説明

内燃機関の燃料供給装置

【課題】機関駆動式の高圧燃料ポンプに燃料を供給する電動式の低圧燃料ポンプにおける電力消費を抑え、機関の燃費性能を向上させる。
【解決手段】機関の始動時には、始動時用に予め設定された吐出量に基づいて低圧燃料ポンプを制御する。始動後は、定常運転状態であるか過渡運転状態であるかを判別し、定常運転時には、始動時よりも低圧燃料ポンプの吐出量を少なくし、過渡運転時には、加速時であれば定常時よりも吐出量を多くし、減速時であれば定常時よりも吐出量を少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関駆動式の高圧燃料ポンプと、該高圧燃料ポンプに燃料を供給する電動式の低圧燃料ポンプとを備えた内燃機関の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動式の低圧燃料ポンプから吐出された燃料を、低圧レギュレータで所定の低圧値に調圧し、前記所定の低圧値に調圧された燃料を、機関駆動式の高圧燃料ポンプによって加圧させ、高圧燃料ポンプから吐出された燃料を、高圧レギュレータで所定の高圧値に調圧し、前記所定の高圧値に調圧された燃料を燃料噴射弁に供給する内燃機関の燃料供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−236060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、電動式の低圧燃料ポンプの吐出量を一定に制御し、余分な燃料を低圧レギュレータから燃料タンク内に戻すことで、高圧燃料ポンプに供給される燃料の圧力を所定の低圧値に調圧していた。
このため、機関の燃料消費量(燃料噴射量)が少ないときなどにおいては、低圧レギュレータから燃料タンクに戻される燃料量が多くなるが、低圧レギュレータから燃料タンクに戻される分の燃料は、電動式の低圧燃料ポンプが過剰に吐出した燃料であるから、これが、機関の燃費性能を低下させる要因になっていた。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、機関駆動式の高圧燃料ポンプに燃料を供給する電動式の低圧燃料ポンプにおける電力消費を抑え、機関の燃費性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本願発明では、機関駆動式の高圧燃料ポンプに燃料を供給する電動式の低圧燃料ポンプの吐出量を、内燃機関の運転条件に応じて変更することを特徴とする。
上記発明によると、内燃機関の運転条件によって最低限必要とされる吐出量が異なることに対応して、電動式の低圧燃料ポンプの吐出量を変更する。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、電動式の低圧燃料ポンプの吐出量がそのときの運転条件に対して過剰になることで、低圧燃料ポンプが無駄に電力を消費することを抑止でき、機関の燃費性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】低圧燃料ポンプの吐出量をフィードホワード制御する実施形態における燃料供給装置のシステム構成図。
【図2】低圧燃料ポンプの吐出量制御の第1実施形態を示すフローチャート。
【図3】低圧燃料ポンプの吐出量制御の第2実施形態を示すフローチャート。
【図4】低圧燃料ポンプの吐出量制御の第3実施形態を示すフローチャート。
【図5】低燃圧系の圧力をフィードバック制御する実施形態における燃料供給装置のシステム構成図。
【図6】低圧燃料ポンプの吐出量制御の第4実施形態を示すフローチャート。
【図7】低圧燃料ポンプの吐出量制御の第5実施形態を示すフローチャート。
【図8】低圧燃料ポンプの吐出量制御の第6実施形態を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における内燃機関の燃料供給装置のシステム構成図である。
図1において、車両用内燃機関11に供給する燃料を貯留する燃料タンク12が設けられ、該燃料タンク12内の燃料が、電動式の低圧燃料ポンプ13及び機関駆動式の高圧燃料ポンプ14を介して燃料噴射弁15に圧送される。
【0010】
前記燃料噴射弁15は、電磁コイルにて発生する電磁力で弁体を開弁駆動し、例えば内燃機関11の各燃焼室内に直接燃料を噴射する。
前記低圧燃料ポンプ13は、燃料タンク12から吸い込んだ燃料を、低圧燃料配管16を介して高圧燃料ポンプ14に圧送する。
前記低圧燃料配管16の途中から燃料を燃料タンク12内に戻すリターン配管17が設けられており、前記リターン配管17の途中には、低圧燃料配管16内の燃圧を調圧するための低圧レギュレータ18が設けられる。
【0011】
前記低圧レギュレータ18は、低圧燃料配管16内の圧力が所定低圧値を超えると開弁し、リターン配管17を介して燃料タンク12内に燃料を戻すことで、低圧燃料配管16内の燃圧が所定低圧値を超えないようにする。
前記高圧燃料ポンプ14は、高圧ポンプ制御ソレノイド21,パイロット弁22,吸入弁23,ポンプ室24,吐出弁25を含んで構成される。
【0012】
