全抗ラジカル防御ポテンシャルの決定方法および人ならびに動物の予防治療に特に使用する方法
この発明は、生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で(インビトロ)決定する方法に関する。この方法は、フリーラジカルを細胞溶解の手段として使用し、その細胞溶解を評価することからなり、得られる反応媒体中にフリーラジカル発生体からフリーラジカルを放出する前もしくは後に、細胞物質を加水分解することを特徴としている。この発明方法は、人、動物ならびに植物の健康状態を生体外で追跡し、ストレスを管理し、老化を遅延させるのに有用である。抗ラジカル物質は海綿状脳症に対して特に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生物の抗ラジカル防御を評価することに関する。さらに詳細には、この発明は、生物の抗ラジカル防御ポテンシャルまたは物理媒体(例えば、X線、β線、γ線、紫外線など)、化学媒体または生物媒体によって人に対して生起される変化を決定する方法およびこの方法を、例えば、人ならびに動物の予防治療に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカルは、非常に高い反応性を有する酸化物質であり、急性現象(例えば、精神的外傷、虚血など)に重要な役割を果たしていると共に、数多くの慢性病理学的状態に関与している。
【0003】
生物は、正常な生物学的状態では、生体内においてフリーラジカルを産生するとともに、フリーラジカルから生体を防御するために必要な手段として、主に酵素的ならびに/もしくは化学的解毒システムを備えていて、そして全体として体内において産生されるフリーラジカルと解毒システムとの間で平衡を保っている。
【0004】
しかしながら、例えば紫外線、ストレス、汚染、アルコール中毒、喫煙などの種々の破壊的因子によって、生体内におけるフリーラジカルの形成が増加し、病理的状態が生起される。当然ながら、生物は、その解毒システムによってフリーラジカルから防御されているけれども、これらのシステムは破壊されることがあり、その平衡が破壊されると遺伝的因子、環境やライフスタイルなど、つまり生体の抗ラジカル防御力に直接に関わってくる。
【0005】
また、フリーラジカルは有害な効果を及ぼす。つまり、フリーラジカルは、細胞レベルでは、リン脂質メンブレンの多不飽和脂肪酸を過酸化し細胞毒性の過酸化物を生成して、炎症ならびに細胞死を生起し、さらに酸素化されたフリーラジカル中間体が特に発がんや心臓血管疾患を活性化すると共に、細胞外レベルでは、主要成分を分解して、例えば皮膚などの細胞の透過性や構造を変性する。かかる劣化は皮膚の老化ならびに一般的な老化を促進する。
【0006】
フリーラジカルからの防御因子は本質的には2つの下記カテゴリーに分類される。
酵素的カテゴリー:スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼセレングルタチオンパーオキシダーゼ;
化学的カテゴリー:フリーラジカルをブロックするスカベンジャーと、フリーラジカルの効果を制限する抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、セレン(Se)、システイン、メチオニン、ユビキノン、コエンザイムQなど)。
【0007】
フリーラジカルによって細胞物質、例えば赤血球を溶解して、試験対象の化学もしくは物理物質の抗酸化(つまり、抗ラジカル)活性を評価する方法は知られている(特許文献1)。
【0008】
上記文献記載の方法は次の通りである。つまり、この方法は、
(1)フリーラジカル発生体を、適切な液状生物媒体中で、細胞物質(I)と接触させる工程であって、該細胞物質が、(a)ヒト、動物ならびに植物細胞;(b)上記細胞のフラグメント;および(c)リポソームを含む合成壁からなる群から選択され、かつ、物理もしくは化学媒体(II)とはじめに接触され、フリーラジカルによる溶解に際して放出できる着色料からなっている細胞物質(I)との接触工程と、
(2)上記フリーラジカル発生体からフリーラジカルの放出を生起させる工程と、
(3)上記細胞物質の溶解を、上記物理もしくは化学媒体と接触させてなかった上記細胞物質を含有するコントロールサンプルに対する光学濃度を測定することによって評価する工程と、から構成されている。
【0009】
上記工程(3)における溶解を評価するために推奨される1つの方法として、細胞物質、例えば上記物質の細胞、好ましくは赤血球の50%を溶解するのに要した時間(T1/2)を特定する方法を使用するのがよい(この点については、上記特許文献1、4頁、52−55行を参照)。
【0010】
上記既知方法は、全血から単離された赤血球の代わりに、希釈したヒトもしくは動物の全血を用いて標準化されている。この標準化方法は、「KRLキット」(フリーラジカルキット)という商品として販売されている。このキットは、例えば、(i)ヒト、動物もしくは植物の細胞組織の抗ラジカル防御力、または(ii)物理、化学もしくは生物媒体の持ち得る抗ラジカル性質を決定するために使用される。さらに詳細には、このKRL試験は、(1)(a)適切なバッファ媒体中に前もって希釈した全血を、コントロールとして、(b)試験対象媒体(例えば、細胞物質、物質もしくは組成物)と、(c)フリーラジカル発生体と、に接触させ、(2)フリーラジカルの放出を生起させ、(3)得られる反応媒体の吸光度を測定することによるコントロール全血からの赤血球の溶解速度をモニターし、次いで、(4)モニターして得られた値を、試験対象媒体を含まない同一条件下で決定したコントロール全血の値と比較することによって行うようになっている。
【0011】
上記方法の変法として、この標準化方法は、ヒトもしくは動物のコントロール全血に対して、それぞれの全血の抗ラジカルポテンシャルを評価するのにも使用することができる。
【0012】
KRL試験によると、健常なヒトや動物においては、平均T1/2値は抗ラジカル防御力を表していることは注目される。最近の報告によると、この平均値は平均領域であるかまたは平均領域内に存在することが確認されている(非特許文献1)。この領域以下では、ヒト、動物または植物検体は、抗ラジカル防御が不十分であるという点で、病理学的もしくは前病理学的状態であると考えられる。
【0013】
KRL試験の有効性にかかわらず、全血におけるある種の異常がいくつかの特定の事例において観察されている。つまり、正常値以下(つまり、赤血球の場合のように平均の正常値以下)のT1/2値が期待されたのに対して、上記正常値と同一かまたはより大きな値が得られることが可能なことが判明している。
【0014】
したがって、糖尿病の患者では、全血で評価したT1/2値は、健常者の値と一般的には類似もしくはそれよりも大きい。また、新たに照射したオニオンの抗ラジカル抵抗性は、照射していないオニオンよりも大きい。これらの異常がこの発明の根拠となっている。
【0015】
さらに、酸化剤、例えばH202やフリーラジカル(2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドからなるフリーラジカル発生体に由来する)によってもたらされる(ヒト、ウシ、ブタ、ニワトリ、キジ、ラット、ネコなどの全血から単離した)赤血球の溶血を、乳酸脱水素酵素(LDH)活性もしくは上清中のヘモグロビン含量を測定することによってモニターすることも知られている(非特許文献2)。さらに詳細には、ここでモニターするパラメーターは、LDH活性の減少またはヘモグロビン含量の減少であってもよい。しかしながら、この非特許文献2は、例えばウマ、ウシ、ブタならびにアヒルで得た本発明者らの未発表の結果を確認している。しかしながら、この文献には、この発明による全体の抗ラジカル抵抗性を決めるための操作順位、つまり、加水分解、フリーラジカルの放出およびフリーラジカルによって引き起こされる溶血の評価については一切記載も示唆もされていない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第418335号公報
【非特許文献1】Lesgards, J-F., et al.: Environmental Health Perspectives, 110 (no. 5), pp. 1-9 (2002)
【非特許文献2】Stagsted, J., et al.: Free Radical Research, 2002, 36 (no. 7), pp. 779-789
【発明の開示】
【0016】
この発明の出発点は仮説に基づいている。その仮説とは、生物は、即座に入手できる抗ラジカルリザーブ(貯蔵物質)、つまり、フリーラジカルショックもしくは酸化的ストレスに対して直接的に可動する抗ラジカルポテンシャルがあるものと、可動可能であり(しかしながら、即座には直接的にアクセスできない)かつ生物によって通常蓄積されるかもしくは生物中に固定されている抗ラジカルリザーブと、から構成されていて、生物の全体の抗ラジカルポテンシャル(全抗ラジカルポテンシャル)は、蓄積されていて即座に入手可能な抗ラジカルリザーブと、蓄積されている可動可能な抗ラジカルリザーブとによって表される。
【0017】
この発明の目的は、上記異常を救済する目的で、抗ラジカル防御ポテンシャルを決定できる方法を提供することである。
【0018】
この発明の別の目的は、ヒト、動物(例えば温血動物)ならびに植物によるフリーラジカルに対する不十分な抵抗性に関連した病理学的もしくは前病理学的状態をスクリーニング、予防またはモニターする際の課題に対する新規な技術的解決法を提供することである。
【0019】
(a)ヒトや動物においては、変形性神経疾患などの不可逆的病理学的状態の発現の防止;(b)家畜動物においては、ヒトの食品に対して危険を及ぼしかねない動物の選別(遅くとも屠殺場での選別)および運送ならびに飼育方法によってもたらされるストレスの評価;(c)植物においては、植物の栄養価を最適化するための生育ならびに保存方法のモニターする必要性がある。
【0020】
この発明の目的の1つは、種による抗ラジカル防御力の正常レベル(または正常範囲)を特定することである。別の目的は、種による抗ラジカル防御を規制するシステムの評価を可能にすることである。
【0021】
上記仮説は下記に説明するように正しいことが判明した。その結果、先行技術の異常を救済するとともに、所望の目的を達成することが可能である。
【0022】
この発明の第1の態様は、生物または物理、化学、もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で(インビトロ)決定する方法を提供することであって、該方法は、細胞溶解を生起して、該細胞溶解を評価するための手段として、フリーラジカルを使用することに関するものであり、かつ、得られる反応媒体中へのフリーラジカル発生体からのフリーラジカルの放出前もしくは放出中における細胞物質の加水分解からなっていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る方法は、例えば、生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外での決定に適していて、細胞溶解の生起のための手段としてフリーラジカルを使用することに関する方法であって、該方法は次の工程から構成されていることを特徴とする。つまり、この方法は、例えば、
(α)(i)生物からの細胞組織、細胞もしくは細胞フラグメントからなる第1の細胞物質のサンプルまたは(ii)物理、化学もしくは生物媒体に関連する細胞組織、細胞、細胞フラグメントもしくはリポソームを含む合成壁からなる参照物質である第2細胞物質のサンプルを加水分解する工程と;
(β)上記加水分解の間もしくは後に、上記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる工程と;
(γ)上記フリーラジカル発生体からフリーラジカルを放出させる工程と;
(δ)上記生物または物理、化学もしくは生物試験媒体の全抗ラジカルポテンシャルを評価するために、コントロールサンプルに対して、第1もしくは第2の細胞物質の溶解を光学的測定法でモニターする工程と、から構成されている。
【0024】
この方法に使用される光学的測定法は光学分光計によって行うことができる。この光学的測定法においては試験媒体の光学濃度または吸光度を測定するのが好ましい。
【0025】
この発明に係る方法の変法においては、物理、化学もしくは生物媒体の抗ラジカル抵抗力を評価するために、上記第2の細胞物質をフリーラジカルによって分解可能な着色料によって置換することができる。この変法は、
(α)フリーラジカルによって分解可能であり、かつ、物理、化学もしくは生物媒体に関連する着色料のサンプルを加水分解する工程と;
(β)上記加水分解の間もしくは後に、上記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる工程と;
(γ)上記フリーラジカル発生体からフリーラジカルを放出させる工程と;
(δ)上記物理、化学もしくは生物試験媒体を含む上記サンプルの全抗ラジカルポテンシャルを評価するために、コントロールサンプルに対して、上記着色料の溶解を光学的測定法でモニターする工程と、から構成されている。
【0026】
この発明の第2の態様は、この発明の方法を、異常な抗ラジカル防御ポテンシャルに関連する生体の病理学的もしくは前病理学的状態の生体外で(インビトロ)スクリーニング、予防もしくはモニターすることに使用することからなっている。
【0027】
この観点から、かかる使用は、例えば、変形性神経疾患、例えば、
・海綿状脳症、例えば、ウシ海綿状脳症(BSE、狂牛病)、ヒツジ海綿状脳症(OSE、スクレイピー)、ヒト海綿状脳症(CJD、クロイツフェルトーヤコブ病)など;
・アルツハイマー病;ならびに
・パーキンソン病
などの疾患に関する。
【0028】
この発明は新規な用途を提供することも目的としており、その用途は、抗ラジカル物質を、海綿状脳症、アルツハイマ−病ならびにパーキンソン病に関連するヒトもしくは動物の疾患治療における予防的適用を意図した医薬品の製造に使用することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】血液細胞の細胞溶解による光学濃度(OD)または吸光度の変化の機構を説明する説明図。
【図2】光学濃度 (OD1/2) ならびにその他のパラメーターを決定する方法を説明するグラフ。グラフにおいて、開始ODは最初から5つの値の平均値として、また最終ODは最後から5つの最小値の平均値として測定し、OD1/2は次式として算出した:OD1/2値 = 0.5 x (開始OD値 + 最終OD値)。T1/2値は、OD1/2を通過する水平線と曲線OD=f(T)との交差に対応する時間であり;ラジカル溶解の最大割合(Vmax)は屈折点(OD1/2、Tb)近辺の曲線の勾配として測定され;潜在時間(LT、lag time)は開始OD線とVmax線との交差に対応する時間として決定される。
