説明

免震台

【課題】固定プレート上に球体軸受を介して移動プレートを任意方向に移動自在に搭載し、移動プレートに伝達される振動を緩和するダンパー及び移動プレートの原位置への復帰手段を備えた免震台において、全体の高さをできるだけ低く設定できるようにすることである。
【解決手段】四角形の固定プレート11は各辺に沿う4個所のリニヤガイド16を備え、移動プレート17はリニヤガイド16ごとにダンパーユニット21を介して固定プレート11に取り付けられる。ダンパーユニット21はリンク22とロータリダンパー23により構成され、リンク22はリニヤガイド16のスライダー15に対してはスライダー取付軸26によって、また移動プレート17に対しては移動プレート取付軸27によってそれぞれ回転自在に取り付けられる。ロータリダンパー23はスライダー取付軸26に取り付けられ、取付軸26とリンク22との相対回転によってダンパー作用を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、精密機器その他の物品を載せたプレートに地震等の振動が加わった場合において、プレートに伝わる振動を抑制しその上に搭載された物品を保護する免震台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている免震台として特許文献1に記載されたものは、物品を搭載するプレートの下面にX方向のガイドレールが設けられ、そのガイドレールに嵌められた上段案内部材が水平面内で対角方向に延びた弾性部材によって支持される。前記案内部材は上段スライダーに固定され、その上段スライダーの下面にY方向のガイドレールが設けられる。そのガイドレールに嵌められた下段案内部材も水平面内で対角方向に延びた弾性部材によって支持され、下段案内部材に下段スライダーが取り付けられ、その下段スライダーが床面に設置される。
【0003】
床面に加えられた地震等の振動によって、下段案内部材及び上段案内部材がX、Y方向に移動すると同時に、弾性部材によってプレート上の物品に作用する振動を緩和し、プレートを原位置に復帰させる。
【0004】
前記の免震台は、原位置においては弾性部材によって振動が支えられるものであるから、原位置における剛性が不足する問題がある。この問題を解決すべく、特許文献2に開示された免震台は、固定プレートにX方向のリニヤガイド、移動プレートにY方向のリニヤガイドがそれぞれ設けられ、移動プレートが固定プレート上をXY方向に移動可能となっている。さらに、前記の各リニヤガイドに結合されたベルトが環状に配置され、そのベルトをロータリダンパーに掛け渡し、ベルトがリニヤガイドの移動に伴って駆動されることによりロータリダンパーが作動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−240719号公報
【特許文献2】特開2011−43227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来例は、いずれのも場合も、X、Y方向のリニヤガイドを備えた2枚のプレートを2段に重ねることによってXY機構を構成した構造であるから、免震台の上下方向の高さ(丈)が高くなり、プレート上に載せる物品の高さによっては天井に当たる不都合もある。
【0007】
そこで、従来に比べ高さの低い免震台を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、この発明に係る免震台は、固定プレートと、その固定プレート上において任意方向に自由移動可能に搭載された移動プレートと、前記移動プレートと固定プレートとの間を連結するリンクと、前記移動プレートを原位置へ復帰させる復帰手段を備えた免震台において、前記固定プレートは一定の交差角をもった複数のリニヤガイドを備え、前記リンクは前記リニヤガイドに対応して複数個所に設けられ、各リンクは前記リニヤガイドのスライダーに対してスライダー取付軸及び移動プレートに対して移動プレート取付軸によってそれぞれ回転自在に取り付けられた構成としたものである。
【0009】
前記構成の免震台は、固定プレートに対して移動プレートを一定の方向に移動させると、リンクのスライダー取付軸側の端部はリニヤガイドによって直線的に移動する一方、移動プレート取付軸側の端部は移動プレートの移動方向に追従して移動する。これにより、リンクは一定角度範囲で揺動し、移動プレートはリンクの長さによって制限される範囲内で任意の方向に移動することができる。言い替えれば、リンクは移動プレートの任意方向への移動を妨げることがない。
【0010】
