説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】排気浄化触媒の活性状態に応じて燃料添加弁の詰り防止のための燃料添加を行うことができる内燃機関の排気浄化装置を提供すること。
【解決手段】電子制御装置30は、燃料添加弁15の先端温度が高温になり、詰り防止添加を実行させるべき状態にある中で、酸化触媒13が活性化温度に達していない状態では、詰り防止添加を禁止する減量制御を行うように燃料添加弁15を制御する。そして、電子制御装置30は、酸化触媒13が活性化温度に達すると、詰り防止添加が禁止されたことで生じた未添加燃料量の合計と要求添加燃料量との合計である補正添加燃料量を積極的に添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に排気浄化触媒が設けられるとともに、排気通路における排気浄化触媒よりも上流側に燃料添加弁が設けられ、燃料添加弁の詰りを防止するために該燃料添加弁に燃料を噴射させる詰り防止添加を実行させる詰り防止手段を備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ディーゼルエンジンは、排気通路に排気浄化触媒を設けている。また、排気浄化能力の低下抑制のために、排気通路に燃料添加弁を設けて燃料を排気通路に供給している。
【0003】
燃料添加弁は、その噴孔が排気通路内に露出するようにして排気通路に設けられている。このため、燃料添加弁の噴孔は排気に曝されており、排気中に含まれる粒子状物質や内燃機関の摺動部から生じる微粒子等といった異物が燃料添加弁の噴孔に付着・堆積する。そして、噴孔に付着・堆積した異物が高温の排気に曝されることによりコーキングし、燃料添加弁の噴孔が詰まってしまうという問題がある。このような燃料添加弁の詰りを防止するために、排気浄化能力の低下抑制の目的以外のタイミングで、強制的に燃料添加(以下、詰り防止添加という)を行うことで、燃料添加弁の先端温度を下げる方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の燃料添加装置では、燃料添加弁の温度が所定の高温領域に入ったとき、噴孔が詰まることを回避するために詰り防止添加を行って、燃料添加弁の先端温度を下げるようにしている。そして、特許文献1では、この詰り防止添加の際、予め設定された定常運転時での添加量を添加するのではなく、燃料添加弁の先端における温度上昇の遅れを考慮して、燃料添加弁の温度上昇に見合った適切な添加量で燃料添加を行うようにして、無駄な添加量の軽減を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−71175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、排気浄化触媒は活性化温度以上で活性化して処理能力が発揮される一方で、活性化温度に達していない状態(未活性状態)では処理能力が十分に発揮されない。そして、排気浄化触媒が未活性状態にあるときに、詰り防止添加が行われると、添加された未燃燃料が排気浄化触媒に付着して、排気浄化触媒の活性化温度が上昇してしまい、排気浄化触媒の処理能力が低下してしまうという問題がある。しかしながら、特許文献1の燃料添加装置は、排気浄化触媒の活性状態については何ら考慮しておらず、ましてや排気浄化触媒が未活性状態にあるときでの詰り防止添加については何ら考慮も示唆もされていない。
【0007】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、排気浄化触媒の活性状態に応じて燃料添加弁の詰り防止のための燃料添加を行うことができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路に排気浄化触媒が設けられるとともに、前記排気通路における前記排気浄化触媒よりも上流側に燃料添加弁が設けられ、前記燃料添加弁の詰りを防止するために該燃料添加弁に燃料を噴射させる詰り防止添加を実行させる詰り防止手段を備えた内燃機関の排気浄化装置において、前記排気浄化触媒が活性化状態か否かを推定する触媒活性推定手段を備え、前記詰り防止手段は、前記詰り防止添加を実行させるべき状態にある中で、前記触媒活性推定手段により前記排気浄化触媒が活性化していないと推定されるときは、前記排気浄化触媒が活性化するまで、単位時間当たりの燃料添加量を制限、又は詰り防止添加を禁止する減量制御を行うものである。
