共回り防止機構付き取付け構造
【課題】弾性支持部材の座金の機能を果たすと共に、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構を締結部材で締結することの出来る回り止め機構付き取付け構造を提供する。
【解決手段】上側の弾性部材4Aの上面に載置され該弾性部材4Aの上面を覆い弾性部材4Aを圧縮方向に拘束する座金6は取付けボルト7と一体化され、ナットを前記取付けボルト7に螺合する際には、前記座金6の一部が前記補機取付け部材の一部22fに当接することによって取付けボルト7の回転が阻止される。
【解決手段】上側の弾性部材4Aの上面に載置され該弾性部材4Aの上面を覆い弾性部材4Aを圧縮方向に拘束する座金6は取付けボルト7と一体化され、ナットを前記取付けボルト7に螺合する際には、前記座金6の一部が前記補機取付け部材の一部22fに当接することによって取付けボルト7の回転が阻止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性支持による自動車用補機のシャシーフレームへの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
余裕出力の確保のため、自動車の出力アップが行われている。自動車の出力をアップすれば、エンジンの発熱量は当然増加する。エンジンの発熱量増加はラジエータの大型化によって対応してきたが、特に大型車両にいたっては、出力アッップのみならず、各種安全ディバイスの充実(車両への搭載)のために、もはやこれ以上の大型のラジエータをフレーム前端の左右のサイドレール内に搭載するには限界を超している。
【0003】
こうした事態に対処するため、メインラジエータはフレーム前端の左右のサイドレール内に搭載するが、これに加えて、サブラジエータをフレームのサイドレール側面に搭載して、メインラジエータとサブラジエータを同時に用いることで冷却性能を確保することが行われている。
【0004】
サブラジエータをフレームのサイドレール側面に搭載するに当たっては、サブラジエータ搭載用ブラケットに、図11に断面を示す弾性支持機構によってサブラジエータを弾性支持して取り付けている。
【0005】
図11において、符号20はサブラジエータ搭載用ブラケット、符号4A、4Bは弾性部材である円筒状防振ゴム、符号Dはサブラジエータに固着された支持部材、符号Eは圧縮方向長さ設定用のカラー、符号Fは取付けボルト、Gは取付けナットを示している。
【0006】
フレームのサイドレール側面の当該搭載位置近傍は、他の装備や、当該サブラジエータの電動フャンのカバーや同導風ダクトによって、ボルト、ナットの何れかに締結の際の回り止めのため工具の差込が出来ない場合が多い。
即ち、図11では、取り付けボルトFの頭部を押さえることなく、そのままナットGを動力レンチなどで回してしまうと、取り付けボルトFはナットGの回転に伴なって共回りを起してしまうため、工具(回り止めスパナなど)で、ボルトの頭部を押さえる必要があるが、取り付けボルトFの上方には、例えばサブラジエータを保護する図示しないカバーなどがあり、工具が届きづらい場合などがある。
【0007】
回り止め機構として、炉中ロウ付け工程を廃止可能な管継手回り止め用金具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
然るに、係る特許文献では、球ユニオンと締め付けボルトとから成る管継手を取付け部に固定する際、締め付けボルトの回転操作によって球ユニオンが共回りすることを防止するための金具であって、上記問題の解決とはならない。
【特許文献1】実開平6−51687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、弾性支持部材(例えば、防振ゴム)の座金の機能を果たすと共に、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構を締結部材で締結することの出来る回り止め機構付き取付け構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の共回り防止機構付き取付け構造は、弾性支持による自動車用補機のシャシー側への取付け構造において、補機取付け部材(2)と、複数の弾性支持機構(図1のA部)とを有し、該弾性支持機構は、中心孔(4Ai,4Bi)を有する上下1対の弾性部材(4A,4B)と、取付け孔(11i)を有し前記1対の弾性部材(4A,4B)の間に挟持される補機支持部材(11)と、中央に取付け孔(62)を有し前記1対の弾性部材(4A,4B)の上側の弾性部材(4A)の