前記吸入弁23は、低圧燃料配管16を介して送られた低圧燃料のポンプ室24内への供給を制御する一方向弁であり、ポンプ室24内の高圧が閉弁方向に作用し、ポンプ室24内で昇圧された燃料の低圧燃料配管16側への流出を阻止する。
また、前記吸入弁23は、高圧ポンプ制御ソレノイド21で駆動されるパイロット弁22によって強制的に開弁駆動されるようになっている。
【0013】
前記ソレノイド21の非通電状態では、前記パイロット弁22がスプリング21aによって押し出されることで、前記吸入弁23が開状態に保持される一方、前記ソレノイド21の通電状態では、前記パイロット弁22がスプリング21aの付勢力に抗してソレノイド21側に引き込まれることで、前記吸入弁23が閉状態に保持される。
前記ポンプ室24内には、プランジャ24aが往復動可能に嵌挿され、該プランジャ24aは、機関11のカムシャフトに設けたポンプ駆動用のカムによって往復動する。
【0014】
ここで、前記プランジャ24aの上昇中の所定期間において、前記ソレノイド21に通電して吸入弁23を閉状態に保持させれば、ポンプ室24内の燃料が昇圧されることになり、ポンプ室24内の圧力が所定以上になると、一方向弁である吐出弁25が開弁して、高圧燃料が吐出される。
前記吐出弁25は、高圧燃料配管31を介して燃料ギャラリーパイプ32に接続され、前記燃料ギャラリーパイプ32に接続された各燃料噴射弁15に、高圧燃料ポンプ14で高圧に昇圧された燃料が分配供給される。
【0015】
また、前記燃料ギャラリーパイプ32と前記低圧燃料配管16とを接続するリリーフ配管33が設けられ、該リリーフ配管33には、燃料ギャラリーパイプ32内の燃圧が異常な高圧になったときに開弁する一方向弁であるリリーフ弁34が設けられる。
前記燃料ギャラリーパイプ32内の燃圧を検出する燃圧センサ41が設けられており、コントロールユニット51は、前記燃圧センサ41で検出される燃圧が目標燃圧になるように、前記ソレノイド21の通電タイミングを制御する。
【0016】
前記コントロールユニット51は、マイクロコンピュータを含んで構成され、前記燃圧センサ41の他、機関11の吸入空気量を検出するエアフローメータ42、機関11のクランク角を検出するクランク角センサ43、機関11の吸入空気量を調整するスロットル弁の開度を検出するスロットル開度センサ44などからの検出信号が入力されると共に、スタータスイッチ45のオン・オフ信号が入力される。
【0017】
そして、前記コントロールユニット51は、前記各種センサの検出信号に基づき検出されるエンジン負荷などから高圧側の目標高燃圧を決定し、前記燃圧センサ41で検出される燃圧が前記目標高燃圧になるように、前記ソレノイド21の通電タイミングをフィードバック制御する。
また、前記コントロールユニット51は、図2のフローチャートに示すようにして、低圧燃料ポンプ13の吐出量をフィードホワード制御する。
【0018】
図2のフローチャートにおいて、ステップS101では、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過しているか否かを判断する。
そして、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過している場合、即ち、機関11の始動後であるときには、ステップS102へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として始動後用に予め設定された値を設定する。
【0019】
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、始動後の目標吐出量に相当するデューティとして例えば50%を設定する。
一方、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過していない場合、即ち、スタータスイッチ45のオン状態、又は、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間以内である機関11の始動時には、ステップS103へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として始動時用に予め設定された値(>始動後の目標吐出量)を設定する。
【0020】
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、始動時の目標吐出量に相当するデューティとして例えば100%を設定する。
そして、ステップS104では、前記設定されたデューティに基づいて前記低圧燃料ポンプ13の通電を制御し、低圧燃料ポンプ13の吐出量を調整する。
【0021】
即ち、前記低圧燃料ポンプ13において、機関11の始動時に比べて始動後の吐出量を少なくするものであり、始動時には最大吐出量とすることで燃圧を速やかに上昇させることができる一方、最大吐出量が要求されることがない始動後には、吐出量を減らすことで、低圧燃料ポンプ13における電力消費が抑えられ、燃費向上を図ることができる。
尚、始動時を、スタータスイッチ45のオン状態、又は、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間以内に限定するものではなく、例えば、スタータスイッチ45のオフ後、機関温度が所定温度に達するまでを、始動時と判断させることができる。
