説明

内径測定装置

【課題】種々の範囲の内径を直接測定することができる高精度且つコンパクトな内径測定装置を提供する。
【解決手段】孔の内径を測定する内径測定装置において、前記孔に挿入するヘッドを、従来技術に係る内径測定装置のようにテーパ部材の軸方向における進退移動によらず、ガイド溝を備える回転部材3の回転によって前記孔の直径方向に移動可能な複数のガイドによって構成し、これら複数のガイドの少なくとも一部の前記孔の内壁に対向する側の端部に接触子1を配設し、且つ前記複数のガイドの変位及び前記接触子1の変位から前記孔の内径を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の孔の内径を測定する内径測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野においては、円筒状に形成された孔の内径を測定する測定装置(以降、「内径測定装置」とも称する)として様々の機構が提案されている。一般に、内径測定装置は、測定子が取り付けられた円筒状のガイド部材を孔に挿入し、当該測定子を当該孔の内壁に接触させることにより、当該孔の内径を測定する。
【0003】
従来の内径測定装置においては、ガイド部材の大きさが固定されており、ガイド部材の大きさが測定対象となる孔の内径に適合しない場合(測定子を孔の内壁に接触させることができない場合)、ガイド部材又は測定ヘッド(ガイド部材、当該ガイド部材を支持する部材等)全体を交換して、ガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる必要があった。従って、次に測定しようとする孔の内径がそれまで測定していた孔の内径と異なる場合には、次の孔の測定を行う前にガイド部材や測定ヘッドを交換する作業が必要となり、測定作業の煩雑化や作業効率の低下を招く要因となっていた。
【0004】
そこで、当該技術分野においては、上記問題を解消すべく、本体と、前記本体により軸方向に進退移動可能に支持される移動軸と、前記移動軸の軸方向へテーパ状に形成される外周面を有し、前記移動軸に設けられるテーパーコーンと、前記本体により回動可能に支持されるとともに、前記移動軸に沿って配置される可変ガイドと、前記可変ガイドに取り付けられ、前記可変ガイドと一体的に回動する測定子と、を具備し、前記可変ガイドを孔に挿入し、前記測定子を前記孔の内壁に接触させることにより、前記孔の内径を測定可能であり、前記移動軸の進退移動により前記可変ガイドの先端部が前記移動軸に対して近接離間する方向へ回動する内径測定装置であって、前記可変ガイドにより回動可能に支持されるとともに、前記テーパコーンの外周面に接触するベアリングを具備する内径測定装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、上記のようにテーパコーンとの接触によって可変ガイドを動かしてガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる機構は、可変ガイドの可変量及び可変倍率をテーパ部材の大きさ及びテーパ角によって変更する必要がある。このため、かかるテーパ部材が内部に組み込まれた内径測定装置は、どうしても複雑且つ大きくならざるを得ない。このように複雑且つ大きな内径測定装置は、例えば、測定対象となる孔の中に内径測定装置を入れた状態で被測定内径の円周方向に内径測定装置を回すことによって孔の真円度を測定することが困難である等、使い勝手が悪い。
【0006】
また、可変ガイドの可変量及び可変倍率の種々の範囲に対応しようとすると、それぞれの可変量及び可変倍率に応じたテーパ部材が内部に組み込まれた内径測定装置をそれぞれ用意する必要がある。従って、上記のようにテーパコーンとの接触によって可変ガイドを動かしてガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる機構は、種々の範囲の内径を測定しようとするには設備導入費用が嵩む等、コスト面での不都合も大きい。
【0007】
更に、上記のようにテーパコーンとの接触によって可変ガイドを動かしてガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる機構においては、可変ガイドの支点や可変ガイドとテーパ部材との接触部分においてベアリングが多用されている。これにより、本来であれば、上記のようにテーパコーンが設けられた移動軸を中心として対称的に配置されるべき可変ガイドの支点の位置がずれ易い。斯くして可変ガイドの支点の位置がずれると、可変ガイドの偏心が発生し、測定対象となる孔の直径を測定し得る箇所に測定子を正しく配置することが困難となる場合がある。当然のことながら、かかる場合においては、測定対象となる孔の直径を正しく測定することができない。
【0008】
加えて、上記のようにテーパコーンとの接触によって可変ガイドを動かしてガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる機構においては、可変ガイドに組み込まれた測定子が可変ガイドの支点を中心とした円弧状の軌跡に沿って動く。このため、測定子の変位もまた円弧状の軌跡に沿ったものとなるので、測定対象となる孔の内径を高い精度で測定することは難しい。
【0009】
しかも、実際に内径を測定する際には、内径測定装置の可変ガイドの開き(厳密には、可変ガイドの先端部に配設された測定子の最外郭の間の距離)が測定対象となる孔の内径(被測定内径)よりも若干大きい基準内径と等しくなるように(作業者が)予め設定しておき、当該内径測定装置を孔に入れた際に測定子が押し戻される変位量を検出することによって、被測定内径を測定する。つまり、当該内径測定装置自体は、被測定内径の基準内径からの差分を検出する装置であって、同基準内径は何等かの手段によって別途測定し、設定しておく必要がある。
【0010】
そこで、当該技術分野においては、上記問題を解消すべく、ヘッドより側方へ突出した測定子をワークの内壁面に当接して内径を測定する内径測定器において、前記ヘッドの周壁を独立して径方向へ移動自在な複数の可変ガイドで構成し、各可変ガイドの基端部より側方へ延出した延出部にガイドピンを立設する一方、各可変ガイドの前記延出部を覆うセレクタを、前記ヘッドを中心に回転自在に設け、前記各延出部に対向する前記セレクタの対向面に、前記各ガイドピンをそれぞれ案内するガイド溝を設けるとともに、各ガイド溝を前記ヘッドを中心とした螺線状に形成したことを特徴とする内径測定器が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0011】
上記内径測定器においては、セレクタを回動することにより、各可変ガイドが構成するヘッドの直径を任意に変更することができる。従って、外径寸法が固定された構造上、測定するワーク毎に内径測定器を用意しなければならなかった従来技術に係る内径測定器とは異なり、1つの内径測定器で内径の異なる種々のワークに対応することができる。しかも、上記内径測定器においては、各可変ガイドが構成するヘッドの直径を任意に変更するに当たり、前述の内径測定装置のようにテーパ部材を用いるのではなく、各可変ガイドの延出部に対向するセレクタの対向面に設けられたガイド溝によって、各可変ガイドの延出部に立設されたガイドピンを案内するように構成されている。即ち、上記内径測定器においては、セレクタに設けられたガイド溝の形状により可変ガイドの可変量及び可変倍率を任意に変更することができるので、テーパ部材を用いる前述の内径測定装置と比較して、よりコンパクトな内径測定器を提供することができる。
【0012】
しかしながら、上記内径測定器においては、可変ガイドと測定子とが独立に動くように構成されている。従って、測定対象となる孔の内径を測定するには、内径測定に先立ち、可変ガイド及び測定子のそれぞれの間隔を、測定対象となる孔の内径(被測定内径)に合わせて予め設定しておく必要がある。
【0013】
即ち、上記内径測定器についても、実際に内径を測定する際には、事前に、複数の可変ガイドによって構成されるヘッドの外径が測定対象となる孔の内径(被測定内径)よりも若干小さくなるように可変ガイドの間隙を調節し、且つヘッドから突出する測定子の間の距離が被測定内径よりも若干大きくなるように調節しておく必要がある。つまり、当該内径測定器もまた、予め調節された測定子の間の距離と被測定内径との差分を検出する装置であって、測定子の間の距離は何等かの手段によって別途測定し、設定しておく必要があるという点において、従前の外径測定装置と同様である。
