説明

免疫療法用の新規免疫原性エピトープ

本発明は、腫瘍関連抗原に由来するペプチドのアミノ酸配列に関するものであり、該ペプチドはどちらのクラスのMHC複合体にも結合可能であり、かつ免疫応答を引き起こすことができるものであり、本発明は、病気の治療への該ペプチドの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍関連抗原由来ペプチドの新規アミノ酸配列に関するものであり、該ペプチドはどちらのクラスのMHC複合体にも結合可能であり、かつ免疫応答を引き出すものである。
【背景技術】
【0002】
免疫応答は、宿主免疫系が抗原を異質な存在として認識することによって刺激される。 腫瘍関連抗原の存在の発見によって、宿主免疫系を使って腫瘍の成長を妨害する可能性が高まった。 癌の免疫療法のために体液性および細胞性の両方の免疫応答を刺激する様々なメカニズムの研究が現在行われている。
【0003】
細胞性免疫応答の特定の要素は、腫瘍細胞を特異的に認識および破壊する能力を有する。 腫瘍浸潤性細胞集団または末梢血からの細胞傷害性T細胞(CTL)の単離は、これらの細胞が、癌に対する天然の免疫防御に重要な役割を果たしていることを示唆している(Cheever et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 1993 690:101-112; Zeh HJ, Perry-Lalley D, Dudley ME, Rosenberg SA, Yang JC; J Immunol. 1999, 162(2):989-94(非特許文献1); High avidity CTLs for two self-antigens demonstrate superior in vitro and in vivo antitumour efficacy)。特に、サイトゾルにあるタンパク質または欠陥リボソーム生成物(DRIPS)(Schubert U, Anton LC, Gibbs J, Norbury CC, Yewdell JW, Bennink JR.; Rapid degradation of a large fraction of newly synthesized proteins by proteasomes; Nature 2000; 404(6779):770-774(非特許文献2)) に通常由来する8〜10個のアミノ酸残基である、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)を負担するペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞(TCD8+)は、この応答において重要な役割を果たす。 ヒトのMHC分子は、ヒト白血球抗原(HLA)としても指定されている。
【0004】
MHC分子には2つのクラスがある。 MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞にあり、内因性タンパク質DRIPSのタンパク分解切断の産物であるペプチド、およびより大きいペプチドを提供する。 MHCクラスII分子は、主にプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)にあり、エンドサイトーシスの間にAPCによって摂取されやがて処理される外因性タンパク質のペプチドを提供する(Cresswell P. Annu. Rev. Immunol. 1994; 12:259-93(非特許文献3))。 ペプチドとMHCクラスI分子の複合体は適切なTCRを負担するCD8陽性細胞傷害性Tリンパ球によって認識され、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は適切なTCRを負担するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。したがって、該TCR、該ペプチド、および該MHCが1:1:1の化学両論的量で豊富にあることは、周知である。
【0005】
CD4陽性ヘルパーT細胞は抗腫瘍T細胞応答のエフェクターとしての機能の調整において重要な役割を果たすので、腫瘍関連抗原(TAA)由来CD4陽性T細胞エピトープは抗腫瘍免疫応答を起動する医薬品の開発にとり非常に重要である可能性がある(Kobayashi,H., R. Omiya, M. Ruiz, E. Huarte, P. Sarobe, J. J. Lasarte, M. Herraiz, B. Sangro, J. Prieto, F. Borras-Cuesta, and E. Celis. Identification of an antigenic epitope for helper T lymphocytes from carcinoembryonic antigen. Clin. Cancer Res. 8:3219-3225(非特許文献4), Gnjatic, S., D. Atanackovic, E. Jaeger, M. Matsuo, A. Selvakumar, N.K. Altorki, R.G. Maki, B. Dupont, G. Ritter, Y.T. Chen, A. Knuth, and L.J. Old. 2003. Survey of naturally occurring CD4+ T-cell responses against NY-ESO-1 in cancer patients: Correlation with antibody responses. Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A . 100(15):8862-7(非特許文献5)) 。CD4+ T 細胞はIFNγのレベルを局所的に高めることができる (Qin Z, Schwartzkopff J, Pradera F, Kammertoens T, Seliger B, Pircher H, Blankenstein T; A critical requirement of interferon gamma-mediated angiostasis for tumour rejection by CD8+ T cells; Cancer Res. 2003 J; 63(14):4095-4100(非特許文献6))。
【0006】
炎症がない場合、MHCクラスII分子の発現は主に免疫系の細胞、特にプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)(例:単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹枝状細胞)に限定される。 腫瘍患者において、驚くべきことに、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが発見された(Dengjel J, Nastke MD, Gouttefangeas C, Gitsioudis G, Schoor O, Altenberend F, Mueller M, Kraemer B, Missiou A, Sauter M, Hennenlotter J, Wernet D, Stenzl A, Rammensee HG, Klingel K, Stevanovic S.; Unexpected abundance of HLA class II presented peptides in primary renal cell carcinomas; Clin Cancer Res. 2006; 12:4163-4170(非特許文献7))。
【0007】
CD4陽性T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エフェクター細胞(すなわちCD8陽性Tリンパ球)が欠如していてもインターフェロンガンマ(IFNγ)を分泌して、血管形成を阻害して腫瘍のビジュアライゼーションを十分に阻害することが、哺乳動物モデル(例:マウス)で示された(Qin, Z. and T. Blankenstein. 2000. CD4+ T-cell-mediated tumour rejection involves inhibition of angiogenesis that is dependent on IFN gamma receptor expression by nonhematopoietic cells. Immunity. 12:677-686(非特許文献8))。 加えて、HLAクラスII分子によって提示される腫瘍関連抗原からのペプチドを認識するCD4陽性T細胞は、抗体(Ab)応答の誘導によって腫瘍の進行を抑えることができることが示された(Kennedy, R.C., M.H. Shearer, A.M. Watts, and R.K. Bright. CD4+ T lymphocytes play a critical role in antibody production and tumour immunity against simian virus 40 large tumour antigen. Cancer Res. 63:1040-1045(非特許文献9))。 HLAクラスI分子に結合する腫瘍関連ペプチドと対照的に、これまでのところ、TAAのクラスIIリガンドについての記述はごく少数である(www.cancerimmunity.org, www.syfpeithi.de)。
【0008】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫系の細胞に限定されるので(Mach, B., V. Steimle, E. Martinez-Soria, and W. Reith. 1996. Regulation of MHC class II genes: lessons from a disease. Annu. Rev. Immunol. 14:301-331(非特許文献10))、クラスIIペプチドを原発巣から直接に単離することは不可能と考えられてきた。 しかし、Dengjelらは、最近、数多くのMHCクラスIIエピトープを腫瘍から直接に特定することに成功した(EP 04 023 546.7(特許文献1), EP 05 019 254.1(特許文献2); Dengjel J, Nastke MD, Gouttefangeas C, Gitsioudis G, Schoor O, Altenberend F, Mueller M, Kraemer B, Missiou A, Sauter M, Hennenlotter J, Wernet D, Stenzl A, Rammensee HG, Klingel K, Stevanovic S.; Unexpected abundance of HLA class II presented peptides in primary renal cell carcinomas; Clin Cancer Res. 2006; 12:4163-4170)。
【0009】
細胞の免疫応答を起動するには、ペプチドはMHC分子に結合する必要がある。 このプロセスは、MHC分子の対立遺伝子およびそのペプチドのアミノ酸配列に特異の多型に依存する。 MHCクラスI結合ペプチドは、通常、8〜10個のアミノ酸残基の長さであり、通常、2個の保存残基(アンカー)をその配列に含むことにより、MHC分子の対応する結合溝と相互作用する。 このように、各MHCの対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝に特異的に結合するかを決定する「結合モチーフ」を有する(Rammensee H. G., Bachmann J. and Stevanovic, S; MHC Ligands and Peptide Motifs, Chapman & Hall 1998(非特許文献11))。
【0010】
MHCクラスI依存性免疫応答において、ペプチドは腫瘍細胞が発現する特異的MHCクラスI分子と結合可能でなくてはならないだけでなく、T細胞を運ぶ特異的T細胞受容体(TCR)によって認識されなくてはならない。
【0011】
腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球によって認識される抗原、すなわちそれらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子など、各々の腫瘍の細胞内で上方調節されるあらゆるタンパク質クラスに由来する分子であり得る。 さらに、例えば腫瘍関連抗原も、例えば変異遺伝子の、または代替オープン・リーディング・フレーム(ORF)からの、またはタンパク質スプライシングからの産物として、腫瘍細胞に特異である可能性がある(Vigneron N, Stroobant V, Chapiro J, Ooms A, Degiovanni G, Morel S, van der Bruggen P, Boon T, Van den Eynde BJ. An antigenic peptide produced by peptide splicing in the proteasome, Science 2004 Apr 23; 304 (5670):587-90(非特許文献12))。 腫瘍関連抗原のもう1つの重要なクラスは、CT(「癌精巣」)のような組織特異的抗原、すなわち精巣の異なる種類の腫瘍および健康な組織で発現する抗原である。
【0012】
これまでに様々な腫瘍関連抗原が特定されてきた。 さらに、追加的な腫瘍関連抗原を特定するための研究努力が為されてきた。 当該技術分野で腫瘍特異的抗原とも呼ばれる、腫瘍関連抗原の一部のグループは、組織特異的である。 限定はしないが、例としては、メラノーマでのチロシナーゼ、前立腺癌でのPSAおよびPSMA、リンパ腫での染色体クロスオーバー(bcr/abl など)が含まれる。 しかし、特定された多くの腫瘍関連抗原は複数の腫瘍型に発生し、かつ、実際に形質転換イベントを引き起こす発癌タンパク質および/または腫瘍抑制遺伝子(例えば、Linehan WM, Walther MM, Zbar B. The genetic basis of cancer of the kidney. J Urol. 2003 Dec; 170 (6Pt1):2163-72(非特許文献13)で、腎臓癌の場合の腫瘍抑制遺伝子が評価されている) など一部のものは、ほぼ全ての腫瘍型に発生する。 例えば、p53(腫瘍抑制遺伝子の一例)、ras、c-met、myc、pRB、VHL、 HER-2/neuのような、細胞の成長と分化を制御する正常な細胞タンパク質は、変異を蓄積してこれらの遺伝子産物の発現を上方調節し、癌に至らせる(Cancer Research, 1998, 15:58 2601-5; Disis et al. Ciba Found. Symp. 1994, 187:198-211(非特許文献14))。これら変異タンパク質は、様々なタイプの癌において、腫瘍特異的免疫応答の標的となり得る。
【0013】
タンパク質が細胞傷害性Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、療法に使用されるためには、特定の前提条件が満たされなくてはならない。 該抗原は、主に腫瘍細胞によって発現されるべきであり、正常な健康細胞によっては発現されるべきではないか、比較的少量で発現されるべきである。 さらに、各抗原は1つの型の腫瘍に存在するだけでなく、高濃度(すなわち1細胞につき各ペプチドのコピー数)で存在するのが望ましい。 腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、しばしば、ある機能による正常細胞から腫瘍細胞への形質転換(例えば細胞周期制御またはアポトーシス)に直接関与するタンパク質に由来する。 加えて、形質転換の直接の原因である下流標的タンパク質は上方調節される場合があり、したがって間接的に腫瘍関連である。 そのような間接的な腫瘍関連抗原もワクチン接種法の標的となり得る(Singh-Jasuja H., Emmerich N. P., Rammensee H. G., Cancer Immunol. Immunoether. 2004 Mar; 453 (3): 187-95(非特許文献15))。腫瘍関連抗原由来のそのようなペプチド(「抗原性ペプチド」)が、in vitroまたはin vivoのT細胞応答を導くべきであるから、両方のケースで、抗原のアミノ酸配列がエピトープを有することは不可欠である。
【0014】
基本的に、MHC分子と結合できる任意のペプチドはT細胞エピトープとして機能することができる。 in vitroまたはin vivoのT細胞応答を誘導する前提条件は、対応するTCRに伴うT細胞の存在と、この特定のエピトープに対する免疫学的耐性の欠如である。
【0015】
したがって、TAAは腫瘍ワクチン開発の出発点である。 TAAの特定および特徴づけの方法は、患者または健常被験者から単離可能なCTLの使用に基づくか、または、腫瘍と正常組織とで異なる転写プロファイルまたは異なるペプチド発現パターンの生成に基づく (Lemmel C., Weik S., Eberle U., Dengjel J., Kratt T., Becker H. D., Rammensee H. G., Stevanovic S. Nat. Biotechnol. 2004 Apr.; 22(4):450-4(非特許文献16), T. Weinschenk, C. Gouttefangeas, M. Schirle, F. Obermayr, S. Walter, O. Schoor, R. Kurek, W. Loeser, K. H. Bichler, D. Wernet, S. Stevanovic, and H. G. Rammensee. Integrated functional genomics approach for the design of patient-individual antitumor vaccines. Cancer Res. 62 (20):5818-5827, 2002(非特許文献17))。
【0016】
しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株に過剰発現する遺伝子もしくはそのような組織または細胞株に選択的に発現する遺伝子の特定は、これらの遺伝子から転写される抗原を免疫療法に利用するための正確な情報を提供しない。 なぜかというと、対応するTCRを持つT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫学的耐性がないか最低限である必要があり、したがってこれらの抗原のエピトープの個別のサブポピュレーションのみがそのような適用に適しているからである。 したがって、機能的T細胞を発見可能なMHC分子との関連において提示される過剰発現または選択的に発現されるタンパク質から、それらのペプチドのみを選択することが重要である。 そのような機能的T細胞は、特異的抗原による刺激によってクローン的に拡大可能かつエフェクター機能を実行可能なT細胞(「エフェクターT細胞」)として定義される。
【0017】
Tヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能の調整に重要な役割を果たす。 TH1型のTヘルパー細胞応答を起動するTヘルパー細胞エピトープは、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能(細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を表示する腫瘍細胞に対抗する細胞傷害性機能を含む)を支援する。 このように、単独として、もしくは他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせとしての腫瘍関連Tヘルパー細胞エピトープは、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の有効医薬成分として作用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】欧州特許出願公開第 04 023 546.7号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第05 019 254.1号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Cheever et al., Annals N.Y. Acad. Sci. 1993 690:101-112; Zeh HJ, Perry-Lalley D, Dudley ME, Rosenberg SA, Yang JC; J Immunol. 1999, 162(2):989-94
【非特許文献2】Schubert U, Anton LC, Gibbs J, Norbury CC, Yewdell JW, Bennink JR.; Rapid degradation of a large fraction of newly synthesized proteins by proteasomes; Nature 2000; 404(6779):770-774
【非特許文献3】Cresswell P. Annu. Rev. Immunol. 1994; 12:259-93
【非特許文献4】Kobayashi,H., R. Omiya, M. Ruiz, E. Huarte, P. Sarobe, J. J. Lasarte, M. Herraiz, B. Sangro, J. Prieto, F. Borras-Cuesta, and E. Celis. Identification of an antigenic epitope for helper T lymphocytes from carcinoembryonic antigen. Clin. Cancer Res. 8:3219-3225
【非特許文献5】Gnjatic, S., D. Atanackovic, E. Jaeger, M. Matsuo, A. Selvakumar, N.K. Altorki, R.G. Maki, B. Dupont, G. Ritter, Y.T. Chen, A. Knuth, and L.J. Old. 2003. Survey of naturally occurring CD4+ T-cell responses against NY-ESO-1 in cancer patients: Correlation with antibody responses. Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A . 100(15):8862-7
【非特許文献6】Qin Z, Schwartzkopff J, Pradera F, Kammertoens T, Seliger B, Pircher H, Blankenstein T; A critical requirement of interferon gamma-mediated angiostasis for tumour rejection by CD8+ T cells; Cancer Res. 2003 J; 63(14):4095-4100
【非特許文献7】Dengjel J, Nastke MD, Gouttefangeas C, Gitsioudis G, Schoor O, Altenberend F, Mueller M, Kraemer B, Missiou A, Sauter M, Hennenlotter J, Wernet D, Stenzl A, Rammensee HG, Klingel K, Stevanovic S.; Unexpected abundance of HLA class II presented peptides in primary renal cell carcinomas; Clin Cancer Res. 2006; 12:4163-4170
【非特許文献8】Qin, Z. and T. Blankenstein. 2000. CD4+ T-cell-mediated tumour rejection involves inhibition of angiogenesis that is dependent on IFN gamma receptor expression by nonhematopoietic cells. Immunity. 12:677-686
【非特許文献9】Kennedy, R.C., M.H. Shearer, A.M. Watts, and R.K. Bright. CD4+ T lymphocytes play a critical role in antibody production and tumour immunity against simian virus 40 large tumour antigen. Cancer Res. 63:1040-1045
【非特許文献10】Mach, B., V. Steimle, E. Martinez-Soria, and W. Reith. 1996. Regulation of MHC class II genes: lessons from a disease. Annu. Rev. Immunol. 14:301-331
【非特許文献11】Rammensee H. G., Bachmann J. and Stevanovic, S; MHC Ligands and Peptide Motifs, Chapman & Hall 1998
【非特許文献12】Vigneron N, Stroobant V, Chapiro J, Ooms A, Degiovanni G, Morel S, van der Bruggen P, Boon T, Van den Eynde BJ. An antigenic peptide produced by peptide splicing in the proteasome, Science 2004 Apr 23; 304 (5670):587-90
【非特許文献13】Linehan WM, Walther MM, Zbar B. The genetic basis of cancer of the kidney. J Urol. 2003 Dec; 170 (6Pt1):2163-72
【非特許文献14】Cancer Research, 1998, 15:58 2601-5; Disis et al. Ciba Found. Symp. 1994, 187:198-211
【非特許文献15】Singh-Jasuja H., Emmerich N. P., Rammensee H. G., Cancer Immunol. Immunoether. 2004 Mar; 453 (3): 187-95
【非特許文献16】Lemmel C., Weik S., Eberle U., Dengjel J., Kratt T., Becker H. D., Rammensee H. G., Stevanovic S. Nat. Biotechnol. 2004 Apr.; 22(4):450-4
【非特許文献17】T. Weinschenk, C. Gouttefangeas, M. Schirle, F. Obermayr, S. Walter, O. Schoor, R. Kurek, W. Loeser, K. H. Bichler, D. Wernet, S. Stevanovic, and H. G. Rammensee. Integrated functional genomics approach for the design of patient-individual antitumor vaccines. Cancer Res. 62 (20):5818-5827, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
