説明

内燃機関の吸気管構造

【課題】吸気管内でできた大きな氷塊により吸気系の重要部品を傷付け易いといった問題を解決することのできる低温環境での信頼性に優れた低コストの内燃機関の吸気管構造を提供する。
【解決手段】エンジン10の吸気通路21aを形成する吸気管部72を備えた内燃機関の吸気管構造において、吸気管部72が、内底壁面部21bから吸気通路21a内に突出する突起部72pを有し、その突起部72pの近傍で内底壁面部21bが複数の凹部21cに区画されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気管構造に関し、特にターボ式過給機のコンプレッサその他の吸気系の重要部品を装備する場合や吸気系の重要部品より上流側の吸気通路にブローバイガスを還流させる場合等に好適な内燃機関の吸気管構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関(以下、単にエンジンという)において、燃焼室からシリンダとピストンの間の隙間を通ってクランクケースの上部に未燃焼の混合気や燃焼済みの燃焼ガスを含んだブローバイガス(Blow−By Gases)が漏れ出ることから、エンジン内のエンジンオイルの劣化防止等のために、クランクケース内を換気するPCV(Positive Crankcase Ventilation)方式のブローバイガス還元装置が装備されている。
【0003】
このブローバイガス還元装置を備えたエンジンでは、クランクケース内のブローバイガスがオイルセパレータを通して気液分離された後、PCVバルブおよびブローバイガス還流用の配管であるPCVホースを通して吸気管内に還流されるようになっており、PCVホースの一端部が吸気管に接続される吸気管構造となっている。
【0004】
また、低温下のアイドリング時等のように吸気温度が低い場合、水分を含むPCV還流ガスが吸気管内に入るPCVホースの接続部付近の吸気管の内壁に着氷が生じ易いため、PCVホースの吸気管への接続部付近でPCVガス還流通路が凍結により閉塞されてブローバイガスの還流不良が生じたり、ターボ式過給機のコンプレッサを大きな氷塊によって破損させたりするような事態を極力生じないようにする工夫がなされている。
【0005】
従来のこの種の内燃機関の吸気管構造としては、例えば氷結や霜の付着等のアイシングによる吸気制御バルブの動作不良を防止できるよう、吸気温度や冷却水温が低いとき、あるいは吸気管内の水蒸気過多条件が成立するときには吸気制御バルブの開度を一時的に増大させることで結露や霜、氷等を吹き飛ばすようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、ブローバイガスを吸気通路に還流させるチューブを低熱伝導率材料からなる2重管構造として内部に断熱空気層を形成したもの(例えば、特許文献2参照)、PCVバルブに近接する温水加熱ホースを設けたりしたもの(例えば、特許文献3参照)等が知られている。
【特許文献1】特開2005−42682号公報
【特許文献2】特開2003−120244号公報
【特許文献3】特開平10−121937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、吸気制御バルブの開度を一時的に増大させることで結露や霜、氷等を吹き飛ばすようにした従来の内燃機関の吸気管構造にあっては、バルブ動作不良を予測するために温度センサや水蒸気過多条件の判定、バルブ開度を一時的に増大させる制御手段等が必要になり、コスト高になるという問題があった。
【0008】
また、ブローバイガスの還流チューブを低熱伝導率材料からなる2重管構造としてその内部に断熱空気層を形成した従来の内燃機関の吸気管構造にあっては、構造が複雑でコスト高になるという問題があった。
【0009】
しかも、これら従来の内燃機関の吸気管構造にあっては、ターボ式過給機を装備する場合に、例えばPCVガスから発生する水蒸気が、ブローバイガス還流通路の吸気通路への接続部分の近傍や鉛直方向の位置が最も低くなる部分の吸気管の内壁面に着氷し、特に鉛直方向の最下方に位置する部位に溜まった水からできた大きな氷塊が内燃機関の暖機時にターボ式過給機のコンプレッサ内に入ってしまって、そのインペラを傷付けてしまうといった問題を解決できなかった。
【0010】
さらに、PCVバルブに近接する温水加熱ホースを設けた従来の内燃機関の吸気管構造にあっても、暖機時に大きな氷塊が剥がれて、ターボ式過給機のコンプレッサその他の吸気系の重要部品を傷付けてしまうといった問題があった。
