説明

入力装置

【課題】 操作体の押圧位置により異なる出力動作を得ることができ、アナログ出力を得るための操作とデジタル出力を得るための操作を明確に分離できる入力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 操作体27の操作点Pが押圧されると、弾性押圧部材13が下方へ弾性変形し、対向電極6bと抵抗部材6aが接触点P0で接触し、接触点P0の抵抗部材6aにおける位置が検出される。よって、接触点P0に対応する操作点Pの操作体27における放射方向の位置が検知される。各操作体を連続して押圧すると、各操作体において押圧された部分の、各操作体における放射方向の位置が連続的に検知され、検知された前記位置のデータにもとづいてアナログ的な出力が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作体の押圧によりアナログ出力が可能な入力装置に係り、特に、操作体の押圧位置により異なる出力動作を得ることができ、アナログ出力を得るための操作とデジタル出力を得るための操作を明確に分離できる入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にはゲーム機器用入力装置が開示されている。
図9は前記ゲーム機器用入力装置に備えられる操作レバーを示す断面図である。なお、紙面奥側が+Y方向で、紙面手前側が−Y方向である。
【0003】
図9に示すように、操作レバー101を−X方向に傾けると、操作レバー101の操作点Qは−X方向に移動し、非操作時の中立軸N上にあったときの位置からずれた位置に移動する。この状態のときには、導電性弾性体102a,102bのうち、移動伝達部材103の−X方向にある導電性弾性体102aが移動伝達部材103により下方へ押される。そして、導電性弾性体102aが、抵抗体104a,104bのうち、導電性弾性体102aに対応する抵抗体104aに接触する。導電性弾性体102aと抵抗体104aとの接触面積は操作レバー101の移動量に対応する。このため、導電性弾性体102aと抵抗体104aとの間の箇所では、前記接触面積の変化により抵抗値が変化し、抵抗体104aに流れる電流が変化する。この電流の変化から電圧変化をみることにより操作レバー101の操作点Qを移動させた方位や傾き角が検出される。検出された信号は、アナログ信号としてフレキシブル基板105よりケーブル等を介してコンピュータゲーム機器に入力される。
【特許文献1】特開2000−348574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記特許文献1に記載の発明では、導電性弾性体102aと抵抗体104aとの接触面積の変化を検出することはできるが、導電性弾性体102aと抵抗体104aとが接触する接触点の、抵抗体104aにおけるXY平面内での接触位置は検出することができない。
【0005】
また、たとえば操作可能なゲームの種類を増やすためには、前記アナログ出力とデジタル出力との双方を得ることができなければならない。しかし、前記特許文献1に記載の発明では、操作レバー101の傾動によって前記アナログ出力を得るだけではなくデジタル出力を得るために、たとえば抵抗体104a,104bとプレート106との間にデジタル出力用のスイッチ等の部材を設けたとしても、アナログ出力とデジタル出力を個別に得るためには、たとえば、デジタル出力を得ようとするときには操作レバー101の傾動量を多くし、アナログ出力を得ようとするときには操作レバー101の傾動量を少なくしなければならない。すなわち、指等で操作レバー101の傾動量を変化させなければならない。前記傾動量を指等で変化させることは困難である。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、操作体の押圧位置により異なる出力動作を得ることができ、アナログ出力を得るための操作とデジタル出力を得るための操作を明確に分離できる入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、放射方向に延びる複数の操作体を備えた操作部材と、この操作部材に対する押圧操作によって弾性変形させられる弾性押圧部材と、前記弾性押圧部材によって変形させられることにより、前記押圧操作が行われた位置および方向に応じた検出信号を出力する検出手段とが設けられた入力装置であって、
