説明

全量噴射エアゾール装置

【課題】従来の全量噴射エアゾール装置の問題点を解決して、密閉空間中に均一にエアゾール組成物を散布できる全量噴射エアゾール装置を提供すること。
【解決手段】エアゾール組成物の噴射剤/原液の比率(容量)が70/30〜90/10であり、かつ床面積10〜16.5m2 に均一に散布できる量のエアゾール組成物を全量噴射するに要する時間が1分以内であることを特徴とする全量噴射エアゾール装置。好ましくはバルブのアンダータップ/ステムの孔面積比が7〜12であり、かつアンダータップ孔面積が3〜5mm2 であり、さらに好ましくはステム/ノズル孔面積比が0.2〜2であり、かつベーパ−タップ孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール製品に関するものであり、さらに詳しくは限定された空間に、短時間に、エアゾール製品1缶を一時に全量噴射して用いるエアゾール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
殺虫剤や消臭剤などの有効成分を少量の溶剤に溶解し、該溶液と噴射剤を噴射装置付きの耐圧容器に入れてなるエアゾール製品は、他の剤形の殺虫剤、例えば粉剤、乳剤、油剤、燻蒸製品や燻煙製品などよりも操作が簡単であり、周囲に汚れを発生させることがないなどの利点があるので便利に使用される。
殺虫用のエアゾール製品には、対象となる害虫に直接エアゾール組成物を噴射して殺虫することも行われるが、最近では害虫を駆除しようとする密閉空間の床の中央にエアゾール製品の缶を置き、缶中のエアゾール組成物全量を一時に噴射して密閉空間中の害虫を駆除することが行われている。この形式のエアゾール製品の缶を「全量噴射エアゾール装置」と呼んでいるが、この全量噴射エアゾール装置を用いる密閉空間中の害虫駆除技術においてその効果が有効に得られるために重要とされている点は、密閉空間中(特にその床面)にできる限り均一にエアゾール組成物を散布することである。
【0003】
この目的のために特許文献1および特許文献2に複数の噴射口を有する全量噴射エアゾール装置が提案されているが、そこで得られる、密閉空間の容積または床面積に対する噴射されたエアゾール組成物の広がりは、なお十分といえない。すなわち、従来の全量噴射エアゾール装置では内容物を床面のみならず、天井の高さ方向にも部屋全体に広く拡散させるのが困難であった。また、床面だけをとっても、床の中心から壁面への方向において、内容物の拡散にバラツキがあった。これは、装置から単位時間に噴射される組成物量(以下全量噴射エアゾール装置の噴射速度あるいは噴射能力という。)が少ないため、部屋全体に均一にエアゾール組成物を散布することができないためであると思われる。
更に、噴射エアゾール装置の噴射部を改良して、エアゾール組成物噴射能力を増強した装置(特許文献1)の提案がある。しかし、これまた全量噴射エアゾール装置としてはなお不十分なものであった。
【特許文献1】特開平4−45735号公報
【特許文献2】特開平6−169676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来の全量噴射エアゾール装置の問題点を解決して、密閉空間中に均一にエアゾール組成物を散布できる全量噴射エアゾール装置を提供することにある。
特に、密閉空間中に均一にエアゾール組成物を散布できるためには、その空間内にできるだけ高く噴射することが好ましいことから、その空間内においてできるだけ高く、しかも均一に噴射して、均一に散布することができる全量噴射エアゾール装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の全量噴射エアゾール装置における前記問題点は、以下に示す本発明の全量噴射エアゾール装置によって解決される。
(1)噴射剤/原液の比率(容量)が70/30〜90/10であり、かつ床面積10〜16.5m2 当たりの噴射時間が1分以内であることを特徴とする全量噴射エアゾール装置。
(2)前記エアゾール装置のバルブのアンダータップ/ステムの孔面積比が7〜12であり、かつアンダータップ孔面積が3〜5mm2 であることを特徴とする前記(1)に記載の全量噴射エアゾール装置。
(3)ステム/ノズル孔面積比が0.2〜2であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の全量噴射エアゾール装置。
(4)ベーパータップ孔を有することを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の全量噴射エアゾール装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の全量噴射エアゾール装置を用いると、密閉空間中に均一にエアゾール組成物を散布できる。特に、本発明の全量噴射エアゾール装置によると、密閉空間に高くエアゾール組成物が散布されるので、遠くまで均一に散布することができる。このため、密閉空間中の床面だけでなく、その空間内の上方にいる害虫についても有効に作用する。
