内腔内アンカ装置
【課題】生体の内腔への固定のための内腔内アンカ装置を提供する。
【解決手段】アンカにより、自身の長さに沿って半径方向外向きの異なる力、すなわち固定力および移行力をもたらすように設定されている。これらの力の生成は、剛性、厚さ、または形状などといったアンカの物理的特性を変化させることによって制御できる。例えば、軸方向に長いアンカの剛性を、アンカを形成しているワイヤの直径を変化させることによって、近位端(610a)および遠位端(610c)における比較的柔らかい値から中央部(610b)における比較的剛性の高い値へと変化させることができ、アンカを意図される用途に合わせることができる。このような力を、外側の棘と組み合わせて、栄養チューブおよび腸内スリーブなどの他の器具を確実に固定するために使用することができる。
【解決手段】アンカにより、自身の長さに沿って半径方向外向きの異なる力、すなわち固定力および移行力をもたらすように設定されている。これらの力の生成は、剛性、厚さ、または形状などといったアンカの物理的特性を変化させることによって制御できる。例えば、軸方向に長いアンカの剛性を、アンカを形成しているワイヤの直径を変化させることによって、近位端(610a)および遠位端(610c)における比較的柔らかい値から中央部(610b)における比較的剛性の高い値へと変化させることができ、アンカを意図される用途に合わせることができる。このような力を、外側の棘と組み合わせて、栄養チューブおよび腸内スリーブなどの他の器具を確実に固定するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、2004年9月17日に出願された米国特許仮出願第60/611,038号の利益を主張する。上記出願の教示の全体が、参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【背景技術】
【0002】
アンカは、患者への処置において、生体の内腔の所望の位置に装置を固定するために使用されている。例えば、アンカを、消化管内に腸内スリーブなどのチューブを固定するために使用することができる。例えば、胃腸管内に固定される腸内スリーブが、2003年1月9日付の米国特許出願第10/339,786号(2002年12月2日付の米国特許仮出願第60/430,321号の優先権を主張している)、2004年6月16日付の第10/858,852号(2003年12月9日付の米国特許仮出願第60/528,084号の優先権を主張している)、および2004年12月14日付の米国特許仮出願第60/544,527号に記載されており、これらはその全体が参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、広くには、生体の内腔への固定のための装置およびその固定方法に関し、とくには、組織を傷つけることがない固定のための装置およびその固定方法に関する。
【0004】
残念なことに、丈夫で硬いアンカは、周囲の組織を傷つける可能性がある。これは、アンカが体のより柔らかい組織に対して機能する生物学的用途において、とくに真実である。丈夫で硬いアンカは、医療用の装置(例えば、スリーブ)が内部で移動するのを防ぐため、腸などの体の内腔において使用することができる。いくつかの用途においては、アンカが、内腔の一部を貫くように設定された棘を備えている。棘が有効であるためには、少なくとも棘の一部が、常に組織に係合していなければならない。この継続的な係合を達成するために、棘を組織の内部に維持するように調節された充分な固定力が、アンカに付与される。この固定力が、かなりの大きさになりうるため、アンカの近位端および遠位端において、組織の損傷が生じがちである。
【0005】
内腔における固定のため、アンカは、通常は、少なくとも或る程度の外向きの力を内腔の内壁に向けて加える。用途に応じ、固定のための力は、最小限の力(例えば、留め金を所定の位置に保つため)からより大きな力(例えば、締まり嵌めを形成する)までさまざまでありうる。生物学的用途においては、内腔の内壁が、典型的には、柔軟であってきわめて炎症を生じやすい組織を含んでいる。したがって、これらの用途においては、力が大きくなると、アンカによって、炎症を伴う外傷、さらには組織の損傷が引き起こされる恐れが大きくなる。
【0006】
そのような炎症および組織の損傷は、腸内で使用されるためのアンカにおいて、とくに問題である。残念なことに、腸の高い可動性および腸内の物質に作用する力の性状(すなわち、蠕動)のために、腸への腸内アンカの固定を困難にしている。この結果、腸内アンカを所定の位置に固定するために、典型的には、より大きな力が必要とされている。
【0007】
本発明は、生体の内腔に埋め込まれるように設定された内腔内アンカ装置に関する。この内腔内アンカ装置は、軸方向に長いアンカであり、埋め込まれた状態でその中心軸が生体の内腔と同心となるアンカを備えている。この軸方向に長いアンカは、内腔に接して膨らむように設定された主アンカ領域を備えている。さらにアンカは、主アンカ領域の両側に沿って位置する二次アンカ領域を備えている。二次アンカ領域も、内腔に接して膨らむように設定されており、主アンカ領域が、二次アンカ領域の外側端よりも大きく膨らむ。
【0008】
内腔内アンカ装置は、軸方向に長いアンカを備えており、この軸方向に長いアンカは、生体の内腔へ埋め込まれたときに、自身の長さに沿ったそれぞれの位置において、少なくとも2つの異なる半径方向の力をもたらす。これらの異なる半径方向の力は、装置が生体の内腔へと埋め込まれたときに、内腔のそれぞれの部位に対して異なる作用を及ぼす。すなわち、半径方向の力のうちの少なくとも1つは、もっぱら、生体の内腔への固定のために設定された固定力である。もう一方の半径方向の力は、生体の内腔への損傷を軽減するように設定された移行力である。さらに、埋め込まれたとき、内腔内アンカ装置は、生体の内腔の機能の継続を可能にする内側管腔を形成する。
【0009】
軸方向に長いアンカは、複数のアンカ部材を備えることができ、それぞれの部材がそれぞれの半径方向の力をもたらし、これらの部材のうちの少なくとも1つが、残りの部材とは異なる半径方向の力をもたらすことができる。複数のアンカ部材のそれぞれを、内腔内アンカ装置の長さに沿ったそれぞれの位置に配置することで、前記異なる半径方向の力を含むそれぞれの部材の半径方向の力が、生体の内腔に沿った異なる長さ部分に配置される。
【0010】
前記異なる半径方向の力は、アンカ部材のうちの1つ以上を、残りのアンカ部材と異なる材料で形成することによってもたらすことができる。好ましくは、異なる材料により、埋め込まれたときに異なる半径方向の力が生み出され、それにより異なるたわみ値がもたらされる。これに代え、あるいはこれに加えて、異なるアンカ部材を、実質的に同じ材料からであるが、形状または厚さなどが異なる構成にて形成することができる。
【0011】
アンカ部材のうちの少なくともいくつかを、互いに連結することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの接続部材により、隣接するアンカ部材が接続され、接続部材によって2つ以上のアンカ部材が一体に連結される。
【0012】
複数のアンカ部材を備えるいくつかの実施形態において、それらアンカ部材のうちの少なくとも1つを、細長いワイヤから形成することができる。細長いワイヤは、螺旋パターンまたは往復(すなわち、軸方向の縦断面における波状)パターンなど、任意の適切な形状に形成することができる。波状のパターンは、それぞれの半径方向の力をアンカ部材の長さにわたって分配する一方で、アンカ部材のそれぞれの半径方向の膨張および収縮の性能も向上させる。
【0013】
固定性能をさらに向上させるため、内腔内アンカ装置は、生体の内腔の組織を貫くように設定された少なくとも1つの棘を、その外側に備えることができる。外側の棘は、内腔内アンカ装置の長さに沿って所定の位置に配置され、対応する半径方向の力が、棘を組織へと押し込むように機能する。例えば、複数のアンカ部材を備える実施形態においては、少なくとも1つの外側の棘を、アンカ部材のうちの1つに設けることができる。棘が設けられたアンカ部材が及ぼす力により、棘は組織内に保持される。
【0014】
いくつかの実施形態においては、外側の棘が、2方向の棘であってよい。2方向の棘は、内腔内アンカ装置が生体の内腔に沿って両方向に作用する外的な力にさらされる用途に、とくによく適している。一般に、2方向の棘は、近位方向への動きに抗するように設定された第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗するように設定された第2の棘セグメントを有している。このような棘は、装置が軸方向のかなり大きな蠕動力にさらされる胃腸用の用途に、よく適している。
【0015】
好ましくは、アンカを、内視鏡的な挿入のために半径方向につぶすことができる。また、位置変更および/または取り出しを容易にするため、内腔内アンカ装置が引き紐を備えていてもよい。例えば、引き紐を、装置の近位端に設けることができ、このような引き紐は、フックなどの取り出し装置による係合に適する。係合させたとき、取り出し装置によって引き紐を、静止している内腔内アンカ装置に対して押すかまたは引くことができ、それにより、内腔内アンカ装置の少なくとも一部を、少なくとも部分的に圧縮させることができる。直径が小さくなった状態で、生体の内腔を通って装置を取り出すことができ、あるいは内腔内で装置の位置を変更することができる。いくつかの実施形態においては、装置の少なくとも一部分が、取り出しに先立って回収フード、鞘、または外チューブへと引き込まれる。
【0016】
いくつかの実施形態においては、内腔内アンカ装置が細長いチューブへと、このチューブの近位端において接続されており、このチューブが、生体の内腔を遠位方向へと延びるように設定されている。軸方向に長いアンカを、多数あるさまざまなやり方で細長いチューブへと接続することができる。例えば、アンカを、縫合糸やステープルなどを使用して機械的にチューブへ固定することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、化学的な接着剤および/または熱による溶着により、アンカをチューブへと接合することができる。いくつかの実施形態においては、チューブが薄肉であって柔軟である。例えば、チューブを、きわめて薄くて柔軟な壁体を有するスリーブとして形成でき、このスリーブは、圧縮変形しやすい。アンカを、スリーブの少なくとも2つの重なり合う層の間に固定することができる。次いで、スリーブの重なり合う層の少なくとも一部を一体に接合するなど、利用可能な任意の固定法を使用して、重なり合っている層を、互いに付着させることができる。
【0017】
他の実施形態においては、軸方向に長いアンカを、均質な中空の筒体から形成することができる。筒体の厚さにより、筒体の異なる部位に対して異なるばね力が付与されるよう、筒体の長さに沿って筒体の厚さを変化させる(すなわち、先細りにする)ことができる。生体の内腔に埋め込まれたとき、先細りの筒体が、自身の長さに沿って異なる力をもたらし、すなわち筒体の厚さに応じて体の内腔に沿って異なる力がもたらされる。いくつかの実施形態においては、先細りの筒体を、装置の半径方向の膨張および収縮を促進するため、公知の技法(例えば、レーザ切断)を使用してさらに変形させることができる。
【0018】
本発明の以上の目的、特徴、および利点、ならびに他の目的、特徴、および利点が、添付の図面に示した本発明の好ましい実施形態についての以下のさらに詳細な説明から、明らかになるであろう。添付の図面においては、種々の図のすべてを通して、同様の参照符号が同じ部分を指し示している。図面は必ずしも比例尺ではなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下で、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