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決するためになされたもので、吸気管内でできた大きな氷塊により吸気系の重要部品を傷付け易いといった問題を解決することのできる低温環境での信頼性に優れた低コストの内燃機関の吸気管構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る内燃機関の吸気管構造は、上記目的達成のため、(1)内燃機関の吸気通路を形成する吸気管本体を備えた内燃機関の吸気管構造において、前記吸気管本体が、前記吸気通路を形成する管内壁面部から前記吸気通路内に突出する突起部を有し、該突起部の近傍で前記管内壁面部が複数の凹部に区画されていることを特徴とするものである。
【0013】
この構成により、吸気通路内の水分が管内壁面部に氷結したとしても、その氷は吸気通路内に突出する突起部によって複数の凹部に区画されて形成されることになり、大きな氷塊となることがない。したがって、吸気管内で剥がれた大きな氷塊により吸気系の重要部品を傷付けてしまうということがなくなり、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成となることもない。
【0014】
上記(1)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造においては、(2)前記吸気管本体が、前記吸気通路のうち前記内燃機関に装備されるターボ式過給機のコンプレッサより上流側の吸気通路を形成するとともに、前記コンプレッサのインレット部に接続され、前記突出部が、前記上流側の吸気通路を形成する管内壁面部から前記吸気通路内に突出しているのが好ましい。
【0015】
この構成により、上流側の吸気通路内の水が管内壁面部に氷結したとしても、その氷は吸気通路内に突出する突起部によって複数の凹部に区画されて形成されることになり、ターボ式過給機のコンプレッサ内に入っても容易に破砕される程度の大きさになる。したがって、吸気管内で剥がれた大きな氷塊によりコンプレッサを傷付けてしまうということがなくなり、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成となることもない。
【0016】
上記(1)、(2)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造においては、(3)前記突起部が、前記吸気通路の通路長さ方向に延在する突条をなすのが好ましい。
【0017】
この構成により、吸気管の内部に突起部を容易にかつ低コストに形成できる。
【0018】
上記(1)、(2)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造は、(4)前記突起部が、前記吸気通路の通路長さ方向と交差する方向に延在する突条をなすものであっても好ましい。
【0019】
この構成により、吸気管内で水の溜まり具合が複数の凹部間で異なり、複数の氷塊が同時に生成され難くなる。なお、ここにいう突条は、真っ直ぐであっても湾曲していてもよい。
【0020】
上記(4)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造においては、(5)前記突起部が、前記吸気通路の通路長さ方向と直交する方向に延在するものであってもよい。
【0021】
この場合、複数の凹部に形成される氷塊の周辺部が薄くなり、より破砕され易くなる。
【0022】
上記(1)〜(5)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造においては、(6)前記吸気管本体のうち鉛直方向下方側に位置する特定通路区間内に、前記突起部が配置されているのが望ましい。
【0023】
この構成により、大きな氷塊ができ易い位置にある特定通路区間内で氷塊が複数の凹部に分けて生成されることになり、氷塊の大きさが小さくなることで、内燃機関の暖機時に吸気系の重要部品、例えばターボ式過給機のコンプレッサのインペラを損傷させることがない。
【0024】
上記(1)〜(6)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造においては、(7)前記吸気管本体に、前記内燃機関の内部からのブローバイガスを前記吸気通路に還流させる還流孔が形成され、前記特定通路区間が、前記吸気管本体の吸気方向下流側の端部近傍から前記還流孔が形成される前記吸気方向の還流孔位置までの範囲を含むものであってもよい。
【0025】
この構成により、ブローバイガスに含まれる水分により氷塊ができ易くとも、その氷塊が特定通路区間内で複数の凹部に分けて形成され、吸気系の重要部品、例えばコンプレッサのインペラを損傷させることがない。
【0026】
