説明

免疫賦活組成物及びそれを含有する飲食品

【課題】 安全性が高く、経口摂取することにより、充分な免疫賦活効果が期待でき、飲食品に配合しても当該飲食品の風味を損なうことがない免疫賦活組成物、及びそれを含有する飲食品を提供する。
【解決手段】 経口摂取することにより免疫賦活作用を得るための免疫賦活組成物の有効成分として、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を含有させる。前記マコモタケ抽出物は、マコモタケを熱水又はクロロホルム又はエタノール抽出して得られたものであることが好ましい。この免疫賦活組成物はそのまま、あるいは飲食品に配合して摂取することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有し、経口摂取することにより免疫賦活作用が期待できる免疫賦活組成物及びそれを含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会を迎え医療費の高騰が深刻な問題になる中、免疫力を強化して事前に病気を予防する予防医学が注目されており、免疫賦活剤を日常的に摂取することにより、免疫レベルを高く維持し、QOL(生活の質)の改善作用がもたらされることが報告されている。
【0003】
また、免疫賦活剤は各種疾病の治療にも使用され、治療効果の増強や治療の副作用の軽減等の有用性があることが報告されており、例えば、ガン治療においては、化学療法剤又は放射線治療と免疫増強剤との併用が高い治療効果を上げている。
【0004】
しかし、医療用医薬品として用いられている免疫賦活剤、例えばインターロイキンやインターフェロン等は、優れた抗腫瘍効果を発揮するものの、大量に投与すれば免疫系のバランスを壊して重篤な副作用をもたらす危険性がある。一方、BCG−CWS、レンチナン、レバミゾール等は一般的に免疫系のバランスを大きく崩すことはないが、免疫賦活効果に限界があり、副作用も報告されている。
【0005】
そこで、副作用の心配がなく、充分な効果が期待できる天然由来の免疫賦活剤の開発も行われており、例えば、下記特許文献1にはアガリクス又はその抽出物、プロポリス又はその抽出物及び植物発酵物又はその抽出物を含有する免疫賦活組成物、下記特許文献2にはサクラ属に属する植物の種子又は該種子の抽出物を有効成分として含有するNK細胞活性化剤、下記特許文献3にはレモングラス抽出物を含有するTNF産生促進剤、下記特許文献4にはイネ科植物由来の免疫増強作用を有する生理活性物質として、βグルカンを低分子化して得られる低分子化βグルカン、下記特許文献5には米糠の抽出物を糸状菌の産生する酵素複合体によって修飾を行うことにより得られた免疫力増強物質が開示されている。
【0006】
また、下記特許文献6には、フジコブ、カシ、ヒシノミ等の生薬の抽出物を含有する生理活性を有する組成物、下記特許文献7には微生物由来又は担子菌類由来のβグルカンと、タンパク質とを複合化させたβグルカン・タンパク質複合組成物が開示されており、これらの組成物が、免疫増強作用や免疫調節作用を有することが記載されている。
【特許文献1】特開2002−226392号公報
【特許文献2】特開2003−252782号公報
【特許文献3】特開2003−321385号公報
【特許文献4】特開2001−323001号公報
【特許文献5】特許第3519187号公報
【特許文献6】特開平9−136839号公報
【特許文献7】特開2005−82517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献に記載された免疫賦活剤は、異味を有したり、粘性が高いといった物性を有するため、充分な効果が期待できる量を飲食品に配合した場合、飲食品本来の風味を損なってしまうという問題があった。そのため、これらの免疫賦活剤は日常的に手軽に摂取できるものとは言い難く、また、その効果も充分満足できるものであるとは言えなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、安全性が高く、経口摂取することにより、充分な免疫賦活効果が期待でき、飲食品に配合しても当該飲食品の風味を損なうことがない免疫賦活組成物及びそれを含有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の免疫賦活組成物は、経口摂取することにより免疫賦活作用を得るための免疫賦活組成物において、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の免疫賦活組成物において、前記マコモタケ抽出物は、マコモタケを熱水又はクロロホルム又はエタノール抽出して得られたものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の飲食品は、上記免疫賦活組成物を含有することを特徴とする。この場合、上記メラニン生成抑制組成物を乾燥固形分換算で0.5〜50質量%含有することが好ましい。
【0012】
本発明の免疫賦活組成物は、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有することにより、優れた免疫賦活作用を有しており、経口摂取することにより充分な免疫賦活効果が期待できる。また、食経験が豊富な素材であるマコモタケは高い安全性を有しており、飲食品に配合しても当該飲食品の風味を損なうことのないので、容易に様々な飲食品に配合することができ、長期間にわたって手軽に摂取することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安全性が高く、経口摂取することにより充分な免疫賦活効果が期待できる免疫賦活組成物を提供することができる。この免疫賦活組成物は飲食品に配合しても当該飲食品の風味を損なうことのないので、様々な飲食品に配合して手軽に摂取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
マコモタケは、イネ科マコモ属・多年草の水生植物であるマコモの若茎が黒穂菌によって肥大生育したものであり、中国、台湾を中心とした東アジアから東南アジアにかけて栽培されている中国野菜である。近年では日本でも栽培が行われており、これらの市販品を簡単に入手することができる。
【0015】
本発明で用いられるマコモタケ抽出物は、マコモタケを必要に応じて乾燥、粉砕した後、好ましくはマコモタケの5〜100倍量(質量比)の有機溶媒や水等を用いて任意の温度で抽出することにより得ることができる。抽出後は、遠心分離や濾過等により残渣を除去し、必要に応じて濃縮してもよく、更に乾燥してもよい。
【0016】
上記有機溶媒としては、例えば、ヘキサン、クロロホルム、酢酸エチル、ブタノール、プロパノール、2−プロパノール、エタノール、メタノール等を用いることができるが、本発明においては、クロロホルム、エタノールが好ましく用いられ、食品にも安全に用いることができることから、特にエタノールが好ましく用いられる。
【0017】
有機溶媒で抽出した場合は、抽出後、減圧濃縮、送風乾燥等により有機溶媒を充分に除去することが好ましい。抽出温度や抽出時間は、抽出溶媒によって異なるため限定できるものではないが、例えば、クロロホルムを用いた場合は、室温(20℃)〜50℃で2〜12時間抽出することが好ましく、エタノールを用いた場合は、室温(20℃)〜70℃で2〜24時間抽出することが好ましい。
【0018】
本発明で用いられるマコモタケ粉砕物は、マコモタケを必要に応じて乾燥した後、公知の粉砕手段(例えば、粉砕機、ホモジナイザー、ミル、ジェットミル、ボールミル等)で粉砕することによって得ることができる。粉砕物の形状や大きさは特に制限はなく、用途に応じて適宜決定できる。