アンカは、内腔の機能を維持しつつ、かつ周囲の生体構造にもたらす外傷を最小限にして、生体の内腔へ固定されるように設定されている。そのようなアンカは、たとえ生体的な挙動の存在が予想されても、アンカをしっかりと保持すべく周囲の生体構造へと作用する固定力を付与している。例えば、そのような固定力により、たとえ蠕動があっても、胃腸用アンカを所定の位置に保持することができる。しかしながら、そのような生体的な挙動に抗しての固定は、ともすれば周囲の組織を損傷させかねないかなりの固定力を必要とする可能性がある。
【0021】
アンカ10b’を含む生体の内腔20の断面が、図1Aに示されている。一般に、内腔は、時間とともに変化しうる固有の直径D1を有している。アンカにより、内腔の壁面に向けて、半径方向外向きの固定力が付与される。アンカ10b’の構造および内腔の壁面の追従性に応じて、埋め込まれたアンカ10b’が、図示のとおり内腔の内径を増加させる(すなわち、D2)ことができる。アンカの領域から非支持の隣接領域への急激な移行により、とくにはアンカの端部25において組織へひずみが加わる。図示のとおり、組織の引き延ばしが、第1の距離Δ1にわたって生じる可能性がある。このようなひずみが、組織の炎症につながる可能性があり、あるいは時間とともに損傷を引き起こす可能性さえある。
【0022】
固定力による損傷の可能性を弱めるため、さらにアンカは、固定力とは別の移行力をもたらして、固定力が及ぼされる生体構造の周囲の隣接領域へと移行力を作用させる。図1Bに示されているように、固定力をもたらしているアンカ部材10b’’が、軸方向の両側において、より小さい移行力をもたらしている他のアンカ部材10a’’、10c’’によって囲まれている。移行力により、アンカの中央領域の固定力から、アンカの長さに沿ってより緩やかな力の減少が可能になり、結果として外傷を少なくすることができる。このようにして、広げられた直径D2から自然な内腔の直径D1への移行、つまり内径の変化が、第1の距離Δ1よりも長い第2の距離Δ2において生じる。非支持の組織から固定が行われる組織への移行においてより柔らかいアンカ部材を使用することで、組織のひずみを少なくすることができ、組織の炎症および損傷の可能性を小さくすることができる。
【0023】
生体の内腔に沿って、内腔の壁面に作用する半径方向外向きの異なる押圧力を異なる軸方向の長さに対して加えることで、固定力を、必要とされる場所へと加え、または集中させることができ、その一方で、移行力によって、周囲の生体構造へ加わる圧力を分散させることができる。とくに、移行力は固定力よりも小さな力であり、移行力により内腔のうちの固定力が加えられる領域から隣接する非支持の領域へと、内腔の壁面に作用する半径方向外向きの押圧力の緩やかな移行がもたらされる。好ましくは、アンカを、栄養チューブまたは胃腸用スリーブなどといった他の器具と組み合わせ、それらの器具を体の内腔の所定の位置に固定するために使用することができる。
【0024】
図2は、内腔内アンカ装置またはアンカ100の典型的な実施形態を概略的に示している。アンカ100は、内腔に関して長さ方向に測定される軸方向の全長「L」を有するとともに、内腔へと埋め込まれても内腔の機能の継続を可能にするように設定された内部通路115を形成している。例えば、アンカ100は、長さ「L」および直径「D」を有して内部通路115を形成するおおむね円筒の形状を有することができる。内腔内アンカ装置が埋め込まれたとき、内腔内アンカ装置に備えられたアンカは、隣接する生体の内腔の壁面に向けて、半径方向外向きのばね力をもたらす(すなわち、アンカが環状のラジアルばねを備えており、ばねの半径方向の変位に対応する力をもたらす)。半径方向の力には、予想される生体の抗力の存在下、アンカ100を所定の位置に固定するために充分な固定力が含まれる。とくに、半径方向外向きの力は、アンカの長さに沿って固定力から移行力へと変化し、移行力は周囲の組織への損傷の可能性を少なくする。生体の内腔に埋め込まれたとき、アンカは、軟組織から小さくたわんだ領域(すなわち、移行力)へと至り、より大きくたわんだ領域(すなわち、固定力)へと至った後に再び小さくたわんだ領域へと至り、最終的に非支持の軟組織へと戻る内腔に沿った推移をもたらしている。
【0025】
一般に、アンカは、所望の固定力をもたらすばねを備えている。ばねによって生み出される力は、ばねの追従性または剛性に関する関連のばね定数に対応したばね率によって定められる。ばね率は、材料の種類、材料の厚さ、寸法、および形状など、アンカの1つ以上の特徴によって決定することができる。ラジアルばねにおいては、半径方向の変位が大きいほど、より大きな力がもたらされる。内腔内の用途においては、そのようなラジアルばねが、好ましくは予想される内腔内の最大直径よりも大きい解放時直径(すなわち、無負荷時直径)を有している。したがって、埋め込まれたアンカが、半径方向の圧縮を引き起こす圧縮力に常にさらされており、これにより対抗する固定力をもたらしている。たわみアンカは、参照によってその全体が本明細書に取り入れられたものとする2005年6月8日付の米国特許出願第11/147,992号に記載されている。
【0026】
多くの用途においては、アンカが、内腔の運動の全範囲にわたって内腔の壁面に同調するよう、埋め込まれたときにも充分な追従性を残している。例えば、成人の近位十二指腸に埋め込まれたアンカは、約25ミリメートル未満から50ミリメートルを超える内腔の内径の変化に直面する可能性がある。
【0027】
図2によって示唆されているように、アンカ100は、複数のアンカ部材を使用することによって変化する力をもたらすことができる。例えば、アンカ100は、図示のとおり、3つ以上の異なるアンカ部材110a、110b、および110c(全体として、アンカ部材110)を備えることができる。それぞれのアンカ部材110a、110b、および110cは、図示のとおり環状であってよく、それぞれの軸方向のサブ長さ「l1」、「l2」、および「l3」を占めることができる。さらに、それぞれのアンカ部材110を、それぞれの距離「s1」、「s2」によって隣のアンカ部材から隔てることができる。いくつかの実施形態においては、1つ以上の距離が負であってもよく、それはすなわち部材が重なり合うことを意味している。アンカ100の全長は、アンカ部材のサブ長さおよびアンカ部材の間に設けられる距離の合計として決定される。環状のアンカ部材110のそれぞれは、その開口の中心軸を内腔と同心とさせつつ周囲の内腔の壁面に一致するような寸法および形状を有することができる。
【0028】
いくつかの実施形態においては、アンカ部材110を、図示のとおり、それぞれの架橋または接続部材120a、120b(全体として、120)を用いて一体に接続する。接続部材120は、ワイヤまたはロッドなどの剛性の高い部材または剛性の高いストラット(棒状の部材)であってもよい。剛性の高いストラットを使用することで、装置の軸方向の圧縮を少なくし、あるいは実質的になくすことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、接続部材120が、ワイヤ、テープ、または糸(例えば、縫合糸)など、柔軟な部材であってもよい。そのような柔軟な部材は、長さを最大の長さ以下とすることができ、軸方向に圧縮はしても延長はしない。軸方向の圧縮および延長が望まれる場合には、接続部材120に弾性の部材を備えることができる。そのような柔軟性は、患者の快適さおよび固定の有効性の両者にとって有益でありうる。いくつかの実施形態においては、接続部材120が、アンカ部材110そのものと一体に形成される。
【0029】
柔軟であって軸方向に長いアンカ200の実施形態が、図3に示されている。軸方向に長いアンカ200は、2つ以上のアンカ部材210a、210b、210cを備えることができ、これらアンカ部材のそれぞれが、他の部材に対して独立して運動可能である。アンカ200は、接続部材220a、220bを備えることができるが、これらは、所望の柔軟性を可能にするように選択および配置される。例えば、剛性の高い接続部材をアンカ200の片側に沿って整列させ、アンカをこの側に向かって曲げることができるようにすることができる。
【0030】
他の実施形態であるアンカ300が、図4Aに示されている。アンカ300は、複数のアンカ部材310a、310b、310cを備え、隣接する各部材310を当接させつつ直線状に配置している。アンカ300について、対応する力‐対‐距離のグラフが、図4Bに示されている。詳しくは、このグラフは、それぞれのアンカ部材310(図4A)によってもたらされる種々の半径方向外向きの力または押圧力を、アンカ300の中心軸に沿って測定したそれぞれの距離に対して示している。図4Aの典型的な実施形態について示されているように、より大きな半径方向の力が、代表的な力F2を有する中央の部材310bによって付与されている。この押圧力は、第2のアンカ部材310bによって定められる軸方向の長さ(すなわち、3つの部材がすべて同じ長さL/3を有するとすれば、L/3から2L/3まで)にわたって、実質的に一定であってよい。同様に、隣の第1および第3のアンカ部材310a、310cによってもたらされる力F1およびF3は、グラフに(例えば、領域320に)示されているとおり、F2より小さい力である。より大きい力F2が、埋め込まれたときにアンカを所定の位置に保持するための固定力に相当する一方で、より小さい力F1およびF3が、周囲の組織に対する損傷の可能性を少なくする移行力に相当する。
【0031】
ところで、いくつかの実施形態においては、アンカ部材310の構造によって、集合した全体の長さではなく、各部材自身の長さであるサブ長さに沿って、異なる力をもたらすようにすることができる。アンカ部材310は、ラジアルばねであるため、付随のばね定数を有している。したがって、アンカ部材310によってもたらされる半径方向の力は、ばね定数および半径方向の圧縮量の結果としてもたらされる。アンカ部材のサブ長さに沿って圧縮が変化するようにアンカ部材を構成することによって、対応して変化する半径方向の力をもたらすことができる。例えば、外側のアンカ部材310a、310cが、それぞれ中央のアンカ部材310bの一端に接続される場合、これらアンカ部材310a、310cは、両端において異なる直径を有してもよい。中央のアンカ部材310bは、より剛であるため、剛性がより低い部材よりも大きな直径を有してもよい。一般に、設けることができるアンカ部材の数、または所望の特定の剛性分布プロファイルには、何ら制限がない。
【0032】
アンカによって生み出される固定力は、外向きに向けられて周囲の内腔の壁面へと加えられる半径方向の成分を含むことができる。さらに、固定力が、棘によってもたらされる軸方向の成分を含んでもよい。固定力の大きさは、好ましくは、意図される用途に応じて決まり、過剰になりすぎることなくアンカを充分に固定できるように選択される。大きな力が内腔の壁面に作用すると、周囲の組織を傷つける傾向が増すため、最大の力を抑えることが重要である。
【0033】
いくつかの実施形態においては、アンカの剛性(あるいは、たわみやすさ)をアンカの長さに沿って変化させることによって、アンカの半径方向外向きの力を変化させる。そのような特徴により、アンカを意図される送入位置に合わせて調整するのが、より柔軟に行える。例えば、アンカの一部位が比較的剛である一方で、アンカの他の部位が比較的柔軟であるなどして、所望の剛性を制御すべく、アンカ部材の厚さを変化させることができる。このやり方で、アンカのうちのより剛性の高い部位を、体の内腔においてアンカの当該部位が埋め込まれた部位を押し広げるために使用することができる。次いで、炎症を少なくするために、剛性がアンカの近位端および遠位端に向かうにつれて小さくされ、体の内腔の組織への外傷を少なくする。
【0034】
