免震床構造
【課題】設置効率の高い免震床構造の提供を目的とする。
【解決手段】上面に摺動面1を備えた固定ベース2を床基部3上に所定ピッチで固定して形成される床支持部4と、
下端が前記固定ベース2の摺動面1に摺動自在に支承され、上面に床支持脚5を立設した摺動ベース6間をジョイントビーム7により連結して摺動ベース6が格子点に位置する正方形格子状に形成される形成される可動構造部8と、
可動構造部8上に配置される複数の床パネル9とを有し、
前記ジョイントビーム7は、鉛直方向にねじ込まれるボルト10を使用して平面視における格子形状を維持可能に摺動ベース6に連結されるとともに、各ジョイントビーム7は、同一水平面上に位置するように高さ調整部11において高さ調整されており、
かつ、床パネル9は、床支持脚5の上面に四隅裏面を支承されて非連結状態で支持される。
【解決手段】上面に摺動面1を備えた固定ベース2を床基部3上に所定ピッチで固定して形成される床支持部4と、
下端が前記固定ベース2の摺動面1に摺動自在に支承され、上面に床支持脚5を立設した摺動ベース6間をジョイントビーム7により連結して摺動ベース6が格子点に位置する正方形格子状に形成される形成される可動構造部8と、
可動構造部8上に配置される複数の床パネル9とを有し、
前記ジョイントビーム7は、鉛直方向にねじ込まれるボルト10を使用して平面視における格子形状を維持可能に摺動ベース6に連結されるとともに、各ジョイントビーム7は、同一水平面上に位置するように高さ調整部11において高さ調整されており、
かつ、床パネル9は、床支持脚5の上面に四隅裏面を支承されて非連結状態で支持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震時の横揺れエネルギーを吸収する免震床構造としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において免震床構造は、床基部上に固定される移動支承部と、H形鋼により枠組みされ、枠内部を格子状に区画した床構造体と、床構造体の表面に配置される複数枚の床パネルとを有して構成され、地震による横揺れ発生時には、床構造体への移動エネルギーが床構造体と床基部とを連結するバネにより吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2772796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来における免震床構造は床面積に相当する大きさの床構造体を構成に含むために、施工現場での溶接作業等を伴う大掛かりな床構造体の組立作業、あるいは施工現場外での床構造体の組立が行われた場合には、施工現場への大掛かりな搬入作業を要し、設置効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、設置効率の高い免震床構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
免震床構造は、上面に摺動面1を備えた固定ベース2を床基部3上に所定ピッチで固定して形成される床支持部4と、下端が前記固定ベース2の摺動面1に摺動自在に支承され、上面に床支持脚5を立設した摺動ベース6間をジョイントビーム7により連結して摺動ベース6が格子点に位置する正方形格子状に形成される形成される可動構造部8と、可動構造部8上に配置される複数の床パネル9とを有して構成される。
【0007】
地震時に床基部3に対して相対移動して地震エネルギーを吸収する可動構造部8が、独立した構成部品である摺動ベース6同士をジョイントビーム7により連結して形成される本発明において、摺動ベース6、およびジョイントビーム7の単体は容積が小さなために、取り扱いが簡単で、組立作業性も向上する。また、ジョイントビーム7の連結にはボルトが使用されるために、組立に際して溶接機等の特別の機器を要しないために、室内での組立も可能になる上に、ボルトは鉛直方向にねじ込まれるために、ボルト締め作業も容易になる。
【0008】
この結果、可動構造部8の構成部品を施工現場に搬入した後、施工現場で組み立てる工順をとることができるために、室外で組み立てた大型の組立品の室内への搬入等も不要になる。
【0009】
さらに、床面は可動構造部8上に特別の締結操作、固定操作を伴うことなく単に床パネル9を載置させるだけで構成されるために、床面形成作業においても、高い作業性が保証される。
【0010】
