説明

全ファイバ型チャープパルス増幅システム

光学結晶ファイバパルスコンプレッサ内で偏光モード分散と色分散とを補償することにより、全ファイバ型チャープパルス増幅システムから高いパルスエネルギーを得ることができる。ファイバ増幅器内で、自己位相変調によって3次分散を誘発することで、バルク型格子パルスコンプレッサからの3次色分散を補償し、ハイブリッドファイバ/バルク型チャープパルス増幅システムのパルス品質を向上させることができる。最後に、負分散ファイバ増幅器内で正チャープパルスを増幅することで、アンチストーク周波数シフトを介して、低雑音の波長調整可能なシード光源を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年6月30日出願の米国特許出願第10/608,233号の一部継続出願であり、上記出願の全体は本願明細書に組み込まれる。本出願は、2004年1月27日出願の米国特許仮出願第60/539,110号の出願日の恩典を請求するものである。この米国特許仮出願第60/539,110号の開示全体は本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、超小型の高エネルギーファイバパルス光源に関する。
【背景技術】
【0003】
過去数年にわたって、ファイバレーザ及び増幅器は、その独特な構造の単純性のために、進化した産業応用用の超高速パルス光源の最も前途有望な候補として考慮されてきた。一般に、超高速光パルスは50ピコ秒未満のパルス幅を備えている。このようなパルスをμJからミリジュールのエネルギー範囲へ増幅するために、チャープパルス増幅が実現される。一般的に、チャープパルス増幅システムは、電力増幅器内で増幅する前に、パルスストレッチャー内で時間的に伸張された(即ちチャープされた)、近似帯域幅制限されたシード・パルス光源を使用する。増幅後、パルスは、パルスコンプレッサによってほぼ帯域幅限度にまで再圧縮される。
【0004】
A.ガルバナウスカス(Galbanauskas)らは、市販の実用的なファイバチャープパルス増幅システムを提案している(特許文献1参照。)。この特許文献1に開示されたシステムは、パルス伸張用のチャープファイバブラッグ格子に依存している。無論、チャープファイバブラッグ格子はこれまで幅広く使用可能な装置に開発されてきており、また、チャープパルス増幅システム内の任意の次数の分散を補償できるようにするために、ブラッグ格子内部のチャープを線形または非線形に設計している(A.ガルバナウスカスらの特許文献2参照。)が、これは、パルス再圧縮後に近似帯域幅制限されたパルスを生成する上で重要である。
【0005】
一般に、このようなシステムでは、システム小型化と高エネルギー機能の間の妥協策として、チャープファイバブラッグ格子パルスストレッチャーをバルク型格子パルスコンプレッサと共に使用することが有利であり、高エネルギーファイバ増幅システムに少なくとも部分的な統合を提供することができる。バルク型ストレッチャーとコンプレッサの使用に頼った別の配列(一般に最新技術で使用されているもの)は整列が遥かに困難であり、その動作には広大な空間を必要とするにもかかわらず、実際の産業用途における実用性は限られる。
【0006】
最近、M.ファーマン(Fermann)らが、ファイバ格子パルスストレッチャーとバルク型格子パルスコンプレッサの間の分散プロファイルの不整合を最小化する、アポダイズされた非線形チャープファイバ格子の使用を提案しており、それによってチャープファイバ格子パルスストレッチャーの実用性が大幅に改善された(特許文献3参照。)。
【0007】
M.ファーマンらは特許文献3において、バルク型格子パルスコンプレッサの代わりに分散フォトニック結晶ファイバを使用することによるさらなる単純化を提案している。分散フォトニック結晶ファイバパルスコンプレッサの使用により、高密度のファイバビーム伝送が可能になる。高密度のファイバビーム伝送とは、長距離にわたるファイバ伝送区間を伝播する短パルスを、上記ファイバ伝送区間の下流にある特定のターゲット材料上に最適に伝送することである。
【0008】
ここでは参照のために、フォトニック結晶ファイバを、ファイバクラッド内で導波路がフォトニックバンドギャップを介して使用可能となる場所である、空気(または任意のガス)で充填された中心穴を装備したファイバとして考慮している。これに対しホーリーファイバは、クラッド内において、中心ガラスコアの内部に案内部を使用し、この中心ガラスコアの周囲を空気(または他のガス)を充填した穴で包囲している。従来のファイバでは、コア内で、周囲のクラッドよりも高い屈折率での導波を行うことができ、ファイバ断面部のどこにも空気穴を使用していない。
【0009】
J.カフカ(Kafka)らは、ビーム伝送に低分散型のホーリーファイバの使用を提案している(特許文献4及び5参照。)。しかし、ホーリーファイバと異なり、フォトニック結晶ファイバは、実質的に線形で高次の分散を呈する可能性がある。そのため、単にホーリーファイバをフォトニック結晶ファイバで代用するだけでは、短光パルスをターゲット材料上に最適に伝送することは不可能である。
【0010】
さらに、カフカらの出願は、実質的に偏光維持型のホーリーファイバを使用したビーム伝送を推定している。ビーム伝送用の非偏光維持型ファイバを収容する手段、また、ホーリーファイバをチャープパルス増幅システム内の分散補償要素として実現する手段は何ら提供されていない。
【0011】
I.N.ダリング(Duling)らは、ファラデー回転子ミラーを使用して、非偏光維持型ファイバ増幅器からシングル偏光出力を提供することを提案している(特許文献6参照。)。しかし、この特許文献6には、ファラデー回転子ミラーをフォトニック結晶ファイバと共に使用することについての提案がない。さらに、典型的な非偏光維持型ファイバ増幅器における1次及び2次偏光モード分散は微小値であるので、特許文献6は、ファラデー回転子を2次偏光モード分散の補償に使用することを考慮しなかった。
【0012】
M.E.ファーマンらが説明しているように、ファイバベースのチャープパルス増幅システム内における高エネルギーパルスの生成は、大型コアファイバ増幅器と、特定の大型コア回折制限マルチモード増幅器とを使用することで促進される(特許文献7参照。)。最近、M.E.ファーマンらが、産業用途におけるこのようなファイバレーザ源の実用性をさらに拡大させる、モジュール式で、幅広い調整が可能なファイバチャープパルス増幅システムを開示した。このモジュール式システムは、増幅ファイバを非線形電力増幅器と共に使用して、チャープパルス増幅システムにおいて高次の分散を補償することを提案している(特許文献8参照。)。しかしM.E.ファーマンらは、このような増幅フィルタによる2次及び3次分散の独立的な制御を全く提案していない。さらに、ファイバ増幅器内で利得狭窄及び利得プリングが実行された状態で非線形増幅器を使用することで、高次の分散を補償することについても提案していない。
【0013】
デービット(David)J.リチャードソン(Richardson)らは、ファイバ増幅器を使用したフェムト秒〜ピコ秒パルスの増幅を目的としたシステム実現について説明している(特許文献9参照。)。特許文献8と同様に、リチャードソンらは、最高のピークパワーパルスを生成するチャープパルス増幅システムを説明している。また、特許文献8と同様に、ファイバ増幅器にパラボラ型パルス形成を用いて、最大で1〜10μJのエネルギー範囲のフェムト秒パルスを生成することについても説明している。しかし、リチャードソンらは、このようなファイバ増幅器内での3次分散の制御については提案していない。
【0014】
特許文献8に開示されたモジュール式システムはまた、アンチストーク周波数シフトファイバをErファイバレーザと共に使用して、Yb増幅器チェーンの注入シーディングを行うことも提案している。超高速Ybファイバ増幅器のシーディングを行うための利用可能な方法の中でも、超高速Erファイバレーザの、1.55μm波長範囲から1.05μm波長範囲までのアンチストーク周波数シフトが最も魅力的であると考えられている。その理由は、超高速Erファイバレーザは、標準の遠距離通信構成要素で組み立てることができ、システムにかかる費用を大幅に低減できるためである。こうしたシード光源は、980〜1150nmの波長範囲にわたる、Ybファイバのスペクトル利得帯域内へのパルス注入を可能にするために調整可能であることが理想的である。
