説明

内分泌撹乱化合物を除去するための方法

本発明は、表面反応させられた天然炭酸カルシウムまたは表面反応させられた炭酸カルシウムを含み20℃で測定されて6.0より高いpHを有する水性懸濁液を媒体に加えることによる水性媒体からの内分泌撹乱化合物の除去に関し(ここで、表面反応させられた炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムの二酸化炭素および1種または複数の酸との反応生成物であり)、表面反応させられた天然炭酸カルシウムの内分泌撹乱化合物を除去するための使用に関し、同様に内分泌撹乱化合物を除去するための表面反応させられた天然炭酸カルシウムおよび活性炭の組合せにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内分泌撹乱化合物を除去するための方法に関し、かかる方法における表面反応させられた炭酸カルシウムの使用、活性炭との組合せおよび表面反応させられた炭酸カルシウムと活性炭に場合によって吸着された内分泌撹乱化合物との複合物に関する。
【背景技術】
【0002】
都市下水処理場は凝集によっておよび生物分解によって効率的な方法で有機化合物を除去するために建設されている。リン酸塩および重金属などの化合物は沈殿によって除去されるまたは活性炭に吸着される。しかし、医薬品およびパーソナルケア製品(PPCP)の除去は、一般に無視されている。後者は化学品類の大きな群を含み、それらの多くは強い生物活性を有する。焦点にあるPPCPの1つの群は内分泌撹乱化合物(EDC)である。
【0003】
環境中のいかなる起源のEDCの遍在についても関心が高まりつつある。実際に、野生生物およびヒトにおける、ホルモンのアンバランス(女性化)ならびに魚および鳥などの野生生物における繁殖成功の変化;ヒトにおける乳がん、精巣がんおよび前立腺がんならびに免疫的および神経的機能障害の発生の増加を含む、好ましくない健康の傾向のいくつかにおいてこれらの化合物が果たし得る役割に関する情報は増え続けている。これらの事象は比較的低いが環境的には意味のある0.1−20ngdm−3の濃度において発生することがある。絶えず低下しつつあるEDCの検出限界のおかげで、環境中におけるこれらの化合物の可用性および影響についてのよりよい理解が可能になっている。
【0004】
例えば、知られている天然および合成のエストロゲンの多くは下水道を経て最終的に水性環境中に入ると予想されるので、水性環境中のEDCの最も可能性の高い源は、都市排水および/または産業排水の排出と共に農業生産からの流出である。したがって、都市下水処理場(WTP)によるこれらの化合物の除去に焦点を合わせることが必要である。これまでの研究の多くは従来のWTPによるEDCの除去能力および逆浸透または光触媒などの進んだ技法に焦点を合わせてきたが、これらはかなりの技術的装置およびコストを要する。
【0005】
活性炭またはベントナイトなどの周知の吸着剤は、微細に分割された状態であるため、除去するべき物質を吸着した後に媒体から分離することが非常に困難であるという一般的欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、EDCのような物質を都市下水のような水から効率的に除去するための低コストの効果的な処理に対する継続的な必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、表面反応させられた天然炭酸カルシウム(SRCC)または表面反応させられた炭酸カルシウムを含み20℃において測定されて6.0を超えるpHを有する水性懸濁液がEDC含有媒体と接触させられる、水性媒体からのEDCを除去するための方法によって解決され、表面反応させられた天然炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムの二酸化炭素および1つまたは複数の酸との反応生成物である。
【0008】
本発明の方法によって処理され得る水は、一般にEDCを含有している任意の水であり、例えば都市下水、産業廃水、飲料水、農業廃水または醸造所もしくは他の飲料産業からの廃水である。
【0009】
本発明の方法において使用される表面反応させられた天然炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムを酸および二酸化炭素と反応させることによって得られ、二酸化炭素は酸処理によってその場において形成されるおよび/または外部供給源から供給される。
【0010】
好ましくは、天然炭酸カルシウムは、大理石、白亜、方解石、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択される。好ましい一実施形態においては、天然炭酸カルシウムは、酸および二酸化炭素を用いる処理の前に粉砕される。粉砕ステップは当業者に知られている粉砕機などの任意の従来の粉砕装置を用いて行われ得る。
【0011】
