説明

全閉内冷型回転電機

【課題】冷却風の流路を全閉型から開放型に切り換える際に、吸気口や排気口の開閉扉の開閉スペースを必要とせず冷却風の流路の切り換え作業を行えるようにする。
【解決手段】回転電機本体1上部に、空気冷却器7と空気冷却器7を取り囲むように通風カバー8が設けられている。通風カバー8には、切り換え用吸気口8aおよびこの吸気口8aを塞ぐ蓋9と、切り換え用排気口8bおよびこの排気口8bを塞ぐ蓋10が設けられている。常時、回転軸3の両端部に設けられたファン6により送り出される冷却風は、回転子4および固定子5を冷却し、フレーム2の排気口2bから空気冷却器7で冷却され、通風カバー8内から回転電機本体1内に戻る全閉型の循環を行なう。空気冷却器7が停止した非常時運転の際には、吸気口用蓋9および排気口用蓋10を外し、蓋9または10を切り換え用吸気口8aと切り換え用排気口8bを仕切る仕切り板10aとして開放型に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機本体内の回転子や固定子などの発熱部を冷却して温度上昇した冷却風を空気冷却器で冷却して再度回転電機本体内に導く全閉内冷型回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に事業所や工場などの電力大口需要家は、電力を使用するにあたって電力会社と契約電力を定め、契約電力に応じた金額を電力会社に支払っている。契約電力が高いほど、大口需要家が電力会社に支払う金額が多くなる。契約電力は30分単位の平均受電電力の最大値から決められるので、30分単位の平均受電電力を小さくすることができれば、契約電力を下げ、大口需要家が電力会社に支払う金額を下げることができる。
【0003】
そこで、大口需要家の中には、30分単位の平均受電電力を小さくし、契約電力を下げるために、電力を多く使用する時間帯に事業所や工場内に電力を供給することができる自家用発電機を導入しているところが少なくない。
【0004】
自家用発電機としては、特許文献1および2に記載されているような全閉内冷型回転電機を使用することが多い。全閉内冷型回転電機は、回転電機本体のフレーム上部に空気冷却器を設け、この空気冷却器を通風カバーで覆った構成を有している。
【0005】
回転電機の運転時には、回転電機本体の回転軸に設けたファンにより回転電機本体内に冷却風を取り込んで回転子や固定子などの発熱部を冷却し、そして温度上昇した冷却風はフレーム上部から空気冷却器に流入して冷却された後、通風カバー内を通って再び回転電機本体内に流入するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−197495号公報
【特許文献2】特開平5−161313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、空気冷却器は一般にケース内に蛇行するパイプを収納し、このパイプ内にポンプにより強制的に水などの冷媒を循環させて周囲の空気と熱交換する構成が採用されているが、何らかの原因により、パイプが破損したり、給水ポンプが故障したりして空気冷却器の機能が停止することがある。
【0008】
空気冷却器の機能が停止すると、温度上昇した冷却風が循環することになり、回転電機本体を冷却することができなくなるので、一旦回転電機本体を停止させ、修理することになる。しかしながら回転電機本体を長時間停止していると、30分単位の平均使用電力が大きくなり、契約電力を上げなければならなくなる。
【0009】
そこで、回転電機本体を長時間停止させないために、回転電機本体内および通風カバー内を冷却風が循環する全閉型から、温度上昇した冷却風を通風カバーの外部に放出する開放型に切り換える非常時運転が行なわれる。
【0010】
冷却風の流路を全閉型から開放型に切り換える技術としては、例えば特許文献1に記載されているように、熱交換器(空気冷却器)の停止時に開放する排気口や吸気口を枠体(フレーム)に設け、開閉扉で開閉する技術が提案されている。
【0011】
