説明

入力装置

【課題】いわゆる多点同時入力を可能とした入力装置を低コストで提供する。
【解決手段】静電容量式タッチセンサ14と、任意の文字や記号が印刷された文字記号印刷フィルム16と、文字記号印刷フィルム16を照明する面発光層としてのバックライト15との積層体を備えた入力装置であって、文字記号印刷フィルム16は、バックライト15の上面側に配置され、静電容量式タッチセンサ14はバックライト15の下面側に配置され、最上面に位置する入力操作面は平坦面となっていることで、いわゆる多点同時入力を可能とした入力装置を低コストで提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ用のキーボードや空調機器等のリモコンなどの入力デバイスに好適に利用可能な入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ用のキーボードや空調機器、テレビやオーディオ等のリモコンなど、操作者が指によって指示情報を入力するいわゆる入力デバイスに適用される入力装置は従来から広く知られている。このような入力装置の一形態として、入力面を兼ねる指示情報入力部とバックライトの間に光透過型の静電容量式タッチパネルを介在させたものがある。
【0003】
このタイプの入力装置においては、バックライトを点灯させてこの光を静電容量式タッチパネルに透過させ、入力面に形成された文字や図形等の形状を有する光透過部を介して指示情報入力部に表示させ、操作者が必要な指示情報をこの入力面を介して入力する構造となっている。
【0004】
一方、このような指示情報入力部としての入力面の役目に加えて、操作者が必要とする情報を表示させる情報表示部としての役目を兼ね備えた情報表示入力装置を備えた携帯用端末なども知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007ー164767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した前者の従来技術の入力装置は、入力面とバックライトの間に光透過型のタッチパネルを介在させた構造を有している。タッチパネルを備える入力装置の一形態として、静電容量式のタッチパネルを用いる場合がある。このような構造を有した入力装置において、その使い勝手を向上させた未だ公知ではない技術が、例えば特願2009−253938において提案されている。この提案内容においては、その構造上バックライトで発光させた光をこのタッチパネルを透過させることが必須の構造となっている。
【0007】
一方、上記提案内容において記載された構造とは異なり、このようなタッチパネルを使用するに際して、より使い勝手を向上させた構造を有する入力装置が要望されている。具体的には、例えば操作者が何れか一つの指をタッチパネルに近づけてこれに対応する指示入力を行なうだけでなく、例えば任意の3箇所等、複数の異なる指を近づけてこの組み合わせに対応する指示入力を行なえるようにすることで、タッチパネルの範囲内において様々な入力操作ができるような機能を有する使い勝手に優れた入力装置が要望されている。
【0008】
しかしながら、バックライトで発光させた光を光透過型のタッチパネルを透過させる構造において上述のようないわゆる多点同時入力(マルチタッチ)を可能とした機能を実現するためには、特別な工夫が必要となりコスト高となっていた。
【0009】
一方、上述した特許文献1に記載の携帯用情報表示入力装置は、フラットディスプレイパネルとタッチパネルの間にバックライトを介在させた構造を有している。そして、フラットディスプレイパネル自体には、上述した入力装置における入力情報としての文字や図形等を表示するだけでなく、この入力情報の入力操作に応じた情報の内容を表示させる機能を有している。そのため、このフラットディスプレイパネル自体をコストの高い液晶パネル等から構成しなければならず、上述した入力装置のようにLEDからの光をタッチパネルに透過させて表示面に表示させるような構造とは本質的に異なる構造となっている。
【0010】
従って、上述した入力結果(入力操作に応じた情報内容)を表示する機能を有さない入力装置であって、多点同時入力(マルチタッチ)を可能とした機能を低コストで実現する、という本発明に係る入力装置特有の課題を有していない。
【0011】
本発明は、いわゆる多点同時入力を可能とした入力装置を低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る入力装置は、
静電容量式タッチセンサと、任意の文字や記号が印刷された文字記号印刷フィルムと、前記文字記号印刷フィルムを照明する面発光層との積層体を備えた入力装置であって、
前記文字記号印刷フィルムは前記面発光層の上面側に配置され、
前記タッチセンサは前記面発光層の下面側に配置され、