上面に載置され該弾性部材(4A)の上面を覆い弾性部材(4A)を圧縮方向に拘束する座金(6,6B)と、前記弾性部材の上面に載置された前記座金(6,6B)の上面から当該座金(6,6B)、前記1対の弾性部材(4A,4B)、前記補機支持部材(11)及び前記補機取付け部材(2)を同時に貫通する取付けボルト(7)と、当該ボルト(7)に螺合するナット(8)とによって構成され、前記座金(6,6B)は前記取付けボルト(7)と一体化され、前記ナット(8)を前記取付けボルト(7)に螺合する際には、前記座金(6,6B)の一部(63,63B)が前記補機取付け部材(2)の一部(22f)に当接することによって取付けボルト(7)の回転が阻止されることを特徴としている(図1〜図9)。
【0010】
前記複数の各弾性支持機構における1対の弾性支持部材は、中心に取付け孔(4Ai,4Bi)が形成された円柱状の防振ゴム(4A,4B)であることが好ましい(図1〜図9)。
そして、その1対の円柱状の防振ゴム(4A,4B)の中心孔(4Ai,4Bi)内部には、前記補機支持部材(11)を挟持した状態の当該防振ゴム(4A,4B)の圧縮方向の高さ寸法を決定するための円筒状部材(カラー5)が挿入され、その内部(5i)に取付けボルト(7)が挿入されるように構成されることが好ましい。
【0011】
前記座金(6,6B)は前記弾性部材(4A,4B)を圧縮方向に拘束する面(61,61B)の一部が水平方向に伸び(61a,61Ba)、その延びた先から圧縮方向に拘束する面とは直角方向に折り曲がった面(63,63B)を有し、その直角方向に折り曲がった面(63,63B)或いは折り曲がった面の板幅方向の端部が前記補機取付け部材2の一部(22f)に当接して取付けボルト(7)の回転が阻止されることを特徴としている(図1〜図9)。
【0012】
前記補機はサブラジエータ(1)である。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明(請求項1の発明)によれば、座金の一部が水平方向に伸び(61a,61Ba)、その延びた先から押圧する面とは直角方向に折り曲がった面(63,63B)を有し、その直角方向に折り曲がった面(63,63B)或いは折り曲がった面の板幅方向の端部が前記補機取付け部材(2)の一部に当接することによって取付けボルトの回転が阻止されるので、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構における取り付けボルト(7)に締め付け工具(9)を用いてナット(8)を確実に締め込むことが出来る。
【0014】
また、座金(6)と取付けボルト(7)とが一体化されているので、組み付けに際しては取付け工程が削減出来ることと、動力レンチを持つ以外の操作が不要となるため、作業効率が上がる。
【0015】
座金(6)と取付けボルト(7)とが一体化されているので、部品の管理工数が削減出来る。
【0016】
従来技術を改良する場合、弾性支持構造等、周辺部品の形状の大幅変更には至らず、改良設計に伴う費用増大を最小限に留める。
【0017】
サブラジエータ(1)の搭載のみならず、多くの補機の弾性支持に対して適用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1はサブラジエータの取り付け状態を示した正面図、図2は同平面(上面図)、図3は図1のA部(弾性支持機構)を立体的に表した斜視図、図4は弾性支持機構の断面図、図5〜図7は取付けボルトと一体化された座金の詳細図、図8〜図10は取付けボルトと一体化された座金の変形例の詳細図を示す。
【0019】
先ず、図1及び図2において、サブラジエータ1の左右両側面にはサブラジエータ支持部材11が固設されている。
サブラジエータ1をフレーム3の側面3vに搭載するサブラジエータブラケット2は、図示の例では、フレーム3に取り付けられる2本(図2において1本は省略して描かれている)のL字状部材21と、このL字状部材21と直交する様に井桁状に組まれる2本のU字状部材22と、L字状の補強部材23とで構成されている。
【0020】
前記補強部材23は、垂直部23vと水平部23hとを有し、垂直部23vは前記L字状部材21の垂直部21vの下方に垂直部23vの先端が下方を向くように公知の手段(例えば溶接)で固着されている。
フレーム3にサブラジエータブラケット2を取り付けるに際しては、サブラジエータブラケット2のL字状部材21の垂直部21vがフレーム3の側面3vと接し、サブラジエータブラケット2の補強部材23の水平部23hがフレーム3の下面3hと接するようにして取り付けられる。
【0021】
