説明

内視鏡ホルダー

【課題】 内視鏡の回転、前後運動及び拘束が可能な内視鏡ホルダーを提供する。
【解決手段】 保持アームを外側に固定した筒状内視鏡ホルダー内を軸心に沿って貫通する内視鏡本体を該内視鏡ホルダーに対して回転かつ前進・後退可能に保持する複数のゴム球4を、内視鏡本体2と内視鏡ホルダーの間に、均等間隔で装着する。溝の軌跡はゴム球4の個数にそれぞれ等しい張出部11aと縮小部11bから画成される。内視鏡ホルダーを軸心の周りに回動可能な隣接管体12,14に分割する。隣接管体12,14の何れかの端面にピン孔を穿設し、他の端面に前進後退可能に装着されたプランジャー22をピン孔に挿入し、かつゴム球4が縮小部11bに位置し、管体12の孔部13に圧入することによりロック状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡ホルダーに関するものであり、さらに詳しく述べるならば、内視鏡手術等において体腔内に内視鏡を挿入し、観察する内視鏡ホルダーの操作性を改良したものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特開2005−7189号公報で提案される内視鏡ホルダーは相互に直交する3本の回転軸による回転機構を利用して内視鏡を移動させるものである。人体に最も近い回転部では、内視鏡は段差部59に突き当てられた状態になっているから、回動の際に粉などが発生することは避けらず、またごみなどが溜まり易い。
【0003】
特許文献2、特開2005−645号公報で提案された内視鏡ホルダーでは、ホルダー先端の爪132,133と内視鏡のピン11とを係合させて、内視鏡を保持しており、この保持状態では関節接続機構により内視鏡は移動する。
【0004】
本出願人は、平成16年11月開催の内視鏡学会において、内視鏡ホルダーの参考出品を行った(非特許文献1、「参考出品、内視鏡下手術における内視鏡の操作向上に)の内視鏡ホルダーは、保持アームを外側に固定した筒状内視鏡ホルダー内を軸心に沿って貫通する内視鏡本体を該内視鏡ホルダーに対して回転かつ前進・後退可能に保持する複数のゴム球を、前記内視鏡本体と内視鏡ホルダー間に、均等間隔で装着する溝を内視鏡ホルダー内面に周設するとともに、術者の内視鏡操作に追従して前記保持アームを移動させるものである。この特徴を述べると、先ず、術者が、筒状内視鏡ホルダー内を軸心に沿って貫通する内視鏡本体をホルダーに対して回転かつ前進・後退させることにより、内視鏡を容易に操作することができる。即ち、特許文献1のように回転軸の周りでアームなどを操作する必要がなく、また特許文献2のように関節機構を駆動する必要がない。さらに、このような回転と前後動作を可能にするために、ゴム球を利用しているために、容易に内視鏡を前後・回転させることができる。内視鏡ホルダーを保持するアームは、内視鏡の位置を安定させ、術者の操作に追従して移動するので、積極的に内視鏡を保持し、移動させる機能はない。このために、装置全体が小型化する。
【特許文献1】特開2005−7189号公報
【特許文献2】特開2005−645号公報
【非特許文献1】平成16年11月開催の内視鏡学会参考出品、「内視鏡下手術における内視鏡の操作向上に」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1において使用されているゴム球は、内視鏡の固定と移動を同時に満足させる重要部品であり、どちらかの機能に偏ることはできない。実際に非特許文献1の内視鏡ホルダーを試験したところ、ゴム球は、ホルダーに内視鏡を挿入するときに内視鏡先端により摩耗され、摩耗粉が人体に入り込むおそれがあった。
よって、本発明は、固定と移動の切り替えが可能であり、ゴム球の摩耗がなく、かつ長期間安定して使用することができる内視鏡ホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る内視鏡ホルダーは、保持アームを外側に固定した筒状内視鏡ホルダー内を軸心に沿って貫通する内視鏡本体を該内視鏡ホルダーに対して回転かつ前進・後退可能に保持する複数のゴム球を、前記内視鏡本体と内視鏡ホルダー間に、均等間隔で装着する溝を内視鏡ホルダー内面に周設するとともに、術者の内視鏡操作に追従して前記保持アームとともに移動する内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡本体を回動自在に保持する鞘体を前記内視鏡ホルダー(以下「外ホルダー」という)に同軸状に設け、前記外ホルダーの前記溝の軌跡がゴム球の個数にそれぞれ等しい張出部と縮小部から画成し、前記鞘体に前記ゴム球のそれぞれが圧入される孔部を形成するとともに、前記外ホルダーを軸心の周りに回動可能な隣接管体に分割し、かつ隣接管体の何れかの端面にピン孔を穿設し、他の端面に前進後退可能に装着されたプランジャーを前記ピン孔に挿入し、また前記複数のゴム球が前記縮小部に位置し、かつ前記ゴム球が前記鞘体の孔部に圧入されて、内視鏡ホルダーと接触することにより前記、回動、回転、前進及び後退をロックすることを特徴とする。以下,本発明の内視鏡ホルダーにつき詳しく説明する。