例えば、柔軟なアンカ400’の側面図が、図5Aに示されている。図示のとおり、別個のアンカ部材410a’、410b’、410c’(全体として、410’)を接続部材420a’、420b’(全体として、420’)によって互いに接続して使用することで、アンカ400’の曲げおよびたわみが可能になる。接続部材420’は、アンカ部材410’のそれぞれが同じチューブまたはスリーブに組み合わせられる実施形態においては、必ずしも必要でない。アンカ部材410’のそれぞれは、それぞれ図示の往復波状パターンに形作られた連続ワイヤから形成される。軸(図示されていない)に沿って眺めたとき、アンカ400’は、空白の円または輪のように見えるであろう。波状のアンカおよび関連の事項は、2003年12月9日付の米国特許仮出願第60/528,084号の優先権を主張する2004年6月1日付の米国特許出願第10/858,852号、および2004年12月13日付の米国特許仮出願第60/544,527号に記載されている。これらの出願の教示の全体は、参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0035】
一実施形態においては、中央のアンカ部材410b’が、直径が0.023インチであるニチノール(Nitinol)ワイヤなど、比較的太いワイヤから形成される。追加のアンカ部材410a’、410c’は、直径が0.014インチであるニチノール・ワイヤなど、より細いワイヤから形成される。同じ材料から形成されたワイヤを使用すると、より太いワイヤは、より細いワイヤよりも大きな剛性をもたらす。すなわち、圧縮されたときに、中央のアンカ部材410b’が、周囲の2つのアンカ部材410a’、410c’の両者と比べ、より大きな半径方向外向きの力をもたらす。また、波状のアンカ部材の軸方向の長さを変えることによって、ばね率を変化させることも可能であり、より短い部材は、より長い部材よりも剛性が大きい。さらには、所与のアンカ部材において往復の回数を変えることによって、ばね率を変化させることが可能であり、往復のより多い部材は剛性がより大きい。
【0036】
ワイヤは、金属、金属合金(例えば、ステンレス鋼およびニチノール)、および/または合成材料(例えば、プラスチック)など、任意の適切な材料から形成できる。好ましくは、材料は生体適合性であるが、非生体適合性の材料を生体適合性の材料で被覆し、あるいは生体適合性の材料で包んで使用することも可能である。固定は、アンカと内腔の内壁との間の締まり嵌めを使用して、達成することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、縫合糸、ステープル、外科用接着剤、ならびに/あるいは棘またはフックなどといった他の手段を使用して、固定を達成することが可能である。典型的な実施形態においては、少なくとも1つの外側の棘425’が、中央のアンカ部材410b’に取り付けられている。埋め込まれたとき、棘425’は、0.023インチ径のワイヤの剛性および対応する半径方向外向きの力によって、筋肉組織内の所定の位置に保持される。中央のアンカ部材410bが、棘425’を周囲の組織へと挿入された状態に保つため、大きな力をもたらす。第1および第3のアンカ部材410a’、410c’がない場合、中央のアンカ部材410b’にもたらされる固定力によって、部材410b’の両端において組織の炎症、さらには組織の損傷が生じる可能性がある。
【0037】
上述のアンカ部材は、多数のさまざまな形状に形成可能である。いくつかの実施形態においては、それぞれのアンカ部材が、軸方向の縦断面において波状に形成される。すなわち、直線状の素子(すなわち、ワイヤ)が、中心軸から或る距離(すなわち、半径)にある円筒形の表面に沿って、往復する様相で輪郭付けられる。このようなワイヤの形態は、円柱形のマンドレル上で形作ることができる。ワイヤの2つの端部が一体に接続(例えば、圧着、はんだ、化学的な接合、あるいは熱による接合)され、連続的な構造が形成される。このようにして形成されたアンカ部材は、生体の内腔と接触する表面積が比較的小さいが、アンカに比較的大きな直径(例えば、胃腸用の用途においては、25〜50ミリメートル、あるいはそれ以上)をもたらすことができる。往復によって、節点414a、414b(全体として、414)において互いに接続された比較的まっすぐなセグメント412a、412b(全体として、412)がもたらされている。半径方向に圧縮されたとき、節点414が曲がり、比較的まっすぐなセグメント412が互いに対してより整列した状態となることができる。このようにして、比較的小さい直径の構造体を通してアンカを挿入および/または除去することができるよう、アンカ400’の直径を、大幅に縮小することができる。例えば、いくつかの腸内の用途においては、直径50ミリメートルの装置が、直径12ミリメートルのカテーテルを介して挿入されるように構成される。解放時、アンカ400’が広がり、体の内腔の壁面に対してばね力を作用させる。
【0038】
アンカ部材410a’、410b’、410c’は、図示のとおり、それぞれの距離s1、s2によって隔てられてもよく、あるいはこれらの部材のうちの1つ以上が隣接または重なり合わせされてもよい。波状ワイヤ・アンカ400’’の他の実施形態が、図5Bに示されている。アンカ400’’も、やはり複数のアンカ部材410a’’、410b’’、410c’’(全体として410’’)を備えており、これらのアンカ部材は、接続部材420a’’、420b’’によって互いに接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。図示のように、アンカ部材410a’’、410b’’、410c’’のうちの1つ以上が、さまざまな度合いで他のアンカ部材と重なり合っていてもよい。そのような重なり合いの少なくとも1つの利点は、アンカ400’’の全長の短縮にある。さらには、このような重なり合いにより、アンカ400’’について所望の力‐対‐距離の関係を実現でき、軸に沿って分布する力がより緩やかに推移する。
【0039】
内腔内アンカ500の他の実施形態の側面図が、図6に示されている。アンカ500は、互いに接続された複数のアンカ部材510a、510b、510c(やはり説明を目的として波状部材として示されている)を備えている。アンカ部材510a、510b、510cは、機械式の固定具、接着剤、熱による接合、溶接、はんだ付け、および/または織り合わせによって互いに接続してもよい。互いの接続は、固定的であってよく、あるいは織り合わせの場合には、長手方向に圧縮してもよい。
【0040】
すでに述べたように、内腔内アンカ装置を、生体の内腔に細長いチューブを固定するために使用することができる。図5Aを参照して上述したアンカと同様のアンカを細長いチューブ615の近位端に組み合わせて備えている典型的な内腔内アンカ装置600が、図7に示されている。チューブ615は、剛体、半剛体、または柔軟体であってよい。胃腸用スリーブおよび関連事項は、2003年1月9日付の米国特許出願第10/339,786号(2002年12月2日付の米国特許仮出願第60/430,321号の利益を主張している)、および2003年12月2日付の米国特許出願第10/726,011号(2003年10月17日付の米国特許仮出願第60/512,145号の利益を主張している)に記載されている。これらすべての出願の教示の全体は、参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0041】
アンカ部材610a、610b、610c(全体として、610)を、チューブへと接合することができる(例えば、接着剤を用いた化学的接合、または熱による接合)。また、アンカ部材610を、細長いチューブ615へと機械的に接続してもよい。例えば、アンカ部材610を、縫合糸および/または外科用ステープルを使用して接続することができ、さらには/あるいはアンカ部材そのものを細長いチューブの孔へと縫いつけて通すことによって、接続することができる。
【0042】
いくつかの実施形態においては、アンカ部材610が細長いチューブ615に包まれている。例えば、細長いチューブ615を、スリーブとして形成することができる。次いで、スリーブの一部分がアンカ部材を包むような形態で、スリーブの一端を自分自身の上へと折り返してアンカ部材610の内側および外側を覆うことによって使用することができる。次いで、細長いチューブにおいて重なり合う部分617を形成している部位を結合させて、アンカ部材610を包み、各アンカ部材610を互いに所定の位置に固定するとともに、細長いチューブ615に対しても所定の位置に固定することができる。例えば、チューブの重なり合い部分617を、互いに接合(例えば、接着剤を用いた化学的接合、または熱による接合)することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、チューブの重なり合い部分617を、機械的に固定することができる。例えば、細長いチューブの重なり合い部分617を、縫合糸、ステープル、留め金、または他の任意の機械式の固定具を使用して、結合することができる。
【0043】
図示のとおり、内腔内アンカ装置600は、内腔内アンカ装置600から外向きに2方向にV字型で突き出して、近位方向への動きに抗するように設定された第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗するように設定された第2の棘セグメントにより周囲の組織を貫く棘620を備えることができる。説明のため、内腔内アンカ装置600が、動物の腸630の一部分に埋め込まれたものとして、軸方向に対する縦断面で示されている。内腔内アンカ装置600に触れる内側の粘膜層632と周囲の筋肉組織層634とを有する腸壁630が示されている。好ましくは、棘620は、腸630の筋肉層634へと粘膜層632を貫くように設定されている。いくつかの実施形態においては、棘620が、腸630の外壁を実際に貫いている。このようにして、棘620が、軸方向の固定力成分を付与し、アンカ部材610bが、棘を筋肉組織634との係合に維持するための固定力を付与している。
【0044】
埋め込みにおいて、棘620が筋肉組織へと固定されたままであることを保証するため、棘620を有するアンカ部材は、比較的高剛性でなければならない。すなわち、固定力を付与するアンカ部材610bの剛性によって、半径方向の力を維持し、それにより棘620が組織へと押し込まれる。いくつかの実施形態においては、粘膜層632を介して筋肉組織の層634に対してアンカ部材610bが押し付けられて当接するのに十分なほどの固定力が、アンカ部材610bの剛性により付与される。
【0045】
しかしながら、いくつかの用途においては、アンカ部材610bの剛性が、周囲の組織に炎症や損傷を引き起こす可能性がある。そのような炎症または損傷の可能性を少なくするため、追加のアンカ部材610a、610cが、アンカ部材610bの両側に設けられる。好ましくは、追加のアンカ部材610a、610cは、中央のアンカ部材610bよりも剛性が低い(すなわち、より柔軟である)。そのため、内腔においてアンカがない部位と剛性の高いアンカ部材610bとの間の移行が、より大きな表面積にわたって広がることになり、棘620における所望の固定力が、漸進的に達成されるようになる。すなわち、図1Bに示したとおり、追加のアンカ部材610a、610cにより、剛性の高いアンカ部材610bの両側においてひずみの緩和がもたらされ、組織への外傷を最小限にする。
【0046】
細長い可撓スリーブを動物の腸に固定する内腔内アンカ装置600の典型的な実施形態が、図8に示されている。胃700の下部が、幽門括約筋705を終端として示されている。括約筋705の遠位側は、近位十二指腸715であり、十二指腸球部と称されることもある。図7の装置が、アンカを幽門括約筋705の遠位側に配置させ、好ましくは十二指腸球部715内に配置させて埋め込まれている。内腔内アンカ装置600のスリーブは、十二指腸710を通過して空腸720へと延びることができる。
【0047】