【0009】
この発明によれば、詰り防止手段は、排気浄化触媒が活性化していないときに、単位時間当たりの燃料添加量を制限、又は詰り防止添加を禁止する減量制御を行う。よって、燃料添加弁における詰り防止のために、排気浄化触媒が活性化していない状態で燃料添加が行われることで、添加された未燃燃料が排気浄化触媒に付着して、その活性化温度が上昇してしまい、排気浄化触媒の処理能力が低下してしまうことを防止することができる。
【0010】
また、前記詰り防止手段は、前記減量制御を実施した後、前記排気浄化触媒が活性化したときには、前記詰り防止添加に必要な要求添加燃料量よりも燃料添加量を増量するようにしてもよい。具体的には、前記詰り防止添加に必要な要求添加燃料量を推定する要求添加燃料量推定手段を備えるとともに、前記詰り防止添加を禁止したことで生じた未添加燃料量を合計して総未添加燃料量を算出する総未添加燃料量算出手段を備え、前記詰り防止手段は、前記詰り防止添加の減量制御後に前記排気浄化触媒が活性化したときに、前記要求添加燃料量と前記総未添加燃料量とを合計した補正添加燃料量を前記燃料添加弁から添加させる制御を行うようにしてもよい。
【0011】
これによれば、詰り防止添加を必要とする状況で減量制御を実施しても、詰り防止添加の開始後は、その減量制御時に添加すべき燃料量も考慮して燃料を添加することができる。よって、減量制御を実施した後であっても、添加する燃料量が減ることがなく、しかも燃料を積極的に添加して速やかに詰り防止機能を回復させることができる。
【0012】
また、前記詰り防止手段は、単位時間当たりの補正燃料添加量が、前記排気浄化触媒の処理能力を低下させないように設定された上限添加燃料量を越えないように、前記単位時間当たりの補正添加燃料量を制限する制御を行うようにしてもよい。
【0013】
これによれば、詰り防止添加によって供給される燃料量が、排気浄化触媒の処理能力の上限値を越えることが防止される。その結果として、詰り防止添加を行う際に、触媒処理能力の上限値を越える燃料が供給されることで、燃料溜まりによる白煙が発生したり、排気浄化触媒の過昇温により排気浄化触媒が劣化したりすることを防止することができる。
【0014】
また、前記内燃機関の始動時の状態を判断する状態判断手段を備え、前記詰り防止手段は、前記状態判断手段により判断される前記内燃機関の始動時の状態が、暖機後再始動時である場合に前記詰り防止添加を行うようにしてもよい。
【0015】
これによれば、内燃機関の状態を判断し、内燃機関の暖機後再始動時に詰り防止添加を行うようにした。このため、内燃機関冷間時のように詰り防止添加を行う必要がないときに、詰り防止添加が行われてしまって燃料が無駄になることを無くすことができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、排気浄化触媒の活性状態に応じて燃料添加弁の詰り防止のための燃料添加を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は実施形態におけるディーゼルエンジンの吸排気系を示す模式図、(b)は詰り防止添加の際の時間と添加回数との関係を示すグラフ。
【図2】電子制御装置における詰り防止添加の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」と記載する)の排気浄化装置に具体化した一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、内燃機関としてのエンジン10には、吸気通路11と排気通路12とが接続されている。排気通路12における下流側の部分には、排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して浄化する排気浄化触媒としての酸化触媒13が設けられている。また、排気通路12における酸化触媒13よりも下流側には、排気中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するフィルタ14が設けられている。フィルタ14は、多孔質のセラミック構造体で構成されており、排気中のPMはこの多孔質の壁を通過する際に捕集される。
【0019】