【0007】
図1〜3は、本出願人が非特許文献1で発表した内視鏡ホルダーの概要を示しており、図中、1は内視鏡ホルダー、2は内視鏡本体、3はアーム取付部、4はゴム球、5はゴム球4を保持する溝である。この構造では、ゴム球5を内視鏡本体と接触させるためには、内視鏡本体2の外側に鞘体を適度に嵌め込み、ゴム球5を保持する溝などを形成する必要があった。以下、本発明が特徴とする保持機構を、図4〜8を参照して説明する。
【0008】
図4は内視鏡ホルダー(即ち、図1〜3の1に相当し、本発明では「外ホルダー10」に該当する)の内面に形成された溝11に軌跡を説明する図面であり、この実施例においては、ゴム球(図示せず)は3個である。ゴム球を案内しかつ保持する軌跡11は3個の張出部11aと3個の縮小部11bから形成されている。12aは内視鏡本体を保持する鞘体の外面を示す。なお、ゴム球の個数は3個に限定されず、任意であるが、2〜6個が好ましい。また、ゴム球は、繰返し適度に弾性変形して内視鏡本体の拘束(ロック)と解放を実現し、しかも給油などが不要であるために、内視鏡ホルダーに適している。ゴムとしては硬質ゴムを用いることが好ましい。
【0009】
図5は外ホルダー10の内側筒状空間に鞘体12を挿入しており、鞘体12にはゴム球が圧入される孔部13が穿設されている。この実施例では孔部13が軸方向に2列に形成されているが、1列でも良くあるいは2列を超えてもよい。何れの場合でも孔部13はゴム球の個数と等しい個数が周設されている。孔部13の直径はゴム球の直径の1/3〜1/2未満が頭を出して内視鏡と接触するように定められている。また、ゴム球が溝11の縮小部11bに位置した時に、ゴム球が孔部13に圧入される。このために、ゴム球が溝11の張出部11aに位置するときは、内視鏡本体は自由に前後移動もしくは回転が可能となり、術者は観察に集中でき、一方、ゴム球が縮小部11bに位置するときは、内視鏡本体が拘束(ロック)され、不用意に体腔内に突入することはない。続いて、上述のように、ゴム球を移動させる機構につき図6及び7を参照して説明する。
【0010】
図6,7において、外ホルダー10は人体に近い先端側14と人体から遠い後端側15に分割されており、相互に端面で接触している。後端側外ホルダー15には、4個の縦孔(図示せず)が形成されており、その内3個には該外ホルダー15を回動させる力を媒介する回動ロッド16a,b,cが挿入されており、図示されない操作部からの回転力を受けて、後端側外ホルダー15を回動させる。一方、4個の縦孔のうち1個にはプッシャ−ピン17が進退自在に挿入されており、図6に図示された状態では先端が前進端まで変位されており、後述するプランジャーピンを引込位置に後退させている。このために、後端側外ホルダー15はプランジャーピンに制約されずに、回動可能である。プランジャーピン24は図8に示すように、バネを内蔵したハウジング23の先端から突出しており、かつ前方に付勢されている。図6の回動フリー状態ではプランジャーピン24は、プッシャ−ピン17あるいは後端外ホルダー15の端面に押されており、ハウジング23内に没入している。この回動フリー状態では、ゴム球が後端側外ホルダー15の溝の張出部に位置するようにすると、術者が内視鏡を操作することができる。この状態では、ゴム球は鞘体12と外ホルダー10の間で脱落しない程度に圧縮されている。一方内視鏡本体の移動は鞘体12との間でゴム球を介さずに実現される。
なお、後端側外ホルダー15には、円弧状切除部18を形成し、一方先端側外ホルダー14にはストッパー20を突出固定させことが好ましく、この構成により、上記回動を円弧状切除部18の領域に制限することができる。
【0011】
図7は、図6と同様の図面であり、後端外ホルダー15が時計方向に回動したために、ストッパー20が図6とは反対側に位置している。また、プッシャ−ピン17を後退させることにより、プランジャーピン24はプランジャーピンが挿入されている縦孔にバネ力により前進するために、上記回動が拘束される。プランジャーピン24とプッシャ−ピンの接触面は17a/24aで示されている。この拘束状態において、ゴム球が後端側外ホルダ−15に形成された溝の収縮部に位置し、かつ鞘体12の孔部13から頭を出すようにすると、内視鏡も拘束(ロック)される。このようなゴム球の挙動においては、ゴムは収縮部で一旦は収縮されるが,その後孔部13から頭を出すために、ロック状態と謂えども、極端に圧縮されることはない。このために、ゴムの寿命が長くなり、内視鏡ホルダーのメンテナンスフリーも期待できる。さらに、ゴム球は拘束状態においては、孔部13で保持されている。
【0012】