CD8およびCD4依存性のどちらのタイプの応答も、共同かつ相乗的に抗腫瘍効果に寄与するので、CD8+ CTL(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)またはCD4陽性CTL(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のいずれかによって認識される腫瘍関連抗原の特定および特徴づけは、腫瘍ワクチンの開発において重要である。したがって、本発明の目的は、どちらのクラスのMHC複合体にも結合可能なペプチドの新規アミノ酸配列を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の態様は、配列番号1〜配列番号29、配列番号1〜配列番号29に80%相同性のある変異形、またはT細胞と該ペプチドとの交差反応を誘導する変異形の群から選択される配列を含むペプチドを提供する。
【0022】
本発明において、「相同性のある」という言葉は、2つのアミノ酸配列すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の一致の度合いを指す。 前述の「相同性」は、それらの配列にかけて最適な条件下で整合された2つの配列の比較によって決定される。 ここで比較される配列には、それら2つの配列の最適な整合において付加または欠失(例えばギャップなど)がある場合がある。 そのような配列の相同性は、例えばClustalW アルゴリズム (Nucleic Acid Res., 22(22):4673 4680 (1994)を用いて整合させることによって計算することができる。一般に市販されている配列分析ソフトウェア、より具体的には Vector NTI、GENETYX、または公開データベースが提供する分析ツール(例:http://dragon.bio.purdue.edu/bioinfolinks/ )を使うこともできる。
【0023】
当業者であれば、特定のペプチドの変異形によって誘導されるT細胞が、該ペプチド自体と交差反応できるかどうかを (Fong, L, Hou, Y, Rivas, A, Benike, C, Yuen, A, Fisher, GA, Davis, MM, and Engleman, EG; 2001, Altered peptide ligand vaccination with Flt3 ligand expanded dendritic cells for tumor immunotherapy, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 98, 8809-8814); (Zaremba, S, Barzaga, E, Zhu, M, Soares, N, Tsang, KY, and Schlom, J; Identification of an enhancer agonist cytotoxic T lymphocyte peptide from human carcinoembryonic antigen, Cancer Res., 1997, 57, 4570-4577; Colombetti, S, Fagerberg, T, Baumgartner, P, Chapatte, L, Speiser, DE, Rufer, N, Michielin, O, and Levy, F;, Impact of orthologous melan-A peptide immunizations on the anti-self melan-A/HLA-A2 T cell cross-reactivity, J Immunol., 2006, 176, 6560-6567;Appay, V, Speiser, DE, Rufer, N, Reynard, S, Barbey, C, Cerottini, JC, Leyvraz, S, Pinilla, C, and Romero, P; Decreased specific CD8+ T cell cross-reactivity of antigen recognition following vaccination with Melan-A peptide, Eur.J Immunol., 2006, 36, 1805-1814)によって評価することができるであろう。
【0024】
表1は、該ペプチド、それら各々の配列番号、およびそれらの親タンパク質に関する情報を示す。
【0025】
表1: 本発明のペプチド
【表1】

【0026】
染色体20オープン・リーディング・フレーム42
C20orf42は、アクチン細胞骨格を血漿膜に付着させるプロセスおよびインテグリン媒介細胞プロセスに関与する限局性接着タンパク質である。 機能喪失変異の結果生じるC20orf42欠乏は、キンドラー症候群(皮膚の水疱を特徴とする常染色体後退遺伝性皮膚症)、進行性皮膚萎縮、光過敏症のほか、ときとして発癌につながる (Herz, C, Aumailley, M, Schulte, C, Schlotzer-Schrehardt, U, Bruckner-Tuderman, L, and Has, C; Kindlin-1 is a phosphoprotein involved in regulation of polarity, proliferation, and motility of epidermal keratinocytes, J Biol Chem., 2006, 281, 36082-36090)。 最近、機能喪失変異の患者での重度の出血性大腸炎を伴う胃腸器官の症状が報告された (Sadler, E, Klausegger, A, Muss, W, Deinsberger, U, Pohla-Gubo, G, Laimer, M, Lanschuetzer, C, Bauer, JW, and Hintner, H; Novel KIND1 gene mutation in Kindler syndrome with severe gastrointestinal tract involvement, Arch. Dermatol., 2006, 142, 1619-1624)。
【0027】
癌の場合では、癌関連の設定での遺伝子発現を調査する研究の範囲内で、C20orf42について説明されている。 C20orf42は結腸癌の70%および肺癌の60%で過剰発現していた(n=10)。 ノーザンブロットによる正常組織の発現は、神経筋組織に限定されていた (Weinstein, EJ, Bourner, M, Head, R, Zakeri, H, Bauer, C, and Mazzarella, R; URP1: a member of a novel family of PH and FERM domain-containing membrane-associated proteins is significantly over-expressed in lung and colon carcinomas, Biochim. Biophys. Acta, 2003, 1637, 207-216)。 さらに、C20orf42は、 TGF-βを媒介とする細胞移動および腫瘍浸潤に関わる遺伝子として特定されている (Kloeker, S, Major, MB, Calderwood, DA, Ginsberg, MH, Jones, DA, and Beckerle, MC; The Kindler syndrome protein is regulated by transforming growth factor-beta and involved in integrin-mediated adhesion, J. Biol. Chem., 2004, 279, 6824-6833)。
【0028】
NADPHオキシダーゼホモログ-1 (NOX1)
NOX1は、スーパーオキシド(O2-)と過酸化水素(H2O2)の反応酸素種の生成を触媒する成長因子応答酵素である。 その発現は元々、大腸、前立腺、子宮、増殖血管平滑筋細胞において認められた (Suh, Y. A. et al. 1999; Cell transformation by the superoxide-generating oxidase Mox1. Nature 401, 79-82)。 その発現は、細胞増殖、血管形成、および細胞シグナル伝達経路活性化を含む数多くの生物学的応答と関連付けられている(Harper, R. W., Xu, C., Soucek, K., Setiadi, H. & Eiserich, J. P. A reappraisal of the genomic organization of human Nox1 and its splice variants. Arch. Biochem. Biophys. 2005, 435, 323-330)。
【0029】
NOX1は結腸に高発現するが、結腸の生理または病理におけるその機能はいまだによく理解されていない。 正常組織では、NOX1の発現は回腸で低く、右結腸で中程度であり、左結腸で高い。 腺腫由来標本と、差別化が十分または乏しい結腸腺癌標本との間に、NOX1の統計的差異はなかった。 NOX1は、腺窩および内腔表面の両方で、結腸上皮細胞に高発現した。 結論として、NOX1は結腸上皮に構成的に発現する酵素であり、腫瘍形成に直接関連するものではない(Szanto, I. et al. Expression of NOX1, a superoxide-generating NADPH oxidase, in colon cancer and inflammatory bowel disease. J Pathol. 2005, 207, 164-176)。
【0030】
免疫組織化学は、NOX1が粘膜表在細胞に構成的発現をしたことを示している。 腺腫およびよく分化された腺癌は、NOX1の発現を上方調節した。 核因子(NF)カッパBがNOX1を豊富に発現する腺腫および腺癌細胞で主に活性化されたことは、NOX1が結腸腫瘍にNFカッパB依存性の抗アポトーシス経路を刺激する可能性を示している(Fukuyama, M. et al. Overexpression of a novel superoxide-producing enzyme, NADPH oxidase 1, in adenoma and well differentiated adenocarcinoma of the human colon. Cancer Lett. 2005, 221, 97-104)。
【0031】
Wnt3a/βカテニン信号がNOX1発現を誘導するという記述がある(Petropoulos, H. & Skerjanc, I. S. Beta-catenin is essential and sufficient for skeletal myogenesis in P19 cells.J Biol Chem. 2002, 277, 15393-15399)。
【0032】
最近、活性酸素種(ROS)が、腫瘍細胞の様々な接着分子の発現を後に誘導する内皮アポトーシスを誘導することが示唆された。 このことは、ROSの生成に対処することによって、遠位での腫瘍再発を防ぐことが実現可能であることを示唆している。 (Ten, KM, van der Wal, JB, Sluiter, W, Hofland, LJ, Jeekel, J, Sonneveld, P, and van Eijck, CH; The role of superoxide anions in the development of distant tumour recurrence, Br.J Cancer, 2006, 95, 1497-1503)。
【0033】
増殖性細胞核抗原(PCNA)
PCNAは核の中に存在するもので、DNAポリメラーゼデルタの補因子である。 このエンコードされたタンパク質はホモトリマーとして作用し、DNA複製中のリーディング鎖合成のプロセッシビティの増加を助ける。 したがって、PCNAはあらゆる増殖性細胞、特に腫瘍細胞に発現するものであり、増殖を検知するためのマーカーとして用いられている。
【0034】
DNAトポイソメラーゼII
TOP2A および TOP2B は、転座が起きているDNAのトポロジーを制御し変化させる酵素であるDNAトポイソメラーゼのイソフォームをコードする。 この核酵素は、染色体凝縮、染色分体分離、およびDNAの転座と複製の間に生じるねじり応力の軽減のようなプロセスに関与する。 DNAトポイソメラーゼは、2本鎖DNAの2本のストランドの過渡破壊と再結合を触媒するので、それらのストランドは互いに通り抜けができるようになり、したがって、DNAのトポロジーを変化させることができる。 この酵素の2つのイソフォームは、遺伝子複製イベントにより可能な産物として存在する。 α形をコードする遺伝子は染色体17に局在しており、β遺伝子は染色体3に局在する。
【0035】
TOP2Aは、いくつかの抗癌剤の標的であり、この遺伝子での様々な変異は薬品耐性の進行と関連している。
【0036】
TOP2A遺伝子は、乳癌で最もよく増幅される癌遺伝子であるHER-2癌遺伝子に隣接し、染色体位置17q12-q21にある遺伝子であり、HER-2の増幅を伴う原発性乳房腫瘍のほぼ90%で同等の頻度で増幅もしくは削除される(Jarvinen, TA and Liu, ET; Topoisomerase II alpha gene (TOP2A) amplification and deletion in cancer-more common than anticipated, Cytopathology, 2003, 14, 309-313)。 さらに、TOP2Aの増幅は他の癌でも報告されている。
【0037】
TOP2Aなしには、DNAの複製も細胞分裂も不可能である。 このため、TOP2Aは、細胞を殺傷する正確なメカニズムが未解明であるにもかかわらず、多くの抗腫瘍療法レジメンの主要な標的となっている(Kellner, U, Sehested, M, Jensen, PB, Gieseler, F, and Rudolph, P; Culprit and victim -- DNA topoisomerase II, Lancet Oncol., 2002, 3, 235-243)。 このアプローチの成功は自然耐性の進行によって制限され、また、薬品に誘発されるDNAの損傷が悪性度を高める可能性がある。 最近のデータは、TOP2A遺伝子座での特定の遺伝子異常に依存し、特定の遺伝的TOP2Aの増幅および削除が、TOP2A阻害剤化学療法に対する過敏症と耐性の両方の主原因である可能性を示唆している。
【0038】
癌におけるTOP2Bの関与がTOP2Aに類似しているかどうか、あるいはそれら2つのイソフォームに大きな違いがあるかどうかは、明らかでない。 TOP2Bは、TOP2Aの活性の一部を少なくとも補充することができる(Sakaguchi, A and Kikuchi, A; Functional compatibility between isoform alpha and beta of type II DNA topoisomerase, J Cell Sci., 2004, 117, 1047-1054)。
【0039】
癌胎児性抗原関係の細胞接着分子5
癌胎児性抗原(CEA = CEACAM5)は、180kDaで激しくグリコシル化された膜タンパク質であり、N末端 Ig V様の部位とC末端部位の間に挟まれた3つのC2 Ig様の反復単位から成り、グリコホスファチジルイノシトル結合部位を含む (Hegde, P, Qi, R, Gaspard, R, Abernathy, K, Dharap, S, Earle-Hughes, J, Gay, C, Nwokekeh, NU, Chen, T, Saeed, AI, Sharov, V, Lee, NH, Yeatman, TJ, and Quackenbush, J; Identification of tumour markers in models of human colorectal cancer using a 19,200-element complementary DNA microarray, Cancer Res., 2001, 61, 7792-7797)。
【0040】
癌胎児性抗原であるCEAは、胎児発育中に発現するが、低レベルでは成人の胃腸器官上皮にも発現する。 しかし、CEAは、胃腸器官癌、結腸直腸癌、膵臓癌の90%、非小細胞肺癌細胞の70%、乳癌の50%と、ヒト腫瘍に高い割合で過剰発現する(Thompson, JA, Grunert, F, and Zimmermann, W; Carcinoembryonic antigen gene family: molecular biology and clinical perspectives, J Clin Lab Anal., 5, 344-366 2005)。 CEAは腫瘍細胞で高発現し血清に分泌するため、腫瘍マーカーとして広く用いられてきた(Sikorska, H, Shuster, J, and Gold, P; Clinical applications of carcinoembryonic antigen, Cancer Detect. Prev., 1988, 12, 321-355) 。また、結腸直腸癌監視の標準血清マーカーでもある (Locker, GY, Hamilton, S, Harris, J, Jessup, JM, Kemeny, N, Macdonald, JS, Somerfield, MR, Hayes, DF, and Bast, RC, Jr.; ASCO 2006 update of recommendations for the use of tumour markers in gastrointestinal cancer, J Clin Oncol, 2006, 24, 5313-5327)。
【0041】
CEAは腫瘍細胞で過剰発現するにもかかわらず、癌患者はこの抗原に対する免疫応答を通常示さない(Orefice, S, Fossati, G, Pietrojusti, E, and Bonfanti, G; Delayed cutaneous hypersensitivity reaction to carcinoembryonic antigen in cancer patients, Tumouri, 1982, 68, 473-475)。 通常、CEAは身体に低レベルで発現しているので、免疫系はCEAに対して耐性を得るのが普通である。 しかし、一連のワクチン治験で、CEAの免疫原性が実証された(Sarobe, P, Huarte, E, Lasarte, JJ, and Borras-Cuesta, F; Carcinoembryonic antigen as a target to induce anti-tumour immune responses, Curr. Cancer Drug Targets., 2004, 4, 443-454)。 特に、結腸直腸癌(CRC)で顕著であった(Mosolits, S, Ullenhag, G, and Mellstedt, H; Therapeutic vaccination in patients with gastrointestinal malignancies.A review of immunological and clinical results, Ann.Oncol., 2005, 16, 847-862)。 また、CEAは、この腫瘍型で試された中で最大数のワクチンプラットフォームを持つ腫瘍関連抗原(TAA)である(von Mehren, M; Colorectal cancer vaccines: what we know and what we don't yet know, Semin. Oncol., 2005, 32, 76-84)。
【0042】
CEAのいくつかの細胞傷害性およびヘルパーT細胞エピトープの記述があり (Crosti, M, Longhi, R, Consogno, G, Melloni, G, Zannini, P, and Protti, MP; Identification of novel subdominant epitopes on the carcinoembryonic antigen recognized by CD4+ T-cells of lung cancer patients, J Immunol., 2006, 176, 5093-5099; Novellino, L, Castelli, C, and Parmiani, G; A listing of human tumour antigens recognized by T-cells: March 2004 update, Cancer Immunol.Immunother., 2004, 54, 187-207; Ruiz, M, Kobayashi, H, Lasarte, JJ, Prieto, J, Borras-Cuesta, F, Celis, E, and Sarobe, P; Identification and characterization of a T-helper peptide from carcinoembryonic antigen, Clin Cancer Res., 2004, 10, 2860-2867)、CRCに対しペプチドを使用した様々なワクチン治験が可能となった(Babatz, J, Rollig, C, Lobel, B, Folprecht, G, Haack, M, Gunther, H, Kohne, CH, Ehninger, G, Schmitz, M, and Bornhauser, M; Induction of cellular immune responses against carcinoembryonic antigen in patients with metastatic tumours after vaccination with altered peptide ligand-loaded dendritic cells, Cancer Immunol. Immunother., 2006, 55, 268-276; Fong, L, Hou, Y, Rivas, A, Benike, C, Yuen, A, Fisher, GA, Davis, MM, and Engleman, EG; Altered peptide ligand vaccination with Flt3 ligand expanded dendritic cells for tumour immunotherapy, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 2001, 98, 8809-8814; Liu, KJ, Wang, CC, Chen, LT, Cheng, AL, Lin, DT, Wu, YC, Yu, WL, Hung, YM, Yang, HY, Juang, SH, and Whang-Peng, J; Generation of carcinoembryonic antigen (CEA)-specific T-cell responses in HLA-A*0201 and HLA-A*2402 late-stage colorectal cancer patients after vaccination with dendritic cells loaded with CEA peptides, Clin Cancer Res., 2004, 10, 2645-2651; Matsuda, K, Tsunoda, T, Tanaka, H, Umano, Y, Tanimura, H, Nukaya, I, Takesako, K, and Yamaue, H; Enhancement of cytotoxic T-lymphocyte responses in patients with gastrointestinal malignancies following vaccination with CEA peptide-pulsed dendritic cells, Cancer Immunol.Immunother., 2004, 53, 609-616; Ueda, Y, Itoh, T, Nukaya, I, Kawashima, I, Okugawa, K, Yano, Y, Yamamoto, Y, Naitoh, K, Shimizu, K, Imura, K, Fuji, N, Fujiwara, H, Ochiai, T, Itoi, H, Sonoyama, T, Hagiwara, A, Takesako, K, and Yamagishi, H; Dendritic cell-based immunotherapy of cancer with carcinoembryonic antigen-derived, HLA-A24-restricted CTL epitope: Clinical outcomes of 18 patients with metastatic gastrointestinal or lung adenocarcinomas, Int.J Oncol., 2004, 24, 909-917; Weihrauch, MR, Ansen, S, Jurkiewicz, E, Geisen, C, Xia, Z, Anderson, KS, Gracien, E, Schmidt, M, Wittig, B, Diehl, V, Wolf, J, Bohlen, H, and Nadler, LM; Phase I/II combined chemoimmunotherapy with carcinoembryonic antigen-derived HLA-A2-restricted CAP-1 peptide and irinotecan, 5-fluorouracil, and leucovorin in patients with primary metastatic colorectal cancer, Clin Cancer Res., 2005, 11, 5993-6001)。 これまでに行われたこれらおよび他の治験は、CEAワクチンの安全性と、この抗原に対する免疫応答の誘導の証拠を示している(von Mehren, M; Colorectal cancer vaccines: what we know and what we don't yet know, Semin. Oncol., 2005, 32, 76-84)。
【0043】
形質転換成長因子、β誘導性(TGFBI)
TGFBIは、TGFβ誘導性遺伝子としてヒトの肺腺癌細胞株で最初に特定された。 TGFBIは、分泌された細胞外基質タンパク質のエンコードをするもので、細胞接着と細胞外基質組成に作用すると考えられている。
【0044】
TGFBIは、結腸直腸癌で最も激しく発現上昇する遺伝子の1つであることが示されており、腺腫にも高レベルで発現する。 定量PCRの結果は、未精製腫瘍細胞と精製腫瘍上皮細胞の両方に高い上昇を示した。 したがって、in situ のハイブリダイゼーション実験で、TGFBIが間質および上皮のどちらのコンパートメントでも多くの細胞型で発現することが明らかになった(Buckhaults, P, Rago, C, St, CB, Romans, KE, Saha, S, Zhang, L, Vogelstein, B, and Kinzler, KW; Secreted and cell surface genes expressed in benign and malignant colorectal tumours, Cancer Res., 2001, 61, 6996-7001)。
【0045】
結腸直腸癌の遺伝子発現を調査する研究のメタ分析では、TGFBI は、(TGFBI の4つの研究で)繰り返し上方調節されると報告されているわずか9つの遺伝子の1つとして特定されている(Shih, W, Chetty, R, and Tsao, MS; Expression profiling by microarrays in colorectal cancer, Oncol. Rep., 2005, 13, 517-524)。
【0046】
ヒトの膵臓組織で、膵臓癌のTGFBI mRNAレベルは、正常な対照組織に比べ32.4倍上昇した。 in situハイブリダイゼーション分析により、TGFBI mRNAは主に膵臓腫瘤内の癌細胞で発現することが明らかになった(Schneider, D, Kleeff, J, Berberat, PO, Zhu, Z, Korc, M, Friess, H, and Buchler, MW; Induction and expression of betaig-h3 in pancreatic cancer cells, Biochim.Biophys.Acta, 2002, 1588, 1-6)。
