説明

入浴剤用造粒物の製造方法

【課題】浴水投入時の溶解性に優れる入浴剤用造粒物の製造方法の提供。
【解決手段】有機酸、親水性活性剤及び油性成分を含有する入浴剤用造粒物の製造法であって、有機酸及び親水性活性剤を混合した後、油性成分を添加し混合する工程を有する製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴剤用造粒物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より入浴剤では、炭酸塩と有機酸との反応により炭酸ガスを発生させる錠剤型の発泡性入浴剤が知られている(特許文献1)。かかる発泡性入浴剤は、高い温浴効果を実現するものであるが、入浴剤を浴水に投入した後に未溶解物が存在し、ざらつき等の好ましくない感触をもたらす課題があった。
【0003】
そのため、浴水に投入した際に優れた溶解性を示す発泡性入浴剤が望まれていた。
【0004】
発泡性入浴剤の製造方法に関し、特許文献2には、製造時の装置負荷並びに均一混合の観点から、バインダーを、有機酸や炭酸塩等の主基剤をはじめとする他の成分よりも後に添加混合することが好ましい旨の記述がある。また特許文献3には、香り持続性の観点から、香料と非イオン界面活性剤を予め混合した後、主基剤をはじめとする他の成分と混合する技術が開示されている。しかしながら入浴剤に用いる主基剤の添加順序が、入浴剤を浴水に投入した際の溶解性に与える影響については、これまで検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−70609号公報
【特許文献2】特開平6−199652号公報
【特許文献3】特開2008−162923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、炭酸ガスの発泡性並びに温浴効果に優れた発泡性粉末入浴剤において、浴水に投入した際に優れた溶解性をもたらす入浴剤用造粒物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、炭酸塩と混合して発泡性粉末入浴剤を製造するに際し用いられる入浴剤用造粒物の製造方法について鋭意検討した結果、有機酸、親水性活性剤及び油性成分を含有する入浴剤用造粒物において、有機酸及び親水性活性剤を混合した後、油性成分を添加し混合することにより、浴水投入時の溶解性に優れる入浴剤用造粒物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、有機酸、親水性活性剤及び油性成分を含有する入浴剤用造粒物の製造法であって、有機酸及び親水性活性剤を混合した後、油性成分を添加し混合する工程を有する製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法で得られる入浴剤用造粒物を用いることで、炭酸ガスの発泡性並びに温浴効果に優れると共に、溶解性にも優れる発泡性粉末入浴剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<入浴剤用造粒物>
本発明の製造方法で得られる入浴剤用造粒物は、有機酸、親水性活性剤及び油性成分を含有する造粒物であり、炭酸塩と混合して発泡性粉末入浴剤を製造するに際し好適に用いられる。尚、本発明の入浴剤用造粒物は、好ましくは、炭酸塩を実質的に含まない。ここで「前記入浴剤用造粒物は、炭酸塩を実質的に含まない」とは、炭酸塩が造粒物中に少量含まれる場合があることは許容する意味であり、本発明では、造粒物中に炭酸塩が含まれる場合であっても、その量は造粒物中2質量%未満であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下であり、含有されていないことが望ましい。造粒物中の炭酸塩の量がこの範囲内であると、前記発泡性粉末入浴剤の保存安定性に有効に作用するため好ましい。
【0011】
〔有機酸〕
本発明で用いる有機酸は、浴水中での溶解性及びハンドリング性の観点から、水溶性で固体のものが好ましい。本発明の有機酸は、造粒物中に油性成分を担持させる観点から、吸油能0.02ml/g以上のものが好ましく、0.05ml/g以上のものがより好ましい。吸油能とは、実施例に記載の方法により決定される値である。尚、吸油能の上限は、特に限定されるものでないが、1.0ml/g以下であることが望ましい。
【0012】
有機酸としては、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、安息香酸、クエン酸、ピロリドンカルボン酸、サリチル酸等が好ましい。ハンドリングの容易さ及び経済性の観点から、フマル酸が特に好ましい。これら有機酸は、単独又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0013】
