説明

内視鏡システム、内視鏡システムのプロセッサ装置及び画像生成方法

【課題】酸素飽和度の情報をその正確性に応じて適切に表示する。
【解決手段】血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲を有する第1の照明光を被検体内に照射し、その反射光等を撮像することにより第1の画像信号(フレーム1)を取得する。波長範囲が広帯域に及ぶ第2の照明光を体腔内に照射し、その反射光等を撮像することにより第2の画像信号(フレーム2)を取得する。第1及び第2の画像信号から酸素飽和度を算出する。第1または第2の画像信号から酸素飽和度の信頼度を算出する。酸素飽和度と関連付けられた色差信号を記憶するカラーテーブルから、算出した酸素飽和度に対応する色差信号を求める。色差信号の信号値を信頼度に応じて変化させ、その変化させた色差信号を用いて酸素飽和度画像を生成する。生成した酸素飽和度画像は、表示装置に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中ヘモグロビンの酸素飽和度に関する情報を酸素飽和度画像として画像化する内視鏡システム、内視鏡システムのプロセッサ装置及び画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療においては、内視鏡装置を用いた診断等が広く行われている。内視鏡装置による被検体内の観察としては、照明光として広帯域光の白色光を用いる通常光観察の他、波長を狭帯域化した狭帯域光を用いて、被検体内の血管を強調表示等させる特殊光観察も行われるようになってきている。
【0003】
また、特殊光観察の他に、血管の吸光特性や生体組織の散乱特性を利用して、内視鏡装置で得られた画像信号から血中ヘモグロビンの酸素飽和度や血管深さなどの血管に関する機能情報を取り出し、それを画像化することも行われている。例えば、特許文献1では、酸素飽和度の大小に応じて異なる色を割り当て、その割り当てた色に基づいて疑似カラーの酸素飽和度画像を生成している。このような酸素飽和度画像を用いることで、低酸素状態となる癌の発見が極めて容易になる。
【0004】
この酸素飽和度は、画像信号に所定の画像処理を施すことで得られるため、適切な撮像条件の下で得られた画像信号でなければ、酸素飽和度自体の正確性が低いものとなってしまう。例えば、被検体への照明光の光量が強すぎて、画像信号の画素値が異常に高くなる場合には、その画像信号から得られる酸素飽和度の正確性は低いと考えらえる。
【0005】
この問題に対して、特許文献2及び3では、画像信号の画素値が規定値よりも大幅に外れている領域を異常領域として検出し、その異常領域については画素値が規定値の範囲内の正常領域と異なる表示にする処理や制御(例えばマスクするなど)を行うことで、酸素飽和度などの機能情報が正確に表された領域と不正確な領域とを、ユーザが認識しやすいようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2648494号公報
【特許文献2】特許2768936号公報
【特許文献3】特許3217343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2及び3では、異常領域と正常領域とを明確に区別しているため、異常領域と正常領域の境界値を示す閾値の設定の仕方によっては、正確な酸素飽和度を示している領域が異常領域とされたり、反対に不正確な酸素飽和度を示している領域が正常領域とされるおそれがある。
【0008】
さらには、酸素飽和度が不正確になる理由としては、特許文献2及び3で示されている照明光の強度の他に、以下の要因がある。
・人工物の写り込み
・粘膜表面の汚れ(不透明な粘膜や残渣の付着)
・異なる波長帯域の分光画像において配光分布が異なる
したがって、特許文献2及び3では、これらの要因による酸素飽和度の異常を検出することができない。
【0009】
本発明は、酸素飽和度の情報をその正確性に応じて適切に表示することができる内視鏡システム、内視鏡システムのプロセッサ装置及び画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の内視鏡システムは、被検体に照明光を照射する照射手段と、被検体からの反射光を撮像素子で撮像して、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の反射光に対応する画像信号を含む、波長範囲が異なる3つ以上の反射光に対応する画像信号を取得する画像信号取得手段と、取得した画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を求める酸素飽和度算出手段と、前記画像信号における各画素毎に酸素飽和度の信頼度を算出する信頼度算出手段と、前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を用いて酸素飽和度画像を生成する画像処理手段と、前記酸素飽和度画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
前記画像処理手段は、酸素飽和度と関連付けられた色調情報を記憶する色調情報記憶部から、前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度に対応する色調情報を求める色調情報算出手段と、前記色調情報算出手段で求めた色調情報を信頼度に応じて変化させ、その変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成する酸素飽和度画像生成手段とを備えている。
【0012】
前記信頼度算出手段は、前記酸素飽和度の算出に用いられる酸素飽和度算出用の画像信号を少なくとも用いて、第1の信頼度を算出し、前記酸素飽和度画像生成手段は、前記第1の信頼度に応じて変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成する。前記第1の信頼度は前記酸素飽和度算出用の画像信号の画素値に応じて決めてもよい。前記第1の信頼度は、前記画素値が上限値を超えた場合または前記画素値が下限値を下回った場合に、徐々に低くすることが好ましい。前記第1の信頼度は、前記酸素飽和度算出用の画像信号を含む複数の画像信号間の信号比のうち血中ヘモグロビンの吸光スペクトルに関連性がある信号比に応じて決めてもよい。
【0013】
前記信頼度算出手段は、画像信号における画素の位置に応じて第2の信頼度を決め、前記酸素飽和度画像生成手段は、前記第2の信頼度に応じて変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成する。前記第2の信頼度は、画像中心領域が最も高く、画像中心領域から画像周辺領域に向かうに従い徐々に低くなり、画像周辺領域が最も低くなることが好ましい。
