説明

免震ゴムの解体方法

【課題】
本体が主にゴム体などで構成される免震ゴムの解体を、従来に増して安全に行える免震ゴムの解体方法と、この方法を含める芯材入り免震ゴムの解体方法を提供する。
【解決手段】
端板10における本体8内の芯材9に対応する位置に、芯材9の径と同程度または少々大なる排出用開口13を形成するとともに、端板11に芯材9の押出手段15を挿入できる挿入用開口14を形成し、挿入用開口14より押出手段15を挿入して芯材9を排出用開口13より外部に排出し、次いで、本体8の両端部における端板10、11間を伸長手段によって積層方向に伸長し、同端板10、11のいずれか一方を固定するとともに他方を巻き取り手段によって同積層方向の軸回りに回動させて本体8を捻り、同本体8の軸方向に略直交する方向より本体8を切断手段16によって所望の厚みに切断する。
【選択図】 図5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や機械より取り外されてリサイクル処理などに送られる免震ゴムの解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震ゴムは建築物の基礎部分や機械の台座などに配設され、地震などによって生じた地盤の揺れが建築物や機械の本体に直接伝わらないようにしたり、また機械より生じる震動が周囲に直接伝わらないようにしたりすることを目的に使用されている。
【0003】
そして、耐用年数の満了などによって建築物の基礎部分や機械の台座から取り外された免震ゴムはリサイクル処理施設にて解体され、この解体した部品を適宜リサイクルして資源の有効活用を図っている。
【0004】
しかしながら、リサイクル処理施設における免震ゴムの解体方法は未だ開発途上にあり、一般に開示されている解体方法は、出願人の知るところでは特許文献1に示されるものだけである。
【0005】
この特許文献1による免震ゴムの解体方法は、鋼板とゴム板を交互に積層して本体を構成しているいわゆる積層タイプの免震ゴム(積層ゴム)を解体する際に適用するものである。
【0006】
また免震ゴムには、塑性変形することによって揺れのエネルギーを吸収する、鉛プラグや錫プラグなどの芯材を本体の軸心に内装したもの(例えば、特許文献2参照)もあるが、この芯材入りタイプの免震ゴムを解体するための解体方法は未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−106183号公報(第1〜3頁、図1〜4)
【特許文献2】特開平11−201227号公報(第1〜10頁、図1〜7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、ゴム体や、鋼板とゴム板を交互に積層してなる免震ゴムの解体を、従来に増して安全に行うことができ、また、芯材入りタイプの免震ゴムにも適用できる免震ゴムの解体方法を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本体が主にゴムなどの弾性体を積層して形成した免震ゴムの解体方法であって、積層方向に略直交する方向から本体を切断手段によって所望の厚みに切断して解体する際、同本体を前記積層方向の軸回りに捻って切断するものとしてある。
【0010】
また、前記本体の積層方向に、自身が塑性変形することによって本体の積層方向に直交する方向の応力を吸収する芯材が長手方向となるように内装し、前記芯材の両端が上下の端板により挟まれた免震ゴムの解体方法であって、一方の端板に少なくとも芯材の径と同程度または少々大なる排出用開口を形成するとともに、他方の端板に前記芯材の排出用手段を挿入できる挿入用開口を形成し、前記挿入用開口より前記排出手段を挿入して前記芯材を前記排出用開口より外部に排出した後、前記本体を所望の厚みに切断するものとしてある。
【0011】
また、前記排出用手段が、挿入用開口より挿入する押体によって前記芯材を排出用開口から押し出すことができる押出手段を備えるものとしてある。
【0012】
また、前記排出用手段が、挿入用開口乃至排出用開口より挿入する加熱体によって前記芯材を融解できる加熱手段を備えるものとしてある。
