説明

免震構造体および免震構造体の製造方法

【課題】比較的小型の低荷重の軽重量物に適した免震構造体とその製造方法を提供する。
【解決手段】型20の底に1枚の薄板1を敷き、その薄板1上に複数個の硬質粒子2を互いに間隔を開けて孤立して複数個載せてなる層を形成し、単層の免震構造体とする場合はこの上に薄板1を載せ、また複数層の免震構造体とする場合は、この層の上に同様にして薄板1上に硬質粒子2を載せてなる層を複数層積層し、その最上部に薄板1を載せた後、未硬化の液体状の弾性体原料3aを型20中に注入し、次いで弾性体原料3を硬化させて免震構造体10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免震構造体および免震構造体の製造方法に関し、特に低荷重の一般住宅や建物内部に置かれる装置類に適した免震構造体および免震構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震に対する対策方法としては耐震法と免震法がある。耐震法は建物などの構造物の倒壊を防止する構造体を構成するものであり、地震による揺れを失くすもしくは減少させる構成ではない。一方、免震法は地震の震動エネルギーを吸収して構造物の揺れを失くすもしくは減少させる構成である。一般的な免震法の構成としては、鉄板などの硬質層とゴムなどの軟質層を交互に積層したものがある
【0003】
例えば特許文献1には、ゴム等の軟質層と鋼板等よりなる硬質層を交互に積層してなる積層体を複数個、建築物等の上部構造物と基礎側の下部構造物とに取り付けて、地震発生時に地盤から建築物等に伝わる振動エネルギーを減少させる免震装置が提案されている。
【0004】
また特許文献2には、免震ゴム積層体の設計に際して、硬いゴムを用いて降伏応力を上げるとせん断剛性が上がってしまい、免震ゴム積層体の設計の自由度が奪われてしまう欠点を克服するために、複数のゴム層と鋼板とを交互に積層させてなる免震ゴム積層体において、ゴム層内部に複数の空隙を分散するように配置してなる免震ゴム積層体が提案されている。
【特許文献1】特開2006−214187号公報
【特許文献2】特開2002−316907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の免震装置は建築物などの大型の重荷重の構造物の免震には適しているが、1t/m以下の低荷重の一般住宅や建物内部に置かれるコンピュータや機械装置等に用いた場合、ゴム層が硬いために十分な免震効果が得られない。また、一般住宅用の積層ゴム免震装置の一例としては、25万円/個(500mm径)程度のものが提案されているがこれらは高価であり、さらに建物内部に置かれる低荷重のコンピュータや機械装置に適した小型(例えば30〜100mm径)の免震装置は提案されていない。
【0006】
特許文献2の免震ゴム積層体はゴム層の内部に空隙を分散配置してゴム積層体の変形特性を中実ゴムの降伏後の変形特性に近似させて剛性の上昇を抑制し、免震ゴム積層体の設計の自由度を向上させるもので、もとより特に1t/m以下の低荷重の軽重量物の免震を目的としたものではなく、また免震条件に適したゴム中の空隙の量や形状の正確な制御が困難である欠点を有している。
【0007】
本発明は、比較的小型の低荷重の軽重量物に適した免震構造体とその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、免震効果が大きく簡易な免震構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の免震構造体は、
硬質粒子が分散されたゴム弾性を有する弾性層と剛性を有する薄板とを交互に複数層積層させてなることを特徴とする。
請求項2に記載の免震構造体は、請求項1において、前記弾性層のゴム硬度が20以下であることを特徴とする。
請求項3に記載の免震構造体は、請求項1又は2において、前記弾性層のtanδが2以上であることを特徴とする。
請求項4に記載の免震構造体は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記弾性層がポリウレタンゲルからなる層であることを特徴とする。
請求項5に記載の免震構造体は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記硬質粒子がガラスビーズであることを特徴とする。
請求項6に記載の免震構造体は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記薄板が鋼板であることを特徴とする。
【0009】
請求項7に記載の免震構造体の製造方法は、型中に剛性を有する薄板に複数個の硬質粒子を互いに分散孤立して載せてなる層を複数層積層し、型中に未硬化の弾性体原料を流入させた後、弾性体原料を硬化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硬質粒子を分散させたゴム硬度が10以下でtanδが3以上のゴム弾性を有するポリウレタンゲルなどの弾性層と鋼板などの薄板を交互に積層して免震構造体とすることにより、特に1t/m以下の低荷重の一般住宅や、建物内部に置かれるコンピュータや機械装置等に適した安価で優れた免震特性を有する免震構造体を提供することができる。また、本発明の免震構造体は、型の中に剛性を有する薄板に硬質粒子を載せた層を複数層積層し、型の中に未硬化の液状の弾性体原料を注入して薄板と硬質粒子の間の空隙を充填した後、弾性体原料を硬化させるので、容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る免震構造体および免震構造体の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の免震構造体の一実施形態を示す断面図である。図2は本発明の免震構造体の製造方法の一実施形態を示す断面図である。図1において、免震構造体10は剛性を有する薄板1と硬質粒子2が分散されたゴム弾性を有する弾性層3を交互に複数層(図では5層)積層して構成される。また、図2において、型20の中に薄板1上に硬質粒子2を互いに分散孤立して複数個載せてなる層を複数層(図では5層)交互に積層し、その最上部に薄板1を載せた後、未硬化の液体状の弾性体原料3aを型20中に注入し、次いで弾性体原料3を硬化させることにより、図1に示す免震構造体10が得られる。
【0012】