【0014】
従って、当該技術分野においては、従来技術に係る内径測定装置のように可変ガイドや測定子の間隔を事前に調節すること無く、測定対象となる孔の内径を一連の操作によって直接測定することができ、且つ種々の範囲の内径に対応可能な、コンパクトな内径測定装置に対する継続的な要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−019706号公報
【特許文献2】特開2005−106583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のように、当該技術分野においては、従来技術に係る内径測定装置のように可変ガイドや測定子の間隔を事前に調節すること無く、測定対象となる孔の内径を一連の操作によって直接測定することができ、且つ種々の範囲の内径に対応可能な、コンパクトな内径測定装置に対する継続的な要求が存在する。従って、本発明の1つの目的は、種々の範囲の内径を直接測定することができる高精度且つコンパクトな内径測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の上記目的は、
可変ガイドを孔に挿入し、接触子を前記孔の内壁に接触させて、前記孔の内径を測定する内径測定装置であって、
前記内径測定装置が、
本体と、
軸を中心とした回転が可能な状態で前記本体に支持されたシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記シャフトの回転と連動して回転する回転部材と、
前記回転部材に設けられたガイド溝と、
前記シャフトの軸と直交する方向である径方向に移動可能な複数の可変ガイドと、
前記可変ガイドの変位を検出又は推定する可変ガイド変位検出手段と、
前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部に設けられた接触子と、
前記接触子の変位を検出又は推定する接触子変位検出手段と、
を備えること、並びに
前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれて径方向に移動すること、
前記接触子が、前記孔の内壁との接触により径方向に移動すること、及び
前記可変ガイド変位検出手段によって検出又は推定される前記可変ガイドの変位と、前記接触子変位検出手段によって検出又は推定される前記接触子の変位と、に基づいて、前記孔の内径が求められること、
を特徴とする、内径測定装置によって達成される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る内径測定装置によれば、従来技術に係る内径測定装置のように可変ガイドや測定子の間隔を事前に調節すること無く、測定対象となる孔の内径を一連の操作によって直接測定することができ、且つ種々の範囲の内径に対応可能な、コンパクトな内径測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置の縦断面図である。
【図2】本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置の底面図である。
【図3】本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置の回転つまみ部分の正面図である。
【図4】本発明の複数の実施態様に係る内径測定装置の回転部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前述のように、本発明は、種々の範囲の内径を直接測定することができる高精度且つコンパクトな内径測定装置を提供することを1つの目的とする。
【0021】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究の結果、孔の内径を測定する内径測定装置において、前記孔に挿入するヘッドを、従来技術に係る内径測定装置のようにテーパ部材の軸方向における進退移動によらず、ガイド溝を備える回転部材の回転によって前記孔の直径方向に移動可能な複数のガイドによって構成し、これら複数のガイドの少なくとも一部の前記孔の内壁に対向する側の端部に接触子を配設し、且つ前記複数のガイドの変位及び前記接触子の変位から前記孔の内径を求めることにより、種々の範囲の内径を直接測定することができる高精度且つコンパクトな内径測定装置を提供することができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
【0022】
即ち、本発明の第1実施態様は、
可変ガイドを孔に挿入し、接触子を前記孔の内壁に接触させて、前記孔の内径を測定する内径測定装置であって、
前記内径測定装置が、
本体と、
軸を中心とした回転が可能な状態で前記本体に支持されたシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記シャフトの回転と連動して回転する回転部材と、
前記回転部材に設けられたガイド溝と、
前記シャフトの軸と直交する方向である径方向に移動可能な複数の可変ガイドと、
前記可変ガイドの変位を検出又は推定する可変ガイド変位検出手段と、
前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部に設けられた接触子と、
前記接触子の変位を検出又は推定する接触子変位検出手段と、
を備えること、並びに
前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれて径方向に移動すること、
前記接触子が、前記孔の内壁との接触により径方向に移動すること、及び
前記可変ガイド変位検出手段によって検出又は推定される前記可変ガイドの変位と、前記接触子変位検出手段によって検出又は推定される前記接触子の変位と、に基づいて、前記孔の内径が求められること、
を特徴とする、内径測定装置である。
【0023】
上記孔は、例えば、何等かの加工処理によって部材に形成された円柱状の孔や、円筒状の形状に成型された部材の孔等、種々の孔を指し、少なくとも上記内径測定装置によって内径を測定しようとする領域においては、円柱状の空隙を有する空間を指す。かかる孔の内径を測定しようとする場合、前述のように、測定子が取り付けられた円筒状のガイド部材を当該孔に挿入し、当該測定子を当該孔の内壁に接触させることにより、当該孔の内径を測定する内径測定装置を使用するのが一般的である。
【0024】
しかしながら、前述のように、テーパコーンとの接触によって可変ガイドを動かしてガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる機構を有する、従来技術に係る内径測定装置においては、可変ガイドの可変量及び可変倍率はテーパコーンの形状によって定まる。従って、種々の範囲の内径に対応するには、それぞれの内径の範囲に応じた内径測定装置をそれぞれ用意する必要があり、コスト面での不都合も大きい。
【0025】
また、上記機構を有する内径測定装置は、構造上の理由等から、どうしても複雑且つ大型にならざるを得ず、例えば、測定対象となる孔の中に内径測定装置を入れた状態で被測定内径の円周方向に内径測定装置を回すことによって孔の真円度を測定することが困難である等、使い勝手が悪い。
【0026】
更に、上記機構を有する内径測定装置においては、可変ガイドの支点のずれにより可変ガイドの偏心が発生し易い、可変ガイドに組み込まれた測定子が可変ガイドの支点を中心とした円弧状の軌跡に沿って動く等の理由から、測定対象となる孔の内径を高い精度で測定することは難しい。
【0027】
加えて、上記機構を有する内径測定装置のみならず、他の機構を有する内径測定装置においても、従来技術に係る内径測定装置は、測定対象となる孔の内径(被測定内径)を直接検出するものではなく、内径測定装置において基準となる内径(基準内径)を予め設定しておき、被測定内径の基準内径からの差分を検出する装置であるものが多い。この場合は、基準内径を何等かの手段によって別途測定し、設定しておく必要がある。
【0028】