更に、有機酸の平均粒径は、造粒化及び溶解性の観点から、250μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましく、150μm以下が更に好ましい。
【0014】
入浴剤用造粒物中の有機酸の含有量は、40〜95質量%が好ましく、70〜90質量%がより好ましい。前記下限値以上であると、油性成分を安定的に配合し、造粒物の保形性を保つ観点から好ましい。
【0015】
〔親水性活性剤〕
入浴剤用造粒物の必須の成分として親水性活性剤が挙げられる。親水性活性剤は、油性成分と共に使用することにより、入浴剤を浴水に投入した場合に、油性成分を浴水中に均一に乳化させるとともにその油性成分又は親水性活性剤ミセル中に炭酸ガスを十分量溶解させることができるので好ましい。
【0016】
親水性活性剤は1種でもよいが、2種以上用いることにより、自己乳化性を十分に発揮させることができるため好ましい。
【0017】
親水性活性剤としては、非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種以上が挙げられる。
【0018】
非イオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0019】
これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて配合すればよいが、ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテルから選ばれる1種以上の
非イオン界面活性剤と、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット及びポリオキシ
エチレンソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤を組み合
わせることが水への易分散性の観点から特に好ましい。
【0020】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、脂肪酸石鹸等が挙げられる。
【0021】
親水性活性剤は、水への易分散性の観点から、そのHLBが10〜20のものが好ましく、10〜18のものがより好ましい。
【0022】
ここで、HLBは、界面活性剤の親水性と疎水性のバランスを表すのに通常使用される値であり、当分野において慣用される川上式等の幾つかの計算式により求めることができる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
【0023】
HLB=7+11.7log(M/M
:親水基の分子量
:疎水基の分子量
【0024】
入浴剤用造粒物中の親水性活性剤の含有量は、浴水中での優れた溶解性を実現する観点から、有機酸に対し、0.1質量%以上が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。また、自己乳化性及び肌感触の観点から、親水性活性剤の含有量は、油性成分と親水性活性剤の合計量中、1〜60質量%が好ましく、特に10〜40質量%が好ましい。前記下限値以上であると、油性成分を浴水中に均一に乳化させる観点から好ましい。
【0025】
〔油性成分〕
本発明の入浴剤用造粒物は、造粒物の溶解性を制御する観点から、油性成分を含有する。油性成分は、浴水中での分散性等の観点から、40℃にて液体のものが好ましい。これは単独では40℃にて固体や半固体の油性成分を含んでいても、油性成分全体では液体であるならば良いことを意味する。
【0026】
油性成分は、炭酸ガスの油相/水相の分配比が1.1以上となるものを用いると、浴中で発生した炭酸ガスが油性成分中により高濃度に存在することとなるので、高濃度の炭酸ガスを皮膚に供給可能となり、入浴後の温まり効果をさらに高めることができるため好ましい。より好ましい分配比は1.3以上であり、更に好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは1.6以上であり、更に好ましくは1.7以上である。尚、炭酸ガスの油相/水相への分配比は、特開2007−223936号の段落[0060]に記載の方法により測定した。
【0027】
このような油性成分としては、オクタン酸セチル、イソオクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール等の脂肪酸エステル類;
トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、トリカプリル酸グリセリル等の脂肪酸トリグリセライド類;
大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等のグリセリド類;
流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、スクアレン、ジオクチルシクロヘキサン、ブリスタン等の炭化水素油;
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類;
ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール等の高級アルコール類;
ハッカ油、ジャスミン油、ショウ脳油、ヒノキ油、トウヒ油、リュウ油、テレピン油、ケイ皮油、ベルガモット油、ミカン油、ショウブ油、パイン油、ラベンダー油、ベイ油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール、リナロール、ゲラーオール、カンファー、チモール、スピラントール、ピネン、リモネン、テルペン系化合物等の精油;
シリコーン油類等が挙げられる。
【0028】
前記分配比は、油性成分を2種配合した場合には、その混合物の分配比である。従って、単独では前記分配比が1.1未満の油性成分であっても、他の油性成分と混合して分配比を1.1以上にすることができる。
【0029】
油性成分のうち、単独で前記分配比が1.7以上のものとしては、ホホバ油、スクアレン、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソセチル、イソオクタン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル及びジオクチルシクロヘキサン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、トリカプリル酸グリセリルが挙げられる。
【0030】
油性成分としては、上記の単独で前記分配比が1.7以上のものを含有し、前記分配比が1.1以上となるものが特に好ましい。
【0031】
入浴剤用造粒物中の油性成分の含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。前記下限値以上であると、温まり感及び肌感触の観点から好ましく、前記上限値以下であると、油性成分を安定的に配合し、造粒物の保形性を保つ観点から好ましい。
【0032】
〔その他成分〕
本発明の入浴剤用造粒物には、上記の有機酸、親水性活性剤及び油性成分のほか、本発明の効果を阻害しない範囲で、水溶性バインダー、崩壊助剤、消泡剤、肌感触向上剤、酸化防止剤、分散剤、香料、防菌・防黴剤、色素等を適宜配合することができる。
【0033】
これらその他成分のうち、水溶性バインダーは、入浴剤用造粒物の製造において、造粒物の強度を高めるための成分である。また、有機酸が水溶性バインダーによって被覆されることで、保存中に入浴剤用造粒物中の有機酸と炭酸塩が接触して反応することが抑制され、炭酸ガスの発生により包装容器が膨張することが防止できる。
【0034】
水溶性バインダーは、熱可塑性であり、水溶液でないことが好ましい。そのような水溶性バインダーとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェノールエーテルが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが更に好ましい。
【0035】
また、水溶性バインダーの数平均分子量は、造粒化を行う際の粘度調整とハンドリング性の観点から、ポリスチレンを標準としたGPC法で、4,000〜20,000が好ましく、6,000〜13,000がより好ましく、7,000〜9,000が更に好ましい。水溶性バインダーとして、ポリエチレングリコールを測定する場合には、溶媒として水/エタノールを用いた。
【0036】
また、これら水溶性バインダーを用いる場合には、平均分子量の異なる水溶性バインダーを2種以上組み合わせて用いても構わない。
【0037】
水溶性バインダーを用いる場合、入浴剤用造粒物中の水溶性バインダーの含有量は、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。前記下限値以上であると、造粒したときの粒子強度が高くなり、製造時の輸送過程で造粒物が壊れ難くなる。前記上限値以下であると、浴水中での溶解性が向上し、発泡性が高められる。
【0038】
本発明の製造方法で得られる入浴剤用造粒物の嵩密度は、入浴剤を浴水に投与した際に、微細な炭酸ガスの発泡性を確保する観点から、700g/L以下が好ましく、400〜700g/Lがより好ましく、450〜650g/Lが更に好ましい。
