説明

入力デバイス

【課題】画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性に優れると共に動作不良が防止された入力デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の入力デバイス1は、第1の透明電極12と、第1の透明電極12に対向するように配置された透明導電性金属酸化物製の第2の透明電極22とを備え、第1の透明電極12が押圧された際に第2の透明電極22に接触し、第1の透明電極12は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと平均粒子径が1〜50nmの金属ナノ粒子とを含有し、金属ナノ粒子を形成する金属が、銀、金、ニッケル、銅、白金、パラジウム、インジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属またはそれらの合金であり、金属ナノ粒子の含有量が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの合計を100質量%とした際の0.01質量%以上5質量%未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜式タッチパネル等の入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、画像表示装置の上に設置される入力デバイスであり、少なくとも画像表示装置に重なる部分が透明になっている。
タッチパネルとしては、例えば、抵抗膜式タッチパネルが知られている。抵抗膜式タッチパネルにおいては、透明基材の片面に透明電極が形成された固定電極シートおよび可動電極シートが、透明電極同士が対向するように配置されている。電極シートの透明電極としては、インジウムドープの酸化錫の膜(以下、ITO膜という。)が広く使用されてきた。
透明基材の片面にITO膜が形成されたシート(以下、ITO膜形成シートという。)は可撓性が低く、固定しやすいため、画像表示装置側の固定電極シートとしては好適である。しかし、タッチパネルの入力者側の可動電極シートとして用いる場合には、繰り返し撓ませた際の耐久性が低いという問題を有していた。
そこで、タッチパネルの入力者側の可動電極シートとして、透明基材の片面に、π共役系導電性高分子を含む透明電極が形成された可撓性を有するシート(以下、導電性高分子膜形成シートという。)を用いることがある。
ところが、画像表示装置側の固定電極シートとしてITO膜形成シートを用い、タッチパネルの入力者側の可動電極シートとして導電性高分子膜形成シートを用いた場合、すなわち異導体同士を接続する場合には、接触抵抗が大きく、入力感度の低下や座標入力時間の遅れ等の問題が生じることがあった。
これらの問題を解決するために、特許文献1では、π共役系導電性高分子を含む透明電極に金属イオンを添加することが提案されている。
【特許文献1】特開2007−172984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の電極シートでは、ITO膜に対する接触抵抗が充分に小さくならなかった。したがって、特許文献1に記載の電極シートを抵抗膜式タッチパネルに適用した場合には、入力感度の低下および座標入力時間の遅れ等の動作不良が生じることがあった。
また、タッチパネル用の電極シートにおいては、透明性に優れて、画像表示装置の画像の視認性が高いことが求められる。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性に優れると共に動作不良が防止された入力デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者が調べた結果、π共役系導電性高分子を含む透明電極に金属イオンが含まれても、ITO膜に対する接触抵抗が低下しないことが判明した。そして、その知見に基づき、さらに検討した結果、以下の入力デバイスを発明した。
すなわち、本発明の入力デバイスは、第1の透明電極と、第1の透明電極に対向するように配置された透明導電性金属酸化物製の第2の透明電極とを備え、第1の透明電極が押圧された際に第2の透明電極に接触する入力デバイスにおいて、
前記第1の透明電極は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと平均粒子径が1〜50nmの金属ナノ粒子とを含有し、
金属ナノ粒子を形成する金属が、銀、金、ニッケル、銅、白金、パラジウム、インジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属またはそれらの合金であり、
金属ナノ粒子の含有量が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの合計を100質量%とした際の0.01質量%以上5質量%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の入力デバイスは、画像表示装置上に設置した際に画像表示装置の画像の視認性に優れると共に動作不良が防止されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の入力デバイスの一実施形態例について説明する。
図1に、本実施形態例の入力デバイスを示す。本実施形態例の入力デバイス1は、入力者側に配置された可動電極シート10と、可動電極シート10に対向するように画像表示装置側に配置された固定電極シート20と、これらの間に設けられた透明なドットスペーサ30とを備える抵抗膜式タッチパネルである。
可動電極シート10は、第1の透明基材11と、第1の透明基材11の片面に設けられた膜状の第1の透明電極12とを備えている。
固定電極シート20は、第2の透明基材21と、第2の透明基材21の片面に設けられた膜状の第2の透明電極22とを備えている。
第1の透明電極12と第2の透明電極22とは、互いに対向するように配置されて、第1の透明電極12が押圧された際に第2の透明電極22に接触するようになっている。
【0007】
<可動電極シート>
(第1の透明基材)
可動電極シート10を構成する第1の透明基材11としては、例えば、単層または2層以上の透明樹脂フィルム、ガラス板、フィルムとガラス板との積層体が挙げられるが、可撓性を有することから、透明樹脂フィルムが好ましい。
透明樹脂フィルムを構成する透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
【0008】
第1の透明基材11の厚さは100〜250μmであることが好ましい。第1の透明基材11の厚さが100μm以上であれば、充分な強度を確保でき、250μm以下であれば、充分な可撓性を確保できる。
【0009】
(第1の透明電極)
第1の透明電極12は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属ナノ粒子とを含有するものである。