【0014】
前記信頼度算出手段は、前記酸素飽和度の算出に用いられる酸素飽和度算出用の画像信号を少なくとも用いて第1の信頼度を算出するとともに、画像信号における画素の位置に応じて第2の信頼度を決め、前記酸素飽和度画像生成手段は、前記第1及び第2の信頼度に応じて変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成する。
【0015】
前記色調情報は色差信号の信号値である。前記画像信号取得手段は、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の光で照明された被検体を、撮像面にRGBのカラーフィルタが設けられたカラーの撮像素子で撮像するとともに、広帯域光の白色光で照明された被検体を前記カラーの撮像素子で撮像することにより、画像信号を取得する。前記白色光は、特定波長の励起光を蛍光体に当てることで励起発光する疑似白色光であることが好ましい。
【0016】
本発明の内視鏡システムは、被検体に照明光を照射する照射手段、及び被検体からの反射光を撮像素子で撮像して、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の反射光に対応する画像信号を含む、波長範囲が異なる3つ以上の反射光に対応する画像信号を取得する画像信号取得手段を備える内視鏡装置から、前記画像信号を受信する受信手段と、取得した画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を求める酸素飽和度算出手段と、前記画像信号の各画素毎に酸素飽和度の信頼度を算出する信頼度算出手段と、前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を用いて酸素飽和度画像を生成する画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の画像生成方法は、被検体に照明光を照射し、被検体からの反射光を撮像素子で撮像して、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の反射光に対応する画像信号を含む、波長範囲が異なる3つ以上の反射光に対応する画像信号を取得し、取得した画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を求め、前記画像信号の各画素毎に酸素飽和度の信頼度を算出し、前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を用いて酸素飽和度画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、酸素飽和度画像の生成に用いられる色調情報を、酸素飽和度の信頼度に応じて変化させていることから、特許文献2及び3のような従来技術のように、正常領域と異常領域とを別々に分けることなく、酸素飽和度の情報をその正確性に応じて適切に表示することができる。また、信頼度は、画像信号の画素値を用いて求める以外に、血中ヘモグロビンの吸光スペクトルに関連性がある信号比や画像信号における画素の位置に基づいて求められるため、特許文献2及び3のような従来技術では検出できなかった異常(粘膜表面の汚れ、色素の存在、配光ムラなと)に関する情報を、信頼度に反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態の内視鏡システムの外観図である。
【図2】内視鏡システムの内部構成を表すブロック図である。
【図3】スコープ先端部の正面図である。
【図4】酸素飽和度測定光及び白色光の発光スペクトルを表すグラフである。
【図5】RGBのカラーフィルタの分光透過率を示すグラフである。
【図6A】通常光観察モードにおける撮像素子の撮像制御を説明するための説明図である。
【図6B】酸素飽和度観察モードにおける撮像素子の撮像制御を説明するための説明図である。
【図7】血液量と信号比R2/G2との相関関係を示すグラフである。
【図8】酸素飽和度と信号比B1/G2、R2/G2との相関関係を示すグラフである。
【図9】ヘモグロビンの吸光係数を示すグラフである。
【図10】図8のグラフにおいて信号比から酸素飽和度を求める方法を説明するための説明図である。
【図11】画素値と信頼度との関係を示すグラフである。
【図12】酸素飽和度と色差信号との関係を示すグラフである。
【図13】本発明の作用を示すフローチャートである。
【図14】酸素飽和度画像の作成手順を示すブロック図である。
【図15】信号比B1/B2と信頼度との関係を示すグラフである。
【図16】信号比B1/G2と信頼度との関係を示すグラフである。
【図17】信号比R2/G2と信頼度との関係を示すグラフである。
【図18】画素の位置に応じて信頼度を変化させた信頼度分布を説明するための説明図である。
【図19】光源装置に回転フィルタ方式を採用した内視鏡システムの概略図である。
【図20】白色光の発光スペクトルを表すグラフである。
【図21】回転フィルタの正面図である。
【図22】図21の回転フィルタとは別の透過特性を有する回転フィルタの正面図である。
【図23】図21,22の回転フィルタとは別の透過特性を有する回転フィルタの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1及び2に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、所定の波長範囲の光を発生する光源装置11と、光源装置11から発せられる光を導光して被検体の被観察領域に照明光を照射し、その反射光等を撮像する内視鏡装置12と、内視鏡装置12で得られた画像信号を画像処理するプロセッサ装置13と、画像処理によって得られた内視鏡画像等を表示する表示装置14と、キーボード等で構成される入力装置15とを備えている。
【0021】
内視鏡システム10は、波長範囲が青色から赤色に及ぶ可視光の被検体像からなる通常光画像を表示装置14に表示する通常光観察モードと、被検体における血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報が疑似カラーで表された酸素飽和度画像を表示装置14に表示する酸素飽和度観察モードを備えている。観察モードは、内視鏡装置の切り替えスイッチ17や入力装置15から入力される指示に基づき、適宜切り替えられる。
【0022】
