説明

内燃機関用クーラントポンプ構造

車両のエンジンシャフトを備えて内燃機関のためのクーラントポンプ構造(100、200)にして、ポンプケースとポンプシャフト(206)を備え、ポンプシャフトの端部にはポンプインペラ(218)が設けられ、ポンプシャフト(206)は内燃機関の内側に配された軸受(220)によって基本的に片持ち梁状に支えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念(所謂おいて部分、プリアンブル部分)にしたがい、車両のエンジンシャフトを備える内燃機関のためのクーラントポンプ構造にして、ポンプケースと端部にポンプインペラを配するポンプシャフトとを備えるクーラントポンプ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
普通一般に、車両内燃機関の必要な冷却は、冷却循環を流通する水のようなクーラント(冷却剤)を用いて行われ、当該クーラントは冷却されるべき範囲にて熱を吸収して、当該熱を熱交換器を介して他の場所に逆に放出する。クーラントの循環再利用のためにポンプが設けられる。
【0003】
そのような水ポンプ構造は例えば特許文献1に示され、記載されている。それによれば、水ポンプは、ポンプ本体とポンプカバーから形成されたポンプケースを有し、これは内燃機関のクランクケースと接続している。ポンプケース内にはポンプシャフトが収容され、シャフト支持区間にて回転可能に支承されている。その際、シャフト支持区間は、ポンプシャフト径の3倍に対応する長さを有し、注油のために油を浴びせられる。潤滑油は給油開口によってクランクケースから供給される。ポンプ空間のシールのために、軸方向にシャフト支持区間を閉じてパッキンが設けられている。
【0004】
この水ポンプ構造はポンプシャフト軸受に基づいて組み立てられ、付加的にこの軸受に軸方向に接続されたシールによって非常に長くなっており、このことは特にオートバイにおける内燃機関の使用に際して取り付け位置に応じて不具合となり得る。加えて水ポンプの接続のために長いクーラントホースが必要である。
【0005】
原動機機能にとって重要なコンポーネントを出来る限り多く収容すべきエンジンシャフトを有した内燃機関は特許文献2に示され記載されている。このエンジンシャフトは質量バランスウェイトの外に、端部側にクーラントを循環利用するためのブレード付きインペラを収容し、ポンプケースはクランクケース又はシリンダヘッドにおいてエンジンシャフトの配置に左右されて一体化される。
【0006】
クランクケース又はシリンダヘッドへの水ポンプ構造のそのような一体化は、例えばシリンダヘッドでのTジョイント、特別なシール及び/又は補助軸受を備えた非常にコストのかかる構造の原因となる。特に特別なシリンダヘッド加工が必要で、加えてポンプ構造の解放が不可能である。
【0007】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開公報第19941891号明細書(特開2000−87744号に対応する)
【特許文献2】ドイツ特許出願公開公報第19945948号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、本発明の課題は、特にオートバイでの使用のために、コンパクトで短く組み立てられる内燃機関を考慮して、同時に簡単でメンテナンスフレンドリーな構造を備えた、冒頭に記したクーラントポンプ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題の解決は、請求項1の特徴構成によりなされる。基礎をなす着想は、内燃機関内に配された軸受を用いたポンプシャフトの基本的に片持ち梁状の支承を含んでいる。本発明によれば、内燃機関内の軸受はシリンダヘッド又はクランクケース内に配置される。
【0010】
本発明の特に好適な実施形態と更なる展開は従属請求項の対象である。
本発明の特に有利な実施例によれば、ポンプシャフトは相対回転不能に且つ共軸に当該シャフトを動かすエンジンシャフトと、特にカムシャフトと連結されている。水ポンプ回転数並びにポンプ出力は、内燃機関回転数に直接依存して、その際、ポンプシャフトは他の実施例によれば直接的又は間接的に他のエンジンシャフトによって動かされ得る。
【0011】
ポンプシャフトの支承がポンプ構造に隣接配置された最後のエンジンシャフト軸受によってなされるのが目的に適っている。ポンプシャフトがカムシャフトと連結されている場合、最後のカムシャフト軸受は同時にポンプインペラを担持するポンプシャフトのための軸受要素である。
【0012】
ポンプケースとポンプシャフトの間にシール、特にメカニカルシール(滑動リングシール)が配置され、これによって同時に心出しがなされる本発明の形態は非常に好都合である。メカニカルシールは管部分状に構成され、その半径方向内面でポンプシャフトに対しシールする。その半径方向外面でシールは一方でポンプケースでの収容部の内径で、他方でクランクケースでの収容部の内径で支持される。
【0013】
ネジ接合によってエンジンシャフトにポンプインペラとポンプシャフトを固定するためにポンプシャフトが中空に形成され、エンジンシャフトが端部でネジ部を有するならば、非常に目的に適っていると考えられる。その際、ポンプシャフトはエンジンシャフトに内側で又は外側で心出しされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面に関連して本発明の特に好ましい実施例を詳細に説明する。
図1は、ここでは詳細に示さない車両内燃機関、つまりオートバイ用四気筒直列エンジンのためのクーラントポンプ構造100を示す。クーラントポンプ構造100は端面で内燃機関のシリンダヘッド102と接続しており、その際、内燃機関は走行方向に対して横向きに組み立てられているので、個々のシリンダは隣り合ってヘッドが斜め前方に傾いて置かれている。それに応じて、走行方向にてクーラントポンプ構造100は左に配置されている。シリンダの充填がインテーク片150,152,154,156を介して上からなされる一方で、燃焼ガスは斜め下前方に搬出される。対応してインテークバルブ158,160,162,164作動のためのインテークカムシャフトが上にある。
