説明

共同受信システム用増幅器

【課題】 TDA及びTBAのいずれか選択されたものとして共同受信システム用増幅器を使用可能とする。
【解決手段】 入力端子2から供給された共同受信信号を第1の増幅手段8が増幅し、1分岐器26に供給する。1分岐器26の出力信号が出力端子30に供給され、1分岐器26の分岐出力信号が分岐・分配切換手段32に供給され、その出力信号が分岐端子50、52、54、56に分配される。分岐・分配切換手段32は、1分岐器26の分岐出力信号を増幅して出力する増幅状態または前記分岐器の分岐出力信号をそのまま通過させる通過状態のいずれかとする第1の切換手段58と、第1の切換手段58の出力信号を増幅して、分岐端子50、52、54、56に供給する増幅器67とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共同受信システムにおいて使用される増幅器に関し、特に、幹線分岐増幅器(以下、TBAと称する)及び幹線分配増幅器(以下、TDAと称する)のいずれかとして使用することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
TDA及びTBA双方の機能を備えた共同受信システム用増幅器が、特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、入力端子から供給されたテレビジョン放送信号を第1の増幅器によって増幅し、その増幅出力を1分岐器に供給する。1分岐器の出力が出力端子に供給され、1分岐器の分岐出力が第2の増幅器で増幅された後、別の1分岐器に供給される。この別の1分岐器の出力が、可変減衰器によって減衰された後、低歪み分岐出力として2分配器で2分配されて、2つの分岐端子に供給される。この別の1分岐器の分岐出力が第3の増幅器によって増幅され、その増幅出力が高利得分岐出力として別の2分配器で2分配され、別の2つの分岐端子に供給される。低歪み分岐出力が、TDAのDA出力として、出力され、高利得分岐出力が、TBAのBA出力として出力されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2605935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、1台の共同受信システム用増幅器を、TBA及びTDAとして同時に動作させることができるが、1台でTBA及びTDAとして使用する必要性があることは稀で、TBA及びTDAとして個別に使用することが多い。ところで、TDAは、TBAと比較して、共同受信システムにおいて使用される頻度が少なく、TDAを単独で製造すると、その製造コストが割高になる。TDA及びTBAの基本構成は、幹線増幅器の出力を分岐器によって分岐し、その分岐出力を分配器によって複数の分岐端子に分配するという点で共通している。なお、TDAは、各分岐端子の分岐出力を幹線系の出力とほぼ同等の信号品質で、かつ幹線系の出力の1/2スパン分の出力を可能とする必要があるのに対し、TBAは、その分岐出力がタップオフを介して直接に共同受信システムの加入者に分配できるように高出力とする必要がある。
【0005】
本発明は、TDA及びTBAのいずれか選択されたものとして使用可能な共同受信システム用増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の共同受信システム用増幅器は、共同受信信号が供給される入力端子を有している。この入力端子から供給された共同受信信号を第1の増幅手段が増幅する。第1の増幅手段の出力信号が分岐手段に供給される。この分岐手段の出力信号が出力端子に供給される。この出力端子が、いわゆる幹線出力端子となる。前記分岐手段の分岐出力信号が分岐・分配切換手段に供給される。この分岐・分配切換手段の出力信号がそれぞれ複数の分岐端子に分配される。この分配には、分配手段を使用することができる。前記分岐・分配切換手段は、前記分岐手段の分岐出力信号を増幅して出力する増幅状態または前記分岐手段の分岐出力信号をそのまま通過させる通過状態のいずれかとする第1の切換手段を有している。この第1の切換手段の出力信号を第2の増幅手段が増幅して、前記各分岐端子に供給する。
【0007】
