説明

内燃機関用点火コイル

【課題】簡単な構成で、鉄心を確実に接地させることができ、ノイズの低減に有効な内燃機関用点火コイルを低コストで提供する。
【解決手段】一次コイルおよび二次コイルと、一次コイルおよび二次コイルを磁気的に結合する鉄心12と、コイルおよび鉄心を収納する絶縁ケース13と、外部ハーネスからイグナイタ19が備えるパワートランジスタ19aの接地側へ電気的に接続されるコネクタソケット11の接地端子11′とを備える内燃機関用点火コイルにおいて、コネクタソケット11の接地端子11′と鉄心12とが電気的に結合するように、コネクタソケット11の接地端子11′の端部11′aを鉄心12の底部12aに近接させて配置し、コネクタソケット11の接地端子11′と鉄心12の底部12aとの間に、応力緩和用の導電性ゴム10を介在させて、鉄心12を接地するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、たとえば、自動車のエンジンに取り付けられ、エンジンのプラグホールの底に設けられた点火プラグに火花放電を発生させるための高電圧を供給する内燃機関用点火コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関用点火コイルは、一般に、図2に示すように構成されていた。すなわち、図2(イ)から(ハ)は、従来例における内燃機関用点火コイルを説明するための図で、(イ)は縦断面図、(ロ)は平面図、(ハ)は(ロ)のB−B′断面図である。そして、この図2において、内燃機関用点火コイルの絶縁ケース23は、たとえば、コネクタソケット21と、前記コネクタソケット21と反対側に設けられている固定用フランジ25と、前記コネクタソケット21との間に成形されているコイル組立体等収納部とから少なくとも構成されている。前記コイル組立体等収納部には、コイルおよび鉄心22からなるコイル組立体22′と、パワートランジスタ等を備えるイグナイタ29が収納されているとともに、充填材28によって充填されている。
【0003】
前記固定用フランジ25には、取付孔26が穿設されており、その内部に、たとえば、金属ブッシュ26′が形成されている。また、前記固定用フランジ25の上面には、導電性金属膜24が図示のように形成されている。前記導電性金属膜24は、公知の方法で成形され、前記絶縁ケース23の内周面に露出するように形成されている。前記コイル組立体等収納部における鉄心22は、前記導電性金属膜24と接触して、電気的に接続されている。また、前記導電性金属膜24と反対側のコネクタソケット21におけるコイル側の接地端子21′は、前記コイル組立体等収納部における鉄心22と接触して、電気的に接続されている。
【0004】
さらに、固定用フランジ25は、たとえば、図示されていないエンジンの一部にボルトにより固定される。前記コイル側の接地端子21′は、導電性金属膜24′、鉄心22、導電性金属膜24、図示されていないボルト、金属ブッシュ26′を介して、エンジン側に電気的に接続される。前記鉄心22は、導電性金属膜24および導電性金属膜24′によって、接地端子21′または図示されていないエンジンによって接地されている。このため、コイルから放射されるノイズを低減することができる。このような構成を備える内燃機関用点火コイルの一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−180295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の内燃機関用点火コイルにあっては、鉄心をエンジン等に接地するために、絶縁ケースの内壁に、導電性金属膜を設け、この導電性金属膜と鉄心とを接触させることにより、鉄心をエンジン等に接地させるようになっていた。
【0007】
このため、導電性金属膜を、鉄心の外形に合わせて屈曲しなければならなかった。また、鉄心との良好な接触を保つため、導電性金属膜を屈曲成形してバネ性を与えていた。そこで、屈曲成形に手数が掛り、コスト高の要因の一つになっていた。
【0008】
また、導電性金属膜の形状と鉄心の形状とが、正確に合致していないと、接触不良を起こして、電気的な接続が断たれることがあった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、簡単な構成で、鉄心を確実に接地させることができ、ノイズの低減に有効な内燃機関用点火コイルを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、一次コイルおよび二次コイルと、前記一次コイルおよび二次コイルを磁気的に結合する鉄心と、前記コイルおよび鉄心を収納する絶縁ケースと、外部ハーネスからイグナイタが備えるパワートランジスタの接地側へ電気的に接続されるコネクタソケットの接地端子とを備える内燃機関用点火コイルにおいて、前記コネクタソケットの接地端子と前記鉄心とが電気的に結合するように、前記コネクタソケットの接地端子を前記鉄心に近接させて配置し、前記コネクタソケットの接地端子と前記鉄心の底部との間に、応力緩和用の導電性ゴムを介在させて、前記鉄心を接地するようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した内燃機関用点火コイルであって、前記導電性ゴムを、導電性接着材にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の内燃機関用点火コイルでは、コネクタソケットの接地端子と、鉄心との間に、導電性ゴムを介在させているので、コネクタソケットの接地端子と、鉄心との間の電気的な接続を容易に得ることができる。