説明

内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品の製造方法

【課題】内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制することができる内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品を製造する方法を提供すること。
【解決手段】内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品における内臓臭の生成を抑制する方法であって、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーなどの香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージなどの香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む方法を提供する。内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する凍結乾燥食品の製造方法であって、凍結乾燥工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーなどの香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージなどの香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品における内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制する方法、及び内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、イカ、タコ、貝類などの軟体動物原料肉をボイル処理した後、アルカリ処理し、次いで凍結乾燥する方法が記載されている。前記方法は、お湯での復元を容易にするとともに、復元後の肉質を柔らかくする効果を有する。しかしながら、内蔵付きの貝類の凍結乾燥品においては、内臓付き貝類の内蔵臭が経時的に増すという問題があった。
【0003】
【特許文献1】特開平7−184607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品において経時的に増加する内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制する方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、経時的に増加する内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制することができる内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する工程に先立ち、特定の香辛野菜成分と香辛料成分とを内臓付き貝類に浸透させることによって経時的に生成する内臓臭を抑制することができるとの知見に基づくものである。すなわち、本発明は、内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品における内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制する方法であって、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む方法を提供する。
また、本発明は、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する凍結乾燥工程を含む凍結乾燥食品の製造方法であって、前記凍結乾燥工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含むことを特徴とする内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、お湯で復元し、内臓付き貝類の内臓臭を抑制することができる内臓付き貝類を含むの凍結乾燥食品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品における内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制する方法は、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む。前記香辛成分浸透工程において、さらに乳糖を内臓付き貝類に浸透させてもよい。また、前記香辛成分浸透工程において、さらにトコフェロールを内臓付き貝類に浸透させてもよい。
本発明に適用される内臓付き貝類としては、あさり、しじみ、ムール貝、かきなどが挙げられる。なお、ホタテ貝柱などの内臓の付いていない貝の身は、内臓付き貝類には含まれない。内臓付き貝類は、生鮮品、水煮品、ボイル品及び冷凍品の何れかであってもよい。なお、内臓付き貝は貝殻から取り外して使用する。
本発明で対象としている内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品としては、内臓付き貝類だけを凍結乾燥した食品はもちろん、内臓付き貝類と共に野菜や肉類、或いは内臓の付いていない貝の身などを一緒に凍結乾燥した食品をも包含している。このような凍結乾燥食品は、熱湯を注ぐことにより、スープやシチュー、カレー、汁物などになる即席食品の具材などとして好適である。
【0008】
前記香辛成分浸透工程は、内臓付き貝類を、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料とを加えた熱水に浸漬することにより行うことができる。好ましくは、内臓付き貝類を前記香辛野菜と前記香辛料とを加えた50〜100℃の熱水、より好ましくは、70〜100℃の熱水に浸漬する。また、浸漬時間としては、好ましくは5〜20分間である。
【0009】
ここで、前記香辛野菜としては、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれるが、内臓臭を抑制するという効果の点で、特にセロリを含むのが好ましい。なお、セロリはセロリシードであってもよい。前記香辛野菜は、乾燥粉末品、ホール品(生又は乾燥品)、ペースト、抽出物などいずれの形態であってもよい。前記香辛野菜の含有量は、乾燥粉末品の場合、前記熱水中、好ましくは0.03〜0.5重量%であり、より好ましくは0.05〜0.3重量%である。なお、乾燥粉末品以外の形態の場合には、力価が等量になるような濃度に調整して使用する。
前記香辛料としては、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれるが、内臓臭を抑制するという効果の点で、特に、コショウ、ターメリック及びローレルを含むのが好ましい。前記香辛料は、乾燥粉末品、ホール品(生又は乾燥品)、ペースト、抽出物などいずれの形態であってもよい。前記香辛料の含有量は、乾燥粉末品の場合、前記熱水中、好ましくは0.03〜0.5重量%であり、より好ましくは0.05〜0.3重量%である。なお、乾燥粉末品以外の形態の場合には、力価が等量になるような濃度に調整して使用する。
【0010】
前記熱水には、さらに乳糖を含ませるのが好ましい。乳糖の含有量は、前記熱水中、好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは10〜25重量%である。
また、前記水溶液は、さらにトコフェロールを含むのが好ましい。トコフェロールの含有量は、前記熱水中、好ましくは0.05〜0.8重量%、より好ましくは0.1〜0.6重量%である。
また、前記熱水には、さらに食塩、糖、旨味成分などを含んでいてもよい。
【0011】
本発明の内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品の製造方法は、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する凍結乾燥工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む。前記香辛成分浸透工程において、さらに乳糖を内臓付き貝類に浸透させてもよい。また、前記香辛成分浸透工程において、さらにトコフェロールを内臓付き貝類に浸透させてもよい。
内臓付き貝類としては、あさり、しじみ、ムール貝、かきなどが挙げられる。なお、ホタテ貝柱などの内臓の付いていない貝の身は、内臓付き貝類には含まれない。内臓付き貝類は、生鮮品、水煮品、ボイル品及び冷凍品の何れかであってもよい。なお、内臓付き貝は貝殻から取り外して使用する。
内臓付き貝類を含む食品としては、本発明で対象としている内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品としては、内臓付き貝類だけを凍結乾燥した食品はもちろん、内臓付き貝類と共に野菜や肉類、或いは内臓の付いていない貝の身などを一緒に凍結乾燥した食品をも包含している。このような凍結乾燥食品は、熱湯を注ぐことにより、スープやシチュー、カレー、汁物などになる即席食品の具材などとして好適である。
【0012】
前記香辛成分浸透工程は、内臓付き貝類を、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料とを加えた熱水に浸漬することにより行うことができる。好ましくは、内臓付き貝類を前記香辛野菜と前記香辛料とを加えた50〜100℃の熱水、より好ましくは、70〜100℃の熱水に浸漬する。また、浸漬時間としては、好ましくは5〜20分間である。
【0013】
ここで、前記香辛野菜としては、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれるが、内臓付き貝類の内臓臭を抑制するという効果の点で、特にセロリを含むのが好ましい。なお、セロリはセロリシードであってもよい。前記香辛野菜は、乾燥粉末品、ホール品(生又は乾燥品)、ペースト、抽出物などいずれの形態であってもよい。前記香辛野菜の含有量は、乾燥粉末品の場合、前記熱水中、好ましくは0.03〜0.5重量%であり、より好ましくは0.05〜0.3重量%である。なお、乾燥粉末品以外の形態の場合には、力価が等量になるような濃度に調整して使用する。
前記香辛料としては、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれるが、内臓付き貝類の内臓臭を抑制するという効果の点で、特にコショウ、ターメリック及びローレルを含むのが好ましい。前記香辛料は、乾燥粉末品、ホール品(生又は乾燥品)、ペースト、抽出物などいずれの形態であってもよい。前記香辛料の含有量は、乾燥粉末品の場合、前記熱水中、好ましくは0.03〜0.5重量%であり、より好ましくは0.05〜0.3重量%である。なお、乾燥粉末品以外の形態の場合には、力価が等量になるような濃度に調整して使用する。
【0014】
前記熱水には、さらに乳糖を含ませるのが好ましい。乳糖の含有量は、前記熱水中、好ましくは5〜30重量%であり、より好ましくは10〜25重量%である。
また、前記水溶液は、さらにトコフェロールを含むのが好ましい。トコフェロールの含有量は、前記熱水中、好ましくは0.05〜0.8重量%、より好ましくは0.1〜0.6重量%である。
また、前記熱水には、さらに食塩、糖、旨味成分などを含んでいてもよい。
【0015】
尚、本発明の内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品の製造方法においては、前記香辛成分浸透工程の前後若しくは同時に、内臓付き貝類にアルカリ処理を施してもよい。内臓付き貝類のアルカリ処理は、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を粉体の状態で内臓付き貝類と混合するか、又はアルカリ剤を水溶液に溶解し、この水溶液に内臓付き貝類を浸漬して行うことができる。
【0016】
前記香辛成分浸透工程後の内臓付き貝類は、凍結乾燥器を用いて凍結乾燥し、内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品に加工される。ここで、凍結乾燥は定法により行うことができるが、例えば、内臓付き貝類と共に野菜や肉類、或いは内臓の付いていない貝の身などを一緒に凍結乾燥する場合には、これらをゼラチン溶液と共に型枠に収容した状態で凍結乾燥することにより、ブロック状の内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品を得ることができる。本発明の方法により製造された内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品は、長期保存しても内臓付き貝類の内臓臭が抑制され、お湯で復元させて喫食すると内臓付き貝類本来の自然な風味を有している。また、お湯で復元させた内臓付き貝類は、その本来の自然な色調を有している。
【実施例】
【0017】
(実施例1〜5及び比較例)
ボイル冷凍アサリを流水で解凍した。次いで、解凍したアサリを、表1に記載の配合により香辛野菜及び香辛料等を含まぜた70℃の熱水に浸漬した。浸漬は10分間行った。浸漬後、流水冷却し、定法にて凍結乾燥を行った。凍結乾燥食品をそれぞれ40℃の条件で1週間保管し、アサリの内臓臭について官能により評価を行い、その結果を表1に示す。尚、表1中「%」は重量%を示す。
【0018】
【表1】