【0015】
最近、T.後藤らは、短パルスレーザ源の強度依存型の周波数シフトに基づいた調整可能な短パルス光源を提案している(特許文献10参照。)。この特許文献10の調整可能な光源は、入力強度による出力パルス周波数の線形変化に依存したものである。光ファイバ内の線形強度依存型周波数シフトに頼らない調整可能な短パルスレーザ源は提案されていない。さらに、特許文献10は、アンチストーク周波数シフトされたファイバレーザの安定性の問題を検討していない。アンチストーク周波数シフトは望ましい特定の出力波長を生成することはできても、こうした光源は一般的に市販のレーザ源に伴う安定性の要求を満たすことはできない。その理由の1つは、アンチストーク周波数シフトが非常に非線形的な処理であるためであり、したがってシード光源の微小な変化によっても大きな増幅変動が生じかねない。詳細には、特許文献10による、アンチストーク周波数シフトを併発する誘導ラマン散乱処理が実現された状態では、非常に大きな増幅変動が生じる可能性がある。
【特許文献1】米国特許第5,499,134号明細書
【特許文献2】米国特許第5,847,863号明細書
【特許文献3】米国特許出願第10/608,233号
【特許文献4】米国特許第6,236,779号明細書
【特許文献5】米国特許第6,389,198号明細書
【特許文献6】米国特許第5,303,314号明細書
【特許文献7】米国特許第5,818,630号明細書
【特許文献8】米国特許出願第09/576,722号
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0156605号明細書
【特許文献10】米国特許第6,618,531号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の状況を斟酌して考案されたものであり、上述の問題と従来技術の限界を克服することを目的としており、また、fs〜psパルス幅範囲内のパルスのための超小型/超高出力のファイバ増幅システムについて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のさらなる態様及び利点は以降の説明部分に記述されており、ある程度はこの説明から明白となるか、あるいは本発明の実施によって学習される。本発明の態様と利点は、添付の請求項に特に指摘されている方法及び組み合わせの手段によって実現/取得される。
【0018】
本発明は、線形または非線形のチャープファイバ格子パルスストレッチャーと、フォトニック結晶ファイバパルスコンプレッサとに基づいた、超小型の高エネルギーチャープパルス増幅システムの設計に関する。あるいは、フォトニック結晶ファイバパルスストレッチャーとフォトニック結晶ファイバ補償装置を実現することができる。産業用途としては、ファイバベースのパルスコンプレッサ及びストレッチャー、ファイバベースの増幅器に依存した、全ファイバ型チャープパルス増幅システムの使用が好ましい。
【0019】
実用性の高いファイバベースの高エネルギーチャープパルス増幅システムも、長距離の従来型ファイバ及びバルク型格子コンプレッサに基づくパルスストレッチャーのような、従来型の光学構成要素で構成することができる。非線形キュービコンパルス形成を利用することで、即ち、増幅器内の自己位相変調を制御して高次の分散を最小化することで、このような「従来型の」チャープパルス増幅システムの性能を大幅に拡張することができる。
【0020】
最後に、アンチストーク周波数シフトされたモードロックErファイバレーザ増幅システムから、Ybファイバベースのチャープパルス増幅システムのための特に小型のシード光源を構造することができ、この場合、アンチストーク周波数シフトされた出力をフィルタリングすることで、波長可変な出力が得られる。負分散ファイバ増幅器内で正チャープパルスを増幅することにより、このようなアンチストーク周波数シフトされた光源の雑音を最小化できる。
【0021】
上述した、及びこれ以外の本発明の態様と利点は、付属の図面を参照した以下の詳細な説明から明白となる。
【0022】
付属の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、また、本発明の実施形態を例証し、さらに、以下の記述と共に本発明の態様、利点、原理を説明する役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明によるチャープパルス増幅システム100の一般的な実施形態を示す。このシステムは、短パルスのシード光源101を備えている。一般に、シード光源101は幅50ピコ秒未満のパルスを供給する。シード光源101から供給されたパルスが光サーキュレータ102に注入され、ファイバブラッグ格子ストレッチャー103がこのパルスを時間的に少なくとも10倍に伸張する。全ファイバ型サーキュレータ、または光学サーキュレータのバルク型光学的等価物を実現することができる。特許文献3はこのようなサーキュレータを開示しており、その全体は本願明細書に組み込まれているため、ここではこれ以上の説明を省く。次に、伸張されたパルスがサーキュレータ出力を介して光増幅器システム104へ送られる。光増幅器システム104は、バルク光学式マルチパス増幅器、再生増幅器、パラメトリック増幅器、さらにファイバベースの増幅器システムを備えることができる。一般に、光増幅器システムには複雑な光学的配置と、別個のポンプ光源を使用する必要がある。しかし、このようなタイプの増幅器は従来よりよく知られているものであるため、ここではこれ以上の説明を省く。
【0025】
増幅器104からの出力は、アイソレータ105、偏光ビームスプリッタ106、レンズ107を介してフォトニック結晶ファイバコンプレッサ108内に向けられる。一般に、フォトニック結晶ファイバは、中央案内空気穴を設けることで、このようなファイバの電力扱い能力を最大化するように設計されている。最適なチャープパルス増幅システムの場合には、高分散性のフォトニック結晶ファイバ(高い値の色分散を生成する特徴がある)が好ましい。一般には、こうした高分散性のフォトニック結晶ファイバにおいて偏光を制御することは非常に困難であり、ファイバ内のバンドギャップ構造内の小さな摂動によって大きな1次及び2次偏光モード分散が生じる可能性がある。こうしたファイバ内にランダムに分布した複屈折は、1次偏光モード分散を特徴とする。こうしたファイバ内にランダムに分布した波長依存複屈折は、2次偏光モード分散を特徴とする。
【0026】
しかし、ファラデーミラーは、ファイバコンプレッサ180内部のあらゆる1次及び2次偏光モード分散を補償することができる。ファラデーミラーはまた、コリメートレンズ109、ファラデー回転子110、鏡111を備えている。ファラデー回転子110を45°回転させると、ダブルパススルー・ファイバコンプレッサ108により、ファイバコンプレッサ108を介して伝播された後方反射光が、前方伝播光とは正反対の偏光状態となる。実質的に波長独立型のファラデー回転子の場合は、波長とは関係なく、後方伝播方向において反対の偏光状態が得られる。
【0027】
ピーク電力がステップインデックス型ファイバの損傷閾値を下回るシステム内において、ファイバコンプレッサ108を前方パススルーしたパルスが圧縮されないため、コリメートレンズ109、ファラデー回転子110、鏡111の代わりに、従来のステップインデックス型ファイバで作成された短いピグテールを設けたファイバピグテール付ファラデー回転子ミラー(FRM)を実現することもできる。
【0028】
これにより、ファイバコンプレッサ108のダブルパススルーの後に、時間的に圧縮された出力パルスを、ファイバコンプレッサ108内に注入されたパルスの偏光状態と直交する偏光状態にて抽出することが可能である。偏光ビームスプリッタ106がこれらの直交偏光パルスを抽出する。図中ではこのパルスを矢印112で示している。
【0029】