光源装置11は、2種のレーザ光源LD1,LD2と、光源制御部20と、コンバイナ21と、カプラ22とを備えている。レーザ光源LD1は、酸素飽和度の測定に用いられる狭帯域光(酸素飽和度測定光)を発生させる。レーザ光源LD2は、内視鏡装置の先端部に配置された蛍光体50から白色光(疑似白色光)を発生させるための励起光を発生させる。各レーザ光源LD1,LD2から発せられる光は、集光レンズ(図示省略)を介してそれぞれ対応する光ファイバ24,25に入射する。なお、レーザ光源LD1,LD2は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが使用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオード等を用いることもできる。
【0023】
光源制御部20は、レーザ光源LD1,LD2を制御することによって、各レーザ光源LD1,LD2の発光タイミングや各レーザ光源LD1,LD2間の光量比を調節する。本実施形態では、通常光観察モードのときには、レーザ光源LD1をオフにし、レーザ光源LD2をオンにする。一方、酸素飽和度観察モードのときには、レーザ光源LD1をオンにしたときはレーザ光源LD2をオフにし、反対にレーザ光源LD1をオフにしたときはレーザ光源LD2をオンにする。この切替は一定時間毎に繰り返し行われる。
【0024】
コンバイナ21は、各光ファイバ24,25からの光を合波させる。合波した光は、分波器であるカプラ22によって4系統の光に分波される。分波された4系統の光のうち、レーザ光源LD1からの光はライトガイド26,27で伝送され、レーザ光源LD2からの光はライトガイド28、29で伝送される。ライトガイド26〜29は多数の光ファイバを束ねたバンドルファイバなどから構成される。なお、コンバイナ21及びカプラ22を用いずに、各レーザ光源LD1,LD2からの光を直接ライトガイド26〜29に入れる構成としてもよい。
【0025】
内視鏡装置12は電子内視鏡から構成され、内視鏡スコープ32と、ライトガイド26〜29で伝送される4系統(4灯)の光を照射する照明部33と、被観察領域を撮像する1系統の撮像部34と、内視鏡スコープ32の先端部の湾曲操作や観察のための操作を行う操作部35と、内視鏡スコープ32と光源装置11及びプロセッサ装置13とを着脱自在に接続するコネクタ部36を備えている。
【0026】
内視鏡スコープ32には、操作部35側から順に、軟性部38、湾曲部39、スコープ先端部40が設けられている。軟性部38は、可撓性を有しているため、内視鏡スコープ挿入時には被検体内で屈曲自在とすることができる。湾曲部39は、操作部35に配置されたアングルノブ35aの回動操作により湾曲自在に構成されている。この湾曲部39は、被検体の部位等に応じて、任意の方向、任意の角度に湾曲させることができるため、スコープ先端部40を所望の観察部位に向けることができる。
【0027】
スコープ先端部40には照明部33と撮像部34が設けられている。撮像部34は、スコープ先端部40の略中心位置に、被写体領域からの反射光等を撮像する1つの観察窓42を備えている。照明部33は、撮像部34の両脇に設けられた2つの照明窓43,44を備えており、各照明窓43,44は、酸素飽和度測定光と白色光の2種類の光を被観察領域に向けて照射する。
【0028】
一方の照明窓43の奥には2つの投光ユニット46,47が収納されている。一方の投光ユニット46では、ライトガイド26からの酸素飽和度測定光を、レンズ48を介して被観察領域に向けて照射する。もう一方の投光ユニット47では、ライトガイド28からの励起光を蛍光体50に当てて白色光を励起発光させ、その白色光をレンズ51を介して被観察領域に向けて照射する。なお、他方の照明窓44の奥にも、上記投光ユニット46と同様の投光ユニット53と、上記投光ユニット47と同様の投光ユニット54の2つが収納されている。
【0029】
照明窓43,44は、スコープ先端部40において、観察窓42を挟んでその両側に配置されている。また、4つの投光ユニット46,47,53,54は、蛍光体50を備える投光ユニット47,54の出射面間を結ぶ直線L1と、蛍光体50を備えていない投光ユニット46,53の出射面間を結ぶ直線L2とが、観察窓42の中心部で交差するように、互い違いに配置されている。このような配置にすることによって、照明ムラの発生を防止することができる。
【0030】
蛍光体50は、レーザ光源LD2からの励起光の一部を吸収して緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光物質(例えばYAG系蛍光物質、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光物質)を含んで構成される。励起光が蛍光体50に照射されると、蛍光体50から発せられる緑色〜黄色の励起発光光(蛍光)と、蛍光体50により吸収されず透過した励起光とが合わされて、白色光(疑似白色光)が生成される。なお、蛍光体は、商品名としてマイクロホワイト(登録商標)(Micro White(MW))とも呼ばれている。
【0031】
したがって、蛍光体50を備える投光ユニット47,54から発せられる白色光は、図4に示すように、中心波長445nmの励起光の波長範囲と、その励起光によって励起発光する蛍光において発光強度が増大する概ね450nm〜700nmの波長範囲とを有する発光スペクトルとなる。一方、蛍光体50を備えていない投光ユニット46,53から発せられる酸素飽和度測定光は、中心波長473nmの近傍に波長範囲を有する発光スペクトルとなる。
【0032】
なお、ここで、本発明でいう白色光とは、厳密に可視光の全ての波長成分を含むものに限らず、例えば、上述した疑似白色光を始めとして、基準色であるR(赤),G(緑),B(青)等、特定の波長帯の光を含むものであればよい。つまり、本発明のいう白色光には、例えば、緑色から赤色にかけての波長成分を含む光や、青色から緑色にかけての波長成分を含む光等も広義に含まれるものとする。
【0033】
観察窓42の奥には、被検体の被観察領域の像光を取り込むための対物レンズユニット(図示省略)等の光学系が設けられており、さらにその対物レンズユニットの奥には、被観察領域の像光を受光して被観察領域を撮像するCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などの撮像素子60が設けられている。
【0034】
撮像素子60は、対物レンズユニットからの光を受光面(撮像面)で受光し、受光した光を光電変換して撮像信号(アナログ信号)を出力する。撮像素子60はカラーCCDであり、その受光面には、R色のカラーフィルタが設けられたR画素、G色のカラーフィルタが設けられたG画素、B色のカラーフィルタが設けられたB画素を1組とする画素群が、多数マトリックス状に配列されている。
【0035】