【0013】
また、前記融解した芯材を、挿入用開口乃至排出用開口より流出乃至吸引によって排出するものとしてある。
【0014】
また、前記切断手段によって切断して解体する前に、本体を積層方向に伸長するものとしてある。
【0015】
また、前記捻りの度合いを徐々に増しながら本体を切断するものとしてある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る免震ゴムの解体方法によれば、ゴム体や、鋼板とゴム板を交互に積層してなる免震ゴムの本体たるゴム体を切断する際、同本体を前記積層方向の軸回りに捻って切断することによって、ゴム体の弾性反発による切断手段たる例えば切断刃の挟み込みを抑止できる。
【0017】
また、本体の積層方向の軸回りの捻りに加え、軸方向へ伸長させることにより、ゴム体の弾性反発による切断刃の挟み込みをさらに抑止できる。
【0018】
また、上述のように捻りと伸長を組み合わせて切断すると、少なくとも切断を半分終了した後は本体の伸長よりも主に捻りを掛けることによってゴム体の弾性反発を抑止できて、本体の切断を引き続き行うことができる。
【0019】
さらに切断の際、捻りを加えた分伸長量を小なるものに抑えることができるので、伸長手段たる例えばジャッキ装置のストロークが過大で不安定になり、ジャッキ装置の転倒や、転倒による本体の弾けなどによって生じる恐れがある事故を未然に防止することができる。
【0020】
また、未だ解体方法が確立されていなかった、本体の軸心に芯材を内装する芯材入りタイプの免震ゴムをも、安全かつ容易に解体することができる。
【0021】
しかも、本体より芯材を取り出した後に続く解体工程は、本体に芯材を内装する免震ゴム、芯材を内装しない免震ゴムの両方に共通しているので、免震ゴム解体時における誤作業の発生を低減することができて、これら免震ゴムを安全かつ容易に解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一部を断面にした芯材を内装しない免震ゴムの一例を示す斜視図。
【図2】芯材を内装しない免震ゴムに対する本発明に係る解体方法を示す図。
【図3】解体した免震ゴムを示す図。
【図4】一部を断面にした芯材入り免震ゴムの一例を示す斜視図。
【図5】芯材入り免震ゴムに対する本発明に係る解体方法の一例を示す図。
【図6】解体した免震ゴムを示す図。
【図7】芯材の排出方法の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る免震ゴムの解体方法を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本体が主にゴムなどの弾性体を軸方向に積層して形成され、また本体に後述する鉛プラグなどの芯材を内装しない免震ゴムの一例を示していて、この免震ゴム1は、ゴムなどの弾性体よりなる本体2に、荷重の支持方向すなわち積層(上下または鉛直)方向における両端部に、本体を建築物や各種機器などへ接続固定するための端板3、4を配した構造になっている。
【0025】
また、実施例に示す積層ゴムは、本体2内に、積層方向に対し直交する方向(水平方向)に鋼板などの薄板5を配していて、免震ゴムを設置した際、受ける荷重に対し鉛直方向に堅く、水平方向に柔らかいという性質を有するものを示している。
【0026】
以下、この免震ゴム1の解体方法を図2にて説明するが、図中における免震ゴム1の固定手段や固定方法などの図示は省略している。
【0027】
先ず、解体する免震ゴム1における本体2の両端部における端板3、4間を、ジャッキ装置などの伸長手段によって積層方向に伸長させ(図2中のStep.1)、同端板3、4のいずれか一方を固定するとともに他方をウインチなどの巻き取り手段によって同積層方向の軸回りに回動させて本体2を捻り(図2中のStep.2)、この捻った状態を維持して本体2におけるゴム体の弾性反発を抑止する。
【0028】
次いで、本体2の積層方向に略直交する方向より刃体などの切断手段6によって同本体2を所望の厚みでスライスして行き(図2中のStep.3)、かつ、スライスの進行に合わせて同本体2における積層方向への伸長および捻れを適宜に調節しながら加えて行く。