【0010】
[π共役系導電性高分子]
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
π共役系導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性、バインダ樹脂への相溶性を得ることができるが、導電性及び相溶性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等の官能基をπ共役系導電性高分子に導入することが好ましい。
【0011】
π共役系導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。その中でも、導電性、耐熱性から、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0012】
[ポリアニオン]
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
【0013】
ポリアルキレンとは、主鎖がメチレンの繰り返しで構成されているポリマーである。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
【0014】
上記ポリアニオンが置換基を有する場合、その置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシ基等が挙げられる。有機溶媒への溶解性、耐熱性及び樹脂への相溶性等を考慮すると、アルキル基、ヒドロキシ基、フェノール基、エステル基が好ましい。
【0015】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシル、オクチル、デシル、ドデシル等のアルキル基と、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等のシクロアルキル基が挙げられる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
【0016】
置換基を有するポリアルキレンの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリスチレン等を例示できる。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる一種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
【0017】
ポリアニオンのアニオン基としては、−O−SO、−SO、−COO(各式においてXは水素イオン、アルカリ金属イオンを表す。)が挙げられる。すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO、−COOが好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
【0018】
上記ポリアニオンの中でも、溶媒溶解性及び導電性の点から、ポリイソプレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸を含む共重合体、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレートを含む共重合体、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)、ポリ(4−スルホブチルメタクリレート)を含む共重合体、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸、ポリメタクリルオキシベンゼンスルホン酸を含む共重合体、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸を含む共重合体等が好ましい。
【0019】
ポリアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0020】
ポリアニオンの含有量は、π共役系導電性高分子1モルに対して0.1〜10モルの範囲であることが好ましく、1〜7モルの範囲であることがより好ましい。ポリアニオンの含有量が0.1モルより少なくなると、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。その上、溶媒への分散性及び溶解性が低くなり、均一な分散液を得ることが困難になる。また、ポリアニオンの含有量が10モルより多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくい。
【0021】
ポリアニオンは、π共役系導電性高分子に配位している。そのため、π共役系導電性高分子とポリアニオンとは複合体を形成している。
π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量は0.05〜5.0質量%であり、0.1〜4.0質量%であることが好ましい。π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計の含有量が0.05質量%未満であると、充分な導電性が得られないことがあり、5.0質量%を超えると、均一な第1の透明電極12が得られないことがある。
【0022】
[金属ナノ粒子]
金属ナノ粒子とは、平均粒子径が1〜50nmの金属粒子のことである。平均粒子径が1nm未満の金属ナノ粒子は調製が困難であり、50nmを超えると、第1の透明電極12を形成する際に用いる導電性高分子溶液中でコロイド状態を保つことが困難になる。
本発明において金属ナノ粒子を形成する金属は、銀、金、ニッケル、銅、白金、パラジウム、インジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属またはそれらの合金である。前記以外の金属または合金では、コロイド粒子を形成させることが困難である。
金属ナノ粒子に用いることができる合金としては、例えば、還元剤が溶解している水溶液に、2種類以上の金属塩の水溶液を同時に添加することにより得た合金などが挙げられる。金属塩としては、銀、金、ニッケル、銅、白金、パラジウム、インジウムなどの塩化物、硝酸塩または金属錯化合物を用いることができる。
これら合金は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
金属ナノ粒子の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.01質量%以上5.0質量%未満であり、0.05〜4.0質量%であることが好ましい。金属ナノ粒子の含有量が0.01質量%未満であると、異導体接触における接触抵抗が充分に低下せず動作不良を起こすことがあり、5.0質量%を超えると、第1の透明電極12の透明性が低くなることがある。
【0024】
[アクリル重合体]
