、ニトロソウレアまたはその誘導体、ピリミジンまたはプリン類似体またはヌクレオシドジホスフェートレダクターゼのアンタゴニストもしくはインヒビター、例えばシタラビン、5−フルオロウラシル(5−FU)、ウラシルマスタード、フルダラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、メルカプトプリン、クラドリビン、チオグアニン、メトトレキセート、ペントスタチン、ヒドロキシウレア、または葉酸、アクリジンまたはその誘導体、リファマイシン、アクチノマイシン、アドラマイシン、カンプトテシン、例えばイリノテカン(カンプトサー)またはトポテカン、アムサクリンまたはその類似体、三環式カルボキサミド、ヒストンデアセチラーゼインヒビター、例えばSAHA、MD−275、トリコスタチンA、CBHA、LAQ824、またはバルプロ酸、プロテアソームインヒビター、例えばボルテゾミブ、小分子VEGF受容体アンタゴニスト、例えばバタラニブ(PTK−787/ZK222584)、SU−5416、SU−6668、SU−11248、SU−14813、AZD−6474、AZD−2171、CP−547632、CEP−7055、AG−013736、IM−842またはGW−786034、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼのアンタゴニスト、例えばBAY−43−9006またはBAY−57−9006、二重EGFR/HER2アンタゴニスト、例えばゲフィチニブ、エルロチニブ、CI−1033またはGW−2016、EGFRアンタゴニスト、例えばイレッサ(ZD−1839)、タルセバ(OSI−774)、PKI−166、EKB−569、HKI−272またはヘルセプチン、キナゾリン誘導体、例えば4−〔(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ〕−6−{〔4−(N,N−ジメチルアミノ)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル〕アミノ}−7−((S)−テトラヒドロフラン−3−イルオキシ)−キナゾリンまたは4−〔(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ〕−6−{〔4−(ホモモルホリン−4−イル)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル〕アミノ}−7−〔(S)−(テトラヒドロフラン−3−イル)オキシ〕−キナゾリン、またはこれらの製薬学的に許容され得る塩、転写因子複合体ESX/DRIP130/Sur−2のインヒビター、HER−2発現のインヒビター、例えば熱ショックタンパク質HSP90モジュレーターゲルダナマイシンおよびその誘導体17−アリルアミノゲルダナマイシンまたは17−AAG、合成小分子のもとに分類されないタンパク質キナーゼ受容体アンタゴニスト、例えばアトラセンタン、リツキシマブ、セツキシマブ、アバスチン.TM.(ベバシズマブ)、IMC−1C11、エルビツクス(C−225)、DC−101、EMD−72000、ビタキシン、イマチニブ、および癌細胞の表面分子を標的とする抗体、例えば、アポリズマブもしくは1D09C3からなる群から選択される。
【0078】
幾つかの態様では、化学療法剤は1もしくは複数のABCトランスポーターにより媒介されるヒアルロナンの輸送を減少する化合物、または薬剤輸送インヒビター、例えばP−糖タンパク質(P−gp)インヒビター分子またはインヒビターペプチド、MRP1インヒビター、ABCトランスポーターに対して向けられ、かつそれをブロックすることができる抗体、アンチセンスオリゴマー、iRNA、siRNAまたは1もしくは複数のABCトランスポーターに対し向けられたアプタマーである。本発明のP−糖タンパク質(P−gp)インヒビター分子の例は、ゾスキダー(LY335973)、その塩(特にその三塩化物塩)及びその多形、シクロスポリンA(またシクロスポリンとして知られている)、ベラパミルまたはそのR−異性体、タモキシフェン、キニジン、d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート、VX−710、PSC833、フェノチアジン、GF120918(II)、SDZ PSC 833、TMBY、MS−073、S−9788、SDZ280−446、XR(9051)ならびにこれらの機能性誘導体、類似体および異性体である。
【0079】
一つの態様では、本発明は癌を処置する薬剤を調製するための本明細書で定義する製薬学的組成物の使用に関する。
【0080】
E.養子免疫療法
様々な他の観点において、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸も、癌抗原で感作した抗原提示細胞を提供するための組成物および方法に提供することができ、そしてこれらの抗原提示細胞を用いて生成された癌抗原特異的Tリンパ球は、例えば癌の予防的または治療的応用のための免疫調節組成物および方法における活性化合物としての用途に提供できる。
【0081】
したがって一つの観点では、本発明は癌抗原で感作した抗原提示細胞の作成法を提供し:この方法は
抗原提示細胞を、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させることによる。
【0082】
複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸は上記の通りである。
【0083】
複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸は、抗原提示細胞を含んでなる均一な、実質的に均一な、または異質な組成物と接触させることができる。例えば組成物には限定するわけではないが、全血、新鮮血またはそれらの画分、例えば限定するわけではないが末梢血単核細胞、全血の軟膜画分、充填赤血球、照射血液、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、リンパ球、ナチュラルキラー細胞およびナチュラルキラ
ーT細胞を含むことができる。場合により抗原提示細胞の前駆細胞が使用される場合、前駆細胞は前駆細胞を抗原提示細胞に分化させるために十分な適切な培養条件下で培養することができる。好ましくは抗原提示細胞(または場合により前駆細胞)は、単球、マクロファージ、ミエロイド系統の細胞、B細胞、樹状細胞またはランゲルハンス細胞から選択される。
【0084】
抗原提示細胞との接触に置かれる複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸の量は、日常的な実験により当業者が定めることができる。一般に抗原提示細胞は、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、T細胞のモジュレーションのためにプロセッシングした形態の抗原を提示するために十分な期間接触させる。一つの態様では、抗原提示細胞は複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸の存在下で、約1週間未満、具体的説明としては約1分から約48時間、約2分から約36時間、約3分から約24時間、約4分から約12時間、約6分から約8時間、約8分から約6時間、約10分から約5時間、約15分から約4時間、約20分から約3時間、約30分から約2時間、そして約40分から約1時間、インキュベーションされる。抗原提示細胞が抗原をプロセッシングし、そして提示するために必要な時間および抗原または抗原をコードする核酸の量は、例えばパルス−チェイス法を使用して決定することができ、ここで接触の次に洗浄期間、そして読み取り系(例えば抗原反応性T細胞)への暴露が続く。