好ましくは、本発明の方法において使用される表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、20℃において測定されて6.0を超える、好ましくは6.5を超える、より好ましくは7.0を超える、さらにより好ましくは7.5を超えるpHを有する水性懸濁液として調製される。下記に論じる通り、浄化すべき水に前記水性懸濁液を加えることによって、表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、水と接触させられ得る。水性懸濁液のpHは、浄化される水に添加する前に、例えば追加の水を用いる希釈によって変更することも可能である。あるいは、水性懸濁液は乾燥させることができ、水と接触させられる表面反応させられた天然炭酸カルシウムは粉末形態または顆粒の形態である。言い換えれば、酸および二酸化炭素を用いる処理に続くpHの6.0より高い値への上昇は、本明細書に記載されている有益な吸着性を有する表面反応させられた炭酸カルシウムを提供するために必要とされる。
【0012】
水性懸濁液の調製のための好ましい方法においては、粉砕によってなどで微細に分割されたまたはされていない天然炭酸カルシウムが水に懸濁される。好ましくは、スラリーはスラリーの重量に対して1重量%から80重量%、より好ましくは3重量%から60重量%、さらにより好ましくは5重量%から40重量%の範囲内の天然炭酸カルシウムの含有量を有する。
【0013】
次のステップにおいて、天然炭酸カルシウムを含有する水性懸濁液に酸が加えられる。好ましくは、酸は25℃において2.5以下のpKを有する。25℃におけるpKが0以下である場合は、酸は好ましくは硫酸、塩酸、またはこれらの混合物から選択される。25℃におけるpKが0から2.5である場合、酸は好ましくはHSO、HSO、HPO、シュウ酸またはこれらの混合物から選択される。1つまたは複数の酸は濃縮された溶液またはより希釈された溶液として懸濁液に加えられ得る。好ましくは、酸対天然炭酸カルシウムのモル比は0.05から4、より好ましくは0.1から2である。
【0014】
別法として、天然炭酸カルシウムが懸濁される前に酸を水に加えることも可能である。
【0015】
次のステップにおいて、天然炭酸カルシウムは二酸化炭素を用いて処理される。天然炭酸カルシウムの酸処理のために硫酸または塩酸などの強酸が使用される場合は、二酸化炭素は自動的に形成される。代わりにまたは加えて、二酸化炭素は外部の供給源から供給され得る。
【0016】
酸処理および二酸化炭素を用いる処理は同時に行うこともでき、強酸が使用される場合はそうである。最初に、例えば0から2.5の範囲内のpKを有する中程度の強酸を用いて酸処理を行い、次いで外部の供給源から供給される二酸化炭素を用いる処理が行われることも可能である。
【0017】
好ましくは、懸濁液中の気体二酸化炭素の濃度は、容積で、比(懸濁液の容積):(気体COの容積)が1:0.05から1:20、さらにより好ましくは1:0.05から1:5であるようなものである。
【0018】
好ましい一実施形態において、酸処理ステップおよび/または二酸化炭素処理ステップは少なくとも1回、より好ましくは数回繰り返される。
【0019】
酸処理および二酸化炭素処理に続いて、20℃で測定される水性懸濁液のpHは6.0より高い、好ましくは6.5より高い、より好ましくは7.0より高い、さらにより好ましくは7.5より高い値に自然に達し、それによって、表面反応させられた天然炭酸カルシウムを、6.0より高い、好ましくは6.5より高い、より好ましくは7.0より高い、さらにより好ましくは7.5より高いpHを有する水性懸濁液として調製する。水性懸濁液が平衡に至らせられると、pHは7より高くなる。6.0より高いpHは、水性懸濁液の撹拌が十分な時間、好ましくは1から10時間、より好ましくは1から5時間続けられると、塩基の添加を行うことなく調節され得る。
【0020】
あるいは、7より高いpHで生じる平衡に達する前に、水性懸濁液のpHが二酸化炭素処理に続いて塩基を添加することによって6より高い値に高められてもよい。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの任意の常套的な塩基が使用され得る。
【0021】
上記の方法の段階、すなわち酸処理、二酸化炭素を用いる処理および、好ましくは、pH調節を用いて、水性媒体から除去されるEDCに対する良好な吸着性を有する表面反応させられた天然炭酸カルシウムが得られる。
【0022】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムの調製についてのさらなる詳細は国際公開第00/39222号パンフレットおよび米国特許出願公開第2004/0020410(A1)号明細書に開示されており、これらの中では表面反応させられた天然炭酸カルシウムは製紙用充填剤として記載されており、これらの参考文献の内容は本明細書と共に本出願中に含められる。