しかしながら、本実施態様に係る内径測定装置においては、測定対象となる孔に挿入するヘッドを、ガイド溝を備える回転部材の回転によって前記孔の直径方向に移動可能な複数のガイドによって構成している。かかる構成により、本実施態様に係る内径測定装置は、テーパ部材を利用する従来技術に係る内径測定装置と比較して、より小型化することができる。また、本実施態様に係る内径測定装置においては、前記複数のガイドの少なくとも一部の前記孔の内壁に対向する側の端部に接触子を配設し、且つ前記複数のガイドの変位及び前記接触子の変位から前記孔の内径を求めることにより、種々の範囲の内径を直接測定することができる。更に、本実施態様に係る内径測定装置においては、可変ガイドの支点のずれが発生せず、また接触子の移動が直線的であることから、従来技術に係る内径測定装置と比較して、より高精度な内径測定を行うことができる。
【0029】
かかる特徴を有する本実施態様に係る内径測定装置につき、以下に詳細に説明する。上述のように、本実施態様に係る内径測定装置は、
可変ガイドを孔に挿入し、接触子を前記孔の内壁に接触させて、前記孔の内径を測定する内径測定装置であって、
前記内径測定装置が、
本体と、
軸を中心とした回転が可能な状態で前記本体に支持されたシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記シャフトの回転と連動して回転する回転部材と、
前記回転部材に設けられたガイド溝と、
前記シャフトの軸と直交する方向である径方向に移動可能な複数の可変ガイドと、
前記可変ガイドの変位を検出又は推定する可変ガイド変位検出手段と、
前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部に設けられた接触子と、
前記接触子の変位を検出又は推定する接触子変位検出手段と、
を備える。
【0030】
本実施態様に係る内径測定装置は、上述のような孔に可変ガイドを挿入し、接触子を前記孔の内壁に接触させて、前記孔の内径を測定する内径測定装置である。当該内径測定装置の本体には、シャフトが、その軸を中心とした回転が可能な状態で支持されている。当該シャフトの形状は、その軸を中心とした回転が可能な状態で本体に支持され得る限りにおいて、特に限定されるものではないが、例えば、略円柱状とすることができる。
【0031】
上記シャフトには、回転部材が連結されている。当該回転部材は、上記シャフトの回転と連動して回転するように構成されている。当該回転部材を上記シャフトの回転と連動して回転させる機構は、特に限定されるものではないが、例えば、歯車等の機構によって上記シャフトの回転を当該回転部材に伝達することができる。当該回転部材の形状もまた、特に限定されるものではないが、例えば、上記シャフトの軸(回転軸)に直交する主平面を有する略平板状(例えば、円盤状)の形状を有することができる。
【0032】
上記回転部材には、当該回転部材の回転により可変ガイドを上記シャフトの回転軸と直交する方向である径方向に移動させるためのガイド溝が設けられる。上記回転部材の主平面内における当該ガイド溝の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、上記回転部材の主平面内における上記シャフトの回転軸に直交する点(以降、「回転部材の中心」とも称する)を中心とする渦巻き状(若しくは螺旋状)又は放射状等の形状に形成されることが望ましい。また、当該ガイド溝の深さ(上記シャフトの回転軸に平行な方向における寸法)は、上記回転部材の回転により可変ガイドを導いて径方向に移動させることが可能である限り、特に限定されるものではない。従って、当該ガイド溝の深さは、上記回転部材の厚み(上記シャフトの回転軸に平行な方向における寸法)と等しくてもよい(即ち、当該ガイド溝が上記回転部材を貫通する貫通孔となっていてもよい)。
【0033】
尚、上記ガイド溝は、上記のように、上記回転部材の回転により可変ガイドを導いて径方向に移動させる。即ち、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率は、上記ガイド溝の形状に影響される。具体的には、例えば、上記ガイド溝が渦巻き状の形状を呈する場合、渦巻き状の形状が緩やかである程(即ち、ガイド溝の傾斜が径方向となす角度が直角に近い程)、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率は相対的に小さくなり、渦巻き状の形状が急峻である程(即ち、ガイド溝の傾斜が径方向に近い程)、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率は相対的に大きくなる。
【0034】
また、上記回転部材の回転による可変ガイドの可動範囲も、上記ガイド溝の形状に影響される。具体的には、例えば、上記ガイド溝の内側(即ち、回転部材の中心に近い方)の端部と回転部材の中心との間の距離と、上記ガイド溝の外側(即ち、回転部材の中心から遠い方)の端部と回転部材の中心との間の距離と、の差(以降、「ガイド溝の径方向における広がり」とも称する)が大きい程、上記回転部材の回転による可変ガイドの可動範囲が大きくなる。例えば、上記ガイド溝が渦巻き状の形状を呈し、且つ渦巻き状の形状の内側の端部と回転部材の中心との距離が一定である場合、上記ガイド溝が呈する渦巻き状の形状が大きい程(即ち、渦巻き状の形状の外側の端部と回転部材の中心との距離が大きい程)、上記回転部材の回転による可変ガイドの変位の最大値が大きくなる。
【0035】
従って、本実施態様に係る内径測定装置においては、上記回転部材自体の大きさや形状を変更すること無く、上記回転部材に設けられるガイド溝の形状(例えば、ガイド溝の傾斜やガイド溝の径方向における広がり)を変更することにより、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率や可変ガイドの可動範囲を変更することができる。その結果、本実施態様に係る内径測定装置においては、上記回転部材に設けられるガイド溝の形状を変更することにより、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定することが可能となる。
【0036】
上記複数の可変ガイドは、前記シャフトの回転軸と直交する方向である径方向に移動できるように構成されている。本実施態様に係る内径測定装置においては、測定対象となる孔の内径を測定する際には、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行になる角度で、複数の可動ガイドが前記孔に挿入される。故に、前記シャフトの回転軸と直交する方向である径方向は、内計測定時には、前記孔の直径の方向に一致する。本実施態様に係る内径測定装置において、上記複数の可変ガイドは、かかる方向のみに移動可能となるように構成される。
【0037】
上記複数の可変ガイドを前記シャフトの回転軸と直交する方向である径方向に移動可能とする具体的な機構は、特定の構成に限定されるものではない。例えば、上記複数の可変ガイドは、可変ガイド自体又は可変ガイドに設けられたレール等の突起物が上記径方向に延在する溝を備える部材の当該溝に嵌合し、当該溝内で摺動するように構成してもよい。あるいは、上記複数の可変ガイドに上記径方向に延在する溝を設け、当該溝に嵌合する上記径方向に延在するレール等の突起物を備える部材と嵌合させることにより、上記複数の可変ガイドを前記径方向に摺動可能に構成することができる。
【0038】
複数の可変ガイドは、上記のように、前記シャフトの回転軸と直交する方向である径方向に移動することができ、且つ、前述のように、前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれるように構成される。これにより、複数の可変ガイドは、前記回転部材の回転によって、径方向に移動することができる。かかる機構は、従来技術に係る内径測定装が備える、テーパコーンとの接触によって可変ガイドを動かしてガイド部材の大きさを測定対象となる孔の内径に適合させる機構と比較して、より小さく構成することができ、且つ上記ガイド溝の形状を変更することにより、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定することが可能である。
【0039】
上記接触子は、前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部に設けられる。当該接触子は、前記孔の内壁との接触により径方向に移動することができるように構成される。より具体的には、当該接触子は、例えば、スプリング等の弾性体によって付勢され、当該接触子の先端と前記孔の内壁との距離に応じて径方向に移動して、当該接触子の先端と前記孔の内壁との接触を維持することができるように構成される。尚、当該接触子の形状や構成は特に限定されるものではないが、高精度な内径測定を行う観点からは、当該接触子の先端部分は球状であることが望ましい。
