内出血検出装置及び血液成分採取装置
【課題】内出血検出装置により穿刺による内出血の発生を事前に予防し、若しくは適度に抑える。
【解決手段】内出血検出装置700は、ドナーの腕712を置くアームレスト714と、アームレスト714に置いた腕712に近赤外線を照射する近赤外線LED738と、腕712のうち、近赤外線が照射される箇所を連続的に撮像する近赤外線カメラ736とを有する。近赤外線カメラ736で撮像された比較画像774で解析範囲776を抽出する。解析範囲776において、輝度が所定閾値を下回る箇所の面積A2を求め、該面積A2が所定量Tだけ拡大したことにより、静脈740以外の領域に血液が存在すると判定する。
【解決手段】内出血検出装置700は、ドナーの腕712を置くアームレスト714と、アームレスト714に置いた腕712に近赤外線を照射する近赤外線LED738と、腕712のうち、近赤外線が照射される箇所を連続的に撮像する近赤外線カメラ736とを有する。近赤外線カメラ736で撮像された比較画像774で解析範囲776を抽出する。解析範囲776において、輝度が所定閾値を下回る箇所の面積A2を求め、該面積A2が所定量Tだけ拡大したことにより、静脈740以外の領域に血液が存在すると判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナーに穿刺された針の穿刺位置を含む所定の近傍部における内出血の発生の有無を判定する内出血検出装置及び血液成分採取装置に関し、例えば、ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残りの血液成分をドナーに返血する血液成分採取装置に対して好適に適用可能な内出血検出装置及び血液成分採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
採血には、血液をそのまま採取する全血採血と、所定の血液成分のみを取り出す成分採血がある。成分採血では、ドナーから採取した血液を遠心分離することにより所定の成分を抽出し、他の成分についてはドナーに返還する。これにより、必要な成分(血漿や血小板)については全血採血よりも多く採取することができ、しかも他の成分については返還をすることからドナーの負担を軽減することができる。また、このような成分採血を自動的に行うための血液成分採取装置が実用化されている。
【0003】
血液成分採取装置では、ドナーに対して針を穿刺した後、該針を介して採取された血液を複数の成分に分離し、所定の成分を採取する処理、及び残りの成分を針からドナーに返血する処理等が所定の制御部の作用下にポンプを回転させることにより自動的に行われる。ポンプにチューブが装着されており、採血時にはポンプを正回転させてチューブから血液を吸い込み、返血時にはポンプを逆回転させて残りの成分をチューブに送り出す。採血及び返血におけるチューブの血液及び血液成分の流量はポンプの回転速度に応じて変化させることができる。
【0004】
針の穿刺状態によっては、返血時に、血液成分が圧縮気味に滞留し、その部分の圧力が上昇して針を押し戻すように作用する。その結果、針先が静脈から抜けた状態となり、血液が血管外に送り出されてしまい、内出血の状態になる。また、針先が静脈から抜けなくても、針と血管壁の隙間から血液が漏れてしまうと同様の状態となる。
【0005】
このような内出血の状態は、ドナーが痛みを感じて気づく場合の他に、ドナーが多少の違和感を感じたり、ドナーやオペレータが穿刺部位が腫脹していることで気づく場合もあり、また、気づかない場合もある。このような内出血が発生すると、皮膚が外観的に腫れ又は変色し、回復するまでにある程度の時間がかかりドナーに不快感又は不安感を与えることがある。
【0006】
一般に、ドナーが痛みや違和感を感じた場合には返血を中断し、ドナーが了解した場合は抜針して、針を交換し、再度穿刺して残りの血液成分を返血する。しかしながら、ドナーが了解しない場合にはその時点で返血を中止し、返血予定であった血液成分を回路に残した状態で終了することになる。この場合、ドナーは返血できなかった血液成分をロスしたことになるため、次の献血まで所定期間をあける必要がある。また、残存した血液成分を返血する場合には、内出血の箇所を避けて再度の穿刺を行う必要があり、ドナーに不満を与えかねない。
【0007】
また、返血中にドナーが違和感を感じない場合であっても、次のサイクルの採血中に十分な採血速度が得られず、必要量の血液成分が得られる前に採血、返血を中止せざるを得なくなる場合がある。
【0008】
返血を行っている際、内出血が発生してもドナーはすぐには気づかない場合があって、即時に適切な対応をとることができず、視認可能な程度の内出血となってドナーに不快感又は不安感を与える懸念がある。
【0009】
このような内出血の状態を検出するために、特許文献1では、穿刺箇所に容量型センサ又は抵抗型センサ等を患者の皮膚に固定して、針の抜けに起因して変化するパラメータを検出することを提案している。
【0010】
特許文献2では、針をドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部に対して、電極からなるタッチセンサを設け、翼部が患者から離間したことを検出している。
【0011】
特許文献3では、血液がよく滲み且つ弾力のある材質で、血液貯溜部を備えるバンドを患者の腕に巻き付け、血液貯溜部に滲みた血液を光センサーで検出することを提案している。このバンドのように肌に装着する部材は、血液による色の変化が顕著となるように白色を提案している。
【0012】
【特許文献1】特表2005−516637号公報
【特許文献2】特開2006−110119号公報
【特許文献3】特開2007−20738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記の各特許文献では、センサを患者の穿刺箇所又はその近傍に固定するので、基本的にはディスポーザル品であり、患者にとってのコスト負担が大きい。また、特許文献1では血液の漏れによる明らかな変化が生じたときに、該漏れを検出できるのであって、明らかな変化が生じる前段階のより迅速な検出が求められる。
【0014】
特許文献2では、翼部のずれを検出するだけであり、翼部及び針のずれがない場合の内出血を検出することはできない。実際上、穿刺による内出血のメカニズムはいまだ解明されていない微妙な現象であり、翼部及び針がほとんどずれがない場合でも内出血は発生する。
【0015】
特許文献3では、血液が体外にまで漏れたことを検出するのであって、内出血の検出はできない。
【0016】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、穿刺による内出血の発生を事前に予防し、若しくは適度に抑えることのできる内出血検出装置及び血液成分採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る内出血検出装置は、ドナーに穿刺された針の穿刺位置を含む所定の近傍部に近赤外線を照射する照射手段と、前記近傍部を経時的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像された画像上で、静脈以外の領域に血液が存在すると判断されることを少なくとも1つの条件として内出血が発生したと判定する制御部とを有することを特徴とする。
【0018】
このように、照射手段により近赤外線が照射された穿刺箇所の反射光を撮像手段により撮像して画像を取得することにより、肉眼では見えない血液の分布を認識することができる。通常、血液は静脈を流れているが、内出血をするとその範囲が広がるので、内出血の有無の判定が可能となる。したがって、穿刺による内出血の発生を可及的事前に予防し、若しくは適度に抑えることができる。
【0019】
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の面積を求め、該面積が所定量拡大したことにより、静脈以外の領域に血液が存在すると判定してもよい。このように、画像上の輝度に基づいて所定閾値を下回る箇所の面積を求めることにより、血液の分布が分かり、静脈以外の領域の血液を検出できる。
【0020】
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所から静脈位置を特定し、該静脈位置以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所が所定面積以上発生したときに、静脈以外の領域に血液が存在すると判定してもよい。このように、静脈位置を特定しておくと、その後、それ以外の箇所において血液の存在の有無を調べればよい。
【0021】
この場合、前記制御部は、前記静脈以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所を前記撮像手段で撮像された画面上で、着色して表示すると、当該箇所が認識しやすい。
【0022】
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状に基づいて、静脈以外の領域に血液が存在すると判定してもよい。静脈は線状であることから、輝度が所定閾値を下回る箇所が線状でない形状を示すときに、静脈以外の領域の血液を検出できる。ここで、形状とは広義であり、位置、大きさ及び向きを含み得る。
【0023】
前記画像の範囲内で前記穿刺位置を基準として所定の解析範囲を抽出する解析範囲抽出手段を有し、前記制御部は、前記解析範囲抽出手段によって抽出された解析範囲に基づいて内出血の発生を判断してもよい。このように、穿刺位置を基準として解析範囲を抽出し、該解析範囲に限定して解析を行うと処理の負荷が低減するとともに、より正確な判断ができる。
【0024】
前記解析範囲抽出手段は、前記針の形状を含むテンプレート画像に基づいて、前記画像に対してテンプレートマッチングを行い、前記解析範囲を抽出してもよい。このように、テンプレート画像に基づくテンプレートマッチングを行うことにより、簡便且つ正確に解析範囲を抽出することができる。
【0025】
前記針は、ドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部を有し、前記テンプレート画像は前記翼部の形状を含んでもよい。翼部の形状は特徴的であり、該形状を含むテンプレート画像を用いることにより、解析範囲を一層正確に抽出することができる。
【0026】
前記撮像手段で撮像された画像を連続的に表示する表示手段を有すると、医療従事者が内出血の状態を目視により確認することができる。表示手段は、針を穿刺する際に適切な静脈を選択することにも利用可能である。
【0027】
前記撮像手段と前記照射手段とは、傾動可能な同一の傾動体に設けられていると、照射手段と撮像手段とを略同じ方向に指向させることができる。
【0028】
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する血液成分採取装置において、前記の内出血検出装置を有し、前記制御部は、ドナーに残余の血液成分を返血する返血工程の際に、内出血の発生の有無を判定する内出血判定部を有してもよい。
【0029】
前記内出血判定部により、内出血が発生したと判定されたときに、その時点の返血速度を維持又は減速、若しくは返血を停止させてもよい。
【0030】
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する操作が複数回のサイクルで実行され、前記内出血判定部は、複数回の前記返血工程において、そのサイクルで得られた画像に基づいて内出血の発生の有無を判定してもよい。このように、複数回の返血工程において、その回に得られた画像に基づく判定をすると、前回に得られた各種のデータは不要となり、処理が簡便になる。また、所定時間が経過した前回までの画像に影響されず、その回の画像だけを用いることにより正確な判定が可能となる。
【0031】
ドナーに残余の血液成分を返血する返血ラインと、前記返血ラインに血液成分を送り出す可変速度の血液ポンプと、前記返血ラインの圧力を検出する圧力センサとを有し、前記血液ポンプを回転させて返血を開始させた際に、前記圧力センサによって検出された前記圧力の変動に基づく条件を含めて、内出血の発生の有無を判定してもよい。このような血液成分採取装置と内出血検出装置とを含むシステムでは、返血工程において内出血の発生の有無を判定に基づく適切な対応が可能となる。また、返血ラインの圧力も含めて複合的に判断することにより、一層正確な判定が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る内出血検出装置によれば、照射手段により近赤外線が照射された穿刺箇所の反射光を撮像手段により撮像して画像を取得することにより、肉眼では見えない血液の分布を認識することができる。通常、血液は静脈を流れているが、内出血をするとその範囲が広がるので、内出血の有無の判定が可能となる。したがって、穿刺による内出血の発生を可及的事前に予防し、若しくは適度に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る内出血検出装置について実施形態を挙げ、添付の図1〜図20を参照しながら説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態に係る内出血検出装置700は、血液成分採取装置10と接続して用いられる。血液成分採取装置10と内出血検出装置700は接続線701によって接続されることにより連係しており、リアルタイムで相互の情報通信が可能である。血液成分採取装置10と内出血検出装置700との通信は有線又は無線を問わず、機器間の独立的な通信でもよく、LAN等の通信網でもよい。内出血検出装置700は汎用性を有し、血液成分採取装置10以外にも、例えば人工透析装置に接続することも可能である。
【0035】
本願では、内出血検出装置700は、血液成分採取装置10と接続され、一体化されているが、採血等を行う際に内出血検出装置700を単独で使用してもよい。先ず、血液成分採取装置10について説明する。
【0036】
図1に示すように、血液成分採取装置10は、装置本体12と、該装置本体12に装着される採血キット14とを有する。
【0037】
図2に示すように、装置本体12は、箱形の機構本体部15と、該機構本体部15の背面左右から上方に延在する第1支柱16a及び第2支柱16bと、第1支柱16aの上端左側に設けられた重量計18と、第2支柱の上端部に設けられたモニタ20と、第1支柱16aの右側に設けられた複室バッグ126の有無を検出するバッグ検出センサ21と第2支柱16bの右側に設けられた除菌フィルター114の有無を検出するセンサ23a及び気泡除去用チャンバー112の有無及び抗凝固剤の滴下を検出するセンサ23bとを有する。モニタ20は血液成分採取装置10の入出力装置であり、大型のカラータッチパネル20aと、スピーカ20bとを有し、画像及び音声を用いた簡易な操作が可能である。スピーカ20bはステレオ式である。
【0038】
機構本体部15は左側の制御機構部22と、右側の遠心分離機構部(分離手段)24とからなる。制御機構部22は、血液成分採取装置10の全体を統括的に制御する制御部26と、血液ポンプ28と、抗凝固剤ポンプ30と、濁度センサ32と、6つの気泡センサ34a、34b、34c、34d、34e、34fと、7つのクランプ36a、36b、36c、36d、36e、36f、36gと、ドナー圧力センサ38と、システム圧力センサ40とを有する。濁度センサ32及び各気泡センサ34a〜34fとしては、それぞれ、例えば、超音波センサ、光学式センサ、赤外線センサ等を用いることがきる。濁度センサ32と気泡センサ34dは一体的に構成されている。
【0039】
遠心分離機構部24は採血キット14の遠心ボウル(遠心分離器)120が装着され、該遠心ボウル120内に導入された血液を遠心分離する機構部である。
【0040】
遠心ボウル120の設定回転速度としては、例えば4200〜5800rpm程度に設定される。これにより、貯血空間内の血液は内層より血漿層(PPP層)、バフィーコート層(BC層)及び赤血球層(CRC層)に分離される。遠心ボウルの近傍には、血漿層とバフィーコート層との界面(以下、単に界面と呼ぶ。)の位置に応じて変化する透過率から該界面の位置を検出する光学式センサ(図示せず)が設けられている。
【0041】
制御部26は、機構本体部15の内部に設けられている。制御機構部22における制御部26以外の機器は、採血キット14のチューブが装着可能なように上面、前面及び支柱に設けられている。
【0042】
血液ポンプ28及び抗凝固剤ポンプ30は、チューブ側面にローラを押圧させながら連続的に転動させることにより内部の血液を押し出すローラポンプ式であり、血液に対して非接触の状態で駆動可能である。また、血液ポンプ28及び抗凝固剤ポンプ30は、制御部26の作用下に速度及び流体吐出方向が可変である。血液ポンプ28は、採血時には所定の正方向に回転することにより血液を引き込む吸引ポンプとして作用し、返血時には逆方向に回転することにより血液成分をチューブ104に送り出す吐出ポンプとして作用する。
【0043】
濁度センサ32は、挟み込まれたチューブ内を通過する液体の濁度を検出するセンサである。気泡センサ34a〜34fは、挟み込まれたチューブ内を通過する液体の有無又は気泡を検出するセンサである。クランプ36a〜36gは、挟み込まれたチューブを両側から押圧して閉じ、又は開放して連通させ、開閉バルブとしての作用を奏する。これらのクランプ36a〜36gは、カセットハウジング42がはめ込み可能なように制御機構部22の上面における一区画に集中配置されている。カセットハウジング42は採血キット14のチューブの多くの部分を一体的に集約、配置するための樹脂製部材であり、該カセットハウジング42を制御機構部22の上面にはめ込むことにより所定のチューブが対応するクランプ36a〜36gによって開閉可能に配置される。
【0044】