【0085】
典型的には抗原提示細胞がその表面に抗原を提示するために必要な時間の長さは、使用する抗原または抗原の形態(例えばペプチド対コードするポリヌクレオチド)、その用量および使用する抗原提示細胞、ならびに抗原の負荷が行われる条件を含む多くの因子により変動し得る。これらのパラメーターは日常的な手順を使用して当業者が決定できる。抗原提示細胞の感作効率は、T細胞の細胞傷害活性をインビトロでアッセイすることにより、またはCTLの標的として抗原提示細胞を使用することにより測定することができる。抗原提示細胞の表面上の抗原の存在を検出できる他の方法も、本発明により企図される。
【0086】
抗原を抗原提示細胞の内因性プロセッシング経路に送達する多くの方法が知られている。そのような方法には限定するわけではないが、pH感受性リポソーム、抗原の有力アジュバントへのカップリング、アポトーシス細胞送達、樹状細胞上への細胞のパルシング(pulsing)、抗原を含んでなる組換えキメラウイルス様粒子(VLP)の樹状細胞株のMHCクラスIのプロセッシング経路への送達が関与する方法がある。
【0087】
一つの態様では、可溶化された発生細胞抗原が抗原提示細胞とインキュベーションされる。別の態様では、MHCクラスI経路への送達のために、発生細胞抗原を細胞溶解酵素にカップリングして抗原の抗原提示細胞の細胞質への転移を強化することができる。細胞溶解酵素の例には、サポニン化合物、例えばサポニン含有免疫刺激複合体(ISCOM)、孔形成トキシン(例えばアルファ−トキシン)、およびグラム陽性細菌の天然細胞溶解酵素、例えばリステリオリシンO(LLO)、ストレプトリシンO(SLO)およびパーフリンゴリシンO(PFO)がある。
【0088】
別の例として、他の態様では抗原提示細胞、好ましくは樹状細胞およびマクロファージを当該技術分野で知られている方法にしたがい単離し、そして複数の抗原をコードする核酸をAPCに導入するために当該技術分野で知られている方法によりポリヌクレオチドでトランスフェクトすることができる。トランスフェクション試薬および方法(例えばSuperFect(登録商標))も市販されている。例えば複数の抗原をコードするRNAを適切な培地(例えばOpti−MEM(登録商標))中に準備し、そして脂質(例えばカチオン性脂質)と合わせた後にAPCと接触させることができる。脂質の非限定的例にはLIPOFECTIN(商標)、LIPOFECTAMINE(商標)、DODAC/DOPEおよびCHOL/DOPEがある。次いで生じたポリヌクレオチド−脂質複合体をAPCと接触させることができる。あるいはポリヌクレオチドは、エレクトロポレーションまたはリン酸カルシウムトランスフェクションのような技法を使用してAPCに導入されることができる。次いでポリヌクレオチドを負荷したAPCを使用して、インビボまたはエクスビボで細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の増殖を刺激することができる。一つの態様では、エクスビボで拡張したCTLが養子免疫療法の方法で個体に投与される。ポリヌクレオチドを負荷した抗原提示細胞がCTL応答を刺激する能力は、例えば標的細胞を分解するエフェクター細胞の能力をアッセイすることにより既知の方法で測定することができる。例えばRNAを負荷した抗原提示細胞を使用する方法および組成物が、Nair et al.への米国特許第6,306,388号明細書に記載され、これはRNAを負荷したAPCの作成法および使用の教示に関して引用により本明細書に編入する。
【0089】
別の観点では、本発明は複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下で、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸とインビトロで接触させた抗原提示細胞を含んでなる組成物を提供する。
【0090】
別の観点では、本発明は癌細胞の少なくとも1つの抗原に特異的なリンパ球の調製法を提供する。この方法はリンパ球を上記抗原提供細胞と、癌細胞に対する免疫応答を誘起することができる少なくとも1つの癌抗原特異的リンパ球を生産するために十分な条件下で接触させることを含んでなる。このように抗原提示細胞は、癌細胞の少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起するために、Tリンパ球およびBリンパ球を含むリンパ球を提供するために使用することもできる。
【0091】
一つの態様では、Tリンパ球の調製物は上記の抗原提示細胞と一定期間、好ましくは少なくとも24時間、Tリンパ球を抗原提示細胞により提示される発生細胞抗原に対して感作するために接触させる。
【0092】
例えば別の態様では、抗原提示細胞集団は、複数の発生細胞抗原または複数の抗原を含んでなる核酸と一緒の末梢血Tリンパ球の異質集団と同時培養することができる。この細胞は、複数の抗原またはそれらのプロセッシングされた形態が抗原提示細胞により提示され、そして抗原提示細胞がTリンパ球の集団を感作して癌細胞の少なくとも1つの抗原に対して応答するために十分な時間および条件で同時培養することができる。したがって癌細胞の少なくとも1つの抗原に応答するように感作されたTリンパ球およびBリンパ球
を調製することができる。
【0093】
本明細書に記載するように、リンパ球が免疫応答を現すように誘導する能力は、限定するわけではないがTリンパ球の細胞溶解(cytolytic)活性を、インビトロで例えば発生細胞抗原特異的抗原提示細胞を発生細胞抗原特異的細胞溶解性Tリンパ球(CTL)の標的として使用することにより測定すること;発生細胞抗原特異的T細胞の増殖をアッセイすること;および例えばELISA法を使用して、発生細胞抗原に対するB細胞応答を測定することを含む任意の方法により測定することができる。
【0094】
Tリンパ球は末梢血、脾臓およびリンパ節のような任意の適切な供給源から得ることができる。Tリンパ球は粗調製物または部分精製物または実質的に精製された調製物として使用することができ、これらは限定するわけではないが、抗体を使用した免疫磁気またはフローサイトメトリー法が関与する方法を含む標準的技術により得ることができる。
【0095】
また本発明の範囲において意図されるのは、細胞の特異的認識のために遺伝的に修飾された細胞(例えばそれらの表面に細胞特異的抗体を発現するように遺伝子操作されたT細胞)である。幾つかの態様では、抗原特異的T細胞は1もしくは複数の異種遺伝子、例え