【0040】
また、本実施態様に係る内径測定装置を構成する各部材は、当該技術分野において周知の種々の素材を用いて構成することができるが、測定時や保管時に受ける応力や衝撃等によって容易に変形したり損傷したりしない寸法安定性や強度を備える材質で構成されることが望ましいことは言うまでも無い。更に、測定対象となる孔の内壁と接触する部材(例えば、可変ガイドや接触子)については特に、測定対象となる孔備える物品を傷付け難い材質であることが望ましい。
【0041】
本実施態様に係る内径測定装置は、上述のように、前記可変ガイドの変位を検出又は推定する可変ガイド変位検出手段を備える。当該可変ガイド変位検出手段は、前記可変ガイドの前記径方向における変位を検出又は推定することが可能である限り、特に限定されるものではなく、前記可変ガイドの変位を直接的に検出するものであってもよい。あるいは、当該可変ガイド変位検出手段は、例えば、前記シャフト、前記回転部材、又は前記シャフトの回転を前記回転部材に伝達して前記シャフトの回転と連動して前記回転部材を回転させる機構(例えば、歯車等)の回転数等を検出し、当該検出結果から前記可変ガイドの変位を間接的に検出(推定)するものであってもよい。
【0042】
具体的には、例えば、上記検出結果から前記回転部材の回転角度を特定し、当該特定された回転角度及び前記回転部材に設けられたガイド溝の形状等から、前記可変ガイドの変位を幾何学的に算出することができる。尚、前記シャフト、前記回転部材、又は前記シャフトの回転を前記回転部材に伝達して前記シャフトの回転と連動して前記回転部材を回転させる機構(例えば、歯車等)の回転数等を検出する手段の具体例としては、例えば、(ロータリー)エンコーダ等を挙げることができる。
【0043】
また、本実施態様に係る内径測定装置は、上述のように、前記接触子の変位を検出又は推定する接触子変位検出手段を備える。当該接触子変位検出手段は、前記接触子の前記径方向における変位を検出又は推定することが可能である限り、特に限定されるものではなく、前記接触子の変位を直接的に検出するものであってもよい。あるいは、当該接触子変位検出手段は、例えば、前記接触子の変位と連動して移動する別個の部材の変位等を検出し、当該検出結果から前記接触子の変位を間接的に検出(推定)するものであってもよい。尚、前記接触子の変位と連動して移動する別個の部材の変位等を検出する手段の具体例としては、例えば、差動トランス等を挙げることができる。
【0044】
本実施態様に係る内径測定装置においては、前記可変ガイド変位検出手段によって検出又は推定される前記可変ガイドの(相対的に大レンジの)変位と、前記接触子変位検出手段によって検出又は推定される前記接触子の(相対的に小レンジの)変位と、に基づいて、前記孔の内径が求められる。具体的には、例えば、前記孔の内径を算出する計算手段(例えば、マイクロコンピュータ等)により、前記可変ガイド変位検出手段及び前記接触子変位検出手段から送出される検出信号から算出することができる。斯くして得られた内径は、例えば、ディスプレイ等の表示手段によって測定者に表示する等して、出力することができる。
【0045】
即ち、本実施態様に係る内径測定装置においては、従来技術に係る内径測定装置のように、他の測定器(例えば、マイクロメータ等)によって基準となる内径(基準内径)を予め設定しておき、被測定内径の基準内径からの差分を検出するのではなく、以下に詳述する一連の測定操作により、測定対象となる孔の内径(被測定内径)を直接検出することができる。
【0046】
本実施態様に係る内径測定装置による内径測定方法について以下に説明する。先ず、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドを、測定対象となる孔に挿入する。次に、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記シャフトを回転させて、当該孔の内壁に前記複数の可変ガイドを接触させる。かかる操作により、前記可変ガイド変位検出手段及び前記接触子変位検出手段によって、前記可変ガイドの(相対的に大レンジの)変位及び前記接触子の(相対的に小レンジの)変位が、それぞれ検出又は推定される。斯くして得られた前記可変ガイドの(相対的に大レンジの)変位と前記接触子の(相対的に小レンジの)変位とに基づいて、測定対象となる孔の内径が求められる。
【0047】
また、前述のように、本実施態様に係る内径測定装置は、テーパ部材を利用する従来技術に係る内径測定装置と比較して、より小型化することができる。従って、本実施態様に係る内径測定装置においては、測定対象となる孔の中に上記複数の可変ガイドを入れた状態で被測定内径の円周方向に内径測定装置を回すことによって、孔の真円度を容易に且つ正確に測定することができる。
【0048】
尚、本実施態様に係る内径測定装置もまた、従来技術に係る内径測定装置と同様に、例えば、リングマスタ等を利用して較正することができる。具体的には、先ず、シャフトを回転させて、例えば、シャフトを回転させるための回転つまみに設けられた目盛り等によって示される大凡の内径の値が、基準となるリングマスタの内径よりも若干(具体的には、前記接触子の最大変位よりも十分に小さい変位(例えば、100μm)だけ)大きい値となるように、複数の可変ガイドの変位を調節する。斯くして可変ガイドの変位が調節された状態を、例えば、セットスクリューやV溝を有するインデックスを使用して、シャフトが回転しないように固定する。このように調節された本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドを上記リングマスタに挿入し、リングマスタの内径を検出する。本実施態様に係る内径測定装置によって検出されたリングマスタの内径の値がリングマスタの公称値と異なる場合は、本実施態様に係る内径測定装置によって検出されるリングマスタの内径の値を調節(オフセット)して、リングマスタの公称値と一致させる。
【0049】
尚、上記において説明した本実施態様に係る内径測定装置の較正方法は、あくまでも一例であり、上記方法に限定することを意図するものではない。また、本実施態様に係る内径測定装置の較正は、実際の内径測定を行う度に実施しても、所定の回数の内径測定を行った際に実施しても、又は測定対象となる孔の内径が変更される機会に実施してもよい。
【0050】
ところで、測定対象となる孔の内径(被測定内径)を正確に測定するには、前述のように、可変ガイドの偏心を抑制し、被測定内径を正しく測定し得る箇所に接触子を正しく配置することが重要である。従って、本実施態様に係る内径測定装置においても、複数の可変ガイドが、シャフトの回転軸を中心として、常に対称的に配置されるべきである。このためには、前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転に従って、個別に移動するのではなく、同期して径方向に移動することがより望ましい。
【0051】
故に、本発明の第2実施態様は、
本発明の前記第1実施態様に係る内径測定装置であって、
前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により同期して径方向に移動すること、
を更なる特徴とする、内径測定装置である。
【0052】
本実施態様に係る内径測定装置においては、上記のように、前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により同期して径方向に移動するので、複数の可変ガイドがシャフトの回転軸を中心として常に対称的に配置される。これにより、複数の可変ガイドの、測定対象となる孔の内壁に対向する側の端部の外接円の中心を、シャフトの回転軸と常に一致させることができる。即ち、本実施態様に係る内径測定装置によれば、可変ガイドの偏心をより有効に抑制することができ、被測定内径をより正確に測定することができる。
【0053】