ドナー圧力センサ38は、採血キット14における採血経路系統(採血・返血ライン)14a(図4参照)の一部が差し込まれ、採血・返血ラインの圧力を示すドナー圧力Pdを計測するセンサであり、採血時には採血ラインの圧力センサとして作用し、返血時には返血ラインの圧力センサとして作用する。
【0045】
システム圧力センサ40は、処理経路系統14b(図4参照)(血液処理回路)の一部が差し込まれ、回路内の圧力を示すシステム圧力(回路内圧力)Psを計測するセンサである。なお、図1及び図2においては採血キット14のチューブの一部を省略して図示している。
【0046】
図3に示すように、制御部26は、出力用として血液ポンプドライバ76と、抗凝固剤ポンプドライバ78と、モータドライバ80と、クランプドライバ82とを有し、血液ポンプ28、抗凝固剤ポンプ30、モータ64及びクランプ36a〜36gを制御する。血液ポンプドライバ76は、血液ポンプ28の速度及び吐出方向を制御する。抗凝固剤ポンプドライバ78は、抗凝固剤ポンプ30の速度を制御する。モータドライバ80はモータ64の回転速度を制御する。クランプドライバ82は、クランプ36a〜36gを個別に開閉制御する。
【0047】
また、制御部26は、各センサの入力制御を行う入力インターフェース84と、モニタ20の入出力を行うモニタインターフェース86とを有する。さらに、制御部26は、各機能部と協動して血液成分採取処理及び返血処理の動作を制御するモード制御部88と、各センサの入力信号等に基づいて異常の監視を行う異常監視部90と、所定のプログラムやデータの記憶を行う記憶部92と、タイマ94と、外部機器(内出血検出装置700等)とのデータ通信を行う通信部96と、血液ポンプ28の回転速度に基づいて採血速度及び返血速度Vを求める速度検出部98とを有する。
【0048】
モード制御部88には、採血工程(本実施の形態の第1〜第3の血漿採取工程)における制御を行う吸引制御部88aと、返血工程における制御を行う吐出制御部88bとを有する。吸引制御部88a及び吐出制御部88bは、ドナー圧力Pdに基づいて血液ポンプ28の回転速度Nを制御する機能を含む。
【0049】
制御部26内の機能の一部は、記憶部92に記録されたプログラムを図示しないCPUによって読み込み実行することにより実現される。
【0050】
図4に示すように、採血キット14は、ドナーから血液を採取及び返還するための採血経路系統14aと、採取した血液を遠心分離し、所定の血液成分を採取等する処理経路系統14bとを有する。
【0051】
採血経路系統14aは、ドナーに穿刺する中空の採血針100と、一端が採血針100に接続されて他端が分岐継手102を介して処理経路系統14bに接続されたチューブ104と、該チューブ104の途中に設けられたチャンバー106と、抗凝固剤が入った抗凝固剤容器107(図2参照)に接続される抗凝固剤容器接続用針108と、一端が該抗凝固剤容器接続用針108に接続されたチューブ110と、該チューブ110の途中に設けられた気泡除去用チャンバー112及び除菌フィルター(異物除去用フィルター)114とを有する。チューブ104とチューブ110は、採血針100の近傍に設けられた分岐継手116により接続されている。採血針100には、ドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部101が設けられている。
【0052】
チューブ104(及び後述するチューブ140)は採血、返血に共用であり、採血ライン及び返血ラインとして作用する。
【0053】
チャンバー106は、チューブ104を通過する血液中の気泡及びマイクロアグリゲートを除去する。チャンバー106の一端にはチューブ104から分岐した短いチューブ118が設けられている。該チューブ118の端部は通気性且つ菌不透過性のフィルター(図示せず)に接続されるとともに、ドナー圧力センサ38に挿入されており、ドナー圧力Pdを計測可能である。
【0054】
抗凝固剤容器接続用針108に接続された抗凝固剤容器107には、ACD−A液のような抗凝固剤が蓄えられている。チューブ110の一部は抗凝固剤ポンプ30に装着されており、該抗凝固剤ポンプ30の作用下に抗凝固剤容器接続用針108から供給された抗凝固剤はチューブ110及び分岐継手116を介してチューブ104内の血液中に抗凝固剤が混入される。チューブ110の途中には気泡センサ34aが装着される。
【0055】
チャンバー106と分岐継手102との間には、気泡センサ34b及びクランプ36aが装着される。クランプ36aは分岐継手102の近傍に装着されており、クランプ36aを開くことにより採血経路系統14aと処理経路系統14bは連通する。チューブ104には直列して2つの気泡センサ34e及び34fが装着されており、気泡や空気を確実に検知することができる。
【0056】
処理経路系統14bは遠心ボウル120と、血漿採取バッグ122と、血小板採取バッグ124と、中間バッグ126aと、エアーバッグ126bと、バッグ128と、白血球除去フィルター130とを有する。
【0057】
血漿採取バッグ122及び血小板採取バッグ124は、遠心分離等の処理により得られた血漿及び血小板を蓄えるバッグである。血漿採取バッグ122は重量計18(図2参照)のフック18aに懸架され、収納された血漿の重量を計測することができる。血小板採取バッグ124は、機構本体部15の前面に懸架される(図2参照)。
【0058】
中間バッグ126aは、採取した血小板(濃厚血小板)を一時的に貯留するための容器である。エアーバッグ126bは、回路内の無菌空気を一時的に収納するための容器である。エアーバッグ126bと中間バッグ126aとは、回路的には分離した独立の容器であるが、物理的には一体的であって複室バッグ126を構成している。複室バッグ126はバッグ検出センサ21(図2参照)のフック21aに懸架される。
【0059】
採血を行う際には、遠心ボウル120の貯血空間内等の空気はエアーバッグ126b内に移送され、収納される。返血工程の際には、エアーバッグ126b内に収納されている空気は、貯血空間内に戻され、所定の血液成分が、ドナーへ返還される。
【0060】
バッグ128は血小板採取バッグ124に接続されたバッグであり、成分採血の終了後、血小板採取バッグ124内の空気を排出する際に用いられる。
【0061】
血漿採取バッグ122、血小板採取バッグ124、中間バッグ126a、エアーバッグ126b及びバッグ128は、それぞれ樹脂製(例えば、軟質ポリ塩化ビニル)の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁部を融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着剤により接着等して袋状にしたものが使用される。
【0062】
なお、血小板採取バッグ124に使用されるシート材としては、血小板保存性を向上するためにガス透過性に優れるものを用いることがより好ましい。このようなシート材としては、例えば、ポリオレフィンやDnDP可塑化ポリ塩化ビニル等を用いることができる。
【0063】
白血球除去フィルター130は、中間バッグ126aから血小板採取バッグ124に血液成分を移送する際に、血液成分中の白血球を分離除去するフィルターである。図2から明らかなように、白血球除去フィルター130は、中間バッグ126aより低く、血小板採取バッグ124より高い位置に配置される。
【0064】
次に、処理経路系統14bの各構成機器を接続するチューブについて説明する。処理経路系統14bの端部である分岐継手102と遠心ボウル120の導入口との間はチューブ140で接続されている。該チューブ140の一部は血液ポンプ28に装着される。したがって、血液ポンプ28を正転させることにより血液を採血経路系統14aから遠心ボウル120内に導入し、又は処理経路系統14b内で所定の循環動作を行うことができる。また、血液ポンプ28を逆転させることにより、所定の血液成分を採血経路系統14aに導出し、ドナーに返還することができる。
【0065】
遠心ボウル120の排出口にはチューブ142が接続されており、該チューブ142は分岐継手144を介して三つ股に分岐してチューブ146、チューブ148及びチューブ150に接続されている。チューブ142は、濁度センサ32及び気泡センサ34dに直列的に接続されている。
【0066】
チューブ146はエアーバッグ126bに接続されており、その途中はクランプ36eに装着されている。チューブ148の端部は通気性且つ菌不透過性のフィルター(図示せず)に接続されるとともに、システム圧力センサ40に挿入されており、システム圧力Psを計測可能である。
【0067】
チューブ150の端部は血漿採取バッグ122に接続されており、その途中には分岐継手152が設けられ、チューブ154を介して中間バッグ126aに接続されている。チューブ154はクランプ36dに装着されている。分岐継手152と血漿採取バッグ122との間のチューブ150はクランプ36cに装着されている。
【0068】
中間バッグ126aと血小板採取バッグ124との間はチューブ156により接続されており、その途中には白血球除去フィルター130が設けられている。中間バッグ126aと血小板採取バッグ124との間のチューブ156は、気泡センサ34c及びクランプ36gに装着されている。白血球除去フィルター130の端部には、チューブ156から短く分岐したフィルター160が設けられている。フィルター160は菌不透過性のベントフィルター及びキャップからなる。
【0069】
気泡センサ34cとクランプ36gとの間のチューブ156には分岐継手162が設けられ、チューブ164を介して、血漿採取バッグ122に接続されている。チューブ164の途中には分岐継手166が設けられている。該分岐継手166と分岐継手102との間はチューブ168により接続されている。分岐継手162と分岐継手166との間のチューブ164はクランプ36fに装着されている。チューブ168における分岐継手102の近傍部には、クランプ36bが装着されている。
【0070】
血小板採取バッグ124とバッグ128はチューブ158により接続されている。
【0071】
このように構成される採血キット14は予め所定の滅菌処理がなされている。なお、採血キット14には、チューブが集中配置されたカセットハウジング42、及びチューブの一部とフィルター160とを保持するフィルターカセット170(図2参照)が設けられている。
【0072】
次に、血液成分採取装置10により成分採血を行う主な手順について図5を参照しながら説明する。
【0073】
先ず、図5のステップS1において所定の初期処理を行う。初期処理としては、チューブ110とチューブ104の採血針100からチャンバー106までを、抗凝固剤でプライミングする。その後、ドナーの上腕に腕帯(図示せず)を装着するとともに、ドナーの血管に採血針100を穿刺する。腕帯は、ドナーの上腕を締め付けるためのものであり、空気圧手段によって所定圧力に加圧可能である。この後、モニタ20のカラータッチパネル20aを操作して成分採血処理を開始する。これ以降の手順は主に制御部26の作用下に自動的に行われる。
【0074】
ステップS2において第1の血漿採取工程を行う。この第1の血漿採取工程は、遠心ボウル120の貯血空間内に血液を導入して遠心分離することにより得られる血漿を血漿採取バッグ122内に採取する工程である。
【0075】
この際、腕帯によってドナーの腕は所定圧力(例えば、50mmHg)で加圧されている。なお、ステップS5及びS7の第2及び第3の血漿採取工程でも、本ステップS2と同様に腕帯によってドナーの上腕が加圧される。
【0076】
ここで、血液(抗凝固剤添加血液)は、チューブ104を介して移送され、遠心ボウル120の導入口よりロータの貯血空間内に導入される。このとき、遠心ボウル120内の空気は、チューブ142及びチューブ146を介してエアーバッグ126b内に送り込まれる。
【0077】
貯血空間内に所定量の血液が導入された状態で遠心ボウル120のロータの回転を開始する。ロータの回転数はステップS9まで一定に維持される。ロータの回転により、貯血空間内に導入された血液は、内側から血漿層、バフィーコート層、赤血球層の3層に分離される。なお、第2サイクル以降は、血液ポンプ28と同時にモータ64を駆動する。
【0078】
ステップS3において、チューブ142に設けられた気泡センサ34dの信号を監視し、チューブ142を流れる流体が空気から血漿に変わったことを検出した後クランプ36eを閉じるとともにクランプ36cを開放する。貯血空間の容量を越える血液が貯血空間内に導入されると、遠心ボウル120の排出口から血漿が流出することから、このタイミングを気泡センサ34dにより検出してクランプ操作を行い、チューブ142及びチューブ150を介して血漿を血漿採取バッグ122内に導入、採取するように切り替える。血漿採取バッグ122に導入された血漿の重量は、重量計18により計測される。重量計18から得られる重量信号に基づき、血漿採取バッグ122内に所定量の血漿が採取されたことが確認された後ステップS4へ移る。
【0079】
ステップS4において、定速血漿循環工程を行う。定速血漿循環工程は、血漿採取バッグ122内の血漿を貯血空間を含む循環回路で定速にて循環させる工程である。つまり、クランプ36aを閉じ、クランプ36bを開放するとともに抗凝固剤ポンプ30を停止する。これにより、採血を一時中断するとともに、血漿採取バッグ122内の血漿を循環させる経路が形成される。この循環回路は、血漿採取バッグ122からチューブ164、168及び140を介して貯血空間内に至り、遠心ボウル120の排出口から流出してきた血漿をチューブ142及び150を介して血漿採取バッグ122内に回収する経路である。この定速血漿循環工程を所定時間行った後、ステップS5へ移る。
【0080】
ステップS5において、第2の血漿採取工程を行なう。第2の血漿採取工程では、第1の血漿採取工程と同様に血漿の採取及び遠心分離を行なう。これにより、貯血空間内の赤血球量が増加、すなわち、赤血球層の層厚が増大するのに伴い、界面も徐々に遠心ボウル120の回転軸に近づくので、光学式センサ62からの検出信号に基づいて界面が所定レベルに到達したことを確認した後、ステップS6へ移る。
【0081】
ステップS6において加速血漿循環工程を行なう。加速血漿循環工程は、血漿採取バッグ122内の血漿を貯血空間内に加速させながら循環回路内で循環させる工程である。血漿の循環速度が所定速度に到達した後、ステップS7へ移る。
【0082】
ステップS7において第3の血漿採取工程を行う。第3の血漿採取工程では、第1及び第2の血漿採取工程と同様に、血漿の採取を行なう。血漿採取バッグ122内に所定量の血漿が採取されたことが確認された後、ステップS8へ移る。
【0083】
ステップS8において血小板採取工程を行なう。血小板採取工程は血漿採取バッグ122内の血漿を、貯血空間内で第1の加速度にて加速させながら循環させ、次いで、第1の加速度より大きい第2の加速度に変更し、該第2の加速度にて加速させながら循環させて、貯血空間内より血小板を流出させ、濃厚血小板を中間バッグ126a内に採取(貯留)する工程である。血小板採取工程において所定の操作を行った後、クランプ36eを開放し、この他のクランプ36a〜36d、36f及び36gを閉じた状態とし、血液ポンプ28を停止する。
【0084】
ステップS9においてモータ64の回転数を制御してロータを減速及び停止させる。
【0085】
ステップS10において返血工程を開始する。返血工程はロータの貯血空間内に残存する血液成分(主に、赤血球、白血球)をドナーに返血する工程である。つまり、クランプ36a及びクランプ36eを開放するとともに、血液ポンプ28を逆転する。これにより、ロータの貯血空間内に残存する血液成分は遠心ボウル120の導入口から排出され、チューブ104(採血針100)を介してドナーに返血(返還)される。返血工程の詳細については後述する。
【0086】
この後、所定の終了条件に基づいて返血工程を終了する。
【0087】
ステップS11において、所定のサイクル数を終了したか否かを確認し、未終了であるときにはステップS2へ戻り採血、返血等の処理を続行する。
【0088】
なお、最終サイクル時には、ステップS5で濾過工程を開始する。濾過工程は、中間バッグ126a内に一時的に採取(貯留)した濃厚血小板を、白血球除去フィルター130に供給して、濃厚血小板の濾過、すなわち、濃厚血小板中の白血球の分離除去を行なう工程である。白血球が除去された濃厚血小板は血小板採取バッグ124に貯溜される。
【0089】
なお、前記のステップS9(返血工程)の開始時及び終了時には、該工程の開始及び終了を示す情報を内出血検出装置700にリアルタイムで供給する。
【0090】
次に、血液成分採取装置10が単独で行う内出血の検出手順について図6を参照しながら説明する。血液成分採取装置10では、血液ポンプ28を回転させて返血を開始させた際に、ドナー圧力センサ38によって検出されたドナー圧力Pdの変動に基づく条件により内出血の有無を判定する。内出血には、そのまま返血を継続するとドナーに違和感を与え得る内出血が発生する可能性がある第1の種類の内出血と、そのままではドナーに大きな違和感を与えないが、ドナーの血管から採血針100が外れる等して、内出血が発生する可能性があると判断される第2の種類の内出血がある。
【0091】
図6において、破線で示されるグラフ510及び512は、そのままではドナーに違和感を与え得る内出血が発生する可能性があると判断される場合(第1の種類の内出血)であり、太線で示されるグラフ526は、そのままではドナーに大きな違和感を与えないが、ドナーの血管から採血針100が外れる等して、内出血が発生する可能性があると判断される場合(第2の種類の内出血)であり、細線で示されるグラフ522及び524は、内出血の可能性がないと判断される場合である。
【0092】
図6において、縦軸530、532及び534は、血液ポンプ28の返血速度Vが50mL/min、60mL/min及び90mL/minに達する箇所を代表的に示す線である。採血時の採血速度をプラス値に規定している関係上、返血速度Vはマイナス値として表される。
【0093】
血液成分採取装置10では、返血工程開始時に、血液ポンプ28の累積回転数A及びドナー圧力Pdの計測を開始する。返血開始時のドナー圧力Pdを初期圧力P0として記憶する。