上記(1)〜(7)記載の構成を有する内燃機関の吸気管構造においては、(8)前記突起部が、前記吸気通路内で互いに離間し、かつ、鉛直方向で同一の高さを有する複数の突起によって構成されているのが好ましい。
【0027】
この構成により、複数の凹部に形成される氷塊の表面を複数の突起の高さ位置の近傍で一様な高さに抑えることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、吸気通路内の水が管内壁面部に氷結したとしても、その氷が吸気通路内に突出する突起部によって複数の凹部に区画されて形成され、剥がれた氷塊が大きな氷塊でなくなるようにしているので、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成を用いることなく、吸気管内でできた大きな氷塊により吸気系の重要部品を傷付け易いといった問題を解決することのできる低温環境での信頼性に優れた低コストの内燃機関の吸気管構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る内燃機関の吸気管構造の要部正面断面図であり、図2は、図1のII−II矢視断面図であり、図3は第1実施形態に係る内燃機関の模式構成図である。
【0031】
まず、構成について説明する。
【0032】
本実施形態の内燃機関の吸気管構造は、図1および図2に示すように構成され、図3に示すエンジン10に装備されているので、そのエンジン10の全体構成について説明すると、エンジン10は、図3に示すように、ヘッドカバー11が装着されたシリンダヘッド12、シリンダブロック13及びクランクケース14を有しており、シリンダヘッド12とシリンダブロック13によって複数の気筒15(図3中には1つのみ図示している)が形成されている。
【0033】
各気筒15内にはピストン16が収納されており、詳細は図示しないが、そのピストン16にはクランクケース14内の図示しないクランクシャフトがコネクティングロッドを介して連結されている。また、シリンダヘッド12内には動弁機構が収納されており、この動弁機構がクランクシャフトからの動力を基に(またはクランクシャフトと連動するよう独立して)駆動されるようになっている。
【0034】
クランクケース14の下部にはオイルパン18が設けられており、そこに潤滑用のオイルLが収容されている。また、詳細を図示しないが、エンジン10にはクランクシャフトの動力を基に駆動される例えば歯車ポンプからなるオイルポンプが設けられており、このオイルポンプによりオイルパン18からエンジンオイルLを汲み上げ、動弁機構のカムシャフトやロッカーアームやクランクシャフトの軸受け部等の各回転・摺動部を潤滑するようになっている。
【0035】
各気筒15内でピストン16の図中上方に形成される燃焼室17には、ピストン16のストロークに応じて吸気管21を通して空気が吸入されるとともに図示しないインジェクタによって燃料が噴射され、燃焼室17内での燃焼後の排気ガスが排気管22から排気されるようになっている。
【0036】
吸気管21と排気管22の間には、ターボ式過給機25が設けられている。
【0037】
図1および図3に示すように、ターボ式過給機25は、排気タービン27を排気エネルギにより回転させてそれに連結したコンプレッサ26のインペラ26aを回転させる公知のもので、例えば通路切替えによって必要時にのみ給排気経路上に挿入される。このターボ式過給機25に加え、吸気管21には、上流側からエアクリーナ31、インタークーラ32、スロットルバルブ33、及び、吸気管21内の圧力を検出する吸気圧センサ34がそれぞれ装着されている。
【0038】
一方、エンジン10には、図3に示すように、シリンダヘッド12側(ヘッドカバー内)からクランクケース14内に連通する図示しない換気通路が形成されており、その換気通路を通してエンジン10内が例えば図3中に白矢印で示す流れ方向に空気の流れを生じさせて換気されるようになっている。
【0039】
具体的には、エンジン10の側部には公知のPCVオイルセパレータ41が装着されている。
【0040】
このPCVオイルセパレータ41は、クランクケース14の上部から吸気側に還流させるブローバイガスから油分を除去するものである。
【0041】
PCVオイルセパレータ41とターボ式過給機25より上流側の吸気管21の間にはPCVホース58が設けられている。そして、このPCVホース58を通して、クランクケース14内の上部のブローバイガスがターボ式過給機25より上流側に還流されるようになっている。
【0042】
本実施形態の内燃機関の吸気管構造は、上述のようなエンジン10において、例えばターボ式過給機25のコンプレッサ26より上流側の吸気管21をそのコンプレッサ26のインレット部26bに接続する接続管部70(吸気管本体)として構成されている。