例えば、図2の(a)に示した天井の高さ2.5mの8畳の部屋の床面の中央に本発明の全量噴射エアゾール装置を置いて、1分間以内でエアゾール組成物の100mlを全量噴射させ、図2の(a)および(b)で示した測定部でのエアゾール組成物のシャーレへの付着量は、そのバラツキが小さいことから、床面の各部のみならず、少なくとも床面より2mの高さの面でもその平面内での付着量のバラツキが小さいことがわかる。さらに、有効成分の付着量の絶対量が多いことから、薬剤の効き目も確かであるといえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前記(1)において、床面積10〜16.5m2 当たりの噴射時間が1分以内であるとは、床面積10〜16.5m2 の密閉空間全体に、室の中心に正立させた状態で噴射させた時に、少なくとも床全体に均一に散布できる量のエアゾール組成物を1分以内に噴射でき、本発明の効果を達成できる能力の全量噴射エアゾール装置であることを意味する。言い換えれば、前記量のエアゾール組成物を1分以内に噴射する勢いで噴射すると床面積10〜16.5m2 に均一に散布できるということである。
従ってエアゾール組成物を散布すべき密閉空間の床面積が前記床面積より広い場合には前記能力の全量噴射エアゾール装置を複数用いるか、より噴射能力の大きい装置を用いて散布すれば良い。
なお、本発明の全量噴射エアゾール装置は噴射口(ノズルまたは噴口ともいう。)が1つのものであっても、複数の噴射口を有するものであっても良い。
【0008】
本発明の全量噴射エアゾール装置も従来のエアゾール噴射装置と同様に薬剤を溶解した溶液、噴射剤(場合によっては圧縮ガス)を充填している容器部と前記溶液と噴射剤などをエアゾール化し、そのエアゾール組成物を噴射するバルブ部とからなっている。
本発明の全量噴射エアゾール装置のバルブ部各部の寸法や口径比(主要部の孔の口径)を示すと、第1表の通りである。
【0009】
【表1】

【0010】
第1表からわかるとおり、本発明の装置のバルブ部では噴射口の孔径、ステムの孔の孔径、アンダータップの孔径の順に太くなるように設計されている。
従って、本発明の装置の噴射口からは前記公報に記載の装置からは得られない高さ方向及び面方向での拡散面を満足できるようにエアゾール組成物が噴射されるように設計されている。このため、本発明の装置からエアゾール組成物はより高く噴射されると共に、より広い床面積に均一に散布される。
本発明の装置のバルブ部は前記のような構成であるので、本発明の装置により噴射することにより、エアゾール組成物の床面への付着量は少なくなることがなく、高さ方向にも部屋全体均一に拡散されることになり、見た目にも内容物が広がっているのが確認でき、部屋全体の殺虫、殺菌、消臭、芳香などで優れた効果が達成される。また、均一に広がるため、内容物に由来する汚れ、濡れなども軽減できる。
【0011】
本発明の理解を深めるために図1に本発明の全量噴射エアゾール装置のバルブ部の1例を示し、該バルブ部16の構造の概略を図1を用いて説明する。図1は押釦12を押していない状態の図である。この状態では、ステム孔4はステムラバー2で封止されているので、エアゾール装置の容器部内、空隙6およびステム中心空隙5は連通されていない。
使用に当たって、バルブ部16の押釦12を押すと、スプリング8がステム1によって押し縮められ、ステム1が押し下げられ、ステム孔4がステムラバー2から外れて、エアゾール装置の容器部内が空隙6およびステム中心空隙5と連通されて、エアゾール装置の容器部内のエアゾール組成物(噴射剤を含んだもの)がステム中心空隙5に供給され、同時にステム1のステム中心空隙5と噴口7が連通されるのでエアゾール組成物が噴口7から噴射される。本発明の全量噴射エアゾール装置の押釦12は一度押し下げると復帰しないように周知のストッパー(図示せず)により固定されるので、容器部内のエアゾール組成物は全量噴出する。
【0012】
なお、ハウジング3、ステムラバー2やスプリング8を備えているマウンティングカップは、装置の容器部とハウジング3とを連結・固定しており、押釦12を押し下げるとステム1がハウジング3の内面を気密性を保ちながら摺動して、前記したような仕組みによって、エアゾール組成物をステム1の空隙6およびステム中心空隙5を経て噴口7に供給できるようにしている。なお、該マウンティングカップについているガスケットラバー13で容器部内は大気(外部)に対しての気密が保たれている。
また、ハウジング3に設けられているベーパータップ孔11は、容器部の上部(溶液の上)にあるガスをステム1の空隙6に供給する孔であり、設けられていないエアゾール装置もある。
【0013】
本発明において、噴射剤としては、ジメチルエーテル、液状プロパンガス(LPG)、n−ブタン、イソブタン、プロパン、イソペンタン、n−ペンタン、シクロペンタン、プロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、エチルエーテル、炭酸ガスおよび使用上問題がないフロンガス(HCFC22、123、124、41b、142b、225、HFC125、134a、143a、152a、12、227aなどを挙げることができる。