【0023】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムの調製の好ましい一実施形態において、天然炭酸カルシウムは、ケイ酸塩、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ土類アルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの化合物の存在下において、酸および/または二酸化炭素と反応させられる。好ましくは、少なくとも1種のケイ酸塩は、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、またはアルカリ土類金属ケイ酸塩から選択される。これらの成分は、酸および/または二酸化炭素を加える前に、天然炭酸カルシウムを含む水性懸濁液に加えられ得る。
【0024】
あるいは、ケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩および/または酸化マグネシウム成分は、天然炭酸カルシウムの酸および二酸化炭素との反応が既に開始されている間に、天然炭酸カルシウムの水性懸濁液に加えられ得る。表面反応させられた天然炭酸カルシウムの少なくとも1種のケイ酸塩および/またはシリカおよび/または水酸化アルミニウムおよび/またはアルカリ土類アルミン酸塩成分の存在下における調製についてのさらなる詳細は、国際公開第2004/083316号パンフレットで開示されており、この参考文献の内容は本明細書と共に本出願中に含められる。
【0025】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、分散化剤により場合によってさらに安定化させて、懸濁状態に保持され得る。当業者に知られている常套的な分散化剤が使用され得る。好ましい分散化剤はポリアクリル酸である。
【0026】
あるいは、上記の水性懸濁液は乾燥させて、それによって表面反応させられた天然炭酸カルシウムを顆粒または粉末の形態で得ることができる。
【0027】
好ましい一実施形態において、表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、窒素およびISO 9277によるBET法を使用して測定されて5m/gから200m/g、より好ましくは20m/gから80m/g、さらにより好ましくは30m/gから60m/gの比表面積を有する。
【0028】
さらに、表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、沈降法によって測定されて0.1から50μm、より好ましくは0.5から25μm、さらにより好ましくは1から10μmの平均粒径を有することが好ましい。沈降法は重力場における沈降挙動の解析である。測定はMicromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を用いて行われる。この方法および測定器は当業者に知られており充填剤および顔料の粒子サイズを測定するために広く使用されている。測定はNaの0.1重量%水溶液中で行われる。サンプルは高速撹拌機および超音波を使用して分散された。
【0029】
好ましい一実施形態において、表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、15から200m/gの範囲内の比表面積および0.1から50μmの範囲内の平均粒径を有する。より好ましくは、比表面積は20から80m/gの範囲内であり、平均粒径は0.5から25μmの範囲内である。さらにより好ましくは、比表面積は、30から60m/gの範囲内であり、平均粒径は0.7から7μmの範囲内である。
【0030】
本発明の方法において、表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、EDCを含有している水性媒体に、当業者に知られている任意の従来の供給手段によって加えられる。表面反応させられた天然炭酸カルシウムは、水性懸濁液、例えば上記の懸濁液として加えられ得る。あるいは、これは固形形態、例えば顆粒または粉末またはケーキの形態で加えられ得る。本発明の状況の中では、表面反応させられた天然炭酸カルシウムを含む固定相を提供することも可能であり、浄化される水は前記固定相を通過し、固定相は例えば表面反応させられた天然炭酸カルシウムを含むケーキまたは層の形態で、浄化される水は前記固定相を通過する。これは下記においてより詳細に考察される。
【0031】
好ましい一実施形態において、EDCを含有している水性媒体のpHは、表面反応させられた天然炭酸カルシウムを加える前に、6.0より高い、より好ましくは6.5より高い、さらにより好ましくは7.0より高い値に調節される。
【0032】
表面反応させられた好ましい天然炭酸カルシウムは、例えば撹拌手段によって水性媒体中に懸濁される。表面反応させられた天然炭酸カルシウムの質量は、除去されるEDCの種類に依存する。好ましくは、SRCCはEDCの質量の10から10、好ましくは2・10から10、最も好ましくは10から3・10倍の投入量(重量基準)で加えられる。
