説明

内燃機関のカムシャフト構造

【課題】カムシャフトがバルブスプリングの反力による曲げモーメントでカムシャフトのジャーナル部或いは軸受部と偏当たして偏磨耗が生じることを防止したエンジンのカムシャフト構造を提供する。
【解決手段】内燃機関の機関本体に軸支され、端部で前記内燃機関のクランクシャフトの回転に連動して回転し、前記内燃機関の各気筒に配設され吸気バルブ18又は排気バルブを開閉するカム6を備えたカムシャフト5において、吸気バルブ18又は排気バルブを閉塞するバルブスプリング9の閉塞力に抗してバルブ開放時にカムシャフト5に作用する反力によって各気筒間を連結する気筒間カム軸部8に生じる変形を吸収するように、前記気筒間カム軸部8に複数の縮径部と拡径部とからなる蛇腹部83が形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを開閉するカムシャフトのジャーナル部がバルブスプリングの反力により曲げモーメントを受け偏当りするのを防止するためのエンジンのカムシャフト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、多気筒エンジンにおいては、クランクシャフトに連動してカムシャフトを回転させ、エンジンの吸気バルブ及び排気バルブを開閉させる。このように各バルブが開閉されることにより、エンジンの燃焼室には外気が導入され、或いは燃焼室から排気ガスが排出される。通常、各バルブの開閉タイミングや、バルブ開閉のオーバラップ量等のいわゆるバルブ開閉特性はカムの形状によって一義的に決定される。
【0003】
そこで、図6に4バルブエンジン001(1気筒に吸気バルブ2個、排気バルブ2個)の吸気側カムシャフト002による吸気バルブ004が開閉される構造の概略図を示す。吸気バルブ004はエンジン001のシリンダブロック008の上部に固定されたシリンダヘッド006に装着されている。図6のC−C矢視に表されているようにカムシャフト002が矢印の方向に回転するとカム003がバルブスプリング005を圧縮しながら吸気バルブ004を下方に移動させて吸気孔0010を開く。吸気孔0010はエアクリーナ(図示省略)に連結している。
【0004】
ところが、吸気バルブ004と吸気孔0010との密閉性を良くすると共に、エンジン001の高速回転時にバルブスプリング005の確実な開閉動作を確保するためバルブスプリング005の圧縮反力は大きくしてある。カムシャフト002はカムシャフト002のジャーナル部009をシリンダヘッド006にカムキャップ0011によって回転可能に保持されている。そのため、カムシャフト002がエンジン001のクランクシャフトから伝達される回転力でカム003が吸気バルブ004を下方に押圧するとその反力でカムシャフト002のジャーナル部009の保持部を支点にして上方に曲げモーメントが作用して、ジャーナル部009を回転可能に保持しているカムキャップ0011が偏磨耗し、同偏磨耗による回転抵抗の増大が生じる。
一方特開平10―141017号にあるような構造とすることで、偏磨耗及び、偏磨耗による回転抵抗の増大を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10―141017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記文献は図7に示すように吸気側カムシャフト06を示す。
吸気側カムシャフト06には吸気バルブ(図示略)を開閉するカム08が1気筒あたり2個ずつ形成されている。吸気側カムシャフト06の略中央にある2のジャーナル06aに挟まれた部分には、他の部分よりも径が細くなった縮径部030が形成されている。
また、吸気側カムシャフト06の端部には可変バルブタイミング機構(以下VVT機構)023が配設されている。VVT機構はドリブンギア021に連結されている。
ドリブンギア021はエンジン(図示略)のクランクシャフト(図示略)の回転に同期して駆動される。VVT機構は油圧により駆動され、エンジンの回転数、負荷等により吸気バルブ(図示略)の開閉タイミングを早めたり、遅らせたりしてエンジン出力を最適な状態にコントロールする。
【0007】
吸気側カムシャフト06には上述のVVT機構が装着されており、吸気側カムシャフト06のドリブンギア021と噛合い吸気側カムシャフト06を駆動する排気側カムシャフトのドライブギアとの噛合い周期と同期した周期的な力(噛合起振力)が外力として作用する。吸気側カムシャフト06はVVT機構が装着されていることにより、吸気側カムシャフト06全体の質量が排気側カムシャフトより大きいため、固有振動数が排気側カムシャフトより低くなる。