【図3】この発明の前加水分解をしないでケルセチン(quercetin)とそのグリコン(glycone)同族体であるイソケルシトリン(isoquercitrin)の濃度を増加した(0から100pM)ときのそれらの吸光度カーブ=f(T)を示すグラフ。
【図4】図3の曲線に基づいた前加水分解なしでプロットしたT1/2=f曲線(ケルセチンもしくはイソケルシトリンの濃度)を示すグラフ。
【図5】前酵素的加水分解をして得られたケルセチンならびにイソケルシトリンのT1/2=f曲線(濃度)を示すグラフ;図5の曲線と図4の曲線を比較して、この発明の前加水分解の値を表している。
【図6】葉質肥料でワインを処理した場合の未処理ワインに対する影響を示す図。
【図7a】青色着色料の光学濃度(OD)の直線性を示すグラフ。このグラフは、T=0(T0)時点において、フリーラジカルの作用により分解可能な青色着色料の光学濃度(OD)は、フリーラジカル発生体(FRG)が関与する場合でも、関与しない場合でも、該着色料の濃度がその濃度とともに、所定の着色料濃度に対して直線的に増加することを示している。
【図7b】赤色着色料の光学濃度(OD)の直線性を示すグラフ。このグラフは、T=0(T0)時点において、フリーラジカルの作用により分解可能な赤色着色料の光学濃度(OD)は、フリーラジカル発生体(FRG)が関与する場合でも、関与しない場合でも、該着色料の濃度がその濃度とともに、所定の着色料濃度と対して直線的に増加することを示している。
【図7c】フリーラジカル発生体に由来するフリーラジカルの経時的放出の関数としての青色着色料の光学濃度の変化を示すグラフ。
【図7d】フリーラジカル発生体に由来するフリーラジカルの経時的放出の関数としての赤色着色料の光学濃度の変化を示すグラフ。
【図7e】フリーラジカルを放出するフリーラジカル発生体の濃度の関数としての青色着色料の光学濃度変化を示すグラフ。
【図7f】フリーラジカルを放出するフリーラジカル発生体の濃度の関数としての赤色着色料の光学濃度変化を示すグラフ。
【図8a】リザーブ放出(従来技術のKRL試験)なしでの4種類のキジ(Gallinaceae:A1,A2,B1,B2)の全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8b】リザーブ放出(従来技術のKRL試験)なしでの4種類のキジ(Gallinaceae:A1,A2,B1,B2)の赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8c】リザーブ放出(従来技術のKRL試験)なしでの4種類の家禽キジ(Gallinaceae:A1,A2,B1,B2)の血清の抗ラジカル効果を示すグラフ。
【図8d】この発明におけるグルコシダーゼの加水分解によるリザーブ1(R1)放出後の4動物グループの全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8e】この発明におけるグルコシダーゼによる加水分解によるリザーブ1(R1)放出後の4動物グループの赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8f】この発明におけるスルファターゼによる加水分解によるリザーブ2(R2)放出後の4動物グループの全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8g】この発明におけるスルファターゼによる加水分解によるリザーブ2(R2)放出後の4動物グループの赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8h】この発明におけるグルクロニダーゼによる加水分解によるリザーブ3(R3)放出後の4動物グループの全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8i】この発明におけるグルクロニダーゼによる加水分解によるリザーブ3(R3)放出後の4動物グループの赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図9a】赤血球に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図9b】全血に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図9c】赤血球に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図9d】全血に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図10a】発明の方法をワイン劣化のモニターに使用した場合の劣化変化を示すグラフ。
【図10b】発明の方法をワイン劣化のモニターに使用した場合の別の劣化変化を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明によれば、上記異常は生物の抗ラジカルリザーブの異常な可動性によると説明される。つまり、糖尿病においては、(i)全血の抗ラジカル抵抗性は異常に高く、このことが抗ラジカルリザーブの血清中における異常な可動性を反映している。また、(ii)かかると糖尿病において進展するオキシダントストレスの観点からすれば、グルコシル化反応により脆弱になる赤血球の抗ラジカル抵抗性は異常に低くなっている。
【0031】
この発明によれば、可動性抗ラジカルリザーブは、例えば、抗酸化化合物の重合化および/または上記抗酸化化合物と、異なる糖類(例えば、グルコース、ラムノース、グルクロン酸など)、アルコール類ならびに有機酸もしくは無機酸(例えば硫酸など)との結合から上昇すること、また可動性抗ラジカルリザーブは、例えば細胞壁中、さらに詳細には細胞を浮遊させる液体中に有機酸ならびに/もしくは硫酸類のポリマー(例えばポリフェノールなど)、エーテルまたはエステルの形状で生物中に貯蔵されることが考えられる。
【0032】
フリーラジカルによる攻撃の場合、生物に貯蓄されたこれらの可動性抗ラジカルリザーブは直接には利用されない。これらのリザーブは、インヒビターならびにアクチベータのシステムを有するカスケード形式(例えば、ヘモスターシス(haemostasis)カスケードなど)の複雑な酵素機構によって放出され、最終的には平衡を達成する。得られた平衡が正常な平衡でないときは、このことは病理学的または前病理学的状態を示している。
【0033】
この発明によれば、貯蔵された可動性抗ラジカルビザは加水分解によって放出される。この加水分解の工程(α)は、適切な媒体、例えばバッファ中で15から60℃の温度で実施される。なお、この工程は上記工程(β)の前でも、または上記工程(β)と同時に行ってもよい。後者の場合には、時間を節約できるが、上記加水分解がフリーラジカルによる第1のもしくは第2の細胞物質の溶解前に終了できないのでコントロールを使用する必要がある。
【0034】
この加水分解としては、(i)酵素加水分解、(ii)酸もしくはアルカリ加水分解または(iii)物理媒体、例えば放射性媒体による分解が挙げられる。
【0035】
酵素加水分解は、オシダーゼ類(例えばグルコシダーゼ類、ラムノシダーゼ類、グルクロニダーゼ類など)、デアルキラーゼ類(例えばデメチラーゼ類など)、エステラーゼ類、スルファターゼ類ならびにそれらの混合物の群から選択される物質を用いて、少なくとも40分間(例えば、加水分解がフリーラジカル界に曝露中に進行する時間)、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは2時間、20ないし40℃の温度で行うのがよい。この発明に適している酵素混合物としては、例えば、グルコシダーゼ+デメチラーゼ+スルファターゼの混合物またはグルコシダーゼ+グルクロニダーゼ+スルファターゼの混合物が挙げられる。
【0036】
酸加水分解は、少なくとも40分間(例えば、加水分解がフリーラジカル界への曝露中に進行する時間)、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは2時間、40ないし60℃、好ましくは50℃の温度、pH5.5もしくはそれ以下のpHで行うのがよい。
【0037】
アルカリ加水分解は、必須ではないが、エステルならびにラクトン機能の分裂に関係していて、少なくとも40分間(例えば、加水分解がフリーラジカル界への曝露中に進行する時間)、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは2時間、50℃の温度、pH8.5もしくはそれ以上のpHで行うのがよい。
【0038】
この発明の加水分解は、例えば、農業作物を貯蔵するために使用されるような、γ線や、より好ましくはβ線などの照射線のような物理媒体による分裂にて行うのがよい。かかる物理媒体は、十分な期間適用されるフリーラジカル界であってもよい。したがって、この加水分解は、エステル基(つまりアシル基)、エーテル基ならびにスルフエート基を分解したり、または、グリコン類からオシド(oside)フラグメントを分離することからなり、生物またはその生物から由来する細胞物質を照射することになる。
【0039】
この発明の方法に関与する細胞物質は、(a)細胞組織(つまり、同一もしくは異なる細胞に加えて、自然では細胞が浮遊している液体もしくは血清またはその部分)、例えば、全血など;(b)それらの細胞環境から単離された細胞(ならびに必要に応じて、希釈バッファに再懸濁された細胞);(c)細胞フラグメント(つまり、細胞壁のフラグメントであって、必要に応じて、細胞中に含まれる物質、例えばリポタンパク質などの全てもしくは一部を含んでいてもよい);または、(d)リポソームを含む合成壁などの群から選ばれる。
【0040】
この発明において、工程(a)の加水分解に使用する第1の細胞物質は、上記要素(a)、(b)および(c)から選択するのがよいが、上記要素(a)ならびに(b)が好ましい。この第1の細胞物質は、この発明において生物の全抗ラジカルポテンシャルを評価するために使用するのがよい。
【0041】
第2の細胞物質は、上記要素(a)、(b)、(c)および(d)から選択するのがよいが、同様に上記要素(a)ならびに(b)が好ましい。この第2の細胞物質は、試験対象の物理、化学もしくは生物媒体の可能な抗ラジカル性質を評価するために、または生物の全抗ラジカルポテンシャルを細胞物質(例えば、細胞組織、全血、単離細胞、血清など)に由来する産物によって評価するために使用するのがよい。
【0042】
物理、化学もしくは生物媒体は、第2の細胞物質に関連しているといわれる。このことは、第2の細胞物質が採集される生物にその媒体が混入しているか、または、この発明に係る方法を達成するために、その媒体が第2の細胞物質と接触していることを意味している。
【0043】
物理媒体は、煙、紫外線もしくは有害放射媒体に曝露することができる。また、化学媒体としては、いずれの物質でも、またはフリーラジカルに付与してもよい可能な防御を決定するために、試験することが望まれる化学生成物の関連物質でもよい。
【0044】
生物媒体としては、いずれの物質でも、または生物生成物の関連物質、例えば植物、天然物質の抽出物、血清または、第2の細胞物質を構成する細胞組織もしくは単離細胞とは異なってもいてもよい細胞などが挙げられる。
【0045】
上述したように、第2の細胞物質は、物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル抵抗性を調べるために、フリーラジカルによって分解可能な着色料によって置換してもよい。適切な着色料としては、例えば酸化還元着色料が挙げられる。この発明においては、メチレンブルー(下記実施例において青色着色料として使用されている)とオリゴアントシアニジン抽出物(OPC;下記実施例において赤色着色料として使用されている)は良好な結果を上げている。使用される着色料は、加水分解されるサンプルの加水分解に対して感受性を有していてはならない。例えば、もし着色料がグルクロニダーゼに感受性を有している場合、スルファターゼによる加水分解を行う方法においては使用することができるであろう。
【0046】
上記非特許文献1に記載されているように、好ましいフリーラジカル発生体としては、ゼロ次オーダー(フリーラジカルの放出が経時的に一定である)の動力学(kinetics)もしくは反応率を示すフリーラジカル発生体ならびに、より好ましくは、一次オーダー(フリーラジカルの放出が経時的に直線的である)の動力学もしくは反応率を示すフリーラジカル発生体が挙げられる。この発明において好ましい酸化フリーラジカル発生体としては、例えば、水性媒体中において一次オーダーの動力学を示す2,2'−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドと、油性もしくは有機媒体中において一次オーダーの動力学を示す2,2'−アゾ−ビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)とが挙げられる。フリーラジカルは、それ自体既知の方法、例えば、熱、光(例えば可視スペクトルもしくは紫外光照射など)、プロトン、電子、X線などによってフリーラジカル発生体から放出される。かかる放出は光子照射または加熱によって開始するのが好ましい。例えば、この反応においては、水性媒体中で2,2'−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)を37℃の温度に調整すると、下記反応式に従ってフリーラジカルの放出を開始するのに十分である。
【0047】
【化1】
【0048】
フリーラジカルの放出が開始した後、第1または第2の細胞物質の溶解を光学的にモニターする。さらに詳細には、光学濃度(または吸光度)の変化を時間の関数として観察し、細胞物質50%が溶解した時点に対応するT1/2値(単位:分)を決定する。上述したように、上記細胞物質は細胞組織(例えば全血など)または単離細胞であるのが好ましい。
【0049】
実際には、光学測定は、第1または第2の細胞物質の溶解動力学をモニターするために、自動的に、例えば、50、100、150、200および/または300秒ごとに行なうのがよい。試験媒体(例えば、全血または単離細胞を含有する)の吸光度の変化を、フリーラジカル発生体(例えばAAPH)からのフリーラジカルの放出が生起される瞬間から経時的に測定するとき、次の事項を観察するのがよい。
・初期、つまり吸光度が一定で(かつ相対的に高い)期間;この期間は細胞が溶解されていない潜伏期間である;
・細胞溶解の開始直後、つまり吸光度が直線的に下降する相(対応する曲線の変曲点がT1/2値を決定する);
・全ての細胞が溶解したとき、吸光度は一定になる(かつ相対的に低くなる)。
【0050】
つまり、従来技術のKRL試験を用いて全血を調べたときにT1/2値が上昇しているとき(化2を参照)、
領域「1」は、フリーラジカルに対する保護が低く、病理学的もしくは前病理学的状態に相当している;