ワイヤから形成されたアンカに関して上述したように、半径方向の力または剛性を、アンカの物理的特性を変えることによって制御することができる。この手法は、ワイヤの実施例以外にも広げることが可能である。例えば、軸方向に長いアンカを、両端が先細りの筒体から形成することができる。半径方向の力または剛性を変化させるため、肉厚が変化するように筒体を形作ることができる。軸方向の先細りは、所望の形状への射出成型によって達成でき、および/または中実で細長い筒体から内部を取り除くことによって達成できる。いずれの場合も、中心軸に沿って厚さが異なるアンカがもたらされる。図9Aには、より厚い中央部から両端部を先細りにした典型的な筒体状のアンカ800の断面図が示されている。すなわち、より薄い端部810が、余分な材料820を取り除くことによって達成されている。例えば、ステンレス鋼または合金(例えば、ニチノール)の筒体800を、長さに沿って材料を選択的に取り除くべく、旋盤にて研削および/または旋削することによって成形することができる。図示のとおり、筒体800を、筒体の中央に広がる比較的厚い部分から、チューブの端部の比較的薄い部分へと、先細りにすることができる(この手法によれば、思い付く任意の形態が可能である)。
【0048】
ひとたび先細りにされた成形アンカ800は、膨張可能なアンカを形成すべくさらに加工することができる。例えば、図9Bに示すように、レーザを使用して、成形アンカ900の壁面へ、複数の開口からなる窓部920を切り込むことができる。切除後に、成形アンカの残余の部分910により、ストラットが互いに接続された網目体910など、図示のように連続的な構造体を形成することができ、あるいは上述の波状の構造体さえも形成することが可能である。やはり、得られた構造体は、内部に管腔915をもたらす一方で、半径方向に圧縮可能である。典型的なアンカ900について、対応する力‐対‐距離のプロファイルが、図9Cに示されている。
【0049】
当業者であれば理解できるとおり、これらの方法および装置に対して、多数の変形例が存在しうる。それらの変形例は、本発明に包含される。
【0050】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照しつつ詳しく示して説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の技術的範囲から離れることなく、形態および細部についてさまざまな変更が可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】生体の内腔に埋め込まれた従来技術の内腔内アンカ装置を説明する概略図である。
【図1B】生体の内腔に埋め込まれた本発明の原理による内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図2】内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図3】可曲性の内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図4A】図1に示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図4B】図4Aの内腔内アンカ装置についての典型的な半径方向の力のプロファイルである。
【図5A】架橋部材を有する図2に示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図5B】架橋部材を有する図2に示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図6】複数の波状部材を接続して有する図4Aに示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図7】図2に示した内腔内アンカ装置の実施形態の断面図を示す概略図であり、アンカ装置がチューブへと取り付けられて、生体の内腔へと埋め込まれている。
【図8】図7に示した内腔内アンカ装置の断面図を示す概略図であり、近位十二指腸に埋め込まれている。
【図9A】成形チューブの実施形態を説明する概略図である。
【図9B】図9Aに示した成形チューブから形成された内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図9C】図9Bの内腔内アンカ装置についての典型的な半径方向の力のプロファイルである。
【符号の説明】
【0052】
600…内腔内アンカ装置
10a’’,10b’’,10c’’,100,200,300,400’,400’’,500,800,900…アンカ
110,210,310,410’,410’’,610…アンカ部材
425’,425’’,620…棘
120,220,420’,420’’…接続部材
615…チューブ
920…窓部
【関連出願】
【0001】
この出願は、2004年9月17日に出願された米国特許仮出願第60/611,038号の利益を主張する。上記出願の教示の全体が、参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【背景技術】
【0002】
アンカは、患者への処置において、生体の内腔の所望の位置に装置を固定するために使用されている。例えば、アンカを、消化管内に腸内スリーブなどのチューブを固定するために使用することができる。例えば、胃腸管内に固定される腸内スリーブが、2003年1月9日付の米国特許出願第10/339,786号(2002年12月2日付の米国特許仮出願第60/430,321号の優先権を主張している)、2004年6月16日付の第10/858,852号(2003年12月9日付の米国特許仮出願第60/528,084号の優先権を主張している)、および2004年12月14日付の米国特許仮出願第60/544,527号に記載されており、これらはその全体が参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、広くには、生体の内腔への固定のための装置およびその固定方法に関し、とくには、組織を傷つけることがない固定のための装置およびその固定方法に関する。
【0004】
残念なことに、丈夫で硬いアンカは、周囲の組織を傷つける可能性がある。これは、アンカが体のより柔らかい組織に対して機能する生物学的用途において、とくに真実である。丈夫で硬いアンカは、医療用の装置(例えば、スリーブ)が内部で移動するのを防ぐため、腸などの体の内腔において使用することができる。いくつかの用途においては、アンカが、内腔の一部を貫くように設定された棘を備えている。棘が有効であるためには、少なくとも棘の一部が、常に組織に係合していなければならない。この継続的な係合を達成するために、棘を組織の内部に維持するように調節された充分な固定力が、アンカに付与される。この固定力が、かなりの大きさになりうるため、アンカの近位端および遠位端において、組織の損傷が生じがちである。
【0005】
内腔における固定のため、アンカは、通常は、少なくとも或る程度の外向きの力を内腔の内壁に向けて加える。用途に応じ、固定のための力は、最小限の力(例えば、留め金を所定の位置に保つため)からより大きな力(例えば、締まり嵌めを形成する)までさまざまでありうる。生物学的用途においては、内腔の内壁が、典型的には、柔軟であってきわめて炎症を生じやすい組織を含んでいる。したがって、これらの用途においては、力が大きくなると、アンカによって、炎症を伴う外傷、さらには組織の損傷が引き起こされる恐れが大きくなる。
【0006】
そのような炎症および組織の損傷は、腸内で使用されるためのアンカにおいて、とくに問題である。残念なことに、腸の高い可動性および腸内の物質に作用する力の性状(すなわち、蠕動)のために、腸への腸内アンカの固定を困難にしている。この結果、腸内アンカを所定の位置に固定するために、典型的には、より大きな力が必要とされている。
【0007】
本発明は、生体の内腔に埋め込まれるように設定された内腔内アンカ装置に関する。この内腔内アンカ装置は、軸方向に長いアンカであり、埋め込まれた状態でその中心軸が生体の内腔と同心となるアンカを備えている。この軸方向に長いアンカは、内腔に接して膨らむように設定された主アンカ領域を備えている。さらにアンカは、主アンカ領域の両側に沿って位置する二次アンカ領域を備えている。二次アンカ領域も、内腔に接して膨らむように設定されており、主アンカ領域が、二次アンカ領域の外側端よりも大きく膨らむ。
【0008】
内腔内アンカ装置は、軸方向に長いアンカを備えており、この軸方向に長いアンカは、生体の内腔へ埋め込まれたときに、自身の長さに沿ったそれぞれの位置において、少なくとも2つの異なる半径方向の力をもたらす。これらの異なる半径方向の力は、装置が生体の内腔へと埋め込まれたときに、内腔のそれぞれの部位に対して異なる作用を及ぼす。すなわち、半径方向の力のうちの少なくとも1つは、もっぱら、生体の内腔への固定のために設定された固定力である。もう一方の半径方向の力は、生体の内腔への損傷を軽減するように設定された移行力である。さらに、埋め込まれたとき、内腔内アンカ装置は、生体の内腔の機能の継続を可能にする内側管腔を形成する。
【0009】
軸方向に長いアンカは、複数のアンカ部材を備えることができ、それぞれの部材がそれぞれの半径方向の力をもたらし、これらの部材のうちの少なくとも1つが、残りの部材とは異なる半径方向の力をもたらすことができる。複数のアンカ部材のそれぞれを、内腔内アンカ装置の長さに沿ったそれぞれの位置に配置することで、前記異なる半径方向の力を含むそれぞれの部材の半径方向の力が、生体の内腔に沿った異なる長さ部分に配置される。
【0010】
前記異なる半径方向の力は、アンカ部材のうちの1つ以上を、残りのアンカ部材と異なる材料で形成することによってもたらすことができる。好ましくは、異なる材料により、埋め込まれたときに異なる半径方向の力が生み出され、それにより異なるたわみ値がもたらされる。これに代え、あるいはこれに加えて、異なるアンカ部材を、実質的に同じ材料からであるが、形状または厚さなどが異なる構成にて形成することができる。
【0011】
アンカ部材のうちの少なくともいくつかを、互いに連結することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの接続部材により、隣接するアンカ部材が接続され、接続部材によって2つ以上のアンカ部材が一体に連結される。
【0012】
複数のアンカ部材を備えるいくつかの実施形態において、それらアンカ部材のうちの少なくとも1つを、細長いワイヤから形成することができる。細長いワイヤは、螺旋パターンまたは往復(すなわち、軸方向の縦断面における波状)パターンなど、任意の適切な形状に形成することができる。波状のパターンは、それぞれの半径方向の力をアンカ部材の長さにわたって分配する一方で、アンカ部材のそれぞれの半径方向の膨張および収縮の性能も向上させる。
【0013】
固定性能をさらに向上させるため、内腔内アンカ装置は、生体の内腔の組織を貫くように設定された少なくとも1つの棘を、その外側に備えることができる。外側の棘は、内腔内アンカ装置の長さに沿って所定の位置に配置され、対応する半径方向の力が、棘を組織へと押し込むように機能する。例えば、複数のアンカ部材を備える実施形態においては、少なくとも1つの外側の棘を、アンカ部材のうちの1つに設けることができる。棘が設けられたアンカ部材が及ぼす力により、棘は組織内に保持される。
【0014】
いくつかの実施形態においては、外側の棘が、2方向の棘であってよい。2方向の棘は、内腔内アンカ装置が生体の内腔に沿って両方向に作用する外的な力にさらされる用途に、とくによく適している。一般に、2方向の棘は、近位方向への動きに抗するように設定された第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗するように設定された第2の棘セグメントを有している。このような棘は、装置が軸方向のかなり大きな蠕動力にさらされる胃腸用の用途に、よく適している。
【0015】