ファイバブラッグ格子ストレッチャーをフォトニック結晶ファイバパルスと共に使用することで、システム構成が非常に小型化されるが、ファイバブラッグ格子パルスストレッチャーにおけるグループ遅延リプルの制御が困難になり、また、圧縮された出力パルスに望ましくない背景が生じる可能性がある。この問題は、フォトニック結晶ファイバをパルス伸張とパルス再圧縮の両方について実現することで回避できる。このようなシステム113の一般的な一実現を図2Aに示す。図2Aに示したこのシステムは図1に示したシステムとほぼ同一であり、共通の要素には同一の参照符号を付している。しかし、ファイバブラッグ格子ストレッチャー103を、フォトニック結晶ファイバパルスストレッチャー114とファラデー回転子ミラー115の組み合わせで代用することができる。ファラデー回転子ミラー(FRM)115は、図1で説明した例のように、フォトニック結晶ファイバパルスストレッチャー114内の偏光モード分散を補償するために用いられる。ファイバピグテール付FRM115の実現が可能であり、この場合、ピグテール付FRM115をフォトニック結晶ファイバストレッチャー114に直接永久接続することで非常に小型の構成が確保できる。FRMピグテール115は従来のステップインデックス型ファイバで作成することができる。
【0030】
フォトニック結晶ファイバをパルス伸張とパルス圧縮の両方について使用するためには、異なる設計の2本のフォトニックバンドギャップファイバを使用する必要がある。即ち、2本のファイバ内のフォトニックバンドギャップは、2本のフォトニックバンドギャップファイバの分散がほぼ反対となる別の設計のものでなければならない。図2Bを参照すると、パルスストレッチャーは、コンプレッサバンドギャップの中心と比較して中心が青色シフトしたバンドギャップを設けている。ここでは、逆の配置も可能であるため、ストレッチャー/コンプレッサの名称は任意である。
【0031】
光ファイバをパルス伸張段階と圧縮段階のみでなく、増幅段階にも採用することで、特に小型かつ高エネルギーパルス増幅システムの実現が可能である。図3を参照すると、システム100と非常に似たシステム116を示しており、共通の要素には同一の参照符号を付している。増幅器システム104がファイバ増幅器117で代用されている。
【0032】
図3ではファイバ増幅器が1つしか示されていないが、さらなるパルスピッキングまたはダウンカウント光学変調器またはアイソレータと連鎖するファイバ増幅器を使用して、高エネルギーパルスを生成することができる。特許文献3がこのようなファイバ増幅器連鎖を開示している。最大の光強度を扱うファイバ増幅器は、大容量モード偏光維持型ファイバであることが好ましい。
【0033】
図3によるシステムの設計の実現には、平均電力5mW、繰り返し率50MHz、波長1558nmで、400フェムト秒の近似帯域幅されたパルスを出力する、モードロックされたErファイバレーザに基づいたシード光源101を使用する。光源のスペクトル幅は7.6nmであった。Erレーザからのパルスは、ファイバ格子パルスストレッチャー103を介して100ピコ秒の幅にまで伸張された。ファイバ格子パルスストレッチャーは、26.8psの2次(色)分散値と、1.02psの第3(色)分散値を有するように設計されており、これらはフォトニック結晶ファイバコンプレッサ108の色分散とほぼ一致する。
【0034】
簡略化の目的で、この特定の設計例では、Erファイバ増幅器117を1つだけ使用している。Erファイバ増幅器は、1558nmの波長にて、70mWの出力電力を生成した。さらにErファイバ増幅器は各端部において、他の光コンポーネントから隔離された。ファイバ増幅器117への入力端部に設けられたアイソレータは図示されておらず、ファイバ増幅器117の出力部に設けられたアイソレータはアイソレータ105である。従来のステップインデックス型シングルモードファイバが、ファイバストレッチャー103とファイバサーキュレータ102の間にさらに長く挿入されて、システム全体の色分散の制御を行う。
【0035】
本発明のファイバ増幅器117において生成されるパルスエネルギーは1.4nJである点に留意すること。パルスエネルギーの生成量を高めるためには、特許文献3で説明されているように、追加のファイバ増幅器の段階とパルスピッカーを採用する必要がある。
【0036】
フォトニック結晶ファイバコンプレッサ108の長さは9.56mである。中心空気穴の直径は6μmである。フォトニックバンドギャップは1515nmにて中心決めされ、スペクトル幅は約200nmである。1560nmの地点におけるフォトニック結晶ファイバの損失は0.2dB/m未満であった。即ち、フォトニック結晶ファイバを介したダブルパスでは、典型的なバルク格子コンプレッサの伝送損失と比較して約30%の伝送が可能である。フォトニック結晶ファイバの分散は、最新技術分野で周知の標準的な技術を用いて別個に測定した。フォトニック結晶ファイバの分散を、上で説明したファイバブラッグ格子パルスストレッチャーの設計への入力パラメータとして使用した。
【0037】
ファラデー回転子ミラー(構成要素109〜111)を使用しなかった場合では、出力部112における、システムからのパルスを圧縮することができず、高いペデスタルを呈した。コンプレッサの入力部に1/4または1/2波長板による広帯域偏光制御を使用する場合には、これらのペデスタルを除去することはできない。偏光装置を介して観察されるように、フォトニックバンドギャップファイバを介して伝送されたパルスのスペクトルは、形状が入力偏光状態に依存した状態で、100%に近い変調を呈した。これは明らかに、フォトニック結晶ファイバコンプレッサにおける1次及び2次偏光モード分散である。
【0038】
これとは対照的に、ファラデー回転子ミラーを挿入する場合は、出力112にて高品質で圧縮済みのパルスが得られる。図4に、圧縮されたパルスの自己相関を示す。このパルスは、約800フェムト秒の一時的な1/2波長を有し、これは帯域幅限度の2倍の範囲内に入る。帯域幅限度からの逸脱は、ファイバブラッグ格子ストレッチャー103とフォトニック結晶コンプレッサ108の間に残っている未補償の3次分散によるものであり、これはファイバブラッグ格子ストレッチャーの設計パラメータを改善することで排除できる。
【0039】
先述した説明は高度に集積化された超小型のチャープパルス増幅システムに関するものだが、従来のファイバストレッチャー、ファイバ増幅器、バルク格子コンプレッサに依存したより従来型のシステム概念に耐性を持った応用がいくつかある。このようなシステムから高品質のパルスを得るためには、高次の分散と自己位相変調を制御することが重要である。チャープパルス増幅システムにより、図5A及び5Bに示すような2次及び3次分散の独立的な制御が可能となる。例示的な一実施形態では、受動モードロックしたYbファイバレーザに基づくシード光源101を使用している。このような受動モードロックされたYbファイバレーザは過去の米国特許出願第10/627069号に説明されているため、ここではこれ以上の説明を省く。シード光源101は、繰り返し率43MHzの、平均電力16mWにて、帯域幅16nmの正チャープ光学パルスを生成する。発振器のピーク放射波長は1053nmであった。シード光源から出力されたパルスは、150フェムト秒未満のパルス幅にまで圧縮可能であり、シード光源からのチャープはほぼ線形的であった。シードレーザからの出力はアイソレータ(図示せず)と、15nm帯域幅の波長可変帯域フィルタ(チューナブル帯域フィルタ)119とを通過した。
【0040】
波長可変帯域フィルタ119を通過後、5mWの出力パワーが得られ、ファイバストレッチャー120を使用してパルスが約100ピコ秒の幅にまで伸張された。伸張パルスを生成するために採用したファイバストレッチャーは、長さ約200mであり、従来の偏光維持シングルモード・ステップインデックス型ファイバに基づくものであった。図5A及び5Bに、ファイバストレッチャー120の前に挿入された波長可変帯域フィルタ119を示す。あるいは、この波長可変帯域フィルタ119をファイバストレッチャー120の後に挿入することもできる(このシステム実現は特に示していない)。
【0041】