前記検出手段は、前記操作体と同じ放射方向に延びる複数の抵抗部材と、前記複数の抵抗部材の内周側の端部どうしまたは外周側の端部どうしをそれぞれ導通接続する連結電極と、前記抵抗部材に対向配置され、且つ前記押圧操作によって前記抵抗部材に接触させられたときに、前記検出信号を出力する対向電極とが設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明では、押圧された部分の、操作体における放射方向の位置をアナログ的に出力することができるため、操作体を押圧する位置により、異なった出力動作を得ることができる。たとえば、各操作体の内側部分を前記同心円の円周方向に連続的に押圧した場合には動作速度の速い出力を得ることができ、各操作体の外側部分を前記同心円の円周方向に連続的に押圧した場合には動作速度の遅い出力を得ることができる。
【0009】
上記においては、前記対向電極は複数設けられており、個々の前記抵抗部材に対して個々の前記対向電極が対向して配置されているものが好ましい。
【0010】
このように配置されていると、複数の抵抗部材のうち、押圧された操作体に対応して下方に向かって変形した対向電極に対向する抵抗部材のみが対向電極と接触する。このため、押圧されるべき操作体の下方に設けられている対向電極と同時に、押圧されるべき操作体の近傍にある押圧されるべきではない操作体、たとえば両隣の操作体の下方に設けられている対向電極も誤って押圧してしまうことを防止することができる。
【0011】
また前記抵抗部材は、内周側から外周側に向かう放射方向にしたがって徐々に幅寸法が広くなる形状で形成されているものが好ましい。
【0012】
このような形状とした上で、内周側と外周側とを判別する境界(しきい値とする位置)を抵抗部材の中点よりも外周側の位置に設定すると、内周側として機能する操作エリアを拡大することができるとともに、さらに広い分解能を得ることが可能となるため、内周側に対する操作性を優れたものとすることができる。
【0013】
また本発明では、前記検出手段の下部側で、且つ前記放射方向に延びる複数の操作体に対向する位置に反転スイッチが設けられているものが好ましく、前記操作部材の下面には突起部が設けられており、前記突起部で押されたときに前記反転スイッチが反転動作させられるものが好ましい。
【0014】
上記手段では、操作部材を押圧操作したときに、操作者にクリック感触を与えることができるため、スイッチが操作されたことを明確に認識させることができる。また、スイッチが設けられているため、検出手段側ではアナログ的な出力が得られ、スイッチ側ではオンとオフのデジタル的な出力が得られるようになる。
【0015】
また前記複数の抵抗部材の両端に所定の電圧を所定の周期で印加する切換え手段と、前記対向電極に生じる電圧を所定の周期で検出する電圧検出手段とを有しているものとして構成できる。
【0016】
上記手段では、操作部材に与えられた押圧操作に対応する操作方向および操作位置を電圧として検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の入力装置では、操作体の押圧位置により異なる出力動作を得ることができ、アナログ出力を得るための操作とデジタル出力を得るための操作を明確に分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は本発明の入力装置の平面図、図2は図1の2−2線の切断断面図、図3は入力装置の部分拡大図、図4は抵抗部材の配列を示す平面図、図5は入力装置の動作を示す図3と同様の断面図、図6は各操作体に対し押圧操作を一定の時間間隔で連続的に与えたときの入力装置の出力波形を示し、図6Aは外周側を操作した場合、図6Bは内周側を操作した場合を示している。図7は各操作体に対し押圧操作を一定の角速度で連続的に与えたときの入力装置の出力波形を示し、図7Aは外周側を操作した場合、図7Bは内周側を操作した場合を示している。なお、図4における点線部分は、中央操作部の下方に設けられる中央スイッチを示している。
【0019】
図1および図2に示すように、入力装置10は、合成樹脂などで形成された操作部材20を有している。操作部材20は、図1に示すように、中央操作部20Aと、8方向に放射状に延びる操作体21,22,23,24,25,26,27および28を有している。
【0020】
図2に示すように、中央操作部20Aの下方には中央突起部20aが突出形成されている。操作体21ないし28の各下面20bにはスリット状の凹部20cがそれぞれ形成されており、各凹部20cの近傍に突起部20dがそれぞれ突出形成されている。