すなわち、鉄心をコネクタソケットの接地端子を介して確実にエンジン等に接地させることができる。したがって、鉄心を接地することによるノイズの低減を効果的に行なうことができ、雑音防止抵抗の省略が可能である。また、導電性ゴムによって鉄心とコネクタソケットの接地端子との導通を得ているので、鉄心と接地端子との間に溶接やかしめ等の機械的な加工が不要であって、きわめて容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る内燃機関用点火コイルを示す一部を欠截した概略説明図である。
【図2】従来の内燃機関用点火コイルの概略を示し、(イ)は縦断面図、(ロ)は平面図、(ハ)は(ロ)のB−B′断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の実施例である内燃機関用点火コイルを説明するための図であって、一部を欠截した概略説明図である。
【0015】
図1において、内燃機関用点火コイルの絶縁ケース13は、たとえば、コネクタソケット11と、前記コネクタソケット11と反対側に設けられている固定用フランジ15と、前記コネクタソケット11と前記固定用フランジ15の間に成形されているコイル組立体等収納部とから少なくとも構成されている。前記コイル組立体等収納部には、コイルおよび鉄心12からなるコイル組立体12′と、パワートランジスタ19a等を備えるイグナイタ19が収納されている。なお、パワートランジスタ19aの接地端子19bは、接地端子11′から分岐させたコネクタ接地端子11′bに接続されている。
【0016】
前記固定用フランジ15には、取付孔16が穿設されており、その内部に、たとえば、金属ブッシュ16′が形成されている。そして、固定用フランジ15は、たとえば、図示されていないエンジンの一部にボルトにより固定される。
【0017】
内燃機関用点火コイルのコイル組立体等収納部における鉄心12は、前記した従来の内燃機関用点火コイルと同様に、絶縁ケース13の内周面に形成されている導電性金属膜(図示せず)と接触して、電気的に接続されている。また、導電性金属膜と反対側のコネクタソケット11におけるコイル側の接地端子11′は、コイル組立体等収納部における鉄心12と接触して、当該鉄心12と接地端子11′とが電気的に接続されている。
【0018】
従来の内燃機関用点火コイルにおいては、図2に示すように、接地端子21′と鉄心22とを電気的に接続するために、以下のような段階を経ていた。すなわち、導電性金属膜24′を鉄心22の下端部分の形状に合致するように屈曲成形させて嵌合部24aを形成し、この嵌合部24aに鉄心22を嵌合させることにより、先ず導電性金属膜24′と鉄心22との導通を得ていた。また、コネクタソケット21の接地端子21′の一端側に屈曲した圧接部21aを設け、この圧接部21aを導電性金属膜24′に圧接させることにより、接地端子21′と導電性金属膜24′との導通を得ていた。そして、鉄心22および接地端子21′の双方と導通している導電性金属膜24′を介して、鉄心22と接地端子21′とを電気的に接続していた。
【0019】
したがって、従来の内燃機関用点火コイルにあっては、鉄心22を接地させるのが、はなはだ繁雑であった。
【0020】
そこで、本実施例では、図1に示すように、コネクタソケット11の接地端子11′のコイル側の端部11′aを、鉄心12の底部12aに近接するように、屈曲させながら延設している。そして、鉄心12の底部12aとコネクタソケット11の接地端子11′の端部11′aとの隙間に、応力緩和用の導電性ゴム10を介在させている。なお、絶縁ケース13には、充填材18が充填され、鉄心12、コイル組立体12′、イグナイタ19等を絶縁するとともに覆っている。
【0021】
導電性ゴム10は、ゴム材にカーボンブラック、金属粉末、金属繊維などの導電性充てん剤を加えて加硫(架橋)したものであり、ゴムの弾性を有すると共に導電性を有している。
【0022】
そこで、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′との間に、導電性ゴム10を介在させると、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′とを電気的に接続することができる。このとき、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′との導通を得るために、両者を溶接したりかしめたりする機械的な加工の必要がなく、きわめて容易に電気的に接続することができる。