後に続くYbベースの偏光維持前置増幅器121は、伸張したパルスを500mWの平均電力に増幅する。パルスピッカー122は音響光学変調器に基づいており、偏光維持ファイバのピグテールを設けている。さらに、パルスの繰り返し率を200kHzにまで低減させ、結果的に平均電力を1mWにする。次に、パルスピッカー122からのパルスが大容量モード偏光維持Ybファイバ電力増幅器123内に注入されて、950mWの平均電力に増幅される。Yb電力増幅器は長さ3mであり、Yb電力増幅器におけるその基本モードスポットサイズは25μmであった。全てのファイバは、偏光軸が整列した状態で永久接続されているか、適切なモード整合光学系(図示せず)によって(偏光軸を合わせた状態で)相互に接続さている。電力増幅器123は、レンズ124を介してポンプ光源125にクラッドポンプされており、980nmの波長にて約10Wのポンプパワーを伝達する。増幅された信号光からのポンプ光を分割するために、ビーム分割ミラー126が実現された。電力増幅器123からの増幅及び伸張されたパルスは、従来のバルク光学コンプレッサ127の内部で圧縮された。このバルク光学コンプレッサ127はシングル回折格子に基くものであり、1200本/mmの溝密度を有し、リトロー角付近で動作する。このようなバルク光学コンプレッサは技術上よく知られているため、ここではこれ以上の説明を省く。バルク光学コンプレッサ127の後には、出力128が、約330フェムト秒の半値全幅(FWHM)、440mWの平均電力を有し、2.2μJのパルスエネルギーに対応したパルスを含むようになった。
【0042】
図6Aは、電力増幅器内に注入されたパルススペクトルを示し、図6Bは、電力増幅器後に得られたパルススペクトルを示し、図6Cは、これらに関連する、圧縮された出力パルスの自己相関を示す。自己相関トレースから明白であるように、本発明では非常に優れたパルス品質を得ることができる。さらに、図6Aと図6Bを比較すると、電力増幅器内に著しい利得狭窄があることがわかる。またさらに、利得プリングによって、スペクトルのピークが、入力スペクトルと出力スペクトルの間で5nmだけ青色シフトする。利得プリングは、Yb増幅器のピーク利得が約1030〜1040nmであり、注入されたパルススペクトルが1048nm周辺で中心決めされている場合に発生する。増幅処理中における平均的な光学周波数シフトが、利得プリングをさらに特徴付ける可能性がある。
【0043】
利得プリングは、注入されたパルススペクトルの青色スペクトル成分を優先的に増幅させる。自己位相変調が行われる場合には、これによって、赤色スペクトル成分よりも青色スペクトル成分の方により大型の位相遅延が生じる。このスペクトル依存型の非線形位相遅延は、伸張した出力パルスに追加された3次負分散と同等である。これにより、特定の出力パワーと特定の入力パルススペクトルについて、ファイバストレッチャー及びバルク型格子コンプレッサからの3次正分散を完全に補償することができる。
【0044】
利得狭窄と利得プリングに加え、利得減少によっても、共鳴分散及び共鳴自己位相変調を介した2次及び3次分散への非線形的貢献がさらに誘発される可能性がある。共鳴分散は、増幅器内の上方利得レベルと下方利得レベル間の密度差に関連した光学位相変調から発生し、これは最新技術上よく知られている。共鳴自己位相変調は、増幅処理中にシングルパルスによって相当量の利得が減少している最中に、増幅器内の上方利得レベルと下方利得レベル間の密度差における時間依存的な変化によって発生する。共鳴自己位相変調は、主に半導体物理現象において知られているが、ファイバ利得媒体においても発生する。本発明のこの例では、これらの共鳴増幅器効果は非線形的分散の値にはそれほど貢献しないが、共鳴効果はこれ以外に、増幅工程中に生成された非線形的分散の量を変更及び最適化するためにも使用できる。
【0045】
自己位相変調、利得狭窄、利得プリング、利得減少が生じた場合、伸張パルスは多数レベルの3次分散を蓄積することができるため、我々は、このようなパルスを「キュービコン」と呼ぶことを提案する。より一般的には、キュービコンを、多数レベルの2次、3次分散及びこれよりも高次の分散を生成する分散遅延線によって少なくとも部分的に補償可能な少なくとも多数レベルの自己位相変調(非線形位相遅延>1に関連する)が生じた場合に、制御可能なレベルの、少なくとも線形及び方形パルスチャープを生成するパルスとして定義することができる。(線形パルスチャープを補償する場合には、2次分散を有する分散遅延線が必要であり、方形パルスチャープを補償する場合には、3次分散を有する分散遅延線が必要であり、さらに高次のパルスチャープについても同様のことが当てはまる点に留意すること。)2次、3次、さらには高次の分散を生成する分散遅延線の場合には、一般に、伸張パルスは30分の1以下に圧縮される。さらに、キュービコンは、共鳴増幅器分散、利得狭窄、利得プリング、及び利得減少が生じた場合にも形成することができ、この場合には、我々は利得減少を、シングルパルスによる許容範囲内の利得減少と呼ぶ。
【0046】
この特定の例では、伸張パルスを約300分の1に圧縮することができる。この場合、2の圧縮係数を電力増幅器における利得狭窄に属するものとすることができ、キュービコン形成なしで、最小の圧縮パルス幅は約600〜800fsであり、たった70の圧縮係数に対応する。電力増幅器内にキュービコンが形成されることで、最低330fsのパルス圧縮が可能になる。
【0047】
キュービコンの非常に非対称な近似三角形スペクトル形状とは逆に、特許文献8で説明されているようなパラボラパルス(場合によっては、最新技術に詳しい当業者によって「シミラリトン」とも呼ばれる)は非常に対称的な、近似パラボラパルススペクトルを有することが好ましい。
【0048】
再び図5A及び5B、図6A〜6Cを参照すると、非線形シュレーディンガー方程式の適用に基づくシミュレーションは、幅約100ピコ秒の伸張パルスについて、システムにおける3次分散の最適な補償が、約π−2πの非線形位相遅延にて得られたことを示す。最良の注入スペクトルは、約8〜14nmのスペクトル幅を有し、注入されたパルススペクトルのピーク位置は、Yb電力増幅器利得プロファイルのピークから約4〜20nm赤色シフトしていることが理想的である。上述したように、このYb増幅器のピークスペクトル利得は約1030〜1040nmである。したがって、理想的な注入パルススペクトルは1035〜1060nmの中心、好ましくは1044〜1054nmの間ということになる。
【0049】
ファイバチャープパルス増幅システムにおける3次分散の非線形補償の特徴は、最終増幅器内に自己位相変調が実行された場合のパルスエネルギーまたはポンプエネルギーの増加によって観察されたパルス品質の向上である。パルス品質はパルス幅とは区別される点に留意すること。例えば、特許文献8に説明されているように、シミラリトンパルス増幅器では、一般に、圧縮されたパルス幅は減少し、パルスエネルギーレベルは増加する。しかし、これに関連するパルス品質の向上は小さい。パルス品質を、例えば比率:(半値全幅)/(平方二乗パルス幅)として定義することができ、これら2つの定義の両方は最新技術上よく知られている。キュービコンパルス増幅器とは逆に、パルスエネルギーレベルが上昇すると圧縮されたパルス幅が減少するが、パルス品質の向上は概してより大きく、さらに、パルスストレッチャーとコンプレッサの間で整合しない3次分散により誘発された相当量のパルスウイングを大幅に抑制することができる。これとは対称的に、シミラリトンパルス増幅器は、パルスストレッチャーとコンプレッサ間の3次分散の不整合を補償することができない。本発明が含むシステムの特徴は、一時的なパルス品質を観察し、高次の分散期間を測定するためのものである。パルスエネルギーが上昇すると、高次の分散が減少する点に留意すること。これ以外の驚くべき観察は、自己位相変調が実行されるためスペクトルにリプルを追加できるが、これによってパルス品質が向上することである。パルス品質の向上は、ウイングにおいて、より低いエネルギーでより短い、または同じパルス幅が得られることを意味する。従来の光ファイバシステムの場合は、自己位相変調リプルがパルス品質を低下させていた。
【0050】