【0021】
操作体21ないし28の下方には弾性押圧部材13がそれぞれ設けられている。弾性押圧部材13は、図2に示すように、断面形状が操作体に対して凹形状で、それ自体が圧縮変形可能な合成ゴムやシリコーンゴムなどの材料で形成されている。なお、各弾性押圧部材13には弾性変形可能なリブ13dがそれぞれ一体に形成されて、弾性押圧部材13およびリブ13dが同じ材料で一体に形成されている。リブ13dにより弾性押圧部材13の傾き動作が抑制されている。
【0022】
また、弾性押圧部材13の中心には、Z1−Z2方向に貫通する挿入穴13aが形成されており、挿入穴13aに中央操作部20Aの中央突起部20aが上側から挿入されている。挿入穴13aにおいては開口部分の径がその挿入側の径よりも小さく形成され、中央突起部20aにおいては先端側の径が基部側の径よりも大きく形成されている。このため、中央突起部20aが挿入穴13aに挿入されたときに、操作部材20が弾性押圧部材13から抜け難くなっている。
【0023】
図2に示すように、弾性押圧部材13の上縁部13cが操作部材20と当接している。すなわち、上縁部13cは平坦形状で、操作体21ないし28の下面20bの平坦な面に接するようになっており、操作部材20が押圧されたときには、上縁部13cのみが操作部材20によって押圧される。
【0024】
本発明では、弾性押圧部材13は薄肉に形成されており、図2に示すように、操作部材20が操作されていない状態では、突起部20dは弾性押圧部材13の下部頂部13b1から離れた状態にある。
【0025】
弾性押圧部材13の下面にはシート基板14が設けられている。図3に示すように、シート基板14は、下部シート14aと上部シート14bとで形成されている。シート基板14には、弾性押圧部材13の下部頂部13b1に対向する位置に検出手段16が設けられ、突起部20dが下部頂部13b1に対向している。
【0026】
検出手段16は、図3に示すように、共に軟質な下部シート14aと上部シート14bとが図示しない離間シートを介して積層され、下部シート14aと上部シート14bとの対向面にそれぞれ抵抗体が設けられている。下部シート14aと上部シート14bは双方とも可撓性と絶縁性を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂などの合成樹脂材料で形成されている。
【0027】
図3および図4に示すように、下部シート14aの抵抗体は放射状に形成された8つの抵抗部材16aである(個別に抵抗部材16a1,16a2,16a3,16a4,16a5,16a6,16a7,16a8で示す。)。また、上部シート14bの抵抗体は対向電極16bである。前記8つの抵抗部材16aと対向電極16bとは接離可能に支持されている。抵抗部材16aは、対向電極16bよりも比抵抗が十分に大きい抵抗材料で形成されている。
【0028】
なお、前記離間シートに代えて、下部シート14aおよび上部シート14bの双方または一方に絶縁性を有する樹脂膜を形成して、下部シート14aと上部シート14bとの間隔が確保されるようにしてもよい。
【0029】
抵抗部材16aはカーボン膜などで形成され、対向電極16bは抵抗部材16aよりも電気抵抗の低い膜、例えば銀、金、銅などの金属膜から形成されている。
【0030】
抵抗部材16aの内周側の一端は、図4に示すように、円形の連結電極16cにそれぞれ接続され、連結電極16cの同心円の円周方向に分割されて放射状に配置されている。この実施の形態では、8つの抵抗部材16a1,16a2,16a3,16a4,16a5,16a6,16a7,16a8が設けられており、連結電極16cは各抵抗部材16a1ないし16a8の内周側の端部どうしを導通接続しているが、連結電極16cが外周側に設けられており各抵抗部材16a1ないし16a8の外周側の端部どうしを導通接続する構成であってもよい。
【0031】
前記抵抗部材16a1ないし16a8の外周側の端部には、銀や銅などで形成された導線パターンがそれぞれ配線されており、外部に設けられた図示しない切換え手段を介して図示しない電源装置の電源端子(+端子)に接続可能とされている。また、連結電極16cは電源装置の接地端子GNDに接続されている。
【0032】