【0094】
累積回転数AがA<2.5の場合には、ドナー圧力Pdと初期圧力P0との差の圧力(以下、ドナー圧力Pd0という。)と返血制限圧力PL1(例えば、PL1=100mmHg)とを比較し、Pd0≧PL1である場合には、第1の種類の内出血が発生したと判定する。Pd0<PL1である場合には、内出血の発生はない。
【0095】
累積回転数AがA≧2.5の場合には、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPと傾斜閾値PL2(例えば、血液ポンプ28が0.5回転する間にPL2=20mmHg)とを比較し、ΔP≧PL2である場合には、第2の種類の内出血が発生したと判定する。ΔP<PL2である場合には、内出血の発生はない。
【0096】
ドナー圧力Pd(又はPd0)に基づく内出血の有無の判定方法は、これに限られないことはもちろんである。
【0097】
次に、第1の実施形態に係る内出血検出装置700について説明する。
【0098】
図7に示すように、内出血検出装置700は、採血ベッドに設けられたドナーの腕712を置くアームレスト714に設置される。内出血検出装置700は、アームレスト714の側方端部接続されて立設する支柱716と、支柱716の上部に設けられた台718と、台718の上面に配置されたモニタ(表示手段)720とを有する。アームレスト714に置く腕712は、右腕又は左腕のどちらでもよい。
【0099】
アームレスト714は、腕712の肘724よりも先の部分を載置するのに適度な長さを有し、ドナーは手のひらの側を上に向けて腕712をアームレスト714に置く。台718は適度な高さに配置され、アームレスト714の上部に張り出している。モニタ720は、例えば液晶形式であって、上下左右方向に適度な範囲(例えば、±20°)で向きを調整可能である。モニタ720は、縦型であり、腕712を長い範囲に渡って表示可能である。モニタ720を省略し、代わりに前記のモニタ20(図2参照)を兼用してもよい。
【0100】
内出血検出装置700は、さらに、台718の下面に設けられた撮像ユニット726と、アームレスト714の内部に設けられた制御部728とを有する。制御部728は、前記の制御部26と一体構成であってもよい。
【0101】
撮像ユニット726は、向きを調整可能な傾動体734と、該傾動体734に取り付けられた近赤外線カメラ(撮像手段)736及び複数の近赤外線LED(照射手段)738とを有する。近赤外線カメラ736と近赤外線LED738は、同一の傾動体734に設けられていることから、傾動方向を変えても、両者は略同じ方向に指向する。
【0102】
近赤外線LED738は、近赤外線を腕712における肘724の反対面で、採血針100の穿刺箇所及びその近傍部に照射する。ここで、近赤外線とは、波長が700nm〜2500nmの光である。近赤外線LED738は複数設けられており、全てが単一波長の光源でもよいし、複数の波長の光源が組み合わされていてもよい。
【0103】
近赤外線カメラ736は、腕712のうち、近赤外線LED738により近赤外線が照射される箇所を連続的に撮像する。撮像した画像は制御部728を介してモニタ720に供給及び表示される。近赤外線カメラ736としては、例えばCCD式又はCMOS式を挙げることができる。近赤外線カメラ736にはズーム機能や感度調整機能等が設けられていてもよい。
【0104】
傾動体734は、例えばボールジョイント等により向きを調整可能であって、ドナーの腕712の違いに応じて近赤外線カメラ736及び近赤外線LED738の向きを変更できる。近赤外線LED738は複数設けられていることから、適度に広い範囲に近赤外線を照射することができる。近赤外線カメラ736は、近赤外線LED738と一体的に向きが調整されることから、該近赤外線LED738によって近赤外線が照射されている範囲を撮像することができる。撮像ユニット726は、腕712の上方に張り出した台718の下面に設けられていることから、該腕712に対して近赤外線LED738から近赤外線を照射しやすいとともに、近赤外線カメラ736により撮像し易い。
【0105】
ところで、図8に示すように、静脈740は皮膚に近い浅い箇所に多く存在する。静脈740に流れている赤血球の中のヘモグロビンは酸素を失った還元ヘモグロビンの量が多い。還元ヘモグロビンは近赤外線を吸収する性質があるため、腕712に近赤外線LED738により近赤外線を照射すると、静脈740の存在する箇所だけ反射が少なくなり、近赤外線カメラ736による影像上では暗くなり、静脈740の撮像が可能となる。図8で実線矢印は適度に強い近赤外線を示し、破線矢印はエネルギーが減衰した近赤外線を示す。
【0106】
図9に示すように、制御部728は、相互にバス接続された影像判断部750と、通信部754とを有する。通信部754は、接続線701により血液成分採取装置10の通信部96と接続されており、リアルタイムで相互の情報通信が可能である。
【0107】
影像判断部750は、近赤外線カメラ736から得られる影像をモニタ720に表示させるとともに、近赤外線LED738の点灯制御を行う。影像判断部750は、近赤外線カメラ736から得られる影像に対して種々の画像処理を行うことができ、例えば、画像判断処理や、濃淡強調処理や、所定の情報のインポーズ処理をすることができる。
【0108】
影像判断部750は、さらに、解析範囲抽出部760と、内出血判定部762とを有する。解析範囲抽出部760は、予め記録されたテンプレート画像764を用いてテンプレートマッチング処理を行い、近赤外線カメラ736から得られた画像の範囲内で穿刺位置を基準とした所定の解析範囲722(図11参照)を抽出する。テンプレート画像764は、採血針100及びその左右一対の翼部101の形状を含む画像データであり、例えば、実物の採血針100を撮影して得られる。
【0109】
内出血判定部762は、解析範囲抽出部760で抽出された解析範囲について、内出血の有無を判定し、その結果を通信部754を介して血液成分採取装置10の制御部26に通知する。
【0110】
内出血検出装置700は、近赤外線LED738及び近赤外線カメラ736を取り外した状態(例えば、撮像ユニット726ごと取り外した状態)で使用可能で、小児や動けない患者に対しては、近赤外線LED738及び近赤外線カメラ736を取り外して患者の腕712の近傍まで接近させて使用し、適切な静脈740を確認(選択)することができる。
【0111】
次に、このように構成される内出血検出装置700の動作について図10を参照しながら説明する。
【0112】
図10のステップS101において、内出血検出装置700を起動すると、近赤外線LED738を点灯させて腕712に近赤外線を照射するとともに、近赤外線カメラ736により当該箇所を連続的(経時的)に撮像する。撮像された画像は制御部728を介してモニタ720に表示される。この際、内出血検出装置700が設置された環境や時間帯によって、窓ガラスを通して入る太陽光や、蛍光灯の光量が異なることにより、モニタ720に表示される画像に明るさに影響があるため、必要に応じて、近赤外線LED738の光量を調整する。
【0113】
光量の調整は、モニタ720を目視により確認して手動で調整してもよいし、又は、所定のセンサにより近赤外線の照射部位又はそれに相当する箇所の光量を測定して、測定値に合わせて近赤外線LED738の光量を調整する光量調整手段を設けて、自動的に光量を調整するようにしてもよい。
【0114】
この後、図10に示す処理が終了するまで、近赤外線LED738による照射、近赤外線カメラ736による撮像及びモニタ720による表示を継続する。
【0115】
この時点で、医療従事者はモニタ720でドナーの腕712の静脈740を確認しながら、該静脈740のうち採血針100を穿刺するのに適したものを選択し、選択した静脈740に採血針100を穿刺する。採血針100は、穿刺した後に翼部101をドナーの皮膚に固定しておく。翼部101の皮膚に対する固定は、例えば透明のテープを用いるとよい。
【0116】
さらに、この後、血液成分採取装置10を起動して血液成分の採取を開始する。この採取処理は、前記のとおり、ドナーから血液を採取する採血工程(ステップS2、S5及びS7)、採取した血液を分離し、所定の血液成分を採取する分離採取工程(ステップS4、S6及びS8)、及び残余の血液成分をドナーに返血する返血工程(ステップSS10)を含む。
【0117】
ステップS102において、血液成分採取装置10から得られる情報を監視し、該血液成分採取装置10が返血工程を開始したか否かを確認する。返血工程が開始されたらステップS103へ移り、開始前であれば待機する。適度な余裕時間を考慮し、返血工程開始の多少前の時間にステップS103へ移ってもよい。
【0118】
ステップS103において、近赤外線カメラ736から得られる画像を初期画像770(図11参照)として所定の記録部に記録する。
【0119】
ステップS104において、図11に示すように、テンプレート画像764に基づいて、初期画像770に対してテンプレートマッチングを行い、解析範囲772を抽出する。つまり、初期画像770上で、テンプレート画像764を微小距離毎に縦及び横方向に順次移動させ、移動した範囲内でビット毎の比較を行い、最も一致する度合いが高い箇所を解析範囲772として抽出する。採血針100を穿刺する向きは概ね一定であることから、テンプレートマッチングを行いやすい。近赤外線カメラ736は、台718に支持されていることから高さが一定であり、採血針100が一定の大きさに撮像され、テンプレートマッチングを行いやすい。
【0120】
仮に一致の度合いが低い場合には、テンプレート画像764を微小角度傾斜させた上で再度テンプレートマッチングを行ってもよい。得られた解析範囲772は所定の記録部に記録する。解析範囲772は、テンプレート画像764と同じ大きさにする必要はなく、例えば、針先部100aを含む上半分772aだけを用いてもよい。
【0121】
このように、テンプレート画像764に基づくテンプレートマッチングを行うことにより、簡便且つ正確に解析範囲772を抽出することができる。翼部101の形状は特徴的であり、該形状を含むテンプレート画像764を用いることにより、解析範囲772を一層正確に抽出することができるとともに、返血中にドナーの腕712の移動がある程度許容される。解析範囲772に限定して解析を行うことにより、腕712以外の背景778の影響を排除できる。
【0122】
テンプレートマッチングは、所定のソフトウェアツールを用いて行ってもよい。解析範囲772の抽出は、テンプレートマッチング以外の手段を用いてもよい。
【0123】
ステップS105において、近赤外線カメラ736から得られる画像を比較画像774(図12参照)として所定の記録部に記録する。
【0124】
ステップS106において、図12に示すように、テンプレート画像764に基づいて、比較画像774に対してテンプレートマッチングを行い、解析範囲776を抽出する。この手順は、ステップS104のテンプレートマッチングと同様である。得られた解析範囲776は所定の記録部に記録する。図12において符号766は、内出血箇所を示す。内出血箇所766は、例えば赤で着色してモニタ720に表示すると、当該箇所が認識しやすい。
【0125】
ステップS107において、解析範囲772と解析範囲776との比較を行い、静脈740以外の箇所領域に血液が存在するか否かを判定する。この判断の手法については後述する。
【0126】
ステップS108において、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かの判定断結果を通信部754を介して血液成分採取装置10の制御部26に通知する。
【0127】
ステップS109において、制御部26から得られる情報を監視し、該血液成分採取装置10が返血工程を終了したか否かを確認する。返血工程が終了したらステップS110へ移り、実行中であればステップS105へ戻る。
【0128】
ステップS110において、血液成分採取装置10から得られる情報を監視し、血液成分採取の全工程が終了したか否かを確認する。全工程が終了したら図10に示す処理を終了し、全工程の終了前であればステップS102へ戻り、次の返血工程開始まで待機する。
【0129】
次に、ステップS107における静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする手順について、3つの手順例を説明する。3つの手順例は、複合的に適用してもよい。先ず、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第1手順例について説明する。
【0130】
図13のステップS201において、初期画像770における解析範囲772と比較画像774における解析範囲776における輝度が所定閾値を下回る箇所の面積A1及びA2(解析範囲774及び776に対する面積比でも実質的に同じである。)をそれぞれ求める。それぞれの画像上で、輝度が所定閾値を下回る箇所は、皮下に血液の存在している箇所と判断できる。この所定閾値は、周囲の明るさの変化等によって調整してもよい。
【0131】
面積A1及びA2を求める際には、基本的にはビット毎に輝度の判断をすることにより行うが、周囲のビットについても輝度を参照し、所定のビットの輝度が小さい場合でも周囲の輝度が大きいときには、該ビットはノイズ(図12の符号780参照)と判断して無視してもよい。その他、面積A1及びA2を正確に求めるために所定のフィルタや補間処理等を行ってもよい。
【0132】
ステップS202において、面積A2が面積A1に対して所定量T以上拡大したか否かを調べる。つまり、A2−A1>Tであるか確認する。ここで、面積A1は、静脈740の存在している箇所の面積に相当し、面積A2−面積A1は、静脈740から漏れた血液の存在している箇所(つまり、図12における内出血箇所766)の面積に相当する。所定量Tは、ノイズ等による誤判定を防止するための適当な数値である。該条件が成立する場合にはステップS203へ移り、非成立である場合にはステップS204へ移る。閾値としての所定量Tは固定的なものではなく、周囲の明るさの変化等によって調整してもよい。
【0133】
ステップS203においては内出血の発生があると判定し、ステップS204においては内出血の発生がないと判定する。
【0134】
このように、画像上の輝度に基づいて所定閾値を下回る箇所の面積A1及びA2を求めることにより、血液の分布が分かり、その差を求めることにより、静脈740以外の領域の血液を検出できる。
【0135】
内出血は、針先部100aの部分を基準として発生すると考えられることから、該針先部100aからの距離に応じて重み付けをして判断をしてもよい。つまり、針先部100aに近い箇所が変化したことは、内出血が発生したことの可能性が高いために、大きい重み付けをして比較判断し、針先部100aから遠い箇所が変化しても、内出血が発生したことの可能性は低いために、小さい重み付けをして比較判断するとよい。なお、初期画像770及び比較画像774から解析範囲772及び776を抽出して解析を行うことは、それ自体が重み付けをしている処理の一種である。
【0136】
次に、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第2手順例について説明する。
【0137】
図14のステップS301において、初期画像770における解析範囲772で輝度が所定閾値を下回る箇所から静脈740の位置を特定する。特定された静脈740の位置はビット単位で記録する。
【0138】
ステップS302において、比較画像774における解析範囲776で、静脈740の存在しない箇所(つまり、ステップS301で記録された以外の箇所)について輝度が所定閾値を下回る箇所の面積A3を求める。この面積A3は、静脈740から漏れた血液の存在している箇所の面積に相当する。この面積A3の部分は、着色してモニタ720に表示される。
【0139】
ステップS303において、面積A3と所定量Tとを比較し、A3>Tである場合にはステップS304へ移り、該条件が非成立である場合にはステップS305へ移る。
【0140】
ステップS304においては内出血の発生があると判定し、ステップS305においては内出血の発生がないと判定する。
【0141】
このように、静脈740の位置を特定しておくと、その後、それ以外の箇所において血液の存在の有無を調べればよく、処理負荷が少なくなるとともに、一層正確な判定が可能となる。
【0142】
次に、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第3手順例について説明する。この第3手順例では、比較画像774における解析範囲776における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状(位置、大きさ及び向きを含み得る。)に基づいて、判定を行う。
【0143】
図15のステップS401において、図16に示すように、解析範囲776で、丸形状(又は楕円、扇形等)を有するテンプレート画像782を微小距離毎に移動し、テンプレートマッチングを行う。テンプレートマッチングは、針先部100aを基準とした箇所に限定して行ってもよい。内出血箇所766が略丸形状であれば、丸形状を有するテンプレート画像782が針先部100aに配置されたときには、内出血箇所766に対して一致度合いが相当に高くなることは容易に理解されよう。
【0144】
ステップS402において、上記のテンプレートマッチングの結果、テンプレート画像782に対する一致度合いが所定値以上の箇所が存在したか否かを調べ、存在するときにはステップS403へ移り、存在しないときにはステップS404へ移る。
【0145】
ステップS403においては内出血の発生があると判定し、ステップS404においては内出血の発生がないと判定する。
【0146】