【0022】
図3のフローチャートは、低圧燃料ポンプ13の吐出量制御の第2実施形態を示す。
ステップS201では、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以下であるか否かを判別することで、機関11の定常運転状態であるか否かを判断する。
尚、前記吸入空気量やスロットル開度に代えて、吸入負圧,アクセル開度,燃料噴射量などの変化から、過渡運転を判断させることができる。
【0023】
機関11の定常運転状態であると判断されると、ステップS202へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として定常運転状態用に予め設定された値を設定する。
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、定常運転状態用の目標吐出量に相当するデューティとして例えば50%を設定する。
【0024】
また、前記定常運転状態用の目標吐出量(デューティ)を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定することができる。
一方、ステップS201で、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値を越えていて、機関11の過渡運転状態であると判断されると、ステップS203へ進む。
【0025】
ステップS203では、最新値から前回値を減算して求められる吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量が前記所定値を越えているか否かを判別することで、過渡運転が加速運転であるか減速運転であるかを判断する。
そして、機関11が加速運転状態であると判断されると、ステップS204へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として加速運転状態用に予め設定された値(>定常運転状態用の目標吐出量)を設定する。
【0026】
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、加速運転状態用の目標吐出量に相当するデューティとして、定常運転時用よりも大きな値(例えば100%)を設定する。
尚、前記加速運転状態用の目標吐出量(デューティ)を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標吐出量(デューティ)は、定常時よりも大きな値に設定する。
【0027】
加速時には、機関11の燃料消費量(燃料噴射量)が増大変化することで、燃圧が不安定になってしまう可能性があるので、定常時よりも低圧燃料ポンプ13の吐出量を多くする。
一方、ステップS203で機関11が減速運転状態であると判断されると、ステップS205へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として減速運転状態用に予め設定された値(<定常運転状態用の目標吐出量)を設定する。
【0028】
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、減速運転状態用の目標吐出量に相当するデューティとして、定常運転時用よりも小さい値(例えば30〜40%)を設定する。
尚、前記減速運転状態用の目標吐出量(デューティ)を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標吐出量(デューティ)は、定常時よりも小さい値に設定する。
【0029】
そして、ステップS206では、前記設定されたデューティに基づいて前記低圧燃料ポンプ13の通電を制御し、低圧燃料ポンプ13の吐出量を調整する。
減速時には、機関11の燃料消費量(燃料噴射量)が減少変化するから、低圧燃料ポンプ13の吐出量を減らしても、燃圧を確保することが可能であるので、定常時よりも低圧燃料ポンプ13の吐出量を少なくする。
【0030】
従って、大きな吐出量が要求される加速時に必要吐出量を確保しつつ、加速時に対して定常運転時に吐出量を減らし、更に、減速運転時には定常運転時よりも吐出量を減らすので、低圧燃料ポンプ13における電力消費が抑えられ、燃費向上を図ることができる。
尚、簡易には、定常運転と過渡運転とに判別し、定常運転時に比べて過渡運転時の吐出量を増やすようにし、加速時に必要な吐出量を確保しつつ、定常運転時に吐出量を減らして低圧燃料ポンプ13における電力消費を抑えるようにすることができる。
【0031】
図4のフローチャートは、低圧燃料ポンプ13の吐出量制御の第3実施形態を示す。
ステップS301では、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過しているか否かを判断する。
そして、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過していない場合、即ち、スタータスイッチ45のオン状態、又は、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間以内である機関11の始動時には、ステップS302へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として始動時用に予め設定された値を設定する。