【0039】
本発明の製造方法で得られる入浴剤用造粒物の粒径は、入浴剤を使用した際の粉立ち性、及び浴水に投与した際に、浴水表面で発泡することを抑制する観点から、180μm以下のものの割合は10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。また、溶解性の観点から1400μm以上のものの割合は10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
【0040】
更に、入浴剤用造粒物の平均粒径は、粉立ち、溶解性及び沈降性の観点から、100〜1500μmが好ましく、400〜1200μmが好ましく、600〜900μmが好ましい。
【0041】
尚、嵩密度、粒径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
<入浴剤用造粒物の製造方法>
本発明の入浴剤用造粒物は、下記の製造方法により製造することができる。
【0043】
〔有機酸及び親水性活性剤の混合〕
はじめに、有機酸及び親水性活性剤を混合する。操作性の観点から、先に有機酸を混合機に仕込み、次いで親水性活性剤を添加して混合することが好ましい。
【0044】
混合機は加熱のできるジャケット付きのものが好ましく、仕込み時及び/又は仕込み後に所定の温度に加熱しておくことが好ましい。
【0045】
有機酸は、複数種の有機酸を用いる場合には、仕込み後、1〜10分間の混合を行うことが好ましい。
【0046】
添加する親水性活性剤が液体の場合は、あらかじめ親水性活性剤を40〜60℃の温度にしておくことが後工程の昇温時間の短縮の観点から好ましい。粉体の親水性活性剤を添加する場合は、常温で用いても良い。
【0047】
親水性活性剤を均一に添加・混合する観点から、有機酸が仕込まれた混合機に、撹拌下、0.5〜20分かけて親水性活性剤を添加する。親水性活性剤の添加は、連続的に行っても断続的に行っても良い。
【0048】
親水性活性剤を油性成分よりも先に有機酸に添加し、あらかじめ混合しておくことにより、入浴剤用造粒物、ひいては入浴剤の浴水中での溶解性が良好になる。
【0049】
なお、親水性活性剤の全量を油性成分よりも先に有機酸に添加する必要はない。入浴剤用造粒物の製造に用いる親水性活性剤の全量に対し50質量%以上の親水性活性剤をあらかじめ有機酸に添加することにより、本発明の効果を奏することができる。浴水中での優れた溶解性を実現する観点から、親水性活性剤の全量のうち、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは60〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%の親水性活性剤をあらかじめ有機酸に添加することが好適である。残りの親水性活性剤は、後述する油性成分の添加と同時に及び/又は油性成分を添加した後に混合機内に添加することができる。
【0050】
〔油性成分の添加〕
有機酸及び親水性活性剤を混合した後、油性成分を添加する。上記の水溶性バインダーを用いる場合、水溶性バインダーは、油性成分と混合して油性成分と共に添加することが好ましい。油性成分に水溶性バインダーを混合する場合、均一な入浴剤用造粒物を得る観点から、油性成分に水溶性バインダーを均一に混合・溶解しておくことが好ましい。
【0051】
油性成分(あるいは、油性成分と水溶性バインダーとの混合物)を均一に添加・混合する観点から、有機酸及び親水性活性剤が仕込まれた混合機に、撹拌下、0.5〜20分かけて油性成分(あるいは、油性成分と水溶性バインダーとの混合物)を添加する。
【0052】
油性成分添加時の混合機内の粉体温度は、油性成分を均一に添加・混合する観点から、20℃以上が好ましく、30℃以上が更に好ましい。また、親水性活性剤が液体の場合には親水性活性剤を有機酸中に保持する観点から、親水性活性剤が粉体の場合には親水性活性剤の安定性の観点から、油性成分添加時の混合機内の粉体温度は90℃以下が好ましく、80℃以下が更に好ましい。
【0053】
上記の各工程にて各成分を混合する場合の混合機としては、混合時に強い剪断を与えて大きく圧密化させることのない装置であれば良い。例えば、ドラム型ミキサー、リボンミキサー、ナウターミキサー等が挙げられる。
【0054】
但し、本来、高剪断力を与えうる、シュギミキサー、ヘンシェルミキサーや主翼と解砕翼を備えた縦型又は横型混合機であるレディゲミキサー、ハイスピードミキサー等機においても、回転数や以下に記載するフルード数を低く設定し圧密化を抑制することで、利用することができる。
【0055】