なお、連結電極16cが各抵抗部材16a1ないし16a8の外周側の端部どうしを導通接続する構成の場合には、前記導線パターンは抵抗部材16a1ないし16a8の内周側の端部に接続される。また電圧の印加の仕方は、連結電極16cを+端子に接続し、各導線パターンを接地端子GNDに接続してもよいし、その逆であってもよい。つまり、前記切換え手段を駆動させて接点を所定の周期で連続的に切り換えたときに、放射状に並ぶ各抵抗部材16a1ないし16a8の外周側の端部と他方の内周側の端部との間に、所定の電源電圧Vccを右回り又は左回りに一定の周期で印加することができるようになっていればよい。
【0033】
なお、検出手段16の構成としては上記の構成に限定されるものではなく、例えば、3枚のシートを重ねたものではなく1枚のシートでその上に抵抗部材が形成されたもので、この抵抗部材に低抵抗の導電性部材を形成した弾性押圧部材を対向させたものでもよい。
【0034】
図2および図3に示すように、シート基板14は、金属や合成樹脂などの剛性の高い部材で形成された硬質なベース15上に設置される。ベース15には、中央突起部20aと対向する位置に、クリック感触を発生させるスイッチ29(図4参照)が設けられ、突起部20dと対向する位置に、それぞれクリック感触を発生させる反転スイッチ17が設けられている。なお、中央スイッチ29の構造は反転スイッチ17と同様の構造である。
【0035】
反転スイッチ17は、ベース15とシート基板14の検出手段16との間に設けられ、PET樹脂などの合成樹脂製のシート17a上に金属製のドーム状の反転板17bが設けられ、反転板17bの周縁部17b1がシート7aに固定されている。また、シート17aの表面には反転板17bの内側の中心に対向する位置に導電パターン17cが形成され、反転板17bの周縁部17b1に別の導電パターン17dが接続されている。
【0036】
本発明の入力装置10は、図2に示すように、操作部材20が筐体18の開口部18aにZ2側からZ1方向へ挿入され、筐体18内ではベース15が支持部材19に固定されている。操作部材20は弾性押圧部材13によって図示Z1方向に付勢されており、操作部材20の表面は筐体18の開口部18aから図示Z1方向に突出させられている。
【0037】
また、各弾性押圧部材13の内周側には図示Z1方向(上方向)に突出する凸部13tが一体に形成されている。各凸部13tは、操作体21ないし28の各下面20bに形成されたスリット状の凹部20cに挿入されており、操作部材20が中央突起部20aを軸としてその軸回りに回転することがないように規制している。
【0038】
図3は操作部材20が操作されていない初期状態を示している。
操作部材20が任意の操作点Pで押圧操作されたとすると、操作部材20は、図2において前記中央突起部20aを支点とする反時計回り方向、すなわち一方の操作体27が下向きに、他方の操作体23が上向きとなるように傾けられる。このとき、図5に示すように、操作体27側の下面20bが、弾性押圧部材13の上縁部13cを押圧するため、弾性押圧部材13が弾性変形させられる。
【0039】
図5に示すように、弾性押圧部材13が弾性変形させられると、シート基板14の上部シート14bおよび対向電極16bが下部方向に向けて凸状に変形させられるため、対向電極16bが操作体27に対応する位置に設けられた抵抗部材16a7に接触点P0で接触する。
【0040】
所定の周期(周波数)により前記切り換え手段が駆動され、前記8つの抵抗部材16a1ないし16a8には所定の電源電圧Vccが印加される。対向電極16bの電圧は、図示しない電圧検出手段により所定の周期で検出されている。なお、対向電極16bの検出の周期(周波数)は前記切換え手段の周期と同じであってもよいが、少なくとも前記切換え手段の周期よりも短い(周波数としては高い)ものが好ましい。
【0041】
前記電圧検出手段を用いて、対向電極16bの電圧、すなわち接触点P0の電位を検出すると、抵抗部材16a7の外周側の一端と接触点P0との間の抵抗値と接触点P0と連結電極16cとの間の抵抗値との抵抗比から、抵抗部材16a7上における接触点P0の位置(放射方向の位置)を検出することができる。よって、前記検出電圧から接触点P0に対応する操作点Pの放射方向の位置と、操作体21ないし28のうち操作体27が操作されたことを検知することができる。
【0042】
なお、操作体27の内側方向(連結電極16c側)に位置する部分が押圧操作された場合においても、上記と同様に、押圧された部分の操作体27における放射方向の位置が検知される。また、操作体27以外の操作体を押圧操作した場合においても、上記と同様に、押圧された操作体と、放射方向の位置を特定することが可能である。