領域「N」は、正常平均値の領域であるが、抗ラジカル防御力が惹起しても相殺されない異常な抗ラジカルリザーブ放出によって異常に高い値を有している(糖尿病のような)「擬陽性」結果を含んでいる場合もある;
領域「2」は、可動性抗ラジカルリザーブの重要部分もしくは大部分が異常な放出がなされるためにフリーラジカルに対する保護が高く、生物は、そのリザーブ上を移動するので、病理学的もしくは前病理学的状態に相当している。
【0051】
【化2】
【0052】
他方、この発明によれば、全抗ラジカルポテンシャルは加水分解で評価されるので、T1/2値が上昇しているとき(化3を参照)、フリーラジカルに対する保護が低い異常領域「A」があり、この低保護異常領域は病理学的もしくは前病理学的状態を示している;
領域「Nh」は、正常な平均値であって、健常者からの結果だけを含んでいる(T1/2値が領域Nhの範囲内である値は測定エラーであると考えられる)。
【0053】
【化3】
【0054】
運動している人は、例えば、正常領域Nhが、運動していない人より、練習の繰り返しによってもたらされる例えば酵素的抵抗力が広く;たとえ練習中に一時的に抗ラジカル抵抗力が減少したとしても、運動をしていない人(または時折しか運動をしない人)と違って、正常値の領域内に制御されている。運動をしていない人や時折しか運動をしない人は、試験的運動をするときにも、制御領域外になり、心血管事故のリスクが発生する。
その結果、この発明の方法は、T1/2値が正常平均値の領域Nh内にあるときにはあらゆるリスクを避けることができ、上記異常を除去することができる。
【0055】
T1/2値の他に、上記したように、副次的に、潜伏期間、フリーラジカルによる細胞溶解率(つまり、曲線の勾配)とともに、評価の追加的パラメーターを得るために曲線下の領域を測定することもできる。
【0056】
また、全抗ラジカルポテンシャルはEAR(Efficacite Anti-Radicalaire: Anti-Radical Efficacy)単位で表すことができる。ここで、1EAR単位は、血液1リットルに対するTrolox(登録商標:ホフマン・ラ・ローシユ社)1mMの抗ラジカルパワーに相当する。なお、Trolox(登録商標)は、標準抗酸化物として使用されるビタミンEの水溶性等価物であって、下記の構造式(3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2Hー1−ベンゾピランー6−オール)を有している。
【0057】
【化4】
【0058】
健常者の血液1リットルに対して、下記式が適用される。
1 EAR = T1/2 w or e x 希釈w or e x 濃度t (mM) x 1/ΔT1/2t
(式中、記号wまたはeはそれぞれ全血または赤血球を意味し、
記号tはTroloxを意味する。)
【0059】
この発明の方法は、下記構成からなるシステムを使用して、試験温度(37℃)で前もって培養することによって標準化する。上記システムの構成は、
希釈ウェルからなるマイクロプレートと;
複数個の分析ウェル(例えば96ウェル)からなるマイクロレートと;
マイクロウェルを底から上方に光を通過させて、その光のODまたは吸光度を測定するためのスペクトルメーターと、からなる。
【0060】
この発明の方法を実施するための3つの好ましいモードは次の通りである。
モードI:ヒトまたは温血動物(例えば哺乳動物)からの全血に対する全抗ラジカルポテンシャルの決定;
モードII:ヒトまたは動物の赤血球に対する全抗ラジカルポテンシャルの決定;および
モードIII:血清に対する決定。
【0061】
さらに、不溶性病原性プリオンPrPscは含んでいないが、非病原性可溶性プリオンPrPcを含んでいる健康な牛からの新鮮な脳組織に対してフリーラジカルを作用させたところ、不溶性プリオンが上記脳組織中に発現したことが観察された。このPrPsc生成は文献記載の方法を用いて明らかにした(Capellari, S., et al.: J. Biol. Chem. 1999, 274 (no. 49), pp. 34846-34840)。この文献には、PrPcは酸化的損傷を予防したりまたは抑制することによって酸化還元平衡に関与することが示されている。
【0062】
したがって、驚いたことに、健康な牛の新鮮な脳組織が、フリーラジカル発生体に由来するフリーラジカルの作用下でPrPsc型の病原性プリオンを産生され得ることが観察された。
【0063】
この観察に基づいて、変性神経疾患、例えば、BSE、OSE、CJDなどは、本質的には、おそらく二つの可能な感染ルートが関与する自己免疫疾患であることが推論された:つまり、(a)PrPsc型のプリオンがヒトや動物に誤って投与されたこと、および/または(b)PrPsc型のプリオンが生物によって産生され得るフリーラジカルの作用下で生体内において発生したこと。いずれの場合でも、PrPsc型を異物として認識する生物は、そのPrPsc型プリオンを駆逐するために、免疫システムを介してフリーラジカルを発生する。このようにして発生したこれらのフリーラジカルは、そのPrPsタンパク質を病原性のタンパク質イソ型(isoform)PrPscに変換し、病原性プリオンの「増殖」という現象を説明する自己免疫応答を形成する。
【0064】
他の変性神経疾患、例えばアルツハイマ−病やパーキンソン病などの発症に際して同一のもしくは類似の機構が発生する(もしくは発現するであろう)。免疫システムは、フリーラジカルの作用下で修飾され、敵として認識されたタンパク質を攻撃する。これらの修飾タンパク質は不可逆的に安定であるので、免疫システムは、それらの構造が関連しているために、正常なタンパク質を攻撃する。これに続いて、フリーラジカルが産生する連鎖反応が発生する。
【0065】
したがって、この発明では、変性神経疾患を予防するための抗ラジカル物質を治療用に新規に使用することが提供される。
【0066】
したかって、抗ラジカル物質の新規な用途は、医薬品の製造を提供することになり、この用途は、抗ラジカル物質が、ヒトや動物の海綿状脳症、例えば、牛海綿状脳症(BSE)、羊海綿状脳症(OSE)、ヒト海綿状脳症(CJD)などに対する治療に使用することを意図する医薬品の製造のために使用されることを特徴とする。
【0067】
この新規な用途の目的のために、海綿状脳症は、少なくとも1種類の抗ラジカル物質と医薬的に許容されるベヒクルとからなるヒトもしくは動物用治療組成物を投与することによって予防される。
【0068】
これらの抗ラジカル物質としては、主に、ポリフェノール類、それから誘導されるグリコン類、それらの硫酸誘導体などが挙げられる。これらの物質のうち、硫酸化フェルラ酸(I)が特に好ましい。この化合物は、下記反応式(化学式5)に示す2つの異なる経路によって加水分解することができる。
【0069】
下記反応式(化学式5)は、工程1におけるスルファターゼによる分解によってトランス型フェルラ酸(II)が得られ、他方、工程2によるデメチラーゼによる分解によって、硫酸化カフェイン酸(IV)を経由して最終的にトランス型カフェイン酸(III)が得られることを示している。この結果、硫酸化フェルラ酸(I)は加水分解によって使用可能な二重の抗ラジカルリザーブからなっている。これらの生成物の抗ラジカル活性は、加水分解なしの従来法であるKRL試験と、加水分解後のこの発明方法によって決定される。得られた結果は、表1に示す通りであり、表中にはこの発明の加水分解の値が示されている。
【0070】
【化5】
【0071】
【表1】
【0072】
硫酸化フェルラ酸(I)をフェルラ酸のオシド、例えばグルクロニドで置換し、加水分解をスルファターゼの代わりに適切なオシダーゼを用いて行った場合にも同様の結果が得られる。
【0073】
フラボノイドファミリーのポリフェノール類や、1個もしくはそれ以上の加水分解可能なオシド残基を有するために、アグリコン類、例えばシアニジン、ゲニステイン、プロシアニジン、カテキンならびにこれらのグリコン類などよりもより大きな抗ラジカルリザーブを有するグリコン類もまた使用するのが適している。
【0074】
この発明の方法は、第2の細胞物質として、例えば、全血、赤血球もしくは血清を使用することによって標準化される。例えば、マイクロプレートウエルなどの溶液貯蔵部に、希釈液(1440μl)に添加した血液(60μl)、希釈液(1440μl)で50%に前もって希釈した赤血球(60μl)または希釈液(1440μlに添加した血清(60μl)の希釈溶液(S)を調製し、その希釈溶液(S)50μlを希釈液(220μl)を添加したマイクロプレートのウェルに注入する。この混合溶液を酵素的に加水分解し、必要に応じて洗浄し、フリーラジカル発生体(例えばAAPH)を注入した後、フリーラジカルの放出を37℃で開始する。上記したT1/2値およびその他のパラメーターを決定する。加水分解後の中間洗浄は、必須ではないので省いてもよい。
【0075】
全血、赤血球もしくは血清を含むかまたはこれらに関連している試験サンプル(50μl)は、必要に応じて希釈し、マイクロプレートウエルに注入した希釈液(220μl)に添加する。このサンプルを加水分解して、フリーラジカル発生体を添加し、フリーラジカル放出を開始した後、この発明方法に従ってT1/2値ならびにその他のパラメーターを決定する。この方法には、例えば、下記量の酵素を使用するのが推奨される。なお、酵素の量において、記号Uは酵素の国際単位を示す。
β−グルコシダーゼ、最終濃度11.11U/ml(3U/ウェル);
スルファターゼ、最終濃度3U/ml(0.8U/ウェル);および/または、
β−グルクロニダーゼ、最終濃度2222.22U/ml(600U/ウェル)。
【0076】
この発明の他の利点および特長は、下記実施例ならびに試験方法を参照することにより、より一層理解することができる。当然のことながら、この発明は、下記実施例ならびに試験方法によって限定されるものではなく、下記実施例などは例示として記載されている。
【実施例】
【0077】
(実施例1:ケルセチン/イソケルシチン)
対照として雌羊の全血を用いたラジカル攻撃(AAPHによる)に対する抵抗性を評価した。この評価は、フラボノイドのアグリコン型であるケルセチンと、そのグリコン型であるイソケルシチンの存在下で、工程(α)の加水分解を行わない場合と加水分解を行った場合によって実施した。
【0078】
図3は、前加水分解をせずに、ケルセチンもしくはイソケルシチンの量を20μMから100μMに増量した場合に得られた結果を示している。図4は、図3の結果に基づいてプロットしたもので、T1/2 値を濃度の関数として評価すると、ケルセチンがイソケルシチンよりも一層強い抗酸化力を有することを示している。
【0079】
図5は、β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)+スルファターゼ(0.8U/ウェル)+β−グルクロニダーゼ(600U/ウェル)の混合物による加水分解後では、ケルセチンとイソケルシチンとは同じ抗ラジカル抵抗性を有していることを示している。したがって、イソケルシチンは、酵素混合物によって加水分解されてケルセチンに変換され、フェノール機能を放出して、リザーブ中に保持されて最初は利用できなかった活性が抗ラジカル活性となって発生している。
さらに、図5は、イソケルシチンまたはケルセチンの濃度が0であるとき、酵素混合物(β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)+スルファターゼ(0.8U/ウェル)+β−グルクロニダーゼ(600U/ウェル))の活性を示している。
【0080】
(実施例2:血清についての試験)
上記モード(III)に従って、健康な雌羊(A)またはスクレイピー感染雌羊(B)の凍結血清について実験を行った。なお、この血清は、β−グルコシダーゼによる前酵素加水分解なしにまたは酵素加水分解によって(酵素量を0U/ml、1.11U/ml、5.55U/ml、11.1U/mlと増量して)検査した赤血球に関連する生物媒体として作用する。
得られた結果は表2に示す。なお、値は、バッチ方式で5回行った平均値であり、そのうち雌羊Aについては3バッチ、雌羊Bについては3バッチを行った。表中、記号SDは平均からの標準偏差を示し、記号CVは変化定数を示す。
【0081】
前加水分解をしなかった場合、雌羊Bはより良い抗ラジカル抵抗性を有していることが観察されている。このことは、病理学的状態に関連した酸化的攻撃に応答してリザーブを放出したことによる異常に基づいている。
【0082】
β−グルコシダーゼ1.11U/mlを用いて前加水分解した場合、加水分解をしなかった試験に対して評価可能な差異は認められない。
β−グルコシダーゼ5.55U/mlを用いて前加水分解した場合、雌羊Aの全抗ラジカルポテンシャルは雌羊Bよりもわずかに低いことが観察される。このことは、抗ラジカルリザーブが加水分解によってまだ完全には放出されていないことを示している。
【0083】
他方、β−グルコシダーゼ11.1U/mlを用いて前加水分解した場合、雌羊Aの全抗ラジカルポテンシャルは雌羊Bよりもより高いことが観察される。このことは、抗ラジカルリザーブが加水分解によって最終的に可動してしまったことを示している。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例3:ワインについての試験)
赤デザートワインと黒デザートワインの2種類のワインについて試験をした。各ワインは、2つのバッチに分けて、第1のバッチは植物性肥料(ポリフェノール類を含む)をスプレーし、第2のバッチは未処理でコントロールとして使用した。生育期間中、粉砕葉、粉砕根および濃縮果汁を希釈バッファに懸濁もしくは希釈して、この発明による抗ラジカル防御ポテンシャルを決定する方法に使用した。この結果、処理ワインは未処理ワインよりも高いポテンシャルを示すことが認められた。ブドウジュースについての結果を図6に示す。
【0086】
(実施例4:ブタについての試験)
健康と考えられる15匹のブタについて試験を行った。試験は、時間を省くために、酵素による加水分解を上記フリーラジカル発生体AAPHから37℃で放出されたフリーラジカル界に暴露することによって行った。
得られた結果は表3に示す。表中、酵素(スルファターゼ(3U/ml)またはβ−グルクロニダーゼ(2500U/ml)を用いて)による加水分解の関数として、値T1/2 、N’(正常領域、つまり加水分解の存在しない領域Nならびに、この場合には、加水分解して局在化した領域Nh)、潜伏期間(lag time)および最大ラジカル溶解率(Vmax)を示している。
【0087】
(実施例5:人についての試験)
健常と考えられる成人男女97名のグループと糖尿病の成人男女92名のグループについて試験をした。両グループの各人より採血した全血を、(1)第1の実験では、上記フリーラジカル発生体AAPHから37℃で発生させたフリーラジカル界に暴露する試験と、(2)第2の実験では、酵素(β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)、スルファターゼ(0.8U/ウェル)、β−グルクロニダーゼ(600U/ウェル)またはこれらの3元混合物)を用いて、同一のフリーラジカル界に暴露している間に加水分解を行う試験を行った。なお、各グループ自体をコントロールとした。