形状に基づく判断としては、これ以外にも、解析範囲776における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状を調べ、該形状が腕712の延在する方向、つまり図16の縦方向の線状でないとき(例えば、図16の横方向の幅が所定値より大きいとき)に内出血の発生があると判定してもよい。つまり、静脈740は、概ね腕712の延在する方向に線状であることから、輝度が所定閾値を下回る箇所が線状でない形状を示すときに、静脈740以外の領域の血液を検出できる。
【0147】
この第3の手順例では初期画像770を用いていないが、該画像と比較画像774とを比較判断すれば一層正確な判定が可能であることはもちろんである。
【0148】
次に、血液成分採取装置10において、内出血検出装置700から得られる内出血の有無についての情報を参照し、返血工程(図5のステップS10)において血液ポンプ28を制御する2つの手順について説明する。以下の処理は、累積回転数Aを基準にして行われ、例えば、A=0.25回転毎に行う。ドナー圧力Pdについても、A=0.25回転毎に計測をするものとする。制御部26で行うこれらの処理は、累積回転数A以外にも、例えば返血開始からの経過時間等に基づいて行ってもよい。先ず、第1の手順について説明する。
【0149】
図17のステップS501において、ドナー圧力Pd0と返血制限圧力PL1(図6参照)を比較し、Pd0≧PL1である場合(第1の種類の内出血が発生した場合)にはステップS503へ移り、Pd0<PL1である場合にはステップS502へ移る。
【0150】
ステップS502において、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、赤外線画像の解析の結果として内出血が発生していると判定される場合には、ステップS503へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS504へ移る。
【0151】
ステップS503においては、所定のポンプ停止処理をする。つまり、血液ポンプ28の回転を停止させて、返血工程を終了し、又は再開するための所定の準備処理をする。
【0152】
ステップS504において、累積回転数Aの値を確認し、A≧2.5である場合にはステップS505へ移り、A<2.5である場合にはステップS501へ戻る。
【0153】
図18のステップS505において、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPと傾斜閾値PL2とを比較し、ΔP≧PL2である場合(第2の種類の内出血が発生した場合)にはステップS506へ移り、ΔP<PL2である場合にはステップS508へ移る。
【0154】
ステップS506においては、前記のステップS502と同様に、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、内出血が発生していると判定される場合には、ステップS507へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS509へ移る。
【0155】
ステップS507においては、前記ステップS503と同様のポンプ停止処理をする。
【0156】
ステップS508においては、前記のステップS502と同様に、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、内出血が発生していると判定される場合には、ステップS509へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS511へ移る。
【0157】
ステップS509において、内出血の緩和処理(ステップS510)が連続して実行された回数を所定のカウンタ値を参照して判断する。内出血の緩和処理が連続してX回実行されているときには、ステップS507へ移り、X回未満であるときにはステップS510へ移る。
【0158】
ステップS510において、内出血の緩和処理を行う。例えば、血液ポンプ28の回転速度を維持し、減速し、又は回転加速度を減少させる。すなわち、緩和処理は、返血速度を維持又は減速若しくは返血速度が加速中であるときにはその時点の返血速度を維持又は加速度を減少させるものである。この後ステップS505へ戻る。
【0159】
このステップS510では、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPに基づく内出血の判断(ステップS505)と、内出血検出装置700の赤外線画像による内出血の判断(ステップS506、S508)のいずれか一方だけの条件が成立し、他方の条件は非成立であることから、内出血の程度が軽く、適切な緩和処理を行うことにより、該内出血が緩和して、返血工程を継続できる可能性がある。一方、緩和処理をX回連続して実行しても改善されない場合には、ステップS509の条件判断によりステップS507へ移り、ポンプ停止処理をすることになる。
【0160】
ステップS511において、ステップS510の緩和処理を実行中であるか否かを確認する。実行中であるときには、ステップS512へ移り、停止中であるときにはステップS513へ移る。
【0161】
ステップS512において、緩和処理を停止させる。つまり、血液ポンプ28の回転速度又は回転加速度を所定の規定値に戻し、緩和処理の実行回数を示すカウンタを初期化する。これにより、返血工程は規定状態に戻り、迅速な返血が可能となる。血液ポンプ28の回転速度及び回転加速度は、徐々に規定値に復帰させるとよい。この後、ステップS513へ移る。
【0162】
ステップS513において、返血工程が終了したか否かを累積回転数Aの値により確認する。返血工程が未終了である場合にはステップS505へ戻る。
【0163】
図19及び図20に示すように、返血工程において血液ポンプ28を制御する第2の手順では、ステップS601〜S613が、前記の第1の手順(図17及び図18参照)におけるステップS501〜S513に対応しており、ステップS608における条件判断の分岐先が異なる。
【0164】
つまり、ステップS608では、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、赤外線画像の解析の結果として内出血が発生していると判定される場合には、ステップS607(ポンプ停止処理)へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS611へ移る。
【0165】
この第2の手順では、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPに基づく内出血の判断(ステップS605)と、内出血検出装置700の赤外線画像による内出血の判断(ステップS608)を同列に扱うのではなく、後者は実際に内出血が広がっている蓋然性が高く、該条件を優先的に判断してより迅速な対応が可能となる。
【0166】
次に、第2の実施形態に係る内出血検出装置800について説明する。
【0167】
なお、主に第1の実施形態に係る内出血検出装置700との相違点を説明し、共通点については説明を簡略する。
【0168】
内出血検出装置800は、接続線701によって血液成分採取装置10に接続され、一体化されているが、採血等を行う際に内出血検出装置800を単独で使用してもよい。
【0169】
図21Aに示すように、内出血検出装置800は、腕挿入型(アームイン型)であって、筒形状の腕帯部810と、アームレスト814と、撮像ユニット826と、モニタ(表示手段)820と、制御部828とを有する。
【0170】
腕帯部810は、血液成分採取装置10の腕帯に相当するものであり、ハウジング811内に収容されている。また、撮像ユニット826、モニタ820及び制御部828は、内出血検出装置700の撮像ユニット726,モニタ720及び制御部728に相当するものである。
【0171】
腕帯部810には、ドナーの上腕が押入され、アームレスト814には、ドナーの肘よりも先の部分が置かれる。腕帯部810は、ドナーの上腕を挿入するのに適度な内径を有しており、しかもアームレスト814はドナー腕を置きやすいように凹形状となっており、ドナ一の腕は適切な位簿で略固定される。腕帯部810の内周部には、環状の加圧体が設けられており,採血工程(ステップS2、S5及びS7の第1〜3の血漿採取工程)において、ドナーの上腕を所定圧力で加圧(締め付ける)ことができる。
【0172】
撮像ユニット826の先端下面には、近赤外線カメラ836及び複数の近赤外線LED838が設けられており、ドナーの腕に近赤外線を照射して撮像することができる。近赤外線カメラ836によって撮像された画像はモニタ820に表示される。撮像ユニット826は、基端部を基準と上下方向(つまり、チルト方向)に傾動可能であり、ドナーの腕に対する近赤外線の照射位置及び撮像位置を調整できる。
【0173】
モニタ820は、腕帯部810の上面に設けられており、ドナーとは反対方向、つまり医療従事者の方向を指向している。モニタ820は、過度な範囲で傾動可能にしてもよい。
【0174】
図21Bに示すように、アームレスト814は、ハウジング811の一方に面812の下端を基準として傾動可能に接続されており、面812に接するように折り畳み可能である。
【0175】
また、撮像ユニット826は、ハウジング811の上面における凹部813にほぼ収まるように折り畳み可能である。撮像ユニット826を倒し込むと、先端の近赤外線カメラ836及び近赤外線LED838は、面812よりも前方位置に配置される。近赤外線カメラ836及び近赤外線LED838は、アームレスト814を折り畳むことにより、アームレスト814の先端の凹部815内に収納される。このように、内出血検出装置800はコンパクトに折り畳むことができ、使用しないときの移動及び収納に便利である。
【0176】
上述したように、本実施の形態に係る内出血検出装置700、800及び血液成分採取装置10では、赤外線LED738により近赤外線が照射された穿刺箇所の反射光を近赤外線カメラ736により撮像して画像を取得することにより、肉眼では見えない血液の分布を認識することができる。通常、血液は静脈を流れているが、内出血をするとその範囲が広がるので、採血針100や翼部101のずれがなくても、内出血の有無の判定が可能となる。したがって、穿刺による内出血の発生を可及的事前に予防し、若しくは適度に抑えることができる。内出血検出装置700では、基本的にはディスポーザル品はなく、繰り返しの使用が可能であって、経済的である。
【0177】
血液成分採取装置10では、内出血の有無の判定をドナー圧力Pd(又はPd0)も含めて複合的に判断することにより、一層正確な判定が可能となる。
【0178】
本発明に係る内出血検出装置及び血液成分採取装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本実施の形態に係る血液成分採取装置の斜視図である。
【図2】血液成分採取装置の斜視図である。
【図3】血液成分採取装置のブロック構成図である。
【図4】採血キットの回路図である。
【図5】血液成分採取装置で行われる成分採血の手順を示すフローチャートである。
【図6】返血工程におけるドナー圧力及び返血速度の変化を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係る内出血検出装置の斜視図である。
【図8】静脈に対する近赤外線の反射及び吸収の様子を示す説明図である。
【図9】内出血検出装置のブロック構成図である。
【図10】内出血検出装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図11】近赤外線カメラから得られる初期画像である。
【図12】近赤外線カメラから得られる比較画像である。
【図13】静脈以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第1の手順を示すフローチャートである。
【図14】静脈以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第2の手順を示すフローチャートである。
【図15】静脈以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第3の手順を示すフローチャートである。
【図16】解析範囲で、内出血箇所をテンプレートマッチングにより調べる様子を示す図である。
【図17】返血工程において血液ポンプを制御する第1の手順を示すフローチャート(その1)である。
【図18】返血工程において血液ポンプを制御する第1の手順を示すフローチャート(その2)である。
【図19】返血工程において血液ポンプを制御する第2の手順を示すフローチャート(その1)である。
【図20】返血工程において血液ポンプを制御する第2の手順を示すフローチャート(その2)である。
【図21】図21Aは、第2の実施形態に係る静脈表示装置の斜視図であり、図21Bは、折り畳んだ状態の第2の実施形態に係る静脈表示装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0180】
10…血液成分採取装置 12…装置本体
26、728…制御部 96、754…通信部
100…採血針 100a…針先部
101…翼部 700、800…内出血検出装置
701…接続線 712…腕
714…アームレスト 726、826…撮像ユニット
736…近赤外線カメラ(撮像手段) 738…赤外線LED(照射手段)
740…静脈 750…影像判断部
760…解析範囲抽出部 762…内出血判定部
764、782…テンプレート画像 766…内出血箇所
770…初期画像 772、776…解析範囲
774…比較画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナーに穿刺された針の穿刺位置を含む所定の近傍部における内出血の発生の有無を判定する内出血検出装置及び血液成分採取装置に関し、例えば、ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残りの血液成分をドナーに返血する血液成分採取装置に対して好適に適用可能な内出血検出装置及び血液成分採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
採血には、血液をそのまま採取する全血採血と、所定の血液成分のみを取り出す成分採血がある。成分採血では、ドナーから採取した血液を遠心分離することにより所定の成分を抽出し、他の成分についてはドナーに返還する。これにより、必要な成分(血漿や血小板)については全血採血よりも多く採取することができ、しかも他の成分については返還をすることからドナーの負担を軽減することができる。また、このような成分採血を自動的に行うための血液成分採取装置が実用化されている。
【0003】
血液成分採取装置では、ドナーに対して針を穿刺した後、該針を介して採取された血液を複数の成分に分離し、所定の成分を採取する処理、及び残りの成分を針からドナーに返血する処理等が所定の制御部の作用下にポンプを回転させることにより自動的に行われる。ポンプにチューブが装着されており、採血時にはポンプを正回転させてチューブから血液を吸い込み、返血時にはポンプを逆回転させて残りの成分をチューブに送り出す。採血及び返血におけるチューブの血液及び血液成分の流量はポンプの回転速度に応じて変化させることができる。
【0004】
針の穿刺状態によっては、返血時に、血液成分が圧縮気味に滞留し、その部分の圧力が上昇して針を押し戻すように作用する。その結果、針先が静脈から抜けた状態となり、血液が血管外に送り出されてしまい、内出血の状態になる。また、針先が静脈から抜けなくても、針と血管壁の隙間から血液が漏れてしまうと同様の状態となる。
【0005】
このような内出血の状態は、ドナーが痛みを感じて気づく場合の他に、ドナーが多少の違和感を感じたり、ドナーやオペレータが穿刺部位が腫脹していることで気づく場合もあり、また、気づかない場合もある。このような内出血が発生すると、皮膚が外観的に腫れ又は変色し、回復するまでにある程度の時間がかかりドナーに不快感又は不安感を与えることがある。
【0006】
一般に、ドナーが痛みや違和感を感じた場合には返血を中断し、ドナーが了解した場合は抜針して、針を交換し、再度穿刺して残りの血液成分を返血する。しかしながら、ドナーが了解しない場合にはその時点で返血を中止し、返血予定であった血液成分を回路に残した状態で終了することになる。この場合、ドナーは返血できなかった血液成分をロスしたことになるため、次の献血まで所定期間をあける必要がある。また、残存した血液成分を返血する場合には、内出血の箇所を避けて再度の穿刺を行う必要があり、ドナーに不満を与えかねない。
【0007】
また、返血中にドナーが違和感を感じない場合であっても、次のサイクルの採血中に十分な採血速度が得られず、必要量の血液成分が得られる前に採血、返血を中止せざるを得なくなる場合がある。
【0008】
返血を行っている際、内出血が発生してもドナーはすぐには気づかない場合があって、即時に適切な対応をとることができず、視認可能な程度の内出血となってドナーに不快感又は不安感を与える懸念がある。
【0009】
このような内出血の状態を検出するために、特許文献1では、穿刺箇所に容量型センサ又は抵抗型センサ等を患者の皮膚に固定して、針の抜けに起因して変化するパラメータを検出することを提案している。
【0010】
特許文献2では、針をドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部に対して、電極からなるタッチセンサを設け、翼部が患者から離間したことを検出している。
【0011】
特許文献3では、血液がよく滲み且つ弾力のある材質で、血液貯溜部を備えるバンドを患者の腕に巻き付け、血液貯溜部に滲みた血液を光センサーで検出することを提案している。このバンドのように肌に装着する部材は、血液による色の変化が顕著となるように白色を提案している。
【0012】
【特許文献1】特表2005−516637号公報
【特許文献2】特開2006−110119号公報