【0047】
TGFBIは血管形成促進遺伝子としてin vitroモデルで特定された。 加えて、いくつかの腫瘍にTGFBIの発現の劇的な強調が見られた。 TGFBIに対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドがin vitroで遺伝子発現と上皮管形成の両方を遮断したことは、TGFBIが上皮細胞と基質の相互作用において重要な役割を果たしている可能性を示唆している(Aitkenhead, M, Wang, SJ, Nakatsu, MN, Mestas, J, Heard, C, and Hughes, CC; Identification of endothelial cell genes expressed in an in vitro model of angiogenesis: induction of ESM-1, (beta)ig-h3, and NrCAM, Microvasc. Res., 2002, 63, 159-171 )。
【0048】
タンパク質チロシンホスファターゼ、受容体型、Zeta1 (PTPRZ1)
PTPRZ1は、受容体型タンパク質チロシンホスファターゼファミリーに属し、2つの細胞質チロシン-タンパク質ホスファターゼドメインと、α-炭素脱水酵素ドメインと、フィブロネクチンIII型ドメインとで、単一経路I型膜タンパク質をコードする。 この遺伝子の発現は、胃癌細胞(Wu, CW, Li, AF, Chi, CW, and Lin, WC; Protein tyrosine-phosphatase expression profiling in gastric cancer tissues, Cancer Lett., 2006, 242, 95-103)、多発性硬化症部位の再有髄化オリゴデンドロサイト (Harroch, S, Furtado, GC, Brueck, W, Rosenbluth, J, Lafaille, J, Chao, M, Buxbaum, JD, and Schlessinger, J; A critical role for the protein tyrosine phosphatase receptor type Z in functional recovery from demyelinating lesions, Nat. Genet., 2002, 32, 411-414)、および低酸素状態のヒト胎児腎細胞(Wang, V, Davis, DA, Haque, M, Huang, LE, and Yarchoan, R; Differential gene up-regulation by hypoxia-inducible factor-1alpha and hypoxia-inducible factor-2 alpha in HEK293T-cells, Cancer Res., 2005, 65, 3299-3306)において誘導される。
【0049】
該タンパク質および転写の両方とも、グリア芽腫細胞において過剰発現し、走触性(ハプトタクティック)ミグレーションを促進する (Lu, KV, Jong, KA, Kim, GY, Singh, J, Dia, EQ, Yoshimoto, K, Wang, MY, Cloughesy, TF, Nelson, SF, and Mischel, PS; Differential induction of glioblastoma migration and growth by two forms of pleiotrophin, J Biol Chem., 2005, 280, 26953-26964)。
【0050】
さらに、PTRPZ1は、グリア芽腫においてゲノムDNAレベルで頻繁に増幅される(Mulholland, PJ, Fiegler, H, Mazzanti, C, Gorman, P, Sasieni, P, Adams, J, Jones, TA, Babbage, JW, Vatcheva, R, Ichimura, K, East, P, Poullikas, C, Collins, VP, Carter, NP, Tomlinson, IP, and Sheer, D; Genomic profiling identifies discrete deletions associated with translocations in glioblastoma multiforme, Cell Cycle, 2006, 5, 783-791)。
【0051】
ジャヌスキナーゼおよび微小管相互作用タンパク質2(JAKMIP2)
JAKMIP2は、PAX3-FKHR の、多くの周知または推定の下流標的の1つとして特定されているもので、ARMS(小児横紋筋肉腫、歯槽亜型)に高過剰発現した (Lae, M, Ahn, E, Mercado, G, Chuai, S, Edgar, M, Pawel, B, Olshen, A, Barr, F, and Ladanyi, M; Global gene expression profiling of PAX-FKHR fusion-positive alveolar and PAX-FKHR fusion-negative embryonal rhabdomyosarcomas, J Pathol., 2007, 212, 143-151)。
【0052】
フィブロネクチン1(FN1)
フィブロネクチンは、約5%の炭水化物を含む、高分子量の糖タンパク質であり、細胞膜に広がるインテグリンと呼ばれる受容体タンパク質と結合する。 インテグリンの他に、コラーゲン、フィブリン、ヘパリンのような細胞外基質とも結合する。 フィブロネクチンのイソフォームはいくつかあり、それら全ては単一遺伝子の産物である。 FNは、正常な細胞形態、細胞接着、細胞移動、止血、血栓形成、傷の治癒、分化、および増殖の維持において重要な役割を果たしている(Hynes, RO; Fibronectins, Sci. Am., 1987, 254, 42-51)。
【0053】
多因子フィブロネクチン(sFN)は、溶解性フィブロネクチンを76-aaペプチド、III1-C(アナステリンと呼ばれる)で処理してin vitroで形成されるもので、フィブロネクチンの第1のIII型リピートに由来する。 腫瘍マウスでのin vivo研究は、アナステリンまたはsFNの全身投与による腫瘍成長、血管形成、および転移の抑制を示した(Yi, M and Ruoslahti, E; A fibronectin fragment inhibits tumour growth, angiogenesis, and metastasis, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 2001, 98, 620-624)。 アンギネックスは、33個のアミノ酸を持つ合成ペプチドであり、もともとは抗血管形成タンパク質のβシート構造を再現するためにモデル化された。 アンギネックスがフィブロネクチンの重合を開始すること、および血漿フィブロネクチン欠如のマウスでそれが不活性であることが示されている(Akerman, ME, Pilch, J, Peters, D, and Ruoslahti, E; Angiostatic peptides use plasma fibronectin to home to angiogenic vasculature, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 2005, 102, 2040-2045)。 D-ガラクトサミン(GalN)/リポ多糖体(LPS)が誘導する劇症型肝不全にFNが与える影響を調べた研究がある。 この研究の結果は、FNが、NF-kappaB活性の阻害が関与するメカニズムによってGalN/LPS誘導肝不全に対する保護を与えることを示唆しており、それはTNFαの下方調節を引き起こし、IL-10の上方調節を招き、Bcl-xLを上昇させ、アポートティックシグナルの遮断を誘導し、それによって、GalN/LPSが引き起こす肝細胞のアポートシスが抑制された(Qiu, Z, Kwon, AH, Tsuji, K, Kamiyama, Y, Okumura, T, and Hirao, Y; Fibronectin prevents D-galactosamine/lipopolysaccharide-induced lethal hepatic failure in mice, Shock, 2006, 25, 80-87)。 その他の結果は、FNがヒトの肺癌細胞増殖を刺激し、COX-1遺伝子発現およびPGE2生合成の誘導によってin vitroでアポートシスを減退させることを示している(Han, S, Sidell, N, Roser-Page, S, and Roman, J; Fibronectin stimulates human lung carcinoma cell growth by inducing cyclooxygenase-2 (COX-2) expression, Int. J Cancer, 2004, 111, 322-331)。
【0054】
フィブロネクチン(FN)が器官形成および腫瘍形成の間に選択的スプライシングを起こすことが示されている。 そのようなスプライス変異形の1つであるドメイン外-B(ED-B)FNは、通常、正常な成人組織にはなく、腫瘍血管形成のマーカーとして提案されている(Khan, ZA, Caurtero, J, Barbin, YP, Chan, BM, Uniyal, S, and Chakrabarti, S; ED-B fibronectin in non-small cell lung carcinoma, Exp.Lung Res., 2005, 31, 701-711)。 Mhawechらは、EDBに対し陽性染色する頭部および頸部の腫瘍で、患者の総合生存率が有意に低い傾向があることを示した(Mhawech, P, Dulguerov, P, Assaly, M, Ares, C, and Allal, AS; EB-D fibronectin expression in squamous cell carcinoma of the head and neck, Oral Oncol., 2005, 41, 82-88)。
【0055】
フィブロネクチンの発現は血管形成および脈管形成を調節し、虚血および痙攣に対する脳組織応答に参加する。 フィブロネクチンの遺伝子発現は、正常皮からの線維芽細胞に比べ、SWS(スタージウェーバー症候群)の線維芽細胞で有意に増加した(Comi, AM, Hunt, P, Vawter, MP, Pardo, CA, Becker, KG, and Pevsner, J; Increased fibronectin expression in sturge-weber syndrome fibroblasts and brain tissue, Pediatr. Res., 2003, 53, 762-769)。 フィブロネクチン濃度は、良性卵巣腫瘍および正常卵巣に比べ、卵巣癌で有意に高かった。 フィブロネクチン濃度は、再発のない卵巣癌患者に比べ、再発病のある卵巣癌患者で有意に高かった。 腫瘍に由来するマトリオリティック酵素およびフィブロネクチンの発現は、卵巣腫瘍の成長において重要である(Demeter, A, Szirmai, K, Olah, J, Papp, Z, and Jeney, A; Elevated expression of matrix metalloproteinase-9, and fibronectin concentration in recurrent epithelial ovarian cancer, Orv. Hetil., 2004, 145, 1617-1624)。 研究で解析された1,176の遺伝子のうち、有意に下方調節されたわずか2つの遺伝子の1つがFNであったという事実は、FNが哺乳類の癌における重要な転移抑制剤として作用し得るという仮説を裏付けるものである(Urtreger, AJ, Werbajh, SE, Verrecchia, F, Mauviel, A, Puricelli, LI, Kornblihtt, AR, and Bal de Kier Joffe ED; Fibronectin is distinctly downregulated in murine mammary adenocarcinoma cells with high metastatic potential, Oncol. Rep., 2006, 16, 1403-1410)。
【0056】
3つの溶解性フィブロネクチンペプチド(RGD、CS-1、FN-C/H-V)が肺線維芽細胞でのアポートシスを誘導することを示す報告書がある。 アポートシスは接着の障害(アノイキス)によって生じた。 小フィブロネクチンペプチドの使用による線維芽細胞アポートシスの促進は抗線維化療法の可能性があり、さらなる研究に値する(Hadden, HL and Henke, CA; Induction of lung fibroblast apoptosis by soluble fibronectin peptides, Am.J Respir.Crit Care Med, 2000, 162, 1553-1560)。 別の研究は、フィブロネクチン(FN)がヒトの非小細胞肺癌(NSCLC)細胞増殖を刺激することを実証した。 この研究は、FNがNSCLC細胞におけるMMP-9タンパク質、mRNA発現、およびゼラチン分解活性を増加させることを示している(Han, S, Ritzenthaler, JD, Sitaraman, SV, and Roman, J; Fibronectin increases matrix metalloproteinase 9 expression through activation of c-Fos via extracellular-regulated kinase and phosphatidylinositol 3-kinase pathways in human lung carcinoma cells, J Biol Chem., 2006, 281, 29614-29624)。 細胞接着を制御するメカニズムによってもビタミンD(VD)化合物の腫瘍抑制効果を媒介できるかどうかを調査した研究がある。 FNに対して小干渉RNAを導入することによって、FN発現の下方調節が生じ、コラーゲンI型基質への細胞接着が減退した。 この研究の結果は、甲状腺癌細胞の接着性の調整と、少なくとも部分的に、新生細胞成長にVDが与える作用の媒介におけるFNの重要性を強調するものである(Liu, W, Asa, SL, and Ezzat, S; 1alpha,25-Dihydroxyvitamin D3 targets PTEN-dependent fibronectin expression to restore thyroid cancer cell adhesiveness, Mol. Endocrinol., 2005, 19, 2349-2357)。
【0057】
腫瘍関連FNイソフォームの生成は特異的リガンド(例えば抗体)の開発を可能にするものであり、治療薬を腫瘍環境に選択的に送達するために用いることができる。 FNは、生分子介入の標的として、FNとインテグリンおよび細胞表面の他の受容体との相互作用を遮断する阻害分子の開発と、リガンドに基づく標的化イメージングおよび治療戦略の開発との両方に用いられる(Kaspar, M, Zardi, L, and Neri, D; Fibronectin as target for tumour therapy, Int. J Cancer, 2005, 118, 1331-1339)。 CH50として指定されるFNの組み替えCBD-HepIIポリペプチドのin vivo発現による治療が、腫瘍成長、腫瘍浸潤、および血管形成を強く阻害することを実証した研究がある。 CH50での遺伝子療法は、肝臓に肝細胞癌があるマウスの生存を延長しただけでなく、脾臓における腫瘍の成長および浸潤能力および肝臓への転移を抑制した。 総合的に、これらの結果は、肝臓癌の遺伝子治療におけるCH50の有望な有用性を示唆するものである(Liu, Y, Huang, B, Yuan, Y, Gong, W, Xiao, H, Li, D, Yu, ZR, Wu, FH, Zhang, GM, and Feng, ZH; Inhibition of hepatocarcinoma and tumour metastasis to liver by gene therapy with recombinant CBD-HepII polypeptide of fibronectin, Int. J Cancer, 2007 121 (1) 184-92)。フィブロネクチン(FN)は、細胞外基質との細胞接着に反対する微小機能部位(14番目のIII型リピート内のYTIYVIAL配列)を有する。 この部位を含む、FNIII14と呼ばれる22-merのFNペプチドは、インテグリンと結合せずにβ1インテグリン媒介接着を阻害する。 この研究は、FNIII14がリンパ腫細胞転移を防ぐ可能性を有することを示している(Kato, R, Ishikawa, T, Kamiya, S, Oguma, F, Ueki, M, Goto, S, Nakamura, H, Katayama, T, and Fukai, F; A new type of antimetastatic peptide derived from fibronectin, Clin Cancer Res., 2002, 8, 2455-2462)。
【0058】
表皮成長因子受容体(EGFR)
EGFRは、正常細胞の増殖、分化、および生存の調節において重要な役割を果たす。 このため、EGFRのステータスはヒトの腫瘍型の一定の範囲で改変することが多く、一般に、貧しい予後と相関する。 新生細胞においては、EGFRは、様々な相違する経路を介してそれらの成長と生存に貢献する(Maehama, T and Dixon, JE; The tumour suppressor, PTEN/MMAC1, dephosphorylates the lipid second messenger, phosphatidylinositol 3,4,5-trisphosphate, J Biol Chem., 1998, 273, 13375-13378)。 EGFR異常は、グリア芽腫で最も多い分子異常の1つである(Zawrocki, A and Biernat, W; Epidermal growth factor receptor in glioblastoma, Folia Neuropathol., 2005, 43, 123-132)。
【0059】
EGFRの増幅およびmRNAの過剰発現は、高グレードの星状細胞由来神経膠腫に頻繁であり、常にEGFRタンパク質レベルの上昇と強く関連している(Wong, AJ, Bigner, SH, Bigner, DD, Kinzler, KW, Hamilton, SR, and Vogelstein, B; Increased expression of the epidermal growth factor receptor gene in malignant gliomas is invariably associated with gene amplification, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 1987, 84, 6899-6903;Chaffanet, M, Chauvin, C, Laine, M, Berger, F, Chedin, M, Rost, N, Nissou, MF, and Benabid, AL; EGF receptor amplification and expression in human brain tumours, 1992, Eur. J Cancer, 28, 11-17)。遺伝子増幅を伴わないタンパク質過剰発現は、GBMの最高27%に報告されているが、より悪性度の低い星状細胞腫および希突起膠腫も報告されており、遺伝子増幅を伴わないEGFR過剰発現を実証している(Reifenberger, J, Reifenberger, G, Ichimura, K, Schmidt, EE, Wechsler, W, and Collins, VP; Epidermal growth factor receptor expression in oligodendroglial tumours, Am. J Pathol., 1996, 149, 29-35)。
【0060】
脳腫瘍におけるEGFR増幅または過剰発現の予後的意味合いに関しては異論がある。 該患者の生存率に与えるEGFR増幅または過剰発現の影響は全くなかったという著者もいれば (Olson, JJ, Barnett, D, Yang, J, Assietti, R, Cotsonis, G, and James, CD; Gene amplification as a prognostic factor in primary brain tumours, Clin Cancer Res., 1998, 4, 215-222; Newcomb, EW, Cohen, H, Lee, SR, Bhalla, SK, Bloom, J, Hayes, RL, and Miller, DC; Survival of patients with glioblastoma multiforme is not influenced by altered expression of p16, p53, EGFR, MDM2 or Bcl-2 genes, Brain Pathol., 1998, 8, 655-667; Waha, A, Baumann, A, Wolf, HK, Fimmers, R, Neumann, J, Kindermann, D, Astrahantseff, K, Blumcke, I, von, DA, and Schlegel, U; Lack of prognostic relevance of alterations in the epidermal growth factor receptor-transforming growth factor-alpha pathway in human astrocytic gliomas, J Neurosurg., 1996, 85, 634-641) 、これらの改変は否定的予後因子だと結論づけた著者もいる(Etienne, MC, Formento, JL, Lebrun-Frenay, C, Gioanni, J, Chatel, M, Paquis, P, Bernard, C, Courdi, A, Bensadoun, RJ, Pignol, JP, Francoual, M, Grellier, P, Frenay, M, and Milano, G; Epidermal growth factor receptor and labelling index are independent prognostic factors in glial tumour outcome, Clin Cancer Res., 1998, 4, 2383-2390; Jaros, E, Perry, RH, Adam, L, Kelly, PJ, Crawford, PJ, Kalbag, RM, Mendelow, AD, Sengupta, RP, and Pearson, AD; Prognostic implications of p53 protein, epidermal growth factor receptor, and Ki-67 labelling in brain tumours, Br. J Cancer, 1992, 66, 373-385; Schlegel, J, Merdes, A, Stumm, G, Albert, FK, Forsting, M, Hynes, N, and Kiessling, M; Amplification of the epidermal-growth-factor-receptor gene correlates with different growth behaviour in human glioblastoma, Int. J Cancer, 1994, 56, 72-77; Zhu, A, Shaeffer, J, Leslie, S, Kolm, P, and El-Mahdi, AM; Epidermal growth factor receptor: an independent predictor of survival in astrocytic tumours given definitive irradiation, Int. J Radiat. Oncol. Biol Phys., 1996, 34, 809-815)。
【0061】
該癌細胞に対するEGFR分子による治療のアプローチはいくつか存在する。 最も多く研究されているものとして含まれるのは、 特異的抗体療法であり、非防御抗体、あるいは毒素、リポソーム、または核種との共役抗体、および受容体チロシンキナーゼの阻害剤の使用を手段とするものである。 EGFRwtに対する単クローン抗体にはいくつかのタイプがある。 これらの使用により、リガンド(セツキシマブ)への受容体のアクセスの遮断および/または該受容体の急速な内在化(ABX-EGF)が生じる(Sridhar, SS, Seymour, L, and Shepherd, FA; Inhibitors of epidermal-growth-factor receptors: a review of clinical research with a focus on non-small-cell lung cancer, Lancet Oncol., 2003, 4, 397-406)。 EGFRwtは正常細胞の表面にも発生するので、副作用により使用が制限される可能性がある。
【0062】
EGFRは頭部および頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)で過剰発現し、この発現レベルは生存率の低下と相関する。 EGFRを遮断する療法は、主に標準的療法と組み合わせたときに、限られた効能を治験で示した。 EGFRvIIIは、HNSCCに発現し、成長増進と、標的である野生型EGFRに対する耐性とに貢献する。 EGFR標的戦略の抗腫瘍効能は、EGFRvIIIに特異的な遮断の追加によって増進し得る(Sok, JC, Coppelli, FM, Thomas, SM, Lango, MN, Xi, S, Hunt, JL, Freilino, ML, Graner, MW, Wikstrand, CJ, Bigner, DD, Gooding, WE, Furnari, FB, and Grandis, JR; Mutant epidermal growth factor receptor (EGFRvIII) contributes to head and neck cancer growth and resistance to EGFR targeting, Clin Cancer Res., 2006, 12, 5064-5073)。
【0063】
別の戦略は、EGF受容体を過剰発現するグリア芽腫細胞および他の癌細胞の死を選択的に誘導することである。 EGF受容体を宿とする非ウィルス送達ベクターを用い、アポートシスの強活性剤である合成抗増殖性dsRNA (ポリイノシン-サイトシン [ポリIC])を選択的に標的癌細胞に当てた。 EGFRを標的としたポリICは、急速なアポートシスを標的細胞にin vitroおよびin vivoで誘導した。 EGFRを標的としたポリICの腫瘍送達は、ヌードマウスで未確立の頭蓋内腫瘍の完全な退縮を誘導し、正常な脳組織への明らかな毒性副作用は見られなかった。 治療完了の1年後、この治療を受けたマウスは無癌で健康を維持している(Shir, A, Ogris, M, Wagner, E, and Levitzki, A; EGF receptor-targeted synthetic double-stranded RNA eliminates glioblastoma, breast cancer, and adenocarcinoma tumours in mice, PLoS. Med, 2006 Jan; 3(1):e6. Epub 2005 Dec 6)。