しかしながら吸気口や排気口を開閉扉により開閉する構造は、扉の開閉スペースが必要となるので、設置場所に制限を受けることがあり、しかも吸気と排気が混じらないように吸気口と排気口を離して設置すると、扉の開閉作業を行なうために作業員が移動しなければならず、作業性が悪い問題があった。
【0012】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、冷却風の流路を全閉型から開放型に切り換える際に、吸気口や排気口を開閉するための扉の開閉スペースを必要とせず、しかも作業員の移動を伴わずに冷却風の流路の切り換え作業が行える全閉内冷型回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明による全閉内冷型回転電機は、回転軸に固定された回転子と、この回転子の外周囲に間隙を介して配設された固定子と、この固定子を取り囲み、軸方向両端部の上部に吸気口が設けられるとともに軸方向中央部の上部に排気口が設けられたフレームと、このフレームの排気口の上部に配設され、フレームの排気口から排出された冷却風を冷却する空気冷却器と、この空気冷却器を取り囲み、空気冷却器で冷却された冷却風をフレームの吸気口に導く通風カバーと、回転軸に設けられ、フレームの吸気口から導かれた冷却風を回転子および固定子に送風して冷却した後、フレームの排気口へ送るファンと、通風カバーに設けられ、フレームの吸気口と連通して外気を取り入れることのできる切り換え用吸気口およびこの切り換え用吸気口を塞ぐ吸気口用蓋と、通風カバーに設けられ、空気冷却器から排出された冷却風を通風カバーの外部に排出することのできる切り換え用排気口およびこの切り換え用排気口を塞ぐ排気口用蓋とを備え、吸気口用蓋および排気口用蓋は、空気冷却器が停止して非常時運転が行なわれる際に取り外され、いずれか一方の蓋が切り換え用吸気口と切り換え用排気口を仕切る仕切り板として使用できるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による全閉内冷型回転電機によれば、非常時運転を行なう場合に、吸気口用蓋を取り外して切り換え用吸気口から外気を取り入れるようにし、また排気口用蓋を取り外して空気冷却器から排出された冷却風を通風カバーの外部に排出するようにし、取り外した吸気口用蓋または排気口用蓋のいずれか一方を、切り換え用吸気口と切り換え用排気口を仕切る仕切り板として利用して開放型の冷却風の流路を構成するので、開閉扉のように開閉スペースを確保する必要がないことから設置場所に制限を受けにくくなり、しかも通風カバーに設けた蓋の着脱だけで冷却風の流路を切り換えることができるので、作業員の移動を伴わないことから切り換え作業の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の第1実施の形態に係る全閉内冷型回転電機を断面して示す正面断面図、(b)は(a)のA−A線に沿って断面した側面断面図である。
【図2】(a)は図1(a)に示す全閉内冷型回転電機における冷却風の流路を開放型に切り換えた状態を示す正面断面図、(b)は(a)のB−B線に沿って断面した側面断面図である。
【図3】本発明の第2実施の形態に係る全閉内冷型回転電機であって、主要部の通風カバーを断面して示す正面断面図である。
【図4】図3に示す全閉内冷型回転電機の通風カバーにおいて、冷却風の流路を全閉型から開放型に切り換える際の分解した状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の第1実施の形態に係る全閉内冷型回転電機を断面して示す正面断面図、(b)は(a)のA−A線に沿って断面した側面断面図である。
【0017】
図2(a)は図1(a)に示す全閉内冷型回転電機における冷却風の流路を開放型に切り換えた状態を示す正面断面図、(b)は(a)のB−B線に沿って断面した側面断面図である。
【0018】
図1および図2において、回転電機本体1は、フレーム2の側板に回転自在に支持された回転軸3、この回転軸3に固定された回転子4、この回転子4の外周囲に間隙を介して配設され、フレーム2の内周面に固定された固定子5を有している。
【0019】