β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)による加水分解で得られた結果は表4に示す。表によれば、健常者においては、平均のT1/2 値は、加水分解なしの92.90minから、加水分解された263.85min(つまり184%の放出リザーブ)まで変化する一方、糖尿病患者においては、平均のT1/2 値が、加水分解なしの99.54minから、加水分解された。215.94min(つまり116%の放出リザーブ)まで変化することが示されている。ヒト血清について得られた結果も同様であった。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
これらの一連の試験結果は、この発明の方法が動物ならびに植物、例えば穀類(例えば小麦、トウモロコシ、米など)、油用穀物(例えば大豆、落花生、菜種など)、ブドウ、綿花などの生育をモニターするのに使用できることを示している。
【0091】
また、この発明の方法は、家畜の健康状態の変化をモニターすることができる。この方法によって、正常領域(つまり、正常値の範囲)を種毎に決定することができる。この正常領域以下では、動物は、必要に応じて、選別したり、またはそれらの組織を食用から除去するという目的を持って、注意深くモニターすべきである。この方法で得られた結果を適用するに際しては、屠殺場に送るべき動物に対して、抗ラジカル物質、例えば硫酸化フェルラ酸、そのオシド類、ポリフェノール類などを添加した飼料を給餌することが特に推奨される。かかる飼料は、栄養添加物として、高ポリフェノール含量のココア抽出物や、ココア豆粘液ならびに/もしくはココア豆汁を添加したココア果皮に基づく組成物も含んでいてもよい。
【0092】
硫酸化フェルラ酸、そのオシド類(例えばグルクロニド)、ポリフェノール類、上記ココア抽出物ならびに/もしくは上記ココア果皮に基づく組成物などは、人のストレス状態を処置ならびに予防するためにも使用することができる。
【0093】
(実施例6:着色料の使用)
上記青色着色料(メチレンブルー)と、赤色着色料(OPC抽出物)は、細胞物質なしで実施するこの発明の方法を標準化する目的で使用した。下記に示す結果は6試験の平均値である。
【0094】
第1の試験では、フリーラジカルの放出が生起されていない時間T=0(To)では、それ単独で使用された場合(図7aの曲線1)でも、FRGに関連して使用された場合(図7aの曲線2)でも、その青色着色料の濃度関数としての光学濃度(260nm)は直線状であることが証明された。曲線1は、下記式:
y = 0.09986x + 0.03278 r2 = 0.9999
で表されるような直線状であり、曲線2は、下記式:
y = 0.0964x + 0.0431 r2 = 0.9996
で表されるような直線状である。
赤色着色料については、OD(450nm)の変化が直線状である時間Toでは、図7bの曲線1(FRGなし)および曲線2(FRGあり)は互いにほぼ重なりあっている。曲線1は、下記式:
y = 0.03268x + 0.0608 r2 = 0.9997
で表され、曲線2は、下記式:
y = 0.03264x + 0.0511 r2 = 0.9999
で表される。
【0095】
第2の試験では、各着色料に対するFRGの経時的効果を調べた。この実験では、620nmで測定した青色着色料のODは下降し、450nmで測定した赤色着色料のODは上昇した。その結果を図7c(青色着色料)と図7d(赤色着色料)に示す。
【0096】
第3の実験では、青色着色料のODの変化は上昇していて(図7e)、赤色着色料のODも上昇していた(図7f)。この実験では着色料のOD変化は、時間Toならびにフリーラジカル放出後における初期ERG濃度の関数として調べた。
【0097】
(実施例7:4系列の家禽(Gallinaceae) についての試験)
4系列の家禽の全血、赤血球ならびに血清の抗ラジカル抵抗力およびリザーブR1(グルコシダーゼによる加水分解)、リザーブR2(スルファターゼによる加水分解)ならびにリザーブR3(グルクロニダーゼによる加水分解)の放出について調べた。調べた家禽は、異なる品種の4系列のニワトリ(バッチA1、A2、B1ならびにB2)、ブロイラーニワトリ(バッチA1ならびにA2)および産卵用ニワトリ(バッチB1ならびにB2)からなり、各バッチは12羽からなる。
【0098】
上記試験にて平均ならびに標準偏差(SD)について得られた結果は表5および図8a〜8iに示す。
得られた一連の結果は、動物における抗ラジカル防御リザーブの変化についての研究によって、標的とする実験カテゴリーを決めることができることを示している。かかるカテゴリーとしては、例えば、生育、重量、再生能力および、例えば、ストレスならびに/もしくは疾患に対する抵抗力を支配する遺伝的特性などに関する生産物の質などが挙げられる。
【0099】
【表5】
【0100】
(実施例8:ラットについての試験)
ストレプトゾトシンで処理して糖尿病を発症させたラットと、対照としてのラットについて試験をした。その結果は図9aから図9dに示す。
ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させたラット血清の抗フリーラジカル防御力(血清防御力=全血防御力−赤血球防御力)を生起させた。この防御力が生起すると、放出された循環リザーブが損傷を受けることになる。例えば、リザーブR1が3分の1以上低下したのに、T1/2 値は対照ラットと糖尿病ラットの赤血球では実際には等しいままであった。このことこそが糖尿病の兆候であるからである。赤血球中のリザーブR1およびR2は、対照ラットと、糖尿病ラットとの間ではほとんど同一であり、また細胞内リザーブR3は増加し、赤血球を保護して血清リザーブを損傷することになる。
【0101】
(実施例9:ワイン劣化についてのモニター)
5種類のワインについて試験をした。ワイン1は40年物、ワイン2はワイン1より若くて14年物、ワイン3、4ならびに5はそれぞれ同一ブドウ栽培プロットからの1922年、1997年ならびに2000年に製造した物である。劣化は、通常、各ボトルを開けて、酸化を進行させたり、または人工的にフリーラジカルに暴露することによって促進する。
得られた結果は、図10a(従来技術のKRL試験による)ならびに図10b(この発明方法による)に示す。図10aは、ワイン2がその酸化抵抗力があまりにも小さいので、完全に劣化していることを示している。図10bは、ワイン5がワイン4よりも早く劣化したこと、またワイン1(マスターピース)が現在から数年後経ってもその風味を享受できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0102】
簡潔に言えば、この発明の方法は、
(1)人、動物ならびに植物の健康状態、例えば、その栄養状態(ならびに/もしくは栄養素取り込み)、ストレス管理、劣化遅延などを生体外で(インビトロ)モニターすること、ならびに動物や植物を選別するための遺伝的ポテンシャルを生体外でモニターすることに特に適しているとともに、
(2)抗ラジカル物質が、全抗ラジカル防御の制御システムが崩壊している海綿状脳症(例えばBSE、OSE、CJDなど)や自己免疫疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、アレルギーなど)を予防するのに必須であることを示している。
【0103】
したがって、この発明に係る方法は、食物、食品もしくは栄養サプリメント(「nutraceutics」)ならびに飲料の栄養価値もしくは値を抗ラジカル的に評価するとともに、食物、食品もしくは栄養サプリメントならびに飲料の工業的加工の各工程を、人、動物ならびに植物の健康を保全し、その環境を尊重する目的でモニターするために特に有用である。
【0104】
そこで、この発明によれば、この発明方法を、動物ならびに植物の生育を生体外でモニターすること、ならびに/もしくは栄養取り込みを生体外でモニターすることによって、それらの全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で決定するために使用すること、および人の健康状態をモニターし、ストレスを管理し、ならびに/もしくは劣化をモニターするために、この発明方法を生体外で実施することによって、全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で決定するために使用すること、が推奨される。
【技術分野】
【0001】
この発明は、生物の抗ラジカル防御を評価することに関する。さらに詳細には、この発明は、生物の抗ラジカル防御ポテンシャルまたは物理媒体(例えば、X線、β線、γ線、紫外線など)、化学媒体または生物媒体によって人に対して生起される変化を決定する方法およびこの方法を、例えば、人ならびに動物の予防治療に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカルは、非常に高い反応性を有する酸化物質であり、急性現象(例えば、精神的外傷、虚血など)に重要な役割を果たしていると共に、数多くの慢性病理学的状態に関与している。
【0003】
生物は、正常な生物学的状態では、生体内においてフリーラジカルを産生するとともに、フリーラジカルから生体を防御するために必要な手段として、主に酵素的ならびに/もしくは化学的解毒システムを備えていて、そして全体として体内において産生されるフリーラジカルと解毒システムとの間で平衡を保っている。
【0004】
しかしながら、例えば紫外線、ストレス、汚染、アルコール中毒、喫煙などの種々の破壊的因子によって、生体内におけるフリーラジカルの形成が増加し、病理的状態が生起される。当然ながら、生物は、その解毒システムによってフリーラジカルから防御されているけれども、これらのシステムは破壊されることがあり、その平衡が破壊されると遺伝的因子、環境やライフスタイルなど、つまり生体の抗ラジカル防御力に直接に関わってくる。
【0005】
また、フリーラジカルは有害な効果を及ぼす。つまり、フリーラジカルは、細胞レベルでは、リン脂質メンブレンの多不飽和脂肪酸を過酸化し細胞毒性の過酸化物を生成して、炎症ならびに細胞死を生起し、さらに酸素化されたフリーラジカル中間体が特に発がんや心臓血管疾患を活性化すると共に、細胞外レベルでは、主要成分を分解して、例えば皮膚などの細胞の透過性や構造を変性する。かかる劣化は皮膚の老化ならびに一般的な老化を促進する。
【0006】
フリーラジカルからの防御因子は本質的には2つの下記カテゴリーに分類される。
酵素的カテゴリー:スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼセレングルタチオンパーオキシダーゼ;
化学的カテゴリー:フリーラジカルをブロックするスカベンジャーと、フリーラジカルの効果を制限する抗酸化剤(ビタミンC、ビタミンA、ビタミンE、セレン(Se)、システイン、メチオニン、ユビキノン、コエンザイムQなど)。
【0007】
フリーラジカルによって細胞物質、例えば赤血球を溶解して、試験対象の化学もしくは物理物質の抗酸化(つまり、抗ラジカル)活性を評価する方法は知られている(特許文献1)。
【0008】
上記文献記載の方法は次の通りである。つまり、この方法は、
(1)フリーラジカル発生体を、適切な液状生物媒体中で、細胞物質(I)と接触させる工程であって、該細胞物質が、(a)ヒト、動物ならびに植物細胞;(b)上記細胞のフラグメント;および(c)リポソームを含む合成壁からなる群から選択され、かつ、物理もしくは化学媒体(II)とはじめに接触され、フリーラジカルによる溶解に際して放出できる着色料からなっている細胞物質(I)との接触工程と、
(2)上記フリーラジカル発生体からフリーラジカルの放出を生起させる工程と、
(3)上記細胞物質の溶解を、上記物理もしくは化学媒体と接触させてなかった上記細胞物質を含有するコントロールサンプルに対する光学濃度を測定することによって評価する工程と、から構成されている。
【0009】
上記工程(3)における溶解を評価するために推奨される1つの方法として、細胞物質、例えば上記物質の細胞、好ましくは赤血球の50%を溶解するのに要した時間(T1/2)を特定する方法を使用するのがよい(この点については、上記特許文献1、4頁、52−55行を参照)。
【0010】
上記既知方法は、全血から単離された赤血球の代わりに、希釈したヒトもしくは動物の全血を用いて標準化されている。この標準化方法は、「KRLキット」(フリーラジカルキット)という商品として販売されている。このキットは、例えば、(i)ヒト、動物もしくは植物の細胞組織の抗ラジカル防御力、または(ii)物理、化学もしくは生物媒体の持ち得る抗ラジカル性質を決定するために使用される。さらに詳細には、このKRL試験は、(1)(a)適切なバッファ媒体中に前もって希釈した全血を、コントロールとして、(b)試験対象媒体(例えば、細胞物質、物質もしくは組成物)と、(c)フリーラジカル発生体と、に接触させ、(2)フリーラジカルの放出を生起させ、(3)得られる反応媒体の吸光度を測定することによるコントロール全血からの赤血球の溶解速度をモニターし、次いで、(4)モニターして得られた値を、試験対象媒体を含まない同一条件下で決定したコントロール全血の値と比較することによって行うようになっている。
【0011】
上記方法の変法として、この標準化方法は、ヒトもしくは動物のコントロール全血に対して、それぞれの全血の抗ラジカルポテンシャルを評価するのにも使用することができる。
【0012】
KRL試験によると、健常なヒトや動物においては、平均T1/2値は抗ラジカル防御力を表していることは注目される。最近の報告によると、この平均値は平均領域であるかまたは平均領域内に存在することが確認されている(非特許文献1)。この領域以下では、ヒト、動物または植物検体は、抗ラジカル防御が不十分であるという点で、病理学的もしくは前病理学的状態であると考えられる。
【0013】
KRL試験の有効性にかかわらず、全血におけるある種の異常がいくつかの特定の事例において観察されている。つまり、正常値以下(つまり、赤血球の場合のように平均の正常値以下)のT1/2値が期待されたのに対して、上記正常値と同一かまたはより大きな値が得られることが可能なことが判明している。
【0014】
したがって、糖尿病の患者では、全血で評価したT1/2値は、健常者の値と一般的には類似もしくはそれよりも大きい。また、新たに照射したオニオンの抗ラジカル抵抗性は、照射していないオニオンよりも大きい。これらの異常がこの発明の根拠となっている。
【0015】