サブラジエータブラケット2を構成するU字状部材22は、図1における水平に配置されたウェブ22wと、該ウェブ22wの端部でウェブ22wと直交方向に延在する2つのフランジ22fとを有している。
【0022】
図示の例では、サブラジエータ1とサブラジエータブラケット2に取り付けるのに4箇所(図2において2箇所は省略して描いている)に以下に構成を説明する弾性支持機構を用いている。
図1において、符号Rmは、メインラジエータを示す。
【0023】
当該弾性支持機構(図1のA部が4箇所)を、図3(図4を立体的に見た斜視図)及び図4(図1のA部を変位させ更に断面として示したもの)を参照して説明する。
図3及び図4において、サブラジエータブラケット2の前記U字状部材22のウェブ22wの上面に、上下1対の円柱状の弾性部材である防振ゴム4A,4Bの内の下側の防振ゴム4Bが載置されている。
【0024】
下側の防振ゴム4Bの上方には、前記サブラジエータ支持部材11の水平下端11eを挟持した上で上側の防振ゴム4Aが重ねられ、そして各防振ゴム4A、4Bの中空部4Ai,4Bi及びサブラジエータ支持部材11の取付け孔11iに円筒状のカラー5が挿入されている。
【0025】
このカラー5の軸方向の寸法は、1対の防振ゴム4A,4Bを所定量だけ圧縮した合計の軸方向の高さ(厚み)にサブラジエータ支持部材11の厚みを加えた値と等しく設定されている。
【0026】
上側の防振ゴム4Aの上方から前記カラー5の中空部5iには、後述する座金6と一体化された取付けボルト7の軸部の先端7eが、前記サブラジエータブラケット2のU字状部材22のウェブ22wに形成された取付け孔22iから突出する様に貫通しており、その軸部先端7eに締結用ナット8が所定の締め付けトルクによって締付けられている。
【0027】
即ち、弾性支持機構としては、取付けボルト7に締結用ナット8を所定のトルクで締め付けた時に、前述したように、1対の防振ゴム4A,4Bが所定量だけ圧縮され、カラー5の軸方向の寸法がその時の防振ゴム4A,4Bの軸方向の高さ(厚み)の合計にサブラジエータ支持部材11の厚みを加えた値と等しくなっている。
【0028】
次に、図5〜図7を参照して一体化された座金6と取付けボルト7について説明する。
【0029】
座金6は、図示の例では、図6(上面図)に示すように、防振ゴム4Aとの接触面(2点鎖線で示す円形領域)よりも幾分大きな円形の座面61を有し、この座面61の中心には、取付けボルト7の軸部を挿通させる取付け孔62が形成されている。
【0030】
座面61は、図6において、その取付け孔62の中心を通り、左右方向の中心線Lに対して、右下方向に座面延長部61aが延在し、その座面延長部61aの先端部は座面延長部61aに対して直角方向に折り曲げられ、図5における下方に延在する垂直部63を有している。折り曲げラインは図6の左右方向の中心線Lに対して直交している。
図3、図4及び図5〜図7は、図1及び図2における右方の弾性支持機構(図1のA部)を示しているが、図1及び図2にける左方の弾性支持機構は、右方の弾性支持機構とは左右勝手違いに形成されている。
【0031】
座金6と取付けボルト7の一体化は、図示の例では、取付けボルト7の軸部7sを座金6の取付け孔62に挿通し、座金6の座面61の上面がボルトヘッドの首下側の面7hに当接した状態で、公知の手段、例えば溶接で固着させることで為している。
【0032】
次に、図3及び図4を参照して、弾性支持機構における回り止め機構について説明する。
図3において、締結ナット8(図4参照、図3では図示を省略)を、例えば、動力レンチ(インパクトレンチ)9のソケットのナット係合部91に収めた状態で、締結ナット8を、セットした座金6と一体化された取付けボルト7の軸部先端7eの雄ねじに螺合させ、動力レンチ9に動力を加える。
【0033】
動力レンチ9に動力を加えた瞬間は、上下の防振ゴム4A,4B、取付けボルトと7一体化された座金6、サブラジエータ支持部材11の各接触面に作用する面圧が低いため、レンチ9は矢印Y1方向に回転し、取付けボルト7と一体化された座金6も矢印Y2方向に回転する。
やがて、座金6の垂直部63の板端部がU字状部材22のフランジ22fに当接するために、それ以上の座金6の回転は阻止される。
座金6の回転が阻止された状態で動力レンチ9が回転するため、締結ナット8は取付けボルト7に捻じ込まれ、適正な締め付けトルクが作用した時点で、動力レンチ9の図示しないリミッタ(トルク制限機構)が作用して、締結が完了する。
【0034】
次に、図8〜図10を参照して、取付けボルト7を一体化した座金の変形例6Bについて説明する。
【0035】