逆に、移動プレートを固定し固定プレートを移動させた場合、リンクが揺動しながら固定プレートに追従して移動し、固定プレートはリンクの長さによって規制される範囲内で任意の方向に移動することができる。
【0011】
なお、移動プレートが一方のリニヤガイドに対し平行に移動した場合は、そのリニヤガイドに一端部が取り付けられたリンクは平行するのみで揺動することはない。しかし、他方のリニヤガイドは前記リニヤガイドに対し一定の交差角を持っており平行ではないので、そのリニヤガイドに一端部が取り付けられたリンクは揺動する。
【0012】
実際に免震台として使用されたときは、移動プレート上に保護対象となる各種の物体が搭載される。その物体の重量を支えながら移動プレートが静止状態にある場合において、固定プレートに地震等の振動が加えられると、静止状態にある移動プレートに対し固定プレートが移動する。各リンクの移動プレート側の端部は静止状態にあり、固定プレート側の端部は固定プレートに対しスライドする。したがって、固定プレートの振動が直接移動プレート及びそれに搭載された物体に及ぶことが防止される。即ち、免震効果が発揮される。
【0013】
しかし、前記の免震効果だけでは固定プレートに加えられる振動の減衰効果が少なく、振動の減衰時間が長くなる。また、移動プレートとリンクの連結部分の摩擦によって移動プレートにある程度の振動が伝わることが避けられず、しかもその振動が長く続くことになる。
【0014】
このため、前記リンクにロータリダンパーが取り付けられ、前記ロータリダンパーの回転軸が前記スライダー取付軸又は前記移動プレート取付軸の少なくとも一方に連結され、連結された少なくとも一方の取付軸と前記ロータリダンパーの回転軸が一体化され、前記リンクの相対回転によってダンパー作用が行われるようにした構成を付加することが望ましい。この構成を付加すると前記の振動が迅速に減衰される。
【0015】
また、前述のように、移動プレートが一方のリニヤガイドに対し平行移動した場合は、そのリニヤガイドに一端部が取り付けられたリンクは平行移動するので揺動せず、ロータリダンパーによるダンパー作用は発揮されない。しかし、他方のリニヤガイドに取り付けられたリンクは揺動するので、ロータリダンパーを作動させることができ、ダンパー作用を発揮させることができる。
【0016】
前記の復帰手段の具体例としては、トーションばね等の弾性部材を用いる手段がある。また、移動プレートを支持する球体軸受を固定プレートの上面に設けた浅い凹球面等の凹部によって受ける手段もある。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る免震台は、固定プレートに対し移動プレートをリンクによって連結し、そのリンクを移動プレートに対して回転自在、かつ固定プレートに対してスライド自在に取り付けることにより、移動プレートを任意の方向に移動させることができる。その結果、従来のようなXY機構は不要となり、前記リンクは固定プレートと移動プレートの間の同一平面上に配置することができるので、免震台の高さを従来に比べ低く設定できる効果がある。
【0018】
また、前記リンクの揺動に伴う取付軸との相対回転を利用してロータリダンパーを作動させるようにしたので、装置がコンパクト化される。さらに、移動プレートの原位置への復帰手段として、トーションばね等の弾性体を用いることにより、復帰手段のコンパクト化を図ることができる。
【0019】
さらに、復帰手段として移動プレートを支持する球体軸受を固定プレートの上面に設けた浅い凹球面等の凹部によって受ける手段を採用した場合は、特別な部品は不要である利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施形態1の免震台の平面図である。
【図2】図2は、同上の正面図である。
【図3】図3は、同上の一部拡大断面図である。
【図4】図4は、同上の使用状態における平面図である。
【図5】図5は、実施形態2の免震台の横断平面図である。
【図6】図6は、同上の正面図である。
【図7】図7は、実施形態3の免震台の平面図である。
【図8】図8は、実施形態4の免震台の平面図である。
【図9】図9は、同上の正面図である。
【図10】図10は、実施形態5の免震台の平面図である。
【図11】図11は、同上の正面図である。
【図12】図12は、実施形態6の免震台の平面図である。
【図13】図13は、実施形態7の免震台の平面図である。
【図14】図14は、同上の正面図である。
【図15】図15は、実施形態8の免震台の平面図である。
【図16】図16は、同上の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