最上面に位置する入力操作面は平坦面であることを特徴としている。
【0013】
本発明の請求項1に係る入力装置によると、文字記号印刷フィルムが面発光層の上面側に配置されると共に、タッチセンサが面発光層の下面側に配置されているので、従来の入力装置のように光透過型のタッチパネルを用いる必要がない。従来の入力装置の場合、バックライトで発光させた光を光透過型のタッチパネルを透過させる構造において上述のようないわゆる多点同時入力(マルチタッチ)を可能とした機能を実現するためには、特別な工夫が必要となりコスト高となっていた。しかしながら、本発明によると、上述のように光透過型のタッチパネルを用いる必要がないので、いわゆる多点同時入力を可能とした入力装置を低コストで実現することができる。
【0014】
また、入力装置の最上面に位置する入力操作面が平坦面であるので、例えば多数のキーキャップを備えた従来のキーボードの代わりに本発明に係る入力装置をキーボードに適用することで、従来のキーボードのように1つのキーキャップが破損しただけでキーボード全体が使用できなくなるような不具合を防止できる。また、従来のキーボードのように多数のキーキャップとキーボード前面パネルとの間に塵や埃がたまるような不具合を防止でき、クリーンルームなどの厳しい使用環境下においても問題なく利用できる。
【0015】
また、本発明の請求項2に係る入力装置は、請求項1に記載の入力装置において、
前記文字記号印刷フィルムの上面を覆う透光性のカバーパネルが更に積層配置され、該カバーパネル上面が前記入力操作面をなすことを特徴としている。
【0016】
本発明の請求項2に係る入力装置によると、このような透光性のカバーパネルを有することで、文字記号印刷フィルム自体をしっかりと保護するので、入力装置の入力操作面を容易に清掃することができ、その入力操作面の文字や記号を常に鮮明に映し出した状態で長期に亘って使用することができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に係る入力装置は、請求項2に記載の入力装置において、
前記カバーパネルは、ハーフミラー又はスモークパネルからなることを特徴としている。
【0018】
本発明の請求項3に係る入力装置によると、入力装置の不使用時に入力操作面の操作入力情報を表した文字や記号を外部から認識できないようにするので、インテリア性に優れた入力装置とすることができる。
【0019】
また、カバーパネルを清掃する際、入力装置の電源をオフにすることでカバーパネル全体が鏡面状又は濃い単一色となるので、清掃時に汚れが落ちたか否かを容易に判断することができ、清掃作業の効率化を図ることができる。
【0020】
また、本発明の請求項4に係る入力装置は、請求項2に記載の入力装置において、
前記カバーパネルは、透光性パネルと前記ハーフミラー又はスモークパネルとを積層してなり、前記ハーフミラーを前記文字記号印刷フィルム側に向けて配置したことを特徴としている。
【0021】
本発明の請求項4に係る入力装置によると、ハーフミラー又はスモークパネルの上面を透光性パネルで覆うので、この透光性パネルを介してハーフミラー又はスモークパネルを保護することによって入力装置の外観品質を長期に亘って高く保つことができる。
【0022】
また、本発明の請求項5に係る入力装置は、請求項2乃至4のうちのいずれか1の項に記載の入力装置において、
前記カバーパネルの上面に、透光性パネルとハーフミラーで構成される立体感表示手段を少なくとも1枚重ねて配置したことを特徴としている。
【0023】
本発明の請求項5に係る入力装置によると、多重反射効果により表示される文字・記号が視覚的に浮き出て見え、より立体的な文字・記号に見えるという効果を得ることができるようになる。これによって、入力装置の美観や装飾効果を向上させることができる。これと共に、押すべき文字のイメージを使用者に強く視認させることができるようになり、入力操作のミスを極力なくすことができるようになる。
【0024】
また、このような入力装置を使い慣れない人にも入力装置に表示される立体感を伴う文字や数字を介して入力操作自体に興味を持たせることができ、入力装置の使用頻度を高めてそのような人にも使い勝手の良い入力装置とすることができるようになる。
【0025】
また、本発明の請求項6に係る入力装置は、
静電容量式タッチセンサと、任意の文字や記号が印刷されたハーフミラーと、
前記ハーフミラーを照明する面発光層との積層体を備えた入力装置であって、
前記ハーフミラーは前記面発光層の上面側に配置され、
前記静電容量式タッチセンサは前記面発光層の下面側に配置され、
最上面に位置する入力操作面は平坦面であることを特徴としている。
【0026】