【0015】
クーラントポンプ構造100は吸引ポート168を有し、ここを通ってクーラント、例えば冷却水がクーラ170のサーモスタット166を越えて吸引される。範囲172においてクーラントはウォータジャケットに供給され、その際、シリンダヘッド102冷却のための主たる流れへとクランクケース冷却のための部分流れへのクーラント流れの分配がなされる。例えばウォームアップ段階の間は(まだ)必要ないが、内燃機関の冷却の場合、クーラントはサーモスタット位置に基づくフィード調節に対応して、クーラ170を迂回して直接バイパス片174を介して吸引ボート168へ戻り流れる。先ず所定温度に達した際、サーモスタット168はバイパス流れを制御し、その結果、吸引ポート168はクーラ170を含めてライン176を介して作用される。
【0016】
車両用内燃機関のためのクーラントポンプ構造200の詳細を断面で図2に示す。クーラントポンプ構造200は端面で内燃機関のシリンダヘッド202と接続しており、吸引ポート222を介してクーラントを吸い込む。半径方向流れポンプ(遠心式ポンプ)の押圧側が226で示されている。カムシャフトの支承のためにシリンダヘッド202は、カムシャフトを収容する皿状/シェル状の軸受位置を有する。軸受は不図示の軸受ブリッジを用いて閉じられる。図面には、入口カムシャフト204の端面最後の、カム224に隣接する軸受220が示されている。
【0017】
カムシャフト204と同軸にクーラントポンプシャフト206が連結している。その際、カムシャフト端部でのネジ部228における中空クーラントポンプシャフト206を介したネジは、ポンプインペラ218、ポンプシャフト206及びカムシャフト204の間の摩擦接合をもたらす。ポンプシャフト206の心出しは、当面のように、カムシャフトに内側で又は代わりに外側でなされる。クーラントポンプケース214は圧縮された標準・滑動リングシール212を備えており、シリンダヘッド202でねじ締められ、その際、滑動リングシール212のケースはシリンダヘッド202でのカムシャフト支承軸に対する心出しに利用される。クーラントポンプケース214にクーラントポンプカバー216が接続している。シリンダヘッド側の油漏れ防止性は、クーラントポンプ支承カバー210とシリンダヘッド202の間で圧縮されたシャフトシールシング208を用いて達成される。
【0018】
入口カムシャフト204の端面最後の、カム224に隣接する軸受220は同時に、ポンプインペラ218を担持する片持ち梁状支承のポンプシャフト206のための軸受要素でもある。それ故、ポンプシャフト206の個別支承は不必要であり、内燃機関の構造長さが著しく縮められ得る。とりわけオートバイに横に組み込まれた直列四気筒の場合、これは根本的な改善を意味する。コンパクトな測定量(寸法)とそれに付随して現れる走行方向での突出面が僅かであることのために、エアロダイナミック、燃費、加速性及び終端速度に関して特に有利さがもたらされる。更に不可欠な構造スペース、重量及びコストが減る。とりわけ横及び斜め前方へ傾いた取り付け位置のために、クーラー及びその直後に配されたシリンダヘッド202若しくはクーラントポンプの間の接続が非常に短いホースを用いてなされ得る。列挙した利点のほかに、デザインに関連した利点ももたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】車両の内燃機関のためのクーラントポンプ構造を概略的に示す図である。
【図2】車両の内燃機関のためのクーラントポンプ構造を詳細に示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
200 ポンプ構造
204 カムシャフト
206 ポンプシャフト
212 シール
214 ポンプケース
218 ポンプインペラ
220 軸受
228 ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンシャフトを有する内燃機関のためのクーラントポンプ構造にして、ポンプケースと端部にポンプインペラを配するポンプシャフトとを備えるクーラントポンプ構造において、内燃機関の内側に配された軸受(220)を用いてポンプシャフト(206)を基本的に片持ち梁状に支承することを特徴とするクーラントポンプ構造。
【請求項2】
ポンプシャフト(206)がエンジンシャフトと、特にカムシャフト(204)と同軸に連結していることを特徴とする請求項1に記載のクーラントポンプ構造。
【請求項3】
ポンプシャフト(206)の支承が、ポンプ構造(200)に隣接配置された最後のエンジンシャフト軸受(220)を用いてなされることを特徴とする請求項1又は2に記載のクーラントポンプ構造。
【請求項4】
ポンプケース(214)とポンプシャフト(206)の間にシール(212)が配され、これによって同時に心出しがなされることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクーラントポンプ構造。
【請求項5】
ネジ接合を用いてエンジンシャフト(204)にポンプインペラ(218)とポンプシャフト(206)をしっかり固定するために、ポンプシャフト(206)が中空に形成され、エンジンシャフト(204)が端部でネジ部(228)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のクーラントポンプ構造。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−519850(P2007−519850A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549905(P2006−549905)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014043
【国際公開番号】WO2005/071237
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】