ばマーカー遺伝子、または遺伝子産物が抗原特異的T細胞の特定の表現型もしくは機能を強化もしくは付与できる遺伝子を発現するために、当該技術分野で知られている遺伝子導入技法により修飾される。このように例えばマーカー遺伝子は抗原をパルスした樹状細胞に応答して活性化T細胞内で発現でき、そして抗原特異的T細胞の選択的濃縮および修飾が可能になる。別の例として抗原特異的T細胞は、受容体(例えばケモカイン受容体)を発現するように修飾されて、インビトロおよびインビボで受容体のリガンドに向かって移動することができる。選択的濃縮またはターゲッティングのために修飾された抗原特異的T細胞は、Mitchell et al.,Human Gene Therapy,19:511(2008)に記載され、これは修飾T細胞の教示に関して引用により本明細書に編入される。別の観点では、本発明は上記抗原提示細胞またはリンパ球、ならびに製薬学的に許容され得る担体および/または希釈剤を含んでなる組成物を提供する。幾つかの態様では、組成物はさらに上記のようなアジュバントを含んでなる。
【0096】
別の観点では、本発明は癌細胞の少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起する方法を提供し、この方法は個体に、免疫応答を誘起するために十分な有効量の上記抗原提示細胞またはリンパ球を投与することを含んでなる。幾つかの態様では、本発明は新形成疾患またはそれに随伴する症状の処置または予防のための方法を提供し、この方法は個体に有効量の前記抗原提示細胞またはリンパ球を投与することを含んでなる。一つの態様では、抗原提示細胞またはリンパ球は、好ましくは注射により全身的に投与される。あるいは例えば組織への直接注射を介して、好ましくはデポーもしくは徐放性配合物で全身的というよりは局所的に投与できる。さらに標的化された薬剤送達系で、例えば組織特異的抗体を被覆したリポソームで投与することができる。リポソームは組織に標的化されそしてそれにより選択的に取り込まれることができる。別の態様では本発明は、癌細胞の少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起するための、好ましくは癌を処置または防止するための薬剤の調製における抗原提示細胞またはリンパ球の使用を提供する。
【0097】
したがって本発明の抗原を感作した抗原提示細胞およびこれら抗原提示細胞により生成された抗原特異的Tリンパ球は、癌の予防的または治療的応用の免疫調節組成物に活性化合物として使用することができる。幾つかの態様では、本発明の発生細胞抗原を感作した抗原提示細胞は、個体への養子免疫伝達用のためのCD8+、CD4+、CTLまたはB細胞リンパ球の生成に使用することができる。このように例えば発生細胞抗原に特異的なCTLは、神経膠腫のような悪性腫瘍に罹患している個体に治療目的のために養子免疫的に導入することができる。
【0098】
上記の発生細胞抗原提示細胞およびリンパ球は、免疫応答を誘起するために、特に癌細胞の少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起するために、それらのみで、または組み合わせたいずれかで個体に投与することができる。ゆえにそのような細胞に基づく組成物は癌の処置または防止に有用である。細胞は、癌細胞の少なくとも1つの抗原に対する所望の免疫応答を誘起する任意の様式により個体に導入されることができる。さらに細胞はその個体に由来でき(すなわちオートロガス細胞)、またはその個体とMHCが合っているか、または合っていない異なる個体(例えば同種異系)に由来できる。注射部位は皮下、腹腔内、筋肉内、皮内、静脈内またはリンパ球内から選択することができる。
【0099】
細胞の単回または多回投与を、介護者(例えば医師)により選択される細胞数および処置で行うことができる。好ましくは細胞は製薬学的に許容され得る担体中で投与される。適切な担体は細胞が成長した成長培地、またはリン酸緩衝化生理食塩水のような任意の適切な緩衝媒質であることができる。細胞は単独また他の治療と一緒にした補助的療法として投与することができる。
【0100】
したがって本発明は、癌の処置および/または予防のための方法を企図し、この方法は
そのような処置または予防が必要な個体に治療/予防に有効な量の本明細書に記載の組成物を投与することを含んでなる。
【0101】
配合および投与に関する技法は、レミングトンの製薬科学、マック出版社、イーストン、ペンシルバニア州、最新版に見いだすことができる。適切な経路には例えば経口、直腸、経粘膜または腸管投与があり;非経口的送達、筋肉内、皮下、骨髄注射、ならびに髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内または眼内注射を含むことができる。注射に関して、本発明の治療/予防組成物は、水溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液または生理学的塩緩衝液のような生理学的に適合性のある緩衝液中に配合することができる。
【0102】
F.抗体
本発明の組成物は、癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対する抗体を生じるためにも使用することができる。したがって他の観点では、本発明の組成物および方法は、癌細胞の少なくとも1つの抗原に対する1もしくは複数の抗体を提供し、これらの抗体はそれら自体が例えば受動免疫感作またはエフェクターのための標的特異的送達のような多くの用途、ならびに免疫学的結合に基づく診断試験およびキットのための用途を有することができる。このように幾つかの態様では、本発明は治療および/または診断的応用に使用できる癌細胞特異的抗体を提供する。
【0103】
本発明の癌細胞特異的抗体は、スクリーニングまたは診断的応用に使用できる。本発明の癌細胞特異的抗体は、インビトロおよびインビボでの診断目的に価値がある。例えば癌細胞特異的は、ウエスタンブロット、免疫沈降、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、間接的免疫蛍光顕微鏡、免疫組織化学(IHC)等で使用することができる。一つの態様では、本発明は癌細胞を決定する免疫学的方法を提供し、この方法は細胞を本明細書で記載する少なくとも1つの癌細胞特異的抗体と接触させることを含んでなる。
【0104】
例えば癌細胞特異的抗体は、癌を発現している細胞を検出するためのアッセイの診断薬として使用できる。本発明の癌に結合する抗体は、それらの癌に対する結合親和性を考慮すれば診断薬として特に適するはずである。本質的に癌を発現する細胞(例えば癌細胞)を含有することが疑われるサンプルは、免疫学的相互作用が起こることを可能とするために十分な時間、抗体とインキュベーションされる。当業者はこれら基本的手順に多くの変更が存在すると認識するだろう。これらの変更には例えばRIA、ELISA、沈殿、凝集、補体固定および免疫蛍光がある。好ましくは個体の抗体は、抗体−癌の免疫複合体の検出を可能とするために標識される。さらに本発明の癌細胞特異的抗体は、他の細胞の精製の一段階として、混合細胞集団から癌を発現している細胞を殺すか、または排除するために、インビトロで癌の検出および定量にも有用である。
【0105】
抗体の標識化物を作成するために使用される標識には、放射線および蛍光色素のように直接検出できる部分、ならびに検出されるために反応または誘導化させなければならない酵素のような部分がある。放射線標識には限定するわけではないが99Tc,203Pb,67Ga,68Ga,72As,111In,113mIn,97Ru,62Cu,641Cu,52Fe,52mMn,51Cr,186Re,188Re,77As,90Y,67Cu,169Er,121Sn,127Te,142Pr,143Pr,198Au,199Au,161Tb,109Pd,165Dy,149Pm,151Pm,153Sm,157Gd,159Gd,166Ho,172Tm,169Yb,175Yb,177Lu,105Rh,および111Agがある。放射線標識は現在利用可能な任意のカウンティング法により検出することができる。