第1の透明電極12は、成膜性の向上の点から、アクリル重合体を含有することが好ましい。ここで、アクリル重合体とは、下記(a)の単量体および(b)の単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を重合して得た重合体である。
【0025】
(a)グリシジル基を有するアクリル単量体(以下、単量体(a)という。)。
(b)アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種と、ヒドロキシ基とを有するアクリル単量体(以下、単量体(b)という。)。
【0026】
さらに、単量体(a)としては、下記(a−1)〜(a−3)のアクリル単量体が挙げられる。
(a−1):グリシジル基と、アリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基から選ばれる1種とを有するアクリル単量体。
(a−2):グリシジル基を2つ以上有するアクリル単量体。
(a−3):グリシジル基を1つ有するアクリル単量体であって、単量体(a−1)以外の単量体。
【0027】
単量体(a−1)のうち、グリシジル基とアクリル(メタクリル)基を有する単量体として、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
グリシジル基とアリル基を有する単量体として、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とを有する単量体として、1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する単量体として、3−アリル−1,4−ジヒドロキシメチルベンゼンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
なお、グリシジル基とヒドロキシ基とを有する単量体、グリシジル基とヒドロキシ基とアリル基とを有する単量体は単量体(b)でもある。
【0028】
単量体(a−2)としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルテトラフタレート等が挙げられ1種類または2種類以上の混合として用いることができる。
【0029】
単量体(a−3)としては、例えば、アルキルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0030】
単量体(b)のうち、例えば、ヒドロキシ基とビニルエーテル基とを有する単量体として、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリル(メタクリル)基を有する単量体として、2−ヒドロキシエチルアクリレート(メタクリレート)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(メタクリレート)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(メタクリレート)、エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート、ジペンタエリストリトールモノヒドロキシペンタアクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシ基とアクリルアミド(メタクリルアミド)基を有する単量体として、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリルアミドが挙げられる。
【0031】
上記単量体(a)では、そのグリシジル基がポリアニオンの残存アニオン基(例えば、スルホ基、カルボキシ基など)と反応して、エステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。その反応の際には、塩基性触媒、加圧、加熱によって反応を促進させてもよい。エステル形成の際、グリシジル基は開環してヒドロキシ基を形成する。このヒドロキシ基が、π共役系導電性高分子との塩もしくはエステルを形成しなかった残存アニオン基と脱水反応を起して、新たにエステル(例えば、スルホン酸エステル、カルボン酸エステルなど)を形成する。このようなエステルの形成によって、ポリアニオンドーパントとπ共役系導電性高分子との複合体同士が架橋する。
さらに、単量体(a−1)においては、ポリアニオンの残存アニオン基と、単量体(a−1)のグリシジル基とが結合した後、単量体(a−1)のアリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基同士が重合して複合体同士がさらに架橋する。
【0032】
また、上記単量体(b)では、そのヒドロキシ基がポリアニオンの残存アニオン基と脱水反応して、エステルを形成する。その脱水反応の際には、酸性触媒によって反応を促進させてもよい。その後、単量体(b)のアリル基、ビニルエーテル基、メタクリル基、アクリル基、メタクリルアミド基、アクリルアミド基同士が重合する。この重合によって、ポリアニオンと導電性高分子との複合体同士が架橋する。
【0033】
上記アクリル単量体の中でも、(メタ)アクリルアミドが好ましい。(メタ)アクリルアミドの重合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの複合体との相溶性が良い上に導電性をより向上させることもできる。
【0034】
また、アクリル重合体は、不飽和二重結合を2つ以上有する多官能アクリル単量体が共重合されていてもよい。多官能アクリル単量体が共重合されていれば、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの複合体を架橋しやすく、導電性および塗膜強度がより向上する。
多官能アクリル単量体の具体例としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する。)400ジ(メタ)アクリレート、PEG300ジ(メタ)アクリレート、PEG600ジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド等の2官能アクリルモノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等の3官能アクリルモノマー、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(ペンタ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のアクリルモノマー、ソルビトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の5官能以上のアクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、アルキレンオキサイド変性ヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の6官能以上のアクリルモノマー、2官能以上のウレタンアクリレートが挙げられる。
