説明

全パラフィン低温作動油

せん断安定性指数が0〜20、ASTM D5621で測定したせん断ロスが7%未満であり、同じ粘度グレードのナフテン油と同じか、それより良好なブルックフィールド粘度を有するパラフィン作動油が提供される。作動油には、動粘度(100℃)2〜6cStの第一のパラフィン油5〜90重量%、動粘度(100℃)3〜14cStの第二のパラフィン油5〜90重量%およびポリメタクリレート粘度指数向上剤5〜10重量%が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油に関する。より詳しくは、本発明は、低温マルチグレード作動油に関する。
【背景技術】
【0002】
作動油は広範囲の用途で用いられる。例えば、作動油は、車両トランスミッション、ディファレンシャルギヤ、ブレーキなどで、並びに非車両装置、および例えば射出成形および一般製造で用いられる機械装置で用いられる。
【0003】
作動油は、装置の製造要件を満足するように異なる粘度グレードで、商業的に入手可能である。しかし、これらの標準的な作動油の多くは、現在開発され、利用に供される高度に設計された装置に必要とされる粘度特性を全て満足するには困難がある。例えば、低温マルチグレード作動油を処方するためには、ナフテン基油または過酷に水素化された基油を用いることが必要であった。これらの提案にはそれぞれ、欠点がある。
【0004】
ナフテン基油を用いる際の一つの欠点は、コストである。ナフテン基油は、類似粘度のパラフィン基油より比較的高価である。他の欠点は、入手可能性である。ナフテン基油の製造業者は、パラフィン基油のそれより少ない。
【0005】
ナフテン基油の場合と同様に、過酷に水素化された基油は、実質的に同じ理由で、類似粘度のパラフィン基油より高価である。基本的には、過酷に水素化された基油を製造する製油所は、パラフィン基油に比べ少ない。
【0006】
従って、ナフテン基油、または過酷に水素化された基油を用いることを必要としない低温マルチグレード作動油を有することができることは望ましい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
広く云うと、本発明は、
(a)動粘度(100℃)2〜6cStの第一のパラフィン油5〜90重量%;
(b)動粘度(100℃)3〜14cStの第二のパラフィン油5〜90重量%;および
(c)せん断安定性指数0〜20のポリメタクリレート粘度指数向上剤5〜10重量%
を含むマルチグレード作動油であって、
ASTM 5621で測定したせん断ロス(40分後)が7%未満であり、
所定のいかなる粘度グレードについても、同じ粘度グレードのナフテン油含有作動組成物と、少なくとも実質的に同じか、それより良好なブルックフィールド粘度(0゜Fおよび−20゜F)を有する
ことを特徴とするマルチグレード作動油を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の組成物には、二種のグループIパラフィン油が含まれる。グループIパラフィン油は、典型的には、粘度指数約80〜120を有し、飽和分<90%および硫黄分>0.03%を含む。
【0009】
本発明の第一のグループIパラフィン油は、粘度2〜6cSt(100℃)および粘度指数(VI)85〜95を有するものである。また、第一のグループIパラフィン油は、組成物の全重量を基準として5〜90重量%を構成する。
【0010】
第二のグループIパラフィン油は、粘度3〜15cSt(100℃)およびVI 90〜95を有するものである。第二のグループI油は、組成物中に、組成物の全重量を基準として5〜90重量%の範囲の量で存在する。
【0011】
前記作動油はまた、せん断安定性指数0〜20、好ましくは10〜20のポリメタクリレート粘度指数向上剤(VII)を含む。典型的に適切なポリメタクリレートVIIは、平均分子量約10,000〜1,000,000、より典型的には約20,000〜約500,000を有する。このVII成分の量は、組成物の重量を基準として5〜10重量%、好ましくは6〜7.5重量%である。
【0012】
前記の成分は、注意深く選択され、その相対量は、いかなる所定の粘度グレードについても、せん断ロスが7重量%未満(40分後)であり、また、同じ粘度グレードのナフテン油含有作動流体組成物と、少なくとも実質的に同じ低温特性を有する組成物が得られるように、考量しなければならない。粘度グレード15〜150の作動油については、組成物は、好ましくは、表1に示される特性を有する。
【0013】
【表1】