B色、G色、R色のカラーフィルタは、それぞれ図5に示すような分光透過率63,64,65を有している。したがって、被観察領域からの反射光等のうち白色光はR色、G色、B色のカラーフィルタの全てを透過するため、撮像素子60のR画素、G画素、B画素の全てから撮像信号が出力される。一方、酸素飽和度測定光は、中心波長が473nmであるため、主としてB画素から撮像信号が出力される。
【0036】
撮像素子60から出力される撮像信号(アナログ信号)は、スコープケーブル67を通じてA/D変換器68に入力される。A/D変換器68は、撮像信号(アナログ信号)をその電圧レベルに対応する画像信号(デジタル信号)に変換する。変換後の画像信号は、コネクタ部36を介して、プロセッサ装置13の画像処理部73に入力される。
【0037】
撮像制御部70は撮像素子60の撮像制御を行う。図6Aに示すように、通常光観察モード時には、1フレーム期間内で、白色光(445nm+蛍光体(本実施形態では445nmの励起光を蛍光体50に当てて白色光を発生させるため、このように表記する))を光電変換して得られる電荷を蓄積するステップと、蓄積した電荷を読み出すステップの合計2ステップが行われる。これは通常光観察モードに設定されている間、繰り返し行われる。
【0038】
一方、酸素飽和度観察モード時には、図6Bに示すように、1フレーム期間内で、酸素飽和度測定光(473nmの狭帯域光)を光電変換して得られる電荷を蓄積するステップと、蓄積した電荷を読み出すステップの合計2ステップが行われる(1フレーム目)。そして、その次に、1フレーム期間内で、白色光(445nm+蛍光体)を光電変換して得られる電荷を蓄積するステップと、蓄積した電荷を読み出すステップの合計2ステップが行われる(2フレーム目)。これら合計2フレームの撮像制御は、酸素飽和度観察モードに設定されている間、繰り返し行われる。
【0039】
なお、1フレーム目の画像信号は、撮像素子60のB画素からの青色信号B1と、G画素からの緑色信号G1と、R画素からの赤色信号R1とから構成される。また、2フレーム目の画像信号は通常光画像信号と同じであり、B画素からの青色信号B2と、G画素からの緑色信号G2と、R画素からの赤色信号R2とから構成される。この青色信号B2には、単色光である中心波長445nmの励起光を主とし、蛍光体50により励起発光する白色光のうち少量の青色成分を含む光に対応する信号を含んでいる。また、緑色信号G2には蛍光体50により励起発光する白色光のうち主として540〜580nmの波長範囲の光に対応する信号が含まれている。また、赤色信号R2には、白色光のうち590〜700の波長範囲の光に対応する信号が含まれている。
【0040】
なお、図示はしていないが、内視鏡装置12における操作部35及び内視鏡スコープ32の内部には、組織採取用処置具等を挿入する鉗子チャンネルや、送気・送水用のチャンネル等、各種のチャンネルが設けられている。
【0041】
プロセッサ装置13は、制御部72と、画像処理部73と、記憶部74とを備えており、制御部72には表示装置14及び入力装置15が接続されている。制御部72は、内視鏡装置12の切り替えスイッチ17や入力装置15から入力される観察モード等の指示に基づいて、画像処理部73、光源装置11の光源制御部20、内視鏡装置12の撮像制御部70、及び表示装置14の動作を制御する。
【0042】
画像処理部73は通常光画像処理部80と酸素飽和度画像処理部82とを備えており、内視鏡装置12からの画像信号に対して、所定の画像処理を施す。通常光画像処理部80は、画像信号に対して所定の画像処理を施すことによって、通常光画像を生成する。
【0043】
酸素飽和度画像処理部82は、内視鏡装置から入力される画像信号に基づき被検体の血液量及び血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を算出するとともに、算出した酸素飽和度を疑似カラー画像化した酸素飽和度画像を生成する。酸素飽和度画像処理部82は、信号比算出部84と、相関関係記憶部85と、血液量及び酸素飽和度算出部86と、信頼度算出部87と、酸素飽和度画像生成部88とを備えている。
【0044】
信号比算出部84は、酸素飽和度観察モード時に取得する1フレーム目の画像信号と2フレーム目の画像信号において、同じ位置にある画素間の信号比を算出する。信号比は画像信号の全ての画素に対して算出される。本実施形態では、信号比算出部84は、1フレーム目の青色信号B1と2フレーム目の緑色信号G2との信号比B1/G2と、2フレーム目の緑色信号G2と赤色信号R2との信号比R2/G2とを求める。なお、信号比は画像信号のうち血管部分の画素のみ求めてもよい。この場合、血管部分は、血管部分の画像信号とそれ以外の部分の画像信号との差に基づいて特定される。
【0045】
相関関係記憶部85は、信号比B1/G2及びR2/G2と血液量及び酸素飽和度との相関関係を記憶している。信号比と血液量との相関関係は、図7に示すように、信号比R2/G2が大きくなればなるほど血液量も大きくなるように定義されている1次元テーブルで記憶されている。なお、信号比R2/G2はlogスケールで記憶されている。
【0046】
一方、信号比と酸素飽和度との相関関係は、図8に示す二次元空間上に酸素飽和度の等高線を定義した2次元テーブルで記憶されている。この等高線の位置、形は光散乱の物理的なシミュレーションで得られ、血液量に応じて変わるように定義されている。例えば、血液量の変化があると、各等高線間の間隔が広くなったり、狭くなったりする。なお、信号比B1/G2,R2/G2はlogスケールで記憶されている。
【0047】
なお、上記相関関係は、図9に示すような酸化ヘモグロビンや還元ヘモグロビンの吸光特性や光散乱特性と密接に関連性し合っている。曲線90は酸化ヘモグロビンの吸光係数を、曲線91は還元ヘモグロビンの吸光係数を示している。例えば、473nmのように吸光係数の差が大きい波長では、酸素飽和度の情報を取り易い。しかしながら、473nmの光に対応する信号を含む青色信号は、酸素飽和度だけでなく血液量にも依存度が高い。そこで、青色信号B1に加え、主として血液量に依存して変化する光に対応する赤色信号R2と、青色信号B1と赤色信号R2のリファレンス信号となる緑色信号G2から得られる信号比B1/G2及びR2/G2を用いることで、血液量に依存することなく、酸素飽和度を正確に求めることができる。
【0048】
また、血中ヘモグロビンの吸光係数の波長依存性から、以下の3つのことが言える。
・波長470nm近辺(例えば、中心波長470nm±10nmの青色の波長領域)では酸素飽和度の変化に応じて吸光係数が大きく変化する。
・540〜580nmの緑色の波長範囲で平均すると、酸素飽和度の影響を受けにくい。
