説明

入場管理システム

【課題】感染症が流行したときに病原体が建物や部屋の中に侵入するのを防止する。
【解決手段】入場管理システム1において、ICタグ2は、社員証に内蔵され、当該ICタグ2に固有のタグIDを記憶し、送信する。管理サーバ3は、内部領域IA内に設置され、他からのメッセージ等に応じてゲートを通過可能又は不可のメッセージを各アンテナに送信する。各アンテナは、固有のアンテナIDを記憶し、ICタグ2が接近すると、そのタグIDを受信し、アンテナIDとともに管理サーバ3に送信し、管理サーバ3からのメッセージに応じて各ゲートを開放する。赤外線カメラC1は、人の体温を測定し、管理サーバ3に体温データを送信する。画像認識用カメラC2は、人の顔画像データを取得し、マスクの有無を判定し、その判定結果を管理サーバ3に送信する。洗面台Wは、人に手洗いをさせるための設備であり、手洗い済のメッセージを管理サーバ3に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症が流行したときに建物や部屋に入室する人を制限する入場管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新型インフルエンザ等の感染症が爆発的に流行したとき、企業においては欠勤者が増加し、事業の継続が困難になる可能性がある。そのような状況(パンデミック=感染爆発、汎発流行)に対応するために、企業の事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)に基づく事前の措置として、建物内に病原体を持ち込まないようにすることが重要になる。
【特許文献1】特開2008−198077号公報
【特許文献2】特開2008−176766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、建物の入口で感染者であるか否かを識別することは困難だった。また、感染者として確認できないので、建物に入ることを許可された人に対して予防の措置をとることがなかった。このため、建物内に病原体が侵入するおそれがあった。
【0004】
なお、特許文献1には、関係者と部外者との識別を行うことのできる入退室管理システムが開示されているが、病原体の感染防止を考慮したものではない。また、特許文献2には、手指の衛生を監視できるシステムが開示されているが、病原体の侵入防止を考慮したものではない。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、感染症が流行したときに病原体が建物や部屋の中に侵入するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、入場管理システムであって、建物や部屋の入口に設置され、指示に応じて開閉するゲートと、前記入口の外側から前記ゲートに接近する人の体温を測定する赤外線カメラと、前記赤外線カメラにより測定された前記人の体温が所定値未満の場合にのみ、前記ゲートに開放を指示する制御手段と、を備えることを特徴とする。
この構成によれば、病原体に感染したおそれのある高熱の人の入場を禁止できるので、病原体が建物や部屋の中に侵入するのを防止することができる。
【0007】
また、本発明は、入場管理システムであって、前記入口の外側に設置され、水及び石鹸水を供給する手洗い設備をさらに備え、前記制御手段が、前記人の体温が所定値未満であり、かつ、前記手洗い設備により所定時間以上継続して水及び石鹸水が供給された場合にのみ、前記ゲートに開放を指示することを特徴とする。
この構成によれば、高熱がなく、かつ、所定時間以上継続して供給される水及び石鹸水により手洗いをした人だけを入場させるので、病原体が建物や部屋の中に侵入するのを防止することができる。
【0008】
また、本発明は、入場管理システムであって、前記人がマスクを着用しているか否かを判定するマスク着用判定手段をさらに備え、前記制御手段が、前記人の体温が所定値未満であり、前記手洗い設備により所定時間以上継続して水及び石鹸水が供給され、かつ、前記人がマスクを着用していると判定された場合にのみ、前記ゲートに開放を指示することを特徴とする。
この構成によれば、高熱がなく、手洗いを済ませ、かつ、マスクを着用している人だけを入室させるので、病原体の広がりを抑止することができる。
【0009】
