説明

免震建築物用電線保護パイプ及び免震建築物用電線保護パイプの製造方法

【課題】柔軟性及び強靭さの双方を有する、免震建築物用電線保護パイプ及び免震建築物用電線保護パイプの製造方法を提供する。
【解決手段】第1方向に延びる免震建築物用電線を被覆する、複数の筒状の第1部材と、前記免震建築物用電線を被覆する、複数の筒状の第2部材とを具備する。前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とは、前記第1方向で交互となるように配置される。前記複数の第1部材の各々には、両端部に、前記第1方向に沿って膨らむ形状である複数の凸部が形成されている。前記複数の第2部材の各々には、両端部に、前記複数の凸部に対応する形状の複数の凹部が形成されている。前記複数の凸部と前記複数の凹部とは、前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とが互いに外れることなく支持しあうように、嵌まり合っている。前記複数の凸部の各々は、前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とが全体として屈曲可能になるように、前記複数の凹部の各々の形状よりも狭く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震建築物用電線保護パイプ及び免震建築物用電線保護パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物に対しては、内部に電力を供給するために、電線が接続される。電線が破損すると、建築物に対する電力供給に支障が生じる。そのため、電線を保護するための保護パイプが用いられる。
【0003】
関連して、特許文献1(実開平6−44318)には、ケーブル電線用カバーに関する技術が開示されている。特許文献1には、パイプを半分に割ったような形のケーブル電線用保護カバーと、ケーブル電線用保護カバーを固定する固定用サドルからなる、保護固定材が開示されている。
【0004】
電線用保護パイプに対しては、電線を確実に保護するために、強靭であることが求められる。これに関連して、特許文献2(特開2007−271015)には、塩化ビニル重合体からなるパイプ本体の外周を、アクリロニトリル/エチレンプロピレンゴム/スチレン共重合体(AES樹脂)からなる外層によって被覆することが記載されている。特許文献2の記載によれば、パイプ本体をAES樹脂によって被覆することにより、塩化ビニル重合体だけで構成する場合よりも、耐衝撃性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−44318号公報
【特許文献2】特開2007−271015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、建築物として、免震構造が採用された免震建築物が用いられることがある。免震建築物は、地面に対して揺動可能に設置される。免震建築物に対して剛直な電線保護パイプを使用すると、免震建築物が地震などで揺動したときに、電線保護パイプの一部分に負荷が集中してしまうことがある。その結果、電線保護パイプが破損してしまうことが想像される。そのため、免震建築物用の電線保護パイプに対しては、屈曲可能であることが求められる。しかしながら、電線保護パイプを屈曲可能に形成すると、逆に強靭さが失われ易い。
【0007】
従って、本発明の目的は、柔軟性及び強靭さの双方を有する、免震建築物用電線保護パイプ及び免震建築物用電線保護パイプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係を明らかにするために括弧付きで付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、特許請求の範囲に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明に係る免震建築物用電線保護パイプ(4)は、第1方向に延びる免震建築物用電線(1)を被覆する、複数の筒状の第1部材(5)と、電線(1)を被覆する、複数の筒状の第2部材(6)とを具備する。複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とは、第1方向で交互となるように配置されている。複数の第1部材(5)の各々には、両端部に、第1方向に沿って膨らむ形状である複数の凸部(51、52)が形成されている。複数の第2部材(6)の各々には、両端部に、複数の凸部(51、52)に対応する形状の複数の凹部(61、62)が形成されている。複数の凸部(51、52)と複数の凹部(61、62)とは、複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とが互いに外れることなく支持しあうように、嵌まり合っている。複数の凸部(51、52)の各々は、複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とが全体として屈曲可能になるように、複数の凹部(61、62)の各々の形状よりも狭く形成されている。
【0010】
この発明によれば、各第1部材(5)及び各第2部材(6)として剛直な材料を使用したとしても、複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とが屈曲可能に連結される。そのため、屈曲性を有しながらも強靭な免新建築物用電線保護パイプを得ることができる。
【0011】