図5〜図7の座金6は、正面図(図5)、上面図(6)において、座面延長部61a及びこれに続く垂直部63が左右非対称であった。
それに対して、図8〜図10の(図5〜図7の座金6)変形例の座金6Bは、座面延長部61Ba及びこれに続く垂直部63Bが左右対称に形成されている。
【0036】
一方、サブラジエータブラケット(全体の図示は省略)2Bには、座金6Bの前記座面延長部61Baが挿通される回転防止孔2Brが形成され、この回転防止孔2Brに座面延長部61Baを挿通させることによって、座金6B及び座金6Bと一体化された取付けボルト7の回転(共回り)を阻止する様に構成されている。
【0037】
上述の様に構成された本実施形態の共回り防止機構付き取付け構造によれば、座金6(6B)の垂直部63(63B)、或いは垂直面の板幅方向の端部がサブラジエータブラケット2(2B)のフランジ22f(或いは挿通孔2Br)に当接することによって取付けボルト7の回転が阻止されるので、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構における取り付けボルト7に、動力レンチ9を用いてナット8を確実に締め込むことが出来る。
【0038】
また、座金6(6B)と取付けボルト7とが一体化されているので、組み付けに際しては取付け工程が削減出来ることと、動力レンチ9を持つ以外の操作が不要となるため、作業効率が上がる。
【0039】
座金6(6B)と取付けボルト7とが一体化されているので、部品の管理工数が削減出来る。
【0040】
従来技術を改良する場合、弾性支持構造等、周辺部品の形状の大幅変更には至らず、改良設計に伴う費用増大を最小限に留める。
【0041】
サブラジエータ1の搭載のみならず、メインラジエータやパワーステアリング用オイルクーラ等多くの補機の弾性支持に対して適用出来る。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を実施した場合におけるサブラジエータの車両フレームへの取付けを説明する正面図。
【図2】図2に対応する上面図。
【図3】図1のA部(弾性支持機構)を立体的に表した斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る弾性支持機構の断面図。
【図5】本実施形態に係り、取付けボルトと一体化された座金の正面図。
【図6】図5に対応する上面図。
【図7】図5に対応する側面図。
【図8】本実施形態に係り、取付けボルトと一体化された座金の変形例の正面図。
【図9】図8に対応する上面図。
【図10】図8に対応する側面図。
【図11】従来技術における弾性支持機構の断面図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・サブラジエータ
2・・・補機取付け部材/補機取付け部材
3・・・フレーム/サイドレール
4A・・・弾性部材/上方の防振ゴム
4B・・・弾性部材/下方の防振ゴム
5・・・カラー
6、6B・・・座金
7・・・取付けボルト
8・・・締結ナット
9・・・締付け工具/動力レンチ
11・・・補機支持部材/サブラジエータ支持部材
21・・・L字状部材
22・・・U字状部材
23・・・補強部材
61・・・座面
63・・・垂直部
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性支持による自動車用補機のシャシーフレームへの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
余裕出力の確保のため、自動車の出力アップが行われている。自動車の出力をアップすれば、エンジンの発熱量は当然増加する。エンジンの発熱量増加はラジエータの大型化によって対応してきたが、特に大型車両にいたっては、出力アッップのみならず、各種安全ディバイスの充実(車両への搭載)のために、もはやこれ以上の大型のラジエータをフレーム前端の左右のサイドレール内に搭載するには限界を超している。
【0003】
こうした事態に対処するため、メインラジエータはフレーム前端の左右のサイドレール内に搭載するが、これに加えて、サブラジエータをフレームのサイドレール側面に搭載して、メインラジエータとサブラジエータを同時に用いることで冷却性能を確保することが行われている。
【0004】
サブラジエータをフレームのサイドレール側面に搭載するに当たっては、サブラジエータ搭載用ブラケットに、図11に断面を示す弾性支持機構によってサブラジエータを弾性支持して取り付けている。
【0005】
図11において、符号20はサブラジエータ搭載用ブラケット、符号4A、4Bは弾性部材である円筒状防振ゴム、符号Dはサブラジエータに固着された支持部材、符号Eは圧縮方向長さ設定用のカラー、符号Fは取付けボルト、Gは取付けナットを示している。
