説明

共重合ポリエステル樹脂

【課題】色調、透明性、耐光性能が良好で、かつ、溶解性能が優れた共重合ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】全カルボン酸成分の60〜90モル%をイソフタル酸成分とし、全グリコール成分の60〜100%をネオペンチルグリコールとする共重合ポリエステルであって、ゲルマニウム化合物を触媒として使用した色調、透明性に優れた可溶性共重合ポリエステル樹脂。また、この可溶性共重合ポリエステル樹脂を10〜50質量%の範囲で含有し、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる群から選ばれる1種以上を溶媒とするポリエステル溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調、透明性に優れ、耐光性能が良好で、かつ、溶解性能が優れた共重合ポリエステル樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂は、優れた化学的性質、物理的性質を有しており、作業性に優れる点から、汎用溶剤に溶解してコーティング液等として広く用いられている。耐光性に優れたポリエステル樹脂としては、例えば、特許文献1に、イソフタル酸およびネオペンチルグリコールのみからなる共重合ポリエステルが開示されている。
【特許文献1】特開2004−137292公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載のポリエステル樹脂は、リン酸を添加剤として使用しているために、2トン以上の大容量の重合釜を用いて重合した場合、重合時間が非常に長くなり、黄色味が強くなるので好ましくなかった。
【0004】
本発明は、前記問題点を解決するものであり、リン酸またはリン酸エステルを使用せず、ゲルマニウム触媒のみを用いることで、透明性に優れ耐光性が良好な可溶性共重合ポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意研究した結果、一般的なモノマー成分であっても特定の割合で共重合し、かつ、特定の触媒を用いることにより、前記課題がはじめて解決されることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は下記の通りである。
[1]全カルボン酸成分の30〜90モル%をイソフタル酸とし、全グリコール成分の30〜100%をネオペンチルグリコールとする共重合ポリエステルであって、ゲルマニウム化合物を触媒として使用し、厚さ1.0mmの成型片に成形した際の全光線透過率が95%以上で、初期のカラーb値(b1)の値が0〜2.5であることを特徴とする色調、透明性に優れた可溶性共重合ポリエステル樹脂。
[2][1]記載の可溶性共重合ポリエステル樹脂を10〜50質量%の範囲で含有し、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる群から選ばれる1種以上を溶媒とするポリエステル溶液。
[3][2]記載のポリエステル溶液を用いた塗料またはコーティング剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、厚さ1.0mmの成型片に成形した際の全光線透過率が95%以上で、汎用溶剤に可溶、かつ、耐光性能に優れたポリエステル樹脂が提供され、塗料やコーティング剤として良好に使用される。したがって、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリエステル樹脂のカルボン酸成分としては、全カルボン酸成分の30〜90モル%をイソフタル酸とすることが必要であり、75〜90モル%がより好ましい。イソフタル酸が30モル%よりも少ない場合、耐光性能が悪くなるので好ましくない。また、90モル%よりも多い場合、25℃において2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)に濃度10質量%以上で溶解することができない。
【0009】
他のカルボン酸成分としては、テレフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸の脂環族ジカルボンもしくはそのエステル形成性誘導体等を例示できる。
【0010】
グリコール成分としては、全カルボン酸成分の30〜100モル%をネオペンチルグリコールとすることが必要であり、75〜100モル%がより好ましい。ネオペンチルグリコールが30モル%よりも少ない場合、耐光性能が悪くなるので好ましくない。
【0011】
ネオペンチルグリコール以外のグリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3(4)、8(9) −ビス(ヒドロキシメチル)―トリシクロ(5.2.1.1/2.6)デカン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールC、ビスフェノールZ、ビスフェノールAP、4,4′−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体またはプロピレンオキサイド付加体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、中でも、コストパフォーマンスに優れたエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0012】