また、従来のチャープパルス増幅システムでは、特に最終増幅器内における自己位相変調が実行された場合のエネルギーレベルの上昇によって、パルス品質が低下する傾向にある。パルスエネルギーによるパルス品質の向上については、図7A、図7Bでさらに例証している。この図7A、図7Bは、10パルスエネルギー及び2μJ(図7A)における圧縮パルスの自己相関トレースと、これに関連する、以下で説明する何らかの小さな変更によって、図5A及び5Bに示すシステム構成で得られたパルススペクトル(図7B)を示している。
【0051】
取得可能なパルスエネルギーを10μJにまで上昇させるために、ファイバストレッチャー120を長さ500mにまで延長し、コンプレッサ127を、1500l/mmの格子周期を有するバルク型コンプレッサ格子を備えるように変更した。電力増幅器123の前部に第2前置増幅器と第2パルスピッカーを挿入した。これについての図示はない。約1Wの平均出力電力(パルス圧縮後の500mWの出力電力に関連する)にて、最大10μJのエネルギーでパルスを生成できるようにするために、第2パルスピッカーによってパルス繰り返し率を50kHzに低減した。一方、2μJのエネルギーでは、200kHzのパルス繰り返し率が得られた。
【0052】
ファイバストレッチャーの長さが500mのシステム構成では、2μJのパルスを有するエネルギーが、図7Aに示すような3次分散による明瞭なテールを示しているのに対し、図7Bに示すパルススペクトルは高品質であり、弱変調のみを施したものである。パルス幅は約730フェムト秒である。パルスエネルギーを10μJに上昇する場合、図7Aに示すように、延長したパルステールが大幅に抑制され、約400フェムト秒のパルス幅が得られる。これに対し、図7Bに示すパルススペクトルの変調の増加から明らかであるように、スペクトル品質が10μJ劣化している。コンピュータシミュレーションから、10μJのパルスエネルギーについての電力増幅器123における自己位相変調レベルは約2〜4πである。電力増幅器における伸長パルスのピーク電力は100〜200kWと計算できる。10μJと2μJのパルスエネルギーにおけるパルススペクトルを示す、コンピュータシミュレーションの結果をさらに図7Cにおいて示す。図7Bからの経験結果と図7Cの論理的なシミュレーションの間には、非常に優れた一致が明瞭に見られる。図7B、図7Cに示すように、パルスエネルギーの増加に伴うスペクトル増幅リプルの増加は、高レベルの自己位相変調が存在する状態のチャープパルス増幅システムでの、ファイバ電力増幅器の動作の明瞭な特徴である。
【0053】
これらの計算から、チャープパルス増幅システムの一部であるファイバ電力増幅器内で許容可能な自己位相変調の量がパルス伸張に伴って増加し、また、達成可能な少なくとも最大のパルスエネルギーが、ファイバストレッチャー長さに伴って線形的に増加すると予想される。長さ2000mのファイバストレッチャーを使用する場合、この実験的な構成と同様に不完全なシードパルスがファイバ電力増幅器内に入力されたとしても、3〜10πの非線形位相遅延の許容が可能である。
【0054】
一般に、10〜20πの自己位相変調レベルで、誘導ラマン散乱が発生する。長さ2000mのファイバストレッチャーと、電力増幅器内の約3〜10πの非線形位相遅延とを用いるこの実験的な構成では、最大100μJのパルスエネルギーが可能である。このような高レベルの自己位相変調の許容を確保するには、電力増幅器に注入されたパルススペクトルのスペクトル増幅リプルのレベルをさらに最小化する必要がある。ファイバチャープパルス増幅システム内のスペクトルリプルを最小化する技術は、特許文献3にて既に説明されているため、ここではこれ以上の説明を省く。
【0055】
一般に、最適なファイバチャープパルス増幅システムは、パルスの伸張に単純なファイバストレッチャーを採用することと、また、相当量の3次分散と自己位相変調が実行される多数レベルのパルスエネルギーにおいて、パルスエネルギーの増加と共にパルス品質の向上が観察されることによって特徴付けられる。この3次分散は従来のバルク格子コンプレッサによって主に提供され、1050nmの波長で動作する標準的なシングルモードファイバの3次分散の2〜10倍の3次分散レベルを生成する。自己位相変調は、高いパルスエネルギーによってパルスを増幅することで得られる。最適なのは、0.3〜10πの自己位相変調レベルである。電力増幅器内における相当量の自己位相変調を示す明瞭な特徴は、パルスエネルギーの増加に伴うスペクトル変調の増加である。
【0056】
パルス品質は、波長を短縮させる利得狭窄と利得プリングの発生によってさらに向上する。増幅したスペクトル幅は、1030〜1060nmの波長範囲内において10nm未満でなければならないのに対し、利得プリングは、注入されたパルススペクトルと増幅されたパルススペクトルの間で、約1〜10nmのスペクトルピークのシフトを生じなければならない。さらに、自己位相変調が実行された場合にパルスクリーニングを実施できるようにするための最適な注入スペクトルは、1035〜1065nmの波長範囲の中心である必要がある。
【0057】
図8で、このYb電力増幅器における利得プリングの効果をさらに示す。電力増幅器内のYb利得プロファイルを線129で示す。電力増幅器内への最適な入力スペクトルを線130で示す。典型的な利得狭窄した出力スペクトルを線131で示す。パラボラスペクトル入力は単に一例として示しており、一般には、あらゆる形状のスペクトル入力を使用でき、それでも利得プリングの効果を得ることができる。
【0058】
図5A及び5Bに示すシステムは従来技術(特許文献8)を大幅に簡素化したものであり、この出願は、自己位相変調を介して高次の分散制御を可能にするための任意の(さらに非常に高額な)増幅フィルタを開示している。このシステムにおける簡素化の主なものは、利得狭窄と利得プリングの効果によって、複雑な増幅フィルタが不要となり、ファイバ利得媒体自体が、圧縮されたパルス品質において近似最適を生成するように既に最適化された、自己最適化された増幅フィルタのように機能する。図5A及び5Bのシステムにおけるこれ以外の主な単純化は、波長可変帯域フィルタ119の実現によって、3次及び2次分散を本質的に独立して制御することが可能になるというものである。即ち、波長可変帯域フィルタ119を介して入力スペクトルの中心波長を調整することで、システムの3次分散を単独操作することが可能になる。波長可変帯域フィルタ119の調整はシステムの2次分散にも影響するが、これにより、バルク型格子コンプレッサ127内の分散光路を調整するだけで、2次分散が最小化されるようになる。
【0059】
波長可変帯域フィルタ119のための特定の決定論的な位置合わせ方法は、例えば、周波数分解光ゲート(FROG)機器(または他のパルス位相復元技術)による、圧縮されたパルス位相の測定を利用することができる。この場合、最初に、波長可変帯域フィルタ119の調整によりFROGトレースが線形化され、これによりシステム内の3次分散が最小化される。次にFROGトレースから抽出された自己相関幅が、コンプレッサ内の分散光路を最短の出力パルスを生成するように調整することで最小化される。
【0060】
そのため、光学フィルタによる高次の分散制御を可能にするには、シード光源のスペクトル帯域幅を光学フィルタのスペクトル帯域幅よりも大きくする必要がある。さらに、滑らかなガウス型、パラボラ型、矩形の入力パルススペクトルを増幅器内に注入して、自己位相変調によって生じる任意の望ましくないパルス歪みを最小化することが望ましい。滑らかなガウス型、パラボラ型、矩形の入力パルスがない場合でも、やはり電力増幅器123内の強力なスペクトル成形が、自己位相変調によって望ましい3次分散補償の効果を生成することができる。
【0061】
図5A及び5Bに示したチャープパルス増幅システム内の3次分散制御用光学フィルタの使用の応用形として、特定のスペクトル出力部を設けたシード光源101を使用することもできる。しかし、3次分散の制御は入力パルススペクトルに大きく依存するため、光学フィルタと、フィルタの帯域幅を超えるシード光源帯域幅とによる実現の方が容易である。
【0062】