【0043】
図1および図2に示すように、接続管部70は、PCVホース58の一端部58dが接続される還流管部71と、ターボ式過給機25より上流側の吸気管21の一部を構成する吸気管部72(吸気管本体)と、によって構成されている。
【0044】
還流管部71は、その内部にエンジン10の内部からのブローバイガスを上流側の吸気通路21aに還流させる還流孔71sを有しており、エンジン10の内部からのブローバイガスを還流させる還流通路58aとエンジン10の吸気通路21aとの接続部分を形成している。
【0045】
また、吸気管部72は、上流側の吸気通路21a内(横断面中)の鉛直方向下方側に位置する内底壁面部21b(管内壁面部)から吸気通路21a内に突出する突起部72pを有しており、内底壁面部21bは、突起部72pの近傍で複数の方形の凹部21cに区画されている。
【0046】
具体的には、図2に示すように、突起部72pは、吸気通路21aの通路長さ方向に延在する複数の突条、例えば上向の楔形断面、すなわち、略三角形断面の複数の突条72p1、72p2、72p3(突起)によって構成されており、複数の突条72p1〜72p3は、吸気通路21a内で互いに平行に離間し、かつ、鉛直方向で同一の頂部(稜線)高さhを有している。ここにいう頂部高さhは、複数の凹部21cの全体の必要な容積に応じて設定され、例えば吸気管21の内径(吸気通路21aの直径)の1/5以下の高さ程度である。
【0047】
また、吸気管21の突起部72pは、上流側の吸気通路21aのうち最も鉛直方向下方側に位置する特定通路区間21z内に配置されており、エアクリーナ31の近傍からコンプレッサ26のインレット部26bへと徐々に吸気通路21aの鉛直方向の位置が低くなっている本実施形態では、例えばコンプレッサ26のインレット部26bに接続される吸気管21の一端部近傍に特定通路区間21zが設定されている。
【0048】
さらに、特定通路区間21zは、吸気管部72の吸気方向下流側の端部72cの近傍から還流孔71sが形成される吸気方向の還流孔位置までの範囲を含むように設定されている。
【0049】
また、コンプレッサ26のインレット部26bは、吸気管部72の吸気方向下流側の端部72cに接続される端部で、吸気管部72の吸気方向下流側の端部72cと同一の内径を有しており、インペラ26aに近付くほど内径が小さくなる内周面テーパ形状を有している。
【0050】
したがって、複数の突条72p1〜72p3が特定通路区間21z内で真直ぐに延在し、それら突条72p1〜72p3によって区画された複数の方形の凹部21cは、吸気方向上流側の端部で浅くなっているとともに、吸気方向下流側の端部で浅くなるコンプレッサ26のインレット部26b側の内底凹部26cに連続している。
【0051】
複数の凹部21cの全体の容積は、吸気管21内で結露し特定通路区間21zに溜まって氷結すると推定される水量(最大値)に応じて、例えば20〜30mL(ミリリットル)程度に設定されており、複数の凹部21cの個々の容積は、氷塊の大きさを制限すべくコンプレッサ26のインペラ26aの強度(氷塊を破砕する際の曲げ方向の衝撃に対する強度)に応じて、例えば全体の容積の1/3程度以下に設定されている。また、複数の突条72p1〜72p3の間隔Pおよび頂部高さhは、吸気の圧力損失を抑え得る範囲内で、それぞれ複数の凹部21cの個々の設定容積に応じて決定されている。
【0052】
次に、作用について説明する。
【0053】
上述のように構成された本実施形態の内燃機関の吸気管構造においては、エンジン10の運転停止時等にターボ式過給機25のコンプレッサ26より上流側の吸気通路21a内で水分が結露し、結露した水が鉛直方向下方側に位置する特定通路区間21z内の内底壁面部21b上で氷結し易い。しかし、特定通路区間21z内で氷結が生じたとしても、その氷は吸気通路21a内に突出する突起部72pによって複数の凹部21cに区画されて形成されることになり、ターボ式過給機25のコンプレッサ26内に入っても容易に破砕される程度の大きさになる。したがって、吸気管21内で剥がれた大きな氷塊が吸気系の重要部品であるコンプレッサ26のインペラ26aを傷付けてしまうということがなく、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成となることもない。
【0054】
また、本実施形態では、突起部72pが、吸気通路21aの通路長さ方向に延在する突条をなすことから、吸気管21の一部である吸気管部72の内部に突起部72pを容易にかつ低コストに形成できる。
【0055】