【0032】
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、始動時の目標吐出量に相当するデューティとして例えば100%を設定する。
一方、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過している場合、即ち、機関11の始動後であるときには、ステップS303へ進む。
【0033】
ステップS303では、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以下であるか否かを判別することで、機関11の定常運転状態であるか否かを判断する。
機関11の定常運転状態であると判断されると、ステップS304へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として定常運転状態用に予め設定された値(<始動時の目標吐出量)を設定する。
【0034】
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、定常運転状態用の目標吐出量に相当するデューティとして例えば50%を設定する。
また、前記定常運転状態用の目標吐出量(デューティ)を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定することができる。
【0035】
一方、ステップS303で、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値を越えていて、機関11の過渡運転状態であると判断されると、ステップS305へ進む。
ステップS305では、最新値から前回値を減算して求められる吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量が前記所定値を越えているか否かを判別することで、過渡運転が加速運転であるか減速運転であるかを判断する。
【0036】
そして、機関11が加速運転状態であると判断されると、ステップS306へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として加速運転状態用に予め設定された値(>定常時の目標吐出量)を設定する。
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、加速運転状態用の目標吐出量に相当するデューティとして、定常運転時用よりも大きな値(例えば100%)を設定する。
【0037】
尚、前記加速運転状態用の目標吐出量(デューティ)を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標吐出量(デューティ)は、定常時よりも大きな値に設定する。
加速時には、機関11の燃料消費量(燃料噴射量)が増大変化することで、燃圧が不安定になってしまう可能性があるので、定常時よりも低圧燃料ポンプ13の吐出量を多くする。
【0038】
一方、ステップS305で機関11が減速運転状態であると判断されると、ステップS307へ進み、前記低圧燃料ポンプ13の目標吐出量として減速運転状態用に予め設定された値(<定常時の目標吐出量)を設定する。
前記低圧燃料ポンプ13の通電がデューティ制御され、デューティ(オンデューティ)によって吐出量が制御される場合には、減速運転状態用の目標吐出量に相当するデューティとして、定常運転時用よりも小さい値(例えば30〜40%)を設定する。
【0039】
尚、前記減速運転状態用の目標吐出量(デューティ)を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標吐出量(デューティ)は、定常時よりも小さい値に設定する。
ステップS308では、前記設定されたデューティに基づいて前記低圧燃料ポンプ13の通電を制御し、低圧燃料ポンプ13の吐出量を調整する。
【0040】
上記第3実施形態によると、始動時及び加速時には、低圧燃料ポンプ13の吐出量を多くして、燃圧上昇に必要な又は燃圧維持に必要な吐出量を確保できる一方、始動後の定常運転時には吐出量が減らされ、更に、減速運転時には定常運転時よりも吐出量を減らすので、低圧燃料ポンプ13における電力消費が抑えられ、燃費向上を図ることができる。
次に、低圧燃料配管16内の燃圧を検出し、該検出値が目標低燃圧に近づくように、低圧燃料ポンプ13の吐出量をフィードバック制御するシステムにおいて、上記実施形態と同様に、始動時・始動後、定常・過渡(加速・減速)に応じて低圧燃料ポンプ13の吐出量を変更させて、低圧燃料ポンプ13における電力消費を抑制する実施形態を説明する。
【0041】
図5は、低圧燃料配管16内の燃圧を目標低燃圧にすべく低圧燃料ポンプ13の吐出量をフィードバック制御するシステムを示す。
この図5は、前記図1に示したシステムに対し、リターン配管17及び低圧レギュレータ18を廃止し、代わりに、低圧燃料配管16内の燃圧を検出する低圧系燃圧センサ48を設けてある。