【特許文献3】特開2007−20738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記の各特許文献では、センサを患者の穿刺箇所又はその近傍に固定するので、基本的にはディスポーザル品であり、患者にとってのコスト負担が大きい。また、特許文献1では血液の漏れによる明らかな変化が生じたときに、該漏れを検出できるのであって、明らかな変化が生じる前段階のより迅速な検出が求められる。
【0014】
特許文献2では、翼部のずれを検出するだけであり、翼部及び針のずれがない場合の内出血を検出することはできない。実際上、穿刺による内出血のメカニズムはいまだ解明されていない微妙な現象であり、翼部及び針がほとんどずれがない場合でも内出血は発生する。
【0015】
特許文献3では、血液が体外にまで漏れたことを検出するのであって、内出血の検出はできない。
【0016】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、穿刺による内出血の発生を事前に予防し、若しくは適度に抑えることのできる内出血検出装置及び血液成分採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る内出血検出装置は、ドナーに穿刺された針の穿刺位置を含む所定の近傍部に近赤外線を照射する照射手段と、前記近傍部を経時的に撮像する撮像手段と、前記撮像手段で撮像された画像上で、静脈以外の領域に血液が存在すると判断されることを少なくとも1つの条件として内出血が発生したと判定する制御部とを有することを特徴とする。
【0018】
このように、照射手段により近赤外線が照射された穿刺箇所の反射光を撮像手段により撮像して画像を取得することにより、肉眼では見えない血液の分布を認識することができる。通常、血液は静脈を流れているが、内出血をするとその範囲が広がるので、内出血の有無の判定が可能となる。したがって、穿刺による内出血の発生を可及的事前に予防し、若しくは適度に抑えることができる。
【0019】
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の面積を求め、該面積が所定量拡大したことにより、静脈以外の領域に血液が存在すると判定してもよい。このように、画像上の輝度に基づいて所定閾値を下回る箇所の面積を求めることにより、血液の分布が分かり、静脈以外の領域の血液を検出できる。
【0020】
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所から静脈位置を特定し、該静脈位置以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所が所定面積以上発生したときに、静脈以外の領域に血液が存在すると判定してもよい。このように、静脈位置を特定しておくと、その後、それ以外の箇所において血液の存在の有無を調べればよい。
【0021】
この場合、前記制御部は、前記静脈以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所を前記撮像手段で撮像された画面上で、着色して表示すると、当該箇所が認識しやすい。
【0022】
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状に基づいて、静脈以外の領域に血液が存在すると判定してもよい。静脈は線状であることから、輝度が所定閾値を下回る箇所が線状でない形状を示すときに、静脈以外の領域の血液を検出できる。ここで、形状とは広義であり、位置、大きさ及び向きを含み得る。
【0023】
前記画像の範囲内で前記穿刺位置を基準として所定の解析範囲を抽出する解析範囲抽出手段を有し、前記制御部は、前記解析範囲抽出手段によって抽出された解析範囲に基づいて内出血の発生を判断してもよい。このように、穿刺位置を基準として解析範囲を抽出し、該解析範囲に限定して解析を行うと処理の負荷が低減するとともに、より正確な判断ができる。
【0024】
前記解析範囲抽出手段は、前記針の形状を含むテンプレート画像に基づいて、前記画像に対してテンプレートマッチングを行い、前記解析範囲を抽出してもよい。このように、テンプレート画像に基づくテンプレートマッチングを行うことにより、簡便且つ正確に解析範囲を抽出することができる。
【0025】
前記針は、ドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部を有し、前記テンプレート画像は前記翼部の形状を含んでもよい。翼部の形状は特徴的であり、該形状を含むテンプレート画像を用いることにより、解析範囲を一層正確に抽出することができる。
【0026】
前記撮像手段で撮像された画像を連続的に表示する表示手段を有すると、医療従事者が内出血の状態を目視により確認することができる。表示手段は、針を穿刺する際に適切な静脈を選択することにも利用可能である。
【0027】
前記撮像手段と前記照射手段とは、傾動可能な同一の傾動体に設けられていると、照射手段と撮像手段とを略同じ方向に指向させることができる。
【0028】
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する血液成分採取装置において、前記の内出血検出装置を有し、前記制御部は、ドナーに残余の血液成分を返血する返血工程の際に、内出血の発生の有無を判定する内出血判定部を有してもよい。
【0029】
前記内出血判定部により、内出血が発生したと判定されたときに、その時点の返血速度を維持又は減速、若しくは返血を停止させてもよい。
【0030】
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する操作が複数回のサイクルで実行され、前記内出血判定部は、複数回の前記返血工程において、そのサイクルで得られた画像に基づいて内出血の発生の有無を判定してもよい。このように、複数回の返血工程において、その回に得られた画像に基づく判定をすると、前回に得られた各種のデータは不要となり、処理が簡便になる。また、所定時間が経過した前回までの画像に影響されず、その回の画像だけを用いることにより正確な判定が可能となる。
【0031】
ドナーに残余の血液成分を返血する返血ラインと、前記返血ラインに血液成分を送り出す可変速度の血液ポンプと、前記返血ラインの圧力を検出する圧力センサとを有し、前記血液ポンプを回転させて返血を開始させた際に、前記圧力センサによって検出された前記圧力の変動に基づく条件を含めて、内出血の発生の有無を判定してもよい。このような血液成分採取装置と内出血検出装置とを含むシステムでは、返血工程において内出血の発生の有無を判定に基づく適切な対応が可能となる。また、返血ラインの圧力も含めて複合的に判断することにより、一層正確な判定が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る内出血検出装置によれば、照射手段により近赤外線が照射された穿刺箇所の反射光を撮像手段により撮像して画像を取得することにより、肉眼では見えない血液の分布を認識することができる。通常、血液は静脈を流れているが、内出血をするとその範囲が広がるので、内出血の有無の判定が可能となる。したがって、穿刺による内出血の発生を可及的事前に予防し、若しくは適度に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明に係る内出血検出装置について実施形態を挙げ、添付の図1〜図20を参照しながら説明する。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態に係る内出血検出装置700は、血液成分採取装置10と接続して用いられる。血液成分採取装置10と内出血検出装置700は接続線701によって接続されることにより連係しており、リアルタイムで相互の情報通信が可能である。血液成分採取装置10と内出血検出装置700との通信は有線又は無線を問わず、機器間の独立的な通信でもよく、LAN等の通信網でもよい。内出血検出装置700は汎用性を有し、血液成分採取装置10以外にも、例えば人工透析装置に接続することも可能である。
【0035】
本願では、内出血検出装置700は、血液成分採取装置10と接続され、一体化されているが、採血等を行う際に内出血検出装置700を単独で使用してもよい。先ず、血液成分採取装置10について説明する。
【0036】
図1に示すように、血液成分採取装置10は、装置本体12と、該装置本体12に装着される採血キット14とを有する。
【0037】
図2に示すように、装置本体12は、箱形の機構本体部15と、該機構本体部15の背面左右から上方に延在する第1支柱16a及び第2支柱16bと、第1支柱16aの上端左側に設けられた重量計18と、第2支柱の上端部に設けられたモニタ20と、第1支柱16aの右側に設けられた複室バッグ126の有無を検出するバッグ検出センサ21と第2支柱16bの右側に設けられた除菌フィルター114の有無を検出するセンサ23a及び気泡除去用チャンバー112の有無及び抗凝固剤の滴下を検出するセンサ23bとを有する。モニタ20は血液成分採取装置10の入出力装置であり、大型のカラータッチパネル20aと、スピーカ20bとを有し、画像及び音声を用いた簡易な操作が可能である。スピーカ20bはステレオ式である。
【0038】
機構本体部15は左側の制御機構部22と、右側の遠心分離機構部(分離手段)24とからなる。制御機構部22は、血液成分採取装置10の全体を統括的に制御する制御部26と、血液ポンプ28と、抗凝固剤ポンプ30と、濁度センサ32と、6つの気泡センサ34a、34b、34c、34d、34e、34fと、7つのクランプ36a、36b、36c、36d、36e、36f、36gと、ドナー圧力センサ38と、システム圧力センサ40とを有する。濁度センサ32及び各気泡センサ34a〜34fとしては、それぞれ、例えば、超音波センサ、光学式センサ、赤外線センサ等を用いることがきる。濁度センサ32と気泡センサ34dは一体的に構成されている。
【0039】
遠心分離機構部24は採血キット14の遠心ボウル(遠心分離器)120が装着され、該遠心ボウル120内に導入された血液を遠心分離する機構部である。
【0040】
遠心ボウル120の設定回転速度としては、例えば4200〜5800rpm程度に設定される。これにより、貯血空間内の血液は内層より血漿層(PPP層)、バフィーコート層(BC層)及び赤血球層(CRC層)に分離される。遠心ボウルの近傍には、血漿層とバフィーコート層との界面(以下、単に界面と呼ぶ。)の位置に応じて変化する透過率から該界面の位置を検出する光学式センサ(図示せず)が設けられている。
【0041】
制御部26は、機構本体部15の内部に設けられている。制御機構部22における制御部26以外の機器は、採血キット14のチューブが装着可能なように上面、前面及び支柱に設けられている。
【0042】
血液ポンプ28及び抗凝固剤ポンプ30は、チューブ側面にローラを押圧させながら連続的に転動させることにより内部の血液を押し出すローラポンプ式であり、血液に対して非接触の状態で駆動可能である。また、血液ポンプ28及び抗凝固剤ポンプ30は、制御部26の作用下に速度及び流体吐出方向が可変である。血液ポンプ28は、採血時には所定の正方向に回転することにより血液を引き込む吸引ポンプとして作用し、返血時には逆方向に回転することにより血液成分をチューブ104に送り出す吐出ポンプとして作用する。
【0043】
濁度センサ32は、挟み込まれたチューブ内を通過する液体の濁度を検出するセンサである。気泡センサ34a〜34fは、挟み込まれたチューブ内を通過する液体の有無又は気泡を検出するセンサである。クランプ36a〜36gは、挟み込まれたチューブを両側から押圧して閉じ、又は開放して連通させ、開閉バルブとしての作用を奏する。これらのクランプ36a〜36gは、カセットハウジング42がはめ込み可能なように制御機構部22の上面における一区画に集中配置されている。カセットハウジング42は採血キット14のチューブの多くの部分を一体的に集約、配置するための樹脂製部材であり、該カセットハウジング42を制御機構部22の上面にはめ込むことにより所定のチューブが対応するクランプ36a〜36gによって開閉可能に配置される。
【0044】
ドナー圧力センサ38は、採血キット14における採血経路系統(採血・返血ライン)14a(図4参照)の一部が差し込まれ、採血・返血ラインの圧力を示すドナー圧力Pdを計測するセンサであり、採血時には採血ラインの圧力センサとして作用し、返血時には返血ラインの圧力センサとして作用する。
【0045】
システム圧力センサ40は、処理経路系統14b(図4参照)(血液処理回路)の一部が差し込まれ、回路内の圧力を示すシステム圧力(回路内圧力)Psを計測するセンサである。なお、図1及び図2においては採血キット14のチューブの一部を省略して図示している。
【0046】
図3に示すように、制御部26は、出力用として血液ポンプドライバ76と、抗凝固剤ポンプドライバ78と、モータドライバ80と、クランプドライバ82とを有し、血液ポンプ28、抗凝固剤ポンプ30、モータ64及びクランプ36a〜36gを制御する。血液ポンプドライバ76は、血液ポンプ28の速度及び吐出方向を制御する。抗凝固剤ポンプドライバ78は、抗凝固剤ポンプ30の速度を制御する。モータドライバ80はモータ64の回転速度を制御する。クランプドライバ82は、クランプ36a〜36gを個別に開閉制御する。
【0047】
また、制御部26は、各センサの入力制御を行う入力インターフェース84と、モニタ20の入出力を行うモニタインターフェース86とを有する。さらに、制御部26は、各機能部と協動して血液成分採取処理及び返血処理の動作を制御するモード制御部88と、各センサの入力信号等に基づいて異常の監視を行う異常監視部90と、所定のプログラムやデータの記憶を行う記憶部92と、タイマ94と、外部機器(内出血検出装置700等)とのデータ通信を行う通信部96と、血液ポンプ28の回転速度に基づいて採血速度及び返血速度Vを求める速度検出部98とを有する。
【0048】
モード制御部88には、採血工程(本実施の形態の第1〜第3の血漿採取工程)における制御を行う吸引制御部88aと、返血工程における制御を行う吐出制御部88bとを有する。吸引制御部88a及び吐出制御部88bは、ドナー圧力Pdに基づいて血液ポンプ28の回転速度Nを制御する機能を含む。
【0049】
制御部26内の機能の一部は、記憶部92に記録されたプログラムを図示しないCPUによって読み込み実行することにより実現される。
【0050】
図4に示すように、採血キット14は、ドナーから血液を採取及び返還するための採血経路系統14aと、採取した血液を遠心分離し、所定の血液成分を採取等する処理経路系統14bとを有する。
【0051】
採血経路系統14aは、ドナーに穿刺する中空の採血針100と、一端が採血針100に接続されて他端が分岐継手102を介して処理経路系統14bに接続されたチューブ104と、該チューブ104の途中に設けられたチャンバー106と、抗凝固剤が入った抗凝固剤容器107(図2参照)に接続される抗凝固剤容器接続用針108と、一端が該抗凝固剤容器接続用針108に接続されたチューブ110と、該チューブ110の途中に設けられた気泡除去用チャンバー112及び除菌フィルター(異物除去用フィルター)114とを有する。チューブ104とチューブ110は、採血針100の近傍に設けられた分岐継手116により接続されている。採血針100には、ドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部101が設けられている。
【0052】
チューブ104(及び後述するチューブ140)は採血、返血に共用であり、採血ライン及び返血ラインとして作用する。
【0053】
チャンバー106は、チューブ104を通過する血液中の気泡及びマイクロアグリゲートを除去する。チャンバー106の一端にはチューブ104から分岐した短いチューブ118が設けられている。該チューブ118の端部は通気性且つ菌不透過性のフィルター(図示せず)に接続されるとともに、ドナー圧力センサ38に挿入されており、ドナー圧力Pdを計測可能である。
【0054】
抗凝固剤容器接続用針108に接続された抗凝固剤容器107には、ACD−A液のような抗凝固剤が蓄えられている。チューブ110の一部は抗凝固剤ポンプ30に装着されており、該抗凝固剤ポンプ30の作用下に抗凝固剤容器接続用針108から供給された抗凝固剤はチューブ110及び分岐継手116を介してチューブ104内の血液中に抗凝固剤が混入される。チューブ110の途中には気泡センサ34aが装着される。
【0055】
チャンバー106と分岐継手102との間には、気泡センサ34b及びクランプ36aが装着される。クランプ36aは分岐継手102の近傍に装着されており、クランプ36aを開くことにより採血経路系統14aと処理経路系統14bは連通する。チューブ104には直列して2つの気泡センサ34e及び34fが装着されており、気泡や空気を確実に検知することができる。
【0056】
処理経路系統14bは遠心ボウル120と、血漿採取バッグ122と、血小板採取バッグ124と、中間バッグ126aと、エアーバッグ126bと、バッグ128と、白血球除去フィルター130とを有する。
【0057】
血漿採取バッグ122及び血小板採取バッグ124は、遠心分離等の処理により得られた血漿及び血小板を蓄えるバッグである。血漿採取バッグ122は重量計18(図2参照)のフック18aに懸架され、収納された血漿の重量を計測することができる。血小板採取バッグ124は、機構本体部15の前面に懸架される(図2参照)。
【0058】
中間バッグ126aは、採取した血小板(濃厚血小板)を一時的に貯留するための容器である。エアーバッグ126bは、回路内の無菌空気を一時的に収納するための容器である。エアーバッグ126bと中間バッグ126aとは、回路的には分離した独立の容器であるが、物理的には一体的であって複室バッグ126を構成している。複室バッグ126はバッグ検出センサ21(図2参照)のフック21aに懸架される。
【0059】