[実施形態1]
【0022】
図1から図4に示した実施形態1に係る免震台10は、四角形の固定プレート11を有する。固定プレート11の四辺にはそれぞれガイドレール12が設けられる。各ガイドレール12はチャンネル形状のものであり、ビス14により固定プレート11に取り付けられる。四辺のガイドレール12にはそれぞれローラー20に支持されたスライダー15がスライド自在に収納され、ガイドレール12とスライダー15とによってリニヤガイド16が構成される。
【0023】
固定プレート11の上方にこれより小面積で相似形の移動プレート17が各辺ガイドレール12の内側に沿って配置される。移動プレート17の下面中央部分には4本の支持脚18が四角形の頂点位置に配置され、ビス18aにより取り付けられる。移動プレート17は、支持脚18の下端面に設けられた球体軸受19(図2参照)により固定プレート11への球面接触によって任意方向にスムーズな滑りが可能となるよう支持される。
【0024】
前記の球体軸受19は、ケーシングに設けた凹球面に多数の玉を配置し、その玉によって1個の大径の球体を転動自在に支持し、その球体の一部をケーシングの下面に露出させたものであり、例えば「フリーベア」(登録商標)の商品名で知られたものがある。
【0025】
前記各リニヤガイド16のスライダー15と、そのリニヤガイド16に移動プレート17の各辺の内側部分がリンク22によって連結される。そのリンク22に取り付けられるロータリダンパー23、トーションばね24及びリンク側傘歯車25によりダンパーユニット21が構成される。
【0026】
前記のように移動プレート17は、リンク22を介して固定プレート11に連結されているため、移動プレート17が固定プレート11から上方に外れることが防止される。
【0027】
リンク22の一端部は、スライダー15の上面に上向きに突き出した回転自在のスライダー取付軸26(図2参照)に一体に取り付けられる。他端部は、移動プレート17の下面に下向きに突き出した移動プレート取付軸27の下端部に回転自在に取り付けられる。移動プレート取付軸27は、移動プレート17のコーナー部近くに片寄って設けられるので、スライダー15は反対側のコーナー部側に移動する。その結果、リンク22を含んだダンパーユニット21の全体はガイドレール12に対して一定角度α(図1参照)で傾斜した状態に保持される。
【0028】
前記のように、リンク22の一端部は回転自在のスライダー取付軸26に一体に取り付けられ、他端部は移動プレート取付軸27に回転自在に取り付けられるので、リンク22はその傾斜角度αを変えつつ揺動しながら固定プレート11に対して自由に移動することができる。
【0029】
前記のロータリダンパー23は、リンク22の端部上面に固定されたケーシング28(図2参照)の内部にシリコーンオイル等の粘性流体が封入されており、そのセンターに前記のスライダー取付軸26の上端部が液密を保持して貫通される。スライダー取付軸26にはディスク29が設けられ、そのディスク29が粘性流体の中で回転することにより、スライダー取付軸26に回転抵抗が付与される。スライダー取付軸26はロータリダンパー23の回転軸と一体化される。
【0030】
ロータリダンパー23の回転軸は、ダンパーユニット21の揺動に伴って回転することにより回転抵抗が発生するものであればよいので、前記のスライダー取付軸26だけでなく、移動プレート取付軸27もその機能を発揮することができる。即ち、ロータリダンパー23は、スライダー取付軸26又は移動プレート取付軸27のいずれか一方又は双方に取り付ければよく、その取り付けられた取付軸とダンパーユニット21のリンク22との相対回転によってダンパー作用が行われる。
【0031】
前記のトーションばね24は、その一端の固定端部31がリンク22に一体に固定される。他端の捩じり端部32は、リンク22に設けられたブラケット33に回転自在に挿通支持される。トーションばね24は、移動プレート17を原位置に復帰させる復帰手段となる。
【0032】
前記のリンク側傘歯車25は、その回転軸34(図3参照)が前記ブラケット33の内部でトーションばね24の捩じり端部32に同軸状態に結合される。リンク側傘歯車25と直交し相互に噛み合う移動プレート側傘歯車35が、移動プレート17の下面において移動プレート取付軸27に同軸状態に嵌合固定される。
【0033】
前記のようなリンク側傘歯車25と移動プレート側傘歯車35の組み合わせからなる歯車機構を設けることにより、トーションばね24をリンク22に組み付けることができ、ダンパーユニット21のコンパクト化を図ることができる。また、リンク側傘歯車25と移動プレート側傘歯車35の歯数比を適宜選択することにより、ダンパーユニット21の揺動角に対するトーションばね24の捩じり量を変化させることができる。