また、本発明は、入場管理システムであって、前記人がマスクを着用しているか否かを判定するマスク着用判定手段をさらに備え、前記制御手段が、前記人の体温が所定値未満であり、かつ、前記人がマスクを着用していると判定された場合にのみ、前記ゲートに開放を指示することを特徴とする。
この構成によれば、高熱がなく、かつ、マスクを着用している人だけを入室させるので、病原体の広がりを抑止することができる。
【0010】
その他、本願が開示する課題及びその解決方法は、発明を実施するための最良の形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、感染症が流行したときに病原体が建物や部屋の中に侵入するのを防止することにある。これによれば、感染症が建物内に広がるのを阻止することができ、事業を継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態を説明する。本発明の実施の形態に係る入場管理システムは、企業の建物や部屋の入口において、体温、手洗い及びマスクの有無により、入場者を選別する。すなわち、この3つの条件をチェックし、各条件がそろった者に対してゲートが開くようにする。なお、各条件のチェックは、1人ずつ個別に行われることを前提とする。
【0013】
以上によれば、感染症が疑われる者の入場を阻止することができ、事業を継続できる。
【0014】
≪システムの構成と概要≫
図1は、入場管理システム1の構成を示す図である。入場管理システム1が適用される建物は、内部に第1中間領域MA1、第2中間領域MA2及び内部領域IAを有する。第1中間領域MA1は、外部からゲートG1を通過して入る領域であり、当該建物の会社に所属する社員がいることができる領域である。第2中間領域MA2は、第1中間領域MA1からゲートG2を通過して入る領域であり、当該社員のうち、熱のない人がいることができる領域である。内部領域IAは、第2中間領域MA2からゲートG4を通過して入る領域であり、当該社員のうち、熱がなく、手洗いをし、マスクを着用している人がいることができる領域であり、例えば、会社のオフィスである。
【0015】
各領域間には、ゲートG1〜G6が設けられる。ゲートG1は、外部から第1中間領域MA1への入館ゲートである。ゲートG2は、第1中間領域MA1から第2中間領域MA2への通過ゲートである。ゲートG3は、第1中間領域MA1から外部への退館ゲートである。ゲートG4は、第2中間領域MA2から内部領域IAへの通過ゲートである。ゲートG5は、第2中間領域MA2から外部への退館ゲートである。ゲートG6は、内部領域IAから外部への退館ゲートである。社員は、問題がなければ、ゲートG1を通じて外部から第1中間領域MA1に入館し、ゲートG2を通じて第1中間領域MA1から第2中間領域MA2へ進み、ゲートG4を通じて第2中間領域MA2から内部領域IAに入室する。このように一方通行にすることによって、できるだけ人同士の接近を防いで、病原体の感染を極力抑えるようにしている。
【0016】
入場管理システム1は、ICタグ2、管理サーバ3、アンテナA1〜A6及びAW、赤外線カメラC1、画像認識用カメラC2、表示板D1〜D4、洗面台Wを備える。ICタグ2は、社員が営業日には常時携帯する社員証に内蔵され、当該ICタグ2に固有のタグIDを記憶し、送信するタグであり、アクティブタグが通常用いられるが、ICカードでも代用可能である。管理サーバ3は、内部領域IA内に設置され、入場管理システム1全体を管理するサーバであり、アンテナA1〜A6及びAW、赤外線カメラC1、画像認識用カメラC2、洗面台Wと有線又は無線により通信可能である。
【0017】
アンテナA1〜A6及びAWは、それぞれ固有のアンテナIDを記憶する。そして、ICタグ2が接近すると、そのタグIDを受信し、アンテナIDとともに管理サーバ3に送信する。その後、管理サーバ3から応答メッセージを受信し、その応答メッセージに応じて各ゲートを開放したり、各表示板に所定のメッセージを表示したりする。アンテナA1〜A6は、それぞれゲートG1〜G6に設置される。アンテナAWは、洗面台Wに設置される。
【0018】
赤外線カメラC1は、第1中間領域MA1において、ゲートG1と、ゲートG2との中間地点に向けて設置され、その中間地点付近を通過する人の体温を測定し、体温データを管理サーバ3に送信する。画像認識用カメラC2は、第2中間領域MA2において、洗面台Wと、ゲートG4との中間地点に向けて設置され、その中間地点付近を通過する人の顔画像データを取得し、マスクの有無を判定し、その判定結果を管理サーバ3に送信する。