加えて、本実施形態では、吸気管21の一部である接続管部70に、エンジン10の内部からのブローバイガスを上流側の吸気通路21aに還流させる還流孔71sが形成され、特定通路区間21zが、吸気管部72の吸気方向下流側の端部72cの近傍から還流孔71sが形成される吸気方向の還流孔位置までの範囲を含むので、ブローバイガスに含まれる水分によりターボ式過給機25に接続される吸気管部72の吸気方向下流側の端部72cの近傍に氷塊ができ易くとも、その氷塊が複数の凹部21cに分けて形成され、コンプレッサ26のインペラ26aを損傷させることがない。
【0056】
また、突起部72pが、吸気通路21a内で互いに離間し、かつ、鉛直方向(同一の突出方向)で同一の高さを有する複数の突起72p1〜72p3によって構成されているので、複数の凹部21cに形成される氷塊の表面を複数の突起72p1〜72p3の高さ位置の近傍で一様な高さに抑えることができる。
【0057】
このように、本実施形態の内燃機関の吸気管構造においては、上流側の吸気通路21a内の水が鉛直方向下方側に位置する特定通路区間21zに氷結したとしても、その氷が吸気通路21a内に突出する突起部72pによって複数の凹部21cに区画・分割されて形成される。したがって、かかる氷は、ターボ式過給機25のコンプレッサ26内に入っても容易に破砕される程度の大きさになっており、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成を用いることなく、吸気管21内でできた氷塊によりコンプレッサ26のインペラ26aのような吸気系の重要部品を傷付け易いといった問題を解決することのできる低温環境での信頼性に優れた低コストの内燃機関の吸気管構造を提供することができる。
【0058】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の吸気管構造の一部断面を含む要部側面図である。なお、本実施形態は、上述の実施形態の接続管部70に類似する接続管部に、温水配管を装着したものであるので、既に述べた第1実施形態と同様の構成については同一符号を用いて説明する。
【0059】
図4に示すように、接続管部80は、PCVホース58の一端部58dが接続される還流管部81と、ターボ式過給機25より上流側の吸気管21の一部を構成する吸気管部82(吸気管本体)と、によって構成されている。
【0060】
還流管部81は、その内部にエンジン10の内部からのブローバイガスを上流側の吸気通路21aに還流させる還流孔81sを有しており、エンジン10の内部からのブローバイガスを還流させる還流通路58aとエンジン10の吸気通路21aとの接続部分を形成している。
【0061】
吸気管部82には、還流管部81の近傍の還流穴81sの位置に近接して温水配管83が装着されており、エンジン10の冷却水の一部がこの温水配管83に通されるとき、ターボ式過給機25のコンプレッサ26より上流側の吸気管21の一部である吸気管部82が還流管部81の近傍で加熱されるようになっている。
【0062】
また、吸気管部82は、上流側の吸気通路21a内の鉛直方向下方側に位置する内底壁面部21bから吸気通路21a内に突出する突起部82pを有しており、内底壁面部21bは、突起部82pの近傍で複数の方形の凹部21dに区画されている。
【0063】
突起部82pは、吸気通路21aの通路長さ方向に延在する複数の楔形断面の突条82p1、82p2、82p3、82p4、82p5で構成されており、それら突条82p1〜82p5は、特定通路区間21z内において、例えば吸気通路21aの通路長さ方向に互いに平行に、かつ、異なる鉛直方向高さで延在している。また、複数の方形の凹部21dは吸気通路21aの内周方向の両側で浅くなっている。
【0064】
このように構成された本実施形態の内燃機関の吸気構造においては、PCVガスから発生する水蒸気が、吸気通路21a内で結露したりして、ブローバイガス還流通路58aの吸気通路21aへの接続部分の近傍や鉛直方向の位置が最も低くなる特定通路区間21zに氷結したとしても、その氷が吸気通路21a内に突出する突起部82pによって複数の凹部21dに区画・分割されて形成される。また、特定通路区間21zの通路内周方向の両側では階段状に氷塊が分割形成される。したがって、かかる氷は、ターボ式過給機25のコンプレッサ26内に入っても容易に破砕される程度の大きさになっており、従来のように鉛直方向の最下方に位置する部位に溜まった水からできた大きな氷塊がターボ式過給機25のコンプレッサ26内に入ることがない。その結果、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成を用いることなく、吸気管21内でできた氷塊によりコンプレッサ26のインペラを傷付け易いといった問題を解決することができ、上述の実施形態と同様な効果が期待できる。