好ましくは、アンカを、内視鏡的な挿入のために半径方向につぶすことができる。また、位置変更および/または取り出しを容易にするため、内腔内アンカ装置が引き紐を備えていてもよい。例えば、引き紐を、装置の近位端に設けることができ、このような引き紐は、フックなどの取り出し装置による係合に適する。係合させたとき、取り出し装置によって引き紐を、静止している内腔内アンカ装置に対して押すかまたは引くことができ、それにより、内腔内アンカ装置の少なくとも一部を、少なくとも部分的に圧縮させることができる。直径が小さくなった状態で、生体の内腔を通って装置を取り出すことができ、あるいは内腔内で装置の位置を変更することができる。いくつかの実施形態においては、装置の少なくとも一部分が、取り出しに先立って回収フード、鞘、または外チューブへと引き込まれる。
【0016】
いくつかの実施形態においては、内腔内アンカ装置が細長いチューブへと、このチューブの近位端において接続されており、このチューブが、生体の内腔を遠位方向へと延びるように設定されている。軸方向に長いアンカを、多数あるさまざまなやり方で細長いチューブへと接続することができる。例えば、アンカを、縫合糸やステープルなどを使用して機械的にチューブへ固定することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、化学的な接着剤および/または熱による溶着により、アンカをチューブへと接合することができる。いくつかの実施形態においては、チューブが薄肉であって柔軟である。例えば、チューブを、きわめて薄くて柔軟な壁体を有するスリーブとして形成でき、このスリーブは、圧縮変形しやすい。アンカを、スリーブの少なくとも2つの重なり合う層の間に固定することができる。次いで、スリーブの重なり合う層の少なくとも一部を一体に接合するなど、利用可能な任意の固定法を使用して、重なり合っている層を、互いに付着させることができる。
【0017】
他の実施形態においては、軸方向に長いアンカを、均質な中空の筒体から形成することができる。筒体の厚さにより、筒体の異なる部位に対して異なるばね力が付与されるよう、筒体の長さに沿って筒体の厚さを変化させる(すなわち、先細りにする)ことができる。生体の内腔に埋め込まれたとき、先細りの筒体が、自身の長さに沿って異なる力をもたらし、すなわち筒体の厚さに応じて体の内腔に沿って異なる力がもたらされる。いくつかの実施形態においては、先細りの筒体を、装置の半径方向の膨張および収縮を促進するため、公知の技法(例えば、レーザ切断)を使用してさらに変形させることができる。
【0018】
本発明の以上の目的、特徴、および利点、ならびに他の目的、特徴、および利点が、添付の図面に示した本発明の好ましい実施形態についての以下のさらに詳細な説明から、明らかになるであろう。添付の図面においては、種々の図のすべてを通して、同様の参照符号が同じ部分を指し示している。図面は必ずしも比例尺ではなく、本発明の原理を示すことに重点が置かれている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下で、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
アンカは、内腔の機能を維持しつつ、かつ周囲の生体構造にもたらす外傷を最小限にして、生体の内腔へ固定されるように設定されている。そのようなアンカは、たとえ生体的な挙動の存在が予想されても、アンカをしっかりと保持すべく周囲の生体構造へと作用する固定力を付与している。例えば、そのような固定力により、たとえ蠕動があっても、胃腸用アンカを所定の位置に保持することができる。しかしながら、そのような生体的な挙動に抗しての固定は、ともすれば周囲の組織を損傷させかねないかなりの固定力を必要とする可能性がある。
【0021】
アンカ10b’を含む生体の内腔20の断面が、図1Aに示されている。一般に、内腔は、時間とともに変化しうる固有の直径D1を有している。アンカにより、内腔の壁面に向けて、半径方向外向きの固定力が付与される。アンカ10b’の構造および内腔の壁面の追従性に応じて、埋め込まれたアンカ10b’が、図示のとおり内腔の内径を増加させる(すなわち、D2)ことができる。アンカの領域から非支持の隣接領域への急激な移行により、とくにはアンカの端部25において組織へひずみが加わる。図示のとおり、組織の引き延ばしが、第1の距離Δ1にわたって生じる可能性がある。このようなひずみが、組織の炎症につながる可能性があり、あるいは時間とともに損傷を引き起こす可能性さえある。
【0022】
固定力による損傷の可能性を弱めるため、さらにアンカは、固定力とは別の移行力をもたらして、固定力が及ぼされる生体構造の周囲の隣接領域へと移行力を作用させる。図1Bに示されているように、固定力をもたらしているアンカ部材10b’’が、軸方向の両側において、より小さい移行力をもたらしている他のアンカ部材10a’’、10c’’によって囲まれている。移行力により、アンカの中央領域の固定力から、アンカの長さに沿ってより緩やかな力の減少が可能になり、結果として外傷を少なくすることができる。このようにして、広げられた直径D2から自然な内腔の直径D1への移行、つまり内径の変化が、第1の距離Δ1よりも長い第2の距離Δ2において生じる。非支持の組織から固定が行われる組織への移行においてより柔らかいアンカ部材を使用することで、組織のひずみを少なくすることができ、組織の炎症および損傷の可能性を小さくすることができる。
【0023】
生体の内腔に沿って、内腔の壁面に作用する半径方向外向きの異なる押圧力を異なる軸方向の長さに対して加えることで、固定力を、必要とされる場所へと加え、または集中させることができ、その一方で、移行力によって、周囲の生体構造へ加わる圧力を分散させることができる。とくに、移行力は固定力よりも小さな力であり、移行力により内腔のうちの固定力が加えられる領域から隣接する非支持の領域へと、内腔の壁面に作用する半径方向外向きの押圧力の緩やかな移行がもたらされる。好ましくは、アンカを、栄養チューブまたは胃腸用スリーブなどといった他の器具と組み合わせ、それらの器具を体の内腔の所定の位置に固定するために使用することができる。
【0024】
図2は、内腔内アンカ装置またはアンカ100の典型的な実施形態を概略的に示している。アンカ100は、内腔に関して長さ方向に測定される軸方向の全長「L」を有するとともに、内腔へと埋め込まれても内腔の機能の継続を可能にするように設定された内部通路115を形成している。例えば、アンカ100は、長さ「L」および直径「D」を有して内部通路115を形成するおおむね円筒の形状を有することができる。内腔内アンカ装置が埋め込まれたとき、内腔内アンカ装置に備えられたアンカは、隣接する生体の内腔の壁面に向けて、半径方向外向きのばね力をもたらす(すなわち、アンカが環状のラジアルばねを備えており、ばねの半径方向の変位に対応する力をもたらす)。半径方向の力には、予想される生体の抗力の存在下、アンカ100を所定の位置に固定するために充分な固定力が含まれる。とくに、半径方向外向きの力は、アンカの長さに沿って固定力から移行力へと変化し、移行力は周囲の組織への損傷の可能性を少なくする。生体の内腔に埋め込まれたとき、アンカは、軟組織から小さくたわんだ領域(すなわち、移行力)へと至り、より大きくたわんだ領域(すなわち、固定力)へと至った後に再び小さくたわんだ領域へと至り、最終的に非支持の軟組織へと戻る内腔に沿った推移をもたらしている。
【0025】
一般に、アンカは、所望の固定力をもたらすばねを備えている。ばねによって生み出される力は、ばねの追従性または剛性に関する関連のばね定数に対応したばね率によって定められる。ばね率は、材料の種類、材料の厚さ、寸法、および形状など、アンカの1つ以上の特徴によって決定することができる。ラジアルばねにおいては、半径方向の変位が大きいほど、より大きな力がもたらされる。内腔内の用途においては、そのようなラジアルばねが、好ましくは予想される内腔内の最大直径よりも大きい解放時直径(すなわち、無負荷時直径)を有している。したがって、埋め込まれたアンカが、半径方向の圧縮を引き起こす圧縮力に常にさらされており、これにより対抗する固定力をもたらしている。たわみアンカは、参照によってその全体が本明細書に取り入れられたものとする2005年6月8日付の米国特許出願第11/147,992号に記載されている。
【0026】
多くの用途においては、アンカが、内腔の運動の全範囲にわたって内腔の壁面に同調するよう、埋め込まれたときにも充分な追従性を残している。例えば、成人の近位十二指腸に埋め込まれたアンカは、約25ミリメートル未満から50ミリメートルを超える内腔の内径の変化に直面する可能性がある。
【0027】
図2によって示唆されているように、アンカ100は、複数のアンカ部材を使用することによって変化する力をもたらすことができる。例えば、アンカ100は、図示のとおり、3つ以上の異なるアンカ部材110a、110b、および110c(全体として、アンカ部材110)を備えることができる。それぞれのアンカ部材110a、110b、および110cは、図示のとおり環状であってよく、それぞれの軸方向のサブ長さ「l1」、「l2」、および「l3」を占めることができる。さらに、それぞれのアンカ部材110を、それぞれの距離「s1」、「s2」によって隣のアンカ部材から隔てることができる。いくつかの実施形態においては、1つ以上の距離が負であってもよく、それはすなわち部材が重なり合うことを意味している。アンカ100の全長は、アンカ部材のサブ長さおよびアンカ部材の間に設けられる距離の合計として決定される。環状のアンカ部材110のそれぞれは、その開口の中心軸を内腔と同心とさせつつ周囲の内腔の壁面に一致するような寸法および形状を有することができる。
【0028】
いくつかの実施形態においては、アンカ部材110を、図示のとおり、それぞれの架橋または接続部材120a、120b(全体として、120)を用いて一体に接続する。接続部材120は、ワイヤまたはロッドなどの剛性の高い部材または剛性の高いストラット(棒状の部材)であってもよい。剛性の高いストラットを使用することで、装置の軸方向の圧縮を少なくし、あるいは実質的になくすことができる。これに代え、あるいはこれに加えて、接続部材120が、ワイヤ、テープ、または糸(例えば、縫合糸)など、柔軟な部材であってもよい。そのような柔軟な部材は、長さを最大の長さ以下とすることができ、軸方向に圧縮はしても延長はしない。軸方向の圧縮および延長が望まれる場合には、接続部材120に弾性の部材を備えることができる。そのような柔軟性は、患者の快適さおよび固定の有効性の両者にとって有益でありうる。いくつかの実施形態においては、接続部材120が、アンカ部材110そのものと一体に形成される。
【0029】
柔軟であって軸方向に長いアンカ200の実施形態が、図3に示されている。軸方向に長いアンカ200は、2つ以上のアンカ部材210a、210b、210cを備えることができ、これらアンカ部材のそれぞれが、他の部材に対して独立して運動可能である。アンカ200は、接続部材220a、220bを備えることができるが、これらは、所望の柔軟性を可能にするように選択および配置される。例えば、剛性の高い接続部材をアンカ200の片側に沿って整列させ、アンカをこの側に向かって曲げることができるようにすることができる。
【0030】