【0034】
移動プレート17を基準にして見た4個所のダンパーユニット21のリンク22は、図1に示したように、一定の傾斜角αを有し、それぞれの配置姿勢は、固定プレート11の一つのコーナー部Pにおいては、そのコーナー部Pを挟んだ両側のダンパーユニット21のスライダー15が相互に接近し、反対に移動プレート17においてはリンク側傘歯車25が相互に離反する配置となる。前記コーナー部Pと対角位置にあるコーナー部Qにおいても同様の配置となる。
【0035】
なお、コーナー部PとQを結ぶ対角線に交差する対角線Rを基準に見た場合、対角線Rの両側のダンパーユニット21の配置は対称形となる。
【0036】
上記の配置において、移動プレート17は固定プレート11と同心状態にあり、かつ移動プレート17の4辺は固定プレート11の4辺とそれぞれ平行となる。トーションばね24は何らの弾性も発生していない自然状態にある。このような状態にある移動プレート17の位置を原位置と称する。
なお、説明の便宜上、固定プレート11の4辺を基準としたXY座標軸を図1中に示す。
【0037】
実施形態1の免震台10は以上のように構成され、次にその作用について説明する。
【0038】
移動プレート17が原位置にある状態において、移動プレート17は球体軸受19によって任意方向に自由移動可能に搭載されているので、固定プレート11に地震等の外部振動が入力された場合は、固定プレート11が静止状態にある移動プレート17に対して移動し、固定プレート11の振動が直接移動プレート17に伝わることは避けられる。これによって一応の免震効果は得られるが、それだけでは振動の減衰時間が長くなり、移動プレート17に伝達される振動も長く続くなどの問題がある。
【0039】
この問題に対し、実施形態1の場合は前記のリンク22にロータリダンパー23などを搭載したダンパーユニット21を設けることにより対処している。
【0040】
いま、移動プレート17がXY軸(図1参照)に対して角度をもった振動によりA位置からB位置に移動したとする。その移動に伴い各ダンパーユニット21が随伴するので、リニヤガイド16のスライダー15が矢印aの方向にスライドする。これと同時にダンパーユニット21を構成するリンク22がスライダー取付軸26を支点として角度θだけ揺動し、実線の状態から二点鎖線の状態に移動する。
【0041】
前記の揺動に伴い、移動プレート側傘歯車35の回転がこれと噛み合ったリンク側傘歯車25を経て捩じり端部32をねじる結果、トーションばね24に一定の捩じり荷重が付与される。また、揺動の支点となるスライダー取付軸26の回転に伴いロータリダンパー23において回転抵抗が付与され、リンク22の揺動にダンパー作用を与え、移動プレート17の振動を減衰させる。外部振動が無くなると、トーションばね24の捩じり荷重による弾性によって移動プレート17が原位置に復帰する。
【0042】
固定プレート11に加えられる振動の方向によって、移動プレート17がX軸方向に移動するときは、X軸方向と平行のリニヤガイド16に関連したリンク22は平行移動するだけであり揺動を生じることがない。これに対しY軸方向のリンク22は揺動し、そのリンク22を含むダンパーユニット21がダンパー作用及び原位置への復帰作用を行う。同様に、移動プレート17がY軸方向に移動したときはX軸方向のダンパーユニット21が作用する。
【0043】
リニヤガイド16は相互に一定の交差角を持つものを最低2個所に設ければよい。リンク22が1箇所のリニヤガイド16に対して平行移動する場合は、他の1箇所のリンク22においてはダンパー作用及び原位置への復帰作用が行われるからである。リニヤガイド16及びダンパーユニット21全体の数は、ダンパー作用、復帰作用の大きさ等から適宜決定される。
【0044】
図示の場合は、リニヤガイド16を正方形の4辺に沿って4個所に配置し、対角線Rの両側にダンパーユニット21を2個所ずつ対称形に全4個所に配置している。
【0045】
図4は移動プレート17を固定プレート11の1箇所のコーナー部に接するように移動させた状態を示す。そのコーナー部の両側のダンパーユニット21はほぼ直角になり、対角位置の他のコーナー部の両側のダンパーユニット21はほぼ直線状に延びる。
【0046】
このように、移動プレート17を固定プレート11のコーナー部に接した状態でロックするなどして安定させたのち対象物品を搭載する。その後ロックを解除して移動プレート17を自動的に原位置に戻すようにすれば対象物品の搭載作業を容易に行うことができる。