【0064】
小干渉RNA(siRNA)の適用は、遺伝子発現を調整するための有効かつ高特異的なツールとなり、広範な癌遺伝子を見事に静粛させてきた。SiRNAが媒介するEGFRの下方調節は、確立された2つの膠腫細胞株で、異なるEGFR発現レベルで示された(U373 MG、LN18)。 EGFR mRNAおよびタンパク質の発現は、70〜90%下方調節された。 しかし、siRNA治療に、細胞増殖、移動、およびEGFR連結シグナル伝達カスケードの活性ステータスへの阻害効果はなかった。 これらの結果にしたがい、マイクロアレイによる遺伝子発現分析は、ごくわずかだが特異的な発現パターンの変化を呈した。 結論として、これらのデータは、EGFRの特異的な下方調節では、悪性膠腫における単剤療法のアプローチに十分でない可能性を示す(Vollmann, A, Vornlocher, HP, Stempfl, T, Brockhoff, G, Apfel, R, and Bogdahn, U; Effective silencing of EGFR with RNAi demonstrates non-EGFR dependent proliferation of glioma cells, Int. J Oncol., 2006, 28, 1531-1542)。
【0065】
いくつかの治験が実施され、有望な結果を示している。 例えば、
h-R3は、高アフィニティのEGFR外部ドメインを認識するヒト化単クローン抗体であり、チロシンキナーゼ活性を阻害する。 新たに診断された高グレード膠腫患者でh-R3の安全性、免疫原性、および初期効能を評価するために、フェーズI/II治験が実施された(Ramos, TC, Figueredo, J, Catala, M, Gonzalez, S, Selva, JC, Cruz, TM, Toledo, C, Silva, S, Pestano, Y, Ramos, M, Leonard, I, Torres, O, Marinello, P, Perez, R, and Lage, A; Treatment of high-grade glioma patients with the humanized anti-epidermal growth factor receptor (EGFR) antibody h-R3: report from a phase I/II trial, Cancer Biol Ther., 2006, 5, 375-379)。
【0066】
EKB-569は、表皮成長因子受容体(EGFR)の強力な、低分子量の、選択的かつ不可逆な阻害剤であり、抗癌剤として開発されている。 日本人患者で、フェーズ1の用量暫増研究が行われた。 RECIST基準に基づき、彼らの病気は安定であったが、X線写真で腫瘍の退縮が観察された(Yoshimura, N, Kudoh, S, Kimura, T, Mitsuoka, S, Matsuura, K, Hirata, K, Matsui, K, Negoro, S, Nakagawa, K, and Fukuoka, M; EKB-569, a new irreversible epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor, with clinical activity in patients with non-small cell lung cancer with acquired resistance to gefitinib, Lung Cancer, 2006, 51, 363-368)。
【0067】
表皮成長因子受容体(EGFR)関連チロシンキナーゼの特異的阻害剤であるゲフィチニブは、従来の化学療法で効果のなかった非小細胞肺癌(NSCLC)患者のサブグループで効能を示した。 また、NSCLCからの脳転移における抗腫瘍効果もあることが報告されている。 加えて、EGFR変異は、NSCLCでのゲフィチニブ過敏症との強い関連を示した。 NSCLCからの脳転移におけるゲフィチニブの効能の評価、およびこの効能とEGFR変異の関連の評価が行われた。 ゲフィチニブは、患者サブグループで脳転移治療に有効のようである。 データは、脳転移の治療におけるゲフィチニブの効能とEGFR変異との関連の可能性を示唆した(Shimato, S, Mitsudomi, T, Kosaka, T, Yatabe, Y, Wakabayashi, T, Mizuno, M, Nakahara, N, Hatano, H, Natsume, A, Ishii, D, and Yoshida, J; 2006, EGFR mutations in patients with brain metastases from lung cancer: association with the efficacy of gefitinib, Neuro. Oncol., 8, 137-144)。
【0068】
キチナーゼ3様2(CHI3L2)
CHI3L2は、もともと、軟骨細胞から特定された。 CHI3L2は、リウマチ性関節炎における標的抗原としてしばしば記述されてきた。 CHI3L2と癌とのレリバントな関連は特定されていない。 キチナーゼ3様タンパク質は、細胞外シグナル調節キナーゼおよびPKB媒介シグナル伝達経路の活性によってヒト結合組織細胞、例えば線維芽細胞の増殖を刺激すると言われている(Recklies AD, White C, Ling H; The chitinase 3-like protein human cartilage glycoprotein 39 (HC-gp39) stimulates proliferation of human connective-tissue cells and activates both extracellular signal-regulated kinase- and protein kinase B-mediated signalling pathways; Biochem J. 2002; 365:119-126)。 マウスにおいて、キチナーゼ3様タンパク質がヘリコバクター誘導胃癌モデルにおいて強く上方調節することがわかった(Takaishi S, Wang TC; Gene expression profiling in a mouse model of Helicobacter-induced gastric cancer; Cancer Sci. 2007 (3): 284-293)。
【0069】
ダブルコルチンおよびCaMキナーゼ様2(DCAMKL2)
微小管(MT)関連DCXタンパク質は、哺乳類大脳皮質の発育において基本的な役割を果たす。 DCXに非常に相同性のあるドメイン(DC)を持つタンパク質キナーゼ、ダブルコルチンキナーゼ-2(DCAMKL2)の特定が報告されている。 DCAMKL2は、そのDCドメインに関連するMT結合活性およびキナーゼドメインに媒介されるキナーゼ活性を有し、これら2つのドメインが機能的に独立な構造で組織されている。
【0070】
DCAMKL2の過剰発現は、風邪が誘導する解重合に対してMT細胞骨格を安定化する。 DCAMKL2の自己リン酸化は、MTに対するそのアフィニティを大きく低下する。 DCAMKL2およびDCX mRNAは、神経系特異的であり、大脳皮質積層期間に発現される。 DCXが生後に下方調節されるのに、DCAMKL2が豊富な量で成人まで残ることは、そのDC配列が、成熟神経系にこれまで認識されなかった機能を有することを示唆している。 交感神経ニューロンにおいて、DCAMKL2は、細胞体と、軸索および樹状突起の末端部とに局在する。
【0071】
DCAMKL2は、神経細胞成長円錐の近くのMT力学を可逆制御するリン酸化依存スイッチである場合がある。 DCAMKL2の発現パターン、機能活性、調節、および局在は、DCAMKL2が、神経細胞の発育とって重要なイベントまたは成熟した神経系の特徴にとって潜在的に重要なイベントにおいて、DC遺伝子ファミリー(DCドメインエンコーディング遺伝子)の他のメンバーと平行に、または協調的に機能することを示唆している。 DCAMKL2は、2つの機能・独立ドメインと、MT結合・安定化ドメイン(該DC配列)と、タンパク質ホスフォトランスファラーゼ活性があるキナーゼドメインとを含む。
【0072】
細胞外のキューおよびそれらの細胞内シグナルをMT力学の変化に形質導入する上で、該DC配列が重要な役割を果たすことが示唆された。 具体的には、リン酸化によって調節される方法でMTと相互作用する能力、およびMTが力学的に不安定な部位である軸索および樹状突起の末端部に局在する能力に基づき、DCAMKL2は、神経細胞シグナル伝達イベントに対する応答として生じる急速な細胞骨格の配置換えを行う媒介役として可能な候補と見なされるべきである(Edelman, AM, Kim, WY, Higgins, D, Goldstein, EG, Oberdoerster, M, and Sigurdson, W; Doublecortin kinase-2, a novel doublecortin-related protein kinase associated with terminal segments of axons and dendrites, J Biol Chem., 2005, 280, 8531-8543)。
【0073】
ATP感受性内向き整流カリウムチャネル10(KCNJ10)
内向き整流カリウムチャネル(Kir)の主要機能は、グリアに特徴的な生理特性であるグリア細胞膜の高カリウム(K+)選択性および強陰性静止膜電位(RMP)の確立である。 Kirの古典的特性は、RMPがK+の平衡電位に対して陰性であるときは(E(K))K+が内向きに流れるが、より陽性電位では外向きの流れが阻害されることである。 CNSグリアの特徴は、KCNJ10サブタイプの特異的発現であり、これはグリア細胞膜における主要なK+コンダクタンスであり、グリアRMPの設定において重要な役割を持つ。 したがって、Kir、特にKCNJ10は、グリア機能にとり重要な調節剤であり、それにより、神経細胞興奮性および軸索の状態が決定される(Butt, AM and Kalsi, A; Inwardly rectifying potassium channels (Kir) in central nervous system glia: a special role for Kir4.1 in glial functions, J Cell Mol. Med, 2006, 10, 33-44)。
【0074】
星状細胞のカリウムおよびグルタミン酸塩緩衝能力の減退の結果、ニューロンの過剰興奮性およびシナプス伝達異常が起きる。 KCNJ10チャネルは、皮質星状細胞の有意な過分極の主原因であり、カリウム緩衝において主要な役割を果たす可能性が高い。 KCNJ10のノックダウンによる、星状細胞におけるグルタミン酸塩クリアランスの有意な阻害は、このプロセスにおける膜の過分極の役割を強調する(Kucheryavykh, YV, Kucheryavykh, LY, Nichols, CG, Maldonado, HM, Baksi, K, Reichenbach, A, Skatchkov, SN, and Eaton, MJ;, Downregulation of Kir4.1 inward rectifying potassium channel subunits by RNAi impairs potassium transfer and glutamate uptake by cultured cortical astrocytes, Glia 2006, 55 (3), 274 - 281)。
【0075】
中枢神経系におけるKCNJ10による細胞外K(+)の空間緩衝は、グリア細胞表面を横切るKCNJ10の不均一な分布によってのみ起こり得る。 様々なヒト脳腫瘍(低グレードおよび高グレードの星状細胞腫および希突起膠腫)におけるKCNJ10が観察されたことは、グリア細胞の緩衝能力の低下による水の流入(細胞傷害性浮腫)が起きた可能性を示唆する(Warth, A, Mittelbronn, M, and Wolburg, H; Redistribution of the water channel protein aquaporin-4 and the K+ channel protein Kir4.1 differs in low- and high-grade human brain tumours, Acta Neuropathol. (Berl), 2005, 109, 418-426)。 また、KCNJ10は、損傷した脳の星状細胞において上方調節された。 以下の仮説が提案された。 星状細胞において、正常条件下ではAQP4がKCNJ10媒介K+サイフォニングとともに水を輸送するが、病理状態ではAQP4は脳浮腫流体の流れを促進し、増加した細胞外K+をKCNJ10が緩衝する(Saadoun, S, Papadopoulos, MC, and Krishna, S; Water transport becomes uncoupled from K+ siphoning in brain contusion, bacterial meningitis, and brain tumours: immunohistochemical case review, J Clin Pathol., 2003, 56, 972-975)。
【0076】
本発明者らが言う、与えられたアミノ酸配列の「変異形」とは、例えば1または2のアミノ酸残基の側鎖が改変しており(例えば、それらが別の天然生成アミノ酸残基の側鎖または他の何らかの側鎖で置換されており)、該ペプチドが該与えられたアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同じようにHLA分子と結合可能であることを意味する。 例えば、ペプチドを修飾することにより、該ペプチドがHLA-Aまたは-DRのような適切なMHC分子と相互作用し結合する能力を改善しないまでも少なくとも維持することができ、かつ、本発明の態様の中で定義するようなアミノ酸配列を含むポリペプチドを発現する細胞を認識して殺すことができる活性CTLを該ペプチドが生成する能力を改善しないまでも少なくとも維持することができる。 該データベースから得られるように、HLA-A結合ペプチドの特定の位置は、通常、HLA結合溝の結合モチーフに適合するコア配列を形成するアンカー残基である。
【0077】
T細胞受容体との相互作用に必須ではないアミノ酸残基を、組み込まれてもT細胞反応性に実質的に影響せず、関係MHCとの結合も削除しない別のアミノ酸と置換することによって修飾することができる。 したがって、与えられた条件とは無関係に、本発明のペプチドとしては、与えられたアミノ酸配列またはそれらの一部または変異形を含む任意のペプチド(本発明者らがこう言う場合、オリゴペプチドまたはポリペプチドを含む)が可能である。
【0078】
MHCクラスIIが提示するペプチドに関しさらに周知のように、これらのペプチドは「コア配列」からなるものであり、該コア配列は、その機能を妨害しない(すなわち、該ペプチドと、その天然の相手を認識するT細胞クローンの全てまたは一部との相互作用に無関係とされる)特定のHLA特異的アミノ酸モチーフ、および選択的にN-および/またはC-末端伸張を有する。 該N-および/またはC-末端伸張は、例えば、各々1個から10個のアミノ酸を全長とすることができる。 これらのペプチドを、MHCクラスII分子を負荷するために直接使うこと、または以下に説明するように、その配列をクローンしてベクターにすることができる。 これらのペプチドは細胞内のより大きいペプチドの処理から得られる最終産物を形成するので、より長いペプチドを使うこともできる。 本発明のペプチドは任意のサイズが可能だが、通常、その分子量は100,000未満であり、好ましくは50,000未満であり、より好ましくは10,000未満であり、通常約5,000である。 アミノ酸残基の数に関しては、本発明のペプチドは、1000残基未満が可能であり、好ましくは500残基未満であり、より好ましくは100残基未満である。 したがって、本発明は、ペプチドおよびその変異形も提供するものであり、該ペプチドまたは変異形の全長は8から100個のアミノ酸、好ましくは8から30個のアミノ酸、最も好ましくは8から16個、すなわち8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15 または16 個のアミノ酸である。
【0079】
したがって、本発明のペプチドと交差反応するT細胞を誘導する天然または人工の変異形は、しばしば、長さ変異形である。 配列番号 11と12、および21と24の、そのような天然の長さ変異形を表1に示す。
【0080】
約12個のアミノ酸残基より長いペプチドを直接用いてMHCクラスII分子を結合する場合、コアHLA結合部を挟む残基は、該ペプチドが該MHCクラスII分子結合溝と特異的に結合する能力または該ペプチドを該CTLに提示する能力に実質的に影響を与えないことが好ましい。 しかし、すでに上述したように、より大きいペプチドを使用できるものと理解され、例えば、ポリヌクレオチドによってエンコードされる場合であり、その理由は、これらのより大きいペプチドは適切な抗原提示細胞によってフラグメント化できるからである。
【0081】
また、MHCクラスIエピトープ(通常、長さは8から10個のアミノ酸であるが)を、実際に該エピトープを含む、より長いペプチドまたはタンパク質から処理されるペプチドによって生成することも可能である。 MHCクラスIIエピトープの場合と同様に、その結合部を挟む残基が、該MHCクラスI分子の結合溝に特異的に結合する能力または該ペプチドを該CTLに提示する能力に実質的に影響を与えないこと、およびタンパク分解切断のための場所をマスクしないことが好ましい。
【0082】
したがって、本発明は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異形も提供するものであり、その全長は8から100個のアミノ酸、好ましくは8から30個のアミノ酸、最も好ましくは8から16個、すなわち8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15 または16個 のアミノ酸である。
【0083】
当然、本発明のペプチドまたは変異形は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子と結合する能力を持つであろう。 当該技術分野で周知の方法により、MHC複合体とのペプチドまたは変異形の結合を試験することが可能であり、例えば、本発明の実施例4に記述されている方法や、異なるMHCクラスII対立遺伝子の文献に記述されている方法がある(例:Vogt AB, Kropshofer H, Kalbacher H, Kalbus M, Rammensee HG, Coligan JE, Martin R; Ligand motifs of HLA-DRB5*0101 and DRB1*1501 molecules delineated from self-peptides; J Immunol. 1994; 153(4):1665-1673; Malcherek G, Gnau V, Stevanovic S, Rammensee HG, Jung G, Melms A; Analysis of allele-specific contact sites of natural HLA-DR17 ligands; J Immunol. 1994; 153(3):1141-1149; Manici S, Sturniolo T, Imro MA, Hammer J, Sinigaglia F, Noppen C, Spagnoli G, Mazzi B, Bellone M, Dellabona P, Protti MP; Melanoma cells present a MAGE-3 epitope to CD4(+) cytotoxic T cells in association with histocompatibility leukocyte antigen DR11; J Exp Med. 1999; 189(5): 871-876; Hammer J, Gallazzi F, Bono E, Karr RW, Guenot J, Valsasnini P, Nagy ZA, Sinigaglia F; Peptide binding specificity of HLA-DR4 molecules: correlation with rheumatoid arthritis association; .J Exp Med. 1995 181(5):1847-1855; Tompkins SM, Rota PA, Moore JC, Jensen PE; A europium fluoroimmunoassay for measuring binding of antigen to class II MHC glycoproteins; J Immunol Methods. 1993; 163(2): 209-216; Boyton RJ, Lohmann T, Londei M, Kalbacher H, Halder T, Frater AJ, Douek DC, Leslie DG, Flavell RA, Altmann DM; Glutamic acid decarboxylase T lymphocyte responses associated with susceptibility or resistance to type I diabetes: analysis in disease discordant human twins, non-obese diabetic mice and HLA-DQ transgenic mice; Int Immunol. 1998 (12):1765-1776)。
【0084】
本発明の特に好ましい実施形態において、該ペプチドは、配列番号1〜配列番号29のアミノ酸配列からなる、もしくは本質的にそれからなる。
【0085】
「本質的にそれからなる」とは、本発明のペプチドが、配列番号1〜配列番号29の配列またはその変異形に加え、MHC分子エピトープのエピトープとして機能する部分を必ずしも形成していない部分であるN-および/またはC-末端位にある追加的なアミノ酸ストレッチを含むことを意味する。
【0086】
にもかかわらず、これらのストレッチは、本発明のペプチドを効率的に細胞に導入するために重要である場合がある。 本発明の1実施形態において、本発明のペプチドは、例えば、NCBI, GenBank登録番号X00497に由来するような、HLA-DR抗原関連不変鎖(下記「Ii」のp33)のN-末端アミノ酸80個を含む融合タンパク質である(Strubin, M., Mach, B. and Long, E.O. The completesequence of the mRNA for the HLA-DR-associated invariant chain reveals a polypeptide with an unusual transmembrane polarity EMBO J. 1984, 3 (4), 869-872)。
【0087】
加えて、より強力な免疫応答を引き出すために、安定性および/またはMHC分子への結合を改善するよう、該ペプチドまたは変異形をさらに修飾することができる。 そのようなペプチド配列の最適化の方法は当業者に周知であり、例えば、逆ペプチド結合または非ペプチド結合の導入を含む。
【0088】
逆ペプチド結合におけるアミノ酸残基は、ペプチド(-CO-NH-)により結合されておらず、そのペプチド結合は逆になっている。 そのようなレトロ-インバースペプチド模倣薬は、当業者に周知の方法を用いて作ることができ、例えば、ここに参照として組み込むMeziere et al J. Immunol. 1997, 159, 3230-3237に記述されている方法がある。 このアプローチには、バックボーンが関与する変更を含むが側鎖の配向は関与しない擬ペプチドの作成が関与する。 Meziereら(1997) は、MHCおよびTヘルパー細胞応答にこれら擬ペプチドが有用であることを示している。 CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含むレトロ-インバースペプチドは、タンパク質分解に対する抵抗力がはるかに強い。
【0089】
非ペプチド結合とは、例えば、-CH2-NH、-CH2S-、-CH2CH2-、-CH=CH-、-COCH2-、 -CH(OH)CH2-、-CH2SO-である。 米国特許第4,897,445号は、ポリペプチド鎖にある非ペプチド結合(-CH2-NH)の固相合成の方法を提供しており、これには標準的手順により合成するポリペプチドと、アミノアルデヒドとアミノ酸をNaCNBH3存在下で反応させて合成する非ペプチド結合が関与する。
【0090】
上述の配列を含むペプチドは、例えばそれらのペプチドの安定性、バイオアベイラビリティ、および/またはアフィニティを強めるために、それらのアミノ末端および/またはカルボキシ末端にある追加的な化学基と合成できる。 例えば、該ペプチドのアミノ末端に、カルボベンゾキシル基、ダンジル基、またはt-ブチルオキシカルボニル基のような疎水性の基を加えることができる。 同様に、該ペプチドのアミノ末端に、アセチル基または9-フルオレニルメトキシ-カルボニル基を置くことができる。 加えて、前記の疎水性の基であるt-ブチルオキシカルボニル基またはアミド基を、該ペプチドのカルボキシ末端に加えることができる。
【0091】
さらに、本発明のペプチドは、それらの立体配置を変えるように合成することができる。 例えば、該ペプチドの1つもしくはそれ以上のアミノ酸残基のD-異性体を、通常のL-異性体の代わりに使用することができる。 またさらに、本発明のペプチドの少なくとも1つのアミノ酸残基を、周知の非天然アミノ酸残基の1つと置換することができる。 これらのような改変は、本発明のペプチドの安定性、バイオアベイラビリティ、および/または結合作用を増す働きをし得る。
【0092】
同様に、該ペプチドの合成の前または後に特定のアミノ酸を反応することにより、本発明のペプチドまたは変異形を化学修飾することができる。 そのような修飾の例は当該技術分野で周知であり、例えば、この参照によりここに組み込まれるR. Lundblad, Chemical Reagents for Protein Modification, 3rd ed. CRC Press, 2005に要約されている。 アミノ酸の化学修飾として、アシル化、アミジン化、リシンのピリドキシル化、還元的アルキル化、2, 4, 6-トリニトロベンゼンスルホン酸 (TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンゼン化、カルボキシル基のアミド修飾および過ギ酸によるスルフィドリル修飾、システインからシステイン酸への酸化、水銀誘導体の生成、他のチオール化合物との混合ジスルフィドの生成、マレイミドとの反応、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドとのカルボキシメチル化、およびアルカリpHでのシアン酸塩とのカルバモイル化による修飾を含むが、これらに限定されない。 これに関し、当業者は、Current Protocols In Protein Science, Eds. Coligan et al. (John Wiley & Sons NY 1995-2000) により、 タンパク質の化学修飾に関するより広範な方法論を参照できる。
【0093】
要約すると、例えばタンパク質のアルギニン残基の修飾は、フェニルグリオキサル、2,3-ブタンジオン、および1,2-シクロヘキサンジオンのような隣接ジカルボニル化合物の反応に基づく付加物の形成であることが多い。 別の例は、メチルグリコサルとアルギニン残基の反応である。 システインは、リシンおよびヒスチジンのような他の求核的部位の同時修飾なしに修飾することができる。 そのため、システインの修飾には多数の試薬を利用可能である。 具体的な試薬の情報は、Pierce Chemical Company、Sigma-Aldrich、および他のウェブサイトに提供されている。