本発明のポリエステルには、適度な柔軟性、接着性の向上、ガラス転移温度の調整などの目的に応じて、ヒドロキシカルボン酸を用いてもよい。このような成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、m−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、o−ヒドロキシ安息香酸のエチレンオキシド付加体、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0013】
また、少量であれば、3官能以上のカルボン酸成分やアルコール成分を共重合成分として用いてもよい。このとき、3官能以上のモノマーは、全カルボン酸成分または全アルコール成分に対して0.2〜5モル%程度が適当である。0.2モル%未満では添加した効果がない場合があり、5モル%を超える量を含有した場合には、重合の際、ゲル化点を超えゲル化が問題になる場合がある。3官能以上のカルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。3官能以上のアルコール成分としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトールが挙げられる。
【0014】
また、ポリエステル樹脂には、少量であれば、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、4−ヒドロキシフェニルステアリン酸等、モノアルコールとしては、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、2−フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0015】
ポリエステル樹脂は前記のモノマーを組み合わせて、公知の方法により重縮合させることにより製造することができ、例えば、全モノマーおよび/またはその低重合体を不活性雰囲気下で180〜250℃、2.5〜10時間程度反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて、130Pa以下の減圧下に220〜290℃の温度で所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めてポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
【0016】
重縮合反応の際には、二酸化ゲルマニウムなどのゲルマニウム化合物を使用することが必要である。その際の触媒使用量は、通常、理論生成樹脂質量に対し、0.1質量%以下で用いられる。その際、リン酸、リン酸エステルを使用しないことが必要である。リン酸、リン酸エステルを使用すると、重合性が落ち、コーティング用途に使用できうる粘度まで重合するための重合時間が長くなり、厚さ1.0mmの成型片に成形した際のカラーb値の値が2.5以上になるので好ましくない。
【0017】
ここで、カラーb値とは、黄色味を示す尺度であり、数値が高いほど黄色味が強く、マイナスに数値が高くなると青味が強くなることを示す。
【0018】
また本発明のゲルマニウム化合物としては、特に限定はされないが、例えば、二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド等が挙げられ、中でも、二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0019】
必要に応じて、テトラブチルチタネ−トなどの有機チタン酸化合物、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の酢酸塩、三酸化アンチモン、ヒドロキシブチルスズオキサイド、オクチル酸スズなどの有機錫化合物を使用してもよい。しかしながら、これらの触媒を使用した場合、厚さ1.0mmの成型片に成形した際のカラーb値の値が高くなる傾向にあるので、理論生成樹脂質量に対し、0.05質量%以下で使用することが好ましい。
【0020】
ポリエステル樹脂に所望の酸価や水酸基価を付与する場合には、前記の重縮合反応に引き続き、カルボン酸成分やアルコール成分を添加し、不活性雰囲気下、解重合を行うことができる。
【0021】
本発明の共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、2,000〜30,000であることが好ましい。数平均分子量が2,000未満では、ポリエステル素材に対して十分な耐光性能を得ることができないことがある。数平均分子量が30,000以上のものは、重合時間が非常に長くなることがある。
【0022】
共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとする)は、特に限定されないが、溶液としてコーティングなどの用途に使用する場合には、40℃〜120℃が好ましく、40〜80℃が最も好ましい。
【0023】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、厚さ1.0mmの成型片に成形した際の全光線透過率が95%以上であり、97%以上がより好ましい。全光線透過率が95%未満の場合、透明な基材に対してコーティングした場合、透明度が低下するので好ましくない。