【0035】
多官能アクリル単量体のうち、2官能以上のアクリルモノマーは、分子量が3000以下であることが好ましい。2官能以上のアクリルモノマーの分子量が3000を超えると、第1の透明電極12を形成する際に用いる導電性高分子溶液に2官能以上のアクリルモノマーが溶解しにくくなる。また、不飽和二重結合当量が少なくなるため、複合体を架橋させにくく、充分な強度が得られない傾向にある。
また、多官能アクリル化合物のうち、多官能ウレタンアクリレートは、溶媒溶解性、耐摩耗性、低収縮の点で、分子量1000以下であることが好ましい。分子量が1000を超える多官能ウレタンアクリレートでは、イソシアネート基とポリオール(水酸基)により形成されるウレタン基の導入率が減少して、溶媒に対する溶解性が低くなる傾向にある。
【0036】
アクリル重合体の含有量は、π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して0.05〜50質量%であることが好ましく、0.3〜30質量%であることがより好ましい。アクリル重合体の含有量が0.05質量%未満であると、成膜性が不足することがあり、50質量%より多くなると、π共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、充分な導電性が得られないことがある。
【0037】
(2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物)
また、第1の透明電極12は、導電性がより高くなることから、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物を含有することが好ましい。
2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物としては、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)等が挙げられる。
なお、これら芳香族化合物の一部は還元剤としても機能する。したがって、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物を還元剤として兼用することで、導電性をより高めることもできる。
【0038】
2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物の含有量は、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性が高くならないことがある。また、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モルより多くなると、第1の透明電極12中のπ共役系導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られないことがある。
【0039】
[添加剤]
第1の透明電極12は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。
添加剤としてはπ共役系導電性高分子及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されず、例えば、アルカリ性化合物、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
アルカリ性化合物としては、公知の無機アルカリ化合物や有機アルカリ化合物を使用できる。無機アルカリ化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等が挙げられる。
有機アルカリ化合物としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、4級アミン、アミン以外の窒素含有化合物、金属アルコキシド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの中でも、導電性がより高くなることから、脂肪族アミン、芳香族アミン、4級アミンよりなる群から選ばれる1種もしくは2種以上が好ましい。
界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等の陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩等の陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタイン等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド等の非イオン界面活性剤等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジン等が挙げられる。
カップリング剤としては、ビニル基、アミノ基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オギザニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤と紫外線吸収剤とは併用することが好ましい。
【0040】
[厚さ]
第1の透明電極12の厚さは50〜700μmであることが好ましい。第1の透明電極12の厚さが50μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、700μm以下であれば、充分な可撓性及び透明性を確保できる。
【0041】
(可動電極シートの作製方法)
可動電極シート10は、第1の透明基材11上に導電性高分子溶液を塗布して作製される。
ここで、導電性高分子溶液は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと金属ナノ粒子と溶媒とを必須成分として含有し、2つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族化合物、アクリル単量体、添加物等を任意成分として含有する。
【0042】
溶媒としては特に制限されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジン、ジメチルイミダゾリン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジフェニルスルホン酸等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
前記溶媒の中でも、取り扱い性の点から、水、アルコール類が好ましい。
【0043】
導電性高分子溶液は、例えば、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子の前駆体モノマーを化学酸化重合して導電性高分子水溶液を調製し、この水溶液に、金属ナノ粒子(金属ナノコロイド粒子)と必要に応じて任意成分とを添加することで調製できる。
【0044】