採血を行う際には、遠心ボウル120の貯血空間内等の空気はエアーバッグ126b内に移送され、収納される。返血工程の際には、エアーバッグ126b内に収納されている空気は、貯血空間内に戻され、所定の血液成分が、ドナーへ返還される。
【0060】
バッグ128は血小板採取バッグ124に接続されたバッグであり、成分採血の終了後、血小板採取バッグ124内の空気を排出する際に用いられる。
【0061】
血漿採取バッグ122、血小板採取バッグ124、中間バッグ126a、エアーバッグ126b及びバッグ128は、それぞれ樹脂製(例えば、軟質ポリ塩化ビニル)の可撓性を有するシート材を重ね、その周縁部を融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)または接着剤により接着等して袋状にしたものが使用される。
【0062】
なお、血小板採取バッグ124に使用されるシート材としては、血小板保存性を向上するためにガス透過性に優れるものを用いることがより好ましい。このようなシート材としては、例えば、ポリオレフィンやDnDP可塑化ポリ塩化ビニル等を用いることができる。
【0063】
白血球除去フィルター130は、中間バッグ126aから血小板採取バッグ124に血液成分を移送する際に、血液成分中の白血球を分離除去するフィルターである。図2から明らかなように、白血球除去フィルター130は、中間バッグ126aより低く、血小板採取バッグ124より高い位置に配置される。
【0064】
次に、処理経路系統14bの各構成機器を接続するチューブについて説明する。処理経路系統14bの端部である分岐継手102と遠心ボウル120の導入口との間はチューブ140で接続されている。該チューブ140の一部は血液ポンプ28に装着される。したがって、血液ポンプ28を正転させることにより血液を採血経路系統14aから遠心ボウル120内に導入し、又は処理経路系統14b内で所定の循環動作を行うことができる。また、血液ポンプ28を逆転させることにより、所定の血液成分を採血経路系統14aに導出し、ドナーに返還することができる。
【0065】
遠心ボウル120の排出口にはチューブ142が接続されており、該チューブ142は分岐継手144を介して三つ股に分岐してチューブ146、チューブ148及びチューブ150に接続されている。チューブ142は、濁度センサ32及び気泡センサ34dに直列的に接続されている。
【0066】
チューブ146はエアーバッグ126bに接続されており、その途中はクランプ36eに装着されている。チューブ148の端部は通気性且つ菌不透過性のフィルター(図示せず)に接続されるとともに、システム圧力センサ40に挿入されており、システム圧力Psを計測可能である。
【0067】
チューブ150の端部は血漿採取バッグ122に接続されており、その途中には分岐継手152が設けられ、チューブ154を介して中間バッグ126aに接続されている。チューブ154はクランプ36dに装着されている。分岐継手152と血漿採取バッグ122との間のチューブ150はクランプ36cに装着されている。
【0068】
中間バッグ126aと血小板採取バッグ124との間はチューブ156により接続されており、その途中には白血球除去フィルター130が設けられている。中間バッグ126aと血小板採取バッグ124との間のチューブ156は、気泡センサ34c及びクランプ36gに装着されている。白血球除去フィルター130の端部には、チューブ156から短く分岐したフィルター160が設けられている。フィルター160は菌不透過性のベントフィルター及びキャップからなる。
【0069】
気泡センサ34cとクランプ36gとの間のチューブ156には分岐継手162が設けられ、チューブ164を介して、血漿採取バッグ122に接続されている。チューブ164の途中には分岐継手166が設けられている。該分岐継手166と分岐継手102との間はチューブ168により接続されている。分岐継手162と分岐継手166との間のチューブ164はクランプ36fに装着されている。チューブ168における分岐継手102の近傍部には、クランプ36bが装着されている。
【0070】
血小板採取バッグ124とバッグ128はチューブ158により接続されている。
【0071】
このように構成される採血キット14は予め所定の滅菌処理がなされている。なお、採血キット14には、チューブが集中配置されたカセットハウジング42、及びチューブの一部とフィルター160とを保持するフィルターカセット170(図2参照)が設けられている。
【0072】
次に、血液成分採取装置10により成分採血を行う主な手順について図5を参照しながら説明する。
【0073】
先ず、図5のステップS1において所定の初期処理を行う。初期処理としては、チューブ110とチューブ104の採血針100からチャンバー106までを、抗凝固剤でプライミングする。その後、ドナーの上腕に腕帯(図示せず)を装着するとともに、ドナーの血管に採血針100を穿刺する。腕帯は、ドナーの上腕を締め付けるためのものであり、空気圧手段によって所定圧力に加圧可能である。この後、モニタ20のカラータッチパネル20aを操作して成分採血処理を開始する。これ以降の手順は主に制御部26の作用下に自動的に行われる。
【0074】
ステップS2において第1の血漿採取工程を行う。この第1の血漿採取工程は、遠心ボウル120の貯血空間内に血液を導入して遠心分離することにより得られる血漿を血漿採取バッグ122内に採取する工程である。
【0075】
この際、腕帯によってドナーの腕は所定圧力(例えば、50mmHg)で加圧されている。なお、ステップS5及びS7の第2及び第3の血漿採取工程でも、本ステップS2と同様に腕帯によってドナーの上腕が加圧される。
【0076】
ここで、血液(抗凝固剤添加血液)は、チューブ104を介して移送され、遠心ボウル120の導入口よりロータの貯血空間内に導入される。このとき、遠心ボウル120内の空気は、チューブ142及びチューブ146を介してエアーバッグ126b内に送り込まれる。
【0077】
貯血空間内に所定量の血液が導入された状態で遠心ボウル120のロータの回転を開始する。ロータの回転数はステップS9まで一定に維持される。ロータの回転により、貯血空間内に導入された血液は、内側から血漿層、バフィーコート層、赤血球層の3層に分離される。なお、第2サイクル以降は、血液ポンプ28と同時にモータ64を駆動する。
【0078】
ステップS3において、チューブ142に設けられた気泡センサ34dの信号を監視し、チューブ142を流れる流体が空気から血漿に変わったことを検出した後クランプ36eを閉じるとともにクランプ36cを開放する。貯血空間の容量を越える血液が貯血空間内に導入されると、遠心ボウル120の排出口から血漿が流出することから、このタイミングを気泡センサ34dにより検出してクランプ操作を行い、チューブ142及びチューブ150を介して血漿を血漿採取バッグ122内に導入、採取するように切り替える。血漿採取バッグ122に導入された血漿の重量は、重量計18により計測される。重量計18から得られる重量信号に基づき、血漿採取バッグ122内に所定量の血漿が採取されたことが確認された後ステップS4へ移る。
【0079】
ステップS4において、定速血漿循環工程を行う。定速血漿循環工程は、血漿採取バッグ122内の血漿を貯血空間を含む循環回路で定速にて循環させる工程である。つまり、クランプ36aを閉じ、クランプ36bを開放するとともに抗凝固剤ポンプ30を停止する。これにより、採血を一時中断するとともに、血漿採取バッグ122内の血漿を循環させる経路が形成される。この循環回路は、血漿採取バッグ122からチューブ164、168及び140を介して貯血空間内に至り、遠心ボウル120の排出口から流出してきた血漿をチューブ142及び150を介して血漿採取バッグ122内に回収する経路である。この定速血漿循環工程を所定時間行った後、ステップS5へ移る。
【0080】
ステップS5において、第2の血漿採取工程を行なう。第2の血漿採取工程では、第1の血漿採取工程と同様に血漿の採取及び遠心分離を行なう。これにより、貯血空間内の赤血球量が増加、すなわち、赤血球層の層厚が増大するのに伴い、界面も徐々に遠心ボウル120の回転軸に近づくので、光学式センサ62からの検出信号に基づいて界面が所定レベルに到達したことを確認した後、ステップS6へ移る。
【0081】
ステップS6において加速血漿循環工程を行なう。加速血漿循環工程は、血漿採取バッグ122内の血漿を貯血空間内に加速させながら循環回路内で循環させる工程である。血漿の循環速度が所定速度に到達した後、ステップS7へ移る。
【0082】
ステップS7において第3の血漿採取工程を行う。第3の血漿採取工程では、第1及び第2の血漿採取工程と同様に、血漿の採取を行なう。血漿採取バッグ122内に所定量の血漿が採取されたことが確認された後、ステップS8へ移る。
【0083】
ステップS8において血小板採取工程を行なう。血小板採取工程は血漿採取バッグ122内の血漿を、貯血空間内で第1の加速度にて加速させながら循環させ、次いで、第1の加速度より大きい第2の加速度に変更し、該第2の加速度にて加速させながら循環させて、貯血空間内より血小板を流出させ、濃厚血小板を中間バッグ126a内に採取(貯留)する工程である。血小板採取工程において所定の操作を行った後、クランプ36eを開放し、この他のクランプ36a〜36d、36f及び36gを閉じた状態とし、血液ポンプ28を停止する。
【0084】
ステップS9においてモータ64の回転数を制御してロータを減速及び停止させる。
【0085】
ステップS10において返血工程を開始する。返血工程はロータの貯血空間内に残存する血液成分(主に、赤血球、白血球)をドナーに返血する工程である。つまり、クランプ36a及びクランプ36eを開放するとともに、血液ポンプ28を逆転する。これにより、ロータの貯血空間内に残存する血液成分は遠心ボウル120の導入口から排出され、チューブ104(採血針100)を介してドナーに返血(返還)される。返血工程の詳細については後述する。
【0086】
この後、所定の終了条件に基づいて返血工程を終了する。
【0087】
ステップS11において、所定のサイクル数を終了したか否かを確認し、未終了であるときにはステップS2へ戻り採血、返血等の処理を続行する。
【0088】
なお、最終サイクル時には、ステップS5で濾過工程を開始する。濾過工程は、中間バッグ126a内に一時的に採取(貯留)した濃厚血小板を、白血球除去フィルター130に供給して、濃厚血小板の濾過、すなわち、濃厚血小板中の白血球の分離除去を行なう工程である。白血球が除去された濃厚血小板は血小板採取バッグ124に貯溜される。
【0089】
なお、前記のステップS9(返血工程)の開始時及び終了時には、該工程の開始及び終了を示す情報を内出血検出装置700にリアルタイムで供給する。
【0090】
次に、血液成分採取装置10が単独で行う内出血の検出手順について図6を参照しながら説明する。血液成分採取装置10では、血液ポンプ28を回転させて返血を開始させた際に、ドナー圧力センサ38によって検出されたドナー圧力Pdの変動に基づく条件により内出血の有無を判定する。内出血には、そのまま返血を継続するとドナーに違和感を与え得る内出血が発生する可能性がある第1の種類の内出血と、そのままではドナーに大きな違和感を与えないが、ドナーの血管から採血針100が外れる等して、内出血が発生する可能性があると判断される第2の種類の内出血がある。
【0091】
図6において、破線で示されるグラフ510及び512は、そのままではドナーに違和感を与え得る内出血が発生する可能性があると判断される場合(第1の種類の内出血)であり、太線で示されるグラフ526は、そのままではドナーに大きな違和感を与えないが、ドナーの血管から採血針100が外れる等して、内出血が発生する可能性があると判断される場合(第2の種類の内出血)であり、細線で示されるグラフ522及び524は、内出血の可能性がないと判断される場合である。
【0092】
図6において、縦軸530、532及び534は、血液ポンプ28の返血速度Vが50mL/min、60mL/min及び90mL/minに達する箇所を代表的に示す線である。採血時の採血速度をプラス値に規定している関係上、返血速度Vはマイナス値として表される。
【0093】
血液成分採取装置10では、返血工程開始時に、血液ポンプ28の累積回転数A及びドナー圧力Pdの計測を開始する。返血開始時のドナー圧力Pdを初期圧力P0として記憶する。
【0094】
累積回転数AがA<2.5の場合には、ドナー圧力Pdと初期圧力P0との差の圧力(以下、ドナー圧力Pd0という。)と返血制限圧力PL1(例えば、PL1=100mmHg)とを比較し、Pd0≧PL1である場合には、第1の種類の内出血が発生したと判定する。Pd0<PL1である場合には、内出血の発生はない。
【0095】
累積回転数AがA≧2.5の場合には、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPと傾斜閾値PL2(例えば、血液ポンプ28が0.5回転する間にPL2=20mmHg)とを比較し、ΔP≧PL2である場合には、第2の種類の内出血が発生したと判定する。ΔP<PL2である場合には、内出血の発生はない。
【0096】
ドナー圧力Pd(又はPd0)に基づく内出血の有無の判定方法は、これに限られないことはもちろんである。
【0097】
次に、第1の実施形態に係る内出血検出装置700について説明する。
【0098】
図7に示すように、内出血検出装置700は、採血ベッドに設けられたドナーの腕712を置くアームレスト714に設置される。内出血検出装置700は、アームレスト714の側方端部接続されて立設する支柱716と、支柱716の上部に設けられた台718と、台718の上面に配置されたモニタ(表示手段)720とを有する。アームレスト714に置く腕712は、右腕又は左腕のどちらでもよい。
【0099】
アームレスト714は、腕712の肘724よりも先の部分を載置するのに適度な長さを有し、ドナーは手のひらの側を上に向けて腕712をアームレスト714に置く。台718は適度な高さに配置され、アームレスト714の上部に張り出している。モニタ720は、例えば液晶形式であって、上下左右方向に適度な範囲(例えば、±20°)で向きを調整可能である。モニタ720は、縦型であり、腕712を長い範囲に渡って表示可能である。モニタ720を省略し、代わりに前記のモニタ20(図2参照)を兼用してもよい。
【0100】
内出血検出装置700は、さらに、台718の下面に設けられた撮像ユニット726と、アームレスト714の内部に設けられた制御部728とを有する。制御部728は、前記の制御部26と一体構成であってもよい。
【0101】
撮像ユニット726は、向きを調整可能な傾動体734と、該傾動体734に取り付けられた近赤外線カメラ(撮像手段)736及び複数の近赤外線LED(照射手段)738とを有する。近赤外線カメラ736と近赤外線LED738は、同一の傾動体734に設けられていることから、傾動方向を変えても、両者は略同じ方向に指向する。
【0102】
近赤外線LED738は、近赤外線を腕712における肘724の反対面で、採血針100の穿刺箇所及びその近傍部に照射する。ここで、近赤外線とは、波長が700nm〜2500nmの光である。近赤外線LED738は複数設けられており、全てが単一波長の光源でもよいし、複数の波長の光源が組み合わされていてもよい。
【0103】
近赤外線カメラ736は、腕712のうち、近赤外線LED738により近赤外線が照射される箇所を連続的に撮像する。撮像した画像は制御部728を介してモニタ720に供給及び表示される。近赤外線カメラ736としては、例えばCCD式又はCMOS式を挙げることができる。近赤外線カメラ736にはズーム機能や感度調整機能等が設けられていてもよい。
【0104】
傾動体734は、例えばボールジョイント等により向きを調整可能であって、ドナーの腕712の違いに応じて近赤外線カメラ736及び近赤外線LED738の向きを変更できる。近赤外線LED738は複数設けられていることから、適度に広い範囲に近赤外線を照射することができる。近赤外線カメラ736は、近赤外線LED738と一体的に向きが調整されることから、該近赤外線LED738によって近赤外線が照射されている範囲を撮像することができる。撮像ユニット726は、腕712の上方に張り出した台718の下面に設けられていることから、該腕712に対して近赤外線LED738から近赤外線を照射しやすいとともに、近赤外線カメラ736により撮像し易い。
【0105】
ところで、図8に示すように、静脈740は皮膚に近い浅い箇所に多く存在する。静脈740に流れている赤血球の中のヘモグロビンは酸素を失った還元ヘモグロビンの量が多い。還元ヘモグロビンは近赤外線を吸収する性質があるため、腕712に近赤外線LED738により近赤外線を照射すると、静脈740の存在する箇所だけ反射が少なくなり、近赤外線カメラ736による影像上では暗くなり、静脈740の撮像が可能となる。図8で実線矢印は適度に強い近赤外線を示し、破線矢印はエネルギーが減衰した近赤外線を示す。
【0106】
図9に示すように、制御部728は、相互にバス接続された影像判断部750と、通信部754とを有する。通信部754は、接続線701により血液成分採取装置10の通信部96と接続されており、リアルタイムで相互の情報通信が可能である。
【0107】
影像判断部750は、近赤外線カメラ736から得られる影像をモニタ720に表示させるとともに、近赤外線LED738の点灯制御を行う。影像判断部750は、近赤外線カメラ736から得られる影像に対して種々の画像処理を行うことができ、例えば、画像判断処理や、濃淡強調処理や、所定の情報のインポーズ処理をすることができる。
【0108】
影像判断部750は、さらに、解析範囲抽出部760と、内出血判定部762とを有する。解析範囲抽出部760は、予め記録されたテンプレート画像764を用いてテンプレートマッチング処理を行い、近赤外線カメラ736から得られた画像の範囲内で穿刺位置を基準とした所定の解析範囲722(図11参照)を抽出する。テンプレート画像764は、採血針100及びその左右一対の翼部101の形状を含む画像データであり、例えば、実物の採血針100を撮影して得られる。