【0019】
本発明においては、上記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物をそのまま免疫賦活組成物として用いることもできるが、フコイダン等の海草由来成分、アガリクス,マイタケ,メシマコブ等の担子菌由来成分、プロポリス、乳清タンパク,ミルクペプチド,免疫ミルク,ラクトフェリン等のミルク由来成分、キチンオリゴ糖,キトサンオリゴ糖,ニゲロオリゴ糖等のオリゴ糖類,乳酸菌等でプロバイオティクスに作用する物質等の公知の免疫賦活効果を有する成分(以下、免疫賦活成分という)を1種類もしくは2種類以上配合してもよく、その他にも、無機塩類、有機酸類、糖質類、タンパク類、ペプチド類、アミノ酸類、脂質類を適宜配合することができる。上記成分を配合することにより、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物との相乗効果が期待できる。
【0020】
本発明の免疫賦活組成物は、上記マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を、乾燥固形分換算で0.01〜100質量%含有することが好ましく、50〜100質量%含有することがより好ましい。また、マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物以外の上記免疫賦活成分を併用する場合は、該免疫賦活成分を0.01〜99質量%含有することが好ましく、0.1〜50質量%含有することがより好ましい。
【0021】
本発明の免疫賦活組成物の摂取形態は、液剤、散剤、錠剤、丸剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー、チュアブル、ペースト等が挙げられ、生理活性を損わない範囲で、食品及び医薬的に許容される担体、賦形剤、糖類、甘味料、香料、酸味料、着色料、その他補助的添加剤を使用してもよい。
【0022】
本発明の免疫賦活組成物の有効摂取量は、摂取者の体重、性別、年齢等によって適宜設定すればよいが、通常、乾燥固形分換算で、体重1kg当り0.01〜5g、好ましくは0.05〜0.5gである。
【0023】
本発明の免疫賦活組成物は、飲食品に配合して摂取することもでき、例えば、(1)清涼飲料、炭酸飲料、果実飲料、野菜ジュース、乳酸菌飲料、乳飲料、豆乳、ミネラルウォーター、茶系飲料、コーヒー飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、ゼリー飲料等の飲料類、(2)トマトピューレ、キノコ缶詰、乾燥野菜、漬物等の野菜加工品、(3)乾燥果実、ジャム、フルーツピューレ、果実缶詰等の果実加工品、(4)カレー粉、わさび、ショウガ、スパイスブレンド、シーズニング粉等の香辛料、(5)パスタ、うどん、そば、ラーメン、マカロニ等の麺類(生麺、乾燥麺含む)、(6)食パン、菓子パン、調理パン、ドーナツ等のパン類、(7)アルファー化米、オートミール、麩、バッター粉等、(8)焼菓子、ビスケット、米菓子、キャンデー、チョコレート、チューイングガム、スナック菓子、冷菓、砂糖漬け菓子、和生菓子、洋生菓子、半生菓子、プリン、アイスクリーム等の菓子類、(9)小豆、豆腐、納豆、きな粉、湯葉、煮豆、ピーナッツ等の豆類製品、(10)蜂蜜、ローヤルゼリー加工食品、(11)ハム、ソーセージ、ベーコン等の肉製品、(12)ヨーグルト、プリン、練乳、チーズ、発酵乳、バター、アイスクリーム等の酪農製品、(13)加工卵製品、(14)干物、蒲鉾、ちくわ、魚肉ソーセージ等の加工魚や、乾燥わかめ、昆布、佃煮等の加工海藻や、タラコ、数の子、イクラ、からすみ等の加工魚卵、(15)だしの素、醤油、酢、みりん、コンソメベース、中華ベース、濃縮出汁、ドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、味噌等の調味料や、サラダ油、ゴマ油、リノール油、ジアシルグリセロール、べにばな油等の食用油脂、(16)スープ(粉末、液体含む)等の調理、半調理食品や、惣菜、レトルト食品、チルド食品、半調理食品(例えば、炊き込みご飯の素、カニ玉の素)等が挙げられる。
【0024】
上記飲食品における免疫賦活組成物の配合量は、乾燥固形分換算で0.5〜50質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。配合量が上記範囲よりも少ないと、効果が期待できる充分な量を1食で摂取するのが困難となり、上記範囲よりも多いと飲食品の味や品質安定性に不具合が生じる他、飲料や加工食品においては、それらの持つ本来の風味を損う場合があるため好ましくない。
【実施例】
【0025】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
<実施例1>
市販のマコモタケ5,000gを天日乾燥した後、ミキサーを用いて粉砕を行い、マコモタケ粉砕物350gを得た。
【0027】
<実施例2>
実施例1で得られたマコモタケ粉砕物100gに、1,000mlのクロロホルムを加えて、室温で2時間撹拌しながら抽出を行った。吸引濾過にて残渣を除去後、得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いてクロロホルムを完全に除去後、減圧乾固させて、4.0gのマコモタケ抽出物を得た。
【0028】
<実施例3>
実施例1で得られたマコモタケ粉砕物100gに、1,000mlのエタノールを加えて、30℃で3時間撹拌しながら抽出を行った。吸引濾過にて残渣を除去後、得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮によりエタノールを除去し、21.0g(固形分87%)のペースト状のマコモタケ抽出物を得た。
【0029】
<実施例4>
実施例1で得られたマコモタケ粉砕物100gに、1,000mlの水を加えて、95℃で1時間撹拌しながら抽出を行った。吸引濾過にて残渣を除去後、得られた抽出液をロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮して、51.0g(固形分82%)のペースト状のマコモタケ抽出物を得た。
【0030】
<試験例1>
実施例4で得られたマコモタケ抽出物について、以下の方法で免疫賦活活性の検討を行った。
【0031】
マクロファージの生成する一酸化窒素(NO)は、病原菌や腫瘍細胞を攻撃する分子であり、細胞のNO産生量が多いと免疫賦活活性が高いと言える。そこで、マウス単球細胞のNO産生を指標として免疫賦活作用を確認した。
【0032】
適宜増殖させたマクロファージ培養株であるRAW264.7マウス単球細胞を96穴プレートに1ウェル当たり1×10になるように播種し、実施例4で得られたマコモタケ抽出物を終濃度0.125,0.25,0.5,1.0%(v/v)になるように添加した。37℃、5%炭酸ガスの条件で20時間培養した後、上清中のNOをグリース試薬で発色し、定量することでNO産生量を求めた。その結果を図1に示す。
【0033】
また、マコモタケ抽出物無添加細胞のNO産生量に対する増加率(%)を数式1により求めた。
【0034】
<数式1>
NO産生量増加率(%)={(試料NO産生量/無添加NO産生量)−1}×100
その結果、マコモタケ抽出物を培地に0.25%添加することで35%、マコモタケ抽出物を培地に0.5%添加することで77%、マコモタケ抽出物を培地に1.0%添加することで85%のNO産生量の増加が認められ、マコモタケ抽出物に免疫賦活活性が観察された。
【0035】
<実施例5>
表1に示す配合で調合した組成物を常法にしたがってハードカプセルに充填(230mg/カプセル)して、ハードカプセル剤を製造した。
【0036】
【表1】