他の実施形態であるアンカ300が、図4Aに示されている。アンカ300は、複数のアンカ部材310a、310b、310cを備え、隣接する各部材310を当接させつつ直線状に配置している。アンカ300について、対応する力‐対‐距離のグラフが、図4Bに示されている。詳しくは、このグラフは、それぞれのアンカ部材310(図4A)によってもたらされる種々の半径方向外向きの力または押圧力を、アンカ300の中心軸に沿って測定したそれぞれの距離に対して示している。図4Aの典型的な実施形態について示されているように、より大きな半径方向の力が、代表的な力F2を有する中央の部材310bによって付与されている。この押圧力は、第2のアンカ部材310bによって定められる軸方向の長さ(すなわち、3つの部材がすべて同じ長さL/3を有するとすれば、L/3から2L/3まで)にわたって、実質的に一定であってよい。同様に、隣の第1および第3のアンカ部材310a、310cによってもたらされる力F1およびF3は、グラフに(例えば、領域320に)示されているとおり、F2より小さい力である。より大きい力F2が、埋め込まれたときにアンカを所定の位置に保持するための固定力に相当する一方で、より小さい力F1およびF3が、周囲の組織に対する損傷の可能性を少なくする移行力に相当する。
【0031】
ところで、いくつかの実施形態においては、アンカ部材310の構造によって、集合した全体の長さではなく、各部材自身の長さであるサブ長さに沿って、異なる力をもたらすようにすることができる。アンカ部材310は、ラジアルばねであるため、付随のばね定数を有している。したがって、アンカ部材310によってもたらされる半径方向の力は、ばね定数および半径方向の圧縮量の結果としてもたらされる。アンカ部材のサブ長さに沿って圧縮が変化するようにアンカ部材を構成することによって、対応して変化する半径方向の力をもたらすことができる。例えば、外側のアンカ部材310a、310cが、それぞれ中央のアンカ部材310bの一端に接続される場合、これらアンカ部材310a、310cは、両端において異なる直径を有してもよい。中央のアンカ部材310bは、より剛であるため、剛性がより低い部材よりも大きな直径を有してもよい。一般に、設けることができるアンカ部材の数、または所望の特定の剛性分布プロファイルには、何ら制限がない。
【0032】
アンカによって生み出される固定力は、外向きに向けられて周囲の内腔の壁面へと加えられる半径方向の成分を含むことができる。さらに、固定力が、棘によってもたらされる軸方向の成分を含んでもよい。固定力の大きさは、好ましくは、意図される用途に応じて決まり、過剰になりすぎることなくアンカを充分に固定できるように選択される。大きな力が内腔の壁面に作用すると、周囲の組織を傷つける傾向が増すため、最大の力を抑えることが重要である。
【0033】
いくつかの実施形態においては、アンカの剛性(あるいは、たわみやすさ)をアンカの長さに沿って変化させることによって、アンカの半径方向外向きの力を変化させる。そのような特徴により、アンカを意図される送入位置に合わせて調整するのが、より柔軟に行える。例えば、アンカの一部位が比較的剛である一方で、アンカの他の部位が比較的柔軟であるなどして、所望の剛性を制御すべく、アンカ部材の厚さを変化させることができる。このやり方で、アンカのうちのより剛性の高い部位を、体の内腔においてアンカの当該部位が埋め込まれた部位を押し広げるために使用することができる。次いで、炎症を少なくするために、剛性がアンカの近位端および遠位端に向かうにつれて小さくされ、体の内腔の組織への外傷を少なくする。
【0034】
例えば、柔軟なアンカ400’の側面図が、図5Aに示されている。図示のとおり、別個のアンカ部材410a’、410b’、410c’(全体として、410’)を接続部材420a’、420b’(全体として、420’)によって互いに接続して使用することで、アンカ400’の曲げおよびたわみが可能になる。接続部材420’は、アンカ部材410’のそれぞれが同じチューブまたはスリーブに組み合わせられる実施形態においては、必ずしも必要でない。アンカ部材410’のそれぞれは、それぞれ図示の往復波状パターンに形作られた連続ワイヤから形成される。軸(図示されていない)に沿って眺めたとき、アンカ400’は、空白の円または輪のように見えるであろう。波状のアンカおよび関連の事項は、2003年12月9日付の米国特許仮出願第60/528,084号の優先権を主張する2004年6月1日付の米国特許出願第10/858,852号、および2004年12月13日付の米国特許仮出願第60/544,527号に記載されている。これらの出願の教示の全体は、参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0035】
一実施形態においては、中央のアンカ部材410b’が、直径が0.023インチであるニチノール(Nitinol)ワイヤなど、比較的太いワイヤから形成される。追加のアンカ部材410a’、410c’は、直径が0.014インチであるニチノール・ワイヤなど、より細いワイヤから形成される。同じ材料から形成されたワイヤを使用すると、より太いワイヤは、より細いワイヤよりも大きな剛性をもたらす。すなわち、圧縮されたときに、中央のアンカ部材410b’が、周囲の2つのアンカ部材410a’、410c’の両者と比べ、より大きな半径方向外向きの力をもたらす。また、波状のアンカ部材の軸方向の長さを変えることによって、ばね率を変化させることも可能であり、より短い部材は、より長い部材よりも剛性が大きい。さらには、所与のアンカ部材において往復の回数を変えることによって、ばね率を変化させることが可能であり、往復のより多い部材は剛性がより大きい。
【0036】
ワイヤは、金属、金属合金(例えば、ステンレス鋼およびニチノール)、および/または合成材料(例えば、プラスチック)など、任意の適切な材料から形成できる。好ましくは、材料は生体適合性であるが、非生体適合性の材料を生体適合性の材料で被覆し、あるいは生体適合性の材料で包んで使用することも可能である。固定は、アンカと内腔の内壁との間の締まり嵌めを使用して、達成することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、縫合糸、ステープル、外科用接着剤、ならびに/あるいは棘またはフックなどといった他の手段を使用して、固定を達成することが可能である。典型的な実施形態においては、少なくとも1つの外側の棘425’が、中央のアンカ部材410b’に取り付けられている。埋め込まれたとき、棘425’は、0.023インチ径のワイヤの剛性および対応する半径方向外向きの力によって、筋肉組織内の所定の位置に保持される。中央のアンカ部材410bが、棘425’を周囲の組織へと挿入された状態に保つため、大きな力をもたらす。第1および第3のアンカ部材410a’、410c’がない場合、中央のアンカ部材410b’にもたらされる固定力によって、部材410b’の両端において組織の炎症、さらには組織の損傷が生じる可能性がある。
【0037】
上述のアンカ部材は、多数のさまざまな形状に形成可能である。いくつかの実施形態においては、それぞれのアンカ部材が、軸方向の縦断面において波状に形成される。すなわち、直線状の素子(すなわち、ワイヤ)が、中心軸から或る距離(すなわち、半径)にある円筒形の表面に沿って、往復する様相で輪郭付けられる。このようなワイヤの形態は、円柱形のマンドレル上で形作ることができる。ワイヤの2つの端部が一体に接続(例えば、圧着、はんだ、化学的な接合、あるいは熱による接合)され、連続的な構造が形成される。このようにして形成されたアンカ部材は、生体の内腔と接触する表面積が比較的小さいが、アンカに比較的大きな直径(例えば、胃腸用の用途においては、25〜50ミリメートル、あるいはそれ以上)をもたらすことができる。往復によって、節点414a、414b(全体として、414)において互いに接続された比較的まっすぐなセグメント412a、412b(全体として、412)がもたらされている。半径方向に圧縮されたとき、節点414が曲がり、比較的まっすぐなセグメント412が互いに対してより整列した状態となることができる。このようにして、比較的小さい直径の構造体を通してアンカを挿入および/または除去することができるよう、アンカ400’の直径を、大幅に縮小することができる。例えば、いくつかの腸内の用途においては、直径50ミリメートルの装置が、直径12ミリメートルのカテーテルを介して挿入されるように構成される。解放時、アンカ400’が広がり、体の内腔の壁面に対してばね力を作用させる。
【0038】
アンカ部材410a’、410b’、410c’は、図示のとおり、それぞれの距離s1、s2によって隔てられてもよく、あるいはこれらの部材のうちの1つ以上が隣接または重なり合わせされてもよい。波状ワイヤ・アンカ400’’の他の実施形態が、図5Bに示されている。アンカ400’’も、やはり複数のアンカ部材410a’’、410b’’、410c’’(全体として410’’)を備えており、これらのアンカ部材は、接続部材420a’’、420b’’によって互いに接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。図示のように、アンカ部材410a’’、410b’’、410c’’のうちの1つ以上が、さまざまな度合いで他のアンカ部材と重なり合っていてもよい。そのような重なり合いの少なくとも1つの利点は、アンカ400’’の全長の短縮にある。さらには、このような重なり合いにより、アンカ400’’について所望の力‐対‐距離の関係を実現でき、軸に沿って分布する力がより緩やかに推移する。
【0039】
内腔内アンカ500の他の実施形態の側面図が、図6に示されている。アンカ500は、互いに接続された複数のアンカ部材510a、510b、510c(やはり説明を目的として波状部材として示されている)を備えている。アンカ部材510a、510b、510cは、機械式の固定具、接着剤、熱による接合、溶接、はんだ付け、および/または織り合わせによって互いに接続してもよい。互いの接続は、固定的であってよく、あるいは織り合わせの場合には、長手方向に圧縮してもよい。
【0040】
すでに述べたように、内腔内アンカ装置を、生体の内腔に細長いチューブを固定するために使用することができる。図5Aを参照して上述したアンカと同様のアンカを細長いチューブ615の近位端に組み合わせて備えている典型的な内腔内アンカ装置600が、図7に示されている。チューブ615は、剛体、半剛体、または柔軟体であってよい。胃腸用スリーブおよび関連事項は、2003年1月9日付の米国特許出願第10/339,786号(2002年12月2日付の米国特許仮出願第60/430,321号の利益を主張している)、および2003年12月2日付の米国特許出願第10/726,011号(2003年10月17日付の米国特許仮出願第60/512,145号の利益を主張している)に記載されている。これらすべての出願の教示の全体は、参照によって本明細書に取り入れられたものとする。
【0041】
アンカ部材610a、610b、610c(全体として、610)を、チューブへと接合することができる(例えば、接着剤を用いた化学的接合、または熱による接合)。また、アンカ部材610を、細長いチューブ615へと機械的に接続してもよい。例えば、アンカ部材610を、縫合糸および/または外科用ステープルを使用して接続することができ、さらには/あるいはアンカ部材そのものを細長いチューブの孔へと縫いつけて通すことによって、接続することができる。
【0042】
いくつかの実施形態においては、アンカ部材610が細長いチューブ615に包まれている。例えば、細長いチューブ615を、スリーブとして形成することができる。次いで、スリーブの一部分がアンカ部材を包むような形態で、スリーブの一端を自分自身の上へと折り返してアンカ部材610の内側および外側を覆うことによって使用することができる。次いで、細長いチューブにおいて重なり合う部分617を形成している部位を結合させて、アンカ部材610を包み、各アンカ部材610を互いに所定の位置に固定するとともに、細長いチューブ615に対しても所定の位置に固定することができる。例えば、チューブの重なり合い部分617を、互いに接合(例えば、接着剤を用いた化学的接合、または熱による接合)することができる。これに代え、あるいはこれに加えて、チューブの重なり合い部分617を、機械的に固定することができる。例えば、細長いチューブの重なり合い部分617を、縫合糸、ステープル、留め金、または他の任意の機械式の固定具を使用して、結合することができる。
【0043】