・590〜700nmの赤色の波長範囲では、酸素飽和度によって一見吸光係数が大きく変化するように見えるが、吸光係数の値自体が非常に小さいので、結果的に酸素飽和度の影響を受けにくい。
【0049】
血液量及び酸素飽和度算出部86は、相関関係記憶部85に記憶された相関関係と信号比算出部84で求めた信号比B1/G2、R2/G2とを用いて、各画素における血液量及び酸素飽和度の両方を求める。血液量については、相関関係記憶部85の1次元テーブルにおいて信号比算出部で求めた信号比R2/G2に対応する値が、血液量となる。一方、酸素飽和度については、まず、図10に示すように、二次元空間において信号比算出部84で求めた信号比B1/G2、R2/G2に対応する対応点Pを特定する。
【0050】
そして、図10のように、対応点Pが酸素飽和度=0%限界の下限ライン93と酸素飽和度=100%限界の上限ライン94との間にある場合、その対応点Pが位置する等高線が示すパーセント値が、酸素飽和度となる。例えば、図10の場合であれば、対応点Pが位置する等高線は60%を示しているため、この60%が酸素飽和度となる。なお、対応点が下限ライン93と上限ライン94との間から外れている場合には、対応点が下限ライン93よりも上方に位置するときには酸素飽和度を0%とし、対応点が上限ライン94よりも下方に位置するときには酸素飽和度を100%とする。なお、対応点が下限ライン93と上限ライン94との間から外れている場合には、その画素における酸素飽和度の信頼度を下げて表示しないようにしてもよい。
【0051】
信頼度算出部87は、血液量及び酸素飽和度算出部86で求めた酸素飽和度の正確性を数値化した信頼度を算出する。第1実施形態では、信頼度は、酸素飽和度の算出に用いられる青色信号B1、緑色信号G2、赤色信号R2の画素値に応じて決められる。信頼度と各信号の画素値との関係は図11に示すようなグラフで表され、この関係はROM87a(ROM以外の記憶媒体であってもよい)に記憶されている。このグラフが示すように、画素値が適正な範囲に入っている場合には、信頼度は1となる。これに対して、画素値が上限値を上回るような極めて大きい場合(例えば、撮像素子の特性で電荷が飽和してしまうような場合)には、または画素値が下限値を下回るような極めて小さい場合(S/Nが悪化するような場合)には、信頼度は1よりも低くなる。
【0052】
信頼度は、青色信号B1、緑色信号G2、赤色信号R2の全ての画素について算出した上で、それら各色の信号間で同じ位置の画素についての信頼度Cpを以下の式により算出する。
Cp=Cp(B1)×Cp(G2)×Cp(R2)
この式において、Cp(B1)は青色信号B1の画素についての信頼度を、Cp(G2)は緑色信号G2の画素についての信頼度を、Cp(R2)は赤色信号R2の画素についての信頼度を表している。
【0053】
酸素飽和度画像生成部88は、血液量及び酸素飽和度算出部86で求めた酸素飽和度を疑似カラーで表す酸素飽和度画像を生成する。酸素飽和度画像は、輝度と色差信号からなる映像信号で構成される。輝度は「Y」で表され、この輝度Yには通常光画像信号の緑色信号G2が割り当てられる。色差信号は、酸素飽和度と信頼度に応じて決められる。まず、酸素飽和度と色差信号とを関連付けたカラーテーブル88aに従って、血液量及び酸素飽和度算出部86で求めた酸素飽和度に対応する色差信号Cr,Cbを決定する。
【0054】
カラーテーブル88aは、図12に示すように、高酸素飽和度下では色差信号Crの信号値が正、色差信号Cbの信号値が負となるように定義され、低酸素飽和度下では、反対に色差信号Crの信号値が負、色差信号Cbの信号値が正となるように定義されている。そして、中酸素飽和度下において、色差信号Crの信号値と色差信号Cbの信号値の大小関係が逆転するように定義されている。したがって、酸素飽和度が低い方から高い方に行くにつれて、酸素飽和度画像の色味は青→水色→緑→黄色→橙→赤と変化するようになっている。
【0055】
次に、酸素飽和度に対応する色差信号Cb,Crを決めた後は、以下の式のように、その色差信号Cb,Crに対して信頼度Cpを掛け合わせて、色差信号Cb´,Cr´を得る。
Cb´=Cb×Cp
Cr´=Cr×Cp
これら得られた色差信号Cb´,Cr´と輝度Yとからなる酸素飽和度画像が、表示装置14に表示される。前記2つの式が示すように、信頼度Cpが低い領域では色差信号がゼロに近づくので、表示装置14に表示される疑似カラーの酸素飽和度画像の彩度は低下、即ちモノクロに近づく。したがって、信頼度が高い領域は彩度の高い鮮やかな疑似カラーで酸素飽和度の情報が確実に表示されるのに対して、信頼度が低い領域はその信頼度が低くなるほど彩度が低いモノクロ調で表示されるため、その低信頼度領域は酸素飽和度の情報量が低いことをユーザに訴えることができる。
【0056】
次に、本発明の作用について図13のフローチャート及び図14のブロック図に沿って説明する。内視鏡装置の切り替えスイッチ17によって、酸素飽和度観察モードに切り替えられると、スコープ先端部40から中心波長473nmの狭帯域光である酸素飽和度測定光が被検体内に照射される。被検体からの反射光等は、B画素、G画素、R画素からなるカラーCCDである撮像素子60で撮像される。これにより、青色信号B1、緑色信号G1、赤色信号R1からなる1フレーム目の画像信号が得られる。
【0057】
1フレーム目の画像信号が得られると、中心波長445nmの励起光で励起発光される白色光が、スコープ先端部40から被検体内に照射される。被検体からの反射光等を撮像素子60で撮像することにより、青色信号B2、緑色信号G2、赤色信号R2からなる2フレーム目の画像信号(通常光画像信号)が得られる。
【0058】
2フレーム目の画像信号が得られると、信号比算出部84は、1フレーム目の画像信号と2フレーム目の画像信号間で同じ位置にある画素について、信号比B1/G2、R2/G2を求める。信号比は全ての画素について求める。信号比が求まると、血液量及び酸素飽和度算出部86は、相関関係記憶部85に記憶している相関関係から、信号比算出部84で求めた信号比B1/G2、R2/G2に対応する酸素飽和度を求める。酸素飽和度は、全ての画素について求める。また、信頼度算出部87は、酸素飽和度の算出に用いるB1、G2、R2間で、同じ位置にある画素についての信頼度Cpを求める。
【0059】
全ての画素について酸素飽和度及び信頼度Cpが求まると、酸素飽和度画像生成部88内のカラーテーブル88aを参照し、酸素飽和度に対応する色差信号Cb,Crを求める。これら求めた色差信号Cb,Crのそれぞれに信頼度Cpを掛け合わせることにより、信頼度が反映された色差信号Cb´,Cr´を得る。そして、色差信号Cb´,Cr´と、通常光画像信号の緑色信号G2が割り当てられた輝度Yとから、酸素飽和度が疑似カラーで表された酸素飽和度画像を生成する。生成された酸素飽和度画像は、表示装置14に表示される。