本発明に係る免震建築物用電線保護パイプの製造方法は、第1方向に伸びる筒状のパイプ部材を準備する工程と、第1方向で交互に並ぶ、複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とが作成されるように、パイプ部材を切断する工程と、複数の第1部材(5)と前記複数の第2部材(6)とによって、免震建築物用電線(1)を被覆する工程とを具備する。パイプ部材を切断する工程は、パイプ部材を、複数の第1部材(5)の各々の両端部に第1方向に沿って膨らむ形状である複数の凸部(51、52)が形成され、複数の第2部材(6)の両端部に複数の凸部(51、52)に対応する形状の複数の凹部(61、62)が形成され、複数の凸部(51、52)と複数の凹部(61、62)とが、複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とが互いに外れることなく支持しあうように嵌まり合い、複数の凸部(51、52)の各々の形状が、複数の第1部材(5)と複数の第2部材(6)とが全体として屈曲可能になるように複数の凹部(61、62)の各々よりも狭く形成されるように、切断する工程を備えている
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、柔軟性及び強靭さの双方を有する、免震建築物用電線保護パイプ及び免震建築物用電線保護パイプの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】免震建築物を示す概略図である。
【図2】保護パイプを示す斜視図である。
【図3】保護パイプの展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る免震建築物用電線保護パイプが適用された免震建築物(例えば免震マンション)を示す概略図である。図1に示されるように、免震建築物2は、免震構造体3を介して、地上に設置されている。免震構造体3により、免震建築物2は、地面に対して揺動可能である。免震建築物2には、チューブ状の電線1(免震建築物用電線)が接続されている。電線1は、地中を延びて、免震建築物2に接続されている。電線1は、保護パイプ4(免震建築物用電線保護パイプ)によって被覆されている。
【0016】
図2は、保護パイプ4を示す斜視図である。保護パイプ4は、電線1の形状に対応しており、円筒状である。電線1が延びる方向が第1方向と定義されている。すなわち、保護パイプ4は第1方向に向かって延びている。
【0017】
保護パイプ4は、複数の第1部材5と、複数の第2部材6とを備えている。複数の第1部材5と複数の第2部材6とは、第1方向で交互となるように、配置されている。複数の第1部材5の各々は、円筒状である。同様に、複数の第2部材6の各々も、円筒状である。
【0018】
各第1部材5及び各第2部材6は、剛体により形成される。具体的には、各第1部材5及び各第2部材6は、例えば、SUSなどの金属により、形成されている。
【0019】
各第1部材5及び各第2部材6の直径φは、電線1の太さに依存するが、例えば、120mmである。また、直径φが120mmである場合には、各第1部材5及び各第2部材6の肉厚tは、例えば、5〜10mmである。
【0020】
図3は、保護パイプ4の展開図である。図3において、第1方向における一方の側が、一端側と定義され、他方の側が、他端側と定義されている。
【0021】
図3に示されるように、各第1部材5には、その両端部に、複数の凸部(51、52)が形成されている。具体的には、各第1部材5の一端部に、2つの凸部51(一端凸部51−1及び51−2)が形成されている。また、各第1部材5の他端部には、2つの凸部52(他端凸部52−1及び52−2)が形成されている。各凸部(51、52)は、第1方向に沿って突き出ている。各凸部(51、52)は、膨らむような形状である。
【0022】
一方、各第2部材6には、その両端部に、複数の凹部(61、62)が形成されている。複数の凹部(61、62)は、複数の凸部(51、52)に対応して設けられている。すなわち、各第2部材6の一端部には、2つの凹部61(一端凹部61−1及び61−2)が形成されている。各第2部材6の他端部にも、2つの凹部62(他端凹部62−1及び62−2)が形成されている。各凹部(61、62)は、各凸部(51、52)に対応する位置に形成されている。各凹部(61、62)の形状は、各凸部(51、52)に対応する形状である。
【0023】
各凹部(61、62)には、各凸部(51、52)が嵌め込まれている。ここで、各凸部(51、52)が膨らむような形状であるため、各第1部材5と各第2部材6とは、互いに外れることなく、支持しあっている。
【0024】
また、各凸部(51、52)は、各凹部(61、62)よりも、僅かに狭く形成されている。すなわち、各凸部(51、52)と各(61、62)とは、遊びが生じるように、嵌まり合っている。この遊びにより、複数の第1部材5と複数の第2部材6とは、剛体で形成されているにもかかわらず、全体として屈曲可能になっている。すなわち、保護パイプ4は、屈曲可能である。
【0025】
続いて、複数の凸部(51、52)の位置について説明する。
【0026】
2つの一端凸部51(51−1、51−2)は、各第1部材5の円周上において、180°離れた位置に形成されている。同様に、2つの他端凸部52(52−1、52−2)は、各第1部材5の円周上において、180°離れた位置に形成されている。また、2つの一端凸部(51−1、51−2)と2つの他端凸部52(52−1、52−2)とは、各第1部材5の円周上において、90°だけずれている。
【0027】
なお、各第2部材6に設けられた複数の凹部(61、62)の位置は、複数の凸部(51、52)の位置に対応している。
【0028】
上述のような位置に複数の凸部(51、52)及び複数の凹部(61、62)が設けられていることにより、各第1部材5と各第2部材6とが外れてしまう事を確実に防止できる上、保護パイプ4を全方向に屈曲させることが可能となる。すなわち、図2に示されるように、凸部(51−1、51−2)の曲率中心(回転中心)を通る軸が一回転軸Aを形成する。また、凸部(52−1、52−2)の曲率中心(回転中心)を通る軸が、軸Aと90°異なる回転軸Bを形成する。この軸Aと軸Bとの合成角により、パイプ全体は、前方向に屈曲の自在性を持つことができる。屈曲の度合いは、第1部材5と第2部材6との間に形成される間隙の寸法に依存する。
【0029】
