説明

免疫抑制化合物および組成物

本発明は、免疫抑制剤、その製造法、その使用およびそれらを含む医薬組成物に関する。本発明は、リンパ球相互作用が介在する疾患または障害、特にEDG受容体介在シグナル伝達が関連する疾患の処置または予防に有用な新規クラスの化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願番号60/471,931(2003年5月19日出願)の優先権の利益を主張する。これらの出願の全部の記載は、引用により、その全体として、かつすべての目的に関して、本出願に包含される。
【0002】
発明の背景
技術分野
本発明は、リンパ球相互作用が介在する疾患または障害、特にEDG受容体介在シグナル伝達が関連する疾患の処置または予防に有用な免疫抑制化合物の新規クラスを提供する。
【0003】
背景技術
EDG受容体は、密接に関係した、脂質活性化G−タンパク質結合受容体のファミリーに属する。EDG−1、EDG−3、EDG−5、EDG−6、およびEDG−8(各々S1P1、S1P3、S1P2、S1P4、およびS1P5とも呼ばれる)は、スフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)に特異的な受容体である。EDG2、EDG4、およびEDG7(各々LPA1、LPA2、およびLPA3とも呼ばれる)は、リゾホスファチジン酸(lysophosphatidic)(LPA)に特異的な受容体である。S1P受容体アイソタイプの中で、EDG−1、EDG−3およびEDG−5は種々の組織で広範囲に発現されるが、一方EDG−6の発現は主としてリンパ組織および血小板で、そしてEDG−8は中枢神経系で確認される。EDG受容体はシグナル伝達を担い、細胞発育、増殖、維持、移動、分化、可塑性およびアポトーシスを含む細胞過程において重要な役割を演ずると考えられている。あるEDG受容体は、リンパ球相互作用が介在する疾患、例えば、移植拒絶反応、自己免疫性疾患、炎症性疾患、感染症および癌と関連する。EDG受容体活性の変更が、これらの疾患の病態および/または総体症状に関与する。したがって、それ自体EDG受容体の活性を変える分子が、このような疾患の処置における治療剤として有用である。
【0004】
発明の概要
本発明は、式I:
【化1】

〔式中、
Aは−C(O)OR、−OP(O)(OR)、−P(O)(OR)、−S(O)OR、−P(O)(R)ORおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;ここで各Rは、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;
およびXは、各々独立して結合またはC1−6アルキレンから選択され;
Zは:
【化2】

(式中、Zの左右のアスタリスクは式Iの−C(R)(R)−とAの結合点を各々示し;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;そしてJおよびJは、独立してメチレンまたはS、OおよびNRから選択されるヘテロ原子であり;ここでRは水素およびC1−6アルキルから選択される)
から選択され;
はC6−10アリールおよびC2−9ヘテロアリールから選択され;ここでRの任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、ハロ、C6−10アリールC0−4アルキル、C2−9ヘテロアリールC0−4アルキル、C3−8シクロアルキルC0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルC0−4アルキルまたはC1−6アルキルから選択されるラジカルで置換されており;ここでRの任意のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、所望により、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択される1個から5個のラジカルで置換されていてよく;そしてRの任意のアルキル基は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−および−O−から選択される原子または基で置換されたメチレンを有してよく;ここでRは水素またはC1−6アルキルから選択され;
はC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C3−12シクロアルキルC0−4アルキル、ハロ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択され;
およびRは、独立して水素、C1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ハロ−置換C1−6アルキルおよびハロ−置換C1−6アルコキシから選択される。〕
の化合物ならびにそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護された誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;およびこのような化合物の薬学的に許容される塩および溶媒和物(例えば水和物)に関する。
【0005】
本発明の第2の局面は、式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体または異性体の混合物、またはその薬学的に許容される塩を、1個またはそれ以上の適当な賦形剤と共に含む、医薬組成物である。
【0006】
本発明の第3の局面は、動物における、EDG受容体介在シグナル伝達の変更が、その疾患の病態および/または総体症状を予防、阻害または軽減できるものである疾患を処置する方法であり、動物に治療的有効量の式Iの化合物またはそのN−オキシド誘導体、個々の異性体または異性体の混合物;またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法である。
【0007】
本発明の第4の局面は、動物における、EDG受容体介在シグナル伝達の変更が、その疾患の病態および/または総体症状に関与するものである疾患の処置用医薬の製造における式Iの化合物の使用である。
【0008】
本発明の第5の局面は、式Iの化合物およびそのN−オキシド誘導体、プロドラッグ誘導体、保護された誘導体、個々の異性体および異性体の混合物;およびその薬学的に許容される塩の製造法である。
【0009】
好ましい態様の記載
本発明は、リンパ球相互作用が介在する疾患または障害の処置および/または予防に有用な化合物を提供する。また提供されるのは、このような疾患または障害を処置する方法である。
【0010】
定義
本明細書中、特記しない限り:
基または他の基、例えばハロ−置換−アルキル、アルコキシ、アシル、アルキルチオ、アルキルスルホニルおよびアルキルスルフィニルの構造要素としての“アルキル”は、直鎖または分枝鎖のいずれでもあり得る。基または他の基の構造要素としての“アルケニル”は、1個またはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含み、かつ直鎖または分枝鎖のいずれでもあり得る。すべての二重結合は、cis−またはtrans−立体配置であり得る。基または他の基の構造要素としての“アルキニル”は、少なくとも1個のC≡C三重結合を含み、かつまた1個またはそれ以上のC=C二重結合を含んでよく、かつ、可能である限り、直鎖または分枝鎖のいずれでもあり得る。単独または他の基の構造要素としてのシクロアルキル基は、3から8炭素原子、好ましくは3から6炭素原子を含んでよい。“アルキレン”および“アルケニレン”は、各々“アルキル”基および“アルケニル”基に由来する2価基である。本明細書中、Rの任意のアルキル基は、所望により、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR20−および−O−(式中、R20は水素またはC1−6アルキルである)から選択される群のメンバーで中断されていてよい。このような基は、−CH−O−CH−、−CH−S(O)−CH−、−(CH)−NR20−CH−、−CH−O−(CH)−などを含む。
【0011】
“アリール”は、6個から10個の環炭素原子を含む、単環式または縮合二環式芳香環集合体を意味する。例えば、C6−12アリールはフェニル、ビフェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。縮合二環式環は、部分飽和、例えば、1,2,3,4−テトラヒドロ−ナフタレンなどであり得る。“アリーレン”は、アリール基由来の2価基を意味する。例えば、本明細書で使用するアリーレンは、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどであり得る。
【0012】
“ハロ”または“ハロゲン”は、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClを意味する。ハロ−置換アルキル基および化合物は、部分的にハロゲン化されまたは過ハロゲン化されていてよく、複数ハロゲン化の場合、ハロゲン置換基は同一または異なり得る。好ましい過ハロゲン化アルキル基は、例えばトリフルオロメチルまたはトリフルオロメトキシである。
【0013】
“ヘテロアリール”は、特記しない限り、N、OまたはSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子部分が付加され、かつ、各環が5から6環原子からなる、本明細書で定義のアリールである。例えば、Cヘテロアリールは、オキサジアゾール、トリアゾールなどを含む。Cヘテロアリールはキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリンなどを含む。本明細書で使用するC2−9ヘテロアリールはチエニル、ピリジニル、フラニル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリルまたはベンゾ[1,3]ジオキソリル、好ましくはチエニル、フラニルまたはピリジニルを含む。“ヘテロアリーレン”は、環集合体が2価ラジカルを含むときの、本明細書で定義のヘテロアリールを意味する。縮合二環式ヘテロアリール環系は部分的に飽和され、例えば、2,3−ジヒドロ−1H−イソインドール、1,2,3,4−テトラヒドロ−キノリンなどである。
【0014】
本明細書で使用するEDG−1選択的化合物(薬剤またはモジュレーター)は、EDG−3を超え、かつ、EDG−5、EDG−6、およびEDG−8の1個を超えてEDG−1に選択的である特異性を有する。本明細書で使用する他のEDG受容体(“非選択的受容体”)を超える1個のEDG受容体(“選択的受容体”)に対する選択性は、該化合物が、該選択的EDG受容体(例えば、EDG−1)が介在する活性の誘導に、非選択的S1P−特異的EDG受容体に対するよりもより高い効果を有することを意味する。GTP−γS結合アッセイで測定したとき(下記実施例に記載した通り)、EDG−1選択的化合物は、典型的に、非選択的受容体(例えば、EDG−3、EDG−5、EDG−6、およびEDG−8の1個またはそれ以上)に対するEC50(最大応答の50%をもたらす濃度)よりも5、10、25、50、100、500、または1000倍低い、選択的受容体(EDG−1)に対するEC50を有する。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、リンパ球相互作用が介在する疾患または障害の処置または予防に有用な化合物を提供する。一つの態様において、式Iの化合物に関して、Rが所望によりハロ、C6−10アリールC0−4アルキル、C2−9ヘテロアリールC0−4アルキル、C3−8シクロアルキルC0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルC0−4アルキルまたはC1−6アルキルで置換されているフェニル、ナフチル、フラニルまたはチエニルであり;ここでRの任意のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択される1個から5個のラジカルで置換されていてよく;そしてRの任意のアルキル基は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−および−O−から選択される原子または基で置換されたメチレンを有してよく;ここでRは水素またはC1−6アルキルである。
【0016】
さらなる態様において、Rが:
【化3】