一方、上記従来例のように、長尺の枠材を使用して枠組みした構造物は、外力に対して全体が一体物として挙動することが保証されるが、摺動ベース6間をジョイントビーム7で連結した本発明の可動構造部8は、各摺動ベース6の移動自由度は大きくなる。とりわけ、施工現場での組立作業性を考慮してジョイントビーム7による床支持脚5同士の連結手段にボルト10を使用する本発明においては、地震力等の大きな外力に対して可動構造部8はトラス構造体としての要素が多くなるために、曲げ応力分担による変形防止が必要な外力に対しては、一部の床支持脚5の浮き上がり、傾斜等の発生による床パネル9の浮き上がり等が生じる可能性がある。
【0011】
これを解決するためには、床パネル9を適宜のパネル締結具を使用して可動構造部8に締結して床パネル9と可動構造部8全体でラーメン構造を構成して曲げモーメントに対する負担要素を付加し、あるいは床パネル9の可動構造部8に対する移動を規制して床パネル9の浮き上がり等を防止することも可能であるが、この場合、床パネル9の固定操作が発生するために、組立作業性を低下させる要因となってしまう。
【0012】
本発明は、床パネル9の固定によるラーメン構造の構築、あるいは従来例のような長尺枠材を使用した可動構造部8の一体化による施工効率の低下を防止しつつ、地震時に対する構造安定性の確保をジョイントビーム7の水平配置により実現するものである。
【0013】
すなわち、本発明において、可動構造部8はジョイントビーム7により摺動ベース6を連結することによって、摺動ベース6が格子点に位置する正方形格子状に形成される。格子形状は、例えば、摺動ベース6とジョイントビーム7とをボルト10による締結方向に所定長嵌合させることによって維持可能に構成され、外力に対してひし形に変形することなく平面方向の安定性が概ね確保される。
【0014】
このように、溶接を使用することなく水平方向一方向に対して概ね剛節として挙動する連結構造は比較的容易に実現可能であるが、これに加えて高さ方向への剛節構造を付加することは、高さ方向への移動に対する嵌合構造を新たに設定する等、全体構造が複雑になる上に、ボルト締め箇所も多くなり、組立作業性の低下を惹起する。
【0015】
これを解決するため、高さ方向でのトラス類似の構造を前提とした上で、パネルの浮き上がり等の不具合の解決が図られる。すなわち、パネルの浮き上がり等の不具合は、一部の床支持脚5、ひいては摺動ベース6の浮き上がり、あるいは傾きに起因しており、摺動ベース6への外力がジョイントビーム7からの軸力として与えられるトラス構造を前提とする場合、免震床構造に含まれる高さ調整部11によって、床基部3に不陸等が存在しても各ジョイントビーム7が同一水平面上に位置するように高さ調整することにより、摺動ベース6へのジョイントビーム7を伝達してくる軸力による垂直分力の発生を防止することができ、結果、摺動ベース6の傾き、浮き上がり等が効果的に防止できる。
【0016】
高さ調整部11は、ジョイントビーム7の高さ、すなわち、ジョイントビーム7の連結基端の高さを調整可能であれば、例えば、摺動ベース6等、適宜箇所に配置することができるが、固定ベース2側に配置することも可能であり、このように構成すると、上方に開放された摺動面1の高さをレーザレベル計等を使用して簡単に計測することができるために、作業性が向上する。
【0017】
また、
床支持脚5は、上面に床パネル9の四隅部裏面を支承するパネル受け板18を備えるとともに、
パネル受け板18には、床パネル9の辺縁に当接して該床パネル9の横ずれを防止する平面視十文字形状のストッパ突条19が突設される免震床構造を構成すると、床支持脚5上に非固定状態で載置、保持される床パネル9の地震発生時のズレ等を完全に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、おおがかりな組立作業を要しないために、設置効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を示す全体斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図2の3A-3A線断面図である。
【図4】図2の要部拡大図で、(a)は床支持部を示す断面図、(b)は図3の4B-4B線断面図である。
【図5】床パネルの支持状態を示す拡大断面図である。
【図6】図5の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、免震床構造は、床基部3上に構築される床支持部4と、床支持部4上にスライド自在に支持される可動構造部8と、可動構造部8の上に構築される床部22とからなる。可動構造部8はスプリング23を介して床基部3に連結されており、地震発生時の横揺れにより可動構造部8が床支持部4に対して相対移動した際の横揺れのエネルギー吸収、および、地震終了時の可動構造部8の原位置復帰が行われる。
【0021】