このように構成された共同受信システム用増幅器では、分岐・分配切換手段の第1の切換手段が、増幅状態に切り換えられているとき、分岐手段からの分岐出力は、第1の切換手段で増幅された後、第2の増幅手段によっても増幅されて、各分岐端子に供給される。従って、各分岐端子の出力は高出力である。従って、分岐・分配切換手段によって各分岐端子にはBA出力が発生しており、この共同受信システム用増幅器は、TBAとして使用できる。また、分岐・分配切換手段の第1の切換手段が、通過状態に切り換えられているとき、分岐手段からの分岐出力は、第2の増幅手段によってのみ増幅されて、各分岐端子に供給される。増幅が第2の増幅手段によってのみ行われているので、各分岐端子の出力は、歪みが少ないものである。従って、分岐・分配切換手段によって各分岐端子にはDA出力が発生しており、この共同受信システム用増幅器は、TDAとして使用できる。
【0008】
前記分岐・分配切換手段は、前記第2の増幅手段の出力信号をそのまま通過させる通過状態と、前記第2の増幅手段の出力信号を減衰させる減衰状態とのいずれかに切り換える第2の切換手段を有するものにすることができる。TDAの分岐出力は、上述したように幹線出力よりも低下させて置くことが望ましい。そこで、TDAとして、この共同受信システム用増幅器を使用する際には、第2の切換手段を減衰状態として、分岐端子の出力を低下させている。
【0009】
さらに、前記入力端子と前記分岐手段との間に、前記テレビジョン放送信号にチルト特性を持たせる周波数調整手段が設けられている場合、第2の切換手段は、前記減衰状態において、前記チルト特性と逆の逆チルト特性を有することができる。共同受信システム用増幅器では、その出力にチルト特性を持たせるために、周波数調整手段が設けられるが、TDAの分岐出力は周波数特性が平坦であることが望ましく、逆のチルト特性を持たせる必要がある。そこで、分岐端子の出力を低下させる際に、第2の切換手段によって逆のチルト特性を持たせている。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、1台の共同受信システム用増幅器を、TBA及びTDAのうち選択されたものとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の共同受信システム用増幅器のブロック図である。
【図2】図1の共同受信システム増幅器の周波数特性を示す図である。
【図3】図1の共同受信システム用増幅器のTDAとしての使用状態を示すブロック図である。
【図4】図1の共同受信システム用増幅器のTBAとしての使用状態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1実施形態の共同受信システム用増幅器1は、図1に示すように入力端子2を有している。入力端子2には、共同受信システムの幹線を介して例えば70乃至770MHzの共同受信信号が供給されている。この入力端子2に供給された共同受信信号は、フィルタ手段、例えばハイパスフィルタ4及び擬似線路網(BON)6を介して第1の増幅手段8に供給される。ハイパスフィルタ4は共同受信信号に含まれる不要な信号成分を除去するためのものである。擬似線路網6は、入力端子2に共同受信信号を伝送する伝送線路の長さが、予め規定された長さと異なって、入力端子2に供給される共同受信信号のレベルが規定入力レベルと異なる場合、この規定入力レベルに第1の増幅手段の入力レベルを一致させるためのものである。
【0013】
第1の増幅手段8に供給された共同受信信号は、70乃至770MHzの帯域において平坦な周波数特性を有しているので、周波数調整手段、例えばイコライザー(EQ)10が共同受信信号にチルト特性を持たせている。その結果、イコライザー10の出力は、770MHzの方が70MHzよりもレベルが高くされている。このイコライザー10の出力は、2段の増幅器12、14によって増幅される。後段の増幅器14の出力は、ゲインコントローラ16でレベル調整された後、イコライザー18によって更にチルト特性が持たされて、増幅器20に供給される。増幅器20の出力は1分岐器22に供給され、その分岐出力が自動利得制御回路(AGC)24に供給される。自動利得制御回路24が、ゲインコントローラ16のゲインを調整し、増幅器20の出力が予め定めたレベルとされる。
【0014】
1分岐器22の出力、即ち第1の増幅手段8の出力は、分岐手段、例えば1分岐器26に供給される。1分岐器26の出力は、フィルタ手段、例えばハイパスフィルタ28によって不要な信号成分が除去された後、出力端子、例えば幹線出力端子30に供給される。