【0094】
タンパク質におけるジスルフィド結合の選択的還元もよく行われる。 ジスルフィド結合は、バイオ医薬の熱処理の間に形成および酸化することができる。 WoodwardのReagent K を用いて、特定のグルタミン酸残基を修飾することができる。 N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)-N'-エチルカルボジイミドを用いて、リシン残基とグルタミン酸残基の間に分子内クロスリンクを形成することができる。 ジエチルピロカルボナートは、タンパク質内のヒスチジル残基を修飾する試薬である。 ヒスチジンも、4-ヒドロキシ-2-ノネナールを用いて修飾することができる。 リシン残基と他のαアミノ基の反応は、例えば、ペプチドと表面の結合またはタンパク質/ペプチドのクロスリンクに有用である。 リシンはポリ(エチレン)グリコールが付着する部位であり、タンパク質の糖化における修飾の主要部位である。 メチオニン残基は、例えばヨードアセトアミド、ブロモエチルアミン、クロルアミンTで修飾することができる。テトラニトロメタンおよびN-アセチルイミダゾルは、チロシル残基の修飾に用いることができる。 ジチロシンの形成によるクロスリンクは、過酸化水素/銅イオンによって達成できる。
【0095】
トリプトファンの修飾に関する最近の研究では、N-ブロモサクシンイミド 、2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロマイドまたは 3-ブロモ-3-メチル-2-(2-ニトロフェニルメルカプト)-3H-インドル (BPNS-スカトール)が使用された。
【0096】
PEGで治療用タンパク質およびペプチドを適切に修飾するには、しばしば、循環半減期の延長が伴い、ヒドロゲルの調製には、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびホルムアルデヒドによるタンパク質のクロスリンクが用いられる。 免疫療法のためのアレルゲンの化学修飾は、しばしば、シアン酸カリウムによるカルバミル化によって達成される。
【0097】
ペプチドが修飾されるもしくは非ペプチド結合が含まれるペプチドまたは変異形は、本発明の好ましい実施形態である。
【0098】
一般に、ペプチドおよび変異形(少なくともアミノ酸残基間にペプチドリンクを含むもの)は、Lu et al J. Org. Chem. 1981, 46, 3433 およびその参照が開示するように、固相ペプチド合成のFmoc-ポリアミド形態を使って合成できる。 一時的なN-アミノ基の保護は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基によって与えられる。 この非常に塩基が不安定な保護基の切断の繰り返しは、N, N-ジメチルホルムアミドに20%のピペリジンを加えたものを用いて行われる。 側鎖の機能性は、それらのブチルエーテル(セリン、トレオニン、およびチロシンの場合)、ブチルエステル(グルタミン酸およびアスパラギン酸の場合)、ブチルオキシカルボニル誘導体(リシンおよびヒスチジンの場合)、トリチル誘導体(システインの場合)、および4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル誘導体(アルギニンの場合)として保護することができる。 グルタミンまたはアスパラギンがC-末端残基である場合、その側鎖アミド機能性の保護のために、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル基を使用する。 固相支持は、3つのモノマー(ジメチルアクリルアミド(バックボーンモノマー)、ビスアクリロイルエチレンジアミン(クロスリンカー)、アクリロイルサルコシンメチルエステル(機能剤)からなるポリジメチル-アクリルアミド重合体に基づく。 ペプチドと樹脂を連結する切断可能な連結剤として用いるのは、酸に不安定な4-ヒドロキシメチル-フェノキシ酢酸誘導体である。 全てのアミノ酸誘導体はそれらの対称無水誘導体として添加されるが、例外として、アスパラギンおよびグルタミンは、逆N,N-ジシクロヘキシル-カルボジイミド/1ヒドロキシベンゾトリアゾルを媒介とした連結手順を用いて添加される。 全てのカプリングおよび脱保護反応は、ニンヒドリン、トリニトロベンゼンスルホン酸、またはイソチン試験手順を用いて監視される。 合成完了後、ペプチドは樹脂による支持から切断され、随伴的に、50%スカベンジャーミックスを含む95%トリフルオロ酢酸での処理によって側鎖保護基が除去される。 一般に使用されるスカベンジャーは、エタンジチオール、フェノール、アニソール、および水であり、どれを選択するかは、合成されるペプチドを構成するアミノ酸によって異なる。 加えて、固相および液相方法の組み合わせによるペプチド合成も可能である(例えば、Bruckdorfer T, Marder O, Albericio F. From production of peptides in milligram amounts for research to multi-ton quantities for drugs of the future Curr Pharm Biotechnol. 2004 Feb; 5(1):29-43 and the references as cited thereinを参照)。
【0099】
トリフルオロ酢酸を真空内蒸発によって除去した後、ジエチルエーテルで粉砕し、粗ペプチドを得る。 スカベンジャーがある場合は単純な抽出手順で除去し、水相の凍結乾燥によって、スカベンジャーのない粗ペプチドを得る。 ペプチド合成の試薬は、Calbiochem-Novabiochem (UK) Ltd(英国Nottingham市 NG7 2QJ)から市販されている。
【0100】
精製は、再結晶化、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、および(通常は)例えばアセトニトリル/水傾斜分離を使う逆相高速液体クロマトグラフィーのような手法の1つもしくは組み合わせによって行うことができる。
【0101】
ペプチドの分析は、薄層クロマトグラフィー、電気泳動法、特にキャピラリー電気泳動法、固相抽出(CSPE)、逆相高速液体クロマトグラフィー、酸加水分解後のアミノ酸分析、高速原子衝撃(FAB)質量分析、MALDIおよびESI-Q-TOF 質量分析を用いて行うことができる。
【0102】
本発明のさらに別の態様は、本発明のペプチドまたは変異形をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)を提供する。 該ポリヌクレオチドとしては、例えば、DNA、cDNA、PNA、CAN、RNA、mRNA、およびsiRNAまたはそれらの組み合わせ、単鎖および/または二本鎖、または天然または安定形のポリヌクレオチド、例えばホスホロチオアートバックボーンを含むポリヌクレオチドが可能であり、該ペプチドをコードするするポリヌクレオチドである限り、イントロンの含有は不可欠ではない。 当然、天然に生じるペプチド結合によって結合された天然に生じるアミノ酸残基を含むペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされる。 本発明のまたさらに別の態様は、本発明によるポリペプチドを発現する能力のある発現ベクターを提供する。
【0103】
ポリヌクレオチド、特にDNAを、例えば相補的なコヒーシブ末端を介してベクターに操作可能な方法で連結する様々な方法が開発された。 例えば、相補的ホモポリマートラクトをDNAセグメントに付加し、ベクターDNAに挿入することができる。 次に、該ベクターおよびDNAセグメントを、該相補的ホモポリマーテール間の水素結合によって結合し、組み換えDNA分子を形成することができる。
【0104】
1もしくはそれ以上の拘束部位を含む合成リンカーは、DNAセグメントとベクターを結合する別の方法を提供する。 様々な拘束エンドヌクレアーゼ部位を含む合成リンカーは、International Biotechnologies Inc(米国コネチカット州New Haven市)など多数のソースから市販されている。
【0105】
本発明のポリペプチドをコードするDNAの望ましい修飾方法は、Saiki et al (1988) Science 239, 487-491が開示するようなポリメラーゼ鎖反応を活用するものである。この方法を用いて、例えば、適した拘束部位でのエンジニアリングによって、DNAを適切なベクターに導入することができ、また、それを用いて、当該技術分野で周知の他の便利な方法によってDNAを修飾することができる。
【0106】
ウィルスベクターを使用する場合は、ポックスまたはアデノウィルスベクターが好ましい。
【0107】
次に、適切な宿主でDNA(レトロウィルスベクターの場合はRNA)を発現し、本発明のペプチドまたは変異形を含むポリペプチドを生成することができる。 したがって、本発明のペプチドまたは変異形をコードするDNAを、本明細書に含まれる手法を考慮して適切に修正した既知の手法にしたがって使用し、発現ベクターを作成することができ、それを用いて、本発明のポリペプチドの発現および生成のために適切な宿主細胞を形質変換することができる。 そのような手法として含まれるのは、1984年4月3日付でRutterらに発行された米国特許第4,440,859号、1985年7月23日付でWeismanに発行された米国特許第4,530,901号、1986年4月15日付でCrowlに発行された米国特許第4,582,800号、1987年6月30日付でMarkらに発行された米国特許第4,677,063号、1987年7月7日付でGoeddelに発行された米国特許第4,678,751号、1987年11月3日付でItakuraらに発行された米国特許第4,704,362 号、1987年12月1日付でMurrayに発行された米国特許第4,710,463号、1988年7月12日付でToole, Jr.らに発行された米国特許第4,757,006号、1988年8月23日付でGoeddelらに発行された米国特許第4,766,075号、および1989年3月7日付でStalkerに発行された米国特許第4,810,648号に開示されており、これら全てはこの参照によりここに組み込まれる。
【0108】
本発明の化合物を成すポリペプチドをコードするDNA(レトロウィルスベクターの場合はRNA)を、適切な宿主に導入するために、様々な他のDNA配列と結合することができる。 コンパニオンDNAは、その宿主の性質、その宿主へのDNA導入方法、およびエピソーム維持または組み込みが望ましいかどうかによって異なる。
【0109】
一般に、DNAはプラスミドのような発現ベクターに、正しい配向で、発現のために正しいリーディングフレームで挿入される。 必要であれば、望ましい宿主によって認識される適切な転写・翻訳調節制御ヌクレオチド配列にDNAをリンクすることができる(そのような制御機能は一般に発現ベクターに入っているが)。 次に、標準的手法によって該ベクターを宿主に導入する。 一般に、全ての宿主が該ベクターによって形質転換されることはない。 したがって、形質転換される宿主細胞のために選択する必要がある。 1つの選択手法は、形質転換される細胞に選択可能な性質(例えば抗体耐性)をコードするDNA配列を、必要な任意の制御要素と共に発現ベクターに組み込む工程を含む。
【0110】
あるいは、そのような選択可能な性質の遺伝子が別のベクターにある場合に、それを使って、望ましい宿主細胞を共同で形質転換することができる。
【0111】
次に、本発明の組み換えDNAによって形質転換された宿主細胞を、当業者に周知の適切な条件下で、本明細書に開示される教えを考慮して十分な時間をかけて培養することにより該ポリペプチドを発現させ、回収することができる。
【0112】
細菌(例えば大腸菌および枯草菌)、酵母(例えばサッカロマイセスセレヴィシエ)、線維状真菌(例えばアスペルギルス)、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞を含め、既知の多くの発現系がある。 好ましくは、該発現系は、ATCC Cell Biology Collectionから入手可能なもののような、結腸直腸癌細胞またはグリア芽腫細胞のような哺乳類細胞である。
【0113】
典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、Pharmacia(米国ニュージャージー州Piscataway市)から入手可能なpSVLである。 誘導可能な哺乳類発現ベクターの例はpMSGであり、これもPharmaciaから入手可能である。 有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、これらはStratagene Cloning Systems(米国カリフォルニア州La Jolla市(92037))から市販されている。 プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母選択可能マーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3を組み込む。 プラスミドpRS413〜416は酵母動原体プラスミド(Ycps)である。 その他のベクターおよび発現系は、当該技術分野で周知であり、様々な宿主細胞に使用されている。
【0114】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド ベクター コンストラクトによって形質転換される宿主細胞にも関する。 該宿主細胞としては、原核生物細胞か真核細胞のどちらかが可能である。 一部の状況においては、原核生物宿主細胞として細菌細胞が好ましい場合があり、通常、大腸菌株であり、例えば、大腸菌株DH5(Bethesda Research Laboratories Inc.、米国メリーランド州Bethesda市)およびRR1(American Type Culture Collection (ATCC) 、米国メリーランド州Rockville市)(番号:ATCC31343)である。 宿主細胞として好ましい真核細胞として含まれるのは、酵母、昆虫、哺乳類細胞であり、好ましくは、マウス、ラット、サル、またはヒトの線維芽および結腸細胞株のような脊椎動物細胞である。 酵母宿主細胞として含まれるのは、YPH499、YPH500、およびYPH501であり、これらはStratagene Cloning Systems(米国カリフォルニア州La Jolla市(92037))から市販されている。 好ましい哺乳動物宿主細胞として含まれるのは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ATCCから入手可能なCCL61)、NIHスイスマウス胎芽細胞NIH/3T3(ATCCから入手可能なCRL1658)、サル腎臓由来COS-1細胞(ATCCから入手可能なCRL1650)および同293(ヒトの胎芽腎臓細胞)である。 好ましい昆虫細胞は、バキュロウィルス発現ベクターを移入され得るSf9細胞である。
【0115】
本発明のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は周知の方法で達成され、その方法は、通常、使用するベクターのタイプに依存する。 原核生物宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1972, 69, 2110 およびSambrook et al (1989) Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NYを参照のこと。 酵母細胞の形質転換についての記述は、Sherman et al (1986) Methods In Yeast Genetics, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, NYにある。 Beggs(Nature 1978, 275,104-109)の方法も有用である。 脊椎動物細胞に関しては、そのような細胞の移入に有用な試薬、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAEデキストラン、またはリポソーム製剤は、Stratagene Cloning SystemsまたはLife Technologies Inc.(米国メリーランド州Gaithersburg市(20877))から入手可能である。 エレクトロポレーションも、細胞の形質転換および/または移入に有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞の形質転換に使われる当該技術分野で周知の技術である。
【0116】
適切に形質転換された細胞、すなわち本発明のDNAコンストラクトを含む細胞は、PCRのような周知の手法で特定することができる。 あるいは、上清タンパク質の存在を、抗体を用いて検出することもできる。
【0117】
例えば細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞といった本発明の特定の宿主細胞が本発明のペプチドの調製に有用であることは理解されるであろう。 しかし、特定の療法においては、他の宿主細胞も有用であり得る。 例えば、樹状細胞のような抗原提示細胞を用いて本発明のペプチドを発現することによって、それらが適切なMHC分子に負荷されるようにすることができる。 このように、本発明は、本発明による核酸または発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0118】
好ましい実施形態において、該宿主細胞は抗原提示細胞であり、具体的には、樹状細胞または抗原提示細胞である。 現在、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)を含む組み換え融合タンパク質が負荷されたAPCが、前立腺癌の治療のために研究されている(Sipuleucel-T) (Small EJ, Schellhammer PF, Higano CS, Redfern CH, Nemunaitis JJ, Valone FH, Verjee SS, Jones LA, Hershberg RM.; Placebo-controlled phase 3 trial of immunologic therapy with sipuleucel-T (APC8015) in patients with metastatic, asymptomatic hormone refractory prostate cancer; J Clin Oncol. 2006; 24(19):3089-3094; Rini BI, Weinberg V, Fong L, Conry S, Hershberg RM, Small EJ; Combination immunotherapy with prostatic acid phosphatase pulsed antigen-presenting cells (Provenge) plus bevacizumab in patients with serologic progression of prostate cancer after definitive local therapy; Cancer. 2006; 107(1):67-74)。
【0119】
本発明のさらなる態様は、ペプチドまたはその変異形を生成する方法を提供する。 この方法は、宿主細胞を培養する工程と、該宿主細胞またはその培地からペプチドを単離する工程とを含む。
【0120】
別の実施形態において、本発明のペプチド、核酸、または発現ベクターは医薬に使用される。 たとえば、該ペプチドまたはその変異形は、静脈(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹膜内(i.p.)注射、筋内(i.m.)注射として調製することができる。 ペプチド注射の好ましい投与経路はs.c.、i.d.、i.p.、i.m.、i.v. である。DNA注射の好ましい投与経路は、i.d.、i.m.、s.c.、i.p.、 i.v.である。たとえば、50 μg〜1.5 mg、好ましくは125 μg〜500 μgのペプチドまたはDNAを投与することができ、用量は各ペプチドまたはDNAに依存する。 この範囲の用量はこれまでの治験で用いられ、成功している(Brunsvig PF, Aamdal S, Gjertsen MK, Kvalheim G, Markowski-Grimsrud CJ, Sve I, Dyrhaug M, Trachsel S, Mueller M, Eriksen JA, Gaudernack G; Telomerase peptide vaccination: a phase I/II study in patients with non-small cell lung cancer; Cancer Immunol Immunother. 2006; 55(12): 1553-1564; M. Staehler, A. Stenzl, P. Y. Dietrich, T. Eisen, A. Haferkamp, J. Beck, A. Mayer, S. Walter, H. Singh, J. Frisch, C. G. Stief; An open label study to evaluate the safety and immunogenicity of the peptide based cancer vaccine IMA901, ASCO meeting 2007; Abstract No 3017)。
【0121】
本発明の重要な態様は、活性CTLを生成するin vitroの方法である。 該方法は、適切な抗原提示細胞の表面で発現された抗原負荷ヒトクラスIまたはIIのMHC分子を、抗原特異的にCTLを活性するまで十分な時間、in vitro においてCTLに接触させる工程を含む。 該抗原は、本発明のペプチドである。 好ましくは、十分な量の該抗原を、抗原提示細胞と共に用いる。
【0122】
抗原としてMHCクラスIIエピトープを用いる場合、CTLはCD4陽性ヘルパー細胞であり、好ましくはTH1型のCD4陽性ヘルパー細胞である。 該MHCクラスII分子は適切な細胞の表面に発現することが可能であり、好ましくは、該細胞は該MHCクラスII分子を天然発現しないものである(その場合、該細胞はそのような分子を発現するよう移入される)。 あるいは、該細胞がMHCクラスII分子を天然発現するものである場合、該細胞は、抗原処理または抗原処理経路において不完全である。このように、該MHCクラスII分子を発現する細胞を、CTLを活性する前に実質的に完全に、選択されたペプチド抗原でプライムすることが可能である。
【0123】
該抗原提示細胞(または刺激細胞)は、通常、その表面にMHCクラスII分子を有し、好ましくは、該MHCクラスII分子をその選択された抗原とともにそれ自身が負荷する能力は実質的にない。 該MHCクラスII分子に、in vitroで選択された抗原を容易に負荷することができる。
【0124】
好ましくは、該哺乳動物細胞はTAPペプチドトランスポーターのレベルまたは機能が欠如しているか、または低下している。 該TAPペプチドトランスポーターが欠如する適切な細胞は、T2、RMA-S、およびドロソフィラ細胞である。 TAPは抗原処理を伴うトランスポーターである。
【0125】
該不完全細胞株T2負荷ヒトペプチドは、American Type Culture Collection(ATCC) (12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852, USA)から、カタログ番号CRL1992として入手可能である。該ドロソフィラ細胞株シュナイダー株2は、ATCCからカタログ番号CRL19863として入手可能である。該マウスRMA細胞株についての記述は、Karre and Ljunggren (1985) J. Exp. Med. 162, 1745にある。
【0126】
好ましくは、該宿主細胞は移入の前はMHCクラスI分子を発現しない。 好ましくは、該刺激細胞は、B7.1、B7.2、ICAM-1、およびLFA 3のいずれかのようなT細胞副刺激にとり重要な分子を発現する。
【0127】
数多くのMHCクラスII分子および該副刺激分子の核酸配列は、GenBankおよびEMBLのデータベースに公開されており入手可能である。
【0128】
同様に、抗原として用いられるMHCクラスIエピトープの場合、該CTLはCD8陽性ヘルパー細胞である。 該MHCクラスI分子は適切な細胞の表面に発現することが可能であり、好ましくは、該細胞は該MHCクラスI分子を天然発現しないものである(その場合、該細胞はそのような分子を発現するよう移入される)。 あるいは、該細胞がMHCクラスII分子を天然発現するものである場合、該細胞は、抗原処理または抗原処理経路において不完全である。 このように、該MHCクラスI分子を発現する細胞を、該CTLを活性する前に実質的に完全に、選択されたペプチド抗原でプライムすることが可能である。
【0129】
そのようなエピトープの発現のために抗原提示細胞に移入する場合、好ましくは、該細胞は、配列番号1〜配列番号29またはその変異アミノ酸配列を含むペプチドを発現する能力のある発現ベクターを含む。
【0130】
数多くのその他の方法を用いて、in vitroでCTLを生成することができる。 例えば、Peoples et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1995, 92, 432-436 and Kawakami et al (1992) J. Immunol. 148, 638-643 use autologous tumour-infiltrating lymphocytes in the generation of CTL. Plebanski et al (1995) Eur. J. Immunol. 25, 1783-1787 に記述されている方法は、自己末梢血リンパ球(PLB)をCTLの調製に使っている。 Jochmus et al (1997) J. Gen. Virol. 78, 1689-1695 は、ペプチドまたはポリペプチドで樹状細胞をパルスすることによる、または組み換えウィルスによる感染による、自己CTLの生成について説明している。 Hill et al (1995) J. Exp. Med. 181, 2221-2228およびJerome et al (1993) J. Immunol. 151, 1654-1662 は、自己CTLの生成にB細胞を使っている。 加えて、ペプチドまたはポリペプチドでパルスしたマクロファージ、または組み換えウィルスで感染したマクロファージを、自己CTLの生成に用いることができる。S. Walter et al. (Walter S, Herrgen L, Schoor O, Jung G, Wernet D, Buhring HJ, Rammensee HG, Stevanovic S. Cutting edge: predetermined avidity of human CD8 T-cells expanded on calibrated MHC/anti-CD28-coated microspheres. J Immunol. 2003 Nov 15; 171 (10):4974-8) は、人工抗原提示細胞を用いて、T細胞のin vitroプライミングを説明しており、これは、選択したペプチドに対するT細胞を生成するにも適した方法である。
【0131】
同種異系細胞をCTLの生成に用いることもでき、方法例は、参照によりここに組み込まれるWO 97/26328号に詳細に記述されている。 例えば、ドロソフィラ細胞およびT2細胞に加え、その他の細胞を使って抗原を提示することができる(CHO細胞、バキュロウィルス感染昆虫細胞、細菌、酵母、ワクチニア感染標的細胞など)。 加えて、植物ウィルスを使うこともできる(参照として、例えば、Porta et al, Virology, 1994, 202, 449-955には、外来ペプチドの提示のための高収率系として、カウピーモザイクウィルスの開発が記述されている。)