【0019】
なお、赤外線カメラC1と、画像認識用カメラC2とを一体化してもよい。この場合、人の体温と顔画像(マスク着用)のチェックを同時に行うことができる。また、画像認識用カメラC2は、建物内に常設されている監視カメラにより代用してもよい。
【0020】
表示板D1〜D4は、それぞれゲートG1とG2、洗面台W及びゲートG4に設置され、各領域にいる人に対して所定のメッセージを表示する。なお、表示板の代わりに、スピーカを設置し、音声で所定のメッセージを伝達するようにしてもよい。洗面台Wは、第2中間領域MA2において、ゲートG2と対向する位置に設置され、第2中間領域MA2に入って来た人に手洗いをさせるための設備である。そして、手洗いをしたことを示すメッセージを管理サーバ3に送信する。
【0021】
図2は、洗面台Wの構成を示す図である。図2(a)は、洗面台Wの正面図を示す。図2(b)は、洗面台Wの側面図を示す。洗面台Wは、垂直方向の上方に照明器具W1、中央に鏡W2、下方にカウンタW3を備え、それぞれを支持部材W6が支持する。照明器具W1は、手洗いを行う際に手元を照らすものである。照明器具W1の上面にアンテナAWが設置され、照明器具W1の前面に表示板D3が設けられる。鏡W2は、手洗いを行う人の姿を映すものである。
【0022】
カウンタW3は、手洗いを行うためのものであり、洗面ボールを含む。カウンタW3の奥側には、石鹸水供給栓W4及び水栓W5が立設される。石鹸水供給栓W4は、手をかざすと自動で石鹸水を出すものであり、蛇口W41及びセンサW42を備える。蛇口W41は、石鹸水の供給口である。センサW42は、赤外線により人の手の存在を検知し、蛇口W41から石鹸水を出すように制御するものである。水栓W5は、手をかざすと自動で水を出すものであり、蛇口W51及びセンサW52を備える。蛇口W51は、水の供給口である。センサW52は、赤外線により人の手の存在を検知し、蛇口W51から水を出すように制御するものである。
【0023】
なお、画像認識用カメラC2を鏡W2に一体化するように設け、鏡W2に顔を映す位置を示すようにしてもよい。この場合、洗面台Wで手洗いを行う人が当該位置に顔を合わせることにより、顔画像のデータがそのまま撮影できるので、人の手洗い及び顔画像(マスク着用)のチェックを同時に行うことができる。
【0024】
図3は、画像認識用カメラC2が取得する人の顔の画像データを示す図である。図3(a)は、マスクを着用していない人の顔画像を示す。図3(b)は、マスクを着用している人の顔画像を示す。画像認識用カメラC2又は管理サーバ3がマスクを着用しているか否かを判定する場合には、画像処理によって、予め登録されている顔画像(例えば、図3(a))と、そのとき取得した顔画像(例えば、図3(b))とを比較し、その差分を抽出した結果、例えば、口のある位置の近傍に差分があり、その差分が輪郭の閉じた図形(すなわち、マスクの形)として認識できるか否かを判断する。それ以外にも、顔画像の下半分に差分があることを認識する、顔全体に対する差分(マスクの面積)の比率が所定の範囲内にあることを判定する、マスクの部分による光の反射率が所定の範囲内にあることを判定する等の方法が考えられる。
【0025】
図4は、ICタグ2のハードウェア構成を示す図である。ICタグ2は、通信部21、処理部22及び記憶部23を備える。通信部21は、各アンテナと無線データ通信を行う部分であり、例えば、無線アンテナ等によって実現される。処理部22は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、ICタグ2全体の制御を行うものであり、CPU(Central Processing Unit)が所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部23は、処理部22からデータ(例えば、タグID等)を記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、ICメモリ等の不揮発性記憶媒体によって実現される。
【0026】