(式中、アスタリスクはRとXの結合点を示し;Rはハロ、C6−10アリールC0−4アルキル、C2−9ヘテロアリールC0−4アルキル、C3−8シクロアルキルC0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルC0−4アルキルまたはC1−6アルキルであり;ここでRの任意のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、所望によりハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;そしてRの任意のアルキル基は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−および−O−メチレンから選択される原子または基で置換されたメチレンを有してよく;ここでRは水素またはC1−6アルキルであり;そしてRはハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシである)
から選択される。
【0017】
他の態様において、AAが−C(O)OHであり;Zが:
【化4】

(式中、Zの左右のアスタリスクは式Iの−C(R)(R)−とAの結合点を各々示し;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;そしてRおよびRは両方とも水素である)
から選択される。
【0018】
他の態様において、Rがメチル、エチル、シクロプロピル、クロロ、ブロモ、フルオロおよびメトキシから選択される。
【0019】
他の態様において、Rが:
【化5】

(式中、Rはハロ、フェニル、シクロヘキシル、チエニル、3,3−ジメチル−ブチル、ピリジニル、シクロペンチルおよびピペリジニルから選択され;ここでRは、所望により、トリフルオロメチル、メトキシ、フルオロ、トリフルオロメトキシおよびメチルから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;そしてRはトリフルオロメチル、フルオロ、メチル、クロロ、メトキシおよびエチルから選択される)
から選択される。
【0020】
本発明の好ましい化合物は、1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、1−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−メチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(4−ブロモ−3−メチル−フェニルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、1−[4−(2−メチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、3−[4−(2'−エチル−2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(2'−エチル−2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメタンスルフィニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸および3−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸から選択される。
【0021】
さらに、好ましい化合物はまた下記実施例および表1に示す。
【0022】
本発明は、保護された形で存在するヒドロキシルまたはアミン基を有する化合物の形を提供する;これらはプロドラッグとして働く。プロドラッグは、投与後に、1つまたはそれ以上の生化学的変換を経由して活性薬剤形に変換される化合物である。生理学的条件下で容易に請求の化合物に変換される本発明の化合物の形は、請求の化合物のプロドラッグであり、本発明の範囲内である。プロドラッグの例は、ヒドロキシル基が酢酸エステルのような相対的に不安定なエステルにアシル化されている形、およびアミン基がグリシンもしくはセリンのようなL−アミノ酸のカルボン酸基でアシル化され、一般的な代謝酵素による加水分解を特に受けやすいアミド結合を形成している形を含む。
【0023】
式Iの化合物は、遊離形または塩形、例えば無機または有機酸の付加塩で存在できる。ヒドロキシル基が存在するとき、これらの基はまた塩形、例えばアンモニウム塩またはリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛もしくはマグネシウム、またはそれらの混合物のような金属との塩として存在できる。水和物または溶媒和物の形の式Iの化合物およびそれらの塩も本発明の一部である。
【0024】
式Iの化合物が分子中に不斉中心を有するとき、種々の光学異性体が得られる。本発明はまたエナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオ異性体およびこれらの混合物も含む。さらに、式Iの化合物が幾何学異性体を含むとき、本発明はまたcis−化合物、trans−化合物およびそれらの混合物を包含する。同様の解釈が、上記のような不斉炭素原子または不飽和結合を示す出発物質に関しても適用される。
【0025】
免疫調節状態を処置するための方法および組成物
遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物は、例えば、実施例5のインビトロおよびインビボ試験で示されるような、価値のある薬理学的特性、例えばリンパ球再循環調節特性を示し、したがって、治療に適用される。式Iの化合物は、好ましくは1×10−11から1×10−5Mの範囲の、好ましくは50nMより小さいEC50を示す。本化合物は、1個またはそれ以上のEDG/S1P受容体、好ましくはEDG−1/S1P−1に選択性を示す。本発明のEDG−1/S1P−1選択的モジュレーターは、EDG−1/S1P−1への、および1個またはそれ以上のEDG/S1P受容体(例えば、EDG−3/S1P−3、EDG−5/S1P−2、EDG−6/S1P−4、およびEDG−8/S1P−5)への化合物の結合をアッセイすることにより同定できる。EDG−1/S1P−1選択的モジュレーターは、通常、EDG−1/S1P−1受容体に1×10−11から1×10−5Mの範囲の、好ましくは50nMより小さい、より好ましくは5nMより小さいEC50を示す。それはまた1個またはそれ以上の他のEDG/S1P受容体についてEDG−1/S1P−1のEC50よりも少なくとも5、10、25、50、100、500、または1000倍高いEC50を示す。故に、EDG−1/S1P−1調節化合物のいくつかは、EDG−1/S1P−1について5nMより小さいEC50を示し、その1個またはそれ以上の他のEDG/S1P受容体についてのEC50は、少なくとも100nMまたはそれより高い。EDG/S1P受容体に対する結合活性を測定する以外に、EDG−1/S1P−1選択的薬剤はまたEDG/S1P受容体が介在する細胞過程または活性を調節する薬剤の能力を試験することにより同定できる。
【0026】
式Iの化合物は、したがって、リンパ球相互作用が介在する疾患または障害、例えば移植において、例えば、細胞、組織または臓器の同種−または異種移植の急性または慢性拒絶反応または移植片機能の遅発、移植片対宿主病、自己免疫性疾患、例えばリウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型またはII型糖尿病およびその合併症、脈管炎、悪性貧血、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、乾癬、グレーブス眼症、円形脱毛症およびその他、アレルギー性疾患、例えばアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎/結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、所望により異常反応が根底にある炎症性疾患、例えば炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、内因性喘息、炎症性肺傷害、炎症性肝臓傷害、炎症性糸球体傷害、アテローム性動脈硬化症、骨関節症、刺激性接触性皮膚炎および別の湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、免疫介在障害の皮膚症状、炎症性眼疾患、角結膜炎、心筋炎または肝炎、虚血/再潅流傷害、例えば心筋梗塞、卒中、腸虚血、腎不全または出血性ショック、外傷性ショック、T細胞リンパ腫またはT細胞白血病、感染症、例えば毒素ショック(例えば超抗原誘発)、敗血症性ショック、成人呼吸窮迫症候群またはウイルス感染、例えばAIDS、ウイルス性肝炎、慢性細菌感染、または老人性痴呆の処置および/または予防に有用である。細胞、組織または固形臓器移植の例は、例えば膵臓島、幹細胞、骨髄、角膜組織、神経組織、心臓、肺、複合心臓−肺、腎臓、肝臓、腸、膵臓、気管または食道を含む。上記使用に関して、必要な投与量はもちろん投与の形態、処置すべき特定の状態および所望の効果に依存して変化するであろう。
【0027】
さらに、式Iの化合物は癌化学療法、特に固形腫瘍、例えば乳癌の癌化学療法に、または抗血管形成薬剤として有用である。
【0028】
必要な投与量は、もちろん、投与の形態、処置すべき特定の状態および所望の効果に依存して変化するであろう。一般に、十分な結果が、約0.03から2.5mg/体重kgの全身一日投与量で得られることが示される。大型哺乳類、例えばヒトにおいて指示される一日投与量は、約0.5mgから約100mgの範囲であり、簡便には、例えば、1日4回までの分割投与量でまたは徐放性形で投与する。経口投与のための適当な単位投与形は、約1から50mgの活性成分を含む。
【0029】
式Iの化合物は、任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば、経口で、例えば錠剤またはカプセルの形で、または非経腸的に、例えば、注射溶液または懸濁液の形で、局所的に、例えばローション、ジェル、軟膏またはクリームの形で、または経鼻または坐薬形で投与できる。遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、少なくとも1個の薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む医薬組成物は、慣用法で、薬学的に許容される担体または希釈剤との混合により製造できる。
【0030】
式Iの化合物は、例えば、上記の通りの、遊離形または薬学的に許容される塩形で投与できる。このような塩は慣用法で製造でき、遊離化合物と同程度の活性を示す。
【0031】
前記によって、本発明はさらに下記を提供する:
1.1 処置を必要とする対象における、例えば、上記の通りの、リンパ球が介在する障害または疾患を予防または処置する方法であり、該対象に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0032】
1.2 処置を必要とする対象における、例えば、上記の通りの、急性もしくは慢性移植拒絶反応またはT細胞介在炎症性または自己免疫性疾患を予防または処置する方法であり、該対象に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0033】