前述のように、複数の可変ガイドは、前記シャフトの回転軸と直交する方向である径方向に移動することができ、且つ、前述のように、前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれるように構成される。これにより、複数の可変ガイドは、前記回転部材の回転によって、径方向に移動することができる。複数の可変ガイドが前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれるようにする機構としては、特定の構成に限定されるものではない。例えば、何等かの部材(又は当該部材に設けられた突起部)を前記ガイド溝に嵌合させて同ガイド溝内で摺動させることにより当該部材を移動させ、当該部材の動きを可変ガイドに伝達するようにしてもよい。
【0054】
あるいは、複数の可変ガイドに突起部を設け、当該突起部を前記ガイド溝に嵌合させて同ガイド溝内で摺動させることにより、複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により前記ガイド溝に導かれて移動するようにしてもよい。製造コスト、故障の発生頻度、保全工数等の観点から、かかる機構は単純な構造を有することが望ましい。従って、複数の可変ガイドが前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれるようにする機構としては、後者の機構が望ましい。
【0055】
従って、本発明の第3実施態様は、
本発明の前記第1実施態様又は前記第2実施態様の何れかに係る内径測定装置であって、
前記複数の可変ガイドが突起部を備えること、及び
前記突起部が、前記回転部材に設けられた前記ガイド溝内に嵌合され、前記回転部材の回転に伴って前記ガイド溝内を摺動することにより、前記複数の可変ガイドが前記回転部材の回転により前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれて径方向に移動すること、
を更なる特徴とする、内径測定装置である。
【0056】
本実施態様に係る内径測定装置においては、上記のように、単純な構造によって、前記複数の可変ガイドを、前記回転部材の回転に伴い、前記回転部材に設けられたガイド溝に沿って移動させることにより、径方向に移動させることができる。かかる構成は、上述のように、製造コスト、故障の発生頻度、保全工数等の観点から望ましい。加えて、かかる構成は、構造が単純で、構成部材も少ないので、本実施態様に係る内径測定装置を、テーパ部材を利用する従来技術に係る内径測定装置と比べて、より小型化することができる。尚、複数の可変ガイドに設けられる上記突起部としては、例えば、摺動ピン、摺動ブロック等、当該技術分野において広く用いられる部材を用いることができる。
【0057】
ところで、測定対象となる孔の内径(被測定内径)を正確に測定するには、前述のように、可変ガイドの偏心を抑制し、被測定内径を正しく測定し得る箇所に接触子を正しく配置することが重要である。このためには、本発明に係る内径測定装置は、測定対象となる孔の内径(被測定内径)を測定する際には、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行になる角度で、複数の可動ガイドが前記孔に挿入されることが必要である。
【0058】
しかしながら、実際には、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行であることを、例えば、目視によって確認しつつ、かかる角度で本発明に係る内径測定装置の可動ガイドを前記孔に挿入することは難しい場合がある。即ち、本発明に係る内径測定装置は、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行になる角度で、複数の可動ガイドを前記孔に挿入することをより容易なものとする機構を備えることがより望ましい。
【0059】
かかる要請から、本発明の第4実施態様は、
本発明の前記第1実施態様又は前記第3実施態様の何れかに係る内径測定装置であって、
前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の形状が、前記シャフトの軸と平行な線上にある異なる位置において、前記孔の内壁と接触することができる形状を有すること、
を更なる特徴とする、内径測定装置である。
【0060】
上記のように、本実施態様に係る内径測定装置においては、前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の形状が、前記シャフトの軸と平行な線上にある異なる位置において、前記孔の内壁と接触することができる形状を有する。これにより、本実施態様に係る内径測定装置においては、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行になる角度でしか、複数の可動ガイドを前記孔に挿入することができない。結果として、本実施態様に係る内径測定装置においては、被測定内径を正しく測定し得る箇所に接触子を正しく配置することをより容易に達成することができる。
【0061】
尚、前記シャフトの軸と平行な線上にある異なる位置において前記孔の内壁と接触することができる形状は、特定の形状に限定されるものではないが、本実施態様の理解を助けることを目的として、以下に幾つかの例を挙げる。本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部は、例えば、一対の辺が前記シャフトの回転軸と平行となっている四辺形の面を呈していてもよい。この場合、上記一対の辺が測定対象となる(円柱状の)孔の中心軸と平行になる角度でのみ、前記複数の可変ガイドを当該孔に挿入することができる。
【0062】
結果として、本実施態様に係る内径測定装置においては、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行になる角度で複数の可動ガイドを前記孔に容易に挿入することができる。また、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部においては、かかる四辺形の面が前記シャフトの回転軸と平行な線上に複数配置され、これら複数の四辺形の前記一対の辺が被測定内径を測定する際に同時に前記孔の内壁に接するように構成されていてもよい。
【0063】
あるいは、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部は、例えば、円柱状の部材をその中心軸(頂面及び底面の中心を通る線)に沿って切断した形状(所謂「蒲鉾状」の形状)を、その中心軸が前記シャフトの回転軸と平行となる方向で、且つその切断面をシャフトの中心軸側に向けて(円柱の側面であった曲面を測定対象となる孔の内壁に向けて)配置したような形状を呈していてもよい。この場合、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部が、上記曲面上の上記中心軸に平行な線において、測定対象となる孔の内壁に接触する角度、即ち、ことになる。上記曲面上の上記中心軸に平行な線が測定対象となる(円柱状の)孔の中心軸と平行になる角度でのみ、前記複数の可変ガイドを当該孔に挿入することができる。
【0064】
結果として、本実施態様に係る内径測定装置においては、前記シャフトの回転軸と前記孔の中心軸とが平行になる角度で複数の可動ガイドを前記孔に容易に挿入することができる。また、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部においては、かかる蒲鉾状の形状が前記シャフトの回転軸と平行な線上に複数配置され、これら複数の蒲鉾状の形状の上記曲面上の上記中心軸に平行な線が被測定内径を測定する際に同時に前記孔の内壁に接するように構成されていてもよい。
【0065】
更に、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部には、例えば、半球状の形状が、その球面を測定対象となる孔の内壁に向けて、前記シャフトの回転軸と平行な線上に複数配置され、これら複数の半球状の形状が被測定内径を測定する際に同時に前記孔の内壁に接するように構成されていてもよい。
【0066】
尚、本実施態様に係る内径測定装置における前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の上述のような形状は、当該可変ガイドの先端に上述のような形状を有する部材(以降、「先端部材」とも称する)を連結することによって形成してもよい。この場合、当然のことながら、当該先端部材は可変ガイドの構成要素であり、測定対象となる孔の内径を測定する際には、当該先端部材の寸法を考慮に入れて内径が検出される。
