説明

全方向駆動玩具

【課題】玩具の進行方向を理解できない幼児であっても容易に遊ぶことができるようにするために、手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能な全方向駆動玩具を提供する。
【解決手段】カバー体11と、前記カバー体11の内側に水平方向に回動自在に配置される駆動体20と、を備えた。前記カバー体11の下面11bには、前記駆動体20の下面20aを囲むように複数の支持駒15を設けた。前記駆動体20の下面20aには、前記回動の中心軸に対して偏心した位置に車輪22を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手押し移動によって駆動させることが可能な玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手押し移動によって駆動させることが可能な玩具が知られている。こうした玩具は、幼児であっても容易に取り扱うことができるため、幼児用の玩具として多く実用に供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体に後方車軸、前方車軸およびオルゴールを設け、後方車軸とオルゴールの回転軸とを連動させたオルゴール付き走行玩具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−285266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の玩具では、車軸と垂直な方向に手押しした場合にしか駆動しないため、玩具の進行方向を理解できない年少の幼児がうまく遊ぶことができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、玩具の進行方向を理解できない幼児であっても容易に遊ぶことができるようにするために、手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能な全方向駆動玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0008】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の全方向駆動玩具は、手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能な全方向駆動玩具であって、カバー体と、前記カバー体の内側に水平方向に回動自在に配置される駆動体と、を備え、前記カバー体の下面には、前記駆動体の下面を囲むように複数の支持駒が設けられ、前記駆動体の下面には、前記回動の中心軸に対して偏心した位置に車輪が設けられていることを特徴とする。
【0010】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0011】
すなわち、前記駆動体には、前後を表示する識別情報が外部から視認可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項2記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0013】
すなわち、前記カバー体は、全周に渡って透明な部材で形成された窓部を備えており、前記駆動体の前記識別情報は、前記窓部を介して外部から視認可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、カバー体と、前記カバー体の内側に水平方向に回動自在に配置される駆動体と、を備え、前記カバー体の下面には、前記駆動体の下面を囲むように複数の支持駒が設けられ、前記駆動体の下面には、前記回動の中心軸に対して偏心した位置に車輪が設けられている。このため、カバー体を持って手押し移動したときに、どの方向に移動させたとしても、車輪が進行方向に向けられるまでカバー体の内側で駆動体が回動する。すなわち、手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能であるので、玩具の進行方向を理解できない幼児であっても容易に遊ぶことができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、前記駆動体には、前後を表示する識別情報が外部から視認可能に設けられている。このため、カバー体を持って手押し移動し、これにより駆動体が回動したときに、外部から視認可能な識別情報が一緒に回動するので、進行方向に合わせて識別情報が示す前後が自動的に変化する。例えば、識別情報として運転手の人形などを設ければ、運転手が常に進行方向を向いているように形成することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、前記カバー体は、全周に渡って透明な部材で形成された窓部を備えており、前記駆動体の前記識別情報は、前記窓部を介して外部から視認可能である。このため、駆動体を外部に露出させなくても駆動体の識別情報を視認可能にすることができる。駆動体を外部に露出させた場合、遊んでいる人が誤って駆動体を持って操作した場合には駆動体が回動できないので玩具を駆動できないが、駆動体を外部に露出させないようにすれば、このような問題が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】全方向駆動玩具10を斜め上から見た外観図である。
【図2】全方向駆動玩具10を斜め下から見た外観図である。
【図3】全方向駆動玩具10の分解斜視図である。
【図4】全方向駆動玩具10の(a)平面図、(b)正面図、(c)底面図、(d)側面図である。
【図5】全方向駆動玩具10のA−A断面図である。
【図6】全方向駆動玩具10のA−A断面を一部拡大した図である。