1.3 処置を必要とする対象における、無秩序な血管形成、例えばスフィンゴシン−1−ホスフェート(S1P)介在血管形成を阻害または制御する方法であり、該対象に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0034】
1.4 処置を必要とする対象における、新規血管形成過程が介在するまたは無秩序な血管形成が関連する疾患を予防または処置する方法であり、該対象に、有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【0035】
2. 医薬として、例えば、上記1.1から1.4に示す方法のいずれかにおいて使用するための、遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物。
【0036】
3. 遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物を、薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む、例えば、上記1.1から1.4に示す方法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物。
【0037】
4. 上記1.1から1.4に示す方法のいずれかにおいて使用するための医薬組成物の製造において使用するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩。
【0038】
式Iの化合物は、唯一の活性成分として、または、例えばアジュバントとして、他の薬剤と、例えば同種−もしくは異種移植片急性もしくは慢性拒絶反応または炎症性または自己免疫性障害の処置または予防のためには例えば免疫抑制剤もしくは免疫調節剤または他の抗炎症剤と、または化学療法剤、例えば悪性細胞抗増殖剤と併用して投与してよい。例えば式Iの化合物は、カルシニューリン阻害剤、例えばシクロスポリンAまたはFK506;mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン、CCI779、ABT578またはAP23573;免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981など;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;レフルノミド;ミゾルビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその免疫抑制性ホモログ、アナログまたは誘導体;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば白血球受容体、例えばMHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD25、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86またはそれらのリガンドに対するモノクローナル抗体;他の免疫調節化合物、例えばCTLA4またはその変異体の細胞外ドメイン少なくとも一部、例えば非CTLA4タンパク質配列に結合したCTLA4またはその変異体の細胞外領域の少なくとも一部を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えば、名称ATCC68629)またはその変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または化学療法剤と併用して使用できる。
【0039】
“化学療法剤”なる用語は、すべての化学療法剤を意味し、
i. アロマターゼ阻害剤、
ii. 抗エストロゲン、抗アンドロゲン(とりわけ前立腺癌の場合)またはゴナドレリンアゴニスト、
iii. トポイソメラーゼI阻害剤またはトポイソメラーゼII阻害剤、
iv. 微小管活性化剤、アルキル化薬剤、抗新生物代謝拮抗剤またはプラチン化合物、
v. タンパク質または脂質キナーゼ活性またはタンパク質または脂質ホスファターゼ活性をターゲッティング/減少させる化合物、さらなる抗血管形成化合物または細胞分化過程を誘発する化合物、
vi. ブラジキニン1受容体またはアンギオテンシンIIアンタゴニスト、
vii. シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ビスホスホネート、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、ヘパラナーゼ阻害剤(ヘパランスルフェート分解を防止)、例えばPI−88、生物学的応答修飾剤、好ましくはリンフォカインまたはインターフェロン、例えばインターフェロン□、ユビキチン化阻害剤、または抗アポトーシス経路を遮断する阻害剤、
viii.Ras発癌性アイソフォーム、例えばH−Ras、K−RasまたはN−Rasの阻害剤、またはファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、例えばL−744,832またはDK8G557、
ix. テロメラーゼ阻害剤、例えばテロメスタチン、
x. プロテアーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、メチオニンアミノペプチダーゼ阻害剤、例えばベンガミドまたはその誘導体、またはプロテオソーム阻害剤、例えばPS−341、および/または
xi. mTOR阻害剤
を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用する“アロマターゼ阻害剤”は、エストロゲン産生、すなわち基質アンドロステンジオンおよびテストステロンから各々エストロンおよびエストラジオールへの変換を阻害する化合物に関する。本用語は、ステロイド、とりわけアタメスタン、エキセメスタンおよびホルメスタンおよび、特に、非ステロイド、とりわけアミノグルテチミド、ログレチミド、ピリドグルテチミド、トリロスタン、テストラクトン、ケトコナゾール、ボロゾール、ファドロゾール、アナストロゾールおよびレトロゾールを含むが、これらに限定されない。アロマターゼ阻害剤である化学療法剤を含む本発明の組み合わせは、特にホルモン受容体陽性腫瘍、例えば乳房腫瘍の処置に有用である。
【0041】
本明細書で使用する“抗エストロゲン”なる用語は、エストロゲンの効果と、エストロゲン受容体レベルで拮抗する化合物に関する。本用語は、タモキシフェン、フルベストラント、ラロキシフェンおよび塩酸ラロキシフェンを含むが、これらに限定されない。抗エストロゲンである化学療法剤を含む本発明の組み合わせは、特にエストロゲン受容体陽性腫瘍、例えば乳房腫瘍の処置に有用である。
【0042】
本明細書で使用する“抗アンドロゲン”なる用語は、アンドロゲンホルモンの生物学的効果を阻害できる任意の物質に関し、ビカルタミドを含むが、これに限定されない。
【0043】
本明細書で使用する“ゴナドレリンアゴニスト”なる用語は、アバレリックス、ゴセレリンおよび酢酸ゴセレリンを含むが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書で使用する“トポイソメラーゼI阻害剤”なる用語は、トポテカン、イリノテカン、9−ニトロカンプトテシンおよび巨大分子カンプトテシン・コンジュゲート・PNU−166148(WO99/17804の化合物A1)を含むが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書で使用する“トポイソメラーゼII阻害剤”なる用語は、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシンおよびネモルビシンのようなアントラサイクリン、アントラキノンであるミトキサントロンおよびロソキサントロン、およびポドフィロトキシンであるエトポシドおよびテニポシドを含むが、これらに限定されない。
【0046】
“微小管活性化剤”なる用語は、微小管安定化および微小管脱安定化剤に関し、タキサン、例えばパクリタキセルおよびドセタキセル、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、とりわけ硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、とりわけ硫酸ビンクリスチン、およびビノレルビン、ジスコデルモライドおよびエポシロンおよびそれらの誘導体、例えばエポシロンBまたはその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用する“アルキル化剤”なる用語は、ブスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファランまたはニトロソウレア(BCNUまたはGliadelTM)を含むが、これらに限定されない。
【0048】
“抗新生物代謝拮抗剤”は、5−フルオロウラシル、カペシタビン、ゲムシタビン、シタラビン、フルダラビン、チオグアニン、メトトレキサートおよびエダトレキサートを含むが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書で使用する“プラチン化合物”なる用語は、カルボプラチン、シスプラチンおよびオキサリプラチンを含むが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書で使用する“タンパク質または脂質キナーゼ活性をターゲッティング/減少させる化合物またはさらなる抗血管形成化合物”は、タンパク質チロシンキナーゼおよび/またはセリンおよび/またはスレオニンキナーゼ阻害剤または脂質キナーゼ阻害剤、例えば受容体チロシンキナーゼの上皮成長因子ファミリー(EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、モノ−またはヘテロダイマーとして)、受容体チロシンキナーゼの血管内皮細胞増殖因子ファミリー(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、繊維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、インシュリン様増殖因子受容体1(IGF−1R)、Trk受容体チロシンキナーゼファミリー、Axl受容体チロシンキナーゼファミリー、Ret受容体チロシンキナーゼ、Kit/SCFR受容体チロシンキナーゼ、c−Ablファミリーのメンバーおよびそれらの遺伝子融合産物(例えばBCR−Abl)、タンパク質キナーゼC(PKC)およびセリン/スレオニンキナーゼのRafファミリーのメンバー、MEK、SRC、JAK、FAK、PDKまたはPI(3)キナーゼファミリーのメンバー、またはPI(3)−キナーゼ−関連キナーゼファミリーのメンバー、および/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)のメンバーの活性をターゲッティングし、減少させ、または阻害する化合物ならびに活性に関して他の、例えば、タンパク質または脂質キナーゼに無関係の機構を有する抗血管形成化合物を含むが、これらに限定されない。
【0051】