【0006】
フレームのサイドレール側面の当該搭載位置近傍は、他の装備や、当該サブラジエータの電動フャンのカバーや同導風ダクトによって、ボルト、ナットの何れかに締結の際の回り止めのため工具の差込が出来ない場合が多い。
即ち、図11では、取り付けボルトFの頭部を押さえることなく、そのままナットGを動力レンチなどで回してしまうと、取り付けボルトFはナットGの回転に伴なって共回りを起してしまうため、工具(回り止めスパナなど)で、ボルトの頭部を押さえる必要があるが、取り付けボルトFの上方には、例えばサブラジエータを保護する図示しないカバーなどがあり、工具が届きづらい場合などがある。
【0007】
回り止め機構として、炉中ロウ付け工程を廃止可能な管継手回り止め用金具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
然るに、係る特許文献では、球ユニオンと締め付けボルトとから成る管継手を取付け部に固定する際、締め付けボルトの回転操作によって球ユニオンが共回りすることを防止するための金具であって、上記問題の解決とはならない。
【特許文献1】実開平6−51687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、弾性支持部材(例えば、防振ゴム)の座金の機能を果たすと共に、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構を締結部材で締結することの出来る回り止め機構付き取付け構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の共回り防止機構付き取付け構造は、弾性支持による自動車用補機のシャシー側への取付け構造において、補機取付け部材(2)と、複数の弾性支持機構(図1のA部)とを有し、該弾性支持機構は、中心孔(4Ai,4Bi)を有する上下1対の弾性部材(4A,4B)と、取付け孔(11i)を有し前記1対の弾性部材(4A,4B)の間に挟持される補機支持部材(11)と、中央に取付け孔(62)を有し前記1対の弾性部材(4A,4B)の上側の弾性部材(4A)の上面に載置され該弾性部材(4A)の上面を覆い弾性部材(4A)を圧縮方向に拘束する座金(6,6B)と、前記弾性部材の上面に載置された前記座金(6,6B)の上面から当該座金(6,6B)、前記1対の弾性部材(4A,4B)、前記補機支持部材(11)及び前記補機取付け部材(2)を同時に貫通する取付けボルト(7)と、当該ボルト(7)に螺合するナット(8)とによって構成され、前記座金(6,6B)は前記取付けボルト(7)と一体化され、前記ナット(8)を前記取付けボルト(7)に螺合する際には、前記座金(6,6B)の一部(63,63B)が前記補機取付け部材(2)の一部(22f)に当接することによって取付けボルト(7)の回転が阻止されることを特徴としている(図1〜図9)。
【0010】
前記複数の各弾性支持機構における1対の弾性支持部材は、中心に取付け孔(4Ai,4Bi)が形成された円柱状の防振ゴム(4A,4B)であることが好ましい(図1〜図9)。
そして、その1対の円柱状の防振ゴム(4A,4B)の中心孔(4Ai,4Bi)内部には、前記補機支持部材(11)を挟持した状態の当該防振ゴム(4A,4B)の圧縮方向の高さ寸法を決定するための円筒状部材(カラー5)が挿入され、その内部(5i)に取付けボルト(7)が挿入されるように構成されることが好ましい。
【0011】
前記座金(6,6B)は前記弾性部材(4A,4B)を圧縮方向に拘束する面(61,61B)の一部が水平方向に伸び(61a,61Ba)、その延びた先から圧縮方向に拘束する面とは直角方向に折り曲がった面(63,63B)を有し、その直角方向に折り曲がった面(63,63B)或いは折り曲がった面の板幅方向の端部が前記補機取付け部材2の一部(22f)に当接して取付けボルト(7)の回転が阻止されることを特徴としている(図1〜図9)。
【0012】
前記補機はサブラジエータ(1)である。
【発明の効果】
【0013】
上述する構成を具備する本発明(請求項1の発明)によれば、座金の一部が水平方向に伸び(61a,61Ba)、その延びた先から押圧する面とは直角方向に折り曲がった面(63,63B)を有し、その直角方向に折り曲がった面(63,63B)或いは折り曲がった面の板幅方向の端部が前記補機取付け部材(2)の一部に当接することによって取付けボルトの回転が阻止されるので、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構における取り付けボルト(7)に締め付け工具(9)を用いてナット(8)を確実に締め込むことが出来る。