フィルタ14では、PMが所定量以上堆積すると、フィルタ14に堆積したPMを燃焼除去させてフィルタ14の捕集機能を再生する再生処理が行われる。PMを燃焼除去するためには、フィルタ14を通過する排気温度を適切な温度(例えば650℃以上の高温)にする必要がある。この高温を実現するために、本実施形態では、燃料添加弁15が排気通路12における酸化触媒13よりも上流側に設けられている。燃料添加弁15は、その噴孔(図示せず)が排気通路12内に露出するように設けられるとともに、一定の圧力(燃料供給圧)に調整された燃料が噴孔から排気通路12内に添加されるようになっている。そして、燃料添加弁15により排気通路12に添加された燃料が酸化触媒13で酸化反応することにより熱を発生させ、その熱により排気温度が上昇する結果、フィルタ14上流の排気温度が上昇する。
【0020】
燃料添加弁15には、燃料通路16aを介して燃料ポンプ16が接続されるとともに、燃料ポンプ16は燃料タンク17に接続されている。また、排気通路12における酸化触媒13よりも上流側であって、且つ燃料添加弁15よりも下流側には排気温センサ18が設けられている。
【0021】
エンジン10の制御を司る電子制御装置30は、中央処理制御装置(CPU)、各種プログラムやマップ等を予め記憶した読出専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、タイマカウンタ、入力インターフェース、出力インターフェース等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成されている。
【0022】
電子制御装置30には、クランク角度検出器31、水温センサ32、排気温センサ18が信号接続されている。クランク角度検出器31は、図示しないクランク軸の回転角度(クランク角度)を検出する。クランク角度検出器31によって検出されたクランク角度検出情報は、電子制御装置30へ送られる。電子制御装置30は、クランク角度検出器31によって検出されたクランク角度検出情報に基づいて、エンジン回転数を算出する。また、水温センサ32は、エンジン10の冷却水温を検出する。水温センサ32によって検出された水温検出情報は、電子制御装置30へ送られる。また、排気温センサ18は、排気通路12における酸化触媒13よりも上流側の排気温度を検出する。排気温センサ18によって検出された排気温度検出情報は、電子制御装置30へ送られる。
【0023】
電子制御装置30は、上記各種センサから送られる各種検出情報に基づいて、エンジン制御に係る各種制御を実行する。さらに、電子制御装置30は、エンジン10の燃料噴射ノズル(図示せず)と電気的に接続されるとともに、これらセンサの検出結果により把握されるエンジン運転状態に応じて、燃料噴射ノズルによる燃料噴射時期制御や燃料噴射量制御を実行する。
【0024】
さて、フィルタ14の再生処理を行うために排気通路12に燃料を供給する燃料添加弁15において、この燃料添加弁15の噴孔は排気通路12内に露出し、排気に曝されている。この噴孔に付着・堆積したPM等の異物が高温に曝されることで噴孔が詰ることを防止するために、電子制御装置30は、フィルタ14の再生処理(排気浄化能力の低下抑制)の目的以外のタイミングで、燃料添加弁15に強制的に燃料を噴射させ、燃料添加弁15の先端温度を低下させる詰り防止添加を実行させる。この詰り防止添加により、燃料添加弁15の先端温度が下げられて、異物が噴孔に付着・堆積してコーキングを起こすことを防止し、噴孔が詰ることが防止されるようになっている。よって、本実施形態における電子制御装置30は、燃料添加弁15の詰りを防止するために燃料添加弁15に燃料を噴射させる詰り防止手段としての機能を有する。
【0025】
ところで、酸化触媒13が活性化温度に達していない状態(活性化していない状態)で、詰り防止添加が行われると、添加された未燃燃料が酸化触媒13に付着してしまう。すると、酸化触媒13の活性化温度が、未燃燃料が付着する前の通常状態にある状態と比べて上昇してしまい、酸化触媒13が未活性の状態が長く続く結果、酸化触媒13の処理能力が低下してしまう。そこで、電子制御装置30は、酸化触媒13の活性状態(活性化温度に達したか否か)に応じて詰り防止添加を実行させるか否かを決定するようにしている。すなわち、電子制御装置30は、酸化触媒13が完全に活性化温度に達した(活性化した)ことを条件に、詰り防止添加を実行するようにしている。
【0026】
以下、本実施形態での詰り防止添加について説明する。