【0042】
そして、図5に示すシステムにおいては、図6のフローチャートに示すようにして、低圧燃料ポンプ13の吐出量を制御する。
吐出量制御の第4実施形態を示す図6のフローチャートにおいて、ステップS401では、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過しているか否かを判断する。
【0043】
そして、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過している場合、即ち、機関11の始動後であるときには、ステップS402へ進み、低圧燃料配管16内の燃圧の目標値である目標低燃圧として、始動後用に予め設定された値(例えば200kPa)を設定する。
一方、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過していない場合、即ち、スタータスイッチ45のオン状態、又は、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間以内である機関11の始動時には、ステップS403へ進み、前記目標低燃圧として始動時用に予め設定された値を設定する。
【0044】
ここで、始動時用の目標低燃圧は、前記始動後用の目標低燃圧に比べて高く設定され、例えば、始動時用の目標低燃圧は350kPaに設定される。
そして、ステップS404では、前記設定された目標低燃圧と低圧系燃圧センサ48で検出された実際の燃圧との偏差に基づいて前記低圧燃料ポンプ13の通電制御デューティを演算し、該デューティによって低圧燃料ポンプ13の吐出量を制御することで、低圧系燃圧センサ48で検出される実際の燃圧が前記目標低燃圧に近づくようにする。
【0045】
ここで、始動時に比べて始動後の目標低燃圧が低く、始動後において低圧燃料ポンプ13の吐出量が抑えられ、低圧燃料ポンプ13における電力消費が抑制される。
一方、始動時には始動後よりも目標低燃圧を高く設定することで吐出量を増やすから、早期に燃圧を上昇させることができる。
図7のフローチャートは、低圧燃料ポンプ13の吐出量をフィードバック制御するシステムに適用される吐出量制御の第5実施形態を示す。
【0046】
ステップS501では、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以下であるか否かを判別することで、機関11の定常運転状態であるか否かを判断する。
機関11の定常運転状態であると判断されると、ステップS502へ進み、前記目標低燃圧として定常運転状態用に予め設定された値(例えば200kPa)を設定する。
【0047】
尚、前記定常運転状態用の目標低燃圧を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定することができる。
一方、ステップS501で、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値を越えていて、機関11の過渡運転状態であると判断されると、ステップS503へ進む。
【0048】
ステップS503では、最新値から前回値を減算して求められる吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量が前記所定値を越えているか否かを判別することで、過渡運転が加速運転であるか減速運転であるかを判断する。
そして、機関11が加速運転状態であると判断されると、ステップS504へ進み、前記定常運転状態用の目標低燃圧よりも高い、加速運転状態用に予め設定された値を目標低燃圧として設定する。
【0049】
前記加速運転状態用の目標低燃圧は、定常運転状態用の目標低燃圧よりも高い値に設定され、例えば、加速運転状態用の目標低燃圧は350kPaに設定される。
尚、前記加速運転状態用の目標低燃圧を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標低燃圧は、定常時よりも大きな値に設定する。
【0050】
加速時には、機関11の燃料消費量(燃料噴射量)が増大変化することで、燃圧が不安定になってしまう可能性があるので、定常時よりも目標低燃圧を高くすることで、低圧燃料ポンプ13の吐出量を多くする。
一方、ステップS503で機関11が減速運転状態であると判断されると、ステップS505へ進み、前記目標低燃圧として減速運転状態用に予め設定された値を設定する。
【0051】
前記減速運転状態用の目標低燃圧は、定常運転状態用の目標低燃圧よりも低い値に設定され、例えば、減速運転状態用の目標低燃圧は200kPa未満に設定される。
尚、前記減速運転状態用の目標低燃圧を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標低燃圧は、定常時よりも小さい値に設定する。
【0052】
そして、ステップS506では、前記設定された目標低燃圧と低圧系燃圧センサ48で検出された実際の燃圧との偏差に基づいて前記低圧燃料ポンプ13の通電制御デューティを演算し、該デューティによって低圧燃料ポンプ13の吐出量を制御することで、低圧系燃圧センサ48で検出される実際の燃圧が前記目標低燃圧に近づくようにする。