図示のとおり、内腔内アンカ装置600は、内腔内アンカ装置600から外向きに2方向にV字型で突き出して、近位方向への動きに抗するように設定された第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗するように設定された第2の棘セグメントにより周囲の組織を貫く棘620を備えることができる。説明のため、内腔内アンカ装置600が、動物の腸630の一部分に埋め込まれたものとして、軸方向に対する縦断面で示されている。内腔内アンカ装置600に触れる内側の粘膜層632と周囲の筋肉組織層634とを有する腸壁630が示されている。好ましくは、棘620は、腸630の筋肉層634へと粘膜層632を貫くように設定されている。いくつかの実施形態においては、棘620が、腸630の外壁を実際に貫いている。このようにして、棘620が、軸方向の固定力成分を付与し、アンカ部材610bが、棘を筋肉組織634との係合に維持するための固定力を付与している。
【0044】
埋め込みにおいて、棘620が筋肉組織へと固定されたままであることを保証するため、棘620を有するアンカ部材は、比較的高剛性でなければならない。すなわち、固定力を付与するアンカ部材610bの剛性によって、半径方向の力を維持し、それにより棘620が組織へと押し込まれる。いくつかの実施形態においては、粘膜層632を介して筋肉組織の層634に対してアンカ部材610bが押し付けられて当接するのに十分なほどの固定力が、アンカ部材610bの剛性により付与される。
【0045】
しかしながら、いくつかの用途においては、アンカ部材610bの剛性が、周囲の組織に炎症や損傷を引き起こす可能性がある。そのような炎症または損傷の可能性を少なくするため、追加のアンカ部材610a、610cが、アンカ部材610bの両側に設けられる。好ましくは、追加のアンカ部材610a、610cは、中央のアンカ部材610bよりも剛性が低い(すなわち、より柔軟である)。そのため、内腔においてアンカがない部位と剛性の高いアンカ部材610bとの間の移行が、より大きな表面積にわたって広がることになり、棘620における所望の固定力が、漸進的に達成されるようになる。すなわち、図1Bに示したとおり、追加のアンカ部材610a、610cにより、剛性の高いアンカ部材610bの両側においてひずみの緩和がもたらされ、組織への外傷を最小限にする。
【0046】
細長い可撓スリーブを動物の腸に固定する内腔内アンカ装置600の典型的な実施形態が、図8に示されている。胃700の下部が、幽門括約筋705を終端として示されている。括約筋705の遠位側は、近位十二指腸715であり、十二指腸球部と称されることもある。図7の装置が、アンカを幽門括約筋705の遠位側に配置させ、好ましくは十二指腸球部715内に配置させて埋め込まれている。内腔内アンカ装置600のスリーブは、十二指腸710を通過して空腸720へと延びることができる。
【0047】
ワイヤから形成されたアンカに関して上述したように、半径方向の力または剛性を、アンカの物理的特性を変えることによって制御することができる。この手法は、ワイヤの実施例以外にも広げることが可能である。例えば、軸方向に長いアンカを、両端が先細りの筒体から形成することができる。半径方向の力または剛性を変化させるため、肉厚が変化するように筒体を形作ることができる。軸方向の先細りは、所望の形状への射出成型によって達成でき、および/または中実で細長い筒体から内部を取り除くことによって達成できる。いずれの場合も、中心軸に沿って厚さが異なるアンカがもたらされる。図9Aには、より厚い中央部から両端部を先細りにした典型的な筒体状のアンカ800の断面図が示されている。すなわち、より薄い端部810が、余分な材料820を取り除くことによって達成されている。例えば、ステンレス鋼または合金(例えば、ニチノール)の筒体800を、長さに沿って材料を選択的に取り除くべく、旋盤にて研削および/または旋削することによって成形することができる。図示のとおり、筒体800を、筒体の中央に広がる比較的厚い部分から、チューブの端部の比較的薄い部分へと、先細りにすることができる(この手法によれば、思い付く任意の形態が可能である)。
【0048】
ひとたび先細りにされた成形アンカ800は、膨張可能なアンカを形成すべくさらに加工することができる。例えば、図9Bに示すように、レーザを使用して、成形アンカ900の壁面へ、複数の開口からなる窓部920を切り込むことができる。切除後に、成形アンカの残余の部分910により、ストラットが互いに接続された網目体910など、図示のように連続的な構造体を形成することができ、あるいは上述の波状の構造体さえも形成することが可能である。やはり、得られた構造体は、内部に管腔915をもたらす一方で、半径方向に圧縮可能である。典型的なアンカ900について、対応する力‐対‐距離のプロファイルが、図9Cに示されている。
【0049】
当業者であれば理解できるとおり、これらの方法および装置に対して、多数の変形例が存在しうる。それらの変形例は、本発明に包含される。
【0050】
本発明を、本発明の好ましい実施形態を参照しつつ詳しく示して説明したが、添付の特許請求の範囲に包含される本発明の技術的範囲から離れることなく、形態および細部についてさまざまな変更が可能であることを、当業者であれば理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】生体の内腔に埋め込まれた従来技術の内腔内アンカ装置を説明する概略図である。
【図1B】生体の内腔に埋め込まれた本発明の原理による内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図2】内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図3】可曲性の内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図4A】図1に示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図4B】図4Aの内腔内アンカ装置についての典型的な半径方向の力のプロファイルである。
【図5A】架橋部材を有する図2に示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図5B】架橋部材を有する図2に示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図6】複数の波状部材を接続して有する図4Aに示した内腔内アンカ装置の他の実施形態を説明する概略図である。
【図7】図2に示した内腔内アンカ装置の実施形態の断面図を示す概略図であり、アンカ装置がチューブへと取り付けられて、生体の内腔へと埋め込まれている。
【図8】図7に示した内腔内アンカ装置の断面図を示す概略図であり、近位十二指腸に埋め込まれている。
【図9A】成形チューブの実施形態を説明する概略図である。
【図9B】図9Aに示した成形チューブから形成された内腔内アンカ装置の実施形態を説明する概略図である。
【図9C】図9Bの内腔内アンカ装置についての典型的な半径方向の力のプロファイルである。
【符号の説明】
【0052】
600…内腔内アンカ装置
10a’’,10b’’,10c’’,100,200,300,400’,400’’,500,800,900…アンカ
110,210,310,410’,410’’,610…アンカ部材
425’,425’’,620…棘
120,220,420’,420’’…接続部材
615…チューブ
920…窓部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の内腔へ埋め込まれるための軸方向に長いアンカであり、埋め込まれた状態でその中心軸が前記生体の内腔と同心となるアンカを備える内腔内アンカ装置であって、
前記軸方向に長いアンカが、
前記内腔に接して膨らむように設定された主アンカ領域、および
前記主アンカ領域の両側に位置するとともに、前記内腔に接して膨らむように設定された二次アンカ領域を有しており、
前記主アンカ領域が、前記二次アンカ領域の外側端よりも大きく膨らむように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記軸方向に長いアンカが、複数のアンカ部材を有しており、該アンカ部材のうちの少なくとも1つが、前記主アンカ領域に関係し、該アンカ部材のうちの他の少なくとも2つが、前記二次アンカ領域に関係している内腔内アンカ装置。
【請求項3】
請求項2において、前記主アンカ領域に関係しているアンカ部材、および前記二次アンカ領域に関係している他の少なくとも2つのアンカ部材が、異なる材料で構成されている内腔内アンカ装置。
【請求項4】
請求項2において、前記主アンカ領域に関係しているアンカ部材、および前記二次アンカ領域に関係している他の少なくとも2つのアンカ部材が、異なる厚さを有する実質的に同じ材料で構成されている内腔内アンカ装置。
【請求項5】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、細長いワイヤから形成されている内腔内アンカ装置。
【請求項6】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、軸方向の縦断面で波状の部材である内腔内アンカ装置。
【請求項7】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、前記生体の内腔の組織を貫くように設定された少なくとも1つの棘を外側に有しており、該アンカ部材の各々が、前記内腔に接して膨らむとともに、前記棘を前記組織内に保持するように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項8】
請求項7において、前記外側の棘が、近位方向への動きに抗する第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗する第2の棘セグメントを有する2方向の棘である内腔内アンカ装置。
【請求項9】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも2つのアンカ部材を接続する少なくとも1つの接続部材をさらに有している内腔内アンカ装置。
【請求項10】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、細長いチューブの近位端と連結しており、該チューブが、前記生体の内腔を遠位方向に延びるように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項11】
請求項10において、前記細長いチューブが、近位十二指腸に固定されるように設定されており、該チューブが、腸内を遠位方向に延びる内腔内アンカ装置。
【請求項12】
請求項10において、前記細長いチューブが、薄肉で圧縮変形する内腔内アンカ装置。
【請求項13】
請求項1において、前記主アンカ領域に配置され、前記生体の内腔の組織を貫くように設定された少なくとも1つの棘を外側にさらに有しており、前記内腔に接しての膨らみが、前記棘を前記組織内に保持するように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項14】
請求項13において、前記外側の棘が、近位方向への動きに抗するように設定された第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗するように設定された第2の棘セグメントを有する2方向の棘である内腔内アンカ装置。
【請求項15】
請求項1において、細長いチューブをさらに有しており、該細長いチューブはその近位端を前記軸方向に長いアンカに連結し、該チューブが、前記生体の内腔を遠位方向へと延びるように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項16】