【0014】
前記の成分に加えて、作動油組成物は、典型的には、作動油に典型的に用いられる少量の従来の添加剤を含む。流動点降下剤、酸化防止剤、消泡剤などである。
【実施例】
【0015】
本発明は、その好ましい実施形態が含まれる、次の実施例によって例証される。実施例においては、特定のISO粘度グレードの作動流体を調製するのに次の成分を用いた。
(I)粘度約2.6cSt(100℃)、VI 85のグループIパラフィン油。
(II)粘度約4cSt(100℃)、VI 95のグループIパラフィン油。
(III)粘度約5.4cSt(100℃)、VI 95のグループIパラフィン油。
(IV)粘度約7、VI 95のグループIパラフィン油。
(V)粘度約14cSt(100℃)、VI 90のグループIパラフィン油。
(VI)せん断安定性指数約14cStの、ローマックス(RohMax)社から商品名「ビスコプレックス(Viscoplex)8−219」で販売されるポリメタクリレートVII。
(VII)流動点降下剤と共に、耐磨耗剤、腐食防止剤、酸化防止剤、消泡剤などの成分を含む市販添加剤パッケージ。
これら種々の成分を、表2に示す量で用いた。それらの特性も示されている。
【0016】
【表2】

【0017】
比較の目的で、ISO32マルチグレード作動油三種を調製し、その特性を決定した。組成および結果を表3に示す。これには、市販のナフテン含有作動油の特性も含まれる。分かるように、ブレンド物1は、せん断ロス7%未満を有したが、低温特性を有さなかった。ブレンド物2は、せん断ロスおよび流動点が不十分であり、ブレンド物3は、ブルックフィールド粘度(−20゜F)および流動点が不十分であった。
【0018】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)粘度(100℃)2〜6cStの第一のパラフィン油5〜90重量%(組成物基準);
(b)粘度(100℃)3〜15cStの第二のパラフィン油5〜90重量%(組成物基準);および
(c)せん断安定性指数0〜20のポリメタクリレート粘度指数向上剤5〜10重量%(組成物基準)
を含む作動油組成物であって、
ASTM 5621で測定したせん断ロス(40分後)が7%未満であり、
所定のいかなる粘度グレードについても、同じ粘度グレードのナフテン油含有作動組成物と、少なくとも実質的に同じか、それより良好なブルックフィールド粘度(0゜Fおよび−20゜F)を有する
ことを特徴とする作動油組成物。
【請求項2】
下記の各粘度グレードについて、下記の特性を有することを特徴とする請求項1に記載の作動油組成物。
【表1】

【請求項3】
前記粘度指数向上剤は、平均分子量10,000〜1,000,000を有することを特徴とする請求項1または2に記載の作動油組成物。
【請求項4】
少量の少なくとも一種の作動油添加剤を含むことを特徴とする請求項3に記載の作動油組成物。
【請求項5】
前記添加剤は、流動点降下剤、耐磨耗剤、腐食防止剤、酸化防止剤および消泡剤よりなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項4に記載の作動油組成物。
【請求項6】
(a)粘度2〜6cSt(100℃)および粘度指数85〜95の第一のパラフィン油5〜90重量%;
(b)粘度3〜15cSt(100℃)および粘度指数90〜95の第二のパラフィン油5〜90重量%;および
(c)せん断安定性0〜20のポリメタクリレート粘度指数向上剤5〜10重量%
を含む(重量%は組成物の全重量を基準とする)作動油組成物であって、
ASTM 5621で測定したせん断ロス(40分後)が7%未満であり、
下記の各粘度グレードについて、下記の最大流動点およびブルックフィールド粘度(BV)を有する
【表2】

ことを特徴とする作動油組成物。

【公表番号】特表2006−521459(P2006−521459A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509530(P2006−509530)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/009893
【国際公開番号】WO2004/087851
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】