【0033】
本発明の方法によって除去され得るEDCは、例えば内因性ホルモン、17β−エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)、テストステロンまたはジヒドロテストステロンなど;植物ホルモンおよびマイコホルモン、β−シトステロール、ゲニステイン、ダイゼインまたはゼラレオンなど;薬剤、17α−エチニルエストラジオール(EE2)、メストラノール(ME)、ジエチルスチルベストロール(DES)など、および工業化学品、4−ノニルフェノール(NP)、4−tert−オクチルフェノール(OP)、ビスフェノール(BPA)、トリブチル錫(TBT)、メチル水銀、フタレート、PAKまたはPCBなどを含む群から選択される。
【0034】
さらに、水性媒体からのEDCの除去は、表面反応させられた炭酸カルシウムが活性炭との組合せで使用されるときに特に効果的であることが見出されている。
【0035】
上記で概要を述べた通り、活性炭は周知の強力な吸着剤ではあるが、吸着は極めてしばしばそれほど速くはなく、また処理される媒体からのこれの除去は媒体中での微細な分割の故に極めて困難であるという欠点がある。
【0036】
今、表面反応させられた炭酸カルシウムは非常に効率的に迅速にEDCを水性媒体から除去するだけではなく、活性炭を単独でも、その表面にEDCなどの既に吸着された物質を有する活性炭でも非常に効率的に吸着することが見出された。
【0037】
したがって、EDCを含有している水性媒体に活性炭が追加して加えられることが本発明の特に好ましい一実施形態である。活性炭は、表面反応させられた炭酸カルシウムの添加と同時に、その前にまたはその後で加えられ得る。
【0038】
表面反応させられた炭酸カルシウムを活性炭と共に使用することは、一方で両方の吸着剤の優れた吸着性によってEDCなどの物質の極めて効率的な吸着をもたらし、他方では加えて活性炭と複合物を形成することによって活性炭の除去可能性を、これが既にこれの表面に吸着された物質を有している場合にも向上させ、表面反応させられた炭酸カルシウムと活性炭との相乗的相互作用によってさらに向上させられたEDCの除去をもたらし、得られる複合物は水性媒体から容易に分離可能である。
【0039】
これについては、活性炭は表面反応させられた天然炭酸カルシウムの添加の前に水性媒体中に加えられることが特に好ましい。この実施形態においては、EDCは基本的にまず活性炭に吸着され、得られた複合物が表面反応させられた炭酸カルシウムによって本質的に続いて吸着されて、活性炭、および活性炭に結合したEDCの向上させられた除去の可能性をもたらす。
【0040】
当技術分野において知られている任意の活性炭が本発明の方法において使用され得る。本発明において有用な活性炭の例は、例えばFlukaから入手可能な商品番号05112(gc用p.a.;粒子サイズ0.3から0.5mm;かさ密度410kg/m)など、Aldrichからの商品番号484156(ガラス状球形粉末、粒子サイズ10−40μm)など、Sigma−Aldrichからの商品番号242276(Darco(登録商標)G−60、粉末、粒子サイズ−100メッシュ)など;Riedel−de Haenからの(商品番号18002、purum、顆粒)、またはLurgi Hydrafin CC8×30(Donau Carbon GmbH & Co.KG、Frankfurt am Main、Germany)またはFlukaから入手可能な活性炭(商品番号05112)である。
【0041】
例えば、活性炭粒子は0.1μmから5mm、好ましくは10μmから2mm、0.1mmから0.5mm、例えば0.3mmの粒子サイズを有し得る。
【0042】
好ましくは、表面反応させられた天然炭酸カルシウムと活性炭との重量比は、1:1から100:1、より好ましくは5:1から80:1、特に10:1から70:1または20:1から50:1、例えば30;1または40:1である。
【0043】
処理される水サンプルに添加物が場合によって加えられ得る。これらはpH調節のための物質およびポリ塩化アルミニウム、塩化鉄または硫酸アルミニウムなどの常套的な凝集剤を含むことがあり得る。
【0044】
好ましい一実施形態において、上記の表面反応をさせられていない天然炭酸カルシウムが同様に加えられる。
【0045】
吸着が完了した後、表面処理された炭酸カルシウム、EDCおよび場合によって活性炭の複合物は、当業者に知られている従来の分離手段、沈降およびろ過などによって水性媒体から分離され得る。
【0046】
別の1つのやり方では、浄化される液体は、好ましくは表面反応させられた天然炭酸カルシウムを含み、液体が重力によっておよび/または真空下においておよび/または圧力下において通過するにつれてサイズ排除によって不純物をフィルター表面上に保持する能力がある透過可能なフィルターを通過させられる。この方法は「表面ろ過」と呼ばれている。