【0109】
内出血判定部762は、解析範囲抽出部760で抽出された解析範囲について、内出血の有無を判定し、その結果を通信部754を介して血液成分採取装置10の制御部26に通知する。
【0110】
内出血検出装置700は、近赤外線LED738及び近赤外線カメラ736を取り外した状態(例えば、撮像ユニット726ごと取り外した状態)で使用可能で、小児や動けない患者に対しては、近赤外線LED738及び近赤外線カメラ736を取り外して患者の腕712の近傍まで接近させて使用し、適切な静脈740を確認(選択)することができる。
【0111】
次に、このように構成される内出血検出装置700の動作について図10を参照しながら説明する。
【0112】
図10のステップS101において、内出血検出装置700を起動すると、近赤外線LED738を点灯させて腕712に近赤外線を照射するとともに、近赤外線カメラ736により当該箇所を連続的(経時的)に撮像する。撮像された画像は制御部728を介してモニタ720に表示される。この際、内出血検出装置700が設置された環境や時間帯によって、窓ガラスを通して入る太陽光や、蛍光灯の光量が異なることにより、モニタ720に表示される画像に明るさに影響があるため、必要に応じて、近赤外線LED738の光量を調整する。
【0113】
光量の調整は、モニタ720を目視により確認して手動で調整してもよいし、又は、所定のセンサにより近赤外線の照射部位又はそれに相当する箇所の光量を測定して、測定値に合わせて近赤外線LED738の光量を調整する光量調整手段を設けて、自動的に光量を調整するようにしてもよい。
【0114】
この後、図10に示す処理が終了するまで、近赤外線LED738による照射、近赤外線カメラ736による撮像及びモニタ720による表示を継続する。
【0115】
この時点で、医療従事者はモニタ720でドナーの腕712の静脈740を確認しながら、該静脈740のうち採血針100を穿刺するのに適したものを選択し、選択した静脈740に採血針100を穿刺する。採血針100は、穿刺した後に翼部101をドナーの皮膚に固定しておく。翼部101の皮膚に対する固定は、例えば透明のテープを用いるとよい。
【0116】
さらに、この後、血液成分採取装置10を起動して血液成分の採取を開始する。この採取処理は、前記のとおり、ドナーから血液を採取する採血工程(ステップS2、S5及びS7)、採取した血液を分離し、所定の血液成分を採取する分離採取工程(ステップS4、S6及びS8)、及び残余の血液成分をドナーに返血する返血工程(ステップSS10)を含む。
【0117】
ステップS102において、血液成分採取装置10から得られる情報を監視し、該血液成分採取装置10が返血工程を開始したか否かを確認する。返血工程が開始されたらステップS103へ移り、開始前であれば待機する。適度な余裕時間を考慮し、返血工程開始の多少前の時間にステップS103へ移ってもよい。
【0118】
ステップS103において、近赤外線カメラ736から得られる画像を初期画像770(図11参照)として所定の記録部に記録する。
【0119】
ステップS104において、図11に示すように、テンプレート画像764に基づいて、初期画像770に対してテンプレートマッチングを行い、解析範囲772を抽出する。つまり、初期画像770上で、テンプレート画像764を微小距離毎に縦及び横方向に順次移動させ、移動した範囲内でビット毎の比較を行い、最も一致する度合いが高い箇所を解析範囲772として抽出する。採血針100を穿刺する向きは概ね一定であることから、テンプレートマッチングを行いやすい。近赤外線カメラ736は、台718に支持されていることから高さが一定であり、採血針100が一定の大きさに撮像され、テンプレートマッチングを行いやすい。
【0120】
仮に一致の度合いが低い場合には、テンプレート画像764を微小角度傾斜させた上で再度テンプレートマッチングを行ってもよい。得られた解析範囲772は所定の記録部に記録する。解析範囲772は、テンプレート画像764と同じ大きさにする必要はなく、例えば、針先部100aを含む上半分772aだけを用いてもよい。
【0121】
このように、テンプレート画像764に基づくテンプレートマッチングを行うことにより、簡便且つ正確に解析範囲772を抽出することができる。翼部101の形状は特徴的であり、該形状を含むテンプレート画像764を用いることにより、解析範囲772を一層正確に抽出することができるとともに、返血中にドナーの腕712の移動がある程度許容される。解析範囲772に限定して解析を行うことにより、腕712以外の背景778の影響を排除できる。
【0122】
テンプレートマッチングは、所定のソフトウェアツールを用いて行ってもよい。解析範囲772の抽出は、テンプレートマッチング以外の手段を用いてもよい。
【0123】
ステップS105において、近赤外線カメラ736から得られる画像を比較画像774(図12参照)として所定の記録部に記録する。
【0124】
ステップS106において、図12に示すように、テンプレート画像764に基づいて、比較画像774に対してテンプレートマッチングを行い、解析範囲776を抽出する。この手順は、ステップS104のテンプレートマッチングと同様である。得られた解析範囲776は所定の記録部に記録する。図12において符号766は、内出血箇所を示す。内出血箇所766は、例えば赤で着色してモニタ720に表示すると、当該箇所が認識しやすい。
【0125】
ステップS107において、解析範囲772と解析範囲776との比較を行い、静脈740以外の箇所領域に血液が存在するか否かを判定する。この判断の手法については後述する。
【0126】
ステップS108において、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かの判定断結果を通信部754を介して血液成分採取装置10の制御部26に通知する。
【0127】
ステップS109において、制御部26から得られる情報を監視し、該血液成分採取装置10が返血工程を終了したか否かを確認する。返血工程が終了したらステップS110へ移り、実行中であればステップS105へ戻る。
【0128】
ステップS110において、血液成分採取装置10から得られる情報を監視し、血液成分採取の全工程が終了したか否かを確認する。全工程が終了したら図10に示す処理を終了し、全工程の終了前であればステップS102へ戻り、次の返血工程開始まで待機する。
【0129】
次に、ステップS107における静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする手順について、3つの手順例を説明する。3つの手順例は、複合的に適用してもよい。先ず、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第1手順例について説明する。
【0130】
図13のステップS201において、初期画像770における解析範囲772と比較画像774における解析範囲776における輝度が所定閾値を下回る箇所の面積A1及びA2(解析範囲774及び776に対する面積比でも実質的に同じである。)をそれぞれ求める。それぞれの画像上で、輝度が所定閾値を下回る箇所は、皮下に血液の存在している箇所と判断できる。この所定閾値は、周囲の明るさの変化等によって調整してもよい。
【0131】
面積A1及びA2を求める際には、基本的にはビット毎に輝度の判断をすることにより行うが、周囲のビットについても輝度を参照し、所定のビットの輝度が小さい場合でも周囲の輝度が大きいときには、該ビットはノイズ(図12の符号780参照)と判断して無視してもよい。その他、面積A1及びA2を正確に求めるために所定のフィルタや補間処理等を行ってもよい。
【0132】
ステップS202において、面積A2が面積A1に対して所定量T以上拡大したか否かを調べる。つまり、A2−A1>Tであるか確認する。ここで、面積A1は、静脈740の存在している箇所の面積に相当し、面積A2−面積A1は、静脈740から漏れた血液の存在している箇所(つまり、図12における内出血箇所766)の面積に相当する。所定量Tは、ノイズ等による誤判定を防止するための適当な数値である。該条件が成立する場合にはステップS203へ移り、非成立である場合にはステップS204へ移る。閾値としての所定量Tは固定的なものではなく、周囲の明るさの変化等によって調整してもよい。
【0133】
ステップS203においては内出血の発生があると判定し、ステップS204においては内出血の発生がないと判定する。
【0134】
このように、画像上の輝度に基づいて所定閾値を下回る箇所の面積A1及びA2を求めることにより、血液の分布が分かり、その差を求めることにより、静脈740以外の領域の血液を検出できる。
【0135】
内出血は、針先部100aの部分を基準として発生すると考えられることから、該針先部100aからの距離に応じて重み付けをして判断をしてもよい。つまり、針先部100aに近い箇所が変化したことは、内出血が発生したことの可能性が高いために、大きい重み付けをして比較判断し、針先部100aから遠い箇所が変化しても、内出血が発生したことの可能性は低いために、小さい重み付けをして比較判断するとよい。なお、初期画像770及び比較画像774から解析範囲772及び776を抽出して解析を行うことは、それ自体が重み付けをしている処理の一種である。
【0136】
次に、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第2手順例について説明する。
【0137】
図14のステップS301において、初期画像770における解析範囲772で輝度が所定閾値を下回る箇所から静脈740の位置を特定する。特定された静脈740の位置はビット単位で記録する。
【0138】
ステップS302において、比較画像774における解析範囲776で、静脈740の存在しない箇所(つまり、ステップS301で記録された以外の箇所)について輝度が所定閾値を下回る箇所の面積A3を求める。この面積A3は、静脈740から漏れた血液の存在している箇所の面積に相当する。この面積A3の部分は、着色してモニタ720に表示される。
【0139】
ステップS303において、面積A3と所定量Tとを比較し、A3>Tである場合にはステップS304へ移り、該条件が非成立である場合にはステップS305へ移る。
【0140】
ステップS304においては内出血の発生があると判定し、ステップS305においては内出血の発生がないと判定する。
【0141】
このように、静脈740の位置を特定しておくと、その後、それ以外の箇所において血液の存在の有無を調べればよく、処理負荷が少なくなるとともに、一層正確な判定が可能となる。
【0142】
次に、静脈740以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第3手順例について説明する。この第3手順例では、比較画像774における解析範囲776における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状(位置、大きさ及び向きを含み得る。)に基づいて、判定を行う。
【0143】
図15のステップS401において、図16に示すように、解析範囲776で、丸形状(又は楕円、扇形等)を有するテンプレート画像782を微小距離毎に移動し、テンプレートマッチングを行う。テンプレートマッチングは、針先部100aを基準とした箇所に限定して行ってもよい。内出血箇所766が略丸形状であれば、丸形状を有するテンプレート画像782が針先部100aに配置されたときには、内出血箇所766に対して一致度合いが相当に高くなることは容易に理解されよう。
【0144】
ステップS402において、上記のテンプレートマッチングの結果、テンプレート画像782に対する一致度合いが所定値以上の箇所が存在したか否かを調べ、存在するときにはステップS403へ移り、存在しないときにはステップS404へ移る。
【0145】
ステップS403においては内出血の発生があると判定し、ステップS404においては内出血の発生がないと判定する。
【0146】
形状に基づく判断としては、これ以外にも、解析範囲776における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状を調べ、該形状が腕712の延在する方向、つまり図16の縦方向の線状でないとき(例えば、図16の横方向の幅が所定値より大きいとき)に内出血の発生があると判定してもよい。つまり、静脈740は、概ね腕712の延在する方向に線状であることから、輝度が所定閾値を下回る箇所が線状でない形状を示すときに、静脈740以外の領域の血液を検出できる。
【0147】
この第3の手順例では初期画像770を用いていないが、該画像と比較画像774とを比較判断すれば一層正確な判定が可能であることはもちろんである。
【0148】
次に、血液成分採取装置10において、内出血検出装置700から得られる内出血の有無についての情報を参照し、返血工程(図5のステップS10)において血液ポンプ28を制御する2つの手順について説明する。以下の処理は、累積回転数Aを基準にして行われ、例えば、A=0.25回転毎に行う。ドナー圧力Pdについても、A=0.25回転毎に計測をするものとする。制御部26で行うこれらの処理は、累積回転数A以外にも、例えば返血開始からの経過時間等に基づいて行ってもよい。先ず、第1の手順について説明する。
【0149】
図17のステップS501において、ドナー圧力Pd0と返血制限圧力PL1(図6参照)を比較し、Pd0≧PL1である場合(第1の種類の内出血が発生した場合)にはステップS503へ移り、Pd0<PL1である場合にはステップS502へ移る。
【0150】
ステップS502において、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、赤外線画像の解析の結果として内出血が発生していると判定される場合には、ステップS503へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS504へ移る。
【0151】
ステップS503においては、所定のポンプ停止処理をする。つまり、血液ポンプ28の回転を停止させて、返血工程を終了し、又は再開するための所定の準備処理をする。
【0152】
ステップS504において、累積回転数Aの値を確認し、A≧2.5である場合にはステップS505へ移り、A<2.5である場合にはステップS501へ戻る。
【0153】
図18のステップS505において、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPと傾斜閾値PL2とを比較し、ΔP≧PL2である場合(第2の種類の内出血が発生した場合)にはステップS506へ移り、ΔP<PL2である場合にはステップS508へ移る。
【0154】
ステップS506においては、前記のステップS502と同様に、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、内出血が発生していると判定される場合には、ステップS507へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS509へ移る。
【0155】
ステップS507においては、前記ステップS503と同様のポンプ停止処理をする。
【0156】
ステップS508においては、前記のステップS502と同様に、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、内出血が発生していると判定される場合には、ステップS509へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS511へ移る。
【0157】
ステップS509において、内出血の緩和処理(ステップS510)が連続して実行された回数を所定のカウンタ値を参照して判断する。内出血の緩和処理が連続してX回実行されているときには、ステップS507へ移り、X回未満であるときにはステップS510へ移る。
【0158】
ステップS510において、内出血の緩和処理を行う。例えば、血液ポンプ28の回転速度を維持し、減速し、又は回転加速度を減少させる。すなわち、緩和処理は、返血速度を維持又は減速若しくは返血速度が加速中であるときにはその時点の返血速度を維持又は加速度を減少させるものである。この後ステップS505へ戻る。
【0159】
このステップS510では、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPに基づく内出血の判断(ステップS505)と、内出血検出装置700の赤外線画像による内出血の判断(ステップS506、S508)のいずれか一方だけの条件が成立し、他方の条件は非成立であることから、内出血の程度が軽く、適切な緩和処理を行うことにより、該内出血が緩和して、返血工程を継続できる可能性がある。一方、緩和処理をX回連続して実行しても改善されない場合には、ステップS509の条件判断によりステップS507へ移り、ポンプ停止処理をすることになる。
【0160】
ステップS511において、ステップS510の緩和処理を実行中であるか否かを確認する。実行中であるときには、ステップS512へ移り、停止中であるときにはステップS513へ移る。
【0161】
ステップS512において、緩和処理を停止させる。つまり、血液ポンプ28の回転速度又は回転加速度を所定の規定値に戻し、緩和処理の実行回数を示すカウンタを初期化する。これにより、返血工程は規定状態に戻り、迅速な返血が可能となる。血液ポンプ28の回転速度及び回転加速度は、徐々に規定値に復帰させるとよい。この後、ステップS513へ移る。
【0162】
ステップS513において、返血工程が終了したか否かを累積回転数Aの値により確認する。返血工程が未終了である場合にはステップS505へ戻る。
【0163】
図19及び図20に示すように、返血工程において血液ポンプ28を制御する第2の手順では、ステップS601〜S613が、前記の第1の手順(図17及び図18参照)におけるステップS501〜S513に対応しており、ステップS608における条件判断の分岐先が異なる。