自己位相変調による3次分散の制御、または一般的な3次分散の制御は、コンプレッサ127の3次分散の絶対度数を平衡化または低減する3次分散の値を設けたストレッチャーファイバ120を組み込むことでさらに促進できる。特許文献8に開示されているように、変更された3次分散の値を設けたこのようなファイバは、従来のステップインデックス型及びホーリーファイバ、さらに、特許文献3で説明されているフォトニック結晶ファイバを備えることができる。上記出願の全体は本願明細書に組み込まれる。ディジョバンニ(DiGiovanni)らの米国特許第5,802,236号明細書、ファジョルド(Fajardo)らの米国特許第6,445,862号明細書、リボリ(Libori)らの米国特許第6,792,188号明細書、国際公開第02/12931号は、3次分散の変更した値を設けたホーリーファイバの特定の設計例を開示している。
【0063】
図5Bは、この高次な分散の補償装置の別の実施形態である。これは入力パルスストレッチャーと増幅フィルタからなる。これらはファイバ格子のような同一の成分であっても、あるいは、分散を備えたロングファイバとフィルタのように別の成分であってもよい。これにより、非対称な形状に伸張したパルスが作製され、これがファイバ内に入力されると自己位相変調が実行される。したがって、振幅によって位相シフト量が決定される。これにより、高次の分散を修正することが可能になる。懸案のシステムでは、このファイバは利得を提供することもできる。利得は別個のファイバによって提供することも可能である。
【0064】
同様に、ここで説明したキュービコンパルスを高ピーク電力伸長パルスを得るために使用することもでき、また、得られた高ピーク電力伸長パルスを、図1〜図4を参照して説明したようにフォトニック結晶ファイバ内で圧縮することができる。フォトニック結晶ファイバコンプレッサは3次分散の負の値を生成するので、非線形3次分散の正の値を生成するキュービコンパルスを用いて効率的なパルス圧縮を実施することが好ましい。このようなキュービコンパルスは、例えばスペクトル利得ピークの青色側上にパルスを注入することによって生成できる。キュービコンパルスをフォトニックファイバコンプレッサと共に使用した実現は、図1に示した実現と類似しているが、この場合は、ファイバ格子ストレッチャー103を或る長さのファイバストレッチャーで代用している。このような実現については特に説明を省く。
【0065】
図9Aは、市販の使用可能なアンチストークス周波数シフトされたErファイバレーザシステム129を示している。超高速Er(またはEr/Yb)ファイバレーザ130をシステムの前部として使用している。このようなErファイバレーザは、例えば米国特許出願第10/627069号に説明されているため、ここではこれ以上の説明を省く。超高速Erファイバレーザの出力は、アイソレータ131と、パルスを時間的に伸張する或る長さの正分散ファイバ132とを介して伝送される。負分散Er増幅器133は、この時間的に伸張したパルスを増幅する。ここでは、正分散ファイバは「非ソリトン支持ファイバ」と呼ばれ、負分散ファイバは「ソリトン支持ファイバ」と呼ばれる。Erファイバ増幅器133は、単一周波数ポンプレーザ135を設けた波長分割多重(WDM)結合器134を介してポンピングされる。Erファイバレーザからパルス伝送を行う全てのファイバが偏光維持性を有しており、また、システムの最適な安全性を確保するべく、偏光位置方式にて相互に繋がれていることが理想的である。負分散Erファイバ増幅器133からの出力が高非線形ファイバ135に注入される。高非線形ファイバ135は、スプライス136、137によってシステム内の他の部分に接続されている。次に、高非線形ファイバの出力が波長可変光ファイバ138の偏光維持ピグテールに永久接続されている。システムの出力を矢印139で示している。
【0066】
高非線形ファイバ135は、分散が平坦化されたファイバであり、−1〜−10ps/kmにおける1560nmの分散値を有することが好ましい。即ち、高非線形ファイバはソリトン支持型であり、遠隔通信に使用される標準的な伝送ファイバと比較して負分散値が低減されていることが好ましい。そのため、高非線形ファイバ内の4波混合が、1050nm付近、及び3000nm付近のスペクトル出力を一斉に生成することができ、この場合、長波出力がファイバ吸収によって大幅に減衰される。1μm波長領域内の青色シフトされた出力を、ここではアンチストーク出力と呼ぶ。
【0067】
正分散ファイバ132は正チャープパルスを生成し、次に、負分散ファイバ133がこの正チャープパルスを増幅すると同時に圧縮する。負チャープファイバ内で正チャープパルスを増幅することにより、負分散ファイバ内におけるパルス分裂の閾値を最小化でき、最大パルスエネルギーで圧縮されたパルスを生成することができる。
【0068】
これを図9Bでさらに示す。線140は、負分散ファイバ141内で増幅された正チャープパルスの一時的なプロファイルを示す。負分散ファイバ141の出力部において、線142で概略的に示す、一時的なプロファイルを有する圧縮及び増幅されたパルスが生成される。ファイバ141への入力部におけるパルスチャープと、ファイバ141の長さは、線形増幅後に、ファイバ141の出力部にて最適に圧縮されたパルスが得られるように選択されることが好ましい。
【0069】
図9Aによる実際のシステムデモンストレーションでは、Erレーザが、繰り返し率70MHz、平均電力5mWにて、12nmのスペクトル帯域幅を有する1.5ピコ秒の正チャープパルスを生成する。これにより、ファイバ132は省略された。コア直径9μm、長さ1.5mの負分散ファイバ133内で、パルスが100mWの電力レベルに増幅された。長さ12cmの高非線形ファイバ135は、1050nmの波長領域内でスペクトル生成を行うのに十分であった。図10に、フィルタ138を使用せずに測定した、アンチストーク周波数シフトされたスペクトルを示す。30nmのスペクトル帯域幅を有する、1048nmにて中心決めされたアンチストークパルスが得られた。1000〜1100nmから積分された平均電力は約3mWであった。帯域幅10nmのスペクトルフィルタ138を使用した場合でも、1040〜1060nmの波長領域内で、900μWを超える平均出力電力が得られた。この出力電力は、典型的なWレベルYbファイバ増幅器のシーディングに用いるのに理想的であり、この場合に必要な平均シード電力はたった100〜300μWである。ポンプレーザ135からのポンプ電力の変化がアンチストーク周波数シフトされたスペクトルを変化させたことは確かだが、しかし、これらの変化が比較的複雑であり、ポンプ電力に線形依存するものではなかった点に留意すること。そのため、調整可能なレーザの場合には、ポンプレーザ135からのポンプ電力を固定し、波長可変光フィルタ138を調整することが好ましい。
【0070】
これ以外に、近似帯域幅制限された600フェムト秒のパルスを、長さ1.5mの負分散Er増幅器133の入力部において使用することに基づいたシステム概念も、1050nm近い、アンチストーク周波数シフトされたパルススペクトルを生成した点に留意すること。しかし、負分散Er増幅器133の入力部に近似帯域幅制限されたパルスを使用する場合には、増幅器133内のソリトン自己周波数シフトが防止されず、その結果、増幅器133内で増幅されたパルススペクトルが、ラマンシフトされたスペクトル成分とシフトされないスペクトル成分に分裂する。この増幅器133内におけるラマンシフト、及びパルス分裂から追加された雑音が、アンチストーク周波数シフトされた出力内にさらなる雑音を生成して、1050nm近い出力の使用を本質的に不能にする。
【0071】
前述した本発明の好ましい実施形態の記述は、例証及び説明の目的で提示されたものである。本発明を開示したこの形式に徹底または限定するものではなく、上述の示唆を考慮した変更及び応用が可能であり、またこれらは本発明を実施することで得られる可能性がある。実施形態は、本発明の原理を説明するべく、また、当業者が本発明を多くの実施形態において、考案された特定の使用に適した多くの改良と共に使用できるようその実用的な用途を説明するべく選択及び記述されている。ここで挙げた全ての米国特許、公報、出願の全体は、本願明細書に、恰も全て包含されるかのように組み込まれる。
【0072】