まず、電子制御装置30は、エンジン10の状態に応じて詰り防止添加を行うか否かを判断する。よって、本実施形態における電子制御装置30は、エンジン10の始動時におけるエンジン状態を判断する状態判定手段としての機能も有する。
【0027】
エンジン10が冷間時から始動した場合(所謂、コールドスタート時)、燃料添加弁15の先端温度は低温であると考えられるため、詰り防止添加を行う必要性は低い。一方、エンジン10が始動し、停止された後に再始動した場合は、排気によって燃料添加弁15の先端温度が既に高温になっていると考えられるため、詰り防止添加を行う必要性が高い。
【0028】
そして、電子制御装置30は、エンジン10始動時のエンジン10状態から詰り防止添加を行うか否かを判定する。本実施形態では、電子制御装置30は、排気温センサ18により検出された排気温度と、水温センサ32により検出されたエンジン10の冷却水温とからエンジン10始動時のエンジン10状態を判断する。例えば、エンジン10始動時において、排気温センサ18により検出された排気温度と、水温センサ32により検出されたエンジン10の冷却水の水温とがほぼ一致した場合、電子制御装置30は、エンジン10が冷間時から始動したと判断する。そして、電子制御装置30は、エンジン10が冷間時からの始動であると判断したことに基づいて、エンジン10状態判断時点での詰り防止添加が不要であると判断する。
【0029】
一方、エンジン10始動時において、排気温センサ18により検出された排気温度が、水温センサにより検出されたエンジン10の冷却水の水温よりも高い場合、電子制御装置30は、エンジン10の再始動と判断する。そして、電子制御装置30は、エンジン10が再始動であると判断したことに基づいて、エンジン10状態判断時点での詰り防止添加が必要であると判断する。
【0030】
次に、詰り防止添加が必要である場合には、電子制御装置30は、詰り防止添加に必要な要求添加燃料量を推定する。よって、本実施形態における電子制御装置30は、要求添加燃料量推定手段しての機能も有する。
【0031】
この要求添加燃料量は、エンジン回転数及び燃料噴射量に基づいて推定される。本実施形態では、要求添加燃料量は、エンジン回転数及び燃料噴射量に対し、単位時間当たりの要求添加燃料量を関係付けた要求添加燃料量算出マップを用いて推定される。なお、要求添加燃料量算出マップは、エンジン回転数及び燃料噴射量に基づいて予め実験により設定されており、ROMに記憶されている。
【0032】
次に、電子制御装置30は、推定された要求添加燃料量を複数回に分けて添加する際の、基本添加インターバルを設定する。
燃料を添加(噴射)する燃料添加弁15は、一回の噴射で添加する燃料量(以下、基準添加燃料量という)が予め定められており、この基準添加燃料量は、燃料添加弁15の開弁時間と燃料添加弁15の燃料供給圧により噴射可能な範囲で、比較的少量な値で設定される。そして、電子制御装置30は、この基準添加燃料量と燃料添加弁15の燃料供給圧に基づき、基準添加燃料量を噴射するために要する燃料添加弁15の通電時間τを算出する。ここで、「通電時間τ」とは、燃料添加弁15の開弁から閉弁までの時間、すなわち開弁時間のことである。
【0033】
そして、電子制御装置30は、上述の要求添加燃料量を通電時間τ(基準添加燃料量)で分割することで基本添加インターバルを算出する。ここで、「基本添加インターバル」とは、燃料添加弁15が開弁して基準添加燃料量分の添加が行われて燃料添加弁15が閉弁し、再び、燃料添加弁15が開弁するまでの間隔のことをいう。
【0034】
次に、電子制御装置30は、酸化触媒13が活性化状態か否かを推定し、触媒活性推定手段としての機能を有する。電子制御装置30は、酸化触媒13の温度の代表値として、排気温センサ18により検出される排気温度を常時把握して、この検出された排気温度から、酸化触媒13が活性化状態にあるか否かを推定する。そして、排気温度が所定の温度範囲内であれば、酸化触媒13が完全に活性化温度に達し、活性化状態にあると推定する。電子制御装置30は、酸化触媒13が完全に活性化温度に達し、活性化状態にあると推定すると、上述の基本添加インターバルで燃料添加弁15により詰り防止添加を行う。
【0035】