【0037】
<実施例6>
表2に示す配合で常法にしたがってゼリー飲料を製造した。このゼリー飲料はマコモタケの風味を感じることなく、また食感にも優れ、非常に飲み易かった。なお、キチンオリゴ糖は、商品名「NA‐COS‐Y」(焼津水産化学工業株式会社製)を使用した。
【0038】
【表2】

【0039】
<実施例7>
表3に示す配合で常法にしたがって乳飲料を製造した。この乳飲料は沈殿を生じることなく、またマコモタケの風味を感じることもなく、非常に飲み易かった。


【0040】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の免疫賦活組成物は、そのまま、あるいは飲食品等に配合して摂取することにより、免疫賦活効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】マウス単球細胞のNO産生量を指標としてマコモタケ抽出物の免疫賦活作用を測定した結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マコモタケ抽出物及び/又はマコモタケ粉砕物を有効成分として含有することを特徴とする免疫賦活組成物。
【請求項2】
前記マコモタケ抽出物は、マコモタケを熱水又はクロロホルム又はエタノール抽出して得られたものである請求項1記載の免疫賦活組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の免疫賦活組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の免疫賦活組成物を乾燥固形分換算で0.5〜50質量%含有する請求項3記載の飲食品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−126382(P2007−126382A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−319348(P2005−319348)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】