また、建物躯体と床部22との境界部には、建物躯体の壁面に沿って固定床部27が設けられており、一端縁が床部22に相対位置不変に配設され、他端が固定床部27上にスライド自在に載置されるボーダパネル24が設置され、床部22が可動構造部8とともにスライドした際の建物躯体との隙間寸法の変化を吸収する。
【0022】
床支持部4は、固定ベース2を床基部3上に所定ピッチ、正確には、後述する床パネル9の辺長に等しいピッチで固定して形成される。
【0023】
図2ないし4に示すように、固定ベース2は、上端に球面状受け面13が形成された高さ調整脚14と、可動支承部17とからなる。高さ調整脚14は、下端にプレート状の床固定部12が固定されたネジ杆14aと、ネジ杆14aに螺合される雌ネジが内周に形成されるパイプ14bとを有し、このネジ杆14aと、パイプ14b、およびパイプ14bの空転を規制する止めネジ14cとは、床固定部12から可動支承部17までの高さを調整するための高さ調整部11を構成する。止めネジ14cは、調整操作時における先端部への操作を容易にするために、長寸のものが使用される。
【0024】
可動支承部17は、シューベース25上に摩擦材16を固定して形成され、シューベース25に形成される球面状底部15を固定ベース2の球面状受け面13上に摺動自在に載置して保持される。シューベース25は球面状受け面13上での円滑な移動が可能なように、自己潤滑性を有する合成樹脂材により形成され、摩擦材16は、耐摩耗性に優れた、例えば、フッ素化樹脂等により形成され、上端に平面上の摺動面1が形成される。
【0025】
以上のように構成される固定ベース2は、床基部3への固定時に、高さ調整部11を使用して摺動面1が同一高さになるように高さ調整される。
【0026】
一方、可動構造部8は、底板6a上に表面板6bを積層、連結した摺動ベース6上に床支持脚5を立設するとともに、摺動ベース6間をジョイントビーム7を介して連結して形成される。図4(a)に示すように、表面板6bは、床支持脚5の固定プレート5aが固定される中央部を凹状にして底板6aに当接させるとともに、中央部から放射状に位置決め突条21を膨隆させることにより摺動ベース6の剛性を高め、さらに、位置決め突条21は、十文字状に配置されてジョイントビーム7の連結面として使用される。また、底板6aの裏面には、上記摺動面1に摺接する摺動パネル26が貼り付けられる。
【0027】
床支持脚5は、上記固定プレート5a上に立設、固定されるパイプ5bと、パイプ5b上端に配置されるパネル受け板18とを有する。図5、6に示すように、この実施の形態において、パネル受け板18はパイプ5bの上端開口を閉塞するように溶着されるナット5cに螺合されるネジ杆18aと、ネジ杆18aの上端に空転自在に連結されるベースプレート18bと、ベースプレート18b上に連結されるカバー体18cとを有し、ネジ杆18aの螺合寸法を調整して押しネジ18dおよび緩み止めナット18eによりネジ杆18aの空転を規制することによって、パネル受け板18の床基部3からの高さを微調整することができる。
【0028】
ジョイントビーム7は、断面コ字形状のチャンネル部20の両側縁に折り曲げ部7aを形成した十分な強度を有する金属板材であり、チャンネル部20の両端部に平面視円形の止着用凹部20aが形成される(図4(b)参照)。このジョイントビーム7の連結は、チャンネル部20の両端部を隣接する摺動ベース6の位置決め突条21を跨がせることによって止着用凹部20aの底壁を突条の天井面に載せ、次いで、止着用凹部20aの中心に開設された図外の透孔を貫通するボルト10を突条に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込んで行われる。
【0029】
以上のように構成される可動構造部8上に構築される床部22は、複数の床パネル9を載置することにより形成される。床パネル9はアルミニウム等の金属材料により正方形状に形成され、図5、6に示すように、四隅部裏面を上記カバー体18c上に載置して敷設される。床パネル9は施工の効率を高めるために、隣接する4枚の四隅部を突き合わせてカバー18c上に載せただけの状態で設置される。
【0030】
地震で横揺れが発生した際に床パネル9が可動構造部8に対して装置移動することを防止するために、カバー体18cには、床パネル9の裏面隅部の横方向への移動を規制するためのストッパ突条19が十文字状に突設される。
【0031】
したがってこの実施の形態において、免震床構造の施工は、所定ピッチで固定ベース2を床基部3に固定することにより形成された床支持部4上に可動構造部8を組み立てていき、この後、可動構造部8上に床パネル9を搭載することにより行われる。固定ベース2の固定に際しては、全ての可動支承部17の摺動面1の高さが等しくなるように高さ調整部11が調整されて床基部3の不陸が吸収される。