【0060】
本発明の第2実施形態では、青色信号B1、緑色信号G2、赤色信号R2の3つの信号の画素値の大小によって信頼度を決めた第1実施形態と異なり、青色信号B1、緑色信号G2、赤色信号R2に青色信号B2を加えた4つの信号の画素値に、血中ヘモグロビンの光吸収スペクトルに関する情報がどの程度含まれているかによって信頼度を決める。なお、信頼度の算出に関する部分以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0061】
青色信号B1、青色信号B2、緑色信号G2、赤色信号R2における各画素値は、それぞれ所定の規格化定数を掛けることで反射率に比例するように規格化されている場合、ヘモグロビンの光吸収スペクトルを考慮すると、通常は以下の3つの式(M1)〜(M3)による関係が成立する。
B2<B1・・・(M1)(ただし酸素飽和度が高い・血液量が大きいと逆転する場合がある)
B1>G2・・・(M2)(ただし酸素飽和度が低い・血液量が大きいと逆転する場合がある)
G2<R2・・・(M3)
ここで、粘膜表面に不透明な粘液が付着したり、残渣が存在したり、人工物や散布した色素が写り込んだ場合、上記3つの式を同時に満足する可能性が低くなる。
【0062】
そこで、図15に示すように、B1及びB2間の信号比log(B1/B2)が一定値以上は、式(M1)の大小関係が成立しているとして信頼度Cs(B1/B2)を「1」にし、一定値未満となった場合には信頼度Cs(B1/B2)を徐々に低下させる。また、図16及び図17に示すように、B1及びG2間の信号比log(B1/G2)及びR2及びG2間の信号比log(R2/G2)についても、それぞれ一定値以上のときには式(M2)及び(M3)の大小関係が成立しているとして信頼度Cs(B1/G2),Cs(R2/G2)を「1」にし、それぞれが一定値未満となった場合には、信頼度Cs(B1/G2),Cs(R2/G2)を徐々に低下させる。これら図15〜図17に示す信号比と信頼度との関係は、ROM87aに記憶されている。
【0063】
なお、式(M1)及び(M2)については、酸素飽和度及び血液量によっては、大小関係が逆転する場合があるので、互いの画素値が等しくなる信号比「0」で信頼度Cs(B1/B2),Cs(B1/G2)を低下させるのではなく、信号比が負である且つ「0」から一定以上離れている場合に信頼度Cs(B1/B2),Cs(B1/G2)を低下させる。一方、式(M3)については、酸素飽和度及び血液量によって大小関係が変わる可能性は低いので、正の信号比が「0」に近づいたら、信頼度Cp(R2/G2)を徐々に低下させる。
【0064】
各信号比log(B1/B2),log(B1/G2),log(R2/G2)に対応する信頼度Cs(B1/B2),Cs(B1/G2),Cs(R2/G2)が得られたら、以下の式により各画素における信頼度Csを算出する。
Cs=Cs(B1/G2)×Cs(B1/G2)×Cs(R2/G2)
算出された信頼度Csは、第1実施形態と同様に、以下の式のように色差信号Cb,Crに掛け合わされる。
Cb´=Cb×Cs
Cr´=Cr×Cs
これら色差信号Cb´,Cr´と通常光画像信号の緑色信号G2が割り当てられる輝度Yとから酸素飽和度画像が生成される。なお、色差信号Cb,Crには、以下の式のように、第2実施形態で示した信頼度Csに加えて、第1実施形態で示した信頼度Cpを掛け合わせてもよい。
Cb´=Cb×Cs×Cp
Cr´=Cr×Cs×Cp
【0065】
本発明の第3実施形態では、照明光の配光ムラを考慮して信頼度を設定する。配光ムラについては、蛍光体50有りの投光ユニット47,54から出射される光と蛍光体50無しの投光ユニット46,53から出射される光との配光の違いを考慮しない場合には、画像中心が一番ムラが少なく、画像周辺に向かうに従い徐々にムラが多くなることが分かっている。なお、第3実施形態は、信頼度の算出に関する部分以外は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0066】
上記のような配光ムラを有するのは、白色光の照明に用いられる蛍光体50の中で散乱体の散乱特性は波長によって異なり、また、照明光学系の収差によって、画像における光量分布は波長帯域によって微妙に異なるからである。この光量分布の違いは、特に画像の周辺部分になるほど顕著となる。また、配光分布の違いは、被写体の凹凸などにも依存する。以上の理由から、光量分布の違いを補正せずに酸素飽和度の算出を行った場合には、得られた酸素飽和度の正確性は低下する可能性が高い。
【0067】
そこで、図18に示すように、画像中心領域については信頼度Cdを高くし、画像中心領域から画像周辺領域に向かうに従って信頼度Cdが徐々に低くなるようにし、画像周辺領域については最も信頼度Cdが低くなるように、信頼度Cdを予め設定する(同心円状の信頼度分布)。そして、この信頼度分布に従って、画像信号の各画素毎に信頼度を決める。信頼度は、画素の位置が信頼度分布のどの領域に入っているかによって、決められる。なお、図18に示す信頼度分布に関する情報は、信頼度算出部内のROM87aに記憶されている。
【0068】
このように第3実施形態における信頼度の算出方法は、第1及び第2実施形態のようにリアルタイムに得られる画像信号から順次信頼度を算出する動的な方法ではなく、蛍光体中の散乱体の散乱特性や照明光学系の収差その他の条件によって予め設定した信頼度分布から、一度決めたら変化させることの無い固定的な信頼度を求める方法を採用する。
【0069】
図18に示す信頼度分布から、各画素における信頼度Cdが得られたら、第1実施形態と同様に、以下の式のように信頼度Cdを色差信号Cb,Crに掛け合わせて、色差信号Cb´,Cr´を得る。
Cb´=Cb×Cd
Cr´=Cr×Cd
これら得られた色差信号Cb´,Cr´と通常光画像信号の緑色信号G2が割り当てられる輝度Yとから酸素飽和度画像が生成される。なお、色差信号Cb,Crには、以下の式のように、第3実施形態で示した信頼度Cdに加えて、第1実施形態で示した信頼度Cpまたは第2実施形態で示したCsの少なくともいずれか一方を掛け合わせてもよい。
Cb´=Cb×Cd(×Cs×Cd)
Cr´=Cr×Cd(×Cp×Cs)
【0070】