【0106】
酵素標識は、任意の現在使用されている熱量測定法、分光法、蛍光分光法、またはガス
定量技法により検出できる。酵素はカルボジイミド、過ヨウ素酸塩、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド等のような結合分子を用いて抗体と結合させる。これらの手法では使用できる多くの酵素が知られており、そして利用できる。例はペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ プラス ペルオキシダーゼ、ガラクトース オキシダーゼ プラス ペルオキシダーゼおよび酸性フォスファターゼである。使用できる蛍光物質は、例えばフルオロセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、オーラミン、ダンシル、ウンベリフェロン、ルシフェリア、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、リソチームおよびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼがある。抗体は既知の方法によりそのような標識でタグを付けることができる。例えばアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミド、イミデート、スクシンイミド、ビス−ジアゾ化ベンザジン等のようなカップリング剤を使用して、抗体に上記の蛍光、化学発光および酵素標識を付けることができる。種々の標識化法がMorrisonのMethods in Enzymology,(1974),32B,103;Syvanen et al.,J.Biol.Chem.,(1973),284,3762;およびBolton and Hunter,Biochem J.,(1973),133,529に記載されている。
【0107】
抗体および標識化抗体は、患者の癌の存在を検出するか、またはすでに癌を有すると診断された患者のそのような癌の状態を監視するために様々なイムノイメージング(immunoimaging)またはイムノアッセイ手順で使用することができる。癌の状態を監視するために使用する場合、定量的イムノアッセイ法が使用されなければならない。そのようなモニタリングアッセイが周期的に行われ、そして結果が比較される場合、測定は患者の全身腫瘍組織量が増加または減少したかどうかに関して行うことができる。使用できる一般的なアッセイ技法には直接的および間接的アッセイを含む。
【0108】
例えば治療的応用の場合では、抗体は疾患の進行に関与する標的を阻害するために、または標的細胞の細胞傷害的死をもたらすために使用することができる。またそのような治療的抗体はシグナル伝達回路を阻害するか、抗体依存的細胞媒介型の細胞傷害性、補体依存的細胞傷害性等を誘導することができる。
【0109】
本発明の癌細胞特異的抗体は、このようにかならずしもではないが一過性または永久的にエフェクターに結合でき(これによりハイブリッド分子またはキメラ分子を形成する)、そしてエフェクターを特定の標識細胞(例えば癌細胞)に向けるために使用できる効果的な標的化部分を提供する。
【0110】
エフェクター分子は標的細胞に特異的に輸送されるべき分子または分子群を称する。エフェクター分子は典型的には標的細胞に送達されるべき特徴的な活性を有する。エフェクター分子には限定するわけではないが、サイトトキシン、標識、放射性核種(例えば211At)、リガンド、抗体、薬剤、リポソーム、エピトープタグ等を含む。好適なエフェクターにはサイトトキシン(例えばシュードモナス(Pseudomonas)エキソトキシン、ゲロニン、リシン、アブリン、ジフテリア(Diphtheria)トキシン等)、免疫調節物質(例えばIL2,TNF−α,GM−CSF,B 7.1,H60)、または細胞傷害性薬剤またはプロドラッグを含み、これらの場合、ハイブリッド分子はサイトトキシンを、癌標的を有する細胞に特異的に標的する有力な殺細胞剤として使用することができる。
【0111】
さらにエフェクター細胞の例には、限定するわけではないが、グランザイム、ルシフェラーゼ、血管内皮増殖因子、b−ラクタマーゼ、Tr−apo−1、Ang II、TAT、アルキル化剤、ダウノマイシン、アドリアマイシン、クロラムブシル、代謝拮抗物質
(例えばメトトレキセート)、モダクシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ダイアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI,PAPIIおよびPAP−S)、ニガウリ(Momordica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サパオナリア オフィシナリス(Sapaonaria officinalis)インヒビター、ミトゲリン、レストリクトコイン、フェノマイシンおよびエノマイシンがある。
【0112】
さらに別の態様では、エフェクターは薬剤(例えば、ドキシルビシン、ビンブラスチン、タキソールまたは本明細書に記載する他の化学療法剤のような抗癌剤)をカプセル化するリポソーム、免疫系の成分により結合した細胞の認識を刺激する抗原、および免疫系の成分に特異的に結合し、そしてそれらを癌を持つ細胞に向ける抗体などを含むことができる。
【0113】
他の適切なエフェクター分子には、薬理学的作用物質または様々な薬理学的作用物質を含有するカプセル化系がある。このようにハイブリッド分子の標的化分子は、腫瘍に直接送達されるべき薬剤に直接付けてもよい。そのような薬剤は当業者には知られており、そして限定するわけではないが、ドキシルビシン、ビンブラスチン、ゲニステイン、アンチセンス分子等、本明細書に記載する様々な他の化学療法剤などがある。
【0114】
あるいはエフェクター分子は、ウイルスカプシド、リポソームまたはミセルのようなカプセル化系でよく、薬剤、核酸(例えばアンチセンス核酸)、または好ましくは循環系への直接的暴露から遮蔽された他の治療用部分といった治療用組成物を含む。これら抗体に結合するリポソームの調製法は当業者には公知である。例えば米国特許第4,957,735号明細書;Connor,J.et al.(1985)Pharmacol.Ther.,28:341−365を参照にされたい。
【0115】
III.キット