造粒時の圧密化を抑制する観点から、以下の式で定義される造粒機のフルード数を5.0以下に設定するのが好ましく、3.0以下がより好ましく、2.0以下が更に好ましい。また均一な混合物を得る観点から、造粒機のフルード数を0.1以上に設定するのが好ましく、0.3以上がより好ましい。
【0056】
フルード数:Fr=V2/(R×g)
V:周速[m/s]
R:回転中心から回転物の円周までの半径[m]
g:重力加速度[m/s2]
【0057】
なお、主翼や解砕翼を備えた縦型或いは横型造粒機においては、V及びRは主軸の値を用い、攪拌部が自転及び公転軌道を描くナウターミキサーにおいては、V及びRは自転攪拌軸の値を用いることとする。
【0058】
入浴剤用造粒物の造粒には、ペレッターダブル、ドームグラン、ツインドームグラン、ディスクペレッター(ダルトン(株)製)、バスケット式整粒機((株)菊水製作所製)等の周知の押出造粒機のほか、転動造粒機等を用いることができるが、押出し造粒機を用いて押出し造粒することが好ましい。更に顆粒の圧密を抑制する観点から、前押しタイプの押出し造粒機である、ドームグランやツインドームグランを用いて押出し造粒することが好ましい。
【0059】
押出し造粒機を用いるときのスクリーンの穴径は0.3〜2.0mmが好ましく、より好ましくは0.5〜2.0mm、更に好ましくは0.7〜1.0mmであり、このようなスクリーンを用いることにより、円筒状もしくはヌードル状造粒物を得ることができる。
【0060】
また得られた造粒物は、合一化や塊状化を抑制するために冷却を行い、その後、必要に応じて整粒することができる。整粒する際に使用する機械としては、周知の粉砕機(あるいは破砕機)を用いることができ、例えば、ハイスピードミキサー(深江パウテック(株)製)、マルメライザー(ダルトン(株)製)、スパイラーフロー(フロイント産業(株)製)、フィッツミル(ダルトン(株)製)、パワーミル(パウレック(株)製)、コーミル(Quadro製)等が挙げられる。
【0061】
<発泡性粉末入浴剤>
上記製造方法で得られた入浴剤用造粒物と炭酸塩を混合することにより発泡性粉末入浴剤を製造することができる。
【0062】
発泡性粉末入浴剤における、入浴剤用造粒物の含有量は、炭酸ガス発生量及び微細な泡を得る点から、30〜80質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、50〜70質量%が特に好ましい。
【0063】
発泡性粉末入浴剤の製造に用いる炭酸塩としては、発生する炭酸ガスの泡を微細化する点から、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられるが、炭酸ナトリウム(Na2CO3)が特に好ましい。
【0064】
炭酸塩の含有量は、炭酸ガス発生量及び微細な泡を得る点から、発泡性粉末入浴剤中、20〜70質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
【0065】
また、微細な泡を発生させる観点から、炭酸塩中の炭酸ナトリウム含有量は、70〜100質量%が好ましく、さらに80〜100質量%、特に85〜100質量%であることが好ましい。なお、炭酸塩中の炭酸水素ナトリウム量が多くなると、炭酸ガスは白濁状を呈するような微細な泡にはならずに大きくなる傾向があるので好ましくない。
【0066】
炭酸塩の平均粒径は、泡の微細化、泡の持続時間、沈降性等の点から、100〜750μmが好ましく、さらに200〜500μm、特に250〜400μmであるのが好ましい。
【0067】
入浴剤用造粒物と炭酸塩とを混合し発泡性粉末入浴剤を製造するにあたり、混合方法としては、入浴剤用造粒物と炭酸塩が実質的に均一に混合できればどのような方法を用いても良い。例えば、上記の混合機を使用して混合しても良いし、V型ブレンダー(パウレックス(株)製)、ダブルコーンミキサー((株)徳寿工作所製)、及びリボンブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)等を用いても構わない。
【0068】
本発明の製造方法で得られた入浴剤用造粒物と炭酸塩とを混合して製造される発泡性粉末入浴剤は、その0.01質量%水溶液の25℃におけるpHが5〜7、特に5.5〜6.5であることが好ましい。pHが5〜7であれば、発生した炭酸ガスが浴水中に溶け込み易く、血行促進等の効果が高められるからである。
【0069】
本発明の製造方法で得られた入浴剤用造粒物を用いて製造される発泡性粉末入浴剤は、浴水中に溶解した際に微細な泡が大量に発生し、且つその泡発生の持続時間が長い。微細な泡の発生は、浴水180リットル中に40〜60gの入浴剤を溶解した際に、発生した泡により、浴水が速やかに白濁することから確認できる。