VEGFRの活性をターゲットとし、減少させ、または阻害する化合物は、とりわけVEGF受容体チロシンキナーゼを阻害し、VEGF受容体を阻害し、またはVEGFに結合する化合物、タンパク質または抗体であり、そして特にWO98/35958に一般的にかつ具体的に記載の、例えば1−(4−クロロアニリノ)−4−(4−ピリジルメチル)フタラジンまたはその薬学的に許容される塩、例えばコハク酸塩、WO00/27820に一般的にかつ具体的に記載の、例えばN−アリール(チオ)アントラニル酸アミド誘導体、例えば2−[(4−ピリジル)メチル]アミノ−N−[3−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドまたは2−[(1−オキシド−4−ピリジル)メチル]アミノ−N−[3−トリフルオロメチルフェニル]ベンズアミド、またはWO00/09495、WO00/59509、WO98/11223、WO00/27819およびEP0769947に一般的にかつ具体的に記載の化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体;M. Prewett et al in Cancer Research 59(1999) 5209-5218、F. Yuan et al in Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 93, pp. 14765-14770, Dec. 1996、Z. Zhu et al in Cancer Res. 58, 1998, 3209-3214、およびJ. Mordenti et al in Toxicologic Pathology, Vol. 27, no. 1, pp 14-21, 1999に記載のもの;WO00/37502およびWO94/10202記載のもの;M. S. O'Reilly et al, Cell 79, 1994, 315-328により記載のAngiostatinTM;M. S. O'Reilly et al, Cell 88, 1997, 277-285により記載のEndostatinTM;アントラニル酸アミド;ZD4190;ZD6474;SU5416;SU6668;または抗VEGF抗体または抗VEGF受容体抗体、例えばRhuMabである。
【0052】
抗体は、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体から形成された多特異性抗体、および所望の生物学的活性を示す限り、抗体フラグメントを意味する。
【0053】
上皮成長因子受容体ファミリーの活性をターゲットとし、減少させまたは阻害する化合物は、とりわけ、EGF受容体チロシンキナーゼファミリー、例えばEGF受容体、ErbB2、ErbB3およびErbB4のメンバーを阻害するかまたはEGFリガンドもしくはEGF関連リガンドと結合するか、または、ErbBおよびVEGF受容体キナーゼに二重の阻害効果を有する化合物、タンパク質または抗体、特に一般的にかつ具体的にWO97/02266に記載されている、例えば実施例39の化合物、またはEP0564409、WO99/03854、EP0520722、EP0566226、EP0787722、EP0837063、US5,747,498、WO98/10767、WO97/30034、WO97/49688、WO97/38983に記載されている、とりわけ、WO96/30347(例えばCP358774として既知の化合物)、WO96/33980(例えば化合物ZD1839)およびWO95/03283(例えば化合物ZM105180)またはPCT/EP02/08780に記載の化合物、タンパク質またはモノクローナル抗体;例えばトラスツズマブ(Herpetin)、セツキシマブ、Iressa、OSI−774、CI−1033、EKB−569、GW−2016、E1.1、E2.4、E2.5、E6.2、E6.4、E2.11、E6.3またはE7.6.3である。
【0054】
PDGFRの活性をターゲットとし、減少させ、または阻害する化合物は、とりわけPDGF受容体を阻害する化合物、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブである。
【0055】
c−AbIファミリーメンバーおよびそれらの遺伝子融合産物の活性をターゲットとし、減少させ、または阻害する化合物は、例えばN−フェニル−2−ピリミジン−アミン誘導体、例えばイマチニブ;PD180970;AG957;またはNSC680410である。
【0056】
タンパク質キナーゼC、Raf、MEK、SRC、JAK、FAKおよびPDKファミリーメンバー、またはPI(3)キナーゼまたはPI(3)キナーゼ−関連ファミリーメンバー、および/またはサイクリン依存性キナーゼファミリー(CDK)のメンバーの活性をターゲットとし、減少させ、または阻害する化合物は、とりわけEP0296110に記載のスタウロスポリン誘導体、例えばミドスタウリンである;さらなる化合物の例は、例えばUCN−01、サフィンゴル(safingol)、BAY43−9006、Bryostatin 1、Perifosine;Ilmofosine;RO 318220およびRO 320432;GO6976;Isis 3521;またはLY333531/LY379196を含む。
【0057】
さらなる抗血管形成化合物は、例えばサリドマイド(THALOMID)およびTNP-470である。
【0058】
タンパク質または脂質ホスファターゼの活性をターゲットとし、減少させ、または阻害する化合物は、例えばホスファターゼ1、ホスファターゼ2A、PTENまたはCDC25の阻害剤、例えばオカダ酸またはその誘導体である。
【0059】
細胞分化過程を誘発する化合物は、例えばレチノイン酸、α−、γ−またはδ−トコフェロールまたはα−、γ−またはδ−トコトリエノールである。
【0060】
本明細書で使用するシクロオキシゲナーゼ阻害剤なる用語は、例えばセレコキシブ(Celebrex)、ロフェコキシブ(Vioxx)、エトリコキシブ、バルデコキシブまたは5−アルキル−2−アリールアミノフェニル酢酸、例えば5−メチル−2−(2'−クロロ−6'−フルオロアニリノ)フェニル酢酸を含むが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書で使用する“ヒストンデアセチラーゼ阻害剤”なる用語は、MS-27-275、SAHA、ピロキサミド、FR-901228またはバルプロ酸を含むが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用する“ビスホスホネート”なる用語は、エチドロン酸(etridonic)、クロドロン酸、チルドロン酸、パミドロン酸、アレンドロン酸、イバンドロン酸、リセドロン酸およびゾレドロン酸を含むが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書で使用する“マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤”なる用語は、コラーゲンペプチド模倣および非ペプチド模倣阻害剤、テトラサイクリン誘導体、例えばヒドロキサメートペプチド模倣物阻害剤であるバチマスタットおよびその経口生物利用可能アナログであるマリマスタット、プリノマスタット(prinomastat)、BMS-279251、BAY 12-9566、TAA211またはAAJ996を含むが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用する“mTOR阻害剤”なる用語は、ラパマイシン(シロリムス)またはその誘導体、例えば32−デオキソラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32−デオキソ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−ラパマイシン、16−ペント−2−イニルオキシ−32(S)−ジヒドロ−40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよび、より好ましくは、40−0−(2−ヒドロキシ−エチル)−ラパマイシンを含むが、これらに限定されない。ラパマイシン誘導体のさらなる例は、例えばUSP5,362,718に記載されるようなCCI779または40−[3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシ−メチル)−2−メチルプロパノエート]−ラパマイシンまたはその薬学的に許容される塩、例えばWO99/15530に記載されるようなABT578または40−(テトラゾリル)−ラパマイシン、特に40−エピ−(テトラゾリル)−ラパマイシン、または例えばWO98/02441およびWO01/14387に記載されるようなラパログ(rapalog)、例えばAP23573を含む。
【0065】
式Iの化合物を、他の免疫抑制剤/免疫調節剤、抗炎症剤または化学療法剤と併用して投与するとき、併用する免疫抑制性、免疫調節性、抗炎症性または化学療法化合物の投与量は、もちろん、用いる併用剤、例えばそれがステロイドかカルシニューリン阻害剤か、用いる具体的な薬剤、処置する状態などに依存して変化するであろう。
【0066】
前記によって、本発明はなおさらに下記の局面を提供する:
5. 治療的有効非毒性量の式Iの化合物と、少なくとも一個の第2医薬物質、例えば上記の通りの、例えば免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤または化学療法剤を、例えば同時にまたは連続して併用投与することを含む、上記で定義の方法。
【0067】
6. a)本明細書に記載の遊離形または薬学的に許容される塩形の式Iの化合物である第1薬剤、およびb)少なくとも1個の併用薬剤、例えば上記の通りの、例えば免疫抑制剤、免疫調節剤、抗炎症剤または化学療法剤を含む、薬学的組み合わせ、例えばキット。キットはその投与のための指示書を含み得る。
【0068】
本明細書で使用する“併用投与”または“組み合わせ投与”などの用語は、選択した治療剤を単独の患者に投与することを包含することを意味し、薬剤を必ずしも同じ投与経路でまたは同時に投与するものではない処置レジメンを含むことを意図する。
【0069】
本明細書で使用する“医薬的組み合わせ”なる用語は、1個またはそれ以上の活性成分の混合または組み合わせにより得られる製品を意味し、活性成分の固定されたまたは固定されていない組み合わせの両方を含む。“固定された組み合わせ”なる用語は、活性成分、例えば式Iの化合物および併用薬剤を、両方とも患者に同時に一つの物または投与量の形で投与することを意味する。“固定されていない組み合わせ”なる用語は、活性成分、例えば式Iの化合物および併用薬剤が、両方とも患者に別々の物として、同時に、共に、または特別な時間制限なしに連続して投与することを意味し、このような投与が患者の体内で2個の化合物の治療的有効量を提供するものである。後者はまたカクテル療法、例えば、3個またはそれ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0070】
本発明の化合物の製造法
本発明はまた本発明の免疫調節化合物の製造法も含む。記載の反応において、反応性官能基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、チオ基またはカルボキシ基を、これらが最終産物で望まれるとき、それらの望ましくない反応への参加を避けるために、保護する必要があり得る。慣用の保護基を標準的慣習にしたがって使用でき、例えば、T.W. Greene and P. G. M. Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry”, John Wiley and Sons, 1991を参照のこと。
【0071】
式Iの化合物は、下記反応スキーム1の手順により製造できる:
【化6】