図5は、管理サーバ3のハードウェア構成を示す図である。管理サーバ3は、通信部31、表示部32、入力部33、処理部34及び記憶部35を備える。通信部31は、無線又は有線により各アンテナやカメラ等とデータ通信を行う部分であり、例えば、NIC(Network Interface Card)等によって実現される。表示部32は、処理部34からの指示によりデータを表示する部分であり、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等によって実現される。入力部33は、オペレータがデータ(例えば、社員ID等のデータ)を入力する部分であり、例えば、キーボードやマウス等によって実現される。処理部34は、各部間のデータの受け渡しを行うととともに、管理サーバ3全体の制御を行うものであり、CPUが所定のメモリに格納されたプログラムを実行することによって実現される。記憶部35は、処理部34からデータを記憶したり、記憶したデータを読み出したりするものであり、例えば、フラッシュメモリやハードディスク装置等の不揮発性記憶装置によって実現される。
【0027】
≪データの構成≫
図6は、管理サーバ3の記憶部35に記憶されるデータの構成を示す図である。記憶部35は、社員データ35Aを記憶する。社員データ35Aは、建物に入館することを許可された社員に関するデータであり、社員ID35A1、顔画像データ35A2、認証フラグ35A3、体温フラグ35A4、手洗いフラグ35A5及びマスクフラグ35A6を含むレコードからなる。社員ID35A1は、当該社員に固有のIDであり、当該社員が携帯するICタグ2のタグIDと一致する。顔画像データ35A2は、当該社員の顔の画像データであり、マスクを着用していない顔の画像データが用いられる。社員ID35A1及び顔画像データ35A2は、予め登録されているものとする。
【0028】
認証フラグ35A3は、当該社員は登録済であることが認証されたことを示すフラグであり、当該社員がゲートG1を通じて入館したときにオンに設定される。体温フラグ35A4は、当該社員の体温がOKであることを示すフラグであり、当該社員の体温が所定温度(例えば、38度)未満であるときにオンに設定される。手洗いフラグ35A5は、当該社員が手洗い済であることを示すフラグであり、当該社員が洗面台Wにおいて所定時間以上手洗いを実施したときにオンに設定される。マスクフラグ35A6は、当該社員がマスクを着用していることを示すフラグであり、画像認識用カメラC2又は管理サーバ3が当該社員がマスクを着用していると判断したときに設定される。
【0029】
≪システムの処理≫
図7〜図9は、入場管理システム1の処理を示すフローチャートである。入場管理システム1においては、ICタグ2を携帯した社員が建物の各領域を移動するのに伴って、建物の各箇所に設置されたアンテナがタグIDを受信し、管理サーバ3に送信することがトリガとなって、各ゲートの開放や各表示板の表示等を制御する処理が行われる。管理サーバ3は、各アンテナから受信したアンテナID(アンテナの設置された位置に相当する)に応じた処理、換言すれば、ICタグ2を携帯した社員のいる領域に応じた処理を行う。
【0030】
図7は、アンテナA1及びA2に係る入場管理システム1の処理を示す。まず、アンテナA1は、外部からゲートG1に接近する人のICタグ2からタグIDを受信し、そのタグIDをアンテナIDとともに管理サーバ3に送信する(S701)。
【0031】
管理サーバ3は、アンテナA1からタグID及びアンテナIDを受信する(S702)。アンテナIDによりゲートG1に設置されたアンテナA1から受信したことが分かるので、認証処理を行う。すなわち、受信したタグIDが記憶部35の社員データ35Aのうち、社員ID35A1として記憶されているか否かを検索する(S703)。
【0032】
当該タグIDが記憶されていれば(S703のY)、当該タグIDが予め登録されていることになるので、管理サーバ3は、当該タグIDを認証する旨のメッセージをアンテナA1に送信する(S704)。そして、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1に対応する認証フラグ35A3を設定する(S705)。アンテナA1は、管理サーバ3から認証メッセージを受信し(S706)、ゲートG1を開放するように、例えば、自動ドアの制御装置に指示する(S707)。これにより、タグIDの認証された社員だけがゲートG1を通って第1中間領域MA1に入館することができ、第1中間領域MA1、第2中間領域MA2及び内部領域IAには、社員だけが存在することになる。