さらに、酸化剤、例えばH202やフリーラジカル(2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドからなるフリーラジカル発生体に由来する)によってもたらされる(ヒト、ウシ、ブタ、ニワトリ、キジ、ラット、ネコなどの全血から単離した)赤血球の溶血を、乳酸脱水素酵素(LDH)活性もしくは上清中のヘモグロビン含量を測定することによってモニターすることも知られている(非特許文献2)。さらに詳細には、ここでモニターするパラメーターは、LDH活性の減少またはヘモグロビン含量の減少であってもよい。しかしながら、この非特許文献2は、例えばウマ、ウシ、ブタならびにアヒルで得た本発明者らの未発表の結果を確認している。しかしながら、この文献には、この発明による全体の抗ラジカル抵抗性を決めるための操作順位、つまり、加水分解、フリーラジカルの放出およびフリーラジカルによって引き起こされる溶血の評価については一切記載も示唆もされていない。
【特許文献1】ヨーロッパ特許第418335号公報
【非特許文献1】Lesgards, J-F., et al.: Environmental Health Perspectives, 110 (no. 5), pp. 1-9 (2002)
【非特許文献2】Stagsted, J., et al.: Free Radical Research, 2002, 36 (no. 7), pp. 779-789
【発明の開示】
【0016】
この発明の出発点は仮説に基づいている。その仮説とは、生物は、即座に入手できる抗ラジカルリザーブ(貯蔵物質)、つまり、フリーラジカルショックもしくは酸化的ストレスに対して直接的に可動する抗ラジカルポテンシャルがあるものと、可動可能であり(しかしながら、即座には直接的にアクセスできない)かつ生物によって通常蓄積されるかもしくは生物中に固定されている抗ラジカルリザーブと、から構成されていて、生物の全体の抗ラジカルポテンシャル(全抗ラジカルポテンシャル)は、蓄積されていて即座に入手可能な抗ラジカルリザーブと、蓄積されている可動可能な抗ラジカルリザーブとによって表される。
【0017】
この発明の目的は、上記異常を救済する目的で、抗ラジカル防御ポテンシャルを決定できる方法を提供することである。
【0018】
この発明の別の目的は、ヒト、動物(例えば温血動物)ならびに植物によるフリーラジカルに対する不十分な抵抗性に関連した病理学的もしくは前病理学的状態をスクリーニング、予防またはモニターする際の課題に対する新規な技術的解決法を提供することである。
【0019】
(a)ヒトや動物においては、変形性神経疾患などの不可逆的病理学的状態の発現の防止;(b)家畜動物においては、ヒトの食品に対して危険を及ぼしかねない動物の選別(遅くとも屠殺場での選別)および運送ならびに飼育方法によってもたらされるストレスの評価;(c)植物においては、植物の栄養価を最適化するための生育ならびに保存方法のモニターする必要性がある。
【0020】
この発明の目的の1つは、種による抗ラジカル防御力の正常レベル(または正常範囲)を特定することである。別の目的は、種による抗ラジカル防御を規制するシステムの評価を可能にすることである。
【0021】
上記仮説は下記に説明するように正しいことが判明した。その結果、先行技術の異常を救済するとともに、所望の目的を達成することが可能である。
【0022】
この発明の第1の態様は、生物または物理、化学、もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で(インビトロ)決定する方法を提供することであって、該方法は、細胞溶解を生起して、該細胞溶解を評価するための手段として、フリーラジカルを使用することに関するものであり、かつ、得られる反応媒体中へのフリーラジカル発生体からのフリーラジカルの放出前もしくは放出中における細胞物質の加水分解からなっていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係る方法は、例えば、生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外での決定に適していて、細胞溶解の生起のための手段としてフリーラジカルを使用することに関する方法であって、該方法は次の工程から構成されていることを特徴とする。つまり、この方法は、例えば、
(α)(i)生物からの細胞組織、細胞もしくは細胞フラグメントからなる第1の細胞物質のサンプルまたは(ii)物理、化学もしくは生物媒体に関連する細胞組織、細胞、細胞フラグメントもしくはリポソームを含む合成壁からなる参照物質である第2細胞物質のサンプルを加水分解する工程と;
(β)上記加水分解の間もしくは後に、上記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる工程と;
(γ)上記フリーラジカル発生体からフリーラジカルを放出させる工程と;
(δ)上記生物または物理、化学もしくは生物試験媒体の全抗ラジカルポテンシャルを評価するために、コントロールサンプルに対して、第1もしくは第2の細胞物質の溶解を光学的測定法でモニターする工程と、から構成されている。
【0024】
この方法に使用される光学的測定法は光学分光計によって行うことができる。この光学的測定法においては試験媒体の光学濃度または吸光度を測定するのが好ましい。
【0025】
この発明に係る方法の変法においては、物理、化学もしくは生物媒体の抗ラジカル抵抗力を評価するために、上記第2の細胞物質をフリーラジカルによって分解可能な着色料によって置換することができる。この変法は、
(α)フリーラジカルによって分解可能であり、かつ、物理、化学もしくは生物媒体に関連する着色料のサンプルを加水分解する工程と;
(β)上記加水分解の間もしくは後に、上記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる工程と;
(γ)上記フリーラジカル発生体からフリーラジカルを放出させる工程と;
(δ)上記物理、化学もしくは生物試験媒体を含む上記サンプルの全抗ラジカルポテンシャルを評価するために、コントロールサンプルに対して、上記着色料の溶解を光学的測定法でモニターする工程と、から構成されている。
【0026】
この発明の第2の態様は、この発明の方法を、異常な抗ラジカル防御ポテンシャルに関連する生体の病理学的もしくは前病理学的状態の生体外で(インビトロ)スクリーニング、予防もしくはモニターすることに使用することからなっている。
【0027】
この観点から、かかる使用は、例えば、変形性神経疾患、例えば、
・海綿状脳症、例えば、ウシ海綿状脳症(BSE、狂牛病)、ヒツジ海綿状脳症(OSE、スクレイピー)、ヒト海綿状脳症(CJD、クロイツフェルトーヤコブ病)など;
・アルツハイマー病;ならびに
・パーキンソン病
などの疾患に関する。
【0028】
この発明は新規な用途を提供することも目的としており、その用途は、抗ラジカル物質を、海綿状脳症、アルツハイマ−病ならびにパーキンソン病に関連するヒトもしくは動物の疾患治療における予防的適用を意図した医薬品の製造に使用することを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】血液細胞の細胞溶解による光学濃度(OD)または吸光度の変化の機構を説明する説明図。
【図2】光学濃度 (OD1/2) ならびにその他のパラメーターを決定する方法を説明するグラフ。グラフにおいて、開始ODは最初から5つの値の平均値として、また最終ODは最後から5つの最小値の平均値として測定し、OD1/2は次式として算出した:OD1/2値 = 0.5 x (開始OD値 + 最終OD値)。T1/2値は、OD1/2を通過する水平線と曲線OD=f(T)との交差に対応する時間であり;ラジカル溶解の最大割合(Vmax)は屈折点(OD1/2、Tb)近辺の曲線の勾配として測定され;潜在時間(LT、lag time)は開始OD線とVmax線との交差に対応する時間として決定される。
【図3】この発明の前加水分解をしないでケルセチン(quercetin)とそのグリコン(glycone)同族体であるイソケルシトリン(isoquercitrin)の濃度を増加した(0から100pM)ときのそれらの吸光度カーブ=f(T)を示すグラフ。
【図4】図3の曲線に基づいた前加水分解なしでプロットしたT1/2=f曲線(ケルセチンもしくはイソケルシトリンの濃度)を示すグラフ。
【図5】前酵素的加水分解をして得られたケルセチンならびにイソケルシトリンのT1/2=f曲線(濃度)を示すグラフ;図5の曲線と図4の曲線を比較して、この発明の前加水分解の値を表している。
【図6】葉質肥料でワインを処理した場合の未処理ワインに対する影響を示す図。
【図7a】青色着色料の光学濃度(OD)の直線性を示すグラフ。このグラフは、T=0(T0)時点において、フリーラジカルの作用により分解可能な青色着色料の光学濃度(OD)は、フリーラジカル発生体(FRG)が関与する場合でも、関与しない場合でも、該着色料の濃度がその濃度とともに、所定の着色料濃度に対して直線的に増加することを示している。
【図7b】赤色着色料の光学濃度(OD)の直線性を示すグラフ。このグラフは、T=0(T0)時点において、フリーラジカルの作用により分解可能な赤色着色料の光学濃度(OD)は、フリーラジカル発生体(FRG)が関与する場合でも、関与しない場合でも、該着色料の濃度がその濃度とともに、所定の着色料濃度と対して直線的に増加することを示している。
【図7c】フリーラジカル発生体に由来するフリーラジカルの経時的放出の関数としての青色着色料の光学濃度の変化を示すグラフ。
【図7d】フリーラジカル発生体に由来するフリーラジカルの経時的放出の関数としての赤色着色料の光学濃度の変化を示すグラフ。
【図7e】フリーラジカルを放出するフリーラジカル発生体の濃度の関数としての青色着色料の光学濃度変化を示すグラフ。
【図7f】フリーラジカルを放出するフリーラジカル発生体の濃度の関数としての赤色着色料の光学濃度変化を示すグラフ。
【図8a】リザーブ放出(従来技術のKRL試験)なしでの4種類のキジ(Gallinaceae:A1,A2,B1,B2)の全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8b】リザーブ放出(従来技術のKRL試験)なしでの4種類のキジ(Gallinaceae:A1,A2,B1,B2)の赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8c】リザーブ放出(従来技術のKRL試験)なしでの4種類の家禽キジ(Gallinaceae:A1,A2,B1,B2)の血清の抗ラジカル効果を示すグラフ。
【図8d】この発明におけるグルコシダーゼの加水分解によるリザーブ1(R1)放出後の4動物グループの全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8e】この発明におけるグルコシダーゼによる加水分解によるリザーブ1(R1)放出後の4動物グループの赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8f】この発明におけるスルファターゼによる加水分解によるリザーブ2(R2)放出後の4動物グループの全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8g】この発明におけるスルファターゼによる加水分解によるリザーブ2(R2)放出後の4動物グループの赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8h】この発明におけるグルクロニダーゼによる加水分解によるリザーブ3(R3)放出後の4動物グループの全血の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図8i】この発明におけるグルクロニダーゼによる加水分解によるリザーブ3(R3)放出後の4動物グループの赤血球の抗ラジカル抵抗性を示すグラフ。
【図9a】赤血球に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図9b】全血に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図9c】赤血球に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図9d】全血に対するKRL試験によるT1/2、R1、R2ならびにR3についての対照ラットと糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与による)との作用の比較を示すグラフ。
【図10a】発明の方法をワイン劣化のモニターに使用した場合の劣化変化を示すグラフ。
【図10b】発明の方法をワイン劣化のモニターに使用した場合の別の劣化変化を示すグラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
この発明によれば、上記異常は生物の抗ラジカルリザーブの異常な可動性によると説明される。つまり、糖尿病においては、(i)全血の抗ラジカル抵抗性は異常に高く、このことが抗ラジカルリザーブの血清中における異常な可動性を反映している。また、(ii)かかると糖尿病において進展するオキシダントストレスの観点からすれば、グルコシル化反応により脆弱になる赤血球の抗ラジカル抵抗性は異常に低くなっている。
【0031】
この発明によれば、可動性抗ラジカルリザーブは、例えば、抗酸化化合物の重合化および/または上記抗酸化化合物と、異なる糖類(例えば、グルコース、ラムノース、グルクロン酸など)、アルコール類ならびに有機酸もしくは無機酸(例えば硫酸など)との結合から上昇すること、また可動性抗ラジカルリザーブは、例えば細胞壁中、さらに詳細には細胞を浮遊させる液体中に有機酸ならびに/もしくは硫酸類のポリマー(例えばポリフェノールなど)、エーテルまたはエステルの形状で生物中に貯蔵されることが考えられる。
【0032】
フリーラジカルによる攻撃の場合、生物に貯蓄されたこれらの可動性抗ラジカルリザーブは直接には利用されない。これらのリザーブは、インヒビターならびにアクチベータのシステムを有するカスケード形式(例えば、ヘモスターシス(haemostasis)カスケードなど)の複雑な酵素機構によって放出され、最終的には平衡を達成する。得られた平衡が正常な平衡でないときは、このことは病理学的または前病理学的状態を示している。
【0033】
この発明によれば、貯蔵された可動性抗ラジカルビザは加水分解によって放出される。この加水分解の工程(α)は、適切な媒体、例えばバッファ中で15から60℃の温度で実施される。なお、この工程は上記工程(β)の前でも、または上記工程(β)と同時に行ってもよい。後者の場合には、時間を節約できるが、上記加水分解がフリーラジカルによる第1のもしくは第2の細胞物質の溶解前に終了できないのでコントロールを使用する必要がある。
【0034】
この加水分解としては、(i)酵素加水分解、(ii)酸もしくはアルカリ加水分解または(iii)物理媒体、例えば放射性媒体による分解が挙げられる。
【0035】