【0067】
ところで、円筒状の孔の内径を測定する際には、予め定められた位置(例えば、当該孔の開口部からの距離)において、内径測定を行う必要がある場合がある。かかるる場合、円筒状の孔の内径を測定する際に、前記可変ガイドの前記孔への挿入深さを容易に規定することができる機構を内径測定装置が備えていることがより望ましい。
【0068】
かかる要請から、本発明の第5実施態様は、
本発明の前記第1実施態様又は前記第4実施態様の何れかに係る内径測定装置であって、
前記可変ガイドの前記孔への挿入深さを規定するフランジを備えること、
を更なる特徴とする、内径測定装置である。
【0069】
上記フランジは、前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部に設けられた接触子から、前記シャフトの回転軸の方向において、所望の間隔をおいた位置に設けられる。これにより、本実施態様に係る内径測定装置が備える前記複数の可変ガイドを測定対象となる孔に挿入する際に、当該孔の開口部が当該フランジに接触する位置まで前記複数の可変ガイドをすることにより、前記孔の内壁上の前記所望の間隔をおいた位置に前記接触子を接触させることができる。結果として、本実施態様に係る内径測定装置においては、予め定められた位置において、内径測定を容易に行うことができる。
【0070】
尚、上記フランジは、本実施態様に係る内径測定装置の本体に担持されていても、又は他の部材に担持されていてもよい。また、上記フランジの前記シャフトの回転軸の方向における前記接触子からの間隔は、固定式であっても、可変式であってもよい。更に、上記フランジの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、前記シャフトの回転軸から外側に延在する所謂「鍔状」の形状であってもよい。あるいは、上記フランジの前記孔の開口部に対向する側は、前記孔の開口部の形状に沿った形状を呈していてもよい。
【0071】
ところで、本発明に係る内径測定装置においては、前述のように、前記回転部材自体の大きさや形状を変更すること無く、前記回転部材に設けられるガイド溝の形状(例えば、ガイド溝の傾斜やガイド溝の径方向における広がり)を変更することにより、前記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率や可変ガイドの可動範囲を変更することができる。その結果、本発明に係る内径測定装置においては、前記回転部材に設けられるガイド溝の形状を変更することにより、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定することが可能となる。
【0072】
従って、本発明に係る内径測定装置においては、種々の形状を有するガイド溝が設けられた種々の回転部材を用意し、測定しようとする孔の内径や要求される測定精度(分解能)に応じて、これらの回転部材の中から目的に沿ったものを適宜選択することにより、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定することが可能となる。しかしながら、前述のように、本発明に係る内径測定装置においては、複数の可変ガイドが、回転部材の回転に伴って、回転部材に設けられたガイド溝に導かれるように構成される。従って、上記のように、測定しようとする孔の内径や要求される測定精度(分解能)に応じて回転部材を使い分けようとする際に、内径測定装置から回転部材のみを取り出して、所望の形状のガイド溝を有する別の回転部材と交換する作業は、(作業が繁雑で、工数が掛かる等の)技術的困難を伴ったり、(交換時における異物の混入や、構成部材の組み込み漏れ等の)保全上の問題を招く懸念がある。
【0073】
かかる懸念に鑑みた場合、上記のように、測定しようとする孔の内径や要求される測定精度(分解能)に応じて回転部材を使い分けようとする際に、内径測定装置から回転部材のみを取り出して、所望の形状のガイド溝を有する別の回転部材と交換するのではなく、本発明に係る内径測定装置を、上記回転部材と複数の可変ガイド(及び可変ガイドの先端部に設けられる接触子)とを含むユニットと、それ以外のユニットとに分けて構成し、これらのユニットを着脱可能とすることにより、回転部材の使い分けをより容易なものとすることがより望ましい。
【0074】
具体的には、本発明の第6実施態様は、
本発明の前記第1実施態様又は前記第5実施態様の何れかに係る内径測定装置であって、
前記シャフトを含む本体部と、
前記回転部材及び前記可変ガイドを含むヘッド部と、
が着脱可能に構成されていること、
を更なる特徴とする、内径測定装置である。
【0075】
本実施態様に係る内径測定装置においては、上記のように、前記シャフトを含む本体部と、前記回転部材及び前記可変ガイドを含むヘッド部と、が着脱可能に構成されている。かかる構成により、本実施態様に係る内径測定装置においては、測定しようとする孔の内径や要求される測定精度(分解能)に応じて回転部材を使い分けようとする際に、前記回転部材及び前記可変ガイドを含むヘッド部を前記シャフトを含む本体部から取り外し、別のヘッド部と交換することにより、測定しようとする孔の内径や要求される測定精度(分解能)に応じた形状のガイド溝を有する回転部材をより容易に選択することができる。
【0076】
結果として、本実施態様に係る内径測定装置においては、上述のような技術的困難や保全上の問題を招くこと無く、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定することが可能となる。しかも、本発明に係る内径測定装置においては、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定するに当たり、種々の形状を有するガイド溝が設けられた種々の回転部材を含むヘッド部のみを複数用意すればよいため、内径測定装置全体を複数用意する場合と比較して、設備導入費用等のコストをより低減することができる。
【0077】
以上のように、本発明の各実施態様に係る内径測定装置においては、測定対象となる孔に挿入するヘッドを、ガイド溝を備える回転部材の回転によって前記孔の直径方向に移動可能な複数のガイドによって構成している。かかる構成により、本発明の各実施態様に係る内径測定装置は、テーパ部材を利用する従来技術に係る内径測定装置と比較して、より小型化することができる。また、本発明の各実施態様に係る内径測定装置においては、前記複数のガイドの少なくとも一部の前記孔の内壁に対向する側の端部に接触子を配設し、且つ前記複数のガイドの変位及び前記接触子の変位から前記孔の内径を求めることにより、種々の範囲の内径を直接測定することができる。更に、本発明の各実施態様に係る内径測定装置においては、可変ガイドの支点のずれが発生せず、また接触子の移動が直線的であることから、従来技術に係る内径測定装置と比較して、より高精度な内径測定を行うことができる。即ち、本発明は、種々の範囲の内径を直接測定することができる高精度且つコンパクトな内径測定装置を提供することができる。
【0078】
以下、本発明の特定の実施態様につき、添付図面を参照しつつ説明する。但し、以下に述べる説明はあくまで例示を目的とするものであり、本発明の範囲が以下の説明に限定されるものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0079】
1)実施例に係る内径測定装置の構成
図1は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置の構成を示す縦断面図である。本実施例に係る内径測定装置は、図2の底面図に示すように、互いに90°の角度で放射状に配設された4つの可変ガイドを備える。即ち、本実施例に係る内径測定装置は、シャフトの回転軸を挟んで対向する二対の可変ガイドを備える。これら二対の可変ガイドのうち一対の可変ガイドのシャフトの回転軸とは反対側(即ち、測定対象となる孔の内壁に対向する側)の端部には、測定対象となる孔の内壁に接触する接触子が設けられている。尚、本実施例に係る内径測定装置において、当該接触子は、当該接触子が設けられている可変ガイドが測定対象となる孔の内壁に接触した際に当該接触子の先端と前記孔の内壁との接触を維持することができるように、スプリングによって付勢され、当該接触子の先端と前記孔の内壁との距離に応じて径方向に移動可能に構成されている。
【0080】