【0047】
深層ろ過として知られているもう1つの好ましい技法においては、様々な直径および構造の多数の曲がりくねった通路を含むろ過助剤が(分子力および/または電気力によって不純物を前記通路内に存在する表面反応させられた天然炭酸カルシウム上に吸着しておよび/またはサイズ排除によって不純物粒子をこれらが大きすぎて全ろ過層の厚さを通過できない場合には保持して)不純物を保持する。
【0048】
深層ろ過および表面ろ過の技法はさらに、表面フィルター上に深層ろ過層を置くことによって組み合わせられ得る。この構成は、そうしなければ表面フィルターの細孔を塞ぐ可能性のある粒子が深層ろ過層中に保持されるという利点を提供する。
【0049】
深層ろ過層を表面フィルター上に導入するための1つの選択肢は、ろ過される液体中に凝集助剤を懸濁させて、この助剤を続いて、これが表面フィルター上に堆積されるときに不純物の全部または部分を凝集させるように、デカンテーションさせ、それによって深層ろ過層を形成する。これは堆積ろ過システムとして知られている。深層ろ過材の最初の層は堆積ろ過を始める前に表面フィルター上に場合によってプレコートされてもよい。
【0050】
上記規定の表面反応させられた炭酸カルシウムのEDCに対する優れた吸着性の故に、水性媒体からのEDCを除去するためのこれの使用が本発明のもう1つの態様である。
【0051】
これに関しては、水性媒体からのEDCを除去するための、上記規定の活性炭と組み合わせた表面反応させられた炭酸カルシウムの使用は特に好ましい一実施形態である。
【0052】
本発明のもう1つの態様は、EDCの水性媒体からを除去するための、上記規定の表面反応させられた天然炭酸カルシウムと上記規定の活性炭の組合せである。
【0053】
最後に、上記規定の表面反応させられた炭酸カルシウムおよびそれに吸着された1種または複数のEDCの複合物が、本発明のもう1つの態様であり、上記規定の活性炭も場合によって含む。
【0054】
以下の図面、実施例および試験は本発明を例示するが、決して本発明を限定することは意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】種々の平衡時間について17α−エチニルエストラジオ−ルのSRCCへの吸着挙動を示すグラフである。
【図2】17α−エチニルエストラジオ−ルのSRCC、活性炭および二酸化マンガンへの吸着についての吸着剤の単位量当たりに吸着される量に関する吸着等温線を示すグラフである。
【図3】17α−エチニルエストラジオ−ルのSRCC、活性炭および二酸化マンガンへの吸着についての吸着剤の単位表面積当たりに吸着される量に関する吸着等温線を示すグラフである。
【図4】SRCCによる活性炭の吸着による濁度の減少を示すグラフである。
【図5】活性炭のSEM画像を示す写真である。
【実施例】
【0056】
A.材料
Omey、France由来の細かく分割された天然炭酸カルシウムの乾燥重量基準で約25重量%の懸濁液を調製した。次いで、こうして形成されたスラリーを、約55℃の温度でリン酸を徐々に加えることによって処理した。
【0057】
得られたスラリーは、ISO標準92777による60m/gのBET比表面積およびMicromeritics(商標)からのSedigraph(商標)5100によって測定されて約7μmのd50を有していた。
【0058】
B.方法
1.17α−エチニルエストラジオールの吸着
Sigma Aldrich (Bornem、Belgium)から供給された17α−エチニルエストラジオール(EE2)(統度>98%)(商品番号E4876)を使用した。
【0059】
a)試験混合物の調製
標準的な実験が以下の手順によって行われた:
固形分含有量25重量%を有するSRCC懸濁液0.4gを、50、100、200、500および1000μg/lの異なる濃度を有する17α−エチニルエストラジオール溶液7mlに加え、25℃で30分間、1時間、2時間および24時間振とうした。
【0060】
b)SRCC表面への17α−エチニルエストラジオールの吸着における平衡濃度の測定
SRCCの表面への吸着に関する17α−エチニルエストラジオールの平衡濃度の測定のためにSRCCの添加後の初期濃度および最終濃度をいくつかの濃度および処理(振とう)時間で測定した。図1から、SRCCの表面への17α−エチニルエストラジオールの吸着は非常に速く、どの濃度においても30分後には変化が観察されなかったことを読み取ることができ、これは濃度に関係なく30分後には吸着平衡に達していることを示している。
【0061】
濃度は周知のHPLC法によって測定した(カラム:Gemini 5um C18/ODS C18;溶出液A:水(45%);溶出液B:アセトニトリル55%;溶出液タイプ:定組成;流量1ml/分;温度25℃;検出:UV−可視吸収205nmにおいて)
【0062】
c)SRCCおよび活性炭に対する17α−エチニルエストラジオールの吸着等温線の決定