金属ナノ粒子は粒子径が小さいため、表面エネルギーが大きく、凝集しやすい。そのため、金属ナノ粒子に、凝集を抑制するための分散剤を添加し、コロイドを形成して、分散安定性を向上させることが好ましい。
分散剤としては、金属ナノ粒子表面に対して強い吸着力を有する官能基を有するものが使用される。具体的には、クエン酸およびその誘導体、アニリンおよびその誘導体、硫黄化合物、窒素化合物などが挙げられる。
また、硫黄化合物としては、チオール類(例えば、酸チオール類、脂肪族チオール類、脂環式チオール類、芳香族チオール類等)、チオグリコール類、チオアミド類、ジチオール類、チオール類、チオン類、ポリチオール類、チオ炭酸類、チオ尿素類、硫化水素およびそれらの誘導体が挙げられる。
窒素化合物としては、第3級アミノ基、第4級アミノ基、塩基性窒素原子を有する複素環化合物などが挙げられる。
分散剤の添加量は、金属ナノ粒子100質量%に対して1〜200質量%であることが好ましい。分散剤添加量が1質量%以上であれば、確実に金属ナノ粒子を分散させることができる。しかし、200質量%を超えて添加しても分散性の向上効果が高くならないため、コストを高くするだけである。
【0045】
導電性高分子溶液の塗布方法として、例えば、コンマコーティング、リバースコーティング、リップコーティング、マイクログラビアコーティング等が適用される。
【0046】
アクリル単量体を含有する場合には、導電性高分子溶液を塗布した後に、アクリル単量体を重合してアクリル重合体を得るための硬化処理を施すことが好ましい。
アクリル単量体の重合では、熱ラジカル重合法、光ラジカル重合法、プラズマ重合法、カチオン重合法を適用できる。
熱ラジカル重合法では、重合開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、ジアシルペルオキシド類、ペルオキシエステル類、ヒドロペルオキシド類等の過酸化物などを用いて重合する。熱ラジカル重合法を適用する場合には、熱風加熱や赤外線加熱などにより加熱して重合すればよい。
光ラジカル重合法では、重合開始剤として、カルボニル化合物、イオウ化合物、有機過酸化物、アゾ化合物などを用いて重合する。具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、キサントン、チオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、テトラメチルチウラム、ジチオカーバメート、過酸化ベンゾイル、N−ラウリルピリジウムアジド、ポリメチルフェニルシランなどが挙げられる。
光ラジカル重合法を適用する場合には、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプなどの光源から紫外線を照射して重合すればよい。また、紫外線を照射する前には、加熱乾燥してもよい。
プラズマ重合では、プラズマを短時間照射し、プラズマの電子衝撃によるエネルギーを受けて、フラグメンテーションとリアレンジメントをしたのち、ラジカルの再結合により重合体を生成する。
カチオン重合法では、反応促進のため、ハロゲン化金属、有機金属化合物等のルイス酸、その他、ハロゲン、強酸塩、カルボニウムイオン塩等の光または熱でカチオンを生成する求電子試薬などを用いる。カチオン重合法は、アクリル単量体が、単量体(a−1)およびビニルエーテル基を有する単量体(b)の重合に適用される。
【0047】
<固定電極シート>
(第2の透明基材)
固定電極シート20を構成する第2の透明基材21としては、第1の透明基材11と同様のものを使用でき、中でも、可動電極シート10を、ドットスペーサ30を介して支持しやすいことから、ガラス板を用いたものが好ましい。
第2の透明基材21の厚さは0.8〜2.5mmであることが好ましい。第2の透明基材21の厚さが0.8mm以上であれば、充分な強度を確保でき、2.5mm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
【0048】
(第2の透明電極)
第2の透明電極22は、透明導電性金属酸化物製である。第2の透明電極22を構成する透明導電性金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化錫、インジウムドープ酸化錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化亜鉛などが挙げられる。
第2の透明電極22の厚さは0.01〜1.0μmであることが好ましい。第2の透明電極22の厚さが0.01μm以上であれば、充分な導電性を確保でき、1.0μm以下であれば、薄くすることができ、省スペース化を実現できる。
【0049】
<可動電極シートと固定電極シートとの間隔>
可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20〜100μmであることが好ましい。可動電極シート10と固定電極シート20の非押圧時の間隔は20μm以上であれば、非押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させないようにすることができ、100μm以下であれば、押圧時に可動電極シート10と固定電極シート20とを確実に接触させることができる。前記間隔になるようにするためには、ドットスペーサ30の大きさを適宜選択すればよい。
【0050】
<入力デバイスの使用方法および用途>
この入力デバイス1では、指またはスタイラスにより可動電極シート10を押した際に、可動電極シート10の第1の透明電極12と固定電極シート20の第2の透明電極22とを接触させて導通させ、その際の電圧を取り込んで位置を検出するようになっている。
このような入力デバイス1は、例えば、電子手帳、携帯情報端末(PDA)、携帯電話、PHS、現金自動預け払い機(ATM)、自動販売機、販売時点情報管理(POS)用レジスタなどに備え付けられる。
【0051】
<作用効果>
以上説明した入力デバイス1では、可動電極シート10を構成する第1の透明電極12が金属ナノ粒子を含んでいるため、導電性に優れる上に、透明導電性金属酸化物製の第2の透明電極22に対する接触抵抗が小さくなっている。したがって、入力感度の低下や座標入力時間遅れ等の動作不良が起きにくい。
また、金属ナノ粒子は、第1の透明電極12を形成するための導電性高分子溶液中で高い分散性で分散するため、第1の透明電極12中で均一に含まれている。そのため、第1の透明電極の全面で動作不良が起きにくい。
また、金属ナノ粒子の含有量はπ共役系導電性高分子とポリアニオンとの合計100質量%に対して5質量%未満と少ないため、金属ナノ粒子によって透明性が損なわれない。そのため、入力デバイス1を画像表示装置上に設置した際には、画像の視認性に優れる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を具体的に示すが、本発明は実施例により限定されるものではない。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の調製