【図7】全方向駆動玩具10のB−B断面斜視図である。
【図8】全方向駆動玩具10の作動を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0019】
本実施形態に係る全方向駆動玩具10は、手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能に形成されたものであり、図1及び図2に示すように、カバー体11と、前記カバー体11の内側に水平方向に回動自在に配置される駆動体20と、を備えている。
【0020】
カバー体11は、駆動体20を回動自在に支持するものであり、図3等に示すように、全方向駆動玩具10の底部に配置される下カバー14と、前記下カバー14の上部にカバー用ネジ16によって固定される上カバー13と、前記上カバー13の上部に固定される透明ドーム12と、を備えている。
【0021】
透明ドーム12は、図3に示すように、透明な樹脂で形成された中空略半球状の部材である。この透明ドーム12は、開口縁が下になるように上カバー13の上部に固定される。この透明ドーム12が上カバー13の上部に固定されることで、図1に示すように、後述する人形24を外部から視認可能とするための窓部11aが全周に渡って形成されるようになっている。なお、本実施形態においては、透明ドーム12は、開口縁に設けられた複数の差込突起12aが上カバー13上面の差し込み孔(図示せず)に圧入されることで上カバー13に固定されているが、透明ドーム12と上カバー13との固定方法はこれに限らず、例えば、差込突起12a以外の部位を圧入したり、接触面を接着剤で接着したりしてもよい。
【0022】
上カバー13は、下カバー14とともに駆動体20の下部を覆うものであり、図1に示すように、上面中央に駆動体20を回動可能に受けるための軸受部13aが設けられている。
【0023】
下カバー14は、カバー体11の下面11bを形成する部材である。図2に示すように、この下カバー14の下面(すなわちカバー体11の下面11b)には駆動体20の下面20aを露出させるように中央開口14cが設けられており、この中央開口14cを囲むように複数(本実施形態においては3つ)の支持筒部14aが下方に突出形成されている。
【0024】
図2に示すように、この支持筒部14aは周方向に等間隔に設けられており、それぞれの支持筒部14aの内部には球体の支持駒15が収容され、下端の開口14bから球面が露出するようになっている。なお、支持筒部14aの下端の開口14bはやや縮径して設けられており、この縮径部で支持駒15を回転可能に支持している。この支持駒15は、後述する車輪22とともに接地するように形成されており、これによって全方向駆動玩具10が倒れないように支持するとともに、全方向駆動玩具10が接地面を移動する際には回転して、全方向駆動玩具10がスムーズに動くようにしている。
【0025】
一方、駆動体20は、図3に示すように、車輪22を回転可能に支持する駆動ボックス21と、前記駆動ボックス21の上部に固定されるジョイント25と、前記ジョイント25の上部に固定される人形24と、を備えており、これらが一体的にカバー体11の内部で水平方向に回動自在に配置されている。
【0026】
駆動ボックス21は、図3に示すように、略円筒状であり、その大部分が上カバー13と下カバー14とで形成される空間内に収容されるものである。この駆動ボックス21の上部には突軸部21aが突出形成されている。この突軸部21aは、図5〜7に示すように、上カバー13の軸受部13aの中央に設けられた軸孔13bを貫通するように配置され、駆動体20の回動軸となるものである。また、この突軸部21aには、フランジ21dが設けられており、上カバー13の軸受部13aを下から支持するように形成されている。
【0027】
また、この駆動ボックス21の下面からは、駆動ボックス21の内部に設けられた車輪軸23(図7参照)によって回転可能に支持された車輪22が露出している。なお、この車輪22ははずみ車で形成されており、所定の方向に回転させた時に回転力を保存し、慣性による回転が持続するように形成されている。この車輪22は、図4(c)に示すように、突軸部21a(回動の中心軸)に対して偏心した位置に設けられている。すなわち、車輪22の車輪軸23は、突軸部21aと垂直に配置され、かつ、鉛直方向に投影したときに突軸部21aの中心を通らないように設けられている。
【0028】
ジョイント25は、駆動ボックス21の突軸部21aの上端にジョイント用ネジ26によって取り付けられる部材であり、詳しくは、図6に示すように、ジョイント25の貫通孔25bに突軸部21aを貫通させ、この突軸部21aのネジ孔21cにジョイント用ネジ26を差し込むことで、ジョイント用ネジ26がジョイント25の抜け止めとして機能するように構成されている。ジョイント25は、このように突軸部21aの上端に取り付けられることで、突軸部21aのフランジ21dとともに上カバー13の軸受部13aを上下から挟むように支持するものである。このとき、図6に示すように、ジョイント25とフランジ21dとの間には、軸受部13aの厚みよりも大きな間隙が設けられており、この間隙により駆動体20が水平方向に回動できるように余裕が持たせてある。
【0029】
人形24は、ジョイント25の上部に嵌合固定されるものであり、詳しくは、図6の示すように、下方に開口した嵌合孔24aに対してジョイント25を差し込むことで、ジョイント25の上部に固定される部材である。この人形24は、図4等に示すように、顔の向きによって前後が分かるように形成されている。この人形24は、上カバー13の上部すなわち透明ドーム12の内側に配置されており、窓部11aを介して顔の向きが外部から視認可能となっている。
【0030】