上記実施形態では、被検体内の照明にレーザ光源LD1,LD2と蛍光体50を用いて被検体内の観察を行ったが、これに代えて、例えば、図19に示すように、光源装置11に回転フィルタ方式を採用する内視鏡システム120で被検体内の照明を行ってもよい。内視鏡システム120には、上記実施形態におけるレーザ光源LD1,LD2、光源制御部20、及びコンバイナ21に代えて、図20に示すような分光強度を有する白色光を発するキセノン光源等の広帯域光源121と、白色光のうち酸素飽和度測定光の波長成分または白色光をそのまま透過させる回転フィルタ122と、回転フィルタ122を透過した光が入射する光ファイバ123と、回転フィルタ122の回転を制御する回転制御部124が設けられている。光ファイバ123に入射した光は、カプラ22で2系統の光に分波され、分波された光はそれぞれライトガイド26及び27を介して、投光ユニット46及び53から被検体内に照射される。なお、これら以外については、内視鏡システム120は内視鏡システム10と同様の構成を有しているので、説明を省略する。
【0071】
図21に示すように、回転フィルタ122は、白色光のうち波長範囲が460〜480nmの酸素飽和度測定光(図4参照)を透過させるバンドフィルタ125と、白色光をそのまま透過させる開口部126とからなる。したがって、回転フィルタ122が回転することで、酸素飽和度測定光と白色光とが交互に被検体内に照射される。このとき、上記実施形態と同様に、酸素飽和度測定光が照射されたときに1フレーム目の画像信号を取得し、白色光が照射されたときに2フレーム目の画像信号を取得する。これら取得した2フレーム分の画像信号から、上記実施形態と同様に、酸素飽和度画像を生成する。
【0072】
広帯域光源121から発せられる白色光は図20のような分光強度特性を有するため、通常光画像信号の青色信号B2には400nm〜530nmの波長範囲の光に対応する信号が含まれ、緑色信号G2には540nm〜580nmの波長範囲の光に対応する信号が含まれ、赤色信号R2には590nm〜700nmの波長範囲の光に対応する信号が含まれる。なお、血液量及び酸素飽和度の算出方法は、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
なお、図21に示す回転フィルタ122に代えて、図22に示すような回転フィルタ130を用いてもよい。この回転フィルタ130の第1透過部131は広帯域光源121からの白色光のうち460〜480nmの波長範囲の第1透過光を透過させ、第2透過部132は白色光のうち540〜580nmの波長範囲の第2透過光を透過させ、第3透過部133は白色光のうち590〜700nmの波長範囲の第3透過光を透過させる。この回転フィルタ130が回転すると、第1〜第3透過光が順次被検体に照射される。
【0074】
回転フィルタ130を用いる場合には、モノクロの撮像素子60によって、各透過光が照射される毎に撮像を行う。したがって、第1〜第3透過光の照射により、3フレーム分の画像信号が得られる。これら画像信号のうち、第1透過光を照射したときに得られる画像信号を青色信号Bとし、第2透過光を照射したときに得られる画像信号を緑色信号Gとし、第3透過光を照射したときに得られる画像信号を赤色信号Rとする。
【0075】
したがって、血液量の算出に用いられる信号比はR/Gとなり、酸素飽和度の算出に用いられる信号比はB/G、R/Gとなる。R/Gは上記実施形態の信号比R2/G2に対応し、B/Gは上記実施形態の信号比B1/G2に対応する。血液量及び酸素飽和度の算出方法は、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、疑似カラー画像の血液量画像及び酸素飽和度画像を生成する際には、緑色信号Gを輝度に割り当てる。
【0076】
なお、図22に示す回転フィルタ130の代わりに、図23に示すように、各透過部における透過率が回転フィルタ130と異なる回転フィルタ150を用いてもよい。回転フィルタ150の第1透過部は白色光のうち530〜550nmの波長範囲の第1透過光を透過させ、第2透過部は白色光のうち555〜565nmの波長範囲の第2透過光を透過させ、第3透過部は白色光のうち590〜700nmの第3透過光を透過させる。この回転フィルタ150が回転すると、第1〜第3透過光が順次被検体に照射される。
【0077】
回転フィルタ150を用いる場合には、カラーの撮像素子60によって各透過光が照射される毎に撮像を行う。第1及び第2透過光は撮像素子60のG画素に主として感応するため、第1及び第2透過光を照射したときには、画像信号として緑色信号Ga,Gbが得れる。一方、第3透過光は撮像素子60のR画素に主として感応するため、画像信号として赤色信号Rcが得られる。ここで、Ga及びRcは血中ヘモグロビンの酸素飽和度に応じて吸光係数が変化する2つの波長範囲の反射光に対応する画像信号であり、Gbは吸光係数が変化しない1つの波長範囲の反射光に対応する画像信号である。したがって、Ga/Gbが酸素飽和度及び血液量に依存して変化し、Rc/Gbが主に血液量に依存して変化する。
【0078】
そのため、血液量の算出に用いられる信号比はRc/Gbとなり、酸素飽和度の算出に用いられる信号比はGa/Gb、Rc/Gbとなる。Rc/Gbは上記実施形態の信号比R2/G2に対応し、Ga/Gbは上記実施形態の信号比B1/G2に対応する。血液量及び酸素飽和度の算出方法は、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、疑似カラー画像の血液量画像及び酸素飽和度画像を生成する際には、緑色信号GaまたはGbを輝度に割り当てる。
【0079】
なお、上記実施形態では、血液量及び酸素飽和度算出部で得られる酸素飽和度と信頼度に基づいて酸素飽和度画像を生成し、表示装置に表示したが、これに加えて、血液量及び酸素飽和度算出部で算出される血液量と信頼度に基づいて血液量画像を生成し、表示装置に表示してもよい。
【0080】
なお、上記実施形態では、酸素飽和度に関連付けられた色差信号などの色調情報を信頼度に応じて変化させ、その変化させた色差信号を元に酸素飽和度画像を生成しているが、酸素飽和度自体の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を元に酸素飽和度画像を生成してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10,120 内視鏡システム
14 表示装置
60 撮像素子
73 画像処理部
84 信号比算出部
85 相関関係記憶部
86 血液量及び酸素飽和度算出部
87 信頼度算出部
88 酸素飽和度画像生成部
88a (酸素飽和度用の)カラーテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照明光を照射する照射手段と、
被検体からの反射光を撮像素子で撮像して、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の反射光に対応する画像信号を含む、波長範囲が異なる3以上の反射光に対応する画像信号を取得する画像信号取得手段と、