以上図5〜8を参照して説明した構造・方法において、プッシャ−ピンの操作は、手動で、必要によりねじ、レバーなどを介してピンを押すことにより行うことができる。また、回動中の各外ホルダー14,15を同軸状に保つためには、ねじ込み式で外側に筒状ホルダーを嵌め込むなどの方法を採用することができる。さらに、プランジャーの位置は後端側ホルダー15でもよい。
以下、図面に示された好ましい実施態様によりさらに詳しく本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図9は本発明の実施例に係る内視鏡ホルダーを示しており、図中図1〜8と同じ部品は同じ参照符号を付している。また、各部品が表われるように、組立て途中の状態を示している。
図示されているように、プランジャー22を固定しかつゴム球が押しこまれる孔部13を形成した鞘体12の外側に同軸状に先端側外ホルダー14が嵌め込まれ、後端側外ホルダー15は鞘体12の外面に固定され、かつ鞘体12の後端部分を突出させている。
25は組立状態では、先端側外ホルダー14の領域まで覆い、各外ホルダー14,15が同軸状に回動するように保持するロック操作リングである。さらに、ロック操作リング25にはプッシャ−ピン17と回動ロッド16が固定されており、コイルバネ27を介して後端側外ホルダー15と接触している。ロック操作リング25が後退してコイルバネ27が解放された状態で図7の拘束状態となり、ロック操作リング25が前進して、コイルバネ27が圧縮された状態で図6の解放状態となる。このロック操作リング25の前進・後退を可能にするためには、エンドキャップ28を鞘体12に嵌め込んだ状態で、ロック操作リング25と後端側外ホルダー15との間に間隙が形成されるようにし、さらに、上記間隙がなくなるまでエンドキャップ28の嵌め込むようにすればよい。
29は鞘体12及び外ホルダー14を固定するトップキャップである。
【産業上の利用可能性】
【0014】
以上説明したように、本発明ではゴム球が実現する拘束状態とフリー状態とでは、ゴム球が保持される部材や箇所を分けているために、ゴム球が安定して使用でき、かつ内視鏡の操作も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】非特許文献1に記載された内視鏡ホルダーの側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1,2の内視鏡ホルダーで内視鏡を保持した図面である。
【図4】外ホルダーの正面図であり、ゴム球を保持する溝の軌跡を示す図である。
【図5】外ホルダーと鞘体の組立図である。
【図6】フリー状態にある先端側外ホルダーと後端側外ホルダーの図である。
【図7】拘束状態にある先端側外ホルダーと後端側外ホルダーの図である。
【図8】プランジャーの図である。
【図9】本発明の実施例に係る内視鏡ホルダーの分解図である。
【符号の説明】
【0016】
1−内視鏡ホルダー
2−内視鏡本体
3―アーム取付部
4―ゴム球
5―ゴム球を保持する溝
10−外ホルダー
11−溝
12−鞘体
13−孔部
14−先端側外ホルダー
15−後端側外ホルダー
16−回動ロッド
17−プッシャ−ピン
18−円弧状切除部
20−ストッパー
22−プランジャー
24−プランジャーピン
25−ロック操作リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持アームを外側に固定した筒状内視鏡ホルダー内を軸心に沿って貫通する内視鏡本体を該内視鏡ホルダーに対して回転かつ前進・後退可能に保持する複数のゴム球を、前記内視鏡本体と内視鏡ホルダー間に、均等間隔で装着する溝を内視鏡ホルダー内面に周設するとともに、術者の内視鏡操作に追従して前記保持アームを移動させる内視鏡ホルダーにおいて、前記内視鏡本体を回動自在に保持する鞘体を前記内視鏡ホルダー(以下「外ホルダー」という)に同軸状に設け、前記外ホルダーの前記溝の軌跡がゴム球の個数にそれぞれ等しい張出部と縮小部から画成され、前記鞘体に前記ゴム球のそれぞれが圧入される孔部を形成するとともに、前記外ホルダーを軸心の周りに回動可能な隣接管体に分割し、かつ隣接管体の何れかの端面にピン孔を穿設し、他の端面に前進後退可能に装着されたプランジャーを前記ピン孔に挿入し、また前記複数のゴム球が前記縮小部に位置し、かつ前記鞘体の孔部に圧入されて、内視鏡本体と接触することにより前記回動、回転、前進及び後退をロックすることを特徴とする内視鏡ホルダー。
【請求項2】
前記隣接管体の何れかの端面に円弧状切除部を形成し、反対側の端面にストッパーを突出させて、前記円弧状切除部の領域で回動を可能にしたことを特徴とする請求項1記載の内視鏡ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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