【0033】
一方、当該タグIDが記憶されていなければ(S703のN)、当該タグIDが対象外ということになるので、管理サーバ3は、当該タグIDを認証しない旨のメッセージをアンテナA1に送信する(S708)。アンテナA1は、管理サーバ3から非認証メッセージを受信し(S709)、ゲートG1に設けられた表示板D1に入館不可のメッセージを表示する(S710)。入館不可のメッセージは、例えば、「許可された社員以外の方は、入館できません。」といった内容である。
【0034】
社員が第1中間領域MA1に入ると、赤外線カメラC1が当該社員の体温を測定し、その測定した体温を管理サーバ3に送信する。管理サーバ3は、赤外線カメラC1から体温を受信する(S711)とともに、アンテナA2から当該社員のタグIDを受信する。そして、体温が所定温度(例えば、38度)以上か否かを判定する(S712)。この場合、所定温度は必ずしも固定ではなく、皮膚温度が外気温の影響を受けることを考慮し、判定基準となる温度の値を補正するテーブルを設け、そのテーブルを用いて実際の外気温により所定温度を補正してもよい。
【0035】
所定温度以上でなければ(S712のN)、体温としては問題ない(高熱ではない)ので、管理サーバ3は、ゲートG2を通過できる旨のメッセージをアンテナA2に送信する(S713)。そして、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1に対応する体温フラグ35A4を設定する(S714)。アンテナA2は、管理サーバ3から通過可能メッセージを受信し(S715)、ゲートG2を開放するように、例えば、自動ドアの制御装置に指示する(S716)。これにより、体温に問題のない社員がゲートG2を通って第2中間領域MA2に進入することができる。
【0036】
一方、所定温度以上であれば(S712のY)、体温に問題がある(高熱がある)ので、管理サーバ3は、ゲートG2を通過できない旨のメッセージをアンテナA2に送信する(S717)。アンテナA2は、管理サーバ3から通過不可メッセージを受信し(S718)、ゲートG2に設けられた表示板D2に通過不可のメッセージを表示する(S719)。通過不可のメッセージは、例えば、「熱があるので、帰宅しましょう。」といった内容である。これにより、発熱している真性患者や疑似患者を建物から排除することができる。
【0037】
図8は、アンテナAWに係る入場管理システム1の処理を示す。まず、アンテナAWは、第2中間領域MA2において、洗面台Wに接近する社員のタグIDを受信し、そのタグIDをアンテナIDとともに管理サーバ3に送信する(S801)。管理サーバ3は、アンテナAWからタグID及びアンテナIDを受信する(S802)。アンテナIDにより洗面台Wに設置されたアンテナAWから受信したことが分かるので、念のため、当該社員の体温に問題がないか否かを確認する。すなわち、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1(タグID)に対応する体温フラグ35A4がオンになっているか否かを判定する(S803)。
【0038】
体温フラグ35A4がオンになっていれば(S803のY)、管理サーバ3は、手洗いに誘導すべき旨のメッセージをアンテナAWに送信する(S804)。アンテナAWは、管理サーバ3から手洗い誘導メッセージを受信し(S805)、洗面台Wに設置された表示板D3に手洗い誘導のメッセージを表示する(S806)。手洗い誘導のメッセージは、例えば、「洗面台で手洗いをしましょう。」といった内容である。
【0039】
体温フラグ35A4がオンになっていなければ(S803のN)、管理サーバ3は、警告する旨のメッセージをアンテナAWに送信する(S807)。アンテナAWは、管理サーバ3から警告メッセージを受信し(S808)、洗面台Wに設置された表示板D3に警告のメッセージを表示する(S809)。警告のメッセージは、例えば、「体温のチェックのため、一旦退館した後、再度入館しましょう。」といった内容である。
【0040】