酵素加水分解は、オシダーゼ類(例えばグルコシダーゼ類、ラムノシダーゼ類、グルクロニダーゼ類など)、デアルキラーゼ類(例えばデメチラーゼ類など)、エステラーゼ類、スルファターゼ類ならびにそれらの混合物の群から選択される物質を用いて、少なくとも40分間(例えば、加水分解がフリーラジカル界に曝露中に進行する時間)、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは2時間、20ないし40℃の温度で行うのがよい。この発明に適している酵素混合物としては、例えば、グルコシダーゼ+デメチラーゼ+スルファターゼの混合物またはグルコシダーゼ+グルクロニダーゼ+スルファターゼの混合物が挙げられる。
【0036】
酸加水分解は、少なくとも40分間(例えば、加水分解がフリーラジカル界への曝露中に進行する時間)、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは2時間、40ないし60℃、好ましくは50℃の温度、pH5.5もしくはそれ以下のpHで行うのがよい。
【0037】
アルカリ加水分解は、必須ではないが、エステルならびにラクトン機能の分裂に関係していて、少なくとも40分間(例えば、加水分解がフリーラジカル界への曝露中に進行する時間)、好ましくは1ないし3時間、より好ましくは2時間、50℃の温度、pH8.5もしくはそれ以上のpHで行うのがよい。
【0038】
この発明の加水分解は、例えば、農業作物を貯蔵するために使用されるような、γ線や、より好ましくはβ線などの照射線のような物理媒体による分裂にて行うのがよい。かかる物理媒体は、十分な期間適用されるフリーラジカル界であってもよい。したがって、この加水分解は、エステル基(つまりアシル基)、エーテル基ならびにスルフエート基を分解したり、または、グリコン類からオシド(oside)フラグメントを分離することからなり、生物またはその生物から由来する細胞物質を照射することになる。
【0039】
この発明の方法に関与する細胞物質は、(a)細胞組織(つまり、同一もしくは異なる細胞に加えて、自然では細胞が浮遊している液体もしくは血清またはその部分)、例えば、全血など;(b)それらの細胞環境から単離された細胞(ならびに必要に応じて、希釈バッファに再懸濁された細胞);(c)細胞フラグメント(つまり、細胞壁のフラグメントであって、必要に応じて、細胞中に含まれる物質、例えばリポタンパク質などの全てもしくは一部を含んでいてもよい);または、(d)リポソームを含む合成壁などの群から選ばれる。
【0040】
この発明において、工程(a)の加水分解に使用する第1の細胞物質は、上記要素(a)、(b)および(c)から選択するのがよいが、上記要素(a)ならびに(b)が好ましい。この第1の細胞物質は、この発明において生物の全抗ラジカルポテンシャルを評価するために使用するのがよい。
【0041】
第2の細胞物質は、上記要素(a)、(b)、(c)および(d)から選択するのがよいが、同様に上記要素(a)ならびに(b)が好ましい。この第2の細胞物質は、試験対象の物理、化学もしくは生物媒体の可能な抗ラジカル性質を評価するために、または生物の全抗ラジカルポテンシャルを細胞物質(例えば、細胞組織、全血、単離細胞、血清など)に由来する産物によって評価するために使用するのがよい。
【0042】
物理、化学もしくは生物媒体は、第2の細胞物質に関連しているといわれる。このことは、第2の細胞物質が採集される生物にその媒体が混入しているか、または、この発明に係る方法を達成するために、その媒体が第2の細胞物質と接触していることを意味している。
【0043】
物理媒体は、煙、紫外線もしくは有害放射媒体に曝露することができる。また、化学媒体としては、いずれの物質でも、またはフリーラジカルに付与してもよい可能な防御を決定するために、試験することが望まれる化学生成物の関連物質でもよい。
【0044】
生物媒体としては、いずれの物質でも、または生物生成物の関連物質、例えば植物、天然物質の抽出物、血清または、第2の細胞物質を構成する細胞組織もしくは単離細胞とは異なってもいてもよい細胞などが挙げられる。
【0045】
上述したように、第2の細胞物質は、物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル抵抗性を調べるために、フリーラジカルによって分解可能な着色料によって置換してもよい。適切な着色料としては、例えば酸化還元着色料が挙げられる。この発明においては、メチレンブルー(下記実施例において青色着色料として使用されている)とオリゴアントシアニジン抽出物(OPC;下記実施例において赤色着色料として使用されている)は良好な結果を上げている。使用される着色料は、加水分解されるサンプルの加水分解に対して感受性を有していてはならない。例えば、もし着色料がグルクロニダーゼに感受性を有している場合、スルファターゼによる加水分解を行う方法においては使用することができるであろう。
【0046】
上記非特許文献1に記載されているように、好ましいフリーラジカル発生体としては、ゼロ次オーダー(フリーラジカルの放出が経時的に一定である)の動力学(kinetics)もしくは反応率を示すフリーラジカル発生体ならびに、より好ましくは、一次オーダー(フリーラジカルの放出が経時的に直線的である)の動力学もしくは反応率を示すフリーラジカル発生体が挙げられる。この発明において好ましい酸化フリーラジカル発生体としては、例えば、水性媒体中において一次オーダーの動力学を示す2,2'−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリドと、油性もしくは有機媒体中において一次オーダーの動力学を示す2,2'−アゾ−ビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)とが挙げられる。フリーラジカルは、それ自体既知の方法、例えば、熱、光(例えば可視スペクトルもしくは紫外光照射など)、プロトン、電子、X線などによってフリーラジカル発生体から放出される。かかる放出は光子照射または加熱によって開始するのが好ましい。例えば、この反応においては、水性媒体中で2,2'−アゾ−ビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(AAPH)を37℃の温度に調整すると、下記反応式に従ってフリーラジカルの放出を開始するのに十分である。
【0047】
【化1】
【0048】
フリーラジカルの放出が開始した後、第1または第2の細胞物質の溶解を光学的にモニターする。さらに詳細には、光学濃度(または吸光度)の変化を時間の関数として観察し、細胞物質50%が溶解した時点に対応するT1/2値(単位:分)を決定する。上述したように、上記細胞物質は細胞組織(例えば全血など)または単離細胞であるのが好ましい。
【0049】
実際には、光学測定は、第1または第2の細胞物質の溶解動力学をモニターするために、自動的に、例えば、50、100、150、200および/または300秒ごとに行なうのがよい。試験媒体(例えば、全血または単離細胞を含有する)の吸光度の変化を、フリーラジカル発生体(例えばAAPH)からのフリーラジカルの放出が生起される瞬間から経時的に測定するとき、次の事項を観察するのがよい。
・初期、つまり吸光度が一定で(かつ相対的に高い)期間;この期間は細胞が溶解されていない潜伏期間である;
・細胞溶解の開始直後、つまり吸光度が直線的に下降する相(対応する曲線の変曲点がT1/2値を決定する);
・全ての細胞が溶解したとき、吸光度は一定になる(かつ相対的に低くなる)。
【0050】
つまり、従来技術のKRL試験を用いて全血を調べたときにT1/2値が上昇しているとき(化2を参照)、
領域「1」は、フリーラジカルに対する保護が低く、病理学的もしくは前病理学的状態に相当している;
領域「N」は、正常平均値の領域であるが、抗ラジカル防御力が惹起しても相殺されない異常な抗ラジカルリザーブ放出によって異常に高い値を有している(糖尿病のような)「擬陽性」結果を含んでいる場合もある;
領域「2」は、可動性抗ラジカルリザーブの重要部分もしくは大部分が異常な放出がなされるためにフリーラジカルに対する保護が高く、生物は、そのリザーブ上を移動するので、病理学的もしくは前病理学的状態に相当している。
【0051】
【化2】
【0052】
他方、この発明によれば、全抗ラジカルポテンシャルは加水分解で評価されるので、T1/2値が上昇しているとき(化3を参照)、フリーラジカルに対する保護が低い異常領域「A」があり、この低保護異常領域は病理学的もしくは前病理学的状態を示している;
領域「Nh」は、正常な平均値であって、健常者からの結果だけを含んでいる(T1/2値が領域Nhの範囲内である値は測定エラーであると考えられる)。
【0053】
【化3】
【0054】
運動している人は、例えば、正常領域Nhが、運動していない人より、練習の繰り返しによってもたらされる例えば酵素的抵抗力が広く;たとえ練習中に一時的に抗ラジカル抵抗力が減少したとしても、運動をしていない人(または時折しか運動をしない人)と違って、正常値の領域内に制御されている。運動をしていない人や時折しか運動をしない人は、試験的運動をするときにも、制御領域外になり、心血管事故のリスクが発生する。
その結果、この発明の方法は、T1/2値が正常平均値の領域Nh内にあるときにはあらゆるリスクを避けることができ、上記異常を除去することができる。
【0055】
T1/2値の他に、上記したように、副次的に、潜伏期間、フリーラジカルによる細胞溶解率(つまり、曲線の勾配)とともに、評価の追加的パラメーターを得るために曲線下の領域を測定することもできる。
【0056】
また、全抗ラジカルポテンシャルはEAR(Efficacite Anti-Radicalaire: Anti-Radical Efficacy)単位で表すことができる。ここで、1EAR単位は、血液1リットルに対するTrolox(登録商標:ホフマン・ラ・ローシユ社)1mMの抗ラジカルパワーに相当する。なお、Trolox(登録商標)は、標準抗酸化物として使用されるビタミンEの水溶性等価物であって、下記の構造式(3,4−ジヒドロ−2,5,7,8−テトラメチル−2Hー1−ベンゾピランー6−オール)を有している。
【0057】
【化4】
【0058】
健常者の血液1リットルに対して、下記式が適用される。
1 EAR = T1/2 w or e x 希釈w or e x 濃度t (mM) x 1/ΔT1/2t
(式中、記号wまたはeはそれぞれ全血または赤血球を意味し、
記号tはTroloxを意味する。)
【0059】
この発明の方法は、下記構成からなるシステムを使用して、試験温度(37℃)で前もって培養することによって標準化する。上記システムの構成は、
希釈ウェルからなるマイクロプレートと;
複数個の分析ウェル(例えば96ウェル)からなるマイクロレートと;
マイクロウェルを底から上方に光を通過させて、その光のODまたは吸光度を測定するためのスペクトルメーターと、からなる。
【0060】
この発明の方法を実施するための3つの好ましいモードは次の通りである。
モードI:ヒトまたは温血動物(例えば哺乳動物)からの全血に対する全抗ラジカルポテンシャルの決定;
モードII:ヒトまたは動物の赤血球に対する全抗ラジカルポテンシャルの決定;および
モードIII:血清に対する決定。
【0061】
さらに、不溶性病原性プリオンPrPscは含んでいないが、非病原性可溶性プリオンPrPcを含んでいる健康な牛からの新鮮な脳組織に対してフリーラジカルを作用させたところ、不溶性プリオンが上記脳組織中に発現したことが観察された。このPrPsc生成は文献記載の方法を用いて明らかにした(Capellari, S., et al.: J. Biol. Chem. 1999, 274 (no. 49), pp. 34846-34840)。この文献には、PrPcは酸化的損傷を予防したりまたは抑制することによって酸化還元平衡に関与することが示されている。
【0062】
したがって、驚いたことに、健康な牛の新鮮な脳組織が、フリーラジカル発生体に由来するフリーラジカルの作用下でPrPsc型の病原性プリオンを産生され得ることが観察された。
【0063】
この観察に基づいて、変性神経疾患、例えば、BSE、OSE、CJDなどは、本質的には、おそらく二つの可能な感染ルートが関与する自己免疫疾患であることが推論された:つまり、(a)PrPsc型のプリオンがヒトや動物に誤って投与されたこと、および/または(b)PrPsc型のプリオンが生物によって産生され得るフリーラジカルの作用下で生体内において発生したこと。いずれの場合でも、PrPsc型を異物として認識する生物は、そのPrPsc型プリオンを駆逐するために、免疫システムを介してフリーラジカルを発生する。このようにして発生したこれらのフリーラジカルは、そのPrPsタンパク質を病原性のタンパク質イソ型(isoform)PrPscに変換し、病原性プリオンの「増殖」という現象を説明する自己免疫応答を形成する。
【0064】
他の変性神経疾患、例えばアルツハイマ−病やパーキンソン病などの発症に際して同一のもしくは類似の機構が発生する(もしくは発現するであろう)。免疫システムは、フリーラジカルの作用下で修飾され、敵として認識されたタンパク質を攻撃する。これらの修飾タンパク質は不可逆的に安定であるので、免疫システムは、それらの構造が関連しているために、正常なタンパク質を攻撃する。これに続いて、フリーラジカルが産生する連鎖反応が発生する。
【0065】
したがって、この発明では、変性神経疾患を予防するための抗ラジカル物質を治療用に新規に使用することが提供される。
【0066】
したかって、抗ラジカル物質の新規な用途は、医薬品の製造を提供することになり、この用途は、抗ラジカル物質が、ヒトや動物の海綿状脳症、例えば、牛海綿状脳症(BSE)、羊海綿状脳症(OSE)、ヒト海綿状脳症(CJD)などに対する治療に使用することを意図する医薬品の製造のために使用されることを特徴とする。
【0067】
この新規な用途の目的のために、海綿状脳症は、少なくとも1種類の抗ラジカル物質と医薬的に許容されるベヒクルとからなるヒトもしくは動物用治療組成物を投与することによって予防される。
【0068】
これらの抗ラジカル物質としては、主に、ポリフェノール類、それから誘導されるグリコン類、それらの硫酸誘導体などが挙げられる。これらの物質のうち、硫酸化フェルラ酸(I)が特に好ましい。この化合物は、下記反応式(化学式5)に示す2つの異なる経路によって加水分解することができる。
【0069】
下記反応式(化学式5)は、工程1におけるスルファターゼによる分解によってトランス型フェルラ酸(II)が得られ、他方、工程2によるデメチラーゼによる分解によって、硫酸化カフェイン酸(IV)を経由して最終的にトランス型カフェイン酸(III)が得られることを示している。この結果、硫酸化フェルラ酸(I)は加水分解によって使用可能な二重の抗ラジカルリザーブからなっている。これらの生成物の抗ラジカル活性は、加水分解なしの従来法であるKRL試験と、加水分解後のこの発明方法によって決定される。得られた結果は、表1に示す通りであり、表中にはこの発明の加水分解の値が示されている。
【0070】
【化5】
【0071】
【表1】
【0072】