なお、移動プレート17は、固定プレート11の1辺にのみ接するように移動させ、対象物品を搭載する場合もある。
[実施形態2]
【0047】
図5及び図6に示した実施形態2の免震台10は、前記実施形態1の場合において、移動プレート17の面積を固定プレート11の面積と一致するように形成したものである。保護対象物品の搭載面積が拡大され、広い面積の免震化が可能となる。また、移動プレート17がカバーとなって固定プレート11との間に異物の侵入を防止することができる。また、同じ大きさであることから移動プレート17への備え付けが容易となる。
【0048】
なお、図示の場合、前記実施形態1の場合の移動プレート17(図1参照)を基礎プレート17aとして、その上面に面積の広い移動プレート17を重ね、接合等によって一体化したものを示している。この構成によると、実施形態1の基本構成をそのまま利用し、これに広い面積の移動プレート17を重ねて一体化するだけで実施形態2の免震台を得ることができるので、製品の低コスト化を図ることができる。
[実施形態3]
【0049】
図7に示した実施形態3に係るものは、前記実施形態2(図5参照)と同一構造の免震台を4台使用し、これらの免震台を田の字形に配置したものである。各移動プレート17は、4個所のコーナー部にそれぞれ同一半径、かつ90°の中心角をもった円弧溝36を設けてあり、田の字形に組み合わされた4枚の移動プレート17の中心部において4個所の円弧溝36によって環状溝37が形成される。また、隣接した移動プレート17の2個所の円弧溝36によって半環状溝37aが形成される。
【0050】
前記の環状溝37に環状連結部材38、半環状溝37aに半環状連結部材38aをそれぞれ強制嵌合することにより、各移動プレート17を連結し面積の広い移動プレート組立体39を構成している。各固定プレート11はリンク22を含むダンパーユニット21を介して間接的に結合される。
【0051】
円弧溝36は移動プレート17の1箇所のコーナー部に設け、田の字形に組み合わせる際に各円弧溝36を中心側に向けて配置すればよいが、前記のように4個所のコーナー部に設けておけば組み合わせ時の自由度が高くなる。
【0052】
なお、図示の場合は、理解の便宜上、移動プレート組立体39を固定プレート11に対して斜めに移動させた状態で示している。
[実施形態4]
【0053】
図8及び図9に示した実施形態4の場合は、前記の実施形態1の場合(図1〜図4参照)におけるダンパーユニット21の構成に一部変更を加えたものである。
【0054】
即ち、この場合のダンパーユニット21は、リンク22の一端部がスライダー取付軸26に一体に取り付けられ、他端部が移動プレート取付軸27の下端部に回転自在に取り付けられる点、ロータリダンパー23が前記のスライダー取付軸26に取り付けられる点は実施形態1の場合と同様である。しかし、トーションばね24に代えて圧縮コイルばね41を使用し、またリンク側傘歯車25に代えてプーリー42を使用している点において相違がある。
【0055】
圧縮コイルばね41は、リンク22に立てたピン43に一端部が係合され、他端部にベルト44の一端部が連結される。プーリー42は移動プレート取付軸27に嵌合一体化され、そのプーリー42にベルト44の他端部を一定量巻き付けている。平常時において、各圧縮コイルばね41は均等に伸びた状態に保持される。
【0056】
ベルト44の巻き付け方向は、移動プレート17の対角位置のコーナー部P、Qをそれぞれ挟んだ両側のダンパーユニット21においては反対向きとなっている。即ち、一方のダンパーユニット21におけるベルト44の巻き付け方向Rに対し、他方のダンパーユニット21においては反対の巻き付け方向Lとなっている。その結果、各圧縮コイルばね41のばね力がバランスし、移動プレート17は原位置に保持される。また、各ダンパーユニット21の傾斜角度αも一定に保持される。
【0057】
前記の原位置において、固定プレート11に外部振動が入力され、相対的に移動プレート17がA位置からB位置に移動したとすると、各スライダー15が矢印aの方向にスライドする。これと同時にダンパーユニット21はスライダー取付軸26を支点として角度θだけ揺動し、実線の状態から二点鎖線の状態に移動する。
【0058】
前記の揺動に伴い揺動の支点となるスライダー取付軸26が回転することにより、ロータリダンパー23において回転抵抗が付与される。その結果、ダンパーユニット21の揺動にダンパー作用が与えられ、移動プレート17の振動を減衰させる。
【0059】