本発明の請求項6に係る入力装置によると、ハーフミラーの裏面側に文字・記号を直接印刷した加工ハーフミラーで文字・記号印刷ファィルムの代用することができ、文字・記号印刷ファィルムを用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。このようにすれば、文字・記号印刷ファィルムを用いる必要がなくなり、入力装置の部品費および原価を下げることができる。
【0027】
また、本発明の請求項7に係る入力装置は、請求項6に記載の入力装置において、
前記ハーフミラーの上面を覆う透光性パネルが更に積層配置され、該透光性パネル上面が前記入力操作面をなすことを特徴としている。
【0028】
本発明の請求項7に係る入力装置によると、入力操作する場合に透光性パネルが保護パネルとしての役目を果たし、入力装置の入力面をしっかりと保護することが可能となる。
【0029】
また、本発明の請求項8に係る入力装置は、請求項6または請求項7のいずれか1の項に記載の入力装置において、
前記透光性パネルの上面に、透光性パネルとハーフミラーで構成される立体感表示手段を少なくとも1枚重ねて配置したことを特徴としている。
【0030】
本発明の請求項8に係る入力装置によると、多重反射効果により表示される文字・記号が視覚的に浮き出て見え、より立体的な文字・記号に見えるという効果を得ることができるようになる。これによって、入力装置の美観や装飾効果を向上させることができる。これと共に、押すべき文字のイメージを使用者に強く視認させることができるようになり、入力操作のミスを極力なくすことができるようになる。
【0031】
また、このような入力装置を使い慣れない人にも入力装置に表示される立体感を伴う文字や数字を介して入力操作自体に興味を持たせることができ、入力装置の使用頻度を高めてそのような人にも使い勝手の良い入力装置とすることができるようになる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、いわゆる多点同時入力を可能とした入力装置を低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態に係る入力装置の表示面を示す平面図である。
【図2】図1に示した入力装置の組み立て前の状態を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示した入力装置の内部構造を概略的に示す説明図である。
【図4】図1に示した入力装置の表示面における表示の仕方を説明する断面図である。
【図5】図1に示した入力装置の表示面における表示の仕方を説明する分解斜視図である。
【図6】文字記号印刷フィルムを操作者側(表面側)から見た図(図6(a))及びそれと反対側(裏面側)から見た図(図6(b))である。
【図7】本発明の一実施形態に係る入力装置の第1の変形例を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る入力装置の第2の変形例を示す断面図である。
【図9】図8に示した入力装置の表示面の表示形態を説明する概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態に係る入力装置を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る入力装置の表示面を示す平面図である。また、図2は、図1に示した入力装置の組み立て前の状態を示す分解斜視図である。また、図3は、図1に示した入力装置の内部構造を概略的に示す説明図であり、ケースとフレームのみ断面ハッチングを施している。
【0035】
本発明の一実施形態に係る入力装置1は、パーソナルコンピュータに使用されるキーボードからなり、ケース11と、ベースプレート13、ベースプレート13の下面に配置される回路基板12、ベースプレート13の上面に配置される静電容量式タッチセンサ14、バックライト(面発光層)15、文字記号印刷フィルム16、フレーム18、ハーフミラー17と透光性パネル19からなるカバーパネル(入力操作面)20を備えている。
【0036】
ケース11は、強度と成型性に優れた樹脂でできており、横長の底部11aとこの底部11aの周囲縁部に形成された側部11bからなり、側部周囲の縁部にフレーム18が嵌められるようになっている。ケース底部11aの下面にはキーボード1の高さ調整を行うフット(図示せず)と、キーボード操作中にキーボードを載せたテーブル等とのズレを防止する滑り止め(図示せず)が備わっている。一方、ケース底部11aの上面にはキーボード1の操作内容を電気的に処理してパーソナルコンピュータ(図示せず)に伝達するための回路基板12及びFPC(フレキシブルプリントサーキット)121が備わっている

【0037】
ベースプレート13は、或る程度の厚さと強度を有するようにABS樹脂で成形されている。そして、ベースプレート13の上面には静電容量式タッチセンサ14とバックライト15が順次積層配置されている。
【0038】