硫酸化フェルラ酸(I)をフェルラ酸のオシド、例えばグルクロニドで置換し、加水分解をスルファターゼの代わりに適切なオシダーゼを用いて行った場合にも同様の結果が得られる。
【0073】
フラボノイドファミリーのポリフェノール類や、1個もしくはそれ以上の加水分解可能なオシド残基を有するために、アグリコン類、例えばシアニジン、ゲニステイン、プロシアニジン、カテキンならびにこれらのグリコン類などよりもより大きな抗ラジカルリザーブを有するグリコン類もまた使用するのが適している。
【0074】
この発明の方法は、第2の細胞物質として、例えば、全血、赤血球もしくは血清を使用することによって標準化される。例えば、マイクロプレートウエルなどの溶液貯蔵部に、希釈液(1440μl)に添加した血液(60μl)、希釈液(1440μl)で50%に前もって希釈した赤血球(60μl)または希釈液(1440μlに添加した血清(60μl)の希釈溶液(S)を調製し、その希釈溶液(S)50μlを希釈液(220μl)を添加したマイクロプレートのウェルに注入する。この混合溶液を酵素的に加水分解し、必要に応じて洗浄し、フリーラジカル発生体(例えばAAPH)を注入した後、フリーラジカルの放出を37℃で開始する。上記したT1/2値およびその他のパラメーターを決定する。加水分解後の中間洗浄は、必須ではないので省いてもよい。
【0075】
全血、赤血球もしくは血清を含むかまたはこれらに関連している試験サンプル(50μl)は、必要に応じて希釈し、マイクロプレートウエルに注入した希釈液(220μl)に添加する。このサンプルを加水分解して、フリーラジカル発生体を添加し、フリーラジカル放出を開始した後、この発明方法に従ってT1/2値ならびにその他のパラメーターを決定する。この方法には、例えば、下記量の酵素を使用するのが推奨される。なお、酵素の量において、記号Uは酵素の国際単位を示す。
β−グルコシダーゼ、最終濃度11.11U/ml(3U/ウェル);
スルファターゼ、最終濃度3U/ml(0.8U/ウェル);および/または、
β−グルクロニダーゼ、最終濃度2222.22U/ml(600U/ウェル)。
【0076】
この発明の他の利点および特長は、下記実施例ならびに試験方法を参照することにより、より一層理解することができる。当然のことながら、この発明は、下記実施例ならびに試験方法によって限定されるものではなく、下記実施例などは例示として記載されている。
【実施例】
【0077】
(実施例1:ケルセチン/イソケルシチン)
対照として雌羊の全血を用いたラジカル攻撃(AAPHによる)に対する抵抗性を評価した。この評価は、フラボノイドのアグリコン型であるケルセチンと、そのグリコン型であるイソケルシチンの存在下で、工程(α)の加水分解を行わない場合と加水分解を行った場合によって実施した。
【0078】
図3は、前加水分解をせずに、ケルセチンもしくはイソケルシチンの量を20μMから100μMに増量した場合に得られた結果を示している。図4は、図3の結果に基づいてプロットしたもので、T1/2 値を濃度の関数として評価すると、ケルセチンがイソケルシチンよりも一層強い抗酸化力を有することを示している。
【0079】
図5は、β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)+スルファターゼ(0.8U/ウェル)+β−グルクロニダーゼ(600U/ウェル)の混合物による加水分解後では、ケルセチンとイソケルシチンとは同じ抗ラジカル抵抗性を有していることを示している。したがって、イソケルシチンは、酵素混合物によって加水分解されてケルセチンに変換され、フェノール機能を放出して、リザーブ中に保持されて最初は利用できなかった活性が抗ラジカル活性となって発生している。
さらに、図5は、イソケルシチンまたはケルセチンの濃度が0であるとき、酵素混合物(β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)+スルファターゼ(0.8U/ウェル)+β−グルクロニダーゼ(600U/ウェル))の活性を示している。
【0080】
(実施例2:血清についての試験)
上記モード(III)に従って、健康な雌羊(A)またはスクレイピー感染雌羊(B)の凍結血清について実験を行った。なお、この血清は、β−グルコシダーゼによる前酵素加水分解なしにまたは酵素加水分解によって(酵素量を0U/ml、1.11U/ml、5.55U/ml、11.1U/mlと増量して)検査した赤血球に関連する生物媒体として作用する。
得られた結果は表2に示す。なお、値は、バッチ方式で5回行った平均値であり、そのうち雌羊Aについては3バッチ、雌羊Bについては3バッチを行った。表中、記号SDは平均からの標準偏差を示し、記号CVは変化定数を示す。
【0081】
前加水分解をしなかった場合、雌羊Bはより良い抗ラジカル抵抗性を有していることが観察されている。このことは、病理学的状態に関連した酸化的攻撃に応答してリザーブを放出したことによる異常に基づいている。
【0082】
β−グルコシダーゼ1.11U/mlを用いて前加水分解した場合、加水分解をしなかった試験に対して評価可能な差異は認められない。
β−グルコシダーゼ5.55U/mlを用いて前加水分解した場合、雌羊Aの全抗ラジカルポテンシャルは雌羊Bよりもわずかに低いことが観察される。このことは、抗ラジカルリザーブが加水分解によってまだ完全には放出されていないことを示している。
【0083】
他方、β−グルコシダーゼ11.1U/mlを用いて前加水分解した場合、雌羊Aの全抗ラジカルポテンシャルは雌羊Bよりもより高いことが観察される。このことは、抗ラジカルリザーブが加水分解によって最終的に可動してしまったことを示している。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例3:ワインについての試験)
赤デザートワインと黒デザートワインの2種類のワインについて試験をした。各ワインは、2つのバッチに分けて、第1のバッチは植物性肥料(ポリフェノール類を含む)をスプレーし、第2のバッチは未処理でコントロールとして使用した。生育期間中、粉砕葉、粉砕根および濃縮果汁を希釈バッファに懸濁もしくは希釈して、この発明による抗ラジカル防御ポテンシャルを決定する方法に使用した。この結果、処理ワインは未処理ワインよりも高いポテンシャルを示すことが認められた。ブドウジュースについての結果を図6に示す。
【0086】
(実施例4:ブタについての試験)
健康と考えられる15匹のブタについて試験を行った。試験は、時間を省くために、酵素による加水分解を上記フリーラジカル発生体AAPHから37℃で放出されたフリーラジカル界に暴露することによって行った。
得られた結果は表3に示す。表中、酵素(スルファターゼ(3U/ml)またはβ−グルクロニダーゼ(2500U/ml)を用いて)による加水分解の関数として、値T1/2 、N’(正常領域、つまり加水分解の存在しない領域Nならびに、この場合には、加水分解して局在化した領域Nh)、潜伏期間(lag time)および最大ラジカル溶解率(Vmax)を示している。
【0087】
(実施例5:人についての試験)
健常と考えられる成人男女97名のグループと糖尿病の成人男女92名のグループについて試験をした。両グループの各人より採血した全血を、(1)第1の実験では、上記フリーラジカル発生体AAPHから37℃で発生させたフリーラジカル界に暴露する試験と、(2)第2の実験では、酵素(β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)、スルファターゼ(0.8U/ウェル)、β−グルクロニダーゼ(600U/ウェル)またはこれらの3元混合物)を用いて、同一のフリーラジカル界に暴露している間に加水分解を行う試験を行った。なお、各グループ自体をコントロールとした。
β−グルコシダーゼ(3U/ウェル)による加水分解で得られた結果は表4に示す。表によれば、健常者においては、平均のT1/2 値は、加水分解なしの92.90minから、加水分解された263.85min(つまり184%の放出リザーブ)まで変化する一方、糖尿病患者においては、平均のT1/2 値が、加水分解なしの99.54minから、加水分解された。215.94min(つまり116%の放出リザーブ)まで変化することが示されている。ヒト血清について得られた結果も同様であった。
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
これらの一連の試験結果は、この発明の方法が動物ならびに植物、例えば穀類(例えば小麦、トウモロコシ、米など)、油用穀物(例えば大豆、落花生、菜種など)、ブドウ、綿花などの生育をモニターするのに使用できることを示している。
【0091】
また、この発明の方法は、家畜の健康状態の変化をモニターすることができる。この方法によって、正常領域(つまり、正常値の範囲)を種毎に決定することができる。この正常領域以下では、動物は、必要に応じて、選別したり、またはそれらの組織を食用から除去するという目的を持って、注意深くモニターすべきである。この方法で得られた結果を適用するに際しては、屠殺場に送るべき動物に対して、抗ラジカル物質、例えば硫酸化フェルラ酸、そのオシド類、ポリフェノール類などを添加した飼料を給餌することが特に推奨される。かかる飼料は、栄養添加物として、高ポリフェノール含量のココア抽出物や、ココア豆粘液ならびに/もしくはココア豆汁を添加したココア果皮に基づく組成物も含んでいてもよい。
【0092】
硫酸化フェルラ酸、そのオシド類(例えばグルクロニド)、ポリフェノール類、上記ココア抽出物ならびに/もしくは上記ココア果皮に基づく組成物などは、人のストレス状態を処置ならびに予防するためにも使用することができる。
【0093】
(実施例6:着色料の使用)
上記青色着色料(メチレンブルー)と、赤色着色料(OPC抽出物)は、細胞物質なしで実施するこの発明の方法を標準化する目的で使用した。下記に示す結果は6試験の平均値である。
【0094】
第1の試験では、フリーラジカルの放出が生起されていない時間T=0(To)では、それ単独で使用された場合(図7aの曲線1)でも、FRGに関連して使用された場合(図7aの曲線2)でも、その青色着色料の濃度関数としての光学濃度(260nm)は直線状であることが証明された。曲線1は、下記式:
y = 0.09986x + 0.03278 r2 = 0.9999
で表されるような直線状であり、曲線2は、下記式:
y = 0.0964x + 0.0431 r2 = 0.9996
で表されるような直線状である。
赤色着色料については、OD(450nm)の変化が直線状である時間Toでは、図7bの曲線1(FRGなし)および曲線2(FRGあり)は互いにほぼ重なりあっている。曲線1は、下記式:
y = 0.03268x + 0.0608 r2 = 0.9997
で表され、曲線2は、下記式:
y = 0.03264x + 0.0511 r2 = 0.9999
で表される。
【0095】
第2の試験では、各着色料に対するFRGの経時的効果を調べた。この実験では、620nmで測定した青色着色料のODは下降し、450nmで測定した赤色着色料のODは上昇した。その結果を図7c(青色着色料)と図7d(赤色着色料)に示す。
【0096】
第3の実験では、青色着色料のODの変化は上昇していて(図7e)、赤色着色料のODも上昇していた(図7f)。この実験では着色料のOD変化は、時間Toならびにフリーラジカル放出後における初期ERG濃度の関数として調べた。
【0097】
(実施例7:4系列の家禽(Gallinaceae) についての試験)
4系列の家禽の全血、赤血球ならびに血清の抗ラジカル抵抗力およびリザーブR1(グルコシダーゼによる加水分解)、リザーブR2(スルファターゼによる加水分解)ならびにリザーブR3(グルクロニダーゼによる加水分解)の放出について調べた。調べた家禽は、異なる品種の4系列のニワトリ(バッチA1、A2、B1ならびにB2)、ブロイラーニワトリ(バッチA1ならびにA2)および産卵用ニワトリ(バッチB1ならびにB2)からなり、各バッチは12羽からなる。
【0098】
上記試験にて平均ならびに標準偏差(SD)について得られた結果は表5および図8a〜8iに示す。
得られた一連の結果は、動物における抗ラジカル防御リザーブの変化についての研究によって、標的とする実験カテゴリーを決めることができることを示している。かかるカテゴリーとしては、例えば、生育、重量、再生能力および、例えば、ストレスならびに/もしくは疾患に対する抵抗力を支配する遺伝的特性などに関する生産物の質などが挙げられる。
【0099】
【表5】
【0100】
(実施例8:ラットについての試験)
ストレプトゾトシンで処理して糖尿病を発症させたラットと、対照としてのラットについて試験をした。その結果は図9aから図9dに示す。
ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させたラット血清の抗フリーラジカル防御力(血清防御力=全血防御力−赤血球防御力)を生起させた。この防御力が生起すると、放出された循環リザーブが損傷を受けることになる。例えば、リザーブR1が3分の1以上低下したのに、T1/2 値は対照ラットと糖尿病ラットの赤血球では実際には等しいままであった。このことこそが糖尿病の兆候であるからである。赤血球中のリザーブR1およびR2は、対照ラットと、糖尿病ラットとの間ではほとんど同一であり、また細胞内リザーブR3は増加し、赤血球を保護して血清リザーブを損傷することになる。
【0101】
(実施例9:ワイン劣化についてのモニター)
5種類のワインについて試験をした。ワイン1は40年物、ワイン2はワイン1より若くて14年物、ワイン3、4ならびに5はそれぞれ同一ブドウ栽培プロットからの1922年、1997年ならびに2000年に製造した物である。劣化は、通常、各ボトルを開けて、酸化を進行させたり、または人工的にフリーラジカルに暴露することによって促進する。
得られた結果は、図10a(従来技術のKRL試験による)ならびに図10b(この発明方法による)に示す。図10aは、ワイン2がその酸化抵抗力があまりにも小さいので、完全に劣化していることを示している。図10bは、ワイン5がワイン4よりも早く劣化したこと、またワイン1(マスターピース)が現在から数年後経ってもその風味を享受できることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0102】
簡潔に言えば、この発明の方法は、
(1)人、動物ならびに植物の健康状態、例えば、その栄養状態(ならびに/もしくは栄養素取り込み)、ストレス管理、劣化遅延などを生体外で(インビトロ)モニターすること、ならびに動物や植物を選別するための遺伝的ポテンシャルを生体外でモニターすることに特に適しているとともに、
(2)抗ラジカル物質が、全抗ラジカル防御の制御システムが崩壊している海綿状脳症(例えばBSE、OSE、CJDなど)や自己免疫疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、アレルギーなど)を予防するのに必須であることを示している。