【0043】
ここで、例えば、抵抗部材16aに印加される電源電圧Vccの半値である電圧値Vcc/2をしきい値Vthとして、図示しない制御部によって、接触点P0における電圧値としきい値Vthを比較する。例えば、操作体21ないし28を時計回り方向に一定の時間間隔Δtで連続的に押圧操作した場合は図6のようになる。
【0044】
図6Aに示すように、操作点Pの位置を各操作体上の外周側として押圧した場合には、抵抗部材16a1ないし16a8の各接触点P0から出力される電圧値がしきい値Vthよりも大きくなる。このため、操作体21ないし28の外周側が押圧操作されたと判別することができる。
【0045】
一方、図6Bに示すように、接触点P0の位置を各操作体上の内周側として押圧操作した場合には、抵抗部材16a1ないし16a8の各接触点P0から出力される電圧値がしきい値Vthよりも小さくなる。このため、操作体21ないし28の内周側が押圧操作されたと判別することができる。
【0046】
そして、前記制御部が所定のサンプリング周期で操作体21ないし28に対する押圧操作を連続的に検出することにより、操作体21ないし28に対する操作を連続的なアナログ量として得ることが可能である。
【0047】
また、例えば、接触点P0における電圧値が、しきい値Vthとなる部分よりも大きな値として検出される外側部分を、連結電極16cを中心とする同心円の円周方向に沿って連続的に押圧したとする。すなわち、最初に操作体21の外側部分を押圧し、次に操作体22の外側部分を押圧し、さらに操作体23の外側部分を押圧し、・・・・というように、時計回り方向にほぼ一定の角速度ω(=θ/t)で各操作体の外側の位置を順に押圧していくと、各抵抗部材16a1ないし16a8の各接触点P0から出力される電圧値は図7Aのように示される。
【0048】
一方、同様の操作を接触点P0における電圧値が、しきい値Vthよりも小さくなる内側の位置で行った場合に、各抵抗部材16a1ないし16a8の各接触点P0から出力される電圧値は図7Bのように示される。
【0049】
すなわち、図7A,Bに示すように、角速度ωをほぼ一定とした状態において、外周側を操作した場合と内周側を操作した場合とを比較すると、出力パルスの周期は外周側の方が内周側に比較して短いことがわかる。すなわち、外周側を操作した場合には、内周側を操作した場合に比較して操作速度の早い出力を得ることができる。
【0050】
そして、上記のような特徴を有する入力装置10を携帯電話に搭載した場合には、例えば操作部材20の内側部分を前記同心円の円周方向に連続的に押圧操作されたときには、携帯電話の表示部に表示された画像等を遅い速度で所定の方向にスクロールさせるように設定し、操作部材20の外側部分を前記同心円の円周方向に連続的に押圧したときには、前記画像等を速い速度で所定の方向にスクロールさせるように設定することができる。
【0051】
本発明では、対向電極16bは複数設けられ、1つの抵抗部材16aに対して1つの対向電極16bが対向するように配置されていることが好ましい。このように配置されていると、任意の操作体が押圧されて、その操作体に対応してその操作体の下方に設けられている対向電極16bが下方に向かって変形したときには、複数の抵抗部材16aのうち、この下方に向かって変形した対向電極16bに対向する抵抗部材16aのみが前記対向電極16bと接触する。このため、押圧されるべき操作体の下方に設けられている対向電極16bと同時に、押圧されるべき操作体の近傍にある押圧されるべきではない操作体、たとえば両隣の操作体の下方に設けられている対向電極16bも誤って押圧してしまうことを防止することができる。
【0052】
また、本発明では、各抵抗部材16aは、図4に示すように、内周側の連結電極16cから外周側に向かう放射方向にしたがって徐々に幅寸法が広くなる形状であることが好ましい。ここで、図8は各抵抗部材の長さ方向における位置とその位置における出力電圧との関係を示すグラフであり、図中実線は抵抗部材を図4に示すような徐々に幅寸法が広くなる幅広抵抗体aとした場合、一点鎖線は抵抗部材を一定の幅寸法からなる長方形状の抵抗体(一定幅の抵抗体)bとした場合を示している。
【0053】
グラフの横軸の原点は抵抗部材の最内周側であり、横軸の方向は抵抗部材の外周方向を示している。
【0054】