(式中、R、R、R、R、X、X、AおよびZは、上記式Iについて定義の通りである)。式Iの化合物は、式2の化合物と式3の化合物を、適当な溶媒(例えばDCM、DMFなど)および適当な塩基(例えばDIEA、NaOHなど)の存在下で反応させることにより製造できる。反応は約0℃から約100℃で行い、完了に約48時間かかり得る。
【0072】
が水素であるかまたはC1−6アルキルであり、そしてRが水素である式Iの化合物は、下記反応スキーム2の手順により製造できる:
【化7】

(式中、R、R、X、X、AおよびZは、上記式Iについて定義の通りである)。式Iの化合物は、式4の化合物と式3の化合物を、適当な溶媒(例えばMeOHなど)、適当な塩基(例えばTEAなど)および適当な還元剤(NaCNBHなど)の存在下で反応させることにより製造できる。反応は約0℃から約100℃で行い、完了に約48時間かかり得る。
【0073】
本発明の化合物の製造の付加的工程:
本発明の化合物は、薬学的に許容される酸付加塩として、遊離塩基の形の化合物と薬学的に許容される無機または有機酸を反応させることにより製造できる。あるいは、本発明の化合物の薬学的に許容される塩基付加塩は、遊離塩基の形の化合物と薬学的に許容される無機または有機塩基を反応させることにより製造できる。あるいは、本発明の化合物の塩形は、塩の出発物質または中間体の使用により製造できる。
【0074】
本発明の化合物の遊離酸または遊離塩基形は、対応する塩基付加塩または酸付加塩形から各々製造できる。例えば酸付加塩形の本発明の化合物は、対応する遊離塩基に、適当な塩基(例えば、水酸化アンモニウム溶液、水酸化ナトリウムなど)での処理により変換できる。塩基付加塩形の本発明の化合物は、対応する遊離酸に、適当な酸(例えば、塩酸など)での処理により変換できる。
【0075】
酸化されていない形の本発明の化合物を、本発明の化合物のN−オキシドから、還元剤(例えば、硫黄、二酸化硫黄、トリフェニルホスフィン、リチウムボロハイドライド、水素化ホウ素ナトリウム、三塩化リン、三臭化物など)の適当な不活性有機溶媒(例えばアセトニトリル、エタノール、水性ジオキサンなど)中での、0から80℃での処理により製造できる。
【0076】
本発明の化合物のプロドラッグ誘導体は、当業者に一般的な方法により製造できる(例えば、さらなる詳細は、Saulnier et al., (1994), Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, Vol. 4, p. 1985参照)。例えば、適切なプロドラッグを、非誘導体である本発明の化合物を、適当なカルバミル化剤(例えば、1,1−アシルオキシアルキルカルバノクロリデート、パラ−ニトロフェニルカーボネートなど)と反応させることにより製造できる。
【0077】
本発明の化合物の保護された誘導体は、当業者に一般的な手段により製造できる。保護基の創成およびその除去に適用できる技術の詳細な記載は、T W. Greene, “Protecting Groups in Organic Chemistry”, 3rd edition, John Wiley and Sons, Inc., 1999に見ることができる。
【0078】
本発明の化合物は、溶媒和物(例えば、水和物)として、簡便に製造でき、または、本発明の方法中に形成され得る。本発明の化合物の水和物は、ジオキシン、テトラヒドロフランまたはメタノールのような有機溶媒を使用した水性/有機溶媒混合物からの再結晶により簡便に製造できる。
【0079】
本発明の化合物は、該化合物のラセミ混合物と、光学活性分解剤を反応させ、ジアステレオ異性体化合物のペアを形成させ、ジアステレオマーを分離し、光学的に純粋なエナンチオマーを回収することにより、個々の立体異性体として製造できる。エナンチオマーの分離は、本発明の化合物の共有結合的ジアステレオマー誘導体を使用して行うことができるが、分離できる複合体(例えば、結晶ジアステレオマー塩)が好ましい。ジアステレオマーは異なる物理特性(例えば、融点、沸点、溶解度、反応性など)を有し、これらの差異を利用して容易に分離できる。ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより、または好ましくは溶解度の差に基づいた分離/分解法により分離できる。光学活性エナンチオマーを、次いで、解離剤と共に、ラセミ化をもたらさない任意の慣用的手段により回収する。ラセミ混合物からの化合物の立体異性体の分離に適用できる技術のより詳細な記載は、Jean Jacques, Andre Collet, Samuel H. Wilen, “Enantiomers, Racemates and Resolutions”, John Wiley and Sons, Inc., 1981に見ることができる。
【0080】
要約すると、式Iの化合物は、下記を含む方法により製造できる:
(a)上記反応スキーム1または2;そして
(b)所望により本発明の化合物を薬学的に許容される塩に変換する;
(c)所望により塩の形の本発明の化合物を、非塩形に変換する;
(d)所望により非酸化形の本発明の化合物を薬学的に許容されるN−オキシドに変換する;
(e)所望によりN−オキシド形の本発明の化合物をその非酸化形に変換する;
(f)所望により本発明の化合物の個々の異性体を異性体の混合物から分離する;
(g)所望により非誘導体である本発明の化合物を薬学的に許容されるプロドラッグ誘導体に変換する;そして
(h)所望により本発明の化合物のプロドラッグ誘導体をその非誘導体形に変換する。
【0081】
出発物質の製造を特に記載していない限り、該化合物は既知であるか、または、当分野で既知の方法に準じて、または、下記実施例に記載の通り製造できる。
【0082】
当業者は、上記の変換は本発明の化合物の製造の代表であるのみであり、他の既知の方法を同様に使用できることを認識しよう。
【0083】
実施例
下記実施例は代表的化合物の製造の詳細な記載を提供し、本発明を説明するために提供するが、限定するものではない。
【0084】
実施例1
1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸
【化8】

4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル(methy))アニリン(360mg、1.50mmol、1当量)のDMF(5mL)溶液に、フェニルボロン酸(274mg、2.25mmol、1.5当量)、KCO(621mg、4.5mmol、3当量)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(173mg、0.15mmol、0.1当量)を添加する。混合物をN(g)5分パージし、120℃で20時間加熱する。室温に冷却後、反応物をEtOAcで希釈し、HO、続いて飽和水性NaClで洗浄する。有機溶液をNaSOで乾燥させる。濃縮後、残渣を勾配シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサンから3:1ヘキサン/EtOAc)で精製し、2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミンを得る。[MS: (ES+) 238.1 (M+1)+]。
【0085】
2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルアミン(175mg、0.7377mmol、1当量)をCHOH(0.75mL)、HO(0.75mL)、および濃水性HCl(0.4mL)の混合物に溶解する。この溶液を0℃に溶解し、HO(0.30mL)に溶解したNaNO(71mg、1.033mmol、1.4当量)の溶液を1時間にわたりゆっくり添加し、反応温度を0℃に維持する。この添加が完了後、反応混合物を65℃に予め加温したO−エチル−キサントゲン酸カリウム塩(237mg、1.475mmol、2当量)のHO(0.70mL)溶液に、急激に添加する。この反応混合物を65℃で15分撹拌する。室温に冷却後、反応物をEtOAcで希釈し、HO、続いて飽和水性NaClで洗浄する。有機溶液をNaSOで乾燥させる。濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(9:1 ヘキサン/EtOAc)で精製し、ジチオ炭酸O−エチルエステルS−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)エステルを得る。
【0086】
ジチオ炭酸O−エチルエステルS−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イル)エステル(128mg、0.3738mmol)のEtOH(5mL)溶液に、水性NaOH(1N、5mL)を添加する。混合物を65℃で3時間加熱する。室温に冷却後、1N HCl(水性)を、反応物のpHが約pH=5に調節されるまで添加する。反応物をEtOAcで希釈し、HO、続いて飽和水性NaClで洗浄する。有機溶液をNaSOで乾燥させる。濃縮後、得られた粗2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−チオール生成物(64mg、0.2519mmol)をEtOH(5mL)に溶解する。NaBH(19mg、0.5039mmol、2当量)をこの溶液に添加する。得られた混合物を室温で25分撹拌し、この時点でメチル−4−(ブロモメチル)ベンゾエート(58mg、0.2519mmol、1当量)のDMF(1.5mL)溶液をこの反応に加える。混合物を室温でさらに30分撹拌する。EtOHを真空下で除去する。得られたDMF溶液をEtOAcで希釈し、HO、続いて飽和水性NaClで洗浄する。有機溶液をNaSOで乾燥させる。濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(3:1 ヘキサン/EtOAc)で精製し、4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−安息香酸メチルエステルを得る。[MS: (ES+)425.1 (M+23)+]。
【0087】
−78℃に冷却した4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−安息香酸メチルエステル(83mg、0.2062mmol、1当量)の無水トルエン(5mL)溶液に、DIBAL−H(トルエン中1M、0.41mL、0.41mmol、2当量)を添加する。混合物を−78℃で30分撹拌する。反応を飽和水性NHClの添加によりクエンチし、その後、反応混合物を室温に温める。反応物をEtOAcで希釈し、1N HCl(水性)、HO、および飽和水性NaClで洗浄する。有機溶液をNaSOで乾燥させる。濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1:1 ヘキサン/EtOAc)で精製し、[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−フェニル]−メタノールを得る。[MS: (ES+)397.1 (M+23)+]。
【0088】
[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−フェニル]−メタノール(162mg、0.4327mmol、1当量)の無水DCM(5mL)溶液に、PPh(148mg、0.5625mmol、1.3当量)を添加する。混合物を室温で5分撹拌し、その時点で、反応を0℃に冷却する。反応混合物に、0℃で、CBr(187mg、0.5625mmol、1.3当量)の無水DCM(2mL)溶液を添加する。反応物を室温にゆっくり温め、12時間撹拌する。反応混合物を直接シリカゲルクロマトグラフィー(6:1 ヘキサン/EtOAc)にかけ、4−(4−ブロモメチル−ベンジルスルファニル)−2−トリフルオロメチル−ビフェニルを得る。
【0089】
4−(4−ブロモメチル−ベンジルスルファニル)−2−トリフルオロメチル−ビフェニル(185mg、0.4230mmol、1当量)の無水DCM(7mL)溶液に、アゼチジン−3−カルボン酸メチルエステル(HCl塩、96mg、0.6345mmol、1.5当量)およびDIEA(0.74mL、4.230mmol、10当量)を添加する。混合物を室温で3時間撹拌する。反応混合物を直接シリカゲルクロマトグラフィー(5:1 ヘキサン/EtOAcから1:2 ヘキサン/EtOAcの勾配)にかけ、1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸メチルエステルを得る。
【0090】
1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸メチルエステル(129mg、0.2736mmol、1当量)の、MeOH(5mL)およびHO(0.5mL)の混合物中の溶液に、LiOH−HO(23mg、0.5472mmol、2当量)を添加する。混合物を室温で3時間撹拌する。濃縮後、粗生成物を分取RP LC−MSで精製し、1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸を得る:1H NMR (CD3OD, 400 MHz) δ 7.61 (s, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.56 (d, 2H), 7.46-7.39 (m, 6H), 7.29 (d, 2H), 4.42 (s, 2H), 4.35 (s, 2H), 4.31 (d, 4H), 3.73-3.61 (m, 1H); MS (ES+): (458.1, M+1)+
【0091】
実施例2
3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸
【化9】