【0070】
発泡性粉末入浴剤は、浴水に溶解し、炭酸ガスの泡を発生させて使用する。尚、風呂等の全身浴はもちろん、足浴、腕浴等の部分浴としても使用できる。
【実施例】
【0071】
<物性の測定方法>
1.嵩密度
嵩密度は、JIS K 3362により規定された方法で測定した。
【0072】
2.粒径
有機酸の平均粒径測定は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用い、該粒子を溶解させない溶媒に分散させて測定したメジアン径を平均粒径とした。尚、実施例に用いたフマル酸の平均粒径測定には、溶媒としてアセトンを用いた。
【0073】
3.吸油能
有機酸の吸油能測定は以下の方法で行った。吸収量測定器(あさひ総研製S410)に粉末を45g投入し、駆動羽根200rpmで回転させた。ここに油性成分及び親水性活性剤を溶解した50℃混合液(花王(株)製エキセパールIPP 50質量%、花王(株)製エキセパールO−DM 15質量%、花王(株)製ルナックBA 5質量%、花王(株)製エマルゲン306P 10質量%、日光ケミカルズ(株)製ニッコールGO―440V 20質量%)を、液供給速度2ml/minで滴下し、最大トルクとなる点を見極めた。この最大トルクとなる点の70%のトルクとなる点での液添加量を粉末投入量で除算し、吸油能とした。
【0074】
4.入浴剤用造粒物の溶解率
入浴剤用造粒物サンプルを14mesh(目開き1180μm)の篩に全量通過させて組成及び粒度を均一にした後、その1gを、40℃に加熱した1Lの水に投入し、クールスターラー SWC-900 series-D(日伸理化(株)製)を用いて1分間混合した(スターラー目盛10)。これを20mesh(目開き850μm)の篩に全量通過させ、篩上の未溶解物を105℃で30分間乾燥した後、重量を測定した。この未溶解物重量から入浴剤用造粒物の溶解率を求めた。
【0075】
5.微細発泡(濁度)
まずはじめに、入浴剤用造粒物の各サンプル68.4質量%を、炭酸ナトリウム(平均粒径:290μm)31.6質量%と混合して、発泡性粉末入浴剤を調製した。次いで、浴槽に40℃180Lのお湯を入れ、得られた発泡性粉末入浴剤45gを投入し、十分攪拌した(全ての例で180秒間撹拌した)。直径5cmの円形の黒色ゴム板を浴水に沈め、肉眼で完全に見えなくなる深度をにごり度(濁度)とし測定した。深度の数値(cm)が小さいほど、より微細な泡が生じていることを示す。
【0076】
本実施例および比較例においては、下記の原料を用いた。
(有機酸)
・フマル酸:日本触媒製、吸油能0.082mL/g、平均粒径140μm
(親水性活性剤)
・非イオン界面活性剤A:テトラオレイン酸ポリオキシエチレン(40)ソルビットステアリルエーテル(日光ケミカルズ(株)ニッコールGO440V、HLB=12.4)
・非イオン界面活性剤B:ポリオキシエチレンラウリルエーテル (花王(株)エマルゲン106K、HLB=10.5)
・陰イオン界面活性剤A:アルキル硫酸塩(花王(株)エマール10P-HD)
(油性成分)
・油性成分A:パルミチン酸イソプロピル (花王(株)エキセパールIPP)
・油性成分B:ミリスチン酸オクチルドデシル(花王(株)エキセパールOD-M)
(水溶性バインダー)
・ポリエチレングリコール(花王(株)K-PEG6000)
(混合油性成分A)
・油性成分A:18.5質量部、油性成分B:6.1質量部、及びポリエチレングリコール75.4質量部の混合物
【0077】
実施例1
30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製 NX−S)を自転回転数100rpm(フルード数0.84)、ジャケット温度55℃に設定し、フマル酸14.7kgを添加した後、50℃の非イオン界面活性剤A0.55kgを1.5分間で添加した。添加後、混合を行ない、粉体温度が50℃に到達した時点で65℃の混合油性成分A3.05kgを2分間で添加した。添加後、粉体温度を50〜55℃に保ち12分間混合を行った。
【0078】
得られた入浴剤用造粒物を抜出し、ドームグラン(ダルトン製、φ0.7mmスクリーン、回転数36rpm)を用いて押出し造粒を行った。押出し造粒物をバットに受け、25℃で30分間冷却を行った。冷却後、カッターミル(φ3.0mm)で整粒し、入浴剤用造粒物(平均粒径787μm)を得た。この造粒物の溶解率は81.7重量%であった。
【0079】
更に、得られた入浴剤用造粒物68.4質量%、及び炭酸ナトリウム(平均粒径:290μm)31.6質量%をナウターミキサー(ホソカワミクロン製 NX−S)で混合して発泡性粉末入浴剤を得た。この発泡性粉末入浴剤の微細発泡(濁度)は7cmであった。