【0032】
可動構造部8の組み立ては、固定ベース2の摺動面1上に摺動ベース6を載せた後、摺動ベース6間をジョイントビーム7を介して連結して行われる。上記固定ベース2の固定に際して好適な高さ調整が行われていると、所定の工程を経て同一寸法に形成されるジョイントビーム7は全体が床基部3に不陸が存在しても、同一平面上に位置するようになる。
【0033】
この後、可動構造部8の上面に床部22を敷設して構成される免震床構造に横方向の揺れが加えられると、可動構造部8は、摺動ベース6が床支持部4に対して相対移動しながら原位置にとどまり、さらに、摺動パネル26の摩擦材16上での摩擦力に抗する摺動動作と、スプリング23のバネ力に抗する撓みエネルギーにより地震エネルギーを吸収する。
【符号の説明】
【0034】
1 摺動面
2 固定ベース
3 床基部
4 床支持部
5 床支持脚
6 摺動ベース
7 ジョイントビーム
8 可動構造部
9 床パネル
10 ボルト
11 高さ調整部
12 床固定部
13 球面状受け面
14 高さ調整脚
15 球面状底部
16 摩擦材
17 可動支承部
18 パネル受け板
19 ストッパ突条
20 チャンネル部
21 位置決め突条
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震時の横揺れエネルギーを吸収する免震床構造としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において免震床構造は、床基部上に固定される移動支承部と、H形鋼により枠組みされ、枠内部を格子状に区画した床構造体と、床構造体の表面に配置される複数枚の床パネルとを有して構成され、地震による横揺れ発生時には、床構造体への移動エネルギーが床構造体と床基部とを連結するバネにより吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2772796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来における免震床構造は床面積に相当する大きさの床構造体を構成に含むために、施工現場での溶接作業等を伴う大掛かりな床構造体の組立作業、あるいは施工現場外での床構造体の組立が行われた場合には、施工現場への大掛かりな搬入作業を要し、設置効率が悪いという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、設置効率の高い免震床構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
免震床構造は、上面に摺動面1を備えた固定ベース2を床基部3上に所定ピッチで固定して形成される床支持部4と、下端が前記固定ベース2の摺動面1に摺動自在に支承され、上面に床支持脚5を立設した摺動ベース6間をジョイントビーム7により連結して摺動ベース6が格子点に位置する正方形格子状に形成される形成される可動構造部8と、可動構造部8上に配置される複数の床パネル9とを有して構成される。
【0007】
地震時に床基部3に対して相対移動して地震エネルギーを吸収する可動構造部8が、独立した構成部品である摺動ベース6同士をジョイントビーム7により連結して形成される本発明において、摺動ベース6、およびジョイントビーム7の単体は容積が小さなために、取り扱いが簡単で、組立作業性も向上する。また、ジョイントビーム7の連結にはボルトが使用されるために、組立に際して溶接機等の特別の機器を要しないために、室内での組立も可能になる上に、ボルトは鉛直方向にねじ込まれるために、ボルト締め作業も容易になる。
【0008】
この結果、可動構造部8の構成部品を施工現場に搬入した後、施工現場で組み立てる工順をとることができるために、室外で組み立てた大型の組立品の室内への搬入等も不要になる。
【0009】
さらに、床面は可動構造部8上に特別の締結操作、固定操作を伴うことなく単に床パネル9を載置させるだけで構成されるために、床面形成作業においても、高い作業性が保証される。
【0010】
一方、上記従来例のように、長尺の枠材を使用して枠組みした構造物は、外力に対して全体が一体物として挙動することが保証されるが、摺動ベース6間をジョイントビーム7で連結した本発明の可動構造部8は、各摺動ベース6の移動自由度は大きくなる。とりわけ、施工現場での組立作業性を考慮してジョイントビーム7による床支持脚5同士の連結手段にボルト10を使用する本発明においては、地震力等の大きな外力に対して可動構造部8はトラス構造体としての要素が多くなるために、曲げ応力分担による変形防止が必要な外力に対しては、一部の床支持脚5の浮き上がり、傾斜等の発生による床パネル9の浮き上がり等が生じる可能性がある。