しきい値Vthを電源電圧Vccの1/2である電圧値Vcc/2に設定した場合には、一定幅の抵抗体bでは長さ寸法Lの中点位置L/2に内周側と外周側との境界が設定され、幅広抵抗体aの場合には中点位置L/2よりも内側の位置L1(0<L1<L/2)に内周側と外周側との境界が設定される。したがって、幅広抵抗体aでは、前記中点位置L/2に内周側と外周側との境界を設定した場合には、しきい値Vthを電圧値Vcc/2と電源電圧Vccとの間の比較的高い電圧レベルVaに設定することができ、内周側の分解能を外周側と比べてより広くすることができるようになる。このため、内周側と外周側との前記境界を、さらに前記中点位置L/2よりも外周側に設定すると、入力装置10の大きさ(長径)が比較的小さい場合であっても、内周側に対する操作をし易くすることができる。すなわち、内周側と外周側とを判別する境界(しきい値)を前記中点位置L/2よりも外側の位置(外周側の位置)に設定すると、内周側として機能する操作エリアを拡大することができるとともに、さらに広い分解能を得ることが可能となるため、内周側に対する操作性を優れたものとすることができる。なお、このように設定すると、外周側の操作エリアおよび分解能が狭まることになるが、元々外周側の操作エリアは内周側の外側に位置しているのであるから、外周側の操作エリアに対する操作性が内周側に比較して劣るようなことはない。
【0055】
また、操作者による誤操作入力を避けるため、内周側と外周側との前記境界(しきい値)付近には、ある一定幅の不感帯領域を設けて操作を受け付けないように設定する必要がある。図8に示すように、前記不感帯領域の長さ方向の幅寸法をWとすると、前記不感帯領域ΔWに対する出力電圧Vとして使用できない不感帯電圧幅は、一定幅の抵抗体bの場合が不感帯電圧幅ΔVbであるのに対し、幅広抵抗体aの場合にはそれよりも狭小な不感帯電圧幅ΔVaとすることができる(ΔVb>ΔVa)。このため、幅広抵抗体aでは、一定幅の抵抗体bに比較して、出力電圧Vとして使用できる範囲を広くとることができるため、分解能が広く、精度の高い検出が可能となる。
【0056】
なお、抵抗部材16aを一定幅の抵抗体bで形成した場合には、幅広抵抗体aで形成した場合と比べて、隣接する抵抗体bと抵抗体bとの間隔(対向領域の面積または対向寸法)が広くなる。したがって、入力装置10の出力信号には、信号として出力されない無信号時間帯が長く形成される。すなわち、デューティ比が小さくなりやすいため、隣接する一定幅の抵抗体bと一定幅の抵抗体bとの間の動作を補足することが困難となる。また、この間の動作を補足するには、別途の識別手段等が必要になり、入力装置10の構成が複雑化する。しかし、本発明のように、抵抗部材16aを徐々に幅寸法が広くなる幅広抵抗体aで形成した場合には、隣接する幅広抵抗体aと幅広抵抗体aとの対向領域の面積(または対向寸法)を狭くすることができるため、入力装置10の出力信号のデューティ比が大きくなり、隣接する幅広抵抗体aと幅広抵抗体aとの間の動作を補足することが容易となる。このため、検出精度の高い入力装置10を提供することが可能となる。
【0057】
本発明においては、図3に点線で示すように、たとえば操作体27の突起部20dに対応する部分を押圧すると、突起部20dが押し下げられ、突起部20dは、弾性押圧部材13の下部頂部13b1を押圧する。このため、操作体27の押圧操作の際に弾性押圧部材13がバランス良く変形できる。
【0058】
その後、前記原理と同様の原理により、弾性押圧部材13によってシート基板14が押圧されて、反転スイッチ17に設けられた反転板17bの中心部が凹状に変形させられてクリック感触が発生させられる。また、クリック感触と同時に、導電パターン17dに接続された反転板17bの内面が、その反転動作によって導電パターン17cの表面に接触して、反転スイッチ17の出力がオフからオンに切り換えられる。すなわちデジタル的な出力が行われる。
【0059】
上記のようなデジタル的な出力は、操作体27以外の操作体を押圧操作した場合においても同様に行われる。
【0060】
このように、操作者にクリック感触を与えると、操作者は反転スイッチ17を押圧したことを容易に正確に認識することができる。
【0061】
また、本発明において、反転スイッチ17を設けると、検出手段16側ではアナログ的な出力が得られ、反転スイッチ17側ではオンとオフのデジタル的な出力が得られるようになる。これにより、例えば、本発明の入力装置10を携帯電話に搭載した場合に、アナログ的な出力によって前記スクロール機能を動作させることができ、デジタル的な出力によってメニューや画像の選択や決定等の動作を行わせることができる。