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30000
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
【0053】
(製造例2)ポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)水溶液の調製
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
【0054】
(実施例1)
金−銀コロイド粒子(住友金属鉱山社製、CKRシリーズ、アルコール分散、濃度1.2質量%)27.0g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して金−銀コロイド粒子が4.50質量%)、ハイドロキノン3.6g、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ペンタエリスリトールトリアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Aを得た。
導電性高分子溶液Aを、第1の透明基材であるポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績製A4300、厚さ;188μm、全光線透過率;93.5%、ヘイズ;0.68%)に、リバースコーターにより塗布し、120℃、2分間、熱風により乾燥した後、紫外線(高圧水銀灯120W、360mJ/cm、178mW/cm)照射し、硬化させ、第1の透明基材を形成して、電極シートを得た。
第1の透明電極の表面抵抗と光透過率、入力デバイスにおける第1の透明電極と第2の透明電極との接触抵抗を以下の方法により測定した。それらの結果を表1に示す。
【0055】
[表面抵抗値]
三菱化学社製ロレスタMCP−T600を用い、JIS K 7194に準じて測定した。
[光透過率]
日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用い、JIS K7136に準じて光透過率を測定した。
[接触抵抗]
第1の透明基材11(ポリエチレンテレフタレートフィルム、東洋紡績製A4300、厚さ;188μm)上に導電性高分子溶液を塗布して第1の透明電極12を形成して、40mm×50mmに裁断した。その裁断したシートの第1の透明電極12上の幅方向の縁に導電性ペースト(藤倉化成社製FA−401CA)をスクリーン印刷し、乾燥させて電極配線13a,13bを形成して、入力者側の可動電極シート10(図2参照)を得た。
また、ガラス製の第2の透明基材21の片面にITO製の第2の透明電極22(表面抵抗:300Ω)が設けられ、40mm×50mmに裁断された電極用シートを用意した。その用意した電極用シートの第2の透明電極22上の長手方向の縁に、導電性ペースト(藤倉化成社製XA436)をスクリーン印刷し、乾燥させて電極配線23a,23bを形成した。次いで、第2の透明電極22上に、ドットスペーサ用ペースト(藤倉化成社製SN−8400C)をスクリーン印刷し、乾燥し、紫外線照射して、ドットスペーサ30を形成させた。次いで、電極配線23a,23b上に、レジスト用ペースト(藤倉化成社製SN−8800G)をスクリーン印刷し、乾燥し、UV照射して、絶縁層25を形成させた。さらに、絶縁層25上に、接着剤(藤倉化成社製XB−114)をスクリーン印刷し、乾燥させて、可動電極シート10に貼り合わせるための接着剤層26を形成させた。これにより、画像表示装置用の固定電極シート20(図3参照)を得た。
次いで、図4に示すように、可動電極シート10と固定電極シート20とを、第1の透明電極12と第2の透明電極22が対向するように配置させ、接着剤層26により貼り合せて抵抗膜式タッチパネルモジュールを作製した。また、固定電極シート20の一方の電極配線23aと精密電源31とを、プルアップ抵抗(82.3kΩ)32、およびプルアップ抵抗32に並列に接続されたプルアップ抵抗32の電圧測定用テスタ33を介して電気的に接続した。また、精密電源31と可動電極シート10の一方の電極配線13aとを電気的に接続した。また、可動電極シート10の他方の電極配線13bと固定電極シート20の他方の電極配線23bとを、抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧測定用テスタ34を介して電気的に接続した。これにより、接触抵抗測定用の電気回路を得た。
接触抵抗は次のように測定した。先端が0.8Rのポリアセタール製スタイラス35で、可動電極シート10を250gの荷重で押圧し、精密電源31により電圧5Vを印加した際のプルアップ抵抗の電圧と抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧を測定し、これらの測定結果より、接触抵抗を測定した。
具体的には、プルアップ抵抗32に流れる電流値を、測定した電圧値を用いてオームの法則から算出し、その算出した電流値および抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧値を下記式に代入して接触抵抗を求めた。
接触抵抗(Ω)=[(抵抗膜式タッチパネルモジュールの電圧(V))/(プルアップ抵抗の電圧(V))]×プルアップ抵抗(Ω)
[摺動試験]
第1の透明電極の塗膜強度を測定するため、エタノールで湿らせたキムワイプ(日本製紙クレシア社製)を、100gf/cmの荷重をかけて30往復擦り、第1の透明電極の抜けを目視により検査した。また、摺動試験後の接触抵抗を測定した。これらの結果は第1の透明電極の膜強度の指標になる。
◎ :剥離なし、○:わずかに剥離、△:一部剥離、×:完全剥離
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例2)
銀コロイド粒子(ナノサイズ社製、AG321、エチレングリコール分散、濃度50質量%)0.57g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して銀コロイド粒子が4.0質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2,3,3’,4,4’,5−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、トリプロピレングリコールジアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Bを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Bを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例3)