本発明の特定の実施形態のみを特筆したが、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、これに対し多くの変更を加えられることは明白である。また、ここで挙げた略称は、単に明細書と請求項の読み易さを拡張する目的でしようされたものである。これらの略称は、使用した用語の一般性を低減させるものではなく、請求項の範囲をここで述べた実施形態に限定するものとして解釈されるべきではない点に留意すること。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ファイバ格子パルスストレッチャーと非偏光維持型フォトニック結晶パルスコンプレッサとに基づいたチャープパルス増幅システムの概略構成図である。
【図2A】フォトニック結晶パルスストレッチャーと非偏光維持型フォトニック結晶パルスコンプレッサとに基づいたチャープパルス増幅システムの概略構成図である。
【図2B】パルス伸張及び再圧縮に使用した場合の、フォトニック結晶ファイバのフォトニックバンドギャップのほぼ最適な場所を示す図である。
【図3】ファイバ格子パルスストレッチャーと非偏光維持型フォトニック結晶パルスコンプレッサに基づいたファイバベースのチャープパルス増幅システムの概略構成図である。
【図4】フォトニック結晶ファイバコンプレッサに基づく特定のErファイバベースのチャープパルス増幅システムで取得した再圧縮済みパルスの自己相関である。
【図5A】非線形電力増幅器内で自己位相変調を介した3次分散の制御を可能にする、ファイバパルスストレッチャー及び従来型のバルク型格子パルスコンプレッサの波長可変光フィルタとの共用に基づく特定のYbファイバベースのチャープパルス増幅システムの図である。
【図5B】高次の分散を補償する補償装置の別の実施形態である。
【図6A】ファイバベースのチャープパルス増幅システムの一部である特定のYb電力増幅器内に注入された典型的な最適なパルススペクトルを示す。
【図6B】ファイバベースのチャープパルス増幅システムの一部である特定のYb電力増幅器の出力部における典型的なパルススペクトルを示す。
【図6C】ファイバベースのチャープパルス増幅システムの一部である特定のYb電力増幅器の圧縮された出力部にて取得された典型的な自己相関トレースを示す。
【図7A】ファイバベースのチャープパルス増幅システムの一部である特定のYb電力増幅器の圧縮された出力部で、パルスエネルギー10μJ及び2μJで取得された典型的な自己相関トレースを示す。
【図7B】ファイバベースのチャープパルス増幅システムの一部である特定のYb電力増幅器の出力部で、パルスエネルギー10μJ及び2μJで取得された典型的なパルススペクトルを示す。
【図7C】図7A、図7Bの場合と同様にパルスエネルギー10μJ及び2μJで、ファイバベースのチャープパルス増幅システム内に使用されているYb電力増幅器の出力部にて取得された論理的に算出したパルススペクトルを示す。
【図8】非線形ハイパワーYb増幅器内の3次分散を制御するために使用される典型的なYb増幅器利得スペクトルに対する最適なパルススペクトルを示す。
【図9A】短パルスYbファイバ増幅器のシーディングを行うためにアンチストーク周波数シフトファイバと共に使用された、最適なモードロックEr発振器増幅器システムの図である。
【図9B】安定したアンチストーク周波数シフトの最適な条件を示す図である。
【図10】アンチストーク周波数シフトされたErファイバレーザによって取得した最適なスペクトルの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバチャープパルス増幅システムであって、
シード光源と、
前記シード光源から出力されたパルスを時間的に伸張するパルスストレッチャーと、
キュービコンパルス増幅器として構成された非線形の増幅器と、
パルスコンプレッサ
とを備えており、前記増幅器内で前記伸張されたパルスは自己位相変調を受け、前記自己位相変調のレベルは、前記パルスストレッチャー及び前記パルスコンプレッサの3次分散のレベルによって少なくとも部分的に補償された3次分散のレベルを生成することを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項2】
サブ50ピコ秒パルス用のファイバチャープパルス増幅システムであって、
サブ10ピコ秒パルスを出力する短パルスのシード光源と、
前記シード光源から出力された前記パルスを、少なくとも10倍の幅にまで時間的に伸張するパルスストレッチャーと、
入力パルススペクトルを有するパルスを受信し、出力パルススペクトルを有する増幅されたパルスを出射する少なくとも1つの非線形ファイバ増幅器であって、前記入力パルススペクトルは、前記シード光源から導出されているが、前記シード光源と同一である必要はない、非線形ファイバ増幅器と
2次、3次、及び高次の色分散のレベルを有するパルスコンプレッサ
とを備え、前記ファイバ増幅器は、前記出力パルススペクトルが、前記入力パルススペクトルに関連して波長シフトされるように構成されており、前記ファイバ増幅器は、前記パルスストレッチャー及びコンプレッサの前記3次分散の少なくとも一部を自己位相変調によって補償することを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの増幅器は、キュービコンパルス増幅器として構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光学パルス用増幅システム。
【請求項4】
サブ50ピコ秒パルス用のファイバチャープパルス増幅システムであって、
サブ10ピコ秒パルスを出力する短パルスのシード光源と、
前記シード光源から出力された前記パルスを時間的に10倍以上に伸張するパルスストレッチャーと、
出力パルススペクトルがその入力パルススペクトルに対して波長シフトされるように構成された少なくとも1つの非線形ファイバ増幅器と、
パルスコンプレッサ
とを備え、前記ファイバ増幅器はさらに、前記パルスストレッチャー及びコンプレッサの3次分散を自己位相変調によって少なくとも部分的に補償することを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項5】
サブ50ピコ秒パルス用のファイバチャープパルス増幅システムであって、
サブ10ピコ秒パルスを出力する短パルスのシード光源と、
前記シード光源から出力されたパルスを少なくとも10倍に時間的に伸張するパルスストレッチャーと、
前記伸張されたパルスを受信し、増幅されたキュービコンパルスを出力する少なくとも1つのファイバ増幅器と、
2次、3次、及び高次の色分散のレベルを有するパルスコンプレッサ
とを備え、前記ファイバ増幅器は、前記キュービコンパルスが、前記パルスストレッチャー及び前記パルスコンプレッサからの前記3次分散のレベルによって少なくとも部分的に補償された非線形パルスチャープを生成することを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項6】
自己位相変調のレベルが、0.3〜10πの範囲内であることを特徴とする請求項5に記載のファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項7】
ファイバチャープパルス増幅システムであって、
シード光源と、
前記シード光源から出力されたパルスを時間的に伸張するパルスストレッチャーと、
キュービコンパルス増幅器として構成された非線形の増幅器と、
パルスコンプレッサ
とを備え、前記増幅器内で増幅された前記パルスは自己位相変調を受けるため、前記パルスの出力スペクトルの増幅変調には、その入力スペクトルに比べて大きな増加が観察可能であることを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項8】
サブ50ピコ秒パルス用のチャープパルス増幅システムであって、
サブ10ピコ秒パルスを出力する短パルスのシード光源と、
前記シード光源から出力されたパルスを、10ピコ秒よりも大きな幅に時間的に伸張するパルスストレッチャーと、