【0132】
本発明のペプチドに対して向けられる活性化CTLは、療法において有用である。 したがって、本発明のさらなる態様は、本発明の前述の方法によって入手可能な活性化CTLを提供する。
【0133】
上述の方法により生成される活性化CTLは、配列番号1〜29のアミノ酸配列を含むポリペプチドを異常に発現する細胞を選択的に認識する。
【0134】
好ましくは、該CTLは、そのTCRを通してHLA/ペプチド複合体と相互作用することによって(例えば結合)、該細胞を認識する。 CTLは、患者の標的細胞を殺傷する方法において有用であり、該標的細胞は本発明のアミノ酸配列を含むポリペプチドを異常発現する。該患者には、効果的な数の該活性化CTLを投与する。 該患者に投与されるCTLとして、該患者に由来するものを上述のように活性化したものが可能である(すなわち、それらは自己CTLである)。 あるいは、該CTLは該患者からのものでなく、別の個人からのものである。 当然、好ましくはそのドナーは健常者である。 「健常者」とは、全般に良好な健康状態にあり、好ましくは有能な免疫システムを有し、より好ましくは、容易に試験して検出可能な病気を一切患っていない人である。
【0135】
本発明のCD4陽性CTLのin vivo標的細胞としては、その腫瘍の細胞(これは場合によってはMHCクラスIIを発現する)および/またはその腫瘍を取り巻く間質細胞(腫瘍細胞)(これも場合によってはMHCクラスIIを発現する)が可能である; (Dengjel, J, Nastke, MD, Gouttefangeas, C, Gitsioudis, G, Schoor, O, Altenberend, F, Muller, M, Kramer, B, Missiou, A, Sauter, M, Hennenlotter, J, Wernet, D, Stenzl, A, Rammensee, HG, Klingel, K, and Stevanovic, S; Unexpected Abundance of HLA Class II Presented Peptides in Primary Renal Cell Carcinomas, Clin Cancer Res., 2006, 12, 4163-4170))。
【0136】
本発明のCTLは、療法用組成物における有効成分として使うことができる。 したがって、本発明は、患者において標的細胞を殺傷する方法も提供するものであり、この標的細胞は本発明のアミノ酸配列を含むポリペプチドを異常発現する。 該方法は、上述のような効果的な数のCTLを該患者に投与する工程を含む。
【0137】
「異常発現する」と言う場合、正常なレベルの発現に比べ該ポリペプチドが過剰発現するという意味、またはその腫瘍が由来する組織内ではその遺伝子が静粛であるが、それが発現される腫瘍においてはそうでないという意味を含む。 「過剰発現する」と言う場合、該ポリペプチドが、正常組織内のその存在の少なくとも1.2倍、好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも5倍または10倍で存在することを意味する。
【0138】
CTLは、例えば上述のような、当該技術で周知の方法により入手することができる。
【0139】
CTLのこのいわゆる養子免疫伝達のためのプロトコルは、当該技術で周知であり、例えば、 (Rosenberg, SA, Lotze, MT, Muul, LM, Chang, AE, Avis, FP, Leitman, S, Linehan, WM, Robertson, CN, Lee, RE, Rubin, JT, et al., A progress report on the treatment of 157 patients with advanced cancer using lymphokine-activated killer cells and interleukin-2 or high-dose interleukin-2 alone, N. Engl. J. Med., 1987, 316, 889-897; Rosenberg, SA, Packard, BS, Aebersold, PM, Solomon, D, Topalian, SL, Toy, ST, Simon, P, Lotze, MT, Yang, JC, Seipp, CA, et al.; Use of tumor-infiltrating lymphocytes and interleukin-2 in the immunotherapy of patients with metastatic melanoma. A preliminary report, N.Engl.J Med, 1988, 319, 1676-1680; Dudley, ME, Wunderlich, JR, Robbins, PF, Yang, JC, Hwu, P, Schwartzentruber, DJ, Topalian, SL, Sherry, R, Restifo, NP, Hubicki, AM, Robinson, MR, Raffeld, M, Duray, P, Seipp, CA, Rogers-Freezer, L, Morton, KE, Mavroukakis, SA, White, DE, and Rosenberg, SA; Cancer regression and autoimmunity in patients after clonal repopulation with antitumor lymphocytes, Science, 2002, 298, 850-854; Yee, C, Thompson, JA, Byrd, D, Riddell, SR, Roche, P, Celis, E, and Greenberg, PD; Adoptive T cell therapy using antigen-specific CD8+ T cell clones for the treatment of patients with metastatic melanoma: in vivo persistence, migration, and antitumor effect of transferred T cells, Proc. Natl. Acad. Sci .U.S.A, 2002, 99, 16168-16173; Dudley, ME, Wunderlich, JR, Yang, JC, Sherry, RM, Topalian, SL, Restifo, NP, Royal, RE, Kammula, U, White, DE, Mavroukakis, SA, Rogers, LJ, Gracia, GJ, Jones, SA, Mangiameli, DP, Pelletier, MM, Gea-Banacloche, J, Robinson, MR, Berman, DM, Filie, AC, Abati, A, and Rosenberg, SA; Adoptive cell transfer therapy following non-myeloablative but lymphodepleting chemotherapy for the treatment of patients with refractory metastatic melanoma, J. Clin. Oncol., 2005, 23, 2346-2357); (次でレビューされている: (Gattinoni, L, Powell, DJ, Jr., Rosenberg, SA, and Restifo, NP; Adoptive immunotherapy for cancer: building on success, Nat. Rev. Immunol., 2006, 6, 383-393)) および (Morgan, RA, Dudley, ME, Wunderlich, JR, Hughes, MS, Yang, JC, Sherry, RM, Royal, RE, Topalian, SL, Kammula, US, Restifo, NP, Zheng, Z, Nahvi, A, de Vries, CR, Rogers-Freezer, LJ, Mavroukakis, SA, and Rosenberg, SA; Cancer Regression in Patients After Transfer of Genetically Engineered Lymphocytes, Science, 2006, 314 (5796): 126-129}に記述されている。
【0140】
本発明の任意の分子、すなわちそのペプチド、核酸、発現ベクター、細胞、活性化CTL、T細胞受容体またはそれをコードする核酸は、免疫応答を逃れる細胞によって特徴づけられる障害の治療に有用である。 したがって、本発明の任意の分子は、薬剤として、または薬剤の製造において、使用することができる。 該分子は、それ自身として、あるいは本発明の他の分子または既知の分子との組み合わせとして使用することができる。
【0141】
好ましくは、該薬剤はワクチンである。 該ワクチンは、患者に直接にその疾病器官または全身的に投与すること、または患者からの細胞またはヒト細胞株に生体外(ex vivo)で適用したものを該患者に投与すること、またはin vitroで用いて患者の免疫細胞からのサブポピュレーションを選択して再び該患者に投与することができる。 該核酸をin vitroで細胞に投与する場合、インターロイキン-2のような免疫刺激性サイトカインを共発現するよう、該細胞を移入することが有用である可能性がある。該ペプチドは実質的に純粋であること、または免疫刺激性アジュバント(下記参照)と組み合わせること、または免疫刺激性サイトカインと組み合わせて使うこと、または適切な送達系(たとえばリポソーム)と共に投与することができる。 該ペプチドは、キーホール リンペット ヘモシアニン(KLH)またはマンナンのような適切な担体と接合することもできる(WO 95/18145号およびLongenecker et al (1993) Ann. NY Acad. Sci. 690,276-291を参照)。該ペプチドをタグ付けすること、または融合タンパク質にすること、またはハイブリッド分子にすることもできる。 本発明のペプチドは、CD4またはCD8CTLを刺激するものと期待される。 しかし、反対のCDに対して陽性のT細胞が助けを提供する方が刺激の効率は高まる。 したがって、CD4 CTLを刺激するMHCクラスIIエピトープの場合、その融合パートナーまたはハイブリッド分子のセクションが、CD8陽性T細胞を刺激するエピトープを適切に提供する。 一方、CD8 CTLを刺激するMHCクラスIエピトープの場合は、その融合パートナーまたはハイブリッド分子のセクションが、CD4陽性T細胞を刺激するエピトープを適切に提供する。 CD4およびCD8刺激性エピトープは、当該技術分野で周知であり、本発明で特定するものを含む。
【0142】
本発明の一態様において、該ワクチンは、少なくとも1個のペプチド、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜25個、さらに好ましくは2〜15個、最も好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または13個の、本発明のペプチドまたは追加的ペプチドを含む。 該ペプチドは、1もしくはそれ以上の特異的TAAに由来することが可能であり、MHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合することが可能である。
【0143】
好ましくは、本発明のペプチドは、本発明のワクチンまたは薬剤に使用されるものであり、例えば酢酸塩または塩化物塩のような(ただし限定せず)塩として存在する。 実施例7は、ワクチンIMA-910の研究を提供するものであり、これは本発明のペプチドのいくつかを含み、塩の形状でのペプチドを使用するワクチンの調製およびそれらの粒径を説明している。
【0144】
該ポリヌクレオチドは、実質的に純粋である、または適切なベクターまたは送達系に含まれている場合がある。 該核酸としては、 DNA、cDNA、PNA、CAN、RNA またはそれらの組み合わせが可能である。 そのような核酸を設計および導入する方法は、当該技術分野で周知である。概要は、例えば、S. Pascolo: Vaccination with messenger RNA Methods Mol Med 2006, 127; 23-40; R. Stan, JD Wolchok and AD Cohen DNA vaccines against cancer Hematol Oncol Clin North Am 2006, 3; 613-636 or A Mahdavi and BJ Monk Recent advances in human papillomavirus vaccines Curr Oncol Rep 2006, 6, 465-472に提供されている。ポリヌクレオチドワクチンの調製は容易だが、免疫応答を誘導するこれらのベクターの作用形態は完全には理解されていない。 適切なベクターおよび送達系として含まれるのは、アデノウィルス、ワクシニアウィルス、レトロウィルス、ヘルペスウィルス、アデノ関連ウィルス、または複数のウィルスの要素を含むハイブリッドに基づく系のようなウィルスDNAおよび/またはRNAである。 非ウィルス送達系として含まれるのは、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーであり、それらはDNA送達技術分野で周知である。 「遺伝子銃」のような物理的送達も使用することができる。 該ペプチド、または該核酸によってエンコードされるペプチドは、融合タンパク質の場合があり、例えば、上述のように各々反対のCDRのためにT細胞を刺激するエピトープとの融合タンパク質である。
【0145】
本発明の薬剤は、1もしくはそれ以上のアジュバントを含むこともできる。 アジュバントは、抗原に対する免疫応答(たとえばCTLおよびヘルパーT(TH)細胞が媒介する免疫応答)を非特異的に強化または促進する物質であるので、本発明の薬剤にとって有用と考えられる。 限定はしないが、適切なアジュバントは、1018 ISS、アルミニウム塩、アンプリヴァックス(Amplivax)、AS15、BCG、CP-870、893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(Imiquimod)、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、JuvImmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、モンタナイド(Montanide)IMS 1312、モンタナイド(Montanide)ISA 206、モンタナイド(Montanide)ISA 50V、モンタナイド(Montanide)ISA-51、OK-432、 OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel(登録商標)ベクターシステム、PLG微粒子、レジキモド、SRL172、ウィロソーム(Virosome)および他のウィルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、βグルカン、Pam3Cys、Aquila のQS21スティミュロン(サポニン由来物質)、 マイコバクテリア抽出物、および合成細菌細胞壁模倣物、および他の(RibiのDetox、Quil、またはSuperfosのような) 専有アジュバントである。 フロイントまたはGM-CSFのようなアジュバントが好ましい。 樹状細胞に特異ないくつかの免疫学的アジュバント(たとえばMF59)およびそれらの製剤についてはすでに記述がある(Dupuis M, Murphy TJ, Higgins D, Ugozzoli M, van Nest G, Ott G, McDonald DM; Dendritic cells internalize vaccine adjuvant after intramuscular injection; Cell Immunol.1998; 186(1):18-27; Allison AC; The mode of action of immunological adjuvants; Dev Biol Stand. 1998; 92:3-11)。また、サイトカインを使うこともできる。 いくつかのサイトカインは、樹状細胞がTリンパ球に対し効果的な抗原提示細胞に成熟する過程を加速するとして(たとえばGM-CSF、IL-1、IL-4)(米国特許第5,849,589号。この参照によりその全文が組み込まれる)、また、免疫アジュバントとして作用するとして(たとえばIL-12)(Gabrilovich DI, Cunningham HT, Carbone DP; IL-12 and mutant P53 peptide-pulsed dendritic cells for the specific immunotherapy of cancer; J Immunother Emphasis Tumor Immunol. 1996 (6):414-418)、リンパ球組織(たとえばTNF-α)への樹状細胞の移動に与える影響と直接リンクされているものがある。
CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドも、ワクチン設定におけるアジュバントの効果を高めるという報告がある。 理論に束縛されず、CpGオリゴヌクレオチドはトール様受容体(TLR)(主にTLR9)を介して生来の(非適応の)免疫系を活性化する作用を持つ。 CpGが起動するTLR9活性は、予防ワクチンおよび治療ワクチンの両方で、ペプチドまたはタンパク質抗原、生および殺傷されたウィルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、および多糖共役体を含む様々な抗原に対する体液性および細胞性の抗原特異的応答を高める。 より重要なのは、たとえCD4T細胞の助けがなくても、それが樹状細胞の成熟と分化を増進し、TH1 細胞の活性および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成を増進することである。 TLR9の刺激によって誘導されるTH1 バイアスは、TH2バイアスを通常促進するミョウバンまたはフロイント不完全アジュバント(IFA)のようなワクチンアジュバントが存在していても維持される。 CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと共処方または併投与するか、もしくは微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションまたは類似の処方によって、さらに高いアジュバント活性を示すものであり、比較的弱い抗原の場合に強い応答を誘導するには特に必要である。 それらは、免疫応答も加速するものであり、いくつかの実験では、CpGのない全用量ワクチンに匹敵する抗体応答が、約二桁低減した抗原用量で得られた(Arthur M. Krieg, Therapeutic potential of Toll-like receptor 9 activation, Nature Reviews, Drug Discovery, 5, JUNE 2006, 471-484)。 米国特許第6,406,705号B1は、CpGオリゴヌクレオチドと非核酸アジュバントと抗原との組み合わせによって抗原特異的免疫応答を誘導することについて記述している。 市販のCpG TLR9拮抗薬であるMologen(ドイツBerlin市)のdSLIM(double Stem Loop Immunomodulator)は、本発明の医薬組成物の好ましい構成要素である。 RNA結合TLR7、TLR8、および/またはTLR9のようなその他のTLR結合分子を使用することもできる。
【0146】
限定はしないが、有用なアジュバントのその他の例として含まれるのは、AmpliGenのような化学修飾CpGs(たとえばCpR、Idera)、ポリ(I:C)、非CpG細菌DNAまたはRNA、および免疫活性小分子、およびシクロホスファミド、スニチニブ、ビバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4およびSC58175のような抗体であり、これらは治療薬および/またはアジュバントとして作用することができる。 本発明のコンテクストにおいて有用なアジュバントおよび添加剤の量および濃度は、当業者であれば特別な実験をせずに容易に決定できる。
【0147】
好ましいアジュバントはdSLIM、BCG、OK432、ALDARA、PeviTer、および JuvImmuneである。
【0148】
好ましくは、本発明の薬剤は癌に対して有効である。 該癌は、非転移性または転移性の、口腔および咽頭の癌、消化管癌、結腸、直腸、および肛門の癌、気道癌、乳癌、子宮、膣、および外陰の癌、子宮体および卵巣の癌、男性生殖管癌、尿道癌、骨および軟組織の癌、カポジ肉腫、皮膚メラノーマ、眼メラノーマ、非メラノーマ眼癌、脳および中枢神経系の癌、甲状腺および他の内分泌腺の癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および骨髄腫である。 最も好ましくは、本発明の方法によって治療される腫瘍性障害は、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、腎臓癌、GISTまたはグリア芽腫である。
【0149】
本発明のペプチドはグリア芽腫、結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、または胃癌から単離されるので、本発明の薬剤は、治療対象の癌がグリア芽腫、結腸直腸癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、または胃癌である場合に特に有用であろう。
【0150】
本発明のペプチドは癌治療に有用なだけでなく、診断にも有用である。 該ペプチドはグリア芽腫から生成されたものであり、これらのペプチドは正常組織には存在しないことが特定されているので、これらのペプチドを用いて癌の存在を診断することができる。
【0151】
病理学者は、組織生検での本発明のペプチドの存在を癌の診断の助けとすることができる。 病理学者は、抗体を使って行う本発明の特定のペプチドの検出、質量分析、または当該技術分野で周知の他の方法によって、該組織が悪性か、炎症または総じて罹患しているかを知ることができる。 本発明のペプチドのグループの存在によって、罹患組織の分類または下位分類が可能になる。
【0152】
罹患組織標本にある本発明のペプチドの検出は、作用のメカニズムにTリンパ球が関わることがわかっている場合または予期される場合は特に、その免疫系が関わる療法の恩恵についての決断を可能にする。 MHC発現の喪失はよく理解されているメカニズムであり、これによって悪性細胞は免疫監視を逃れる。 したがって、本発明のペプチドの存在は、被分析細胞によってこのメカニズムが利用されていないことを示す。
【0153】
本発明のペプチドは、本発明のペプチドに対するリンパ球応答の分析に用いることができ、たとえば、本発明のペプチド、またはMHC分子との複合体である本発明のペプチドに対するT細胞応答または抗体応答を分析することができる。 これらのリンパ球応答を、さらなる治療工程を決定するための予後マーカーとして用いることができる。 これらの応答は、たとえばタンパク質、核酸、自己物質、リンパ球免疫伝達のワクチン接種など異なる手段によってリンパ球応答を誘導しようとする免疫療法アプローチにおいて、代理マーカーとして用いることもできる。 遺伝子療法という設定では、副作用の評価において、本発明のペプチドに対するリンパ球応答を考慮することができる。 リンパ球応答の監視は、移植療法後のフォローアップ検査でも、たとえば移植片対宿主および宿主対移植片の病気の検出などに有用である可能性がある。
【0154】
本発明のペプチドは、MHC/ペプチド複合体に対し特異的な抗体の生成および発育に用いることができる。 これらを療法に用いて、罹患組織を標的として毒素または放射性物質を当てることができる。 これらの抗体の別の使い方として、PETのような画像法のために、罹患組織に対する放射性核種を標的としてこれらの抗体を当てることができる。 この使用方法は、小さな転移の検出または罹患組織のサイズおよび正確な位置を決定するための助けとなり得る。 加えて、該ペプチドは、病理学者が行う生検標本に基づく癌の診断の検証に用いることができる。
【0155】
本発明のさらに別の態様において、本発明はキットに関するものであり、このキットは、(a)上述の医薬組成物を溶液形状または凍結乾燥形状で包含する容器と、(b)選択的に、該凍結乾燥製剤用の希釈液または再構成液を包含する第2の容器と、(c)選択的に、(i)該溶液の使用または(ii)該凍結乾燥製剤の再構成および/または使用に関する説明書を含む。 該キットは、1もしくはそれ以上の(iii)緩衝剤、(iv) 希釈剤、 (v) フィルター、 (vi) 針、または (v) シリンジをさらに含む。 該容器は、好ましくは瓶、バイアル瓶、シリンジ、または試験管であり、多用途容器でよい。 該医薬組成物は、好ましくは乾燥凍結される。
【0156】
本発明のキットは、好ましくは、本発明の乾燥凍結製剤およびその再構成および/または使用に関する説明書を、適切な容器内に含む。 適切な容器として含まれるのは、たとえば、瓶、バイアル瓶(たとえばデュアルチャンババイアル)、シリンジ(デュアルチャンパシリンジなど)、および試験管である。 該容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料から形成することができる。 好ましくは、該キットおよび/または容器は、該容器上にある、あるいは該容器に伴う、再構成および/または使用の方法を示す説明書を包含する。 たとえば、そのラベルは、該乾燥凍結製剤を再構成して上記のペプチド濃度にするという説明を示すことができる。 該ラベルは、さらに、該製剤が皮下投与に有用であるもしくは皮下投与のためのものであるという説明を示すことができる。
【0157】
該製剤の容器は、繰り返し投与(たとえば2〜6回の投与)に使うことができる多用途バイアル瓶でもよい。 該キットは、さらに、適切な希釈剤(たとえば重曹溶液)を含む第2の容器を含むことができる。
【0158】
該希釈剤と該凍結乾燥製剤を混合して作られる再構成された製剤の最終ペプチド濃度は、好ましくは少なくとも0.15 mg/mL/ペプチド (=75μg) であり、好ましくは3 mg/mL/ペプチド (=1500μg)以下である。 該キットは、さらに、商業的観点およびユーザーの観点から見て望ましいその他の材料(その他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、およびパッケージに挿入される使用説明書を含む)を含むことができる。
【0159】
本発明のキットは、他の構成要素(たとえば他の化合物またはこれら他の化合物の医薬組成物)と共に、もしくはそれらなしに、本発明の医薬組成物の製剤を包含する単一の容器を含むこと、または各構成要素によって別の容器を含むことができる。
【0160】
好ましくは、本発明のキットは、第2の化合物(アジュバント(たとえばGM-CSF)、化学療法薬剤、天然生成物、ホルモンまたは拮抗薬、抗血管形成剤または血管形成阻害剤、アポトーシス誘導剤またはキレート剤など)またはその医薬組成物の併投与との組み合わせとして使用するためにパッケージされた本発明の処方を含む。 該キットの構成要素は、予め複合体として作られたもの、もしくは、患者に投与するまで各構成要素が異なる別々の容器に入ったものが可能である。 該キットの構成要素は、1もしくはそれ以上の液体溶液として提供することができ、好ましくは水溶液であり、より好ましくは滅菌水溶液である。 該キットの構成要素は、固体として提供することも可能であり、好ましくは別の異なる容器にて提供される適切な溶剤をそれに加えて液体に変換することができる。
【0161】