【0014】
また、座金(6)と取付けボルト(7)とが一体化されているので、組み付けに際しては取付け工程が削減出来ることと、動力レンチを持つ以外の操作が不要となるため、作業効率が上がる。
【0015】
座金(6)と取付けボルト(7)とが一体化されているので、部品の管理工数が削減出来る。
【0016】
従来技術を改良する場合、弾性支持構造等、周辺部品の形状の大幅変更には至らず、改良設計に伴う費用増大を最小限に留める。
【0017】
サブラジエータ(1)の搭載のみならず、多くの補機の弾性支持に対して適用出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1はサブラジエータの取り付け状態を示した正面図、図2は同平面(上面図)、図3は図1のA部(弾性支持機構)を立体的に表した斜視図、図4は弾性支持機構の断面図、図5〜図7は取付けボルトと一体化された座金の詳細図、図8〜図10は取付けボルトと一体化された座金の変形例の詳細図を示す。
【0019】
先ず、図1及び図2において、サブラジエータ1の左右両側面にはサブラジエータ支持部材11が固設されている。
サブラジエータ1をフレーム3の側面3vに搭載するサブラジエータブラケット2は、図示の例では、フレーム3に取り付けられる2本(図2において1本は省略して描かれている)のL字状部材21と、このL字状部材21と直交する様に井桁状に組まれる2本のU字状部材22と、L字状の補強部材23とで構成されている。
【0020】
前記補強部材23は、垂直部23vと水平部23hとを有し、垂直部23vは前記L字状部材21の垂直部21vの下方に垂直部23vの先端が下方を向くように公知の手段(例えば溶接)で固着されている。
フレーム3にサブラジエータブラケット2を取り付けるに際しては、サブラジエータブラケット2のL字状部材21の垂直部21vがフレーム3の側面3vと接し、サブラジエータブラケット2の補強部材23の水平部23hがフレーム3の下面3hと接するようにして取り付けられる。
【0021】
サブラジエータブラケット2を構成するU字状部材22は、図1における水平に配置されたウェブ22wと、該ウェブ22wの端部でウェブ22wと直交方向に延在する2つのフランジ22fとを有している。
【0022】
図示の例では、サブラジエータ1とサブラジエータブラケット2に取り付けるのに4箇所(図2において2箇所は省略して描いている)に以下に構成を説明する弾性支持機構を用いている。
図1において、符号Rmは、メインラジエータを示す。
【0023】
当該弾性支持機構(図1のA部が4箇所)を、図3(図4を立体的に見た斜視図)及び図4(図1のA部を変位させ更に断面として示したもの)を参照して説明する。
図3及び図4において、サブラジエータブラケット2の前記U字状部材22のウェブ22wの上面に、上下1対の円柱状の弾性部材である防振ゴム4A,4Bの内の下側の防振ゴム4Bが載置されている。
【0024】
下側の防振ゴム4Bの上方には、前記サブラジエータ支持部材11の水平下端11eを挟持した上で上側の防振ゴム4Aが重ねられ、そして各防振ゴム4A、4Bの中空部4Ai,4Bi及びサブラジエータ支持部材11の取付け孔11iに円筒状のカラー5が挿入されている。
【0025】
このカラー5の軸方向の寸法は、1対の防振ゴム4A,4Bを所定量だけ圧縮した合計の軸方向の高さ(厚み)にサブラジエータ支持部材11の厚みを加えた値と等しく設定されている。
【0026】
上側の防振ゴム4Aの上方から前記カラー5の中空部5iには、後述する座金6と一体化された取付けボルト7の軸部の先端7eが、前記サブラジエータブラケット2のU字状部材22のウェブ22wに形成された取付け孔22iから突出する様に貫通しており、その軸部先端7eに締結用ナット8が所定の締め付けトルクによって締付けられている。
【0027】
即ち、弾性支持機構としては、取付けボルト7に締結用ナット8を所定のトルクで締め付けた時に、前述したように、1対の防振ゴム4A,4Bが所定量だけ圧縮され、カラー5の軸方向の寸法がその時の防振ゴム4A,4Bの軸方向の高さ(厚み)の合計にサブラジエータ支持部材11の厚みを加えた値と等しくなっている。
【0028】
次に、図5〜図7を参照して一体化された座金6と取付けボルト7について説明する。
【0029】
座金6は、図示の例では、図6(上面図)に示すように、防振ゴム4Aとの接触面(2点鎖線で示す円形領域)よりも幾分大きな円形の座面61を有し、この座面61の中心には、取付けボルト7の軸部を挿通させる取付け孔62が形成されている。