【0024】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、厚さ1.0mmの成型片に成形した際のカラーb値は0〜2.5であり、0〜2.0がより好ましい。カラーb値が2.5よりも大きい場合は黄色味が強くなり、またカラーb値が0よりも小さい場合は青味が目立つようになり、いずれも塗料やコーティング剤として使用した場合ふさわしくない。
【0025】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、25℃において、2−ブタノン/トルエン(質量比1/1)混合溶媒に10質量%以上の濃度で溶解することが必要である。濃度10質量%以上で溶解しない場合には、塗料やコーティング剤として使用する際の作業性が低下する。溶解濃度の上限は特にないが、溶液の粘性が高くなりすぎないためには50質量%以下が好ましい。
【0026】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、溶剤への溶解性に優れるため、様々な汎用溶媒に溶解させてポリエステル溶液として利用することができる。溶液濃度は10〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。また、好ましい溶媒としては、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる少なくとも1種が挙げられる。なかでも2−ブタノン/トルエンの混合溶媒は一般に溶解性が高いので好ましく、両者の質量比を8/2〜2/8の範囲としたものが最も好ましい。
【0027】
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、ASTM D3424(method3)にしたがった1000時間の耐光促進試験の照射前と照射後のカラーb値の差が3.0以下であり、2.0以下がより好ましい。
【0028】
本発明の共重合ポリエステル樹脂には、必要に応じて硬化剤、各種添加剤、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の顔料、染料、他のポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、セルロース誘導体等を配合することができる。
【0029】
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂には、必要に応じて、顔料分散剤、紫外線吸収剤、離型剤、顔料分散剤、滑剤等の添加剤を配合することができる。
【実施例】
【0030】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明する。
(1)共重合ポリエステル樹脂の組成
1H−NMR分析(バリアン社製,300MHz)より求めた。
(2)共重合ポリエステル樹脂の数平均分子量
数平均分子量は、GPC分析(島津製作所製の送液ユニットLC−10ADvp型及び紫外−可視分光光度計SPD−6AV型を使用、検出波長:254nm、溶媒:クロロホルム、ポリスチレン換算)により求めた。
(3)共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度
共重合ポリエステル10mgをサンプルとし、DSC(示差走査熱量測定)装置(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて昇温速度10℃/分の条件で測定をおこない、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度とした。
(4)全光線透過率
共重合ポリエステル樹脂を用いて、300×500mm、厚さ1.0mmのプレートを作製し、日本電色工業格式会社製のHazeMeterNDH2000を用いて測定した。
(5)カラーb値
共重合ポリエステル樹脂を用いて、300×500mm、厚さ1.0mmのプレートを作製し、日本電色工業株式会社製の色差計SZ−Σ90型を用いて測定した。
(6)耐光性能
共重合ポリエステル樹脂を用いて、300×500mm、厚さ1.0mmのプレートを作製し試料とした。ATLAS製Xenon Arc Weather Ometer Ci4000を用いて、ASTM D3424 method3(窓ガラス越し(印刷物))に従い、キセノン光の連続照射を行うことにより1000時間の耐光促進試験をおこなった。試験諸条件は次の通り:波長340nm、ブラックパネル温度63±3℃、湿度40±5%、放射照度0.35W/m、使用フィルター:内側ボロシリケイト、外側ソーダライム。
耐光促進試験前後のプレートのカラーb値を日本電色工業株式会社製の色差計SZ−Σ90型を用いて測定し、初期のb値をb1(耐光前)とし、試験後のカラーb値をb2(耐光後)とし、b1とb2の差の絶対値△bを求めた。3.0以下であれば実用上問題のない範囲であり、合格とした。
(7)溶解性能
ガラス製容器に、樹脂10g、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)90gを入れ(濃度10質量%)、ペイントシェーカーを用いて25℃で6時間振動させ、溶解状態を観察した。溶解したものを「○」、溶解しなかったものを「×」とし、さらに、その後、25℃で1日放置し、溶解状態が維持されていれば「○」、相分離などを起したものを「×」とした。樹脂30g、混合溶媒70gとしたもの(濃度30質量%)について同様の評価を行った。