3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸tert−ブチルエステルを、上記に準じて、4−(4−ブロモメチル−ベンジルスルファニル)−2−トリフルオロメチル−ビフェニルおよび3−アミノ−プロピオン酸tert−ブチルエステルの反応により合成する。
【0092】
3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸tert−ブチルエステル(24mg、0.0478mmol、1当量)のDCM(2mL)溶液に、トリエチルシラン(0.038mL、0.2392mmol、5当量)、続いてTFA(2mL)を添加する。混合物を室温で2時間撹拌する。濃縮後、粗生成物を分取RP LC−MSで精製して、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸を得る:1H NMR (CD3OD, 400 MHz) δ 7.66 (s, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.55-7.38 (m, 7H), 7.28-7.21 (m, 3H), 4.33 (s, 2H), 4.18 (s, 2H), 3.26 (t, 2H), 2.72 (t, 2H); MS (ES+): (446.1, M+1)+
【0093】
実施例3
1−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸
【化10】

工程1:中間体の合成:4−ブロモメチル−1−シクロヘキシル−2−トリフルオロメチル−ベンゼン
4−クロロ−3−トリフルオロメチル−ベンズアルデヒド(2.1g、10mmol)のメタノール(30mL)溶液に、0℃でNaBH(400mg、10.6mmol)を添加する。2時間後、反応をHO(20mL)、続く水性HCl(1N、10mL)のゆっくりした添加によりクエンチする。混合物をEtOAc(3×20mL)で抽出する。合わせた有機層を飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させる。濃縮後、粗生成物(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−メタノールを、次段階に直接さらに精製せずに使用する。
【0094】
粗(4−クロロ−3−トリフルオロメチル−フェニル)−メタノールのDMF(無水、40mL)溶液に、0℃でNaH(600mg、15mmol)を添加する。30分撹拌後、4−メトキシベンジルブロミド(2.21g、11mmol)をシリンジを介して滴下する。室温で3時間撹拌後、反応物を氷および飽和水性NHClの混合物に注ぐことによりクエンチする。混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させる。濃縮後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAc)で精製し、1−クロロ−4−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−2−トリフルオロメチル−ベンゼンを無色油状物として得る。
【0095】
1−クロロ−4−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−2−トリフルオロメチル−ベンゼン(1.5g、4.5mmol)およびシクロヘキシル亜鉛ブロミドTHF溶液(0.5M、27mL)の混合物のNMP(30mL)溶液に、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(115mg、0.225mmol)を添加する。混合物をNで5分パージし、続いて120℃で12時間、N下加熱する。室温に冷却後、反応物をHO(100mL)および水性HCl(1N、20mL)の添加によりクエンチする。混合物をEtOAc(3×40mL)で抽出する。合わせた有機相を飽和水性NaHCO、飽和水性NaClで洗浄し、およびNaSOで乾燥させる。濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAc)で精製し、1−シクロヘキシル−4−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−2−トリフルオロメチル−ベンゼンを無色油状物として得る。
【0096】
得られた1−シクロヘキシル−4−(4−メトキシ−ベンジルオキシメチル)−2−トリフルオロメチル−ベンゼンをTFAおよびDCMの混合物(8mL、1:1v/v)に溶解する。室温で2時間撹拌後、すべての揮発性物質を蒸発させ、得られた残渣をEtOAcに溶解し、飽和水性NaHCOで洗浄する。有機層を分離し、飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させる。濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中20%酢酸エチル)で精製し、(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−フェニル)−メタノールを無色油状物として得る。
【0097】
(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−フェニル)−メタノール(300mg、1.16mmol)およびPPh(460mg、1.74mmol)のDCM(5mL)溶液に、0℃でDCM(2mL)に溶解したCBr(580mg、1.74mmol)を添加する。反応物を0℃で1時間撹拌し、続いて濃縮する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAc)で精製し、4−ブロモメチル−1−シクロヘキシル−2−トリフルオロメチル−ベンゼンを白色固体として得る。
【0098】
工程2:1−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸の合成
Dean-Stark装置を備えた丸底フラスコ中、4−メチルチオベンズアルデヒド(5g、32.8mmol)、プロパンジオール(2.75g、36.1mmol)、およびトルエンスルホン酸(550mg、3.28mmol)のトルエン(300mL、無水)溶液を、N下、加熱還流する。5時間後、反応混合物を室温に冷却し、飽和水性NaHCO(3×40mL)で洗浄する。有機相を濃縮し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(1ヘキサン中5%EtOAc)で精製して、2−(4−メチルスルファニル−フェニル)−[1,3]ジオキサンを黄色油状物として得る。
【0099】
2−(4−メチルスルファニル−フェニル)−[1,3]ジオキサン(2g、9.5mmol)のDCM(50mL)溶液に、0℃でm−CPBA(2.46g、10.5mmol)を添加する。混合物を0℃で1時間撹拌し、その後Ca(OH)(770mg、10.5mmol)を添加する。反応物をさらに30分撹拌し、次いで反応混合物をDCMで希釈し、セライトを通して濾過する。濾液を回収し、濃縮して2−(4−メタンスルフィニル−フェニル)−[1,3]ジオキサンを白色固体として得る。
【0100】
2−(4−メタンスルフィニル−フェニル)−[1,3]ジオキサン(400mg、1.76mmol)をアセトニトリル(20mL)に溶解する。2,6−ルチジン(0.64mL、5.5mmol)を添加し、溶液を−10℃に冷却する。TFAA(0.75mL、5.3mmol)をシリンジを介して滴下する。r反応物を1時間、−10から0℃で撹拌する。すべての揮発性物質を蒸発させ、その間反応混合物を0℃に維持する。0℃に予め冷却したMeOHおよびトリエチルアミン(50mL、1:1 v/v)の混合物を添加する。得られた混合物を温め、室温で30分撹拌する。すべての揮発性物質を蒸発させる。得られた残渣をジエチルエーテルに溶解し、飽和水性NHClで洗浄する。有機層を分離し、NaSOで乾燥させ、濃縮して、粗4−[1,3]ジオキサン−2−イル−ベンゼンチオールを黄色油状物として得て、それをさらに精製することなく直ぐに次段階に使用する。
【0101】
粗4−[1,3]ジオキサン−2−イル−ベンゼンチオール(0.9mmol)をDMF(15mL、無水)に溶解する。溶液を0℃に冷却し、続いてNaH(76mg、1.8mmol)を添加する。30分撹拌後、上記で調製したDMF(2mL)に溶解した4−ブロモメチル−1−シクロヘキシル−2−トリフルオロメチル−ベンゼン(0.8mmol)をシリンジを介して滴下する。混合物を1時間撹拌し、次いで氷および飽和水性NHClの混合物に注ぐ。水性相をジエチルエーテル(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中10%酢酸エチル)で精製し、2−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−フェニル]−[1,3]ジオキサンを白色固体として得る。
【0102】
2−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−フェニル]−[1,3]ジオキサン(90mg、0.2mmol)のTHF(10mL)溶液に、水性HCl(2N、0.7mL)を添加する。溶液を室温で4時間撹拌する。溶液をジエチルエーテル(30mL)で希釈し、飽和水性NaHCO(3×10mL)で洗浄する。有機層を飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、部分的に濃縮し、続いてMeOH(10mL)で希釈する。得られた溶液にトリエチルアミン(0.5mL)およびアゼチジン−3−カルボン酸(46mmol、0.4mmol)を添加する。得られた混合物を50℃で30分撹拌する。反応物を室温に冷却し、NaCNBH(63mg、1mmol)を添加する。得られた混合物を30分撹拌し、続いて濃縮乾固する。粗生成物を分取RP LC−MSで精製し、1−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸を無色油状物として得る。1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.55-7.54 (m, 2H), 7.52-7.35 (m, 5H), 4.39 (s, 2H), 4.35 (m, 4H), 4.17 (s, 2H), 3.68 (tt, 1H), 2.90 (tt, 1H), 1.87-1.75(m, 5H), 1.72-1.48 (m, 5H); MS (ES+): (464.2, M+1)+
【0103】
実施例4
1−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸
【化11】