静電容量式タッチセンサ14は、後述する文字記号印刷フィルム16に印刷された文字や記号のそれぞれに対応する多数の静電容量センサエレメントをマトリックス状に独立して、4層のガラスエポキシ基材にプリント基板を形成する要領で形成されている。プリント基板を形成する要領で製作できることから透過型タッチパネルに対して大きくコストダウンすることが可能となった。なお、静電容量センサエレメントは、文字記号印刷フィルム16に印刷された各文字や記号に対応する位置にそれぞれ形成されている。そして、操作者がカバーパネル20に映し出された文字や記号のうち特定の文字や記号を指で押すことで、これに対応する静電容量センサエレメントの静電容量が大きく変化すると共に、この周囲の静電容量センサエレメントの静電容量が若干変化することに基づき、操作者が何れの文字や記号を指で押したかを、回路基板12の演算手段(図示せず)を介して特定する。
【0039】
従って、本実施形態の場合、静電容量式タッチセンサ14は、操作者がキーボード1の例えば2箇所乃至5箇所等の複数の文字や記号を同時に押しても、この押した複数の文字や記号を同時に特定できるようになっていることから、いわゆるマルチタッチに容易に対応することができるので、コンピータ用のキーボードとして、一般的に普及しているキースイッチ式のキーボードに代えて用いることができる。また、静電容量式タッチセンサ14の上面は白色塗装され、この上に積層されるバックライト15の漏れ光を吸収することなくバックライト15の導光板内に無駄なく反射させるようになっている。
【0040】
この白色塗装は、静電容量式タッチセンサ14の上面にシルク印刷を塗布して実現されるが、この代わりに白色の反射板や反射シートを貼り付けても良い。しかしながら、静電容量式タッチセンサ14のパターンをガラスエポキシ基材上に形成した後に同一工程において白色のシルク印刷を施すことで組立工程数と部品を低減することができ、生産効率を高めることが可能となる。
【0041】
図4は、図1に示した入力装置1の表示面における表示の仕方を説明する断面図である。また、図5は、図1に示した入力装置1の表示面における表示の仕方を説明する分解斜視図(模式図)である。バックライト15は、静電容量式タッチセンサ14の上面に積層されるような大きさ及び平面形状を有したアクリル樹脂の導光板151と、導光板151に光を伝達する光源としての複数のLED152を有している。なお、LED152は、導光板151のキーボード手前側の長手方向側方縁部に所定間隔隔てて複数個設けられている。そして、導光板151の底面には文字記号印刷フィルムに印刷された文字や記号に
対応する位置に光路変換部153が形成されている。なお、図4においては、代表的に1つの光路変換部153のみを示している。光路変換部153は、いわゆるドット印刷と呼ばれる特殊な印刷処理を施すことで形成されている。より具体的には、光路変換部153は、導光板151の底面に局所的に形成された多数の白色のドットからなり、導光板内を伝わる光の一部を各ドット部において反射させて各光路変換部153に対応する文字記号印刷フィルム上の文字や記号に光を向かわせるようになっている(図4の一点鎖線で示す矢印及び図5の実線で示す矢印参照)。
【0042】
なお、各光路変換部153を形成するドット部の形成密度(単位面積当たりのドットの形成個数や大きさ)は、LED152から遠ざかるに従って高くなっており、このようにドット部の形成密度を変えることで、文字記号印刷フィルム上の各文字や記号を通過する光の強度をそれぞれ均一にすることができ、キーボード1の操作入力面上において、文字や記号の配置場所によって明るさがばらつかないようにしている。
【0043】
図6は、文字記号印刷フィルムを操作者側(表面側)から見た図(図6(a))及びそれと反対側(裏面側)から見た図(図6(b))である。なお、図6においては、多数の文字や記号のうち1つの文字「ON」についてのみ例示している。文字記号印刷フィルム16は、いわゆるネガフィルムからなり、キーボード1に入力する文字や記号が通常のキーボードのキーキャップ上に描かれた文字や記号に相当する位置に表示されている。文字記号印刷フィルム16の表面は、この文字や記号の部分のみ光を透過するように透明となってそれ以外の部分は黒色塗装されている。
【0044】
具体的には、文字記号印刷フィルム16は、透明のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに文字や記号の部分を除いて黒色にシルク印刷した上に白色で重ねてシルク印刷(二重印刷)し、バックライト側から見ると文字と記号の透明部分及びその周囲の黒色部分を除いて全て白色となり(図6(b)参照)、操作情報入力側面から見ると透明の文字と記号の部分を除いて全て黒色となるようにする(図6(a)参照)。これにより、文字記号印刷フィルム16に照射された光が白色印刷部で吸収されずに反射されるので、導光板151における光の減衰を最小限度に抑えてバックライト15の発光効率を高めに