本発明の組成物は、単位剤形またはキットの形態で供給させることができる。キットは別個の容器に提供される製薬学的に許容され得る組成物またはそのワクチンの種々の成分、ならびに種々の他の有効成分または化学治療剤を含む薬剤を含んでなることができる。例えば容器は、発生細胞により発現される複数の抗原または複数の抗原をコードする核酸がキットの他の成分と合わせられた時、単位剤形または多回剤形の状態の製薬学的に許容され得る組成物を一緒に構成するように、それらを別個に含んでなることができる。好適なキットは少なくとも別個の容器に抗原の供給源(例えば発生細胞により発現される複数の抗原または複数の抗原をコードする核酸);および1もしくは複数のアジュバント(例えばサイトカイン)を含んでなる。さらにキットは生理学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を別個の容器に含んでなることができる。場合によりキットはさらにナノ粒子またはトランスフェクション試薬のような送達剤を含んでなることができる。また本発明の包装された組成物およびキットは、保管、調製および投与に関する使用説明書を含むことができる。
【0116】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明が実施例に限定されないことに注意されい。
【実施例】
【0117】
実施例1
RNAを用いたワクチン接種は悪性星状細胞腫の増殖に対する防御に効果的である
腫瘍細胞株および動物モデル
SMA560細胞株は、VM/Dkマウス(H−2)由来の自然発生星状細胞腫の大
脳内移植片から誘導し、そして5%(容量/容量)のウシ胎児血清(FCS)を含有する亜鉛オプション培地(GIBCO BRL、ゲイサースバーグ、メリーランド州)で増殖させた。すべての細胞株はマイコプラズマ(Mycoplasma)の混入が無いことが示された。すべての実験に6〜12週齢のメスVM/Dkマウス交配種を使用し、そしてラボラトリー アニマル リソース コミッション スタンダード(Laboratory Animal Resources Commission standards)に従いウイルスを含まない環境で管理した。
【0118】
RNA−NP複合体
全腫瘍RNAは、標準法(例えばAshley et al.,J.Experimental Medicine,186:1177(1997))を使用してSMA560腫瘍細胞から単離した。胚の発生日10(E10)(Zyagen,San Diego,CA)または18日(E18)のマウス胚(Ambion,オースチン、テキサス州)、胚性脳全RNA(Zyagen,サンディエゴ,カリフォルニア州)からの胚RNAを購入した。RNAとSuperfect(登録商標)デンドリマーナノ粒子(Qiagen,バレンシア、カリフォルニア州)との複合化(complexing)を製造元の使用説明に従い室温で行った。
【0119】
インビトロRNAのワクチン接種
VM/Dkマウスは未処置、または1もしくは3回、1週間の間隔で両耳の付け根の皮内にNP−RNA(75μg NP:25μg RNA)複合体を100μL容量で免疫感作した(各耳の付け根に50μL)。3回目の免疫感作から1週間後、マウスの頭蓋内に5000の同系の自然派生した星状細胞腫(SMA50)で対抗(challenged)した。幾つかの実験では、1μgのGM−CSF(10μlのPBS中)をNP−RNA複合体に加えることにより、皮内注射の直前に1μgのマウスGM−CSF(PeproTech,Inc.,ロッキーヒル、ニュージャージー州)をNP−RNA複合体と同時に注射した。
【0120】
頭蓋内腫瘍対抗
腫瘍細胞を回収し、等容量の10%メチルセルロース(PBS中)と混合し、そして250μlのハミルトンシリンジ(Hamilton、レノ、ネバダ州)に充填した。マウス(VM/Dkまたは無胸腺BALB/c)にキシラジン/ケタミン混合物で麻酔をかけ、そして定位固定フレイム(Kopf Instruments、ツジュンガ、カリフォルニア州)に配置した。注射針をブレグマの右2mmそして頭蓋面の下4mmに配置した。5μL容量中の細胞(1.0 x 10)を、右大脳半球に送達した。注射後、頭蓋孔をボーンワックスで閉じ、そして傷を外科用ステープルで閉じた(Stoelting Co.,ウッドダーレ、イリノイ州)。マウスは毎日監視し、そしてラボラトリー アニマル リソース コミッション スタンダードに従い瀕死状態となった時に屠殺した。生存能をKaplan−Meier法に従い分析した。
【0121】
頭蓋内腫瘍の処置
腫瘍細胞は回収し、そして上記のように移植した。NP−RNA複合体での処置は、腫瘍の移植から4日後に開始し、そしてマウスの生存を毎日監視した。マウスはラボラトリー アニマル リソース コミッション スタンダードに従い瀕死状態となった時に屠殺した。生存能をKaplan−Meier法に従い分析した。
【0122】
実施例2
樹立された悪性神経膠腫の処置において、全胚RNAのワクチン接種は、全腫瘍RNAよりも効果的である
25μgの全腫瘍RNA(TTRNA)、および25μgまたは75μgのGM−CS
F RNAのどちらかを、75μgのデンドリマーナノ粒子(NP)と複合化した。RNA:ナノ粒子複合体(TTRNA−NP)は、同系の星状細胞腫株SMA−560を致死量で頭蓋内対抗する1週間前に、耳の付け根に皮内注射することによりVM/Dkマウスに送達した。図1に示すように、全腫瘍RNAおよびGM−CSFでのワクチン接種は、悪性の星状細胞腫の増殖に対する防御において効果的であった。
【0123】
SMA−560星状細胞腫に由来する25μgの胚日18(E18)の全胚RNA(E18 RNA)または全腫瘍RNA(TTRNA)を、75μgのデンドリマーナノ粒子(NP)と複合化した。このRNA:ナノ粒子複合体は、4日目の頭蓋内星状細胞腫を有するマウスに単回の皮内注射として送達した。全腫瘍RNAナノ粒子(NP−TTRNA)を用いた2回のワクチン接種を与えた。図2に見られるように、すべて未処置マウスは腫瘍移植から30日以内に死んだ。全胚RNA(NP−E18 RNA)を1回ワクチン接種したマウスの50%では1回のワクチン接種で樹立した腫瘍が治癒したが、全腫瘍RNAナノ粒子(NP−TTRNA)の2回ワクチン接種では33%のマウスが治癒した。この結果は、胚抗原が悪性神経膠腫に対する発生抗原の効果的供給源として使用できることも示す。胚組織のRNAが容易に入手できること、およびそそれを増幅する能力により、これらの結果はまた脳腫瘍および発生細胞と発現パターンが共通する多くの他の癌に対するワクチン接種の汎用的プラットホームとして胚RNAワクチンの理論的解釈も支持している。
【0124】
実施例3
オートロガスDCのエクスビボ生成
白血球搬出産物(LP)バックの内容物を、1リットルの滅菌コーニングボトルに入れ、そしてLPを希釈するために等容量のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を加えた。遠心管を使用して、20mLのHistopaque(商標)(Sigma#1077−1)を30mLの希釈LPに静かに上層し、そして1300xgで25分間、遠心した。界面(管あたり1界面)を取り出し;PBSを50mLになるように加え;そして細胞を5分間、500xgで室温(RT)にてペレット化した。上清をデカントし、そしてペレットを50mLのPBS中に再懸濁し、そして上記のようにペレット化した。上清をデカントし、そして2つのペレットを50mLのPBS中で合わせ、次いで上記のようにペレット化した。再び上清をデカントし、そして2つのペレットを50mLのPBS中で合わせ、次いで上記のようにペレット化した。ペレットを合わせ、そしてすべての細胞が1つの管に合わせられるまでPBSで洗浄した。
【0125】