一方、電子制御装置30は、排気温センサ18により検出される排気温度が所定の温度範囲外であれば、酸化触媒13が完全に活性化温度に達しておらず、活性化していないと推定する。そして、電子制御装置30は、酸化触媒13が完全に活性化温度に達しておらず、活性化していないと推定すると、詰り防止添加を禁止する減量制御を行う。電子制御装置30は、酸化触媒13が完全に活性化温度に達し、活性化するまで詰り防止添加の禁止を継続し、酸化触媒13が完全に活性化温度に達し、活性化すると詰り防止添加を開始させる。
【0036】
ここで、図1(b)のグラフG1に、詰り防止添加が必要であると判断されたとき、酸化触媒13が完全に活性化温度に達していなくても、詰り防止添加が実行されたときの時間と添加回数との関係を示す。なお、このグラフG1に示す詰り防止添加での開始タイミングをt0とする。また、図1(b)のグラフでは、横軸に時間を表し、縦軸に添加回数を表す。
【0037】
一方、図1(b)のグラフG2に、詰り防止添加が必要であると判断されながらも、酸化触媒13が完全に活性化温度に達しておらず詰り防止添加が禁止され、その後、詰り防止添加が開始されたときの時間と添加回数との関係を示す。このグラフG2に示す詰り防止添加の仕方での防止添加の開始タイミングをt1とする。
【0038】
図1(b)に示すように、グラフG2に示す詰り防止添加では、詰り防止添加が禁止されることにより、開始タイミングt1がグラフG2に示す詰り防止添加での開始タイミングt0より遅れている。そして、グラフG2に示す詰り防止添加では、グラフG1に示す詰り防止添加での開始タイミングt0から開始タイミングt1に至る間には、グラフG1に示す詰り防止添加では添加されるはずであるが、実際は添加されない燃料(未添加燃料)が発生する。
【0039】
本実施形態では、電子制御装置30は、詰り防止添加が必要であると判断されてから詰り防止添加が開始される(酸化触媒13が完全に活性化温度に達する)までの間に生じる未添加燃料量をRAMに記憶するようになっている。さらに、電子制御装置30は、排気温度が所定の温度範囲内になったら(酸化触媒13が完全に活性化温度に達したら)、RAMに記憶された未添加燃料量を合計し、総未添加燃料量を算出する。よって、本実施形態における電子制御装置30は、詰り防止添加を禁止したことで生じた未添加燃料量を合計して総未添加燃料量を算出する総未添加燃料量算出手段としての機能も有する。
【0040】
また、電子制御装置30は、排気温度が所定の温度範囲内になったら(酸化触媒13が完全に活性化温度に達したら)、総未添加燃料量と要求添加燃料量とを合計した補正添加燃料量を算出し、その補正添加燃料量で詰り防止添加を開始させる。
【0041】
このとき、電子制御装置30は、算出された補正添加燃料量を複数回に分けて添加する際の、補正添加インターバルを設定する。この補正添加インターバルは、単位時間当たりの補正添加燃料量を、通電時間τ(基準添加燃料量)で分割して算出される。この補正添加インターバルは、上述した基本添加インターバルより短く設定される。よって、図1(b)に示すように、グラフG2に示す詰り防止添加では、グラフG1に示す詰り防止添加と比べて、詰り防止添加開始直後にグラフG1の傾きが大きくなっており、単位時間当たりでの添加回数が多くなる。
【0042】
また、排気浄化装置においては、詰り防止添加によって供給される燃料量が、酸化触媒13の処理能力を低下させないようにするために、詰り防止添加によって供給される燃料量に上限(上限添加燃料量)が設定されている。この上限添加燃料量は、燃料添加弁15からの燃料量と、エンジン10の燃焼室からの排気中のHC成分との合計量が酸化触媒13の処理能力を上回らないように設定されることで、酸化触媒13の処理能力の上限値に対してある程度余裕を持たせた値になっている。また、上限添加燃料量は固定値としてROMに予め記憶されている。
【0043】
そして、電子制御装置30は、単位時間当たりの補正添加燃料量が上限添加燃料量を越えるか否かを判定する。電子制御装置30は、判定結果が肯定判定の場合、補正添加インターバルを変更した(長くした)制限添加インターバルを設定し、単位時間当たりの燃料添加量が上限添加燃料量を下回るように設定する。この制限添加インターバルは、補正添加インターバルよりも長く、基本添加インターバルよりも短いインターバルになっている。なお、制限添加インターバルを設定することにより未添加燃料が生じるが、電子制御装置30はこの未添加燃料量をRAMに記憶するようになっている。さらに、電子制御装置30は、RAMに記憶された未添加燃料量を合計するとともに、補正添加燃料量に合計し、詰り防止添加に反映させる。このため、制限添加インターバルを設定することにより、補正添加インターバルで詰り防止添加を行う場合と比べると、その実行期間が延長される。