【0030】
座面61は、図6において、その取付け孔62の中心を通り、左右方向の中心線Lに対して、右下方向に座面延長部61aが延在し、その座面延長部61aの先端部は座面延長部61aに対して直角方向に折り曲げられ、図5における下方に延在する垂直部63を有している。折り曲げラインは図6の左右方向の中心線Lに対して直交している。
図3、図4及び図5〜図7は、図1及び図2における右方の弾性支持機構(図1のA部)を示しているが、図1及び図2にける左方の弾性支持機構は、右方の弾性支持機構とは左右勝手違いに形成されている。
【0031】
座金6と取付けボルト7の一体化は、図示の例では、取付けボルト7の軸部7sを座金6の取付け孔62に挿通し、座金6の座面61の上面がボルトヘッドの首下側の面7hに当接した状態で、公知の手段、例えば溶接で固着させることで為している。
【0032】
次に、図3及び図4を参照して、弾性支持機構における回り止め機構について説明する。
図3において、締結ナット8(図4参照、図3では図示を省略)を、例えば、動力レンチ(インパクトレンチ)9のソケットのナット係合部91に収めた状態で、締結ナット8を、セットした座金6と一体化された取付けボルト7の軸部先端7eの雄ねじに螺合させ、動力レンチ9に動力を加える。
【0033】
動力レンチ9に動力を加えた瞬間は、上下の防振ゴム4A,4B、取付けボルトと7一体化された座金6、サブラジエータ支持部材11の各接触面に作用する面圧が低いため、レンチ9は矢印Y1方向に回転し、取付けボルト7と一体化された座金6も矢印Y2方向に回転する。
やがて、座金6の垂直部63の板端部がU字状部材22のフランジ22fに当接するために、それ以上の座金6の回転は阻止される。
座金6の回転が阻止された状態で動力レンチ9が回転するため、締結ナット8は取付けボルト7に捻じ込まれ、適正な締め付けトルクが作用した時点で、動力レンチ9の図示しないリミッタ(トルク制限機構)が作用して、締結が完了する。
【0034】
次に、図8〜図10を参照して、取付けボルト7を一体化した座金の変形例6Bについて説明する。
【0035】
図5〜図7の座金6は、正面図(図5)、上面図(6)において、座面延長部61a及びこれに続く垂直部63が左右非対称であった。
それに対して、図8〜図10の(図5〜図7の座金6)変形例の座金6Bは、座面延長部61Ba及びこれに続く垂直部63Bが左右対称に形成されている。
【0036】
一方、サブラジエータブラケット(全体の図示は省略)2Bには、座金6Bの前記座面延長部61Baが挿通される回転防止孔2Brが形成され、この回転防止孔2Brに座面延長部61Baを挿通させることによって、座金6B及び座金6Bと一体化された取付けボルト7の回転(共回り)を阻止する様に構成されている。
【0037】
上述の様に構成された本実施形態の共回り防止機構付き取付け構造によれば、座金6(6B)の垂直部63(63B)、或いは垂直面の板幅方向の端部がサブラジエータブラケット2(2B)のフランジ22f(或いは挿通孔2Br)に当接することによって取付けボルト7の回転が阻止されるので、取り付けに係わる部材の何れをも作業者の手によって保持することなく、弾性支持機構における取り付けボルト7に、動力レンチ9を用いてナット8を確実に締め込むことが出来る。
【0038】
また、座金6(6B)と取付けボルト7とが一体化されているので、組み付けに際しては取付け工程が削減出来ることと、動力レンチ9を持つ以外の操作が不要となるため、作業効率が上がる。
【0039】
座金6(6B)と取付けボルト7とが一体化されているので、部品の管理工数が削減出来る。
【0040】
従来技術を改良する場合、弾性支持構造等、周辺部品の形状の大幅変更には至らず、改良設計に伴う費用増大を最小限に留める。
【0041】
サブラジエータ1の搭載のみならず、メインラジエータやパワーステアリング用オイルクーラ等多くの補機の弾性支持に対して適用出来る。
【0042】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない旨を付記する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明を実施した場合におけるサブラジエータの車両フレームへの取付けを説明する正面図。
【図2】図2に対応する上面図。
【図3】図1のA部(弾性支持機構)を立体的に表した斜視図。
【図4】本発明の実施形態に係る弾性支持機構の断面図。
【図5】本実施形態に係り、取付けボルトと一体化された座金の正面図。
【図6】図5に対応する上面図。