【0080】
実施例2
実施例1において非イオン界面活性剤Aの代わりに非イオン界面活性剤Bを用いた以外は実施例1と同じ操作を行って入浴剤用造粒物(平均粒径778μm)を得た。この造粒物の溶解率は82.1重量%であった。
【0081】
更に、実施例1と同様の方法で炭酸ナトリウムと混合して発泡性粉末入浴剤を得た。この発泡性粉末入浴剤の微細発泡(濁度)は7cmであった。
【0082】
実施例3
実施例1において非イオン界面活性剤Aの代わりに陰イオン界面活性剤Aを用いた以外は実施例1と同じ操作を行って入浴剤用造粒物(平均粒径790μm)を得た。この造粒物の溶解率は78.1重量%であった。
【0083】
更に、実施例1と同様の方法で炭酸ナトリウムと混合して発泡性粉末入浴剤を得た。この発泡性粉末入浴剤の微細発泡(濁度)は8cmであった。
【0084】
実施例4
30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製 NX−S)を自転回転数100rpm(フルード数0.84)、ジャケット温度70℃に設定し、フマル酸14.7kgを添加した後、50℃の非イオン界面活性剤A0.55kgを1.5分間で添加した。添加後、混合を行ない、粉体温度が70℃に到達した時点で65℃の油性成分A3.05kgを2分間で添加した。添加後、粉体温度を70℃に保ち12分間混合を行った。
【0085】
その後、実施例1と同様の方法で造粒及び整粒を行って入浴剤用造粒物(平均粒径803μm)を得た。この造粒物の溶解率は78.2重量%であった。
【0086】
更に、実施例1と同様の方法で炭酸ナトリウムと混合して発泡性粉末入浴剤を得た。この発泡性粉末入浴剤の微細発泡(濁度)は8cmであった。
【0087】
比較例1
30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製 NX−S)を自転回転数100rpm(フルード数0.84)、ジャケット温度55℃に設定し、フマル酸14.7kgを添加した後、混合機内の粉体温度が50℃に到達した時点で65℃の油性成分A3.05kgを2分間で添加した。添加後、1分間混合を行った後、混合物の温度を50〜55℃に保ちながら、50℃の非イオン界面活性剤A0.55Kgを1.5分間で添加した。添加後、混合物の温度を50〜55℃に保ちながら、12分間混合を行った。
【0088】
その後、実施例1と同様の方法で造粒及び整粒を行って入浴剤用造粒物(平均粒径770μm)を得た。この造粒物の溶解率は69.9重量%であった。
【0089】
更に、実施例1と同様の方法で炭酸ナトリウムと混合して発泡性粉末入浴剤を得た。この発泡性粉末入浴剤の微細発泡(濁度)は15cmであった。
【0090】
比較例2
30Lナウターミキサー(ホソカワミクロン製 NX−S)を自転回転数100rpm(フルード数0.84)、ジャケット温度55℃に設定し、フマル酸14.7kgを添加した後、混合機内の粉体温度が50℃に到達した時点で65℃の油性成分A3.05kg及び65℃の非イオン界面活性剤A0.55Kgを同時に3分間で添加した。添加後、粉体温度を50〜55℃に保ちながら、12分間混合を行った。
【0091】
その後、実施例1と同様の方法で造粒及び整粒を行って入浴剤用造粒物(平均粒径790μm)を得た。この造粒物の溶解率は76.2重量%であった。
【0092】
更に、実施例1と同様の方法で炭酸ナトリウムと混合して発泡性粉末入浴剤を得た。この発泡性粉末入浴剤の微細発泡(濁度)は10cmであった。
【0093】
実施例1〜4及び比較例1、2の結果をまとめて表1に示す。
【0094】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸、親水性活性剤及び油性成分を含有する入浴剤用造粒物の製造法であって、有機酸及び親水性活性剤を混合した後、油性成分を添加し混合する工程を有する製造方法。
【請求項2】
親水性活性剤が、非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
非イオン界面活性剤のHLBが10〜20である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
有機酸がフマル酸である、請求項1〜3の何れか1項記載の製造方法。





【公開番号】特開2012−1469(P2012−1469A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136795(P2010−136795)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】