【0029】
図3は、解体した免震ゴム1を示していて、実施例では、端板3および端板4と、3つにスライスした本体2の、合わせて5つに解体しているが、免震ゴムのサイズなどで解体する数量は変化する。
【0030】
そして、これら解体した各部分は、金属また樹脂(ゴム)を摘出する所定の処理装置(処理施設)に搬送されてリサイクル処理される。
【0031】
図4は、芯材入り免震ゴムの一例を示していて、この芯材入り免震ゴム7は、ゴムなどの弾性体より積層してなる本体8内の積層方向に、自身が塑性変形することによって本体の積層方向に直交する方向の応力を吸収する芯材9が長手方向となるように内装され、前記芯材9の両端が上下の端板10、11により挟まれた構造になっている。
【0032】
また、実施例に示すものは、本体8内に、同積層方向に対し直交する方向(水平方向)に鋼板などの薄板12を配し、免震ゴムを設置した際、受ける荷重に対し鉛直方向に堅く、水平方向に柔らかいという性質を有するものを示している。
【0033】
以下、この芯材入り免震ゴム7の解体方法を図5にて説明するが、図中における免震ゴム1の固定手段や固定方法などの図示は省略している。
【0034】
先ず、解体する芯材入り免震ゴム7(図5(a))の端板10に、芯材9の径と同程度または少々大なる排出用開口13を、例えばガスバーナなどの穿孔手段によって穿孔する(図5(b))。
【0035】
さらに端板11に、芯材9を排出させるための排出用手段に備えるピストン部材などから構成される押出手段に有する押体を挿入できる挿入用開口14を穿孔する(図5(b))。
【0036】
次いで、端板11の挿入用開口14より押出手段15の押体を挿入し、同押体の押圧力によって芯材9を本体8より引き離して端板10の排出用開口13(図5(b)参照)から外部に押し出す(図5(c))。
【0037】
次いで、本体8の両端部における端板10、11間を、ジャッキ装置などの伸長手段によって積層方向に伸長させ(図5(d)中のStep.1)、同端板10、11のいずれか一方を固定するとともに他方をウインチなどの巻き取り手段によって同積層方向の軸回りに回動させて本体8を捻り(図5(d)中のStep.2)、この捻った状態を維持して本体8のゴム体の弾性反発を抑止する。
【0038】
次いで、本体8の積層方向に略直交する方向より刃体などの切断手段16によって同本体8を所望の厚みでスライスして行き(図5(d)中のStep.3)、かつ、スライスの進行に合わせて同本体8における積層方向への伸長および捻れを適宜に調節しながら加えて行く。
【0039】
図6は、解体した芯材入り免震ゴム7を示していて、実施例では、端板10および端板11と、3つにスライスした本体8の、合わせて5つに解体しているが、免震ゴムのサイズなどで解体する数量は変化する。
【0040】
そして、これら解体した各部分は、金属また樹脂(ゴム)を摘出する所定の処理装置(処理施設)に搬送されてリサイクル処理される。
【0041】
また、排出用手段による芯材9の排出を、図7に示すように、排出用手段に備える加熱手段17のガスバーナなどの加熱体によって融解した芯材9を、端板10の排出用開口13から流し出すようにする場合がある。
【0042】
また融解した芯材9は、実施例中の図には示していないが、端板11の挿入用開口14から吸引して排出する場合がある。
【0043】
そして、加熱手段17によって芯材9を加熱する場合は、芯材9のサイズなどにより、必要に応じて本体8乃至端板10、11を冷却しながら行う場合がある。
【0044】
なお前記芯材は、鉛、錫などの金属で構成されて、鉛プラグや錫プラグなどと称されるものが一般的であるが、その他融解させて取り出すことのできる素材よりなる芯材ならば、上述の加熱手段を利用する方法を適用することができる。
【0045】
また芯材9の排出は、実施例中の図には示していないが、端板11の挿入用開口14や端板10の排出用開口13より挿入するドリルビットなどの切削手段により同芯材9を削り取って排出する場合がある。
【0046】