【0164】
つまり、ステップS608では、内出血検出装置700から得られる情報を確認し、赤外線画像の解析の結果として内出血が発生していると判定される場合には、ステップS607(ポンプ停止処理)へ移り、内出血の発生がないと判定される場合にはステップS611へ移る。
【0165】
この第2の手順では、ドナー圧力Pd0の傾斜値ΔPに基づく内出血の判断(ステップS605)と、内出血検出装置700の赤外線画像による内出血の判断(ステップS608)を同列に扱うのではなく、後者は実際に内出血が広がっている蓋然性が高く、該条件を優先的に判断してより迅速な対応が可能となる。
【0166】
次に、第2の実施形態に係る内出血検出装置800について説明する。
【0167】
なお、主に第1の実施形態に係る内出血検出装置700との相違点を説明し、共通点については説明を簡略する。
【0168】
内出血検出装置800は、接続線701によって血液成分採取装置10に接続され、一体化されているが、採血等を行う際に内出血検出装置800を単独で使用してもよい。
【0169】
図21Aに示すように、内出血検出装置800は、腕挿入型(アームイン型)であって、筒形状の腕帯部810と、アームレスト814と、撮像ユニット826と、モニタ(表示手段)820と、制御部828とを有する。
【0170】
腕帯部810は、血液成分採取装置10の腕帯に相当するものであり、ハウジング811内に収容されている。また、撮像ユニット826、モニタ820及び制御部828は、内出血検出装置700の撮像ユニット726,モニタ720及び制御部728に相当するものである。
【0171】
腕帯部810には、ドナーの上腕が押入され、アームレスト814には、ドナーの肘よりも先の部分が置かれる。腕帯部810は、ドナーの上腕を挿入するのに適度な内径を有しており、しかもアームレスト814はドナー腕を置きやすいように凹形状となっており、ドナ一の腕は適切な位簿で略固定される。腕帯部810の内周部には、環状の加圧体が設けられており,採血工程(ステップS2、S5及びS7の第1〜3の血漿採取工程)において、ドナーの上腕を所定圧力で加圧(締め付ける)ことができる。
【0172】
撮像ユニット826の先端下面には、近赤外線カメラ836及び複数の近赤外線LED838が設けられており、ドナーの腕に近赤外線を照射して撮像することができる。近赤外線カメラ836によって撮像された画像はモニタ820に表示される。撮像ユニット826は、基端部を基準と上下方向(つまり、チルト方向)に傾動可能であり、ドナーの腕に対する近赤外線の照射位置及び撮像位置を調整できる。
【0173】
モニタ820は、腕帯部810の上面に設けられており、ドナーとは反対方向、つまり医療従事者の方向を指向している。モニタ820は、過度な範囲で傾動可能にしてもよい。
【0174】
図21Bに示すように、アームレスト814は、ハウジング811の一方に面812の下端を基準として傾動可能に接続されており、面812に接するように折り畳み可能である。
【0175】
また、撮像ユニット826は、ハウジング811の上面における凹部813にほぼ収まるように折り畳み可能である。撮像ユニット826を倒し込むと、先端の近赤外線カメラ836及び近赤外線LED838は、面812よりも前方位置に配置される。近赤外線カメラ836及び近赤外線LED838は、アームレスト814を折り畳むことにより、アームレスト814の先端の凹部815内に収納される。このように、内出血検出装置800はコンパクトに折り畳むことができ、使用しないときの移動及び収納に便利である。
【0176】
上述したように、本実施の形態に係る内出血検出装置700、800及び血液成分採取装置10では、赤外線LED738により近赤外線が照射された穿刺箇所の反射光を近赤外線カメラ736により撮像して画像を取得することにより、肉眼では見えない血液の分布を認識することができる。通常、血液は静脈を流れているが、内出血をするとその範囲が広がるので、採血針100や翼部101のずれがなくても、内出血の有無の判定が可能となる。したがって、穿刺による内出血の発生を可及的事前に予防し、若しくは適度に抑えることができる。内出血検出装置700では、基本的にはディスポーザル品はなく、繰り返しの使用が可能であって、経済的である。
【0177】
血液成分採取装置10では、内出血の有無の判定をドナー圧力Pd(又はPd0)も含めて複合的に判断することにより、一層正確な判定が可能となる。
【0178】
本発明に係る内出血検出装置及び血液成分採取装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】本実施の形態に係る血液成分採取装置の斜視図である。
【図2】血液成分採取装置の斜視図である。
【図3】血液成分採取装置のブロック構成図である。
【図4】採血キットの回路図である。
【図5】血液成分採取装置で行われる成分採血の手順を示すフローチャートである。
【図6】返血工程におけるドナー圧力及び返血速度の変化を示すグラフである。
【図7】第1の実施形態に係る内出血検出装置の斜視図である。
【図8】静脈に対する近赤外線の反射及び吸収の様子を示す説明図である。
【図9】内出血検出装置のブロック構成図である。
【図10】内出血検出装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図11】近赤外線カメラから得られる初期画像である。
【図12】近赤外線カメラから得られる比較画像である。
【図13】静脈以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第1の手順を示すフローチャートである。
【図14】静脈以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第2の手順を示すフローチャートである。
【図15】静脈以外の領域に血液が存在するか否かを判定をする第3の手順を示すフローチャートである。
【図16】解析範囲で、内出血箇所をテンプレートマッチングにより調べる様子を示す図である。
【図17】返血工程において血液ポンプを制御する第1の手順を示すフローチャート(その1)である。
【図18】返血工程において血液ポンプを制御する第1の手順を示すフローチャート(その2)である。
【図19】返血工程において血液ポンプを制御する第2の手順を示すフローチャート(その1)である。
【図20】返血工程において血液ポンプを制御する第2の手順を示すフローチャート(その2)である。
【図21】図21Aは、第2の実施形態に係る静脈表示装置の斜視図であり、図21Bは、折り畳んだ状態の第2の実施形態に係る静脈表示装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0180】
10…血液成分採取装置 12…装置本体
26、728…制御部 96、754…通信部
100…採血針 100a…針先部
101…翼部 700、800…内出血検出装置
701…接続線 712…腕
714…アームレスト 726、826…撮像ユニット
736…近赤外線カメラ(撮像手段) 738…赤外線LED(照射手段)
740…静脈 750…影像判断部
760…解析範囲抽出部 762…内出血判定部
764、782…テンプレート画像 766…内出血箇所
770…初期画像 772、776…解析範囲
774…比較画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーに穿刺された針の穿刺位置を含む所定の近傍部に近赤外線を照射する照射手段と、
前記近傍部を経時的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された画像上で、静脈以外の領域に血液が存在すると判断されることを少なくとも1つの条件として内出血が発生したと判定する制御部と、
を有することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の面積を求め、該面積が所定量拡大したことにより、静脈以外の領域に血液が存在すると判定することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所から静脈位置を特定し、該静脈位置以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所が所定面積以上発生したときに、静脈以外の領域に血液が存在すると判定することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記静脈以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所を前記撮像手段で撮像された画面上で、着色して表示することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状に基づいて、静脈以外の領域に血液が存在すると判定することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の内出血検出装置において、
前記画像の範囲内で前記穿刺位置を基準として所定の解析範囲を抽出する解析範囲抽出手段を有し、
前記制御部は、前記解析範囲抽出手段によって抽出された解析範囲に基づいて内出血が発生を判断することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の内出血検出装置において、
前記解析範囲抽出手段は、前記針の形状を含むテンプレート画像に基づいて、前記画像に対してテンプレートマッチングを行い、前記解析範囲を抽出することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の内出血検出装置において、
前記針は、ドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部を有し、
前記テンプレート画像は前記翼部の形状を含むことを特徴とする内出血検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の内出血検出装置において、
前記撮像手段で撮像された画像を連続的に表示する表示手段を有することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の内出血検出装置において、
前記撮像手段と前記照射手段とは、傾動可能な同一の傾動体に設けられていることを特徴とする内出血検出装置。
【請求項11】
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する血液成分採取装置において、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の内出血検出装置を有し、
前記制御部は、ドナーに残余の血液成分を返血する返血工程の際に、内出血の発生の有無を判定する内出血判定部を有することを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項12】
請求項11記載の血液成分採取装置において、
前記内出血判定部により、内出血が発生したと判定されたときに、その時点の返血速度を維持又は減速、若しくは返血を停止させることを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項13】
請求項11又は12記載の血液成分採取装置において、
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する操作が複数回のサイクルで実行され、
前記内出血判定部は、複数回の前記返血工程において、そのサイクルで得られた画像に基づいて内出血の発生の有無を判定することを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の血液成分採取装置において、
ドナーに残余の血液成分を返血する返血ラインと、
前記返血ラインに血液成分を送り出す可変速度の血液ポンプと、
前記返血ラインの圧力を検出する圧力センサと、
を有し、
前記血液ポンプを回転させて返血を開始させた際に、前記圧力センサによって検出された前記圧力の変動に基づく条件を含めて、内出血の発生の有無を判定することを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項1】
ドナーに穿刺された針の穿刺位置を含む所定の近傍部に近赤外線を照射する照射手段と、
前記近傍部を経時的に撮像する撮像手段と、
前記撮像手段で撮像された画像上で、静脈以外の領域に血液が存在すると判断されることを少なくとも1つの条件として内出血が発生したと判定する制御部と、
を有することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の面積を求め、該面積が所定量拡大したことにより、静脈以外の領域に血液が存在すると判定することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項3】
請求項1記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所から静脈位置を特定し、該静脈位置以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所が所定面積以上発生したときに、静脈以外の領域に血液が存在すると判定することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項4】
請求項3記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記静脈以外の領域で輝度が所定閾値を下回る箇所を前記撮像手段で撮像された画面上で、着色して表示することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項5】
請求項1記載の内出血検出装置において、
前記制御部は、前記画像における輝度が所定閾値を下回る箇所の形状に基づいて、静脈以外の領域に血液が存在すると判定することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の内出血検出装置において、
前記画像の範囲内で前記穿刺位置を基準として所定の解析範囲を抽出する解析範囲抽出手段を有し、
前記制御部は、前記解析範囲抽出手段によって抽出された解析範囲に基づいて内出血が発生を判断することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項7】
請求項6記載の内出血検出装置において、
前記解析範囲抽出手段は、前記針の形状を含むテンプレート画像に基づいて、前記画像に対してテンプレートマッチングを行い、前記解析範囲を抽出することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項8】
請求項7記載の内出血検出装置において、
前記針は、ドナーの皮膚に固定するための左右一対の翼部を有し、
前記テンプレート画像は前記翼部の形状を含むことを特徴とする内出血検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の内出血検出装置において、
前記撮像手段で撮像された画像を連続的に表示する表示手段を有することを特徴とする内出血検出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の内出血検出装置において、
前記撮像手段と前記照射手段とは、傾動可能な同一の傾動体に設けられていることを特徴とする内出血検出装置。
【請求項11】
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する血液成分採取装置において、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の内出血検出装置を有し、
前記制御部は、ドナーに残余の血液成分を返血する返血工程の際に、内出血の発生の有無を判定する内出血判定部を有することを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項12】
請求項11記載の血液成分採取装置において、
前記内出血判定部により、内出血が発生したと判定されたときに、その時点の返血速度を維持又は減速、若しくは返血を停止させることを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項13】
請求項11又は12記載の血液成分採取装置において、
ドナーから採取した血液を分離した後、所定の血液成分を採取し、残余の血液成分をドナーに返血する操作が複数回のサイクルで実行され、
前記内出血判定部は、複数回の前記返血工程において、そのサイクルで得られた画像に基づいて内出血の発生の有無を判定することを特徴とする血液成分採取装置。
【請求項14】
請求項11〜13のいずれか1項に記載の血液成分採取装置において、
ドナーに残余の血液成分を返血する返血ラインと、
前記返血ラインに血液成分を送り出す可変速度の血液ポンプと、
前記返血ラインの圧力を検出する圧力センサと、
を有し、
前記血液ポンプを回転させて返血を開始させた際に、前記圧力センサによって検出された前記圧力の変動に基づく条件を含めて、内出血の発生の有無を判定することを特徴とする血液成分採取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−136436(P2009−136436A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314779(P2007−314779)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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