保つことができる。
【0045】
ハーフミラー17は、本実施形態の場合、操作者の指先が入力操作面20の文字や記号に触れたかを静電容量式タッチセンサ14で正確に検知するために、銀シートなどの金属シートを用いることなく金属光沢を有する樹脂製の特殊なPETフィルムを用いている。この特殊なPETフィルムは、例えば特開2010−184493号公報において金属光沢調の樹脂製ハーフミラーとして知られている。
【0046】
フレーム18は、強度と成型性に優れたABS樹脂でできており、枠体構造を有している。そして、透光性パネル19とハーフミラー17からなるカバーパネル20を保持しながらケース上面の開口部上縁部全体に亘って嵌合するようになっている。また、透光性パネル19は、アクリル樹脂でできた板材からなり、ハーフミラー17を保護すると共に、操作者が指で特定の文字や記号を押した際にこの指の接近による静電容量の変化をこの特定の文字や記号に対応する静電容量センサエレメントにおいて生じさせる厚さを有している。なお、本実施形態においては、透光性パネル19とハーフミラー17とでカバーパネル20を構成している。
【0047】
続いて、本実施形態に係るキーボード1の従来技術とは異なる特有の作用について説明する。本実施形態に係るキーボード1によると、文字記号印刷フィルム16が面発光層をなすバックライト15の上面側に配置されると共に、静電容量式タッチセンサ14がバックライト15の下面側に配置されているので、従来の入力装置のように光透過型のタッチパネルを用いる必要がない。従来の入力装置の場合、バックライトで発光させた光を光透過型のタッチパネルを透過させる構造において上述のようないわゆる多点同時入力を可能とした機能を実現するためには、特別な工夫が必要となりコスト高となっていた。しかしながら、本実施形態に係るキーボード1によると、上述のように光透過型のタッチパネルを用いる必要がないので、いわゆる多点同時入力を可能とした入力装置を低コストで実現することができる。
【0048】
また、入力装置1の最上面に位置する入力操作面をなすカバーパネル20が平坦面となっているので、多数のキーキャップを備えた従来のキーボードの代わりに本実施形態に係るキーボードを適用したキーボードとすることで、入力操作面の清掃が容易になるばかりか、従来のキーボードのように1つのキーキャップが破損しただけでキーボード全体が使用できなくなるような不具合も防止できる。
【0049】
また、従来のキーボードのように多数のキーキャップとキーボード前面パネルとの間に塵や埃がたまるような不具合を防止でき、クリーンルームなどのクリーン度の厳しい使用環境下においても問題なく利用できる。
【0050】
また、本実施形態に係るキーボード1では、文字記号印刷フィルム16の上面を覆うカバーパネル20が更に積層配置され、カバーパネル20の上面が入力操作面をなしているので、カバーパネル20によって文字記号印刷フィルム自体をしっかりと保護している。その結果、キーボード1のカバーパネル20を容易に清掃することができ、操作入力部として重要な役目を果たす文字や記号を常に鮮明に映し出しながら長期に亘って使用することができる。
【0051】
また、本実施形態に係るキーボードは、透光性パネル19の下にハーフミラー17が配置されているので、キーボードの不使用時に入力操作面の操作入力情報を表した文字や記号を外部から認識できないようにし、インテリア性に優れたキーボードとすることができる。また、透光性パネル19を清掃する際、キーボードの電源をオフにすることで、透光性パネル全体が鏡面状又は濃い単一色となるので、清掃時に汚れが落ちたか否かを容易に判断することができ、清掃作業の効率化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る入力装置は、透光性パネル19がハーフミラー17に積層され、ハーフミラー17を文字記号印刷フィルム側に向けて配置しているので、ハーフミラー17の上面を透光性パネル19で覆うようになり、この透光性パネル19を介してハーフミラー17を保護し、キーボードの外観品質を長期に亘って高く保つ。
【0053】
なお、静電容量式タッチセンサ14の上面全体には必ずしも白色インクが塗布されている必要はないが、本実施形態のような構成とすることで、静電容量式タッチセンサ14に積層されるバックライト15の漏れ光を吸収することなく、その光を導光板内に反射させて戻し、バックライト15の光利用効率を向上させることができる。
【0054】
また、カバーパネル20は、上述の実施形態のようにハーフミラー17からなることに代えてスモークパネルからなっていても本発明の作用を発揮することは可能である。即ち、ハーフミラー17の代わりにスモークパネルを用いた場合であっても、入力装置の不使用時に入力操作面の操作入力情報を表した文字や記号を外部から認識できないようにするので、高級感を伴うキーボードを低コストで実現することができる。なお、カバーパネル20にハーフミラー17やスモークパネルを用いる代わりにその他の誘電体多層膜などを用いても良い。