工程1:中間体の合成:4−ブロモメチル−2−エチル−ビフェニル
4−アミノ−3−エチルベンゾニトリル(4g、27.4mmol)およびCuBr(9.2g、41.1mmol)の混合物のアセトニトリル(150mL)溶液に、亜硝酸アミル(5.5mL、41.1mmol)を滴下する。添加が完了後、混合物を60℃で4時間加熱する。室温に冷却後、反応混合物を部分的に濃縮する。ジエチルエーテルを添加し、混合物を飽和水性NHClで洗浄する。有機層をNaSOで乾燥させ、濃縮する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、4−ブロモ−3−エチルベンゾニトリルを、明褐色油状物として得る。
【0104】
4−ブロモ−3−エチルベンゾニトリル(1g、4.76mmol)、フェニルボロン酸(1.16g、9.5mmol)、KCO(1.97g、14.3mmol)、およびPd(PPh)(543mg、0.48mmol)の混合物のDMF(無水、15mL)溶液を、密封試験管中、120℃で12時間加熱する。室温に冷却後、反応混合物を氷および飽和水性NHClの混合物に注ぐ。混合物をEtOAc(3×30mL)で抽出する。合わせた有機層を飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮する。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAc)で精製し、2−エチル−ビフェニル−4−カルボニトリルを無色油状物として得る。
【0105】
2−エチル−ビフェニル−4−カルボニトリル(0.95g、4.58mmol)のエタノール(50mL)溶液に、固体KOH(2.56g、45.8mmol)を添加する。得られた混合物を還流温度で12時間加熱する。室温に冷却後、溶媒を減圧下で蒸発乾固する。HO(100mL)を添加し、水性HCl(2N)をpHが約pH=1に調節されるまでゆっくり添加する。混合物をEtOAc(3×50mL)で抽出する。合わせた有機層を飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮する。得られた粗2−エチル−ビフェニル−4−カルボン酸をメタノール(20mL)に溶解する。濃水性HCl(5mL)を添加し、混合物を4時間加熱還流する。室温に冷却後、反応混合物を減圧下で濃縮する。得られた残渣をジエチルエーテルに溶解し、飽和水性NaHCO(3×10mL)で洗浄する。有機層を分離し、NaSOで乾燥させる。濃縮後、粗2−エチル−ビフェニル−4−カルボン酸メチルエステルをTHF(5mL)に溶解し、LAH(200mg、5.2mmol)の混合物のTHF(15mL、無水)溶液に0℃で滴下する。1時間後、反応をHOのゆっくりした添加、続く水性HCl(1N、20mL)の添加によりクエンチする。混合物をEtOAc(3×40mL)で抽出する。合わせた有機層を飽和水性NaHCO、飽和水性NaClで洗浄し、NaSOで乾燥させる。濃縮後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中20%EtOAc)で精製し、(2−エチル−ビフェニル−4−イル)−メタノールを無色油状物として得る。
【0106】
(2−エチル−ビフェニル−4−イル)−メタノール(780mg、3.67mmol)およびPPh(1.44g、5.5mmol)の混合物のDCM(15mL)溶液に、0℃でCBr(1.82g、5.5mmol)のDCM(2mL)溶液を添加する。反応物を0℃で1時間撹拌し、続いて濃縮する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中5%EtOAc)で精製し、4−ブロモメチル−2−エチル−ビフェニルを無色油状物として得る。
【0107】
工程2:1−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸の合成
上記の工程中の4−ブロモメチル−1−シクロヘキシル−2−トリフルオロメチル−ベンゼンを4−ブロモメチル−2−エチル−ビフェニルに変えて、1−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸を得る:1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ 7.44-7.23 (m, 11H), 7.12(s 1H), 4.50 (s, 2H), 4.39-4.33 (m, 5H), 4.27 (s, 2H), 3.68 (tt, 1H), 2.54 (q 2H), 1.03 (t, 3H); MS (ES+): (418.2, M+1)+
【0108】
上記実施例の方法を繰り返し、適当な出発物質を使用して、下記の式Iの化合物を合成できる(表1)。
【0109】
【表1】

【表2】

【0110】
実施例5
式Iの化合物は生物学的活性を示す
A. インビトロ:ヒトEDG受容体を発現するCHO細胞から調製した膜へのGTP[γ−35S]の結合を測定するGPCR活性化アッセイ
EDG−1(S1P)GTP[γ−35S]結合アッセイ:均質化膜を、ヒトEDG−1 N−末端c−mycタグを安定に発現するCHO細胞クローンから調製する。細胞を2個の850cmローラーボトル中の懸濁液で、3日または4日増殖させ、その後収集する。細胞を遠沈させ、冷PBSで洗浄し、<20mlの緩衝液A(20mM HEPES、pH7.4、10mM EDTA、無EDTAの完全プロテアーゼ阻害剤カクテル[1錠/25ml])に再懸濁する。細胞懸濁液を氷上で、Polytronホモジナイザーを使用して、30000rpmで各15秒の3インターバルで均質化する。ホモジネートを最初に2000rpmで卓上式低速遠心器で10分遠心する。上清を、細胞ストレーナーを通した後、次いで、50,000×gで25分、4℃で遠心する。ペレットを緩衝液B(15%グリセロール、20mM HEPES、pH7.4、0.1mM EDTA、無EDTAの完全プロテアーゼ阻害剤カクテル[1錠/10ml])に再懸濁する。調製物のタンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して、BSAを標準として用いて決定する。膜をアリコートに分け、−80℃で凍結保存する。
【0111】
10mMから0.01nMの範囲の試験化合物をDMSO中に調製する。S1Pを4%BSA溶液に、ポジティブコントロールとして希釈する。所望の量の膜調製物を氷冷アッセイ緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl、0.1%無脂肪酸BSA、5μM GDP)で希釈し、十分ボルテックス処理する。2μlまたはそれより少ない化合物を丸底96−ウェルポリスチレンアッセイプレートの各ウェルに分配し、続いて100μlの希釈した膜(3−10μg/ウェル)を添加し、ホットGTPγSを添加するまで氷上に維持する。[35S]−GTPγSを、冷アッセイ緩衝液で1:1000(v/v)に希釈し、100μlを各ウェルに添加する。反応を室温で90分行い、その後、膜をPerkin-Elmer Unifilter(登録商標)GF/B-96フィルタープレートに、Packard Filtermate Harvesterを使用して収集する。数回洗浄緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl)で洗浄し、95%エタノールで濯いだ後、フィルターを37℃オーブンで30分で乾燥させる。MicroScint-20を添加し、プレートをTopCountでのシンチレーションカウントのために密封する。EC50値を、GTP[γ−35S]結合曲線(生データ)のGraphPad Prismの用量応答曲線適合ツールでの適合により得る。6または12の異なる濃度を使用して、濃度応答曲線を産生する(濃度当たり3データ点を使用)。
【0112】
EDG−3、−5、−6および−8GTP[γ−35S]結合アッセイを、EDG−1GTP[γ−35S]結合アッセイに準じた方法を使用して、c−末端c−mycタグ付加または非タグ付加受容体を安定に発現するCHO細胞由来の膜を使用して行う。各膜調製物について、力価測定実験を最初にS1Pコントロールで行い、アッセイウェル当たりに添加すべき膜の最適量を決定する。本発明の化合物を上記アッセイで試験し、EDG−1受容体に選択性を示すことが観察された。例えば、化合物9は、上記アッセイで0.82nMのEC50を示し、EDG−1に対して、EDG−3、EDG−5、EDG−6およびEDG−8を含む他の受容体の1個またはそれ以上と比較して、少なくとも1000倍選択的である。
【0113】
B. インビトロ:FLIPRカルシウム流動アッセイ
本発明の化合物を、EDG−1、EDG−3、EDG−5、およびEDG−6に対するアゴニスト活性について、FLIPRカルシウム流動アッセイで試験する。簡単に言うと、EDG受容体を発現するCHO細胞を、5%FBSと500μg/mlのG418を含むF−12K培地(ATCC)に維持する。アッセイ前に、細胞を384黒色透明底プレートに、10,000細胞/ウェル/25μlの密度で、1%FBS含有F−12Kの培地に播く。二日目に、細胞を3回(各25μl)洗浄緩衝液で洗浄する。約25μlの色素を各ウェルに添加し、1時間、37℃および5%COでインキュベートする。細胞を次いで4回洗浄緩衝液(各25μl)で洗浄する。カルシウム流動を、25μlのSEQ2871溶液を各細胞のウェルに添加後に測定する。同じアッセイを、異なるEDG受容体を発現する細胞で行う。FLIPRカルシウム流動アッセイにおける力価を、3分インターバルにわたり測定し、EDG−1活性化に相対的な、最大ピーク高パーセンテージ応答として定量する。
【0114】
C. インビボ:血液リンパ球枯渇のためのスクリーニングアッセイおよび心臓作用の評価
循環しているリンパ球の測定:化合物をDMSOに溶解し、4%DMSO(v/v、最終濃度)の最終濃度を得るために希釈し、次いで、一定用量のTween80 25%/HO、v/vで希釈する。Tween80 25%/HO(200μl)、4%DMSO、およびFTY720(10μg)を各々ネガティブおよびポジティブコントロールとして包含させる。ラット(C57bl/6雄、6−10週齢)に250−300μLの化合物溶液を経口で、短いイソフルラン麻酔下に胃管栄養法により投与する。
【0115】
血液を、眼窩後洞(retro-orbital sinus)から薬剤投与6および24時間後に短いイソフルラン麻酔下に採る。全血サンプルを血液学的分析に付す。末梢リンパ球計数を自動アナライザーを使用して決定する。末梢血リンパ球の分画をフルオロクローム−接合特異的抗体により染色し、蛍光活性化細胞分別機(Facscalibur)を使用して分析する。スクリーニングした各化合物のリンパ球枯渇活性を評価するために2匹のラットを使用する。結果はED50であり、これは、50%の血液リンパ球枯渇を示すのに必要な有効投与量として定義する。本発明の化合物を上記アッセイにしたがい試験し、好ましくは1mg/kgより小さいED50、より好ましくは0.5mg/kgより小さいED50を示すことが判明した。例えば、化合物9は、<0.1mg/kgのED50を示す。
【0116】
心臓作用の評価:化合物の心機能に対する作用を、AnonyMOUSE ECGスクリーニングシステムを使用してモニターする。心電図を、有意識ラット(C57bl/6雄、6−10週齢)で、化合物の投与前後に測定する。次いで、ECGシグナルを、e-MOUSEソフトウエアを使用して処理し評価する。200μl 水、15%DMSOにさらに希釈した90μgの化合物をIPで注射する。各化合物の心臓作用を評価するために4匹のマウスを使用する。
【0117】
D. インビボ:抗血管形成活性
(i)スフィンゴシン−1−ホスフェート(5μM/チャンバー)または(ii)ヒトVEGF(1μg/チャンバー)の0.5mlの0.8%w/v寒天(ヘパリン、20U/ml含有)溶液を含む、多孔性チャンバーをマウスの横腹に皮下にインプラントする。S1PまたはVEGFは、チャンバー周囲の血管組織の増殖を誘導する。この応答は用量依存性であり、組織の重量および血液含量の測定により定量できる。ラットに、チャンバーのインプラントの前4−6時間に開始して、1日1回、式Iの化合物を経口または静脈内投与し、4日間続ける。動物を最後の投与24時間後に血管組織の測定のために殺す。チャンバー周囲の血管組織の重量および血液含量を測定する。式Iの化合物で処置した動物は、媒体単独で処置した動物と比較して、血管組織の重量および/または血液含量の減少を示した。式Iの化合物は、約0.3から約3mg/kgの投与量で投与したとき、抗血管形成である。
【0118】
E. インビトロ:抗腫瘍活性
乳癌から元々単離したマウス乳癌細胞系、例えばJygMC(A)を使用する。工程前に、新鮮培地に播くために、細胞数を5×10に調節する。細胞を、2.5mMのチミジン含有、FCS非含有新鮮培地で、12時間インキュベートし、PBSで2回洗浄し、続いて10%FCS含有新鮮培地を添加し、さらに12時間インキュベートする。その後、細胞を2.5mMのチミジン含有、FCS非含有新鮮培地で12時間インキュベートする。細胞をブロックから解放するために、細胞を2回PBS洗浄し、10%FCS含有新鮮培に再び播く。同調後、細胞を種々の濃度の式Iの化合物の存在下または非存在下、3、6、9、12、18または24時間インキュベートする。細胞を0.2%EDTAで処理後収集し、氷冷70%エタノール溶液で固定し、250μg/mlのRNaseA(タイプ1−A:Sigma Chem. Co.)で、37℃で30分加水分解し、10mg/mlのヨウ化プロピジウムで20分染色する。インキュベーション期間の後、細胞数を、CoulterカウンターおよびSRB比色アッセイの両方で測定する。これらの条件下、式Iの化合物は、腫瘍細胞の増殖を、10−12から10−6Mの範囲の濃度で阻害する。
【0119】
本明細書に記載の実施例および態様は、説明の目的のためのみであり、それに鑑みた種々の修飾および改変が、当業者には示唆され、本出願の精神および理解の範囲内および添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる。本明細書で引用したすべての文献、特許および特許出願は、引用によりすべての目的で本明細書に包含させる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