フレーム2には、回転軸3の軸方向両端部の上部に吸気口2aが設けられ、また軸方向中央部の上部に排気口2bが設けられている。フレーム2内に位置する回転軸3の回転子4両端部にはファン6が設けられている。このファン6は、矢印で示すように、フレーム2の吸気口2aから冷却風を取り込んで回転子4および固定子5などの発熱部に送風して冷却し、温度上昇した冷却風をフレーム2の排気口2bへ送るようになっている。
【0020】
フレーム2の排気口2bの上部には、排気口2bから排出された冷却風を冷却して排出する空気冷却器7が設けられている。空気冷却器7は、図示しないがケース内部に蛇行するパイプが設置されており、このパイプ内を水などの冷媒がポンプにより強制的に循環されて周囲の空気と熱交換するようになっている。
【0021】
フレーム2の上部には、この空気冷却器7を取り囲み、空気冷却器7で冷却された冷却風をフレーム2の吸気口2aに導くほぼ直方体の通風カバー8が設けられている。通風カバー8の短手方向すなわち軸方向を横断する両側面であって空気冷却器7に対向する両側の位置には、フレーム2の吸気口2aと連通し、外気を取り入れる切り換え用吸気口8aが設けられており、この切り換え用吸気口8aを塞ぐように吸気口用蓋9がボルト類により着脱自在に取り付けられている。
【0022】
また通風カバー8の長手方向すなわち軸方向に並行する両側面であって空気冷却器7よりも上方に位置する両側の位置には、空気冷却器7から排出された冷却風を通風カバー8の外部に排出することのできる切り換え用排気口8bが設けられており、この切り換え用排気口8bを塞ぐように排気口用蓋10がボルト類により着脱自在に取り付けられている。
【0023】
空気冷却器7が正常に動作している運転状態では、図1に示すように、ファン6の回転により回転電機本体1内に取り込まれた冷却風は、回転子4および固定子5などの発熱部を冷却した後、フレーム2の排気口2bから空気冷却器7に送り込まれ、ここで冷却されて通風カバー8内を通ってフレーム2の吸気口2aを通って再び回転電機本体1内に流入する循環を繰り返す。
【0024】
ここで、何らかの原因により、空気冷却器7のパイプが破損したり、給水ポンプが故障したりして空気冷却器7の機能が停止した場合には、回転電機本体1を長時間停止させないために、非常時運転に切り換える。非常時運転を行なうに際しては、回転電機本体1内および通風カバー8内を冷却風が循環する全閉型から、温度上昇した冷却風を通風カバー8の外部に放出する開放型に切り換える。
【0025】
冷却風の流路を全閉型から開放型に切り換えるにあたっては、図2に示すように、吸気口用蓋9および排気口用蓋10を通風カバー8から取り外し、いずれか一方の蓋9または10を切り換え用吸気口8aと切り換え用排気口8bの間を仕切る仕切り板として使用する。本実施の形態では、排気口用蓋10を仕切り板として共用した場合を示しており、仕切り板10aとなる排気口用蓋10は、切り換え用排気口8bを作業用開口部として利用して通風カバー8の切り換え用排気口8bの近くに設けられた支持部材8cにボルト類で固定する。なお吸気口8aに塵埃フィルタを設けてもよい。
【0026】
これによりファン6の回転により通風カバー8の切り換え用吸気口8aから吸い込まれ、吸気口2aを通って回転電機本体1内に取り込まれた冷却風は、回転子4および固定子5などの発熱部を冷却した後、フレーム2の排気口2bから空気冷却器7を通り、通風カバー8の切り換え用排気口8bを通って通風カバー8の外部に放出されることになる。
【0027】
なお、本実施の形態では、切り換え用吸気口8aを通風カバー8の軸方向側に位置する短手両側面に設け、切り換え用排気口8bを通風カバー8の軸方向に並行する長手両側面に設けた場合について説明したが、逆に切り換え用吸気口8aを通風カバー8の軸方向に並行する両側面に設け、切り換え用排気口8bを通風カバー8の軸方向の両側面に設けることもできる。また切り換え用排気口8bを通風カバー8の上面に設けることもできる。
【0028】