減速時には、機関11の燃料消費量(燃料噴射量)が減少変化するから、低圧燃料ポンプ13の吐出量を減らしても、燃圧を確保することが可能であるので、定常時よりも目標低燃圧を小さくして低圧燃料ポンプ13の吐出量を少なくする。
【0053】
従って、大きな吐出量が要求される加速時に必要吐出量を確保しつつ、加速時に対して定常運転時には吐出量を減らし、更に、減速運転時には定常運転時よりも吐出量を減らすので、低圧燃料ポンプ13における電力消費が抑えられ、燃費向上を図ることができる。
尚、簡易には、定常運転と過渡運転とに判別し、定常運転時に比べて過渡運転時の目標低燃圧を高くして吐出量を増やすようにし、加速時に必要な吐出量を確保しつつ、定常運転時に吐出量を減らして低圧燃料ポンプ13における電力消費を抑えるようにすることができる。
【0054】
図8のフローチャートは、低圧燃料ポンプ13の吐出量をフィードバック制御するシステムに適用される吐出量制御の第6実施形態を示す。
ステップS601では、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過しているか否かを判断する。
そして、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過していない場合、即ち、スタータスイッチ45のオン状態、又は、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間以内である機関11の始動時には、ステップS602へ進み、前記目標低燃圧として始動時用に予め設定された値(350kPa)を設定する。
【0055】
一方、スタータスイッチ45がオンからオフに切り換ってから所定時間が経過している場合、即ち、機関11の始動後であるときには、ステップS603へ進む。
ステップS603では、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値以下であるか否かを判別することで、機関11の定常運転状態であるか否かを判断する。
【0056】
機関11の定常運転状態であると判断されると、ステップS604へ進み、前記目標低燃圧として定常運転状態用に予め設定された値を設定する。
前記定常運転状態用の目標低燃圧は、始動時よりも低い値に設定され、例えば200kPaに設定される。
尚、前記定常運転状態用の目標低燃圧を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定することができる。
【0057】
一方、ステップS603で、吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量の絶対値が所定値を越えていて、機関11の過渡運転状態であると判断されると、ステップS605へ進む。
ステップS605では、最新値から前回値を減算して求められる吸入空気量やスロットル開度の単位時間当たりの変化量が前記所定値を越えているか否かを判別することで、過渡運転が加速運転であるか減速運転であるかを判断する。
【0058】
そして、機関11が加速運転状態であると判断されると、ステップS606へ進み、前記目標低燃圧として加速運転状態用に予め設定された値を設定する。
前記加速運転状態用の目標低燃圧は、定常時用の目標低燃圧よりも高い値に設定され、例えば350kPaに設定される。
尚、前記加速運転状態用の目標低燃圧を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標低燃圧は、定常時よりも大きな値に設定する。
【0059】
加速時には、機関11の燃料消費量(燃料噴射量)が増大変化することで、燃圧が不安定になってしまう可能性があるので、定常時よりも目標低燃圧を高くすることで低圧燃料ポンプ13の吐出量を多くする。
一方、ステップS605で機関11が減速運転状態であると判断されると、ステップS607へ進み、前記目標低燃圧として減速運転状態用に予め設定された値を設定する。
【0060】
前記減速運転状態用の目標低燃圧は、定常時用の目標低燃圧(例えば200kPa)よりも低い値に設定される。
尚、前記減速運転状態用の目標低燃圧を、機関負荷・機関回転速度に基づいて可変に設定させることができるが、その場合も、各運転条件に対応する目標低燃圧は、定常時よりも小さい値に設定する。
【0061】
ステップS608では、前記設定された目標低燃圧と低圧系燃圧センサ48で検出された実際の燃圧との偏差に基づいて前記低圧燃料ポンプ13の通電制御デューティを演算し、該デューティによって低圧燃料ポンプ13の吐出量を制御することで、低圧系燃圧センサ48で検出される実際の燃圧が前記目標低燃圧に近づくようにする。
上記第6実施形態によると、始動時及び加速時には、目標低燃圧を大きくすることで低圧燃料ポンプ13の吐出量を多くして、燃圧上昇に必要な又は燃圧維持に必要な吐出量を確保できる一方、始動後の定常運転時には目標低燃圧を低くして吐出量を減らし、更に、減速運転時には、定常運転時よりも目標低燃圧を低くしてより吐出量を減らすので、低圧燃料ポンプ13における電力消費が抑えられ、燃費向上を図ることができる。
【0062】