〔式中、
Aは−C(O)OR、−OP(O)(OR)、−P(O)(OR)、−S(O)OR、−P(O)(R)ORおよび1H−テトラゾール−5−イルから選択され;ここで各Rは、独立して水素およびC1−6アルキルから選択され;
およびXは、各々独立して結合またはC1−6アルキレンから選択され;
Zは:
【化2】

(式中、Zの左右のアスタリスクは式Iの−C(R)(R)−とAの結合点を各々示し;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;そしてJおよびJは、独立してメチレンまたはS、OおよびNRから選択されるヘテロ原子であり;ここでRは水素およびC1−6アルキルから選択される)
から選択され;
はC6−10アリールおよびC2−9ヘテロアリールから選択され;ここでRの任意のアリールまたはヘテロアリールは、所望により、ハロ、C6−10アリールC0−4アルキル、C2−9ヘテロアリールC0−4アルキル、C3−8シクロアルキルC0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルC0−4アルキルまたはC1−6アルキルから選択されるラジカルで置換されており;ここでRの任意のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、所望により、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択される1個から5個のラジカルで置換されていてよく;そしてRの任意のアルキル基は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−および−O−から選択される原子または基で置換されたメチレンを有してよく;ここでRは水素またはC1−6アルキルから選択され;
はC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、C3−12シクロアルキルC0−4アルキル、ハロ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択され;
およびRは、独立して水素、C1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、ハロ−置換C1−6アルキルおよびハロ−置換C1−6アルコキシから選択される。〕
の化合物およびその薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、異性体およびプロドラッグ。
【請求項2】
が所望によりハロ、C6−10アリールC0−4アルキル、C2−9ヘテロアリールC0−4アルキル、C3−8シクロアルキルC0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルC0−4アルキルまたはC1−6アルキルで置換されているフェニル、ナフチル、フラニルまたはチエニルであり;ここでRの任意のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、ハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択される1個から5個のラジカルで置換されていてよく;そしてRの任意のアルキル基は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−および−O−から選択される原子または基で置換されたメチレンを有してよく;ここでRは水素またはC1−6アルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
が:
【化3】

(式中、アスタリスクはRとXの結合点を示し;Rはハロ、C6−10アリールC0−4アルキル、C2−9ヘテロアリールC0−4アルキル、C3−8シクロアルキルC0−4アルキル、C3−8ヘテロシクロアルキルC0−4アルキルまたはC1−6アルキルであり;ここでRの任意のアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基は、所望によりハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;そしてRの任意のアルキル基は、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NR−および−O−メチレンから選択される原子または基で置換されたメチレンを有してよく;ここでRは水素またはC1−6アルキルであり;そしてRはハロ、C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロ−置換−C1−6アルキルおよびハロ−置換−C1−6アルコキシである)
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
Aが−C(O)OHであり;Zが:
【化4】

(式中、Zの左右のアスタリスクは式Iの−C(R)(R)−とAの結合点を各々示し;Rは水素およびC1−6アルキルから選択され;そしてRおよびRは両方とも水素である)
から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
がメチル、エチル、シクロプロピル、クロロ、ブロモ、フルオロおよびメトキシから選択される、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
が:
【化5】

(式中、Rはハロ、フェニル、シクロヘキシル、チエニル、3,3−ジメチル−ブチル、ピリジニル、シクロペンチルおよびピペリジニルから選択され;ここでRは、所望により、トリフルオロメチル、メトキシ、フルオロ、トリフルオロメトキシおよびメチルから選択される1個から3個のラジカルで置換されていてよく;そしてRはトリフルオロメチル、フルオロ、メチル、クロロ、メトキシおよびエチルから選択される)
から選択される、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、1−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−メチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(4−ブロモ−3−メチル−フェニルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、1−[4−(2−メチル−ビフェニル−4−イルスルファニルメチル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(4−シクロヘキシル−3−トリフルオロメチル−ベンジルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、3−[4−(2'−エチル−2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸、1−[4−(2'−エチル−2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジル]−アゼチジン−3−カルボン酸、3−[4−(2−トリフルオロメチル−ビフェニル−4−イルメタンスルフィニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸および3−[4−(2−エチル−ビフェニル−4−イルメチルスルファニル)−ベンジルアミノ]−プロピオン酸から選択される、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
治療的有効量の請求項1記載の化合物を、薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項9】
動物における、EDG/S1P受容体介在シグナル伝達の変更が、その疾患の病態および/または総体症状を予防、阻害または軽減できるものである疾患を処置する方法であり、動物に治療的有効量の請求項1記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項10】
対象における、リンパ球が介在する障害または疾患を予防または処置する、急性もしくは慢性移植拒絶反応またはT細胞介在炎症性または自己免疫性疾患を予防または処置する、無秩序な血管形成を阻害または制御する、または新規血管形成過程が介在するまたは無秩序な血管形成が関連する疾患を予防または処置する方法であり、有効量の請求項1の化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項11】
動物における、EDG/S1P受容体介在シグナル伝達の変更が、その疾患の病態および/または総体症状に関与するものである疾患の処置用医薬の製造における、請求項1記載の化合物の使用。


【公表番号】特表2006−528987(P2006−528987A)
【公表日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533219(P2006−533219)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015701
【国際公開番号】WO2004/103309
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】