【図7】図5に対応する側面図。
【図8】本実施形態に係り、取付けボルトと一体化された座金の変形例の正面図。
【図9】図8に対応する上面図。
【図10】図8に対応する側面図。
【図11】従来技術における弾性支持機構の断面図。
【符号の説明】
【0044】
1・・・サブラジエータ
2・・・補機取付け部材/補機取付け部材
3・・・フレーム/サイドレール
4A・・・弾性部材/上方の防振ゴム
4B・・・弾性部材/下方の防振ゴム
5・・・カラー
6、6B・・・座金
7・・・取付けボルト
8・・・締結ナット
9・・・締付け工具/動力レンチ
11・・・補機支持部材/サブラジエータ支持部材
21・・・L字状部材
22・・・U字状部材
23・・・補強部材
61・・・座面
63・・・垂直部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性支持による自動車用補機のシャシー側への取付け構造において、補機取付け部材と、複数の弾性支持機構とを有し、該弾性支持機構は、中心孔を有する上下1対の弾性部材と、取付け孔を有し前記1対の弾性部材の間に挟持される補機支持部材と、中央に取付け孔を有し前記1対の弾性部材の上側の弾性部材の上面に載置され該弾性部材の上面を覆い弾性部材を圧縮方向に拘束する座金と、前記弾性部材の上面に載置された前記座金の上面から当該座金、前記1対の弾性部材、前記補機支持部材及び前記補機取付け部材を同時に貫通する取付けボルトと、当該ボルトに螺合するナット、とによって構成され、前記座金は前記取付けボルトと一体化され、前記ナットを前記取付けボルトに螺合する際には、前記座金の一部が前記補機取付け部材の一部に当接することによって取付けボルトの回転が阻止されることを特徴とする回り止め機構付き取付け構造。
【請求項2】
前記複数の各弾性支持機構における1対の弾性支持部材は、中心に取付け孔が形成された円柱状の防振ゴムである請求項1の回り止め機構付き取付け構造。
【請求項3】
前記座金は前記弾性部材を圧縮方向に拘束する面の一部が水平方向に伸び、その延びた先から圧縮方向に拘束する面とは直角方向に折り曲がった面を有し、その直角方向に折り曲がった面或いは折り曲がった面の板幅方向の端部が前記補機取付け部材2の一部に当接して取付けボルトの回転が阻止されることを特徴とする請求項1及び請求項2の何れかの回り止め機構付き取付け構造。
【請求項4】
前記補機はサブラジエータである請求項1〜3の何れかの回り止め機構付き取付け構造。
【請求項1】
弾性支持による自動車用補機のシャシー側への取付け構造において、補機取付け部材と、複数の弾性支持機構とを有し、該弾性支持機構は、中心孔を有する上下1対の弾性部材と、取付け孔を有し前記1対の弾性部材の間に挟持される補機支持部材と、中央に取付け孔を有し前記1対の弾性部材の上側の弾性部材の上面に載置され該弾性部材の上面を覆い弾性部材を圧縮方向に拘束する座金と、前記弾性部材の上面に載置された前記座金の上面から当該座金、前記1対の弾性部材、前記補機支持部材及び前記補機取付け部材を同時に貫通する取付けボルトと、当該ボルトに螺合するナット、とによって構成され、前記座金は前記取付けボルトと一体化され、前記ナットを前記取付けボルトに螺合する際には、前記座金の一部が前記補機取付け部材の一部に当接することによって取付けボルトの回転が阻止されることを特徴とする回り止め機構付き取付け構造。
【請求項2】
前記複数の各弾性支持機構における1対の弾性支持部材は、中心に取付け孔が形成された円柱状の防振ゴムである請求項1の回り止め機構付き取付け構造。
【請求項3】
前記座金は前記弾性部材を圧縮方向に拘束する面の一部が水平方向に伸び、その延びた先から圧縮方向に拘束する面とは直角方向に折り曲がった面を有し、その直角方向に折り曲がった面或いは折り曲がった面の板幅方向の端部が前記補機取付け部材2の一部に当接して取付けボルトの回転が阻止されることを特徴とする請求項1及び請求項2の何れかの回り止め機構付き取付け構造。
【請求項4】
前記補機はサブラジエータである請求項1〜3の何れかの回り止め機構付き取付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−347484(P2006−347484A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179043(P2005−179043)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】
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