【0011】
これを解決するためには、床パネル9を適宜のパネル締結具を使用して可動構造部8に締結して床パネル9と可動構造部8全体でラーメン構造を構成して曲げモーメントに対する負担要素を付加し、あるいは床パネル9の可動構造部8に対する移動を規制して床パネル9の浮き上がり等を防止することも可能であるが、この場合、床パネル9の固定操作が発生するために、組立作業性を低下させる要因となってしまう。
【0012】
本発明は、床パネル9の固定によるラーメン構造の構築、あるいは従来例のような長尺枠材を使用した可動構造部8の一体化による施工効率の低下を防止しつつ、地震時に対する構造安定性の確保をジョイントビーム7の水平配置により実現するものである。
【0013】
すなわち、本発明において、可動構造部8はジョイントビーム7により摺動ベース6を連結することによって、摺動ベース6が格子点に位置する正方形格子状に形成される。格子形状は、例えば、摺動ベース6とジョイントビーム7とをボルト10による締結方向に所定長嵌合させることによって維持可能に構成され、外力に対してひし形に変形することなく平面方向の安定性が概ね確保される。
【0014】
このように、溶接を使用することなく水平方向一方向に対して概ね剛節として挙動する連結構造は比較的容易に実現可能であるが、これに加えて高さ方向への剛節構造を付加することは、高さ方向への移動に対する嵌合構造を新たに設定する等、全体構造が複雑になる上に、ボルト締め箇所も多くなり、組立作業性の低下を惹起する。
【0015】
これを解決するため、高さ方向でのトラス類似の構造を前提とした上で、パネルの浮き上がり等の不具合の解決が図られる。すなわち、パネルの浮き上がり等の不具合は、一部の床支持脚5、ひいては摺動ベース6の浮き上がり、あるいは傾きに起因しており、摺動ベース6への外力がジョイントビーム7からの軸力として与えられるトラス構造を前提とする場合、免震床構造に含まれる高さ調整部11によって、床基部3に不陸等が存在しても各ジョイントビーム7が同一水平面上に位置するように高さ調整することにより、摺動ベース6へのジョイントビーム7を伝達してくる軸力による垂直分力の発生を防止することができ、結果、摺動ベース6の傾き、浮き上がり等が効果的に防止できる。
【0016】
高さ調整部11は、ジョイントビーム7の高さ、すなわち、ジョイントビーム7の連結基端の高さを調整可能であれば、例えば、摺動ベース6等、適宜箇所に配置することができるが、固定ベース2側に配置することも可能であり、このように構成すると、上方に開放された摺動面1の高さをレーザレベル計等を使用して簡単に計測することができるために、作業性が向上する。
【0017】
また、
床支持脚5は、上面に床パネル9の四隅部裏面を支承するパネル受け板18を備えるとともに、
パネル受け板18には、床パネル9の辺縁に当接して該床パネル9の横ずれを防止する平面視十文字形状のストッパ突条19が突設される免震床構造を構成すると、床支持脚5上に非固定状態で載置、保持される床パネル9の地震発生時のズレ等を完全に防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、おおがかりな組立作業を要しないために、設置効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を示す全体斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】図2の3A-3A線断面図である。
【図4】図2の要部拡大図で、(a)は床支持部を示す断面図、(b)は図3の4B-4B線断面図である。
【図5】床パネルの支持状態を示す拡大断面図である。
【図6】図5の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、免震床構造は、床基部3上に構築される床支持部4と、床支持部4上にスライド自在に支持される可動構造部8と、可動構造部8の上に構築される床部22とからなる。可動構造部8はスプリング23を介して床基部3に連結されており、地震発生時の横揺れにより可動構造部8が床支持部4に対して相対移動した際の横揺れのエネルギー吸収、および、地震終了時の可動構造部8の原位置復帰が行われる。
【0021】
また、建物躯体と床部22との境界部には、建物躯体の壁面に沿って固定床部27が設けられており、一端縁が床部22に相対位置不変に配設され、他端が固定床部27上にスライド自在に載置されるボーダパネル24が設置され、床部22が可動構造部8とともにスライドした際の建物躯体との隙間寸法の変化を吸収する。
【0022】
床支持部4は、固定ベース2を床基部3上に所定ピッチ、正確には、後述する床パネル9の辺長に等しいピッチで固定して形成される。