【0103】
したがって、この発明に係る方法は、食物、食品もしくは栄養サプリメント(「nutraceutics」)ならびに飲料の栄養価値もしくは値を抗ラジカル的に評価するとともに、食物、食品もしくは栄養サプリメントならびに飲料の工業的加工の各工程を、人、動物ならびに植物の健康を保全し、その環境を尊重する目的でモニターするために特に有用である。
【0104】
そこで、この発明によれば、この発明方法を、動物ならびに植物の生育を生体外でモニターすること、ならびに/もしくは栄養取り込みを生体外でモニターすることによって、それらの全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で決定するために使用すること、および人の健康状態をモニターし、ストレスを管理し、ならびに/もしくは劣化をモニターするために、この発明方法を生体外で実施することによって、全抗ラジカル防御ポテンシャルを生体外で決定するために使用すること、が推奨される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法であって、フリーラジカルを細胞溶解を生起させる手段として使用し、該細胞溶解を評価する方法において、フリーラジカル発生体からのフリーラジカルを使用して、得られる反応媒体中に該フリーラジカルが放出される前もしくは後に、細胞物質を加水分解することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記方法が下記の工程から構成されていることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
(α)サンプルの加水分解工程;
(i)前記サンプルが、生物からの第1の細胞物質であって、該第1の細胞物質が細胞組織、細胞もしくは細胞フラグメントであるか、または、
(ii)前記サンプルが、物理、化学もしくは生物媒体に関与する第2の細胞物質であって、該第2の細胞物質が細胞組織、細胞、細胞フラグメントもしくはリポソーム含有合成壁からなる標準物質であること;
(β)上記加水分解工程中もしくは後に、前記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる接触工程;
(δ)前記フリーラジカル発生体からフリーラジカルの放出を生起させる放出工程;および
(γ)前記生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルを評価するために、前記第1のもしくは第2の細胞物質の溶解を光学測定によって対照サンプルに対してモニターするモニター工程。
【請求項3】
請求項2に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記加水分解工程(α)において、前記第1の細胞物質もしくは第2の細胞物質の50%の細胞溶解に相当するとともに、前記第1の細胞物質もしくは前記物理、化学もしくは生物媒体に関連する第2の細胞物質の全抗ラジカルポテンシャルを表すT1/2値を決定することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記第1の細胞物質が全血であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項5】
請求項2または3に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記第2の細胞物質が全血または赤血球であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記生物媒体が人または温血動物の血清であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項7】
請求項2に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記加水分解工程(α)における加水分解が(i)酵素的加水分解、(ii)酸もしくはアルカリによる加水分解、または(iii)物理媒体、例えば照射媒体による分裂であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか1項に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記第2の細胞物質が、フリーラジカルによって分解可能な着色料で置換されていることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、試験すべき物理、化学もしくは生物媒体を含有するサンプルの抗ラジカル抵抗性を評価するために、該方法が下記工程から構成されていることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
(α)フリーラジカルで分解可能であって、物理、化学もしくは生物媒体と関連する着色料のサンプルの加水分解工程;
(β)上記加水分解工程中もしくは後に、前記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる接触工程;
(δ)前記フリーラジカル発生体からフリーラジカルの放出を生起させる放出工程;および
(γ)前記着色料の溶解を光学測定によって対照サンプルに対してモニターするモニター工程。
【請求項10】
請求項8または9に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記着色料がメチレンブルーまたはオリゴアントシアニジンから抽出赤色着色料であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法を、動物ならびに/もしくは植物の成長を生体外でモニターするためにおよび/またはそれらに提供された栄養取り込みを生体外でモニターするために使用することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法を、人の健康状態をモニターするために、ストレスを管理するために、および/または老化をモニターするために、生体外で実施することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法において、前記抗ラジカル物質が硫酸化フェルラ酸または該フェルラ酸のオシド類の1つ、例えばグルクロニドであることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法。
【請求項14】
抗ラジカル物質を医薬品製造のために使用する使用方法であって、抗ラジカル物質を、ウシ海綿状脳症(BSE)、ヒツジ海綿状脳症(OSE)またはヒト海綿状脳症(CJD)に対するヒトもしくは動物の治療薬として使用することを意図する医薬品の製造に使用することを特徴とする抗ラジカル物質の使用方法。
【請求項15】
請求項11に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法をワインの劣化をモニターするために使用することを特徴とする抗ラジカル物質の使用方法。
【請求項1】
生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法であって、フリーラジカルを細胞溶解を生起させる手段として使用し、該細胞溶解を評価する方法において、フリーラジカル発生体からのフリーラジカルを使用して、得られる反応媒体中に該フリーラジカルが放出される前もしくは後に、細胞物質を加水分解することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記方法が下記の工程から構成されていることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
(α)サンプルの加水分解工程;
(i)前記サンプルが、生物からの第1の細胞物質であって、該第1の細胞物質が細胞組織、細胞もしくは細胞フラグメントであるか、または、
(ii)前記サンプルが、物理、化学もしくは生物媒体に関与する第2の細胞物質であって、該第2の細胞物質が細胞組織、細胞、細胞フラグメントもしくはリポソーム含有合成壁からなる標準物質であること;
(β)上記加水分解工程中もしくは後に、前記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる接触工程;
(δ)前記フリーラジカル発生体からフリーラジカルの放出を生起させる放出工程;および
(γ)前記生物または物理、化学もしくは生物媒体の全抗ラジカル防御ポテンシャルを評価するために、前記第1のもしくは第2の細胞物質の溶解を光学測定によって対照サンプルに対してモニターするモニター工程。
【請求項3】
請求項2に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記加水分解工程(α)において、前記第1の細胞物質もしくは第2の細胞物質の50%の細胞溶解に相当するとともに、前記第1の細胞物質もしくは前記物理、化学もしくは生物媒体に関連する第2の細胞物質の全抗ラジカルポテンシャルを表すT1/2値を決定することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記第1の細胞物質が全血であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項5】
請求項2または3に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記第2の細胞物質が全血または赤血球であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記生物媒体が人または温血動物の血清であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項7】
請求項2に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記加水分解工程(α)における加水分解が(i)酵素的加水分解、(ii)酸もしくはアルカリによる加水分解、または(iii)物理媒体、例えば照射媒体による分裂であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項8】
請求項2ないし7のいずれか1項に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記第2の細胞物質が、フリーラジカルによって分解可能な着色料で置換されていることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、試験すべき物理、化学もしくは生物媒体を含有するサンプルの抗ラジカル抵抗性を評価するために、該方法が下記工程から構成されていることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
(α)フリーラジカルで分解可能であって、物理、化学もしくは生物媒体と関連する着色料のサンプルの加水分解工程;
(β)上記加水分解工程中もしくは後に、前記サンプルをフリーラジカル発生体に接触させる接触工程;
(δ)前記フリーラジカル発生体からフリーラジカルの放出を生起させる放出工程;および
(γ)前記着色料の溶解を光学測定によって対照サンプルに対してモニターするモニター工程。
【請求項10】
請求項8または9に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法において、前記着色料がメチレンブルーまたはオリゴアントシアニジンから抽出赤色着色料であることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法を、動物ならびに/もしくは植物の成長を生体外でモニターするためにおよび/またはそれらに提供された栄養取り込みを生体外でモニターするために使用することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法を、人の健康状態をモニターするために、ストレスを管理するために、および/または老化をモニターするために、生体外で実施することを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法において、前記抗ラジカル物質が硫酸化フェルラ酸または該フェルラ酸のオシド類の1つ、例えばグルクロニドであることを特徴とする全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法。
【請求項14】
抗ラジカル物質を医薬品製造のために使用する使用方法であって、抗ラジカル物質を、ウシ海綿状脳症(BSE)、ヒツジ海綿状脳症(OSE)またはヒト海綿状脳症(CJD)に対するヒトもしくは動物の治療薬として使用することを意図する医薬品の製造に使用することを特徴とする抗ラジカル物質の使用方法。
【請求項15】
請求項11に記載の全抗ラジカル防御ポテンシャルの生体外決定方法の使用法をワインの劣化をモニターするために使用することを特徴とする抗ラジカル物質の使用方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図8f】
【図8g】
【図8h】
【図8i】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10a】
【図10b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図7d】
【図7e】
【図7f】
【図8a】
【図8b】
【図8c】
【図8d】
【図8e】
【図8f】
【図8g】
【図8h】
【図8i】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10a】
【図10b】
【公表番号】特表2007−514404(P2007−514404A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536129(P2006−536129)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002716
【国際公開番号】WO2005/040835
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506140376)
【氏名又は名称原語表記】PROST,Michel
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002716
【国際公開番号】WO2005/040835
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(506140376)
【氏名又は名称原語表記】PROST,Michel
【Fターム(参考)】
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