このように、非常時運転に際して、吸気口用蓋9を取り外して切り換え用吸気口8aから外気を取り入れるようにし、また排気口用蓋10を取り外して空気冷却器7から排出された空気を通風カバー8の外部に排出するようにし、取り外した吸気口用蓋9または排気口用蓋10のいずれか一方を、切り換え用吸気口8aと切り換え用排気口8bを仕切る仕切り板として利用して冷却風の流路を開放型に切り換えることができるので、開閉扉のように開閉スペースを確保する必要がないことから設置場所に制限を受けにくくなり、しかも通風カバーに設けた蓋9,10の着脱だけで冷却風の流路の切り換えることができるので、作業員の移動を伴わないことから切り換え作業の作業性が向上する。
【0029】
図3は、本発明の第2実施の形態に係る全閉内冷型回転電機であって、主要部の通風カバーを断面して示す正面断面図である。図4は、図3に示す全閉内冷型回転電機の通風カバーにおいて、冷却風の流路を全閉型から開放型に切り換える際の分解した状態を示す正面断面図である。
【0030】
図3および図4に示す第2実施の形態において、非常時運転に際しては、第1実施の形態と同様に、吸気口用蓋9または排気口用蓋10のいずれか一方を、切り換え用吸気口8aと切り換え用排気口8bを仕切る仕切り板として利用するが、第1実施の形態と異なる点は、支持部材8cに代えて一対のガイドレール8dを設け、吸気口用蓋9または排気口用蓋10をガイドレール8dにスライドさせて装着するようにしたところにある。
【0031】
一対のガイドレール8dは、それぞれ断面コの字状をなし、開口側が向き合うように所定の間隔を置いて配設されており、排気口8bを作業用開口部として利用して吸気口用蓋9または排気口用蓋10をガイドレール8dの開口部内にスライドさせて装着することにより、仕切り板10aとしての取り付け作業性を向上することができる。またスライドによる取り付け作業は、吸気口用蓋9または排気口用蓋10を取り扱う際に、これを回転電機本体1内に落下させる危険性を低減することができる。
【0032】
なお、このガイドレール8dにおいては、開口部内に滑車を付属したレールを内装することにより、吸気口用蓋9または排気口用蓋10のスライド装着作業がより一層容易になる。
【符号の説明】
【0033】
1…回転電機本体、2…フレーム、2a…吸気口、2b…排気口、3…回転軸、4…回転子、5…固定子、6…ファン、7…空気冷却器、8…通風カバー、8a…切り換え用吸気口、8b…切り換え用排気口、8c…支持部材、8d…ガイドレール、9…吸気口用蓋、10…排気口用蓋、10a…仕切り板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に固定された回転子と、この回転子の外周囲に間隙を介して配設された固定子と、この固定子を取り囲み、軸方向両端部の上部に吸気口が設けられるとともに軸方向中央部の上部に排気口が設けられたフレームと、このフレームの排気口の上部に配設され、前記フレームの排気口から排出された冷却風を冷却する空気冷却器と、この空気冷却器を取り囲み、前記空気冷却器で冷却された冷却風を前記フレームの吸気口に導く通風カバーと、前記回転軸に設けられ、前記フレームの吸気口から導かれた冷却風を前記回転子および固定子に送風して冷却した後、前記フレームの排気口へ送るファンと、前記通風カバーに設けられ、前記フレームの吸気口と連通して外気を取り入れることのできる切り換え用吸気口およびこの切り換え用吸気口を塞ぐ吸気口用蓋と、前記通風カバーに設けられ、前記空気冷却器から排出された冷却風を前記通風カバーの外部に排出することのできる切り換え用排気口およびこの切り換え用排気口を塞ぐ排気口用蓋とを備え、前記吸気口用蓋および排気口用蓋は、前記空気冷却器が停止して非常時運転が行なわれる際に取り外され、いずれか一方の蓋が切り換え用吸気口と切り換え用排気口を仕切る仕切り板として使用できるように構成されていることを特徴とする全閉内冷型回転電機。
【請求項2】
前記仕切り板が前記通風カバー内に設けられたガイドレールにスライドさせて取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の全閉内冷型回転電機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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