【0023】
また、導電性ゴム10は、応力緩和部材として適度な弾性を有しているので、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′とを位置決めする際に、許容範囲が広くなるので、設計や組立作業が容易になる。
【0024】
さらに、導電性ゴム10の弾性によって、鉄心12、コネクタソケット11の接地端子11′、或いは充填材18が熱によって伸縮する際、各部材の膨張率の違いを吸収することができる。したがって、充填材18におけるクラックの発生防止に寄与することができ、ひいては点火コイルの品質の向上に寄与することができる。
【0025】
このようにして、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′とを電気的に接続して、鉄心12をエンジン等に接地すると、鉄心12にチャージされる電荷を取り除くことができる。したがって、ノイズの低減を行なうことができる。
【0026】
しかも、鉄心12をきわめて容易に接地させることができるので、組立作業の効率化やコストの削減等に役立っている。すなわち、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′とを、溶接やかしめ等の機械的な加工工程を経ることなく電気的に接続しているので、作業工数を大幅に減らすことができ、簡単な作業で両者の導通を得ることができる。
【0027】
前記した実施例では、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′とを導電性ゴム10を介して電気的に接続しているが、この導電性ゴム10に代えて導電性接着材を利用して、鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′とを、電気的に接続するようにしてもよい。
【0028】
すなわち、鉄心12或いはコネクタソケット11の接地端子11′に、導電性接着材を塗布して組み立てて硬化させると、或いは組み立てた鉄心12とコネクタソケット11の接地端子11′との隙間に導電性接着材を注入して硬化させると、両者が電気的に接続される。
【0029】
この実施例によっても、鉄心を容易にエンジン等に接地することが可能であって、鉄心にチャージされる電荷を確実に取り除くことができる。したがって、ノイズの低減にきわめて有効である。
【0030】
以上、本発明を図面の実施例について説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。たとえば、前記実施例における導電性ゴムおよび導電性接着材の材質は、導電性の良いものであれば、特に限定されず、公知または周知のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 導電性ゴム
11 コネクタソケット
11′ 接地端子
11′a 端部
11′b コネクタ接地端子
12 鉄心
12′ コイル組立体
12a 底部
13 絶縁ケース
15 固定用フランジ
16 取付孔
16′ 金属ブッシュ
18 充填材
19 イグナイタ
19a パワートランジスタ
19b 接地端子
21 コネクタソケット
21a 圧接部
21′ 接地端子
22′ コイル組立体
22 鉄心
23 絶縁ケース
24 導電性金属膜
24a 嵌合部
24′ 導電性金属膜
25 固定用フランジ
26 取付孔
26′ 金属ブッシュ
28 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイルおよび二次コイルと、前記一次コイルおよび二次コイルを磁気的に結合する鉄心と、前記コイルおよび鉄心を収納する絶縁ケースと、外部ハーネスからイグナイタが備えるパワートランジスタの接地側へ電気的に接続されるコネクタソケットの接地端子とを備える内燃機関用点火コイルにおいて、
前記コネクタソケットの接地端子と前記鉄心とが電気的に結合するように、前記コネクタソケットの接地端子を前記鉄心に近接させて配置し、
前記コネクタソケットの接地端子と前記鉄心の底部との間に、応力緩和用の導電性ゴムを介在させて、前記鉄心を接地するようにしたことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記導電性ゴムを、導電性接着材にしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−182842(P2010−182842A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24540(P2009−24540)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000174426)阪神エレクトリック株式会社 (291)
【Fターム(参考)】