また、コーナー部Pの両側においては、巻き付け方向Lのものはプーリー42がその巻き付け方向に回転するので、圧縮コイルばね41のばね力が増大する。巻き付け方向Rのものはプーリー42が巻き付け方向と反対方向に回転するのでばね力が減少する。コーナー部Qの両側においては、巻き付け方向Lのもののばね力が減少し、巻き付け方向Rのもののばね力が増大する。
【0060】
外部振動が無くなると、ばね力の増大した圧縮コイルばね41のばね力により移動プレート17が原位置に復帰する。
【0061】
なお、前記のプーリー42を用いることなくベルト44を移動プレート取付軸27に直接巻き付けてもよい。さらに、プーリー42を用いる場合はその軸の径、また移動プレート取付軸27に直接巻き付けるときはその軸の径を変化させることで、ベルト44の巻き付け量を変化させることができる。
[実施形態5]
【0062】
図10及び図11に示した実施形態5の免震台10は、前記実施形態4の圧縮コイルばね41に代えて捩じりコイルばね46を使用したものである。即ち、移動プレート取付軸27にスリーブ47(図11参照)を回転可能に嵌合し、そのスリーブ47に捩じりコイルばね46のコイル部48を嵌める。捩じりコイルばね46の一方の自由端部を移動プレート17に、他方の自由端部をダンパーユニット21のリンク22にそれぞれ係合させ、一定のばね力を発生させる。
【0063】
すべてのダンパーユニット21について捩じりコイルばね46のばね力の大きさを一定に設定することにより、移動プレート17は原位置に保持される。
【0064】
移動プレート17が原位置にある場合において、固定プレート11に外部振動が入力され、移動プレート17がA位置からB位置に移動したとすると、各スライダー15が矢印aの方向にスライドする。これと同時にダンパーユニット21はスライダー取付軸26を支点として角度θだけ揺動し、実線の状態から二点鎖線の状態に移動する。
【0065】
前記の揺動に伴い揺動の支点となるスライダー取付軸26が回転することにより、ロータリダンパー23において回転抵抗が付与される。その結果、ダンパーユニット21の揺動にダンパー作用が与えられ、移動プレート17の振動を減衰させる。
【0066】
コーナー部Pの両側においては、一方のダンパーユニット21の捩じりコイルばね46のばね力が増大する一方、他方のダンパーユニット21の捩じりコイルばね46のばね力が減少する。コーナー部Qにおいても同様である。外部振動が無くなると、ばね力の増大した捩じりコイルばね46のばね力によって移動プレート17が原位置に復帰する。また、トーションばねと同様に捩じりコイルばね46の自由状態を原位置として取り付けても使用可能である。
[実施形態6]
【0067】
図12に示した実施形態6の免震台10は、前記実施形態5(図10、図11参照)のように、復帰手段として捩じりコイルばね46を用いた場合において、移動プレート17の各辺当たり一対のダンパーユニット21を設け、それぞれ平面的に交差するように配置したものである。各ガイドレール12に2個のスライダー15が設けられ、それぞれのスライダー取付軸26に各ダンパーユニット21のリンク22の一端部が取り付けられる。また移動プレート17の各辺に沿って2個所に設けられた移動プレート取付軸27に各ダンパーユニット21のリンク22の他端部が取り付けられる。
【0068】
この場合の作用は、基本的には前記実施形態5の場合と同様であるが、ダンパーユニット21の数が2倍であるため、ダンパー作用、復帰作用において発生するばね力も倍増する。
[実施形態7]
【0069】
図13及び図14に示した実施形態7の免震台10は、前述の各実施形態において原位置への復帰手段の構成において相違がある。
【0070】
即ち、前述の各実施形態における復帰手段は、ダンパーユニット21の構成部材であるトーションばね24(図1参照)、圧縮コイルばね41(図8参照)、捩じりコイルばね46(図10参照)等の弾性体によって構成されていた。これに対し、この実施形態7の場合の復帰手段は、支持脚18の球体軸受19が載る固定プレート11の上面に、球体軸受19の曲率半径より大きい曲率半径をもった緩やかな凹球面49を設けることにより構成される。各球体軸受19が凹球面49の底面中央にある状態において移動プレート17は原位置に保持される。
【0071】
この場合のダンパーユニット21は、リンク22とロータリダンパー23によって構成され、リンク22の一端がスライダー取付軸26に、他端が移動プレート取付軸27にそれぞれ取り付けられる。その他の構成は他の実施形態の場合と同様である。
【0072】