【0055】
また、アクリル板からなる透光性パネル19については、キーボードに必ずしも設ける必要がない。即ち、ハーフミラー自体を本発明における平坦な入力操作面としても良い。しかしながら、本実施形態のように透光性パネル19を備えていた方がハーフミラー17を確実に保護することができ、清掃作業が行い易くなると共に、長期に亘って綺麗な外観品質を保つことができるようになる。
【0056】
また、文字記号印刷フィルム16の裏面は、文字や図形の周囲を除いて白色としておくことは必ずしも必要としない。しかしながら、本実施形態のように白色としておくことで
、静電容量式タッチセンサ14に積層されるバックライト15の漏れ光を吸収することなく、その光を導光板内に反射させて戻し、バックライト15の光利用効率を向上させることができる。
【0057】
なお、上述した実施形態において紹介したキーボード1の各構成要素の形状や材質については、そのものに限定されるものではなく、本発明の作用効果を発揮し得る範囲内で変更可能であることは言うまでもない。以下、このような本発明の範囲に含まれる形態について、第1及び第2の変形例として例示的に説明する。なお、これら変形例において上述した実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
まず、上述した一実施形態の第1の変形例について説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る入力装置の第1の変形例である入力装置1’を示す断面図である。上述した実施形態においては、文字・記号印刷ファィルム16を用いることで説明をしてきたが、本変形例に係る入力装置1’においては、これとは異なり、同図に示すように、ハーフミラーの裏面側(バックライト15に対向する側)に文字・記号を直接印刷した加工ハーフミラー17Bで代用する構成をとっている。本変形例がこのような構成を有していても、文字・記号印刷ファィルム16を用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。このようにすれば、文字・記号印刷ファィルム16を用いる必要がなくなり、入力装置1’ の部品費および原価を下げることができる。
【0059】
なお、アクリル樹脂からなる透光性パネル19は無色透明である必要はなく、装飾効果を持たせるために着色品を用いても良い。また、透光性パネル19の材質についてもアクリル樹脂の代わりにポリカーボネートやガラスであっても良い。
【0060】
また、透光性パネル19の表面又はハーフミラー17の表面に傷防止用、汚れ防止用、指紋対策用、などの特殊コーティングを施しても良く、専用のラミネートフィルムを貼り合せても良い。
【0061】
また、バックライト15に用いる導光板151には、光路変換手段として白色のドット印刷を行ったが、光路変換手段の目的だけでなく装飾効果を生じさせるためにドット形状を変えたり、着色したドット印刷を用いたりしても良い。また、導光板それ自体を着色しても良い。
【0062】
続いて、上述した一実施形態の第2の変形例について説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る入力装置の第2の変形例である入力装置1”を示す断面図である。また、図9は、図8に示した入力装置1”の表示面の表示形態を説明する概略斜視図である。
【0063】
本変形例における入力装置1” においては、図8および図9に示すように、透光性パネル19Aの裏面にハーフミラー17Aを貼り合わせた立体感表示手段(第2のカバーパネル)20Aをカバーパネル20の上に更に重ねる構成をとっている。入力装置1” がこのような立体感表示手段20Aを有することで、多重反射効果により表示される文字・記号が視覚的に浮き出て見え、より立体的な文字・記号に見えるという効果を得ることができるようになる。その結果、入力装置1” の美観や装飾効果を向上させることができる。なお、ここで、浮き出て見える奥行き感は、透光性パネル19Aの厚みや立体感表示手段(第2のカバーパネル)20Aの枚数やハーフミラー17Aの反射率などで調整することができる。
【0064】
また、入力装置1” がこのような立体感表示手段20Aを有することで、押すべき文字のイメージを使用者に強く視認させることができるようになり、入力操作のミスを極力なくすことができるようになる。また、一般的なキーボードの形態をなす入力装置を使い慣れない人にも、このような入力装置1”に表示される立体感を伴う文字や数字を介して入力操作自体に興味を持たせることができ、入力装置1”の使用頻度を高めてそのような人にも使い勝手の良い入力装置とすることができるようになる。