【0044】
一方、単位時間当たりの補正添加燃料量が上限添加燃料量を越えない場合は、電子制御装置30は補正添加インターバルで詰り防止添加を実行する。
次に、本実施形態の電子制御装置30による詰り防止添加の処理手順について説明する。
【0045】
図2に示すように、まず、電子制御装置30は、排気温センサ18により検出された排気温度と、水温センサ32により検出されたエンジン10の冷却水の水温とに基づいて、エンジン10が冷間時から始動したか否かを判定する(ステップS11)。この判定結果が否定の場合(ステップS11においてNO)、電子制御装置30は、排気温センサ18により検出された排気温度が所定の温度範囲内であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、ステップS12では、電子制御装置30は、排気温度から酸化触媒13が活性化温度に達している(活性化状態にある)か否かを判定し、酸化触媒13の活性状態を推定する。一方、ステップS11の判定結果が肯定の場合(ステップS11においてYES)、電子制御装置30は処理を終了する。
【0046】
次に、ステップS12の判定結果が否定(酸化触媒13が活性化温度に達していない状態)の場合(ステップS12においてNO)、電子制御装置30は、詰り防止添加を禁止する(減量制御を行う)ように燃料添加弁15を制御する(ステップS13)。次に、電子制御装置30は、禁止されたことで生じた未添加燃料量をRAMに記憶し(ステップS14)、ステップS15に移行する。
【0047】
一方、ステップS12の判定結果が肯定(酸化触媒13が活性化温度に達している状態)の場合(ステップS12においてYES)、エンジン10は暖機後から再始動し、燃料添加弁15の先端温度は既に高温であると考えられるため、詰り防止添加の必要性が高い。よって、電子制御装置30は、基本添加インターバルに設定された詰り防止添加を実行する(ステップS20)。
【0048】
ステップS15では、電子制御装置30は、排気温センサ18により検出された排気温度が所定の温度範囲内であるか否かを判定する。この判定結果が肯定の場合(ステップS15においてYES)、電子制御装置30は、RAMに記憶された未添加燃料量を合計し、総未添加燃料量を算出する(ステップS16)。一方、ステップS15の判定結果が否定の場合(ステップS15においてNO)、電子制御装置30は、ステップS13に移行する。
【0049】
ステップS16の次に、電子制御装置30は、補正添加燃料量を算出する(ステップS17)。次に、電子制御装置30は、単位時間当たりの補正添加燃料量が上限添加燃料量を越えるか否かを判定する(ステップS18)。この判定結果が肯定の場合(ステップS18においてYES)、電子制御装置30は、制限添加インターバルに設定された詰り防止添加を実行する(ステップS19)。一方、ステップS18の判定結果が否定の場合(ステップS18においてNO)、電子制御装置30は、補正添加インターバルに設定された詰り防止添加を実行する(ステップS21)。
【0050】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)電子制御装置30は、燃料添加弁15の先端温度が上昇し、詰り防止添加を行う必要がある場合であっても、酸化触媒13が活性化温度に達していない(活性化していない)状態では、詰り防止添加を禁止するように燃料添加弁15を制御する。よって、詰り防止添加のために添加された未燃燃料が酸化触媒13に付着して、酸化触媒13の活性化温度が上昇してしまうことを回避することができ、詰り防止添加を行うことで酸化触媒13の処理能力が低下してしまうことを防止することができる。
【0051】
(2)電子制御装置30は、詰り防止添加が禁止されている間、その禁止によって生じた未添加燃料量を記憶し、酸化触媒13が活性化温度に達して活性化すると、詰り防止添加に必要な要求添加燃料量よりも燃料添加量を増量して燃料添加弁15から添加させる。したがって、詰り防止添加を必要とする状況で詰り防止添加を禁止しても、詰り防止添加の開始後は必要な燃料添加量を添加して詰り防止機能を回復させることができる。
【0052】