なお、図3に示すように、突軸部21aの上端には切欠き21bが設けられており、この切欠き21bがジョイント25に係合することで、突軸部21aとジョイント25との回転方向の位置決めがされている。また、ジョイント25の上端には切欠き25aが設けられており、この切欠き25aが人形24に係合することで、ジョイント25と人形24との回転方向の位置決めがされている。この相互の位置決めにより、人形24の向きと車輪22の向きとが所定の関係となるように形成されている。具体的には、図4等に示すように、人形24の前後方向と車輪22の前後方向とが一致するように各部材が組み合わされる。また、このとき車輪22は、駆動体20の回動の中心軸に対して偏心した位置に設けられているため、水平方向に見て人形24の後方向に変位して配置されている。
【0031】
上記のように形成された全方向駆動玩具10は、以下のように作動する。
【0032】
図8に示すように、全方向駆動玩具10が手押しされることによって任意の方向に移動すると、その移動方向に対して車輪22の摩擦抵抗が最も小さくなる位置まで駆動体20が回動する。詳しくは、車輪22が進行方向に対して平行となるように(言い換えると、車輪軸23が進行方向に対して直交するように)駆動体20が回動する。なお、車輪22は回動の中心軸に対して偏心した位置に設けられているため、車輪22が進行方向に対して平行となる位置は(1)車輪22が進行方向にみて前方にある位置と(2)車輪22が進行方向にみて後方にある位置との2つが考えられるが、車輪22と接地面との間に摩擦抵抗が加わるため、車輪22が進行方向にみて後方に位置するように駆動体20が回動する。このように駆動体20が回動することで、人形24が進行方向前方を向く。このように、全方向駆動玩具10をどのような方向に駆動させたとしても、駆動体20が回動してすべての方向に駆動させることができるとともに、常に人形24が進行方向前方を向くようにすることができる。そして、このように手押しによって駆動させた全方向駆動玩具10から手を離すと、車輪22がはずみ車の作用によって回転し続けるため、全方向駆動玩具10はある程度の距離を継続して移動し続ける。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、カバー体11と、前記カバー体11の内側に水平方向に回動自在に配置される駆動体20と、を備え、前記カバー体11の下面11bには、前記駆動体20の下面20aを囲むように複数の支持駒15が設けられ、前記駆動体20の下面20aには、前記回動の中心軸に対して偏心した位置に車輪22が設けられている。このため、カバー体11を持って手押し移動したときに、どの方向に移動させたとしても、車輪22が進行方向に向けられるまでカバー体11の内側で駆動体20が回動する。すなわち、手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能であるので、玩具の進行方向を理解できない幼児であっても容易に遊ぶことができる。
【0034】
また、前記駆動体20には、前後を表示する識別情報(人形24の顔)が外部から視認可能に設けられている。このため、カバー体11を持って手押し移動し、これにより駆動体20が回動したときに、外部から視認可能な識別情報が一緒に回動するので、進行方向に合わせて識別情報が示す前後が自動的に変化する。このため、人形24が常に進行方向を向いているように形成されている。
【0035】
また、前記カバー体11は、全周に渡って透明な部材で形成された窓部11bを備えており、前記駆動体20の前記識別情報は、前記窓部11bを介して外部から視認可能である。このため、駆動体20を外部に露出させなくても駆動体20の識別情報を視認可能にすることができる。駆動体20を外部に露出させた場合、遊んでいる人が誤って駆動体20を持って操作した場合には駆動体20が回動できないので玩具を駆動できないが、駆動体20を外部に露出させていないので、このような問題が発生しない。
【符号の説明】
【0036】
10 全方向駆動玩具
11 カバー体
11a 窓部
11b 下面
12 透明ドーム
12a 差込突起
13 上カバー
13a 軸受部
13b 軸孔
14 下カバー
14a 支持筒部
14b 開口
14c 中央開口
15 支持駒
16 カバー用ネジ
20 駆動体
20a 下面
21 駆動ボックス
21a 突軸部
21b 切欠き
21c ネジ孔
21d フランジ
22 車輪
23 車輪軸
24 人形
24a 嵌合孔
25 ジョイント
25a 切欠き
25b 貫通孔
26 ジョイント用ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手押し移動によって任意の方向に駆動させることが可能な全方向駆動玩具であって、
カバー体と、
前記カバー体の内側に水平方向に回動自在に配置される駆動体と、
を備え、
前記カバー体の下面には、前記駆動体の下面を囲むように複数の支持駒が設けられ、
前記駆動体の下面には、前記回動の中心軸に対して偏心した位置に車輪が設けられていることを特徴とする、全方向駆動玩具。
【請求項2】
前記駆動体には、前後を表示する識別情報が外部から視認可能に設けられていることを特徴とする、請求項1記載の全方向駆動玩具。
【請求項3】
前記カバー体は、全周に渡って透明な部材で形成された窓部を備えており、
前記駆動体の前記識別情報は、前記窓部を介して外部から視認可能であることを特徴とする、請求項2記載の全方向駆動玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−31516(P2013−31516A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168373(P2011−168373)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(599131996)株式会社シャイン (9)
【Fターム(参考)】