このため、噛合起振力の振動数と、吸気側振動系の固有振動数が一致して、共振現象が発生する恐れがある。その対応策として吸気側カムシャフト06の中間部で非軸支部分の所定の場所に縮径部030を設けて、縮径部030を振動モードの節とすることにより固有振動数を高くして、噛合起振力の振動数による共振を回避させている。
【0008】
ところが、吸気側カムシャフト06の中間部で非軸支部分の所定の場所に縮径部030を設けたことにより、振動モードの節とすることにより固有振動数を高くしているため、
振動による曲げモーメント発生の変形は縮径部030だけで吸収する構造のため、当該部に高応力が発生することが予測される。
更に、カムシャフトの気筒間カム軸部にはバルブスプリングによる曲げモーメントが作用しており、カムシャフト06のジャーナル部06a或いは軸受部に偏磨耗をまねく可能性がある。
【0009】
本願発明はこのような実情に鑑み、カムシャフトがバルブスプリングの反力による曲げモーメントでカムシャフトのジャーナル部或いは軸受部と偏当たして偏磨耗が生じることを防止したエンジンのカムシャフト構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる目的を達成するもので、内燃機関の機関本体に軸支され、端部で前記内燃機関のクランクシャフトの回転に連動して回転し、前記内燃機関の各気筒に配設され吸気バルブ又は排気バルブを開閉するカムを備えたカムシャフトにおいて、
前記吸気バルブ又は排気バルブを閉塞するバルブスプリングの閉塞力に抗してバルブ開放時にカムシャフトに作用する反力によって各気筒間を連結する気筒間カム軸部に生じる変形を吸収するように、前記気筒間カム軸部に複数の縮径部と拡径部とからなる蛇腹部が形成されたことを特徴とする。
【0011】
このような構成によって、吸気バルブ又は排気バルブを内燃機関のシリンダヘッドの吸気ポート又は、排気ポートに押圧して、該吸気ポート又は、排気ポートの機密を保持しているバルブスプリングの反力により、カムシャフトに変形が生じても、各気筒間の気筒間カム軸部に形成された複数の縮径部と拡径部とからなる蛇腹部が分担して変形量を吸収するので、カムシャフトの各部に発生する応力を分散できる。
更に、隣接する気筒間に位置する気筒間カム軸部で変形量を吸収するので、他の気筒に影響が及ばないため、カムシャフトを支軸するカム軸受とカムキャップとに偏当りして、偏摩耗の発生、偏摩耗によるカムシャフト回転のフリクション増大を防止できる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、前記縮径部および拡径部が螺旋状に形成されると共に、螺旋の方向が気筒間カム軸部の両側に配置された前記カムの端面から前記気筒間カム軸部を見た方向において、前記バルブスプリングの反力により前記拡径部に引張力が作用するように捩じれられて形成されるとよい。
【0013】
このような構成によって、蛇腹を螺旋状に形成して且つ、螺旋状の方向を、気筒間カム軸部の両側に配置されたカムの端面から前記気筒間カム軸部を見た方向において、前記カムの回転方向と反対方向に捩じれられて形成したので、すなわち、前記バルブスプリングの反力により前記蛇腹部の拡径部に引張力が作用するように(蛇腹が締まる方向に)捩じれられて形成されるので、カムが捻れ難くなり、従って、吸気バルブ又は排気バルブの開閉タイミングもずれ難くなる。エンジンの吸気及び排気バルブの開閉タイミングが守れ、エンジン性能が維持できる効果を有する。
【0014】
また、本発明において好ましくは、前記気筒間カム軸部と該気筒間カム軸部の両側に配置された前記カムの端面との接続部にはコーナR部を形成し、気筒間カム軸部上の前記R部末部から前記蛇腹部に滑らかに接続するよう形成するとよい。
【0015】
このような構成によると、カムとカム軸との接続部には角R部を形成しているので、接続部の応力集中を緩和でき、更には、カム軸上の角R末部より滑らかに蛇腹部へ連続するよう形成したので、カムに接続する蛇腹部の応力集中も緩和できる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、前記蛇腹部の螺旋の始点位置が前記カム頂点から前記カム回転方向へ90度の範囲を除いた部分に形成されるとよい。
【0017】
このような構成によると、カムが吸気バルブ又は排気バルブの開作用を開始してカムの最大リフト量(バルブの最大リフト量)になるまでの間はバルブスプリングの反力が最も大きくなる範囲で、カム軸に作用する曲げモーメントが大きくなる。