【0023】
図2ないし4に示すように、固定ベース2は、上端に球面状受け面13が形成された高さ調整脚14と、可動支承部17とからなる。高さ調整脚14は、下端にプレート状の床固定部12が固定されたネジ杆14aと、ネジ杆14aに螺合される雌ネジが内周に形成されるパイプ14bとを有し、このネジ杆14aと、パイプ14b、およびパイプ14bの空転を規制する止めネジ14cとは、床固定部12から可動支承部17までの高さを調整するための高さ調整部11を構成する。止めネジ14cは、調整操作時における先端部への操作を容易にするために、長寸のものが使用される。
【0024】
可動支承部17は、シューベース25上に摩擦材16を固定して形成され、シューベース25に形成される球面状底部15を固定ベース2の球面状受け面13上に摺動自在に載置して保持される。シューベース25は球面状受け面13上での円滑な移動が可能なように、自己潤滑性を有する合成樹脂材により形成され、摩擦材16は、耐摩耗性に優れた、例えば、フッ素化樹脂等により形成され、上端に平面上の摺動面1が形成される。
【0025】
以上のように構成される固定ベース2は、床基部3への固定時に、高さ調整部11を使用して摺動面1が同一高さになるように高さ調整される。
【0026】
一方、可動構造部8は、底板6a上に表面板6bを積層、連結した摺動ベース6上に床支持脚5を立設するとともに、摺動ベース6間をジョイントビーム7を介して連結して形成される。図4(a)に示すように、表面板6bは、床支持脚5の固定プレート5aが固定される中央部を凹状にして底板6aに当接させるとともに、中央部から放射状に位置決め突条21を膨隆させることにより摺動ベース6の剛性を高め、さらに、位置決め突条21は、十文字状に配置されてジョイントビーム7の連結面として使用される。また、底板6aの裏面には、上記摺動面1に摺接する摺動パネル26が貼り付けられる。
【0027】
床支持脚5は、上記固定プレート5a上に立設、固定されるパイプ5bと、パイプ5b上端に配置されるパネル受け板18とを有する。図5、6に示すように、この実施の形態において、パネル受け板18はパイプ5bの上端開口を閉塞するように溶着されるナット5cに螺合されるネジ杆18aと、ネジ杆18aの上端に空転自在に連結されるベースプレート18bと、ベースプレート18b上に連結されるカバー体18cとを有し、ネジ杆18aの螺合寸法を調整して押しネジ18dおよび緩み止めナット18eによりネジ杆18aの空転を規制することによって、パネル受け板18の床基部3からの高さを微調整することができる。
【0028】
ジョイントビーム7は、断面コ字形状のチャンネル部20の両側縁に折り曲げ部7aを形成した十分な強度を有する金属板材であり、チャンネル部20の両端部に平面視円形の止着用凹部20aが形成される(図4(b)参照)。このジョイントビーム7の連結は、チャンネル部20の両端部を隣接する摺動ベース6の位置決め突条21を跨がせることによって止着用凹部20aの底壁を突条の天井面に載せ、次いで、止着用凹部20aの中心に開設された図外の透孔を貫通するボルト10を突条に形成されたネジ孔(図示せず)にねじ込んで行われる。
【0029】
以上のように構成される可動構造部8上に構築される床部22は、複数の床パネル9を載置することにより形成される。床パネル9はアルミニウム等の金属材料により正方形状に形成され、図5、6に示すように、四隅部裏面を上記カバー体18c上に載置して敷設される。床パネル9は施工の効率を高めるために、隣接する4枚の四隅部を突き合わせてカバー18c上に載せただけの状態で設置される。
【0030】
地震で横揺れが発生した際に床パネル9が可動構造部8に対して装置移動することを防止するために、カバー体18cには、床パネル9の裏面隅部の横方向への移動を規制するためのストッパ突条19が十文字状に突設される。
【0031】
したがってこの実施の形態において、免震床構造の施工は、所定ピッチで固定ベース2を床基部3に固定することにより形成された床支持部4上に可動構造部8を組み立てていき、この後、可動構造部8上に床パネル9を搭載することにより行われる。固定ベース2の固定に際しては、全ての可動支承部17の摺動面1の高さが等しくなるように高さ調整部11が調整されて床基部3の不陸が吸収される。
【0032】
可動構造部8の組み立ては、固定ベース2の摺動面1上に摺動ベース6を載せた後、摺動ベース6間をジョイントビーム7を介して連結して行われる。上記固定ベース2の固定に際して好適な高さ調整が行われていると、所定の工程を経て同一寸法に形成されるジョイントビーム7は全体が床基部3に不陸が存在しても、同一平面上に位置するようになる。
【0033】