本実施形態の保護パイプ4は、以下のようにして製造することができる。まず、筒状のパイプ部材を準備する。そして、このパイプ部材を、切断する。これにより、パイプ部材4が、複数の第1部材5と複数の第2部材6とに分割される。切断にあたっては、例えば、パイプ部材に水などの流体を吹きつけ、水圧によって切断することができる。また、レーザにより、パイプ部材を切断することもできる。このときの切断幅により、各第1部材5の各凸部(51、52)は、各第2部材6の各凹部(61、62)よりも、自ずと狭く形成される。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の第1部材5と複数の第2部材6とが、複数の凹部(51、52)及び複数の凸部(61、62)により、連結されている。そのため、各第1部材5及び各第2部材6として剛体を用いたとしても、保護パイプ4を屈曲させることが可能である。すなわち、保護パイプ4を、強靭且つ屈曲可能に形成することができる。これにより、免震建築物2が揺動したとしても、保護パイプ4の一部に負荷が集中してしまうことが無く、確実に電線1を保護することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
1 免震建築物用電線
2 免震建築物
3 免震構造体
4 免震建築物用電線保護パイプ
5 第1部材
6 第2部材
51(51−1、51−2) 一端凸部
52(52−1、52−2) 他端凸部
61(61−1、61−2) 一端凹部
62(62−1、62−2) 他端凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる免震建築物用電線を被覆する、複数の筒状の第1部材と、
前記免震建築物用電線を被覆する、複数の筒状の第2部材と、
を具備し、
前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とは、前記第1方向で交互となるように配置され、
前記複数の第1部材の各々には、両端部に、前記第1方向に沿って膨らむ形状である複数の凸部が形成されており、
前記複数の第2部材の各々には、両端部に、前記複数の凸部に対応する形状の複数の凹部が形成されており、
前記複数の凸部と前記複数の凹部とは、前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とが外れないように、嵌まり合っており、
前記複数の凸部の各々は、前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とが屈曲可能に連結されるように、前記複数の凹部の各々よりも狭く形成されている
免震建築物用電線保護パイプ。
【請求項2】
請求項1に記載された免震建築物用電線保護パイプであって、
前記複数の凸部は、前記第1部材の一端部に形成された2つの一端凸部と、前記第1部材の他端部に形成された2つの他端凸部とを備え、
前記複数の凹部は、前記第2部材の一端部に形成された2つの一端凹部と、前記第2部材の他端部に形成された2つの他端凹部とを備える
免震建築物用電線保護パイプ。
【請求項3】
請求項2に記載された免震建築物用電線保護パイプであって、
前記複数の第1部材及び前記複数の第2部材は、それぞれ、円筒状である
免震建築物用電線保護パイプ。
【請求項4】
請求項3に記載された免震建築物用電線保護パイプであって、
前記2つの一端凸部は、前記第1部材の円周上で互いに180°離れた位置に形成されており、
前記2つの他端凸部は、前記第1部材の円周上で互いに180°離れた位置に形成されており、
前記2つの一端凸部は、前記2つの他端凸部に対して、前記第1部材の円周上で90°ずれた位置に、形成されている
免震建築物用電線保護パイプ。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された免震建築物用電線保護パイプであって、
前記複数の第1部材の各々と前記複数の第2部材の各々とは、それぞれ、剛体により形成されている
免震建築物用電線保護パイプ。
【請求項6】
請求項5に記載された免震建築物用電線保護パイプであって、
前記複数の第1部材の各々と前記複数の第2部材の各々とは、それぞれ、金属製である
免震建築物用電線保護パイプ。
【請求項7】
第1方向に伸びる筒状のパイプ部材を準備する工程と、
前記第1方向で交互に並ぶ複数の第1部材と複数の第2部材とが作成されるように、前記パイプ部材を切断する工程と、
前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とによって、電線を被覆する工程と、
を具備し、
前記複数の第1部材の各々には、両端部に、前記第1方向に沿って膨らむ形状である複数の凸部が形成され、
前記複数の第2部材の各々には、両端部に、前記複数の凸部に対応する形状の複数の凹部が形成され、
前記複数の凸部と前記複数の凹部とは、前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とが外れないように、嵌まり合い、
前記複数の凸部の各々は、前記複数の第1部材と前記複数の第2部材とが屈曲可能に連結されるように、前記複数の凹部の各々よりも狭く形成される
免震建築物用電線保護パイプの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載された免震建築物用電線保護パイプの製造方法であって、
前記パイプ部材を切断する工程は、前記パイプ部材を水圧により切断する工程を含んでいる
免震建築物用電線保護パイプの製造方法。
【請求項9】
請求項7に記載された免震建築物用電線保護パイプの製造方法であって、
前記パイプ部材を切断する工程は、前記パイプ部材をレーザーにより切断する工程を含んでいる
免震建築物用電線保護パイプの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−252522(P2010−252522A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98966(P2009−98966)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(592078597)タマチ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】