取得した画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を求める酸素飽和度算出手段と、
前記画像信号の各画素毎に酸素飽和度の信頼度を算出する信頼度算出手段と、
前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を用いて酸素飽和度画像を生成する画像処理手段と、
前記酸素飽和度画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記画像処理手段は、
酸素飽和度と関連付けられた色調情報を記憶する色調情報記憶部から、前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度に対応する色調情報を求める色調情報算出手段と、
前記色調情報算出手段で求めた色調情報を信頼度に応じて変化させ、その変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成する酸素飽和度画像生成手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記信頼度算出手段は、
前記酸素飽和度の算出に用いられる酸素飽和度算出用の画像信号を少なくとも用いて、第1の信頼度を算出し、
前記酸素飽和度画像生成手段は、前記第1の信頼度に応じて変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成することを特徴とする請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記酸素飽和度算出用の画像信号の画素値に応じて第1の信頼度を決めることを特徴とする請求項3記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記第1の信頼度は、前記画素値が上限値を超えた場合または前記画素値が下限値を下回った場合に、徐々に低くすることを特徴とする請求項4記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記酸素飽和度算出用の画像信号を含む複数の画像信号間の信号比のうち血中ヘモグロビンの吸光スペクトルに関連性がある信号比に応じて、第1の信頼度を決めることを特徴とする請求項3ないし5いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記信頼度算出手段は、画像信号における画素の位置に応じて第2の信頼度を決め、
前記酸素飽和度画像生成手段は、前記第2の信頼度に応じて変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成することを特徴とする請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記第2の信頼度は、画像中心領域が最も高く、画像中心領域から画像周辺領域に向かうに従い徐々に低くなり、画像周辺領域が最も低くなることを特徴とする請求項7記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記信頼度算出手段は、
前記酸素飽和度の算出に用いられる酸素飽和度算出用の画像信号を少なくとも用いて第1の信頼度を算出するとともに、画像信号における画素の位置に応じて第2の信頼度を決め、
前記酸素飽和度画像生成手段は、
前記第1及び第2の信頼度に応じて変化させた色調情報を用いて酸素飽和度画像を生成することを特徴とする請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記色調情報は色差信号の信号値であることを特徴とする請求項2ないし9いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記画像信号取得手段は、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の光で照明された被検体を、撮像面にRGBのカラーフィルタが設けられたカラーの撮像素子で撮像するとともに、広帯域光の白色光で照明された被検体を前記カラーの撮像素子で撮像することにより、画像信号を取得することを特徴とする請求項1ないし10いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記白色光は、特定波長の励起光を蛍光体に当てることで励起発光する疑似白色光であることを特徴とする請求項11記載の内視鏡システム。
【請求項13】
被検体に照明光を照射する照射手段、及び被検体からの反射光を撮像素子で撮像して、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の反射光に対応する画像信号を含む、波長範囲が異なる3以上の反射光に対応する画像信号を取得する画像信号取得手段を備える内視鏡装置から、前記画像信号を受信する受信手段と、
取得した画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を求める酸素飽和度算出手段と、
前記画像信号の各画素毎に酸素飽和度の信頼度を算出する信頼度算出手段と、
前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を用いて酸素飽和度画像を生成する画像処理手段とを備えることを特徴とする内視鏡システムのプロセッサ装置。
【請求項14】
被検体に照明光を照射し、
被検体からの反射光を撮像素子で撮像して、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の変化により吸光係数が変化する波長範囲の反射光に対応する画像信号を含む、波長範囲が異なる3つ以上の反射光に対応する画像信号を取得し、
取得した画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度の情報を求め、
前記画像信号の各画素毎に酸素飽和度の信頼度を算出し、
前記酸素飽和度算出手段で求めた酸素飽和度の情報量を信頼度に応じて変化させ、その変化させた酸素飽和度の情報量を用いて酸素飽和度画像を生成することを特徴とする画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−143399(P2012−143399A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4195(P2011−4195)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】