ここで、上記実施形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下に効果と共に記載する。
(イ)請求項2記載の内燃機関の燃料供給装置において、
スタータスイッチのオン状態及び前記スタータスイッチがオンからオフに切り換ってから所定時間内を、前記内燃機関の始動時として判断することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【0063】
上記発明によると、スタータスイッチがオンからオフに切り換ってから所定時間が経過するまでは始動時であると見なされ、前記所定時間が経過する前と経過した後とで低圧燃料ポンプの吐出量が変更される。
従って、機関の完爆直後の燃圧が不安定になり易い条件下で、比較的大きな吐出量を確保して、燃圧の維持を図ることができる。
(ロ)請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記低圧燃料ポンプの制御信号を、運転条件毎に予め設定された値に変更することで、前記低圧燃料ポンプの吐出量を変更することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【0064】
上記発明によると、始動時であるか始動後であるか、定常運転状態であるか過渡運転状態であるか、加速運転状態であるか減速運転状態であるかなどに応じて、予め低圧燃料ポンプの制御信号が決定されており、そのときの運転条件に対応する制御信号によって低圧燃料ポンプを制御する。
従って、運転条件毎の適正な吐出量に簡便に制御することができ、低圧燃料ポンプにおける電力消費を抑え、機関の燃費性能を向上させることができる。
(ハ)請求項1〜4のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料供給装置において、
前記低圧燃料ポンプ下流の低圧燃圧系における燃圧を検出する燃圧センサを備え、該燃圧センサで検出される燃圧が目標値に近づくように、前記低圧燃料ポンプの制御信号をフィードバック制御する構成であって、
運転条件に応じて前記目標値を変更することで、前記低圧燃料ポンプの吐出量を変更することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【0065】
上記発明によると、始動時であるか始動後であるか、定常運転状態であるか過渡運転状態であるか、加速運転状態であるか減速運転状態であるかなどに応じて、目標燃圧が変更され、該目標燃圧に実際の燃圧が近づくように低圧燃料ポンプを制御することで、低圧燃料ポンプの吐出量が運転条件に応じて変更される。
従って、目標燃圧に基づいて低圧燃料ポンプの吐出量をフィードバック制御するシステムにおいて、低圧燃料ポンプにおける電力消費を抑え、機関の燃費性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0066】
11…内燃機関、12…燃料タンク、13…低圧燃料ポンプ、14…高圧燃料ポンプ、15…燃料噴射弁、16…低圧燃料配管、17…リターン配管、18…低圧プレッシャレギュレータ、21…高圧ポンプ制御ソレノイド、22…パイロット弁、23…吸入弁、24…ポンプ室、25…吐出弁、31…高圧燃料配管、32…燃料ギャラリーパイプ、33…リリーフ配管、34…リリーフ弁、41…燃圧センサ、42…エアフローメータ、43…クランク角センサ、44…スロットル開度センサ、45…スタータスイッチ、51…コントロールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関駆動式の高圧燃料ポンプと、該高圧燃料ポンプに燃料を供給する電動式の低圧燃料ポンプとを備え、前記高圧燃料ポンプから吐出される燃料を内燃機関に供給する内燃機関の燃料供給装置において、
前記低圧燃料ポンプの吐出量を内燃機関の運転条件に応じて変更することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
前記内燃機関の始動時であるか否かに応じて前記低圧燃料ポンプの吐出量を変更することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
前記内燃機関が過渡運転状態であるか定常運転状態であるかに応じて前記低圧燃料ポンプの吐出量を変更することを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項4】
前記内燃機関の過渡運転状態が加速運転状態であるか減速運転状態であるかに応じて前記低圧燃料ポンプの吐出量を変更することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−122600(P2011−122600A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29209(P2011−29209)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【分割の表示】特願2006−306550(P2006−306550)の分割
【原出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】