本発明において、溶媒としては、水、アルコール類:例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなど、ケトン類:例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど、エステル類:例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど、その他エチルエーテルなど、及び脂肪族炭化水素類:例えばn−ヘキサン、ケロシン、灯油、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタンなどが挙げられる。これら溶媒は混合して使用しても良い。
【0014】
本発明において、有効成分としては、殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤、忌避剤、芳香剤、消臭剤などを挙げることができる。
殺虫剤としては安全性の観点からピレスロイド系の化合物を用いることが好ましく、代表的なものを例示すると、次のとおりである。
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル dl−シス/トランス−クリサンテマート(一般名アレスリン:商品名ピナミン:住友化学工業株式会社製)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製、以下「ピナミンフォルテ」という)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名バイオアレスリン:ユクラフ社製)
・d−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル d−トランス−クリサンテマート(商品名エキスリン:住友化学工業株式会社製、商品名エスバイオール:ユクラフ社製、以下「エスバイオール」という)
【0015】
・(5−ベンジル−3−フリル)メチル d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名レスメトリン、商品名クリスロンフォルテ:住友化学工業株式会社製、以下「クリスロンフォルテ」という)
・5−プロパギル−2−フリルメチル− d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フラメトリン、商品名ピナミンDフォルテ:住友化学工業株式会社製、以下「ピナミンDフォルテ」という)
・(+)−2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)−2−シクロペンテニル(+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名プラレトリン、商品名エトック:住友化学工業株式会社製、以下「エトック」という)
・dl−3−アリル−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル−dl−シス/トランス−2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボシキラート(一般名テラレスリン:住友化学工業株式会社製、以下「テラレスリン」という)
【0016】
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチル−dl−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フタルスリン、商品名ネオピナミン:住友化学工業株式会社製)
・(1,3,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−1,3−ジオキソ−2−イソインドリル)メチル−d−シス/トランス−クリサンテマート(商品名ネオピナミンフォルテ:住友化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジル−d−シス/トランス−クリサンテマート(一般名フェノトリン、商品名スミスリン:住友化学工業株式会社製)
・3−フェノキシベンジル−dl−シス/トランス−3−(2,2−ジクロロビニル)−2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボオキシラート(一般名ペルメトリン、商品名エクスミン:住友化学工業株式会社製)
・(±)α−シアノ−3−フェノキシベンジル(+)−シス/トランス−クリサンテマート(一般名シフェノトリン、商品名ゴキラート:住友化学工業株式会社製)
・(±)α−シアノ−3−フェノキシベンジルdl−シス/トランス−3−(2,2−ジメチル−1−シクロプロパンカルボキシラート(一般名サイパーメスリン)
また、その他の殺虫剤として、カーバメイト系のものとしてプロボクサー、オキサジアゾール系のものとしてメトキサジアゾン、有機リン系のものとしてDDVPなどを挙げることができる。
【0017】
配合可能な害虫忌避剤としては、代表的なものを例示すると、次の物質が挙げられる。
・2,3,4,5−ビス(△−ブチレン)−テトラヒドロフルフラール
・ジ−n−プロピルイソシンコメロネート
・ジ−n−ブチルサクシネート
・2−ヒドロキシエチルオクチルサルフアイド
・2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール
・3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール
・1−エチニル−2−メチル−ペンテニル2,2,3,3−テトラメチルシクロプロパンカルボキシレート
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル2,2−ジメチル−3−(2′,2′−ジクロルビニル)−シクロプロパン−1−カルボキシレート
・1−エチニル−2−メチル−2−ペンテニル2,2−ジメチル−3−(2′−1′−プロピペニル)−シクロプロパン−1−カルボキシレート
・N−ヘキシル−3,4−ジクロルマレイミドなどである。
【0018】
配合可能な殺ダニ剤としては、代表的なものを例示すると、次の物質が挙げられる。
フェネトリン、ペルメトリン、レストメリン、IBTA、IBTE、第4級アンモニウム塩、安息香酸ベンジル、安息香酸フェニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニル、3−ブロモ−2,3−ジヨード−2−プロペニル−エチルカルボナート、4−クロルフェニール−3−ヨードプロパルギルホルマールなどである。
配合可能な殺菌剤としては、パラ−クロロ−メタキシレノール(PCMX)、2,4,4′−トリクロロ−2′−ハイドロキシジフェニルエーテル(イルガサンDP−300)、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート(トロイサン)などが挙げられる。
また、配合可能な芳香剤としては、じゃ香、ベルガモット油、シンナモン油、シトロネラ油、レモン油、レモングラス油などの天然香料、ピネン、リモネン、リナロール、メントール、ボルネオール、オイゲノール、シトラール、シトロネラール、ヘリオトピン、ワニリンなどの人造香料などが挙げられる。
配合可能な消臭剤としては、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチル酸アセトフエノン、パラメチルアセトフエノンベンゾアルデヒドなどが挙げられる。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1および2(総括して「試験1」ともいう)
本発明の全量噴射エアゾール装置15(「検体15」ともいう)を天井の高さが2.5mの8畳の部屋の床の中央に図2の(a)に示すごとく正立させて置く。また、全量噴射エアゾール装置15から散布されたエアゾール組成物の到達分布を組成物中の有効成分の分析によって解析するため、エアゾール組成物を収集するためのシャーレ14(口径9cm)を図2の(a)および(b)に図示した位置に置く。すなわち、シャーレ14は、床面について、部屋の4隅の4ケ所(中心より2.4mの個所)、部屋の中央と4隅とを結ぶ対角線上の中間点(中心より1.2mの個所)の4ケ所に置く。また、シャーレ14は、部屋の4隅の高さ1mと高さ2mの各4ケ所の位置に置く。
特に断らない限り、噴射されるエアゾール組成物はジメチルエーテル(75ml)、ケロシン(25ml)とペルメトリン(2g)からなるものである。
【0020】
下記第2表の実施例1〜3には、表に示す各部の孔径を有する前記全量噴射エアゾール装置15によりエアゾール組成物の100mlを全量噴射させたとき、噴射に要する噴射時間と噴射時間に対応する噴射到達高さを確認し、表示した。また、第2表の比較例1および2には、検体15を第2表に示す各部孔径を有する従来タイプのエアゾール装置とし、実施例1〜3で使用したと同じ組成のエアゾール組成物の100mlを全量噴射させたとき、噴射に要する噴射時間と噴射時間に対応する噴射到達高さを確認し、表示した。
噴射到達高さの確認は、目視で行った。その結果2m以上の到達高さを得るためには、噴射時間を1.0分以内とすれば良いことがわかった。
なお、試験は以下のものを含め全てにおいて試験室の換気回数は1.5回/時の条件とした。
【0021】
【表2】

【0022】
実施例4〜8、比較例3(試験2のIともいう)
検体15とシャーレ14の配置は前記試験1(実施例1〜3、比較例1および2)の場合と同じ配置とし、検体15の各部の孔径や孔面積比を下記第3表の実施例4〜8あるいは比較例3の欄に記載したようにし、検体15を第3表の噴射時間の欄に記載した時間でエアゾール組成物の100mlを全量噴射させた。
試験2のI(実施例4〜8、比較例3)では検体15から散布されたエアゾール組成物の到達分布を床面バラツキ率および高さバラツキ率として評価したが、この評価のための分析は、噴射2時間後、シャーレ14を回収し、シャーレ14を規定量のアセトンで洗浄し、洗浄に使用したアセトンをガスクロマトグラフにかけ、内部標準法で有効成分(ペルメトリン)を定量することにより評価した。
【0023】
ここで、測定した要件は次のとおりである。
床面バラツキ率:床面中心から1.2mおよび2.4mの距離にある床面上の図2の(a
)に示す各4ヶ所に配置したシャーレ14に付着した有効成分の付着量の標準偏差を各
4ヶ所の有効成分の付着量の平均値で割った値を合計し、その合計量を下記評価基準に
照らして到達分布の均一性を表した。