銀コロイド粒子(住友金属鉱山社製、DCGシリーズ、アルコール分散、濃度0.3質量%)10g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して銀コロイド粒子が0.42質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2,3,3’,4,4’,5−ヘキサヒドロキシベンゾフェノン3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Cを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Cを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例4)
コロイド銀ゾル(共立マテリアル社製、SG−AG47SH、濃度12質量%)0.03g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してコロイド銀ゾルが0.05質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、ハイドロキノン3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート7.2g、エタノール300gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Dを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Dを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例5)
実施例1において2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18gの代わりにジメチルスルホキシド20gを添加し、ペンタエリスリトールトリアクリレートを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Eを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Eを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0061】
(実施例6)
実施例3においてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして、導電性高分子溶液Fを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Fを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例7)
コロイド銅ペースト(共立マテリアル社製、SG−CU50P、濃度60質量%)0.3g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してコロイド銅が2.50質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、ガーリック酸3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート7.2g、1−メトキシ−2−プロパノール200gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Gを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Gを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例8)
インジウムコロイド(新光化学工業所社製、濃度1.4質量%)5.6g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してインジウムコロイドが1.09質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、ガーリック酸メチル3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジメチロールジシクロペンタジアクリレート7.2g、1−メトキシ−2−プロパノール200gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Hを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Hを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例9)
白金コロイド(新光化学工業所社製、濃度2.5質量%)8.8g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して白金コロイドが3.08質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、トリメチロールプロパントリアクリレート7.2g、エタノール300g、1−メトキシ−2−プロパノール200gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Iを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Iを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0065】
(実施例10)
金コロイド(新光化学工業所社製、濃度1.8質量%)12.0g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して金コロイドが3.00質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ジプロピレングリコールジアクリレート7.2g、エタノール300g、1−メトキシ−2−プロパノール200gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Jを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Jを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例11)
ニッケルコロイド(新光化学工業所社製、濃度2.8質量%)9.0g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してニッケルコロイドが3.50質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、4−ヒドロキシ安息香酸フェニル3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ソルビトールペンタアクリレート7.2g、エタノール300g、1−メトキシ−2−プロパノール200gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Kを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Kを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0067】