トリパンブルー排除法を行って、血球計で生きているおよび死んだ細胞数を測定した。細胞は2%ヒトAB Sera(HABS)(Valley Biomedical #HP1022)を含むAIM V培地(Life Technologies #870112dk)にmLあたり2 x 10で再懸濁した。2% HABSおよび1mLのPBMC細胞懸濁液を含有する29mLのAIM V培地を、T−150細胞培養フラスコに加えた。すべての細胞培養フラスコは、1つの専用加湿インキュベーター中に37℃、5%COで2時間置かれ、単球前駆細胞が付着できるようにした。付着期間の後、非付着細胞を取り出し、そして残る単層をPBSで1回洗浄した。付着細胞には、800U/mLの組換えヒトGM−CSF(Berlex Laboratories,Inc)および500U/mLの組換えヒトIL−4(R&D Systems#204−IL/CF)を補充したAIM−Vをフラスコあたり30mlで補充し、そして加湿インキュベーターで37℃、5%COにて7日間インキュベーションした。
【0126】
7日間の培養期間の後、付着DCを冷PBSで洗浄した。10mlのディソシエーションバッファーエンザイムフリー(Dissociation Buffer Enzyme−Free)(Life Technologies #13150−016)を加え
、そしてDCを4℃で10分間インキュベーションした。付着DCの残りをフラスコから洗い流し、そして前に回収したDCと合わせ、次いで500xgで10分間、4℃でペレット化した。冷PBSで1回洗浄した後、細胞を数および生存能についてチェックした。
【0127】
実施例4
RNAまたはペプチドの負荷および樹状細胞の成熟
上記のように生成した樹状細胞を、1mLのViaSpan(Belzer UW−CSS,DuPont Pharmaceuticals,ウィルミントン、デラウエア州)あたり2.5x10個の細胞で再懸濁する。次いで200μLの懸濁液を、約25μgの胚日18(E18)の全胚RNA、発生細胞RNAまたは発生細胞から抽出された安定濃度のペプチドと一緒にキュベット(Gene Pulser Cuvette,Bio−Rad #165−2086)に入れ、そして細胞を300ボルトで500μ秒間、電気穿孔する(BTX Electro Square Porator #ECM830)。約1x10の電気穿孔した細胞を、50mLのAIM V(800U/mLの組換えヒトGM−CSF(Berlex Laboratories,Inc.)および500U/mlの組換えヒトIL−4(R&D Systems#204−IL/CF)を補充した)含有するT225フラスコに移し、次いで37℃、5%COにて1時間インキュベーションする。インキュベーション期間の終わりに、成熟サイトカインを含む適当量の培地を、成熟カクテル中のサイトカインの最終濃度10ng/ml TNF−α(R&D Systems#210−TA/CF);10ng/ml IL−1β(R&D Systems#201−IB/CF);および1000単位/ml IL−6(R&D
Systems#208−IL/CF)で加える。細胞は37℃および5%COにて一晩インキュベーションした。
【0128】
成熟期間の終わりに、上清を取り出し、そして冷蔵した50mlのコニカル管(氷上)に入れる。残りの単層は、氷冷PBSで洗浄し;上清と合わせ;次いで500xgで5分間、4℃にてペレット化する。ペレットは10mlの氷冷PBSに再懸濁し、そして氷上に維持する。10〜20mlのディソシエーションバッファーエンザイムフリー((Life Technologies #13150−016)を加え、そして細胞を4℃に維持し、そして細胞が剥がれる様子を5分毎に監視する。フラスコを2回、10mlの氷冷PBSで洗浄し、ディソシエーションバッファーからの細胞と合わせ、そして500xgを使用してペレット化する。細胞を他の細胞と合わせ、そして50mlとし、そしてカウントした。
【0129】
実施例5
ワクチン接種のための樹状細胞の調製
50mLのコニカル遠心管中の成熟抗原負荷樹状細胞、そして25mlのPBSをゆっくり加え、そして細胞を200xgで5分間、22℃でペレット化する。細胞は2mlのピペットを使用して10mlのPBSに再懸濁し、100μlの懸濁液サンプルを取り出し、そして細胞を血球計およびトリパンブルーを使用して上記のようにカウントする。細胞は始める前に70%以上が生きていると測定される。細胞を500xgで5分間、22℃でペレット化し、そして0.9%塩化ナトリウム中に5x10細胞/mLで再懸濁した。細胞を1ccのシリンジに25G 5/8ゲージ針で充填する。サンプルは投与前にグラム染色およびエンドトキシン試験に送る。
【0130】
実施例6
T細胞の活性化
DCは正常な有志および癌がある個体から生成し、そしてAIM−V培地−2%ヒトAB血清中の発生細胞ペプチド抽出物で37℃にて3時間パルスした(pulsed)。あるいは複数の発生細胞抗原をコードするmRNAを負荷するために、DCを洗浄し、そし
て電気穿孔のためにOpti−MEMに再懸濁する。DC量あたり複数の発生細胞抗原をコードする適当濃度のmRNAを、BTX ECM830で電気穿孔する。DCは45mlのAIM−V培地で1回洗浄し、そしてオートロガスの応答リンパ球を1:10比(DC:T細胞)で加える。Tリンパ球の供給源として、非付着(NA)細胞は、個体(例えば悪性神経膠腫を有する)および正常な個人に由来する末梢血単核細胞(PBMC)から生成する。末梢血由来の単核細胞は、Ficoll−Hypaque勾配分離(LSM:MP Biomedicals、ソロン、オハイオ州)により単離する。
【0131】
容量を約2x10細胞/mlに調整し、そして細胞は37℃で5%COを含有する加湿雰囲気でインキュベーションする。3日後、等量のAIM−V培地(2%プールしたヒトAB血清に加えてIL−2(10U/ml)を含む)を加え、そして細胞を1ml/ウェルの容量で24−ウェルプレートに移す。その後、2〜3日毎に細胞を増殖について評価し、そして約1x10細胞/mlに調整する。パルス化DCとの同時培養から8〜11日後、T細胞を回収する。
【0132】
実施例7
ワクチンのナノ粒子/脂質送達
胚または胎児組織、多能性幹細胞、または組織由来前駆細胞に由来する発生細胞RNA、タンパク質またはペプチドライセートは、ヒト個体へのインビボ送達のために、それぞれ臨床的等級のナノ粒子または脂質配合物と複合化される。適切な複合化剤の例には、限定するわけではないがGMP−級DOTAP & DOTAP:コレステロール(Boehringer Mannheim、ドイツ)、cGMP級インビボ−jetPEI(商標)(Polyplus transfection,Inc.ニューヨーク、ニューヨーク州)、およびデンドリマーナノ粒子がある。RNAは遺伝子銃技法により皮内投与するために、金または銀ナノ粒子上に沈殿させる。複合化トランスフェクション剤に対して適切な比率のRNA、タンパク質またはペプチドライセートが、インビトロで混合されてペプチドまたはRNA:ナノ粒子/リポソーム複合体を形成し、次いで発生細胞抗原および共通する癌抗原に対する免疫応答を誘導するために、静脈内、皮内、皮下または筋肉内送達を介してヒト個体に送達される。発生細胞抗原を用いたワクチン接種前、それと同時および後にアジュバント送達が行われる(例えばワクチン接種の24時間前、それと同時および後に150マイクログラムのGM−CSFが送達される)。
【0133】
実施例8
連続的RNA生産のための増幅cDNA鋳型の生成