この後、可動構造部8の上面に床部22を敷設して構成される免震床構造に横方向の揺れが加えられると、可動構造部8は、摺動ベース6が床支持部4に対して相対移動しながら原位置にとどまり、さらに、摺動パネル26の摩擦材16上での摩擦力に抗する摺動動作と、スプリング23のバネ力に抗する撓みエネルギーにより地震エネルギーを吸収する。
【符号の説明】
【0034】
1 摺動面
2 固定ベース
3 床基部
4 床支持部
5 床支持脚
6 摺動ベース
7 ジョイントビーム
8 可動構造部
9 床パネル
10 ボルト
11 高さ調整部
12 床固定部
13 球面状受け面
14 高さ調整脚
15 球面状底部
16 摩擦材
17 可動支承部
18 パネル受け板
19 ストッパ突条
20 チャンネル部
21 位置決め突条
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に摺動面を備えた固定ベースを床基部上に所定ピッチで固定して形成される床支持部と、
下端が前記固定ベースの摺動面に摺動自在に支承され、上面に床支持脚を立設した摺動ベース間をジョイントビームにより連結して摺動ベースが格子点に位置する正方形格子状に形成される可動構造部と、
可動構造部上に配置される複数の床パネルとを有し、
前記ジョイントビームは、鉛直方向にねじ込まれるボルトを使用して平面視における格子形状を維持可能に摺動ベースに連結されるとともに、各ジョイントビームは、同一水平面上に位置するように高さ調整部において高さ調整されており、
かつ、床パネルは、床支持脚の上面に四隅裏面を支承されて非連結状態で支持される免震床構造。
【請求項2】
前記ジョイントビームは、断面コ字形状のチャンネル部を有して形成されるとともに、
摺動ベースには、上記チャンネル部が嵌合してジョイントビームの配設方向を規制する位置決め突条が設けられる請求項1記載の免震床構造。
【請求項3】
前記高さ調整部が固定ベースに設けられる請求項1または2記載の免震床構造。
【請求項4】
前記固定ベースは、
下端に床固定部を、上端に球面状受け面を備え、上下端間の長さ調整可能な高さ調整脚と、
球面状受け面上に球面状底部を摺接させて支承され、上面に摩擦材を固定して前記摺動面とする可動支承部と、
を有する請求項3記載の免震床構造。
【請求項5】
前記床支持脚は、上面に床パネルの四隅部裏面を支承するパネル受け板を備えるとともに、
パネル受け板には、床パネルの辺縁に当接して該床パネルの横ずれを防止する平面視十文字形状のストッパ突条が突設される請求項1、2、3または4記載の免震床構造。
【請求項1】
上面に摺動面を備えた固定ベースを床基部上に所定ピッチで固定して形成される床支持部と、
下端が前記固定ベースの摺動面に摺動自在に支承され、上面に床支持脚を立設した摺動ベース間をジョイントビームにより連結して摺動ベースが格子点に位置する正方形格子状に形成される可動構造部と、
可動構造部上に配置される複数の床パネルとを有し、
前記ジョイントビームは、鉛直方向にねじ込まれるボルトを使用して平面視における格子形状を維持可能に摺動ベースに連結されるとともに、各ジョイントビームは、同一水平面上に位置するように高さ調整部において高さ調整されており、
かつ、床パネルは、床支持脚の上面に四隅裏面を支承されて非連結状態で支持される免震床構造。
【請求項2】
前記ジョイントビームは、断面コ字形状のチャンネル部を有して形成されるとともに、
摺動ベースには、上記チャンネル部が嵌合してジョイントビームの配設方向を規制する位置決め突条が設けられる請求項1記載の免震床構造。
【請求項3】
前記高さ調整部が固定ベースに設けられる請求項1または2記載の免震床構造。
【請求項4】
前記固定ベースは、
下端に床固定部を、上端に球面状受け面を備え、上下端間の長さ調整可能な高さ調整脚と、
球面状受け面上に球面状底部を摺接させて支承され、上面に摩擦材を固定して前記摺動面とする可動支承部と、
を有する請求項3記載の免震床構造。
【請求項5】
前記床支持脚は、上面に床パネルの四隅部裏面を支承するパネル受け板を備えるとともに、
パネル受け板には、床パネルの辺縁に当接して該床パネルの横ずれを防止する平面視十文字形状のストッパ突条が突設される請求項1、2、3または4記載の免震床構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−179236(P2011−179236A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44687(P2010−44687)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
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