また、溶媒としてシクロヘキサノンを用いて同様の試験を行った。
【0031】
実施例1
テレフタル酸332g(20モル部)、イソフタル酸1328g(80モル部)、エチレングリコール310g(50モル部)、ネオペンチルグリコール1042g(100モル部)を容量10Lのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら、240℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、280℃に昇温し、触媒として二酸化ゲルマニウム0.5gを投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応をおこなった。適当な粘度になるまで重縮合をおこない、系を窒素ガスで加圧状態にして、ストランドとして抜き出し、ペレット状に払い出し共重合ポリエステルを回収した。
このポリエステルの数平均分子量は16000、ガラス転移点は61℃、全光線透過率は97%、初期のカラーb値b1は2、キセノン光に照射後のカラーb値b2は3.5で、△b(耐光性能)は1.5、固形分濃度10質量%、30質量%いずれの濃度でも、2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)、シクロヘキサノンへの溶解状態は良好であり、1日放置後も溶解状態は保たれていた。樹脂組成と特性を表1に示す。
【0032】
実施例2〜3
使用モノマー、仕込みモル比を変更し、実施例1と同様の操作を行って、共重合ポリエステルを得た。得られたポリエステルの樹脂組成と特性を表1に示す。
【0033】
実施例4
テレフタル酸166g(10モル部)、イソフタル酸1328g(80モル部)、セバシン酸202g(10モル部)、ネオペンチルグリコール833g(80モル部)、エチレングリコール217g(35モル部)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物633g(20モル部)を容量10Lのオートクレーブに仕込み、攪拌しながら、240℃で3時間加熱してエステル化反応をおこなった。次いで、280℃に昇温し、触媒として二酸化ゲルマニウム0.5gを投入し、系の圧力を徐々に減じて1.5時間後に13Paとし、重縮合反応をおこなった。適当な粘度になるまで重縮合をおこない、系を窒素ガスで加圧状態にして、ストランドとして抜き出し、ペレット状に払い出し共重合ポリエステルを回収した。
【0034】
比較例1〜5
使用モノマー、仕込みモル比を変更し、実施例1〜3と同様の操作を行って、
共重合ポリエステルを得た。得られたポリエステルの樹脂組成と特性を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例1〜4においては、いずれも透明性、色調、耐光性能および溶解性能が良好な樹脂が得られた。
【0037】
これに対して、各比較例では次のような問題があった。
比較例1〜3では、イソフタル酸、かつ/または、ネオペンチルグリコールの共重合比率が高かったために、溶解性能が劣ったものであった。
【0038】
比較例4は、イソフタル酸、およびネオペンチルグリコールの共重合比率が低かったために、耐光性能が劣ったものであった。
【0039】
比較例5は、リン酸触媒を用いているために、重合時間が非常に長くなり、熱劣化したために、色調が非常に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全カルボン酸成分の30〜90モル%をイソフタル酸とし、全グリコール成分の30〜100モル%をネオペンチルグリコールとする共重合ポリエステルであって、ゲルマニウム化合物を触媒として使用し、厚さ1.0mmの成型片に成形した際の全光線透過率が95%以上で、初期のカラーb値(b1)が0〜2.5であることを特徴とする色調、透明性に優れた可溶性共重合ポリエステル樹脂。
【請求項2】
重合時に、リン酸及びリン酸エステルのいずれも使用しないことを特徴とする請求項1記載の可溶性共重合ポリエステル樹脂。
【請求項3】
ASTM D3424(method3)に従って1000時間の耐光促進試験を行った際の試験後のカラーb値をb2としたときに、b1とb2の差の絶対値△bが3.0以下であることを特徴とする請求項1および請求項2記載の可溶性共重合ポリエステル樹脂。
【請求項4】
25℃において2−ブタノン/トルエン混合溶媒(質量比1/1)に濃度10質量%以上で溶解することを特徴とする請求項1〜3記載の可溶性共重合ポリエステル樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の可溶性共重合ポリエステル樹脂を10〜50質量%の範囲で含有し、シクロヘキサノン、2−ブタノン、トルエンからなる群から選ばれる1種以上を溶媒とするポリエステル溶液。
【請求項6】
請求項5記載のポリエステル溶液を用いた塗料またはコーティング剤。

【公開番号】特開2008−163110(P2008−163110A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352204(P2006−352204)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】