請求項15において、前記細長いチューブが、近位十二指腸に固定されるように設定されており、該チューブが、腸内を遠位方向に延びる内腔内アンカ装置。
【請求項17】
請求項15において、前記細長いチューブが、薄肉で、圧縮変形可能な内腔内アンカ装置。
【請求項18】
請求項15において、前記軸方向に長いアンカが、前記チューブの重なり合う層の間で固定され、前記チューブに接続されている内腔内アンカ装置。
【請求項19】
請求項1において、前記アンカが、内視鏡の挿入のために半径方向に圧縮変形可能な内腔内アンカ装置。
【請求項20】
請求項1において、前記軸方向に長いアンカが、均質な中空の筒体から形成されるとともに、該筒体の壁の厚さが該筒体の長さに沿って異なっており、該筒体の半径方向の変形を可能にするように設定された複数の窓部が該筒体の壁に形成されている内腔内アンカ装置。
【請求項21】
請求項1において、前記主および二次アンカ領域が、異なるばね率を有している内腔内アンカ装置。
【請求項22】
請求項1において、前記主アンカ領域が軸方向の中央である内腔内アンカ装置。
【請求項23】
生体の内腔へ軸方向に長いアンカを固定するための方法であって、
前記生体の内腔の第1の領域に作用する半径方向外向きの固定力を付与する工程、
前記第1の領域の両側に作用する半径方向外向きの移行力を付与する工程、および
前記生体の内腔への損傷を軽減するように設定された半径方向外向きの移行力により、前記生体の内腔の機能を継続させる工程
を含む方法。
【請求項24】
請求項23において、軸方向に長いアンカが第1のアンカ部材および第2のアンカ部材を備え、前記第1のアンカ部材が、前記半径方向外向きの固定力を付与し、前記第2のアンカ部材が、前記半径方向外向きの移行力を付与する方法。
【請求項25】
請求項23において、前記生体の内腔の内壁を少なくとも1つの外向きの棘で貫く工程をさらに含んでおり、
前記半径方向外向きの固定力により、前記少なくとも1つの棘が前記内壁へ押し込まれる方法。
【請求項26】
請求項25において、前記少なくとも1つの棘を使用して、前記生体の内腔に沿う両方向へ前記軸方向に長いアンカが移動するのを阻止する工程をさらに含んでいる方法。
【請求項27】
請求項23において、前記生体の内腔へと内腔内アンカ装置を挿入するため、前記軸方向に長いアンカを少なくとも部分的に半径方向に圧縮させる工程をさらに含んでいる方法。
【請求項28】
請求項23において、前記生体の内腔から内腔内アンカ装置を取り出すため、軸方向に長いアンカの少なくとも一部分を少なくとも部分的に半径方向に圧縮させる工程をさらに含んでいる方法。
【請求項29】
生体の内腔の第1の領域に半径方向外向きの力をもたらすための手段、および
前記生体の内腔の機能の継続を可能にしつつ、前記生体の内腔の第1の領域に対して近位側および遠位側の領域へと別の半径方向外向きの力をもたらす手段
を有する内腔内アンカ装置であって、
前記半径方向外向きの力の少なくとも一方が、前記生体の内腔への固定に適した固定力であり、他方の半径方向外向きの力が、前記生体の内腔への損傷を軽減するのに適した移行力である内腔内アンカ装置。
【請求項1】
生体の内腔へ埋め込まれるための軸方向に長いアンカであり、埋め込まれた状態でその中心軸が前記生体の内腔と同心となるアンカを備える内腔内アンカ装置であって、
前記軸方向に長いアンカが、
前記内腔に接して膨らむように設定された主アンカ領域、および
前記主アンカ領域の両側に位置するとともに、前記内腔に接して膨らむように設定された二次アンカ領域を有しており、
前記主アンカ領域が、前記二次アンカ領域の外側端よりも大きく膨らむように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記軸方向に長いアンカが、複数のアンカ部材を有しており、該アンカ部材のうちの少なくとも1つが、前記主アンカ領域に関係し、該アンカ部材のうちの他の少なくとも2つが、前記二次アンカ領域に関係している内腔内アンカ装置。
【請求項3】
請求項2において、前記主アンカ領域に関係しているアンカ部材、および前記二次アンカ領域に関係している他の少なくとも2つのアンカ部材が、異なる材料で構成されている内腔内アンカ装置。
【請求項4】
請求項2において、前記主アンカ領域に関係しているアンカ部材、および前記二次アンカ領域に関係している他の少なくとも2つのアンカ部材が、異なる厚さを有する実質的に同じ材料で構成されている内腔内アンカ装置。
【請求項5】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、細長いワイヤから形成されている内腔内アンカ装置。
【請求項6】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、軸方向の縦断面で波状の部材である内腔内アンカ装置。
【請求項7】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、前記生体の内腔の組織を貫くように設定された少なくとも1つの棘を外側に有しており、該アンカ部材の各々が、前記内腔に接して膨らむとともに、前記棘を前記組織内に保持するように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項8】
請求項7において、前記外側の棘が、近位方向への動きに抗する第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗する第2の棘セグメントを有する2方向の棘である内腔内アンカ装置。
【請求項9】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも2つのアンカ部材を接続する少なくとも1つの接続部材をさらに有している内腔内アンカ装置。
【請求項10】
請求項2において、前記複数のアンカ部材のうちの少なくとも1つが、細長いチューブの近位端と連結しており、該チューブが、前記生体の内腔を遠位方向に延びるように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項11】
請求項10において、前記細長いチューブが、近位十二指腸に固定されるように設定されており、該チューブが、腸内を遠位方向に延びる内腔内アンカ装置。
【請求項12】
請求項10において、前記細長いチューブが、薄肉で圧縮変形する内腔内アンカ装置。
【請求項13】
請求項1において、前記主アンカ領域に配置され、前記生体の内腔の組織を貫くように設定された少なくとも1つの棘を外側にさらに有しており、前記内腔に接しての膨らみが、前記棘を前記組織内に保持するように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項14】
請求項13において、前記外側の棘が、近位方向への動きに抗するように設定された第1の棘セグメントおよび遠位方向への動きに抗するように設定された第2の棘セグメントを有する2方向の棘である内腔内アンカ装置。
【請求項15】
請求項1において、細長いチューブをさらに有しており、該細長いチューブはその近位端を前記軸方向に長いアンカに連結し、該チューブが、前記生体の内腔を遠位方向へと延びるように設定された内腔内アンカ装置。
【請求項16】
請求項15において、前記細長いチューブが、近位十二指腸に固定されるように設定されており、該チューブが、腸内を遠位方向に延びる内腔内アンカ装置。
【請求項17】
請求項15において、前記細長いチューブが、薄肉で、圧縮変形可能な内腔内アンカ装置。
【請求項18】
請求項15において、前記軸方向に長いアンカが、前記チューブの重なり合う層の間で固定され、前記チューブに接続されている内腔内アンカ装置。
【請求項19】
請求項1において、前記アンカが、内視鏡の挿入のために半径方向に圧縮変形可能な内腔内アンカ装置。
【請求項20】
請求項1において、前記軸方向に長いアンカが、均質な中空の筒体から形成されるとともに、該筒体の壁の厚さが該筒体の長さに沿って異なっており、該筒体の半径方向の変形を可能にするように設定された複数の窓部が該筒体の壁に形成されている内腔内アンカ装置。
【請求項21】
請求項1において、前記主および二次アンカ領域が、異なるばね率を有している内腔内アンカ装置。
【請求項22】
請求項1において、前記主アンカ領域が軸方向の中央である内腔内アンカ装置。
【請求項23】
生体の内腔へ軸方向に長いアンカを固定するための方法であって、
前記生体の内腔の第1の領域に作用する半径方向外向きの固定力を付与する工程、
前記第1の領域の両側に作用する半径方向外向きの移行力を付与する工程、および
前記生体の内腔への損傷を軽減するように設定された半径方向外向きの移行力により、前記生体の内腔の機能を継続させる工程
を含む方法。
【請求項24】
請求項23において、軸方向に長いアンカが第1のアンカ部材および第2のアンカ部材を備え、前記第1のアンカ部材が、前記半径方向外向きの固定力を付与し、前記第2のアンカ部材が、前記半径方向外向きの移行力を付与する方法。
【請求項25】
請求項23において、前記生体の内腔の内壁を少なくとも1つの外向きの棘で貫く工程をさらに含んでおり、
前記半径方向外向きの固定力により、前記少なくとも1つの棘が前記内壁へ押し込まれる方法。
【請求項26】
請求項25において、前記少なくとも1つの棘を使用して、前記生体の内腔に沿う両方向へ前記軸方向に長いアンカが移動するのを阻止する工程をさらに含んでいる方法。
【請求項27】
請求項23において、前記生体の内腔へと内腔内アンカ装置を挿入するため、前記軸方向に長いアンカを少なくとも部分的に半径方向に圧縮させる工程をさらに含んでいる方法。
【請求項28】
請求項23において、前記生体の内腔から内腔内アンカ装置を取り出すため、軸方向に長いアンカの少なくとも一部分を少なくとも部分的に半径方向に圧縮させる工程をさらに含んでいる方法。
【請求項29】
生体の内腔の第1の領域に半径方向外向きの力をもたらすための手段、および
前記生体の内腔の機能の継続を可能にしつつ、前記生体の内腔の第1の領域に対して近位側および遠位側の領域へと別の半径方向外向きの力をもたらす手段
を有する内腔内アンカ装置であって、
前記半径方向外向きの力の少なくとも一方が、前記生体の内腔への固定に適した固定力であり、他方の半径方向外向きの力が、前記生体の内腔への損傷を軽減するのに適した移行力である内腔内アンカ装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【公表番号】特表2008−513129(P2008−513129A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532514(P2007−532514)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033220
【国際公開番号】WO2006/034062
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505205362)ジーアイ・ダイナミックス・インコーポレーテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】GI DYNAMICS,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033220
【国際公開番号】WO2006/034062
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(505205362)ジーアイ・ダイナミックス・インコーポレーテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】GI DYNAMICS,INC.
【Fターム(参考)】
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