【0015】
1分岐器26の分岐出力は、分岐・分配切換手段(BA・DA切換手段)32に供給される。この分岐・分配切換手段32の出力は、分配手段、例えば2分配器34によって2分配される。この2分配器34の各分配出力は、2分配器36、38によってそれぞれ2分配される。これら2分配器36、38の各分配出力は、フィルタ手段、例えばハイパスフィルタ42、44、46、48によって不要な信号成分が除去された後、各分岐端子50、52、54、56にそれぞれ供給される。
【0016】
分岐・分配切換手段32は、1分岐器26の分岐出力が供給される第1の切換手段58を有している。第1の切換手段58では、増幅器60と、通過路(PASS)62とが並列に接続されている。これら増幅器60の入力側と通過路62の入力側のいずれかをスイッチ64が選択して、1分岐器26の分岐出力を供給する。増幅器60と通過路62の出力のいずれかをスイッチ66が選択して出力する。
【0017】
スイッチ66によって選択された増幅器60または通過路62の出力、即ち第1の切換手段58の出力は、第2の増幅手段、例えば増幅器67によって増幅され、第2の切換手段68に供給される。
【0018】
第2の切換手段68では、通過路70と、減衰手段または逆チルトを持たせる周波数調整手段、例えばイコライザー72とが並列に接続されている。これら通過路70の入力側とイコライザー72の入力側とのいずれかをスイッチ74が選択して、選択されたものに、増幅器60によって増幅された出力を供給する。また通過路70の出力側とイコライザー72の出力側とのいずれかをスイッチ76が選択して、2分配器34に供給する。
【0019】
このように構成された共同受信用増幅器1をTDAとして使用する場合には、第1の切換手段58において通過路62が選択されるようにスイッチ64、66を切り換え、第2の切換手段68において通過路70が選択されるように、スイッチ74、76を切り換える。これによって、1分岐器26の分岐出力は、通過路62を介して増幅器67によって増幅される。ここで、増幅器67の利得は、幹線出力端子30に生じている幹線出力(TA)のレベルと、増幅器67の出力をそのまま2分配器34、36、38で分配したとき、各分岐端子50、52、54、56に生じる分岐出力(DA’)がほぼ同一となるように設定されている(図2参照)。
【0020】
従来のTDAでは、DA出力を70MHz乃至770MHzの周波数帯において平坦な周波数特性を持ち、かつ上述したようにTA出力の1/2スパン分の出力となるように、幹線系の増幅器の最終段から信号を分岐させ、ハーフチルト特性を持たせるために分岐信号の高い周波数を減衰させるイコライザーを設け、そのイコライザーの出力を増幅していた(図1で言えば、1分岐器26の分岐出力をハーフチルト特性を有するイコライザーに供給し、そのイコライザーの出力を増幅器67で増幅し、2分配器34に供給していた)。しかし、この構成では、DA出力の雑音指数が悪化し、TA出力よりも数dB雑音指数が悪化していた。
【0021】
これに対し、上述した構成では、イコライザーを介さずに1分岐器26の分岐出力を増幅器67で増幅しているので、DAの雑音指数が悪化することはない。但し、分岐端子50、52、54、56には、上述したようにTAとほぼ同一レベルのDA’出力が生じる。従って、図3に示すように、各分岐端子50、52、54、56に分岐増幅器78を接続した場合、これら分岐増幅器78は、従来の分岐出力レベルを有するTDAが接続されるものとして設計されているので、これら分岐増幅器78は過入力となる。この過入力を解消するために、これら分岐増幅器78が備える擬似線路網を交換する必要がある。しかし、このような擬似線路網の減衰量は大きく、分岐増幅器78内に設置することが難しく、また設置できたとしても分岐増幅器78の特性を劣化させやすい。
【0022】
そこで、この共同受信用増幅器1では、増幅器67の出力を直接に2分配器34に供給するのではなく、第2の切換手段68において増幅器67の出力をイコライザー72を通過させることによって70乃至770MHzの全体において減衰させ、かつ高い周波数での減衰を大きくして、分配器34に供給している。その結果、各分岐端子50、52、54、56での分岐出力は、図2にDAで示すように70乃至770MHzにおいて平坦な周波数特性となり、かつ高い周波数においてTAの約1/2のレベルとなる。なお、イコライザー72に代えて擬似線路網を使用することもできる。