【0065】
(第3の実施の形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の吸気管構造の要部正面断面図であり、図6は、図5のVI−VI矢視断面図である。なお、本実施形態は、上述の第1実施形態に対して突起部の構成が相違するのみであるので、その相違点についてのみ詳述する。
【0066】
図5および図6に示すように、本実施形態においては、接続管部90は、PCVホース58の一端部58dが接続される還流管部91と、ターボ式過給機25より上流側の吸気管21の一部を構成する吸気管部92(吸気管本体)と、によって構成されている。
【0067】
還流管部91は、その内部にエンジン10の内部からのブローバイガスを上流側の吸気通路21aに還流させる還流孔91sを有しており、エンジン10の内部からのブローバイガスを還流させる還流通路58aとエンジン10の吸気通路21aとの接続部分を形成している。
【0068】
吸気管部92は、上流側の吸気通路21a内の鉛直方向下方側に位置する内底壁面部21bから吸気通路21a内に突出する突起部92pを有しており、内底壁面部21bは、突起部92pの近傍で複数の方形の凹部21eに区画されている。
【0069】
突起部92pは、吸気通路21aの通路長さ方向と交差する方向に延在する複数の楔形断面(略三角形断面)の突条92p1、92p2、92p3で構成されており、それら突条92p1〜92p3は、特定通路区間21z内において、例えば吸気通路21aの通路長さ方向と直交する方向に互いに平行に延在している。突条92p1〜92p3は、例えば延在方向に真直ぐであるが、湾曲していてもよい。
【0070】
このように構成された本実施形態においては、上述の第1実施形態と同様な効果に加えて、ターボ式過給機25のコンプレッサ26より上流側の吸気管21内で水の溜まり具合が複数の凹部21e間で異なり、複数の氷塊が同時に生成され難くなる。
【0071】
また、突起部92pを構成する複数の突条92p1〜92p3が、吸気通路21aの通路長さ方向と直交する方向に延在しているので、複数の凹部21eに形成される氷塊の周辺部が薄くなり、より破砕され易くなる。
【0072】
なお、上述の各実施形態にあっては、突起部72p、82p、92pの突条の断面形状を略三角形の楔形としたが、突条の断面は、半円形断面や方形断面その他の多角形断面であってもよい。また、突条は、吸気方向や吸気方向と直交する方向に延在するもののみならず、吸気方向と斜めに交差する方向に延在するものであってもよいし、相互に交差する複数の突条であってもよい。さらに、本発明にいう突起部は、突条のみならず、複数の突起を吸気方向やこれと交差する方向に配列したものであってもよく、整列された複数の突起によって吸気管内底部に複数の凹部を区画形成するようにしてもよい。また、上述の各実施形態にあっては、突起部72p、82p、92pが吸気管21の内底壁面部21b側にのみ形成されていたが、吸気管形状(吸気流や凹凸形状等)により内底壁面側よりも横断面中の上部側の管内壁面部に氷結し易い場合に、その近傍に突起部が形成されてもよく、吸気管の内壁面に全周にわたる突起部(例えば、複数条の螺旋状の突起)が形成されてもよく、その場合に氷結し易い場所で突起の頂部高さが大きくなるようにしてもよい。
【0073】
さらに、上述の各実施形態にあっては、吸気系の重要部品としてターボ過給機のコンプレッサを例示したが、本発明は、吸気通路内に大きな氷塊をできなくして吸気系の重要部品の損傷を防止するものであるから、ターボ過給機のコンプレッサ以外の他の吸気系の重要部品の上流側で氷結し易い部位についても適用できることはいうまでもない。また、吸気通路にブローバイガスを還流させる場合でなくとも、吸気通路内で比較的大きな氷塊ができ易い部位が生じる場合には、本発明を適用できる。
【0074】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の吸気管構造は、上流側の吸気通路内の水が管内壁面部に氷結したとしても、その氷が吸気通路内に突出する突起部によって複数の凹部に区画されて形成され、大きな氷塊にならないようにしているので、氷結を抑えるための複雑でコスト高な構成を用いることなく、吸気管内でできた大きな氷塊により吸気系の重要部品を傷付け易いといった問題を解決することのできる低温環境での信頼性に優れた低コストの内燃機関の吸気管構造を提供できるという効果を奏するものであり、内燃機関の吸気管構造、特にターボ式過給機のコンプレッサその他の吸気系の重要部品を装備する場合や吸気系の重要部品より上流