(実施例12)
パラジウムコロイド(新光化学工業所社製、濃度3.0質量%)11.7g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してパラジウムコロイドが4.88質量%)、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.9g、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン3.6g、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド18g、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート7.2g、エタノール300g、1−メトキシ−2−プロパノール200gを混合し、撹拌した。これにより得た混合溶液に、製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液600gを添加し、ホモジナイザ分散処理して、導電性高分子溶液Lを得た。
そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Lを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
実施例1における金−銀コロイド粒子の添加量を0.05g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して金−銀コロイド粒子が0.003質量%)にした以外は実施例1と同様にして、導電性高分子溶液Mを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Mを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0069】
(比較例2)
実施例2における銀コロイド粒子の添加量を8g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して銀イオンが55.6質量%)にした以外は実施例2と同様にして、導電性高分子溶液Nを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Nを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0070】
(比較例3)
実施例3における銀コロイド粒子の添加量を180g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対して銀コロイド粒子が7.5質量%)にした以外は実施例3と同様にして、導電性高分子溶液Oを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Oを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0071】
(比較例4)
実施例4におけるコロイド銀ゾルの添加量を10g(π共役系導電性高分子とポリアニオンの合計100質量%に対してコロイド銀ゾルが16.7質量%)にした以外は実施例4と同様にして、導電性高分子溶液Pを得た。そして、導電性高分子溶液Aの代わりに導電性高分子溶液Pを用いたこと以外は実施例1と同様に第1の透明電極を形成し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0072】
第1の透明電極がπ共役系導電性高分子とポリアニオンと特定の金属ナノ粒子とを含む実施例1〜12では、第1の透明電極の導電性および透明性に優れ、しかも第1の透明電極は第2の透明電極に対する接触抵抗が小さかった。
さらに、実施例1〜4,7〜12の第1の透明電極は、(メタ)アクリルアミドおよび多官能アクリルを重合した重合体をさらに含んでいたため、膜強度、透明基材に対する密着性にも優れていた。
また、実施例5の第1の透明電極は、アクリル重合体を含んでいなかったため、摺動試験前の塗膜強度が低く、摺動試験後に導電性が低下した。
多官能アクリルが共重合されなかった(メタ)アクリルアミドの重合体を含む実施例6の第1の透明電極は、摺動試験前の塗膜強度が低く、摺動試験後に導電性が低下したが、実施例5よりは、摺動試験前の塗膜強度が高かった。
【0073】
π共役系導電性高分子とポリアニオンと特定の金属ナノ粒子を含むが、金属ナノ粒子の含有量が0.01質量%未満であった比較例1の第1の透明電極は、第2の透明電極に対する接触抵抗が大きく、入力デバイス用として適していなかった。
π共役系導電性高分子とポリアニオンと特定の金属ナノ粒子を含むが、金属粒子の含有量が5質量%以上であった比較例2〜4の第1の透明電極は、充分な透明性が得られず、入力デバイス用として適していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の入力デバイスの一実施形態例を示す断面図である。
【図2】入力デバイスを構成する可動電極シートの一例を示す断面図である。
【図3】入力デバイスを構成する固定電極シートを示す断面図である。
【図4】接触抵抗の測定方法における回路を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1 入力デバイス
10 可動電極シート
11 第1の透明基材
12 第1の透明電極
13a,13b 電極配線
20 固定電極シート
21 第2の透明基材
22 第2の透明電極
23a,23b 電極配線
30 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透明電極と、第1の透明電極に対向するように配置された透明導電性金属酸化物製の第2の透明電極とを備え、第1の透明電極が押圧された際に第2の透明電極に接触する入力デバイスにおいて、
前記第1の透明電極は、π共役系導電性高分子とポリアニオンと平均粒子径が1〜50nmの金属ナノ粒子とを含有し、
金属ナノ粒子を形成する金属が、銀、金、ニッケル、銅、白金、パラジウム、インジウムよりなる群から選ばれる1種以上の金属またはそれらの合金であり、
金属ナノ粒子の含有量が、π共役系導電性高分子とポリアニオンとの合計を100質量%とした際の0.01質量%以上5質量%未満であることを特徴とする入力デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−20559(P2010−20559A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180672(P2008−180672)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】