【0062】
本発明では、上記のように、複数の操作体21ないし28の内側部分または外側部分を前記同心円の円周方向に連続的に押圧することによってアナログ的な出力を得ることができ、いずれか1つの操作体を押圧することによってデジタル的な出力が得ることができる。このように、本発明では、アナログ的な出力を得るための操作とデジタル的な出力を得るための操作を明確に分離されているため、操作者は、所望の出力を得るための操作を確実、且つ容易に行うことができ、入力装置10の操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の入力装置の平面図、
【図2】図1の2−2線の切断断面図、
【図3】入力装置の部分拡大図、
【図4】抵抗部材の配列を示す平面図、
【図5】入力装置の動作を示す断面図、
【図6】各操作体に対し押圧操作を一定の時間間隔で連続的に与えたときの入力装置の出力波形を示し、図6Aは外周側を操作した場合の入力装置の出力波形を示す図、図6Bは内周側を操作した場合の入力装置の出力波形を示す図、
【図7】各操作体に対し押圧操作を一定の角速度で連続的に与えたときの入力装置の出力波形を示し、図7Aは外周側を操作した場合の入力装置の出力波形を示す図、図7Bは内周側を操作した場合の入力装置の出力波形を示す図、
【図8】各抵抗部材の長さ方向における位置とその位置における出力電圧との関係を示すグラフ、
【図9】従来のゲーム機器用入力装置に備えられる操作レバーを示す断面図、
【符号の説明】
【0064】
10 入力装置
13 弾性押圧部材
13b1 下部頂部
13c 上縁部
13d リブ
13t 凸部
14 シート基板
15 ベース
16 検出手段
16a 抵抗部材
16b 対向電極
17 反転スイッチ
17b 反転版
17c,17d 導電パターン
17d
20 操作部材
20A 中央操作部
20a 中央突起部
20c 凹部
20d 突起部
21,22,23,24,25,26,27,28 操作体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射方向に延びる複数の操作体を備えた操作部材と、この操作部材に対する押圧操作によって弾性変形させられる弾性押圧部材と、前記弾性押圧部材によって変形させられることにより、前記押圧操作が行われた位置および方向に応じた検出信号を出力する検出手段とが設けられた入力装置であって、
前記検出手段は、前記操作体と同じ放射方向に延びる複数の抵抗部材と、前記複数の抵抗部材の内周側の端部どうしまたは外周側の端部どうしをそれぞれ導通接続する連結電極と、前記抵抗部材に対向配置され、且つ前記押圧操作によって前記抵抗部材に接触させられたときに、前記検出信号を出力する対向電極とが設けられていることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記対向電極は複数設けられており、個々の前記抵抗部材に対して個々の前記対向電極が対向して配置されている請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記抵抗部材は、内周側から外周側に向かう放射方向にしたがって徐々に幅寸法が広くなる形状で形成されている請求項1または2記載の入力装置。
【請求項4】
前記検出手段の下部側で、且つ前記放射方向に延びる複数の操作体に対向する位置に反転スイッチが設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載の入力装置。
【請求項5】
前記操作部材の下面には突起部が設けられており、前記突起部で押されたときに前記反転スイッチが反転動作させられる請求項4記載の入力装置。
【請求項6】
前記複数の抵抗部材の両端に所定の電圧を所定の周期で印加する切換え手段と、前記対向電極に生じる電圧を所定の周期で検出する電圧検出手段とを有している請求項1ないし5のいずれかに記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−40688(P2006−40688A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−218404(P2004−218404)
【出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】