また、本実施例に係る内径測定装置においては、上記接触子が設けられていない一対の可変ガイドの先端に、測定対象となる孔の内径(被測定内径)を測定する際にシャフトの回転軸と孔の中心軸とが平行になる角度で複数の可動ガイドが孔に挿入されることを容易にするための先端部材が連結されている。
【0081】
図1は、本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置をシャフトの回転軸を含む平面で切断した縦断面図である。詳しくは、図1における(a)は、シャフトの回転軸を含む平面のうち、上記接触子が設けられた一対の可変ガイドを通る平面に沿った、本実施例に係る内径測定装置の縦断面図である。一方、図1における(b)は、シャフトの回転軸を含む平面のうち、上記接触子が設けられていない(先端部材が連結されている)一対の可変ガイドを通る平面に沿った、本実施例に係る内径測定装置の縦断面図である。
【0082】
本実施例に係る内径測定装置は、フランジ7よりも可変ガイド側(図1における下側)の部分を、測定対象となる孔に挿入し、可変ガイド9の先端に設けられた接触子1を前記孔の内壁に接触させることにより、前記孔の内径を測定する。本実施例に係る内径測定装置は、本体10と、軸を中心とした回転が可能な状態で本体10に支持されたシャフト4と、シャフト4に連結されてシャフト4の回転と連動して回転する、ガイド溝が設けられた回転部材3と、シャフト4の軸(回転軸)と直交する方向である径方向に移動可能な4つの可変ガイド9と、可変ガイド9の変位を検出又は推定する可変ガイド変位検出手段としてのエンコーダ5と、4つの可変ガイド9のうち一対の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部にそれぞれ設けられた接触子1と、接触子1の変位を検出又は推定する接触子変位検出手段としての変位センサ6を備える。
【0083】
本実施例に係る内径測定装置による内径測定方法について以下に説明する。先ず、本実施例に係る内径測定装置が備える4つの可変ガイド9を、測定対象となる孔に挿入する。次に、本実施例に係る内径測定装置が備えるシャフト4を回転させる。これにより、シャフト4に連結された回転部材3が、シャフト4の回転と連動して回転する。上記のように回転部材3には、4つの可変ガイド9に対応する4つのガイド溝が設けられており、当該ガイド溝には、可変ガイド9に設けられた摺動ピン8が嵌合され、当該ガイド溝内を摺動するように構成されている。かかる構成により、4つの可変ガイド9は、回転部材3の回転に伴って、回転部材3に設けられたガイド溝に導かれ、前記孔の直径方向である径方向に移動することができる。
【0084】
上記のようにシャフト4を回転させることにより、4つの可変ガイド9を径方向に移動させ、前記孔の内壁に4つの可変ガイド9を接触させる。当該可変ガイド9の変位は、エンコーダ5によって検出又は推定される。この際、4つの可変ガイド9のうち一対の可変ガイド9が備える先端部材の形状により、シャフト4の回転軸と前記孔の中心軸とが平行となる。また、4つの可変ガイドは上記機構によりシャフト4の回転軸を中心として対称的に同期して移動するので、シャフト4の回転軸と前記孔の中心軸とが一致する。即ち、前記孔における4つの可変ガイド9の偏心は生じない。
【0085】
上記のように4つの可変ガイド9を前記孔の内壁に接触させると、接触子1が設けられた一対の可変ガイド9の外側の先端間の距離と前記孔の内径との相対関係に対応して、接触子1が前記孔の内壁との接触により径方向に移動される。当該接触子1の変位は、変位センサ6によって検出又は推定される。
【0086】
かかる操作により、エンコーダ5及び変位センサ6によって、可変ガイド9の(相対的に大レンジの)変位及び接触子1の(相対的に小レンジの)変位が、それぞれ検出又は推定される。斯くして得られた可変ガイド9の(相対的に大レンジの)変位と接触子1の(相対的に小レンジの)変位とに基づいて、測定対象となる孔の内径が求められる。斯くして求められた孔の内径は、例えば、液晶表示素子等の表示手段(図示せず)によって表示する等して、測定者に知らせることができる。
【0087】
図1に示すように、本実施例に係る内径測定装置は、従来技術に係る内径測定装置のようにテーパ部材を利用しないことから、よりコンパクトなものとすることができる。従って、本実施例に係る内径測定装置においては、測定対象となる孔の中に4つの可変ガイド9を入れたままの状態で被測定内径の円周方向に内径測定装置を回すことによって、孔の真円度を容易に且つ正確に測定することができる。
【0088】
ところで、本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置の較正に関する説明において述べたように、本発明に係る内径測定装置は、シャフトを回転させるための回転つまみをも備えることができる。かかる回転つまみにつき、添付図面を参照しながら、以下に説明する。
【0089】
2)実施例に係る内径測定装置の回転つまみ
図3は、前述のように、本発明の1つの実施態様に係る内径測定装置の回転つまみ部分の正面図である。図3における(a)は、シャフトの回転に伴って径方向に移動する可変ガイドの外側の端部の外接円の直径に対応する、大凡の内径の値を示す目盛りが設けられた回転つまみの正面図である。当該回転つまみには、上記目盛りに基づいて設定された可変ガイドの開き具合を維持するために、シャフトの回転を固定するためのセットスクリューが設けられている(図3(a)右側の楕円によって示した)。
【0090】
一方、図3における(b)及び(c)は、V溝を有するインデックスを使用してシャフトが回転しないように固定することができる回転つまみの正面図である。かかる構成を有する回転つまみは、シャフトの回転軸の可変ガイドとは反対側(図3における上向き)に回転つまみを引き上げてV溝の嵌合を外すことにより回転可能となる(図3における(b)を参照)。また、必要な角度での回転操作を完了した後、回転つまみをシャフトの回転軸の可変ガイド側(図3における下向き)に回転つまみを押し下げてV溝を嵌合させることによってシャフトの回転を固定することができる(図3における(c)を参照)。従って、かかるV溝を有する回転つまみを使用する場合、回転つまみの回転角度は、V溝のピッチに対応した、段階的な値として設定されることとなる。
【0091】
上記のような回転つまみを利用することにより、本発明に係る内径測定装置における、前述のような内径測定操作や較正操作をより容易なものとすることができる。但し、回転つまみに関する上記説明はあくまでも例示であり、本発明に係る内径測定装置は、上記のような回転つまみを必須の構成要件とするものではない。
【0092】
3)実施例に係る内径測定装置の回転部材の構成
ここで、本発明の複数の実施態様に係る内径測定装置の回転部材の構成について詳しく説明する。また、本実施例に掛かる回転部材に設けられるガイド溝は渦巻き状(螺旋状)の形状を有するものとする。更に、本実施例においては、上述のV溝を有する回転つまみを使用する場合におけるように、回転部材の回転角度が所定のピッチに基づいて段階的に設定されるものとする。
【0093】
先ず、回転部材の回転角度に対応する回転部材に設けられるガイド溝の位置を、回転部材の中心を原点とするX−Y平面座標によって表すと、上記所定のピッチに基づいて段階的に設定される回転部材の個々の回転角度に対応するガイド溝の個々の座標(XLm,YLm)は、下式(1)によって表すことができる。
【0094】
【数1】

【0095】
上式中、θは1ピッチ当たりの回転部材の回転角度を表し、mは回転操作時に回転部材を回転させるピッチ数を表し、sは1ピッチ当たりに可変ガイドを移動させたい変位を表し、Aは回転部材の中心に最も近いガイド溝の位置(即ち、可変ガイドの摺動ピンの径方向における摺動の起点)の回転部材の中心からの距離を表し、nは回転部材に設けられるガイド溝の本数を表し、そしてLはn本のガイド溝のうち当該ガイド溝が何番目のガイド溝であるかを表す番号である。
【0096】
式(1)によって表されるように、個々のガイド溝は、回転部材が1ピッチ当たりの回転角度θだけ回転する毎に、回転部材の中心からの距離が起点となるAからsずつ増加する、渦巻き状の形状を呈する。尚、式(1)によって表されるガイド溝の個々の座標(XLm,YLm)は、個々のピッチに対応する不連続な点の集合であるが、実際に回転部材に設けられるガイド溝は、これらの点を連続的に繋いだ滑らかな線を中心として、当該ガイド溝に嵌合される可変ガイドの摺動ピンの大きさに対応する幅及び深さを有する渦巻き状の形状に形成される。