17α−エチニルエストラジオールの吸着の効率を決定するために吸着等温線を決定した。
【0063】
平衡時間後に、沈降、ろ過または遠心分離によってSRCCを液相から分離する。上層の液相中の濃度を上記のHPLC法によって決定して平衡濃度を得る。下層の固形物相を上澄み相のデカンテーションによって分離する。このSRCCを一定量の塩酸に溶解させ、上記の方法で濃度を測定してSRCCの単位量当たりに吸着されている量を得る。
【0064】
上記の知見に基づいて、SRCCに対する17α−エチニルエストラジオールの吸着等温線の決定のために、1時間の平衡時間を使用した。
【0065】
さらに、吸着剤としての活性炭に関する吸着等温線を決定した。活性炭に関するデータは16時間後に測定した。使用した活性炭は、市販のLurgi Hydrafin CC 8×30(Donau Carbon GmbH & Co.KG、Frankfurt am Main、Germany)であった。これは0.5から2.5mmの粒子サイズおよび480±50kg/mの密度を有している。
【0066】
図2から、単位量の吸着剤当たりの17α−エチニルエストラジオールのng/gで表した吸着量に関しては、活性炭が17α−エチニルエストラジオールの吸着において優れていることを読み取ることができる。
【0067】
しかし、図3に示されているように、吸着剤の単位表面積当たりの17α−エチニルエストラジオールの吸着量に関しては、SRCCが17α−エチニルエストラジオールの吸着において同じレベルの効率を示すことが分かり、これは活性炭のそれより顕著に高い。
【0068】
これらの知見は、17α−エチニルエストラジオールを吸着するためには重量に関しては活性炭の方が少なくてよいが、SRCCは表面積に関してはより有効であり、すなわちこれはより小さい比表面積を有するが、単位表面積当たりにより多くのエストロゲンを吸着することを示している。
【0069】
さらに、活性炭と一緒でのSRCCの使用は予想外の相乗効果を示すことが分かった。
【0070】
2.活性炭の吸着
説明中で述べた通り、活性炭は水から容易には分離され得ない。しかし、SRCCは活性炭懸濁液を清澄化させる能力があり、活性炭の分離を見事に簡素化する。
【0071】
Flukaから市販されている活性炭(商品番号05112)(gc用p.a.;粒子サイズ0.3から0.5mm;かさ密度410kg/m)およびSRCCに以下の処理を施した:
活性炭0.02gを水30gに加えた。次いで、SRCC 0.2gを加えて、得られた混合物を2分間振とうした。混合物を沈降させた。続いて上相をデカンテーションによって分離した。
【0072】
図4から、上部の液相の濁度を顕著に低減させることができたことを読み取ることができる。純粋な活性炭の濁度は常に1000NTUを上回り、これはこの装置(Hach 2100P Iso Turbidimeter)で測定し得る最大値である。得られた複合物は、例えばろ過によって容易に分離することができる。
【0073】
図5は、活性炭のSEM画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムまたは表面反応させられた炭酸カルシウムを含み20℃において測定されて6.0より高いpHを有する水性懸濁液が内分泌撹乱化合物(EDC)含有媒体と接触させられ、表面反応させられた炭酸カルシウムは天然炭酸カルシウムの二酸化炭素および1種または複数の酸との反応生成物である、水性媒体から内分泌撹乱化合物(EDC)を除去するための方法。
【請求項2】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムが、20℃において測定されて6.5より高い、好ましくは7.0より高い、最も好ましくは7.5のpHを有する水性懸濁液として調製されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
天然炭酸カルシウムが、大理石、方解石、白亜、ドロマイト、石灰石およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
酸が25℃において2.5以下のpKを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸が、塩酸、硫酸、亜硫酸、ヒドロサルフェート、リン酸、シュウ酸およびこれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