(3)電子制御装置30は、詰り防止添加が禁止されている間、その禁止によって生じた未添加燃料量を記憶し、酸化触媒13が活性化温度に達すると、総未添加燃料量と要求添加燃料量とを合計した補正添加燃料量を燃料添加弁15から短期間で添加させる。したがって、詰り防止添加を必要とする状況で詰り防止添加を禁止しても、詰り防止添加の開始後は燃料を積極的に添加して速やかに詰り防止機能を回復させることができる。
【0053】
(4)電子制御装置30は、詰り防止添加が禁止されている間、その禁止によって生じた未添加燃料量を記憶し、酸化触媒13が活性化温度に達すると、総未添加燃料量と要求添加燃料量から補正添加燃料量を算出する。さらに、電子制御装置30は、単位時間当たりの補正添加燃料量が上限添加燃料量を越えないように補正を行う。このため、詰り防止添加によって供給される燃料量が、酸化触媒13の処理能力を越えることが防止される。その結果として、詰り防止添加を行う際に、酸化触媒13の処理能力を越える燃料が供給されることで、燃料溜まりによる白煙が発生したり、酸化触媒13の過昇温により酸化触媒13が劣化したりすることを防止することができる。また、酸化触媒13の処理能力の上限値を越える燃料が供給されることが回避されるため、無駄な燃料添加を防止することができる。
【0054】
(5)燃料添加弁15の詰りを防止するためには、単位時間当たりにまとめて大量の燃料を添加するよりも、短いインターバルで燃料を細かく添加することが有効である。そして、本実施形態では、補正添加燃料量を、燃料添加弁15の基準添加燃料量で複数回に分割して添加するようにし、しかも、詰り防止添加の開始直後は、インターバルを短くして短時間に多量の燃料を添加するようにしたため、燃料添加弁15の詰りを効果的に防止することができる。
【0055】
(6)エンジン10の冷間始動時においては、燃料添加弁15の先端温度は低温であると考えられるため、詰り防止添加の必要性は低い。一方、エンジン10の暖機後再始動においては、燃料添加弁15の先端温度は既に高温であると考えられるため、詰り防止添加の必要性が高い。そして、電子制御装置30は、エンジン10始動時の状態を判断することで、詰り防止添加を行うか否かを判断する。このため、エンジン10冷間時のように詰り防止添加を行う必要がないときに、詰り防止添加が行われてしまって燃料が無駄になることを無くすことができる。
【0056】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、電子制御装置30は、酸化触媒13が活性化温度に達しておらず、活性化状態にない状態では、詰り防止添加を禁止する減量制御を行うように燃料添加弁15を制御したが、これに限らない。すなわち、酸化触媒13の温度が活性化温度に達しておらず、活性化状態にないときは、詰り防止添加の必要があると判断されると、その判断された時点から詰り防止添加を開始させる。このとき、単位時間当たりの要求燃料添加量を制限する(少量に抑える)減量制御を行うようにしてもよい。具体的には、詰り防止添加の開始からの添加インターバルを長く設定して、単位時間当たりの基準添加燃料量での添加回数を減らすようにする。又は、詰り防止添加の開始からの添加インターバルは変更せずに、1回当たりの添加燃料量を少なくする。
【0057】
○ 実施形態において、電子制御装置30は、補正添加燃料量を燃料添加弁15の通電時間τで分割して補正添加インターバルを算出し、補正添加インターバルに設定された詰り防止添加を実行することで、短いインターバルで燃料を細かく添加するようにしたが、これに限らない。例えば、電子制御装置30は、補正添加燃料量を単位時間当たりにまとめて添加するように燃料添加弁15を制御してもよい。
【0058】
○ 実施形態において、排気通路12における酸化触媒13よりも上流側であって、且つ燃料添加弁15よりも下流側に排気温センサ18を設け、排気温センサ18により検出される排気温度を用いて酸化触媒13が活性化状態か否かを推定するようにしたが、これに限らない。例えば、排気通路12における酸化触媒13よりも下流側に設けられる排気温センサからの検出情報により酸化触媒13が活性化状態か否かを推定してもよい。この場合、酸化触媒13よりも下流側の排気温センサが触媒活性推定手段を構成する。
【0059】