様々な応用に使用する連続的RNA生産のために(例えばDCの負荷)、量が限定された分類(sorted)細胞からRNAを臨床的規模にまで増幅できることを証明するために、増幅したmRNAがFDAに認可された臨床級の細胞プロセッシング施設でわずか500個のCD133癌幹細胞およびCD133分類腫瘍細胞から成功裏に生成された。4つのハウスキーピング遺伝子(すなわち18S、β−アクチン、GADPH,HPRT)およびCD133遺伝子が、完全長またはほぼ完全長の増幅cDNA産物の検出のために、遺伝子の5’末端でエキソンの連結領域にひろがる遺伝子特異的プローブおよびプライマーを包含するリアル−タイム比較PCRを使用する増幅中、5サイクル毎に測定された。CD133遺伝子発現は、CD133細胞から単離されたRNA中に観察されなかった。
【0134】
個々のハウスキーピング遺伝子に対するCD133 RNAの比較PCR定量を表1に示す。4種の各ハウスキーピング遺伝子に対して標準化された1000個のインプット細胞に対して、500個の細胞を使用して検出されたCD133 RNAの比は、約2であった。
【0135】
【表1】

【0136】
増幅産物はアガロースゲル電気泳動を使用して視覚化された(図3a)。遺伝子の相対比率は、最初のcDNAライブラリー合成後30サイクルの増幅まで一定であり、その後、ハウスキーピング遺伝子に対してCD133の漸次的減少が観察された。RNA合成の停止点として25サイクルのcDNAライブラリーの増幅を使用して、試験した2つの患者サンプル中、500個のCD133細胞から10μgより多くの鋳型cDNAが生成された。
【0137】
8μgの鋳型からのRNA合成で、980μgより多くのインビトロ転写されたmRNAが生じた(IVT−RNA)(図3b)。IVT−RNAをゲル電気泳動で分析し、そして100bpからの核酸種の範囲は4.0kbの長さを越えることが示された。より少ない量でより大きなRNA種を見ることができたが、過度な暴露が豊富でより小さいRNAの写真による評価を排除した。これらの結果は、限定された数の分類細胞(例えばCD133腫瘍細胞)からRNAを臨床的規模(例えばDCの負荷に)に増幅する能力を示している。
【0138】
実施例9
差引きハイブリダイゼーションによる抗原の濃縮
場合により正常な成人組織に共通の抗原を除去することが、自己免疫の危険性を減らし、そして所望する標的抗原に対する免疫を強化する可能性がある。発生細胞抗原の濃縮は多くの技法、例えば差引きハイブリダイゼーションにより発生細胞抗原をコードする核酸を濃縮することにより行うことができる。例えば稀におよび/または差別的に発現されるmRNAのスクリーニングおよび単離のために、Dynabeads(登録商標)Oligo(dT)25(Invitrogen Corporation、カールスバッド、カリフォルニア州)を使用して差引きcDNAプローブを生産することができる。ビーズに結合したoligo−dT配列は、特定の細胞型または組織に特異的なcDNAを生産するために、cDNA合成をプライムするために使用することができる。
【0139】
癌幹細胞抗原は、例えば正常な脳RNAおよび悪性脳腫瘍検体中の癌ではない幹細胞のRNAの差引きハイブリダイゼーションを使用して濃縮することができる。発生細胞で特異的に発現される抗原をコードするRNAの鋳型を生成するための差引きハイブリダイゼーションおよびcDNAライブラリー合成に関するプロトコールは、例えば市販されている差引きハイブリダイゼーションキット(Invitrogen Corporation、カールスバッド、カリフォルニア州)を使用して行われる。また差引きハイブリダイ
ゼーションは例えばHansen−Hagge et al.,Nucl.Acids Res.29(4):e20(2001);Pradel et al.,Appl.Env.Microbiol.68:2316−2325(2002);and Laveder et al.,Nucleic Acids Res.30(9):e38(2002)に記載され、これらはそれぞれ差引きハイブリダイゼーションの教示について引用により編入する。
【0140】
例えば標的mRNAは全発生細胞または胚性幹細胞RNAのいずれかを含んでなり;そして差引きmRNAは、標的組織(すなわち脳)に由来する正常RNA、または全身的な交差反応を下げるためにヒト臓器に由来する正常RNAのプールを含んでなる。最終的なハイブリダイゼーション段階の後、発生細胞から差引かれたmRNAは、PowerScript(商標)逆転写酵素(Clontech Laboratories,Inc,マウンテンビュー、カリフォルニア州)を使用して、10μLの全反応容量中、修飾oligo−dTプライマー(5’−AAG CAG TGG TAT CAA CGC AGA GTA C(T)64VN−3’)およびT17鎖スイッチプライマー(5’−AAG CAG TGG TAT CAA CGC AGA GTG GCC ATA TTG GCC rGrGrG/3AmMC6−3’)を用いてプライミングすることにより完全長のcDNAライブラリーに逆転写され;そしてリアル−タイムPCRを使用して増幅される。
【0141】
神経膠腫由来のわずか500個の癌幹細胞(CD133腫瘍細胞と定義される)からのRNAの増幅の結果を、図4に示す。RNAは、発生細胞の既存のcDNAライブラリー(すなわち胚性幹細胞cDNAライブラリー)から調製できるか、あるいは初代発生細胞または樹立された細胞株から調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対して個体に免疫応答を誘起する方法であって;
個体に、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を投与することを含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時に少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起する、上記方法。
【請求項2】
製薬学的に許容され得る組成物が、個体の癌を防止または処置するために十分な予防または治療に有効な量で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸が、胚性幹細胞に由来する抗原または抗原をコードする核酸に対応する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
複数の抗原をコードする核酸が発生細胞に由来する全RNAまたはpolyARNAである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
複数の抗原をコードする核酸が発生細胞cDNAライブラリーに由来するcDNAから転写されたRNAである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の抗原が発生細胞の全細胞ライセートである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の抗原をコードする核酸が、(i)正常な分娩後組織中で転写されなかった:または(ii)発生細胞に関して実質的に低下したレベルで正常な分娩後組織中で転写された転写産物について濃縮されているRNAを含んでなる請求項4に記載の方法。
【請求項8】