入力パルススペクトルを有するパルスを受信し、特定の出力パルススペクトルを有する増幅されたパルスを出射する少なくとも1つのファイバ増幅器であって、前記入力パルススペクトルは前記シード光源から導出されているが、前記シード光源と同一である必要はない、ファイバ増幅器と、
2次、3次、及び高次の色分散のレベルを有するパルスコンプレッサ
とを備え、前記ファイバ増幅器は、前記出力パルススペクトルが前記入力パルススペクトルに対して実質的に利得狭窄されるように構成されており、前記ファイバ増幅器は、前記パルスストレッチャー及びコンプレッサの前記3次分散を少なくとも部分的に補償することを特徴とするファイバチャープパルス増幅器。
【請求項9】
前記ファイバ増幅器内で前記伸張されたパルスは自己位相変調を受け、
前記自己位相変調は、前記パルスストレッチャー及びパルスコンプレッサからの前記3次分散のレベルを少なくとも部分的に補償する3次分散のレベルを生成することを特徴とする請求項8に記載のファイバチャープパルス増幅器。
【請求項10】
前記レベルの自己位相変調は0.3〜10πの範囲内にあることを特徴とする請求項9に記載のファイバチャープパルス増幅器。
【請求項11】
前記レベルの自己位相変調は、前記入力パルススペクトルに比し、出力パルススペクトルの増幅変調の増加を示すことを特徴とする請求項9に記載のファイバチャープパルス増幅器。
【請求項12】
ファイバ増幅器内に自己位相変調が存在する状態で、ファイバチャープパルス増幅システムから高品質パルスを生成する方法であって、
前記ファイバ増幅器内に実質的な利得プリングが生じるように、入力パルススペクトルを有し伸張されたパルスを、選択して前記ファイバ増幅器内へ入力し、
前記利得プリングが、前記パルススペクトルの平均光周波数の実質的なスペクトルシフトを生成し、
前記圧縮されたパルスの品質を、自己位相変調によって向上させることを特徴とする方法。
【請求項13】
ファイバ増幅器内に自己位相変調が存在する状態で、ファイバチャープパルス増幅システムから高品質パルスを生成する方法であって、
前記ファイバ増幅器内に実質的な利得狭窄が生じるように、入力パルススペクトルを有し伸張されたパルスを、選択して前記ファイバ増幅器内へ入力し、
前記利得狭窄が、前記入力パルススペクトルよりも狭いスペクトル幅を有する増幅したパルススペクトルを生成し、
前記圧縮されたパルスの品質を、自己位相変調によって向上させることを特徴とする方法。
【請求項14】
ファイバ増幅器内に自己位相変調が存在する状態で、ファイバチャープパルス増幅システムから高品質のパルスを生成する方法であって、
前記ファイバ増幅器内に実質的な利得プリング及び利得狭窄を生じさせるように、入力パルススペクトルを有し伸張されたパルスを、選択して前記ファイバ増幅器内へ入力し、
前記利得プリングが、前記パルススペクトルの平均光周波数の実質的なスペクトルシフトを生成し、
前記利得狭窄が、前記入力パルススペクトルよりも狭いスペクトル幅を有する増幅されたパルススペクトルを生成し、
前記圧縮されたパルスの品質を、自己位相変調によって向上させることを特徴とする方法。
【請求項15】
高出力の導波路チャープパルス増幅システム内で出力パルス品質を向上させる方法であって、
前記出力パルス品質はパルスエネルギーの増加と共に向上し、
前記パルスエネルギーの増加はさらに、前記導波路チャープパルス増幅システム内に0.3〜10πレベルの自己位相変調を生じさせる方法。
【請求項16】
ファイバ増幅器内に自己位相変調が存在する状態で、高出力の導波路チャープパルス増幅システム内で出力パルス品質を向上させる方法であって、
入力パルススペクトルを有し伸張されたパルスを、選択して前記ファイバ増幅器内に入力し、
前記入力パルススペクトルが、シード光源及び、前記シード光源と前記ファイバ増幅器の間に挿入された光フィルタによって調整され、
自己位相変調によって前記圧縮パルスの品質が増加するように、前記シード光源の光帯域幅及び中心波長と、前記フィルタの伝送帯域幅及び中心波長とを選択する
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
ファイバチャープパルス増幅システムであって、
短パルスのシード光源と、
前記シード光源から出力されたパルスを時間的に伸張させるパルスストレッチャーと、
キュービコンパルス増幅器として構成された少なくとも1つのファイバ増幅器と、
前記ファイバ増幅器内の自己位相変調によって部分的に修正された3次分散のレベルを有するパルスコンプレッサ
とを備えることを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項18】
ファイバチャープパルス増幅システムであって、
短パルスの光源と、
前記光源から出力されたパルスを時間的に伸張するパルスストレッチャーと、
入力パルススペクトルを有するパルスを受信し、シフトされた出力パルススペクトルを有し増幅されたパルスを出射する、少なくとも1つの非線形ファイバ増幅器と、
3次色分散のレベルを有するパルスコンプレッサ
とを備え、前記非線形ファイバ増幅器は、少なくとも前記コンプレッサの前記3次分散を少なくとも部分的に補償するタイプのものであり、0.3〜10πの大きな自己位相変調形式で動作することができることを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項19】
前記非線形ファイバ増幅器は、非線形のドープされていないファイバと線形増幅器であることを特徴とする請求項18に記載のファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項20】
ファイバチャープパルス増幅システムであって、
伸張された光パルスを生成することができる短パルス光源システムと、
入力部において前記伸張したパルスを受信し、大きな自己位相変調方式にて動作可能で、出力スペクトル内で増幅リプルの増加によってパルス品質を向上させたパルス出力を生成する電力増幅器
とを備えることを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項21】
ファイバチャープパルス増幅システムであって、
伸張された光パルスを生成できる短パルス光源システムと、
入力部にて前記伸張されたパルスを受信し、大きな自己位相変調方式にて動作可能で、パルス品質を向上させるパルス出力を生成することができ、高次の分散が前記システム内のパルスエネルギーと共に変化する電力増幅器
とを備えることを特徴とするファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項22】
ファイバベースの高次分散制御システムであって、
所与の量の高次の分散を有する、伸張したパルスを生成する光パルス源モジュールと、
増幅中に前記パルスを自己位相変調し、該自己位相変調が3次分散のレベルを生成する非線形キュービコンパルス増幅器と、
所与量の高次の分散を有するパルスコンプレッサ
とを備え、非対称なパルス増幅成形と、その後の前記非線形キュービコンパルス増幅器内での前記自己位相変調とによって、出力の分散が制御されることを特徴とするシステム。
【請求項23】
前記シード光源はバルク型固体モードロックレーザであることを特徴とする請求項1に記載のファイバチャープパルス増幅システム。
【請求項24】
前記シード光源はファイバモードロックレーザであることを特徴とする請求項1に記載のファイバチャープパルス増幅システム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−517460(P2008−517460A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536674(P2007−536674)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/008626
【国際公開番号】WO2006/057655
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(593185670)イムラ アメリカ インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】