なお、洗面台Wは、センサW42及びW52の検知内容に応じて手洗い済メッセージを管理サーバ3に送信する。例えば、センサW42が人の手を検知した後、センサW52が人の手を設定時間以上(例えば15秒以上)継続して検知したときに手洗い済と認識する。換言すれば、社員が石鹸水を使った後、設定時間以上(例えば15秒以上)続けて水で手を洗った場合である。このとき、水栓W5は、センサW52から手を離したら、蛇口W51から出る水がすぐに止まるような自動水栓になっているものとする。なお、社員が石鹸水を使う時間をチェックするようにしてもよい。例えば、センサW42が人の手を所定時間以上継続して検知したときに石鹸水を使用したと認識する。
【0041】
管理サーバ3は、洗面台Wから手洗い済メッセージを受信する(S810)とともに、
アンテナAWから当該社員のタグIDを受信する。そして、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1(タグID)に対応する手洗いフラグ35A5を設定する(S811)。
【0042】
また、画像認識用カメラC2は、ゲートG4に接近する社員の顔の画像データを取得し、管理サーバ3から当該社員の顔画像データを取得し、接近する社員がマスクを着用しているか否かを判定する。マスクを着用していれば、管理サーバ3にマスク着用メッセージを送信する。このために、管理サーバ3は、アンテナA4からタグIDを受信し、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1(タグID)に対応する顔画像データ35A2を送信する。
【0043】
管理サーバ3は、画像認識用カメラC2からマスク着用メッセージを受信する(S812)。この際、アンテナA4から当該社員のタグIDを受信するものとする。そして、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1(タグID)に対応するマスクフラグ35A6を設定する(S813)。
【0044】
なお、画像認識用カメラC2の代わりに、マスク着用を確認する簡易な方法として、人に「マスクをしていますか?」と問いかけて、「はい。」という返事があったら、管理サーバ3にマスク着用メッセージを送信する音声応答認識装置を用いてもよい。また、「マスクをしていますか?」というメッセージを表示し、次に続く「OKならば手をかざしてください。」というメッセージに対して、例えば、人に右手を挙げさせるようにし、その右手を赤外線で検知する等の方法を用いてもよい。
【0045】
図9は、アンテナA3〜A6に係る入場管理システム1の処理を示す。まず、アンテナA4は、第2中間領域MA2において、ゲートG4に接近する社員のタグIDを受信し、そのタグIDをアンテナIDとともに管理サーバ3に送信する(S901)。管理サーバ3は、アンテナA4からタグID及びアンテナIDを受信する(S902)。アンテナIDにより、内部領域IAに通じるゲートG4に設置されたアンテナA4から受信したことが分かるので、当該社員がすべてのチェックをクリアしているか否かを確認する。すなわち、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1(タグID)に対応する体温フラグ35A4、手洗いフラグ35A5及びマスクフラグ35A6がすべてオンになっているか否かを判定する(S903)。
【0046】
3個のフラグがすべてオンであれば(S903のY)、管理サーバ3は、ゲートG4を通過できる旨のメッセージをアンテナA4に送信する(S904)。アンテナA4は、管理サーバ3から通過可能メッセージを受信し(S905)、ゲートG4を開放するように、例えば、自動ドアの制御装置に指示する(S906)。これにより、すべてのチェックをクリアした社員がゲートG4を通って内部領域IAに入室することができる。
【0047】
一方、3個のフラグのすべてがオンではない(すなわち、少なくとも1個がオフである)場合には(S903のN)、管理サーバ3は、ゲートG4を通過できない旨のメッセージをアンテナA4に送信する(S907)。このとき、オンになっていないフラグを示すデータを付加する。アンテナA4は、管理サーバ3から通過不可メッセージを当該データとともに受信し、ゲートG4に設置された表示板D4に通過不可のメッセージを表示する。通過不可のメッセージは、手洗いフラグがオンになっていない場合には、例えば、「手を洗っていないので、入れません。」といった内容である。これにより、病原体が内部領域IAに入るのを防ぐことができる。また、マスクフラグがオンになっていない場合には、例えば、「マスクをしていないので、入れません。」といった内容である。これにより、病原体が内部領域IAの中で広がるのを防ぐことができる。(例えば新型インフルエンザウィルスの場合、マスク無しでせきやくしゃみをすると、ウィルスを含む飛沫が1〜2m程度以内の箇所に飛ぶと考えられる。)