製薬学的に許容され得る組成物がさらに少なくとも1つのアジュバント、またはアジュバントをコードする核酸を含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アジュバントがGM−CSF、G−CSF、IL−2、IL−4、IL−7、IL−12、IL−15、IL−21、TNF−αおよびM−CSFからなる群から選択されるサイトカインである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アジュバントが不完全フロイントアジュバント(Montanide ISA 51)またはコリネバクテリウム グラニュロサム(Corynebacterium granulosum) P40を含んでなる請求項8に記載の方法。
【請求項11】
発生細胞が個体に対して異種である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
発生細胞により発現される複数の抗原または複数の抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物であって、製薬学的に許容され得る組成物が個体に投与された時、癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起する上記製薬学的に許容され得る組成物。
【請求項13】
さらに生理学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含んでなる請求項12に記載の製薬学的に許容され得る組成物。
【請求項14】
さらにアジュバントを含んでなる請求項12に記載の製薬学的に許容され得る組成物。
【請求項15】
アジュバントがサイトカインである請求項14に記載の製薬学的に許容され得る組成物。
【請求項16】
アジュバントがGM−CSF、G−CSF、IL−2、IL−4、IL−7、IL−12、IL−15、IL−21、TNF−αおよびM−CSFからなる群から選択されるサイトカインである、請求項14に記載の製薬学的に許容され得る組成物。
【請求項17】
請求項12ないし16のいずれか1項に記載の製薬学的に許容され得る組成物の予防または治療に有効な量。
【請求項18】
癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対して個体に免疫応答を誘起する方法であって:
個体に、有効量の抗原提示細胞、T−リンパ球または両方を含んでなる組成物を投与することを含んでなり、ここで抗原提示細胞およびTリンパ球は発生細胞により発現された複数の抗原の感作有効量ですでにインビトロで感作されており、ここで有効量の抗原提示細胞、Tリンパ球または両方は少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起するために十分である、上記方法。
【請求項19】
抗原提示細胞またはTリンパ球がオートロガスである請求項19に記載の方法。
【請求項20】
癌抗原に感作された抗原提示細胞の作成法であって:
抗原提示細胞を、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させる
ことを含んでなる上記方法。
【請求項21】
複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させた抗原提示細胞を含んでなる組成物。
【請求項22】
癌抗原特異的リンパ球の作成法であって:
a)抗原提示細胞を、複数の発生細胞抗原または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下でインビトロで接触させ;そして
b)リンパ球を工程a)の抗原提示細胞と、癌細胞に対する免疫応答を誘起できる癌抗原特異的リンパ球を生産するために十分な条件下で接触させる、
ことを含んでなる上記方法。
【請求項23】
リンパ球がTリンパ球である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
癌細胞に対する免疫応答を誘起できる癌抗原特異的リンパ球を生産するために十分な条件下で抗原提示細胞と接触させたTリンパ球を含んでなる組成物であって、抗原提示細胞が、複数の発生細胞抗原、または複数の発生細胞抗原をコードする核酸と、複数の発生細胞抗原が抗原提示細胞により提示されるために十分な条件下インビトロで接触されている、上記組成物。
【請求項25】
個体の癌を処置または防止する方法であって:
個体に治療または予防に有効な量の請求項12ないし17、21または24のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含んでなる上記方法。
【請求項26】
癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を個体に誘起する方法であって:
個体に、複数の発生細胞抗原、または複数の発生細胞抗原をコードする核酸をエクスビボで負荷した樹状細胞を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を投与することを含んでなり、ここで製薬学的に許容され得る組成物は、個体に投与された時、少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起する上記方法。
【請求項27】
癌細胞に対する免疫応答を個体に誘起する方法であって:
複数の発生細胞抗原に対して生じた抗体を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を個体に投与することを含んでなる上記方法。
【請求項28】
抗体が有毒部分に結合され、これにより抗体が細胞傷害用量の有毒部分を癌細胞に効果的に送達する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
有毒部分が放射性同位体であり、これにより抗体が細胞傷害用量を粒子放射線として癌細胞に送達する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
発生細胞により発現される複数の抗原、または複数の抗原をコードする核酸を含んでなる製薬学的に許容され得る組成物を含んでなるキットであって、ここで製薬学的に許容され得る組成物は個体に投与された時、癌細胞により発現される少なくとも1つの抗原に対する免疫応答を誘起する上記キット。
【請求項31】
さらにアジュバントを含んでなる請求項30に記載のキット。
【請求項32】
さらに化学療法剤を含んでなる請求項30に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−526923(P2011−526923A)
【公表日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516848(P2011−516848)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2009/049391
【国際公開番号】WO2010/002983
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(510333128)デユーク・ユニバーシテイ (2)
【Fターム(参考)】