また、それぞれの解体工程で使用する装置は、実施例で示した装置に限定するものではなく別の装置を使用する場合もあり、特に免震ゴムのサイズが大きい場合などは、建設用機械を用いて行う場合がある。
【0047】
また、実施例に示した免震ゴムの形状は一例であり、例えば、実施例に示す円柱状の他にも直方体のものもある。
【0048】
また、実施例に示した本体の両端部に有する端板は、平面視において円形や多角形のフランジを有するもの、フランジ状の他にも鍔のない本体とほぼ同じ径の端板もあって、この端板を有する免震ゴム解体する場合には、端板にジャッキ装置などの伸長手段に有する係着手段たる爪体を係着させるための治具(アタッチメント部材)を取り付けている。
【0049】
そして、免震ゴムを解体する際は、通常、本体の端部に有する端板を上下にして免震ゴムを固定しているが、免震ゴムのサイズや固定台の形態によっては、本体を倒して横にして免震ゴムを固定する場合がある。
【0050】
また、免震ゴムを解体する際の捻りや伸長は、少なくとも上下どちらか一方の端板を用いて行えばよいが、上下両方の端板を用いて捻りや伸長を行ってもよい。
【0051】
また、実施例では、伸長してから捻りを加えているが、捻ってから伸長させる場合もあるし、伸長させる必要がない場合もある。
【0052】
実施例における図中の符号17は、所定の免震ゴムを建築物の柱下端および基礎に固定する際の固定用ボルトを通すためのボルト孔、図中の符合18は、穿孔により切断された端板10、11の切断片である。
【符号の説明】
【0053】
1 免震ゴム
2 本体
3 端板
4 端板
5 薄板
6 切断手段
7 芯材入り免震ゴム
8 本体
9 芯材
10 端板
11 端板
12 薄板
13 排出用開口
14 挿入用開口
15 押出手段
16 切断手段
17 加熱手段
18 ボルト孔
19 切断片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体が主にゴムなどの弾性体を積層して形成した免震ゴムの解体方法であって、積層方向に略直交する方向から本体を切断手段によって所望の厚みに切断して解体する際、同本体を前記積層方向の軸回りに捻って切断する免震ゴムの解体方法。
【請求項2】
前記本体の積層方向に、自身が塑性変形することによって本体の積層方向に直交する方向の応力を吸収する芯材が長手方向となるように内装し、前記芯材の両端が上下の端板により挟まれた免震ゴムの解体方法であって、一方の端板に少なくとも芯材の径と同程度または少々大なる排出用開口を形成するとともに、他方の端板に前記芯材の排出用手段を挿入できる挿入用開口を形成し、前記挿入用開口より前記排出手段を挿入して前記芯材を前記排出用開口より外部に排出した後、前記本体を所望の厚みに切断する請求項1に記載の免震ゴムの解体方法。
【請求項3】
前記排出用手段が、挿入用開口より挿入する押体によって前記芯材を排出用開口から押し出すことができる押出手段を備えてなる請求項2に記載の免震ゴムの解体方法。
【請求項4】
前記排出用手段が、挿入用開口乃至排出用開口より挿入する加熱体によって前記芯材を融解できる加熱手段を備えてなる請求項2に記載の免震ゴムの解体方法。
【請求項5】
前記融解した芯材を、挿入用開口乃至排出用開口より流出乃至吸引によって排出する請求項4に記載の免震ゴムの解体方法。
【請求項6】
前記切断手段によって切断して解体する前に、本体を積層方向に伸長する請求項1または請求項2に記載の免震ゴムの解体方法。
【請求項7】
前記捻りの度合いを徐々に増しながら本体を切断する請求項1または請求項2に記載の免震ゴムの解体方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−12834(P2012−12834A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150204(P2010−150204)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(510182180)神鋼産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】