次に、退館するためのゲートG3、G5、G6にそれぞれ設置されているアンテナA3、A5、A6に係る処理について説明する。アンテナA3は、ゲートG3に接近する社員のタグIDを受信する(S910)と、ゲートG3を開放するように、例えば、自動ドアの制御装置に指示する(S911)。そして、受信したタグID及び自らのアンテナIDを管理サーバに送信する(S912)。S910〜S912の処理は、アンテナA5及びA6においても同様に行われる。
【0048】
管理サーバ3は、アンテナA3、A5又はA6からタグID及びアンテナIDを受信する(S913)。そして、アンテナIDにより、退館するためのゲートに設置されたアンテナから受信したことが分かるので、当該社員が退館することを認識し、記憶部35の社員データ35Aのうち、当該社員ID35A1(タグID)に対応する認証フラグ35A3、体温フラグ35A4、手洗いフラグ35A5及びマスクフラグ35A6をクリアする(S914)。なお、アンテナIDに応じて、オンになっているはずのフラグだけをクリアするようにしてもよい。例えば、アンテナA3から受信した場合には、認証フラグ35A3をクリアする。
【0049】
以上本発明の実施の形態について説明したが、図1に示す管理サーバ3内の各部を機能させるために、処理部34で実行されるプログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録し、その記録したプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行させることにより、本発明の実施の形態に係る入場管理システム1が実現されるものとする。なお、プログラムをインターネット等のネットワーク経由でコンピュータに提供してもよいし、プログラムが書き込まれた半導体チップ等をコンピュータに組み込んでもよい。
【0050】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、体温が問題なく、水及び石鹸水により手洗いを行い、マスクを着用している人だけを入室させるので、病原体が建物や部屋の中に侵入するのを防止することができる。
【0051】
≪その他の実施の形態≫
以上、本発明を実施するための最良の形態について説明したが、上記実施の形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施の形態が考えられる。
【0052】
(1)上記実施の形態では、管理サーバ3の記憶部35に各チェックによるフラグを設定するように記載したが、管理サーバ3ではなく、ICタグ2の記憶部23に各フラグを書き込むようにしてもよい。この場合、記憶部23が、ICタグ2を携帯する社員に固有のデータとして、タグID(社員ID)に加えて、認証フラグ、体温フラグ、手洗いフラグ及びマスクフラグを記憶する。そして、各ゲートに設置されたアンテナが、管理サーバ3、洗面台W及び画像認識用カメラC2からのメッセージを受信し、そのメッセージに応じたフラグをICタグ2の記憶部23に設定する。
【0053】
(2)上記実施の形態では、社員がICタグ2を携帯することにしたが、ICタグ2を携帯せず、ICタグ2のタグIDの代わりに各社員の生体情報(例えば、指紋や静脈のパターン)を個人識別情報として用いること(生体認証)により、ゲートG1において本人確認を行ってもよい。
【0054】
(3)上記実施の形態では、ゲートG1及びG2を設置し、第1中間領域MA1及び第2中間領域MA2を設けたが、ゲートG1及びG2を設置することなく、最終的なゲートG4だけを設置し、各チェックによるフラグの確認だけで内部領域IAへの入室管理を行うようにしてもよい。
【0055】
(4)上記実施の形態では、フラグで入室管理を行うようにしたが、各チェック結果がOKであれば、フラグを記憶することなく、その都度各ゲートを開放するようにしてもよい。
【0056】