本発明において、剛性を有する薄板1としては免震作動中に変形することがない剛性を有する限り特に種類を限定するものではなく、ポリオレフィンやポリアミドなどの合成樹脂、合板などの木板なども使用できるが、鉄、銅、アルミニウム、またはそれらの金属の合金などの金属の薄板を使用することで必要とする剛性が得られるので好ましい。金属薄板の中でも鋼板は剛性が高く安価でもあるので特に好ましい。鋼板としては防錆性を有するステンレス鋼板や、亜鉛、錫、ニッケル、クロム、またはそれらの金属の合金をメッキしたメッキ鋼板、弾性層3を構成する材料との密着性を向上させる表面処理を施した表面処理鋼板も含まれる。鋼板の厚さは0.3〜2.0mm程度であることが好ましい。
【0013】
本発明においては、低荷重の住宅や装置類でも動きやすい振動吸収性を得るために、軟質の弾性層3を均一な厚さで薄く形成することが特に重要である。硬質粒子2は、薄い弾性層3を均一な厚さで容易に形成するために用いられる。すなわち、本発明の免震構造体10は、後に詳述するように薄板1上に硬質粒子2を互いに孤立して載せてなる層を積層し、各層を構成する2枚の薄板1の間に置かれた硬質粒子2同士の空隙に液体状の弾性体原料3aを注入し充填した後に硬化させて弾性層3とするので、篩分けして粒子径を揃えた硬質粒子2を用いることにより、薄板1の間隔を均一にして、等厚の弾性層3を得ることができる。硬質粒子2としては弾性層3の硬さを下回らない限り如何なる材料も用いることが可能であるが、適度な硬さを有し、安価であり、また粒子の形状や径を揃えて製造することが容易であるガラスビーズを用いることが好ましい。
また、その他の硬質粒子としては、鋼球などの金属球、樹脂球、セラミック球なども挙げられる。
なお、粒子径は、弾性層3の硬さや積層する層の数にもよるが、0.3〜4.0mmのものが好ましく適用できる。
【0014】
本発明の弾性層3としては、上記のように低荷重の住宅や装置類でも動きやすい振動吸収性を得るために、ゴムを弾性層として用いる通常の免震ゴム積層体に用いられるゴム硬度30程度よりも柔らかいゴム硬度20以下、好ましくはゴム硬度10以下の硬さで、振動吸収特性を反映する粘弾性特性である損失正接(tanδ)が、通常の免震ゴム積層体における1程度よりも高い2以上、好ましくは3以上である弾性体からなる弾性層を用いる。ここで、損失正接(tanδ)とは、静止弾性率÷動的弾性率で求められ、振動エネルギー吸収性の物理的目安として知られる。
このような弾性層として、後記する本発明の免震構造体の製造方法に好適に用いることが可能なポリウレタンゲルを用いることが好ましい。
【0015】
薄板1と硬質粒子2を含む弾性層3からなる層の積層数は、単層であっても二層以上の複数の層であってもよく、適用する住宅や装置類の大きさや荷重により適宜選択する。また免震構造体の大きさ(面積)も住宅や装置類の大きさや荷重により適宜選択するが、本発明の免震構造体は、特に30〜100mm径の小型の免震構造体に好適に用いることができる。
【0016】
次に、上記の実施形態の免震構造体10の製造方法を説明する。すなわち、図2に示すように、型20の底に1枚の薄板1を敷き、その薄板1上に複数個の硬質粒子2を互いに間隔を開けて孤立して複数個載せてなる層を形成する。単層の免震構造体とする場合はこの上に薄板1を載せる。複数層の免震構造体とする場合は、この層の上に同様にして薄板1上に硬質粒子2を載せてなる層を複数層(図では5層)積層し、その最上部に薄板1を載せた後、未硬化の液体状の弾性体原料3aを型20中に注入し、次いで弾性体原料3を硬化させることにより免震構造体10が得られる。弾性層3としてポリウレタンゲルを形成させる場合は、液体状の弾性体原料として共に液体であるポリオールとイソシアネートを混合した液体を型20中に注入して薄板1の間に載せた硬質粒子2同士の空隙を充填した後、型をオーブン中で加熱して反応促進させて硬化させる。
【0017】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、発明の具体的構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内の変形なども本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上に説明したように、本発明の免震構造体は低荷重により動きやすい振動吸収性を有しているので、建物内部におかれる1t/m以下のコンピュータ、精密測定機器、陶磁器などの美術品、家電機器、食器棚、家具、建屋外の墓石、石碑、灯籠などの比較的小型で軽重量物の免震構造体として好適に用いることができる。また製造方法が平易であるので安価に製造することが可能であり、産業上の利用可能性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の免震構造体の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の免震構造体の製造方法の一実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 薄板
2 硬質粒子
3 弾性層
3a 弾性体原料
10 免震構造体
20 型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質粒子が分散されたゴム弾性を有する弾性層と剛性を有する薄板とを交互に複数層積層させてなることを特徴とする免震構造体。
【請求項2】
前記弾性層のゴム硬度が20以下であることを特徴とする請求項1に記載の免震構造体。
【請求項3】
前記弾性層のtanδが2以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の免震構造体。
【請求項4】
前記弾性層がポリウレタンゲルからなる層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の免震構造体。
【請求項5】
前記硬質粒子がガラスビーズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の免震構造体。
【請求項6】
前記薄板が鋼板であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の免震構造体。
【請求項7】
型中に剛性を有する薄板に複数個の硬質粒子を互いに分散孤立して載せてなる層を複数層積層し、型中に未硬化の弾性体原料を流入させた後、弾性体原料を硬化させることを特徴とする免震構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−256053(P2008−256053A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97804(P2007−97804)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(506104943)有限会社ポリシス研究所 (5)
【Fターム(参考)】