従って、螺旋状の始点をカム頂点からカムの回転方向へ90度の範囲からずらすことにより螺旋始点部においての高応力の発生を防止して、カム軸の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本願のカムシャフト構造によれば、カムシャフトは内燃機関の吸気バルブ又は排気バルブを開閉する隣接した気筒間のカムとカムとの間に位置する気筒間カム軸部に複数の縮径部と拡径部とからなる蛇腹部が形成されているので、内燃機関のシリンダヘッドの吸気ポートを機密に保持しているバルブスプリングの反力により、カムシャフトに変形が生じても、各気筒間の蛇腹部が分担して変形量を吸収するので、カムシャフトの各部に発生する応力を分散できる。
更に、隣接する気筒間に位置する気筒間カム軸部で変形量を吸収するので、他の気筒に影響が及ばないため、カムシャフトを支軸するカム軸受とカムキャップとに偏当りして、偏摩耗の発生、偏摩耗によるカムシャフト回転のフリクション増大を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るカムシャフトと吸気バルブとの関係を示す全体概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るカムシャフトの外観図を示し、(a)は全体の構成図であり、(b)は(a)のA部拡大説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るカムシャフト外観図を示し、(a)は全体の構成図であり、(b)は(a)のB部拡大説明図である。
【図4】クランク角度に対するバルブリフトタイミングの正常時とカムシャフト捻れ時との比較を示す説明図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係るカム形状とカム形状に対する螺旋始点位置の範囲を示す詳細図である。
【図6】従来技術に係るカムシャフトと吸気バルブとの関係概略図を示し、(a)は全体構成図であり、(b)は(a)のC−C矢視図である。
【図7】先行技術に係るカムシャフト外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるカムシャフト構造の実施形態を図面に基づいて説明する。
ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定の記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明にすぎない。
【0021】
(第1実施形態)
図1は本発明のカムシャフトと吸気バルブとの関係を示す概略図である。
また、図1は内燃機関である多気筒(シリンダ1個=1気筒)の4バルブエンジン1(1気筒に吸気バルブ2個、排気バルブ2個)の吸気側カムシャフト5による吸気バルブ8が開閉される構造の概略図を示す。
尚、本実施形態の説明では、吸気バルブ用のカムシャフトと、排気バルブ用のカムシャフトとは同じ考え方なので、吸気バルブ用のカムシャフトで説明する。
内燃機関であるエンジン1(以下エンジン1と記す)の上部は、シリンダブロック3にシリンダライナー13が嵌入され、その上部にシリンダヘッド2が載置される。シリンダヘッド2とシリンダライナー13とシリンダライナー13内を上下に往復行程をするピストン12の上面とで燃焼室14を形成している。
シリンダヘッド2の上面にはエンジン1のクランクシャフト(図示省略)に連動して回転するカムシャフト5が配設されている。カムシャフト5は端部にクランクシャフトと連動するための装置(図示省略)例えばギヤトレイン等で連動している。
【0022】
カムシャフト5は上述の通り、1気筒に対して2個の吸気バルブ8を同時に開閉動作させるため、同位相のカム6を1気筒に対して2個対で配設している。カムシャフト5のシリンダヘッド2への取付けは、2個対のカム6の間であるジャーナル部10をシリンダヘッド2から突出したカム軸受11と、該カム軸受11に対向し、ジャーナル部10を上側からカムシャフト5を回動自在に保持し、ボルト(図示省略)にてカム軸受11に締結されるカムキャップ7とで行う。
また、図2に示すように、カムシャフト5の各気筒に対応するカム6間を連結している気筒間カム軸部8には、縮径部81と拡径部82(図2(b))とからなる蛇腹部83が形成されている。
【0023】