図13及び図14に示した原位置において、固定プレート11に外部振動が入力され、移動プレート17がA位置からB位置に相対的に移動したとすると、各スライダー15が矢印aの方向にスライドする。これと同時にダンパーユニット21はスライダー取付軸26を支点として角度θだけ揺動し、実線の状態から二点鎖線の状態に移動する。揺動の支点となるスライダー取付軸26の回転に伴いロータリダンパー23において回転抵抗が付与され、ダンパーユニット21の揺動にダンパー作用を与え、移動プレート17の振動を減衰させる。
【0073】
また、移動プレート17の移動に伴い支持脚18の球体軸受19は凹球面49の周縁の方向に移動し、上下位置が若干高くなる。外部振動が無くなると、球体軸受19は移動プレート17の自重により凹球面49の底面中央部に戻る。これにより移動プレート17は原位置に復帰する。凹球面49の他に凹状の円すい面等の凹部を採用することができる。
[実施形態8]
【0074】
図15及び図16に示した実施形態8の免震台10は、前記実施形態7(図13、図14参照)の場合と同様に、固定プレート11に凹球面49を設けているが、前述の支持脚18及び球体軸受19に相当するものは、1個の球体50に置き替り、球体50が凹球面49に載る。また、移動プレート17の下面には前記の各凹球面49に対向した移動プレート側凹球面51が設けられ、球体50は上下の凹球面49、51間に介在され支持脚の機能を果たす。
【0075】
球体50が各凹球面49、51の底面中央部にある状態において移動プレート17は原位置に保持される。
【0076】
外部振動の入力に伴って移動プレート17がA位置からB位置に相対的に移動したとすると、各スライダー15が矢印aの方向にスライドする。これと同時にダンパーユニット21はスライダー取付軸26を支点として角度θだけ揺動し、実線の状態から二点鎖線の状態に移動する。揺動の支点となるスライダー取付軸26の回転に伴いロータリダンパー23において回転抵抗が付与され、ダンパーユニット21の揺動にダンパー作用を与え、移動プレート17の振動を減衰させる。
【0077】
また、移動プレート17の移動に伴い球体50は凹球面49、51の周縁の方向に移動し、上下位置が若干高くなる。外部振動が無くなると、球体50は移動プレート17の自重により凹球面49の底面中央部に戻る。同時に球体50は移動プレート側凹球面51の底面中央部に戻り原位置に復帰する。
【0078】
なお、この場合も凹球面49、51の他に凹状の円すい面等の凹部を採用することができる。
【符号の説明】
【0079】
A、B 移動プレートの位置
P、Q コーナー部
R 対角線
10 免震台
11 固定プレート
12 ガイドレール
14 ビス
15 スライダー
16 リニヤガイド
17 移動プレート
17a 基礎プレート
18 支持脚
18a ビス
19 球体軸受
20 ローラー
21 ダンパーユニット
22 リンク
23 ロータリダンパー
24 トーションばね
25 リンク側傘歯車
26 スライダー取付軸
27 移動プレート取付軸
28 ケーシング
29 ディスク
31 固定端部
32 捩じり端部
33 ブラケット
34 回転軸
35 移動プレート側傘歯車
36 円弧溝
37 環状溝
37a 半環状溝
38 環状連結部材
38a 半環状連結部材
39 移動プレート組立体
41 圧縮コイルばね
42 プーリー
43 ピン
44 ベルト
46 捩じりコイルばね
47 スリーブ
48 コイル部
49 凹球面
50 球体
51 移動プレート側凹球面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定プレートと、その固定プレート上において任意方向に自由移動可能に搭載された移動プレートと、前記移動プレートと固定プレートとの間を連結するリンクと、前記移動プレートを原位置へ復帰させる復帰手段を備えた免震台において、前記固定プレートは一定の交差角をもった複数のリニヤガイドを備え、前記リンクは前記リニヤガイドに対応して複数個所に設けられ、各リンクは前記リニヤガイドのスライダーに対してスライダー取付軸及び移動プレートに対して移動プレート取付軸によってそれぞれ回転自在に取り付けられたことを特徴とする免震台。
【請求項2】
前記リンクにロータリダンパーが取り付けられ、前記ロータリダンパーの回転軸が前記スライダー取付軸又は前記移動プレート取付軸の少なくとも一方に連結され、連結された少なくとも一方の取付軸と前記ロータリダンパーの回転軸が一体化され、前記リンクの相対回転によってダンパー作用が行われることを特徴とする請求項1に記載の免震台。
【請求項3】