【0023】
共同受信用増幅器1をTBAとして使用する場合には、第1の切換手段58において増幅器60が選択されるようにスイッチ64、66を切り換え、第2の切換手段68において通過路70が選択されるように、スイッチ74、76を切り換える。これによって、1分岐器26の分岐出力は、増幅器60、67の2段によって増幅される。その結果、各分岐端子50、52、54、56には、図2にBAで示すようにTAよりも大きなレベルを有する分岐出力が生じる。従って、図4に示すように、各分岐端子50、52、54、56にはタップオフ82を介して各家庭内のテレビジョン受信機(図示せず)に共同受信信号を供給することができる。
【0024】
上記の実施形態では、第1の切換手段58では、スイッチ64、66によって増幅器60と通過路62とを切り換えるように構成したが、スイッチ64、66を除去し、プラグイン方式に増幅器60と通過路62とを構成し、いずれか一方のみを設置するように構成することもできる、第2の切換手段68においても同様で、スイッチ74、76を除去し、通過路70とイコライザー73をプラグイン方式で構成し、いずれか一方のみを設置するように構成することができる。また、上記の実施形態では、分岐端子50、52、54、56の4つの分岐端子を備えたものを示したが、これに限ったものではなく、分岐端子の数は、複数であれば任意の数とすることができる。上記の実施形態では、第1の増幅手段8は増幅器12、14、20、ゲインコントローラ16、自動利得制御回路24、イコライザー10、18を備えたものとしたが、この構成に限ったものではなく、共同受信信号を所定のレベルに増幅することが可能なものであれば、種々の構成のものを使用することができる。例えばイコライザー10、18は、いずれか一方のみを使用することができるし、ゲインコントローラ16、自動利得制御回路24を除去して、固定利得の増幅器とすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 共同受信用増幅器
2 入力端子
8 第1の増幅手段
26 1分岐器
32 分岐・分配切換手段
50 52 54 56 分岐端子
58 第1の切換手段
67 増幅器(第2の増幅手段)
68 第2の切換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共同受信信号が供給される入力端子と、
この入力端子から供給された共同受信信号を増幅する第1の増幅手段と、
第1の増幅手段の出力信号が供給される分岐手段と、
この分岐手段の出力信号が供給される出力端子と、
前記分岐手段の分岐出力信号が供給される分岐・分配切換手段と、
この分岐・分配切換手段の出力信号がそれぞれ分配された複数の分岐端子とを、
具備し、前記分岐・分配切換手段は、
前記分岐手段の分岐出力信号を増幅して出力する増幅状態または前記分岐手段の分岐出力信号をそのまま通過させる通過状態のいずれかとする第1の切換手段と、
この第1の切換手段の出力信号を増幅して、前記各分岐端子に供給する第2の増幅手段とを、
具備する共同受信システム用増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の共同受信システム用増幅器において、前記分岐・分配切換手段は、前記第2の増幅手段の出力信号をそのまま通過させる通過状態と、前記第2の増幅手段の出力信号を減衰させる減衰状態とのいずれかに切り換える第2の切換手段を有する共同受信システム用増幅器。
【請求項3】
請求項2記載の共同受信システム用増幅器において、前記入力端子と前記分岐手段との間に、前記テレビジョン放送信号にチルト特性を持たせる周波数調整手段が設けられ、第2の切換手段は、前記減衰状態において、前記チルト特性と逆の逆チルト特性を有する共同受信システム用増幅器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−151750(P2012−151750A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9973(P2011−9973)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】