【0065】
なお、この立体感表示手段は、本発明に適用できるばかりでなく、一般的な液晶表示装置(LCDとも呼ばれる)の上に重ねることでも、多重反射効果により立体感のある文字・記号に見えるという効果を同様に得ることができる。
【0066】
また、上述の実施形態では、入力装置の一形態としてキーボード1への適用例を紹介したが、これに限らず例えば空調機器やテレビ、オーディオ機器等のリモコンに本発明に係る入力装置を適用しても良い。
【0067】
以上説明したように、本発明は、入力面がフラットな入力装置であって、LEDと導光板の組み合わせによるバックライト15を用いて文字や記号を入力面に表示させると共に、バックライト15の出光面と反対側に静電容量式タッチセンサ14を配置することで、入力感知用のデバイスをバックライト15よりも下部に配置させる構造を採用したことに特徴がある。
【0068】
このような構造により、入力面をなすフラットパネルにバックライトから照射される光を介して文字印刷フィルムに形成される文字や記号を鮮明に映し出すと共に、全面がフラットパネルとなった入力面であるパネル面を指で触れることで、バックライト15の下部に配置した静電容量式タッチセンサ14でその入力内容を感知する。即ち、従来の入力装置と異なり、本発明による入力装置は、バックライト15の上に入力用センサ(例えば透光性のタッチパネル)等の発光以外のモジュールが介在しないので、いわゆる多点同時入力(マルチタッチ)を可能とする機能を有する入力装置であっても低コストで実現できる
ことに特徴がある。
【符号の説明】
【0069】
1,1’,1” 入力装置(キーボード)
11 ケース
12 回路基板
13 ベースプレート
14 静電容量式タッチセンサ
15 バックライト(面発光層)
16 文字記号印刷フィルム
17 ハーフミラー
17B 加工ハーフミラー
18 フレーム
19 透光性パネル
20 カバーパネル(入力操作面)
20A 立体感表示手段(第2のカバーパネル)
151 導光板
152 LED
153 光路変換部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量式タッチセンサと、任意の文字や記号が印刷された文字記号印刷フィルムと、
前記文字記号印刷フィルムを照明する面発光層との積層体を備えた入力装置であって、
前記文字記号印刷フィルムは前記面発光層の上面側に配置され、
前記静電容量式タッチセンサは前記面発光層の下面側に配置され、
最上面に位置する入力操作面は平坦面であることを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記文字記号印刷フィルムの上面を覆う透光性のカバーパネルが更に積層配置され、該カバーパネル上面が前記入力操作面をなすことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記カバーパネルは、ハーフミラー又はスモークパネルからなることを特徴する請求項2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記カバーパネルは、透光性パネルと前記ハーフミラー又はスモークパネルとを積層してなり、前記ハーフミラー又はスモークパネルを前記文字記号印刷フィルム側に向けて配置したことを特徴とする請求項2に記載の入力装置。
【請求項5】
前記カバーパネルの上面に、透光性パネルとハーフミラーで構成される立体感表示手段を少なくとも1枚重ねて配置したことを特徴とする請求項2乃至4のうちのいずれか1の項に記載の入力装置。
【請求項6】
静電容量式タッチセンサと、任意の文字や記号が印刷されたハーフミラーと、
前記ハーフミラーを照明する面発光層との積層体を備えた入力装置であって、
前記ハーフミラーは前記面発光層の上面側に配置され、
前記静電容量式タッチセンサは前記面発光層の下面側に配置され、
最上面に位置する入力操作面は平坦面であることを特徴とする入力装置。
【請求項7】
前記ハーフミラーの上面を覆う透光性パネルが更に積層配置され、該透光性パネル上面が前記入力操作面をなすことを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記透光性パネルの上面に、透光性パネルとハーフミラーで構成される立体感表示手段を少なくとも1枚重ねて配置したことを特徴とする請求項6または請求項7のいずれか1の項に記載の入力装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−108864(P2012−108864A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80175(P2011−80175)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】