療法キットの容器としては、バイアル、試験管、フラスコ、瓶、シリンジ、もしくは固体または液体を密封する他の任意の手段が可能である。 通常、複数の構成要素がある場合、別々に投薬できるように、該キットは第2のバイアルまたはその他の容器を包含する。 該キットは、医薬上許容される液体用の別の容器も包含することができる。 好ましくは、治療キットは、該キットの構成要素である本発明の薬剤を投与することを可能にする器具(たとえば1もしくはそれ以上の針、シリンジ、点眼器、ピペットなど)を包含する。
【0162】
本発明の医薬組成物は、経口(経腸)、経鼻腔、経眼、皮下、皮内、筋内、静脈内、または経皮のような任意の許容される経路によって該ペプチドを投与するのに適したものである。 好ましくは該投与は皮下投与であり、最も好ましくは皮内投与である。投与は注入ポンプによって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1a】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、結腸癌標本CCA707からのPCN-002を示す。
【図1b】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB1006からのTOP-002を示す。
【図1c】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB1006からのPTP-001を示す。
【図1d】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、腎細胞癌標本RCC190からのGAL-001を示す。
【図1e】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB1002からのCHI-001を示す。
【図1f】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB1002からのJAK-001を示す。
【図1g】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、非小細胞肺癌NSCLC-プール2 からのAKR-001を示す。
【図1h】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスI拘束ペプチドとして提示される、膵臓癌標本PC330からのFNI-001を示す。
【図2a】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスII拘束ペプチドとして提示される、胃癌GC-プール2からの CEA-009を示す。
【図2b】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスII拘束ペプチドとして提示される、胃癌GC-プール1からのTGFBI-006を示す。
【図2c】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスII拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB6002からのTGFBI-007を示す。
【図2d】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスII拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB1004からのTGFBI-008を示す。
【図2e】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスII拘束ペプチドとして提示される、非小細胞肺癌NSCLC-プール1からのTGFBI-009を示す。
【図2f】腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を特定するESI液体クロマトグラフィー質量分析であり、MHCクラスII拘束ペプチドとして提示される、グリア芽腫標本GB6002からのTGFBI-010を示す。
【図3a】グリア芽腫関連ペプチドPTP-001(図3a)をコードする2つの遺伝子の発現プロファイルを示す。 該遺伝子の発現は、正常組織では欠如しているか非常に低いが、グリア芽腫標本では250倍以上に達する(GB1006T〜GB1011T; NCH359T〜NCH361T)。
【図3b】グリア芽腫関連ペプチドCHI-001(図3b)をコードする2つの遺伝子の発現プロファイルを示す。 該遺伝子の発現は、正常組織では欠如しているか非常に低いが、グリア芽腫標本では250倍以上に達する(GB1006T〜GB1011T; NCH359T〜NCH361T)。
【図4】EpI ELISA測定した(Sylvester-Hvid, C, Kristensen, N, Blicher, T, Ferre, H, Lauemoller, SL, Wolf, XA, Lamberth, K, Nissen, MH, Pedersen, LO, and Buus, S; 2002, Establishment of a quantitative ELISA capable of determining peptide - MHC class I interaction, Tissue Antigens, 59, 251-258の記載に従った)。HLA-A*0201 に対する、選択されたペプチドの結合アフィニティを示す。この分析は、MHCクラスI結合ペプチドとして知られるペプチドのみに限定した。 HLA-DR結合ペプチドのアフィニティは、このアッセイでは測定できない。
【図5】末梢血からのODC-001およびNOX-001特異的CD8+リンパ球の、ミクロスフェア駆動型増殖のテトラマー解析を示す。健康なHLA-A*0201+ドナーHD100のウェル当たり1 x 106のCD8+強化PBMCを、抗CD28+高密度腫瘍抗原A*0201/ODC-001(上位パネル)または抗CD28+高密度腫瘍抗原A*0201/NOX-001(下位パネル)と連結したミクロスフェアで毎週刺激した。in vitroで3回刺激後、全ての細胞を抗体CD8 FITC+テトラマーA*0201/NOX-001 PEおよびA*0201/ODC-001 APCで染色した。 細胞はリンパ球集団またはCD8+リンパ球(右パネル)でゲートされており、数はCD8+リンパ球内のテトラマー+のパーセンテージを表す。
【図6】5回の刺激サイクル後にIFNγ ELISPOTで検出したTGFBI-004のin vitro免疫原性を示す。細胞はプライムし、TGFBI-004で繰り返し再刺激してから、関係TGFBI-004(ウェル1、2、3、4)および無関係(負対照)ペプチドでそれぞれ培養した。 IFNγ ELISPOT後の解析は、ELISPOT Reader (CTL、米国Cleveland市)で行った。 PHA-イオノマイシンを正対照として使った。 数字は陽性スポット数を示す。
【図7】5回の刺激サイクル後にICSで検出したTGFBI-004のin vitro免疫原性を示す。細胞は、TGFBI-004を負荷した自己DCでプライムし、自己PBMC+TGFBI-004で繰り返し再刺激した。読み取りのために、細胞は、関係TGFBI-004(ウェル1、2、3、4)および無関係(負対照)ペプチドでそれぞれ培養した。 細胞内IFNγ染色に加えて、細胞はCD4-FITCおよびCD8-PerCP抗体でも染色した。 解析は4色FACSCaliburサイトメーター(BD Biosciences, Germany)で行った。
【図8】NOX-001ペプチドによるin vitroでの再刺激後のT細胞株によるIFNγ生成のELISPOT解析を示す。A. ドナーHBC-154 (ソートしたCD8+ NOX-001 テトラマー+)からのT細胞株 7+ および B. ドナーHBC-154(ソートしたCD8+ NOX-001 テトラマー)からのT細胞株 7- である。ソートしたCD8+ NOX-001 テトラマー+ (A.)およびCD8+ NOX-001 テトラマー- (B.) 細胞を、無関係(MLA-001)(上位ウェル)および関係(NOX-001)(下位ウェル)ペプチド(10μg/ml)で再刺激後、 IFNγ ELISPOTで解析した。 数字は陽性スポット数を示す。
【図9】本発明に含まれるペプチドの、HLA-A*0201に対するアフィニティを示す。P116 HLAクラスIペプチドおよびウィルスマーカーペプチドHBV-001の解離定数(KD)は、ELISAに基づくアッセイにより測定した(実施例を参照)。
【発明を実施するための形態】
【0164】
本発明の目的上、本明細書に含まれる全ての参考文献は、参照によりその全文がここに組み込まれる。
【実施例】
【0165】
1. 合成および構造
ペプチドは、Fmoc化学を用いる標準的な確立された固相合成によって合成した。 準備したHPLCで精製した後、フィジコロジカルに適合性のある対イオンを組み入れるためにイオン交換を行った(酢酸塩または塩化物)。 凍結乾燥後、白色からオフホワイト色の固体を最終的に得た。 製造手順上の技術的な理由から、IMA-CCN-001だけは塩化物塩として供給し、残りの全てのTUMAPは酢酸塩として投与した。
【0166】
2. 細胞表面に提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)の特定
組織標本
患者の腫瘍および健常組織は、数ヶ所の異なる臨床部位(下表を参照)から提供された。 全患者の書面によるインフォームドコンセントは、施術前に与えられた。 組織は手術後直ちに液体窒素で衝撃凍結し、TUMAPの単離まで-80℃で保管した。
【0167】
組織サンプルからのHLAペプチドの単離
HLA-A*02-特異的抗体BB7.2またはHLA-A、 -B、 -C-特異的抗体W6/32、CNBr-活性セファローズ、酸処理、および限外ろ過を用いて若干修正したプロトコルにしたがい、固体組織からの免疫沈降によって衝撃凍結組織サンプルからのHLAペプチドプールを入手した(Falk,K., Rotzschke,O., Stevanovic,S., Jung,G. & Rammensee,H.G. Allele-specific motifs revealed by sequencing of self-peptides eluted from MHC molecules. Nature 1991, 351, 290-296; Seeger,F.H. et al. The HLA-A*6601 peptide motif: prediction by pocket structure and verification by peptide analysis. Immunogenetics 1999, 49, 571-576)。
【0168】
ESI液体クロマトグラフィー質量分析(ESI-LCMS)によるTUMAPの検出
入手したHLAペプチドプールは、それらの疎水性にしたがって逆相クロマトグラフィー(CapLC, Waters)によって分離し、溶出するペプチドをハイブリッド4重直交加速型時間飛行タンデム質量分析(Q-TOF Ultima, Waters)で分析した。 濃縮および脱塩のためにペプチドプールをC18プレカラムに投入した。 投入後、該プレカラムをラインに配置し、5 μm C18逆相物質(Dionex)を充填した溶融シリカマイクロキャピラリーカラム(75 μm i.d. x 250 mm)で分離した。 溶剤Aは、4 mMの酢酸アンモニウム/水混合溶液である。 溶剤Bは、80%アセトニトリル/水混合溶液に2mMの酢酸アンモニウムを加えたものである。 どちらの溶剤もギ酸でpH 3.0 に調製した。 5 μl/分の流量を適用し、90分間に15%〜60%のバイナリーグラジエントを実施し、スプリットシステムにより約200 nl/分に低下した。 金で被覆したガラスキャピラリー(PicoTip, New Objective)を使用し、マイクロESIソースに導入した。 TOFアナライザーの積分時間は1.9 s であり、インタースキャン遅延は0.1 sであった。その後、衝突誘起減衰(CID)質量分析(ESI-LCMS/MS)により、その配列を明らかにした。 特定されたTUMAP配列の確認は、生成された天然TUMAPフラグメンテーションパターンを合成の同一配列を持つ基準ペプチドと比較することにより行った。
【0169】
図1および図2は、MHCクラスI関連TUMAP(図1a〜1h)およびMHCクラスII関連TUMAP(図2a〜2f)の腫瘍組織からの模範的スペクトルを示す。
【0170】
3. 本発明のペプチドをコードする遺伝子の発現プロファイル
MHC分子によって腫瘍細胞表面に提示されるものとして特定されたペプチドは、それらの由来組織に対し高特異的な認識をもってT細胞を誘導する可能性が高い。 そのようなペプチドでのワクチン接種によって誘導される自己免疫のリスクを最低限にするために、本発明者らは、正常組織の大半のものに比べて腫瘍細胞上で過剰発現するタンパク質由来のペプチドに焦点を当てた。
【0171】
理想的なペプチドは、他のどの組織にもなくその腫瘍に特異のタンパク質に由来するものである。 理想的な発現をする遺伝子に由来するペプチドを特定するために、特定されたペプチドを、それぞれ、それらのペプチドが由来するタンパク質および遺伝子に割り当て、該遺伝子の発現プロファイルを生成した。
【0172】
RNAのソースおよび調製
各患者からの書面によるインフォームドコンセントを入手後、外科切除した組織標本が提供された(表2を参照)。
【0173】
腫瘍組織標本は、術後直ちに液体窒素にてスナップ凍結し、後に、液体窒素下ですり鉢とすりこぎで均質化した。 トータルRNAは、TRIzol (Invitrogen、ドイツKarlsruhe市)を用いて調製し、RNeasy (QIAGEN、ドイツ Hilden市)で清浄にした。どちらの方法も製造業者のプロトコルに従って施行した。
【0174】
健常者組織からのトータルRNAは、市販のものを入手した(Ambion、英国Huntingdon市; Clontech、ドイツHeidelberg市; Stratagene、オランダAmsterdam市、 ; BioChain、米国カリフォルニア州Hayward市)。 何人かの(2人から123人)RNAを混合し、各人からのRNAが等しく加重されるようにした。 白血球は、4人の健常ボランティアの血液標本から単離した。
【0175】
全てのRNA標本の質および量は、Agilent 2100 Bioanalyzer (Agilent、ドイツWaldbronn市)で、RNA 6000 Pico LabChip Kit (Agilent)を用いて評価した。
【0176】
マイクロアレイ実験
腫瘍および正常組織のRNA標本全ての遺伝子発現分析は、Affymetrix Human Genome (HG) U133AまたはHG-U133 Plus 2.0 オリゴヌクレオチドマイクロアレイ(Affymetrix、米国カリフォルニア州Santa Clara市)によって行われた。 全ての工程は、Affymetrixのマニュアル(http://www.affymetrix.com/support/technical/manual/expression_manual.affx)にしたがって実行された。 要約すると、二本鎖cDNAは、SuperScript RTII (Invitrogen) およびオリゴ-dT-T7プライマー(MWG Biotech、ドイツEbersberg市) を用いてマニュアル通りに、5〜8μg のトータルRNAから合成した。 in vitroでの転写は、U133Aに関してはBioArray High Yield RNA Transcript Labelling Kit (ENZO Diagnostics, Inc.、米国ニューヨーク州Farmingdale市) を用い、U133 Plus 2.0に関してはGeneChip IVT Labelling Kit (Affymetrix) を用いて行い、その後に、cRNAフラグメンテーション、ハイブリダイゼーション、および染色を、ストレプトアビジン-ファイコエリスリンとビオチン化抗ストレプトアビジン抗体(Molecular Probes,、オランダLeiden市)で行った。 画像のスキャンはAgilent 2500A GeneArray Scanner (U133A)またはAffymetrix Gene-Chip Scanner 3000 (U133 Plus 2.0)で行い、データの解析はGCOSソフトウェア(Affymetrix)を使い、全てのパラメータを初期設定として行った。 正規化のために、Affymetrixが提供した100個のハウスキーピング遺伝子を使った(http://www.affymetrix.com/support/technical/mask_files.affx)。 相対的発現値は、該ソフトウェアによって与えられたシグナルログ比を元に計算し、該正常標本は任意に1.0に設定した。
【0177】
本発明の全てのペプチドの発現プロファイルは、腫瘍組織における各遺伝子の高発現を示し、正常組織におけるエクステンドは発現されないか、非常に低かった。
【0178】
図3は、グリア芽腫に特異的なペプチドPTP-001 (遺伝子: PTPRZ1、図3a)およびCHI-001 (遺伝子: CH3L2、図 3b)を示す。
【0179】
4. 追加的腫瘍標本におけるESI液体クロマトグラフィー質量分析(ESI-LCMS)による、特定されたTUMAPの再検出
実施例1の方法で特定されたTUMAPを、質量分析によって、結腸直腸腫瘍標本から体系的に検出した。
【0180】
入手したHLAペプチドプールは、それらの疎水性にしたがって逆相クロマトグラフィー(CapLC, Waters)によって分離し、溶出するペプチドをハイブリッド4重直交加速型時間飛行タンデム質量分析(Q-TOF Ultima, Waters)で分析した。 濃縮および脱塩のためにペプチドプールをC18プレカラムに投入した。 投入後、該プレカラムをラインに配置し、5 μm C18逆相物質(Dionex)を充填した溶融シリカマイクロキャピラリーカラム(75 μm i.d. x 250 mm)で分離した。 溶剤Aは、4 mMの酢酸アンモニウム/水混合溶液である。 溶剤Bは、80%アセトニトリル/水混合溶液に2mMの酢酸アンモニウムを加えたものである。 どちらの溶剤もギ酸でpH 3.0 に調製した。 5 μl/分の流量を適用し、90分間に15%〜60%のバイナリーグラジエントを実施し、スプリットシステムにより約200 nl/分に低下した。 金で被覆したガラスキャピラリー(PicoTip, New Objective)を使用し、マイクロESIソースに導入した。 TOFアナライザーの積分時間は1.9 s であり、インタースキャン遅延は0.1 sであった。定義されたペプチドを検出するために、該クロマトグラフィーシステムにおいて、該ペプチドの既知の分子量および保持時間に基づき、このタイプのESI-LCMS実験で高感度スクリーニングを行った。 したがって、以前に特定された(単一電荷および/または二重電荷)ペプチドのm/z値を含むリストを適用し、前駆体を選択した。 その後、衝突誘起減衰(CID)質量分析(ESI-LCMS/MS)により、その配列を明らかにした。 生成された天然TUMAPフラグメンテーションパターンを、合成の同一配列を持つ基準ペプチドと比較し、そのTUMAP配列を確認した。 HLAペプチド精製収率および分析システムの再現性の評価(保持時間安定性を含む)は、内部標準として、豊富な内因性のHLA-A*02ペプチド(DDX5由来のYLLPAIVHI)を用いて実行した。 したがって、HLAペプチドの単離を成功させ、分析システムの正しい性能を確保するために、これらの実験における、以前に特定されたTUMAPを検出するためのCRCサンプルの包含基準は、LCMS/MS実験において、内部二重電荷標準シグナル(YLLPAIVHI)1スキャン当たり650カウントの最低強度に設定した。
【0181】
表2は、異なるステージの結腸および直腸癌、および結腸または直腸癌の原発腫瘍部位由来の転移の標本分析結果を示す。 全てのHLA-A*02 TUMAPが、大半の標本に検出された。 一般に、HLA-DR TUMAPの再検出頻度の方が低い。 HLAクラスIIペプチドの場合、各コア配列にいくつかの長さ変異形が存在する場合があるので、これは当然あり得ることである。 すでに特定されたTUMAPであるODC-001(M Diehl, PhD thesis 1998, University of Tuebingen)は、陽性対照として使われた多数の結腸腫瘍に提示されるものとして知られている。
【0182】
表2:CRC標本内のTUMAP再検出
【0183】
【表2】

【0184】
5. HLAクラスI拘束ペプチドとHLA-A*0201の結合
このHLA結合アッセイは、ELISA EpI Kit (Soeren Buus、Institute of Medical Microbiology and Immunology at the University of Copenhagen(デンマーク)から入手したもの) を使い、Sylvester-Hvid (Sylvester-Hvid, C, Kristensen, N, Blicher, T, Ferre, H, Lauemoller, SL, Wolf, XA, Lamberth, K, Nissen, MH, Pedersen, LO, and Buus, S; Establishment of a quantitative ELISA capable of determining peptide - MHC class I interaction, Tissue Antigens, 2002, 59, 251-258) および ELISA EpI Kit キット製造業者のマニュアルにしたがって行われた。
【0185】
ペプチド溶液の調製
ペプチドは、10 mg/mlの濃度でDMSO + 0.5% TFA (Merck、ドイツDarmstadt市) に溶解した。 このアッセイに使われた最高のペプチド希釈標準溶液は200 μMであり、したがって、その原液をペプチド-希釈緩衝液(0.1% ルトロール-F68および10 mg/l フェノール赤)にて1:50に希釈し、最終量である100 μlを得た。 ペプチド-希釈緩衝液で、連続5倍希釈を行った。
【0186】
HLA-A*0201/ペプチド複合体のリフォールディング
マニュアルにしたがい、2倍濃縮HLA-A*0201溶液は、3x pH緩衝液(pH6.6) 、ルトロール-F68、ヒトβ2m、組み換えHLA-A*0201 (全て ELISA EpI Kitに含まれている) をPBSと混合して調整した。
【0187】
このリフォールディングプロセスのために、15μlのペプチド連続希釈液と15μl の該2倍濃縮MHC混合液を96ウェルプレート (Nunc、米国ニューヨーク州Rochester市) で混合し、18℃で48時間培養した。
【0188】
ELISAによる複合体の定量化
Maxisorp プレート (Nunc、ニューヨーク州Rochester市) を、コーティングバッファー(pH 9.6)にて5 μg/mlのw6/32 抗体でコーティングし、4℃で24時間培養し、PBSにて4℃で一晩、5%スキムミルク粉末(Merck、ドイツDarmstadt市)で遮断した。
【0189】
MHC基準複合体 (ELISA EpI Kit) をPBS(SMP/PBS) にて2%のスキムミルク粉末で希釈し、10 nMの濃度にした。 連続3.16倍希釈液を調製し、被覆および遮断されたMaxisorpプレートに移した。 このペプチド-MHC複合体を2% SMP/PBSで10倍希釈し、前記と同一のMaxisorpプレートに移し、4℃で2時間培養した。ウサギ抗hβ2m抗体(ELISA EpI Kit)を、2% SMP/PBSに1:2500希釈にて追加し、4℃で1時間培養した。 デベロップメントバッファー(テトラメチルベンジディン、TMB; ELISA EpI Kit)を追加し、軽保護下でプレートを常温で30分間培養した。 0.2Mの硫酸(VWR、ドイツDarmstadt市)を加えてその反応を止めた。 プレートの読み取りはOD450nmで、VERSAmax ELISA-Reader (Molecular Devices, 米国カリフォルニア州Sunnyvale市)を用いて行った。
【0190】
ExcelおよびPrism(登録商標)、Graphpad 3.0でデータの解釈をした。
【0191】
結果を図4に示す。KD値が低いほど、HLA-A*0201に対するアフィニティが高い。結合アフィニティはおよそ四桁の数値範囲に渡るが、ほとんどのペプチドは一桁の数値範囲の類似した結合アフィニティを有する(C20-001, ODC-001, PCN-001, TOP-001)。 MUC-001のアフィニティは含まれているリガンドの大半に比べ約一桁低いが、 腎臓癌のためのワクチンに使用したところ、MUC-001はT細胞応答を誘導することができた(Wierecky, J, Muller, MR, Wirths, S, Halder-Oehler, E, Dorfel, D, Schmidt, SM, Hantschel, M, Brugger, W, Schroder, S, Horger, MS, Kanz, L, and Brossart, P; Immunologic and clinical responses after vaccinations with peptide-pulsed dendritic cells in metastatic renal cancer patients, Cancer Res., 2006, 66, 5910-5918)。 一方、NOX-001はやや高い結合アフィニティを有し、TGFBI-001は最も強力な結合剤であり、大半の該ペプチドに比べKD値が100倍低い。
【0192】
絶対的には、大半のペプチドに観察された0.01〜0.1 nMのKD値は、すでに強結合を表す。 腎臓細胞癌ワクチンIMA901に含まれるペプチドにも、適切な試験で同様のアフィニティが観察されている(H. Singh-Jasuja, S. Walter, T. Weinschenk, A. Mayer, P. Y. Dietrich, M. Staehler, A. Stenzl, S. Stevanovic, H. Rammensee, J. Frisch; Correlation of T-cell response, clinical activity and regulatory T-cell levels in renal cell carcinoma patients treated with IMA901, a novel multi-peptide vaccine; ASCO Meeting 2007 Poster # 3017; M. Staehler, A. Stenzl, P. Y. Dietrich, T. Eisen, A. Haferkamp, J. Beck, A. Mayer, S. Walter, H. Singh, J. Frisch, C. G. Stief; An open label study to evaluate the safety and immunogenicity of the peptide based cancer vaccine IMA901, ASCO meeting 2007; Poster # 3017)。 したがって、本発明のペプチドの結合特性は、T細胞応答を誘導することが示されたペプチドの結合特性とかなり類似している。
【0193】
6. MHCクラスI 提示ペプチドのin vitro免疫原性
CD8+T細胞のin vitroプライミング