側の吸気通路にブローバイガスを還流させる場合等に好適な内燃機関の吸気管構造全般に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内燃機関の吸気管構造の要部概略正面図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】第1実施形態に係る内燃機関の模式構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る内燃機関の吸気管構造の一部断面を含む要部概略側面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る内燃機関の吸気管構造の要部概略正面図である。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 エンジン(内燃機関)
14 クランクケース
15 気筒
21 吸気管
21a 吸気通路
21b 内底壁面部(管内壁面部)
21c、21d、21e 凹部(複数の凹部)
21z 特定通路区間
22 排気管
25 ターボ式過給機
26 コンプレッサ
26a インペラ
26b インレット部
26c 内底凹部
58 PCVホース
58a 還流通路
70、80、90 接続管部(吸気管本体)
71、81、91 還流管部
71s、81s、91s 還流孔
72、82、92 吸気管部(吸気管本体)
72c 端部
72p、82p、92p 突起部
72p1、72p2、72p3 突条(突起)
82p1、82p2、82p3、82p4、82p5 突条(突起)
83 温水配管
92p1、92p2、92p3 突条(突起)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路を形成する吸気管本体を備えた内燃機関の吸気管構造において、
前記吸気管本体が、前記吸気通路を形成する管内壁面部から前記吸気通路内に突出する突起部を有し、該突起部の近傍で前記管内壁面部が複数の凹部に区画されていることを特徴とする内燃機関の吸気管構造。
【請求項2】
前記吸気管本体が、前記吸気通路のうち前記内燃機関に装備されるターボ式過給機のコンプレッサより上流側の吸気通路を形成するとともに、前記コンプレッサのインレット部に接続され、
前記突出部が、前記上流側の吸気通路を形成する管内壁面部から前記吸気通路内に突出していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の吸気管構造。
【請求項3】
前記突起部が、前記吸気通路の通路長さ方向に延在する突条をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気管構造。
【請求項4】
前記突起部が、前記吸気通路の通路長さ方向と交差する方向に延在する突条をなすことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気管構造。
【請求項5】
前記突起部が、前記吸気通路の通路長さ方向と直交する方向に延在することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の吸気管構造。
【請求項6】
前記吸気管本体のうち鉛直方向下方側に位置する特定通路区間内に、前記突起部が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちいずれか1の請求項に記載の内燃機関の吸気管構造。
【請求項7】
前記吸気管本体に、前記内燃機関の内部からのブローバイガスを前記吸気通路に還流させる還流孔が形成され、
前記特定通路区間が、前記吸気管本体の吸気方向下流側の端部近傍から前記還流孔が形成される前記吸気方向の還流孔位置までの範囲を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか1の請求項に記載の内燃機関の吸気管構造。
【請求項8】
前記突起部が、前記吸気通路内で互いに離間し、かつ、鉛直方向で同一の高さを有する複数の突起によって構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のうちいずれか1の請求項に記載の内燃機関の吸気管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281317(P2009−281317A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135397(P2008−135397)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】