【0097】
式(1)によれば、例えば、4つの可変ガイドを備え、個々の可変ガイドに対応する4本のガイド溝を回転部材に設ける場合、個々のガイド溝の起点が設定される角度(但し、上記X−Y平面座標におけるY軸の正方向を0°とする)は以下のようになる。1本目のガイド溝(L=1)については90°、2本目のガイド溝(L=2)については180°、3本目のガイド溝(L=3)については270°、及び4本目のガイド溝(L=4)については360°(0°)。
【0098】
同様に、例えば、8つの可変ガイドを備え、個々の可変ガイドに対応する8本のガイド溝を回転部材に設ける場合、個々のガイド溝の起点が設定される角度(但し、上記X−Y平面座標におけるY軸の正方向を0°とする)は以下のようになる。1本目のガイド溝(L=1)については45°、2本目のガイド溝(L=2)については90°、3本目のガイド溝(L=3)については135°、4本目のガイド溝(L=4)については180°、5本目のガイド溝(L=5)については225°、6本目のガイド溝(L=6)については270°、7本目のガイド溝(L=7)については315°、及び8本目のガイド溝(L=8)については360°(0°)。
【0099】
上記のように式(1)によって表される渦巻き状の形状を有するガイド溝が設けられた回転部材の例を図4に示す。前述のように、図4は、本発明の複数の実施態様に係る内径測定装置の回転部材の模式図である。より詳しくは、図4に示す実施例は、4つの可変ガイドの個々に対応する4本のガイド溝が設けられている回転部材の概略構造を示す平面図である。
【0100】
図4における(a)、(b)、及び(c)は、1ピッチ当たりの回転部材の回転角度θ及び1ピッチ当たりに可変ガイドを移動させたい変位sを、表1に示す値にそれぞれ設定した場合における、個々の回転部材に設けられるガイド溝の形状を示す。
【0101】
【表1】

【0102】
図3に示すように、回転部材の一定の回転角度当たりの可変ガイドの変位をより大きくしようとする場合(図3における(a)の場合)、換言すれば、回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率を大きくしようとする場合、回転部材に設けられるガイド溝の渦巻き状の形状をより急峻なものとする(即ち、ガイド溝の傾斜を径方向により近付ける)。この場合、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率は相対的に大きくなるが、内径測定における分解能は相対的に低くなる。
【0103】
一方、回転部材の一定の回転角度当たりの可変ガイドの変位をより小さくしようとする場合(図3における(c)の場合)、換言すれば、回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率を小さくしようとする場合、回転部材に設けられるガイド溝の渦巻き状の形状をより緩やかなものとする(即ち、ガイド溝の傾斜を径方向に直角な方向により近付ける)。この場合、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率は相対的に小さくなるが、内径測定における分解能は相対的に高くなる。
【0104】
また、回転部材に設けられるガイド溝の起点(回転部材の中心に最も近いガイド溝の位置)と回転部材の中心との距離及び回転部材に設けられるガイド溝の終点(回転部材の中心から最も遠いガイド溝の位置)と回転部材の中心との距離を適宜変更することにより、可変ガイドの可動範囲を変更することができる。
【0105】
上記のように、本実施例に係る回転部材を使用する内径測定装置においては、上記回転部材自体の大きさや形状を変更すること無く、上記回転部材に設けられるガイド溝の形状(例えば、ガイド溝の傾斜やガイド溝の径方向における広がり)を変更することにより、上記回転部材の回転角度に対する可変ガイドの変位の比率や可変ガイドの可動範囲を変更することができる。その結果、本実施例に係る回転部材を使用する内径測定装置においては、上記回転部材に設けられるガイド溝の形状を変更することにより、種々の大きさの孔の内径を種々の分解能にて測定することが可能となる。
【0106】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する実施例について説明してきたが、上記説明はあくまでも例示であって、本発明の実施形態が上記説明に限定されると解釈されるべきではない。即ち、本発明の範囲は、かかる例示的な実施態様に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることができることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0107】
1…接触子、2…先端部材、3…ガイド溝が設けられた回転部材、4…シャフト、5…エンコーダ、6…変位センサ、7…フランジ、8…摺動ピン(摺動ブロック)、9…可変ガイド、及び10…本体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ガイドを孔に挿入し、接触子を前記孔の内壁に接触させて、前記孔の内径を測定する内径測定装置であって、
前記内径測定装置が、
本体と、
軸を中心とした回転が可能な状態で前記本体に支持されたシャフトと、
前記シャフトに連結されて前記シャフトの回転と連動して回転する回転部材と、
前記回転部材に設けられたガイド溝と、
前記シャフトの軸と直交する方向である径方向に移動可能な複数の可変ガイドと、
前記可変ガイドの変位を検出又は推定する可変ガイド変位検出手段と、
前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の端部に設けられた接触子と、
前記接触子の変位を検出又は推定する接触子変位検出手段と、
を備えること、並びに
前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれて径方向に移動すること、
前記接触子が、前記孔の内壁との接触により径方向に移動すること、及び
前記可変ガイド変位検出手段によって検出又は推定される前記可変ガイドの変位と、前記接触子変位検出手段によって検出又は推定される前記接触子の変位と、に基づいて、前記孔の内径が求められること、
を特徴とする、内径測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内径測定装置であって、
前記複数の可変ガイドが、前記回転部材の回転により同期して径方向に移動すること、
を更なる特徴とする、内径測定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の何れか1項に記載の内径測定装置であって、
前記複数の可変ガイドが突起部を備えること、及び
前記突起部が、前記回転部材に設けられた前記ガイド溝内に嵌合され、前記回転部材の回転に伴って前記ガイド溝内を摺動することにより、前記複数の可変ガイドが前記回転部材の回転により前記回転部材に設けられたガイド溝に導かれて径方向に移動すること、
を更なる特徴とする、内径測定装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の内径測定装置であって、
前記複数の可変ガイドの少なくとも一部の可変ガイドの前記孔の内壁に対向する側の形状が、前記シャフトの軸と平行な線上にある異なる位置において、前記孔の内壁と接触することができる形状を有すること、
を更なる特徴とする、内径測定装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の内径測定装置であって、
前記可変ガイドの前記孔への挿入深さを規定するフランジを備えること、
を更なる特徴とする、内径測定装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の内径測定装置であって、
前記シャフトを含む本体部と、
前記回転部材及び前記可変ガイドを含むヘッド部と、
が着脱可能に構成されていること、
を更なる特徴とする、内径測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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