【0019】
(実施例7)
ボイル冷凍アサリを流水で解凍した。次いで、解凍したアサリを、セロリシード粉末0.03重量%、ターメリック粉末0.03重量%、ローレル粉末、白胡椒粉末0.03重量%、塩2.5重量%、ショ糖1重量%、グルタミン酸1重量%及びトコフェロール0.3重量%を含有する70℃の熱水に浸漬した。浸漬は10分間行った。浸漬後、流水冷却した。次いで、このアサリ4g、ボイルオニオン8g及びボイル人参4gを2%ゼラチン溶液15gと共に型枠に収容し、凍結乾燥器に入れて凍結乾燥して、ブロック状の内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品を得た。得られた凍結乾燥食品を40℃の条件で1週間保管した後、お湯で復元させて喫食すると、内臓付き貝類は本来の自然な風味を有していた。また、お湯で復元させた内臓付き貝類は、その本来の自然な色調を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内臓付き貝類を含む凍結乾燥食品における内臓付き貝類の内臓臭の生成を抑制する方法であって、内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む方法。
【請求項2】
内臓付き貝類を含む食品を凍結乾燥する凍結乾燥工程を含む凍結乾燥食品の製造方法であって、前記凍結乾燥工程に先立ち、内臓付き貝類に、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜成分と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料成分とを浸透させる香辛成分浸透工程を含む製造方法。
【請求項3】
前記香辛野菜成分がセロリの成分を含む、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
前記香辛料成分がコショウ、ターメリック及びローレルの成分を含む、請求項2又は3記載の製造方法。
【請求項5】
前記香辛成分浸透工程が、内臓付き貝類を、セロリ、オニオン、ガーリック、ジンジャー及びパクチーからなる群より選ばれる香辛野菜と、コショウ、ターメリック、ローレル、コリアンダー、タイム及びセージからなる群より選ばれる香辛料とを加えた50〜100℃の熱水に5〜20分間浸漬することにより行われる、請求項2〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
前記香辛成分浸透工程において、さらに乳糖を内臓付き貝類に浸透させる、請求項2〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
前記香辛成分浸透工程において、さらにトコフェロールを内臓付き貝類に浸透させる、請求項2〜6のいずれか1項記載の製造方法。