(評価基準):優 〜0.35;良 〜0.45;可〜0.55;不可 0.56〜
高さバラツキ率:床面高さ1mおよび2mの図2の(b)に示す各4ヶ所に配置したシャ
ーレ14に付着した有効成分の付着量の標準偏差を各4ヶ所の有効成分の付着量の平均
値で割った値を合計し、その合計値を下記評価基準に照らして到達分布の均一性を表し
た。
(評価基準):優 〜0.50;良 〜1.0;可〜1.5;不可 1.6〜
である。
なお、噴射時間と噴射到達高さも測定した。
結果を第3表に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
比較例4(試験2のIIともいう)
検体15とシャーレ14の配置は前記試験1(実施例1〜3、比較例1および2)の場合と同じ配置とし、検体15の各部の孔径や孔面積比を下記第4表の比較例4の欄に記載したようにし、検体15を第4表の噴射時間の欄に記載した時間でエアゾール組成物の100mlを全量噴射させた。
また、検体15から散布されたエアゾール組成物の到達分布は前記試験2のIにおけると同様にして床面バラツキ率および高さバラツキ率として評価した。評価の結果を第4表に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
第3表及び第4表から、床面、高さ方向共に均一に拡散させるには、アンダータップの孔面積を3〜5mm2 で、アンダータップ/ステムの孔面積比を7〜12、ステム/ノズルの孔面積比を0.2〜2とすれば良く、均一に拡散させることができる。さらにはベーパータップの孔面積を0.05〜0.15mm2 とすることにより、なお均一に拡散させることができる。
【0028】
実施例5、7、8および比較例4(総括して試験3ともいう)
前記試験2のIおよび試験2のIIの評価結果の中実施例5、7、8および比較例4における、
(1)床面の検体15から1.2mの距離に置いたシャーレ14に付着した有効成分(ペルメトリン)の付着量の平均値、
(2)床面の検体15から2.4mの距離に置いたシャーレ14に付着した有効成分の付着量の平均値、
(3)床上1mの高さの面上に検体15の真上(床上1mの面の中心)から2.4mの距離に置いたシャーレ14に付着した有効成分の付着量の平均値、
(4)床上2mの高さの面上にその面の中心から2.4mの距離に置いたシャーレ14に付着した有効成分の付着量の平均値
それぞれの有効成分の付着量の平均値の測定結果を第5表に示した。なお、有効成分の付着量の単位はmg/m2 である。
【0029】
【表5】

【0030】
結果:実施例5、7、8では比較例4と比べて、測定部分(1)〜(4)の4ヵ所での付着量の平均値のバラツキが小さいのみならず、付着量の絶対量が多いことがわかり、本発明の全量噴射エアゾール装置を用いると、密閉空間中に均一にエアゾール組成物を散布できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の全量噴射エアゾール装置のバルブ部の一例を示す断面説明図である。
【図2】本発明の全量噴射エアゾール装置の機能試験用設備の説明図であって、(a)が検体およびシャーレの床面配置図、(b)が検体およびシャーレの立面配置図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ステム
2 ステムラバー
3 ハウジング
4 ステム孔
5 ステム中心空隙
6 空隙
7 噴口
8 スプリング
9 ディップチューブ
10 アンダータップ孔
11 ベーパータップ孔
12 押釦
13 ガスケットラバー
14 シャーレ
15 全量噴射エアゾール装置(検体)
16 バルブ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射剤/原液の比率(容量)が70/30〜90/10であり、かつ床面積10〜16.5m2 当たりの噴射時間が1分以内であることを特徴とする全量噴射エアゾール装置。
【請求項2】
前記エアゾール装置のバルブのアンダータップ/ステムの孔面積比が7〜12であり、かつアンダータップ孔面積が3〜5mm2 であることを特徴とする請求項1に記載の全量噴射エアゾール装置。
【請求項3】
ステム/ノズル孔面積比が0.2〜2であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の全量噴射エアゾール装置。
【請求項4】
ベーパータップ孔を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の全量噴射エアゾール装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−213409(P2006−213409A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75253(P2006−75253)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【分割の表示】特願平9−11504の分割
【原出願日】平成9年1月24日(1997.1.24)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】