カム6の下側にはシリンダヘッド2に開口し、エアクリーナ(図示省略)に連結した吸気ポート15を開閉する傘状の開閉部を有した吸気バルブ18が配置されている。吸気バルブ8は圧縮した状態で装着されたバルブスプリング9の反力によって吸気ポート15を閉塞すると共に吸気バルブ18の上端部をカム6の摺動面に押圧するようにしてある。
このバルブスプリング9はエンジン1の高速回転時に、カム6の動作に吸気バルブ18(及び排気バルブ)を確実に追従させると共に、バルブスプリング9自体の共振を防止するため、バネ定数を高くしてある。
上述の通り、カム6は吸気バルブ18を下方に押し下げて、吸気ポート15を開く動作をするとバルブスプリング9の強い反力を受け、上方への曲げ力により変形する。その変形量がジャーナル部10を支点として隣接する気筒のジャーナル部10へレバー比状に大きく影響する。
【0024】
しかし、隣接する気筒間の気筒間カム軸部8に蛇腹部83を形状して、部分的に剛性の弱い縮径部81を複数連続させることにより、上述の変形量を複数箇所の縮径部81の部分で少しずつ吸収させるようにして応力の集中を防止すると共に、隣接するジャーナル部10の偏磨耗を防止して、回転フリクションの増加を防ぐ効果を有している。
また、複数の気筒間ごとの気筒間カム軸部8に蛇腹部83が形成されているので、カムシャフト20全体に変形が生じても、各気筒間の蛇腹部83が分担して変形量を吸収するので、カムシャフト20の各部に発生する応力を気筒間ごとに分散できる。
【0025】
更に、隣接する気筒間に位置する気筒間カム軸部8で変形量を吸収するので、他の気筒に影響が及ばないため、カムシャフト8を支軸するカム軸受11とカムキャップ7とに偏当りして、偏摩耗の発生、偏摩耗によるカムシャフト20の回転のフリクション増大を防止できる。
【0026】
尚、本実施形態の場合、吸気バルブ18を下方に押し下げている気筒のジャーナル部10は両隣のカム6と距離が少なく、同位相のカムプロフィールなので、変形作用力が同じように作用するため偏磨耗が発生し難い。
また、本実施形態の場合、図2(b)に示すように、カム6と気筒間カム軸部8との連結部において、カム側面17から蛇腹部に移る部分にR部19を設け、R部19の末端部から蛇腹形状に移るようにして、断面剛性の変化を和らげ応力集中の防止を図っている。
【0027】
尚、本カムシャフト5は鍛造成型した素材を機械加工したもので、中実のカムシャフトを図示している。
また、中空状のカムシャフトの場合は、バルジ加工等で成形することができる。
バルジ加工とはパイプの中側(中空部)に油圧等をかけて、外型の形状に沿わせるように成形する方法で、気筒間カム軸部8の外周部に凹部を形成すると共に、中空管に外嵌したカムを中空管に固定することも可能である。
また、蛇腹部83はカム6間を連結している気筒間カム軸部8の全長にわたって形成されている構成について説明したが、一部であってもよいことは勿論である。
【0028】
(第2実施形態)
本発明によるカムシャフト構造の第2実施形態を図3に基づいて説明する。
尚、第1実施形態と同じ部品については同一符号を使用する。
カムシャフト20の気筒間カム軸部21は螺旋状の蛇腹部85に形成されると共に、該螺旋の方向は吸気バルブ18の開放時にバルブスプリング9の反力により、螺旋状の拡径部の頂部211に張力が発生するように形成される。
即ち、螺旋状の拡径部の頂部211に張力が発生する螺旋の方向とは、カム22の側面24を気筒間カム軸部21の軸芯方向にみて(図3(a)(b)のX1方向、X2方向にみて)、カム22が吸気バルブ18を押下げる際に、バルブスプリング9の反力で螺旋状の拡径部の頂部211に引張力が作用する方向(螺旋状の拡径部の頂部211をコイルスプリング線形と仮定した時に、コイルスプリングのピッチ及び径が小さくなる状態の螺旋方向)である。また、言い換えるとバルブスプリング9の反力で蛇腹が締まる方向に形成された螺旋である。
従って、カム22の側面からの見る方向(X1方向、X2方向)により螺旋の方向が変わるため、カム軸21の中間部(各気筒間の中心部分)には螺旋の方向を切替える中間帯23が設けてある。
【0029】
カム軸21の螺旋部85の拡径部の頂部211に引張力が作用する形状なのでカムシャフト20が捻れ難く吸気バルブ18(及び排気バルブ 図示省略)の開閉タイミングがずれ難くなる。
カムシャフト5の捻れ剛性が低いと、図4に示すように、バルブスプリング9の反力により、カム6が吸気ポート15を開く場合、即ち、吸気バルブ18を下方へ押す時は押し戻され、吸気ポート15を開く開始時期が遅くなる。吸気ポート15を閉塞する時は、カム6の頂部が吸気バルブ18から逃げていく(回転)方向なので、カム6が速く回転する方向へバルブスプリング9に押圧され吸気ポート15の閉塞時期が早くなる。