前記復帰手段は、前記移動プレート取付軸と同軸状態に移動プレートに固定された移動プレート側傘歯車と、前記リンクに回転自在に設けられ前記移動プレート側傘歯車と噛み合ったリンク側傘歯車と、前記リンクに搭載されたトーションばねとにより構成され、前記トーションばねの固定端部は前記リンクに固定され、捩じり端部は前記リンク側傘歯車の回転軸に同軸状態に結合され、前記トーションばねの自由状態において前記移動プレートが原位置に保持されることを特徴とする請求項1に記載の免震台。
【請求項4】
前記移動プレート側傘歯車とリンク側傘歯車の歯車比を適宜選択することにより、前記ダンパーユニットの揺動角に対するトーションばねの捩じり量を変化させるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の免震台。
【請求項5】
前記復帰手段は、前記移動プレート取付軸又はその取付軸に嵌合一体化されたプーリーのプーリー軸に巻き付けられたベルトと、前記リンクに固定端部が固定された圧縮コイルばねとにより構成され、前記ベルトの自由端部と圧縮コイルばねの自由端部が相互に連結され、前記圧縮コイルばねのばね力が一定の大きさにある状態において前記移動プレートが原位置に保持されることを特徴とする請求項1に記載の免震台。
【請求項6】
前記ベルトが巻き付けられる移動プレート取付軸又はプーリー軸の径を変化させることによりベルトの巻き付け量を変化させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の免震台。
【請求項7】
前記復帰手段は、前記移動プレート取付軸に巻き付けられた捩じりコイルばねによって構成され、前記捩じりコイルばねの一方の自由端部を前記移動プレートに、他方の自由端部を前記リンクにそれぞれ係合させ、前記捩じりコイルばねのばね力が一定の大きさにある状態又は自由状態において前記移動プレートが原位置に保持されることを特徴とする請求項1に記載の免震台。
【請求項8】
前記リンクが、各リニヤガイドに対応して一対かつ相互に平面的に交差する状態に配置されたことを特徴とする請求項7に記載の免震台。
【請求項9】
前記復帰手段は、前記移動プレートを固定プレート上において任意方向に自由移動させる手段として移動プレートの支持脚の下端に球体軸受を設け、その球体軸受を介して固定プレートの上面に支持脚を載せる構成を採用し、さらに、その球体軸受が載る固定プレートの上面に球体軸受の曲率半径より大きい曲率半径をもった凹部を設け、前記球体軸受が凹部の底面中央にある状態において前記移動プレートが原位置に保持される位置関係にあることを特徴とする請求項1に記載の免震台。
【請求項10】
前記復帰手段は、前記移動プレートと固定プレートとの対向面の複数個所に同じ曲率半径をもった凹球面が設けられ、各対向した凹球面の間にこれより曲率半径の小さい球体が介在され、前記球体が対向する各凹球面の底にある状態において前記移動プレートが原位置に保持されることを特徴とする請求項1に記載の免震台。
【請求項11】
前記移動プレート及び固定プレートが正方形に形成され、前記移動プレートはその原位置において前記固定プレートと同心かつ各辺平行に設定され、前記リニヤガイドが前記移動プレートの各辺に沿って前記固定プレート上の4個所に設けられ、前記リニヤガイドごとに設けられる4個所のリンク及び復帰手段は、前記固定プレートの対角線の両側においてそれぞれ対称形に配置されたことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の免震台。
【請求項12】
前記移動プレートが固定プレートより小面積かつ相似形に形成され、固定プレートの1辺に移動プレートの一辺が重なるように移動させてロックし、移動プレート上に保護対象物品を搭載した後ロックを解除して移動プレートを原位置に戻すことを特徴とする請求項11に記載の免震台。
【請求項13】
前記固定プレートと移動プレートが同一面積であることを特徴とする請求項11に記載の免震台。
【請求項14】
前記移動プレートの少なくとも一つのコーナー部に90°の中心角を有する円弧溝を設け、同様の構造をもった4個の免震台を前記円弧溝を中心側となる姿勢で田の字形に配置し、各円弧溝によって形成された環状溝に環状連結部材を強制嵌合することにより各移動プレートを平面的に連結したことを特徴とする請求項13に記載の免震台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−83299(P2013−83299A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223222(P2011−223222)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】