(5)上記実施の形態では、最初に個人認証を行ったが、体温チェック及び手洗いチェックには必ずしも個人識別情報が要らないので、最初に体温チェック及び手洗いチェックを行ってから、個人認証を行うようにしてもよい。
【0057】
(6)上記実施の形態では、体温、手洗い及びマスク着用の3条件を満たすことにより、内部領域IAへの入室が可能になったが、体温だけの1条件、又は、体温及び手洗い、若しくは、体温及びマスク着用の2条件を満たせば、内部領域IAへの入室を可能とするようにしてもよい。
【0058】
(7)上記実施の形態では、1台の赤外線カメラC1を第1中間領域MA1だけに設置したが、赤外線カメラC1を建物内部の随所に設置し、社員の体温を常時監視するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】入場管理システム1の構成を示す図である。
【図2】洗面台Wの構成を示す図であり、(a)は洗面台Wの正面図を示し、(b)は洗面台Wの側面図を示す。
【図3】画像認識用カメラC2が取得する人の顔の画像データを示す図であり、(a)はマスクを着用していない人の顔画像を示し、(b)はマスクを着用している人の顔画像を示す。
【図4】ICタグ2のハードウェア構成を示す図である。
【図5】管理サーバ3のハードウェア構成を示す図である。
【図6】管理サーバ3の記憶部35に記憶されるデータの構成を示す図である。
【図7】アンテナA1及びA2に係る入場管理システム1の処理を示すフローチャートである。
【図8】アンテナAWに係る入場管理システム1の処理を示すフローチャートである。
【図9】アンテナA3〜A6に係る入場管理システム1の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
A1〜A6、AW アンテナ
C1 赤外線カメラ
C2 画像認識用カメラ(マスク着用判定手段)
G1〜G6 ゲート
W 洗面台(手洗い設備)
W2 鏡
1 入場管理システム
2 ICタグ
3 管理サーバ
34 処理部(制御手段、マスク着用判定手段)
35 記憶部
35A1 社員ID
35A2 顔画像データ
35A4 体温フラグ
35A5 手洗いフラグ
35A6 マスクフラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物や部屋の入口に設置され、指示に応じて開閉するゲートと、
前記入口の外側から前記ゲートに接近する人の体温を測定する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラにより測定された前記人の体温が所定値未満の場合にのみ、前記ゲートに開放を指示する制御手段と、
を備えることを特徴とする入場管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の入場管理システムであって、
前記入口の外側に設置され、水及び石鹸水を供給する手洗い設備
をさらに備え、
前記制御手段は、前記人の体温が所定値未満であり、かつ、前記手洗い設備により所定時間以上継続して水及び石鹸水が供給された場合にのみ、前記ゲートに開放を指示する
ことを特徴とする入場管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の入場管理システムであって、
前記人がマスクを着用しているか否かを判定するマスク着用判定手段
をさらに備え、
前記制御手段は、前記人の体温が所定値未満であり、前記手洗い設備により所定時間以上継続して水及び石鹸水が供給され、かつ、前記人がマスクを着用していると判定された場合にのみ、前記ゲートに開放を指示する
ことを特徴とする入場管理システム。
【請求項4】
請求項1に記載の入場管理システムであって、
前記人がマスクを着用しているか否かを判定するマスク着用判定手段
をさらに備え、
前記制御手段は、前記人の体温が所定値未満であり、かつ、前記人がマスクを着用していると判定された場合にのみ、前記ゲートに開放を指示する
ことを特徴とする入場管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−128976(P2010−128976A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305303(P2008−305303)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】