従って、燃焼室内14は新しい空気不足からエンジン1の十分な出力が確保できなくなる。
また、排気バルブ側も同様なタイミングとなるため、十分な排気ができなく排気ガスが燃焼室14内に残り、燃料の不完全燃焼に近い状態になる。
【0030】
しかし、本実施形態ではカムシャフトの捻れ発生を防止することにより、吸気バルブ18及び排気バルブの開閉タイミングがずれるのを防止して、エンジン1の十分な出力が確保できることができる効果を有する。
また、本実施形態の場合、図3(b)に示すように、カム22と気筒間カム軸部21との連結部において、カム側面24から蛇腹の螺旋部に移る部分にR部25を設け、R部25の末端部から螺旋形状に移るようにして、断面剛性の変化を和らげ応力集中の防止を図っている。
【0031】
(第3実施形態)
本発明によるカムシャフト構造の第3実施形態を図5に基づいて説明する。
カムシャフト20のカム22の端面24に形成したR部25から螺旋へ続く接続部である始点を、カム22の頂点からカム22の回転方向へ90度の範囲には位置しないように形成し、即ち図5のθの範囲内に位置するようにした。
【0032】
カムが吸気バルブ(又は排気バルブ)の開作用を開始してカムの最大リフト量(バルブの最大リフト量)になるまでの間(カム22の頂点からカム22の回転方向へ90度の範囲)はバルブスプリングの反力が大きく、カム軸に作用する曲げモーメントが大きくなり、螺旋の始点部には高い応力が発生しやすい。
従って、蛇腹部85を形成する螺旋状の始点をカム頂点からカムの回転方向へ90度の範囲からずらすことにより螺旋始点部の高応力発生を防止して、カム軸の耐久性を向上させると共に、カムシャフト20が捻れ難く吸気バルブ18(及び排気バルブ、図示省略)の開閉タイミングをずれ難くする効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明では、4バルブ式エンジンのカムシャフトの偏磨耗を防止し、駆動フリクションを低減することができるので、4バルブ式エンジンおよび他形式のエンジンのカムシャフトにも使用するのに適している。
【符号の説明】
【0034】
1 エンジン本体
2 シリンダヘッド
5 カムシャフト
6、22 カム
7 カムキャップ
8、21 気筒間カム軸部
9 バルブスプリング
10 ジャーナル部
11 カム軸受
18 吸気バルブ
20 カムシャフト
25 R部
81 縮径部
82 拡径部
83、85 蛇腹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の機関本体に軸支され、端部で前記内燃機関のクランクシャフトの回転に連動して回転し、前記内燃機関の各気筒に配設され吸気バルブ又は排気バルブを開閉するカムを備えたカムシャフトにおいて、
前記吸気バルブ又は排気バルブを閉塞するバルブスプリングの閉塞力に抗してバルブ開放時にカムシャフトに作用する反力によって各気筒間を連結する気筒間カム軸部に生じる変形を吸収するように、前記気筒間カム軸部に複数の縮径部と拡径部とからなる蛇腹部が形成されたことを特徴とする内燃機関のカムシャフト構造。
【請求項2】
前記縮径部および拡径部が螺旋状に形成されると共に、螺旋の方向が気筒間カム軸部の両側に配置された前記カムの端面から前記気筒間カム軸部を見た方向において、前記バルブスプリングの反力により前記拡径部に引張力が作用するように捩じれられたことを特徴とする請求項1記載の内燃機関のカムシャフト構造。
【請求項3】
前記気筒間カム軸部と該気筒間カム軸部の両側に配置された前記カムの端面との接続部にはコーナR部を形成し、気筒間カム軸部上の前記R部末部から前記蛇腹部に滑らかに接続するよう形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の内燃機関のカムシャフト構造。
【請求項4】
前記蛇腹部の螺旋の始点位置が前記カム頂点から前記カム回転方向へ90度の範囲を除いた部分に形成されていることを特徴とする請求項2乃至3にいずれかに記載の内燃機関のカムシャフト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−32896(P2011−32896A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178138(P2009−178138)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】