天然炭酸カルシウムが、少なくとも1種のケイ酸塩および/またはシリカ、水酸化アルミニウム、アルカリ土類金属アルミン酸塩、酸化マグネシウム、またはこれらの混合物の存在下において、酸および/または二酸化炭素と反応させられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種のケイ酸塩が、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびアルカリ金属ケイ酸塩を含む群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムが、窒素およびISO 9277によるBET法を使用して測定されて5m/gから200m/g、好ましくは20m/gから80m/g、より好ましくは30m/gから60m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムが、沈降法によって測定されて0.1から50μm、好ましくは0.5から25μm、より好ましくは0.8から20μm、特に1から10μmの平均粒径d50を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムの水性懸濁液が、1種または複数の分散化剤で安定化されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムが、粉末形態および/または顆粒形態で使用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
表面反応させられた炭酸カルシウムが、EDCの質量の10から10、好ましくは2・10から10、最も好ましくは10から3・10倍の投入量(重量基準)で加えられることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
水性媒体を含有するピッチのpHが、表面反応させられた天然炭酸カルシウムの添加の前に、>6、より好ましくは>6.5、より好ましくは>7の値に調節されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
EDCが、17β−エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)、テストステロンまたはジヒドロテストステロンなどの内因性ホルモン;β−シトステロール、ゲニステイン、ダイゼインまたはゼラレオンなどの植物ホルモンおよびマイコホルモン;17α−エチニルエストラジオール(EE2)、メストラノール(ME)、ジエチルスチルベストロール(DES)などの薬剤、および4−ノニルフェノール(NP)、4−tert−オクチルフェノール(OP)、ビスフェノールA(BPA)、トリブチル錫(TBT)、メチル水銀、フタレート、PAKまたはPCBなどの工業化学品を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
活性炭が、さらに水性媒体に加えられることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
活性炭が、表面反応させられた炭酸カルシウムの添加の前に、水性媒体に加えられることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
活性炭粒子が、0.1μmから5mm、好ましくは10μmから2mm、0.1mmから0.5mm、例えば0.3mmの粒子サイズを有することを特徴とする、請求項15または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
表面反応させられた天然炭酸カルシウム対活性炭の重量比が、1:1から100:1、より好ましくは5:1から80:1、特に10:1から70:1または20:1から50:1、例えば30:1または40:1であることを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から14の一項に記載の表面反応させられた天然炭酸カルシウムの、水性媒体からEDCを除去するための使用。
【請求項20】
表面反応させられた天然炭酸カルシウムが、請求項15から18の一項に記載の活性炭と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
水性媒体からEDCを除去するための、請求項1から14のいずれか一項に記載の表面反応させられた天然炭酸カルシウムおよび請求項15から18のいずれか一項に記載の活性炭の組合せ。
【請求項22】
請求項1から14のいずれか一項に記載の表面反応させられた天然炭酸カルシウムと水性媒体から除去された1種または複数のEDCとの複合物。
【請求項23】
請求項15から18のいずれか一項に記載の活性炭をさらに含む、請求項22に記載の複合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−521296(P2010−521296A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554022(P2009−554022)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/053333
【国際公開番号】WO2008/113838
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】