○ 実施形態において、排気通路12における酸化触媒13よりも上流側であって、且つ燃料添加弁15よりも下流側に排気温センサ18を設け、排気温センサ18により検出される排気温度を用いて酸化触媒13が活性化状態か否かを推定するようにしたが、これに限らない。例えば、排気温センサ18に加えて、排気通路12における酸化触媒13よりも下流側にも排気温センサを設けて、酸化触媒13よりも上流側の排気温度と、酸化触媒13よりも下流側の排気温度との差を利用して、酸化触媒13が活性化状態か否かを推定するようにしてもよい。この場合、酸化触媒13を挟んだ2つの排気温センサが触媒活性推定手段として機能する。
【0060】
○ 実施形態において、触媒として酸化触媒13を適用したが、これに限らず、例えば、排気浄化触媒としてNOx吸蔵還元触媒を適用してもよい。
○ 実施形態において、排気浄化触媒として酸化触媒13を適用したが、これに限らず、例えば、酸化触媒を担持したフィルタを適用してもよい。
【0061】
○ 本発明は、ディーゼルエンジンの排気浄化装置に限らず、ガソリンエンジンの排気浄化装置に適用することもできる。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0062】
(イ)前記排気浄化触媒は酸化触媒であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
(ロ)前記内燃機関はディーゼルエンジンであることを特徴とする請求項1〜請求項5及び前記技術的思想(イ)のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【符号の説明】
【0063】
10…内燃機関としてのディーゼルエンジン、12…排気通路、13…排気浄化触媒としての酸化触媒、15…燃料添加弁、30…触媒活性推定手段、詰り防止手段、要求添加燃料量推定手段、総未添加燃料量算出手段及び状態判断手段としての機能を有する電子制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に排気浄化触媒が設けられるとともに、前記排気通路における前記排気浄化触媒よりも上流側に燃料添加弁が設けられ、前記燃料添加弁の詰りを防止するために該燃料添加弁に燃料を噴射させる詰り防止添加を実行させる詰り防止手段を備えた内燃機関の排気浄化装置において、
前記排気浄化触媒が活性化状態か否かを推定する触媒活性推定手段を備え、
前記詰り防止手段は、前記詰り防止添加を実行させるべき状態にある中で、前記触媒活性推定手段により前記排気浄化触媒が活性化していないと推定されるときは、前記排気浄化触媒が活性化するまで、単位時間当たりの燃料添加量を制限、又は詰り防止添加を禁止する減量制御を行うことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記詰り防止手段は、前記減量制御を実施した後、前記排気浄化触媒が活性化したときには、前記詰り防止添加に必要な要求添加燃料量よりも燃料添加量を増量することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記詰り防止添加に必要な要求添加燃料量を推定する要求添加燃料量推定手段を備えるとともに、前記詰り防止添加を禁止したことで生じた未添加燃料量を合計して総未添加燃料量を算出する総未添加燃料量算出手段を備え、
前記詰り防止手段は、前記詰り防止添加の減量制御後に前記排気浄化触媒が活性化したときに、前記要求添加燃料量と前記総未添加燃料量とを合計した補正添加燃料量を前記燃料添加弁から添加させる制御を行う請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記詰り防止手段は、単位時間当たりの補正添加燃料量が、前記排気浄化触媒の処理能力を低下させないように設定された上限添加燃料量を越えないように、前記単位時間当たりの補正添加燃料量を制限する制御を行うことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記内燃機関の始動時の状態を判断する状態判断手段を備え、
前記詰り防止手段は、前記状態判断手段により判断される前記内燃機関の始動時の状態が、暖機後再始動時である場合に前記詰り防止添加を行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−87629(P2012−87629A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232588(P2010−232588)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】