ペプチド-MHC複合体(pMHC)および抗CD28抗体を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)によるin vitroでの刺激を与えるために、まず、標準的な密度勾配分離培地(PAA,ドイツCoelbe市)を用いて、PBMC(末梢血単核細胞)を新鮮なHLA-A*02+軟膜から単離した。 軟膜は、Blood Bank TuebingenまたはKatharinenhospital Stuttgartのどちらかから入手した。 単離したPBMCを一晩、10%加熱不活性化したヒトAB血清(PAA, ドイツCoelbe市)と、100 U/mlペニシリン/ 100 μg/mlストレプトマイシン(Cambrex, ベルギーVerviers市)と、1 mMのピルビン酸ナトリウム(CC Pro, ドイツNeustadt市) と、20 μg/mlのゲンタマイシン(Cambrex)とを追加したRPMI-Glutamax (Invitrogen, ドイツKarlsruhe市) からなるヒトin vitroプライミング用T細胞培地(TCM)で培養した。 CD8+リンパ球は、CD8+MACS陽性選択キット(Miltenyi, ドイツBergisch Gladbach市)を用いて、該製造業者の指示通りに単離した。 入手したCD8+T細胞は、2.5 ng/mlのIL-7 (PromoCell, ドイツHeidelberg市) および10 U/mlのIL-2 (Chiron, ドイツMunich市)を追加したTCMで培養後に用いた。 pMHC/抗CD28被覆ビーズ、T細胞刺激および読み出しは、前述の方法 (Walter, S, Herrgen, L, Schoor, O, Jung, G, Wernet, D, Buhring, HJ, Rammensee, HG, and Stevanovic, S; Cutting edge: predetermined avidity of human CD8 T cells expanded on calibrated MHC/anti-CD28-coated microspheres, J. Immunol., 2003, 171, 4974-4978) に若干の修正を加えて行った。 要約すると、膜貫通ドメインが欠如しており、重鎖のカルボキシ末端にてビオチン化されたビオチン化組み換えHLA-A*0201分子を、次の方法にしたがって生成した:Altman et al. (Altman, JD, Moss, PA, Goulder, PJ, Barouch, DH, Heyzer-Williams, MG, Bell, JI, McMichael, AJ, and Davis, MM; Phenotypic analysis of antigen-specific T lymphocytes, Science, 1996, 274, 94-96)。 精製された共刺激マウスIgG2a抗ヒトCD28 Ab9.3 (Jung, G, Ledbetter, JA, and Muller-Eberhard, HJ; Induction of cytotoxicity in resting human T lymphocytes bound to tumor cells by antibody heteroconjugates, Proc Natl Acad Sci U S A, 1987, 84, 4611-4615) は、スルホ-N-ヒドロキシサクシンイミドビオチンを用いて、その製造業者(Perbio, ドイツBonn市)が推奨する方法で化学的にビオチン化した。 使用したビーズは大きさが5.60μmのストレプトアビジン被覆ポリスチレン粒子(Bangs Labooratories, 米国Illinois州)である。正の対照として使用したpMHC はA*0201/MLA-001 (修飾メラン-A/Mart-1からのペプチドELAGIGILTV)であり、負の対照として使用したのはA*0201/DDX5-001 (DDX5からのYLLPAIVHI) またはA*0201/HBV-001 (FLPSDFFPSV)である。
【0194】
800.000ビーズ/ 200 μlを、600ngのビオチン抗-CD28 と 200ngの関係ビオチン-pMHC(高密度ビーズ)、または2ngの関係および200ngの無関係(pMHCライブラリ)MHC(低密度ビーズ)の存在下で、96ウェルプレートにて被覆した。 刺激は、5 ng/ml IL-12 (PromoCell) を追加した200 μl TCMにて、1x106 CD8+ T細胞を、洗浄された2x105被覆ビーズと共に37℃で3〜4日間コンインキュベートすることによって、96ウェルプレートにて開始した。次に、培地の半分を、80 U/ml IL-2を追加した新鮮なTCMと交換し、37℃で3〜4日間培養を続けた。この刺激サイクルを合計3回行った。 最後に、蛍光MHCテトラマー(次の記述に従って生成されたもの: Altman, JD, Moss, PA, Goulder, PJ, Barouch, DH, Heyzer-Williams, MG, Bell, JI, McMichael, AJ, and Davis, MM; Phenotypic analysis of antigen-specific T lymphocytes, Science, 1996, 274, 94-96)と抗体 CD8-FITCクローンSK1 (BD, ドイツHeidelberg市) で、4色FACSCalibur (BD)上でテトラマー解析を行った。 ペプチドに特異的な細胞は、合計CD8+細胞のパーセンテージとして計算した。 テトラマー解析の評価は、FCS Express(De Novo Software)というソフトウェアを使って行った。 特異的なテトラマー+ CD8+リンパ球のin vitroプライミングは、適切なゲートおよび負対照の刺激との比較によって検出された。 与えられた抗原の免疫原性は、in vitroでの刺激後に特異的CD8+T細胞株を含む、1健常ドナーの評価可能なin vitro刺激ウェルが少なくとも1つあれば検出された(すなわち、このウェルは、CD8+T細胞中に少なくとも1%の特異的テトラマー+を含んでおり、特異的なテトラマー+細胞は負対照の刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。
【0195】
本発明のペプチドを、比較のために、既知のin vivo免疫原性のあるペプチドと共に試験した。 NOX-001およびODC-001に対し特異的なT細胞株の生成を示す代表的染色を図5に示す。その結果を下記表3に要約する。
【0196】
表3: 本発明のペプチドとワクチンペプチドのin vitro免疫原性の比較
【表3】

【0197】
表3a: 本発明のペプチドのin vitro免疫原性
【表3a】

【0198】
本発明の発明者らが行ったin vitro免疫原性実験の結果をここにまとめた。 ここに示す結果は、高密度ビーズによるCD8+細胞の刺激によって得たものである。 ヒト血清ロットが異なると免疫原性の結果に大きく影響するため、同一の血清ロットのみを使用したアッセイのみを評価した。
【0199】
7. MHCクラスII提示ペプチドのin vitro免疫原性
Tヘルパー細胞は、CTLが腫瘍細胞に対する免疫応答を活性化および持続するのを支援する重要な役割を果たす。 したがって、MHCクラスIIペプチドをIMA910に含めた。 IMA910に含まれる3つのクラスIIペプチドの1つであるTGFBI-004の免疫原性をin vitroで試験し、TGFBI-004が特異的CD4+およびCD8+T細胞の誘導剤であることを証明した。 自己システムにおいて行われた刺激を用いた実験で、CD4+および機能的CD8+Tリンパ球の生成が示された。
【0200】
試験方式
特異的なヒトCD4+およびCD8+細胞のプライミングと拡大は、単球欠損PBMCを自己DCでプライムし、自己PBMCで再刺激することにより、in vitroアッセイした。 要約すると、抗原特異的なCD4+T細胞を生成するために、1健常ドナーの単球欠損PBMC(HLAゲノタイプクラスI: A1/A25/B8/B18およびクラスII: DQB1*02/DQB1*06/DRB1*03/DRB1*15/DRB3/DRB5)を、ペプチドパルス自己DCを用いて刺激し、自己PBMC+ペプチドで再刺激した。 読み出しシステムとして、短期再刺激でのIFNγ 生成をELISPOTおよびフローサイトメトリーにより評価した。 T細胞はELISPOTによる8回刺激および細胞内IFNγ 染色+CD4-FITCおよびCD8-PerCPの後に分析し、特異的なT細胞サブポピュレーションにおけるIFNγ生成細胞のパーセンテージを測定した。 この実験では、異なるウェルからのTGFBI-004ペプチドで刺激した細胞をプールし、読み出しのために無関係ペプチドで培養し、負対照として施行した。
【0201】
樹上細胞(DC)の生成
ヒトDCは、10%自己血漿//100 U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを追加した、 RPMI 1640-Glutamax/25mM Hepes (Invitrogen, ドイツ) からなるDC培地で培養した単球から得た。 まず、健常ドナーからの血液(Bloodbank Tuebingen)を遠心分離して軟膜と血漿を得た。 次に、PBMCを、標準的な密度勾配分離(Lymphocyte Separation Medium, PAA, オーストリア)によって軟膜から単離し、DC培地に再懸濁し、細胞合計数を測定した。 1〜1.2億のPBMCを洗浄し、15 mlのX-Vivo 20培地(BioWhittaker, ベルギー) で再懸濁し、細胞培養フラスコに移した。 37℃で2時間後、末梢血白血球(PBL)を含む培地を取り除き、接着した単球を10mlのPBSで2回洗浄し、GM-CSFを100 ng/mlとIL-4 を30 ng/ml (ImmunoTools, ドイツ)または20 ng/ml (R&D systems, ドイツ)有する10ml DC培地で6日間培養した。 3日目および5日目に、100 ng/mlのGM-CSFおよび30 ng/mlのIL-4 (Immunotools)または20 ng/mlのIL-4 (R&D Systems, ドイツ) を加えた。 7日目に、未熟のDCを10 ng/mlのTNF-α (R&D Systems, ドイツ) および20 μg/mlのポリ(IC) (Sigma Aldrich, ドイツ) または100 ng/mlのLPSで24時間活性した。 残りのPBMCおよび入手したPBLは等分して冷凍した。
【0202】
特異的T細胞のin vitroプライミング
CD4+T細胞を生成するために、3百万PBMC/PBLを2x105の自己DCで刺激した。 DCは8日目に収穫した(3.1章「DCの生成」を参照)。 この目的のために、できるだけ多くの細胞(接着細胞を含む)を収穫すべく、5mMのEDTAと共にPBSを用いた。 DC培地で洗浄後、細胞数を測定した。 ペプチドを負荷するために、DCを1mlのDC培地に再懸濁し、25 μg/mlのペプチドで2時間、37℃で培養した。DCのパルシングに用いたペプチドは、TGFBI-004、Posmix (EBV とCMV関係ペプチドの混合物)、Padre、およびCMVである。 自己PBMC/PBLは解凍し、DC培地で(少なくとも2度)洗浄し、1ml中3Mio 細胞/mlの密度で、24ウェルプレートに載せた。 次に、ペプチドを負荷したDCを(該ペプチドを含む1ml懸濁液として)、該プレートに載せたPBMC/PBLに加え、37℃で7日間培養した。プライミング後に得られたCTLは、まず、凍結保存された自己ペプチドを負荷した放射線照射PBMCで再刺激した(30 Gy; Gammacell 1000 Elite, Nordion International, カナダ)。 この目的で、5 x 105 のCTLおよび2,5 x 106 のPBMCをウェルに加えた。 PBMCのペプチドパルシングは(DCについて)前述した方法で行った。 第1の刺激から1日目に、IL-2 (R&D Systems, ドイツ) およびIL-7を加え、各々2 ng/mlおよび5 ng/mlの最終濃度とした。 その後、2日毎および7日毎に該培地にIL-2およびIL-7を加えた。 第2の再刺激は7日後に行ったが、この時はペプチドを単独で(PBMCなしに)該培養CTLに加えた。 7日サイクルで、ペプチドを負荷したPBMCを加えるのとペプチドのみを加えるのを交互に行い、再刺激を施行した。 8回の刺激後、細胞内IFNγ 染色とIFNγ ELISPOTにより分析を行った。
【0203】
結果
関心のあるペプチドに特異的に応答するCD4+T細胞株をプライムすることは可能であった(図6および図3)。 T細胞応答は、4つのT細胞株のうち2つにELISPOTで検出され、4つのT細胞株のうち3つに、TGFBI-004に特異的なIFNγ を生成するCD4+およびCD8+細胞がICSを介して示された。 このように、TGFBI-004は、上述の実験システムで試験された1ドナーにCD4+およびCD8+T細胞応答を引き出すことができた。 この有望な結果によると、このペプチドが免疫原性で、T細胞応答を誘導する能力を有する可能性は高い。
【0204】
8. NOX-001およびTGFBI-001を例とした機能検証
IMA910に含まれるペプチドの免疫原性は、immaticsのTUMAP検証プラットフォーム(immatics biotechnologies GmbH、ドイツTuebingen市)を用いてin vitroで実証された。 特異的T細胞の誘導は、ペプチドがその免疫系を活性化する能力を示す指標である。 効率的な抗腫瘍免疫応答は、活性化T細胞のアビディティが高く機能的な場合のみ可能であるので、それらのIFNγ生成能力または腫瘍細胞株殺傷能力を試験することによって、我々はTUMAPをさらに調査した。 より厳しい検証のために、高アビディティのCTLをin vitroで誘導する能力のある2つのペプチド、NOX-001およびTGFBI-001を選んだ。 この結果は、ヒトにおいて両方のペプチドに対して高アビディティの前駆T細胞が存在すること、および機能的CD8+T細胞株をNOX-001で生成可能であることを証明した。
【0205】
試験方式
IMA910のペプチドの免疫原性および特異的T細胞の特性についてより深く知るために、2つのペプチド(NOX-001およびTGFBI-001)を選択し、さらに詳しく評価した。 この目的で実施された実験は、immaticsで実行された(細胞のソートはUniversity of TuebingenのBuehring博士の研究室で実施された)。
【0206】
高密度または低密度抗原によってそれらが活性化される能力によって、T細胞株を高アビディティまたは低アビディティに分けた。 すでに示されているように(Walter, S, Herrgen, L, Schoor, O, Jung, G, Wernet, D, Buhring, HJ, Rammensee, HG, and Stevanovic, S; Cutting edge: predetermined avidity of human CD8 T cells expanded on calibrated MHC/anti-CD28-coated microspheres, J. Immunol., 2003, 171, 4974-4978)、低アビディティのCD8+T細胞に比べて少ないペプチドで活性化し、ヒトの高アビディティCTLを誘起することができた。 また、この方法で拡大した細胞が抗原発現腫瘍細胞株をより効率的に認識することも実証され、療法戦略の開発における主要なツールとなり得ることが実証された。
【0207】
ペプチドが高アビディティのCTL株を生成する能力を測定するために、単離したヒトCD8+細胞をプライムし、IL-12およびIL-2存在下で、低密度pMHC(ペプチド-MHC複合体)で被覆したビーズと抗CD28抗体によるin vitro刺激を繰り返して拡大した。3回の刺激後、in vitroプライムしたT細胞の画分をpMHC-テトラマーで染色し、サイトメトリー解析で検出した。 後に、各ドナーのテトラマー陽性細胞を抗原の特異性にしたがってプールし、pMHC-テトラマーとヒト抗CD8-FITC抗体で染色し、最後に、FACSAriaでFACSソートした。 ソートした細胞を培養し、放射線照射フィーダー細胞、サイトカイン、およびマイトジェンの存在下で拡大した。 プライムした高アビディティの抗原特異的細胞の生成の読み出しとして、pMHC-テトラマー染色を実施した。 それらの機能性を測定するために、IFNγ生成をELISPOTによってアッセイし、腫瘍細胞株の殺傷を、対応するペプチドおよび腫瘍細胞株による細胞の再刺激後に生/死染色する細胞傷害性アッセイを用いて検査した。
【0208】
特異的CD8+T細胞株の生成
ペプチド-MHC複合体(pMHC)を負荷した人工抗原提示細胞(aAPC)と抗CD28抗体を用いるin vitroでの刺激は、上述の方法で実施した。 上述の方法との唯一の違いは、200ngの関係MHC(高密度ビーズ)の代わりに、2ngの関係+200ngの無関係ライブラリー(pMHC)MHC(低密度ビーズ)を負荷したビーズで刺激を施行したことである。 こうして、ペプチドをより深く検証するための主に高アビディティのT細胞が生成された。 3回の刺激後、in vitroでプライムされたT細胞の画分をpMHC-テトラマー染色し、サイトメトリー解析により検出した。 与えられた抗原の免疫原性は、in vitroでの刺激後に特異的CD8+T細胞株を含む、一健常ドナーの評価可能なin vitro刺激ウェルが少なくとも1つあれば検出された(すなわち、このウェルは、CD8+T細胞中に少なくとも1%の特異的テトラマー+を含んでおり、特異的なテトラマー+細胞は負対照の刺激の中央値の少なくとも10倍であった)。 後に、各ドナーのテトラマー陽性細胞を抗原の特異性にしたがってプールし、対応するpMHC-テトラマーとヒト抗CD8-FITC抗体クローンSK1で染色し、最後に、FACSAria(BD Biosciences、ドイツ)でFACSソートした。 ソートした細胞を、5 x 105細胞/mlの放射線照射した新鮮な同種PBMC、5 x 104細胞/mlの放射線照射したLG2-EBV細胞、150 U/mlのIL-2 (Chiron, ドイツMunich市)、および0,5 μg/mlのPHA-L (Roche Diagnostics, ドイツMannheim市)の存在下で、T細胞培地(10%加熱不活性化したヒトAB血清、100 U/mlのペニシリン、100 μg/mlのストレプトマイシン、1mMのピルビン酸ナトリウム、および20 μg/mlのゲンタマイシンを追加したRPMI-Glutamax)で培養した。 これらの細胞の拡大は、150 U/mlのIL-2を含むT細胞培地で生じた。プライムされた高アビディティの抗原特異的細胞生成の読み出しとして、pMHC-テトラマー染色を上述のように実施し、4色FACSCalibur(BD Biosciences、ドイツ)で解析した。
【0209】
機能性試験
それらの機能性を測定するために、対応するペプチドでそれらの細胞を再刺激した後、ELISPOT (IFNγ ELISPOT Set, BD, ドイツ)でIFNγの生成を評価した。 加えて、LIVE/DEAD細胞媒介細胞傷害性キット(L7010、Invitrogen、ドイツ)を用い、腫瘍細胞株の殺傷によって、特異的CTLの細胞媒介細胞傷害性を調査した。 別に記述しない限り、アッセイは両方とも製造業者の指示通りに行った。
【0210】
結果
ペプチドNOX-001およびTGFBI-001は両方とも、低pMHC密度のaAPCによるプライムの成功が示すように、in vitroで免疫原性であった。 NOX-001およびTGFBI-001の両方について、T細胞株がFACSによって確立可能であったことにより、健常ドナーに高アビディティのCD8+細胞前駆体が存在することが実証された。
【0211】
加えて、NOX-001では、このペプチドでの再刺激後にIFNγを特異的に発現したことから、ELISPOTによって機能性が証明された1つのT細胞株を確立することができた(図8)。
【0212】
9. 本発明のHLAクラスI拘束ペプチドとHLA-A*0201の結合
この解析の目的は、HLA-A*0201対立遺伝子によりコードされるMHC分子に対する、HLAクラスIペプチドCHI-001、DCA-001、JAK-001、およびPTP-001のアフィニティを評価することであった。 HLA-A*0201に対する全てのペプチドのアフィニティは、周知の対照ペプチドHBV-001に匹敵するものであり、解離定数(KD) は0.05〜1.6 nMの範囲であった。
【0213】
試験方式
安定したHLA/ペプチド複合体は、 HLA重鎖、β-2ミクログロブリン(b2m)、およびそのペプチドリガンドという3つの分子からなる。 変性した組み換えHLA-A*0201重鎖分子のみの活性は保存できるので、これらの分子は「空のHLA-A*0201分子」と機能的に同等である。b2mおよび適切なペプチドを含む水性緩衝液中に希釈すると、これらの分子は急速かつ効率的に、完全にペプチドに依存した方法で折り畳まれる(フォールドする)。これらの分子のアベイラビリティは、ペプチドとHLAクラスI分子の相互作用のアフィニティを測定するために、ELISAを使用するアッセイで使われている(Sylvester-Hvid et al., 2002) (Sylvester-Hvid C, Kristensen N, Blicher T, Ferre H, Lauemoller SL, Wolf XA, Lamberth K, Nissen MH, Pedersen LO, Buus S. Establishment of a quantitative ELISA capable of determining peptide - MHC class I interaction. Tissue Antigens 2002, 59, 251-258)。
【0214】
精製された組み換えHLA-A*0201分子を、b2mおよび段階的用量の関心ペプチドとともに培養した。 新たに折り畳まれた(フォールドされた)HLA/ペプチド複合体の量は、定量ELISAによって測定した。 解離定数(KD値)は、calibrantのHLA/ペプチド複合体の希釈から記録された基準曲線を用いて計算した。
【0215】
結果
結果を図9に示す。KD値が低いほど、HLA-A*0201に対するアフィニティが高い。HLA-A*0201に対する全てのペプチドのアフィニティは、周知の対照ペプチドHBV-001に匹敵するものであり、解離定数(KD) は0.05〜1.6 nMの範囲であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜配列番号29、配列番号1〜配列番号29に80%相同性のあるこれらの変異形、またはT細胞とペプチドとの交差反応を誘発するであろう配列番号1〜配列番号29の変異形からなる群から選択される配列を含むペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドまたは変異形は、8〜100個、好ましくは8〜30個、最も好ましくは8〜16個のアミノ酸を全長とする、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子と結合する能力を有する、請求項1または2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、配列番号1〜配列番号29のアミノ酸配列からなるまたは本質的にそのアミノ酸配列からなる、請求項1〜3のいずれかに記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、修飾されているもしくは非ペプチド結合を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、融合タンパク質、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN-末端アミノ酸を含む融合タンパク質である、請求項1〜5のいずれかに記載のペプチド。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項8】
DNA、cDNA、PNA、CAN、RNA、またはそれらの組み合わせである、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
請求項7または8に記載の核酸を発現する発現ベクター。
【請求項10】
医薬に使用される、請求項1〜6のいずれかに記載のペプチド、請求項7もしくは8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
請求項7もしくは8に記載の核酸、または請求項9に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
宿主細胞は抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である、請求項11に記載の宿主細胞。
【請求項13】
請求項11の宿主細胞を培養する工程、およびペプチドを該宿主細胞またはその培地から単離する工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のペプチドを生成する方法。
【請求項14】
適切な抗原提示細胞の表面で発現された抗原負荷ヒトクラスIまたはIIのMHC分子を、抗原特異的に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を十分に活性化する時間、in vitroでCTLに接触させる工程を含み、該抗原が請求項1〜6のいずれかに記載のペプチドである、in vitroで活性化CTLを生成する方法。
【請求項15】
十分な量の抗原が抗原提示細胞と接触することによって、適切な抗原提示細胞の表面で発現されたクラスIまたはIIのMHC分子に該抗原が負荷される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抗原提示細胞は、配列番号1〜配列番号29またはその変異アミノ酸配列を含む前記ペプチドを発現する能力のある発現ベクターを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを任意に発現する細胞を選択的に認識する、請求項14〜16のいずれかに記載の方法によって生成される活性化細胞傷害性Tリンパ球(CTL)。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに規定される細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を患者に効果的な数で投与する工程を含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含むポリペプチドを任意に発現する患者の標的細胞を殺傷する方法。
【請求項19】
薬剤、または薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか1つに記載のペプチド、請求項7もしくは8に記載の核酸、請求項9に記載の発現ベクター、請求項11もしくは12に記載の細胞、または請求項17に記載の活性化細胞傷害性Tリンパ球の使用。
【請求項20】
薬剤がワクチンである、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
薬剤は癌に対して有効である、請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
前記癌の細胞は、グリア芽腫細胞、結腸直腸癌細胞、膵臓癌細胞、肺癌細胞、腎臓癌細胞、または胃癌細胞である、請求項21に記載の使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図1e】
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【図1f】
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【図1g】
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【図1h】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図2f】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−534463(P2010−534463A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517325(P2010−517325)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006153
【国際公開番号】WO2009/015842
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506258073)イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー (24)
【Fターム(参考)】